02/11/12 第10回労働政策審議会雇用均等分科会議事録            第10回労働政策審議会雇用均等分科会                       日時 平成14年11月12日(火)                          15:00〜                       場所 省議室9階 ○分科会長  定刻になりましたので、ただいまから第10回労働政策審議会雇用均等分科会を開催さ せていただきます。本日はご多忙のところをご参加いただきまして、ありがとうござい ます。よろしくお願いします。  本日の出欠ですが、欠席は志村委員、吉川委員、岡本委員ということです。  それでは、議事に入らせていただきます。本日の議題は前回に引き続きまして、「今 後のパートタイマー労働対策について」ということですが、資料が提出されております ので、まずその資料の説明からお願いします。 ○事務局  それでは、以前ご質問のあった点につきまして、資料をもとに説明いたします。資料 の1ですけれども、これは9月24日の第8回均等分科会におきまして、使側委員から賃 金格差について、そのより詳細な、同じ職種・勤続年数で合わせたデータ等が、議論の 前提となる認識として必要ではないか、というご意見がありまして、それに基づいて賃 金構造基本統計調査を特別集計しました。これは職種別、勤続年数別に、一般労働者と パートタイム労働者の賃金格差をみたものです。そのために職種を合わせて、勤続年数 を合わせて、それで比較するということでしたので、労働者数がそれで少ない職種とい うのは除いたという結果、平成8年と13年の両方の年に、一般・パートともデータが得 られる職種を対象として、その結果、男女合わせたもので7職種、女性についてだけ は、それとさらに加えて6職種みることができたというものです。その後の2頁以降 が、それでみたものでして、男女両方みることができたのが用務員、その次のパン・洋 生菓子製造工、百貨店店員、そういった7職種です。  それから9頁以降が、女性についてだけみることができたワープロ・オペレーター、 電子計算機オペレーター、キーパンチャー、そういった6職種です。これは、あくまで もデータが得られる職種についてみたものですので、比較の対象となる同職種、それか ら同じ勤続年数の一般とパートで、対象となる労働者数にかなりの差があるということ もあります。年齢や経験については考慮していないといった、そういった統計上の制約 がございまして、そういった制約のあるデータだということでみていただけたらと思い ます。  その上でこれだけの資料、総括して申しますと、職種をそろえてみますと一般的に格 差が縮まるという傾向がみられるかと思います。いちばん後ろの15頁に、全ての職種計 というデータがございますけれども、それに比べますと格差が少なくなっているという のが、それぞれの職種で見れるかと思います。  それから、職種によりましては100を上回る例、つまりパートのほうが賃金が高いと いう例がございます。例えば8頁のビル清掃員などですけれども、これはパートの方 が、例えば早朝勤務や深夜勤務があって、手当がついて高くなっているという、そうい う面もあるかと考えられます。  それから一般的な傾向として、勤続年数が長くなると格差が大きくなるという、そう いう意味で右肩下がりの傾向が見られるのではないか、ということが言えるかと思いま す。これが資料1の関係です。  それから資料2です。これは前回の懇談会で使側委員からのご質問ですけれども、パ ート研の報告の中で国際比較の図表がございます。例えば18頁であるとか、最後のほう の参考資料に国際比較がありますけれども、それはユーロスタットのデータをもとに試 算したものです。その場合の各国のパートの定義について、同じかどうかという質問が ありまして、それにつきましてこちらのほうで確認しましたものが資料2です。基本的 にはそういうことから、このユーロスタットの定義と賃構の定義というのは、パートに つきましては基本的には同じと考えております。と申しますのは、そのユーロスタット の定義のところにありますけれども、事業主がパートと呼んでいる労働者のこと、とい うことであります。具体的には、各国の取扱いというのは、EU指令が行きわたってい るということから、パートと呼ばれているという方は、何時間以下の方というよりは、 1日の労働時間が、その事業所における所定労働時間や勤務日数が短いものということ でなっておりますので、そこの考え方の部分は賃構で聞いているその定義の、一般の労 働者と比べて、1日の所定労働時間が短いか、1日の所定労働時間が同じであっても、 1週間の所定労働日数が少ないという、そういった日本のほうと同じだということで す。  それから、補足で説明させていただきますけれども、前回懇談会のほうで中小企業ヒ アリングについてご報告させていただきました。そのときに、いくつかご質問が出まし た点で、1つはこの間お聞きした方たちにつきまして、かなり扶養の範囲内で働いてい る女性の方たちが多かったのですけれども、それはそのような扶養の範囲で働くパート として募集したのかどうかというご質問がありました。これにつきまして、もう1度お 聞きしましたところ、扶養内の人を優先して採用というところも1社ありましたけれど も、結果的に扶養の方ばかりが集まったというのが2社ありまして、また別の会社にお きましては、希望を聞いた結果、その半分が扶養の範囲内の方であった。また別のとこ ろでは、その4分の1が就業調整している方であったという、個別の希望を聞いた結 果、そのようになったということでした。  それから、もう1点のご質問のほうでは、1つは無期の契約のところもあったのです けれども、有期契約のところがあり、2カ月、3カ月、1年、そういった有期契約のと ころがありまして、そこについてはどういった考えで有期契約としているのか、という ことでした。これについてお聞きしましたところ、2カ月、3カ月、そういった形で有 期契約を結果的に更新しているようなところにつきまして、1つは2カ月ほどで辞める 方がいるという、そういったことが経験的にある。それで2カ月、3カ月の、そういっ た単位で意思確認することが必要なので、しているということでした。ただ、その意思 確認している段階で、その期間だけでなく、所属長が働き、処遇、そういったことを含 めて面談する機会にもなっている、ということでした。  それから、1年でやっているところが2つありますけれども、そちらのほうは1つは 必要な人材を必要なところに当てるために、1年の有期で、それで毎年確認していると いうところ。もう1つは、業績も一定せず、雇用についても不安定要素が多くて、先を 見越した雇用が難しいということもあり、1年ごとにしている。また採用したパートの 方の成果が乏しい場合でも、即解雇というわけにいかないので、そういった1年という 単位でしているというお話でした。  以上、前回までの議論での積み残しの部分、ご説明させていただきました。 ○分科会長  ただいまご説明のあった資料1と資料2、それからヒアリングに関する追加のご説 明、これについて何かご質問等がありましたらお願いします。 ○公益委員  資料1ですが、7頁と10頁の図で、まず7頁のほうですが、給仕従事者の真ん中の図 ですが、これは男性で5年から9年という勤続年数のところがピョンと上がっている、 これは一体どのように読めばいいのか、どういう分析ができるのかということと、同じ 質問なのですけれども、10頁の電子計算機オペレーター、女性ですね。これも10年以上 というところで、かなり上がっているわけです。この辺りはどのように読めばいいのか と、その辺りのところをちょっと教えていただけるとありがたいです。 ○事務局  確かに傾向からちょっと外れた、そういったものがいくつか見られるのですけれど も、これにつきましてはちょっとデータ的に数少ないケースもありまして、そうします とある事例で引っ張られるケースがあるということです。例えば給仕従事者、ウェイタ ー、ウェイトレスですけれども、そういった中でも何かの、この年数の方たちについ て、正社員の方がこの勤続年数で少なかったり、それから、たまたまこの勤続年数に当 たっているウェイターの方たちが、雇用の良いところと言っては何ですけれども、そう いったところに当たっていると、そこのデータが突出して良くなる。こういう意味では ちょっと違う要素が加わってしまうと、突出したデータになるのかと思われます。 ○公益委員  わかりました。 ○分科会長  他にはいかがですか。 ○使側委員  いまの資料1ですが、これで確かに取れるところだけとおっしゃっていました。全国 的な一般的に出てくる資料のどのくらいの部分が、これでカバーされているものなので しょうか。 ○事務局  職種全体ですと100ぐらいあるのですけれども、その中でこれだけということで7職 種、それから6職種ということですので、そういった意味では限られたものという限定 付きです。 ○使側委員  例えばこの販売員でも、百貨店の販売員だけ、店員だけですけれども、小売に従事し ている人が非常に多いと、こういうようなことからすると、ここに出てきているのは案 外たくさんいる業種の人たちもいますが、そういう意味で今度は人数というか、そちら のほうではどういうものなのですか。 ○事務局  それは、おっしゃるとおり職種によって数の多いところと、それからかなり限られた ものがあると思います。  百貨店店員、販売店員、その辺りはいま調べておりますので、追ってご説明させてい ただきます。 ○分科会長  他にございますか。  使側委員。先ほどの中小企業のヒアリングに関して説明がありましたが、あれでよろ しいですか。何かありますか。 ○使側委員  そうですね。これは当然、パートタイムの均衡処遇というのは、パートタイム労働者 の利益にもなりますし、また経営者においても、人材の確保・活用ということからも当 然大事なことなのですが、このヒアリングの結果をちょっと拝見させていただいた限り においては、各企業ともそれなりに対応しているというようなことも少し感じられるわ けですが、特にそれで正規とパートとの関係もかなり気をつかいながら、経営者が扱っ ているというような感じもします。ただ、賃金については賃金表もなくて、かなり不透 明なところがあるので、この辺はかなり改善する余地も全企業ともあるのではないかと いうことです。  ただ、この企業はかなり優秀なところのような感じがしますので、もっと小さいとこ ろですと家族的な労働の中で、いろいろなルールを作って、慣習的なものでやっている ところもありますし、またパートの処遇についてもあまり意識しないでやっているよう な、そんなまだちょっとそこまでいっていない経営者もみられるのではないかと思うの です。  いずれにしても、かなり自治的にやっているような状況もみられるので、かなりその わからない部分、あるいはそういうものについては、もっとより良いやり方を経営者の ほうの方に紹介して、先進事例みたいなものも紹介して、徐々に改善させていくという ようなことも当然必要ではないかというのは、ちょっと感じたのです。  ただ、すぐ枠を作るというのではなくて、段階的に何かいまあるような現状をもう少 し理解させながら、もう少し長い目で見てやっていくことも必要かなというのも、 ちょっと感じたところなのですけれども。まあ、それなりにちょっとやっているような 状況が見られたものですから、そんなことを感じました。 ○労側委員  資料1ですが、左側が一般労働者の所定になっている給与を100にした場合ということ で、その割合を見ているわけですね。それで、いちばん最初のこの分科会のときに配ら れた、研究会最終報告の冊子の17頁に、同じ賃構を使って、一般労働者とパートの1時 間当たりの所定の給与額の推移というのが出ていまして、それは女性・男性と。