02/12/03 第8回社会保障審議会議事録                第8回社会保障審議会 ○日時   平成14年12月3日(火)10:00〜12:00 ○場所   厚生労働省 省議室(9階) ○出席者  貝塚啓明会長       <委員:五十音順、敬称略>        阿藤 誠、糸氏英吉、岩男壽美子、岩田正美、翁 百合、鴨下重彦、        京極高宣、木 剛、西尾 勝、樋口恵子、廣松 毅、星野進保、        堀 勝洋、若杉敬明、        渡辺俊介       <臨時委員:敬称略>        矢野弘典       <事務局>        水田邦雄 政策統括官(社会保障担当)、        青柳親房 参事官(社会保障担当)、        高原正之 統計情報部企画課長、榮畑 潤 医政局総務課長、        中村吉夫 雇用均等・児童家庭局総務課長、        宇野 裕 社会・援護局総務課長、        足利聖治 障害保健福祉部企画課長、松田茂敬 老健局総務課長、        石井信芳 老健局計画課長、原 勝則 保険局国民健康保険課長、       高橋直人 年金局総務課長、伊原和人 政策企画官 ○議事内容 1.開会 (伊原政策企画官)  出席予定の委員の先生で、まだお見えになられていない方もいらっしゃいますけれど も、定刻になりましたので、ただいまから第8回社会保障審議会を開会させていただき たいと思います。  本日は、青木委員、浅野委員、稲上委員、奥田委員、小宮委員、清家委員、高久委員 、永井委員、中村委員、長谷川委員、宮島委員、山本委員がご欠席でございます。  樋口委員からは若干、遅れるとのご連絡をいただいております。  また、本日は臨時委員の矢野委員にもご出席いただいております。  出席いただいた委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますこと をご報告いたします。  なお、国会用務の関係から事務局の関係者が途中、退席することがあるかもしれませ んが、あらかじめご了承いただきたいと思います。  それでは以降の進行を貝塚会長にお願いいたします。 (貝塚会長)  皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。  それでは本日の議事についてお諮りいたします。本日は前回の審議会以降、数多くの 分科会、部会において審議されているものも含めて、社会保障に関わる様々な動きがご ざいますので、これらを中心に事務局から報告していただくことにしております。  それではさっそく議事に移りたいと思います。 2.「社会保障をめぐる最近の動き」について (貝塚会長)  議題1「社会保障をめぐる最近の動き」について、事務局から資料の説明をお願いい たします。青柳参事官。 (青柳参事官)  社会保障担当参事官の青柳でございます。私の方からお手元にお配りをさせていただ いております資料の1「社会保障をめぐる最近の動き」についてご説明をさせていただ きます。座って失礼をさせていただきます。  ただいま、貝塚会長の方からご説明がございましたように、前回、7月26日の審議会 以降、社会保障に関しまして、様々な動きがございましたのでご説明をさせていただき たいと存じます。  この間の動きは大きく分けまして2つの大きな流れの動きがあったと承知をしており ます。  1つは、経済財政諮問会議等、外部の審議会等におきまして社会保障に様々に関わり ます提言をいただきました。これをめぐるものでございます。もう1つの大きな流れは 、社会保障の個別分野、年金、医療、介護等における様々な動きに関するものでござい ます。  まず、お手元の資料、1頁をおめくりいただきたいと存じます。最初に経済・財政・ 社会構造と社会保障改革ということで1頁から5頁まで関係の資料を用意をさせていた だいております。  この資料は去る11月1日の経済財政諮問会議におきまして坂口厚生労働大臣から提出 、説明をさせていただいたものでございまして、私どもが従来から進めております社会 保障改革の意義を明らかにした上で、諸外国と比較をした我が国の社会保障の給付と負 担の仕組みを論議していただくための基礎資料として用意をしたものでございます。  1頁の資料をご覧いただきたいと存じますが、社会保障改革、真ん中のところに枠取 りをしてございます。現在、平成13年3月に政府・与党社会保障改革協議会において社 会保障改革大綱を決定いたしましたが、これに基づきまして随時、推進をしているもの でございます。この社会保障改革を進めまして、右端にございますように国民の安心と 生活の安定を確保する。あるいは経済・財政と均衡のとれた持続可能な制度の再構築を めざす。これが最終的な目的となるわけでございます。  しかしながら、この社会保障改革を進めていきます上で、左端にございますように様 々な要素との兼ね合いをどのように考えていくかが課題となっております。現下の経済 ・雇用情勢、国、あるいは地方の財政状況には極めて厳しいものがございまして、一般 的に社会保障は例えば保険料や税負担の増大というものを通じまして、これらの様々な 要因を悪化させるのではないかという懸念も各方面から寄せられているところでござい ます。  しかしながら、この1頁の絵にも描かせていただきましたように、厳しい経済・雇用 環境ではございますが、いわば下支えとして基礎的な消費・雇用の受け皿となっており ますものがとりもなおさず社会保障でございます。したがいまして、経済・雇用、そこ にもございますが、例えば企業の国際競争力等、非常に厳しいからということで社会保 障を見直すということが同時に基礎的な消費・雇用の受け皿としての社会保障の機能と いうものに触りが出てこないかどうかという観点も重要ではないかという趣旨でござい ます。  また、介護保険に代表されますように、これまで社会保障制度改正を随時、進めてま いります中で、国と地方の役割分担を見直しながら社会保障制度がいわば地方分権推進 の一翼を担ってきたということもまた事実ではないかというふうに、私ども、承知をし ておるわけでございます。今後ともそのような観点で国・地方財政との社会保障の関わ りを論議していただく必要があるというふうに考えております。  なお、従来、ともすれば社会保障制度が外生条件、いわゆる与件として考えてまいり ました人口問題でございます。これにつきましてもこの1頁に書かさせていただきまし たように次世代の支援というような観点から、いわば社会保障制度の内部にこの人口の 少子高齢化に歯止めをかけるような影響を与えることのできるような要因を内包してい く、ビルトインしていくということが今後の課題として求められているという関係にあ ろうかと承知しております。  2頁に移らせていただきたいと存じます。社会保障の給付を国民所得対比で、負担の 方を国民負担率という形で表しまして諸外国との国際比較をした資料でございます。我 が国は現在、アメリカと並び極めて社会保障の給付の割合、国民負担とも低い水準にあ るわけでございますが、高齢化のピーク時と言われております2025年の時点におきまし ても現在のイギリス、ドイツ並ということでございまして、フランス、スウェーデンよ りも給付、負担ともになお低い状態を維持することができるのではないかというふうに 見込んでいる次第でございます。  続きまして3頁の方に移らせていただきますが、社会保障の財源を国民所得対比で国 際比較をしたものでございます。もちろん社会保障の財源の構成につきましてはそれぞ れの国の歴史的な経緯を踏まえまして、例えばいわゆる税中心と言われておりますイギ リス、スウェーデン、あるいは保険料中心のフランス、ドイツなど、国によって様々な 違いはありますものの、我が国は全体の負担そのものはアメリカに次いで先進国の中で 低いものとなっております。このことはとりもなおさず、これらの国々と今後、国際市 場で様々な経済的な競争を展開していく際にも、社会全体としての負担余力はまだある と考えてもよろしいのではないかと、私ども、理解をしております。  4頁は今、申し上げましたいわばマクロベースの数字をサラリーマンの社会保険料の 負担能力という形に限定をいたしまして国際比較をしたものでございます。アメリカを 除き、医療、年金、いずれにおきましても我が国の負担水準は他の諸国に比べてまだ低 いものがございますので、これからその負担が高まっていくという状況にあるわけでご ざいますが、この絵の中で特にご注目をいただきたいと存じますのは、アメリカを除き まして各先進諸国の、例えばフランス、ドイツ、スウェーデンといったようなあたりで すが、その年金保険料率、概ねサラリーマンの場合、給与の20%程度の水準になってい るということでございまして、今後、我が国の厚生年金保険の保険料率を考えていきま す際に、こうした諸外国の水準というものもひとつの目安になるのではないかと見てい るところでございます。  5頁に今の社会保険料の負担を負担主体別に見たものが左側の資料でございます。日 本はドイツと並び概ね折半負担ということでございますが、アメリカを除きましていわ ゆる事業主負担には、このドイツも含めてまだ諸外国と比較した場合に余力があるとい うふうに申しても差し支えがないのではないだろうかというふうに存じます。  また、右側のベースになっております時点なり、数字が若干、違いますが、大きな傾 向は左側のものを今度は労働費用に占める福利厚生費の割合という形で置き直したもの というふうにご覧をいただきたいと存じますが、これをご覧いただきますとアメリカは ご存じのように公的医療保険がございません。したがいまして、これに代わります私的 保険を企業が負担をしているというふうに言われているわけでございますが、そのため の法定外福利費が非常に大きなものになっているということでございまして、実は法的 外福利費まで合わせますとアメリカも決してこの事業主の負担というものは低くはない ということがこの資料から見てとれるかと存じます。  様々、資料をご紹介申し上げましたが、全体といたしまして国際競争力という観点か ら我が国の企業の負担水準はまだ限界というところには至ってはいないのではないかと いうふうには言えようかと存じますが、ただ、現下の厳しい様々な経済・雇用情勢の中 で、それでは具体的にどのように負担というもののスケジュールを描いていくかという ことは今後の課題というふうに承知をしております。  続きまして2点目のテーマでございますが、社会保障制度の改革スケジュールにつき まして6頁に全体像を示させていただいております。具体的な各制度毎の改革スケジュ ールはこの6頁に示したとおりでございまして、既に12年度から社会保障改革大綱とい う形で改革スケジュールの全体像をお示しし、これに基づきまして、まず、13年度に医 療制度改革を実施をし、今後、年金について、あるいは医療についても医療保険制度改 革のいわば残された宿題、介護保険、さらに新しいテーマとして少子化の問題があると いうことでございます。  このうち年金でございます。7頁から年金制度改革についてのスケジュールをお示し しておりますが、年金につきましてはそこにもございますように最終的には平成16年に 財政再計算を行いまして、これに伴います制度改正というものが必要になってまいりま すので、16年通常国会に年金改正法案を提出すべく、現在、当審議会の年金部会でも議 論が積み重ねられているところでございます。  特に主な課題となりますのが、8頁をお開きをいただきたいと存じます。少子化が一 層進む中で長期的な年金の給付と負担の均衡をどう確保していくかが1番目のテーマで ございます。