02/11/08 第3回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会議事録         第3回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会                                 日時 平成14年11月8日(金)                           10:00〜                        場所 中央合同庁舎第5号館                           専用第18〜20会議室  ○櫻井部会長  ただいまから、「第3回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会」を開催します。 今日ご欠席の委員は、工藤委員、中原委員、船木委員ですが、定足数という点でいいま すと、労働政策審議会令第9条に規定する定足数を満たしていますので、当部会が成立 しているということをまず申し上げます。次に、安全衛生部長が交代されましたのでご 紹介します。大石部長、お願いします。 ○安全衛生部長  安全衛生部長の大石でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。本日はお忙 しいところお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。今日のじん肺部会 におきましては、平成13年のじん肺健康管理状況について、ご報告を申し上げますとと もに、本年8月に開催された「肺がんを併発するじん肺の健康管理等に関する検討会」 において、じん肺有所見者においては肺がんリスクの上昇が有意であり原発性肺がんを じん肺の合併症とすべきであること、労働者、離職者ともに、じん肺有所見者に対して 、肺がんに関する検査を行うことなどのご提言をいただきました。これを受けまして、 じん肺法施行規則、あるいは労働安全衛生規則の一部を改正したいと思っており、本日 これら規則の改正案要綱について、ご審議していただきたいと思っているところです。 どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○櫻井部会長  ありがとうございました。その他、事務局の異動があったようですので、事務局から 紹介をお願いします。 ○山口主任  ご紹介させていただきます。計画課長の中沖です。環境改善室長の高橋です。労働衛 生課主任中央労働衛生専門官の浅田です。労災補償部補償課長の國常です。申し遅れま したが、私は主任中央じん肺診査医の山口です。よろしくお願いします。以上です。 ○櫻井部会長  どうもありがとうございました。続いて事務局から、本日の資料の確認をお願いしま す。 ○山口主任  お手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。「議事次第」を1枚めくって いただくと、座席表があります。資料番号1ということで、「じん肺部会委員・臨時委 員名簿」です。資料番号2「平成13年じん肺健康管理状況」です。資料番号3−1は諮 問文です。資料番号3−2「じん肺法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する 省令案要綱」の参考資料です。参考資料1「肺がんを併発するじん肺有所見者の健康管 理対策等について」です。それと、実際の最終報告書が付いています。以上です。 ○櫻井部会長  どうもありがとうございました。お手元の資料は揃っていると思いますので、今日の 議題に移りたいと思います。今日の最初の議題は、報告案件1件です。「平成13年じん 肺健康管理状況」について、事務局から説明をお願いします。 ○山口主任  資料2の「平成13年じん肺健康管理状況について」のご報告をさせていただきたいと 思います。まず、1の「じん肺健康診断結果」ですが、適用事業場数は、45,758事業場 、粉じん作業従事労働者数は356,860人、じん肺健康診断実施事業場数は17,558事業場、 じん肺健康診断受診労働者数は191,707人となっています。  次の下の表は、管理区分の決定件数の表です。これはじん肺健康診断を受診して、じ ん肺所見が疑われるということで、都道府県労働局長に健診結果が提出され、管理区分 の決定がなされたものの数です。有所見者の合計が11,276件、その内訳として管理2が 9,880件、管理3が合計で1,375件です。管理3のうち、管理3イが893件、管理3ロが48 2件になっています。管理4は21件です。  合併症り患件数は14件になっています。それぞれ表の数字の下に( )がありますが 、これについては数字の割合、この場合は有所見者の合計を100とした場合のパーセント を示したものです。以下の表においても、( )内はパーセントを表しています。  