検討項目 |
論点 |
委員意見 |
2.公的年金制度の基本的な考え方・体系
(1)制度の財政方式等 |
○基礎年金について、社会保険方式を維持するべきではないか。税方式化についてはどう考えるか。 |
【社会保険方式を維持すべきとする意見】
- 社会保険か税かは、単に財源(保険料、税)が異なるだけでなく、保障システム(社会保険、社会扶助)が異なる。社会保険方式は、リスクに備えて保険料を拠出するという自助の要素が内在し、また、その見返りとして所得・資産にかかわらず給付が行われる。また、収支のバランスをとる必要があるため、コスト意識が高まる。税のみを財源とした社会扶助方式では、その給付水準は生活困難の救済に必要な程度に抑えられ、かつ、所得制限などが付随してしまう。(堀)
- 市場経済に適合するのは、共助を基本におき、公助によってこれを補うという関係の社会保障制度である。社会保険方式を堅持しつつ、主要財源としての保険料と補足的財源としての租税負担を適切に組み合わせるのが妥当。ただし、社会保険の適用と保険料徴収力の強化が不可欠。(山崎)
- 税方式化は、何もしなくても一定年齢に達すれば年金が支給されるという点で違和感がある。所得調査も避けられない。保険料を納めた人がそれに見合った給付を受けるというシステムが望ましい。(渡辺)
- 年金制度の基本的な精神は、自分の老後の所得は自分の所得で確保することにあり、その意味では、加入して保険料を支払う社会保険が理念上相応しい。ただし、我が国では年金においても社会扶助の要素が入っているので、税財源が加わることとなる。(若杉)
- 社会保険方式の方が給付と負担の関係が明確であり、負担増について国民の合意を得やすい。負担を先送りすることなく、税方式化に伴う財源を確保することが可能か。(堀・山崎)
- 年金の財源は社会保険方式によるべき。基礎年金財源を目的消費税に求めることは、年金制度に政治的不安定要因を持ち込むことになる。(神代)
- 事業主も、保険料の拠出を通じてサラリーマンの老後の生活保障に役割を果たす責任があるのではないか。(堀)
【基礎年金は税方式によるべきとする意見】
- 基礎年金部分と報酬比例部分については、意義と役割が異なり、所得捕捉の問題が解決されていない現状では、財源面で完全な峻別を行うことが必要。基礎年金については、全ての高齢者の基礎的な生活費の保障を行うものとして賦課方式の財政方式をとり、次期改正で消費税を活用して国庫負担を2分の1に引き上げるとともに、その後に全国民が広く薄く負担する間接税による税方式へと転換すべき。(岡本・矢野)
- 国民年金の未加入・未納が増加しており、現行の保険方式による皆年金の確保は達成不可能である。真の国民皆年金の確立こそが信頼の基礎であり、資産・所得により給付を制約されない、全ての住民を対象とした普遍主義原則の観点から、税方式化に向けた制度再設計を行うことが必要。(大山・山口・小島)
- 基礎年金の税方式への転換は、男女ともに人生を通じて多様な働き方をするようになった時代に適した抜本的な改革のひとつとして有効。第3号被保険者問題の解決に資する。(井手)
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○実質的に価値のある年金額を終身にわたって確実に保障するという公的年金の役割に照らし、その財政方式をどのように考えるか。 |
【基本的に賦課方式とすべきとする意見】
- (1)賦課方式のみが、物価・賃金の変動に応じた年金の実質価値を維持できること、(2)積立方式への移行に伴う二重の負担の解消が困難であること、(3)積立方式で必要となる巨額の積立金が問題をもたらすこと、(4)積立方式は、積立金の運用リスクという不安定要素があることといった理由から、公的年金制度の財政方式の基本は賦課方式であるべき。(堀)
- 賦課方式を基本としつつも平準的な保険料による財政運営の要素を取り入れた財政方式が一番現実的である。これが現在の財政方式であり、急速に保険料を引き上げる事態を回避している点、世代間の負担の格差が拡大しすぎないことに対処できている点で優れている。(近藤)
- 賦課方式(世代間扶養)を基本とする現行方式から積立方式へ移行する場合の重要な問題は、「二重の負担」である。(大山・山口・向山・翁・渡辺)
【両制度を併用し、積立部分を明らかにした財政運営が必要とする意見】
- 現在は将来の保険料負担を軽減するための積立金であり、年金債務の考えが全くないので、積立金の運用の責任等が曖昧にされる。それぞれの長所を生かした公的年金財政にするために賦課方式と積立方式とを併用すると性格付けし、積立部分の年金債務を明らかにして財政運営を行うことが望ましい。(若杉)
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○賦課方式・社会保険方式を基本とする財政運営の中で、年金積立金の役割についてどう考えるか。 |
【年金積立金は高齢化が進んだ段階における負担の軽減等の役割があるとする意見】
- 積立金は、高齢化のピークの保険料水準を抑え、その後においても最終保険料率を賦課保険料率より低くする役割を果たす。(近藤)
- 積立金の意義は、(1)高齢化が進んだ段階における負担の軽減、(2)負担の世代間格差の緩和、(3)高齢化に伴う貯蓄減少に対応するための投資資金の確保、(4)自分の老後の年金費用は可能な限り積み立てるという自助の要素の重視という点にある。(堀)
【積立方式としての性格付けが必要とする意見】
- 現在は将来の保険料負担を軽減するための積立金であり、年金債務の考えが全くないので、積立金の運用の責任等が曖昧にされる。それぞれの長所を生かした公的年金財政にするために賦課方式と積立方式とを併用すると性格付けし、積立部分の年金債務を明らかにして財政運営を行うことが望ましい。<再掲>(若杉)
