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第11回 社会保障審議会年金資金運用分科会
議事録(案)


平成14年11月21日


第11回 社会保障審議会 年金資金運用分科会議事録

日時 平成14年11月21日(木)15:00〜17:10
場所 厚生労働省 省議室 本館9階
出席委員 若杉分科会長、内海委員、大和委員、小島委員、杉田委員、高梨委員、竹内委員、福井委員、吉冨委員、米澤委員
議事
 
(1) 年金積立金の運用の在り方についての検討(ヒアリング)
(1) 経済見通し、市場見通しについてのヒアリング
(2) 株式を含む分散投資の是非についての論点整理(案)の検討
(2) その他


○ 泉運用指導課長
 それでは、定刻でございますので、ただいまより、第11回社会保障審議会年金資金運用分科会を開会いたします。
 まず資料の確認をさせていただきます。お手元の座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。
 資料 1「第10回社会保障審議会年金資金運用分科会議事録及び議事要旨(案)」でございます。資料2「経済指標の動き」でございます。資料3「各機関の経済見通しについて」でございます。資料4は、大和総研さんご提出の資料でございます。資料5は、ニッセイ基礎研究所さんご提出の資料でございます。資料6「株式を含む分散投資の是非についての論点整理(案)」でございます。参考資料1「海外の公的年金積立金運用について(改訂版)」でございます。最後に参考資料2「財投債引受けを行う根拠条文等について」でございます。よろしゅうございましょうか。
 なお、前回までの配布資料をファイルにまとめて机の上に置かせていただいておりますので、適宜ご参照いただきたいと思います。
 委員の出欠の状況でございますが、本日は吉原委員につきましては、ご都合によりご欠席とのことでございます。また、杉田委員からは若干遅れるというご連絡をいただいております。あと、竹内委員がまだお見えでないようでございますが、ご出席いただいております委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことをご報告申し上げます。
 それでは、以後の進行につきましては、若杉分科会長にお願いをいたします。

○ 若杉分科会長
 皆さん、こんにちは。本日はご多忙の折、お集まりいただきお礼を申し上げます。
 議事に先立ちまして、先ほど資料として出ております第10回社会保障審議会年金資金運用分科会議事録及び議事要旨については、この場で決定させていただきたいと思いますので、ご意見等がありましたらよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。お手元に先ほど課長から紹介がありましたように、議事録及び議事要旨がございますが、特にご意見なければ、これについてはこのとおり決定したいと思いますが、よろしいでしょうか。               (「はい」と声あり)

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。そういうことで、決定いたしたいと思います。


(1)年金積立金の運用の在り方についての検討(第3回)
(1)経済見通し、市場見通しについてのヒアリング

○ 若杉分科会長
 本日の分科会では、まず「年金積立金の運用の在り方ついて」、引き続き、第3回の検討を行いたいと思います。
 年金積立金の運用の在り方については、10月初めより検討を行ってきましたが、本日は、まず、民間シンクタンクより経済見通し、市場見通しについてのヒアリングを行い、その後、検討結果の取りまとめに向けて、これまでの検討において提示された論点とそれに対する意見などについて議論を行いたいと思います。
 初めに、民間シンクタンクより、経済見通し、市場見通しについてのヒアリングを行いたいと思います。
 前回までに、ゲスト・スピーカーからのヒアリングを含めて、「全額国債運用」と「株式を含む分散投資」について2回の検討を行ってきたわけですが、その検討の中で、「これからの経済や株式市場、国債市場をどのように見通すか」ということが、運用の在り方を考える上で、一つのポイントとなるといった意見が出されたところでございます。本日は、このような意見も受け、今後の日本経済、株式市場、国債市場をどのように見通すかについてヒアリングを行うため、民間シンクタンク2機関にお越しいただいております。シンクタンクの方のご紹介を事務局より最初にお願いいたします。運用指導課長お願いします。

○ 泉運用指導課長
 本日お越しいただいております皆様のご紹介をさせていただきます。
 まず、大和総研さんですが、年金運用コンサルティング部長の飛田公治様、経済調査部長の小林卓典様、資本市場調査室次長の伊藤正晴様、以上、お三方にお越しをいただいております。
 また、ニッセイ基礎研究所から、金融研究部門上席主任研究員の山本信一様、経済調査部門副主任研究員の矢嶋康次様のお二方にお越しをいただいております。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。
 ヒアリングを行うのに先立ちまして、ヒアリングに際して参考となる経済指標の動きと各機関が発表している経済見通しについて、事務局より説明していただき、その後、ヒアリングを行いたいと思います。
 ヒアリングの進め方としては、まず、大和総研とニッセイ基礎研究所からご説明いただいた後、まとめて質疑等を行わせていただきたいと思います。
 それでは、まず事務局の方から、「経済指標の動き」と「各機関の経済見通し」について説明をお願いいたします。運用指導課長お願いします。

○ 泉運用指導課長
 それでは、まず資料2「経済指標の動き」という方をご覧いただければと思います。引き続きシンクタンクの皆さんのご説明を伺うご参考までということで資料を提出しておりますので、ごく簡単に説明をさせていただきます。
 日本の経済成長率の推移ということで、GDPの、名目と実質の動きをグラフで書いたものでございます。2001年まで記してございますが、ご覧いただくとおり、90年代に入ってから、いわゆる低成長が続いているということでございます。
 下の方は、各国の実質GDP成長率でございます。2001年を見ますと、我が国ばかりではなくて、アメリカ、EU、アジアNIES等々も非常に落ち込んでおりますが、中国は高成長が続いていると、こういうようなことがうかがえるところでございます。
 次に、2ページをお願いいたします。上の方でございますが、賃金・物価・長短金利の推移を一つのグラフに載せたものでございます。90年代、特に95年以降でございますが、ゼロ金利ということで、また消費者物価などがマイナスになっているということがうかがえるところでございます。
 下の方は、国内債券と国内株式の収益率の推移をグラフにしたものでございます。債券は比較的安定的に推移している。また株の方は99年に大きく上昇いたしておりますけれども、それ以外はやや大きな波といいますか、マイナスになっている時期も多く見られるということでございます。
 その次に資料3をご覧いただきたいと思います。「各機関の経済見通しについて」ということで、1ページの方は、政府関係機関の経済見通しを載せてございます。
 (1)でございますが、経済財政諮問会議に内閣府から1月に提出された資料でございます。ご覧いただくとおりでございますが、実質成長率は、2006年には1.6 %というような数字となっております。
 (2)は日銀が10月に出されました本年及び来年の見通しでございます。来年も消費者物価はマイナスというようなことがうかがえようかと思います。
 それから次の2ページの方は、民間のシンクタンクが発表されております経済見通しを載せております。
 (1)は日本経済研究センターの出された予測で、こちらは長期予測ということで2025年までのものが載っております。2000〜2015年までの実質成長率が2.2 %、2015〜2025年では1.8 %といったような数字になっております。
 次の(2)は、野村総合研究所さんの出された中期経済予測でございます。この予測に当たっては、財政再建をどうするのか、消費活性化策というものをどうするのかという政策の組合せによって三通りのシナリオを立てられておりまして、それぞれについて予測を出されております。
 また、下の方の(3)は、UFJ総合研究所さんの出された予測でございますが、実質GDP成長率で言いますと2004年にいったん2%まで上がって、またちょっと下がるというような予想を出されているというものでございます。
 説明は以上でございます。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。説明のありました、経済指標の動き、各機関の経済見通しについて、よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、経済見通し、市場見通しについてのヒアリングを行いたいと思います。初めに、大和総研の方から、よろしくお願いいたします。大体15分くらいでお願いできればと思います。よろしくお願いします。

○ 大和総研飛田氏
 大和総研の飛田でございます。それでは、早速始めさせていただきます。
 まず今般のヒアリングにつきましては、当社といたしましては、年金資金の投資政策に対します長期経済動向を踏まえましたいわゆる長期基本資産配分の前提となります期待収益率及びリスクの推定につきましてお話しをする趣旨と理解をしております。したがいまして、市場見通しをピンポイントで予測してお話しをするという趣旨ではないということをご理解賜りたいと思っております。
 また、大和総研の投資政策委員会といたしましては、どのような条件の下にどのような範囲で正しいのかという姿勢で推定しているものでございますので、資産運用リスク管理を担う実務コンサルタントを通しまして、顧客のリスク許容度に応じて本来利用される係数であるということをぜひご留意いただきたいと思っております。
 また、当社では、現在、長期資産配分の前提となります投資予測期間10年のリスク・リターンを推定作業中でございます。本日お話しを申し上げます内容につきましては、2001年度の経済関連の確定数値が出てきておりません環境の下での数値でございますから、足元から7年の暫定的な予測数値であることをご承知おきいただきたいと思っております。したがいまして、12月の作業終了後には数値として多少変化をするという可能性があることはお許しをいただきたいと思っております。
 まず、当方の年金資産運用に関します長期投資管理に対する考え方を私の方から簡単に申し上げさせていただきまして、マクロ経済モデルに基づく中長期経済予測につきましては、当社の経済調査部長の小林よりお話しをさせていただきたいと思っております。後半の実務的推計につきましては、再度飛田よりお話しをさせていただきます。
 それでは、私どもの資料、「今後の市場見通しについて−長期基本資産配分の前提として−」の、1ページ目をお開きいただきませんでしょうか。
 私どもは、年金政策自体といたしましては、給付政策・積立政策・投資政策の3政策のバランスで決定されるものだという具合に考えております。
 従いまして、投資政策のうち資産運用の戦略的な視点と申しますのは、分散と集中、攻防一体であるかどうか、機動性が確保できるか、こういった観点で見られるものかと思っております。従いまして、現代投資理論、これは特に分散投資ということによってサポートされておりますし、受託者責任を強く認識されるものだという具合に考えております。
 従いまして、投資管理の核心は、簡単に申し上げればRATE(割引率・期待収益率)という言葉で表されるという具合に考えております。
 このRについてはリスク許容度、Aについては資産クラスの選択、Tについては投資期間、Eについては期待収益率という言葉で集約されるものだと考えております。
 従いまして、投資意思決定プロセスというのは、投資期間:T、リスク許容度:R、資産選択:A、その上でマネージャーのストラクチャーが決定されることによって最終的なターゲットリターン、期待収益率というものができてくるという重層構造であろうという具合に考えております。
 従いまして、投資管理手順につきましては、プラン・ドゥ・レビュー、いわゆる分析、最適化、定式化、これについては文書化といってもよろしいかもしれませんが、その上での実践、見直し、この5ステップによって担うものだと考えております。
 従いまして、長期の基本資産配分(戦略的資産配分)とタクティカル(戦術的)な資産配分というものは元来区分されなければならないという具合に考えております。また、毎年のリスク検証、資産配分検証によります行動と長期の基本資産配分とは弁別して考慮されるべき内容であると考えております。
 従いまして、私どもの方の長期10年予測は経済構造のトレンドによりますリターンを、ビルディング・ブロックの手法によりまして導出をしておりますが、その前提となる部分につきましては、私どもの方の中期経済モデルであるマクロ経済モデルを前提条件として推計をしております。ちなみに私どもの方では、10年、5年、1年、3カ月とこういった形での予測サービスをさせていただいているということでございます。
 それでは、次に2ページ目のところは、私どもの方の小林からご説明させていただきます。

