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第12回 社会保障審議会年金資金運用分科会

議事録(案)




平成14年12月13日


第12回 社会保障審議会 年金資金運用分科会議事録

日時平成14年12月13日(金)10:00〜12:15
場所都市センターホテル「コスモスホール」
出席委員若杉分科会長、内海委員、大和委員、小島委員、杉田委員、高梨委員
竹内委員、福井委員、吉冨委員、吉原委員、米澤委員
議事 (1)年金改革の骨格に関する方向性と論点について
(2)年金積立金の運用の在り方についての検討
(3)その他

○ 泉運用指導課長
 それでは、ただいまより、第12回社会保障審議会年金資金運用分科会を開会いたします。
 まず資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。
 資料 1「第11回社会保障審議会年金資金運用分科会議事録(案)」、資料2−1「年金改革の骨格に関する方向性と論点について」、資料2−2「年金改革の骨格に関する方向性と論点(要約)」、資料2−3「年金改革の骨格に関する方向性と論点」、資料3「論点案」、以上でございます。
 よろしいでしょうか。
 なお、前回までの配布資料を、ファイルにまとめて机の上に置かせていただいております。適宜ご参照いただければと思います。
 委員の出欠の状況でございますが、本日は、竹内委員が遅れていらっしゃるようでございますが、全員ご出席の予定でございます。ご出席いただいております委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議は成立をいたしておりますことをご報告申し上げます。
 では、以後の進行につきましては、若杉分科会長にお願いしたいと思います。

○ 若杉分科会長
 本日はご多忙の折、お集まりいただきお礼を申し上げます。
 議事に先立ちまして、第11回社会保障審議会年金資金運用分科会議事録については、この場で確定させたいと考えておりますので、ご意見がありましたらよろしくお願いいたします。皆様のお手元に議事録の案がありますけれども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 特段、ご異議がないようですので、議事録につきましては、このとおり決定したいと思います。

(1)年金制度改革の骨格に関する方向性と論点について

○ 若杉分科会長
 それでは先に進まさせていただきます。本日の分科会では、まず12月5日に厚生労働省が発表した「年金改革の骨格に関する方向性と論点」について報告を受けた後、前回に引き続き「年金積立金の運用の在り方について」、第4回の検討を行いたいと思います。
 では、初めに「年金改革の骨格に関する方向性と論点」について、事務局より説明をお願いをします。総務課長、よろしくお願いします。