次に2の「随時申請に係るじん肺管理区分決定状況」です。管理区分の決定件数が2,7 42件、うち有所見者の合計が2,045件になっています。その内訳として、管理2が991件 、管理3が751件であり、その内訳で管理3イが332件、管理3ロが419件、管理4が303 件、合併症り患件数が644件という状況になっています。  3「平成13年中に合併症の療養を開始した者の内訳」です。その内訳ですが、療養を 開始した者が81人となっています。内訳として、肺結核が17名、結核性胸膜炎が20名、 続発性気管支炎が8名、続発性気管支拡張症が17名、続発性気胸が19名という状況にな っています。以上が、平成13年のじん肺健康管理状況です。  2頁目は、「じん肺健康診断実施結果」について、昭和55年から平成13年までの年次 推移を表にしたものです。じん肺法改正以降、同じ方式で数字をとっています。粉じん 作業従事労働者数は、全体的に減少傾向にあります。「新規有所見者労働者数及び新規 有所見者発生率」は、昭和55年の6,842人から、平成13年には248人。発生率については 、3%から0.1%ということで、ともに下がっています。  次に右半分ですが、「じん肺管理区分決定ごとの件数の推移」を示しています。どの 管理区分も、概ね全体的には減少してきていますが、有所見者数全体で見ると、昭和55 年の42,387人から、平成13年の11,276人になっています。じん肺健康診断受診労働者数 に対する割合についても、16.3%から5.9%になっています。  次は「随時申請によるじん肺管理区分決定件数等の推移」です。これも同様に、昭和5 5年から平成13年までの数字を記載しています。有所見者数ならびに管理区分ごとの毎年 の決定件数、合併症り患者件数等につきましては、近年は大体ほぼ横這いの傾向になっ ています。以上です。 ○櫻井部会長  ただいまの説明について、何かご意見、ご質問がありましたら、どうぞお願いします 。よろしいですか。特にご指摘、ご意見がないようですので、当部会としましては、こ の報告を承ったということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。                (異議なし)  ありがとうございました。次の議題が今日の主な議題です。審議事項ですが、「じん 肺法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」についてです。本件 は、厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛の諮問案件です。当部会で審議を行うとい うことになっています。まず、事務局から説明をお願いします。 ○山口主任  資料3−1は、厚生労働大臣から西川俊作労働政策審議会会長宛の諮問文です。文章 を読み上げます。「厚生労働省設置法第9条第1項第2号の規定に基づき、別紙『じん 肺法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱』について、貴会の意 見を求める。平成14年11月8日、厚生労働大臣 坂口力」。  具体的な諮問内容については、別紙「じん肺法施行規則及び労働安全衛生規則の一部 を改正する省令案要綱」になります。省令案要綱を説明する前に、若干説明をさせてい ただきたいと思いますので、参考資料1「肺がんを併発するじん肺有所見者の健康管理 対策等について」をご覧いただきたいと思います。これは検討会の報告書の概要ですが 、厚生労働省におきましては、じん肺と肺がんの医学的関連性を検討するため、平成13 年7月に「肺がんを併発するじん肺の健康管理等に関する検討会」を開催して、検討を 行ってきました。その報告書の概要が、参考資料1ですが、この検討の結果、じん肺有 所見者については、肺がんリスクの上昇が有意であるということが認められるとされ、 最終の8月の第4回検討委員会の際に、ここの3にあるような提言がなされています。  1つ目は、「原発性肺がん」をじん肺法に規定する合併症とするということでありま す。2つ目は、じん肺有所見の労働者全員、これは管理2及び管理3の方になりますが 、その方全員に肺がんに関する検査として、胸部らせんCT検査、喀痰細胞診検査を年 1回実施するということであります。離職後の対策として、健康管理手帳の交付対象を じん肺有所見者全員に拡大し、健康管理手帳所持者に対して、肺がんに関する検査を実 施するということ、等々が提言されています。先ほど部長の挨拶にありましたように、 この提言に沿った形で、じん肺法施行規則および労働安全衛生規則の一部を改正するこ ととしたいと考えています。  資料3−1の別紙「じん肺法施行規則の一部改正」ですが、その1として、じん肺の 合併症に「原発性肺がん」を追加することとしています。