これで 見ますと、男性は一般労働者の約半分、50.7%となっていますけれど、今日配られたデ ータですと、いずれの職種も男性の場合は50を超えている実態が出てくるのだけれど、 これは職種からいうと18種類ですね。すると、こちらが高く出ているというのは。 ○事務局  2つの要因が、ここでの分析ですと、まず勤続年数をそろえたということで、それぞ れ勤続年数が同じ場合にということでみているので、例えばパートタイム労働者の方た ちは、勤続年数の短い方たちが多くて、一般の方たちは勤続年数が高い方たちが多いと いうことになると、その結果、差がますます大きくなって、トータルでみた場合にとい うのが1つあるかと思います。  それから、また職種についても、職種の偏りによって、産業別に賃金が低いところで あるとか、パートの方たちが多いところ、そういったところの構成によって結果が違っ てくるということなので、それもありまして職種と勤続年数、それをそれぞれ同じにし たグループで見たらどうかというのが、使側委員からのご提案だったと思います。そう いうことで、この形で集計しなおしたものです。  それから、ちょっと補足させていただきます。百貨店の一般の人につきましては10万 人、それからパートの方たちは20万人というものを、ここで見ております。  それから販売店員につきましては、一般の方は37万人、パートの方につきましては47 万人、そういった人数のものです。 ○使側委員  大変なオーダーを出し、立派な資料を作っていただき、ありがとうございました。事 務局の方に改めて感謝申し上げたいと思います。  感想めいたことになるのですけれども、パート研の報告で出されている賃金格差より は、職種は少ないのですけれども、こちらのほうがたぶん実態に近いような印象を、私 としては受けているところです。職種によって労働力需給が、平成8年から13年の間で もたぶんだいぶ変わっていると思いますので、例えばそこの先ほど見ていたような販売 店員の方や、給仕の従事者など、言葉は悪いのですけれど、ある程度高いノウハウは必 ずしも必要ない方については、供給過剰のような状況もあるでしょうし、逆にワープロ ・オペレーターや電算機のオペレーターといった方々につきましては、IT革命などに よって人の需要が多いというようなことで、格差が縮まっているのかというようにも読 めると思います。したがいまして、全体として見たときに、いま一部格差が広がってい るところがあるのは、確かに認識はできますけれども、全体として見たときに、先ほど 研究会の報告の17頁で見たほどの格差の拡大ではないのではないか、というように私と してはみられると思っているところです。 ○公益委員  いままで出ている報告書の18頁では、職種調整をやっているのですね。ですから、そ れとほぼ一緒です。大体8割ぐらい。ですから、パート研の報告でも当然職種を調整す ると、職種をコントロールする前にも、女性の場合は68ぐらいですけれども、職種を調 整すると8割ですから、その8割ぐらいだというのはパート研の報告書でも出していた ということです。  ですから今回ので、確かに例外的な職種もありますが、比較的多いのはたぶん販売の ところは割合代表性が高いと思うのですけれども、ここでも大体8割ぐらいですよね。 ですから、あまり変わらないのではないかと思います。 ○分科会長  資料1と2について、ご質問、ご意見はございますか。  では、特にございませんでしたら、次の資料3について事務局のほうから説明をお願 いします。 ○事務局  前回の懇談会で、フルタイム正社員とパートタイム労働者の公正な処遇を実現するた めのルールについてということで、パート研報告の考え方を説明いたしました。そのと きに、その法制のタイプについて、2つのタイプ、均等処遇原則タイプと、均衡配慮義 務タイプというものをご紹介いたしまして、その均等処遇原則タイプにつきましては、 具体的には同一職務、処遇差の合理的理由なしの場合、同一処遇決定方式を求めるとい う、そういうものでした。そして、もう1つ均衡配慮義務タイプのほうは、現在の職務 が同じであれば、正社員との均衡に配慮した措置を求めるタイプということで、ご紹介 いたしました。この2つのタイプに関し複数の委員の方からのご質問で、職務をどうい う要素で見るのか、職務を判断するその基準はということで、ご質問がありましたの で、いまこの均等処遇原則タイプ、均衡配慮義務タイプ、そういった分けるに当たって の考え方、場合分けの考え方について、フローチャートで表したものが資料3の1頁で す。  まず、フルタイム正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者かどうかというのを見 ます。違うかどうかということでみまして、同じ職務を行うという場合については、処 遇差に合理的理由があるかどうか。そこのところで合理的理由がないという場合は同一 処遇決定方式。そして、合理的理由がある場合については、処遇水準の均衡の配慮とい う、そういった流れができるという、その考え方で整理したものです。  具体的に、まず同じ職務を行う、フルタイム正社員と同じ職務を行うパートタイム労 働者かどうかということをみる、そこの部分の関連資料が別添1ということで、2頁以 降にあります。その枠の中で、いくつか項目が書いてありますけれども、これはその次 の別添1、2頁のものを要約したものですので、2頁のほうでご説明させていただきた いと思います。  まず、正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者かということにつきましては、い わゆるものさし研といわれる、パートタイム労働に関する雇用管理研究会報告のほうで 考えがまとめられております。労働省編職業分類の細分類の区分を参考としつつ、通常 従事する作業が同じかどうかで判断する。そして、作業の遂行に当たって求められてい る責任や、付与されている権限の範囲についても考慮する。それから、作業を遂行する ために必要な最低限の能力や、作業を実施する上での困難度などの職務レベルも判断基 準となる。また、臨時的ないし付随的な作業の有無に違いがあっても、そこの部分は同 じ職務として扱ったらどうかということと、作業の幅や責任が大きく異なる場合は、職 務そのものが異なると考えられるのではないか、という考え方です。  その下の「パートタイム労働研究会報告」のほうも、この考え方を踏襲しておりまし て、その職務の同一性を第一の判断基準ということで、基本的にこの考えを踏襲してい るものです。  参考までに3頁の統計ですけれども、これは先般出ましたパートタイム労働者総合実 態調査のほうで、正社員と職務・責任が同じパートタイム労働者につきまして、特にパ ートの方が多い製造業、卸売・小売業、飲食店、それからサービス業についてみたもの ですけれども、どの産業も職務・責任が正社員と同じパートタイム労働者がいるという 事業所は4割前後です。ただ、その方たちがパート全体に占める割合というのは、業種 によって若干違いがありまして、製造業は1割未満と5割以上の2つの山がありまし て、卸売・小売業、飲食店のほうは1割未満のほうに偏っている。サービス業のほうは 逆に5割以上になっているという、そういった業種によっても違いがあるというもので す。  それから、2頁のほうで申しました中で、労働省編職業分類の細分類の区分を参考と しつつ、というところがありますので、そこの職業分類につきまして、参考までに付け てございます。  4頁のほうで、それの後の分についての見方の注がついていますけれども、基本的に 細分類というのは、5ケタの番号のものだということです。  それで、パートの方が多そうな職業ということで、5頁には「販売の職業」というこ とで付けております。320という小分類では、小売店主・支配人というクラスの方たち でして、6頁のほうでは324で販売店員という方たち、そこが分かれております。さら に販売店員の中でも324‐10、ここは百貨店、スーパー販売店員と、その下の324‐20の 小売店販売員、これはその5ケタの数字が違うので、別の分類ということです。  ただ、ちなみに20と、それから21といったような、その20番代という数字は枝番号と いうことで、この細分類では同じようなものというように括っております。  8頁は、製造業でパートの方が多そうな職種ということで、民生用電子・電気機械機 具組立工・修理工という例をあげてあります。ここでも587‐10の電熱・照明器具組立 工、587‐20電動機応用製品組立工といった形で細分類されておりますが、あくまで参 考として説明いたします。  1頁に戻ります。こういった形で、フルタイム正社員と同じ職務を行うパートタイム 労働者かという分類をした後、処遇差に合理的理由があるかどうかという部分ですが、 ここは別添2の9頁に、ものさし研での考え方を付けてあります。  ここでの考え方の中で特にこれに当たる部分は、真ん中の(ロ)「雇用管理上の合理 的な理由がある場合は、両者の決定方式を異にすることがあり得る」。ここで合理的な 理由がある場合としては、例えば、(1)「異なる職務間の異動がある正社員については 職能で賃金を決めるが、職務間異動のないパートタイム労働者については職務で賃金を 決める場合」、また(2)「毎月の所定労働時間がほぼ一定の正社員については月給制 で、パートタイム労働者のうち、所定労働時間が様々に変動する者については時給制を 採用する場合」、そういった場合は異なる処遇決定方式をとることに合理性があるとい う考えです。  10頁のパートタイム労働研究会報告も、第3番目のパラグラフにあるように、ここで も同じような例示です。例えば、「いまは同じ職務に従事していても、正社員には幅広 い配転があり、パートは職務限定というように雇用管理形態が異なる場合には、配転を 前提とした正社員には職務との結びつきの相対的に薄い職能給、職務限定が前定のパー トには職務給といったように賃金決定方式が異なることもあり得る」。そういったこと で説明しております。  さらに、「現在、就いている職務が同じであっても、幅広い異動の多寡などキャリア 管理の実態が明らかに違う場合には、パートと正社員との間に処遇差があるとしても合 理的であると考える」。こういったことで、キャリア管理の実態という表現も使ってい るところです。  これについては、パート研報告の中にあるガイドライン案の説明11頁の、注書きで 「キャリア管理の違い」とは、企業の雇用管理の考え方に基づき、異動の幅、頻度、あ るいは同じ職場の中でも役割の変化の度合いが明らかに違うことを言う、と説明してい るところです。  参考までに、平成13年のパートタイム労働者総合実態調査結果を載せました(12頁 )。正社員との賃金差がある場合を理由別に事業所の割合でみたものです。賃金額にそ の差があるという場合、いちばん多いのが「責任の重さが違うから」、「職務内容が違 うから」、そこが大きいわけですが、あとは「勤務時間の自由度が違うから」それも45 %あります。  その下は、「各種制度の実施状況別事業所割合」です。それについて、特に処遇差の 違い、キャリア管理の実態の違い、そういったことと関連する制度ということで昇進・ 昇格、配置転換、能力開発制度、そういったもので平成7年、平成13年の正社員とパー ト、それぞれについてみたものです。  傾向としてみますと、平成7年に比べて平成13年は、特にパートについての実施率が 減っていることがみられるという状況です。説明は以上です。 ○公益委員  誤解を招くといけないので追加的に説明します。資料3の1枚目の真ん中に、職務が 同じかどうか、イエスとなったほうに「処遇差に合理的理由があるか」と縮めて書いて あります。