○ 高橋総務課長
 総務課長の高橋でございます。おはようございます。座ってご説明申し上げます。
 「年金改革の骨格に関する方向性と論点」、これは本文は資料2−3でございます。全部で150 ページを超えるもので、真ん中にピンク色の中扉が入ってございますけれども、前70ページが文章編、その後は数値、いろいろな試算がついております。
 これからご説明申し上げますが、説明はこの分厚いものではなくて、お手元にございます資料2−1、見開きでA3の大きい紙でございますが、これに沿って、あと主要な点につきましては資料2−2、要約でご説明をさせていただきます。
 まず「今回の年金改革の骨格に関する方向性と論点」、このペーパーの性格づけでございますが、要約の一番最初にございますように、再来年(平成16年)の年金改革に向けて、これまでの各方面の議論を参考にし、厚生労働省において、改革の骨格に関して今後の議論のたたき台としてとりまとめたものでございます。これは論点ごとに必要に応じて選択肢を示しておりまして、今後の幅広い議論の参考としていただきたいということでございます。
 再来年(平成16年)に予定されております年金改革の基本的視点ということでございますが、5点ほど挙げてございます。
 (1)若い世代を中心とした現役世代の年金制度に対する不安感、不信感の解消
 (2)少子化の進行等の社会経済情勢の変動に対し、柔軟に対応でき、かつ、恒久的に安定した制度とすること
 (3)現役世代の保険料負担が過大にならないよう配慮することに重点を置きつつ、給付水準と現役世代の保険料負担をバランスのとれたものとすること
 (4)現役世代が将来の自らの給付を実感できる分かりやすい制度にすること
 (5)少子化、女性の社会進出、就業形態の多様化などの社会経済の変化に的確に対応できるものとすること
 特に取り組むべき重要な課題として2点挙げてございます。これは前回の平成12年の改正の宿題になっているわけでございます。
 (1)前回改正法の附則で規定されております基礎年金国庫負担割合は現在は3分の1でございますが、2分の1への引き上げの問題。これは将来の最終保険料水準を過大にしないように、給付も適切な水準を保つためには不可欠の事項である。
 (2)現在凍結になっております保険料水準についての凍結の解除が必要であるということを言っております。
 2枚目にまいります。年金制度の改正の度に制度の体系について常に議論になってくるわけでございますけれども、今回これにつきまして、現行制度体系でいくのか、あるいは違う道をたどっていくのか、こういった議論が年金部会においても大分出てまいりましたけれども、その点の議論の整理をいたしております。
 大きく現行制度の体系、各方面の議論、次の改革での方向ということで三つに分けておりますが、現行制度体系は、ここに説明があるように、社会保険方式で1階は定額の基礎年金、それでサラリーマン向けに所得比例年金がある賦課方式を基本にして積立金を保有している、こういった特徴があるわけでございますが、これまでの各方面の議論を整理いたしますと、大きくは三つに分けられるだろうということでございまして、基礎年金を税方式とする体系、これは1階の基礎年金を国庫負担2分の1ではなくて100%税財源による制度体系にしてはどうかという問題提起であります。これにつきましては詳細は省きますが、ここに記載のような論点があるということでございます。
 それから1階の定額年金に公的年金の役割を絞る。報酬比例部分については私的年金、プライベートな年金に任せてはどうかというような意見もございます。これにつきましても、ここに書いたようないろいろな論点があるということでございます。
 三つ目は、最近のスウェーデンの例を参考にしていろんな議論が出ているところでございますが、今までの二つが1階の基礎年金を重視した考え方でございますけれども、こちらの考え方は基礎年金を廃止をする。2階の報酬比例年金である厚生年金がむしろ自営業者、サラリーマン全体に広がっていくということでございますけれども、ここに書いてございますように、近年の就業形態の多様化などを踏まえて一本の所得比例年金を創設する。自営業者を含めて所得のある者がこういった年金に入るということになりますと、低所得者・無所得者については年金は非常に小さい、あるいはないという問題が起きますので、税財源による無拠出制の補足的給付を設けてはどうか、こういう考え方になるわけでございますけれども、これにつきましては、まず所得把握が適切に行わなければいけないというのがまず大きな前提条件あるわけでありまして、そのほか、ここに記載のとおりの問題があるということで、この三つ、いずれも今すぐ次の改正でこういった制度体系という議論にはつながらないだろうということで、今後ともこういった議論を進めていく必要があるわけでございますが、平成16年の年金改革の方向としては、一番下に書いてございますように、社会保険方式に基づく現行制度体系を基本として改革を進めていく。
 ただ、その際、基礎年金の国庫負担割合の引き上げ、あるいは国民年金における多段階免除制度の導入の検討、こういった措置を講じて制度の安定的な運営の確保を図っていくことが必要であろうといったことを言っております。
 16年に行います、特に給付と負担を中心とした制度の安定措置を講じて、その上でこういった制度体系論の議論を進めていくことが必要だろうと、こういうことを中では言っております。
 では現行制度体系を一応基本とするということでございますけれども、ではその中で今後どういう改革を必要としているのかということを要約では3ページ以下に書いてございます。
 記載しておりませんが、前回の平成12年の改正では、今後の人口見通しなどを踏まえまして、厚生年金においては、今後、年間の収入に対して最終的な保険料水準は年収の2割という水準で将来とも安定的に運営できるだろうと。これは国民年金は当時の価格で1万8,500円の保険料水準でやっていけるだろう、こういうような見通しの上で制度改革を行ったわけでございますが、その後の推移、改正をしてから2年半ではございますが、今年の1月に出ました人口推計によれば、今後さらに少子化は進む。それから、平均余命の延びも著しいものがございまして、前回の改正が前提としていた諸条件のいくつかが満たされなくなっているということでございまして、そういった意味で再度見直しをしなければいけない。特に給付と負担の関係においては見直しが必要となってきたということでございます。
 それで、今回の場合には、前回、制度の中のいろんな側面で改正を行っておりますので、次のわずかな年数しか経っていない改正におきまして、同様のことをするのか、あるいは従来とかなり発想を変えた給付と負担の見直しのやり方をとるのかどうかということがまず第1にあるわけでございます。それがこの3ページに書いてあることでございまして、まず給付と負担の見直しの基本的な考え方につきまして、今までのやり方、これまでの方式、ここでは方式Iと書いてございますが、5年ごとの財政再計算の際に人口推計や将来の経済の見通しの変化等を踏まえて、給付水準や将来の保険料水準を見直す、これは従来のやり方でございます。これはどちらかというと給付水準に重きを置いて、現在は例えば新しく年金をもらい始める方が現役労働者の手取りの収入の6割、正確には59%ということでセットしておりますが、約6割の水準で年金をもらえるようにしようと、そういう考え方で給付水準をセットをしております。これは平均的にということでございますけれども、そういった給付水準を維持する。そのためには保険料はこれぐらい必要であるということで、まず給付の水準を決めて、その上で所要の保険料を考えると、こういうやり方が今までのやり方であるわけです。
 これに対しまして新しい方式、方式IIというのは、発想を逆にいたしまして、今現在はまだ低い水準でございますから、最終的な保険料水準を法定をして、そうしますと将来の働く方の人数の予想あるいは所得の高さを想定すれば保険料収入が大体決まってきますので、入ってくる保険料収入の範囲内で給付を行う。こうしたことを基本にして、その中で少子化等の社会経済情勢の変動に応じて給付水準が自動的に調整される制度を組み込む、これは私ども保険料固定方式と呼んでございますけれども、保険料水準を固定して収入をまず決める。給付の方はそれに従って調整されていくという従来とは逆の発想でのやり方をとってはどうかということを提案をいたしております。この二つは今までのやり方と新しい方式の選択肢の関係にあるということでございまして、どっちの方向でいくのか、これは今後大いに議論をしていただきたいということでございます。
 新しい方式につきましても、年金部会の方ではどんな考え方があるのかということは、これまでご説明したところでございます。
 では、この二つの方式に従って実際の数字はどうなるのかということを見たものが4ページ以下のものでございます。1枚紙では右の方のところに入ってきますが、まず、従来の方式につきましては二つやり方があると思います。一つは、先ほど申し上げた現役労働者の水準の59%、約6割の水準に給付水準を設定する。これを維持する。これは変えない。
 では、それを変えない場合に実際の保険料負担はいくらになるのか。今現在の少子化の見通し、前回よりも経済前提を少しきつめにして、より低成長の時代を想定した、そういった前提で、最終的にはどれぐらいの保険料水準になるのかというものを見たものが4ページの上の方式I−1、給付水準維持方式でございます。
 表の中をご覧いただきますと、これはやっていることは全部同じであります。給付の方は現役の約6割の水準でございますから、給付の水準は全部同じでございますが、ただ、人口推計の前提あるいは経済前提が少しずつ違いますので、数字がいっぱい並んでおります。
 まず前回の平成11年の財政再計算では、厚生年金の最終保険料は19.8%と想定をいたしておりました。国民年金の保険料は平成11年の価格で 1万8,500円でございます。人口推計は今年1月に出ましたけれども、それに対応した試算を行ったものがその真ん中でございますが、22.4%、2万1,600円の水準に、これは少子化の影響で上がっているということでございます。ちなみに合計特殊出生率、1人の女性が一生涯に産むお子さんの数がどれぐらいかという前提でございますけれども、前回の財政再計算の人口推計では1.6人という前提となっておりましたけれども、新しい人口推計の中位推計では1.39人ということになっております。したがいまして、19.8から22.4%のジャンプというのは、少子化なり、あるいは平均余命がさらに延びた影響である。これはあくまで予想でございますけれども、人口推計上の変化、前提が異なることによる違いということでございます。
 さらに今回の試算は、経済前提もさらに厳しめにしておりますが、全体として最終保険料は23.1%、2万500円。参考として国庫負担3分の1の数字をつけておりますが、3分の1の場合には厚生年金は26.2%、国民年金では2万9,300円、これはご夫婦で約6万円の負担ということになるわけでございます。
 もう一つの方式I−2は、給付水準、現役の59%という水準を少し下げていこうという格好になるかと思います。そうすると保険料負担は今申し上げましたような数字ほどには上がらないということになるわけでございますが、この場合には給付水準の見直しが必ず伴いますので、これまでの制度改正で常に議論をしてまいりました支給開始年齢の見直し、基礎年金の水準、厚生年金の給付乗率の見直し、こういったものが必ず伴います。これにつきましては、こういった給付内容の問題はさらなる議論が必要であろうということで、特に水準の数字は今回は試算をいたしておりません。ただ、給付内容の見直しをやれば、今しがた見ました給付水準維持方式に比べて最終保険料の水準は当然落ちるということになるわけであります。
 5ページにまいります。では、もう一つの新しい保険料固定方式、負担の最終保険料の負担、負担の水準に重きを置いてそこに一応歯止めをかける。その保険料収入の範囲内で給付を自動的に調整するというやり方の数字でございます。
 上の四角の「○」の二つ目に書いてございますが、自動調整というのはどういうふうにするのかということでございますけれども、少子化などの社会経済全体のマクロ的な変動の実績あるいは将来見通しを賃金や物価の上昇による現行の年金給付の改定法に反映させることによって、急に給付水準をすとんと落とすとかそういうことではなくて、時間をかけてスライドを調整していき緩やかに給付水準を調整していこうというような考え方をとっております。この場合には少子化などの状況が好転すれば給付水準は逆によくなっていきます。
 では具体的にどういうふうにやるのかということは下の四角に書いてございます。スライドのやり方を調整するということでございますが、給付体系の基本には触らないということでございます。
 スライドも二つのやり方があるわけでございまして、新しく年金をもらい始められる方については、厚生年金の場合には、過去の各個人の毎年の賃金を現在の水準に置き換えるという賃金の再評価をやっております。例えば、昭和52年ぐらいですと、今かなりの水準になっていますけれども、例えば昭和52年の賃金を今の水準に置き換えるときには、この25年間の毎年の賃金上昇率の累積で現在の水準に置き直している。平均賃金が毎年少しずつ上がっているわけですけれども、毎年の賃金上昇率の累積で今の水準に置き直しているということをやっております。基礎年金も大体ほぼ似たような数字で政策改定を行っております。
 一方、もらい始めた方につきましては、毎年の物価上昇率で翌年度引き上げている。その数字どおり引き上げるという作業をやっています。 これらのスライドのやり方について調整をしていこうということでございまして、厚生年金の賃金の再評価につきましては、今までは賃金上昇率、これは言うまでもなく1人当たりの賃金上昇率ということになるわけでございますが、それを1人当たりではなくて、総賃金、世の中の全体の賃金総額で改定をしていこうということでございます。
 具体的にどういうことになるのかといいますと、頭の中で計算をしていただければいいのですが、総賃金というのは、1人当たりの賃金に労働力人口を掛けたものでございますから、今までは1人当たり賃金の伸びに合わせて賃金のスライドをやっていたわけですけれども、総賃金の伸びで改定をするということは、労働力人口の増減のファクターも加わってくるということでございまして、当面は労働力人口減少が傾向にございますから、今までのように、労働者1人の賃金上昇率だけでスライドをしていくのではなくて、そこに労働力人口の増減を加味して、例えば減少する場合にはその分だけちょっとスライド率を減じるという格好になりますけれども、そういった数字で改定をしていくということでございます。
 既裁定の年金改定につきましても、並びということになるわけでございますが、同様の方法で、物価変動から労働力人口の減を差し引いてやるというようなことを考えたらどうか。これはあくまでも試算の前提ということで一つの試案ということになるわけでございますが、そういったやり方を一つ頭の中に置いて、この保険料固定方式の自動調整のやり方というものを考えております。
 では、具体的にどれぐらいの労働力人口の減になるのかという見通しが左の下の(参考)に書いてございます。2025年度まではそれほどの影響はございません。毎年度労働力人口は年率で0.3%の減です。ですから10年たっても3.数%減にしかならないということでございますが、2025年を過ぎますと、今、足元で見ております少子化が労働力人口に大変大きい影響を与えてきまして、中位推計で申し上げれば、年率で1.2%の減少ということになりますから、10年ぐらいたちますと労働力人口は1割以上減っていると、こういう状況になるわけでございます。
 この率を毎年今の使っているスライド率から引いていって、スライドそのものを調整して、給付水準を調整していってはどうかという自動的なやり方を考えているということでございます。
 その結果どうなるかというものは6ページ以下にいくつか例示をしております。新しいやり方でございますので、いっぱいグラフが付いておりますが、いくつかの前提を変えたもののいろんなバリエーションを付けてございます。
 6ページは人口推計中位、お子さんをお一人の女性が1.39人ぐらい産むという前提の推計で、経済前提としては物価上昇率が1%、賃金が2%、利率が3.25%という前提でございますが、国庫負担2分の1の前提でやっております。最終保険料は20%に上がっていくというものでございます。
 ちょっと本文の方の31ページをお開きいただきたいと思います。保険料固定方式の場合の保険料の引き上げのスケジュール、これでセットをしようと、こういう格好で固定をしようという保険料引き上げの、もちろん試算上の想定ということでありますが、この試算の前提で保険料の階段を書いてございます。上の方が厚生年金で下が国民年金でございますが、厚生年金をご覧いただきますと、赤で書いてございますが、大きく階段で5年ごとに上がっていくものは前回の財政再計算の保険料の階段でございます。これで見ていただきますと、国庫負担2分の1という前提でございますが、2019年度に最終保険料に到達をして、19.8%で将来ともやっていけると、こういう階段を描いたわけでございます。
 それに対しまして今回の保険料固定ケース、保険料の階段を先に書いているということでございますが、これを先に決めて給付水準を自動調整していくことになりますけれども、毎年少しずつ上げていきまして、2022年度に20%に到達して、それ以降は20%に固定をするという保険料引き上げの計画を前提として考えているということです。
 では、この保険料引き上げスケジュールの下で、給付水準はスライドを調整をしていくというやり方をとるとどういうことになるのかというものを見たものが6ページ以下のグラフであります。
 要約の6ページでございますが、棒は黒い方が4本立って立っております。これは名目賃金の各年における名目額で書いてございます。これは賃金は先ほど申し上げましたように2%ずつ伸びていく前提でございます。
 それに対しまして、モデル年金額を白い棒で書いてございます。これはその年に新たに年金をもらい始める方々の水準を書いているということでございまして、その年に新しくもらい始める方々の過去の賃金の再評価というのは、過去の毎年の賃金上昇率ではなくて、それを労働力人口の減で調整したものでありますけれども、実額対比で現役に対してどれぐらいのモデル年金額になっているかというのを見たものが下の数字、所得代替率と書いてございますが、現在は59%でございますけれども、2025年時点では、これから二十数年かけて緩やかに調整されるわけでございますが、56%。
 その後、先ほど2025年以降は労働力人口の減はかなり大幅になっていくということを数字でご覧いただきましたが、2025年過ぎますと少しペースが上がりまして、7年間の間に52%に調整をされている。2032年でスライドによる調整の期間は終わります。終わるということはどういうことかといいますと、これ以降はそういったスライドの調整措置をとらなくても収支均衡が大体めどがたつということでございまして、2032年以降は新しく年金をもらう方は賃金によるスライド、年金を受け取っていらっしゃる方は物価によるスライドという通常の方法に戻れるということでございますが、戻れるのは2032年ということでございますけれども、52%の水準。以降は52%の水準で推移できるというものでございます。
 これは基本的なケースでございますが、国庫負担を上げなかった場合、どういうふうになるのかという数字を7ページに書いてございます。あとは簡単に申し上げますが、この場合にはスライドの調整が2043年まで続きまして、最終的な所得の代替率が45%までいくということでございます。
 人口が変わったらどういうふうになるかというものは8ページでございます。この場合には高位推計、中位推計、低位推計。先ほど最初にご覧いだたいたものは中位推計でございますが、高位推計の場合には調整は2020年度で完了いたしまして、57%の水準にとどまる。これはお子さんは1.6人生まれるケースでございます。低位推計の場合には一生涯に生まれるお子さんの数が大体1.1人ということでございます。この場合には調整は2040年まで続きまして45%ぐらいの水準に落ちるということでございます。
 ちなみに女性が1.1人一生涯に産むというのは、大体世代から世代への交替が30年間隔だとすれば、30年たつとその年齢集団はほぼ半分に減っている。したがって、60年たつとその年齢集団は4分の1になっていると、そういう前提でございます。そういった場合には45%までいくということでございます。
 9ページには、最終的な保険料到達が20%でなくて、18%の場合はどうかということでございます。この場合には調整期間は2043年まで続きまして、45%。たまたま45という数字はいっぱい出てきますけれども、これは偶然の一致でございます。というような数字になっております。
 そのほか、11ページにまいりますが、そういった年金のスライド調整による水準の見直しということのほか、現在受給している年金の取扱いをどうするかということでございます。これまで見ました試算の前提では、新しい方式の場合には、例えば既にもらっている方については物価スライドから少し労働人口の減少を加味するといった場合には、現状に比べますと少し既裁定者への踏み込みを行っていくということでございます。もちろん考え方として、既にもらっている方については、現在の物価スライドを基本にして調整はしないのだという考え方もございますが、その場合には給付水準の調整はさらに続くということになります。これは本文の中で試算をいくつか付けております。
 それから年金課税見直しによる既裁定年金の見直しというの方法もあるだろうということでございます。
 そのほか、企業年金、確定拠出年金の拡充、育成。
 それから、分かりやすい年金制度という点につきましてはポイント制の導入。
 13ページにまいりますが、少子化あるいは女性の社会進出、就業形態の変化に対する対応。この点につきましては、詳細事項としては、次世代育成支援については、育児期間に対する配慮措置の拡充でありますとか、年金資金を活用した次世代育成支援策。これは具体的には本文の中では55ページになりますが、ここも議論していただきたいということで、四角で囲ってございますけれども、年金資金を活用した次世代育成支援策の検討ということで、中の本文を読み上げますけれども、「教育に伴う経済的負担の問題が少子化の背景にあると指摘されていることを踏まえ、学生が安心して学べるよう育英奨学金を充実させることと併せて、若者自身が資金を借りて就学し、社会の『支え手』となることを社会全体で支援するとともに、若者が公的年金を身近に感じられるよう、年金資金を活用した貸付制度も含めて新たな貸付制度についても検討する」ということでございます。もちろんこれは貸付ということになると、一つの運用形態にもつながるということでございます。もちろんこういった点につきまして今後議論していただきたいということでございます。
 それから、支え手を増やす取組。
 それから、女性と年金では、特に現在の3号被保険者の問題につきまして、制度改革案として四つの選択肢を示して提示をいたしているところでございます。
 そのほか、14ページにいくつかの点がございますが、これは本文をお読みいただくということで説明は省略をさせていただきます。
 以上でございます。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご説明に関して、ご質問等がありましたらお願いいたします。高梨委員、どうぞ。