若干ご説明いたしますが、資 料3−2の4頁にあるように、じん肺の合併症として、現在5つの合併症が施行規則で 規定されていますが、これに「原発性肺がん」を追加することとしたいと考えています 。このようにしますと、じん肺健康診断の際に、肺結核以外の合併症に関する検査を行 うこととなります。  同じ資料の3頁に「2 じん肺健康診断」とありますが、その1)の(6)です。肺結核 以外の合併症に関する検査として現在規定されているのが、結核菌検査、たんに関する 検査、エックス線特殊撮影の検査です。したがいまして、合併症として原発性肺がんを 追加しますと、じん肺健康診断の際に、肺結核以外の合併症に関する検査として、「た んに関する検査」で喀痰細胞診検査を、エックス線特殊撮影による検査で胸部らせんC T検査を行うことになるということです。  諮問文の第1のじん肺法施行規則のその2です。「常時粉じん作業に従事させたこと のある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管 理区分が管理二である労働者について、一年以内ごとに一回事業者が定期に行う一般健 康診断において、肺がんにかかっている疑いがないと診断されたとき以外のときは、事 業者は、定期外のじん肺健康診断を行わなければならないこととすること。」ちょっと ややこしいので、資料でご説明させていただきたいと思います。  資料番号3−2の4頁の2)に「定期のじん肺健康診断の頻度」という表があります 。じん肺管理区分が管理3の方と常時粉じん作業に従事している管理2の方については 、現行でも、1年以内ごとに1回のじん肺健康診断を受けることになっていますので、 その際に、肺結核以外の合併症に関する検査として肺がんに関する検査、いわゆる胸部 らせんCT検査及び喀痰細胞診検査を行うこととなります。  しかし、じん肺管理区分が管理2の方で、常時粉じん作業に従事したことがあり、現 在は非粉じん作業に従事している方につきましては、定期のじん肺健康診断は3年以内 ごとに1回になっていますので、このままですと、このような条件の管理2の方につき ましては、3年に1回しか肺がんに関する検査を受けることができなくなることになっ てしまうわけです。検討会では、肺がんに関する検査については、毎年1回は実施する ことと提言をいただいていますので、この間の2年間について、何らかの形で肺がんに 関する検査を実施する仕組みを作る必要があるわけです。  諮問文の第1の2、先ほど読み上げた文章の2行目、2の中に「事業者が定期に行う 一般健康診断において」とありますが、これは労働安全衛生法の定期健康診断を指して います。これは、労働者ですと年に1回必ず労働安全衛生法に基づく定期健康診断を受 診することになっていますので、その機会をとらえて、定期外のじん肺健康診断として 、肺がんに関する検査を実施することができるように、規則を改正するという意味です 。  第2の「労働安全衛生規則の一部改正」について、ご説明したいと思います。まず、 その1ですが、「健康管理手帳を交付する業務のうち、粉じん作業にかかる業務に関し 、健康管理手帳の交付要件として、じん肺管理区分が管理二である者を追加するものと すること。」となっています。現在、労働安全衛生規則において、じん肺管理区分が管 理3である者については、離職の際、または離職後に本人が都道府県労働局長に申請す ることにより、健康管理手帳が交付され、年1回の健康診断を無料で受診できるという 仕組みになっています。この交付要件を管理2の方まで拡大することにしたいというこ とです。  別紙の2、第3の「施行期日」ですが、「じん肺法施行規則」については、じん肺健 康診断の実施主体が事業者であることから、その周知期間等を考慮して、平成15年4月 1日からの施行にしたいと考えています。また、第二の「労働安全衛生規則」について は、健康管理手帳の交付の主体は国ですので、交付の日から施行したいと考えています 。以上です。よろしくご審議のほどお願い申し上げたいと思います。 ○櫻井部会長  ただいま説明がありましたが、その内容についてご質問、ご意見がありましたら、ど うぞお願いします。 ○田上委員  今回の「肺がんを6番目の合併症に加える」ことについて、このような検討会の提言 をいただいたことは、長年の私たちの願いが報われることだと高く評価をするものです 。検討会並びに厚生労働省のご尽力に敬意を表したいと思います。質問という形になろ うかと思いますが、5点ほどお伺いをしたいと思います。今回、このような提言をいた だいたわけですが、結晶質シリカの発がん性についての答えが、明確ではないというふ うに受けとることができます。何かすっきりしないと言ったほうがよろしいでしょうか 。この点について、IARCの5年前のステージアップから、否定はしない、けれども 認めることはできない、こういった形が延々と続いているわけですが、結晶質シリカの 人体に対する健康という観点から、この件についての答えを早急に明確にしていただき たいと願うものです。