- 賦課方式に偏った財政方式のリスク分散の上でも、確定給付型を含め一定の積立要素を明示的に組み込むべき。(山崎)
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○年金積立金の取り崩しについてどう考えるか。 |
【年金積立金を取り崩すべきとする意見】
- その時点の給付に必要な額以上に保険料を引き上げる段階保険料方式を見直し、積立金を取り崩して保険料の引上げを押さえるべき。積立金を保有しても見込みどおりの収益を上げ続けられる保証はない。(大山・山口・向山)
【年金積立金を取り崩すべきでないとする意見】
- 年金積立金を取り崩すことで当面は保険料を低くすることができるが、将来世代に対する責任を持つべき。高齢化のピークやその後における保険料の水準を考えると不適当である。(近藤)
- 将来の保険料負担を考えると、現在の積立金を取り崩すことは責任ある対応とはいえない。(渡辺)
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○公的年金の一部に積立要素を入れることについてどう考えるか。 |
【公的年金制度の中に任意の拠出建ての制度を設けることも考えられるとする意見】
- 公的年金と私的年金の比重を見直すというそもそもの考え方もあるが、公的年金の給付水準が下がる中で、その水準が低すぎると考える者については、公的年金制度の中で任意の拠出建ての制度を別途選択できるようにして、水準の確保を図るという考え方もある。(翁)
【公的年金の基本部分は給付建てとすべきとの意見】
- 老後の生活の安定を図る公的年金の基本部分は、確定給付年金であることが望ましい。給付水準を引き下げてその分を確定拠出年金とすることで国民の合意が得られれば、一部を拠出建てにすることは可能か。(堀)
- 公的年金の役割は、老後生計費の基本的部分を保障し、老後生活の安定を図るところにあり、確定給付とすべきである。確定拠出では、老後生活に対する見通しが立てにくく、将来不安が拡大し、公的年金への不信が高まる懸念がある。(大山・山口・小島)
【報酬比例部分の積立型移行・民営化に反対する意見】
- 所得比例の積立方式、民営化プランは、英国の例をみればブルーカラーや、とりわけ女性が残された。(大澤)
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(2)制度の体系 |
○サラリーマングループと自営業者グループの間で異なる取扱いとなっていることについてどう考えるか。
○自営業者グループについて所得比例方式を目指す場合に必要となる所得把握について、どう考えるか。 |
【両者を区分すべきとする意見】
- 被用者グループと自営業者グループでは就業形態などが異なり、現行の体系にならざるを得ない。(大山・山口・向山)
- 厚生年金の適用漏れとみるべき雇用者が多くおり、徴税機関との連携、労働保険との適用・徴収の一元化により適用を進めるとともに、制度横断的に利用できる社会保障番号制度を導入すべき。(山崎)
【区分しない方向を目指すべきとする意見】
- 全国民加入の一元的制度へ再構築すべき。(大澤)
- 第1号被保険者は必ずしも昔ながらの自営業者ではないので、「第1号はサラリーマンと違って一生働けるから基礎年金だけでいい」といった考え方の見直しが必要。(杉山)
- ワークスタイルの多様化が進んでおり、仕事の内容でなく「立場」により保険料の負担や給付が変わることは適当でない。また届出漏れなどで、より一層の空洞化が生じる恐れもある。(井手)
【自営業者グループの所得把握の問題点を指摘する意見】
- 自営業者も所得に応じて保険料を負担する所得比例方式をとるのが望ましい。ただし、所得把握をどうするかがあり、現状では第2号と同じ条件は難しいと思われる。(杉山)
- 自営業者にも所得比例の年金が望ましいとしても所得捕捉による保険料算定が困難。(大山・山口・向山)
- 自営業者についても所得捕捉に努め、将来的には応能負担制に改めるべきだが、その場合に給付面にどのように反映させるかは今後の検討課題。なお、国民年金の保険料免除は多段階にすべき。(山崎)
- 当面は現行の制度体系を維持し、中長期的(所得の十分な把握が前提)には自営業者と被用者制度を一元化すべき。(堀)
- 理想的には、年金制度を所得比例の1階建てにスリム化していき、基礎年金部分を最低保証として国庫負担で賄う方向が最も分かりやすく、合理的。しかし、そのためには、サラリーマン被用者と自営業者間で公平な所得の捕捉が大前提。(翁)
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○年金給付の構造(所得比例、所得再分配)についてどう考えるか。
○現行制度の基礎年金拠出金についてどう考えるか。 |
【現行の2階建て方式を維持すべきとする意見】
- 現役時代の主たる収入源が賃金である被用者グループについては、退職により主たる収入源を喪失することから、引退前の所得水準が一定程度反映される現行の2階建て方式を、今後とも維持すべき。しかし、現役時代の所得格差を高齢期にそのまま持ち込まないよう、所得再配分機能を現行以上に強めるべき。(大山・山口・向山)
【厚生年金保険料の基礎年金に対する部分と報酬比例部分を分離すべき、もしくは負担の内訳を明確化すべきとする意見】
- 厚生年金の基礎年金拠出額は増加しており、負担の構造を明らかにするために厚生年金保険料の1階分と2階分を分離すべき。また、将来の基礎年金の税方式化のためにも必要。(矢野)
- 現役世代の制度に対する理解を高め、不信感・不安感を払拭していく観点から、保険料の使途を明確にしていく必要がある。特に、基礎年金拠出金制度を通じて、結果として未納者や未加入者の分まで負担を肩代わりしている財政運営のあり方は問題がある。(岡本)
【基礎年金拠出金の負担は制度ごとに分けて論じるべきではないとする意見】