これは5つのルールのまとめにも出てくるのですが、「処遇差」というのだ け見ると、水準の違いと誤解されてしまいます。ここは、処遇決定方式を異にする合理 的理由があるか、ということです。10頁など後ろを見ていただくと、そういう文章で す。例えば、10頁の真ん中「ただし、合理的な理由がある場合は決定方式を異にする」 というのは、そういうことです。それがない場合には、同じ賃金体系を適用してくださ いと。  賃金体系を異にする合理的理由があっても、同じ仕事に従事しているわけですから、 水準差についてはキャリア管理の違いに応じた水準のバランスをとってくださいと、こ ういうふうになります。ですから真ん中は「処遇決定方式を異にする合理的理由がある か」というのが正確な文章です。短くすると、こうなってしまうのですが、報告書の本 文はそういうことです。 ○分科会長  いま説明のあった資料3について、ご意見がありますか。 ○労側委員  前回の議論とのつながりが自分で整理できていないものですから、この資料の位置づ けについてもう一度説明していただきたいのです。前回、法制のタイプや現状認識など を踏まえて、という基本的な議論をした部分があったと思うのです。そこについてまだ 十分という認識を持ってないということも含めて、この資料の位置づけについてもう一 度教えていただきたいのです。 ○事務局  前回そういった意味で法制のタイプ、その中で2つのタイプ、均等処遇原則タイプと 均衡配慮義務タイプということで説明いたしました。また、パート研報告では、どう いったものが目指すべきルールかということで、併せたものが良いのではないかという 方向性が示されました。ただ、均衡処遇ルールの実現に向けた道筋のあり方をすぐにす るのか。どういったものから先行させるのか。そういった道筋のいくつかの選択肢が示 されて、それについて議論していただいたわけです。  ただ、その中で示された法制のタイプ、何をフルタイム正社員とパートタイム労働者 との間の公正な処遇と考えるかにあたって、中身としての、例えば同じ職務でみるのか どうかとか、そういったことについて疑問がある、具体的にはどういうことなのかとい う質問がありました。そういった質問をされた背景には、中身についても議論していた だかないと、どういったものが目指すべきものとして、すぐできるものなのかどうか、 そういったところも考える必要があるということで、たぶんこの進め方としては、法制 のタイプについて、まず枠として法律なのかどうなのか、すぐに行くのかどうかという ような道筋の枠組みだけではなくて、中身についても議論していただいた上で、それを 進めるにあたってはどういう形で進めるのがいいのかといった議論も必要なのではない か、と事務局としてもそのように思いまして、今度はご質問のあった均等処遇原則タイ プ、均衡配慮義務タイプを考えるに当たって、同一職務、また、合理的理由があるかな いかとか、そういった区分けをしたものですから、そこについての説明ということで資 料を用意いたしました。 ○労側委員  前回法制化タイプについての研究会報告をもとに議論し、公益委員の方は別にして、 労使からは意見が出されましたが、未成熟という認識なのです。とはいうものの、当初 配られた「均衡処遇ルールの考え方について」で1.働きに応じた公正な処遇の必要 性、2.働きに応じた公正な処遇の考え方ということで、パートタイム労働者をどのよ うに場合分けするのか、という「場合分け議論」があるわけです。その「場合分け議論 」と今日出された、正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者かどうかという判断の 物差しが、同じものなのか違うものなのか。議論がどっちに進んでいるのか、方向がみ えない。  今日示されたものの議論の必要性は私も認識しているのですが、私も前から言ってい る「有期雇用問題」。パートの圧倒的多数が有期ということについて、どういう議論を していただけるのかが私どもにみえないのです。  私が危惧するのは、最近の新聞報道で、労働条件分科会が、現在1年契約のものを3 年に、3年のものを5年にするという話、また、裁量労働の拡大とか。逆に言うと、研 究会報告が出している冊子の42頁の、政府がこういう対応をすべきだということで前か ら言っているセット論です。雇用機会の選択肢を広げなさいと。それは、いま労働条件 分科会でやっている話です。私どもは反対なのですが。  2つ目の所はこの場なのですが、どちらの方向に進んでいるのか。そこがみえないで 議論に入ってくるので、非常に危惧を感じるのです。とにかく、何でもかんでも、ごっ ちゃに議論しなさいということなのか。 ○事務局  いまおっしゃったのは10月9日の資料1で、まず公正な処遇の必要性があり、次に働 きに応じた公正な処遇の考え方でも「場合分け(1)」に入っているのではないかとい う話かと思います。  この資料を出したときにも説明したことですが、「働きに応じた公正な処遇」の考え 方について、場合分けをする。さらに(2)で、それぞれの場合分けに応じたルールの 内容があるわけです。  いちばん下の※「あり方及び普及推進方策」というのは、労側の方から、どういった 枠組みでするのかという議論が提示されたときにも、それはここのあり方の話だと思い ますが、これについてはある意味で(1)、(2)の内容を並行させて議論させないと いけない。とにかく法律の整備が必要だというよりは、どういった内容のものがルール として必要で、それはどういった強度のものなのか、つまり、法的に強制力を持つもの なのか、そうではない、もう少し緩やかな形にするのか、そういったことも議論してい ただくに当たって、中身も必要ではないかということで「あり方及び普及推進方策」 は、(3)という順番で議論するというよりは、相互に関連するということで、あえて ※という位置づけをしているわけです。  前回、あるべき法制のタイプとかそういった形で法制と言いましたが、それは法律そ のものというよりも、もちろん、それもありますが、その中でどういった内容の法律が 考えられているのか。そして、それを進めるのにはどういった方策が良いのか。そこの 中身と並行しながらの説明だったのです。  さらに、その説明の中で、何を均等と考えるのかといったときに、仕事・責任が同じ かどうかというようなことが具体的にわからないのはどうか、そこのところにもう少し 説明がほしいという話があったので、そこを説明する資料を今回用意したものです。 ○労側委員  今後の審議の方向なのですが、「処遇差の合理的理由」の議論は当然避けて通れない と認識していると言っています。しかし、研究会報告も指摘するパートタイム労働者の 雇用安定という課題について、どこでどのように議論するのかです。つまり、有期問題 とか雇い止め問題とかいう、労働相談等でも非常に多い課題を避けて通っていくのか。 ここで議論します、というふうに全然みえないわけです。  労働条件分科会との合同会議をやってください、と前に私が申し上げて、検討させて もらいますという局長の答弁があったのですが。向こうはどんどん進んでいく。そして 結論も出てしまって、こちらは後追いというようになるのか。そういうことでは困るわ けです。 ○事務局  有期の問題については、いくつかの切り口のようなことがあるかと思います。その中 で、おっしゃるように、雇い止め、契約の最初と終わりをどうするかといった労働契約 そのものの話については、パートだけの問題ではなくて労働者全体の話ということで、 労働条件分科会で専門的に議論されるものであると認識しています。  しかし、パートタイマーの方たちの実態を踏まえて議論していただくという観点で言 いますと、有期の方たち、さらに、有期と言いながらも、事実上更新されている中で勤 続年数が長くなっている方たちについて、処遇差をどう考えるか。そういった部分につ いては、いまお示ししたものの中でも議論できる。処遇差に合理的理由があるかどうか とか、キャリア管理の実態の違い、そういった中での議論があるのかと思います。 ○労側委員  私がなぜ言ったか。前回の懇談会の最後に公益委員が、労使に対して注文を付けたの です。それぞれ言っているけれど、考え方を示したらどうですかと。私どもも、示す用 意があるわけです。ところが、今回これに入ってしまうと、その辺の絡みをどうするの か。せっかく、いい議論になってきたような感じがするのですが。 ○分科会長  公益委員がおっしゃった趣旨といま労側委員が言われることが必ずしも一緒だとは思 えないので、もう1回公益委員に確認していただきたい。 ○労側委員  公益委員は、パート法が施行されてから、この10年間実効をあげてないので、新たな 取組みが必要だ、労側の言う均等待遇とは何かというのを示せと言われた。そして使用 者は、労使自治と言っているけれど、どういうものか示せということに私は受け止めた のですが。 ○公益委員  私の議論が混乱を招いたら申し訳ないと思います。私が申し上げた趣旨は、ここでの 議論がかなり空転しているという印象を持っておりまして、もう少し具体的な議論を進 めていったほうが良いだろうと。  それを考えたときに、労使ともにそれぞれの考え方があるでしょうと。例えば使用者 側は、法律や行政の介入によらない、労使の自主的な解決によって均等の条件を達成し ていく。そういう考え方があるということでしたので、そうであるとするならば、いま までそれをやってきたはずですが、具体的に効果があがってないのではないか。そうす ると、今後対応する上でどういうところが変わっていくのか、具体的なところをお示し いただきたいということなのです。  労働側に対しても同じように、均等と言っているものがもう少しみえる形で示してい ただけると、議論も進むのではないか。そういうことで話したつもりです。 ○公益委員  労側委員が言われたことは、私もよくわかるのです。たぶん、労側委員は2つのこと を同時に議論してほしいと言っているわけです。1つは、フルタイマーとパートタイマ ーの公正な処遇のルールが何か、まずそれを議論する。もう1つは、そのルールを適用 する対象です。有期の人を入れるのか入れないのか。後者も大事だというのは私もよく わかるのですが、一遍にやるのではなく、切り離しても議論できるのではないかと思う のです。  1つは、フルタイマーとパートタイマーとの間の公正な処遇のルールというものをど う考えていったらいいのか。労使で合意できるところがどこかということです。その 後、そのルールで、極端なことを言えば、形式的有期であるパートを外すという議論も あるでしょう。しかし、研究会報告は実態でみて、事実上形式的に有期であっても、無 期の人と同じであれば、公正な処遇のルールを適用しなさいという考え方になってい て、そういう議論もあるわけです。ですから、フルとパートの公正な処遇のあり方とい うのをどう考えるかということと、そのルールを適用する範囲の問題がありますが、範 囲の問題は次に議論してもいいのではないか。初めから両方一遍にやらなくても議論で きるのではないかと私は思います。 ○労側委員  結論の整理が先だという意味ですか。 ○公益委員  議論の順序として、具体的な所に行かないと。労が考える公正な処遇のあり方とは何 か。使が考える、つまり自主的にやれる公正な処遇とは何かを出してもらい、それにつ いてまず議論するというほうが生産的なのではないかと思います。その後で、合意され たルールをどの範囲で適用するのか、そういう議論の仕方はあり得るのではないかと私 は思うのです。 ○公益委員  有期雇用の問題がパートタイムのかなり重要な問題であるという一般認識は、共通し ていると思うのです。