03/11/05 第5回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会議事録          第5回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会                        日時 平成14年11月5日(火)                           10:00〜12:00                        場所 5階共用第7会議室 ○矢崎部会長  では、時間になりましたので、始めさせていただきます。  今日は、7名の委員の方々にご出席をいただきましたが、川村委員、堺委員、長谷川 委員はご欠席です。委員のほかに本日の議事の関係で、ヒヤリ・ハット事例検討作業部 会の委員である武藤専門委員と、日本赤十字社看護師幹部研究所講師の増子委員に、ご 参加いただいております。なお、事務局にも人事異動がありましたので、ご紹介いただ きたいと思います。 ○医療安全推進室長  この8月に、厚生労働省において人事異動がありました。異動のあったメンバーのみ ご紹介いたします。医政局総務課長の榮畑でございます。医薬局安全対策課安全使用推 進室長の池田でございます。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  今日は分厚い資料がありますので、事務局より確認をお願いします。 ○医療安全推進室長  本日の資料はだいぶ多くなっておりますが、お手元の「ヒューマンエラー部会議事次 第」に資料一覧表がありますので、これと資料を見比べながら、ご確認いただければと 思います。資料1−1が「医療安全推進総合対策を踏まえた取組(概要)」、資料1− 2が「医療安全対策のための医療法施行規則の一部改正について」、資料1−3が「患 者の苦情や相談等に対応するための体制整備について」、資料1−4が「ヒヤリ・ハッ ト事例検討作業部会について」、資料1−5が「医療に係る事故事例情報の取扱いに関 する検討部会について」です。以上が資料1です。  資料2も5つあります。資料2−1が「医療安全対策ネットワーク整備事業・全事例 集計結果の概要について」、資料2−2が「全般コード化情報の分析について」、資料 2−3が「重要事例情報の分析について」、資料2−4が「医薬品・医療用具・諸物品 等情報の分析について」、資料2−5が「医療安全対策ネットワーク整備事業の今後の 運営に関する検討課題について」です。資料2−1から資料2−4までが、これまで1 年間行われたものの資料です。  資料3は3つあります。資料3−1が「今後の検討の進め方について」、資料3−2 が「医療技術評価研究事業」、資料3−3が「医療技術評価研究事業公募研究課題につ いて」です。  なお、この他に参考として、参考資料1が「医療安全推進総合対策」という、今年4 月17日に親の総会でまとめていただいたものです。参考資料2が本日議題となってい る、ヒヤリ・ハット事例収集の全体の概要です。以上です。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。今日は主な議題が3つあります。それぞれに従って資料1、資 料2、資料3となっておりますので、ご確認のほど、よろしくお願いします。  それでは第1の議題、資料1に従って議論を進めてまいりたいと思います。まず医療 安全推進総合対策を踏まえた、厚生労働省のこれまでの取組みについてです。その中で 主に本部会に関連するものを中心に、事務局で資料をまとめていただきましたので、ま ずその説明をしていただいて、その後ご議論をしたいと思います。 ○医療安全推進室長  資料1−1から資料1−5をご覧ください。医療安全対策については、当部会の親部 会である総会、医療安全対策検討会議において、昨年5月より今年4月までの1年間を かけて、参考資料1にある「医療安全推進総合対策」を検討してまいり、今年4月17日 にまとめていただきました。当部会はその2日前の4月15日に開催して、これがまとま ったときに先生方にお送りしておりますが、これを踏まえて現在、厚生労働省で取り組 んでいる医療安全対策の概要を、ご説明させていただきます。  資料1−1が、その概要と主な施策です。提言でまとめていただいたのは、大きく4 つの分野があります。資料1−1の左側に4つの箱があります。1つが、「医療機関に おける安全対策」です。これについては今年10月1日から医療法施行規則の改正によ り、1番の○である、すべての病院と有床診療所に安全体制の構築を制度化することと いたしました。つまり、これはすでに始まっている部分です。2番目として、特定機能 病院と臨床研修病院については、最初の○にさらに加え、安全管理者、安全管理部門、 患者相談窓口という3つの制度化をすることとしております。これは省令改正を出しま したが、施行は来年4月1日となっております。  2番目の四角が、「医薬品・医療用具等にかかわる安全性向上」です。これについて は主に医薬安全局のほうの所掌で対策を進めております。「医薬品の類似性を客観的、 かつ定量的に評価する手法」「人間の特性を考慮した医療用具の実用化研究推進」「医 薬品・医療用具情報の提供、添付文書の標準化」等という主に3つについて、各々厚生 労働科学研究でさらに検討を進めるということで、もうすでに始めている部分もありま す。そのほかに関係業界への指導等を行っているところです。  「医療安全に関する教育研修」については、主な点として2つ載せております。1つ が、「国家試験への出題の基準」です。医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の国家試験 は、大体4年に一遍見直すというサイクルが出来上がっておりますので、直近の見直し のタイミングから、それに盛り込むことにしております。「医師臨床研修等における医 療安全に関する修得内容の明確化」については、医師の臨床研修は平成16年から制度化 され、今後2年間の義務化が行われます。そこでの臨床研修の目標に取り組む等、卒後 研修においても取り組んでいただくような体制にしたいと思っております。  最後の「医療安全を推進するための環境整備」については、3つほど載っておりま す。1つが「医療安全に有用な情報の提供」です。それと前回もご検討いただいた、 「ヒヤリ・ハット事例収集の充実」です。「事故事例情報」については、現在検討中で す。「都道府県の相談体制の整備」「医療安全に必要な研究の推進」等々を図っていく こととしております。なお、その次の頁2枚ほどで、医療安全対策総合対策の概要をま とめたものを載せております。  資料1−2は、医療安全のすべての病院および有床診療所に制度化する4項目、さら に特定機能病院および臨床研修病院に制度化する3項目を載せております。なお、臨床 研修指定病院については、別途臨床研修病院の指定要件というところで、見直しを図る こととしております。  資料1−3が相談窓口の件です。相談窓口については先ほどご説明しましたので、割 愛させていただきます。  資料1−4が、ヒヤリ・ハット検討部会についてです。前回4月に開催して検討いた だいたときに、ヒヤリ・ハット事例検討部会を設けるということで、ヒヤリ・ハットを 専門的に検討する部会を設けております。次の頁に名簿がありますが、本日ご出席いた だいている橋本委員に座長をお願いして、全部で21名ほどの方にお入りいただきまし た。