- 基礎年金は全国民で負担すべきものであり、自営業者とサラリーマンに分けて負担を論じることは適当でない。仮に制度間の負担を比べるとしても、国民年金の未納者はその時点では負担を免れるが将来の給付も受けなくなることを考慮すべき。(堀)
【基礎年金拠出金を応能負担とすべきとする意見】
- 各被用者保険から支払われる基礎年金拠出金は、現在、各保険に加入する人の数に応じて割り当てられているが、これを応能負担化し、保険料収入総額に応じた額とするべき。(山崎)
【所得比例構造に税財源による補足的な給付を組み合わせて対応する意見】
- 拠出インセンティブのメリットがある賦課方式で所得比例の制度と併せて、累進所得税を税源とする一般財源によるミニマム年金を創設すべき。(大澤)
- スウェーデン方式を参考に、所得比例とし、無・低年金者に対して税財源による保証年金を充ててはどうか。(杉山)
- 2階建て構造の骨格についても当面は維持するが、中長期的には所得比例の1階建てへの移行も、拠出と給付の関係が明確で支持が得られやすい。その際は、税財源によるインカムテスト付きの最低保証年金を設けることを検討(堀)
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○所得のない、あるいは低い者に対する年金による保障について、どう考えるか。 |
【特別のグループについて特に年金の保障が必要とする意見】
- 高齢期の農業者等は安定した所得確保は難しく、年金の最低保障の必要性は高い。(今井)
【生活保護との関係を指摘する意見】
- 無、低所得者については、現行生活保護制度を前提にすれば、年金制度の枠内での対応が不可避。国庫負担の傾斜配分も検討課題の一つ。(山崎)
- 老後の所得保障を生活保護と年金のどちらが担うべきかを考えれば、生活保護において年金保険料の分も含めた給付を与え、所定の拠出を行わせ年金制度に加入させるような制度への変革も考えられる。(若杉)
【基礎年金の税方式化により普遍的な保障を行うべきとする意見】
- 真の国民皆年金の確立こそが信頼の基礎であり、資産・所得により給付を制約されない、全ての住民を対象とした普遍主義原則の観点から、税方式化に向けた制度再設計を行うことが必要。<再掲>(大山・山口・小島)
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(3)制度の理解を深める仕組み |
○現役世代、特に若い人の年金制度に対する理解を深めるため、将来の自らの年金給付を実感できる仕組みや運営として、どのようなものが適切か。 |
【個人に対して加入記録や将来の年金についての情報を通知すべきとする意見】
- 定期的に加入記録を知らせ、必要なアドバイスを提供すべき。(山崎)
- 個人に対する拠出と給付の関係を明確に告知することは、若年層や現役世代の年金不信や不安を解決するためにきわめて重要。(翁)
【ポイント制の導入を検討すべきとする意見】
- 年金ポイント制は、国民の老後設計に資すること、年金制度への国民の理解、支持を得る観点から適当。(堀)
- 定期的に加入記録を通知する一環として、年金額算定式におけるポイント制の導入も検討すべき。(山崎)
【概念上の拠出建てを検討すべきとする意見】
- スウェーデンでは、現役世代に賦課した保険料原資をそのままその世代の高齢者に分配する賦課方式の仕組みは変更せず、従来の確定給付の年金を改め、概念上の拠出建ての仕組みを採用した。個々人の拠出額と給付額との関係については、「見なし運用利回り」(仮想上の運用利回り)によって結びつけた。これによって受益と負担の関係が国民に分かりやすく示された。(翁)
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検討項目 |
論点 |
委員意見 |
3.給付と負担 (1)給付水準 |
○高齢者世帯の生計費を賄うという観点、現役世代の生計費との比較、等から見て、年金の給付水準をどうとらえるか。 |
【一定の水準の確保が必要とする意見】
- 老後生活の基本部分を保障する水準の確保が必要。基礎年金と厚生年金をあわせた給付水準は、将来にわたり、在職時の勤労収入の一定割合(可処分所得間の比較で所得代替率55%)を保障すべき。(大山・山口・小島)
- 支えるべきは「お年寄り」だけではない。将来制度を構想する上で基礎にすべき指標は、就業者に対する全人口の比率。今後も就業率と国民一人当たり生産性の上昇が図られるならば、社会保障の水準も現在と同程度に維持することが可能。(大山・山口・向山)
【給付水準を引き下げるべきとする意見】
- 厚生年金の給付水準はやや過大であり、年金課税、45年加入化、モデル年金の世帯の変更、乗率や定額単価の引下げといった案による適正化が必要。ただし、前回改正で引き下げたばかりであることや人口や経済の推移をもう少し見守る必要があることなどから、適正化は時間をかけて行うという選択もある。(堀)
- スウェーデン方式の導入などと合わせて、現行の給付水準そのものの見直しと絡めて行うことが必要。(神代)
- たとえ現役世代が納得のいく、合理的な範囲で負担を増加させたとしても、将来の給付水準の低下は避けられない。世代間の公平が図られた持続可能な仕組みにするため、負担上昇を極力抑制する観点から、給付の徹底した見直しを行うべき。(岡本・矢野)
- 公的年金の代替率は高すぎるので、30%程度に引き下げていくべき。保険料を固定し、新しい受給者から給付の引下げを行うこととしてはどうか。公的年金の役割の縮小分は、私的年金でカバーされるべき範囲である。(若杉)
- 物価下落の際も物価スライドを実施すべき。また、一定の割合を超えて上下した場合にスライドを実施する「ゾーン制」とすべき。(堀・渡辺)
【任意加入の制度と組み合わせて給付水準を考えるべきとする意見】