○ 高梨委員
 試算に当たっては一定の前提条件がある、こういうことになっていて、22ページのところに書いてあるのですが、試算に当たっては、将来の被保険者数を推計をしているのだと思います。そのときに労働力率を使っていると思いますが、その労働力率というのはどういうものを使っているのか。
 それから、それとも関連をいたしますが、短時間労働者についての適用拡大という政策課題といいますか、検討課題があるわけですが、その辺の要素を推計に当たって入れているのか。
 二つ目には、年金の積立金の規模について、あるいは積立割合について、この試算の前提として入れているのかという点でございます。
 もう一点は、経済前提なんですけれども、83ページのところで、経済前提としてケースA、B、Cと、こういうことになっていて、ケースBですと実質賃金上昇率が1%、実質運用利回りが1.25%、備考のところで名目賃金上昇率が2%、物価上昇率が1%、名目利回り3.25%、となっているのですが、仮定の問題なんですけれども、実質賃金上昇率と実質利回りは変えないでおいて、名目をここで書いてあるものではなくて、若干上ぶれをするとか、下ぶれをするとか、例えば0.5%ずつ平行移動する、上に移動するとか、下に移動するとか、そういうことを行なった場合、保険料固定方式の試算にどういう影響が出てくるのか、こないのか。所得代替率でございますとか、調整期間ですとか、給付水準の調整率がどういうふうに変わってくるのか、あるいは変わってこないのか。今、そういう試算をやっていなければいないで、お願いだけはしておくと、こういうことになろうかと思いますが、もしわかっていれば、どんなふうになるのかという点について教えていただきたいと思います。

○ 若杉分科会長
 3点について質問出ました。数理課長。

○ 坂本数理課長
 第1点の労働力率は何を使っているかということでございますが、これは平成11年の財政再計算と同じ平成10年の職業安定局の推計のものを使っております。その際に短時間労働者への適用拡大を考慮に入れているかどうかというご質問でございますが、これについてはその点は考慮しておりません。
 それから、積立金の規模を試算の前提に入れているのかどうかということにつきましては、積立金の規模を一つのターゲットにして試算をしているということはございません。積立金はあくまで結果として出てくるという性格のものでございまして、その規模について試算の前提とはしておりません。
 それから、最後のご質問でございますが、経済前提につきまして、これを名目値として平行移動した場合に保険料固定方式の場合には影響が出るのかどうかというご質問でございますが、これにつきまして、本文の105ページを開けていただきたいと思いますが、表が出ております。この表の番号1のところを見ていただきたいと思いますが、これがいわゆる基準ケースで、2032年までスライドを調整していくと、最終的には所得代替率52%で落ちつきまして、それ以降は賃金スライドはできると、最初に出てきた基準ケースの結果でございますが、ここで一番左に給付総額の調整割合というのが出ております。これが9%と出ておりますが、保険料固定方式といいますのは、保険料の計画が固定されておるわけでございますので、保険料の収入総額、いわゆる収入現価でございますが、保険料の収入総額がある意味で固定されていると。それに対して現在のままであれば給付がいくらになって、給付の総額がいくらであるから、いくら調整しないといけないかというのを計算いたしましたものが9%という値でございます。
 経済前提を平行移動いたしました場合には給付現価というのは変わらないわけでございます。名目で大きくなったものを名目で大きくなったもので割返すということで、平行移動するのであればその差は変わらないということで、この給付総額あるいは保険料総額というものが変わってこないということになるわけでございます。
 また、給付におきましては、裁定されましてからは物価スライドということになっておりますが、賃金と物価の差も平行移動ということであればその差も変わらないということで、この給付総額が変わらないということから、保険料固定方式の場合でも、経済前提を平行移動しただけでは影響は変わってこないということが基本的には言えようかと思います。
 ただ、1点だけ注意していただかないといけないことでございますが、経済前提を平行移動いたしまして、物価を例えば0、賃金を1というふうな非常に低い値に平行移動しました場合には、この保険料固定方式の試算の前提といたしまして、前年の名目額を保障するという前提がございますので、それを突き抜けるような労働力の変動があります場合には、0でとどめられるということになりますので、そこは若干影響は出てくるということが言えようかと思います。原則は、全体としては影響を受けないということが言えようかと思います。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。高梨委員よろしいですか。

○ 高梨委員
 はい。

○ 若杉分科会長
 ほかにいかがですか。局長どうぞ。

○ 吉武年金局長
 私から補足したいと思いますが、最大影響を与えますのはここで実質賃金です。ですからこの実質賃金が高くなれば、先ほど申しました最終的な保険料固定方式20%の場合の最終的な給付水準52%上がってまいります。結局、経済成長が高ければ上がってくる、そういう相対的な結果になる。それは数理課長がちょっと申し上げました実質賃金が上がりますと、賃金スライドと裁定後の物価スライドの違いも出てまいりますので、そこが年金財政の安定化要因になってくるという形です。
 この基準ケースでは、名目賃金2%、物価1、実質1ということで、足元はもっと低く見ておるわけですが、これは今までどちらかといいますと、年金の試算は非常に甘いというようなご批判もありますので、基準ケースでありますけれども、少しシビアのものを持っています。例えば経済財政諮問会議で、景気回復のシナリオで想定しておりますのは実質経済成長率、2010年以降ぐらいになっていると思いますが、2%という想定をいたしておりますが、それに対しましては、これは少し厳し目の推計をもともと基準ケースに立てておるという状態でございます。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。ほかにいかがですか。大和委員、どうぞ。

○ 大和委員
 今のお話で積立金、ここでは年金制度を議論することはできませんので、運用の関係だけでちょっとお尋ねしたいのですけれども、積立金の残高は結果として出てくるというようなお話でございますが、年金財政上は実質運用利回り1.25というのを計算に入れて、それは残高掛けるなのか、あるいは保険料の収入に全部累積して掛けていって計算して出しているのかちょっとわかりませんが、残高は何か想定しているものがあるのでしょうか。それから、それはある残高がずっと続くものなのか、あるいは徐々に減っていったりとか、増えていったりとかというふうに二千何十年かまでの間で変化するものなのか。それはお伺いできますか。

○ 若杉分科会長
 これも数理課長お願いします。

○ 坂本数理課長
 恐れ入ります、本文の資料2−3の142ページを開いていただきたいと思います。ここに基準ケースにつきましても、将来の収支見通しを示してございますが、ここに右から三つ目の列で年度末積立金というところがございます。これがこの収支見通しで推計いたしました積立金残高ということになるところでございます。したがいまして、これは毎年変化していくというものでございます。

○ 若杉分科会長
 大和委員、よろしいですか。

○ 大和委員
 これは2060年以降もずっと増えていくという、そういう数字になるわけですか。

○ 坂本数理課長
 数字記憶しておりませんが、恐らくそうだと思います。

○ 若杉分科会長
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、竹内委員。

○竹内委員
 ここに二つの代替案をいただきまして、給付水準の決定と保険料水準の決定の方式に関して、従来の賃金上昇率ではなくて、最初に保険料を固定して、給付の方も総賃金で考える方式IIというのは、年金制度としては将来の枠組みを確定する形になり、今までの方式と比べて年金制度としては合理的のように見えるのですが、なぜ、この方式が今になって出てきたのか、この方式に移行する可能性はどのくらいあるのか。

○ 若杉分科会長
 年金局長、どうぞ。

○ 吉武年金局長
 先生おっしゃるとおりでして、10年前の年金改革議論、特に公的年金についてはこういう議論はほとんど行われなかったわけであります。どちらかといいますと、確定給付といいますか、給付を確定します。しかも確定給付というのは、企業年金的な確定給付ではなくて、水準を確定しながら、それをまた賃金なり物価に合わせて、そのときの現在価値に引き上げていくということをやりまして、それに合わせて保険料はどれだけ必要だということを常にやっていましたので、最後の問題と申しますのは、つまり保険料の引き上げに耐えれるかという問題になってきまして、特にヨーロッパでは20%あるいは21〜22%になりますと非常に政治的な対決のテーマになると。この保険料率の引き上げ自体が、ヨーロッパの例えば社民党政権と、どちらかというと保守リベラル政権の間の政治的な争点になり、それが政権の基盤が変わるような時代になるというようなことを繰り返してきたわけですけれども、最近で申しますと、例えばイタリアは最近の年金改革でほぼ日本と同じような、総賃金により調整しようという方式を導入いたしております。
 最も議論がなされましたのはスウェーデンでございます。これは最近の日本のマスコミなんかでも相当取り上げられておりますのでご覧になっておられると思いますが、実は1990年代にスウェーデンはスタグフレーションの非常に大変な事態になりまして、スウェーデンの従来の年金制度は基礎的なところを税による基礎年金でやりまして、上を報酬比例を出すという形でやっておったのですが、スウェーデンで起きました事態はスタグフレーションの中で、賃金スライドという仕組みをとっておったわけです。物価より賃金が上がりますので、特に労働組合にとっては非常に有利な制度ということだったのですが、実はそれが裏目に出まして……物価スライドをとっておったのですが、ですから、そういう意味では低めとっておったのですが、スタグフレーションの中でとんでもない事態が起きまして、賃金をはるかに超えて物価が上がる。それで物価スライドをやったものですから、GDPに対する年金の公共支出費が見る見るうちに上がりまして、こんなことでは基礎年金を税でやっていますので、それも直接税方式の場合には国の歳出・歳入に結びつきますので、国の歳出・歳入がGDPよりも急激に上がりまして、これはとてももたないということがございまして、それで実は、1990年頃に、従来の社民党政権から珍しく中道保守政権に変わったわけです。経済が非常にひどい時に。その時に中道保守政権がある意味では賢明な選択をしまして、年金を政争にしないということで、当時の野党だった社民党に呼びかけをして政党間の協議が始まった。
 それは非常に長い歴史がございまして、実際にこれは法律で改正になりましたのは1999年でございますので、その時はまた社民党政権に戻っておった。スウェーデンの場合には実は4年ぐらいで、例えば不良債権の処理なんかでもよく話題になっておりますが、非常に短期間のうちに処理をして、経済は非常に戻ってきたわけですけれども、4年後の選挙のときに、経済は戻ったのですが、雇用が悪くて、多分の私の推測では、それが最大の理由となって社民党政権に戻った。この年金の議論はそのまま継続されました。
 スウェーデンはみなし拠出建てという、これは賦課方式なんですけれども、積立のような感覚で自分の拠出が給付に結びつくという仕組みをとっております。それと同時に保険料率を18.5%に固定をいたしまして、その保険料率の固定した範囲の中で給付を調整しようと。日本の保険料固定方式のこの案とは違いますけれども、別の方式ですが、発想としては同じような方式をとっております。
 もう一つ、スウェーデンがこの時に心がけましたのは、スウェーデンも、従前は将来の推計を人口の推計をし、経済の推計をし、それに沿って給付を上げる・下げる、負担も上げるというのを5年ごとに決めておった。5年ではないかもしれませんが、そういう方式を決めておったのですが、スウェーデンは保険料を18.5で固定しまして、調整する方式も、何で調整するかというと実績で調整する。賃金が変わってまいりますので、実績の賃金なり、そういうものを基本として、将来の給付に至るかどうかということで調整をしまして、足りなければ、そこは日本と同じでございまして、例えば2%仮に足りないということになりますと、スライド率に掛けまして、0.98を掛ける。ですから最終的な調整手法は非常に日本と似ている状態。
 この方式は、実はドイツが先般年金改革やりましたときに、ドイツもこういう自動調整方式をとりたいというのは政策立案段階で非常にあったようです。あったけれども、ドイツの場合には政治的な過程の中でそれはとりえなくなったものですから、ドイツは給付を67%から63〜64%にカットするということをやりながら、しかし結局保険料率は最終22というのを残した状態で年金財政が安定するということになっていますが、実はその22というのは法定としてありませんので、これは財政計画にすぎないので、本当に22が実現できるかというのは、この前、ドイツの学者の方も見えましたけれども、彼は余り楽観的ではなくて、私は22というのは、どうも世界の状況を見るとまず無理なのではないというふうに申しましたら、おまえが言うことが当たる可能性が高いのではないかというようなことを言っておられました。
 それこそこの10年ぐらいの新しい公的年金の改革の議論、本当に新しい議論だろうと思います。