検討内容については、後ほど委員からご説明していただくこととしております。  資料1−5は、新しくつくった検討部会についてです。4月17日にまとめた総合対策 において、医療安全の観点から医療事故そのものを、どのように活用していくかについ ては、なお検討を要することになっておりました。それを検討するための特別な場とし て、検討部会を設けて検討していただいているところです。なお、この検討部会の1回 目に提出した、どんなところが論点になっているのかを事務局のほうでまとめたもの を、3頁目からご参考までに付けておりますが、内容については割愛させていただきま す。以上4月以降、厚生労働省で取り組んだ主な対策についての簡単な概要です。 ○矢崎部会長  具体的な提言を、4つにまとめて行われたわけですが、委員の方々から何かご意見は ございますか。各医療機関における安全対策では、責任者と窓口、あるいは部門を築い ていただくということでした。これは省令が改正されたら、病院としてはこういう方面 で具体策をやってほしいということになるのですね。 ○医療安全推進室長  はい、そうです。 ○矢崎部会長  これをやっていないと、管理型の研修指定病院にはならないということですか。 ○医療安全推進室長  はい。臨床研修病院をどのように承認要件とするかは現在、別途医事課のほうで検討 中です。管理型など、いろいろなタイプがあろうと思いますが、これを踏まえて検討し ているところです。 ○矢崎部会長  2番目の医薬品・医療用具等にかかわる安全性向上については、厚生科学研究費で、 いろいろ具体的な検討をされる一方、関係業界団体への指導をされるということです が、橋本委員を中心にヒヤリ・ハットの分析をしていただくと、大体が確認不足という 結論に至っておりますね。確かにそれは事実ですが、その前に医薬品・医療用具等にか かわる安全文化を育ててほしいということです。要するに、なるべくエラーを少なくす る環境を整えてほしいのです。  例えば医薬品の名前の問題、あるいは生命に直接かかわるような、人工呼吸器などの 安全基準というものを、やはりメーカーにしっかり守っていただきたいわけです。てん でバラバラの基準で作るのではなく、人工呼吸器から始まって、人工心肺の装置も含め て、生命に直接かかわるものは基準がバラバラですと、それだけエラーの確率が多くな りますから。いまは規制緩和ですが、こういう方面は是非、基準を定めて指導していた だきたいと思います。 ○星委員  ひとつお願いがあります。ヒューマンエラー部会も、しばらく開かれていなかったわ けですが、医薬品・医療用具等対策部会のほうも、最近あまり開いていないようです。 事例の結論とすれば、看護師さんたちの確認不足という結論になっているものの中に も、製薬メーカーや機器メーカーにも、考えてほしい要素もあるはずなのです。それが どのようにメーカーなりにフィードバックされて、それに対してメーカーがどのように 反応しているのかという状況が全く見えず、全く聞こえず、個々のメーカーの名前を出 してもらっては困るという議論だけが聞こえていて、結局は現場の努力が足りませんと いう結論を、常に我々は押し付けられて、非常につらい思いをしているのです。  製薬メーカーは増収増益のようですから、どんな対応をされているのか、あるいはそ ういうことには興味がない、しないということなのか。メーカーはここに来ていません ので、「それはあなたたちの仕事だ。我々はそういうものには興味がない」と言うなら ば、その辺の意思がどうなっているのかを、医薬局の安全対策課、あるいは医薬局とし て聞いていただきたい。医政局のほうからでも、そのことについては多分聞いていただ けるのでしょう。我々は、そのことを知らされないと納得がいかない。常に「根情を出 せ」とか、「頑張れ」とか、「間違うのはお前らだ」とか、「よく寝ろ」などといろい ろなことを言われて、現実にはもうギリギリのところでやっているというのは、部会長 もよくご存じだと思います。その辺りは取組みというか、その濃淡や受とめ方にすごく 差があって、私は前から気になっているのです。その辺りのところを、是非とも明確に してほしいと思います。 ○矢崎部会長  このお話は議題2のところで、また厳しく要望したいと思います。 ○三宅委員  医療用具に関しては、いま厚生労働省の研究班で、医療用具の安全性についての研究 会が立ち上がっております。現在は「医療用具」と言ってもたくさんあります。これは 単年度の研究ですので、一応ベッドを取り上げて、ベッドの安全性について、メーカー も含めて検討会を始めております。今年中にどこまでできるかは分かりませんが、ベッ ドに関しては少なくとも今年中には、一応の報告ができるような結果を出したいと思っ ております。一応そういう取組みが始まっているということだけは、お話しておきま す。 ○矢崎部会長  それが具体的にメーカーさんの製品にどう反映するかは、我々が厳しく見守っていか なければいけないのではないかと思います。  3番目の教育研修ですが、たまたま私が国家試験の出題基準のまとめ役でした。今年 はもう終わりましたが、今年の国家試験から大幅に改定されました。その中では医師と 患者の関係、あるいは医療と社会との関連の部分が、項目の中に明確に入っておりま す。医療安全に関する項目は、現在の出題基準の中でも十分組み込めますので、医事課 とよく連絡をして、来年15年度の国家試験の中でも是非組み込んでいただければ、医療 安全に対する意識や認識が、また随分深くなると思うのです。ですから是非、医療安全 という項目で入るようにしていただければ。私からも医事課にお話申し上げます。  4番目の環境整備については、また後で予算の関係などのお話があるのでしょうか。 ○医療安全推進室長  予算のほうは特にないのですが、もう少しご説明させていただきますと、まず最初の 「ヒヤリ・ハット事例収集の全国化、分析体制の強化」については、当部会の下に設け た「ヒヤリ・ハット事例検討部会」において、この方針に基づいて、具体的にどういう 方法でするかを検討していただいております。これについては後ほど議題2で、ご説明 を差し上げたいと思います。  2番目の「事故事例情報の取扱い」に関する部分は、当部会からも何人かの委員にご 苦労いただいている、「医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会」におい て、年度内に結論を取りまとめるべく、現在検討をしていただいております。趣旨は、 医療事故情報がどのように活用できるかということと、その際の報告が、一方に不利益 を被る可能性があるというご指摘もありますので、そういうことも含めて、法的な側面 からも検討を進めていただいているところです。  大きな○の2、「都道府県等に患者の相談等に対応できる体制を整備」については、 資料1−3をご覧ください。「患者の苦情や相談に対応するための体制整備」というこ とで、報告書でご指摘いただいた2つの目的を達成するために、左のほうに載っている 公的な相談体制を設ける予定です。現在は患者が医療機関に相談をするということで、 すでにいくつかの病院ではなされていると聞いております。場合によっては、地域医師 会とも相談しますが、すでに地域医師会でも活発に相談活動が行われております。  こういう所と連携をして対応できるような体制を、平成15年度に構築できるように、 現在予算を要求しているところです。