- 公的年金と私的年金の比重を見直すというそもそもの考え方もあるが、公的年金の給付水準が下がる中で、その水準が低すぎると考える者については、公的年金制度の中で任意の拠出建ての制度を別途選択できるようにして、水準の確保を図るという考え方もある。<再掲>(翁)
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(2)保険料負担のあり方 |
○将来の保険料水準を過度に上昇させないためには、現在凍結されている保険料(率)の引上げを再開すべきではないか。 |
【保険料凍結の解除が必要とする意見】
- 年金制度は長期的・計画的に行うべきもので、例外的に必要な場合を除き、短期的な経済政策によって左右されるべきではない。保険料凍結は解除すべき。(堀)
- 保険料の引上げの凍結は、財政規律という観点からは好ましくない。世代間の負担の公平を考え、できるだけ早く最終保険料率に到達させるべき。西欧諸国の保険料水準と比較すると、我が国はまだ低い段階にある。引上げを怠ると、高齢化のピーク、あるいはその後の保険料水準が極めて高くなる。(近藤)
- 保険料凍結は早急に解除すべき。(山崎)
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○前回改正での最終保険料(率)の設定も踏まえ、将来の最終保険料(率)及び到達時期についてどう考えるか。 |
【最終保険料引上げには慎重な意見】
- 安易な社会保険料引上げを行うことなく税負担を含めた国民負担率の上昇を極力抑制すべき。(岡本・矢野)
- 保険料負担の上昇をできるだけ抑制するため、基礎年金の国庫負担を早急に2分の1に引き上げ、近い将来税方式への転換を目指すべき。また、段階保険料方式を見直し、積立金を取り崩して保険料引上げを抑えるべき。(大山・山口・向山)
【年収の20%を大幅に下回る水準で長期間保険料を固定すべきとする意見】
- 医療・介護等の社会保険料負担の高まりや、世代間の不公平の是正、基礎年金部分の間接税方式への移行を踏まえ、年収の20%を大幅に下回る水準で長期間保険料を固定すべきである。(矢野)
【最終保険料は年収の20%とすることが必要とする意見】
- 将来保険料水準は、前回改正で設定された20%程度。その程度であれば、諸外国との比較でみても許容されるべき。(山崎)
【不安感を招かないよう上限となる率を明示すべきとする意見】
- 保険料の引上げが続くと、半永久的にあがり続けるのではないかという不安感を招くおそれがあるので、例えば20%なら20%で、これ以上になることはないという数字を明示すべき。(杉山)
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○厚生年金に係る保険料の5年ごとの引上げについて、どう考えるか。 |
【5年ごとでなく小刻みに保険料を引き上げる方法をとるべきとする意見】
- 5年ごとの引上げでなく毎年の小幅引上げも選択肢。(堀)
- 厚生年金の保険料は、国民年金と同様、毎年小刻みに引き上げるべき。(山崎)
- 5年に一度の引上げでなく、必要に応じて小刻みに引上げを実施するよう改めるべき。(大山・山口・向山)
- 上限となる保険料率として明示された範囲内で、小幅に引き上げていくべき。(杉山)
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(3)想定を超えた社会経済の変動に対する対応 |
○人口構造や経済情勢の変化等の外生的な社会経済情勢が想定を超えて変動するときに、その都度給付内容や将来の保険料負担を見直していくことには限界があるのではないか。 |
【給付の抑制と負担の増加の繰り返しが制度に対する信頼を損なっているとする意見】
- 我が国の公的年金制度は急速な少子高齢化の進行や経済基調の変化などに対応できず、5年ごとに負担の増加と給付の抑制を繰り返している。このことが、国民の年金制度に対する信頼を損なっている。(矢野)
- 制度の見直しのたびに給付の抑制と負担の増加の繰り返しで、制度に対する国民の信頼は揺らぎ始めている。(渡辺)
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○将来にわたって最終保険料の上限を固定し、その後人口構造や経済情勢の変化等の外生的な社会経済情勢が想定を超えて変動するときは、給付水準を自動的に調整する手法についてどう考えるか。また、その方法についてどう考えるか。 |
【保険料を固定して給付水準を自動的に調整する仕組みを検討すべきとする意見】
- スウェーデンの改革にならって、経済成長率の変動にリンクして自動的に給付を調整することや、寿命の伸長に伴って自動的に給付水準を引き下げる序数方式を導入することなどを、現行の給付水準そのものの見直しと絡めて行うことが必要。(神代)
- スウェーデン改革のいくつかの要素のうち、保険料を固定して社会経済情勢の大きな変化に対しては自動的に給付水準を調整するという考え方は、我が国にも応用できるのではないか。(近藤)
- 日本は保険料の引上げ途上にあるなど相違点はあるが、スウェーデン型の、給付の自動変更の仕組み、自動安定化装置の導入(少子化の進行を遅らせるインセンティブの可能性、頻繁に負担と給付を見直すことへの不信から脱却できる)といった点を参考に改革を検討すべき。(翁)
- 将来にわたって保険料率を固定する方式がわかりやすくてよい。(杉山)
- 保険料を将来にわたり固定することを制度の基本とし、事前に定められたルールにより給付水準が自動的に調整される仕組みとすべき。(岡本・矢野)
- 保険料を一定水準にまで引き上げた後の外生的な社会経済変動に対しては、積立金の取り崩しや自動調整装置等による対応も考えられる。(山崎)