○ 若杉分科会長
 総務課長、何かありますか。いいですか。

○ 高橋総務課長
 最後の竹内委員のお話ですけれども、この方式Iと方式IIは、これは今後の議論の一つの選択肢でありますから、行政側としてどっちがいいですというお話をしているわけではないということでございます。ただ、発想を全く従来と逆にしたもの、こういった考え方があるということです。
 私、説明の中で、先ほど保険料の限界で、最終保険料の2割ぐらいというふうにお話申し上げましたけれども、基本的な考え方としては、方式I−1というのは、今まで給付水準を59%、6割保障するというのは、これは現役1人、あるいは1世帯に対して高齢者1世帯の水準を見ていると、1対1で考えているわけです。
 ところが支える方の側が非常に急激に細っていきますので、そこは1対1で見て、それから保険料水準をぼんと決めるのではなくて、支える側の力の衰えというと言葉が悪いかもしれませんけれども、支える力が少しずつ今より弱まるということがございますから、そこを自動的に勘案できるような装置を組み込もうということで、方式IIを提案しているということでございます。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。吉冨委員、どうぞ。

○ 吉冨委員
 国庫負担率を変えた場合、保険料だけ見ていると保険料が少なくて済むということなのですけれども、合計した、いわゆる総国民負担率みたいなものというのはどうなっているのかということです。
 それから、理論的な考え方は私よくわかりませんけれども、代替率とそういう負担率というのはトレードオフのような関係にあるらしくて、余り代替率を下げることもできないと。この場合でも四捨五入すると6割が5割になるということですから、その5割というのが限度なのかというのはどういうふうに考えたらいいのか。どんなふうに一般的には考えられているのか。それと今申し上げた、全体の国民負担率との関係でどうなのかということです。
 それから、先ほど大和委員からもご指摘ありましたけれども、ここは積立金の運用の部会ですので、そういう給付を固定した場合と保険料を固定した場合で収支への影響、これはフローですね。したがって、ストックへの影響というのはどうなっているのか。後ろの方にたくさん表が出ていますけれども、どれを見たら一番よくわかるのかということを教えてください。

○ 若杉分科会長
 数理課長ですか。では数理課長、お願いします。

○ 坂本数理課長
 国民負担率の関係でございますが、これはまだ計算はいたしておりません。それから、代替率の限度という点でございますが、これはこれからいろんな場でご議論していただくテーマだと考えております。
 それから、最後のご質問でございますが、ストックとフローがどういうふうに変わるかというご質問ですが、もうちょっと具体的にどういう意味でございましょう。

○ 吉冨委員
 フローというのは年々の収支差、バランス・オブ・ペイメント。もう一つは、それが残ってマイナスだったら積立金は減っていくのでしょうし、プラスだったら増えていく。表を見ればわかりますように年によって段差がありますね。制度を変えた場合でしょうけど、なぜ、そうなるのか。まず、どの表を見たら一番わかりやすいですか、収支と積立の関係。

○ 坂本数理課長
 年金制度としてのフローは、この最後の140ページから、主なケースについてフロー、そして、そういう意味での年度末積立金という意味でのストックを示しているものでございますが、この表で……。

○ 吉冨委員
 例えば、141ページですと、国庫負担2分の1への引上げを行わなかった場合、現時点の話ですね。そうしますと収支のところはずっと赤字になっていくんですよね。そうでしょう。

○ 坂本数理課長
 はい。

○ 吉冨委員
 ところがそれは途中で変わりますよね。それはどういう理由かということです。したがって、それを見ていると、今度、その右側に積立金が置かれますよね。そうすると169兆、2005年であったものが、途中このような経過を経て、最終的に200兆前後でとどまっているというのが大きな流れですよね。するとここの部会の仕事というのは、150から200兆の運用を考えなくちゃいけないなということがわかるということです。
 きょうの議論のコンテクストでいくと、こういう制度そのものを変えようということでしょうから、変えた場合、今度は例えば保険料を固定した場合の財政の、今申し上げた、これに対応する表というのはどれになるのでしょうか。145ページなんか見ればよろしいのでしょうか。というようなことだけです。そのためにこれはつくってあるわけですね。

○ 坂本数理課長
 そうでございます。

○ 吉冨委員
 皆さん思っているのは、こんなに積立金というのは要るのかしらというのが、この間から、ここの議論でも出ておりましたので、何でこんな積立金というのは残るようにしているのとか、それはここに割合があって、3〜4%持っていた方がいいよとかという話になっているわけでしょうから、そういうところはきちんとした方が、積立金の運用のときに、ここでいつも最初から問題になる。何でこんなに残高が多いのという話になって、議論の出発点そのものが動揺している場合が、私大変多く見かけましたので、そこら辺をきちんと説明していただいた方がよろしいのではないでしょうか。

○ 高橋総務課長
 今のお話で、一般的なことを申し上げれば、積立金の規模というのは、どの表をご覧いただいてもいいのですけれども、142ページの表で申し上げれば、これは将来的にはキャッシュフローが要するに出と入りがバランスしていないといけない、長期的には。途中期間、人口がでこぼこしていますが、結局は最後は保険料収入、それに対して支出合計がありますが、そのバッファーが運用収入になっています。それは長期的にバランスするようなポイントで、運用収入に見合うだけに積立金を保有していればいいという格好になりますので、そういった意味で大きいか小さいか別なんですけれども、そのバランスがとれるところで積立金の規模が決まっているという格好になっています。
 それから、ご質問の最初の国民負担率という点から申し上げますと、142ページ、143ページをご覧いただいた方がいいのですが、保険料固定でございますから、保険料収入は、この142ページ、143ページ並べていただければ、これは2分の1と3分の1のケースでございますけれども、保険料収入は同じでございます。
 したがいまして、支出の方はどうかといいますと、これは3分の1のケースの方が調整期間が長引きますので、支出としてはむしろ3分の1のケースが小さくなります。つまり、それだけ給付規模は小さくなるということで、社会保険負担としては、これは保険料固定ですから同じなんですけれども、給付費の方が小さくなってきますので、結局国庫から入ってくる分はより小さくなりますから、全体としての負担は3分の1のケースの方が小さくなっているという結果になっています。

○ 若杉分科会長
 吉冨委員、よろしいですか。

○ 米澤委員
 一部、吉冨委員とも関係しますが、今さら積立金の意義とかは整理されているので、あえてそこは問わないのですが、一応今までの方法に比べて保険料固定方式というのは、私は経済全体のリスクが大きくなって、それに対応していくために自然なこういう方法に移行せざるを得ないというような理解をしております。逆に今までのような格好ですと、そこのリスクに対して何が対応してきたかというと積立金で対応してきた。特に人口の構成だとか、そういうものに関して積立金が対応してきたという理解しています。
 そうしますと、まず一つ、保険料固定方式、どの水準に固定するかにもよりますけど、積立金の意義というのは少し前面から後ろに下がるのかなという感じがします。システム全体でリスクを割と吸収できるようなシステムですから、積立金が任務を少し弱まるというのでしょうか、というのがまず一つ認識にあるのではないかと思います。
 といったときに、最終的に2030年とか40年とか60年とか、わからないことは多々あるわけですが、そこのところである程度、例えば人口もフラットになるとしましたらば、そのときに最低どのぐらい積立度合いを持っていればいいのかと言いながら、いくらポジティブでも予期せざるリスクがあるわけですから、そこのところは持っていなくちゃいけないのかというのが出てくるわけですけれども、そこにスムーズに着陸するようなものを、全く残余で積立金が決まってくるのではなくて、そこのところも使えるものを使えばもう少し保険料率も下げることもできるかもしれないし、給付も上げることもできるかもしれませんので、我々の言葉で言うと、モデルを全部やって最適化するという方法が一つあると思うんです。そこのところを、ほかを全部決めて残余で積立金というのでなくて、積立金のあるべきところをやって、そこでどっちの方に少し余裕が出てくるのか、出てこないのかわかりませんけれども、普通我々はモデルの世界で考えるとそれはぜひ必要だと思っています。
 最後はどの水準、仮に定常的になったときにどの水準に持っているか、そこの議論はあるかと思いますが、全く残余というのは、最適解を説いてないのではないかという感じがしました。

○ 若杉分科会長
 福井委員、どうぞ。

○ 福井委員
 この方式I−1と方式IIというのは、大きな公的年金を今後もずっと長く維持するという前提で、その中で発想転換の要素が入っているわけですけれども、もう一つの選択肢としては、公的年金は小さくして私的年金の世界を大きくする。この選択肢があってしかるべきで、これから自己責任原則の社会に移していくという観点からすれば、私はむしろその方が方向性に沿っていると思うのですけれども。私的年金のウエイトを大きくして、公的年金は小さいものにする場合の極端な姿は、公的年金というのは、将来の生活の最低保障ですから、それは全部公的負担とし、あとは全部私的年金というのが一番明確な割り切り方ですね。
 そういう公私の年金の割り振りを変えていくというふうな発想での方式IIIというのがなぜ出ないのかなというのが疑問なんですけど。