これは予算の話ですから、これから取りまとめま すが、医政局としては最も重要な施策の1つとして、重点的に予算の要求をしていると ころです。内容は各都道府県ごとに中央に1カ所、または二次医療圏ごとに1カ所とい う重層的な相談体制を行い、ここで患者からの相談に対応し、その情報を医療機関に仲 介する等で、患者と医療機関の信頼関係の構築、問題点の改善・解決を図れるように助 力していくようなイメージで、いま検討しているところです。  なお、最後の「医療安全に必要な研究の計画的推進」については、当部会の運営とも 関係してくると思いますので、本日の最後のところで、少し詳しくご説明したいと思い ます。まだまだ研究の必要な事項が多ございますので、検討をして情報を蓄積し、さら にそれを発信していくところまでしていきたいと思っております。 ○矢崎部会長  情報を収集して分析するというのも、大変重要なプロセスですが、医療現場で具体的 にどう対応するかということに関しても、先ほどお話になったような概算要求を、是非 ご努力いただきたいと思います。確かに今、いろいろな方にお話をお聞きしますと、患 者と医療側との一種のコミュニケーションが、まだまだ十分にいっていません。セカン ドオピニオンというのも、なかなか得にくいところがあります。ですから医療施設など に、患者からの質問に答えやすいような部門や窓口を是非つくっていただき、それをサ ポートするような仕組みを、厚生労働省も是非。ただ命令するだけではなく、サポート するような具体的な対応をしていただきたい。  私は家庭では医師ではありませんので、家庭では健康相談もしていません。子供のこ とで家内が病院へ行って、「実は担当の先生がこういうので、意見が聞きたいのだけれ ど」と言うのです。「なんでそれを担当医師に聞かないの」と言いましたら、「いや、 なかなか聞きづらい」と言うのです。私の家族でさえ聞きづらいのですから、一般の方 は大変聞きづらいでしょう。また都会はともかく、地方になりますと、ドクターの数も それほど多くありません。言われるままに治療をしていて、いろいろな所を紹介されな がら、少しずつ状態が悪くなるということもありますから、やはり途中でセカンドオピ ニオンを聞きたいという要望が極めて強いわけです。  日本では、まだまだ患者さんからそれを言い出せる状況にはありませんので、病院の 中でそれを十分サポートしてあげるような窓口や部門を、省令で設けようというのも必 要ですが、やはりそれをサポートしてあげるような予算的な手当てを作っていただく と、大変いいのではないでしょうか。私のほうからも是非お願いしたいと思います。第 1の議題は、そういうところでよろしいでしょうか。  では次の議題、「医療安全対策ネットワーク整備事業の全事例集計結果等について 」、よろしくお願いしたいと思います。昨年10月に、このネットワーク整備事業が開 始され、本部会においても2回、その集計の報告を受けました。その後、その分析につ いては、ヒューマンエラー関係の分析と、医薬品・医療用具等の関係の分析は、別々で はなく、一体として解析することが適当であろうということになりました。また収集件 数が著しく増加しておりますので、それに対応するために分析体制の強化を図る必要が あるのではないかということで、本部会および医薬品・医療用具等対策部会の下に、 「ヒヤリ・ハット事例検討作業部会」を、本年4月に新たに立ち上げていただきまし た。そして本部会の委員である橋本委員に、作業部会の部会長をお願いして、今日まで 収集されたデータの分析を行っていただきました。今回は事業が始まってから、ちょう ど1年になりますので、これまでのデータの全体を見通して、橋本委員から簡単に説明 していただき、質疑応答に移りたいと思います。 ○橋本委員  資料2−1から資料2−5までありますが、ヒヤリ・ハット事例の分析の検討部会で させていただいたものについて、お話申し上げたいと思います。まず私から概要をお話 して、それぞれ担当のチームの長をされている武藤委員と増子委員がおられますので、 両委員に詳細を説明していただくことにしたいと思います。  資料2−1は、ヒヤリ・ハット事例の全事例の集計結果です。「全般コード化情報」 として報告する情報は、平成13年8月1日から平成14年6月30日までの11カ月、ほぼ1 年ぐらいを経過しているということで、その間に発生したヒヤリ・ハット事例に基づく ものです。  もう1つの大きな項目ですが、「重要事例情報」「医薬品・医療用具・諸物品等情 報」として報告いたします情報は、当該のヒヤリ・ハット事例が発生した時期にかかわ らず、報告可能とするという集計の仕方をいたしました。1年間の活動を報告するとい う意味合いとお考えいただいて、結構だと思います。報告期間としては、そのようなこ とです。  参加登録施設および報告施設ですが、8月27日現在、登録している施設が265施設、 報告施設数が176施設となっております。報告数は、全般コード化情報が2万2,734事 例、重要事例情報が2,464事例、医薬品・医療用具・諸物品等情報が768例でした。これ らについて分析したものを、お2人の委員からお話いただきたいと思います。 ○武藤委員  では資料2−2、「全般コード化情報の分析」をご覧ください。2万2,734件という のは1年弱、11カ月分ということです。この分析方法に関しては、2つの方法で行いま した。1つが単純集計、もう1つがクロス集計です。分析項目について、単純集計はこ こにあるような項目で行っております。クロス集計については、発生場面×発生内容、 あるいは発生内容×影響度ということで、この2項目について分析をしております。  まず単純集計を見ていただきますと、グラフを見ていただいたほうが分かりやすいの で、6頁を見てください。分析項目について、ずっと見ていきたいと思います。まずは 「発生月」です。このグラフの見方は、ちょうど真ん中の8月というのが、報告が始ま った時期です。それから今回の6月までですね。去年の8月からだんだん報告が増えて きて、今年の5、6月は、大体月間3,000件ぐらいの報告になっております。「発生曜 日」は下段のほうにありますように、やはりウィークデーが多いのでしょうか。ただし 祝祭日も、かなりの発生が見られております。7頁の「発生時間帯」は、8時から12時 という日勤帯の時間帯にピークを持っております。  発生時間帯については、少し詳しい分析をしてみました。これは2万何千件を全部一 緒にしてしまったものですから、その内容に応じて分けてみました。その結果として13 頁を見ていただきますと、ヒヤリ・ハットが多いのは処方・与薬、ドレーン・チュー ブ、転倒・転落ですが、それごとに見てみました。13頁の上段が「処方・与薬の発生時 間帯」です。先ほどの全体のアグリゲーションから比べますと、二峰性のピークが見ら れるのではないでしょうか。その下の「輸血」に関しても、日勤帯にもピークがありま すが、やはりちょっと二峰性の傾向があります。  14頁は、「発生時間帯(医療機器の使用・管理)」です。これもやはり二峰性です ね。その下のドレーン・チューブになりますと、あまりピークが見られず、のべつ幕な しという感じでしょうか。  15頁の「療養上の世話」というのは、転倒・転落が多いのですが、これもやはりピー クが見られております。おそらく内容によって、医療従事者と患者とのインターフェー スで起こる問題と、患者と環境のインターフェースで起こる問題と、何かパターンが違 うのではないでしょうか。