03/01/29 不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第14回)議事録      不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第14回)議事録 1 日時   平成15年1月29日(水) 13:00〜15:00 2 場所   経済産業省別館1111号会議室(経済産業省別館11階) 3 出席者 (1) 委員(五十音順、◎は座長)   (1)伊藤 眞(東京大学大学院法学政治学研究科教授)   (2)岩村正彦(東京大学大学院法学政治学研究科教授)   (3)菊池信男(帝京大学法学部教授)   (4)毛塚勝利(専修大学法学部教授)  ◎(5)諏訪康雄(法政大学社会学部教授)   (6)村中孝史(京都大学大学院法学研究科教授)   (7)山川隆一(筑波大学社会科学系教授) (2) 行政  青木審議官、熊谷労政担当参事官、中原調査官、山嵜中労委事務局審査第一課長、  荒牧参事官補佐 4 議事 ○ ただいまから「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会」の第14回会合を開  催する。   前回までで一通り論点項目について御議論いただいたところであるが、この中で、  数多くの論点について法律事項から運用事項まで幅広い観点で議論がなされたところ  である。今後研究会として不当労働行為審査制度の在り方についての議論をまとめて  いくためには、現状の問題点及び見直しの方向について問題意識を共有することが必  要であると考える。そのような趣旨でこれまでの検討について事務局の方で中間整理  (素案)としてまとめたものを本日、配布している。   また、司法制度改革推進本部の労働検討会において、3月7日に「労働委員会の救済  命令に対する司法審査の在り方」の議論が予定されており、この研究会の検討状況を  報告する必要があるとのことなので、それまでに当研究会として中間整理をまとめた  いと考えるがいかがであろうか。  (了承) ○ 次に本日配布されている資料の取扱いについてお諮りしたと思う。今回の資料は、  中間整理に向けたたたき台であり、関係者への影響も大きいことから今後円滑に検討  を進めていくためにも非公開としたいと考えるが、いかかがであろうか。また議事録  についても非公開としたいがいかがであろうか。  (了承)  それではそのようにしたい。では事務局から説明をお願いする。  (事務局より資料No.1中間整理(素案)の説明。) ○ それではこれをたたき台として皆様に御議論いただきたいと思う。第1、第2、第3、  第4というふうに分かれているので、順番に御議論いただきたい。最初に「はじめに」  であるが、中間整理としてどの程度書くか。この程度で良いだろうか。 ○ その前に、先ほどご説明はいただいたが、この中間整理というものの性格、それに  よってどこまで何を書くかということがかなり決まってくるという感じがするので、  そのあたりを確認していただきたい。つまり、先ほどの話だと、3月7日に予定されて  いる司法制度改革推進本部の労働検討会の方にこれを出すということになるので、そ  れとの関係では、少なくとも労働委員会についての見直しとか検討はこういうことに  なっているということを、メッセージとして送らなければいけないという性格が一方  である。それともう一つ、その段階では公表されるというふうに考えた方が良いので  あろう。そうすると、中間とは言いながら、公表された段階ではいろいろな反応があ  りうるわけで、そういったことも考えないといけない。一方では司法制度改革審との  関係で、どこまで書くかということと、他方では公表されることによって生じるその  後のインパクトとの関係で、どこまで書くかという、二つのことを考えなくてはなら  ないということであろう。 ○ その点、もう少し事務局からご説明いただきたい。 ○ 基本的には、この中間整理は最終的な報告をまとめていただくための共通の認識を  お作りいただくというものであるが、今、話があったように、二つの側面を持つもの  である。一つは、司法制度改革の労働検討会の方で、3月7日に労働委員会と司法との  関係について議論が予定されているわけで、厚生労働省の当研究会で検討していると  いうことはかねてから報告しているところであるが、その検討状況として、一定の方  向が分かるようなものを示しておく必要があるのではないかと考えている。それで、  事務局としては、これを世の中に対して積極的に宣伝していくタイミングではないと  思っているけれども、司法制度改革の労働検討会では資料も公表されることになるの  で、中間整理としてこの研究会でまとめていただければ、それは公表という扱いにな  るということである。司法制度の方も、ずっと論点についての検討を続けていて、そ  の論点について、その回で方向付けが決まるという議論の仕方にはなっていないので、  また論点が一巡した後でさらにどのようなことをやっていくのかという議論がなされ  ると思う。だから、私どもとしては、必ずしも3月7日の時点で最終的な決定版のよう  なものを報告しないと全く間に合わないという訳ではないと思っている。 ○ つまり、労働検討会に出すということになれば、出すことの意味としては、何か向  こう側の議論に、ある程度こういうことを考えているのであれば、労働検討会でもこ  ういうことを考え得るとかいうような、ステップ的なところを持たせるということに  なるのか。つまり、向こう側の議論に、こちら側の議論が何らかの形で介入すること  を期待するような形で持っていくのか、それともそこまでは考えないで、今のところ  こういう方向性を考えているということで止めておくという考え方になるのか。後者  の方になると、外に発表するということからいうと、発表の仕方によっては思わぬ反  響を招き、今後の議論を左右することにもなりかねないので、微妙だという気がして  いる。 ○ 他方で、司法制度改革の方と、労働委員会について検討するときに、我々がただ検  討しているというだけでは不十分であり、まず自分の方でどれぐらい検討しているの  かということになる。 ○ その上で、裁判所の方も司法制度の方もこう考えるということになる。そうすると、  あまり中身のないものを持ってくるのも意味がないと思うが、あまり中身を持たせす  ぎても外との関係でまずいということになる。感覚としてはどうだろうか。 ○ この研究会と労働検討会の対象事項が全く重なり合っているわけではないというこ  とはあると思う。やはり、方向性は出す必要があり、どちらもお互いの様子待ちとい  うことになると、議論が両方ともできないということになってしまうと思う。その点  で、検討会はともかく、その他の面でも出しても問題のないようなやり方があるかど  うか。あるいは、そういう事項を特に抽出するということができるのかどうか。まだ  よく分からないが、そういうことではないだろうか。 ○ 例えば、労働調停にしても、調停を行う場合に対象をどうするかといったら、集団  紛争を労働調停の対象としないという話がある。それはやはり、労働委員会があるか  らということであろう。不当労働行為の審査には、調整的な要素もあるし、判定的な  要素もある。労働委員会で行う調整以外の残りを裁判所の労働調停がカバーするとい  うことになるので、不当労働行為の救済手続における調整的機能をどのように位置づ  けるかは労働調停の対象を考える場合にも重要な問題となる。労働事件全体の中で、  不当労働行為審査制度が、労働委員会が担う部分はどのあたりなのか、という問題で  ある。また、もちろん、取消訴訟のあり方も問題になるわけであるから、それとの関  連で、不当労働行為審査手続がどのように変化するかは重要な問題である。 ○ 司法制度改革の方は議論が煮詰まっていて、それに間に合うように意見が出ないと、  待ってくれるわけではないのでは。こちらの立場からして言っておく方が良いことが  あるのであれば早く言わなければならないと思う。例えば、労働調停の関係でこちら  の調整機能の位置づけだとか、充実強化の方向をどう考えるかということについて、  こちらとしてはそれを前提に考えてほしいということがあるとすると、それは早く言  った方が良いのかも知れない。どちらにしても、中間報告とはいっても、一度出れば、  最終報告がそれと根本的に変わってしまうということは性質上できないと思う。これ  は是非言っておきたいということがこちらにあるかという問題と、言う以上は、将来  的に根本から変わることはあり得ないというところの内容になっていないとまずかろ  うという感じがする。 ○ 論点の中に取消訴訟の在り方というのがある。それについての意見というのはむし  ろ期待されていると言える。 ○ 審級省略だとか、実質的証拠法則だとか、新証拠の提出制限だとか、そういうこと  に踏み込んでものが言えるかどうかというところとの兼ね合いでいうと、それが出な  いのであれば、取消訴訟の方については中身が取消率にしろ、訴え提起率にしろ、こ  ちらの命令の充実強化というのを実現すると、自ずと現状が変わって来るということ  になるだろう。内容的な方向性を示すということになると、結局一番関係があるのは  調整機能との兼ね合いではないかという気がしている。 ○ 労働検討会でやっているいろいろな論点で、どれが実現可能性が高いかということ  になると、やはり労働調停が一番であろうと思われる。したがって、これについては  何か言うべきことがあるのであれば、言っておく必要があると思う。その次に例えば  参審制という話になると、実現可能性が小さくなり、最後に審級省略ということにな  ると、今の所は、もう少し小さくなるのかも知れない。こういう実現可能性というも  のも議論の前提としては考えておく必要があるかもしれない。 ○ そうすると、一つは調停との関係でも、労働委員会がどういうことを考えるかが背  景にないと、向こうも議論の整理がつけにくいと思う。それから、審級省略、実質的  証拠法則、新証拠の提出制限ということは、これを中間整理の中に入れるというのは、  現実的にも得策ではないという感じがする。あと一つ考え得るのは、この点はどうで  あろうかということであるが、今まで議論してきた中では、中労委の役割、特に再審  査の役割をどうするかということとの関係で、いくつかの論点がある。一つは、取消  訴訟の管轄裁判所について、何か手がないかという話が出ていたと思う。それが中労  委に行ってから東京地裁というルートなのか、あるいは中労委に行った後で原処分に  戻ってという話もあったと思う。あとは、初審での審理を充実させることを考えた上  での証拠の扱いを何とかできないかということが、私としては切実な思いがある。そ  れは実質的証拠法則等の話なので、仕方がないと思う。いずれにしても、中労委の再  審査の役割、それから裁判所の関係の整理の仕方について、一定の考え得る点、確た  るものでないとしても、何か玉を投げるという手がないかという気がする。委員は労  働検討会に出ておられるが、どうだろうか。 ○ 司法制度改革審議会の意見書の中では、不当労働行為の司法審査の在り方について  ということが検討対象とされ、その前提として、労働委員会における審査の在り方を  踏まえて、という表現になっている。その審査体制の在り方という点で方向性を出す  のかなと思う。もちろん取消訴訟それ自体につき正面から方向性を出すことも考えら  れると思うが、それはどちらかというと労働検討会における主たる対象なのかなとい  う気がする。その前提となる整理の面、あとは取消訴訟に関するこういう要望がある  とか、労働委員会の機能を発揮する点ではこういう点が問題になっているとか、そう  いう書き方であると整合性があるという感じがする。もう一つ、調停の方は確実に実  現されるということであるが、この研究会においてはこれまで争議調整をあまり対象  としてこなかった。 ○ 争議調整ではなく、委員が言ったのは不当労働行為審査の中における和解の話であ  ろう。 ○ そうすると、紛争解決システム全体の中の労働委員会の位置づけということであろ  う。 ○ そもそも、この研究会の任務というのは、おそらく労働委員会の中で解決すべき具  体的なものを考えていくということであったと思う。