2番目にございますように、年金保険料の引き上げが平成12年改正時に凍 結をされておりますので、その凍結解除に向けて基礎年金の国庫負担割合の引き上げを どのように実現していくか。3つ目の課題といたしましては少子化、あるいは女性の社 会進出、就業形態の変化、こういったものへの対応をどのように図っていくか、このよ うな大きな3つの主要課題が次期、年金改正の課題というふうに承知をしております。  9頁にそれでは具体的にどのような対応を図っていくかということについての基本的 な論点を整理をさせていただきました。  まず、具体的な対応にあたりましては、給付と負担の見直しの基本的な考え方のとこ ろに、若干お示しをさせていただきましたように、最終的な保険料の水準を固定して、 その範囲内で給付を考えるということを基本とし、将来に向けて予想を超えて少子化等 の状況に変化が生じた場合に給付を自動的に調整する仕組みを制度的に組み込むという ことの検討、いわゆるスウェーデン方式というふうに言われている問題でございます。  また、社会経済の変化に対応した制度の改革という観点からは、例えば短時間労働者 への厚生年金適用、あるいは第3号被保険者の扱いの問題、年金制度の中に次世代を育 成支援する仕組みをビルトインしていくことがどのようにできるかという問題意識に基 づく論点があります。これらにつきまして、やや詳細な点は10頁から14頁に個別に検討 項目として整理をさせていただいておりますので、これはご参照をいただきたいと存じ ます。  いずれにいたしましても、近く改革の骨格に関します方向性と論点について年金局に おいて整理を行いまして、最終的な保険料水準と給付の水準についてのいくつかの試算 結果もお示しし、国民的議論を16年の改正に向けてお願いをするということを予定して おります。  続きまして頁が飛びまして恐縮ですが、15頁、医療保険制度についてでございます。 医療につきましては先ほども申し上げましたように、今年度、健保法の改正を行ったわ けでございますが、その際に医療保険制度の体系の見直し、あるいは新しい高齢者医療 制度の創設、あるいは診療報酬体系の見直しに関する基本方針を平成14年度内に策定す るということが約束されたわけでございまして、このための検討を現在、行っておりま す。  まだ、厚生労働省としてのたたき台は、今後、お示しをしていくわけでございますが 、その際の議論の拠り所といたしまして本年の9月25日に坂口私案という形で厚生労働 大臣の私案を公表させていただきました。これが15頁、16頁、17頁にございます。  まず、坂口私案におきまして医療保険制度の体系の在り方といたしましては、まずは 保険者の再編・統合を進め、都道府県を軸とした保険運営を目指していく。さらに新し い高齢者医療制度を含む制度改革を行い、制度を通じた年齢構成や所得に着目した負担 の公平化を図っていく。そして、将来のあるべき姿としては制度の一元化、給付と負担 の公平化を目指すという図柄になっておりまして、そのスケジュールのひとつの考え方 が16頁にお示しをさせていただいているものでございます。  また、17頁、診療報酬体系につきましては、診療報酬を決めます基準・尺度の明確化 を図るということ。さらに診療報酬体系を医療技術の適正な評価、これはいわゆるドク ターズフィー的要素でありまして、難易度でありますとか、技術力、あるいは時間等を 踏まえた評価になろうかと存じますが、こういったことを推進するとともに、重症化予 防や生活指導を重視していくということ、これと医療機関の運営コストを反映した評価 、いわゆるホスピタルフィー的要素と言われておるものでございますが、これにつきま しては入院医療について急性期、慢性期に応じた包括化を推進するというようなことと いうことの2本柱で再編をいたしまして、さらに情報提供や患者の選択を重視するとい う考え方を整理させていただいております。  いずれにいたしましても、これは先ほども申し上げましたが、今後、年内に厚生労働 省が基本方針に関しますたたき台を提示させていただくことを予定しておりますので、 それに向けての議論のひとつのよすがというふうにご理解を賜りたいというふうに存じ ます。  続きまして18頁、介護保険制度でございます。介護保険制度につきましては、まず、 介護報酬についてでございますが、来年の4月に見直しの予定でございます。この中で は18頁にも方向性を示させていただきましたように在宅の重視、自立支援など、今後の 介護のあるべき姿を念頭に経済動向、あるいは介護事業の事業実施の実態、保険料への 影響といったようなことを考慮して見直しを行うということでございます。  併せて19頁にございますように、事業計画、これは各地方自治体でこの計画を策定、 改定をしているわけでございますが、これと保険料の見直しの作業を行いまして、19頁 、最後にもございますように法施行後5年を目処に行うこととされております制度の見 直しにつきましては、新事業計画策定以後に検討をしたいというふうに考えております 。  20頁、少子化に移らせていただきます。少子化につきましては既にこの審議会でもご 報告をさせていただきましたように、本年1月に国立社会保障・人口問題研究所におき まして新人口推計を公表させていただきました。これを踏まえて、本年5月に小泉総理 大臣から坂口厚生労働大臣に従来の少子化対策の反省を踏まえた上で、新しい少子化対 策の基本的な考え方をとりまとめるように指示がございました。この指示を受けまして 本年9月、少子化対策プラスワン、参考資料の方に付けさせていただきましたので後ほ どご参照いただきたいと存じますが、という形で新しい少子化対策の考え方をとりまと めたものでございます。  その考え方、22頁に飛ばさせていただきまして、お示しをさせていただいております 。従来の少子化対策とこの少子化対策プラスワンの違いは何かというふうにお訊ねをい ろいろな方面でいただきますが、大きく申し上げて3つの点で違いがあるのではないか と考えております。  1点目は認識をめぐる違いということであろうかと存じますが、従来、少子化はもっ ぱら晩婚化を原因として、これが進行しているというふうに認識をしておりましたが、 本年1月の新人口推計におきまして、初めて夫婦出生力の低下傾向というものが確認を されたわけでございます。したがいまして、晩婚化のみならず、夫婦の出生力が低下し ているという現象を踏まえた対策が必要ではないかというふうに基本認識が新たになっ ております。  2点目、このための方法論ということに関わるものというふうに存じますけれども、 従来の施策はともすれば子育てと仕事の両立支援というところに重点を置いた施策を中 心に展開しておりました。したがいまして、例えば保育サービスの充実といったものが 具体的な政策課題となっていたわけでございます。  しかしながら、この少子化対策プラスワンでは22頁の左側に4本の柱を整理をさせて いただきましたように、従来の子育てと仕事の両立支援という考え方に加えまして、1 つは男性を含めた働き方の見直し、すなわち子育て期間における残業時間の縮減や子ど もが生まれたら父親誰もが最低5日間は休暇を取得しよう、あるいは育児休業について も具体的な取得率を設定して、これに向けて努力をしていこうというような男性を含め た働き方全体を見直すという考え方を示させていただいております。  2点目、地域における子育て支援。これは専業主婦の家庭や一人親の家庭も含むすべ ての子育て家庭における子育て支援ということでございまして、子育て中の親が集まる 集いの場を作っていく。地域の高齢者や子育て経験のある方による子育て支援を推進す る。あるいは子育てバリアフリーということでソフトの面、ハードの面で子育てをして いくお父さん、お母さん方が支障のあるものを地域の中で解決をしていくという考え方 を中心とする地域における子育て支援体制を構築しようというものでございます。  3点目は、社会保障における次世代支援ということでございまして、例えば年金制度 の中におきまして年金額計算における育児期間への配慮の検討や奨学金を年金積立金の 中から考えていくというような様々な検討がされているわけでございまして、いずれに しろ、単に外生要件として少子化を受け止めるのではなく、年金制度をはじめとする社 会保障制度の中にこの少子化に対する歯止め策を次世代支援という観点から盛り込んで いこうという考え方でございます。  4点目は子どもの社会性の向上や自立の促進ということでございまして、やや迂遠に 聞こえるかもしれませんが、例えば小学生、中学生がもっと赤ちゃんとふれあう機会を 作っていくことはできないだろうか、教育現場、あるいは保育所、あるいは乳幼児健診 の場、こういったところでもっと赤ちゃんと触れ合うというところから小中学生の意識 改革をしていく。さらに高校生、あるいは大学生、学生を卒業した方々に対しては自分 が自立して生活していくことができるような、そういった社会生活体験といったような ものを用意する。あるいはその方々が働くための様々な雇用機会の提供というものを自 立支援という観点から用意をしていくというようなプログラムを平成15年度概算要求に おいても盛り込んで、要求をしているところでございます。以上のような4本の柱に代 表される多様な対策というものは2点目の違いでございます。  3点目、これが22頁の一番右にあります図に関わってまいりますが、地方公共団体、 あるいは企業において、今申し上げましたような様々なメニューを具体的な行動計画、 アクションプランという形で策定をしていただくということ。自分の会社の中では何か ら進めていくか、どの部分を改善していくか、自分の自治体の中では何が足りないか、 どういうものから順番に地域における子育て支援のメニューを整備していくかというこ とを具体的な行動計画という形に作り上げていただく。それを支えるものとして予算に 加えて、国としてはこれらを支える立法措置を具体的に検討していく必要があるのでは ないか。このようなことを視野に入れた認識に立つものでございます。  いずれにいたしましても、これらの施策につきましては年内に予算がまとまりまして 、法的措置の方向というものが固まってまいりますれば、年明けにもこれらの全体像、 あるいは今後の進め方につきまして政府としての考え方をとりまとめてお示しをできる のではないかと見込んでいるわけでございます。  なお、前後いたしましたが、21頁に戻っていただきますと、21頁に実はこの少子化と いうものの社会保障制度に与える影響の一例といたしまして、年金の保険料、厚生年金 の保険料ベースでの数字を示しておりますが、特にご注目いただきたいのは国庫負担を 2分の1にして、かつ、少子化についてはニュートラル、中位推計のとおりに物事が進 むとした場合、厚生年金の保険料は2025年時点において22.4%になるというふうに示さ れるわけでございますが、同時に国庫負担割合を現行の3分の1のままにした場合とい たしましても、少子化対策に効果が出て何らかの形で歯止めが出て、例えば高位推計、 これは実は全体、人口推計の中位推計ベースではありますが、その高位推計まで仮に少 子化の歯止めがかかるとすれば、厚生年金の保険料は22.8%に留めることができるとい う意味で、概ね少子化対策と国庫負担の2分の1というものが年金財政上はほぼ同じよ うな効果を持っているということが、この21頁の資料からはお示しができるのではない かと思っております。  最後に社会保障をとりまく様々な動きについて簡単にご紹介だけさせていただきます 。  まず、23頁ですが、現行の社会保障制度に対しましては経済の活性化、あるいは地方 分権の推進という観点から様々に見直しを迫る動きがこの夏以降ございまして現在まで 続いております。