この検討会の要旨の中に1、2行触れられている点も含めて、こ のような結果になったことをお聞きしたいと思います。  2点目ですが、原発性肺がんということで、「原発性」と明記をされているのですが 、素人ですのでよく分かりませんが、原発性の肺がんということが、医療実践上の現場 において明確になるものなのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。明 らかに定義をしたものということが分かれば、もちろん「原発性肺がん」という形での 表記取扱いを支持するものですが、肺がんと胃がん、胃がんに限りませんが、同時に発 症ということもあり得るのではないでしょうか。また症状の発生から、どちらが先かと いうことが現実問題として明確になるものなのかどうか、そういった点についてもお教 えをいただきたいと思います。  併せて、この直近に、医療実践上の不利益にかかわる管理3の取扱いの文が出されま したが、あの時も、「原発性肺がん」と明記をされていたと思うのです。じん肺有所見 者が胃がんになって、転移をし、肺がんを起こした場合に、医療実践上の不利益は生じ ないのかどうか、こういった点についての考え方も、併せてこの「原発性」の部分でお 教えをいただきたいと思います。  3点目ですが、これは言わずもがなのところがあるのかもしれませんが、労災保険の 時効に関することで、確認をさせていただきたいと思います。平成15年4月1日を施行 日とした場合に、過去の5年以内に有所見者で、原発性肺がんでお亡くなりになられた 方の労災保険の適用については、可能というふうに考えるのですが、その点の確認をさ せていただきたいと思います。  4点目ですが、有所見者の管理2以上の方の、今日における全体の人数把握というも のを、どのように捉えているのか。今日現役で事業所で働く者にとっては、把握可能で すが、多くがOB、現役を退いた方が対象であり、数が多いのではないかと思います。 管理2の方に対し、1年に1回のこういった検査が付加されることから、さらには今後 の健康保持の対応についての人数把握をどのような形でされて、どのように周知徹底を 図ろうとされているのか、この点についてお教えをいただきたいと思います。  5点目については、若干今回のこの提言にかかわることとは外れますが、長きにわた り粉じん作業場で働いた者で、有所見が認められない者が、非粉じん作業場に職場が変 わった場合は、じん肺健診の必要がないわけです。離職時のじん肺健診も、その後半の 非粉じん作業場で働いた者は、離職時のじん肺健診を多分やられないであろうと思いま す。粉じん作業場で働いていた時に有所見が認められなかった、しかし、長年の年数を 経過して有所見になることもあり得ると思うのですが、そういった対象者に対する今後 の健康管理についてどうお考えになっているのか。今回の提言とは直接は関係ありませ んが、間接的には有所見者の肺がんということでもありますので、その点についてもお 考えがあればお教えいただきたいと思います。以上、5点申し上げましたが、お考えを お教えいただきたいのです。 ○櫻井部会長  5つの点についてご質問がありました。まず最初は、結晶質シリカの発がん性の答え が明確でないということですが、事務局から、検討会等の状況も踏まえてお答えくださ い。 ○山口主任  最初の結晶質シリカの発がん性については、この検討報告書を読みますと、粉じんに ばく露された群を、じん肺所見のある群とない群に分けて、肺がんのリスクを検討して います。その結果、じん肺の有所見者には肺がんリスクの有意な上昇が認められるとし ていまして、それに対して、じん肺の所見のない者には肺がんのリスクの上昇を示す知 見が得られなかったという結論になっています。また報告書の中には、じん肺病変を介 さない結晶質シリカそのものの発がん性を明らかに肯定する知見は得られなかったとい うことが、結論になっています。また結晶質シリカそのものの発がん性の有無について は、さらに知見の集積が必要であるということも書いてありまして、この報告書を基に しますと、現時点で結晶質シリカを発がん物質として規制するに足る科学的根拠が今の ところないのではないかと考えています。ただし、じん肺の有所見者の肺がんのリスク の有意な上昇が認められたということです。  2点目は、原発性肺がんは原発性でないものとそのほかのものに、しっかり鑑別がで きるのかということだと思いますが、原発性と原発性でないものの最終的な判断は、病 理組織を取ってきて、その細胞の状況を顕微鏡で確認するなどして、判断が可能であろ うと思われますし、さらに、原発巣がほかにあるものであれば、そちらの症状も多々出 てくることとなりますので、その辺の臨床経過並びに検査結果に基づいて、判断が可能 であろうと思っています。  また、有所見者の管理2以上の人について、離職者及びその他を含めて何人ぐらいか というお話があったかと思いますが、管理2の方は、現在の粗々の推計ですが、大体管 理2、3、離職者を合わせて6万から7万人ぐらいではないかという推計は立てていま す。