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資料5

水質管理専門委員会の進捗状況について(案)

平成14年12月20日
水質管理専門委員会


 本専門委員会は厚生科学審議会生活環境水道部会の決定により設置され、同部会の指示に基づき、平成14年8月1日付け厚生労働省発健第0724001号で厚生労働省より諮問のあった水質基準の見直し等について審議を進めているところであるが、これまでの進捗状況は次のとおりである。

1.審議経過

(1) 審議の進め方

 第1回委員会において、(1)主要検討課題毎に委員の中から主査を指名し、主査が事務局と協力して委員会の検討資料・報告原案を作成すること、(2)委員会はこれをもとに審議し、報告をまとめること、との方針を決定し、この方針に基づき審議を進めている。

(主要検討課題と担当主査)

主要検討課題 担当主査
微生物に係る基準 遠藤委員(国立感染症研究所寄生動物部長)
化学物質に係る基準 江馬委員(国立医薬品食品衛生研究所総合評価研究室長)
サンプリング・評価 国包委員(国立保健医療科学院水道工学部長)
水質検査法及び検査の品質保証(QA/QC) 安藤委員(国立医薬品食品衛生研究所環境衛生化学部長)
34条機関 眞柄委員長(北海道大学教授)

(2) 委員会の開催状況

 これまで5回にわたり委員会を開催してきており、その開催日及び議題は次表のとおりである。

開催日 議題
第1回 8月1日 1.生活環境水道部会水質管理専門委員会について
2.諮問について
3.審議の進め方について
4.その他
第2回 9月4日 1.水質基準の設定経緯等について
2.その他
第3回 10月7日 1.水質基準のあり方(総論)について
2.主査報告(作業方針・進捗状況)について
3.その他
第4回 11月8日 1.水質基準のあり方(各論1)について
 ・微生物に係る基準
 ・化学物質に係る基準
 ・水質検査方法
2.その他
第5回 12月9日 1.水質基準のあり方(各論2)
 ・水質検査に係る品質保証(QA/QC)
 ・水質検査のためのサンプリング
 ・評価・水質検査計画
2.その他

(3) 審議経過

 第1回委員会では、諮問の趣旨について事務局より説明を聴取するとともに、審議の進め方について検討・決定した。また、来年度の早い時期に結論をとりまとめたいとの事務局の要望を了承した。
 第2回委員会では、第1回委員会の結果を受け、委員会報告のとりまとめに向けた具体的な審議スケジュールについて検討・決定した。また、審議の前提として、現行の水質基準の設定経緯・考え方についてレビューを行った。
 第3回委員会では、審議の第1段階として、「水質に関する基準の見直し等に係る基本的考え方(素案)」(添付資料1)に基づき、基本的考え方の整理を行うとともに、検討事項及び検討の方向性について整理した。
 第4回委員会では、各論の1回目として、「微生物に係る基準」、「化学物質に係る基準」、「水質検査方法」について、担当主査からの報告に基づき検討を行った。(添付資料2〜6)
 第5回委員会では、各論の2回目として、「水質検査に係る品質保証(QA/QC)」、「水質検査のためのサンプリング・評価」、「水質検査計画」について、担当主査からの報告に基づき、検討を行った。(添付資料7〜9)
 なお、これに関連し、来年4月から0.01mg/lに強化される鉛の水質基準のサンプリングに関し検討を行った。(添付資料10)


3.審議内容の概要

 これまでの検討内容を整理すると概ね以下のとおりである。

(1) 水質基準のあり方・性格

 水質基準については、次のような性格が認められる。

(1)  水質基準は、水道により供給される水(基本的に給水栓を出る水)について適用されるものであり、原水について適用されるものではないこと。
(2)  人の健康に対する悪影響(急性及び慢性)を生じさせないという観点から設定されるべきものであること。
(3)  異常な臭味や洗濯物の着色など生活利用上の障害をきたさないという観点からも設定されるべきものであること。