○ 大和総研小林氏
 中長期予測の基本的な考え方についてご説明させていただきたいと思います。お手元の資料3ページ目から5ページ目に、今回の中長期予測のあくまで暫定値を載せております。まだ、2001年の国民所得統計の確報が出ておりませんので、まだまだこれは改良すべき点があるとご理解いただきたいと思います。
 私どもでは、年次版のマクロ計量モデルによって毎年中長期予測を行っておりますが、年次版のマクロモデルという性格もございまして、予測期間中の景気循環を描写するのが非常に難しいわけです。ですからモデルによる予測結果は、あくまでも基本的に中長期的に日本経済がたどるであろう方向性、平均的な成長率を描写したものであると。それと整合的な生産、支出、分配、あるいは金利、物価といったものを整合的に導いたものであるとご理解いただきたいと思います。
 今回の数字はまだ暫定値ですので、2008年までしか予測を行っておりませんけれども、現時点で予測された数値の特徴を述べさせていただきますと、なかなかマクロ的な需給バランスをあらわすデフレギャップが縮小するということが非常に難しい期間が続いてしまいます。つまりデフレ圧力が払拭されにくい状況がしばらく続くのではないかと思われます。現時点ではようやく2007年当たりに消費者物価上昇率がプラス転換する可能性があると。従いまして、それまで数年間はデフレ傾向が基本的に続いてしまうのではないかというような可能性もございます。従いまして、基本的には、現在の超金融緩和状態もかなり長く続くという可能性があると思います。
 一方、日本経済では過去数年にわたりまして、企業部門での自己改革による調整もかなり進んでいます。例えば過去数年において企業の限界利益率が向上するといったような改革の成果も現れているわけですけれども、残念ながらデフレによってそうした成果が打ち消されてしまっているのが現状です。それによって日本経済がなかなか自主的回復に至らないということだと思います。
 デフレから本格的に脱却するためには、もちろん企業の自己改革も継続することが必要ですが、政策的にもデフレ解消策がとられる必要性が高まってくるものと思われます。しかしながら、今回の暫定予測では大きな政策変更というのは見込んではおりません。あるいは一部には円安誘導をすることが必要ではないかというご意見もあるようですが、そうしたことも想定してはおりません。
 ただ、現在のゼロ金利政策という、いわゆる非常時の手段が今後多年にわたって常態化するというのは現実的ではないと思います。現在長期債利回りがおおよそ1%と世界の歴史上類を見ない低水準にございますが、しかしゼロ金利、長期債利回り1%という異常事態がどの程度持続可能かについては慎重に検討していきたいと思っております。デフレからインフレへの転換が必ずしも容易ではないにせよ、そうした場合の金利上昇のリスクといったものについても中長期の予測において考えていくべきではないかと思っております。 経済を再生するための手段ですとか、経済が回復に至るまでのパスについてはいろんなケースが考えられるわけですけれども、現時点ではまだそうした不確実なことについて十分な検討を行っておりません。そうした調整を最小限にとどめております。
 以上です。

○ 大和総研飛田氏
 続きまして、6ページ目をお開きいただけませんでしょうか。これは長期基本アセットミックスに対する株式期待リターンの算出及び債券期待リターンの算出についてのビルディング・ブロックに対する考え方を示したものですが、元来、国内株式期待リターンにつきましては、名目短期金利に国内株式リスクプレミアム、国内債券期待リターンについては、名目短期金利に対して国内債券リスクプレミアムがのっかってくるという形で推計をすることになりますが、私どもではコールレート、インフレ率、これにつきましては、今ほど説明がありましたマクロ経済モデルのマクロ予測値を使いまして、実質短期金利を出しております。
 従いまして、その後の国内株式リスクプレミアム及び国内債券のリスクプレミアムにつきましては、過去約40年から50年のリターンの数字をもとに算出をしております。国内株式については1952年以来、国内債券については1965年以降の数値を使って算出をしているということでございます。
 リスクの算出につきましては、1975年12月以降、これにつきましては、他の資産、外物資産等の系列も揃うというところを考えておりますので、そのリターンをもとにブートストラップ法等を使いまして算出を行っております。
 その次の7ページ目でございますが、今般、私どもの方が予測をしております日本株式、日本債券につきましては向こう7年ということにはなりますけれども、期待リターンとしては4.80%、日本債券は1.72%。リスクにつきましては、これは10年間を年率化させていただいておりますので、6.84%と1.53%ということでご理解をいただきたいと思っております。
 その前提となります名目短期金利につきましては、0.03%、実質短期金利については0.57%、インフレ率はこの期間、基本的にデフレという具合に予測が出ておりますので、−0.54%という形で数字を用意させていただいております。若干このところについては、10年で全部揃っておりませんので、その点についてはお許しをいただきたいということでございます。
 リスクプレミアムにつきましては、国内株式リスクプレミアムは4.77%、国内債券のリスクプレミアムについては1.69%と予測値を立てております。
 特に8ページ目でございますが、これは国内株式の期待リターンについては様々な考え方があろうかと思いますので、これについては私どもの方は手法を三つほど用意させていただいて、その中で最適と思われるものを選びとるという形で考えております。
 方法の1につきましては、DIRのマクロの予測そのものを実は採用してしまうという手法でございます。
 2番目の長期の基本リターンを使用するものは、過去の長期のリターンからバリエーションの変化による影響を除いた基本リターンを使用するということで考えておりまして、長期の株式期待リターンについては、日本については8.14%程度、米国では9.6 %程度ということを予測いたしまして、過去のインフレ率を調整いたしますと、国内株式の基本リターンにつきましては、4.49%から5.70%程度の間に収れんするのではないかという具合に考えております。従いまして、今回インフレ率はマイナスでございますので、株式の期待リターンについては、3.95〜5.16という具合に長期の基本リターンから推測したものでございます。
 3番目につきましては、国内株式のリスクプレミアムを使用しておりますが、これは前回の寺田委員のご発言にありますとおり、リスクプレミアムの予測等につきましては、できるだけ過去のデータを長期にとるということに工夫をするべきだと私どもは考えておりますので、この期間については、先ほど来申し上げたとおり、過去約40年〜50年のリターン数値を採用して使わせていただいているということでございます。
 9ページ目は国内株式リスクプレミアムの1951年以降の推移を示したものでございます。過去平均については4.77、直近については、このぎざぎざのブルーのところが実績値で赤線が3年スムージングであるという具合にご理解をいただければと思います。
 国内債券のリスクプレミアムにつきましても、見方としては、ブルーのぎざぎざが実績値で、この赤線が3年のスムージングであるとご理解をいただければと思います。
 あと、11ページ、12ページにつきましては、先ほどお話をいたしましたリスクの推計につきまして、私どもの方では標準偏差の度数分布というものをチェックさせていただいておりますので、今回ご提示をしておりますリスク水準については、信頼限界内にあると考えておりますので、一応サンプルパスを使ったチェックとしてはほぼ正しいのではないかと考えております。
 13ページ目以降につきましては、直面する株式市場見通し及び債券市場の流れというものでございますので、時間の関係もございますので、今回のご趣旨が長期基本資産配分の期待リターンリスクの推定ということで理解をしておりますので、13ページ目以降については参考値ということでご理解を賜りたいと思っております。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、続いてニッセイ基礎研究所の方からお願いいたします。同じく15分程度でお願いします。

○ ニッセイ基礎研究所矢嶋氏
 ニッセイ基礎研究所の矢嶋でございます。資料の方ですが、私の方から中期見通し経済像について説明させていただきまして、山本の方から債券・株式のリスク・リターンの見通しと考え方についてご説明させていただきたいと思います。1ページめくっていただきまして、2ページをお願いいたします。
 当研究所が8月に発表しました中期見通し2002年〜2007年の経済像について簡単にご説明したいと思います。右上の図表を見ていただきますと実質GDPの予測値が出ておりますが、今後5年間程度の経済成長のメインイメージですけれども、低成長が続くということはやむを得ないと考えております。2003年〜2007年度で平均成長率、約実質で0.9 %、名目で約0.4 %という成長率をイメージしております。
 左下の方に物価の推移のイメージを出してございます。消費者物価で年平均マイナス0.5 %、予測の最後の方の2007年度になって、やっと0が見えてくるというようなイメージを持っております。
 右下の方ですが、それに伴う長期金利、コールレートの推移でございます。短期金利の方ですが、今現在日銀が行っています量的金融緩和、ゼロ金利の解除というものが見えてくるのも2007年度以降になってしまう。長期金利が今の低利安定の推移をずっと続けてしまうが、徐々にデフレ脱却が視野に入ると若干上昇するというようなイメージを持っております。
 1ページめくっていただきまして、3ページでございますが、このように低成長、デフレを余儀なくされる理由はいくつか日本経済は問題を抱えているとは思いますが、私どもが主に思っておりますのが、過剰問題を依然引きずっているというところでございます。右上のところに雇用・設備のDIの推移を載せてございます。上に行くほど過剰感が強いというグラフでございますが、確かに90年代に入ってからは景気サイクルに伴い、過剰感が一時不足ぎみに落ちる場面もございましたが、よくよく見てみますと、ボトムの位置が切り上がっております。景気が回復しても顕著に改善しないという状況が見てとれます。こういうことがあるのは構造的な需要不足が根本的にあるのではないかという問題意識を持っております。
 左下の方に過剰債務の状況を載せておりますが、確かに低金利で利払負担はかなり過去の水準を下回る状況になっております。また、ストックの債務の対名目GDP比もかなりいいレベルまで下がってきてはおりますが、企業の稼げる体質というところが右下のROAの日米比較を示しております。確かに日米でもともと格差があったというような状況はあるとは思いますが、90年代後半になって日米の格差が逆に開いているというような状況が見てとれるかと思います。この点、この改善にかなりの時間を要するということで、しばらく低成長、デフレを余儀なくされると考えております。
 1ページめくっていただきまして4ページでございます。
 ただ、いつまでも低成長・デフレというような状況を想定するかというところなのですが、中長期の日本経済を考えた場合にどうしても高齢化ということが大きな要因になってくるかと思われます。私どもが2007年度に向けて物価が緩やかにゼロに向かっていくと考える要因なのですが、人口高齢化によって供給力の低下ということを考えております。問題解決としてはかなり望ましくない形だとは思いますが、右の方の経済の影響という図表を見ていただきたいのですが、現在の状況としまして需要不足ということが確かに問題になっていると思いますが、将来的には労働人口の減少ということが起きまして、需要過剰ということが起きてくると考えております。
 左下の方に人口の推移を載せてございますが、生産年齢人口で言いますと、95年でピークを迎えておりまして、今後かなりのスピードで生産年齢人口が落ちていきます。確かに現在、高齢化でインフレ・高金利というのは予想しにくい状況ではありますが、要因としてそういうことが今後働いてくるのではないかと思っております。
 それらを踏まえて需給ギャップを計算してみますと、右下の図表でございますが、2005年を超えますと、結局のところ低成長でも需給ギャップが若干縮小し、縮小均衡型の経済という形が見えてしまいます。
 1ページめくっていただきまして、5ページになりますが、今のところ、メインシナリオとしましては低成長または低金利ということでございますが、運用上これから中長期的に考えたときに、日本経済が抱えている大きなリスクが二つあるということを認識しております。一つはドルが大幅に下落するというリスクでございます。もう一つは、長期金利の急上昇というリスクでございます。右上の方に米国経常収支の対名目GDP比を載せてございますが、今の状況はプラザ合意をかなり上回る状況になっております。
 左下のグラフでございますが、購買力平価の方から見てもドルの下落余地というのがかなり大きくあります。また、本来米国の貿易赤字というのは中国の元の切上げが各通貨に対して起きなければならないのですが、政治的に多分困難ということで、ドル円にかなりのリスクがあるといった認識を持っております。
 もう一つの大きなリスクとして長期金利の急上昇というものがございます。私どものメインのシナリオですと、デフレ低成長が続きますので、ある程度財政の関与というのがやむを得ないと考えておりますが、そうなったときに政府債務残高の累増となってマーケット市場がそれに反応するというリスクがございます。また、デフレ脱却が視野に入ってきたときに長期金利が緩やかに上昇するというパスでしたら非常にいいかと思いますが、今まで国債マネーフローがいびつな形をとっておりますので、長期金利の急上昇ということが起きて、金融機関のキャピタルロスの問題が発生してしまうのではないかというリスクを認識しております。