しかし、有期雇用の問題は、いま労働条件分科会のほうで議論さ れていまして、実際に有期雇用の問題の中で、対象としてパートタイム労働というもの を想定しながら、パートタイム労働の雇用安定性をどう確保するか。そういう観点で議 論されているわけです。雇い止め、反復、そういったもののルール化に当たっては、少 しパートタイム以外の有期雇用も含まれているわけですが、パートタイム労働を想定し ながらの議論がされているのです。ですから、労働条件、雇用機会の問題なので、そち らで一般的なルールとして確定するのが良いのではないかと考えます。それを待ってパ ートの問題を考えればいいのです。パートタイム労働の問題はかなり複雑なわけです。  この分科会は均等問題を対象にして、労使が知恵を絞って公正なルールを作ろう。そ ういうテーマが掲げられて始まったと私は理解しています。その意味で、もちろん、 パート問題としては、有期の問題もあるけれども、ここでは均等問題が中心である。ス タート点としてはそう考えるのが生産的ではないかと思います。  労使がそれぞれ自由な意見を戦わせる、そのことは非常に重要なことですけれども、 これまでの研究会での労使双方のいろいろな蓄積を踏まえたうえで、順を追って、まず 雇用管理研究会報告が出て、今年度パートタイム研究会の報告が出る。そこで出たもの をたたき台にして、労使がそれについてここで議論を戦わせる。そういう手順になって いるのです。  公益委員がおっしゃる、具体性のない何か宙に浮いたことをここで議論しているとは 思いません。また、労側委員がおっしゃる、パートタイム中心の有期雇用なのに、それ を外において議論しているのは基本的でないというご指摘も、全くわからなくはないわ けですが、いままでの議論の筋から言うと、均等を中心とした議論としてここでまとめ 上げられるならば、公正なルールを我々の知恵でまとめ上げることに努力したらどうか と、そのように考えています。 ○労側委員  そういう意見もあるかもしれません。研究会報告がこの場の議論の素材の1つになっ ているわけですが、44〜45頁に、「雇用の安定性の確保」ということで書いてありま す。これをもとにして、労働条件分科会でどういう議論がなされたかわかりませんけれ ども、せっかく提案されているわけで、研究会報告そのものが重要な指摘なわけです。 それについて、きちんと議論をする。どうも、避けている感じがしないでもない。川上 で規制をどんどんはずして、多様な形態が出てきたときに、受け手が全くないというこ とでは雇用市場が乱れてしまうわけです。だから、2つのパッケージを研究会でわざわ ざ指摘していると思うのです。雇用安定確保は大事な要素だ。私はそういう認識をして いるのです。せっかく提案されたテーマ、事務局で示されたものをどこで議論するの か。どんどん進んでいくものだから、ちょっとお聞きしたのです。節節に意見を出すの か、有期問題を1つの議論のテーマに据えてやるのか。そこをはっきりしてもらえれ ば、いいと思うのです。 ○公益委員  方法として、こちらでパートタイムの観点から有期の枠組みについて分科会の総意の まとめを作り上げて、労働条件分科会に案として提示する。そういう方法も無くはない と思います。しかし、スケジュール的には現在向こうがかなり先行的に進んで、まとま りつつあるという段階であるとするならば、それを受けるというやり方も1つの選択肢 としてある。そのほうが実際的実現可能な選択かと思います。だから、ここでの主な総 力は均等問題の公正ルールの確立に充てる。それが1つの選択かと思います。 ○労側委員  公正な処遇とは何かというのを議論すべきだというのは私も言っているのです。とこ ろが、パートタイム労働の雇用安定をどう確保するかという議論がないものだから、ど の場で議論させていただけるのですかと。それは労働条件分科会だと言い切るのか。 ○事務局  事務局の考え方としては、確かにこちらで議論してそれがまとまるのであれば、そう いうこともあるのでしょう。しかし、公・労・使のこういった構成の形で議論されてい る。労働条件分科会でも同じような構成で公・労・使で議論されている。論点のペーパ ーなどを見ますと、労使の違いがある。さらにまた違う分科会で、労使で違う議論が出 てくる。議論の面で錯綜と言うのはどうかと思うのです。特にこの均等分科会におきま しては、パートの観点、短時間労働者の観点からの問題を扱うといったことで言います と、全ての労働者に関わる問題、そこはやはり体系として違う所で議論を整理したほう が良いのではないかと思います。さらにそれぞれの分科会でも、公・労・使という形の 中で、それぞれの立場を表された方が、検討されているということで整理されていくの ではないかと事務局では考えています。 ○分科会長  いまのことでは、パートに絡んでいろいろな問題があると思うのです。おっしゃるよ うな有期の問題も絡んでくると思います。ただ議論の手順として、まず均等処遇のルー ルがあり、それだけではないですが必要性とかいろいろなことを踏まえ、均等処遇のル ールを現段階ではまず議論しようということなわけです。  さりとて、それでは有期のことは絶対にやらないと言っているとは理解できないの で、それはそれで議論として出してもらい、ここでやるのか、役所のことはよくわかり ませんが、どこかに提案するとかそういうことはあるのでしょう。だから、絶対にして はいけないということではなく、ただ順番を決めているというか、議論の手順を決めて いることだと思うのです。  そうだとすると、吉宮さんは有期の問題が先に議論されないと、均等処遇のルールは 入らないという意味なのですか。 ○労側委員  いやいや。前回に出たその中にも。先生の考え方、ある意味では進め方のところに、 全然有期問題がなかったから、どうなのですかと前から、再々言っているわけです。今 日も全くそれが出ていない。どのように進んでいるのか、それがみえないのです。 ○分科会長  いやいや、みえているのではないですか。 ○公益委員  やはり、有期雇用自体の議論は、向こうの分科会でやるべきだと思う。やっぱり同じ 構成で議論しているのですから、組合として主張するのなら向こうの分科会でやってい ただく。 ○労側委員  それは、やっているのです。 ○公益委員  それは基本的な考え方です。ここはやはり公益委員の言われたように、いまでは均衡 ・均等というフルとパートの公正な処遇のあり方を議論する。ただ有期に関わる部分は ゼロかというとそういうことではなく、僕が先ほど話をしましたように、フルタイマー とパートタイマーの公正な処遇のルールができた時に、どの範囲の労働者に適用するの かということはすごく大事なのです。これはここの分科会で考える公正処遇ルールの適 用範囲です。例えば3カ月の短期のアルバイトの人も対象になるのかどうかということ です。これは有期に関わるのですけれども、直接に有期雇用自体の問題を議論するわけ ではなく、公正処遇ルールの適用範囲ということについては議論しなければ駄目だと思 うのです。だが、有期雇用自体の問題は、これは向こうで議論するべきことだと私は考 えています。ですから、有期雇用自体についてであれば、向こうで議論すべきだと思い ます。 ○労側委員  公益委員がおっしゃるとおり44、45頁に書いてある「雇用の安定の確保」というの は、これは労働条件分科会で議論するためにも、つくってもいいという理解なのです。 ○公益委員  そうですね。だから基本的には、パートの半分が有期契約です。有期に伴う問題とい うのは、もちろん研究会報告としてはそこまでできます。でも法律上どうするかは、い まの仕組みでいえば労働条件分科会で議論してもらうということです。パートだけでは なく、有期契約労働者全体を含めてということです。もう1つの問題は、パートのほう で形式的に有期の人たちについても、公正処遇の対象から外すという議論も確かにあり ます。ただ、研究会報告についていえば、実態で判断するということです。  公正処遇の対象。つまりパートの人の中でも、形式的に有期である人がいれば、その 人は公正処遇の対象外になるのかというと、そういう整理の仕方ではない。実態で判断 するということです。 ○労側委員  パートタイム労働者の67%がいま有期だとのことですが、合理性を持つ、本当に有期 なのという議論をする。やはり事業はずっと続いているにもかかわらず、契約は有期と いうそのことに関して、そういうことでいいんですか。その議論はどこでするんですか ということです。 ○公益委員  それはフルタイマーの有期契約労働者と同じ問題ですね。 ○労側委員  ですから、その議論は、やはりパートのあとを追っているわけですから。折角議論を しているところに、「やあ、労働条件分科会だ」と、従来型の。 ○公益委員  いや、だからそれはフルタイマーで有期契約労働者の問題と重なるわけですから、そ れは向こうで議論していただかないと困るということです。 ○労側委員  向こうは、必ずしもそういう観点ではないでしょう。 ○公益委員  私は知りません。 ○公益委員  多分議論が、私の目から見るとどうしても錯綜しているなと思います。その理由は何 かと言うと、公正処遇と言った時の処遇というものが、ここでいま議論してきたのは少 なくとも所定内賃金の話だけに絞ろうとしてきたのかという気がするのです。  もう1つは、当然ボーナスの問題もあれば、あるいは福利厚生の問題がある。あるい は研究会報告でいえば、社会保障の問題まで含めて議論しているわけです。それで、処 遇といった時の、均等処遇といった処遇の対象をどこに絞るのかという議論なしに、こ こは進んでいきますので、多分、雇用保障の問題というのも、それを処遇の中に含めて 考える考え方もあれば、「それは別です」というような考え方もある。そこの所がはっ きりしないため、どこを議論するのかというのが明確になってないということではない かと思うのです。多分、先ほどの処遇の決定方式について異なるかどうかということに ついて、これは賃金ですよね。賃金の決め方について多分議論しているわけであり、福 利厚生の所についても、これは同じようなことをそのまま適用して議論しているのかど うかということを、やはり明確にした上で議論していかないと、議論が進まないのでは ないのかと思います。 ○分科会長  研究会報告をベースにしていることなのですが、そこを具体的にはどういう考えとい うことですか。 ○事務局  処遇ということでいえば、広く入るということです。ただ、基本で問題になっている 部分、それからデータ的にお示しできる部分が、賃金が多いということで、こういった ものを入れているというか、賃金が中心になっているということです。  先ほど資料で、例えば昇進・昇格制度があるとか、能力開発とかそういったものも申 しましたように、処遇というそこのルールをつくっていく視野としては、パートの方々 にいまあるパートタイム労働法におきましても、幅広く教育訓練、能力開発、そういっ た賃金以外のものについても含まれているというので、そこの部分は視野に入るものか と思います。 ○公益委員  片方の研究会報告の中では、雇用の安定の議論も話をしているわけです。ところが「 それは別ですよ」と、「均等分科会のほうでそれはやりません」というような、多分、 住み分けをしているのだろうと思うのですが、そこがわからないために、吉宮さんは「 それはこちらで議論すべきことじゃないか」と、「全部、パートも研究会の中で書かれ ていることを対象として議論するのだったら、それも入ってくるのではないか」という ようなことになりますし。「そうではない。ここはもう別の所でやるのです」というこ とであれば、それをやはり「ここでの合意提言の取決めをしたらどうか」というふうに 思います。 ○労側委員  いま公益委員がおっしゃったように、「処遇とは何ですか」とこの場で1回聞いたこ とがあります。