私どもは、社会保障制度の果たすべき機能を損なうことがないように 、これら各種の構造改革の動きにも歩調を併せて社会保障改革を推進していくことが必 要ではないかと考えております。  その一例として、構造改革特区をめぐる動きが23頁から25頁までございます。構造改 革特区は6月に経済財政諮問会議が2002年の基本方針として、構造改革特区という形で 構造改革を特定の地方自治体、特定の地域の特性に合わせる形で推進する方策がないか ということでご提案があったものを、政府の中に内閣総理大臣を本部長とする構造改革 特区推進本部を作り、各閣僚が本部員となり進めてきたものでございます。  現在、この臨時国会にその構造改革特別区域法案が審議がされているわけでございま すが、その概要は24頁にございますように政府が閣議決定で構造改革特区の基本方針を 作り、この基本方針に基づきまして地方公共団体が自分のところでこういう形の事業を やりたいという計画を内閣総理大臣宛に出していただきまして、内閣総理大臣がこれを 認定する。認定を受けたものについて法律に基づきます、あるいは様々な制度に基づき ます特例措置が適用されるという中身のものでございます。  25頁に厚生労働省の具体的な項目がお示しをしてございます。25頁、構造改革特区と して対応を実施するものといたしましては、既にマスコミ等で報道がされておりますよ うに特別養護老人ホームの運営につきまして公設民営方式、またはPFI方式という形 で地方自治体が責任を持って行います場合には株式会社の参入を容認していこうという 考え方を持っております。  また、デイサービスの事業につきましては、従来、高齢者、身体障害者については相 互利用ということが可能でございましたが、これに知的障害児、あるいは障害児に係る ものも追加をしていく。  さらに調理業務に関しまして、従来、保育所等につきましては保育所内の調理施設に 外部の方が来て調理をするということまで容認をしておりましたが、児童養護施設、肢 体不自由児施設については内部の職員がそれぞれの施設の調理施設を使って調理を行う ということにしておりましたものを保育所並に内部の施設を外部の職員の方が来て調理 をするということまで容認していこうという内容のものでございます。  なお、構造改革特区という形で特別の区域に限定しての話ではございませんが、全国 的にむしろ対応していこうということで、例えば、高度先進医療に係る特定承認保険医 療機関の要件、特定病床の特例に係る要件、あるいは臨床修練制度ということで外国人 医師が医師免許を持たなくても医療行為が可能な仕組み、これらにつきましては全国的 に一定の要件さえ満たすものについてはその要件を緩和して対象にしていくということ で、この構造改革特区に言わば関連する、この特区を契機として規制改革を進めたもの でございます。  なお、特区として対応困難なものといたしまして株式会社の医療参入の問題がござい ます。この問題につきましては人の生命を直接左右しかねない医療サービスの提供を営 利法人に委ねてよいかどうか、その場合に必要なサービス水準が適切な負担のもとに確 保されるのかなど、様々な懸念もございまして、厚生労働省としては慎重な対応が必要 ではないか、現時点で構造改革特区で対応することは困難ではないかというふうに考え ている次第でございます。  続きまして26頁が地方分権関係でございます。地方分権改革推進会議におきましては 、去る、10月30日に事務・事業の在り方に関する意見ということで最終意見を公表いた だきました。地方分権に関します動きにつきましては、27頁、あるいは28頁に個別具体 のテーマを紹介させていただいております。  このうち、1点だけ、補足をさせていただきますと、保育所の運営費の負担金や保育 所の施設整備費補助金の廃止、あるいは一般財源化という提案がなされております。こ れらにつきましては既にご説明をさせていただきました少子化対策を進めていく上でも 大変重要な政策手段であるということから、これを廃止して一般財源化することは適切 ではないのではないかというふうに厚生労働省としての考え方をご提示をさせていただ いております。  しかしながら、国の国庫負担事業につきましては引き続き、不断の見直しを行ってい くということは厚生省として従来からの方針でございますので、28頁の右側の一番下の ポツにございますように3つの中心的な考え方を念頭に今後とも進めてまいりたいと考 えております。  29頁の15年度予算編成の基本方針は、経済財政諮問会議から提示されたものでござい ます。高齢化社会、少子化対策を進めていく上で30頁にございますように個別の制度に ついて15年度予算において留意すべき点をご指摘いただいております。詳しい説明は割 愛させていただきます。  31頁は税制改正についてでございまして、去る11月19日、平成15年度における税制改 正についての政府税調の答申が公表されたものでございます。これは例年に比べますと 約1か月程度早い政府税調答申でございまして、32頁以降にございますように極めて厳 しい財政状況の中で必要な減税をどのように実施していくか、あるいはこれを賄うため の税負担をどのように国民に求めていくかという問題意識に立ったものでございまして 、社会保障関係のものといたしましては、32頁にございますように個人所得課税に係り ます人的控除の見直し問題、33頁にございます公的年金等控除の問題、同じ頁にござい ます、例えばたばこ税の問題等々、関わりのある問題のお示しをいただきまして、この 点につきましては、現在、自民党の税制調査会において、これを受けた議論がなれされ ているというふうに承知をしております。以上でございます。 (貝塚会長)  どうもありがとうございました。最近の社会保障をめぐる動きで、特に社会保障審議 会が関わりのある制度の関係と、いろいろ社会保障に関わる他の動きとして、地方分権 、経済財政諮問会議、あるいは税制調査会、その他、社会保障の外側と言いますか、実 質的にはかなり内側に入っているものもあると思いますが、ご議論のご紹介をいただき ました。  大変多岐にわたる論点が多いのですが、どういう点からということを申し上げるより はご自由に発言いただきたいと思います。どなたからでもご自由に、糸氏委員どうぞ。 (糸氏委員)  1つは医療保険制度の問題ですが、今度の改革、いわゆる坂口私案というものが厚生 労働省の試案というふうに解釈していいのかどうかということが1つでございます。大 臣の案と省の案と2つ出てくることに疑念を持たざるを得ません。  この私案によります医療制度というのは、制度の一元化というようなことで、高齢者 医療制度はとりあげないわけなのですね。だから、しばらく当分の間はこれは便宜上、 新高齢者医療制度というものを立ち上げて、国負担が5割、残りは拠出金と老人の保険 料と患者負担ということで当分いって、やがて国保、あるいは被用者保険が保険単位で 一元化すれば、その新高齢者制度というものは自然に全体の中に吸収されていくという ふうに考えていいのか。その辺りが今ひとつ不可解であります。  とりあえず、この2点についてお答えいただきたいと思います。 (貝塚会長)  医療保険制度に関して、他の委員の方でご意見、あるいはご質問がありましたらお願 いします。ございませんでしたら、この坂口私案の性格についてお願いします。 (原国民健康保険課長)  保険局の国民健康保険課長でございます。お訊ねの点、まず、第1点目、坂口私案に ついてでございますが、これはまさに坂口大臣の私の案ということでございますので、 厚生労働省としての試案とは違うというふうに理解しております。  ただ、もちろん大臣とはいろいろ議論をしながらやってきておりますので、保険局と しての考え方とそんなに違いがあるものでもないというふうにご理解いただければと思 います。いずれにしても私どもは大臣が9月25日に資料の16頁にございますような形で 出されましたので、この方向に基本的には沿いながらさらに議論を深め、もう少し具体 的なものをたたき台、今度は厚生労働省としてのたたき台という形で、試みの案という 形で試案を年内には出させていただいて、関係者の方々からいろいろなご意見をいただ きたい。その上で健康保険法の改正法附則第2条にございますように、平成14年度中に 政府として基本指針という形でまとめるということで義務を課されておりますので、そ こに向けましてとりまとめに努力をしていきたいと、こういう考え方でございます。  2点目は高齢者制度が一元化に向けた段階的な経過的なものになるのかというお訊ね でございますけれども、16頁をご覧いただきますと実は高齢者医療制度の問題というの は、特に医療費が非常にかかる高齢者について、その医療費の負担というものをどのよ うにしていけばいいのかという、こういう問題でございますけれども、坂口大臣の私案 はここにございますように制度を通じた年齢構成や所得に着目した負担の公平化という ことで、いわゆるリスク構造調整方式というふうに言われているようなものの提案でご ざいます。これによりますと基本的には全年齢階層について年齢構成の違いによる医療 費の多寡というものは、これは保険者の責によるものではないので制度間で財政調整を してはどうかと。ここで言う制度を通じた年齢構成に着目した負担の公平化というのは 、そのような意味だというふうに理解をしております。  こういうリスク構造調整方式を取るならば、糸氏委員がおっしゃるように高齢者だけ を取り上げて、いわゆる財政調整みたいなことをしている今の高齢者制度、あるいは新 しい独立保険方式と言われているものとは形としてはやや違ってくるとは思いますが、 ただ、考え方の趣旨は高齢者だけに特化して年齢調整をするのか、全年齢階層にわたっ て調整をするのかという、思想的にはつながるものがあると思いますけれども、制度の 具体的な形としては確かにリスク構造調整方式をとった場合には独立保険方式というも のとは違うものになってくるというふうに思います。  ただ、一方で、独立保険方式の方がいいという意見も根強くあることも事実でござい まして、私ども、現在、独立保険方式も含めてどういう形が一番いいのか、大臣の下で ご議論をさせていただいているところでございます。 (糸氏委員)  会長、関連でもう1つ聞きたいことがございます。 (貝塚会長)  どうぞ。 (糸氏委員)  申し訳ありません。もう1つの問題は先ほどの医療特区の問題でございます。先ほど お話がありましたように構造改革の特区推進本部というのは小泉首相の下に今、閣議決 定でできたということを伺っているのですが、特に医療関連、この構造特区という改革 特区制度というのは全国的なレベルで一概にできないから、各個撃破と言いますか、各 地方別にひとつやれるところからやっていこうと、その目的はあくまでも経済活性化が 第一義だと、そのために規制をすべて解き放とうという考え方であろうかと、私、理解 しておるのですが、特に問題は我々がこの趣旨そのものに別に反対するわけではござい ませんけれども、人の命とか人の健康と、こういったものについては非常に慎重な対応 が必要ではないかということで我々は非常に心配しておるわけです。  というのは、やはりこの特区制度というのは我が国社会の普遍的な縛りではございま せんので、各地域特性、言うならば、これは限定的な一種の社会実験みたいなものでご ざいます。やはり命の問題とか生命の問題、あるいはまた健康の問題について、こうい う社会的実験というのはあっていいのかどうか。これは国民にとっては非常に大きい影 響が出てくるのではないかというふうに非常に心配しております。  だからこそ、この特区の選定基準というものの中には対象外としては国の主権に関わ る外交、防衛関係、これは外しましょう。