02/12/24 第2回看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会議事録       第2回看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会議事録 日時   平成14年12月24日(火)      10:00〜 場所   厚生労働省専用第13会議室 出席メンバー 大内宏子、川原礼子、神田律子、木村光江、國井治子、世古美恵子、        竹尾恵子、辻本好子、西澤寛俊、濱田悦子、正木治恵、柳田喜美子、        渡津千代子(五十音順、敬称略) ○看護課長(田村)  時間となりましたので、ただいまから第2回の「看護基礎教育における技術教育のあ り方に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、クリスマス イブの今年も最後の週にこういう会を開きまして、本当にお忙しい中ご出席をいただき ましてありがとうございます。本日は内布委員がご都合がどうしてもつかないというこ とでご欠席でございます。私どもにメールで少し意見を頂戴しておりますので、機会が ございましたらご紹介いたします。それでは竹尾先生よろしく議事進行をお願いいたし ます。 ○竹尾座長  本日の議事に入らせていただきます。本日の議題は2つあります。1つは「看護基本 技術の学習項目」について、もう一つは「臨地実習において看護学生に許容される基本 的な看護技術」についてという、この2つについてご検討をいただきたいと思います。 まず最初に事務局から資料の確認と説明をお願いいたします。 ○勝又補佐  資料の確認をさせていただきます。最初に座席表、次に看護技術のあり方に関する検 討会の議事次第です。それからメンバー表があります。次に資料1として、「看護技術 教育の現状(委員からの意見の概要)」があります。資料2として、「『看護基本技術 』の学習項目(案)」で、それぞれ1枚ずつのペーパーになっています。資料3ですが、 「臨地実習において看護学生に許容される基本的な看護技術(案)」ということで2枚 になっています。その後に参考資料が2枚付いています。これは前回提出させていただ きました「医師の基本的医行為の例示」という参考資料です。資料4は「日本赤十字看 護大学における看護学実習の現状」ということで、濱田先生から資料をいただいており ます。それに、本日追加の資料で「看護学実習指導組織に関する学内組織と日本赤十字 社医療センター院内組織との関係」ということで追加資料をいただいていますので、よ ろしくお願いいたします。  それでは資料の説明をさせていただきます。資料1ですが、「看護技術教育の現状」 ということで、前回、先生方からいただきました意見を、看護学校・養成所、実習施設、 患者、看護学生ということで、4つの項目に分類して意見をとりまとめさせていただき ました。一応、特徴的なところだけ報告をさせていただきます。まず看護学校・養成所 ですが、実習前の学習の不確実さということで、「学生の技術をどのレベルまで到達さ せて実習に出すのかということが曖昧な状況である」ということとか、「看護師資格が ない学生に看護技術を実践させることの不安」ということで、法的保証が特にないとい うことが大きな問題になっているということです。  また、学生同士で身体侵襲を伴う看護技術の実施は、倫理的に問題にならない範囲に 限られていて、それ以上のものについては、なかなか実践することが困難であるという ことが、看護学校・養成所側の意見として出されています。  実習施設ですが、看護業務密度の上昇により、特に実習指導者が学生指導に専念でき る体制がなかなか作り出しにくい、ということが出ていることと、学生が関与した事故 の責任の所在が非常に不明確であり、実習病院側の責任体制をどういう状況で今後やっ ていけばいいのか、というところが曖昧な状況であるということが出されています。  患者側から見ると、患者の人権意識の向上によりまして、医療従事者への技術の安全 性によせる関心が非常に高くなってきているということや、協力依頼があって、協力し たいという気持はあるのですが、技術の未熟な学生たちには実施してほしくないという ような気持もあるが、それを表現しにくいというところがあるということです。学生の 受持ちに関して、適切なインフォームドコンセントが行われていないのではないか。ま た、学生の受持ちになる場合に、口頭での承諾が多くなっていて書面での了解というか 承諾が必要になるのではないかというご意見が出されていました。  次に看護学生についてですが、看護師資格がない立場上、身体侵襲を伴う技術におい て、患者への協力がなかなか得られにくいということとか、自力で実技を経験する機会 を設定できなくて、技術の習得に意欲的でなく、看護技術の経験不足が出てきていると いう状況とか、あるいは、逆に学生側の問題点として、生活体験が非常に少なくて、不 器用で巧緻性が低い学生が多くなってきていたり、社会性が乏しくて患者や家族とのコ ミュニケーションが不十分な学生が多くなってきているということが、それぞれの所で 「看護技術教育の現状」として出されています。まだまだいろいろ問題点はあるかと思 いますが、一応、先生方のご意見からとりまとめたものが資料1です。  資料2の「『看護基本技術』の学習項目(案)」です。これは平成14年の3月26日に、 文部科学省から出された「看護学教育のあり方に関する検討会報告書」の中で、卒業ま でに確実に身につけておくべき基本技術として、「『看護基本技術』の学習項目」が示 されたところです。今回の検討会では、この報告書の提言に基づき、学習項目として看 護技術というところを使用することとしました。要するに文部科学省で議論されたもの をそのまま一応使わせていただこう。けれども、文部科学省から出されたものをいろい ろ検討をした結果、もう少し詳細に技術を分解したほうがいいのではないかと思われる 部分とか、あるいはさらに追加したほうがいいと思われる技術とかがあるのではないか ということで、一応、事務局で追加したものを、赤の記載で追加させていただきました。 赤の二重線で消してある所は、特に座学で勉強をするような内容ということで、技術に 分類するというよりも、座学で勉強をするということにしたほうがいいのではないかと いうことがありまして、そういった部分については二重線で斜線で消させていただきま した。それについて、追加部分等について説明だけさせていただきたいと思います。  まず、環境の次の「食事援助技術」のところです。経管栄養法のところは、特に経鼻 胃ューブの挿入ということと、それから流動食の注入というのは、技術としては異なる 技術になるので、2つに分けたほうがいいのではないかということです。「排泄援助技 術」の所ですが、「膀胱内留置カテーテル法」ということで、カテーテル挿入と管理を 分類をしました。次に、「活動・休息援助技術」の所で移送の所ですが、車いすとスト レッチャーでの移送というのが、少し違うだろうということで、ここを分類しています。  「清潔・衣生活援助技術」のところですが、「寝衣交換など衣生活援助」ということ で、臥床患者と、輸液ライン等が入っている患者ということで、2つに分けさせていた だきました。