ですから、それぞれのパターンの違いを認識して、リスクア セスメントをすることが必要ではないかと考えられます。  また元に戻って7頁です。「発生場所」は、圧倒的に病室やナースステーションが多 いですね。ただ、これを注意して見てみますと、ICU、CCU、NICUというのが 結構あるのです。例えばNICUなどは病床数が少ないのですが、319件もあったので す。これをもうちょっと注目したいと思っております。  次が8頁です。「患者の性別」は、男性がやや多い傾向にあります。8頁の下段の 「患者の年齢」ですが、0〜10歳と50〜80歳、ここも二峰性のピークです。やはり子供 とお年寄りという傾向が見られます。ですから子供というのは、1つのハイリスクでは ないでしょうか。  9頁の上段が、「患者の心身状態」です。患者の心身や診療状態に障害なしというの が多いのですが、その次が床上安静、歩行障害、下肢障害といった障害の患者となって おります。下段は、「ヒヤリ・ハットの発見者」です。当事者本人が多いのですが、同 職種者、ほかの人から指摘されて発見された事例も、かなりあります。  10頁は、「当事者の職種」です。これもやはり看護師が圧倒的でした。次に医師、薬 剤師です。看護師が圧倒的なことの1つには、いろいろな診療行為の最終実施者である ということもありますが、ヒヤリ・ハットに対する意識レベルが高いということもある でしょう。ただ医師の報告もかなり増えております。「当事者の職種経験年数」はご覧 のように、やはり0年、1年が多いですね。ただし経験年数に従って減衰していくとい うカーブを描いております。次の頁が、「当事者の部署配属年数」です。やはり部署配 属し立ての人に多いのですが、減衰しております。  ただ職種経験年数、部署配属年数共に減衰してはおりますが、医療機械に関しては、 この減衰カーブがちょっと違っておりましたので、それを見てみます。16頁です。内容 によって分析を分けてみました。医療機械に関しては、下のほうを見てみますと、部署 配属年数に従って減衰してはいますが、上段の職種経験年数に関しては、あまり減衰が 見られないのです。つまり経験年数をいくら積んでも、医療機械については習熟が見ら れないというか。例えば処方・与薬に関しては、両方のパターンで減衰カーブが一致し ているのですが、医療機械に関しては、職種経験年数を積んでもあまり減衰しないので す。ですから、これは繰り返し教育が必要ではないかということです。特に語られると すれば、人工呼吸器といった問題だと思います。  また元に戻って、11頁が「発生場面」です。処方・与薬、ドレーン・チューブ、療養 上の世話(転倒・転落)というのが、三大ヒヤリ・ハットです。この傾向はずっと変わ っていません。そのほかに検査、調剤、医療機械といったものが続いております。  12頁の「発生要因」に関しては、圧倒的に確認というのが出てきております。次が勤 務状況、心理的条件です。そのほかに観察、判断というのが続いております。その下の 「重要度」については、影響度によって分類してみました。ヒヤリ・ハットには2つの タイプがあります。1つは、間違えたけれど、患者に有害事象は発生していないという 状況です。もう1つは、事前に回避したという状況です。この重要度を見てみますと、 間違いが実施されたけれど、特に有害事象は発生していないというのが6割ですが、そ のほかに実施前回避という事例があります。その中でも患者への影響度が大であると か、中であるというのが出てきます。この内容はここには書いてありませんが、輸血と 医療機械に関するものが非常に多いですね。特に実施前発見で患者への影響が大きい、 あるいは中等度というものの中に、やはり輸血と医療機械が出てきております。  次は15頁まで飛んでください。先ほどNICUが300何件あって、病床数のわりに多 かったと申し上げましたが、その内容は、やはり処方・与薬、ドレーン・チューブ、給 食・栄養というのが三大ヒヤリ・ハットでした。  次にクロス分析について、17頁にいくつか挙げてみました。「発生場面×内容(処方 ・与薬)」に関しては、下段の表を見ていただきますと、やはり多いのが無投薬です。 その次がいくつかありますが、やはり患者間違いも相変わらず頻発しております。上段 の棒グラフで見てみますと、これには判例が出ていませんが、いちばんピークの高いの が、内服薬の無投薬というのが断トツですね。やはり薬を投与していないという、薬剤 の管理の問題でしょう。  18頁は、医療機械の発生場面、内容についてのクロス分析です。下の表で見てみます と、やはり目立つのが人工呼吸器の組立て間違い、条件設定間違い、設定忘れ、電源入 れ忘れといったことが多くなっております。これは上段のグラフでもうかがえます。あ とは輸液ポンプの条件間違い、設定間違い、電源入れ忘れというのが、ピークが出てお ります。  19頁は、発生場面と内容のクロスでドレーン・チューブです。下で見てみますと、こ れで目立つのは、自己抜去が極めて多いのです。それから自然抜去、接続外れです。中 には中心静脈内の自己抜去とか、接続外れなど、かなり重要な影響を持つものも多く見 られます。また気管チューブの自己抜去なども目立ちます。  元に戻って4頁の報告を見てください。4頁の5の「考察」ですが、全体として、業 務が集中すると考えられる時間帯に発生した事例が多いのですが、内容によっては変動 の少ない事例もあります。先ほど言いましたように、発生パターンや時間パターンに よって違うことが分かりました。それぞれのリスクアセスメントを行うなどの異なった 対応が必要でしょう。  病室で発生している事例が圧倒的に多いのですが、実際にはさまざまな医療行為の最 終実施場所が病室であることから、病室において発見されている事例が多いことに起因 しているのではないかと推測しました。また今回、0〜10歳の患者に関する事例が比較 的多く、1,686件でした。さらにNICUにおいて発生した事例が319件を占めているこ とが分かりました。これも患者が小児であるということが、リスクファクターであるの ではないでしょうか。  医療機械に関しては、職種経験を積んでいても部署配属が短い場合には、インシデン トが発生していることから、やはり継続的な教育が必要ではないでしょうか。特にME などによる教育が、非常に効果があるのではないかと思います。人工呼吸器に関しては 組立て間違い、点検管理ミスが多いことから、MEの積極的な活用も考慮すべきだろう と。ドレーン・チューブの類いの使用・管理では、自己抜去が圧倒的に多かったわけで す。IVHラインもそうですが、患者に重大な結果をもたらす可能性のある気管チュー ブとか、動脈ラインといった事例も報告されております。こうしたチューブ類に関して の使用の適応を十分に検討することが必要ではないでしょうか。  無投薬や投与量間違いなどについては、単位量の導入を進めるべきでしょうか。また 相変わらず患者取違えなどのインシデント報告も多く見られます。これも患者同定につ いてのシステム的な対応が必要ではないでしょうか。このようなことを考察しました。 ○増子参考人  重要事例情報、全事例の分析について報告します。資料2−3をご覧ください。最終 的に私どもが分析した形としては、第1回目を4頁以降に載せております。第2回目の 結果に関しては15頁から載せてあります。第3回のまとめに関しては27頁から、第4回 目は55頁から、最終的にこういう形で公開しているというものを載せておりますので、 ご参照ください。