○ ニッセイ基礎研究所山本氏
 引き続き、国内債券・国内株式のリスク・リターンについて説明させていただきます。6ページをおめくりください。
 まず国内債券でございますけれども、15年間の過去データ及び、今、矢嶋から説明させていただきました中期経済見通しから作成しております。リスクの見通しにつきましては過去平均法を利用しております。リターンの見通しについてはシナリオ法を利用しております。
 想定しているポートフォリオとしては野村BPI国債全体ということで、2002年3月末のデータでは、利回りは複利で0.71%、デュレーションが5.6 年ということでございます。
 では、その国内債券のリスク・リターンが、今後6年間程度で見たときにどうなるかということでございますが、2001年度が1.4% だったのが、2002年度10年金利で1.3% 、2003年1.3% で、2006年が1.4% ということで、時価利回りでいきますと、2001年度が0.9 %、2006年度の0.48%までということで、5年平均で見ますと0.83%というものを予測しております。 次にリスクでございますけれども、1987年〜2001年度までの平均で4.56%でございますので、この数字を予測数値としております。
 次、1ページおめくりいただきまして、国内株式のリスク・リターンでございます。リスクの見通しにつきましては、過去平均法を使っております。リターンの見通しにつきましては、ビルディング・ブロック法とシナリオ法を活用しています。ビルディング・ブロック法でございますけれども、右の上の表をご覧ください。リスクの対価としての株式リターンということでございまして、例えばアメリカですと、株式リターンは12.4%で、短期金利を上回るリスクプレミアムは5.8 %でした。リスクプレミアムのリスクが15.6%ということで標準偏差でございます。その結果、リスクの市場価値としましては5.8 を15.6で割った0.37というものをリスクを1取ったときの超過リターンの0.37と考えております。
 日本ですと、リスクプレミアムのリスクが右下にありますように18.1でございますので、リスクの市場価値が0.20ということで、このイボットソンのデータで一番とれるだけ古いところをとって、MSCIベースでとっておりますので、70年からとりますと、ご存じのように、日本は最近株価が下がっていて、アメリカは上がっておりますので、日本の0.20というのが非常にアメリカに比べて低くなっているということでございます。11カ国平均では0.29でございます。この0.29を使いまして、短期金利の先ほどの見通しですと0.001 %ということですので、リスクがMSCIベースで18.1%でございますので、リスクの市場価値の0.29を掛けましてリスクプレミアムが5. 3%、株式リターンのメインの見通しとしては5.3 %というものを見通しております。
 参考までに左下に名目GDPと株式リターンの関係に着目した見通しということで、左下の式で株式リターン=1.21×名目GDP+2.91とありますけれども、名目GDPの係数のt値は1.98でまあまあいいのですけれども、定数項のt値が0.58ということで低いので、こちらは参考ということにさせていただいて、それに基づくと2.76%という株式リターンは参考にとどめます。
 次、8ページでございますけれども、よく言われる下落リスクと時間分散効果ということについて、先ほどの期待リターン5.3 %、期待リスク19.3%をもとに、当初の資産100 がどう変化するかという絵をかいております。メーンシナリオでは灰色の線にございますように順調に増えていくわけですが、アップサイド・ポテンシャルにいけばいいわけですけれども、ダウンサイド、例えば確率10%ですと、ダウンサイド・リスク(確率10%)下から10%のところにありますように、20年近く100 を割っているのですけれども、30年ぐらいすればプラスになってくるということでございます。
 ただし、かなり例外的なことが過去13年は起こっておりまして、1989年12月という一番高いときを初期値と考えたら、過去13年で見ると確率2.6 %のことが起こっていたということになっております。
 次に、9ページ目の方に行かせていただきます。デフレ・インフレの下で株式・債券のリターンがどうなるのだろうかということでございますけれども、ここでも同じくイボットソンのデータを使わせていただきまして、これはとれるだけ古いところからとっておりまして、国ごとに違うわけですが、CPI(消費者物価上昇率)の上位30%の期間をインフレ局面と呼び、下位30%の期間をデフレ(ディスインフレ)局面と仮定して計算しております。
 結果でございますが、右上の方にございますように、まず株式のリターンにつきましては、インフレ局面が12.84%、デフレ局面が13.10% ということで、余り変わらないというように出ております。債券のリターンにつきましては、インフレ局面は当然低くなっておりまして5.83%、デフレ局面が11.3%。結果として出てきますリスクプレミアムにつきましては、インフレ局面が7.01%、デフレ局面が1.81%という、いずれもプラスのリスクプレミアムになっておりまして、長期でこういう30年以上で見れば、株式にはリスクプレミアムがあるということになっていますし、デフレでもインフレでもあるということになっております。
 以上で説明は終わらせていただきます。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明を受けまして、皆さんのご意見やご質問を出していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。ただ、いつもどうしても時間が不足しがちですので、なるべく質問やご意見短くお願いしたいと思います。よろしくお願いします。  
○ 大和委員
 リスクプレミアムを使って推定するというのは考え方としては超長期では市場は均衡に達するであろう、均衡に達するという前提は、リスクに対してはそれに見合ったリターンを要求するので、そういう関係からこのリスクプレミアムを使って超長期の推定をするのは妥当であろうという考えだと思うのですが、現実にそういう均衡状態にあったかというのは、アメリカのように、1世紀半にわたる実績と市場の発達があればあったかもしれませんけれども、日本の場合に過去の実績が均衡状態にあったという想定でこの方法を使うということについては、ちょっといろんな修正をしなければいけないのではないかという気がしています。この方法で見ましても、それほど高いリターンの数字にはならないのですけれども、もう一つ、よくアメリカやなんかでしているのは、現時点から出発して、債券のリターンは債券の利回りプラスマイナス金利が上昇するか横ばいかによってキャピタルゲインまたはキャピタルロスをちょっとだけ調整するというやり方で、そのやり方で推定しても、多分ここに出てくる債券の収益率とそれほど変わらないと思いますが。そして株については、配当利回り+キャピタルゲインで推定する。キャピタルゲインは企業収益率とバリュエーションのPERの調整で算出する。現時点が歴史的に高いところにあるのか、低いところにあるのかによって最終時点を歴史的な平均的なところに落ち着くとした場合のPER調整幅を決めてキャピタルゲインを推定するというやり方です。これもよく行われているように思いますが、その方法で推定した場合には、中期、こういう経済情勢を見通した上で、中期10年ぐらいでも7〜8年でも結構なのですが、どういうような数字になるのでしょうか。
 大和さんとニッセイさんに、もしそういう推定もしておられるのでしたら、ちょっとお教えいただきたいと思いますが。

○ 若杉分科会長
 では、大和さんからでよろしいですか。

○ 大和総研伊藤氏
 今のご質問、たくさんありまして、私もきちんと聞き取れていなかったかもしれません。その部分はご勘弁ください。最初のリスク・リターンの考え方、確かにおっしゃるとおりのことでございますけれども、私どもも過去のデータだけではなくて、将来の予想、基本的にはマクロの予想に基づいてやっておりますので、その辺も単純に過去を使っているのではないということだけしか今のところお答えはできないのですけれども、本当に過去は実現するのかとありますが、過去から学ぶという部分もありますので、その辺も参考にしますし、当然将来予測も参考にするということを考えております。
 それから、債券の場合、先ほどお話のプラス金利の変動部分というお話ですけれども、私どもも実際に計算するとき、リターンは当然配当、債券の場合は配当ではないですが、インカムの部分とキャピタルの部分当然ありますので、同じような考え方をとっております。
 それからもう一つ、バリエーションの問題、PER等で補正するとかございましたけれども、実は私ども本日ご説明させていただきました株式の期待リターンの予測・方法を三つご説明いたしましたが、そのうちの基本リターンという概念、2番目でしたか、ここのところが実はバリエーションを考慮した基本リターンという意味で使っております。これにつきましては、実際今おっしゃられましたように、ある時期、例えばPERは非常に高い、低いという形で、株式というのは、本来の価値、本来のキャピタルゲインを実現する、つまりリターン、この部分とそれから当然市場で価格がつきますから、そのときのバリエーションの部分での変化がございます。私どもそのバリエーションの変化を除いて、基本的に株式が本質的に実現しているリターン、これを基本リターンと呼んでおりますが、その予測、実際には過去を学んでいるだけなのですが、それをやっております。
 具体的には、アメリカですと非常に長期のリターンですね。100 年、200 年のリターンを使いまして、バーンスタインが論文を書いております。そこでそういった形の基本リターンという考えを出しておりまして、実はそれを私ども日本でちょっとまねたということなんですけれども、それで予測しますと、日本で期待リターン、トータルリターンはバリエーションを考慮しない場合で8%程度。米国での長期のデータでやったバーンスタインの論文で9.数%。つまり株式は8%、9%程度、これはあくまでも過去だとおっしゃれば確かに過去なのですが、そういう考え方は当然持っております。
 したがいまして、バリエーションの変化を除いて予測をする場合ですと、私どもは本日ご提供いたしました数字の2番目、この数字というのを予測値立てております。

○ 若杉分科会長
 よろしいですか、大和委員さん。

○ 大和委員
 はい。

○ 若杉分科会長
 ニッセイさんよろしくお願いします。

○ ニッセイ基礎研究所山本氏
 まさにおっしゃられていますように、正解のある世界ではございませんですけれども、ただ、私どもの使わせていただいているリスクプレミアムにつきましては、先ほどの資料の7ページを見ていただいたらわかりますように、30年で見れば、アメリカ、イギリス、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、日本、スウェーデンとどこで見ても、30年で見れば株のリターンはかなりリスクプレミアムがどの国でもあるということになっております。
 日本は確かに今考えると過去13年ずっと下がっているから、そんなものないじゃないかということでございますけれども、ご存じのように1989年12月までは、戦後ずっと日本の株は上がってきておりまして、たしかどこかの証券会社さんの投信の宣伝で、過去5年で見れば、5年持っていれば必ず株の方が債券よりもリターンが高いですよというのをよく示しておられたように、日本でもそういう期間もあったということでございます。結局足元がどうかということになるのですけれども、私どもは大和さんのように、特にPERを用いた推計はしておりませんけれども、ただ、足元どうだということを中立的に言わせていただくと、要は1989年のバブルの頂点のときから、2000年ぐらいまでには日本の株のPERは40倍から60倍であったわけでございますけれども、今は株価が下がったおかげでPERが20倍強になっておりまして、逆にアメリカの方は株が上がりましたので、PERが30倍ぐらいになっておりまして、日米のPERが逆転していると言われておりますので、必ずしもこの段階でそんなに悲観的な予想を無理にしなくてもいいし、PERに基づいてやれば、5.3%程度の期待リターンに平均値はなるのではないかと考えております。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。今、大和委員の質問に私から補足のものがあるのですが、ご説明に、将来のマクロの見通しも加えているということですが、非常に大ざっぱにいって、マクロのどういう要因が株式と収益率にどう影響を与えているのか、基本的な考え方というか、関係だけでも教えていただきたいのですが。