 このようなことから、今回の水質基準の見直しに当たっては、

(1)  人の健康の確保、及び
(2)  生活利用上の要請

の両面から基準の設定につき検討を行うべきである。

(2) 地域性・効率性を踏まえた水質基準の柔軟な運用

 水道により供給される水の質は、地域、原水の種類・質、浄水方法などにより大きく変動する。
 現行の水質基準については、「水質基準は(水質検査とセットで)全ての水道に一律に適用する」との考え方に立って設定されていることから、行政の通知により、「快適水質項目」や「監視項目」などの補完的な項目を設定し、このような変動要素に対応してきている。
 このような現行システムについては、多くの水道事業者の理解を得、水道水質管理上一定の機能を果たしてきたと考えられるが、監視項目等については通知に基づく行政指導であり、強制力がないことから、ややもすると地域的な問題を見落としがちであること、一方、水質基準項目については、全国一律適用との考え方から、ほとんど問題がない地域にある、又は浄水方法を採用している水道事業体においても毎月検査が義務付けられること、といった不都合が生じている。
 このような状況に鑑み、本専門委員会としては、水質基準の見直しに当たり、次のような新たなシステムを採用すべきであると考える。

(1)  全国的にみれば検出率は低い物質(項目)であっても、地域、原水の種類、又は浄水方法により、人の健康の保護又は生活上の支障を生ずるおそれのあるものについては、すべて第4条の水質基準項目として設定する。
(2)  一方で、すべての水道事業者に水質検査を義務付ける項目は基本的なものに限り、その他の項目については、各水道事業体の状況に応じて省略することができることとする。

 この場合において、水道事業者等が適切に水質検査項目を選択できるよう、水質検査の省略の可否に関する指針が明示されるべきである。また、水質検査項目の選択の適正化と透明性を確保するため、水道事業者等に対し、選択した水質検査項目及びその理由を明示した水質検査計画を作成させ、当該水質検査計画を公表させることとすべきである。さらに、水質基準項目として設定しない項目(物質)であっても、一般環境中で検出されている物質、使用量が多く今後水道水中でも検出される可能性がある物質など、水道水質管理上留意すべき物質(項目)については、水質目標とともに関連情報を付して公表し(水質目標設定物質リスト(仮称))、関係者の注意を喚起すべきである。
 また、これらの水質基準項目等については、リアルタイム・モニタリングが可能なものは限られており、水質管理に万全を期するためには、地域性や原水の質、浄水方法などに応じ、水質基準不適合の可能性を事前に把握し、その上でそれに対応した管理を行っていく必要があり、食品衛生分野における危害分析・重要管理点(Hazard Analysis and Critical Control Point, HACCP)や世界保健機関(WHO)における水安全計画(Water Safety Plan)のような考え方を我が国の水道水質管理に取り入れていくことが必要である。

(3) 逐次改正方式

 水質基準については、最新の科学的知見に従い常に見直しが行われるべきであり(逐次改正方式。WHOでは"Rolling Revision"と言っている。)、これを実効あらしめるためには、例えば、関連分野の専門家からなる水質基準の見直しのための常設の専門家会議を設置することが有益である。
 逐次改正方式の実効性を高めるとともに、水道水質管理の一層の充実を図るため、水道事業者等による水質検査に加え、国及び地方公共団体において水道水質管理行政を担当している部局による水質監視が重要である。
 なお、国及び地方公共団体による水質監視は、次の点を主たる目的として実施すべきである。

(国による水質監視)
(1) 全国的な水道水質状況の把握
(2) 水質基準設定の要否の検討

(地方公共団体による水質監視)
(1) 水質基準設定の要否の検討
(2) 水道水源の状況の監視及びその結果に基づく水道事業者の指導
(3) 水質基準の遵守状況の確認