そうすると、一つは皆さんが言  っているように、審査を速くするという、議論を実質的なものにするというのがある  が、もう一つは行政訴訟との関係で指摘されている問題点を、当の労働委員会はどう  いうふうに考えるかという、考え方を示さなければならない。従来の労働委員会の意  見書というのは、どちらかというと、裁判所の方に問題があるから、裁判所のシステ  ムを考えようというものであった。それとの関係でどう考えるのか。こちらが出さな  いと何も変わらない。もう一つ大きいのは、審級省略の問題が指摘されたので、審級  省略についてどういうふうに考えるかということを入れないといけないと思う。是非  ともこちらから出さないと、何も進まないという感じがする。 ○ 中間整理という形で検討会に出すというのであれば、おっしゃるように公開される  ことになるし、ある程度の方向性が決まってしまう。かといって、現状と問題点だけ  に止めておいて、見直しの方向は何も触れないということはできない。 ○ それはそうである。だから、出し方が難しいと思う。 ○ そうだとすると、最後のことは引き続き検討するとしても、基本的な見直しの方向  は出さざるを得ないと思う。それについての意見は意見として承って、必要なら考え  直せばいいということであろう。 ○ 出すのはいいが、やはり出し方が問題であろう。たしかに問題点の指摘をするだけ  では、労働検討会との関係で無意味である。 ○ だから、大胆に出せばいいのではないか。 ○ ただ、この中で必ずしも議論が一本化されているというわけでもない。問題意識と  してはかなり共通されていると思うので、あとは具体的な方向性はオプションのよう  な形で書くという方向が当然あり得るだろう。 ○ ただ、あまりにもピンからキリまであると、何を考えているのかということになっ  てしまう。 ○ それと、今言った審級省略の点は、なかなか難しいという話をしてしまうと身も蓋  もないのであるが、もし労働検討会の方で検討が進んで、裁判所の方の審査期間の半  減という話が進んでくると、かなり状況が変わる。しかも、今、基本的に裁量上告に  なってしまったので、五審制というのは事実上なくなりつつある。そうすると、地裁  レベルまでが勝負で、高裁・最高裁はあまり考えられなくなってくる。だとすると、  ひょっとすると審級省略という話は実質的な焦点からはずれるのではないかという気  がする。 ○ それなら、そう言っておけばいいと思う。 ○ それにしても、余分なものが上についているということになるのではないか。 ○ それはそうであるが、余分なものの付き方がどうかということでこの議論が出てき  ているわけである。それは中労委の在り方との関係でもある。そのいくつかのオプシ  ョンと組み合わせるというのを提示していく。そういう方向なのではないか。  入り口の議論をしてもしょうがないが、この性格というか、位置づけを知りたかった  ので。 ○ これは最後の段階で検討していただこうと思っていた問題であるが、それは最初に  問題意識として持っていただいて、そして部分を見た後でどうしようかということを、  3月7日前に検討するということで良いだろうか。  それでは、はじめに第1の「はじめに」であるが、これはこのような感じでよろしい  だろうか。もっと哲学を書けといったようなことがあるだろうか。   これをどこに出すかというと、要するに二つであろう。まずは司法制度改革の検討  会であるが、その先には国民一般ということがあるので、両方にらみながらどうする  かということになる。   では、第1はおいておくとして、第2に入る。現状であるが、この書き方はいかがで  あろうか。 ○ 大体問題はないと思う。ただ、2ページの再審査の状況で、地労委等の関係で初審  命令の支持率37.5%というのは、内容を見ないと地労委の信頼がないという感じがし  てしまう。 ○ それは私も気を付けてほしいと思う点である。要するに、これは全面支持したとい  うものであろう。どういう色分けをするかというのは難しいのであるが、全面支持し  たというのと、かなり支持したというのと、あまり支持していないというのと、全然  支持していないというのとがある。それは数量的には表現できないものかもしれない  が。 ○ 数字に関しては、資料の7ページに再審査における初審命令の支持率の推移という  ことで出ているが、どこの割合を採るのかということにつきるのだろうと思う。 ○ たしかに、全部変更は非常に少ない。 ○ それともう一つは、行政事件訴訟全体の取消率を見るときに、一部取消しと全部取  消しは同じものとして扱われているので、そちらと比べようとすると、考え方を揃え  ないと見比べられないのかなということもあって、このような採り方になっている。 ○ 中労委も事実調べをしているわけであり、そうすると、判断資料が追加されている  状態で、仮に全部取消しをしても、これは初審の考え方が間違っているといったこと  はいえなくなってくる。だから、ちょうど上訴における取消率と同じであるが、全部  支持だけで出すのではなくて、全部控訴が棄却されたものと、一部控訴が棄却された  ものと、全く認容されたものと、最小限3つぐらいは分けると思う。それをまとめて  どの数字を採るかは、場面場面の必要性による。だから、判断資料が同じでない場合  に、これだけ見ると、こんなに取消率が高いのかと思って、感覚的に持っているもの  と違うという感じがした。取消しの方は、最小限、全部変更と一部変更は分けておい  た方が良いと思う。 ○ 労働検討会でも同じような問題があったのであろうが、取消率ということになると、  JR事件が入ってしまうと大きく変わってしまう。それが基本的な一番の違いなので、  その辺をうまく表現していただけると良いのかなという部分と、裁判所での取消しと  いうのも、今の問題と同じであるが、新しい証拠が出てきて取り消されてしまったり、  そもそも労働委員会と判断の枠組みが全く違うということがあったりする。それは取  消しであると言えばそうであるが、もう少しうまく書けないかという気がする。 ○ そこは検討していただく。要するにできるだけ同じ考え方で対比するということで  あるので、二本立てにするということはあると思う。