○ 若杉分科会長
 総務課長、お願いします。

○ 高橋総務課長
 それは方式IIIというよりは、先ほど最初にご紹介しました、これで言いますと、左側の方の下の制度体系論にどちらかというと議論は近いのではないかと思われますけれども、特によくある議論は、1階の基礎年金だけに集中する。真ん中の提案でございますけれども、公的年金は、今、福井委員からお話あったように、公的年金としては基礎的な生活費を賄う水準の定額年金にしたらどうかと。この財源を100%税にするか、あるいは社会保険方式にするか、ここは議論あるところですけれども、そういった提案はあるわけでございます。
 それについては、これまでこの審議会の年金部会の方での議論、あるいは政治レベルでもいろんな議論をやっていますけれども、特にサラリーマンにとって現役時代と比べて老後の所得保障機能は非常に難しいのではないか、どーんと下がり、かなり落差がありますので、それで本当にいいのかどうかという議論はかなり残っているということでございます。
 それから、特にその場合の議論というのは2階の厚生年金を廃止するということになるわけでございますけれども、これは例えば廃止した場合に、これまでの分の負担とご自分の将来の負担、よく二重の負担論と言われていますけれども、そこをどうするのかという議論は当然あるということでございます。あるいは今の2階建ての構造を保ちながら、報酬比例部分の方だけを下げていくという提案はあるかと思いますけれども、そこは特に例示をして議論はしておりません。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。吉原委員、どうぞ。

○ 吉原委員
 先ほどの積立金に関するご質問なんですけど、142ページの表などを見まして、これは全部現在価値、11年度価格の数字でしょう。例えば収入合計にしても、保険料にしても、支出にしても、そうですよね。

○ 坂本数理課長
 収入合計の部分、支出合計の部分、これはあくまで名目額でございます。

○ 吉原委員
 名目額。

○ 坂本数理課長
 はい。この経済前提のもとに、将来の名目額に直しました価格を表示しております。それで、積立金の右から二つ目の列ですが……。

○ 吉原委員
 そうですか。年度末積立金と年度末積立金の11年度価格という数字が随分違いますよね。これが非常に誤解を私は生む原因になるのではないかと思うんですけれども、年度末積立金と11年度価格のやつが……年度末積立金が大体200兆とか300兆になると、こういうふうに考えますと、何か実体に合わないのではないかと。今の積立金が将来は300兆にもなると。何でそれだけ持たなくちゃいけないのかというふうにとられやすいと思いますけれども、それはどうなんでしょうか。積立度合いは4ぐらいなんですよね。しかし金額だけ見ると300兆にもなると。これは一体何だというふうに、非常に誤解を生みやすいと思うんです。どうして二つこうやって並べて書かなければいかんのですか。昔から書いているんですけど、どうして書かなくちゃいけないですか。

○ 坂本数理課長
 一つは、今、委員がおっしゃいましたような、積立金の規模、名目額の絶対値を見ますとかなり大き過ぎるのではないかというふうな、感覚的につかみづらい面がございますので、今の給付に備える力としての相対的な大きさとして表示するとどれぐらいになるかというのを示しましたのが右から2列目になるのではないかと思います。例えば、これは2060年度でございますけれども、例えば昭和30年ぐらいの時点で、今の140兆の積立金の規模というのを想定しました場合には大き過ぎるのではないかというふうな、感覚的につかみづらい面があったのではないかと考えられるところでございますが、それと同じような意味で、名目額の表示と現在での積立金の給付に備える力というものを示していると、そういう趣旨でございます。

○ 若杉分科会長
 よろしいでしょうか。

○ 吉冨委員
 これは割と簡単だと思いますけれども、実質に直しているだけで、一番見てもらいたいのは右側の積立割合ということだと思います。これがバッファーの比率をあらわすだけじゃないんでしょうか。

○ 吉原委員
 それはそうなんですけど、年度末積立金……。

○ 若杉分科会長
 物価の上昇と高齢化両方で金額が膨らんでいる。

○ 吉原委員
 右から2番目の数字が逆に要るんですか。どうなんだろう。わかりました。

○ 吉冨委員
 こういう計算のときには、恐らく数字としては余り大きく変わらないかもしれませんけれども、ここで議論しているように、運用利回りが実質賃金上昇率を2%上回るという想定で多くの場合議論してきたのでしょうけど、ここでは全体が全部1.25%上回るということになっているのでしょうか。なぜ、そう下げてあるとか、その結果、どのくらいの差が出てくるとか、そういうのは我々にとって非常に大事ではないかと思いますけれども。

○ 高梨委員
 83ページのケースBのところで、実質利回りとして1.25%を使っているわけですが、前回の平成11年の財政再計算のときには実質利回りは1.5%を使っています。そのときの、なぜ1.5%を使ったかということについての説明なんですが、一つは資金運用部への新規預託金利が過去の実績で賃金上昇率を1.5%程度上回っているという点。それから、国内債券収益率が過去の実績で短期金利を1.5%程度上回っていると、こういうことで、1.5%を使って、賃金上昇率が2.5%だから、2.5%と1.5%を足して名目運用利回りは4.0%と、前回はそういうふうにしたんです。今回の1.25%についての根拠というものは、今段階では仮置きと、こういうことなのか、一応こんな根拠があると、こういうことなのか、その辺について教えていただきたいと思っています。

○ 若杉分科会長
 数理課長、お願いします。

○坂本数理課長
 結論から申し上げます。まず、今、高梨委員ご指摘のように、これはあくまで仮置きでございます。これから運用分科会あるいは年金部会でこの前提につきましてはご議論いただくことになるわけでございます。
 今回どうしてこういう前提を置いたかということでございますが、まず高梨委員ご指摘のように、11年財政再計算では、この83ページのケースAの前提を置いたということでございます。それで新人口推計がことしの1月に公表になりまして、それの年金制度への財政影響を調べました試算を発表いたしましたときには、やはり11年再計算と比較できないといけないという前提から、同じ経済前提を使わせていただいたということがございます。
 今回もいろんな試算をするに当たりまして、それとの比較をしないといけないということで、一つはケースAというのを置かせていただいたところでございます。同時にこのケースAにつきましては、実質運用利回りが1.5というのは見通しとしては甘いのではないというふうなご意見もございましたので、厳しいケースを設定するとどういうケースになるかというのを考えまして、その場合、実質賃金上昇率は0というのは極端過ぎるということで、少なくとも1人当たりの生産性の向上が少しはあると。しかし一番ぎりぎりの低い状態でそういうものがあるということとしますと0.5あたりかなということで、ケースCにおきまして、実質賃金上昇率を0.5%という前提を置かせていただいたところでございます。
 それと同時に、実質運用利回りにつきましては、1.5は甘いとしますと、何が一番厳しい見通しなのかというあたり、この辺はいろいろご議論があるかと思いますが、とりあえず現在非常に厳しい運用環境でございますけれども、一応長期金利の実質分は1%程度あるということから、ここで1%と置かせていただいたところでございます。そこで中間的なケースも計算しないといけないということで、中間的なケースとしてケースBを設定させていただいたというところでございます。
 あくまで高梨委員ご指摘のように、これは暫定的にそういうふうに置かせていただいたというところでございます。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。どうぞ、小島委員。

○ 小島委員
 すいません、最後にこの選択肢についての意見は、午後からの部会で述べますけれども、積立金と今回の最終保険料固定方式との関係だけについて、考え方を聞きたいと思います。今回の最終保険料を20%に固定して、そしてスライドで水準を調整していくことの結果として積立金が積み上がっていくのだというご説明でした。仮に積立金をこんなに持たなくてもう少し減らすということにしてしまうと、最終保険料は20%ではすまずに、もっと上がるのだという話に多分なる。
 逆に積立金をもう少し多く持つという場合にはどうなるのか。保険料を早めに引き上げて、積立金をもっと多めに持ってしまえば、20%よりも低い保険料で済むということになる。そこはどういうスパンで保険料率を上げていくかということにも関わってくるのだろうと思うんですけれども、そういうことでいいのでしょうか。

○ 坂本数理課長
 今、小島委員がご指摘になりました点でございますけれども、積立金を少なく持つという場合には、確かに最終の固定する保険料をもう少し上げる、そういう選択肢も一つあろうかと思います。また、別の選択肢といたしましては、保険料は20%のままなんですけれども、所得代替率がさらに低くなると。基準ケースで中位推計の場合、52%という代替率になっておりましたが、積立金をもっと少なくいたしますと、その代替率が50とか40台に落ちると、そのような結果になろうかと思います。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。次の議事もありますので、先に進みたいと思いますが、よろしいですね。どうもありがとうございました。

(2)年金積立金の運用の在り方についての検討(第4回)

○ 若杉分科会長
 それでは、続いて、「年金積立金の運用の在り方について」、きょうは4回目ということになりますが、その検討を行いたいと思います。
 今回は「論点案」について、事務局より説明を受けた後、幅広く委員の皆様にご議論いただきたいと思います。
 それでは、まず、「論点案」について、事務局より説明をお願いします。運用指導課長お願いします。

○ 泉運用指導課長
 それではご説明いたしたいと思います。前回までのこの委員会で分散投資を行うことの意義をどう考えるかということについてご議論をいただいてまいりました。また、議論を進めていく前提として、積立金を持つことの意義、今日もお話が出ましたけれども、第9回分科会に資料をお出ししてご説明もしてまいりました。また前回の第11回分科会では、論点整理ペーパーということで、お手元のファイルに入ってございますけれども、リスク・リターンについて、分散投資の効果をどう考えるか。あるいは安全性と効率性と、こういうようなポイントについてご議論をいただいてまいったところでございます。
 本日は前回までにご議論いただいたこうした点に加えまして、昨今の経済情勢といいますか、低成長あるいは一時的にはマイナス成長というような時期もあるという、こうした時期に株式投資、債券投資というものをどう考えていけばよいか、そういう角度からご議論をいただけないかということで、簡単なペーパーでございますが、「論点案」というものを出させていただいたところでございます。
 一つ目でございますが、戦後の我が国の経済の動向というのは、高成長期、中成長、そして低成長というような経過をたどってきたわけでございますが、一方で年金資金の運用は非常に長期の運用ということでございます。そうしたことから過去の長期間のデータをとりまして、これに基づいてリスク・リターンというものを考えていくというようなアプローチが一般的なわけでございます。
 ただ、しかしながら、そうした場合に過去の高成長の頃のデータも含めたデータで将来を考えていくということで本当によいのだろうか、期間のとり方をどう考えるのかということもございますし、そもそも今後の我が国の経済をどう見通すかという難しいところもございますけれども、低成長、比較的高成長ではない成長下であっても、賃金上昇率を上回るリターンを株式投資、債券投資、あるいはこれらを組み合わせた運用で得ることはできるのだろうか、こういうような論点があろうかということで、一つ目はそういうような趣旨で書かせていただいたものでございます。
 それから、二つ目でございますけれども、これはむしろ一つ目のような長期というよりも、非常に短期といいますか、直近の状況、デフレが進んでいるというようなこともございます。そういうときに株式投資あるいは債券投資というものをどう考えるのかという論点があるのではないかということでございます。一定期間、物価が下落するデフレというのは、過去に我が国ではなかなか事例としては見られない状況かと思います。外国を見てみましても、アメリカにおいて、いわゆる大恐慌の時期、その前後にデフレというのが観測される時期がございますが、いずれも1920年代あるいは30年代ということでございまして、近年にはそういう状況はないということでございますが、直近のデフレの下で賃金上昇率を上回るリターンを得るという年金の運用をどう考えていったらいいのか。これは期間をどう限るのか。デフレ下では別のことを考えるべきだということがもしあるとすれば、別の考え方による運用を行うということが果たしてあり得るのかどうか。あるいは仮にそういうことがあり得るとしても、そういう時期やタイミングを正確に図った運用ができるのかというような問題もあろうかと思いますが、そういう点も含めてご議論いただけないだろうか、そういうような趣旨でございます。
 3点目は、角度が別でございまして、我が国の株式市場の見方といいますか、そうするとちょっと広くなってしまいますが、株式市場について、アメリカの株式市場などとは異なる部分なり背景があるのではないかということが、かねてから、例えば個人投資家の比率が少ないのではないかとかというような指摘もあるわけでございます。そもそも我が国の株式市場における株価、本来的には企業が利潤を上げているのであれば、それが株価に織り込まれるといいますか、反映されるということだろうと思うんですけれども、そうした点についてどのように考えていくのかというような論点があるのではないかということで書かせていただきました。
 なお、これらは議論をしていただく手がかりといいますか、そういうようなことで書かせていただいたということでございますので、このほかにもこういうポイントがあるのではないか。あるいはこの中でも、ここを特に掘り下げて考えておく必要があるのではないか、そういうようなことでのご討議をいただければありがたいと、そのように考えて出させていただきました。
 説明は以上でございます。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。それでは、そういうことで、かなり広い漠然としたというか、論点になっていますけれども、ご自由にご議論いただければと思います。いかがでしょうか。内海委員、どうぞ。