(4) 水質基準設定に当たっての考え方

(1) 微生物に係る基準

 微生物に係る基準については、次の3点について検討を行うこととする。

ア.大腸菌群数(糞便性汚染指標)及び一般細菌(現存量指標)の再評価

イ.クリプトスポリジウム等の塩素耐性を持つ病原微生物への対応

ウ.配管系における微生物の増殖対策

 配管系における微生物の増殖(regrowth)の指標としてHPCの有用性

(2) 化学物質に係る基準

ア.毒性評価

 化学物質に係る基準の設定に当たっては、その毒性を評価することが基本であるが、毒性評価に当たっては、定法に従い、耐容1日摂取量(Tolerable Daily Intake, TDI)を設定し、これに基づき基準の設定を行う。
 なお、内分泌かく乱化学物質については、哺乳類、特に人への低用量域での健康影響に関しては現在のところ評価は確定しておらず、今後の研究に待たなければならない。従って、現時点においては、内分泌かく乱作用に着目した水質基準の設定は見送ることが妥当と考えられる。しかしながら、将来の見直しのための準備の意味を込めて、水道水中の存在状況等につき監視等を行っていくことは必要であろう。

イ.暴露分析

 基準の設定に当たっては、水道水経由の暴露割合を的確に反映させる必要があるが、これらが明らかでない場合には、飲料水からの摂取量をTDIの10%と想定することとする。

ウ.処理技術、検査技術の考慮

 基準値は、人の健康の確保及び生活利用上の要請の観点から設定を行われるものであるが、そのように求めた基準値が実用可能な分析技術をもってしては定量可能なレベルではない場合、実用可能な処理技術をもってしては達成し得ないレベルではない場合がある。
 このような場合には、水質としての基準化ではなく、定量下限を基準値とすることや、BAT(Best Available Technology、利用可能な最善の技術)の考え方を取り入れ、消毒操作をおろそかにしない範囲で、既存の処理技術で得られる最小の値を基準値とすることについても考慮すべきである。

エ.基準の設定

 水質基準を設定については、新たなシステムに転換すべきことを委員会として提言したところであり、基準設定の判断基準についても再検討する必要がある。しかしながら、再検討に当たっては、個別の物質の状況について点検する必要があり、それらが済んだ段階で、改めて検討を行うこととする。
 なお、農薬については、その使用形態や水質検査における検出状況が他の汚染物質と比べて大きくことなることから、その特性を十分考慮した上で水質基準の設定等の検討が必要である。

(3) 性状に係る基準

 色、濁り、においなど生活利用上障害の生ずるおそれのある項目については、障害を生ずる濃度レベルを元に評価を行い、水道水の性状として基本的に必要とされる項目を選定し、基準値を設定すべきである。

(5) 水質検査

(1) 水質検査方法

 検査方法によっては、同一の試料を検査してもその結果が異なることがあること、また、許容値等を定める関係上少なくとも当該許容値等を測定し得るものでなければならないことから、水質検査方法については、いわゆる公定法を定めることが必要である。
 この場合において、水質検査方法の選定に当たっては、1)確度よく測定できる方法であること、2)定量下限として基準値の1/10の値が得られる方法であること、3)精度の高い方法であること、4)ベンゼンなどの有害物質を極力使用しない方法であること、などの諸原則に従い、検討を進めるべきである。
 なお、水質検査技術の革新に柔軟に対応できるようにするため、公定法と同等以上の方法と認められる方法については、これを積極的に公定検査法と認める柔軟なシステムを工夫することが必要である。

(2) 水質検査の品質保証(QA/QC)

 水質検査における品質保証の重要性については論を待たない。
 既に、食品検査の分野においては、その検査において優良試験所基準(GLP)制度が導入されており、環境測定の分野においても、ISO17025(JIS Q17025)が制定され、GLP制度が導入されている。
 このような状況に鑑みれば、水道水質検査の分野においても、その質を確保するためにGLP制度の導入が不可欠であると考えられる。また、標準試料を用いた統一精度管理調査の実施により、検査施設間における水質検査技術の格差是正、向上に努めていくべきである。