また、国際間の義務に相当する条約関係のも のは外しましょう。また、刑法に関するものは外しましょうと、こういうことが述べら れて、これは当然のことなのですが、ただ、我々は非常にびっくりしたのは、「なお」 というなお書きの中で生命、身体、健康、こういう公序良俗、あるいは消費者保護、こ ういう名目については、だからと言って規制をしないというわけにはいかないと。  はっきり言えば、経済活性のためには生命や健康を犠牲にしても止むを得ないという ことが示されておりまして、もし、今後、国の方針として各個撃破的に各都道府県でこ ういうことが行われるということになりますと、非常に国民にとっては由々しい問題で あるというふうに我々は心配しているわけでございます。  特に特区問題で医療についてはやはり医療分野へ営利を導入しようと、市場原理をど んどん導入して、結局、医療で金を儲けて何が悪いのだと、別にそれで競争したらいい ではないかと、それがすなわち効率化につながるのだという考え方、また、現在の公的 保険制度以外の自由診療、これも堂々と中に入れてお金のある人には最高の医療を与え て何が悪いという考え方がここへ入ってくるわけです。  また、国で厳しく規制している外国人医師の我が国における診療、これについて厳し い制限というのは今、ついているわけです。誰でも外国の人が診療して我が国の国民へ の診療活動というものについてはかなりの制限を与えているわけですが、こういう医療 のかなり根幹的な部分について特区では例外として認めていくということになります。  本当に国民のためにいい制度、あるいはいい改革というものであれば、私は特区でや るべきものではなしに全国一律にやるべきものであろうというふうに考えております。 こういう点で厚生労働省としては、是非、国民の命にやはり些かとも揺るがすような問 題については断固反対という態度を貫いてほしいと、かように思います。医療担当者と してひとつの懸念をここに表明したいと、かように思って発言させていただきました。 以上です。 (貝塚会長)  今の特区の関係で事務局から何かありますでしょうか。特区の問題については、かな り複雑な問題で非常に難航したようですが、ただいまのご意見についてはご要望として 承っておくということでよろしいでしょうか。それでは他にご意見等ございましたら。 高木委員お願いします。 (高木委員)  医療制度改革については本年4月に成立しましたが、負担増の世界はもう先取りすべ く処理して、制度を直すというところはいつも先送りを繰り返しておりまして、11月29 日、ここに渡辺さんもお出でですが、日経新聞にはまた先送りの懸念が出てきというコ メントもされております。先ほどのご説明だと来年の春頃までに骨格というか、考え方 、基本方針をお出しになるということなのですが、どういうところでどういう論議をし 、基本方針に収斂していくのか、もうひとつイメージが見えないものですから、その辺 をちょっとご説明いただきたいと思います。  2点目は、坂口厚生労働大臣の私案ということで、例えば保険者の再編・統合等を含 めていろいろなお考えが出ておりますが、単に保険者の再編・統合という言葉だけが走 っちゃって、保険者を再編・統合するにはいろいろな検討しなければならない切り口が あるにもかかわらず、要はどうなっているのということで受け取られている向きが多い のですが、こういうことを大臣の例え私案であったとしても、今、保険局もいろいろ相 談しあっているお話だとおっしゃったわけで、もし、そういうことであるなら、もう少 し説明をしながら言っていただかないと要はどういうことなのですかということで受け 止め方に混乱が起こっていると。  例えば、なぜ、今、そんな議論が起こるかと言いますと、保険料をとります基礎、総 報酬制に移行しまして、おそらくこれは将来、政管の保険料率と健保組合の保険料率の ギャップが率だけ見たら非常に大きな差になって出てくるのはもう目に見えているわけ でして、その辺、いろいろな切り口で整理すべきはした上で言うことを言っていただか ないと、皆、どういうことなのかという不安ばかり先行してしまいます。その辺につい てどうなのかということをお答えいただきたいと思います。 (貝塚会長)  渡辺委員、どうぞ。 (渡辺委員)  今の高木委員の前半のご質問とほぼ一緒なのですが、特に坂口私案ではリスク構造調 整をし、年齢・所得というリスクを調整すると打ち出され、一方、11月28日には自民党 の方から独立法人方針が打ち出されたわけで、先ほど、厚生労働省の方から12月中に何 らかのたたき台が示されるとご説明があったのですが、おそらく2つの案が併記される のではないかと予想していますけれども、できるならば一本化してほしいのですが、い ずれにしても3月末までには何らかの基本方針を策定するというのは内閣の約束になっ ているわけですね。となりますと実質、あと3か月しかないという中で、具体的にどの ような格好で一本化なさるのか。  例えば社会保障審議会の中にも医療保険部会、医療部会がアドホックな格好ですが、 あるわけですね。そういった審議会にも諮られるのか。あるいは別な方法で一本化を目 指すのか。それを含めてお伺いしたいと思います。以上です。 (貝塚会長)  追加的に何かございましら。矢野委員どうぞ。 (矢野委員)  坂口大臣私案では保険者機能の発揮とか強化など、抜本改革の具体的な姿が示されて いないというふうに見ております。厚生労働省案がこれからまとめられていくというこ とですが、なるべく早くそれを提示していただく必要があるということを、まず、冒頭 に申し上げたいと思います。  私どもが承知しております大臣私案ということを見ますと、先ほど高木さんからも話 がありましたが、保険者について制度の一元化の方向ということが1つうたわれており ますけれども、被用者保険と地域保険の国保とは制度、仕組みは根本的に異なっており まして、それを一緒にするという考え方が生まれてくることに非常に私は不信を抱くわ けでございまして、これがちょっと無理な話が出ているのではないかと。  単なる保険者組織の統合とか再編とかというのはむしろ保険者機能の発揮を阻害しま して、言わば安易な財政調整ということが行われるための手段というふうに受け止めざ るを得ないわけで大変心配しているわけでございます。  まず、保険者機能の発揮、強化、それが担保できるような保険者にするように、そう いう、まず、改革努力をすべきであって、そのためのものであればいろいろな規制改革 も進めるべきであろうと思っております。  詳しくはまた案が出てきましたときに申し上げたいと思いますが、ちょうどいい機会 ですので、もう1点だけ、申し上げますと、医療保険財政を構造的な危機に陥らせてい るのは老人保健拠出金だと思うのですね。これは私どもも前々から主張しておりますけ れども、これは廃止すべきであると思います。  高齢者医療制度については独立した新制度を創設して、退職者医療制度の縮減などの 抜本改革の道筋を示して取り組んでいく必要があるのではないかと、このように考えて おりまして、大変概括的な意見でございますけれども、ちょうど良い機会であると思い ますので申し上げておきたいと思います。 (貝塚会長)  坂口私案は、私の個人的な意見ですが、やはり相当考え方として従来の考え方と違う 考え方に立っているわけですが、ですから、ある意味で非常に将来方向、そっちの方向 に持っていくのかというもともとのそういう長期的な話があるのですが、それと別に非 常に短期的な問題も関わりがありまして、私は医療保険部会を担当しましたが、その際 は医療保険部会としては要するにかなりいろいろな意見が出て、多数の意見はこういう 感じだったということは出ておりますが、細かい論点は、それから先の話はある面、行 政及び具体的な政府及び自民党、そこへある程度任せて詰めていただくという、そうい うふうな了解の下であって、現段階というのはどういうふうになっていたか、その後ど うなっているのか、その辺もついでにご説明いただければありがたいのですが。 (原国民健康保険課長)  ただいまのご指摘についてですが、9月25日に坂口私案が出まして以来、もう2か月 以上経っております。大臣も当初は秋頃には厚生労働省としてのたたき台を出したいと いうご意向でございましたので、議論に時間がかかっておりまして、そういう意味で結 果においてたたき台が早く出なかったということで関係の方々にいろいろなご疑念と言 いますか、ご心配をおかけてしていることについては大変申し訳なく思っております。  貝塚会長からもお話がございましたように坂口大臣の私案というのは非常に大きな構 想で、ある意味では新しい観点からのご提案ということでもありましたので、私どもも いろいろな財政試算も含めまして今、議論をしておりまして、大変申し訳ございません が、遅れたことをお詫び申し上げたいと思います。  ただ、年内、もう12月になりましたのであと数週間しかございませんけれども、早い うちに坂口私案をさらに肉付けをした具体的なものをお示しをしまして皆さん方のご議 論に供したいというふうに考えております。  具体的に年度末におきまして、何をどのように議論をし、進めていくのかというご質 問でございますけれども、健康保険法改正法の附則第2条にはいろいろな検討規定が設 けられております。その中で特に優先的に審議をせよということだと思いますけれども 、3点ございまして、1つは保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系の在り方 、2点目が新しい高齢者医療制度の創設、3点目が診療報酬体系の見直しと、これだけ が実は平成14年度中に基本指針を策定せよという法律の要請でございます。ですからこ れらが優先事項だろうと思います。  これについては先ほど申し上げましたように、やはり大臣としてはいろいろな方々に 議論を供してもらうために、厚生労働省としての案を先にまとめてご議論してもらって はどうだと、こういうご意向がございまして、そのたたき台の公表に向けまして今、準 備をしておるところでございます。  一方、与党の方でも今、ワーキングチームができていろいろ議論が行われております し、また、関係各省、あるいは関係団体にもいろいろなご意見がございますので、たた き台を公表しましたら、それをベースにまさにそれをたたいていただいて、非常に大き な課題ではございますけれども、意見の集約ができますように年度末に向けまして厚生 労働省として努力をしていきたいと思っております。  具体的にどんな形でどういうふうに進めていくかはまだ今、案を作るのに精一杯でご ざいまして、この場でまだこういうことで具体的に進めていきますと、たたき台公表後 の進め方についてお話を申し上げることは私の方からできませんけれども、まずはたた き台のとりまとめということで今、全力を尽くしていることだけ、ご報告をさせていた だきます。 (貝塚会長)  他にご意見等ございましたら。どうぞ、阿藤委員。 (阿藤委員)  少子化対策プラスワンについてでございますが、諸外国のいわゆる家族政策というも のを比較してみますと、やはり出生率が比較的高いグループの先進国、北欧諸国とかフ ランス語圏の国というのは相対的に言ってやはり強力な家族政策を実施しているという ふうに感じます。  その2本の柱、いわゆる仕事と家庭の両立支援ということと、子育ての経済支援とい う2本の大きな柱、ともにやはりこの2つのグループが日本に比べて手厚い制度をとっ ているというふうに思います。その点で今回のプラスワンでそこまで特に次世代支援と いうところに視野を広げたというのは大変結構だというふうに思います。  