- 概念上の拠出建てを導入し、高齢化の影響を反映させるため、社会全体の賃金総額の伸び率などを見なし運用利回りとする。また、65歳時点の平均余命年数を基本とする除数で年金原資を割って年金額を求める。これ以上の経済変動が起こった場合には、拠出の水準や引上げのスケジュールを固定して、人口構成や経済情勢の変化で給付は自動的に調整されるようにしておき、5年毎の給付の調整のための制度改正を原則として行わないようにするべき。(翁)
- 基本的に重要なのは、「経済情勢等の変化で給付を自動的に調整する」ということについて事前に国民的コンセンサスを得ることであろう。(翁)
【少子化への取組や経済発展に向けた努力によって給付や負担が変動する仕組みが必要とする意見】
- 「努力を前提に高い水準」というリスクの高い方式でなく、「努力しなければ悲観的なものになるが、努力すれば給付は高く負担は低くなる」という仕組みを内蔵した設計とすることが、現状では最も望ましく現実的。国民全体の努力を引き出すインセンティブを制度自体に組み込むことが望ましい。(渡辺)
【負担を固定した場合の給付の自動調整については、下がりすぎないよう一定の限度を設けるべきとする意見】
- スウェーデン型で、環境変化が大きい場合、給付水準が限度を超えて下がってしまうことについては、一定の限度を設ける必要がある。ILO第102号条約にあるような水準がひとつの目安。(近藤)
※ |
ILO第102号条約
「標準受給者(年金受給年齢の妻を有する男子)について、30年拠出した場合に従前の所得額の40%の給付を確保すること。」 |
- 保険料固定については、固定するにしても段階保険料の率としての固定。ただし、給付が大幅に変わるのは、公的年金として基本的に望ましくないので、一定の範囲を超えて変わる場合は固定した保険料率を変えるという留保を付けて固定することが考えられる。(堀)
【労働力率、出生率の変動による給付の調整を受ける世代についての意見】
- 基本的には、出生率が低下した世代や労働力率が低下した世代に対して、給付の調整が行われるべきではないか。ただし、経済の低迷により、被保険者数が減少したり賃金が低下したため年金財政が悪化した場合は、賦課方式の公的年金について年金額を引き下げることは妥当。(堀)
【現役世代の可処分所得に応じた給付とすることで調整が可能とする意見】
- 現役世代の可処分所得に応じて年金額をスライドさせることにより、可処分所得ベースの代替率を維持しつつ、人口変動に対応した調整を行うことが可能。(大山・山口・向山)
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(4)現在受給している年金の扱い |
○将来世代に対して保険料負担の引上げや給付水準の適正化を求める場合、現在の年金受給者に対しても、給付水準の適正化を求めることについてどう考えるか。また、その場合の方法についてどう考えるか。 |
【既裁定年金についても適正化を検討すべきとする意見】
- 憲法29条との関連において慎重に検討が必要だが、私見では既裁定年金を適正化することについて十分な公共性がある。(神代)
- 既裁定年金も適正化(物価スライドを停止した従前額保障方式)(堀)
- 年金制度の維持、存続のため、既裁定者も現役世代の負担の痛みの一部を分かち合う気持ちを持ち、世代間のアンバランスを縮小させることが望まれる。(岡本・矢野)
- 平均余命の延びに応じて既裁定年金を減額することは、生涯の受給総額が変化しないので受け入れられるのではないか。(近藤)
【既裁定年金について賃金スライドを復活すべきとする意見】
- 現役世代とのバランスをいうのであれば、既裁定の年金額の物価スライドのみでは足りず、賃金スライド(ネット・ネット方式)の復活が是非とも必要。(大山・山口・向山)
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検討項目 |
論点 |
委員意見 |
4.国庫負担の引上げと安定的な財源の確保
(1)国庫負担水準の引上げ |
○社会保険方式における国庫負担の意義をどう考えるか。 |
【低所得者も含めて社会保険制度により保障を及ぼすためとする意見】
- 社会保険方式の年金給付の財源の一部を税収に求める根拠は、我が国公的年金が、低所得者を含む国民皆年金の制度となっているからと考えられる。(神代)
- 社会保険制度に対して国庫負担が行われるのは、本来は一定の保険料負担能力を前提にして成立する保険システムの中に、負担能力の乏しい低所得者をも包括したことに伴う政策コストとして考えられる。(山崎)
- 年金制度の基本的な精神は、自分の老後の所得は自分の所得で確保することにあり、その意味では、加入して保険料を支払う社会保険が理念上相応しい。ただし、我が国では年金においても社会扶助の方式がとられているので、税財源が加わるのは理念上当然。<再掲>(若杉)
【年金の給付の構造を所得比例構造としたときに、補足的な給付を国庫負担で考えるべきとの意見】
- 拠出インセンティブのメリットがある賦課方式で所得比例の制度と併せて、累進所得税を税源とする一般財源によるミニマム年金を創設すべき。<再掲>(大澤)
- スウェーデン方式を参考に、所得比例とし、無・低年金者に対して税財源による保証年金をあててはどうか。<再掲>(杉山)
- 2階建て構造の骨格についても当面は維持するが、中長期的には所得比例の1階建てへの移行も、拠出と給付の関係が明確で支持が得られやすい。その際は、税財源によるインカムテスト付きの最低保証年金を設けることを検討。<再掲>(堀)
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○基礎年金の国庫負担の水準についてどう考えるか。 |
【2分の1への引上げが必要とする意見】
- 将来の保険料(特に第1号被保険者の保険料)を負担可能な範囲に収め、また制度未加入者の加入・保険料未納者の納付へのインセンティブを強めるため、国庫負担水準の2分の1への引上げは望ましい。(堀)