さらに小児のところでは沐浴がなかったので、ここを追加したほうがいい のではないかということです。  「呼吸・循環を整える技術」ということで、病院の中では酸素吸入療法というのは全 部中央管理で出てくると思いますが、その他酸素ボンベの操作というものも必要ではな いかということと、吸引に関しては、口腔、鼻腔と気管内ということで、2つに分けさ せていただきました。「低圧胸腔内持続吸引中の患者のケア」、「人工呼吸器装着中の 患者のケア」。これについては、追加をしたほうがいいのではないかということです。  「与薬の技術」ですが、薬理作用、薬物療法というのは、先ほども言いましたように 座学で知識として学ぶものということで判断しまして、二重線を引いたところです。さ らに「経皮」というのを追加したのと、「直腸内与薬方法」で坐薬等の挿入を追加させ ていただきました。最後に「輸液ポンプの操作」が医療事故関連等もありまして、非常 に増えているということもあるので、基礎技術の中で輸液ポンプの操作は必須になるの ではないかということで、追加をしています。  「救命救急処置技術」ですが、気道確保のところで、救命士の今度の改正のこともあ りまして、「気管挿管」と「除細動」を追加しています。「救命救急の技術」は、救急 法に書いてあるということと、気道確保と人工呼吸、心マッサージに救命の技術という のは全部含められるのではないかというように考えて、救命救急の技術の所を二重線を 引いています。  次は「症状・生体機能管理技術」です。バイタルサインのところでは、体温、脈拍、 呼吸、血圧を追加しました。さらに「経皮的、侵襲的検査時の援助」ということで、12 誘導、心電図を追加しているのと、さらに腰椎穿刺などということで、その他の検査項 目もあるだろうということで「など」という言葉を追加しています。  「感染予防の技術」のところは、洗浄・消毒・滅菌を二重線で消しています。これは 機械・器具の取扱いということで私どもが考えて、中央材料室で特に取り扱うものであ り、またスタンダードプリコーションの中に含まれるのではないかということもありま して、二重線で消したところです。以上が追加項目と二重線で消した所の補足の説明で す。  資料2の看護技術を中心にしまして、資料3でこれらの技術の項目として、卒業の時 点で1つは「教員や看護師の助言・指導により学生が単独で実施できるもの」というこ とで、実施しようとする技術が特定の患者の状態に適していると認められたものであれ ば、学生が主体となって単独で実施できるものということで、レベル1に分類をしまし た。  次に「教員や看護師の指導・監視のもとで実施できるもの」として、患者・家族の承 諾を得て教員や看護師の指導・監視のもとで学生が実施できるものということで、2つ 目の区分をしました。3つ目の区分として、「原則として教員や看護師の実施を介助す る。または見学にとどめるもの」ということで、原則として学生による実施は行わせな いものとする。ただし、できる限り見学や教員及び看護師による実施を介助する機会が 得られるよう環境を整えることが望ましいということで、卒業の時点でこれらが、それ ぞれ3つの区分にもとづいて到達ができるように「臨地実習において学生に許容される 基本的な看護技術」としています。  2頁目は、先ほどの資料2で書き上げられた看護技術項目を、それぞれ水準1、2、 3ということで、分類をして書き入れたものです。これは説明をしなくても見ていただ ければ分類としては分かっていただけると思いますので省略させていただきます。  参考資料として、「医学生の臨床実習において、一定条件下で許容される基本的医行 為の例示」ということで、医師の分類、水準I、水準II、水準IIIという技術項目が書か れているものを、一緒にご覧いただきながらご検討をいただければと思っています。以 上です。 ○竹尾座長  ありがとうございました。ただいまの事務局の説明につきまして、何かご質問なり、 これはどういうことかというようなことがございましたらどうぞ。 ○木村委員  素人的な質問で失礼かもしれませんが、いくつか教えていただきたい点があります。 資料3の水準1、2、3の分け方ですが、これは難しい順とかそういう区別があるので しょうか。技術的なレベルの難しさということが基本になって分けられているものと考 えてよろしいのでしょうか。 ○竹尾座長  1、2、3は、どうしてそのように分けたかということですね。 ○看護課長  技術的な難しさと、あと患者さん方への侵襲性の程度の重さといいますか、そういう もの2つが基本になって、一応、提案をさせていただいたとご理解いただければと思い ます。 ○木村委員  分かりました。2点目ですが、これは全ての項目について、一応どの学生さんたちも 卒業までに必ず実施するもの、という前提で考えてよろしいのでしょうか。 ○看護課長  いまの先生のお話になりますと、教育の目標のような形になりますが、基本的にそう いう設定をされる学校があってもよろしいかとは思いますが、タイトルに「看護学生に 許容される基本的な看護技術」と書きましたので、このレベルまでは基礎教育、つまり まだ免許を有していない学生であっても、看護学生であるということでこのレベルまで は行ってもいいというふうにしようではないか。ですから、例えば実習3年次ないしは 4年次の最後の実習の時には、このぐらいまでのレベルをやってもかまいませんと、そ ういう認識で提示させていただきました。ですから、教育的にそこまでもっていくのが 望ましいというふうに、置き換えることもできないわけではないと思いますが、ただ、 学生の学習状況によっては1に分類はされてはいるものの、この人はまだそこにまで到 達は到底していないから、まだこの人は2レベルでしか活動させられないということは、 当然あるだろうとは思います。 ○木村委員  学校側の判断で、それぞれ実施されると考えてよろしいわけですね。 ○看護課長  はい。 ○木村委員  もう1点ですが、1に関しては、患者さんの同意ということが特に書かれていないの ですが、これはそこまでは必要ないというレベルのものと考えてよろしいのでしょうか。 ○看護課長  資料3のここの所、言葉が不足をしていたように思いますが、基本的には全て、看護 学生であるが故に患者さんの承諾を得る、同意を得るということは基本だと思っていま す。 ○木村委員  分かりました。 ○辻本委員  いまの木村委員のお話と重複するかとは思うのですが、FAXで資料を送っていただ いた時に拝見して思ったことが、同意を得る前提の説明ということについてです。現実 にいまナース達が患者さんに何々しますね、という一方的な説明で同意を得たつもりに なっていることが、さまざまな現場では小さな軋轢をうんでいる。そういった相談が届 いてまいります。何を私たちはする人なのかということを、やはりきちんと患者さんに 理解をしてもらうということが、いちばん大事なことだと思いますので、ナースの仕事 がちゃんと説明できるということを、教育の中では特にこれからは重点を置いていただ きたいと、患者の立場としてそのことを感じました。 ○竹尾座長  そうですね。実習をさせていただく、まずはその前提といいますか、そのことですね。 