その2つの点で、まずは両立支援ということで男性を含めた働き方の見直しというこ とを打ち出しておられるわけですが、そこに目標のようなものが掲げてございます。た だ、例えば育児休業取得というものを今の制度のままで説得によって男性10%まで引き 上げると言っても、諸外国の例を見ていてもほとんど不可能に近い。実態はせいぜい高 いところで3%とかというのが実態なのですね。  そういう意味ではこの点については、もし、それを本当に目標にするならば、むしろ 立法措置をとってノルウェーやスウェーデンのような形で育児休業の一部を男性しか取 れないというような、そういうパパクォーター制度のようなものを導入するということ がなければなかなか難しいのではないかなというふうに思います。  出産時の父親休暇が最低5日間というふうなことでございますが、これも、あるいは もう少し長くてもいいと思うのですが、努力義務というよりは法制化していくという方 向で考えたらどうかというふうに個人的には思っております。  もう1つ付け加えれば育休取得の柔軟化と言いますか、1年間フルで1年以内にとら なければならないというふうにするのか、もう少し柔軟に、いわゆるパートで何歳まで の間に1年間の権利を行使すると、そういう考え方もとっている国が既にあるわけであ りますから、そういうところも含めて考えていただきたいなというふうに思います。  もう1つの経済支援の問題でありますが、これがなかなか日本では進まないわけです ね。児童手当、あるいは税の控除というところで止まっていたものが、今度、年金の中 にそういう仕組みを入れるということでもちろんプラスαだと思うのですけれども、た だ、やはり先ほどの北欧やフランス語圏と比べると、例えば児童手当の期間というもの が大変短いわけですね。手当も薄いと。もう1つ大きな問題はやはり教育費というもの が全然、日本とヨーロッパ諸国では違うということがあって、やはり子育てにかかるコ ストというものが日本の場合は相対的に相当大きなものになっている。  ということで児童手当等はそのままにして、ただ、年金制度の中だけでそういう国並 みに手厚い経済支援ができるのかということにちょっと疑問を持つので、例えば消費税 とか、そういうところにまで踏み込んだ大きな経済的バックアップの方策まで長期的に は考えていくべきではないかと個人的には思っております。以上です。 (岩男委員)  今、阿藤委員が言われたこと、すべて全く同感でございまして、私も全く同じことを 申し上げたかったところです。  1つだけ付け加えさせていただきますと、子どものために使われている社会保障費と いうのは僅か3.3 %で、高齢者が確か67%だったと思います。ですから、この点もっと バランスのある形にしていかなければいけないということを私たちは忘れてはならない ということだけ、ちょっと付け加えさせていただきます。 (樋口委員)  私もこの少子化対策についてはちょっと申し上げたいことがあって、今、阿藤委員、 岩男委員がおっしゃったことと内容的には同じなのですけれども、言葉なのですけれど も、少子化対策でいいと言えばいいのですけれども、少子化対策プラスワンというのも 意味も非常によく分かって、もう一人というような意味もあると思うのですけれども、 内容的にはプラステンだとか、プラストゥエルブや何かいっぱいありますけれども、そ れも分かるし、日本の人口構造の動きから見て本当に少子化対策で打ち出さなければな らないということはよく分かりつつ、やはりこれは育児支援、強力な育児支援であった り、出産支援と言うとなおおかしいかもしれませんが、やはり私は国をあげての子育て 支援だと思うのです。  私は実は岩男委員もご一緒に内閣府で初めて立ち上がった専門調査会、仕事と子育て 両立支援策に関する専門調査会の会長をやらせていただきまして、その中身もここに書 いてあって、その中身、ほとんど取り入れていただいているからとても嬉しいのですけ れども、でも、あれはやはり仕事と子育て両立支援でしたけれども、やはり今度の場合 は幅広く父母の就労の有無に関わらず、専業主婦も含めて対象にしているという点はそ れはもう本当に全部、子育てすべてをカバーしなければならないと思っておりますから 、とてもよろしいとは思うのですけれども、そうするとなおさら、何だか少子化対策プ ラスワンでいいのでしょうか。  また、ここで、しかも、サブタイトルに子育て支援の一層の充実とありますが、また 、ここでもサブタイトルまで少子化対策、少子化対策、これはやはりちょっと違和感を 感じました。  後の方で何かいろいろ言い訳は書いてあるのですけれども、個人の自由であると。そ んなことは書かなくてもいい。本当に子どもが生まれてくること、子どもを育てること 、やはり阿藤委員がおっしゃいましたように様々な職場における在り方、男性の在り方 、いろいろ幅広く言ってきていることはいいのですけれども、だけれども、私はやはり 地域などだけではなく、職場の方が変わらなかったらと思います。  これは私どもが出した5本柱も待機児童ゼロ作戦ばかり有名になっちゃっていますけ れども、実は一番の柱に両立ライフで職場改革。5日間も私どもの中で初めて入れてい ただいたものなのですが、ここで是非事務方に質問なのですけれども、諸外国におきま して北欧諸国などが妻の出産、だから、妻の就労の有無に関わらず約1週間の出産休暇 ということはもう20、30年前から聞いております。ところが一昨年ですか、フランスの 政権が変わる前にフランスでは14日間の父親の出産有給休暇を打ち出して法案化されて いるというところまで聞きましたのですけれども、これが果たして議会を通過して法律 になっているかどうか。  出産時における父親の有給休暇につきましてはそのときの厚労省の、特に労働省の方 のご説明で育児休業が育児休業法の中にある配偶者が産休期間中はその配偶者、つまり 夫は育児休業をとることができるという規定に入るから、わざわざ新法を作らなくてよ いというお話だったのですけれども、やはりそれを際立たせるためにしっかり法律を作 ってフランスその他の行方を見定めて、また、私たちにも教えてほしいと思います。  一応、それに付け加えますと、待機児童ゼロ作戦、そのときは平成16年度中に15万人 の増員ということでございましたけれども、それは計画どおりに進んでいるのでしょう か、あるいはこれで打ち止めで、私は保育所の数というのは増やすばかりが能ではなく 、完全に職場の労働条件とツレイドオフの関係にあると思っております。もう少し職場 の変革を進めて保育所が少なくともいいという対策になさるのか、その辺の役所の方の ご意見を聞きたいと思います。いろいろ申し上げてすみません。 (廣松委員)  私も質問というよりも意見というか、感想も含めた発言ですが、この1月に人口部会 として将来人口推計を行い、公表していただいたきました。その際、部会長としても些 かちょっと欲求不満に陥ったところがあります。それは今回の人口部会の役割はあくま で将来人口推計を厳密に行うということであって、必ずしも今、議論がなされているよ うな家族計画全般等に関する議論はそこでは行えなかったからです。  今回、こういう形で社会保障審議会の場でご議論いただき、いろいろ論点を挙げてい ただくと同時に、将来の方向性を関して示していただいたことに関して感謝し、大変高 く評価したいと思います。  その上でですが、今回の将来人口推計の大きな特徴はご紹介いただいたとおり、夫婦 の出生率の低下ということですが、実はこの点に関しましてもいろいろ議論がございま した。今は少なくともそれが社会保障制度に与える影響、すなわち人口減少、あるいは 少子化が社会保障に与える影響という側面についてご議論いただいているわけですが、 実は夫婦の出生力の低下の要因というか、原因に関しては必ずしもよく分からないとい うのが率直なところです。極端な場合は生物学的な問題まで提起されました。例えば環 境ホルモン等の議論もございました。その意味で今後、とういった形で対策をとるにし ても、出生力低下の原因に関してやはりもっと究明をするということが1つ大きな前提 条件ではないかというふうに感じます。  もう1つは、これはもう皆さんも御存知のとおり、婚外子の問題です。御存知のとお り、日本の場合は婚外子が0.5 %程度しかありません。これは1つは、いわゆるでき ちゃった婚というか、子どもができてから結婚をして、それから婚内子という形で出生 届を出しますので婚外子として出てこないからです。実は私はちょっとよく分からない のですが、おそらくその点に関してもう1つもっと深刻な問題としては堕胎の問題がか なり大きな要因ではないかというふうに感じています。  その意味で今回の少子化対策に関して、樋口委員の方からこの言葉に関してご意見が ございましたが、私もちょっと抵抗があるのですが、これはともかくとして、必ずしも 今回、将来人口推計で示しました出生率の低下ということだけではなくて、その背後に あるいろいろな要因に関して、必要があると思うのです。  次に、さきほど参事官のご説明の中で、21頁のところですが年金制度に与える財政的 影響についてご覧いただければおわかりのとおり、国庫負担割合を3分の1から2分の 1に上げるとちょうど低位、中位、高位というのは1つずつ繰り上がる、というような 形になります。  このとき、是非、ひとつご注意いただきたいと思いますのは、この高位、中位、低位 の定義というか、考え方で、中位というのは一応、標準的なケースというふうにして、 高位は2000年時点での都道府県単位で見た出生力が比較的高いところを高位と位置づ け、低位に関しては、これは定義が出ております、都内23区出産可能年齢の女性の出生 力を低位というふうに位置づけています。  そうしますと、これはおそらく社会心理的な面から言っても、これはもう最初から個 人的な感想として発言するあまりよくないかもしれませんが、現状では私は低位から中 位、中位から高位と持ち上げていくというのはやはり大変なことであり、それが可能で あったとしても時間がかかることであって、どちらかというと中位をどうやって確保す るかというのがおそらく一番切実なポイントではないかというふうに感じております。  ただ、いずれにいたしましても先ほどお話がありましたように、対策推進本部という ものを設置されるということですので、そこでいろいろご検討いただければというふう に思います。以上です。 (貝塚会長)  少子化対策という言葉について、多少ご意見もありましたが、今の問題に関してどう ぞ。では、京極委員。 (京極委員)  一言だけですが、少子化対応に関しては厚労省だけではないと思うので、例えば非嫡 出子の問題だと法務省に関係しますが、ただ、お金の問題だけで考えるのではなくて、 医療の在り方とか、今、中絶の話が出ましたけれども、年間30万人も中絶されているわ けですから、産婦人科を応援するわけではないのですけれども、なかなかお医者さんも 産婦人科になっても営業ができない、中絶で儲けているという話も聞きますけれども、 そうではなくて本来、子どもが生まれるのを助けるような医療体系にならなければいけ ないと思います。だから、医療の在り方についてもやはりもう少し厚労省ですから、あ っていいのではないかと思います。 (貝塚会長)  鴨下委員、お願いします。 (鴨下委員)  合計特殊出生率が2050年に1.39というのは、随分先の話ですけれども、甘いのではな いかと思うのです。今まで言われてきたことはどんどん下方修正されていますので、何 か具体的に非常に良くなる見通しがなければこういう数字は私は期待できない。もっと 厳しい状況で社会保障を考えなければいけないのではないかということが1つです。  