しかし、それぞれ1人ずつ把握するのは、おっしゃるように大変難しいことだとい うのは、我々も十分認識していまして、十分な普及、啓発活動が、これから本件に関し て必要ではないかと考えています。  それは離職者だけではなくて、現に働いている労働者の方に対しても、同じように普 及、啓発を十分していかなければならないと考えていますが、本件について対象となる 労働者、あるいは近く離職しようとしている方に対して、じん肺に合併する肺がんのリ スクだとか、肺がんに関する検査はこういうものがあるということを、分かりやすく記 載したパンフレット、あるいはポスターなどを作成して、労働局及び労働基準監督署を 通じて、関係事業場等に周知を図りたいと思います。  また、「離職するじん肺有所見者のためのガイドブック」がありますが、そちらもこ れに併せて改正して、周知を図りたいと考えています。また、すでに離職している方へ の周知も考えなければならないと考えていまして、今申し上げたようなパンフレットの 配付、あるいはポスターの掲示、あるいはホームページへの掲載等で周知していくこと としていますが、そのほか、本日おいでの皆様方の組合などの団体、あるいは実際に健 診を受けている方もおられるでしょうから、健診機関等々と協力をさせていただきなが ら、できる限りの機会をとらえて普及、啓発に努めていきたいと考えています。そのよ うなことで、特定というのはなかなか難しいところがあろうかと思いますが、できるだ け早急にそういった普及、啓発を積極的に進めてまいりたいと考えています。 ○櫻井部会長  時効の問題はどうですか。 ○補償課長  時効の関係ですが、労災補償請求において、時効にかかっていない分につきましては 、平成15年4月1日からのじん肺法施行規則の改正に伴い、合併症ということになれ ば、当然平成15年4月からは労災補償の対象ということで規定されるわけですが、そ れ以前の疾病については、通達でこれを業務上の疾病ということで補償しようと考えて います。したがいまして、5年以内で時効にかかっていない請求については、新しい認 定基準によって、労基則別表第1の2第9号該当疾病として救済をするということにな ろうかと思います。  行政訴訟に上がっている部分につきましては、裁判上の訴訟維持ができないという状 況もありますので、法務省と協議をしながら、原処分を変更するということになろうか と思います。審査請求、再審査請求にかかっているものにつきましては、それぞれの機 関で早急に、新しい通達に基づいて判断をしていただくということになろうかと思って います。 ○櫻井部会長  もう1つ、5番目の、長く働いて非粉じん作業場にというのはどうですか。 ○田上委員  粉じん作業場で例えば20 年働いた人が、その時に有所見が見られなかったが、後半の 例えば20年非粉じん作業場に働いていた人は、もうじん肺健診はないのです。法的に義 務化されていません。 ○山口主任  それにつきましては随時申請の制度がありますので、それを利用して積極的に申請し ていただくことになるのかと思います。随時申請の場合は、粉じん作業に従事したこと のある者であれば、申請できる制度となっていますので、その制度を利用して申請をし ていただきたいと考えています。その辺のところも宣伝不足だとおっしゃられれば、少 しそういうものだというものも含めて、今後とも努力していきたいと思っています。 ○田上委員  原発性のところで、医療実践上の不利益の取扱いの部分について、お答えが触れられ ていなかったのですが、その点はいかがですか。 ○櫻井部会長  転移であっても、医療実践上の不利益を被るではないか、というご質問ですね。 ○田上委員  はい。 ○補償課長  私どもの考え方としては、転移がんにつきましては、じん肺の異常陰影によって少な くとも原発部位のがんの発見が困難になることはないと考えています。さらに転移がん につきましては、がんが肺に転移した時点で既に進行がんの範疇に入るものということ で、進行がんというのは、じん肺の有無にかかわらず、一般に治療方法が著しく制約さ れるということですので、じん肺による制約に比べて進行がんによる制約が大きいこと から、転移した段階におきましては、医療実践上の不利益は生じないと考えている次第 です。 ○櫻井部会長  医療実践上の不利益があるかないかという微妙な判断は、なかなか難しいと思います が、今のお答えも、1つの妥当性はあると思います。 ○田上委員  今の段階では、ないという判断をしているということですね。 ○櫻井部会長  結晶質シリカの発がん性の話ですが、結晶質シリカにより線維化を起こした人は、発 がんのリスクが高いという意味では、広い意味で発がん性に関与している、広義の発が ん物質という見方ができると思うのです。