前のように、一部取消しは半分  にして、裁判でも再審査でも同じようにするのと、一部取消しも全部取消しも一件と  してカウントするというものとの二本にする。 ○ 数字は、データをもう一度確認するようにする。 ○ 数字はたしかに一人歩きするので、再検討をお願いする。 ○ ただ、JR事件に関しては入っていないと思う。平成10年に全部取消しが14件という  のがあるが、ここ3年ではほとんどないと思う。 ○ 仮にJR事件があったとしても、労働委員会の不満は非常に強いだろうが、国の法体  系としては取消しに変わりはない。 ○ たしかに取消しであることは間違いない。  今見ていて思うのは、母数があまりにも少ないので、データとして30%、40%という  ふうに出ていると大変な数値のように思えるが、このパーセンテージが一人歩きする  というのは避けるようにするべきであろう。何件というのを、きちんと言わないと、  極めてミスリーディングという感じがする。 ○ これしかない母集団で、いちいち比率を出す意味はあまりないと思う。やるならも  っと何年も通して見ていかないといけない。 ○ 件数が少ないと、年によって上がり下がりが激しくなる。 ○ 中労委のJR事件は最近2、3件あったような気がする。 ○ 国鉄改革法関係では、過去3年で2件ある。JR事件はもっとあるが、国鉄改革法がら  みでないものに関しては普通の事件と変わらないという認識でいる。 ○ そうでもないと思う。いずれにしても、数字の扱いには気をつけていただきたい。 ○ 普通、統計というのは5年とか10年おきぐらいで変化を見ていくというものである  と思う。 ○ 10年とか、ずっと中労委命令に対する判決を見たとしても、総数はいくらもないの  で、ぶれが大きいから、統計的に出したとしてもあまり意味がないかも知れない。 ○ 現在の状況がこうだから、こういう要求をするとか、当面の対策を考えるのであれ  ば、3年ぐらいの件数を出すというのでも良いと思うが、制度論をやるというときに、  直近3年という数字を使うのは問題があると思う。 ○ トレンドを見るのであれば、制度創設以来の折れ線グラフ等にする方が良いのでは  ないか。 ○ それが本来だと思う。半世紀あるのであるから、10年おきぐらいに採れば良いので  はないか。 ○ 判決まで行っているものが、当初の申立事件との関係で、どの程度支持されている  のかということを見ることが必要ではないか。 ○ 本当に五審制という点が当たるのかどうか。それは例外的事件なのではないか。  基本的には事実の切り出し方なので、そのインプリケーションに対する対応の仕方を さらに検討していただく。  それでは第3に移る。問題点に関する第3であるが、ご意見をいただければと思う。 ○ 3ページの下の方の(2)であるが、合議の日程ということは、中労委に限ると、合議  はほとんど1回で済んでいるので、期日が入らないことが大きな遅延の原因になって  いるとは思えない。 ○ 並列的に書いてあるが、どれが一番大きいかといったら(3)である。 ○ そうだと思う。だから、なぜ(2)がないといけないのかということがよくわからな  い。地労委がそうだからということだとしても、合議の日が入らないからというのは  どうなのだろうか。 ○ ちょっと考えられるのは、非常勤なので、そう何回も入れられないという意味合い  はあるかもしれない。 ○ とにかく、地労委では審問の期日が入らないというのが問題である。中労委では(3)  だと思う。 ○ 命令書に何でも書いてしまうからということにつきると思う。もっと簡単に書ける  のに、それをしないから、審問にそれほどかかっているわけではないのに、長くなっ  てしまう。 ○ 再審査の処理期間を大体1,500日だとして、職員は3年ぐらいで入れ替わる。3年と  いうと1,000日であるので、つまり自分で最初から扱った事件の命令を書かないまま  異動になる。諸悪の根源はここであるという感じが強い。 ○ 地労委レベルで言うと、まず審問の期日が入らない。一月に一度というのを目安に  日程調整していっても、経験的に言うと一月半から二か月ということが比較的多い。  それから、とにかく膨大な書証と膨大な証人申請が出てくるということ。それが審問  を長引かせる一番の原因であることは間違いない。それは正面から書けないので裏か  ら書くということになるだろうが、それが一番だと思う。和解のことを全く抜きに考  えればその二つと、あとは(3)に関しては中労委と全く同じである。都労委の方がま  だましだという感じもするが、それでもローテーション人事で、5年ぐらいで動いて  しまう。やっと慣れてきたと思ったらいなくなってしまうという状況である。何かあ  るだろうか。 ○ おっしゃったのは(1)であろう。もう少し具体的に書けるとは思うが、趣旨として  はそういうことであろう。労働委員会の命令についての基本的な考え方の方が問題で、  そのためにやたらに詳しいことをえんえんと書いている。紛争の要点と、それに対す  る適切な救済だけを書けばいいものを、微に入り細に渡って書くという点が問題だと  思う。それはここに書いていただいた方が良いと思う。 ○ どういうことが問題かという問題点の認識を明確にしておかないといけない。長く  かかっている原因の根源は命令書に何でも書くということで、それが審理に反映して  いるわけであるから、それをはっきり書いておかないと、問題点の認識もできていな  いということになってしまうと思う。 ○ それで、何でも書くというのは、一つは労働委員会の長年の慣行ということ、もう  一つは訓練が足りないから選択ができないという問題。それから委員も言っているよ  うに、最初にきちんと争点整理を行わないから一体何を拾えばいいのか分からなくて、  心配になって何でも書く。たしかに、事務局の職員は丁寧に読んでいると思うが、あ  れだけの努力をする必要があるのかということがたくさんある。例えば、事件の概要  とも何の関係がないのに、3月の4日に団交をやったのか5日にやったのかということ  を、団交の事件でもないのに問題にしていたりする。だから3月上旬頃と書けばいい  と思うのに、一生懸命やるということがある。またそれを代理人も指摘してきたりす  る。 ○ それはどちらが先かというと、やはり命令書に書いているからだと思う。