(3) 水質検査のためのサンプリング/評価基準

 水質基準は、水道により供給される水(基本的に給水栓を出る水)が満たすべき水質上の要件であり、水道により供給される水すべてについて満たされる必要がある。しかしながら、すべての給水栓で水質検査を行うことは実際上不可能であり、現実的でないことから、合理的な範囲で地点を限定し、水質検査を行うことになる。
 本専門委員会においては、上記の要件を判断するためのサンプリング及び検査結果の評価はいかにあるべきか、具体的には、以下の事項について検討を行うこととする。

ア. どのような地点で採水すべきか(例えば、配水池、配水管、給水栓など)、また、どの程度の地点数が必要か(例えば、給水人口10万人当たり給水栓数など)
イ. どの程度の頻度で採水すべきか(例えば、月1回、年4回、年1回など)
ウ. その結果得られた検査結果をどう評価すべきか

(4) 水質検査計画

 水質検査は、水質基準の適合状況を把握するために不可欠であり、水道水質管理の中核をなすものであるが、一方で、その実施に当たっては、水道事業者等に対し大きな負担を強いるものである。このため、水質検査は、「水質基準の適合状況を確実に把握できること」との前提に立ちつつも、効率的・合理的なあり方が求められている。
 この点については、旧生活環境審議会において、水質検査計画の制度化という形で検討が行われており、本専門委員会においても、同報告を現在の状況を踏まえて見直した上で、これを制度化することが適当であると考える。

(6) 簡易専用水道における水質管理

 水道事業者等から水道の供給を受ける簡易専用水道等については、管理の不徹底から水質面での問題が生ずることがあり、その管理の充実を図ることが重要である。このため、水の供給者である水道事業者が、供給規程に基づき簡易専用水道等の設置者に適正な管理の履行を求めるなど、適切に関与していくことで管理の徹底が図られるよう、平成13年に水道法が改正されたところである。
 一方で、規制改革の流れの中、簡易専用水道の管理についての指定検査機関(いわゆる34条機関)の行う検査については、登録機関による実施とすることとされた。このような状況を踏まえ、本専門委員会では、簡易専用水道の管理のあり方、簡易専用水道における34条機関の役割・あり方、さらには、34条機関に係る登録基準及び登録検査のあり方について検討することとする。


3.今後の審議スケジュール

 今後、以下のスケジュールで審議を進め、明年5月を目途に報告書を取りまとめることとしている。

開催日 議題
第6回 1月28日 ◎水質基準及び水質検査法(各論3)
(項目ごとに個別に検討を行う)
第7回 2月17日 ◎水質基準のあり方(各論4)
 ・水質検査に係る品質保証(QA/QC)(まとめ)
 ・水質検査のためのサンプリング
 ・評価(まとめ)
 ・水質検査計画(まとめ)
第8回 3月3日 ◎34条機関のあり方(各論5)
◎水質管理専門委員会報告案
第9回 3月26日 ◎水質管理専門委員会報告案(とりまとめ)
    (パブリック・コメント手続き)
第10回 5月中旬 ◎水質管理専門委員会報告(とりまとめ)


(添付資料)(今回は添付せず)

  1. 水質に関する基準の見直し等に係る基本的考え方(素案)(第3回・資料2)
  2. 微生物に係る基準の考え方(案)(第4回・資料2-1)
  3. 微生物に係るリスク論について(第4回・資料2-2)
  4. 検討対象化学物質選定の考え方について(第4回・資料3-1)
  5. 検討対象農薬選定の考え方について(第4回・資料3-2)
  6. 水質検査方法の設定に当たっての考え方について(第4回・資料4)
  7. 水質検査に係る品質保証(QA/QC)について(第5回・資料2)
  8. 水質検査のためのサンプリング・評価について(第5回・資料3-1)
  9. 水質検査計画について(第5回・資料4)
  10. 鉛に関するサンプリング手法について(第5回・資料3-2)


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