- 基礎年金については、全ての高齢者の基礎的な生活費の保障を行うものとして、賦課方式の財政方式をとり、次回改正で消費税を活用して国庫負担の水準を2分の1に引き上げ、その後に間接税方式へと転換すべき。(岡本・矢野)
- 保険料負担の上昇をできるだけ抑制するため、基礎年金の国庫負担を早急に2分の1に引き上げるべき。(大山・山口・向山)
- 税財源の持つメリットを活かし、保険料の上昇幅を抑えるためにも、国庫負担の割合を2分の1にすべき。(渡辺)
- 国庫負担水準の2分の1への引上げの趣旨は、最終保険料率を抑えるためである。(神代)
【国庫負担の引上げについては、低所得者や過去期間分の債務の償却に着目してもよいとする意見】
- 国庫負担割合の引上げ分については、低所得者個人に着目した国庫負担の要素を組み込むべきではないか。また、基礎年金の過去期間分の債務の償却に重点を置いて配分するという考え方を取り入れてもよい。その場合、高齢者も相当な財源を負担することが妥当であり、仮に消費税を引き上げて対応するのであれば、それに伴う物価上昇分は年金スライドの対象から一部または全部控除する対応が必要。(山崎)
【国庫負担水準については国庫負担の意義や財源の議論をした上で検討すべきとする意見】
- 保険料も税も国民負担という点では同じである。国庫負担は、最低保障年金として位置付けるべきという議論が多い中で、国庫負担引上げの財源を仮に消費税とすると、低所得者の負担が大きくなるという点でむしろ目指すべき方向と逆行してしまう。国庫負担の意義や財源の議論と切り離して、水準引上げの議論をすることは難しいのではないか。(翁)
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○基礎年金国庫負担割合の引上げのための安定した財源をどのように確保するべきか。 |
【基本的には消費税や年金税制の見直しで財源を賄うこととする意見】
- 国庫負担を2分の1に引き上げることが望ましく、その財源は、年金税制の適正化と消費税引上げによる増税分を充てるのが望ましい。(堀)
- 年金税制の改革による税収を、基礎年金国庫負担2分の1への所要財源には及ばないものの、引上げの財源とすることが考えられる。(神代)
- 基礎年金国庫負担2分の1への引上げは、間接税方式への移行過程の一つと位置付けるべき。まず、徹底した歳出の合理化による財源の捻出を基本とし、その上で、中長期的に持続可能な制度を構築していく観点から、受給者を含め国民が薄く広く負担する消費税を活用していくことが求められる。(岡本・矢野)
- 基本的には、消費税を目的税として充てるのが望ましいが、現状では消費税の引上げは妥当でない。当面は歳出構造の見直しで対応すべき。(渡辺)
【間接税を所得保障の財源とすべきでないとする意見】
- 比較的低所得で子育てをしている世帯や母子家庭など、消費性向の高い世帯にとっては、消費税負担は不釣合いに重い。逆進性を持つ間接税を所得保障の財源とするのは不適当。(大澤)
【税方式化への転換を前提に2分の1までは一般財源を財源に充てるべきとする意見】
- 真の「皆年金」確立への転換を前提とすれば、基礎年金の財源方式は税方式とし、2分の1までは一般財源、3分の1は目的間接税とする。残り6分の1は、事業主の責務を引き続き果たすべきとの観点から、事業主から社会保障税として徴収する。(大山・山口・小島)
【税目を明示することが必要とする意見】
- 現在、国の財政の相当程度が赤字国債で賄われていることを考えると、税目を明示しなければ、2分の1への引上げに必要な費用のかなりの部分を赤字国債で賄うことになってしまうのではないか。(堀)
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(2)年金収入に対する課税 |
○年金受給者に対しては、公的年金等控除により、現役世代と比較して優遇した措置が税制上講じられているが、世代間・世代内の公平を確保する観点からの見直しをどう考えるか。 |
【公的年金等控除を縮小するべきとする意見】
- 拠出時・運用時非課税、受給時課税の原則を徹底し、現役世代の課税最低限を上回らない水準にまで課税最低限を引き下げるべき。公的年金等控除は縮小・廃止すべき。(岡本・矢野)
- 公的年金等控除については、給与所得控除の水準にまで下げるべき。(山崎・大澤)
- 拠出段階で非課税であること、給与所得等と比べ優遇しすぎていること等から、公的年金等控除は縮減する必要がある(堀)。
- 経済的弱者ではない高齢者には負担を求めるという所得再分配政策を考えていくべき。(翁)
- 税制は、高齢者も現役と同様とすべき。(若杉)
【上記見直しの際、生活実態等への配慮が必要とする意見】
- 公的年金等控除の見直しは検討しなければいけない。しかし、高齢者世代は若い世代よりも所得格差が大きいことや、年金だけに頼っている高齢者世帯が6割もあることへの配慮が必要。その他の収入と併せて控除を考えていくべき。(向山)
- 年金税制は、基本的には給与所得と同じ基準によることが望ましい。ただし、改正する場合は、所得階層別に差をつけ、かつ経過措置をおいて実施することが望ましい。(神代)
- 年金課税は、仕送りをしている若い世代との不公平のない制度にすべき。ただし、資産の有無など高齢者内の格差にも配慮したきめ細やかな仕組みが必要。(杉山)
【遺族年金・障害年金の非課税措置も見直しが必要とする意見】
- 遺族年金・障害年金の非課税措置については、障害者の就業所得に対する課税等との均衡を図る観点から見直す必要がある。(堀)
- 遺族年金・障害年金の非課税措置については、有子遺族と障害者に限定すべき。(山崎)