○ 内海委員
 この問題提起の一つ一つにお答えするというのは難しいと思います。例えば第1にある高成長期、中成長期、低成長期それぞれについてのリスク・リターンについてどう考えるかといっても、私はここで検討しているのは長期運用です。従ってそういうところにないところから基本的ポートフォリオをつくるという発想はスタートしたし、また完結するのではないか。10年、20年あるいは30年というようなオーダーで見ていく場合には、仮に成熟経済の場合でも、例えば米国は1980年代後半、沈み込んでいたアメリカ経済がその後の再び世界で光り輝く経済になるというようなこと、それがまた最近様子が変わってきているわけですけれども、日本経済といえども、今は陰にあるものですから、いつまでもこういう状態だとみんな思いがちですけれども、私は決していつまでもそういうことではないと思います。長期間の間には、低、中、高成長いずれもそこに入ってくるという前提で考えるべきだというのが第1点。
 それとの関係で、デフレ下における株式投資と債券投資のリスクとリターンについてどう考えるかというご設問についても、最初に申し上げたとおり、長期的運用のときにデフレにおける云々ということで考えるべきではないので、最初我々は、基本的ポートフォリオというものを設定することの重要性をいろいろ教えていただいたわけですけれども、あれはある意味では逆張り発想なんでしょう。下がったときには買う、上がったときにはシェアを減らすという、恐らく逆張り発想が基礎にあるわけなので、それがいいか悪いかという議論があるのだろう。私は基本的にそれを否定することはないというように思っています。
 それから、3番目に申し上げたいことは、それではどういうポートフォリオを組むかというときに、我々のしてきた作業は、例えば株式市場について、日本の過去の実績でとりましたけれども、日本経済というのも成熟していく過程にあったわけで、その意味では既に成熟してからの株式市場の動きというのは、あるいは我々が過去30年、40年に持ったのとはちょっと違うのではないかということを考えると、日本における株価の実績がどうだったかという分析はもちろんベースになるとしても、それとの比較において、アメリカとか主要欧州諸国の株価の動きがどうだったかということも斟酌しながら、今後検討する場合にはある程度修正していく方がいいのではないか。
 最後に日本の株式市場の現状、将来に関しては、今は過渡期なので、日本の株式市場、これはドイツなども同じですけれども、持ち合いという構造で会社の株式の最大の保有者がまたコーポレート・セクターという、そういう状況が徐々に持ち合い株式の解消という形で出て、株式市場を圧迫しているわけですが、そこに本来の個人の資産がどう入ってくるかということが、これからの日本の株式市場の鍵になると思いますし、また、そういうことでないと日本の市場の本当の意味での成長というのはないわけですから、これはいわばゾルレンの世界に関する発言になるのかもしれませんけれども、今までのものが変わってきて、これがどういう姿になるかというときに、それは基本的には個人とか年金、年金は基本的には個人の資産ですけれども、あるいは投資信託とか、そういういろんな格好での個人の資金がそこで主役を演ずるようになるという、アメリカ型とか英国型のものに育っていくような政策がとられていくと思いますし、また、そういうふうになっていくという前提で考えていいのではないかと思います。以上です。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。杉田委員、どうぞ。

○ 杉田委員
 今の内海さんの意見と大分ダブってくると部分があると思うのですが、私も一般的には、年金債務の増加を賄っていくという点では、資産運用を債券に限定するというふうにしますと、なかなかそれは難しいのではないか。今は物すごいデフレの時代に入っているわけですが、デフレの期間がどの程度あるかということ、いろいろ議論はあるかと思いますが、いずれこれを克服できるという前提に立ちますと、物価上昇の時期が来ると。年金が20年、30年の運用だということを考えれば、一般論としましては、債券運用だけではこの給付を賄い切れないというのが多分常識なのだろうと私は思います。ですからポートフォリオで株式を一定の割合組み込むということは当然なのではないか。
 国際比較で見ると、むしろアメリカの連邦政府の社会保障では確かに株は組み込んでおりませんけれども、その他の地域公的年金等では多分12%よりもっと高い比率、50%近い、あるいはその前後ぐらいの比率で組み込んでいる公的年金の方が多いのではないかと理解しているわけです。
 それから、私も綿密にシミュレーションしたわけではないので責任持って言えない部分があるのですけど、多分年福から受け継いだ損失と新しく発生した損失合わせて3兆円ちょっと損失があると思うんですが、日経平均で言いますと、今、8千円台なわけですが、これは小泉さんが政権をとられた時点ぐらいに株価を戻していただければ、多分ほとんど消えてしまうのではないか。全部はまだ消えないかもしれないけれど、恐らく1万6,000円ぐらいになればほとんどこの損失は消えていくというようなものではなかろうか。
 そうすると今後長期運用していく場合に、日本の株価が日経平均で見て1万円を超えることは不可能というふうに見れば、これは根本的に物の考え方を変えていかなければいけないと思うんですが、私はデフレの期間が3年なのか、あるいは長く見る人は5年、あるいはもっと見る人はいるかもしれないけれども、ある一定期間後には立ち直るという日本経済の将来を信頼するというふうに私は個人は思っておりますので、そういう前提に立ちますと、これはどこかで累積利差損を解消できるというふうに思っているわけです。
 ただ、その累積を最小限にする方法はないのだろうかという気持ちはありますね。これは多分事務当局の論点案のご諮問の中に、デフレ下では何か考え方が違う方向はないのだろうかということをおっしゃっているので、一般論としてはそのとおりだけど、デフレの期間が1年で終わるということは、竹中さんも3年は覚悟しろとおっしゃっているようなんで、1年で済むとは誰も見てないと。そうすると3年なり5年かかるというふうに見た場合に、その間の累積損を最小限にする方法はないのだろうか。
 私も素人として、そういう方法がないのだろうかと、私もきょうは専門の先生にお伺いしたいと思っていたわけですね。この前、専門の皆さんにご意見をお伺いしたときに、デフレのときにTOPIXなり日経平均で見て株価が上昇することはありますか、と言ったら、ありません、と答えられました。それはないだろうと。デフレ下では日経平均あるいはTOPIXは上がらないのだということになりますと、その間に例えばある一定期間、12%を下げるということが暫定的に可能なのか、不可能なのか。下げた場合にどういう影響があるのか。例えば投信の皆さんが、我々が12%という数字を出しているためにいろいろ長期組み込みをやっておられると思うんですね。そうするとそれがある一定期間でも下がるということになると、多分猛烈な株の売りが出てくるのか、出てこないのか、この辺は私はマーケットの専門家でないのでよくわからないのですけれども、そうするとそれによってまた年金が損を出すと、こういうばかな結果になってしまいますから、その辺のところは、むしろご専門の皆さんにお伺いしたい、そういう方法があるのか、ないのか。
 これはデフレ下の問題だけだと言えないと思いますが、今いろいろご報告をお伺いしますと、運用の方は専らパッシブ運用ということで、それの基準になっているのはTOPIXを基準にやっておられるということでございますが、ご承知のようにTOPIXは全銘柄入っておりますので、言ってしまえば、失礼だけど、ボロ株も入っているわけですね。収益率が極端に悪いのも全部入っている。そうするとそういうものもお買いになっているというようなことで大幅なマイナスが出ているというようなことであるならば、パッシブ運用だけではなくて、もう少しいい銘柄もあるわけでありますから、日本の株式の中には、そういう優良銘柄を中心にアクティブな運用をしていくという方法がないのだろうか。現にそういうことをきちんとやって収益率を出しているアクティブマネージャーもいるのではないか。そうすると少なくとも年金運用の一定割合については、一定割合というものが何%か、50%がいいのか、何%がいいのか、私にはよくわからないのですけど、何割かはアクティブ運用で厳しい選択をしながら、アクティブマネージャーを選んでいくと、こういうようなことで、デフレ下の損失を最小限にしておくということが将来デフレを克服した後の利益をむしろ増大させるわけでありますから、そういうような二つの工夫がないかなと。この辺はむしろご専門の皆さんにお伺いしたいと思って今日参ったと、こういうことであります。