それについては、実際にやる場面の所でまた話が出るかもしれませんので、後で議論を していただきましょうか。基本技術の学習項目についてここはおかしいとか、どういう 意味だとか、これは足りないのではないかというご意見があれば、少しここでいただい てと思いますが、いかがでしょうか。 ○西澤委員  資料の3の中での救命救急処置の所ですが、赤字での気管挿管という辺りがちょっと 違和感がありますので、これはここの検討会では消しておいたほうがよろしいのではな いかと思いますが。 ○竹尾座長  資料の3に分類されている気管挿管ですね。 ○西澤委員  2のほうにも書かれていますが。 ○竹尾座長  それはいかがでしょうか。 ○神田委員  臨床では実際に気管挿管とか除細動は、現在ナースはほとんど行っていません。例え ば気道確保の場合には、エアーウェイの使用や体位による確保は行いますが、挿管自体 は、本当に特別な救急時でもない限り医師にお願いしているところです。 ○竹尾座長  その辺いかがでしょうか。 ○國井委員  きっと現状ではそうだと思うのですが、この度、救急救命士の所で、これが解除にな りました。私はこれを教育の中に入れるかどうかの議論は別として、1つ検討事項とし て乗せておくことは、必要なのではないかと思います。 ○竹尾座長  いま気管挿管について、それが良いかどうかというご意見がありますが、後半で実際 にやっている資料を説明したところで、もう一度議論を戻したいと思いますので、ご意 見としていま承っておきます。次に進ませていただいてよろしいでしょうか。この先に 実際に日赤からのご説明をいただくと、もう少し話が具体的になるかなと思います。  次に「日本赤十字看護大学における看護学実習の現状」ということを、濱田委員から 20分ほど説明をいただきまして、それでその後の議論にもっていきたいと思います。濱 田委員お願いいたします。 ○濱田委員  資料をご覧ください。本学の実習指導体制及び臨床側との関係については資料のとお りですので省略致します。  資料の2頁、「看護技術の学習に関する指導要領」を作っています。これは、技術の 学習に関する指導要領として、臨地実習における看護技術の学習の基本的な考え方、そ れから看護技術の学習項目についてどのレベルまで到達させようか、というものを明ら かにしたものです。ただし、この指導要領に記載した技術は、臨地実習中に全ての学生 が必ず実施すべきであるという位置付けではありません。その機会も受持患者や学生の レベルにもよりますので、あくまでも私どもきちんと了解した上で、条件を付加し、そ の留意事項を項目ごとに作っています。学習目標は学生個々の到達度や対象者の状況に 応じて柔軟に考えましょうということになっています。  1として、看護技術の学習を臨地実習を主眼にして、どのレベルまで学校では教えよ うかという考え方を5つに分けています。1番目はあくまでも患者さんの権利、安全の 保障を最も優先すること。2番目には学生自身の安全が保障されるように、それから対 象者、受持患者さんを選択する時、実施状況については、十分に配慮するということ。 3番目に検査・処置への見学・介助は、原則として患者さんの同意を得た上で実施する ということ。この辺は徹底して行っています。いまやっている状況です。4番目に看護 技術の学習に当たっては、患者さんの背景とか、患者さんとの関係性を踏まえて実施を するということ。5番目には原則的に臨床指導者あるいは指導教員の指導、監督のもと で実施するという、この5段階をきちんと守りましょうという共通理解をしています。  その上で、技術の学習目標について、学内ではA〜Dの取り決めを行っています。A という記号は講義のみで終わる授業です。Bというのはビデオあるいはデモンストレー ションまでを学習する。Cはモデルとか機器を用いて模擬練習をさせています。Dは学 生同士で模疑実習をしているという学内の区分です。  次に臨地実習の区分として、Aはテキストでの事前学習のみ、実習前にきちんと復習 させるということ。Bは見学、声かけなどはしますが、技術介助は行わない。看護者が することを見せていただくというレベルです。Cは一部実施、看護者が実施することを 見学しながら、できる部分を実施する。Dは基本的に監督のもとで、自分で技術を実施 する。Eになると単独で実施するということになっています。その単独で実施する時に 患者さんの状況等によって、注意事項をきちんと設けています。  資料の3頁、今度はこれを具体的にどのような技術項目があって、そしてどういうレ ベルで授業をして実施させるか、到達させるかという、記号化したものです。  例えば「バイタルサイン及び病状の観察」というレベルでは、1つは検査処置終了後、 術後、血圧、脈拍変動が著しい場合、変動時の治療的指示があるような場合、看護師が 一緒に測定・観察する。学生単独での観察は行わないというのを原則にしています。2 番目に原則的にはバイタルサイン測定後は学生は速やかに看護記録に記入する、あるい は臨床指導者又は教員にきちんと報告をする。3番目にはレベル1の実習(基礎実習)、 ここでは基礎実習と特に成人看護学の実習をレベル2と言っています。小児・母性・老 人・精神はレベル3、地域と総合実習がレベル4という段階的に、本学では実習のレベ ルを決めているので、今日申し上げるのは、少なくともレベル1、レベル2の成人の実 習までの次元でここまで到達させよう。総合実習では一応それを全部終えさせるという ような、二段がまえの実習項目です。  次に、レベル1実習での指導を終えた後に、原則的に学生の単独測定に任せるという ふうにしています。病状によって患者さんへの負担という問題を十分配慮しながら、ち ょっとおかしい数値や何かの時は、きちんと重複して指導者とか教員が再度測っている ということをバイタルサインでは行っています。  2番目の環境整備については、ベッドの整頓、床頭台の片付け、ごみ箱というような 環境についての配慮とベッド周りの整頓が、学生一人で行えるように指導をしますが、 その際に、患者さんの私物を破損・損失しないように十分指導をしています。中にはと ても高価な物をお持ちの患者さんがおります。落としてお湯飲みを壊したと、そうした らそれは有田焼の何万円もするようなものだったというような、長年も愛用していた物 とか、いろいろありまして、私どもは患者さんの持ち物は非常に気をつけてということ を指導しています。  次に、環境整備の時にシーツを一旦はずして、しっかりつくり直す時に、基本的に学 校でする技術を適用させています。環境整備でよく施設側と学校側の教育で技術の乖離 があると言われていますが、いまのところ環境整備においてはありません。  重症者の環境整備とか、術後の臥床患者の環境整備は、必ず指導者又は教員が付き添 って実施するというふうに、環境整備の中でも分けています。  運動・移送に関しても当然なのですが、酸素療法とか、患者の状況によって輸血・輸 液等の治療を受けている患者とか、病状が不安定な患者の車椅子、ストレッチャーの移 送は、必ず指導者の同伴でする。病状が安定し学生が単独で実施できる場合は、移送前 に必ず注意事項を学生に確認してからさせるということ。