書かれれ  ば、間違っていれば当事者が文句を言うのは当たり前である。やはり問題の根源は書  く方である。 ○ 中労委段階で簡素化するというのはなかなか難しい部分もあるので、ここは労働委  員会全体としての審査の在り方の問題だと思う。 ○ でも、中労委は中労委で簡単に書けば良いだけの話なのではないか。上訴審の判決  は普通一審の判決より簡単である。だから、現状の命令書の何が問題かという認識を  みんなが共有するかどうかということが一番問題だと思う。それがないと、どれだけ  早くなるのかという感じがする。 ○ 東京とか大阪などの命令数の多いところでは、今委員が言ったような努力をやろう  と思えばする。問題は、事件数の極端に少ない地労委で、果たしてインセンティブが  働くのかという気がする。 ○ それに対する対策は、結審から1か月で命令を出せとか、そういうふうに書くしか  ない。 ○ 今、他にやり方の例がないからそういうふうに普通のやり方どおりにやっているわ  けだろう。しかし、事件のないところは、どちらにしろ経験がないのであるから、こ  れは簡単で良いというものがはっきり出されれば、早くやると思う。 ○ しかし、それは経験があるからそっちの方が良いということが分かるのではないか  という気がする。 ○ やはり研修と実務資料ということになるのではないか。 ○ 見直しの方向に関することでは、今言ったような実務上の努力は今までになかった  わけではないので、規則等のレベルで紛争の要点と適当な救済を書きなさいというよ  うなことで、制度論として議論するなら、それしかないのではないか。 ○ それの問題点は、今までだって建前上は短くなるはずであるのに、実際はすごく長  くなっているということがたくさんあるわけで、またこれまでと同じような提言に終  始したのでは仕方がない。したがって、今度は作ったらある程度守れるという体制と  合わせて提案しないといけないという感じがする。今までのやり方を繰り返していた  ら、どんなことをしても短くなるはずはないという感じがする。今までのやり方だと、  期日そのものだって2、3か月に一度しか入らない。 ○ 塚本会長時代の都労委の決定というのは極めて簡潔である。 ○ それは都労委でも議論した。しかし、事件の性質が変わってきたということがある  と思う。 ○ 他に、問題点のところではいかがだろうか。 ○ 問題点の2の和解のところであるが、これは法令レベルで和解の規定を置いた方が  良いということであろうか。 ○ 結論から申し上げるとそういうことである。不当労働行為に対する対応のやり方と  して、今のような命令以外の和解というものをきちんと位置づけた方が、問題解決が  よりうまくいくようになるのではないかということである。基本的には今でも、法律  的には根拠がないが、事実上、労働委員会規則に基づいてやっている。しかし、法律  上では判定的に、命令に基づいて是正させるということになっているので、もう一つ、  人によってはやはり不当労働行為があるのだから、直してくれということで、和解が  進みにくいということも考えられるし、今きちんと重要な機能として働いている部分  が、法制度上影も形もないという状態も、制度としてあまりにも乖離しているのでは  ないかということである。 ○ 今おっしゃったように、やっている仕事の大事な部分、大きな役割を果たしている  部分が、法令上根拠がないから置きましょうという考え方の筋は分かる。ただ、根拠  を置けば実際上の効果がある、変わる点があるという認識なのかということをうかが  いたい。 ○ これによって大きく変わることはないのではないかという認識である。若干当事者  が和解に応じやすくなるようなことはあるかもしれないが、これで何かが大きく変わ  るということは考えていない。 ○ というと、結局、判定をしてもらうために持ち込んだので、和解はおかしいという  消極的な受け止め方が当事者間にあるという認識であろうか。 ○ 多くはないと思うが、そういうふうに捉えられることもあるのではないかというぐ  らいの認識であるが、主としては法律上きちんと整備した方が良いのではないかとい  うことである。 ○ 和解というのは、法律に書いたからといって、当事者が自主的解決をするつもりに  ならなければできないと思う。根拠条文を置けというのは分かるが、置けば何か違っ  た結果が生まれるのかというと、違うのではないかという感じがする。 ○ 確かにおっしゃるとおりだと思う。制度上とか、法律効果上、何か飛躍的に変わる  ということではない。ただ、労働委員会の果たすべき役割といったものを考えるとき  に、現にあったし、これからもおそらく重要な位置を占めるであろうものが、法律と  して出来上がっている制度の中に何も触れられていないというのはいかがかというふ  うに思う。そうすると、いつまで経っても判定的で迅速な処理を目的とする行政委員  会だということになる。それだけではないのだというところを、紛争当事者だけでは  なく、ありとあらゆる人、労使を含め、紛争当事者の周りにいる、紛争に至らない人  たちにも、きちんと明らかにすることが必要なのではないかということである。 ○ 制度の果たしている役割を、一般に正しく認識してもらうというのは結構だと思う。 ○ だから、法律に位置づけるといっても、本当にざっと書かれるものであるかは、お  そらく詰めれば議論になるので、和解という言葉が位置づけのために出てくるという  程度になるかもしれないし、そこは議論してみないと分からない。そのくらいの気分  であるということである。 ○ それを置く方が、労働調停との関係でも良いに違いないと思う。 ○ 労働委員会が実際上不当労働行為について、和解という意味で非常に重要な役割を  果たしてきているので、それに対する一定の法的な裏付けを与えようということであ  れば、それに強く反対する理由はないと思う。ただ、委員も言ったように、それで何  か変わることがあるかというと、ないかも知れない。若干あるとすると、何も知らな  い使用者が不当労働行為で呼び出されたときにびっくりするが、法律を見ると和解も  できると書いてあるということでの影響というのはあるかも知れない。もう一つは、  労働調停との関係での整理は明確化しうると思う。