私は小児科医でして、これまで子どもばかり相手にしてきたのですが、3年前から社 会福祉法人の施設に勤めるようになりまして、お年寄りも診ております。先ほど岩男委 員がおっしゃった、だいたい数で言うと3対60ですか、これは現場でいわゆる特養など の設備、最近、公設民営でできる高齢者の設備を見ますと、いくら何でもやりすぎだと 思うことがある。これは現場の感覚としては高齢者対子どものお金というのはおそらく5 0対1ぐらいではないかと、そういうふうに受け止めるのです。  これからの社会では高齢者がいかに子どものために犠牲になるかというような精神で 進まない限り、この少子化はよくならないと思います。言葉の問題についても申し上げ ますと、少子化対策、「対策」という言葉は犯罪対策とかダイオキシン対策とか、悪い ことに対する言葉ですから、これはできたら私は避けていただきたいと前から言ってい るのですけれども、なかなかやはり仕方がないのでしょうか。  もうひとつはプラスワンですけれども、よく考えられて出されたことだとは思うので すけれども、やはり社会的なインパクトが足りない。いったいこれでどうなるのだとい う、その訴えがやはり足りないように思うのですね。ですから、何がプラスワンなのか 、今まで言われてたことをただ定性的に拡張しただけではないかと。本質的にいったい どこが変わったのか。  1つだけ、この3本の柱では社会保障における次世代支援ということは非常に耳新し く伺ったのですけれども、何か抜本的なことを訴えて、それこそ厚生労働省だけではな くて社会全体で子ども、次世代をどうするかということを真剣に考えないともう日本は どんどん沈んでいくばかりではないかと、そんなふうに思うのでございます。 (矢野委員)  少子化の進行による人口減というのは労働力人口の減ということと同じなのでござい ますけれども、やはり女性も含めて高齢者、あるいは外国人などにこれまで以上に活躍 してもらう必要があると思っています。そういう意味で企業としては多様な人材を生か すことを基本的な経営戦略とするということがこれからの時代では必要であろうという ふうに考えております。  そのためにはやはり人事システムの見直しも必要で、多様な人材と申しましてもこれ は単に能力面というだけでなくて、家庭環境とか生活環境とか、個人としてのバックグ ラウンドも多様であるからこそ初めて多様な人材なのでありまして、そういう意味でも 仕事と家庭の両立支援をすることはそうした人材を生かすために大変重要な観点である と、このように考えております。今後とも多様な働き方の選択肢が増えていくだろうと いうことは働く側にとっても、また、それを雇う側にとっても大事なことであると思っ ています。  そういう視点に立ちまして私どもの日本経団連の取り組みをちょっとご紹介いたしま すが、これは日経連と経団連が一緒になった組織なのですけれども、国民生活委員会と いうものを統合の5月に作りまして、その後、秋になって少子化問題検討部会というも のと男女共同参画子育て環境整備ワーキンググループというものを国民生活委員会の下 に設けまして非常に真剣な討議を始めました。働く意欲と能力のある人たちの雇用就業 機会を拡大するという観点に立って少子化対策、男女共同参画社会の推進ということを 本格的にやっていこうと考えているわけです。  今、申し上げました検討部会とかワーキンググループでは職場や社会の意識改革とか 、男女共同参画のための条件整備とか、保育施設普及のための規制緩和といったいろい ろなことについて検討を始め、いずれ案をまとめて公にする機会も作りたいというふう に考えております。  しかし、少子化対策プラスワンというものを拝見しまして、これにいくつか問題があ るというふうに思っております。例えば先ほどもちょっとご指摘がありましたけれども 、育児休業取得率について男性10%、女性80%というように、こういう目標値を設定す るというのですが、希望すれば取得できるという育児休業に政府が取得率の目標を立て るということには強い疑問を抱いております。  また、行動計画の届け出を義務づけるというのですけれども、少子化対策を論ずると きに、そうした強い規制とか、設けるという面に目がいくのではなくて、もっと本当に 皆がその気になってやることが大事だろうと思うのですね。そうでないとなかなか子ど もが増えるものではないというふうに思うわけです。  もっともっと企業の実情とか、考え方というものを尊重して、自主的な取り組みを強 制するような法的な枠組みを作るということについては非常に強い疑問を覚えているわ けで、少子化対策プラスワンの中にそれが書かれていて、どんどん一人歩きしているこ と、非常に恐れます。やはりもっと国民運動的に自主的な取り組みがあらゆる層の人が 行うという視点に立ってものを考えていかなければならないだろうというふうに思いま す。  個別に言いますと、まだまだ労務管理の面で実態にそぐわない、残業時間の問題とか 、いろいろなことがあってかえって就労の促進を阻害するのではないかというような危 惧もありますし、細かい問題は触れませんけれども、一番ここで強調しておきたいのは 法律による目標とか義務化設置とか、行動計画の義務化というようなことでは問題解決 にはならないというふうに思うわけです。  先ほどご説明いただいた資料、資料1でございますが、22頁を見ますと4つの柱があ るのですが、ここで保育所の問題が出されていないのですが、詳しい中身を読むと大き な柱の1つになっているのは分かるのですが、この問題は進展はしておりますけれども 、まだまた不十分だと思っております。民営化の問題なども含めまして。ですから、も っと強調すべきではないかというふうに私は思います。  また、先ほど人工中絶の話がありましたが、私も個人的にその点がほとんど論議され たことがないということを恐れます。ここに至ったあらゆる問題が俎上に上がって皆で 議論する、こういう実態があるということを知って、タブーを恐れずに論議するという ことが必要だと思います。いったいどれほどの人工中絶がなされているのか、20万人と か30万人というふうに聞くわけですけれども、私、伺っておりまして誠にそのとおりだ と思いましたので、是非、あらゆる問題を恐れずに取り上げるということが必要ではな いかということを申し上げたいと思います。 (貝塚会長)  ただいまの議論との関係で何かございますか。はい、翁委員。 (翁委員)  今の点で2つだけ申し上げたいのですが、やはり私自身も今、やっておりまして、働 き方の見直しというのが本当に一番重要なポイントだろうなと思っております。できる だけやはり子育て期間というのは時間を拘束されない働き方というのができるような、 そういった企業の取り組みができるだけ広がっていくということが一番働く側としては 助かると思います。いろいろな職場の状況によって、職場のまた職種によって状況は違 うと思うのですけれども、例えば裁量労働制とか、そういったものが専門職という職種 に今、認められていますけれども、むしろそういった働き方を子育て期間の従業員に対 して考えるとか、そういったいろいろな検討がなされてほしいというのが1つです。  もう1つは、企業の行動計画の策定というのがございますが、これをできるだけ情報 を開示していって、企業間でどんどんこれを競いあうような、そういった風土が出てく るといいなというように思っていまして、例えば社会的責任投資というのがあって、例 えば環境対策をしている企業についてはエコファンドというものを作って、その企業の 経営姿勢を買って投資家が投資をするというような動きがあって、例えば日本郵船が今 度、丸の内に保育所を作って、それ自体が非常にまさに投資家の投資信託などで評価を されたりとかしているのですけれども、こういった法的な拘束ということだけではなく て、それをもっとどんどん情報開示して社会的にそれが評価されていく、そういったよ うな環境を作っていくということも非常に重要なのではないかなというふうに思います 。 (貝塚会長)  少子化対策という言葉はあまりよくないのではないかというのは、これはやはり私か ら言うとやはり役所の言葉なのですね。官庁文学と言うのでしょうか。これは多分、阿 藤先生などご専門ですが、諸外国ではやはり政策として考えるときには多分、家族政策 とか、人口政策という言葉で、日本ではあまり好まれないかもしれません。  しかし、先ほど来、いろいろご議論があるように、かなり厚生労働省の政策の中で相 当重要な分野であって、私が言うと自己否定に近いのですが、単なる少子化対策ではな くという、そういうニュアンスがあった方が正直なところいいのではないかと私の個人 的な感想ですが思います。 他にご発言がありましたら。若杉委員。 (若杉委員)  少子化の問題なのですけれども、先ほど廣松委員が言われた、本当に、なぜ、少子化 になっているかという、その原因がやはり一番大事だと思うのですけれども、今ここで 例えば議論されている育児の問題というのが出てくるわけですね。もちろんそれも大事 だと思うのですね。でも、ここにいらっしゃる方々は実際に子どもも持たれて働いてお られる方で、そういうことに苦労してこられたので大変そういうことが問題が浮き彫り になって出てくると思うのですが、もう一方で結婚していない、したくない人とか、あ るいは子どもを持ちたくない人はいっぱいいらっしゃるわけで、そういう人たちの意見 がこういうところで反映されているかということをちょっと疑問を感じるのですね。  やはりそういうことを考えると世の中に対する、将来に対する不安とか、そういうも のも非常に大きなものがあると思うのですが、やはりそういう議論がなかなかこういう 場には出てこないので、やはり本当になぜ、少子になっているかということを原因をも う少し幅広く突き詰めなければいけないのではないかということで、その点を問題提起 をしたいと思って発言しました。 (貝塚会長)  事務局の方で何か少子化対策について何か、今までいろいろご要望、ご意見があった のですが、何か付け加えられることがあれば、どうぞ。 (青柳参事官)  先生方のご意見にあたる部分にここで私どもが何か言うのも大変失礼かと存じますの で、1点だけ、実は参考資料の方に付けさせていただきましたので後ほどご参照いただ ければということで詳しいご説明をいたしませんでしたが、少子化対策プラスワンにつ きましては、実は今、先生方からいくつかご指摘をいただいたところについて、若干な りとも触れておる部分がございますので、簡単にざっと紹介をさせていただきたいと存 じます。  お手元、参考資料の1−2というのが少子化対策プラスワンの全文編ということでご ざいまして、細かい叙述が書いてあるところでございますが、例えば3頁をお開きいた だきますと、先ほど翁先生からちょっとご指摘がございましたが、まさに育児期間中の 働き方の問題について問題意識を私ども、持っているつもりでございます。  3頁の(3)というところにございますように、具体的には多様就業型ワークシェアリン グというひとつの概念によりまして、例えば子育てで退職、あるいは短時間勤務の社員 として再び、働きはじめても働き方に見合った均衡な処遇を受け、活躍できるようにで きないか。子育て期に短時間勤務で働き、育児が一段落して後、フルタイム勤務に戻る ことができないかなど、こういった多様な働き方を支援すると。あるいはパートタイム 労働者のフルタイム労働者との均衡処遇の在り方を考える。こういったことことを是非 議論をしてもらいたいという問題意識は持っているつもりでございます。  また、4頁のところに先ほど来、育児休業取得率の目標の問題、いくつかご意見がご ざいました。この数字の意味だけ簡単に補足をさせていただきますが、実は、まず、女 性の方から申し上げますと女性で育児休業を現在、現実にとっておられる方が6割ちょ っとを切るぐらいの方々が育児休業、現実にはとっておられます。