○ 若杉分科会長
 福井委員、どうぞ。

○ 福井委員
 この問題で議論の対象になるのは、日本経済の成長パターンの変化ということと、物価の動きを規定する基本的な背景の変化、この二つの変化が年金の運用対象として株式を組み入れること、引き続き是と考えるか、否と考えるか、組み入れるとして、組み入れ方を変える必要があるか、ないか、そこがポイントだろうと思いますが、私は株式を組み入れることを非とする考え方はやはり出てこないと思います。ただ、株式を組み入れていく場合のやり方は相当変えなければならない可能性を含んでいるというふうに思っています。
 まず経済の成長パターンの変化ですけれども、これは非常に明らかだと思っていまして、何も今後日本は低成長だと決めつける必要はないのですけれども、過去50年近くエンジョイしたような高成長のパターン、その高成長を支えた経済の仕組み、特に企業の収益の上げ方というものは、相当変わっていく。高成長の時代は株価も高かったというふうなことになっているのですけれども、実は企業の収益の上げ方を例えばROEでみると、これは一貫して非常に低かったのです。労働分配率を趨勢的に引き上げながらROEは低くして、そして借金でレバレッジを効かせてボリュームで稼いだ、こういう経済のパターンですが、今後将来に向かってはそういうパターンはもう通じなくなっている。総人口が減っていく経済であるとか、それこそ経済が成熟化した段階にあっては、新しい分野を切り開きながら差別化によってROEを上げていく。つまり労働分配率は生産性に見合ったところにきちんとセットされていかなければならないし、それからRとEですから株式の発行自体も企業としては経営戦略の中に入ってくるので、Eを減らしながらRを増やしながらということになっていくわけですから、株式は基本的にはそういう形でROEを高くしていく。つまり株価を上げていく方向に今後ともあるということは間違いないのではないだろうかと思います。
 ただ、問題はそういうふうに付加価値の創出というところで本当に力を発揮していける企業とそうでない企業との差が非常についてくるということですし、ある時期、非常に付加価値創出に成功してROEを上げた企業であっても少しさぼるとだめになる。つまり企業の寿命というものは従来よりもひょっとしたら短くなるかもしれない。もうちょっと上品に言うと、新陳代謝が非常に激しい経済になると。多分そういうことであって、基本的にはROEの高いターゲットをねらっていく経営になり、株価を全面的にネガティブに考える理由はないということだと思います。
 もう一つは、物価動向を規定する基本的な背景の変化、今、デフレ、デフレという物の言い方がされていますけれども、長い目で見れば、従来のように、どちらかというと基本的にはインフレというものを前提にした経済の動きというよりは、もっとインフレもデフレもともにないという、何ていうのでしょうか、物価の大きな変動を余り前提にしない経済の動きになっていくのではないだろうか。今、中国のように7%を超える高成長を続けていても、物価がマイナスになってくるというふうな状況で、そこに典型的にあらわれていると思いますけれども、グローバル化、情報通信革命の進展がもたらすところは非常に大きくて、国境を超えて物や資本が自由に移動する、人まで移動する。つまりリソースが全部移動する。情報まで移動するということになりますと、世界の経済の中のどこかにスラックがあれば、その影響は全体的に及ぶということですから、従来に比べるとインフレが起こりにくい経済になってきた。そうするとデフレを防いでいく考え方というのも、これから経済の中にビルトインされていくだろう。こういうふうに考えますと、物価についてはある種の落ちつきを前提にした経済になっていくというふうなことだと思います。その場合に企業が収益を上げにくくなるというふうには必ずしも直結しないとは思いますけれども、一つ注意を要するのは、借金を非常に多く抱えて、つまり将来のキャッシュフローでなければ返せない借金を非常に大きくして、レバレッジを効かして投資をしていく企業の場合には、リスク度が従来に比べてうんと増しているということは言えると思います。
 したがって、株式を組み入れることに対してネガティブに考える必要は全くないけれども、組み入れ方については、大きな括りで、TOPIXとか日経平均とかというふうな括りで本当にいいのか。もう少し別にアグレッシブ運用に転化するわけではないのですが、個別銘柄ごとの選択肢、特に借金の多い企業に対するリスク度感覚とか、そんなようなことは必要になってくるような気がしています。株価全体の運動法則についても、そういうふうに成長パターンとか物価の変動のパターンが過去とがらっと変わる、大きなターニングポイントを迎えたということであれば、過去のヒストリカルデータによるシミュレーションというのは余り当てにならない、そこは重要な点だと思います。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。米澤委員、どうぞ。

○ 米澤委員
 今、福井委員の御意見は非常に参考になりました。それに関して多少私の考え方を補足をさせていただきますと、今までやってきたのは過去のデータだったわけで、それに関して多少違った構造変化があるのか、ないのかも含めて、フォワードルッキングで少しそこにつけ加えられるのかどうかということで考えていくのが一つ必要かなと。何のデータかとなったときに一つROA、ROEではないかと思っています。
 前回ニッセイ基礎研さんの方からROAのデータが出ていて、大ざっぱに言うと戦後からいくと右下がりなんですね。ROAは普通我々は経済やっていくのは資本に対するリターンだと考えればいいわけで、これは多分主要先進国はレーバーが余り増えませんから、キャピタルは結構貯蓄で増えますから、レーバー・キャピタル・レシオでリターンが下がっていくというのは必然になるわけです。それを上回るテクニカル・プログレスがあればいいわけですが、ああいう格好で必然だとも思うわけです。
 前回見ますと、直近はちょっとわかりませんが、ROAは2%はあるのです。それは非常に重要なポイントで、では何で株式市場だめなのかというと、恐らく金利が仮にROAが2%だと実質の金利負担がそれより高いのではないかと思うんです。普通我々はレバレッジをかけてROEが高くなるというので、ROAの方が金利よりかも高いという大前提の下で、そこにレバレッジをかければ、さらなるハイリスクになりますけど、ハイリターンになりますよ、ROEが生まれますよ、となっているんですが、恐らく今現在はROAの方が低い状況で、それはマクロショック等があって低くなっているので、決して定常的だとは思わないのですが、非常に低くなっていると思っています。
 もう一つ、それが今が正常な状況でないということと同じメッセージなんですが、よく最近は違った面から、株式のリスクプレミアムはなくなった、ないしはマイナスになったといったときに、リスクプレミアムの根拠は我々投資家がリスク回避的だから少しオンしてくれないと買わないよというのが一番正しい理解だと思うんですが、もう一つは、ROE=株式のリターンでは必ずしもありません。ありませんが、一つの重要なベンチマークだとすると、企業は金利よりも低いROAでもって企業を長期的に操業できるわけない。借りてきた金利よりも自分のリターンが低ければ企業は存在価値がないわけですね。ただ、今現在は日本経済はそういうところに陥っているということで、これはどんなばかな経営者だって、これは改善せざるを得ないわけです。そもそも企業の存在基盤で。ここのところで企業の存在基盤があるということは、ROAの方が普通のノーマルな金利よりも高くて、かつそこでレバレッジを効かせればROEが高くなりますよということで、要するに理論的には長期的に企業はちゃんとやっていけばROEがROAよりも高くなる。さらに金利よりも高くなるということは、裏でもリスクプレミアムがつくということは保障されていると思っています。そうでなかったら会社は成り立たないということですね。
 そうなったときに、今現在、日本の企業を振り返ってみますと、要するにやらなくてはいけないのは、労働分配率を下げるということです。高止まりになっている労働分配率は、90年以降5%ぐらい上がっているのではないですか。それを下げることによってROAを上げて、それで少なくとも、さっき言った金利との逆ざやみたいのを解消するということによって、それが早晩解消されれば、確かにこれから高レバレッジというのは非常に危ない感じになります。レバレッジが高ければ、もしROAが低かったらうんと赤字になってしまうわけです。ROAが高いからうまくレバレッジが働くわけですが、低くなったときには逆レバレッジが働きますから、ということで、非常にリスクが高いのですが、そこのところのリストラが改善された場合には、再び株式のリターンというものはほぼ正常な水準に戻ってくるということで、裏ではそれを今必死になってやっているというような理解だと思います。
 ですから短期的には株式の需給の問題とかいろいろありますが、一つ幸か不幸か年金は長期の運用ですから、企業のそこのところの根幹のファンダメンタルズが戻って見ていくのが一番重要で、それが今言ったプライヤーで、フォワードルッキングで、その情報と過去の情報をうまく合わせて、あり得べきリターンを探っていくというのが一つの方法ではないかと思っています。
 そうは言っても、いくつか出てきましたけれども、すべてのオールド・エコノミーの企業がうまく労働分配率を下げて、ないしはテクニカル・プログレスを上げれるかどうかというのは甚だ怪しい点もあって、むしろマクロ全体のダイナミクスは、オールド・エコノミーいくら新しい経済に移っているとしますと、ありていに言うとTOPIXからもっと違うマーケットに移っているのかもしれないと。そこのところを我々はうまくフォローしていく必要があるのではないかと思っています。
 最後にちょっと戻りますけれども、デフレ感とかは一つは実質で今見ますと、我々は金利はそう低くもないし、株式もインフレ分だけオンしてくださいということで、これはプラスなのかわかりませんが、そういう世界ですね。そこのところで実質で全部我々合理的に考えられますよというのであれば、デフレもインフレも株価にはニュートラルです。企業の業績は変わらないという下では、デフレとかインフレ自体は株価に対してはニュートラルです。ただ、債券に関しては、途中からデフレになったりインフレになったりすると、これはクーポンは追っかけていけませんので、そこはちょっとディストーションが起きると思っています。
 まとめますと、ROAをねらっていく、2%とか回復すれば3%になっていく、ROAをねらっていくということは、大ざっぱに言いますと、日本の資本をそのままポートフォリオとして持つというようなイメージで、そうしますと株式も当然一部として持つというのが多額の金額の運用としては重要ではないか。そうしますと少なくとも裏では、でき上がりの全体としては2%ぐらいはリアルのところから抑えられていくのではないかという感じがしています。
 少し長くなりましたけれども、以上です。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。それでは、吉冨委員、どうぞ。

○ 吉冨委員
 きょうお配りいただいている、この大きな資料、上の方に載っている中の第10回資料4というのでしょうか、平成13年度云々かんぬん報告年月日はことしの10月と。資料4の14ページ、15ページを見てちょっとご質問したいと思うのですが、非常に抽象的に、今のように高成長、中成長、デフレ云々かんぬんという議論もほかのセミナーでやれば私はいいのではないかと思いますけれども、ここで議論にいつもなるのは名目賃金の上昇率と名目運用利回りの差ですね。それでよろしいですね。14ページ、15ページの計算がそういうものを正確にあらわしているかどうかは知りませんけれども、概念上の議論をしますと、ここに例えば厚生年金だけを見ると、平成10年〜13年度の平均というのが下から2段目にあります。そこで実質運用利回り、これはB÷Cですけれども、3.30%、基本的には名目運用利回りを名目賃金上昇率で割ったり、あるいは両者を引けばよろしいわけですね。平成10年〜13年度というのはまさにデフレそのものの時期です、日本の場合には。それ以外は余り物価は下がっておりませんから。
 そうするとこのデフレの時期を見ても、実質運用利回りというのは3.30%あったと。先ほど議論して、デフレになると1.25%ぐらいのが適当じゃないかという議論がありましたけれども、デフレのとき、こういう数字が出てきているというのを我々はどう見たらいいかということを議論した方が、絶対水準でROEが高いとか低いとかというよりも、我々が普通こういうことをやるときには経済変数というのは全部内生化されていきますから、デフレのときには賃金も下がっちゃうんですよね。企業率も下がります。
 まさに先ほど米澤さんがおっしゃったように、株価が上がらないときには相対的に金利の方が実質的に上がりますので、すると我々のポートフォリオというのは債券が十分に入っているわけですから、そこでオフセットされているわけですね。そういう組み合わせ方をしているわけです。もともと基本的なポートフォリオの組み方は。したがって株だけを取り出したりしても意味がない。賃金にどういう影響があるかを見なくちゃいけない。利回りにどういう影響があるか見なければいけない。普通ですとこういうモデルを頭に置いて全体が解けているわけです。我々はそれを内生化されているというんですけれども、内生化されているときに余り変なことは経済に起きないわけで、そういうものの結果として、ここに実質利回りは3.3%、デフレのときに達成されていましたよというふうに読んでいいのか。
 そうすると何か今まで議論している株価のリターンが少ないから、えらい心配だというのは非常に部分均衡的な見方であって、全体を見てないのではないかという気がするのですが、どうなんでしょうか。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございます。数理課長、何か。

○ 坂本数理課長
 この14ページの実質運用利回りの点でございますが、平成12年度までは財投預託が義務づけられておりましたので、すべて財投金利であると。それから、13年度は一部運用の部分がありますが、まだ財投預託の部分がかなり残っておりますので、そこから来ているものがございますので、一般的に自由な資本市場での運用という形にはなっていないということでございます。