ただ問題は、和解ということの一  言を入れるというだけで良いのかどうか。つまり、それだけに止めるのか、書いてし  まうと手続的なところも何かを考える必要がないのかという問題はあるのかなという  感じがする。 ○ 最終報告の時点ではそのあたりも少し議論しないといけないと思う。 ○ 今までのような形で、判定機能の中で何となく和解をやるということでいけるのか、  和解ということで何か判定とは違う、オフィシャルな手続を考えるということなのか、  その整理はしないといけないと思う。 ○ 一つは、和解もけっこう時間がかかってしまっていることがある。これをどうする  か。それに、和解が必ず成立するというわけではないので、そうすると切り替えて命  令ということになるので否応なしに長くなってしまう。このあたりについてもどうだ  ろうか。和解に関してももう少し整理の余地があるのではないか。今はただ職人芸的、  慣例的にやっているという側面が強い。ただ、条文の形で書くのはすごく難しいと思  う。特に法律の上では一行、一条書くかどうかというところだと思う。 ○ ただ、もう一つの間接的効果としては、法律に書いていると、期日をこれまでは調  査期日ということで入れていたが、今度は記録上和解期日にしなさいというふうにす  ることができるかも知れない。そうすると、統計上の整理がかなりできると思う。 ○ それはあると思う。それからもう一つは、代理人等が頑張っている当事者を説得す  るときも、今よりはやりやすくなるのではないか。あまり大した意味はないかも知れ  ないが。 ○ それは少しあるかも知れない。 ○ 今、話が出たのであまり言うことはないが、今回の不当労働行為制度の検討会は、  審査制度ということなので、不当労働行為の立法性の問題というのはあまり議論にな  っていない。救済の在り方の問題は議論になっていないので、今の時代に沿った不当  労働行為の救済の在り方というものとの関係で、一方では和解のタイムリミット、も  う一つは例えばもう少しドライな金銭的解決の方法で、当事者に対して迅速にやると  いうような、別な議論の余地が残っているのかなという感じがする。 ○ 命令の裁量に限界があり、損害賠償的なことはできないということになっている。  しかし、金銭でやれば、ずいぶんやれるのではないかというものもなくはない。 ○ 確かに、例えば6割の限度でというような、そういうことができると、ずいぶん違  うと思う。 ○ アクセス・メリットがあるための不当労働行為制度、労働委員会はそのためにある  ということだと思う。その点からもう一度議論すべきなのではないか。今回は審査制  度が対象であるから、あまり議論の対象にはならないと思うが。 ○ 前からの積み残しで言えば、条件付救済命令みたいなものも工夫の余地の検討が必  要だと思う。今はみんなが最高裁の判断を念頭に条件付命令を全く出さない。あるい  はそれを少し変形したような条件付命令でも良いのではないかと思うが、どうも腰が  引けてしまっている。現実に最も公正な救済のやり方というのは、場合によって、片  方がこれをやったらもう片方はこうしなさいというようなことも十分あり得ると思う。  法的根拠があれば出せるということだと思う。考える余地はある。ただ今回は審査制  度の在り方であるのでということである。 ○ 和解というか、調整機能と判定機能と二つあるわけだが、この機能が混在している  のは気持ちが悪い。法制度上二本立てにするというのは難しいだろうか。調整をやり  たい人は調整、はじめから審査をやりたいという人は判定の方に行き、その中で和解  をやるのも良いという形でできれば、統計上も良いのではないか。 ○ 実態としてはそういう面がある。最初にまず調整事件で入ってきて、あっせんをや  ったのだが結局駄目で、それが不当労働行為事件として再度上がってくる。いきなり  不当労働行為事件になるものもあるが、まず調整でうまくいかないということになる  と、それが不当労働行為に上がってきて、それがしばらくすると和解しようというス  テップになる。いろいろなパターンがあるので、きれいに分かれるというのであれば  良いのだが、あまりがちがちにすると、今度はある意味で労働委員会が持つ柔軟性と  いうのが生きなくなってしまうのではないか。 ○ いろいろ議論はあろうかと思うが、今日はざっとでも第4まで見ていただきたいの  で、問題点の部分はそういう指摘を受けたということで、いよいよ第4の見直しの部分  に入ろうと思う。ご意見をいただければと思う。 ○ 一番最初に読んだときの感想を申し上げようと思う。特に6ページから7ページにか  けてであるが、これはこれまでも言われてきたことなので、それをまた書くのはちょ  っとという感じがする。 ○ 言われては来たけれども、やっては来なかったことである。今度はやるということ  ではないか。 ○ これは中間整理であるので具体的に書かなくても良いと思うが、例えば、規則で不  当労働行為の申立書に書くべき事項があるが、一番最後には「不当労働行為を構成す  る具体的事実」としか書いていない。あれを規則の中で、もう少しこういうことを書  けというのを具体化するとか、前から言っているように、申立書の様式を作ってしま  うというようにするのはどうか。 ○ そのあたりは中間報告なので、最終報告ではできるだけ盛り込みたいと思うが、中  間報告ではそのように読もうと思えば読めるという程度にせざるを得ないのかなと思  う。 ○ それはおっしゃるとおりだと思う。そういうことを考えながら、どこまで書くかと  いうことだと思う。 ○ 特に、最終報告でいきなり出てくるというわけには行かないので、中間報告の中で  頭出しというか、少し布石を打っておく必要がある。その点について抜け落ちていな  いか、それから最終報告でこれは落とすことになるのではないかというものが紛れ込  んでいないか。このあたりを中心に議論していただきたい。 ○ 手続の改善と体制の改善ということが出ているが、体制の改善というのは、むしろ  研修であるとか、人材育成、運営面であるというふうに理解すれば良いのだろうか。 ○ 運営面ということである。今度は実現するということであろう。 ○ そうすると、例えば、審査手続の改善というところでは、次の7ページで出てくる  「争点整理や証拠の認定等を的確に実行できるようにする観点から」というところが、  手続の改善の方に出ていなくて、突然体制の改善の方に出てきている。たぶん、手続  の改善と体制の改善がある程度リンクする、車の両輪という形で書いてあると、非常  に一貫性があるという気がする。例えば、6ページの方から行くと、事件処理という  観点からすると、争点整理や証拠の認定等に関するあたりの公益委員の権限、あまり  具体的には書けないと思うが、そのあたりをもう少し具体的に匂わせられないかとい  うことである。 ○ 趣旨は分かったので、次回までに少し考えるということにする。その他にも、言い  っぱなしで結構であるので、どんどんおっしゃっていただきたい。 ○ 委員も言ったが、当事者主導の運用改善というのは、強烈すぎるのではないか。そ  れから、争点整理程度のことは出ないとおかしいと思うが、結局のところ、6ページ  の下から2行目、3行目で何が出てきているかというと、「公益委員の権限や審査の実  施方法に関する条件整備」である。これは条件整備と書こうが、争点整理と書こうが、  法律に書いても条件整備がないと実務というのは全然変わらない。民訴でも刑訴でも  戦後早い時期から集中審理の規定を置いていたが、全然変わらなかった。規定はあっ  た方が良いが、あれば変わるというものではない。大事なのは条件整備である。ここ  までであれば今までも言ってきたことであるが、問題は条件整備が何かということだ  けである。それがないと何も言っていないのと同じであろう。今後は本気でやるとい  っても、やることが何もないということになってしまう。あるのであれば、それを少  し匂わせることを書いておいた方が良い。 ○ これで何がどう変わるかということはあるが、体制の強化の点については、準司法  にふさわしい体制という観点から、公益委員についての高度の専門性を確保する必要  があると思う。また、事務局について労働関係の専門性をどういうふうに確保するか。  準司法的と言われる以上、この二つが必要であると思う。そういうことをもう少し具  体的な表現で書ければと思う。 ○ 体制というところでは研修の話も出たが、あとは具体的にどういう方向ができるか、  この段階で言えるかどうかもわからないが、常勤制の導入ということも一つの案とし  ては考えておいても良いと思う。もう一つは、どちらかというと精神的、あるいは哲  学的なことなのかも知れないが、労働委員会の不当労働行為審査というのは法令の解  釈・適用であるという出発点の認識が必要であると思う。つまり、事実を認定して法  令を解釈・適用する作業になるということであり、それに適応できる能力・体制の要  請が要請されるということは書いておいて良いのではないか。 ○ 中労委の再審査制度は維持することを前提として、例えば法律審にするという考え  方もあるということを示していただければありがたい。もう一つは、前に意見として  申し上げたことがあると思うが、労働者側の言い分にせよ、使用者側の言い分にせよ、  結論がはっきりしているものについては、書面審理方式を導入するというふうにする  のはどうだろうか。 ○ 書面審理で良いものは書面ということもある気はする。 ○ ただ、規則を読む限り、現行法令でもできないわけではない。 ○ 審問はやらないといけないことになっているが、少なくとも弁明の機会等に関して  は、書面でも良いということも考え得るのではないか。口頭でないといけないという  わけではないし、書面審理を可能にするというのは一つの考え方としてあるという気  はする。 ○ おっしゃるとおりだと思う。ただ、繰り返して言うと、地労委ではやたらに審問の  期間が長い。20回とか25回というのもある。そうすると、5年も6年もやることになる。  しかし、中労委の場合は審問をやっても1回か2回である。問題は結審後であるので、  書面になったところで他の部分を変えない限りは変わらない。書面になれば少し速く  なるという気もするが、その程度である。 ○ 私もたぶん委員と同じ意見である。仮処分の場合だと、書面審理でやるときと審尋  でやるときとあるわけであろう。要するに、それと同じような形のことができればと  いうことである。 ○ 私も趣旨には全然反対ではない。   他に何かあるだろうか。 ○ さっきの取消訴訟との関係については残した方が良いと思うが、そこには具体的方  向性は書けないと思う。例えば、こういうオプションは考えられるかも知れないとか、  検討に値するといった感じで、いくつか書いておくというのが一つの手かと思う。 ○ 最後の部分の、労働検討会に関わるところが3行というのはちょっとどうかと思う。  ただ、方針をどうするかはともかく、論点となる三つそれぞれ問題の様相がやや違う  気もする。例えば審級省略は事件全体の迅速化との関わりで検討されるものだし、実  質的証拠法則と新証拠の提出制限については、それぞれ次元が別で、例えば新証拠の  提出制限については労働委員会における審査を場合によっては無駄にしかねないとい  う問題意識があることぐらいは示しておいても良いと思う。 ○ それを新しい証拠との関係でいうと、さっき言った、中労委の役割との関係で、中  労委の実質審査がいらないとすると、そこに何とかして入れておかないと、初審では  証拠が出てこず、中労委は事実審をやらないからもういいということになり、裁判所  で証拠を出すという傾向がより強まる可能性があるので、そこはリンクしておいた方  が良いのではないか。 ○ ヒアリングでも使用者側が言っていたのは、地労委は信用できないと。地労委の取  消訴訟を地裁に持っていくにも、地裁も信用できない。そうすると、中労委でやりた  い。さらに中労委も信頼できない場合は東京地裁でやりたいと、こういう経路で行く  こともあると。こういう選択は、確かに当事者としての訴訟戦略としては十分考えら  れるとしても、これをそのまますいすいとパスさせるというのは、制度の在り方とし  ていかがなものかという問題もある。 ○ 事実審を一回限りにする場合の眼目は、一審充実である。だから、証拠提出の先送  りはおかしい、中労委では法律判断だけであるということにしてはどうかということ  である。