育児休業を逆にとら れなかった4割強の方々について育児休業をとれなかった理由等についてお訊ねをした ところ、職場の環境が整えば自分は是非育児休業をとりたいというご回答が、とれなか った方々のさらに6割ございました。  したがいまして、現にとっておられる方、プラス、環境さえ整えばとりたいという方 々の皆さんが育児休業をとったとして足し合わせたものがだいたい8割になるというこ とでございますので、無理して役所が作った数字ではないということをご理解いただき たいと思います。  同じように男性の育児休業取得率につきましては、現在、実施状況、0.05%というこ とでございますが、男性の方についても同じことを伺ってみたところ、職場の環境さえ 整えば育児休業をとりたいという方が8%強、実は10%まではいっていないのですが、 8%強おられました。したがって、その方々が全部とれるような状況を整備して、さら にちょっと数字を丸くすると10%と、こういう数字になっております。  なお、実数で申し上げれば女性の育児休業取得率80%はおよそ14万人の方々、男性の 育児休業取得率は、これは奥さんが専業主婦の場合であってもカウントがされ、分母が 大きくなりますので、10%であっても10万人の方々が対象になるということでございま す。  さらに直接のそういうお訊ねはなかったかと思いますが、関わる問題といたしまして 7頁をご覧いただきたいと存じます。このプラスワンで先ほどご説明したものは厚生労 働省の施策中心でしたが、実は国土交通省、あるいは文部科学省、こういったところと 協力をしてどういうメニューを出せるか、一生懸命出している部分がございます。  7頁をご覧いただければお分かりのように、例えばバリアフリーの関係、ハートビル 法の問題等につきまして、これは国土交通省が一生懸命進めているものでございまして 、協力してやろうということでございますし、8頁では例えば住宅関係の叙述がござい ますが、これも国土交通省の一連の施策と協力をして進めたいと思っているものでござ います。  また、若干、戻りまして恐縮でございますが、5頁、6頁にございます地域での様々 な子育て支援、あるいは保育サービスを広い意味で幼稚園等の預かり保育まで含めてや っていこうというあたり、これは文部科学省と協力して進めてまいりたいと考えている ポイントでございます。  また、先ほど保育の問題につきまして十分な叙述がないというご指摘がございました が、5頁にございますように、いわゆる保育サービスの充実は待機児童ゼロ作戦の大事 な要素ということで、大変大事な要素と考えておりまして、具体的にこういった改善を より保育が利用しやすいようにしていこうということで、例えば新規の事業として言え ば、5頁の(2)の最初のポツにございますが、特定保育事業ということでパートタイムの 労働者の方が週に2、3回、あるいは午前、午後のみ保育サービスを利用するというよ うなサービスも15年度から新しいメニューとして追加をしていきたいというふうに考え ております。  また、非常に難しい問題でございますが、京極先生からもご指摘がございました11頁 、妊娠に関わる問題ということでございまして、まず1つは4番にございますが、安全 で快適ないいお産をどうやって普及していくかということ、これは情報提供のためのプ ログラムを含めていいお産の普及、その上にございますが、望まない妊娠に対する相談 援助のモデル的な事業実施、正しい性の理解、こういったところもきめ細かく、私ども 、プラスワンとしては認識をして進めていきたいと考えております。  さらに11頁、5番目にございます不妊治療ですが、おそらく先ほど問題提起のあった 問題とのいわば裏返しになる問題として力を入れていかなければいけない問題だろうと 思います。この点については、ただ、正直言って様々な医療技術上の問題のみにとどま らず、倫理的な問題、すなわち本当のご夫婦の間の不妊治療のみならず、ご夫婦以外の 方にもご協力いただく不妊治療といったような問題をどういう倫理的な枠組みで進めて いくかという非常に重要な問題もございますので、私ども、その充実と支援の在り方に ついて引き続き検討をさせていただきたいと認識をしておるところでございます。  また、最後に行動計画についてあまり厳しい枠をはめて押しつけるようなことはいか がか、というご懸念をいただきましたが、私ども、基本的にはこれは企業なり、地方自 治体が本来、自主的に進めるということがベースにあって初めてできるものであります ので、法律的にこれを枠組みとして作るときに様々な規制的な要素は必然的に加わざる を得ないかもしれませんが、基本的にそういった企業や自治体の取り組みをバックアッ プするということが国の本来の機能ではないかというふうに考えている次第でございま す。今後、具体的な法的な措置についてはきちんと対応を詰めてまいりたいと考えてお ります。  以上、雑駁ではございますが、先ほどのお訊ねに対しての簡単な補足でございます。 (若杉委員)  少し繰り返しになって恐縮なのですけれども、今の少子化対策プラスワンを聞いて、 ますますちょっと方向が違うのではないかと思ったのですけれども、これはやはり労働 力の確保には有効なことを論じているかもしれませんけれども、やはり大事なことは結 婚したくないとか、子どもを持ちたくないという人にどうやって結婚させるかとか、子 どもを持たせるということが大事なのであって、そのためにはやはり子どもを持つ喜び とか、幸せとか、あるいは国にとって子どもが大事だとか、そういうことも必要だと思 うのですね。  これはあくまでもやはり労働力確保のための育児の支援という、そういう感じがする ので、ちょっと何か方向が違うのではないかと、正直言って思うのですね。是非、そう いう点、再検討をお願いできませんでしょうか。 (貝塚会長)  今の点についてお願いします。 (青柳参事官)  参考資料の1−2の10頁をお開きいただきたいと思いますが、先ほどお訊ねがなかっ たので詳しく触れませんでしたが、今、若杉先生がおっしゃったようなことは、私ども 、例えば10頁の1番目にございますが、保育所や乳幼児の健診の場、幼稚園、児童館、 こういうところで小中高校生が要するに赤ちゃんに触れるというところからむしろやら なければいけないのではないか。やや雑駁な言い方を申し上げますと、私どもの世代で あれば例えば歳の離れた子ども、弟や妹がいて赤ちゃんに触れて、あるいはちょっと隣 の家に行くとやはりその家に赤ちゃんがいて、赤ちゃんというのは非常に当たり前で一 般的なものだったという認識がございます。  ところが私どもの子どもの世代はなかなか親戚にも赤ちゃん、兄弟にも赤ちゃん、自 分が小さいときはいるのですけれども、中高校生ぐらいになるといなくなる。こういう ところからむしろ若杉先生がおっしゃったような問題意識に応えていく必要があると考 えています。  さらに加えて2番目にあるような子どもの生きる力の育成といったようなところ、さ らに3番目、若者が自立して生活をしていくというところをどうやって条件を作ってい くか。これは非常に重要な点であろうと認識をしているつもりでございます。 (岩田委員)  少子化の点ではないのですが、よろしいですか。負担の問題なのですが、今日の資料 で負担率、これは年金と社会保障の議論のときに必ず出るわけで、もちろん中心的には 非常に平均的標準的な負担の算定というのがなされるわけですが、それは別にそれで結 構だと思うのですけれども、しかし、例えばそういう背後にある平均とか標準、あるい は年金ですと主として被用者の夫婦モデルと言いますか、そういう形でこれまで出され てきて議論がされたと思うのですね。  しかし、先ほどの例えば非常に人材の多様化とか、そういうお話もありましたし、今 の少子化との関係で言いますと、例えば片方で出産費用を生活福祉基金に借りにくる若 い世帯もいれば、非常に高額な費用を出して不妊治療をする若い世代もいるというふう に非常に多様なわけですね。  これは1つは所得階層や職種における格差と言いますか、多様性が非常に広がってく る。もちろん世代の、ご指摘があった高齢世代と若年世代というような視点も最近、非 常に出てきたわけですけれども、私はもうちょっと世代間とか、あるいは例えば税制制 度の設計において、ときどきなされる非常にラフな所得階層別の負担の算定があります けれども、そうではなくて、例えばイギリスなどでやっているようなもっといろいろな 多様な世帯モデルを作りまして、それで負担を推計していくというふうな丁寧な作業を して制度が破綻しないようにと言いますか、変な言い方ですけれども、平均的にはうま くいくように見えてもその中で非常に格差がありますと、そこでやはり綻びていくと思 うのですね。  ですから、少し資料的にももうちょっとデリケートなと言いますか、正確な資料をお 作りになって多様なモデルをあてはめていく。そうしますと当然、平均的にはこういう 負担率でいいのだけれども、その中をどう分対し合うかということが変わってくると思 うのですね。  最終的には底というのをどう考えるかということなのですね。負担率は率ですので、 この若年世帯も年金や健康保険、そういう社会保障の負担というものも非常に負担に思 っている世帯もあるかもしれないし、そういうことがもちろん少子化問題に多少なりと も影響を与えていないとは言えないわけで、そういう場合に最低生活かどうかという議 論はもちろんあるということですけれども、底というものをどこで考えるか。この保険 制度で考えられないとすれば、別途、底をどういうふうに考えるかという議論を同時に していかないと国民の側は何か不安、やはり負担の問題というのは非常に不安をかき立 てますので安心できないというような気がします。できるだけ資料をきめ細かく試算を されて、それを是非公開していただきたいというふうに思います。 (貝塚会長)  ただいまの点は、昔私が税制調査会にいたときには標準世帯というのは夫婦と子ども 2人というので、それでやるということを考えていたのですが、それが今や標準世帯で は決してなくて、ですから今の税制調査会ではどうしているかというと、もう少し多様 にやっております。  もう1つは別な話になりますが、日本ではやはり最近、10年か15年間、所得分配は基 本的には不公平になってきました。ですから、かなり所得の高い人が増えたと同時に、 社会保障の問題というのは下の5分類の一番下の層の人とか、例えば生活保護の問題を 今後、どういうふうに組み込むかという話が、かなり実質的には重要になりつつあるの ではないかという私の印象です。  おっしゃるとおり、世帯は相当多様化して単身者もかなり増えているわけですが、し かし、夫婦だけの人も相当いるし、いろいろなケースがあって、全体として平均値でや るというだけでなく、当然もう少し細かいデータをやはり役所の方でそれなりに用意し ていただいた方がいいと思いますのでよろしくお願いします。  他にご意見がありましたら。星野委員どうぞ。 (星野委員)  少子化でなくて一般論でもよさそうなのでちょっと発言させていただきたいと思いま すが、これから言うことは多分、厚労省にはとても受け付けていただけないのだろうと 半分は諦めていますけれども、今、経済の方はご案内のようにアメリカンスタンダード なのですね。どんどんアメリカ型と言いますか、モデルとしてはアメリカンスタイル。  ところがここの会に来て聞くと、いつもどうもモデルは北欧、西欧型。それに日本の 官僚のきめ細かさが加わってどんどん整治化していくという、こういう格好になってい るのですが、ひとつ、もし、余力があればお願いなのはアメリカ型だって悪くないので はないか、こういう社会保障関係もですね。