○ 吉冨委員
 それはどっちにバイアスがかかっているんですか。金利としては下の方にかかっているんですか、上の方にかかっているんですか。

○ 坂本数理課長
 財投預託の方は上の方にかかっていると思います。

○ 吉冨委員
 何%ぐらいですか。

○ 若杉分科会長
 何%ぐらいか、具体的に。預託金利の数字を言っていただいたらいいんじゃないですか、過去の。

○ 吉冨委員
 いいです。そういう読み方ですよね、計算根拠とか、それがわかればいい。2%を切ると思う。

○ 坂本数理課長
 同じ資料の29ページを見ていただきますと、参考4の表の一番右側に新規の預託金利というものが載ってございます。それから、この預託によりまして、上がった収益でございますが、これが厚生年金、国民年金別に12年度までのものが掲載されていると、こういうデータになってございます。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。総務課長、どうぞ。

○ 高橋総務課長
 吉冨委員、ご指摘の先ほどの表は、財政投融資の部分はかなりウエイト、相当大きいウエイトのあれですから、財政投融資、資金運用部から返ってくる金利については、元本の運用評価益を全くカウントしていない数字になっているということでございます。ですから金利低下局面での債券運用という、資金運用部の預託を一種の債券運用だと考えれば、バイ・アンド・ホールドというのを考えれば、金利低下局面で、評価益入れていない利子だけの運用ですから、ここの10年〜13年は金利低下局面ですから、むしろ市場運用よりも低い数字がちょっと見えているということになるのではないかと思われますけれども。

○ 吉冨委員
 反対ですか。だから困る。

○ 高橋総務課長
 低い方です。

○ 若杉分科会長
 債券価格の値上がりを考えれば利回りはもっと高いと。

○ 吉冨委員
 だからマーク・トゥ・マーケットの計算をしているか、してないとか、全体がはっきりしてないと、せっかく利回りというのは50ベイシスポイント違っても違うわけですから、そういうのが大事なんですね、恐らく。3%ぐらいしか実質利回りは出ない。しかし、3%あるということは大変なことですから、先ほどの1.25%の2.5倍もあるわけですから、物すごいいいことをやっていると読めるのか。しかし、この数字はこういう理由で特殊な要因が入っているから、簡単には将来に延長できませんとか、そういうことがわからないと、この運用部会は非常に議論がしにくいですね。

○ 若杉分科会長
 わかりました。その点、この次まできちんとするようにいたしますので。

○ 吉冨委員
 今のような概念の調整が必要ですね。キャピタルゲイン、ロスを入れているのか、入れないとか、それは金利だけで図っているのか、図ってないのかというのは非常に重要なコンセプトじゃないでしょうか。

○ 若杉分科会長
 これまで、バイ・アンド・ホールドだということで、そういうことを考えないというか、今のようなやり方でいいだろうかということでやってきましたけれども、改めてこの分科会でも議論したいと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。

○ 吉冨委員
 バイ・アンド・ホールドで、例えば7年間で持っていても、毎年締め切っていくことが、マーク・トゥ・マーケットですから、キャピタルゲインが出るわけですよね。

○ 若杉分科会長
 そうです。大和委員。

○ 大和委員
 前にもちょっと申し上げましたけれども、30年とか超長期で考えるとどうしても過去の実績に引っ張られてしまって、福井委員が言われましたように、私自身も全く違う局面に日本の経済が今入っていて、それを過去の延長とかでいろいろと議論してはまずいように思いますので、そういう意味で、とりあえずは10年間ぐらいの見通しを立てて、それが実質経済成長率との関連で整合的かどうかという観点と、それから現在のスタート時点の相場が割高にあるのか、割安にあるのかというような観点も調整して見た方がいいと思うんですけれども・・・・。しかし、10年ぐらいをとりあえず推定するとしましても、はっきりとわかることは何もなくて、先行きはどうなるかわからない。例えばデフレでスタートして、数年ぐらいデフレであったとしても、デフレのときは株が悪いかもしれませんけれども、デフレを直そうとして一生懸命通貨供給をしていれば、どこかでハイパーインフレになって、今度は債券が一番リスクが大きいというふうに変わるわけですから、基本的には従来と同じ考え方で、分散投資をするという以外に解決策はないと思います。その分散投資をするときに、国内だけではなくて、国内の株がかなりリスクが高いということであれば、海外をもっと考慮に入れるべきでありますし、国内の株につきましても、皆さんがおっしゃっておられるように、何でもパッシブということではなくて、アクティブなりいろいろな考え方を入れた方がいいということになるでしょうし、そういう意味で、これから10年ぐらいを見通して、私はかなり悲観的な見通し、低成長ないしはゼロ成長ぐらいを考えた方がいいと思っておりますけれども、そういう条件であっても、分散投資で国内株はある程度は入れた方がいいということになるのだと思います。
 その入れ方をどうするかは推定の仕方が悲観的な推定から多少楽観的な推計までいろいろとあると思いますから、その中で常識的に余りリスクをとらない、あるいはリスクを無理したリターンを追求しないというやり方で考えればいいことであって、それはもう少し具体的な議論をした方がいいというふうに思います。
 それから、そのリスクのとり方を考えるときに、結局は実質運用利回りの目標をどうするかで決める。それは年金財政でどの程度の実質運用利回りを想定してもらうかということに関連するわけですけれども、それは今のような低成長であっても、債券の利回りが基本的には実質運用利回り目標のもとになる。というのは大部分債券を結局は入れざるを得ませんので、債券で大体決まるわけですが、そうやって考えても、1.0%とか1.25%というのはそんなにおかしくない数字であるように思いますけれども・・・・。そのリスクのとり方いかんで、もう少し株をうんと入れるのかとか、あるいは海外の証券を多く入れるのかということは出てくるわけで、それも結局は基本ポートフォリオのもう少し具体的な議論のときに考えればいいことのように思います。
 以上は、一番最初の前提の積立金は2050年ぐらいまではずっと大量にあるという前提での話ですが、そもそも年金財政、年金制度の考え方次第でたびたびここで議論になっておりますように、積立金の考え方というのはいろんな考え方がありますから、そのときにはまた別の調整が必要かもしれませんけど、一応そういう前提での考え方ということです。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。時間が大分過ぎたのですが、この次も引き続きこの議論したいと思いますが、先ほど内海委員、挙手されていましたが、ご発言になりますか。

○ 内海委員
 吉冨さんの言われることが私よくわからなかったのですが、財投に預託していたものについて、マーク・トゥ・マーケットを含めて分析しろと言われてもちょっと無理じゃないかと思うのですが。

○ 井口審議官
 補足申し上げますが、基本的には預託金利でございますので、債券を持っているわけではございません。定期預金をしているようなものでございますから、そこの部分については資産価値の変動というのはございませんので、単純にそれをドッキングをいたしまして、あと市場運用部分については、先生がおっしゃられたような問題が起こりますので、それを合計したものが先ほどの数字ということでご理解をいただけたらと思っております。

○ 吉冨委員
 だから、こういう特別の財投運用していたときの影響がどのくらいあったか。見たいのは、要するに、先ほどからの賃金上昇率とリターンの比較ですから、日本経済が全く違う局面に入ったときに株価が上がらないという議論しているわけではなくて、株のリターンと債券のリターンと賃金の上昇率というのは相対的にどう決まるのかという議論をしているわけで、賃金上昇率が何%になるのですか、実質金利が何%になるんですか、株のリターンが何%、そういう絶対的な水準の話をしているわけではないんですね。相対関係というのは、先ほど申し上げましたように内生化されちゃいますので、先ほどのように、財投運用の場合を除いても仮に2%で回っていれば、回る可能性もあるかもしれないというような議論を早くした方が意味が出てくるのではないかと思います。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございます。ごく簡潔に、高梨委員から。

○ 高梨委員
 そもそもの出発点は、株式を含む分散投資の是非と、こういうところから出発しているのだと思います。そういう意味からすれば、株式は債券よりもリスクが大きいわけですから、期待収益も大きいという考え方は普通だと思います。もしそうでなければ、誰も株に投資をしないと、こういうことになってしまって、株式市場は日本でも成立しないどころか、世界の各国で、今ロシアでも中国でもあるのですが、そういうものすら成立しない、こういうことになるのだと思います。
 また、マクロ経済の資金供給という面から見ますと、株式市場を通じて、政府ではなく企業に対して資金が供給されると、こういうことになるわけです。企業活動の血流になると、こういう意義もあるということで、株式を含む分散投資ということが必要だと、こういうふうに思います。
 ただ、若干それと離れるのですが、先ほどの議論の中で、パッシブかアクティブかという議論がなされているのですが、それはまた別の議論の場でしないといけないのではないかと思います。そもそも基本方針をどういうふうに見るのか、あるいは変えるのか、変えないのか。それから、また移行ポートフォリオを変えるのか、変えないのか。来年度の設定に当たってどう考えるかという場において議論をすればいいのであって、今現在は年福から引き継いだものについてはアクティブが多いんですね。それをパッシブの方に持っていくと、よりシフトしていこうと、こういう動きの中だと思いますので、パッシブかアクティブかという議論はまた別の場で検討した方がいいと思います。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。それでは小島委員、お願いします。

○ 小島委員
 この年金積立金については、最終的にはその性格に戻りますが、これまで何度も主張していますように、そんなに積立金は持つ必要がない。現在の積立金は、安全・安定運用でいくべきで、だから債券中心でいいのだということを言ってきました。そういう前提に立って、基礎年金を税方式にすれば積立金の額自体も大きく変わってくると思っています。そうは言っても、今日の論点ペーパーの二つ目の「○」にありますデフレ下における株式投資ということをどう考えるかということです。このデフレ下というのが基本ポートフォリオに移行するまさに移行期間に当たるわけです。これも何度か言っていますけれども、基本ポートフォリオでの国内株式の比率を12%に持っていくということで、新規投入分では20%近いものが今株式運用に回っていますので、それの比率を落とすということがあってもいいと思います。移行ポートフォリオも幅を持っていますので、少し幅を持たせるということが現実的な問題としてはあるのではないかと思っています。以上です。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。皆さんからいろいろ貴重なご意見を出していただきました。今日最初にお話しましたように、年金積立金の運用の在り方については、今日を含めて4回ご議論いただいたわけですが、後から後からいろんなご意見がわいてきておりまして、いかに問題が深いかということだと思うのですが、引き続きこの後も議論をしていきたいと思います。今日いただいた意見につきましては、事務局の方でまとめていただいて、この次、整理して出していただくことにしたいと思います。そういうことで、今日はあえて議論というよりもご意見を伺うということで進めさせていただきました。
 先ほど申しましたように、年が明けてからも引き続き検討を行っていきたいと思いますので、今後とも委員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、お約束の時間も大分過ぎてしまいましたので、今回はこれまでにしたいと思います。
 最後に次回以降の日程について、事務局に確認していただきたいと思います。運用指導課長お願いします。

○ 泉運用指導課長
 次回の日程でございますが、今、座長からもございましたけれども、年明け1月にと思っております。具体的な日時は、また追って別途ご連絡させていただければというふうに思います。

○ 若杉分科会長
 そういうことだとそうですので、よろしくお願いします。
 それでは、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


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