○ 大和総研小林氏
 私どものマクロ計量モデルの構造に関わるご質問だと思いますが、かなり欲張った内容になっておりまして、企業収益、株価を両方とも内製化して求めるということになっております。企業収益が株価を決定し、株価によって設備投資が決定されてくるというような、必ずしもパフォーマンスはよくはありませんが、そういった形で株価が非常に日本経済の軌道を決定する重要なファクターになっております。

○ 寺田年金資金運用基金投資専門委員
 さっきから出ていますアメリカの推定法、バーンスタインがアーノットと共同で書いた論文とかほかにもありますけれども、基本的には将来の株の期待収益率は、インカムイールド、一株当たり利益の成長率、株価収益率のパーセント変化率の3つの要素の和として求めます。インカムイールドは配当利回りだけではなくて、自己株式取得、これも利益の中から株主に分配しますから、このリパーチェスイールドを配当利回りに足してインカムイールドとします。ただ、リパーチェスイールドの中には、自己株式をストックオプションとか、二次売出しに用いるものがありますから、全部株主にキャッシュで行くわけではないので調整する必要があります。1株当たり利益の成長率、これはGDPの成長率と割と近いのですけど、ただGDPには農業部門とか政府部門という生産性の低いのが入っていますから、企業部門の1株当たり利益の成長率を見るためには一般にはGDPの成長率より高く予想します。ただ、企業部門の成長率の中には中小企業も入って、非上場会社も入って、一般に非上場会社の成長率の方が上場企業より1株当たり利益の成長は高い傾向ありますから、これも調整してやらなくてはいけないと。
 そうすると、今のアーニングスイールドと1株当たり利益の成長率、それから、将来のPERの変化率ですね。この3つをパーセンテージで出して足してやれば、株の期待リターンが出るという公式があるわけです。
 ただ、バーンスタイン等がやっているのは、非常に長い期間、1802年から統計をとっているのですけれども、彼の結果というのは、リスクプレミアムがかなり小さく出て、やり方によってはマイナスのリスクプレミアムが出ているんですね。悲観論の最たる人が私はバーンスタインではないかと思っていますけど、基本的には長期の期間をとりすぎたための結果です。ただ、1802年からとるとアメリカの連邦準備制度ができたのは1915年なんですよ。金融政策が存在してない長い期間を含めることの意味が問題になります。
 それから、報告書の話にもあったように株式の評価に将来のキャッシュフローのストリームをディスカウントする方法が用いられる。こういうコンセプトができ上がってきたのは、1935年頃、これは例のグレアム・ドッドの『セキュリティ・アナリシス』という本が出た。あの本が初めてそういう手法を提示したんですね。ですから、そういう点からも1800年代の長い期間を入れるというのはどうかと。そうするとイボットソンのように、1926年からとか、日本の場合はデータのアビリティーの問題がありますし、特に債券の場合は、以前は市場価格というのが実際の需給を反映してなかったですから、昭和40年代からのデータを用いるということがリーズナブルではないかと私は思います。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。ほかに、米澤委員どうぞ。

○ 米澤委員
 多少今日の趣旨と外れるかもしれないのですが、足元が非常に深刻な状況になるかと思うのですが、何かしらの基準において株価は下がり過ぎているのか、実態をあらわしているのか、高過ぎるということは余りないかと思いますが、その辺のことを今現在基準になるようなことで何かお教えいただければという点が1点と、それはまさに私自身がよくわからない点でお聞きしたいこと。
 もう一つは、今度は逆にきょうの趣旨であります10年とか先を予測するときに、一つは、きょうニッセイさんの方の3ページ、ROA、これが一つ頼るところの数字ではないかなと。株式はレバレッジをかけてROEになるはずですが、ROEと株式投資収益率と一致する必要はもちろんないのですが、長期においてはここの水準を無視するわけにはいかないとなると、一つ重要な参考になるのではないかなということです。
 それを見ますと、例えばニッセイさんの3ページ見ますと、確かにバブル崩壊以降非常にROAで見ても半分ぐらいになっていますが、ここの2000年の一番右のところ、この先はどうなっているのか、今、さらに下がっているのか、そうでもないのかということだと思います。
 そうしてみますと、先ほどのリスクプレミアムも大和総研さんの方は今非常に下がっているわけですが、事後的なリスクプレミアムは多分間違いなく下がっているわけですが、全く見方を変えると、今リスクプレミアムは物すごく上がっていると。というのは、それは何かというと、我々はリスク嫌がって、みんな債券にいってしまうわけですね。ですから、それは事前のいわゆる正しい意味でのリスクプレミアムは物すごく株式に関して弱気になってリスクプレミアムが非常に高くなっているという考え方があって、そちらの方が何となくもっともらしく、といったときに、もう一度何かしらファンダメンタルみたいのに比べて株価の水準が非常に下がり過ぎているのかどうかということをお聞きしたい。
 ちょっと整理できてないのですけど、もう一点、大和さんの方で、3ページで、マクロのROAとかROEがどうなるかといったときには、これは普通は資本係数の逆、Y/K、1から労働分配率を引いた利潤分配率とでもいいましょうか、そういうものを掛けたものは定義によって利潤/Kになるわけですが、今、盛んに言われているのは、バブル崩壊後、労働分配率が非常に上がってしまって、それをいかに下げるかがポイントだと。下げると非常に問題あるのですが、企業の業績をよくするためには、それをいかに下げるかに関わっているということで、それは野村かなにかの将来予測もそういうようなことは盛んに書いてあったのですが、この予測でいきますと、70%上がったとから下がっていかないというのは、企業の業績から見ると非常につらいのかなという感じがしています。
 整理しますと、長期ではROE、ROAみたいのところで見ていくのが一つポイントではないかということ、そういうことを踏まえて、今、短期というのは上がり過ぎたのか、下がり過ぎているのか、感触をお聞かせいただければと思っています。

○ 若杉分科会長
 大和さんお願いします。

○ 大和総研小林氏
 まず労働分配率の件なのですが、確かに私どもは3ページ目のテーブルによりますと、実質ベースの成長率は予想期間の後半、2005年から2008年にかけて一見回復するように見えますが、名目成長率が完全にプラスになっていくわけでは決してなくて、つまり経済のパイが縮小していく状態が延々と続いていってしまう。
 一方で、リストラ圧力がかかり続けるわけです。そして、失業率も高止まってしまって、リアルの成長率は一見高くなっていくけれども、決してハッピーな状況ではない。それは労働者側にとっても、あるいはリストラ努力を継続していくであろう企業者側にとっても、それほどハッピーではない状況が続くのではないか。それは気になっているのは、デフレから本格的に脱却できるかどうかということだと思うのです。あくまで、これは暫定値でございますから、今後いろんな財政編成の見直しだとか、政策に関する想定をしていくことによって、変わっていく可能性は大いにあるにせよ、現段階ではなかなか苦しい状況が、この予測期間については続いてしまう可能性があるということだと思います。

○ 大和総研飛田氏
 米澤先生の方から、株式についてのプレミアムのお話が出てきているのですが、これはこの場で即答するのは非常に難しいと私は思っております。私どもの方の今日のヒアリングの仕事というのは、長期分散に対してどのような状態であるか、ちなみに昨年、私どもが予想しておりますこの10年予測の国内株式リスクプレミアムは5.01、今回4.77、国内債券リスクプレミアムは1.63、1.69、国内株式のリスクプレミアムは0.24落ちて、債券が0.06上がったという形。これはまさにヒストリカルなデータを反映しているということでございますので、この実態であったとしても、全体的なプレミアムが存在するということは間違いのない事実だろうと思っております。
 それが、今、リスクプレミアムが高くなっているかどうかというのは、市場そのものの見通しということになりますので、それはこの審議会といいますか、我々の長期資産配分という考え方からすると、私としてはコメントを避けたいところだというぐあいに考えています。

○ 若杉分科会長
 現在の株価水準についてはどうですか。あとROAの動向、これからの株式投資とどういうふうに結びつけるかという質問もあったと思うんですけれども、もしお答えいただければと。
 この間、ニッセイさんから。

○ ニッセイ基礎研究所山本氏
 なかなか難しいご質問で、ちゃんとした答えなどできないのでございますけれども、私どもの資料の3ページの下で、まさに日米非金融法人のリターン・オン・アセット比較ということで、まさに日本は先生ご指摘のとおり、最近さらにリターン・オン・アセットが低くなっているのですけど、これを見ていただいたら分かるように、高度成長期もアメリカよりずっと低かったわけでございまして、実はこの問題は昔から日本は資本コストが低かったのです。資本コスト低いけど、結局インフレ率が低うございまして、債券の金利も低いですので、一時結構株でもてはやされていましたTAAとかという考えに立ちますと、イールドスプレッドで言えば、必ずしも日本のリターンがすごく低いということにもならないという面はあるのではないかと考えております。

○ 若杉分科会長
 大和さん、先ほどの、もしあれば、なければ先に行きますが。

○ 大和総研飛田氏
 これはコメントを差し控えさせていただきます。

○ 若杉分科会長
 わかりました。

○ 高梨委員
 大和総研さんに教えていただきたい。資料3ページのところで、先ほど米澤先生もちょっと触れておられましたが、1人当たり雇用者報酬について、前半が−0.7 なのですが、それが後半が0.3 になると見ているのですが、それはどういうような事情というか要因でそうなると見通せるのか。次のページに労働力人口、就業者数というのが出てくるのですけれども、就業者数が2008年頃になると上がっている。就業者と雇用者とは違いますけれども、労働力率についてはどんなふうに見ておられるのかという点について、数字がもしあるならば教えてもらいたい。
 仮に労働力率が上がるとして、労働力の質の側面ですけれども、男性なのか女性なのか、高齢者なのか若年者なのか、今、フリーターというような層もあるわけですけれども、あるいは外国人をどう見ているのか。労働力率が増えてはいるにしても、質が違ってくるということになると、1人当たり賃金というところに影響する可能性があるのですが、その辺についてはどういう分析をなさっておられるか、教えていただきたい。

○ 若杉分科会長
 大和さんお願いします。

○ 大和総研小林氏
 基本的に予想期間後半において、1人当たり雇用者報酬がプラス転換しているというところについてはちょっと検討する必要があると思いました。ただ、私どもといたしましては、労働の質ということについては実はモデルの中で一切考慮しておりません。ですから、今のご指摘のとおり、たとえ労働力率に変化があっても、それが男性か女性か、あるいは外国人による労働力の参加なのかといったところで、確かに賃金の変化に差がついてくる可能性はあるとは思われますが、その辺は分析しておりません。

○ 若杉分科会長
 労働力の推移の方は。

○ 大和総研小林氏
 労働力の推移については、基本的に労働参加率が上がっていくというようなことについても、これは中長期の予測ですけれども、足元の雇用情勢が物すごく悪いということを考えますと、労働力不足が発生してくるという状況には到底ならないとは思うんですね。その中で、男性と女性の労働参加率の変化についての想定をもう一度検討したいと思います。