あと、機能障害がある、麻痺 患者、骨折、歩行障害のあるような方は、原則として指導者あるいは教員が付き添って 行う、というふうに運動・移送に関しての留意事項も3点決めています。  清潔に関しては、入浴介助は原則的には指導者あるいは教員が同伴・監督の下で最初 は実施しております。病状の急激な変化が起こり得る患者さん、あるいはいろいろなラ イン類が捜入されている患者の清潔に関する援助は、原則として指導者あるいは教員が 同伴して行うことにしています。  食事の問題ですが、誤嚥の可能性のある患者さんの食事介助は、原則として指導者同 伴で行うということ、また、経管栄養、チューブからの食事の注入は、原則として指導 者が同伴して実施することにしています。  排泄の援助についても、同じように患者さんの病状によって、症状の不安定な場合と か、麻痺のある方、それからいろいろな障害をもっている方、輸液、酸素療法を行って いる方の排泄のケアは、原則的に指導者と一緒に行うようにしています。  与薬のことですが、経口与薬の準備・配送は、臨床指導者の同伴の下に実施していま す。確認がとれて、きちんとできる場合は1人でもさせますが、できるまで同伴者の下 で行っています。  静脈内点滴の薬剤の準備・実施の介助は、必ず指導者の同伴の下に行っています。筋 肉注射、皮下注射は、指導者の同伴の下に実際にさせています。その際には、薬物等の 確認、その副作用とか薬理作用の確認。準備の段階から実施して後かたづけまで一環し て行わせています。吸入療法における与薬の確認も同じように扱っています。抗ガン剤、 ホルモン剤、劇薬、、輸血等などは見学にとどめています。  採血については、実施時に必ずゴム手袋を着用して、感染防止に留意させています。 既に肝炎・エイズなどの血液を介して感染する疾患をもつ患者の採血は、原則的に実施 させないで見学にとどめています。上記以外の受持患者の採血は、全て患者の同意を得 た上で、指導者あるいは指導教員の同伴の下に実施しています。針刺し事故が起こった 場合の対応は、また別に定めています。  罨法のことですが、最近、温罨法による火傷の問題がありましたので、特に火傷予防 のことについては、実施した後、必ずその施行後の状況を指導者又は教員と一緒に確認 をするという留意事項を付けています。  吸引のことに関しては、口腔内吸引は指導者の同伴の下で行っていますが、うまくで きるようになったら学生1人でもできるようにしてあります。気管内吸引は原則的に見 学あるいは介助というレベルで行っています。実施する場合に、口腔及び気道粘膜の損 傷がないように十分注意する。それから使用時は必ずゴム手袋を。これはレベル1、レ ベル2の場合なので、総合実習では口腔内吸引は全部自分たちでしています。  酸素吸入の件については、当然その観察もそうなのですが、投与量とか、加湿状況、 チューブの閉塞の有無、ボンベの残量、必ず学生とともに指導者・教員が一緒に確認を することからスタートしています。酸素ポンベの交換は時には、外来へ搬出の折りに急 になくなることがありますから、そういう時は指導者・教員が同伴の下でチェンジして います。  救急や終末期の技術という辺りは、レベル1では原則として見学レベルです。そのあ とは介助を行って、そしてその体験を振り返って、救急や終末期の看護について理解を 深めるということで、指導者及び教員と原則的に、これは一緒に行うということをして います。  細部に及ぶ技術の注意事項と同時に、教員と指導者の役割分担を技術に対して明確に しています。与薬とか薬物注入で、患者さんに直接治療行為に関係するようなものは、 全部臨床側の指導者に実施していただいている。教員は単独で行わないということ。患 者の病状に応じて教員と指導者の分担をその日で話し合って決めています。  また、看護技術上の事故で破損が起きた持ち物の問題だとか、その他いろいろな細か いことは決めています。技術の到達レベルのBCとか、CDとか、DEと記号が2つ並 んで入っている場合は、対象者、クライエントの状況とか、学生の学習の到達レベルに よって、こちらで判断をして、いろいろなレベルで行っているという状況です。以上で す。 ○竹尾座長  ありがとうございました。いまの濱田委員のご発表と、その前のところの資料に戻り まして、こうした項目について、あるいはその区分についてご意見を伺いたいと思いま す。整理の都合で最初に技術項目が網羅してありますが、この『看護基本技術』の学習 項目については、いかがでしょうか。今日ご欠席の内布委員からはメールでご意見をい ただいていますが、いまの技術項目については、「かなり網羅されていると思う」とい う意見をいただいております。これでは足りないとか、これは多いとかということがあ ればどうぞお願いします。 ○正木委員  資料2の『看護基本技術』の学習項目なのですが、この内容は全て資料3に数字に分 けて記載されていると、解釈してよろしいのですか。 ○竹尾座長  そうです。 ○正木委員  そうなりますと、資料3の学生が単独で行えるか、教員の指導の下にとか、そういう ことはすごく学校側にとっても、とても必要なものなのですが、『看護基本技術』の学 習項目に関しては、これは文部科学省の報告書の中では、全体の中の一部の位置付けで、 この基本技術に関しては、実施する際の態度・行為、前回、私の資料で添付しましたが、 そういうものと抱き合わせて学習していくことや、それと同時に看護ケア、基盤形成の 方法という全体の学習内容の中での位置付けが明確に示された中でのものなので、この 検討会で、この部分だけ取り出されたときに、これが一人歩きしてしまう危惧をちょっ と感じます。そういう意味では、この内容は全て資料3に入っていますので、この検討 会の報告書としては、資料3を出していただくということではいかがでしょうか。 ○竹尾座長  私も賛成です。確かに技術だけを取り出すのは危険だというふうに思いますので。で は、皆さんご了解していただけたようですので、いま資料の3にありますように、水準 1、2、3と分けてあります。その所についてご意見をいただきたいと思います。  内布委員からのご意見を言いますと、1番で単独でできるものの中の「輸液ライン有 り」のところの衣類の交換、輸液ラインのある方の衣類の交換というのは、現実には単 独では困難ではないかというコメントはいただいていますので、それを申し添えておき ます。  先ほどのご意見にもどって、西澤委員からいただいた気管挿管の件についてはいかが ですか。救急救命士のこともあってという國井委員からのご意見もございましたが。 ○看護課長  私ども、勝又からの説明にもありましたように、まさに救急救命士の検討会の流れを 汲んで、ここへ書き上げたほうがいいかなと、こういうふうに思ったところなのですが、 現実にナースがまだ気管内挿管をやっているケースはほとんどない、という実態だとい うこともありますので、その辺は先生方のご意見をいただければと思います。 ○竹尾座長  例えば実際の教育の場面で、今までどんなふうだったのでしょうか。 ○世古委員  救命救急について、「看護基礎教育」の中で、どういうふうに位置付けるかというこ とは、大変重要かと思います。