重要事例情報の収集に関しては、全体コード化事例の中で取り上げら れた記述情報を選択してまとめておりますが、全般コード化事例とタイアップした形で は分析できず、記述情報についてピックアップしたものに関して分析しております。し たがって連動されていない独自の集計になりますので、その辺はご了解いただきたいと 思います。  私どもがこの全般コード化事例の中から選び出す基準は、具体的な内容や発生要因、 改善策が記載されていて、事例が理解可能なもの、発生頻度は低いけれど、致死的な事 故に繋がる事例、他施設でも活用できる有効な改善策が提示されている事例、私ども分 析班が専門家として有効な改善策、あるいは参考になる情報が提示できるような事例を 挙げております。また薬剤や機器に関する事例も、人がモノを取り扱う際のヒューマン エラーを防止するという観点から、私どもの有効な知見やコメントを付けることができ るのではないかということで含んでおります。情報の取扱いに関しては、個人を特定し 得る情報、収集した情報に関する医療機関名、医療安全にかかわる目的以外には使用し ません。また、これの機密性に関しては、必ず確保するということで取り扱っておりま す。  資料2−3をご覧ください。事例の全体ですが、第1回から第4回までで1,077件で す。橋本先生から、全体で2,600余りの重要事例情報の件数となっておりますが、重複 や記載が不十分で理解できないものに関しては抜いておりますので、第4回までで1,077 件です。登録施設は変わりませんが、報告施設数が減ってきていることに関しては、ど ういうことなのか私どもも計りかねております。  報告の中身については、下の表をご覧ください。第2回目から手技・処置区分に分け て見ていますが、与薬、チューブ・カテーテル類、転倒・転落に関しては、三大インシ デントということで、第4回目では全体の6割を占めております。この三大事例のほか に、私ども医療従事者間の連絡や伝達ミスによって起こる事例もあります。要するにそ の要因が、与薬やチューブ・カテーテル類ではなくて、医療従事者間の連絡や伝達ミス による事例が多くなってきているということです。  2頁目で、三大事例に関してご報告いたしますと、与薬に関しては、自己管理下で服 用を忘れることが多くなってきております。また薬の種類や量の間違い、患者の間違い については、伝達方法などの問題もありますから、記憶に頼らない手順などをつくって いくことが必要かと思います。薬剤の取扱いや三方活栓の操作、輸液ポンプ等の操作に ついても、そのモノの仕様の操作性などを検討していく必要があるかと思います。 チューブ・カテーテルに関しては、どちらかと言いますと自己抜去、転倒・転落に関し ては、本人の自発的行動によって起こってしまうものがあります。これらが2と違うの は、患者の要因と医療従事者の要因というように分けられると思います。  その他の報告事例としては、新人看護師やローテーション間もない研修医によるイン シデントの事例が多くなってきております。つまり職員の実践能力の不十分な人たちに よって起こされていることが、かなりあるということです。また情報や記録に起因する インシデントの中で、パソコンへの入力自体が問題になってきている事例もあります。 機器の過剰な過信というのは、考えものであると言えると思います。入力内容のチェッ ク機能や確認方法というものを、やはりシステム化していく必要があろうかと思いま す。3頁の検査前投薬の未実施、検体の紛失、食止めの未実施といったものは、チーム 医療による相互チェックが働かなかったところから、チーム医療のチェック体制の検討 が必要かと思います。中にはチーム医療による相互チェックが有効に働いて、防げたも のもあるということです。  全体的なまとめとしては、1年間を4区に分けて収集いたしましたが、1年間を通し て見ますと、三大事例に関してはほとんど変わっておりません。しかし、この事業が少 しは根付いてきているのかなと考えられるのは、有効な改善策、あるいは記録の方法が 良くなってきたということが見受けられますので、インシデント事例の分析、改善策の 質が向上しつつあると言えると思います。事例収集の専門的な立場から私どもは、記入 の方法に対して、どのように記入したらよろしいかとか、改善策に関してはこういう方 法がありますといったことを、事例を取り上げて公開しているわけですが、分析してい く私どもの力もだんだん付いてきて、いろいろな情報を載せることができるように、あ るいは改善策が提示できるようになってきていると思います。モノの扱いに関しては、 人側とモノ側とのインターフェイスの要因が複雑に絡み合っている状況が多いと思いま すので、モノの使用がその操作や人の認知や心理を含めた、多面的な観点から検討して いく必要があるかと思います。私どもがやっていることに関しても、私どもの力だけで はなく、施設全体で取り組んでいくことが必要かと思います。  今後の課題としては、報告する側も私どもの分析結果も、随分いろいろなものを出せ るようになってきてはいるのですが、まだまだ情報が不足しておりますので、記述がき ちんと出来るようなフォーマットを検討して、それに従って書いていただくことが必要 で、それが課題だと思っています。また要因で確認不足ということがありますが、その 確認がどうしてされなかったのかという背景要因の取り方も、きちんとしていかなけれ ばならないのではないかと思います。  圧倒的に看護師がインシデントを起こしているわけですが、これに関しては、最終執 行者が看護師なのです。いろいろな指示が医師から出されて、看護師に渡り、それをま た看護師がコメディカルの人たちに伝達し、コメディカルのほうから看護師のほうに 戻って、最終的な執行者として看護師が行うことから、非常にエラーを発見してもらい にくいということもあるかと思います。ですから真のチーム医療ということを考えます と、患者を中心にして、医師、看護師、コメディカルの人たちがどのようにかかわって いくのかという、システムの構築も必要かと考えております。  分析の結果、確認不足ということが出てきます。確認不足ですから、確認の徹底をし ていこうという個人的な要因に関して、改善策を提示されるものが圧倒的に多いのです が、個人の努力や責任に帰するような表面的なものだけでなく、いかに個を助けていく システムを構築していくかです。システムで防いでいくという考え方を、もっともっと 徹底していかなければならないのではないかと考えております。  報告者の報告の仕方や改善策についても、私どもから「かなり良い改善策ですね」と いうコメントが付けられるような形になってきておりますし、コメントをする私どもの 専門家たちの力の成長といったものを考えますと、この分析の手法が非常に大切なもの であるということも認識しております。 ○橋本委員  それでは資料2−4、「医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析について」は、事務 局からですね。 ○宮下専門官  資料2−4の1頁目で、第1回から第4回までの医薬品関連情報、医療用具関連情 報、諸物品関連情報の各事例数を報告させていただいております。第1回目は、医薬品 関連情報が88事例、医療用具関連情報が13事例、諸物品関連情報が3事例でした。これ らを第4回まで合計しますと、医薬品関連情報が602事例、医療用具関連情報が130事 例、諸物品関連情報が31例、計763事例のご報告をいただいております。  