そうしますと、線維化をもたらさないような 範囲で、発がんのリスクを上げるかどうかという部分、線維化を介さない発がん性があ るかないかという部分は、まだ医学的にはエビデンスが明確ではないと言わざるを得な いのだろうと思います。 ○田上委員  IARCの判断は、線維化の部分については触れられていないのですか。 ○櫻井部会長  触れていないけれども、それを含めて判断しているわけです。ほかにご質問はありま せんか。 ○北村委員  事業主側を代表する形で、簡潔に意見、あるいは要請を2点ほど申し上げさせていた だきたいと思います。この3月に、原発性肺がんの労災補償上の取扱いが、管理3まで 拡大されるという決定の後、半年後の今回のお話でありましたので、私どももやや戸惑 った面はありましたが、その後何回かいろいろ議論を重ねさせていただいた結果、事業 主側としては、次のような意見、あるいは要望を、この席で申し上げようかということ になりましたので、申し上げさせていただきます。  いろいろ議論をさせていただきましたが、今回の諮問案は、健康管理の観点に重点を 置かれており、この結果、管理2以上の方々の早期肺がんが発見されて、早期治療、治 癒につながるということであれば、これは労使双方にとっても望ましい方向ではないの かと考えています。その上で、2点ほど要望がありますが、この肺がんに関する検査の 中の、らせんCT検査について、じん肺管理区分2以上の有所見者全員に、今後一生続 けるということが果たして本当によろしいのかどうか、という疑問を持っています。も し可能であれば、専門家の方とか、さまざまな実践上の面で何かご配慮をいただけない かという点です。  もう1点は、検討会の報告書にも書いてありますが、やはり何といっても、事業主側 としては喫煙の問題を取り上げざるを得ないと思っています。喫煙は検討会の結論でも 、「肺がんに大きく関与するリスク要因である。ただ、喫煙だけですべてを説明するこ とはできない」と表現されているとおり、やはり喫煙が何らかの影響を持っていること は、周知の事実であろうと思います。個人の責任に帰すべき喫煙が、企業の責任に及ん でくるというところに、どうしても私どもは疑問を感じる点がありまして、なかなか強 制的な禁煙というのは難しいのでしょうが、じん肺有所見者を対象に、今後喫煙の教育 、あるいは禁煙の啓蒙、啓発、あるいは絶煙キャンペーンなどを、政労使一体となって 取り組んでいただいて、少しでも肺がん発生の確率を下げるという努力が必要ではない のかと感じています。できれば、本審議会の皆様のご賛同をいただいた上で、具体的な 対応について厚生労働省のほうにお願いできればと感じています。以上です。 ○櫻井部会長  ただいまのご指摘に、事務局でお答えできますか。 ○山口主任  らせんCT検査の件ですが、今回の検討会の報告書においては、いわゆるじん肺の所 見のある者につきまして、肺がんの検査を絞り込むという医学的な知見が記載されてい ませんので、原則的には、一律に肺がんの検査を絞り込むことはおそらく難しいだろう と考えております。したがいまして、原則として、じん肺の有所見者であれば、全員に 肺がんに関する検査の対象となるべきであり、らせんCT検査をすることが必要であろ うと考えています。  ただ、極端に肺がんのり患率や死亡率が低いような、例えば20代の方とか、そういっ た年齢層の人に対して、本当に毎年らせんCTの撮影を行うのかどうかということにつ きましては、らせんCTによる放射線被ばくと肺がんの発見との効果などを十分に考慮 した上で、さらにそれに合わせて、医師がさらにその検査を受ける方ご本人の理解と、 インフォームド・コンセント等を十分得た上で撮影するかどうかということを決めるこ とになろうかと思っています。したがいまして、その辺のところは個々に判断すべき事 項であろうかと思いますので、いくばくかの情報提供等は行う必要はあるかもしれませ んが、個々の判断の中で、医師と実際に受けられる方との間で考えるべきものではない かと考えています。  喫煙については個人の嗜好の問題もありまして、国として「禁煙しろ」という強制的 なことは、おそらく難しいであろうと思っています。しかし、喫煙という問題につきま しては、じん肺の有所見者に限らず、すべての方に対して、肺がんだけではなくて各種 がんの発生あるいは虚血性心疾患、脳血管疾患等々の危険因子ということで十分知られ ていまして、喫煙対策自体については、厚生労働省全体として、「健康日本21」等で取 り組んでいるところです。特に今回のじん肺の患者については、もともとそういう意味 で肺がんの発生リスクが高い上に、喫煙というものが重なりますと、さらに高くなるだ ろうということは想定されるわけで、その対策はおっしゃるとおり、重要であろうかと 思っています。  先ほど少し触れさせていただきましたが、今後作成しようと思っているパンフレット 、あるいはガイドブック、あるいはそういったものの活用、あるいはホームページへの 掲載、あるいは先ほど申しましたような健康診断の際等々、いろいろな機会をとらえて 周知なり啓発なりを図っていきたいと思いますので、その辺についても、よろしくご協 力のほどをお願いしたいと思います。 ○櫻井部会長  従来管理2に新しくなった人、あるいは管理区分が上がってしまった方を対象に、教 育事業が行われてきているわけですが、今回のこの改正によりますと、管理2の方と健 診する医師との間の非常に十分なコミュニケーションがないといけないということで、 結果的には、非常にいい健康教育の場にもなり得るなと、個人的には考えています。禁 煙の指導もやりやすいのではないかと思っています。ほかに何かご指摘、ご質問はあり ませんか。 ○中桐委員  この改正案に賛成という立場で、今後の対策についていくつか要望を申し上げたいと 思うのです。先ほど新しい制度についての広報活動、周知活動がありましたが、どうも 政府機関だけでの広報活動で、広く退職されたような方々が、こういう新しい制度を知 り得るのかという問題があろうと思うのです。予算の問題はあるかと思うのですが、新 聞等々、そういったものも活用する形での広範囲な広報活動に努めていただけないかと いうことが1点です。  私ども連合としても、この問題は内部で検討していまして、私どもの組織の中に、元 組合員の方々を組織する退職者連合という組織があります。OBの方々が年に1回集ま って、いろいろな催し物をしたり、いろいろなことをやっていますが、そういう組織を 活用して、この広報活動をしてもらおうかということも、今検討しています。  また、今後の政府の対策の第2点目ですが、先ほどのシリカの発がん性の問題の研究 です。引き続き内外の知見を収集されるのでしょうが、独自に、疫学も含めてさまざま な調査研究を継続して行っていただきたい。早期に発がん性の問題について解決をして いただきたいと思うわけです。その間にも、常時粉じん作業に従事している方々がいる わけですので、そういう方々のシリカのばく露対策を、今以上に強化をしていただきた い。じん肺とがんの発症の予防に努めていただきたいということです。併せて健康記録 なり、転職していかれた労働者の方々の記録などについて、今も規定はありますが、十 分なされているとは思いませんが、長期保管についての業界指導をお願いできないかと いうことがあります。  先ほど使用者側を代表された形でのご意見がありました。粉じん作業に従事する労働 者の喫煙問題について、私どもとしては喫煙によるリスク、じん肺とシリカの問題、こ ういうことについて労働者が知り得ていないと思いますので、例えば職場の長などを通 じて、安全衛生教育を労働者に対して行い、啓発活動をしていただく、併せて、職場の 分煙対策についても強化をしていただくことが、労働者の健康確保にとって大変有益で はないかと思いますし、先ほどのじん肺有所見者を対象とした禁煙、喫煙のキャンペー ンは、私どもとしてもその提案に賛同させていただきたいと思います。  実は、私どもはこの10月に福岡で、安全衛生の担当者を集めて全国会議を開催し、じ ん肺とアスベストの問題について特別の研修会を行いました。それぞれの方々がこの問 題を理解してもらっていると思うのですが、組合のない職場もたくさんあります。特に 小規模事業場の場合にはそうですが、そういう所をパトロールしている労災防止指導員 にも集まっていただいて、パトロールの際にどういうところをチェックするか、特別の 研修も行いました。これについては、引き続き今後地方ブロックで研修会がありまして 、喫煙の問題も含めて、こういう方々にそういった研修を行ってまいりますので、組合 としても連合としても、そういう形で努力をしていきたいということも、併せて申し上 げたいと思います。以上です。 ○櫻井部会長  ありがとうございました。何かコメントはありますか。 ○山口主任  広報対策ですが、今のところとりあえず、先ほど申しましたような形で考えています 。適宜いろいろご意見を伺いながら、おっしゃっていただいたように予算の面もありま して、いろいろあると思いますが、できるだけ広い範囲でいろいろな機会をとらえて、 周知を図っていきたいと考えています。  ばく露防止対策ですが、粉じんばく露防止対策がまず重要な点であるというのは認識 しているところで、粉じん障害防止総合対策であるとか、そういったものを取り組んで きているところです。新規の有所見労働者数、あるいは新規の有所見発生率につきまし ても、先ほどご説明したように減少し続けてきている状況でして、これはひとえに、お いでの労働者側、事業者側のこれまでのご努力であろうと考えています。  また、このような検討結果が出たことから、従前にも増しまして、さらに粉じんばく 露防止対策の周知徹底を図りたいと思いますし、レントゲン記録は7年保存ということ になっていますので、そういったものも含めて周知徹底を図ってまいりたいと考えてい ます。