これは研究会の座長とのやり取りではまずいのですが、佐藤博先生は「 いや賃金をまず決めれば、大体ほかも決まってくるんだ」と。私のは、雇用全ステージ の話も処遇ですから。定年、異動、福利厚生とか全部が含まれます。そのものが正に処 遇に入るわけです。雇用保障も入るし、おっしゃる社会保障の問題も入るのではないか ということです。そうしたら社会保障は別の分野だと。そういう意味でのことで1回議 論し、そのままになっている。そういう意味ではおっしゃるとおりですが、私はきちん と雇用保障を含めたものをやるべきだと思っているのです。 ○公益委員  処遇と言った時は、もちろん賃金、狭い意味での所定内賃金だけではなく、それ以外 の福利厚生、賞与なども含むと考えています。  ただ、全部広げてやるのではなく、まずは議論の仕方として、処遇と言いながらまず は賃金のことを素材にして考えるのが良いのだろうと思います。それは当然1点目とし て、退職金や賞与にも広げて考えなければいけない。  一応、処遇と雇用保障については論理的に分けたほうが良い。一般的に雇用保障と処 遇は切り離すというのが普通の考え方です。だからといって、私は雇用保障の均衡を議 論しなくていいと言っているわけではありません。研究会報告にも必要だと言っている のです。ただ一応、処遇といった時には、一応雇用保障は入れないで議論するというの が一般的なことです。ですからそれとは別に、処遇の均衡の対象になるとすれば、自然 に雇用保障の均衡という議論も当然出てくるだろうと思う。それはそのとおりだと思い ます。ただし、そこまでを最初にここで議論するのかということを私は言っているの で、まずは処遇のほうから議論したらどうかというふうに言っているわけです。 ○公益委員  私も公益委員と全く同じです。処遇をどこまで含めるかというのは、個人によってし ばしば考え方が違うと思います。少なくとも、ここは労働審議会の中の1部部会になっ ているわけです。ということは、審議会本審のほうでどのような割り振りをするかとい うことについては、本来調整しているはずです。その中で、いまの雇用保障の問題とい うのは、この分科会ではないとなっています。今度、そこまで戻そうということであれ ば、本審のほうで議論をして、それで割り振りを見直してくれとか、そういう話になっ てくるのかと思います。それはもうなされているのではないかと理解していますので、 ここでは雇用保障の問題まで遡って議論しなくてもいいと思います。 ○公益委員  基本的にはそういう流れと思いますが、労側委員がおっしゃっているのは、そこまで 引っくり返し、そもそも有期雇用とパートを連動させ、有期雇用における雇用の不安定 さというものを何とか議論し、ある程度そこに歯止めをかけるようなルールが設定され なければ話は進まないと、多分思っておられると思うのです。それはよくわかるのです が。1つは雇用の保障の問題というのは、必ずしもパートだけに関わるものではなく、 正規のものでも出てくるわけです。これからの雇用の流動化や対応化の中で、当然吉宮 さんがおっしゃっているように、有期雇用についての雇用保障の安定関連から言った時 の原則論をもう1回見直していく。例えばドイツなどは、有期雇用というのは基本的に 例外的なものです。合理的な理由がなければ駄目だとなる。だが日本の民法展開という のは、契約の自由の一環のもとで、パラレルのものとして組んでいるわけです。しかし これからのこういう雇用形態の中では、やはり有期というのは非常に制約された合理的 なものがなければいけないという議論は当然あり得ることだと思うのです。そういう延 長線の中では、労側委員がおっしゃっていることは正しくて、方向性を持っておられる と思うのですが。必ずしもいまここの審議会で、パートと正規の公正な処遇のルールを つくろうというところの話に直結するというまではいかないのでまず具体的に、パート の賃金に代表されるような処遇について、正規との比較での公正なルールとは何か。そ の公正なルールがある程度明確になれば、今度はそのルールを賃金だけではなく他の処 遇にも出てくる。それは延長線上として雇用の保障にもつながっていくという形の議論 に多分なっていくと思うので、まずはやはり皆さんがおっしゃっているような、賃金に 代表されるような所の処遇。具体的な処遇について、非正規であるパートと、正規職員 との間の公正な処遇というものをどう見極めていくかということの枠付けを議論してい ただいたほうが、私はよろしいのではないかと思うのです。 ○労側委員  実は、私も前からそう言っています。労働条件分科会で、基準法を扱っているわけな ので、前からそれはいいですと言っているのです。しかし、向こうで全くパートの切り 口で議論をしないというのは、どうなのですかと言っているにすぎないのです。 ○公益委員  議論はあってもいいと思いますが。全然、それをするなということでは決してないと 思います。 ○労側委員  折角、ここに経過報告が指摘されているわけですから。 ○労側委員  あまり違うことを言っているような気も若干します。先程、公益委員が整理されたの ですが、どこまでを適用範囲とするかを、後で順番立ててを話したらどうかとおっしゃ ったのです。最初から私たちは、パートタイマーの問題と有期は切り離せないという思 いで、最初から有期問題を提起させていただいているのです。  そして均等待遇という観点から、有期が影響するようであれば、それを均等の範疇の 中でどう整理をするかという議論をここでしてほしいのです。そしてそうではない全体 のことは、労働条件分科会のほうでやってますが、「そうじゃないよ」っていうこうい うお話などが出てくるので、労側委員が言うように「何も議論をしないのですか」とい うことを、どうしても発言したくなってしまうというかそうなるのです。均等という観 点からみた時に、有期がどういう影響があり、それが佐藤先生のお言葉を借りると適用 範囲という形になるかもしれませんし、また違う切り口があるかもしれません。そう いった意味では是非、均等待遇の中に「有期は違うよ」という前提ではなく、議論の中 でもし違うというなら、違う整理でいいでしょうし、やはり検討すべきだということ だったら、そのことはこの議論の中に入れていただきたいと私は思います。 ○公益委員  私が言ったのも同じ趣旨です。どういう言葉を使うか、ちょっとここではいい言葉は 出ませんが。均等処遇の枠の中でそういう有期の問題がパートタイム雇用と勤務形態と 絡んでくるのであれば、当然それをここで議論しなくてはいけない問題だと思います。 そうではなく、そういうものと切り離した形で、およそ有期労働者の雇用の保障の問題 というのが先にあり、それがある程度解決できなければパートの話に入らないと言われ ると、「それはちょっと逆でしょう」ということだけの話なのだと思います。 ○労側委員  公益委員から先程お話があったように、ここの議論が最初から労側と使側の土俵が違 い過ぎています。それでいままではどちらかというと、研究会報告を中心にずっと議論 してきたのです。その後、どのように議論するのかという合意がないから道筋が見えな く、整理もつかないと思いますので、その辺りの所の合意をした上で議論を進めない と、前回も使側からは労使自治でいいのではないかという議論でいくと「中身に入って いけるの」と。こっちはきちんとした法律をつくるべきだということで、後で案がある と労側委員が言われてますが。そういうものとのギャップがあって、もう少し議論の進 め方の整理をした上でいかないと、どっちの方向に進むのか本当に見えないので、もう 少しその辺りの合意をした上で進めていただけたらと思います。 ○公益委員  先にその法律をつくるかつくらないかという議論をするかどうかということになり、 労働側としてはきちっとした法律をということであり、使用者側は雇用管理の枠内でと いうようなことで、これまでの議論を聞いていると、そういう形で非常にいま明らかに 乖離がある状態です。  そのことの筋道を、大筋とはそのことについてですよね。いまの問題について、ここ で議論をストレートにするのか。折角、これまでのいろんなことから具体的なパートの 均等問題ということについて、何が問題で、どこが我々が取り組むべき課題なのかとい う、そういう視点から議論を両方で戦わせていく。その先に結局、法律なのかどうなの かという議論を戦わせていくほうが良いのではないかというのが、いまの合意がないと いいながら、そういう方向に暗黙に行ってしまうのですか。行くのが利口な選択なのか ということがあります。  いま言ったように、方向性が法的な規制かどうかということで、何を題材に基礎にし て議論をするかということです。一般論のレベルで「均等実現へ」というような、そう いう公正ルールの法的規制とかいう一般論でここで議論をしても、あまり生産的な方向 に、私個人としては両者の議論が噛み合っていくとは思えないのです。  それよりも具体的なパートタイムの課題として何かということで、両方から侃々諤々 の議論を戦わせていくほうが先が見える。その場合、基本的なこととして争点になるの が、職務の捉え方ということです。それ自体も非常に難しいわけですが、労使の間で明 らかに捉え方ということが一致しているわけではないのですが、少なくともパートタイ ムの均等を考えていく上での、重要な出発点となるのが職務内容の違いということで す。そこが議論になるので、それを中心に、労使がこれからこの場で議論をするという のが、この議論を生産的に進めていく上での1つの方向かと思います。 ○労側委員  自分自身が参加をするのに、自分の組立て方で、こう考えると意見になるのです。職 務の内容をめぐる議論にせよ、合理性にせよです。  まずこの10年間の現状をめぐっての議論がありました。その現状を踏まえ、その現状 をどう改善するかというところで、その方法として法律を念頭に置き、その法律に向か うためにはさまざまな課題が多くあるという、またもう一度認識合わせがあり、それは 均等待遇の具体的な中身になるわけですが、その中身を、場合によっては時間を十分か け合意点を見い出していくというやり方が、私はすごく自分にとってわかりやすく、そ ういう議論の参加をしたいのです。しかし、どうも先ほどのご説明を伺っていても、自 分では、何か2本違うレールを、両方走りながら議論に参加をしているような状況があ り、ちょっと混乱をしており、位置づけを伺ったということで、先ほどの質問に戻るわ けです。  ですから、やはりどういう姿を目指すのかというところをまずもう少し使側からもご 意見をいろいろ聞きたい。その上で具体的な中身の議論については、違うことを出し合 いながら、どこが同じかという寄せていく議論というのを、もう少し使側にも言ってい ただいたらどうだろうかと思っています。  私は、この雇用均等分科会というのは、女性労働者というか、元々が前身が婦少審で したし、女性部会という名称でやった経過があり、いまは行革といいますか改正でこう いうふうになりました。基本的には、やはり均等法は非常にわかりやすかったのです が、パート法というのはどこで議論をするのかというのが、当然、常に綱引きになった ように記憶をしており、なぜここなのかと自分がここで議論をする際納得するのは、や はり女性労働問題としていちばんそれが顕著だと。顕著というのは問題が非常に女性労 働という問題として顕著だ、ということがまずあると思っているのです。  それと、有期雇用がパート労働者の過半数を超えるということも、非常に特徴的なと ころであり、だからこそここの審議会の中で、議論をするのではないかと思うのです。 