私の考えでは、できるかできないかという現実的な問題 はあるにせよ、看護師になるわけですから、いまは素人でも大変な所まで関与している という事実がありますし、特に私どもの地方性と言いますか、東海沖地震がいまさけば れていますので、こういった救急救命に関しては、かなり到達させていかなければいけ ないというふうに考えています。したがって、この3の所で、教員・看護師の実施を介 助するという前提で見学にとどめているということについては、ちょっと現実的ではな いと思いつつも、やはり気管挿管ということは見学するということは、私は当然だと考 えています。 ○渡津委員  私はこの3番を見たとき、すぐにナースあるいは看護師、教員等がするという解釈を しないで、当然ドクターが実施されるところを、臨床で急変があったとき必ずナースが リーダーをとって指示をしたりする時、学生も一緒に受持ちの患者さんならば、そこに 一緒にいなさいとか、その部分介入をさせてもらえるものという解釈でこれを見ていた のです。だから見る者が、いま言われたように救命救急のことまで考えてとらえる方も おられれば、私のように実際の現場では、きっとドクターが中心でそれを取り巻くチー ムがいて、その一端に学生にいなさいということで、一緒にいさせてもらえる、そのよ うなとらえ方をする見方があるので、ここは断わったほうがいいのかなと思います。 ○西澤委員  おっしゃるとおりです。ここの解釈が皆さんまちまちなのです。教員というのを看護 教員ととらえれば、看護師がしているものということになりますし、そうではなくてこ の教員を広く、ドクターも含むととらえればいまの解釈ですね。はっきりしておいたほ うが後で問題を起こさないのではないか、ということで提案しました。 ○竹尾座長  実際にこれを見たこともないような学生がいては、やっぱりちょっとよくないですね。 ○西澤委員  医師がしているのを見るのは、まったく否定するものではありません。ただ、看護師 がしているということ、それを見学ということになると、看護師が直に挿管をやってい るということになるわけですから、法的にどうこうではなくて現状と照らし合わせて、 そういうふうなことを実際にやっている所があるのですか、という話です。 ○竹尾座長  ほかの先生方もいかがでしょうか。ドクターがやっている、そこに学生は一緒に付い て見させていただく、そこを少しはっきりさせるということでよろしいですか。分け方、 レベルについて何かありますか。 ○神田委員  呼吸循環を整える技術の中の2番目と3番目なのですが、例えば低圧胸腔内持続吸引 中の患者のケア、あるいは人工呼吸器装着中の患者のケアは、すごく広い範囲になりま す。実際に私どもも臨床では、こういう患者のバイタルサインの測定、観察、清潔援助 は学生と看護師が一緒になってやっております。ただ、低圧胸腔内持続吸引器の操作、 あるいは人工呼吸器の調整とか操作、その部分だけは看護師がやるのを見学という形に なりますので、こういう書き方ですと、例えば人工呼吸器を付けている患者さんは、学 生には受け持たせることができないと解釈されないか危惧いたしますが。 ○竹尾座長  分類と書き方ですがいかがでしょうか。日赤の濱田先生の所はこういうケースはどの ように分類しておられますか。 ○濱田委員  特殊なケースは指導・監督の下にというのが前提条件ですね。先ほど神田委員が発言 されましたようにバイタルサイン測定のように何回も行っていて、できるというものは 1人でさせますが、直接のケアとか、機械の操作はしません。全部点検しておかしいと きはすぐ報告をしてする、という段階をとっております。 ○竹尾座長  3の表現はもっと細かくといいますか、この場合は駄目、この場合はできるというふ うにしたほうがはっきりするということでしょうか。いかがでしょう。 ○正木委員  人工呼吸器装着中の患者のケアに関してもそうなのですが、先ほど濱田委員の報告で、 例えば食事介助にしても、誤嚥の可能性のある方は必ず教員や看護師の下や、内服薬の 与薬に関しても、内服薬の内容によっては単独では決して行わず必ず教員の下というこ とがありましたので、何かそういう実際に受持ちさせていた患者さんの様態に応じてこ の水準1、2、3が教員の判断等で変わる場合があると思うのです。  人工呼吸器装着に関しても、私もこういう患者さんを受け持たせていますし、ただ機 械の操作は絶対させません。そういう形で患者さんの状態によるものを、例えばこの表 の前に患者さんの状態によっては、これに判断によるとか、何かそういう説明書きが入 ったほうがいいのかなと思います。そういう意味では先ほど木村委員からご質問があり ました、このものが何を基準に分類されているか、身体侵襲性とかによって基本的にこ の水準が分類されているということと、あとは受持患者さんによっては、その水準も判 断が必要であるということが前提として記述されたほうがいいのかなと思います。 ○竹尾座長  その辺はもう少し説明がいるかもしれませんね。 ○勝又補佐  資料3−1の所に、「教員や看護師らの助言・指導により学生が単独でできるもの」 という所の下に、「実施しようとする技術が特定の患者の状態に適していると認められ たものであれば」という表現が、いま正木先生がご指摘になったこととして、事務局と しては考えた部分が1点です。  もう一つは、資料3の2頁め「人工呼吸器装着中の患者のケア」というのは、確かに 広いとらえ方になっていると思うのですが、ここで表現しようとしていたのが、機械・ 器具の操作に関して見学にとどめるものという考え方だったのですが、たぶんそれが表 現ができていないのだろうと思います。 ○竹尾座長  そこははっきりさせたほうがいい。患者さんの状態によって、かなり動くということ も、書いておかれたほうがいいかもしれません。その判断は実習のさせ方が指導者がす るということになるでしょうね。水準1、2、3に関して、これでは分かりにくいとか ということがあれば。 ○辻本委員  文章として残るということであれば、資料3−1、「患者の状態に適していると認め られ、なおかつ患者の了解を得て」ということを、文章としては入れておくご時世では ないかと思います。 ○濱田委員  資料3の最初に書かれてある「看護学生に許容される基本的な看護技術」とあります が、この許容される基本的という辺りの考え方を、前文内にきちんと入れておかないと 困るのではないでしょうか。私どももこれを作るとき、「基本的な考え方」というとき に誰を第一にするのとかという問題をずうっと議論したのです。実習場においては、学 生優先ではなく、あくまでも患者さんの安全性、権利という問題を考えるということを 共通認識させるということで、許容という辺りの基本的な考え方は、やはり文章化して おいたほうがいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○竹尾座長  2頁の最初に書いてあるように、技術の学習に関する指導要領に、そこに基本的な考 え方ということで書いておくということですね。 ○柳田委員  救急救命士の気管挿管の問題につきましても、インフォームドコンセントをし、30例 するということになっていますが、それでもまだ議論が揺れ動いていまして、現場では、 本当にそういうことをさせてくれるのだろうかという不安があるようです。