判例理論と労働法あるいは労働委員会の法律解釈が対立している部分で判断  が分かれるのは別として、事実認定とか、判断の論理過程が拙いために敗れるという  のは、絶対になくさないといけない。それがなくなって信頼度が高まれば、何でも訴  訟に行くということはなくなると思う。 ○ 労働委員会の場合、悩ましいのは使用者側に引き延ばしたいというインセンティブ  があるということである。そうこうしているうちに定年でいなくなるとか、組合がつ  ぶれていなくなるとかいうことがある。五審制批判というのは、もっぱらそこの部分  によるというのが一つあると思う。いわゆるやり得ということである。 ○ 仮処分であっても、もともと対立当事者構造というのは、被申立側は一般的に延ば  すことに意味がある。しかし、一審を充実してこれだけだと言われれば、やらないと  いけないことはしないといけないということになる。それでもやらない者は残る。そ  れは制度が変われば変わるということではない。だらだらやることを承認するかどう  かというのは、こちらの腕っ節である。要するに審査指揮、黙っていて早くなるわけ  がない。訴訟だから楽に速くできているというわけではなく、大変な努力をした結果  として非常に早くなってきたのである。   それから、6ページの下から7ページにかけて書いてある、「審査が長期化した場合  に…」というのは、どういうことなのであろうか。 ○ そこについては、他の制度にあることであるが、行政処分を求めたのに処分がない  場合、次のステップに行けるような仕組みが導入されている例があるので、例えばそ  ういうことが考えられるのではないかという問題意識である。 ○ そうすると、これは具体的にどうするということであろうか。 ○ 地労委の審査が遅れていれば中労委に行け、中労委、労働委員会が遅れていれば裁  判に行けるということである。 ○ オプションを与えるということであろう。 ○ 住民訴訟のときの監査請求のようなものであろうか。それで飛ばしてしまっても良  いという考えであろうか。 ○ 例えば、ここで半減という目途を出す。ちょうど今度の司法制度改革のように2年  という期間があって、それを越えているというとき、当事者が納得しているというの  であれば良いが、急いでほしいのに、何らかの理由で遅れている場合には先へ行ける  ようなことはどうかということである。 ○ そうすると、それなら中労委を法律審にすればいいのではないか。それから、遅い  場合は飛ばして裁判所に行っても良いというのは、不当労働行為審査制度の充実・改  善ということを言っていて、その中で選択肢に残るというのはどうなのだろうか。や  はり、ちゃんと早くやりますということで一筋でないとおかしいのではないか。 ○ 他の行政処分だと、まず原処分があって、不服申立ての審査請求のところで、答え  が出ないから飛ばすという話になるのであるが、不当労働行為申立てだと原処分がな  いので、地労委・中労委を飛ばして裁判所に行ったときに取消訴訟はどういうことに  なるのであろうか。不作為の違法確認訴訟か、あるいは命令請求といった無名抗告訴  訟になるのか。 ○ 行政庁がそれを言い出すというのはどうか。やはり早くやるということでないとお  かしいのではないか。 ○ 全く処分が出ない場合であるが、これも最初から裁判に行く道もあるわけだから、  そういう選択肢を採られる方はそれとして、裁判ではできない労働委員会の機能とい  うのを維持しつつ、救済をなるべく早く実現するということを考えたときに、当事者  にオプションがあってもいいのかなという意味である。 ○ ただ、中間整理の段階では、誰が読んでも何のことだかわからないように書いてあ  るのは、今のような点も最終報告までには議論しないと駄目だと思うからである。原  処分がないのにどうするのだというのは、まさにその通りである。地労委も中労委も  何もしなかったときに、東京地裁に行ってどうするのか。不当労働行為に関する法そ  のものをかなり大きく変えないと、とてもではないができない。それだけでなく裁判  所自体も変えないといけない。 ○ 独立行政委員会にやらせている処分というのは、非常に特殊で大事だからやらせて  いるわけで、遅れているだけで飛ばすというのはどうなのだろうか。 ○ 全て飛ばすというのはあり得ない気もするが、一つ飛ばすのもあり得ないのかどう  かという議論である。 ○ それは労働委員会での学者チームの委員会のときに議論して、例えば再審査必置に  したときには一定期間内に再審査命令が出なければ、飛ばして裁判所というのは必然  的に組み合わせないと駄目であろうという議論があった。 ○ それから、仮に地労委で2年とすると、2年経って中労委に来たら優先処理というの  がないとおかしくなるので、かなり全体の仕組みは工夫をしないといけないのではな  いか。いずれにしても、いろいろな工夫がいるだろうというふうに頭出しをしておい  て先に行って検討したいと思う。他にも工夫はあると思う。 ○ 執行力付与というアイディアもあったのではないか。 ○ しかし、それは具体的すぎるのでまだ書けないと思う。 ○ それでは、時間があと5分となったので、今日皆様からいただいた論点を事務局が  勘案し、かつ当初の姿勢である、今度は実行するということ、実行できるものに向け  て制度の取組みを考え、もちろんそれが全体として、労働委員会の特別な意味を再確  認するもの、先ほどの和解などはADRとしての位置づけという問題もあるので、そう  いうものも含めながら、さらに皆様に議論していただきたい。出来たら今回と同じよ  うに事前に資料を送っていただいた方が良いと思うので、よろしくお願いする。   何か他にご注文はあるだろうか。では、次回以降の日程について事務局から説明い  ただく。 ○ 第15回は2月14日(金)の14:00〜16:00、第16回は2月28日(金)の  10:00〜12:00を予定している。 ○ それでは、よろしくお願い申し上げる。本日はどうもありがとうございました。                                      以上 照会先 政策統括官付労政担当参事官室 法規第二係 村瀬又は朝比奈 TEL 03(5253)1111(内線7752)