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○年金収入に対する課税を強化した場合の増収分の取扱いをどう考えるか。 |
【基礎年金の国庫負担水準の引上げに充てるべきとする意見】
- 国庫負担を2分の1に引き上げることが望ましく、その財源は、年金税制の適正化と消費税引上げによる増税分を充てるのが望ましい。<再掲>(堀)
- 年金税制の改革による税収を、基礎年金国庫負担2分の1への所要財源には及ばないものの、引上げの財源とすることが考えられる。<再掲>(神代)
- 年金課税の見直しによる増収分は、将来世代の保険料負担増を緩和するための基礎年金の国庫負担割合の引上げや、育児等の次世代育成支援に充てるべき。(山崎)
【子育て支援に充てるべきとする意見】
- 年金課税の見直しによる増収分は、将来世代の保険料負担増を緩和するための基礎年金の国庫負担割合の引上げや、育児等の次世代育成支援に充てるべき。<再掲>(山崎)
- 非課税になっている年金に課税し、その増収分を子育て支援、次世代育成支援に充てるべき。ただし、安易な現金給付や専業主婦にだけインセンティブがつくような時代に逆行したものでなく、「将来、年金の支え手になる人材の育成」という視点から取り組むべき。(杉山)
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検討項目 |
論点 |
委員意見 |
5.支え手を増やす方策 (1)取組の意義 |
○就労形態を含めた個人のライフスタイルの多様化に対応して年金保障の充実を図るとともに、少子高齢社会においても給付と負担のバランスを図り安定的な制度運営を行っていくことが重要ではないか。 |
【安定的な制度運営を行う観点から支え手を増やす取組を評価する意見】
- 働く女性は増えているけれども厚生年金の被保険者は増えていない。女性の雇用者が年金の支え手となることが必要。第3号被保険者は支え手として期待できる。(井手)
- 女性、特に第3号被保険者を中心に支え手を増やす考え方、また、高齢者の雇用拡大によって支え手を増やす考え方に賛成。(渡辺)
- 雇用形態に対する事業主負担の中立性を確保することが必要。(山崎)
【年金保障の対象を拡大する観点から評価する意見】
- 労働形態、家計の形態が多様化する中で、これまでの制度ではカバーされなかった人々も年金制度の恩恵を受けるようにするべきである。(若杉)
- ワークスタイルの多様化が進んでおり、仕事の内容でなく「立場」により保険料の負担や給付が変わることは納得性に欠け、また届け出漏れなどで一層の空洞化が生じるおそれもある。<再掲>(井手)
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公的年金制度は、自らが自らを支えるのであり、加入者を増やすこと自体は長期的には財政的には中立であるので、原資の提供者を拡大するというように受け止められる「支え手を増やす」という言い方は適切ではない。(若杉) |
【関連して外国人労働についての検討が必要とする意見】
- 少子高齢化が急速に進む中、外国人労働のあり方について、本格的な国民的論議の課題として取り上げる必要がある。(矢野)
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(2)短時間労働者等に対する厚生年金の適用 |
○短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大を図るべきではないか。その場合、保険料負担の増加、年金財政への影響、健康保険との取扱いの均衡等について、どのように考えるか。
○派遣労働者に対する厚生年金の適用拡大について、どう考えるか。 |
【短時間労働者に対する厚生年金の適用を進めるべきとする意見】
- ライフステージに応じて多様な働き方をする女性にとって(今後は男性も)、短時間労働者である期間に関しても厚生年金を適用することが、将来の保障のために必要。(井手)
- 所得のある者は保険料を拠出するのが原則であり、非正規就労者への厚生年金の適用を拡大する。しかし、定額の給付があるため、低賃金の者への適用拡大には限界。(堀)
- 短時間労働者についても、同じ雇用労働者としての均等待遇の観点から、社会保険に加入する権利を認めるべき。(大山・山口・小島)
- 短時間労働者の適用については、年金・健康保険一体の原則で進めるべきであり、短時間労働者に対する適用拡大による財政効果については、厚生年金のみならず、医療保険や税も含めて考えるべき。(山崎)
- パートタイム労働者の均等待遇が生産と雇用を増やし、年金財政を支える。(大澤、杉山)
- 事業主負担については、雇用形態、労働時間、賃金等に対して中立的な、賃金の支払総額を課税標準(外形標準)とする賃金支払い税方式を採用すべき。(山崎、杉山)
【短時間労働者に対する適用拡大を論じるには定量的な議論が必要とする意見】
- 支え手の拡大について、定性的な議論だけでなく、年金財政に与える影響について定量的な議論が必要。そもそも、支え手の問題を論じる前に、基礎年金と2階部分の役割など制度の抜本的な改革の方向を決めることが必要。(矢野)
【適用拡大については対象となる被用者や事業主の合意が得がたいとする意見】
- パート労働者等を多数雇用する企業では、医療保険を含めて負担が増えるパート労働者本人の同意が得られないことや事業主負担が増えることを理由として、反対する意見が強いことに留意する必要がある。(矢野)
【負担への反対はあるだろうが事業主は短時間労働者も含めた従業員の生活保障に貢献するべきとする意見】
- 現在、短時間労働者を雇用する事業主は、常用労働者を雇用する場合に必要な負担をしていないことが問題。新たな負担への反対が多いのは当然であり、あえて問題視すべきでない。事業主は、短時間労働者も含めた従業員の生活保障に貢献するべき。(堀)