先ほどの有期の問題に対しての意見なのですが、やはりそこは切り離さず、それが問題 として、事情として多く出ている事柄を受け止めれば、やはりそこの議論がここでき ちっとされ、その決定というか、審議会がそれぞれ分掌事項があり、そこで決まること に対し、むしろそこを寄せるとか、吉宮さんが何とかおっしゃったものですが、合同に それをやったらどうかとか、幾つかの方法があると思います。そして、「前回は専門委 員会で一緒にやったじゃないですか」というのを、いちばん最初にちょっとご紹介した と思うのです。やり方は工夫の余地があると思うので、もう少しここの特徴的なところ はやはり押さえて十分議論をする。それが有期問題という側面や、女性労働問題の側面 というふうに、私は認識を持って議論に参加をしたいと思っています。 ○公益委員  いまの話ともちょっと関連するのですが。ここでの議論の中身と、それから方法とい うかやり方に関する私の感想です。こういうパートと正規の働き方の間に出てくる処遇 格差の問題をどう解決していくかを議論する時に、まずそれを最終的に法律にするかど うかという議論もあってはいいと思うのです。それが最初に法律ありき、あるいは一方 でそれは駄目で、労使自治ありきというような形の議論をするよりは、その前提として そういうパート、非正規で働く人たちの間の処遇格差を、どういう基準でということで す。この研究会報告で見ますと「公正な処遇のルール」です。この処遇のルールを明確 にするような基準と枠組みをどう考えていくか。そういう議論を踏まえた上で、それが ある程度労使の間で、ご理解ご認識が得られたら、そのルールをどういう形で具体化す るかというのが、法律の形でするか、あるいはもう少しガイドライン的な形にするか、 あるいは少し労使自身の交渉に比重を置いたルール化するかという議論につながると思 うのです。ですから、それは公正な処遇ルールのある程度基準に対する明確化というも のがご理解ご認識されなければ、最初に法律でやるべきだというような議論をしていく と、議論が多分空転してしまうという心配を持つのです。  そういうような議論を、私のような形でいこうとする時、それでは何を議論の叩き台 というか材料にするかというと、いまのところ私たちの前にあるのは研究会パート研の 報告が上がっているわけです。だからこの報告の中で、例えば労側ですと、ここの部分 は原則を踏まえていないとかいう問題ですとか、あるいはこの雇用の流動化の中で、有 期雇用の問題転換をするとちょっと問題であるとか。あるいは使側からは、この点につ いてはこういう考え方が示されているけれども、ちょっとこれは実態にあわないとか、 あるいは実態があってもちょっと賛成できないとかいう議論の噛み合せをしていただけ れば、その間に私もある意味では委員としての立場で議論に参加することができます。  私は前回休みましたので、前の議論はわかりませんが、おそらく樋口先生がおっしゃ ったのは、その辺りの所が噛み合ってないために何か議論が進んでいっていない。私に してみれば、ちょっと本質でない所の議論で終わってしまっているところがあって、非 常に歯痒くは思っているのです。ですから、議論の進め方と方向性を、ちょっと皆で共 通の土俵をつくっていかなければいけないと思います。フリートーキングがあってもい いと思うのですが、それは構わないのですが、それだけに終わってしまうと、折角こう いった貴重な時間を使い議論することの意味があまりなくなってくるのではないかと思 うのです。ですので、ちょっと考慮していただきたいと思います。 ○労側委員  「初めに法律ありき」ということをおっしゃいましたが、パート法ができ10年経った わけです。これから新しいものをどうしようかという議論ではない。パート法という武 器を、私たちは既に手にしているわけです。その上での議論が必要です。10年間の行政 制度もあるし、ものさし研というのがあり労使に参考書も出されたし、いろいろな行政 施策が行われ今日に至っている中で、それではどうやって現状の処遇改善をするかとい う新たな展開をいま議論していると思うのです。だから、私もそれを踏まえて法律の話 をしているはずなのです。全く真っ白な所に議論をしているという認識は持ってないも のだから、そこを乱暴だと言われてしまうと、ちょっと待てよという話になります。 ○公益委員  そういう意味合いで言っているわけではなく、当然私も法律をやっている人間ですか ら、パート労働法が平成5年つくられ、その中身がこうなっているということは十分理 解した上でお話をしているのです。ただ、あのパート法の持ってる性質は、制定以来の いろんな経緯があり、いまのところそういう実質的な形で権利義務設定をしてないわけ です。ある意味では事業主の責務という型を注入し、努力的な配慮的なことを置いてい るわけです。その法律のあり方がここ10年経ち、やはり見直すべきだということは十分 理解しています。でも、そこに一気に話を持っていくのではなく、その前にパートと非 正規の間の労働実態に即した形で、処遇格差がある。この処遇格差を埋め合せる時に、 どういうルールを立てたらいいかということがまずあった上での法律の見直しというと ころに持っていくのであったら持っていかなければと思います。10年が経っているから といって、しかもこの法律が制定された時に、非常に中身が曖昧模糊としているので、 それを直さなければいけないという議論が最初に出されると、ちょっと議論が噛み合わ ないことが多くでるのではないかということを言っているだけなのです。だから、「法 律を改正するな」なんていうことを、改正する必要はないというのか、私はそんなこと は一切言っているわけではないのです。その辺りの所を、もちろん私の頭の中にもあり ます。できるだけいい方向で、やはり法律のあるべき姿というのを模索していくのは大 事だと、これは思っているわけです。ただその時に、それを一気にポンと前に出し、そ れがなければ議論ができないという形になりますと、折角のこういう重要な機会の中で の議論としては、少し生産性がなくなるのではないかというだけの話なのです。 ○労側委員  ですから今日、出し示された課題については、当然避けて通れないテーマであり、「 それはやりましょう」と言っているのです。それはやるべきだし。 ○公益委員  提案ですが。公益委員と全く同じ考えです。例えば、幾つか事務局に今後の進め方で 「こういう問題がある。それについて労使はどうそれぞれ考えるか」というようなこと を、他の分科会ではそれをやっているわけです。何を議論しなければいけないかという ことについて列挙してもらい、それについて議論を進めていくというような方式をとれ ば、話が具体的に見えてくるのかと思います。これまでの議論は、やはり全体について の話ということは、それはそれなりに重要だと思うのですが、もう次の段階に移ってい いのではないかと思いますので、提案させていただきます。 ○事務局  その場合の項目の列挙の仕方ですが、例えばそういう意味で、今回お出ししたこうい う資料も付けているわけなのです。例えば、公正な処遇をどうするかとか、フルタイム 正社員と、その同じ職務を行うパートタイム労働者がどうかとか、そういった項目で分 けていくと、またそこから入るのかということがあり、そこら辺の項目立ての整理で、 また議論が出るということがあります。 ○公益委員  それでないと、具体的に議論が進んでいかないと思うのです。いままでのことをもう 一度というか、何度も繰り返しということではと思うのです。正に歯痒いというのか。 ○分科会長  結局、最後の仕上りとすれば、法律というか枠組みをどうするかまでも議論しなけれ ばならないのです。ただ順番をどうするかということなのではないでしょうか。そうい うことから言えば、中身がわからないのに、枠組みを話すというのは、ちょっと公益の 先生方がおっしゃるように、それこそ空転するだけという気がします。議論の順番とし て、やはり公正な均衡処遇ルールというのは、具体的にどういうことを考えているの か。それは労使双方から、そして公益からも出していただきそれを詰め、その上でその ルールがいまの時にどういう枠組みでいくのが妥当かと、2段階に議論するのが妥当と いうか、いいのではないかと思うのです。 ○公益委員  私はいままで、一応、そういう公益委員が言われるようにやっていたのですが、出さ れた素材について議論しなかったというのが正解だと思うのです。ですから、公正処遇 ルールというのは、一応、研究会報告で出していますので、それについて労使で、労と しては「こう考える、ここはもっと強化しなければいけないし、ここはおかしいのでは ないか」。使としては、「企業の側が雇用管理を自主的にやるにしても、それは例えば 外れている」とか意見を出してもらうことだと思うのです。いままでもそうやってきた のですが、その議論は素材はあったのですが、全然、別な議論をしていたということで す。 ○公益委員  いや、今日もちゃんと出ています。コアになる職務の公正ルールについて、職務をど う考えるか、責任と権限。同じというのは、例えば転勤がある云々といっているので す。具体的なレベルの問題を事務局から提示されているのです。ここでは、その具体的 なレベルの話のことに関しては、ほとんど関心を示さず、その外側をどうするかと皆で ワッと回っているというのが現状です。やはりいろんな議論の反省点として、労使から も公益からもいろいろこの研究会の持ち方についての反省と議論がされたわけです。結 局、それの行きつく所は、もう少し均衡ルールについて具体的なレベルで、労使がどう 考えるのかということを議論を詰めていくというのを、今後やるのが良いのではないか というのが感想です。 ○労側委員  同じようなことなのですが、最初から法をつくり、国会へのガイドラインとして行く のではないかということが、それが頭の中に入っているものですから。なおかついま行 政のほうでも、いろんなパンフレットをつくり、盛んにこの内容を各方面に配布してい るわけでしょう。そうすると、そういうことも前提にして進んでいるのではないかと、 そういう感じがあるのです。結局、そうは言いながらも結論はそういうことでいくので はないかという危惧があり、先ほどから入口ではそういう話になっていると思うので す。その辺のことを、きちっと整理した上で入っていけば、具体的な話に入っていける と思うのです。  先ほど労側委員が言ってのとおり、連合のほうも守っているわけです。そういう中身 で入っていけば、そういうような話になると思うのですが、どうしてもこの研究会報告 が頭の中にあるものですから、そうするといわゆる法改正ではなく、そういう方向にい くのではないかということがどうしても抜け切れないというのがあると思うのです。 ○事務局  研究会報告で、ちょっとパンフレットでというお話がありましたので、一言述べさせ ていただきます。研究会報告では、そういった法制化を視野に入れた形で問題提起がさ れているわけです。ですから私どもも、広く労使の方々に考えていただきたいという きっかけということで、パンフレットをつくり企業の方々が中心になりますが、パート タイム労働旬間という中でも周知している。それは決して、これで行くのだという意味 ではなく、逆にそこの均衡問題について言葉は知っていても、中身について何と何を比 較するかというご認識もないようなので、そのきっかけとしてこういった研究会報告を 具体的に説明する中で、「問題意識を持ってください。いま議論しているところです」 という形でやっているものだということをご理解いただきたいと思います。 ○労側委員  必ずしもそういう趣旨がきちんと伝わっているとは認めがたいのです。そういうよう なことで、このパンフレットがかなり労使に配布されているというふうには、なかなか ずれがあると思うのです。 ○公益委員  公正処遇ルールについて、これから具体的に議論をするということですね。一応、研 究会で出したものを叩き台にし、それに対して労として案があれば出していただくし、 案がなければそれについてのコメントを出していただく。