まず1頁目ですが、最初の医薬品関連情報と医療用具関連情報の表は、各医療機関か ら報告された要因別に集計した表です。2頁目も各医療機関から報告された要因別に分 類・集計した諸物品関連情報です。  また、ヒヤリ・ハット事例作業部会の下に作業班を設け、医薬品・医療用具等の各情 報の要因について、もう一度再検討していただいた結果が、3頁目の表です。医薬品関 連情報で申しますと、ヒューマンエラーがいちばん多く出ておりますが、その次に規格 違いというのが、合計で108事例ほど報告されております。これは、ある錠剤を10mgと 20mgというように、含量の違うものを取り違えた事例です。  医療用具関連情報についても、管理が不十分だというものが42事例ほどで、1番多く 報告されております。これらについては使用前、使用後、あるいは定期点検等の点検に よって、防げる事例も報告されていると考えています。  全般的に医薬品あるいは医療用具の情報については、検討班の先生方からも若干その 要因あるいはその事例の細かい分析をするのに情報が不足している、もう少し共通して いただかないと、なかなか検討できないというようなご指摘を受けています。今後事例 の収集においては医薬品・医療用具の名称等をはっきり記載していただく、あるいは内 容等について、具体的にできるだけ詳しく記載していただくように努力をしていきたい と思っています。以上です。 ○医療安全推進室長  資料2−5、医療安全対策ネットワークについてですが、先ほどのヒヤリ・ハット事 例の今後の運用に関する検討課題です。これについては総合対策において3点の改善点 が指摘されています。1頁の1の1)から3)までありますが、1つは定量的な分析、 これの定点報告体制を含めた検討、2番目として、事例分析についてはフォーマットの 変更、また提出対象医療機関の拡大。さらに効率的に情報を収集するために、さまざま な運用上の改善ということで指摘がありまして、これをヒヤリ・ハット部会において検 討していただきましたのが、この2以下です。  定点的な意向については、1つは精度を向上するためということです。これの検討の 中間的な取りまとめについて3頁で説明いたします。まず、定点方式の移行について は、委員会の中では段階的に進めるべきではないか。さらに病床規模、設置主体等の情 報も追加情報が必要ではないか。またいまある情報をもっと分析する工夫があるのでは ないか、というご指摘がありました。これを踏まえて現時点では、定点となる医療機関 については、現在参加している医療機関には引き続きお願いし、さらに協力医療機関を 募るということで考えています。  また、集める情報をもっと増やす、もしくは見直すということについては、とりあえ ず研究班でいまある情報からどのようなことが言えるか、これをもっと検討をして、そ れを踏まえてどのような追加情報が必要かを洗い直したほうが、根本的な解決が図れる のではないかということで、分析をしていただいているところです。  2番目の記述情報、これは重要事例情報と医薬品・医療用具の2つですが、これにつ いては当部会でもご意見がありましたが、2つを1つにするということで、5頁から フォーマットの案を載せていますが統一を図るということで考えています。さらにその 中で、どうしても必須となる情報については、コードで選択するようなフォーマット上 の工夫が必要ではないかということで、フォーマットの見直しを図っています。  対象医療機関の拡大については、関係団体とも協力して、対象医療機関を拡大する。 また類似の収集システムを持っている所については、そことの調整を図るということで 検討をしています。また、具体的に集めていく上では、全てを対象とするのに加えて、 特に重要な事例、これは既に人工心肺については、集中的に提供していただくことでお 願いしていますが、そういう課題を設定しての取組みを検討しています。  それらを含めてフォーマットの改善点については、資料2−5参考2として、2頁目 から載せていますが、次頁に図示してあります。今後の体制については特に「収集の体 制」をご覧ください。いま対象医療機関が特定機能病院と国立病院・療養所等ですが、 これを全医療機関に拡大する。そのうち全般コード化情報というのは、いまお願いして いる所にさらに協力していただける所を募りまして、これらを定点として恒常的にデー タを提供していただくという体制で、できれば来年度からこういう体制に移れるよう に、現在検討をしているところです。  フォーマットについては5頁目から5、6、7に載っています。医薬品とそのほかを 分けていたものを1つにして、この中で基本的項目と医薬品等の項目という、2つのカ テゴリーがありますが、基本的項目には選択する部分と書いていただく部分、ここにつ いてはどういうことを書いていただきたいかを詳しく書くことが提出といいますか収 集、また、ひいては医療機関における分析にも、示唆的といいますか助言的になると思 いますが、そういう部分を膨らませた形で考えています。  6頁目からは医薬品等の追加情報です。医薬品・医療用具等が関係する場合には、さ らにその名称等がどうしても必要なので、この部分について関係すると考えられる場合 には、追加して書いていただく形で考えております。以上です。 ○橋本委員  ネットワーク整備事業に関連する報告については以上です。 ○矢崎部会長  1年間にわたる大変な作業を進めていただきまして、ありがとうございました。これ はやはり医療安全対策のEBMと申しますか、基礎となる資料を収集して分析していた だいて、さらにその資料を基に今後の方策についても、一応立てていただきました。委 員の皆様のご意見をどうぞ。 ○松月委員  先ほどの結果から、「確認不足」と記述して報告するのが、やはり多いのだと思いま す。でも、確認不足で終わってしまっては、結局、何も解決していかない。先ほど分析 チームの方々が、自分たちも回数を重ねて比較できるようになったと、言っておられま したが、現場でもたぶん同じなのだと思うのです。確認不足としかまだ分析ができない ぐらいでやっているのだと思うのです。  例えばひとつの事例を申し上げますと、透析の領域なのですが、透析液は酸性とアル カリ性のA液、B液を直前に混合して使用する方法をとっているのですが、例えばうち の病院ですと腹膜透析の患者はA液とB液、酸とアルカリの強い液をパッケージされた ものを自宅に持っていって、セットして直前にそれを混合するのです。ところがその混 合するのを忘れてというか、それで強いアルカリだけだとか、酸だけでやってしまって いるというのが結構あるのです。そういう報告が今回挙がっていたのかどうかは分から ないのですが、それも患者に言われないと私たちは分からない、ということがありま す。  これは他の病院らしいのですが、そういうパッケージされたものを使っていて、確実 にそれがミックスされているかどうかの確認の方法が非常に難しくて、気泡みたいのが A液、B液のところにそれぞれ入っているらしいのです。それがミックスされると、そ の気泡が2個ではなくてまとまったことで確認をするという、すごく危ないやり方で やっているというのがあるのです。  例えばもしそういうようなことが報告書として上がってきたときに、ただ単に統計的 資料として、EBMに使うのもひとつの方法だと思うのですが、対策として活かしてい くためには、その中の医療機関側から、例えばこういうことについて自分たちはこうい うふうに思うのだけれども、積極的に自分の病院に係わってくれて、これをなんとか解 決してもらえないかとか。