○ 若杉分科会長
 杉田委員、小島委員で最後。

○ 杉田委員
 すいません、これは本当に純粋にお教えいただきたいという、やや即物的な質問なんですけど、株価とデフレの関係というのは、分かっているようでなかなか分からない部分があるのですけれども、今、大和総研さんの長期資料、中期資料を見ましてもデフレーターで見るデフレがかなりどうも続きそうだという予測が出ているわけですが、デフレが続いている中でTOPIX あるいは日経平均という格好で見た株価、指標が、トレンドとして上昇していく可能性というのはどの程度あるのかということが非常に問題になってくると思うのですが、マーケットの関係する方たちに私もたくさんいろいろ聞いてみたのですけれども、皆さんは一つの体感として、デフレが続いているときは、杉田さんだめだよ、こうおっしゃる方が圧倒的に多いのですが、科学的に分析するとその辺はどういうことになるのでしょうか。

○ 若杉分科会長
 これは両研究所に伺いたいと思いますが、大和さんから伺ってよろしいですか。

○ 大和総研飛田氏
 大変難しいご質問てございますが、私どもの資料の8ページ目を見ていただきたいのですが、私どもは長期の推定の中で、期待リターンがどの部分がよさそうだというのを常に一つの手法ではなくて様々な手法を検証しながら決めていくわけですが、その方法の(2)の部分につきましては、先ほど伊藤が説明しましたとおり、1952年以降の非常に超長期にわたっての数値をベースに使っているわけでございます。先ほど寺田委員の方からご指摘ありましたとおり、この推定方法ですと、単純平均的なリターンに比較するとかなり低めのリターン、8%台というものを出しているわけでございます。
 このあたりは、私どものような実務のコンサルティングビジネスを展開する場合に、株式の期待リターンを安易に直近のところで13%とか、そういった形態をとるのは非常に危険だと私は思っておりますので、割合保守的な手法でこの部分は考えていると。その手法に基づいて、大体範囲が3.95〜5.16ということでございますから、DIRのマクロの数値を見ていただきますと、4.48でございます。ということは、デフレ環境下で株式が極端に上がっていくというシナリオはつくりがたいわけですね。それはもし変化があるとすれば、様々な政策転換が行われたときにリバウンドを起こすと、そういった形態でとらえておりますから、トレンド自体として見ると、この4.48というものが示すように、それほど大きな中長期的な変化をこのマクロ数値の中で予測をしているわけではないということをご理解賜りたいと思っております。
 したがいまして、今回4.80としておりますのは、3.95〜5.16の間におさまるということと、それが今後のマクロ経済予測から見た短期レート等を含んで、なおかつ超長期にわたる株式リスクプレミアムをのせた数値、これが3.95〜5.16の間におさまるということを考えておりますので、それで今回は4.80を使わせていただいたということでございます。超長期的な感覚からいえば、もともとの期待リターン、株式基本リターンが4.49〜5.70と我々は想定しておりますので、今回ニッセイ基礎研さんが出されている5.30というのも、この範疇の中に十分入るものだと考えておりますので、そういったものではほぼここの部分については、0.5 %の違いというよりは、ほぼ同じような状態の中に入っているのではないかと考えております。
 ちょっとお答えをずらしているような形にはなりますが、この4.48という水準をご理解賜りたいということでございます。ピンポイントでTOPIX の推移ということを申し上げる立場にはちょっとありませんので、この分についてはご勘弁をいただきたいということでございます。

○ 若杉分科会長
 でもリターンがプラスだから、TOPIX 、日経平均は長期トレンドとして上がっていくということを意味している。

○ 大和総研飛田氏
 そうですね。

○ 若杉分科会長
 ニッセイさんいかがですか。

○ ニッセイ基礎研究所山本氏
 私も先生のおっしゃるとおりのような感想になると思うのですけど、ただ、私どもの資料の9ページを見ていただきますと、そういうまさにデフレ局面では株は上がってないのではないかと思ったのですけれども、今の日本を見るとそう思えるのですけど、さっきご説明しましたように、四半期ごとのCPIの水準の上位30%をインフレ局面、下位30%期間をデフレ局面としてやってみますと、別に株式のリターンはデフレ局面だから低く、インフレ局面だから高いということにも、こういう定義をすればなってないということは言えると思います。
 ただし、市場心理というものがありますので、まさにここからは単なる感想になって申し訳ないのですけれども、ウォール街の「ランダムウォーク」というアメリカの株式投資の入門書がありますけれども、その中にまさに投資家は、バックミラーばかり見て運転する、車の運転は前を見て運転するのだけれども、投資家というものは車の運転と違って、常にバックラーしか見ない。要は上がってくるとみんな株を買うし、下がってくると買わないというように言われておりますけれども、まさにそういう心理状況だと思いますし、残念ながらこういう局面ですので、よくご存じのように、今、金融法人、事業法人とも時価会計の問題もありますし、なかなか買えない状況にありますし、個人もどうなるのかわかりませんけど、従来は完全分離課税で1%払えばよかったのが20%の分離課税とかというと個人も買いにくい状況にあるので、まさに株価というものはなかなか心配な状況にあるとは思います。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。それでは小島委員、吉冨委員で最後にしたいと思います。

○ 小島委員
 素朴な疑問です。大和総研さんの中期経済見通しを見ても、あと7〜8年ぐらいは厳しいというような状況で、まさに今公的年金の資金運用の基本ポートフォリオへの移行期間の間が極めて厳しいという見通しを立てられています。そういう中で、今、新規市場投入している公的資金のうち20%ぐらいの株式運用比率で、これは基本ポートフォリオからすれば高めの比率で運用している状況なので、そこをどう考えるかということです。個人あるいは企業が株式運用から撤退しているという中で公的資金が株式市場を支えるしかないという考え方もあるかと思いますけれども、そのことを考えるかということが一つです。
 2番目には、日本の国内の株式市場の規模とそこに投入する公的資金の規模、この関係はどう考えるか。公的資金の規模はそれほど関係ないのか。公的資金の規模が大きくなればなるほど株式市場に対する影響が何か考えられるのか。例えば極端な話、国内の株式市場の半分が公的年金の資金である場合、その影響というのは何か考えられるのか。株式市場の規模とそれに投入する公的資金の規模との関係、そのことで何かお考えがあれば、お聞かせ下さい。

○ 若杉分科会長
 よろしいでしょうか。今、公的年金のポートフォリオは移行期間ということで、株式のウエイトを、全体のポートフォリオに合わせるために高めに今持っていっているんですね。そういうことについて、当面の株式市場の見通しとそういうポートフォリオを目標、基本ポートフォリオに近づけるために今株式を余分に持っているということがコンシステントかどうかという質問だと思うのですけれども、あと市場の規模の問題で、きょうの見通しの問題とはちょっと違うかもしれませんが、もしお答えできればお願いしたいのですが。

○ 大和総研飛田氏
 移行期間の中で、今の投入規模が高めではないかという意見があるかというご質問に近いという具合には考えているのですが、先ほど、今の株価水準が実態よりも低めであるのか、そういう部分の考え方と非常に近いわけですけれども、私どもの方は中長期的に見れば、今の水準は低い水準だと考えております。したがって、元来、分散投資を考えた場合に、もともと基本ポートフォリオ12%をレンジとするものとして策定した、そこに対する様々な負債管理についての議論は置いておきまして、それがある程度正しいものだとするのであれば、基本的に中長期の株式運用というのは、基本的な資産分散と同時に逆ばりの運用者であるというのは否定できない事実だと思っておりますので、私どもの方は基本資産配分そのものに大きなリスク上の問題がないとするのであれば、今の状態は移行期間中に、早めにそういった投入が行われても決しておかしな行動ではないというぐあいには考えております。
 株式市場については伊藤の方からコメントさせます。

○ 大和総研伊藤氏
 株式市場の規模と公的資金の規模、非常に難しい問題なのですけれども、一つ考えていかないといけないのは、規模という問題とどういう投資が行われるか。恐らく公的年金さんの方はいわゆるパッシブ運用、インデックス運用という話ではないかと思うのですけれども、その場合ですとやはり危惧されるのは、価格形成メカニズムにどう影響を与えるか。今、公的資金だけではなくて、いわゆるパッシブ運用、インデックス運用も議論がありますが、それがどんどん進んでいきますと、当然価格を発見するという部分が落ちてきてしまいますので、株式市場のメカニズムを壊してしまう、阻害してしまうという懸念はあるかもしれないです。ただ、量的にどのくらいというのを、私は定量的な分析等もしたことがありませんので、よくはわかりませんが、その辺があるかと思います。
 したがって、例えば運用方法としましても、きちんとフェアバリューを発見して、それで買っていくような、いわゆるこれはアクティブになってしまいますけれども、そういうことであれば、そういう価格形成のメカニズムに対する影響というのは、これは今度はいい方の影響になってくるでしょうから、単に規模だけの問題ではなくて、運用方法もありますし、それから、規模もあることはあるのでしょうが、今のようなパッシブ運用で大きくしていくというのは市場そのものの機能を考えますと、少し懸念される部分はあるのかなというふうに感じております。

○ 若杉分科会長
 ニッセイさんありますか。

○ ニッセイ基礎研究所山本氏
 今の公的資金で株を買える規模の問題でございますけれども、まさに公的資金で買える株の規模という意味で、占率で言えば、時価総額にすればそれほど大きくないと思いますけれども、ただし、それなりの影響はあると思います。昨日、東大の伊藤隆敏教授から、為替の介入で、逆バリをやっていった結果、どうなったかということについてのご説明をいただいたのですけれども、その結果を要約させていただきますと、逆バリの為替介入はそれなりに市場に影響を与えた。為替のマーケットですので、当然株式マーケットに占める公的資金の占率よりも為替の市場の方がもっと大きいですので、ほとんど為替介入というものは占率としては小さくて効かないはずなんでございますけれども、現実は多少逆バリでやったこともあって効きまして、10年間で9兆円の総利益をあげた。円高局面で買って、円安局面で売って含む益もあるので、今のところうまくいったというような分析を先生がされてまして、そのことと同じような効果はある程度あるのではないかと考えております。個人的意見でございます。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。それでは吉冨委員。

○ 吉冨委員
 時間が遅くなったところで申し訳ないんですけれども、中長期の予測そのものというのは永遠に議論になってしまうんですね。私たちが年金運用で一番興味があるのは、私は何回も言いますけど、恐らく中心的な問題は、賃金の上昇率とそれと投資リターンの相対比較だと思います。間違っていたら、ここで私はとめますけれども、もしそういう相対比較であれば、今日のように絶対値を議論するというのは永遠に続いていくわけです。つまりリターンは高いほどいいというだけの話になっちゃいますから、アメリカのように潜在成長率が余り変わってないようなときよりも、日本の場合のように10%、4〜5 %、2%、さらに1%、そういうときに賃金の上昇率とインカムのリターンと株のリターンとの相対関係というのはどう動いているのでしょうかということです。
 それから、ディスインフレと絶対デフレとは違いますから、そこの比較も実は本当は知りたいのですけれども、絶対デフレの期間は短いものですから、少なくとも成長率が大きく20年単位で変わってきたようなときに、今申し上げた相対比較はどうなっているか。それである限り、例えば名目賃金の上昇率が最近のように−1とか0%でリターンが一見低く、2%にしか見えないにしても、それは年金の運用としては十分に成り立っていく可能性があるわけで、その関係がどう崩れつつあるのかというのは、恐らくこの分科会の最大の関心事だと思っていたわけです。絶対予測でなくて、そういう意味の相対予測ではないかと思ったのですけれども、どうなんでしょうか。そういう計算は可能になっているかどうかということです。