使も同じように出していただ いて、フルとパートとの公正処遇のあり方が、どういうものを考えたらいいのかという ことをまず議論をする。もちろん、そういう公正処遇のルールに関わる限りで有期とい う議論が出てくると思うのです。公正処遇ルールについて関わる限りで、有期について の議論というのは当然ありうるだろう。それは議論を初めから排除するわけではない。  その後、一定程度労使で、こういう公正処遇のあり方という合意ができたら、それを どう実現するのかです。その時は、もちろん1つは法制というのもあるでしょうし、企 業の自主的なこともあり、その選択ですが、それを次に議論をするというような手順で いったらどうでしょうか。 ○分科会長  いま公益委員からご提案がありましたので、この委員会の進め方として、いまのよう な形でいかがでしょうか。 ○労側委員  次回、私どもの考えを出させてもらいます。意見募集もしていますので、その意見募 集も参考になりますので、私どもの連合のいわば「パート有期契約労働法」というので すけれども、その考え方も出します。 ○公益委員  それはいいことではないでしょうか。それを皆で議論すれば、それはそれでいいこと です。 ○分科会長  いや、ここでの議論の仕方としてはいまのように、枠組みは後回しにして、まず公正 処遇ルールをどう考えるのか。その中身をそれぞれの立場からいろいろ意見を出してい ただくということで進めたいというかそのつもりだったのですが、そうでないみたいで すから、再確認をするという意味で申し上げておきます。 ○公益委員  使用者側にも、同じようにしていただきたいと思います。 ○使側委員  これまでのことを繰り返すことになるのですが。やはり必要性について、使用者側と してはあまり前向きに考えていないというのが基本スタンスなのです。 ○公益委員  私は必要性がどうこうではなく、主として企業が自主的に進めるとすれば、企業が考 える公正処遇の考え方があるはずだと思うのです。企業が自主的にやっていると言われ ているのだから。ですから、企業が個別にやっているんだと、山崎さん、遠藤さんもよ く言われてます。それでは、企業が企業の中で、フルとパートの公正処遇をやっている といった時に、どういう考えに基づいてやっているのかということを、是非、ご説明い ただきたい。  それで公益委員が言われたように、それでそれを任す時は、どんどんそれが進んでい くんだという理由を説明していただくとありがたい。それについて、私はそれをルール 化するかどうかはまた別の話です。公正な処遇ということをどう考えるかということを まず議論をするということなので、是非お願いしたいと思います。 ○使側委員  企業家の方に具体的に聞いたわけではないのですが、いまは即答はできないのです が。いずれにしてもこのパートの部分というのは、企業家にとっては、中小企業の場合 かなり自信のないところだと思うのです。結構、自信が持てない所の部分だということ も言えると思います。ですから、知識も吸収したいだろうし、いろいろな良い事例も知 りたがっていると思うのです。そういう中で、その大切な人材のパートをどういうふう にやったらいいかというのは、本当に処遇については皆さんお考えになっていると思い ます。  ですが、自分たちでやっても、例えば従業員の納得度です。どの使用者がやったこと について、どの程度納得するかという、そういう適正な納得度がわからないというとこ ろもあり、一方的にやっている所もあります。ですから、そういう面において、やはり ある程度企業家のレベルアップとか、そういう知識の高揚とかそういうものは当然必要 なことで、その辺を十分踏まえ、先生おっしゃるようなどういう処遇が適切だという、 個々の企業のやはり雇用です。特に(事例を)収集する必要もあろうかと思います。そ ういう点が、やはりいちばん大事ではないかというふうに思います。それで適正なルー ルができればいいのですが、そこはこれからまたお話の中で、どこかいいとこは手を合 わせなければいけないですし、それも大切なパートのことですから、あまりこうやって いても、やはり初めからこういくだけの話ですから、話になりません。そこはいい所が あれば、納得するところがあれば、お互いに歩み寄って、それはそういう話し合いの中 でゆっくりとと、思います。 ○労側委員  当初から、使用者側委員の皆さんがおっしゃっていることは、多分均等待遇の中身に 入るというよりは、コスト増になるからという不安というのですか、そのことについて のご指摘があったと思うのです。  研究会報告の中の参考資料で、三菱総研が出した『パートタイム賃金格差縮小の労働 需要及び労働費用への影響分析』ということで、ここで「賃金格差縮小は、企業のコス ト負担増なしに雇用者の増加をもたらす」ということで報告が出されています。  1つは、この研究会の中で、この資料がどのように使われたかということを教えてい ただきたいのと、このことについて使用者側の委員の皆さんが何かご意見がありました らお聞かせいただきたいというふうに思います。 ○使側委員  私は、コストはいま雇用保険もまた論議されており、かなり上がるということです。 全体的に見ると、中小企業の負担というのは、この経済不況の中で、いろいろな面で大 変なのです。ですから、人も切れるのだが、なかなか大切な人材が切れないとかがあり ます。やはりいろんな関係で、中小企業の負担になるということは、私どもとしてはま ず第1に避けてほしいというのが根本的なことなのです。 ○労側委員  負担だけではなく、均等処遇にすることが、結局パートタイマーの方にもと思うので す。 ○使側委員  ですからそれによって販売額が伸び、そういうものが出れば、当然の代償です。 ○労側委員  「そういうことも実際やってるよ」という企業もあるわけですし。それからこの研究 所の報告でも、「そのことについてはコスト増なしに雇用増ももたらすよ」ということ も出されています。そのことについてコスト面だけではなく、トータルで考えた場合に は必要だということです。今日の段階でも、前向きに考えていないとご意見が出てしま うと。 ○使側委員  それは企業によっても違います。多分あると思います。もう1つは、小さい企業と大 きい企業の規模の格差というのがかなりあるものですから、そこで一概に何かできるか ということが、そこがちょっと心配するところなのです。ある程度、規模ごとに分けて 議論をする必要もあるのではないかとも感ずるのです。かなり企業間格差が同じ同業種 の中でも、この不況の時代かなり出ているのです。そこの辺がちょっと難しいかとも考 えるのです。  元々、平成不況に入ってから、パートの法律ができてきたという感じがあり、不況の 中でそれがずっときているわけです。ちょうど平成4年ぐらいから平成不況ですから。 そういう経済状況が今後、いい方向に向いた時に、いまやったことがどうなるかとそう いうことも考えなければいけないかということもあると思います。 ○公益委員  経済状況のよくない時に、こういう改革というのが企業にとっての負担増となり、そ の心配やご懸念というのが理解できる部分があるのですが。そもそもこのパートタイム の均等問題というのが、古典的にも重要な問題であったのだが、近年とりわけそれが労 使の双方で関心を持たれたという状況があろうかと思うのです。それがそれを突き上げ ているのが、使用者側から見た場合には、1つの大きな理由としては、やはりパートタ イムがここで争点になっているように、かなり戦力化されてきて、非常な担い手となっ てきた。そうした結果、企業にとってはパートタイムもよりよく能力を発揮し仕事をし てもらいたい。理由としては、そういう期待があるわけであり、そのための処遇という のはどうしたらいいのかという、そういう問題意識が企業のサイドにかなり強くあり、 そういうことからパートタイムの均等問題というのが1つの争点となっている。  もちろん、このパートタイムの均等問題というのは古くからあった問題であったわけ で、それに加えて近年の労使のパートタイムの均等問題への関心というものがいま言っ たそういう視点にあります。経済状況は厳しいが、やはりパートタイムの闘略化という か活用ということが、いまの苦しい企業経営の中で、より重要な争点になっているとい う問題意識がある。そういうことから、やはり企業側サイドとして、「パートの均等問 題をどうするのか」に取り組んできてこられてると思いますので、どういう方向が望ま しいのか。ここは事務局が出したような、あるいは研究会が出したようなこういう方法 というのは、本当に実態からいって好ましくないのか、不都合があるのか。そういうこ とについて、忌憚のないご意見を出していただいたら、我々も、あるいは労働側もそれ についてのいろいろなコメントもやらせていただくということになろうかと思います。 是非、私は使用者側サイドの、労働者側ももちろんお聞きしたいわけですけど、使側の お考えもお聞きしたいと思います。 ○使側委員  使用者側と言われますと、統一方針なのかちょっとわからないところもあります。私 は個人的には、企業の中でこういう実務を担当していましても、労使の声が近年高まっ ているとおっしゃいますけれども、やはりそれぞれの、小さい企業などは前回の調査の 報告にもありますように、それぞれの企業でいちばんいいようにというやり方でやって きているところなのだろうと思います。しかし、このパートの問題というのは、非常に そういう所でも大事であり、人事の担当者にとっては、非常に関心の高い項目であろう かと思います。いままで、それを他社を勉強しようとかそう思っても、それほどこうい うものがオープンになっていたわけでもないわけで、人事の担当者がある意味では1人 で悩んできている項目ではないかと思います。  最近になり、大企業というかそういう所で、特にデータ上もいちばん多いといわれる 小売とかサービスの所で、相当にいろいろな事例が出てきています。  そういう事例をつくるという所には、各社大変なご苦労をしながらつくっているのだ ろうと思うのです。それぞれの大企業の中で、やはりある意味では、言葉はちょっと悪 いかもしれませんが、いままで自然に増えてきてしまっているパートタイマーの人たち を、もっと活かしていかなければいけない。ある意味では基幹の労働者。小売などはも う既に、基幹の労働者ということになっており、その人たちのモラルアップですとか、 もっと働いていただくためにどうするかというのは、非常に重要な課題です。  いまこうして各社でやっているような、いろんなパターンがあると思いますが、そう いう形にできあがってきているのだと思います。その所では、多分、単年度というより は、外には見えないが多分2、3年、それ以上かけていろいろな議論をしているのだろ うと思うのです。非常に大きなガイドラインみたいなものをポンと出しても、各社にい けば本当にそれぞれ事情が違い、パートタイマーというのはある意味で非常に狭い部分 を持っている人たちというようなことも言え、それをどこの正社員に合わせていくかと か、そういうことを非常に時間をかけて議論をし、そしてお互いに納得するよう話し合 いをしてきているのだろうと思います。  そういうようなことなので、すぐガイドラインというのを出し、「これでどうですか 」と言っても、なかなかそれぞれの企業にとってはうまい形がつくれない、ないよりは いいのかもしれませんけれども、つくれないだろうと思うのです。  そうだとすると、先ほど中小企業の方の声としても、いろいろな例をまず勉強したい と、こういうことだと思います。まずいろいろな例をできるだけ出し、そしてその中で いろいろやってみて、もう少し中小のほうなどもこういうのに揃えられるようになって から、ガイドラインだとかこういうのをつくっていけばいいのではないか。