【短時間労働者に対する厚生年金適用との関連で、第3号被保険者制度の見直しが必要とする意見】
- 短時間労働者に厚生年金の適用拡大を実施する場合には、公平性の観点から第3号被保険者制度の見直しが必要。(井手)
【個人事業所の労働者保護の観点から考える意見】
- 一定の年齢とともに主たる収入がなくなった場合に生活を支えるという年金の役割を踏まえ、現在は任意加入になっている5人未満の個人事業所にも厚生年金を適用すべき。(大山・山口・向山)
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(3)高齢者の就労促進 |
○現在の在職老齢年金の仕組みについて、高齢者雇用との関わりをどう評価するか。 |
【在職老齢年金制度が一定の就労促進効果を有するとの意見】
- 在職老齢年金制度の就労阻害効果が主張されるが、賃金が増えれば「賃金+年金」も増えるなどから疑問。支給開始年齢が完全に65歳まで引き上げられるまでは、基本的に現行制度の枠組みを維持すべき。屈折点となる所得額、限界税率は見直しの余地がある。(堀)
- 平成6年の在職老齢年金制度の見直しは、雇用情勢が悪化する中で高齢者の雇用を維持する一定の効果があったとも考えられる。(山崎)
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○高齢者の本格的な就労を促進していくため、就労に対して年金制度の影響が及ばないような新たな仕組みを検討することについてどう考えるか。 |
【在職老齢年金制度以外の方策についての意見】
- 高齢者の本格的な就労を促進するため、例えば年金の繰下げ受給を選択できる仕組みを取り入れることも考えられる。(神代)
- 繰り下げ支給案は、限界税率が変わらなければ就業阻害効果は現行と変わらない点、(2)事業主が在職老齢年金をあるものとして賃金額を決定するおそれがあり、賃金抑制効果も現行と変わらない点で、問題がある。(堀)
- 支給開始年齢が65歳に引き上げられた後は、支給開始年齢という考えを廃止し、年金額の調整を行った上で60〜69歳のいつからでも受給できる考えに変えるべき。(堀)
- 高齢者を雇用することの年金財政上の貢献に応じた事業主負担制(メリット制)の導入を提案。(山崎)
- 在職者にも年金を全額支給した上で、年金と給与を合算して思い切った課税強化を図ることも考えられる。(山崎)
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(4)次世代育成支援 |
○少子高齢化が将来の我が国の社会経済に大きな影響を及ぼすことが予想される中で、公的年金制度においても次世代育成支援に向けた対応をとることをどう考えるか。
○育児期間中の者に対する保険料の免除等の配慮措置を拡大することについてどう考えるか。
○年金の給付と負担における措置にとどまることなく、例えば、公的年金の積立金を財源とした新たな教育資金の貸付制度の創設や年金制度における保育費用の助成等、育児や子育てを支援する措置を講じることについてどう考えるか。 |
【年金制度での次世代育成支援を肯定する意見】
- 年金制度でも、少子化対策としてできるものを実施するべき。(堀)
- 年金制度での対応は、出産・育児のため年金に関し不利になっているとすれば、それを解決するのが基本。(堀)
- 親の所得、職業、就業形態に関わりなく、子どもに着目した普遍的な支援を基本に置く支援をすべき。(山崎、杉山)
- 育児・介護期間中の者に対する配慮措置が必要。第1号被保険者も育児・介護期間中は保険料の負担をなくすべき。(今井、杉山)
- 育児や介護のために仕事を辞めるあるいは休む選択をした者に対して社会全体で配慮することは、特にこのような少子高齢化の社会においては問題がない。ただし、まずは第3号被保険者の問題を解決し、個人の生き方に公平なものとすることが前提。(杉山)
- 次世代支援については、年金を使った奨学金制度が有効。年金のありがたみが増し、若者も年金を身近に感じることにつながる。(杉山)
- 「若者皆奨学金」案については、基本的に賛成。(堀)
- 奨学金については基本的に賛成。きちんと金利を取るのであれば、積立金の一つの運用先となる。(山崎)
【育児期間中の者への配慮措置に反対はしないが、効果は疑問とする意見】
- 育児・介護期間中の配慮は不当ではないが、少子化対策としての有効性は疑問。(大澤)
【少子化対策は必要だが年金制度の外で行うべきとする意見】
- 少子化対応を進める必要はあるが、公的年金制度の財源を制度本来の趣旨と異なる目的に流用すべきではない。(岡本・矢野)
- 現在の支え手(女性被保険者)を失うことなく、将来の支え手(子ども)を減少させないためには、年金制度の枠組みの中での経済的直接的支援よりも、就業環境、社会環境を整備して、子育てにより現在の仕事と収入を失わずにすむようにする方が効果的。(井手)
- 次世代育成は、年金制度の中での経済的支援よりも保育サービスの充実等の社会基盤の整備で考えるべき。(矢野・大澤・大山・翁・山口・向山)
- 奨学金については、無償貸与であれば、年金原資を年金給付という目的外に利用することになり不適当。一方、有償貸与であれば、官民の役割分担という観点からやはり不適当。(翁)
【社会保険システムを活用した育児支援の枠組みを検討すべきとの意見】
- 育児の社会化という観点からすれば、社会保険システムの活用が最も有効。育児保険制度のイメージとしては、保育等のサービスを中心とした支援を進める観点から、介護保険のような地域保険型、出産・育児費用の軽減等の現金給付を中心とした支援を進める観点から年金保険のような国民保険型、さらに、サービス、現金給付を総合的に提供する一元的制度が考えられる。(山崎)
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