○ 若杉分科会長
 難しい基本的な問題を出されましたが、何かもしお答えいただければお願いします。賃金の上昇率との関係、労働分配率とも絡むわけですけれども。

○ 吉冨委員
 マクロですから、必ず賃金上昇率は入っています。

○ 大和総研小林氏
 もちろん計算することは可能ですし、重要性は大変認識いたしましたので、推計してみたいと思います。

○ 吉冨委員
 名目賃金の上昇率は、名目GDP成長率と大体パラレルですか。そうすると名目GNPとリターンとの比較をなされれば分かるわけですよね。

○ 大和総研小林氏
 はい。

○ 吉冨委員
 それはここに大体出ていますけれども、年金運用は十分やっていけるという感じの結論になると私は思うんですが、問題は確定リスクの場合には名目成長率は余り変わらない可能性がありますけれども、株のリターンが、そういう潜在性、一律の変化、それからデフレ、インフレのときにどう違うかということが恐らく焦点になるのだろうと思うのですけれども。

○ 大和総研小林氏
 今回のは、何回も申し上げましたとおり、暫定値でございまして、もちろんこの中でマクロの解として株価というのも出てくるわけですが、もう一度検討した上で、今、先生がおっしゃられたような観点から試算してみたいと思います。

○ 米澤委員
 素朴な感想なんですが、先ほどの労働分配率がちょっと高止まりしちゃっているということは、これは平たく言えば、賃金がもう少し下がるべきか、人数も掛けますから、どっちかがもうちょっと下がらなければいけない。その分、利潤は圧縮しているわけですね。ですからこれは年金にとってつらい状況が起きて、ミクロで見れば企業の利潤がもう少し出てくるためには、そこのところを何とか回復しなければ、株式にとってはつらい面が、しかも吉冨先生がおっしゃったように、特に賃金との相対的な関係においてはもう少し厳しくリストラをやっていく必要がミクロ的にはあるなと思っています。
 それから、マクロ全体として、どういう問題が起こるのか、失業が増えるという問題は非常に困るのだけど、ミクロ的に見るとそこのところを改善しないことには展望がひらけてこないのではないかという感想は持っています。野村総研なんかのところも、言葉を変えれば、労働生産性に見合った賃金にアジャストしていくという書き方がしてあったかと思いますが、そこのところがミクロ的には少し何とかしてほしいなという感じがするわけです。

○ 若杉分科会長
 まだいろいろあると思うのですけれども、そしてせっかく外部の方に来ていただいておりますので、できるだけいろんなことをお聞きしたいのですが、あとの議事の関係もありますので、それでなくても大分時間をオーバーしていますので、大和総研とニッセイ基礎研究所からのご説明、これからの年金積立金の運用の在り方についての検討に当たって大変有用な資料、ご説明をいただきました。これから、きょうのご説明、資料等をもとに年金積立金の運用の在り方について検討結果を取りまとめていきたいと思います。
 大和総研さん、ニッセイ基礎研究所さん、どうもありがとうございました。
           (大和総研、ニッセイ基礎研究所退室)


(2)株式を含む分散投資の是非についての論点整理(案)の検討

○ 若杉分科会長
 それではちょっと慌ただしいのですけれども、時間が限られておりますので先に進みたいと思います。引き続きまして「株式を含む分散投資の是非についての論点整理(案)」について議論を行いたいと思います。
 本日は、これまでの株式を含む分散投資の是非についての検討において、提示された論点と、それに対する意見などについて、論点整理という形で事務局にまとめていただいておりますので、事務局より説明をお願いいたします。これも運用指導課長、よろしくお願いいたします。

○ 泉運用指導課長
 お手元の資料6「株式を含む分散投資の是非についての論点整理(案)」をご覧いただければと思います。
 分科会での委員の皆様方のこれまでの議論、あるいは前回おいでいただいた加藤先生、竹原先生の意見表明なども含めて事務局で整理してつくってみたものでございます。大きくまずリスク・リターンについてどのように考えるかということでございますが、株式を含む分散投資の考え方、全額国債運用といった考え方それぞれに対比してみるとこんな整理かなということでございます。
 まず(1)、株式運用の評価
 株式というものをどのように見るのかということでございます。分散投資の考えでいけば、株式運用はインフレなどの経済変動に強く、長期的に債券運用を上回る収益が期待できるということかと思います。
 一方、全額国債の考えからすると、株式運用は、元本割れのおそれがあり、年金資金運用の方法としては不適切ではないかということかと思います。
 (2)運用収益の考え方
 運用によってどれだけの収益を目指すのかということでございます。分散投資の方は、公的年金の給付額は、賃金上昇に連動しているということでございますので、賃金上昇率を上回る実質的な運用収益を確保することを目指すべきではないかということです。
 一方、右側の全額国債運用の方は、名目での安定的な運用収益を確保することを目指すのだと、こういうことかと思います。
 (3)安全性と効率性をどう見るか。
 左側の分散投資の方でございますが、安全かつ効率的な運用ということが必要ではないか、長期資金でございますので、適切な運用リスクの下に一定の実質的な収益を見込んだ運用を行うべきではないかということです。
 一方、右側の全額国債運用の方ですが、積立金については、安全性を第一に考えるべきであって、名目元本が減らないようという運用が必要ではないかということです。
 また、年金の保険料というのは、強制徴収されるものでありますので、名目元本を減らさないようにすべきである、こういうご議論もあろうかと思います。
 (4)分散投資の効果という論点でございます。
 リスク・リターンの異なる資産を組み合わせることによって、目標とする収益率をよりリスクを軽減する形で達成することができるのではないか、従って株式を含む分散投資という方がリスクが少なくなるのだと、こういう議論であります。
 右側の全額国債運用の方は分散ということではないので、これに対しては特にないのではないかと思います。
 以上、収益の考え方、リスクの捉え方ということでございますが、それとは別の観点を下の方で整理をしてみております。
 下の(1)市場への資金配分という見方でございます。
 株式に投資することによって、一定の資金が民間に市場を通じて配分されるということで、経済全体から見ての資金配分ということで適切なのではないか、もし全額国債運用ということでありますと、国がその資金配分を決定するということになります。それは財投制度の改革や一連の金融資本市場改革の流れともそぐわないのではないか、こういう議論があるかと思います。
 (2)国による株式の保有が企業支配につらなるのではないかという見方でございます。
 これはむしろ右側の全額国債運用の方では、株式を保有することにより、国が民間企業を支配するということが懸念される、しかし、一方そのために議決権行使を行わないということになれば、今度はガバナンスが働かない、そういう問題があるのではないかということでございます。
 これに対して左側の分散投資の方ですが、議決権行使については、現在年金資金運用基金は受託機関に対して、議決権行使の方針はどうか、あるいは実際どういう投資をしているかという報告を求めるという形で議決権行使の実施をいたしております。こういう、企業支配という懸念がないような形でガバナンスが働くように取り組んでいると言えるのではないかということでございます。
 (3)政治介入という見方でございます。
 右側の全額国債運用の方の議論で、株式運用を行うということは、政治介入のおそれがあるではないか、こういう議論でございます。
 左側の分散投資の方はそうしたことがないように、国が直接ということではなく、別の人格の組織が運用する。これは必要であるし、今もそういう形になっているのではないか、こういうことでございます。
 最後に(4)市場へのインパクトについてでございます。
 これも、まず右側の全額国債運用の方ですが、巨額の積立金であるので、市場へのインパクトというものがあるし、株価の価格形成を歪めるのではないかという論点でございます。
 これに対して左側の分散投資の方では、運用に当たっては価格形成を歪めないように、極力そういう点に配慮して運用をやっていくということを運用の基本方針でも定めているし、実際そういったことを心がけていると、こういう形になろうかと思います。
 本日のものはご議論いただくための素材として整理してみたということでございます。説明は以上でございます。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。それでは、この論点整理につきまして、ほかに論点がないか、また、意見の追加や修正が必要であるかどうかということについて幅広くご議論をいただきたいと思います。20分ぐらいですけれども、なるべく要領よく発言していただきたい。高梨委員お願いします。

○ 高梨委員
 よく整理されておりますので、こんなことかなと思うのです。ただ、上の方の(2)で、年金給付額は賃金上昇率に連動する、先ほど吉冨先生もそんなことで整理されているのですが、それは年金制度をどういうふうに組み立てるかということとの関わり合いなんですね。ですから年金は必ず賃金上昇率に連動する、こういう決めつけがいいのかどうか。現在でも、既裁定年金の仕組みは物価スライドとなっている。賃金スライドでなくて物価にスライドする、となっているわけです。
 裁定のときは、賃金に再評価しているのですが、それを機械的に今までどおりやるかどうかというのはまさに年金設計の問題なんです。ですから、それは一切変えないということを前提にして議論をするのではなくて、どういうふうに設計していくかということもありますので、賃金上昇に完全に連動するというような観点だけで議論をするのではなくて、もうちょっと幅広にというのが一つでございます。
 もう一つ、(4)の前半はそのとおりなのですが、「国債よりも分散投資の方がリスクは小さい」というふうに本当に言えるのでしょうか。リスクが小さいと言えるかどうか。

○ 若杉分科会長
 これは事務局からお答えいただけますか。それとも書き加えるということにしますか、論点として。

○ 泉運用指導課長
 (2)のところは、決めつけているということではないのですが、多少表現が足りないようであれば、「現行の制度では」と書き加えるか、いろいろ工夫してみれば、今ご指摘のあったのに答えられるような部分があるのかとも思います。

○ 若杉分科会長
 全体として、今、公的年金の一般論ではなくて、我が国の公的年金の制度において、株式を含む分散投資をすべきか全額国債にすべきかという議論ですので、一応現在の制度を前提ということだと思いますけれども、そういうことでよろしいでしょうか。いずれにしても、そういうことで、今の高梨委員のようなことで読み替える必要があると思いますけれども。

○ 高梨委員
 今、議論している年金積立金の問題というのは、今の制度を前提にして、それがずっと続くということでの議論では私はないと思っているんです。前回のときもご発言申し上げましたけれども、年金の2階建ての1階部分の財源をどうするかという問題はあるわけですけれども、それについて、今の基礎年金の3分の1の国庫負担で固定をするという考え方で積立金の運用を考えていくのだということでこの場の議論をするのは私はいかがかというふうに思っております。当面議論をするときに、現行制度を念頭に置きながらというのはわかりますけれども、制度を変えないということでの議論ではないのだろうと思っているのです。

○ 若杉分科会長
 そういうことですね。将来の保険料負担を上げないために積立金を持つと。その積立金をどういうふうに運用すべきかという、そういう議論かと思いますが、基礎年金の部分の原資の国庫負担を上げるかどうかということとは別に今の問題があるわけで、そういうことを今議論しているのだと思います。

○ 高梨委員
 基礎年金を全額税財源にすれば、税財源にした上で積立金を積んでいくということも考えられないわけではないのですが、通常であれば、税方式の場合は賦課方式をとりますので、将来の保険料率を引き下げるために積立金の運用ということは、考える必要はないと思っています。全額税方式であって、それが成立していればです。全額税方式で積立方式というのは考えなくていい。全額税方式であれば賦課方式をとるわけでしょうから、積立金を持って、将来の税率を軽減することを考える必要はない。