それまで は、ある程度こういう議論をして、この報告書なども大変よくできているものではない かとは思いますので、こういうようなものを人事の方などにも勉強してもらったらよい と思います。  そういうようなことをしてから、そして会社の中で経営者だけがぐっとやるというこ とではなく、働く側も一緒にそういうようなことを勉強しながら議論をしていくという ことが、少し進んでから、こういう「国としてどうするか」とか。そういうようなこと をやればよいのではないかと思います。本当にいま、こういうようなガイドラインとい うか、これを決めなければいけないのかということについては、非常に疑問を持ってい ます。 ○公益委員  いまのご意見に対しては、少しは疑問と申しますか、ちょっと違った意見を持ってい ます。ここ数年来、いわゆる短時間で働く非正規、非正規という分け方をするかどうか は別にして、結果的にはパート、派遣、そういう形で働く人たちの数が圧倒的に増えて きているわけです。  そういう流れの中では、従来のパートに代表される非正規、正規の中での、賃金に代 表されるような処遇格差の問題というのは、ずっと法律問題としても、実際の雇用管理 上の問題としてもきたわけです。  ここでの議論のベース、視点というのは、これは私個人の意見ですが、これからの働 き方で雇用の形態とか、就業の形態がどんどん多様化していって、正規の方々であって も短時間で有期的な働きをする方もたくさん出てこられるわけです。これからの働き方 の中で、こういう短時間雇用というのは、ある意味では労働者が自由に、自分のイニシ アチブで自由に選択できる、そういう働き方の中の1つの形態として考えていかなけれ ばいけないと思っています。その上で、さらに働き方にあった処遇というもののルール を設定していかなければ、一方でいろいろな企業を取り巻く環境変化の中で、短時間で 働く人たちが出てくる。そういう人たちの処遇というのを正規か非正規かという枠の中 で判断をしていくということは、もうこの時代の流れと法律的な評価をしても合わない のではないかと思っています。  だからこういう点では、こういう場所ではそういうものを踏まえた上で、そういう公 正な、要するに一人ひとりの労働者が自分の自由な選択のもとでどういう働き方をする かということの、イニシアチブを握れるその前提として、こういう公正な処遇というル ールを明確にする必要があるのだろうと思っています。そういう点では、労使の自主的 な交渉とおっしゃいましたが、その場合1つの問題は、そういう短時間、パートで働く ような人たちが、そういう労使の席での場で本当に自主的な力と責任と権限を持って話 し合いができるというのであれば、私としてもそれは可能性があるかと思いますが。い ま現在、短時間でパートなどに代表されて置かれている人たちが、自主的な交渉を自ら の力と責任でできるかというと、実際には非常に難しい現実がある。そういう点ではや はり、そのようなお話も伺い企業規模や業種を問わず、ある程度客観的で公正な処遇の ルールが明確化できるということのほうが、むしろ適切であるし、そうすべきだと思っ ているのです。ですから、そういう点では使用者側の委員の方からも、こういう流れの 中で、どう改めてそういう有期雇用の方たちについての処遇を考えていくかということ についての、1つの経営側としての理念と、判断の基準を示していただいたほうがよい のではないかと思っています。 ○使側委員  いま公益委員がおっしゃったことについて、私も半分以上は意見が同じだと思ってい るのです。実は企業の中で、いま私が申しましたように、多くは大企業ではないかと思 います。ここへきてパートタイマーのいろいろな処遇を変えている新しい形が出てきて いるわけですが、それはそれぞれの会社でパートタイマーは補助的業務というイメージ のパートタイマーのことだけを考えているのではなくて、多分そういう会社はフルタイ マーというか無期の社員の人たちと別と考えているのではなく、一緒に頭に置きながら 考えてつくっているのだろうと思います。そういう意味でも、私は日本の中の全部の企 業が、フルタイマーのほうも変えていかなければという部分もあるので、ここにはもう 少し企業が自主的に何かをする時間があったほうがいいのではないかと思っています。  それから、パートタイマーの人たちが自主的に交渉をする力がないということです が、まさにそうだと思います。それでいままでの会社というのは、そういう人たちの声 をどうやって吸い上げるかというところから始まってやってきたのだと思うのです。そ ういうようなことをオープンにして、労働組合のほうも組合員でないと言ってしまえば そういうことですが、それは働く側の人たちにも労働条件というものの考え方とか、そ ういうことについて組合がないという人たちにももう少し知識を持ってもらうようなこ とをしてやらないと、ただパートタイマーの代表と話合いをしてくださいということだ けでは、決していい話合いはできないのではないかと思うので、そこまでの時間が必要 ではないかという意味で申し上げたつもりです。 ○公益委員  経営側の方にお願いしたいのは、中小企業や個々の企業を見れば、すぐやるのは難し いのはよくわかります。議論していただきたいのは個々の企業がどうかではなくて、日 本の将来を考えたときに経営側として、これからパートもどんどん活用していろいろな 働き方が出てくるときに、フルとパートのときにどういう公正処遇のあり方をつくるほ うが経営として望ましいのかということです。  その上で、その望ましい状態にどうやっていくかについて時間が必要だとか、それに ついての経営側の主張はあると思うのです。それは別に議論をしていただいて、経営側 全体としてどういう方向に持っていくのが、パートとフルの公正処遇から大事なのかを 議論していただいて、その後、その方向にどうやってたどり着くのかといったときに、 経営側としてはこうしないと難しいとか議論があり得ると思います。しかし最初から経 営側もいろいろな企業があって難しいのだということをここで議論するのではないので はないかと思います。 ○公益委員  おそらく経営側の中で、企業規模とか、業種とか、パートの違いなどがたくさんあろ うかと思いますし、その違いによってそれぞれ抱えている事情は違ってきます。それは よくわかります。でもそういうときに最低の処遇のルールがあった上で、そのルールを 経営側の人事管理、雇用管理の中でどう具体化していくかは、それぞれの企業の持って いる労使の交渉の中に委ねていいと思うのです。  その交渉の委ねる幅と中身をここで最低限のものは明確にしようということだと思う のです。それがむしろ明確になったほうが、労使の中でもいろいろ柔軟にやれると思う のです。 ○公益委員  私は法律の専門ではありませんので、法律の役割、歴史的な意味づけについてそう深 く知っているわけではないのですが、パート法が1993年に成立したわけです。当時を考 えれば、やはり啓蒙的な役割が立法化に期待されてきたのかと思うのです。以来10年経 ちました。この段階で再び啓蒙的な話合いで終わっていいのかどうか。片方でやはり実 効性をどう担保していく制度にしていくのか、これを法律にするのか、それともガイド ラインにするのか、それともそれぞれの労使によって解決していくのかということにつ いて、いろいろな手段があると思いますが、やはり実効性の上がる方法を考えていかな いと駄目な時代になってきたのではないかと思いますので、歴史的なことから考えて も、そろそろその点を強調しておきたいと思います。 ○労側委員  先ほど事務局から研究会の内容をベースとしたパンフレットのご説明が公益委員から のお話しとのかかわりであったのですが、パンフレットの中身をみますと、いま審議会 で議論をしているテーマに触れ、やはり読み取り方によっては方向づけがパンフレット から見えているという、それを誤解というか何と言うのか、私はちょっと。ということ は、審議会で議論している議論とのかかわりとか、審議会の役割とか機能との関係で、 この内容についてどう考えたらいいのかという疑問を持っていて、その疑問というのは 審議会をどうみているのか、やはり軽視しているのではないかという指摘を受けている のです。受けているというのは、こういうものがすでに広められている、その中ではこ う言っている、審議会ではどうなっているのかという意味で受けているので、私は先ほ ど使う趣旨、パート旬間の取組みというご説明があったのですが、中身を見た場合、そ こに非常に疑問があるということは意見として申し上げておきます。 ○事務局  補足させていただきます。そういった声もございまして、先週このパンフレットを使 う際には、小さなものですけれどもこのパンフレットの性格という形で、あくまで研究 会報告でありまして、それを皆様にご議論していただくための素材ということで、その 審議会での議論を踏まえて、厚生労働省としての取組みになっていくことですというこ との添書のようなものを挟み込むようにしたところです。 ○公益委員  先ほども公益委員のご質問に対して課長がお答になりましたように、この審議会の重 きをなす場で、「いや、そういう趣旨ではございません」という形で、要するに労使の 方に考えていただくボールを投げたという趣旨のご発言がありましたし、それはおそら く議事録に載るでしょうから、その確認がなされればよろしいのではないでしょうか。 そういう点では労側委員のご懸念も払拭されるのではないでしょうか。 ○労側委員  事実としてはそういう受け取め方がされているということは1つ申し上げたいという ことと、いまおっしゃっていただいた扱いは確認していただければと思います。 ○労側委員  次回の議論のために今日配られたものは議論をされているのですが、いつか配られた 資料の中で、転勤などの、見にくいのです。斜線でやられている図表が見にくいので す。図表11とか、図表12、図表14、これはいつ配られたのですか。 ○分科会長  資料1ですか。 ○労側委員  10月10日ですか。この中に入っているのですが、「職務内容、責任は同じ」とか、 「勤務時間が同じ」とか「残業がある」とか、ここが非常に見にくいのです。 ○事務局  図表いくつですか。 ○労側委員  図表14とか、図表12とかですね。 ○事務局  「現在の職場での就労期間別短時間労働者が賃金格差に納得できない理由」というと ころでしょうか。これは10月9日の資料1の11頁のことだと思うのですが。 ○労側委員  それと今日配られたものが、転勤とか異動というのがパートタイム労働者にどのくら いの割合であるかというデータはあるのでしょうか。今日配られた12頁の「事業所数割 合」の中に、「配置転換は平成13年19.2」 ○事務局  これは実施している事業所の割合ということです。実施しているかどうかで、全体の パートタイム労働者の中での割合というものが調査できるかどうかは難しいかと思いま す。 ○労側委員  わかりました。 ○分科会長  では時間も過ぎていますので、次回の議論は公正な処遇ルールの考え方について、労 使双方から具体的実態を踏まえてお出しいただくことをお願いしたいと思います。他に なければ本日の分科会は閉会とさせていただきます。  そこで手続的なことですが、署名委員は労側の佐藤(孝)委員と、使側の山崎委員に お願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○事務局  次回は11月28日(木)で、時間は15時から17時で、場所は本日と同じ9階省議室でご ざいます。よろしくお願いいたします。 ○分科会長  長時間ありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課 企画法規係(内線:7876)