例えば後ろ向きに報告するのではなくて、前向きに、そうい うシステムがこの中に出てくると、集まる事例も無難な事例ではなくて、そういうもの も集まってくるのではないかと思うわけです。  私も現場で考えてみたのですが、現状は酸とアルカリがA液とB液になって、ここか ら患者のほうにいくようになっているのです。でもこれはミックスをするのを忘れてし まうと、非常に障害があるわけです。ですから、こういうふうに分けて、ここに隔壁も 作ってやれば安全になるのではないか、ということを現場では考えるわけです。でも、 そのように思っても、それをどこへ言うのかなということで、現場にはそれなりの悩み もアイディアもあるわけです。そういうことがうまくネットワーク事業の中に乗ってい くと、もう少し解決に繋がる方法もあるのではないかということをすごく思うのです。 それをうまく活かす方法というのは、何かないものなのかと思います。 ○矢崎部会長  まったくそのとおりで、例えばそのアイディアが特許を申請して、1,000万円とか 2,000万円ぐらいになるような世の中になると、大変いいと思います。 ○星委員  いまのことに関連するのですが、資料2−4を見ていると非常に冷たい感じがしま す。見れば分かるのですが、容器が似ていたとか、こうだったというものを、ほぼその 何割かをヒューマンエラーですと言い切っているわけです。それは、どういう専門家が どういうふうにやったかは押して知るべしですが、ヒューマンエラーであったといった としても、いまのような話、つまり確かに確認の不足だと、しかし有効な防止策がある はずだというものが、これはヒューマンエラーです、現場の努力が足りないのですと 言って、埋もれていくということが起こっているし、このまま、この状況を続けていっ ても、きっと医薬局は冷めたい態度をずうっと続けるだろうから、私は改善しないだろ うと思います。  ですから、いま申し上げたような話はここで明確に方角を決めて、そしてヒューマン エラーだというものの中にも、現実には物が関与している場合がある。大体、医療機関 の医療人というのは、自分に責任を求めるのが普通ですから、他人のせいにしたり、物 のせいにするなと育てられているので、よほどのことがなければ「これは物が悪い」と は言わないわけです。ですから、そういうものの中にも、実は根掘り葉掘り聞いてみれ ば、1つの要因として物が関与している可能性がある。そのことも含めてやはり何らか の方向に導き出してほしいというのが我々の願いですが、少なくとも今回の医薬局の報 告を見ると、どういう改善をとっていたのか、あるいはどういう状況があったのかを言 わずに、データが不足していましたと、1年間データが不足したのをそのまま集めてい ましたということですから、私とすれば、これは何とか改善をする、今回仕切り直しを するというのであれば、その辺りを明確にしてほしいと思います。 ○矢崎部会長  確かに、私も医療安全推進室長の非常な熱心さに比べると、今日はいらっしゃいませ んが医薬局の室長さんの熱意はなかなか伝わってこない。いま言われたように、資料2 −4ですが、片一方ではもう2万件以上の報告があるのに、これはわずか730件しかな い。もしかすると、ほとんどの部分はヒューマンエラーに入ってしまって、ここの中に 入ってこない。その中でもほとんどはヒューマンエラーだということを言われています ので、確かに星委員の言われるように、やはりここの部分が強く反映するように、今後 努力をしていかなくてはいけない。我々はヒューマンエラーの部会ですが、星委員はそ ちらのほうにも入っておられるのでしょうから。 ○土屋委員  私は、実は医薬品のほうのヒヤリ・ハットの検討をしているのですが、1つはここで ヒューマンエラーというのは、そのヒューマンエラーと分類して終わりという話ではな いのです。少なくとも明らかにヒューマンエラーとしか言いようがないものもあるわけ です。ただ、これが複数現れてきたとか、そういうマスの状況で起きてくれば、やはり これはモノとしての対策が必要なのではないかということで、これはこれで捨てるとい う話ではなくて、むしろなりゆきを注目しているというか、症例数が集まるのを待って いる、それが良い悪いは別として。ただ、その中で重大なものについては、考えていか なければいけないだろうということはあります。  ヒューマンエラーとか、例えば、なぜこの組み替えをしたのかというのは、まさに同 じ報告が、あるものは規格違い、あるものは名称類似、例えば10mmと20mmが違うもの を、名称類似という格好で報告をされる、これはやはりまずいだろう。それはきちんと 分けていかないといけないのではないかということで、やったということはあります。  医薬品についてはある程度、数が必要だということから言いますと、今回新しいもの は必要なところを出せ、しかも前回までになかったところで販売会社を書くようになっ ているのは、外観の類似というのは実は同じ製造会社でも、販売会社が違うと外観が違 うものがあるのです。ですから、今までのデータでは販売会社がなかったので、そこも 細かく取れるようにはしようということです。  やはりなんといっても数が少ないのは、医療機関を対象とした調査ではある程度限界 があります。院外処方箋ということからいうと、特に内服薬、外用薬ということで言え ば、これは薬局を対象にしたら急に例数が増えると思われるのです。そういったような 情報収集の仕組み全体についても、もう少し考えないと、医薬品そのものについての データは、ここで上がってくるのはもともとの仕組みとして、おそらく一部しか出てこ ないのではないかなという気がいたします。 ○三宅委員  この前のこの委員会でも同じ議論があったのですが、ヒューマンエラーという括り方 というのは、私は非常に矛盾を感じるのです。なんでもここに入ってしまうわけで、 ヒューマンエラーというのは私は誘発されるような背景、そういう要素が必ずあると思 うのです。ですから何がヒューマンエラーを呼び起こしたか、その辺を検討していただ かないと、あまり細かい分析に、解決に繋がらないのではないかという気がするので す。  先ほど松月委員が言われたような、いろいろな改善のアイディアというのはたくさん あって、薬品の名前の問題とか、剤形の問題とかいうことについても、いろいろ提案が 今まではあっても、医薬局の対応が悪いから、これは諦めて出てこないのではないかと いう気も私はするのです。今までたくさんありましたからね。いろいろ言っても何の反 応もしないから、もうあまり出てこないのではないかという気がします。  例えば、医療安全対策会議の非常に早い段階で、私が1度お話したと思いますが、1 ショットで亡くなるようなアンプルというのは、救急学会で調べて10本ぐらいしかない と言われているのです。それについては、私は前に剤形を三角形にしてくれと言ったの ですが、見ても触っても、もうこれは危険というふうにしてくれれば、それだけでもの すごくリスクは減ると思うのです。そういう単純なことがどうしてできないのか、私は それが不思議でしようがないのです。  医療安全対策室が始まった冒頭の時に、私の記憶では、メーカーにそういう改善のた めのコストを厚生省が負担してでも、安全な対策をとるというお話を、私は聞いた記憶 があるのですが、一向それがなされる気配がないのです。そういうことを一つひとつ積 み重ねていくことが大事だと思うのです。 ○山浦委員  やはりヒューマンエラーの件ですが、143例が計上されていますが、これは報告者が ヒューマンエラーとしてきたのでしょうか。