○ 若杉分科会長
 今の現在では基礎年金の部分は、1階建ての部分を全額国庫負担にするかどうかという議論はもちろんあるわけですけれども、それとは別に今の積立金としては、2階建ての部分でもって、1階建ての部分も含まれているわけですが、積立金があるわけですね。今の現在の制度において。

○ 高梨委員
 私は今1階のことを申し上げている。先生が年金積立金はとおっしゃるからで、2階のというふうにおっしゃるならば、それは厚生年金の積立金は今はそういうやり方でございます。

○ 若杉分科会長
 はい。福井委員どうぞ。

○ 福井委員
 私は論点は大きく分けると四つぐらいあるかと思っております。第1は、今議論が途中まで出かかっている巨額の積立金を持つことについてどう考えるか、という点です。巨額の積立金を持つことの是非は、制度そのものの問題ですので、この分科会の議論の対象なのか対象でないのかちょっとはっきりしませんが、なぜ巨額の積立金を持つのかという理解を共通にしておく必要があるのではないか。積立金を持つことがいいか悪いかということ自体はこの分科会の議論の対象とせず、この分科会では今の制度を前提にして議論するという場合にも、なぜ巨額の積立金を持つのかという、その考え方をみんなでシェアーしておかないとその後の論点の整理がしにくいと思います。
 それから第2は、この点が一番重要な論点だと思いますが、運用にあたっての思想の整理をきちっとしておく必要があるのではないか。要するに、年金支払債務という概念があるのかどうか知りませんけれども、インフレ率と賃金上昇率、この二つのファクターをライアビリティーサイドに置いたときに、アセットサイドでALM的な観点から安定を図るという思想をとるのか、そうではなくて流動性をキープすることに主眼をおいて、ALMの観点を入れないで超安全運用でいくということにするのか、その思想の整理は要ると思います。
 第3は、ここに書いてあるとおり、巨額の積立金を持ち続けるとして、そこに運用という概念が入るのであれば、マクロの市場全体の資金の流れの適正といったことを全く無視していいかどうか、そこをどう考えるのかということ。
 第4に、株式運用する場合にはコーポレートガバナンスの観点。
 この四つではないかと思います。特に2番目に申し上げましたALMの観点を入れるかどうかという点できちんと整理をした方がいいのではないかという気がいたします。

○ 若杉分科会長
 これは事務局から整理してもらった方がいいですか。審議官どうぞ。

○ 井口審議官
 前々回だったと思いますが、年金積立金の意義につきまして、実は年金部会で論議いただいた結果につきましては資料をお出しをして概略ご説明申し上げました。この分科会でそういう議論を改めてやっていただくかどうか、これは先生方のご判断もあろうかと思いますが、主に年金部会の方でご論議いただいております。私どもの説明させていただいた内容では、少子高齢化がピークとなった時に一遍に保険料を上げるのでは、現役の負担が高過ぎる、あるいは後代の負担が高過ぎてしまうということになってしまうので、そうならないように保険料は徐々に引き上げていくと。それに伴いまして、ある一定の積立金が積み上がり、その結果として最終的な保険料率の軽減が図られて、将来世代の負担が長期にわたって軽減されるのではないだろうか。そんな思想で積立金を一定程度持つのが合理的ではないだろうか、そんなご説明をさせていただきました。
 逆にどの程度まで持つべきかということに関しましては、負担と給付、これをどう考えるかということの一つの結果でもありますので、総合的に見直しをしなければいけないと思っていますが、趣旨、意味合いとしてはそんなことでご説明をさせていただいているということでございます。
 それから、ALMの関係は、どういう手法で年金財政を考えたらいいかということでございます。利回りと賃金の伸び、この2つが基本的な指標ではないかということで私ども考えておりまして、これは新規裁定年金を今の現行の下では賃金スライド再評価をして決めていくと、そういう構造なものですから、既裁定年金につきましては物価スライドをとりましても、賃下げになりましても、基本的には新規裁定年金が賃金スライドをとりますと、財政的には利回りと1人当たりの賃金の伸びの差が財政的には非常に大きな影響を持つと、そういう構造になっております。
 将来的にそういうような構造で年金制度を運用していいのかどうか、あるいはそういう仕組みがそもそもいいのかどうかというのは、これはまた一つの大きな議論で、これは今年金部会の方で全体的な給付設計あるいは負担の在り方をどうあるべきか、ご議論をいただいておりますので、近々私どももその辺をどうするかというような一つの試案を選択肢を込めまして、私どもなりに一つの考え方をお示しをしたいと思っております。
 その結果次第で、高梨委員が言われましたように、積立金の運用の仕方も少し考え方を変えるというような可能性はもちろん否定できないわけでございますが、先ほど言ったように、今の現在の新規裁定年金を賃金スライドするというような基本的な構造をとりますと、先ほど言ったように1人当たりの賃金の伸びと名目の運用利回りとの差、それを実質運用利回りという言葉でよく言っていますが、それがどの程度になるかいうのは非常に年金財政上は大きな意味合いを持ってくると。ややテクニカルな面を含みますけれども、そんなような基本的な構造になっているということですので、決してそれを前提にしてということではなくて、今後の制度改正の中身によりましては、その辺の考え方に基づいて、またここでご論議をいただけたらありがたいなと、そんなところでございます。

○ 若杉分科会長
 福井委員。

○ 福井委員
 私が伺いました趣旨は、年金制度が初めから純粋に積立金方式であれば、文句なくALM管理ですね。ほかの方法がない。だけど、賦課方式なのに何故巨額の積立金を積むのかという矛盾の要素があって、しかし現実に巨額の積立金を持ったときに当然ALMの発想なのか、そうではないのか。制度は本来、積立金は要らないはずだけれども、制度そのものに欠点があって、その欠点を何とかカバーするために積立金を持っているのだとしたら、一体これはつなぎの流動性資金でびた一文穴をあけてはいけないのか、そうではなくて積立金と同じように純粋にそう考えていいのか。ここの考え方の分かれ目を整理しないと、議論の出発点が定まらないのではないか、と思うからでございます。

○ 若杉分科会長
 その点については、前回でしたか、加藤先生に来ていただいたのは。

○ 泉運用指導課長
 前回です。

○ 若杉分科会長
 前々回にもちょっと整理していただきまして、また前回も慶應大学の加藤先生が来ていただいたときにその辺の議論しましたので、それは次のときにきちんとまとめてここに出すことにいたします。

○ 福井委員
 前回の議論は議事録で全部読ませていただきました。

○ 若杉分科会長
 そうですか。内海委員。

○ 内海委員
 「国民経済に与える影響」の(3)と(4)のところなんですが、「政治介入リスクについて」と「市場へのインパクトについて」というふうに分けているのですが、これは私の感じではまとめてしまってはどうかと。これは政治というと、例えば政治家がどういうふうに入って来るかという問題では恐らく日本の場合ないのだろうと思うんですね。問題は国が市場介入になるという問題があるかということではないかという気がするので、その場合に、例えば巨額だからというだけではなくて、私はこれは後で教えていただきたいのですが、国の年金が個別の株を買ったとか、売ったとかというのは株主名簿で出るのか出ないのか、そういう場合に国が買ったり売ったりしているというのが市場にどういうふうに影響を与えるのかという問題ですね。これは私は年金資金運用基金という形をとっても、そういう懸念がないことはないので、外国、例えばここで別表を出していただいているところで株を買っている、こういう基金が、投資信託とかいろんなものを使って、そういうところが出ているのか、あるいは国もしくは国の別法人みたいなものが買っているというのが株主名簿や何かで明らかになるのかとか、あるいは国、具体的には公務員ですけれども、株の銘柄、数量を知ることができるのかどうかとか、あるいは個別株の売買について、国、具体的に国家公務員ですが、指揮命令みたいなものが可能なのか。私はそういうところが問題なのではないかという気がしているんですね。
 ですから政治介入リスクと市場へのインパクトというのをこういうのを書き分けないで、むしろ、国の市場介入の問題についてということで整理されて、今、私がちょっと提示した疑問のお答えによって、どういう文章の整理になるかということになるのですけれども、別人格の組織で運用していると、一応国とも遮断しているし、国とはきっちり距離も置いているし、別法人といっても国の機関みたいなものですけれども、そういうところが市場でどういう行動をしているかということが、市場を歪めることはないのかという、そっちの問題ではないかという気がするので、整理の仕方、私の質問との関係もあるのですけれども、ちょっと考えていただきたいなという感じがするのですが。

○ 若杉分科会長
 名簿のことは確認しておいた方がいいと思うのですが。

○ 年金資金運用基金企画部長
 現在の年金資金運用基金の株式の保有については、投資顧問とか信託銀行等にお願いをしておりまして、株主としての名簿には、運用先の信託銀行等の名前で株主としての名前が出ております。

○ 内海委員
 投資顧問の場合もそうですか。

○ 年金資金運用基金企画部長
 投資顧問も資産管理をするのは信託銀行ですから、私どもの基金の名前が直接特定の企業の株主名簿の上位何番目とかというところに載ってくることはございません。

○ 若杉分科会長
 よろしいでしょうか。竹内委員どうぞ。

○ 竹内委員
 マクロの議論じゃなくてミクロの議論に関連する点なのですが、株式市場の動きとマクロ指標の動きというのが必ずしも連動するわけではなくて、その場合に、(2)と(3)が同じような表現になっていて、(2)の方は「賃金上昇率を上回る実質的な運用収益」と書いてあって、(3)の方も「適切な運用リスクの下に一定の実質的な運用収益」という同じ言葉が書いてあるのですが、(3)の方はどっちかというと運用の問題に非常に関わっているところで、先ほども議論に出ていましたけど、フェアーバリューというのは必ずしもインデックスファンドではできないといった場合に、どのような株式の選択をして、ミクロの世界でどのような、いわゆるインデックスに対してどのくらいのエンフォースできるかという意味なので、表現ぶりが一緒になっちゃっているというミスリーディングなところがあるのではないかと。
 必ずしも株式市場は長期的に見て必ずしもGDPの動きに連動するとは限らない場合にどうするかという問題だと思うんです。年金制度の方はどちらかというとマクロの指標でいろんなものができ上がっているけれども、株式市場は全く関係なく動く可能性があって、それと国内株式の世界が、先ほど出ているような分散投資を含むような成熟したマーケットではないと、日本の場合。そうするとどのくらい地域分散を図るかとか、そこの問題がまだ残るのではないかと。

○ 若杉分科会長
 ですから、それは株式運用すべきかどうかというよりも、株式市場をどのようにすべきか、そういう問題ですか。

○ 竹内委員
 株式運用をどうするかということですね。年金資金の運用の中の株式運用の部分について、どういうポリシーをとるか、そこの部分についてだけの話です。トータルなものではなくて。

○ 若杉分科会長
 わかりました。小島委員どうぞ。

○ 小島委員
 私も先ほど福井委員がおっしゃられたように積立金の性格の問題、ここは私は何度も繰り返しているように基本的に公的年金は賦課方式でやるべきだということで積立金を持つことについて異議があるという立場です。そういう観点からすると、とりあえず、そうは言っても150 兆円持っているのだから、それをどうするかという話です。それは安全運用というのを第一に考えて、そこでリスクをとって収益を上げるというようなことは考える必要はないのだということから、とりあえずは国債運用でいいのだという意見を主張をしている。この対比表で言えば、右側の主張は大体私が主張している内容になっていますが、そういう観点からの意見です。とりあえず150 兆円の運用をどうするかということで、株式運用を入れるか、国債運用だけでやるかということで整理されていますが、私は国債運用だけでいいという主張です。
 対比表の中の、(3)と(4)の論点について、先ほど内海委員からありましたけれども、(3)のところの政治介入というのは、「PKO」と言われるような株価維持策として、意識的に介入される危険がある。それがポリティカルリスクと言われているものです。それと(4)のところは、まさに規模の問題と、さらに竹内委員が言われました運用の仕方、先ほどの説明でありましたようにパッシブ運用が中心ですと、株式価格形成の市場機能を弱めてしまうという問題があります。ここは規模の問題と運用の仕方によっては、市場への影響が出てくるということで、正確に書いた方がいいと思います。だからこそ、株式運用から撤退すべきだというのが私の意見です。