基本技術で すから、今おっしゃった許容される基本技術という辺りをしっかりと踏まえておかない と、事故があってからでは遅いという感じがします。 ○竹尾座長  今のご意見は、患者さんのインフォームドコンセントをきちんとしておこう、学生と いう立場でどこまで実習をさせていただくか、ということですね。 ○神田委員  濱田先生にお伺いします。注射の確認のところの皮内注射、皮下注射が、学内実習で はモデルや機器を用いての模擬練習になっていますが、臨床では実施になっています。 人体への初めての刺入が患者さんということでしょうか。 ○濱田委員  いいえ。実習でする場合は、その前段階で、指導者と学生とで必ず人体に実施してか らすることになっています。授業ではモデルで終わっているのですが、実習でそのチャ ンスがあった場合には、前日練習をしています。 ○神田委員  身体侵襲を伴う技術については、私ども臨床としましても、イメージトレーニングと 学内での訓練が本当にできているということを条件にしたいのです。そうしないと患者 さんの安全は厳しいと思います。それを危惧していますので、質問させていただきまし た。 ○竹尾座長  学校の先生方、実際に臨床の場に学生を連れていった場合、そういうところはいかが でしょうか。実習をするときには、事前に教官と学生とで練習してから患者さんのとこ ろに行くとか、あるいは学内演習でそれを終えているとか、そういうことと関連すると 思いますが、ご意見はありますか。 ○世古委員  私どもの学校では、学内実習で学生間で行っています。もちろん、プロセスとしては、 ドクターである学校長のオーダーをもらって、その後の観察ということで、一連の学習 課程を経て臨地実習に行っています。 ○竹尾座長  そうしたことが見えない、ということですか。現場からすると、やったことがなくて いきなりやってしまうようなことが起こるかもしれない、という心配があるのですね。 特に書いていなくても、みんなそうしているということなのかもしれませんが、全体の 中に、一度は実際にやってみてから患者さんに実施するということが望ましいとか、そ うでなければならない、ということを書いておけばいいのかもしれませんね。ほかに、 ございますか。 ○西澤委員  先ほど正木委員から、資料2を渡さないほうがいいというお話がありましたが、その 意味がちょっとわからなかったのですが。 ○正木委員  この内容はすべて資料3に網羅されていまして、資料2は、文部科学省からの報告書 の一部を抜粋したものです。学習項目に関しましては、報告書では構造化して示されて いますので、その一部分だけ取り上げられたときに語弊が生じるのではないか。それで、 この内容がすべて資料3に入っているのであれば、むしろ資料2は出さないほうがいい のではないか、という意見です。 ○西澤委員  逆に、資料3は何を元にして作ったのかという根拠として、資料2があったほうがわ かりやすいという気もするのです。この検討会で出されたものに一部項目を追加したと いう注釈をしっかり述べて、それが元で資料3ができたと言ったほうがわかりやすいの ではないでしょうか。これがないと、この項目はどこから持ってきたかとか、今回初め て作ったのかという説明を、いちいちあとでしなければならないかもしれない。あった ほうがわかりやすいかな、という気がするのですが。 ○正木委員  そういう意味では、資料3の注釈を付ければいいのかなと思います。学習項目という と、あくまで学習内容を規定するものですので、これが前面に出るのは、この検討会の 趣旨ではないのかなと思います。 ○竹尾座長  いかがでしょうか。正木委員のおっしゃることもわかるのです。これが独り歩きして、 テクニックさえできればということになり、いろいろな関連要素がみんな飛んでいって しまう、それが心配だということなのだと思いますが。 ○辻本委員  素人ですので、どの段階でこういう発言をしていいのかわからないのですが、私は、 昨年の文科省の看護学教育のあり方に関する検討会というところにもかかわらせていた だいて、どれほど勉強なさるのか、本当にびっくりしました。そこに加えて、今回赤字 で加えられて、さらに増えている。患者の立場、素人から見ると、ますます大変になる のだな、という実感がまずありました。そして、資料1でおまとめいただいていますよ うに、特に実習施設では、指導者の不足、専任教員の不足という現実が浮かび上がって きているにもかかわらず、ますます実習項目が増えてきてしまっています。  これは、この会議で話し合うことではないのかもしれませんけれども、この問題を抜 きに、どんどん項目を増やしていくという議論だけで果たしていいものなのかと、非常 に強い不安を感じているのです。私も、看護学校などに伺う折りに、教員の少なさに困 っていらっしゃるという現実を耳にしますので、その辺りはどう考えてこの議論に参加 していればいいのかと、私自身がいま戸惑っている状況なのです。 ○竹尾座長  最初の、技術項目について戻ることになるかもしれませんが、足りないものはないか という感じで、どんどん増えていくということがあるかもしれませんが、これについて はいかがでしょうか。全部やらなければいけないという意味ではない、というお話がさ っきありましたね。 ○大内委員  今お話がありましたように、全部やらなければならないということではないというこ とと、今回赤字で追加されたことで、かえってわかりやすくなったのではないかと思い ます。臨床の現場としては、決して増えたのではなく、わかりやすくなったと解釈しま した。 ○竹尾座長  やることが増えたというわけではなくて、細かく書いてある、分かりやすくなったと いうことですが。 ○川原委員  私も、内容的なところではそう広がっていないと思います。 ○國井委員  私も、辻本委員のおっしゃったご心配を、同じように心配しています。これを基礎教 育の目標にはしていないということに関してですが、臨床側もこの教育を卒業したあと に引き受けていかなければいけなくなるわけですよね。看護実践を支える基本的な技術 項目になるわけですから、やはり基礎教育のところで学生の準備をきちんとしなければ いけない。実体験ができるような体制を敷いていないところで議論していくのはちょっ と現実的ではないな、という心配をしているのです。 ○竹尾座長  卒業した時点でこれはすべてできているのか、ということにもかかわるかと思います が、いかがでしょうか。一方では、全部できていないと卒業後困るということもありま すが、そんなにいっぱい入れたら間に合わないのではないか、というご意見もあるとい うことですが。 ○大内委員  確かに、学生のうちにこういったものを体験できれば、それなりに学習効果はあると 思うのですが、実際の現場では、そんなにできるということではないと思うのです。で すから、卒後の教育といいますか、入社時にきちんとオリエンテーションをするとか、 技術の確認をするといった形で、卒後継続教育に力を入れるという形でやっていると思 うのです。 ○竹尾座長  臨床の現場に新卒で入ってきた人にもう一度訓練をする、ということでしょうか。 ○大内委員  そうです。 ○竹尾座長  現実には、本当にそうですね。新人ナースがみんなできる、とはとても言えないのが 現実だと思います。その辺は、どうでしょうか。 ○看護課長  看護の臨床に出てからの研修のあり方に関しては、この間も申し上げたかもしれませ んが、私どもも大変重要な課題だと認識しています。そういう点で、来年度の予算の上 でも、そうした検討を進めていくための経費を計上していまして、今日閣議決定がされ れば、予算として認められることになると思っています。学生だけということではなく て、看護師の生涯にわたる技術の発達をどのように促していくのかということは重要な 問題なので、今後とも検討していきたいと思っています。とりあえず、ここでは、基礎 教育の中でどのレベルまでやっていったらいいのか、というご議論をしていただきたい とお願いしています。 ○竹尾座長  卒後にかかわりがないわけではありませんが、基礎教育の中で卒業までにどの辺まで やるか、ということですね。完璧な卒業生が明日からすぐできるのは確かに望ましいこ とですが、それはちょっと無理だと思いますね。 ○渡津委員  最初に課長さんのほうから、これは全員がするという考えではなくて、学校にある程 度判断が任される、という解釈があって、それを聞いて参加しているのですが、先日、 臨床の本音として、夜勤に入った卒業生がいちばん困ることは何だろうか、ということ をお聞きしたのです。そうしたら、たくさんは望まない、夜勤は朝に採血があるから、 血管に針を刺せる技術、そして点滴が必ずあるだろうから、学校でただ注射器を持つだ けではなくて、もっとたくさん吸える技術とか、大型の注射器で吸えるといった臨床に 即した注射の介助の実技、臥床患者さんの端座位からポータブルへの移動の危険がある から、移動動作、それから、急変時に、吸引器で吸うことではなくて、吸引器の瓶を持 ってきて操作するという一連の行動ができること、この4つを満たしてくれたら深夜勤 務の最初のときに安心だ、というのが本音でした。  私たちはこれを平面で見ていますが、3年生の最後ぐらいに実際の一連の行動ができ るようにと考えると、1年次から積み上げていく項目はかなりあると思います。今はこ れを一ぺんに見てしまっていますから、すごく見えるのですけれども、3年次の最後に 条件を付加しての状態に持っていくための段階というのは、各学校がきちんと整理して いくのだろうなと思っています。平面で見るのと立体で見るのとでは違うと思いますし、 現場の現状から考えると、その学校の母体とか実習先との関係もあると思うのですが、 そこは判断が問われてくるのかなと思います。 ○正木委員  学生の到達度を高めるという部分と、学生に許容される基本的な看護技術とが混ざっ ているのかなと思います。私が実習をお願いするときにも、学生の準備状態が整い、患 者さんもオーケーであれば、もう少し学生にさせたいなという技術があるのですが、臨 床の現場で、この行為は学生には許されない行為だとか、この行為は学生に許されるの に、なぜ教員はさせないのですかと言われて、臨床側と教員側が学生の実習について共 通の基準を持てない現状があるのです。そういう意味では、これは法的に許容するのか どうかよくわからないのですが、学習課程で許容されるものの基準というのが出れば、 それを元にして、現場の方たちと学校側で、この学生はここまでさせたい、という議論 が可能になると思います。そういう意味では、とても意味があると思います。 ○竹尾座長  そうですね。次に、患者さんの同意をとるということが実際にはどのようにされてい るのかを少し考えてみてはどうかと思います。教える側はお願いしているつもりでも、 患者さんの側からは強制されていると感じることもあるので、どういう方法ならよりう まくいくのか、ご経験からご意見をいただいて、いい方法を考えてみたいと思うのです。 辻本委員から何回かそのお話が出ていますので、ご意見をいただいて、教育サイド、臨 床サイドからもご意見をいただき、あるべき姿が見えると良いと思うのですが。 ○大内委員  余談のようなお話ですが、先日、患者さんに退院の許可が出まして、いつごろ帰りま しょうかと日にちを相談していたのです。そうしたら、患者さんが「何日がいい」とお っしゃった。どうしてその日なのかと聞いたら、その前日まで3年生の学生が実習に来 るので、自分がかかわっているから、学生の実習が終わった翌日に帰りたいのだと言わ れたのです。こちらは、本音の部分では、部屋がないから早く帰っていただけると助か ると思っていたのですが、3週間ぐらいの長い実習期間になりますと、患者さんと学生 との関係も良くなって、本当に感心によく勉強してくる学生で、療養中とてもよかった ので、学生の実習が終わってから退院したい、というお話もありました。 ○竹尾座長  大変いい関係で実習を終える、ということもよく耳にしますが、師長さんや部長さん からすると、入院が長びいて困った状況になるのかもしれませんね。 ○大内委員  前回もお話が出ましたけれども、学生が受け持つというと、そばにずっとついている のはとても苦痛であるということがあって、受け持ちを変えて欲しいというか、やめて いただきたいというようなことは、少し聞かれることです。 ○竹尾座長  その辺の状況を、少しコメントしていただいたほうがいいのかもしれませんね。同意 書をいただくという形がいいのか、どういう形がいいのでしょうか。 ○濱田委員  前回、私は、受持患者さんについて患者さんの同意書を書いていると言いました。で も、以前は書いていたのですが、看護部長に注意されて、現在では中止になっているそ うなのです。間違った報告をして、すみません。  というのは、同意書まで交わすというのは、患者さんが、学生の要求をすべて受け入 れなければいけないのではないかと、すごく責任を感じるのだそうです。自分は寝たい のに、学生が「洗髪してみませんか」と来ると断れないとか、そういう負荷的なものを 患者さんのほうが強く感じられるというのです。それで、「同意書など書かず、口頭で 婦長さんにお返事するほうが気が楽です、そのほうが自分たちも、嫌なときは嫌だと言 えるし、今はしてほしくないと断れます。」ということで、現在は、同意書はとらずに、 口頭のレベルでやっているそうです。  前の話題ですが、余裕があって計画的にされる採血ということについては、前の日に、 「明日こういう採血がありますが、私にさせてもらえますか」と学生と指導者が患者さ んとゆっくりお話をして、それで同意を得た場合には、すごくスムーズにいきます。 でも、回診時にオーダーが出て、即というときには、やはり看護師さんにしてもらいた いということもあります。ゆとりがあって、「ちゃんと勉強してきます」と言ったとき には心よく受けてくださる、という現状はあります。 ○竹尾座長  プライバシーにかかわるようなケアのときもあるということで、そんなときにはよほ ど受け入れてくれる状況がないと、なかなかうまくいかないと思うのです。 ○柳田委員  当然、実習指導者も不足するでしょうし、実習病院も不足するわけですから、実習病 院の基準緩和ということも少し考えていただかないといけないだろうと思います。 ○看護課長  いままでなかったものが入ってくるわけではありません。現状の教育の場面で行われ てはいるのだけれども、それは学生が単独で実施してもいいと思われるとか、見学にと どめるとか、そういう基準がなかったということだけです。