教育の点につきましても、例えば雇い入れ時であるとか、作業内容変更時などの 教育等は、必ず皆さんに行うことになっていますので、そういった中に、当該業務に発 生する恐れのある疾病の原因及び予防に関することも教育しなさい、という規定もあり ます。そういったものを活用しながら、本件につきましても周知を図っていきたいと考 えています。以上です。 ○環境改善室長  1点だけ補足します。中桐委員から、職場の喫煙対策及び分煙対策の大幅な改善をと いうお話がありました。これは中桐委員にも委員になっていただいています、「喫煙対 策のガイドラインの見直しの研究会」で検討が進められていますので、年度末を目標に 、分煙対策を一層徹底するという方向で、見直しを進めていきたいと考えています。よ ろしくお願いします。 ○労働衛生課長  シリカの発がん性についての答弁が抜けていたようなので、1点補足します。この報 告書の11頁に、「非じん肺群と肺がんリスクの調査のメタアナリシス」があります。こ れは粉じんにばく露されていたのだけれども、じん肺の所見がない方で肺がんのリスク はどうかということで、ゼロというのは対数ですから1になるのですが、この1をはる かに超えると、リスクが高くなることになります。ゼロを超えて右側に行くとリスクは 高くなるのですが、この分布を見ていただくと、ほぼゼロの所に集まっていて、要する に、一般の方とリスクはあまり変わらないという、たくさんの疫学データの集積がすで にあるわけでして、そういう観点から、疫学の方法論をこれから続けていっても、なか なか簡単にはシリカの発がん性という結論には至らないのだろうという感じがしていま す。そういう点では、動物実験とか遺伝子の解析とか、そういうことのアプローチもこ れから必要ではないかと思います。この点は、今後学会などでもさらにいろいろ検討が されると思いますから、そういうものに対して我々も注目はしていきたいと思いますが 、どうも疫学的なアプローチだけでは、この形だとこれまでのものを覆すだけのデータ が出るのは、なかなか時間がかかるのではないかと考えています。 ○中桐委員  今の段階で、疫学に限らず、厚生労働省としてこの問題で委託研究なりを考えている ことはないということですか。 ○労働衛生課長  今後の予算の問題もありますから、ないとはすぐに断言はできませんが、現在のとこ ろ予定はないということです。これは、一番、労働者に近いところの疫学というところ で、リスクがあるという結論が今回得られなかったということもありますから、疫学的 な議論ではなかなか難しかろうと思います。その他の動きがあれば、その時点で考えた いと思っています。そういう点では、学会等の動きを注目していきたいと思っています 。 ○櫻井部会長  よろしいでしょうか。ほかにまだ追加のご意見、ご質問はありませんか。大体ご意見 が出尽くしたようですので、この部会として、この要綱について妥当と認める旨の報告 を、私から労働政策審議会安全衛生分科会長宛に行うということにしたいと思いますが 、よろしいでしょうか。                 (異議なし)  ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。安全衛生部長か ら挨拶をお願いします。 ○安全衛生部長  本日は大変熱心なご議論、ありがとうございました。ただいま「じん肺法施行規則及 び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」につきまして、妥当と認める旨のご 報告をいただきまして、ありがとうございました。労働政策審議会令等の規定に基づい て、本部会の議決をもって、労働政策審議会の議決となるものです。今後は、この議決 に基づいて本省令案要綱を具体的な省令の改正作業につなげていきまして、その円滑な 施行に努めてまいりたいと思っております。また、本日の部会でいただいたご意見を十 分踏まえまして、今後の実際の我々の仕事に当たって、十分留意してまいりたいと思っ ております。本日は本当にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い申 し上げます。 ○櫻井部会長  どうもありがとうございました。ほかに何か一般論としてご発言がありましたら、ど うぞ。特段何もないようですので、今日の会議を終了したいと思います。なお、労働政 策審議会運営規程第6条第1項によって、議事録には部会長の私と、私が指名する委員 お二方が署名することになっています。労使代表を各1名の方にお願いするわけですが 、今日の議事録の署名としては、中桐委員と北村委員にお願いしたいと思います。どう ぞよろしくお願いします。それでは、今日はお忙しい中、大変ありがとうございました 。以上をもちまして、閉会とさせていただきます。                    照会先: 厚生労働省労働基準局安全衛生部                               労働衛生課じん肺班                                (内線5493)