保障しているというのか、そういうシステ ムで皆がちゃんとやっていますというのが正解なのか分かりませんけれども。  というのは例えば年金の話にしても、とんでもないという方は90%だと思いますけれ ども、基礎年金だけにしてしまったらどうかとか、おそらく糸氏さんに怒られるでしょ うけれども、医療も自由診療をもっと増やしたらいいのではないかと考えてみるとアメ リカのやり方というのも大変おもしろいし、数字の上だと負担率は日本よりも低いので すね。労働力にしても、広くいうと人口でしょうか、当然、移民国ですから、どんどん 外人で、オーバーシィーというのが外人ですが、日本人が使う外人ではなくて人がどん どん入ってきて、しかも、若年層も入ってくるという格好になっていて、非常にオープ ン化されているわけですね。  そうすると今度は家族の問題が非常にある意味では離婚率も高いとか、いろいろな指 標を見ると何か家族がまとまっていないようですが、私の僅かな経験で言うと非常に家 族を大事にします。ワシントンだけですよ、家族を大事しないのは。地方に行ったらど こでも家族と教会。教会はこれはちょっと宗教の問題ですから触れませんけれども、と いうことになっているわけですから。  確かにスウェーデン、フランスだとか、イギリス、ちょっと前まではイギリスだった と思いますが、そういうモデルを見るのと少なくとも同じぐらいに、ひとつアメリカ型 のモデルも見ていただいて、利害得失を考えた上でどっちがこれからの世の中にいいの か。つまり、今までは殖産興業の日本ですから、殖産興業の日本が、どなたかおっしゃ ったように労働力の保全のために家族とか労働者を養ってきたわけですね。それに対し てこれから我々は本当に自由な世界に入ってきたわけですから、そういう意味ではアメ リカモデルというのは私は捨て難いと思うのです。  先ほどこれもどなたか言われましたように、子どもを育てる楽しみだとか、そういう ような、私はもうじいさんになりましたので孫が本当に可愛いですよね。おそらく子ど もたちも可愛いから生んでいるのですよ。そういうのが本当にどういう全体のシステム がいいかということを考えた上で選択されていかないと、我々の世代、要するに殖産興 行で育ってきた我々はもしかすると次の世代を苦しめちゃうかもしれないという、非常 に危惧を感じるわけでありまして、ひとつ、若い優秀な頭の厚労省の方々が1つのモデ ルにこだわらないでいろいろなモデルを比較考慮した上でより良い案を出して世の中の 選択を求められることを切にお願いしたいというふうに思います。以上です。 (貝塚会長)  多少、ただいまのご意見に賛同するところが多いのですが、要するにヨーロッパ大陸 は国際競争力弱いのですね。今、一番強いのは中国ではないかと思います。ヨーロッパ 大陸というのはもともと福祉国家ですから負担は非常に重いです。アメリカは多分、お っしゃるようにあまり福祉国家的ではないのですが、今や、もう新しいところはどんど ん出てくる。日本が競争しているのは実を言うとそういうところと競争している話なの で、事務局の説明は少し偏っているかなというのが私の印象でした。  それでは他にご意見等ありましたら。高木委員どうぞ。 (高木委員)  意見を申し上げる前に中国の比較論はもうちょっといろいろな関連制度を含めて議論 をしていただかないと、問題の核心に迫れない。私の感想ですが。  年金のことについて1、2点、申し上げておきたいと思います。今日、ご説明いただ いた年金制度改革の基本的な論点という9頁ですか、例えば新しい方式、世に言うスウ ェーデン方式ですが、いろいろなお考えがあってといいと思いますが、結果的に財政と いうか負担の問題との兼ね合いで方式というのは選択されるものであろうし、その結果 、公的年金としての水準がシャビーと言いますか、いわゆる国民一人ひとりにとってリ ライヤブルでない年金になるようだったら、どんな方式を持ってきてもナンセンスだと いう面は、是非、留意して議論をしていただきたいと思います。  短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大、これは私も大賛成なのですが、ただ、こ ういう当事者の方々とちょっと議論しておりますと、用意ドンで導入されますと、その 年はいきなり5万円とか、6万円、負担増になるのですね。その辺、家計との兼ね合い もありますが、いきなり用意ドンで5、6万円というよりは途中で階段を1段か2段、 置いてほしいという意見も対象になる方々から出ています。私は経営側の負担論はあま り申し上げる立場にありませんけれども、例えば130 万円以下だということで、仮に130 万円で料率がどういうことで設計されるかという問題もありますけれども、仮に60なり 65だとしましても5万円ぐらいの負担が出ますので、ある種の経過措置みたいなものが この議論には、是非必要ではないかなと思います。  もう1つは、今日、資料でご説明はありませんが、何かちょっと漏れ伝わってくると ころでは物価スライドの関係でマイナス改定の議論がおありになるということをお聞き しております。財務省の方は過去3年間分を一挙に全部、今回、逆スライドにしろとい うご意向のようですが、もし、そんなご発想が出てくるようでしたら、賃金スライドを 全然してくださってられない分も過去にありますから、そういうものとちょっと相殺で もしてもらうぐらいの話をしたい心情を、これは意見として表明させていただいて、ま だ、よく分からない話ですのでどうぞよろしくお願いしたいと思います。 (貝塚会長)  恐縮ですが、議題がまだ少し残っておりまして、是非ということがありましたらどう ぞ。 (矢野委員)  よろしいですか。簡単に申し上げます。  社会保障全般についてのことが1つです。やはり検討する場合に大事な視点というの が幾つかあると思うのですが、その1つは持続可能な制度にするということですね。も う1つは年金だけではなしに医療にも関係するのですが、自助、共助、公助ですね。そ れのバランスをどう考えるかということではないかと思います。  年金について今、高木さんからお話があったのでちょっと触れますが、若者からの不 信感が非常に高まっているという現実を直視して、こういうことで年金制度が維持でき るのかという根本のところからスタートする必要があると思います。  本当に安定した制度にするためには、負担の方を考えると同時に給付の方も考えなけ ればいけないのであります。そういう意味ではこれもまたひとつのタブーなのですけれ ども、やはり既受給者も対象として、物価スライドの問題も含めた給付の削減に取り組 んで、それをやはり今回の改定で具体化すべきであるというふうに私は思っております 。 (京極委員)  先ほど言った点でちょっといろいろな方からご意見があったのですけれども、社会保 障ですので年金、医療、福祉、労働と総合的に考えたとき、子育て支援とも関係があり ますけれども、働く女性の立場というのは私もよく分からないのですけれども、例えば 劇団四季とか宝塚の方に聞きますと亭主はいらないけれども、子どもが欲しいという方 はいっぱいいるのですね。女房いらなくて子ども欲しいという男性はいないのです。だ から、そういうことを総合的にどこが考えるのかと、国として抜本的に考えてみる価値 があるのではないかと思う点だけ一言、申し上げます。 3.その他 (貝塚会長)  まだ、いろいとご意見があろうかとおもいますが、予定した時間もまいりますので、 今後、この審議会でどういうことをやっていくかということをお諮りしたいと思います 。  それでは、政策統括官からお願いします。 (水田政策統括官)  当審議会の今後の進め方についてでございますけれども、事務方としましては前回の 会合のときに制度横断的な課題の一覧というようなことを、今日も資料2ということで 付けさせていただき、提示させていただいております。  具体的な作業としてはこれは順繰りにというわけにもいきませんので、この範囲の中 で優先度の高いものについて審議を始めていただけたらと思っておりますけれども、ず っとお話がありましたように年金をはじめとして、これから諸制度の改革という議論が 本格的に始まるということもございますので、この年金改革の議論というものが1つ下 敷きにしながらお話がありました社会保障全体の給付と負担の姿というものを検証して いただくという作業が、まずあるのではないのかと思っております。  その際に先ほど岩田先生の方からお話がありましたように、いろいろな家計に及ぼす 影響、マクロだけではなくてミクロの家計での視点というものも必要なのかなというふ うに思っております。どこまでできるかちょっと自信がない面もありますけれども、で きるだけのことはして、国民に対してどういう姿に今後なるのかということを事務局と しても検討したいと思いますし、ご議論もいただけたらと思っております。  もう1つは、こういった言わば数値的なことだけではなくて、先ほど星野委員、ある いは若杉委員、阿藤委員、様々のご表明がございました。今後の社会保障、広い意味で の福祉というものをどういう考え方で進めるかということも大きな課題になるかと思い ます  おそらく社会保障の議論が深まりますと、また、経済財政諮問会議の方でもこれにつ いて様々なご議論があろうかと思いますので、そういう意見に対してどう応えていくか ということがひとつ大きな課題だろうと思っておりまして、そういう意味で今後のそう いった社会保障改革を進める考え方というものにつきましてもご議論をいただけれなと 思っております。  もう少し具体的に日程的なことも含めて申し上げさせていただきますと、年明け、具 体的には2月以降になろうかと思いますが、今、申し上げましたようなことをテーマと して4、5回、開かせていただきまして、夏頃を目途に一次的な報告をまとめていただ きまして、概算要求ということも念頭に置きながらそういったタイミングでお考えをい ただいたらいいのでは考えております。 (貝塚会長)  今後の進め方ですが、具体的なスケジュールとしましては、一応2月から始めて、そ の後、今政策統括官の言われましたようなスケジュールで、この資料2にある、ある程 度順番がついているような感じですが、1、2、あるいは3、この辺のところを横断的 な視点でまとめて、少し先になりますが7月頃に一応報告書をとりまとめる。私の個人 的な意見としては、やはり社会保障の問題はそれぞれの分野でこれがいいという話では 必ずしもなくて、全部包括的にやって、セイフティネットというのはどういう意味で皆 さん使っておられるのかどうか知りませんが、本当のセイフティネットとなるためには 、ひとつの保険だけがうまくいっているというだけの話ではなく、全体としてうまくい っているということが非常に重要ですので、そういう視点からこの審議会は、まさにか なり基本的なところから細かい数字まで含めて、場合によっては委員からの報告もお願 いし、あるいは専門家の方のヒアリングも必要かもしれませんが、そういうことを含め て明年に入りましてから多少、スケジュールとしては頻度が上がりますのでよろしくお 願いします。  何か今の今後の進め方について特にご意見等ございませんでしょうか。 4.閉会 (貝塚会長)  それでは予定した時間がまいりましたので、この辺で終わらせていただきますが、よ ろしいでしょうか。  それでは本日の会議はこれで終わります。どうもありがとうございます。                                   −以上−  照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7691) ダ)03−3595−2159