○ 米澤委員
 今、福井委員と今のご意見に関して非常に参考になったのですが、積立金の性質というのは、確かに問うてみる必要があるかと思います。何回も以前から出していただきまして、積立金があることによって保険料率が上がるのがスムージングされるという図はよく見させていただいてそれなりに納得できたのですが、無理かもしれませんが、もう少し先までで、積立金を、最後に人口が安定した場合にはゼロにスムーズに持っていくのか、その世界でも何か一定の最低限の積立金を保有するのかどうか、その辺を少しウエルフェアーの点から考えていっていいのか。原則はそこのところはゼロに持っていって、安定すれば賦課方式でやっていくというようなことになるのかなと思って、その辺のところの、まだこれから生まれる人たちの人数を予測しなくてはいけないというつらい点もあるのかもしれませんが、意図とかイメージみたいのをスムーズにさせるのと同時に、下に積立金の長期的な残高のトレンドみたいに、あくまで最後までも一定の持ったところで定常にいくのか、さもなければスムーズにペイスティングするのかということを教えていただきたいということです。
 それは長期的な位置づけですが、短期的には、この間、竹原さんも言ったし、私もそう考えているのですけれども、我々みたいな団塊の世代は、荒っぽく言えば、半分ぐらいは賦課でもらって、残り半分ぐらいは、自分で若いとき積み立てて、リターンを残り半分はもらうというようなことでイメージすると、今の年金の制度を維持する限りインフレというのですか、賃金の上昇含めてスライドするような格好で運用しておくというのが、積立ではありませんが、一部は積立のようなイメージがあるわけですから必要かなということですね。そうしますとおのずと、今はインフレでないからいいですけれども、インフレがあるような世代に関しては全額国債とかという点はちょっとつらいのかなと。
 ここの上の(4)のところは、「従って、全額国債運用よりも、株式を含む分散投資を行う方が、リスクは小さい」と、一般的には逆だと思いまして、これはインフレがあるような場合は、それは実質で見ると、むしろ株式の方は少ない場合もありますよという程度ぐらいにしておいた方が誤解が少ないのではないかと思っています。

○ 若杉分科会長
 吉冨委員どうぞ。

○ 吉冨委員
 ちょっと言葉の問題ですけど、冒頭の「株式運用は、インフレなどの」について、などに何が入るかわかりませんが、デフレというのは入っていいのかどうか、ずっと私が言っている問題で一番関心があるかと思います。
 それから、次の運用収益のところ、「賃金上昇率を上回る実質的な〜」というのは、これは定義を言っているわけですから、「上昇率を上回る運用収益」でいいわけですね。
 その次にある3行目の「リスクの下に一定の〜」、何でしょうか、一定を上回るということなんでしょうね。一定にする必要はないので、一定の実質的な利回り2%と固定していく必要はないわけで、高ければ高いほどいいかと思います。
 次の分散投資のところは、リスクの概念が二つ分かれているような気がします。上の方は、経済学で言うようなリスクでしょうけれども、下の「全額国債運用よりも、株式を含む分散投資を行う方が、リスクは小さい」というときは、もし全額国債運用、バイ・アンド・ホールドでやっていれば、本当の意味でリスクはないわけで、リターンがただ小さいというリスクがあるということですから、リスクの意味がこれは違っているのではないかと思います。
 それから、「コーポレートガバナンスの働く仕組みになっている」とは思いませんけれども、なっているとしたら、基本的にはどういう仕組みでなっているかというのがあった方が、もともとコーポレートガバナンスは難しい問題ですから、そんな簡単な仕組みがあるなら教えてくれという人が世界でいっぱいいますので、議決権行使なら議決権行使と記載しておく必要があるのではないか、それだったら限界があるねと、みんなわかるわけです。
 それから、政治リスクの介入、これは非常に難しいと思います。今般日銀でさえもPKOをやるような時代ですから、あれは基本的には財政政策的な要素を持っているわけで、そういうのを全く排除していくかどうかというのは非常に大きなマクロ経済上の問題だと思います。以上です。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。

○ 大和委員
 私も福井委員が言われました積立金の性格、それとALMが適用できるのかどうか、そういうことをきちんと詰めてから、あるいは少なくとも共通の認識を持ってから議論をしないと、運用の目的も分かれることになりますし、そうした方がいいと思います。前回のヒアリングで加藤先生がちょっと混同しておられるように思いましたので。純粋賦課制度だから流動資産に運用すればよいという考えを片方で主張、従って、国債でいいということを言いながら、もう一方ではものすごいアンダー・ファンディングである、というのは事前積立制で考えないとそういうことは言えないはずなわけですけれども、アンダー・ファンディングだからリスクとるべきではない、というふうにちょっと矛盾したことをおっしゃっておられた。今の積立金に対する考え方として、米澤先生もちょっと今おっしゃっておられますように、一部事前積立でつくった積立金、一部は賦課の調整のためだけの積立金というのを両方足すということもあり得るかもしれませんから、今の積立金をどういうふうに考えるのかというのは非常に重要なことだと思います。
 それで、今の積立金は、先ほどのご説明ですと、あくまで賦課制度であって、しかし資金調整面から保険料引き上げを段階的にする、もう一方では、年金財政に運用収益を組み入れたいという二つの目的を持っているわけですね。そういう観点の積立金をどういうふうに考えるべきかということだと思うのですが、そうしますとALMの問題というのは、恐らくそういうふうに組み入れた積立金の債務は給付債務ではなくて、あくまで資金調整と収益に組み入れたいという目標に合ったある予定積立金みたいなものであって、その予定積立金に対して実際の積立金がうまくいっているかどうかというような検証をすればよいのではないでしょうか。そういうアセット対ライアビリティーはそういう意味では予定積立金という程度ではないかと思うんですね。
 そういう意味で、事前積立のときのようなライアビリティー、ALMを考える必要はないわけですので、そういうときの予定積立金というのは、今度は先ほどもお話がありましたように、ずっと未来永劫、年金給付の何年間分の積立金をずっと持っていくのか、米澤先生おっしゃいましたように、どこかでそこからだんだん減らしていくという前提で、ある期間の中で考える予定積立金なのかどうかということも、その運用の仕方に影響してくると思います。そういう二つの調整的な、資金収支調整と年金財政に一部運用収益を入れたいという考えで持っているとした場合に、収支調整の方は、実際の保険料収入と給付金は、予定以外の要素で非常に大きく動いてしまうわけですから、調整の方を重視して必ず予定積立金残高に合うような運用をしなければいけないというのは、それほど考える必要はないし、考えても無理ではないかいう気がいたします。そうすると収益を繰り入れる上での積立金の運用ということになって、それは今の制度であれば、吉冨委員が言われましたように、今度は、名目賃金上昇率対リターンで、その対リターンの振れに対するリスクというものを考えればいいのではないかという気がするのですが、その辺の整理を一度ちゃんとしませんと、確かになかなか意見集約ができないような気がいたします。

○ 若杉分科会長
 竹内委員、最後にしますので、なるべく短くお願いします。

○ 竹内委員
 確認だけですが、国民経済の方の(2)の民間企業支配の懸念、これは株式投資のところに関わっているのだと思いますが、この「議決権行使」という言葉がいきなり出てきちゃっているのですけれども、本来、今パッシブで運用しているわけですよね。議決権行使というのは個々の企業に対していろいろな意見を言うというこの問題なのですけれども、これがいきなり出てくる必要があるかどうかという問題と、それから、本来、株式市場というのは議決権行使によってではなくてプライシングを通じて企業の評価を行うという仕組みだから、その意味はむしろ支配の手前としては非常に重要な意味があるわけで、プライシングメカニズムに対しての影響が大きいという、そこをちょっと確認したい。

○ 若杉分科会長
 ただ、議決権行使はいきなりでなくて基本運用方針に入っておりますので。

○ 竹内委員
 入っているのだけど、この言い方がちょっと、運用とマッチングしない。

○ 若杉分科会長
 わかりました。きょうは事務局の方に、今までいろいろ出てきたご意見や考え方をまとめていただいて、きょうの議論のために出していただきました。まだこの点については次回も議論をしたいと思います。とりあえずきょう皆様方からいろいろな論点整理に対する足りない部分や、あるいは不正確な部分、間違った部分をご指摘いただきましたので、私もまだ申し上げたいことがありますので、事務局と相談して、きょうの議論を踏まえて、また、さらにこれをもっと大きくしたものを次回用意して議論していただきたいと思います。その過程で、皆様にまたご意見を伺うこともあるかと思いますが、その節はよろしくお願いいたします。
 それでは、この件はこれまでにしまして、最後に参考資料がありますので、事務局から簡単にご説明お願いします。


(2)その他

○ 泉運用指導課長
 参考資料でございますが、これは前回いただきましたご質問などを踏まえてご提出させていただいたものでございます。
 参考資料1、「海外の公的年金積立金運用ついて(改訂版)」いうことでございます。前回出させていただいた際に、積立金の規模が年間の給付費との対比でどうかと、こういったご質問ございましたので、表の下の方に、年間支出比という欄を加え、それから財政方式等、あるいは年金給付というところにも多少説明を加えていたものをまた出させていただいたということでございます。
 それから、参考資料2でございます。「財投債引受けを行う根拠条文等について」ですが、財投債について前回ご質問がございましたので、根拠となる法律の条文、上の方に法律名と条文が載ってございますが、上の図で37条というところがその根拠条文でございます。それから、当分科会でもご審議いただきました基本方針の中で財投債について書いてある部分を抜粋してございます。特に1の「財投債の引受け」というところで経過措置として定められているという趣旨が運用の基本方針にも書いてございます。
 次の2ページ目は、これも以前の分科会でもご報告させていただきましたが、財投債を実際どれだけ引受けているのかという数字でございます。13年度が11.9兆、14年度は6.7 兆を引受けているということでございます。
 説明、以上でございます。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。前回積み残したというか、お答えできなかったものについて資料をつくっていただきました。

○ 高梨委員
 前回もうちょっと求めたつもりです。きょうは時間がないのでこれでと思っていますが、また、どこかで時間をとって、この財投債の引受けについて若干の質問したい点も意見もございますので、お願いしたい思います。

○ 若杉分科会長
 わかりました。
 大変いつも議事の進行がまずくて申し訳ありません。きょうは定刻の5時を過ぎましたのでこれまでにしたいと思います。次回以降の日程について、事務局に確認していただきたいと思います。運用指導課長お願いします。

○ 泉運用指導課長
 次回でございますが、12月13日(金曜日)の午前中を予定をいたしております。また、場所等については、追ってご連絡させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ 若杉分科会長
 そういうことで、約1カ月後ということになりますが、12月13日ということでよろしくお願いいたします。
 それでは、きょうはこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。


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