ですから、これで実習施設 が不足するとか、対応しなければいけない実習指導者が足りなくなるとか、そういうこ とではありません。 ○柳田委員  そうですか。それならいいのですが、他学校がはみ出すのではないかと思ったのです。 ○川原委員  ちょっと資料で気になるところがありましたので、確認させていただきたいと思いま す。資料3の2頁、水準1の「教員や看護師の条件」のところですが、この「症状・生 体機能管理技術」のところで、「経皮的・侵襲的検査時の援助」とありますが、この括 弧の中に挙げてあるのは、侵襲的検査というわけではないですね。むしろ、非侵襲的で すね。 ○看護課長  これは多分、右側の2番目と左側の1番目を機械的に書き分けたときに、左側の1番 目のほうに非侵襲的なものを入れたということで、こういうふうになってしまったと思 います。そこのところは、工夫しないといけませんね。 ○竹尾座長  下から4番目の欄の1の「経皮的・侵襲的」というところが「非侵襲的検査時の援助 」ではないかということですね。心電図モニター、パルスオキシメーターの使用、スパ イロメータの使用と書いてありますが。 ○看護課長  2番目のところも侵襲的ではないですよね。これは、あまり言葉を足さないで「検査 時の援助」というふうにして分けておいたほうがいいのかもしれませんね。いずれにい たしましても、今日いただきましたご意見を踏まえて資料3を作り替えまして、また次 回に提出させていただきますので、今いろいろとご意見を賜れればと思います。 ○西澤委員  先ほどの濱田委員からの同意書の件なのですが、なるほどなと思いました。これは私 たち医療側の反省なのですが、特に昔の手術の同意書などは、何があっても文句を言い ません、ということだったのです。いまだに患者さんは同意書というとそう思っている のだなと、非常に反省しました。だからといって口頭でいいということにはならないと 思いますので、いま口頭でやっているのと同じような感覚のものを文書化するにはどう したらいいか、ということを真剣に考えるべきかなと思いました。同意書をいただくと きに、私たちが、「こう書いてください」と何となく強制的にやっているのではないか。 そこでは十分な説明をして、言ったことは十分にわかりました、私も自分の権利とし て、嫌なときはノーと言うということで同意させていただきます、ということで書いて いただく。その実践の方法を考えていかなければならないなと感じました。 ○濱田委員  患者さんには書いていただいていませんが、いつ口頭で誰が説明して、同意が得られ た、という一文は残しています。患者さんのもとでご説明して、こう同意が得られまし た、ということはメモしてあります。 ○辻本委員  私自身も、理想と現実という二重構造のジレンマに悩む世代ですので、一方では権利 と言いつつ、日本がそういう状況になっていくのは悲しいなと思っています。しかし、 特に最近、電話相談をお聞きしていて逆に教えられるのですが、やはり世代によってニ ーズが違うのです。70代、80代の方は、今もお話が出ていましたように、親切に丁寧に、 優しく親身になってくれたらそれでいい、ということなのですが、遺族の立場に立つ娘 や息子の世代は、それでは許せない、きちんと同意書をとっていたのか、ということに なってしまう。これが現実なのです。そして、30〜40代ということになると、また完璧 と正解を求める世代になる。悲しいかな、医療というのは常に2世代を納得させなけれ ばいけない。今は家族ということが意識の中にあっての行動が求められる時代になって きているというのが、私たちの電話相談を通しての学習です。こうした問題も、その辺 で考えていっていただければいいなと思います。 ○竹尾座長  「何も文句は申しません」などと書いて判こを押させられると、何をされるのかとび っくりしてしまうわけですよね。そこを、そうではない工夫ができないか、それでもき ちんと文書でいただくという方法があるか、ということですね。私などは、文書までい ただこうとすると患者さんが驚いてしまう世代に実習しましたので、ちょっとやりすぎ かなという気がありまして、今の濱田先生のご意見もよくわかるのですが、新しい世代 については新しい方法があるかもしれません。 ○渡津委員  在宅の実習が始まったときに、利用者さんのほうからそういう一文を求められまして、 いついつ学生がこのように行きますけれども、本人様に影響があるときは当然拒否をし てくださって結構です、といった学校長名の文書を、在宅訪問のステーションの所長が 利用者に配って実習をしたことがあるのです。病院の受持ちの患者さんについては、母 体病院などの大きな保護があって、そこまではやっていないけれども、在宅はやってい るということで、そのときに、時代が動いているなと感じました。同じ看護教育の中で も、在宅看護のときはどの学校もすごく意識しているのではないかと思います。そこの 違いは感じています。 ○竹尾座長  ある領域ではやっているかもしれない、ということですね。 ○神田委員  私どもの病院では、症例を発表するときに、もちろんお名前などは伏せて出しますけ れども、まとめさせていただきます、という承諾書を、学校と臨床とでいろいろ文面を 工夫して作りまして、お断りになるときは、どうぞお断りください、ということを添え て、説明書をお渡しさせていただきました。これは学校側の発案だったのですが、これ は本当に必要なことだと思いまして、それは実施しています。そのときも、受け持たせ ていただくときもそういう取組みが必要ではないか、という話は出たのですが、現在は 口頭だけでやっています。ただし、気になったときは、そのあとに回って意見を聞くと いう形の対応はしています。 ○竹尾座長  他に何かご意見があればいただきたいと思いますが、よろしいですか。よろしければ、 今日はこれで終了したいと思います。事務局から何か連絡がございますか。 ○看護課長  先ほども申し上げましたが、資料3につきましては、今日いただきましたご意見を踏 まえて、もう一度修正をさせていただきます。次回の会合の前に先生方にお目通し願え ればいいかなと思いますので、またメール等で送らせていただきたいと思っています。 資料3の水準1、2、3の説明文だけではなくて、それに付随するいくつかの要件も追 加的に書いたほうがよろしいかと思いますし、基本的な考え方を整理させていただこう と思います。 ○竹尾座長  修正したものをお送りして、また意見をいただき、まとめていくということにさせて いただきます。 ○勝又補佐  それでは、これからの予定について連絡をさせていただきます。第3回は、1月27日 (月)の16時から開催させていただく予定になっていますので、よろしくお願いしたい と思います。第4回目は、2月24日(月)の2時からです。第5回は、3月10日(月) の16時から開催したいと思いますので、それぞれよろしくお願いします。 ○竹尾座長  お忙しいところ大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、今日 はこれで閉会いたします。どうもありがとうございました。 照会先 厚生労働省医政局看護課 勝又、平良 連絡先 03-5253-1111(内線 2599、2595)