あるいは収集をした方、分析をする方が、 これはヒューマンエラーだよと言って、それに入れたのでしょうか。3頁の上の表で す。 ○土屋委員  評価した数です。これは、実はフローチャートが作ってありまして、なるべく医薬品 については、名称類似だとか、外観類似だとか、一生懸命に要素のほうに持っていくと いうフローチャートにはしてあるのです。その中でそれに当てはまらない、20包にする のを21包にしていたとかいう数違いのものが報告にはあるのです。数量違いというもの であれば、1包だけ抜けていたとかいう細かいものは、ヒューマンエラーとしか言いよ うがない。ただし、これは全体を見ていこうということでして。ヒューマンエラーの中 のヒューマンエラーで、もともとヒューマンエラーなのにそれをヒューマンエラーに分 類することがあるかというのは、確かにそのとおりなのですが、ただ、一方でそうとし か言いようがないものも存在するものですから。 ○山浦委員  このリストの中で下に数量違いとか、略号、同一記号とか、たくさん書いてあります が、これに当てはまらないものをヒューマンエラーとしたのですか。 ○土屋委員  基本的にはまず見た時に、それは名称が原因と思われる要素が少しでも含まれている かということを見るのです。Aという薬に対してBを出したということですが、それを まず名前として似ている、ところが頭1文字が同じだったからという報告があるので す。通常それはそうではなくて勘違いとかエラーと言いますか、もう少し言葉を選ぶべ きだったと思いますが、少なくとも物に直接要因があるとはあまり思えないものがあ る。まずそれをひとつ排除します。次に外観、今度は名前がまったく違っていても外観 が類似していた場合には、間違いが当然起きるので、そういうファクターがないかとい うことでもっていくという格好で、元へ戻すという形をとっているわけです。 ○星委員  その議論をするのは意味がないと思うのです。評価をするというのは何かというと、 改善策に結び付けるから評価するわけですね。ですから前広に考えるというのが当然で して、前から何度も何度も私は口が酸っぱくなるほど申し上げました。とにかくヒュー マンエラーという報告の中にも、物が原因のひとつとして入っているものがあるのだか ら、そういうものもちゃんとピックアップして分析して、それを対応策に結び付けるよ うな努力をするのだと、それを頼みます、お願いしますと言って、もう1年経ちまし た。とにかくやらせてくれ、やらせてくれと、いまはとにかくこの形でやらせてくれ と、1年この形でやりました。その結果、出てきたのはこれです。はっきり申し上げれ ば、1年前にできたはずなのですよ。その方式を変えることも、それからいま言われて いたようないくつかの改善方法を具体化することも、そのことを1年間先送りにした責 任はやはり感じてほしい。そして、必ずどういう問題点をピックアップして、どの商品 に関して、あるいはどういう製剤に関して、どのような問題点が報告されたのかという のは公表してほしいのです。そして、そのことがその製薬会社にとってどんなアクショ ンを生んだのか、放置したのか、取り組んだのか、製薬協として先ほどの三角形のアン プルに取り組んだのかどうか。それは、我々も知る権利があると思うのです。  これを我々に知らせてくれて、国も製薬業界も当てにならないというのであれば、 我々はまた気持を引きしめてやはり駄目だと、我々が根性を出さなければいけないとい うことになるのかもしれない。始まったときに三宅先生が言われたように、そういうこ とに繋げていくと言われたはずなのです。我々もそのことに一縷の望みをもっていたの ですよ。しかし、何ら一切、という感じです。取組みの中にメーカーに指導をすると書 いてありますが、どんな指導をしたのか、どれだけの内容の変更があったのか、あるい はそれにどういうメーカーが、どんな反応をしたのか教えてください。 ○榮畑課長  今のお話を聞いておりますと、先生方から大変医薬局の対応の悪さ、きついご指摘を いただいています。これは医政局、医薬局問わずオール厚生労働省として、真摯に受け 止めさせていただかなければならないだろうと思っています。ですから今日の対応につ きましては、担当の室長が欠席する件、これも大変深く深くお詫びさせていただかなけ ればならないだろうと思っています。今日頂きました厳しいご意見は、私どもが責任を 持って医薬局に伝えて、どういうふうに対応させていただいたらいいか、責任をもって 検討をさせていただこうと思っています。また、その結果はきちんとご報告させるよう にいたします。 ○矢崎部会長  いまの問題は、最初のヒューマンエラー部会ではなくて、全体会議の最初から議論に なっていて、私が考えますのは、ヒューマンエラーの部門の人たちは非常に熱心に改善 してきたし、現在までのヒヤリ・ハットの事例収集についても、相当ご熱心に医療機関 はやっています。それから医療安全運動も医療機関で非常に熱心にやっています。  繰り返しになりますが、どうも医薬品、医療機具の委員の方々もなんとなく、前向き に取り組むというよりは、現状のままで対応したいという雰囲気もありましたので、委 員の皆さまそういうような印象をお持ちだったと思います。いま、榮畑課長が言われた ように、今後やってくださるようですので、それに期待していきたいと思います。  事務局から説明いただいた資料の2−5で「今後の方針」ですが、たくさん集めて数 量化しても、もうこれ以上のことは出てこない可能性があります。ですから今後は定点 報告体制みたいなもので、医療がどんどん変わってきますから、その都度やはりヒヤ リ・ハットというのは変わっていく可能性がありますから、今後もそういう体制は整え ていかなければいけない。  2番目の事例分析的な内容というのは、いま委員の皆さまから言っていただいたよう に、これからどう対策を立てるべきかということを、先ほどの背景因子を分析する上で 役立つようなフォーマット、即ち次のステップにどうしたらいいかということを、役に 立つデータをここで集まるように、フォーマットを決めていただくということで、さら に事務局にお願いしたいと思います。  さらに焦点を絞って、その具体的な対策を明示するためには、我々が思っているよう なテーマを決めて、そこを網羅的ではなくて、集中的にどこが問題なのか。器具の問題 であれば、どこが問題なのかということを、きっちり捉えられるような、あるいはNI CUの問題についても、今まではある程度全体的にまとめましたが、さらに先ほどの背 景因子も含めて、次の対策を立てるための重点領域みたいなものを決めてやっていくと いうことを、今後の検討課題に事務局に強くお願いしていきたいと思います。  我々医療人は患者に直接接しているので、医療安全に対して非常に強く感じています が、医薬品・医療器具を含めて、メーカーは間接的にしか接していませんので、その切 実さとか熱意というのは、なかなかそこに出ていかない、現われてこないと思うので す。先ほどお話がありましたいろいろな改善のアイディアは、やはりヒヤリ・ハットだ けではなくて、将来実現したら医療安全に格段の改善が認められるようなアイディア を、先ほどの松月委員の出されたようなアイディアを皆さんから集めるような仕組みも 考えていただいて、その中からピックアップして、具体的にメーカーなりに提案してい くような仕組みも考えていただければいいかなと思います。 ○新木室長  先ほどの松月委員のご指摘、また、座長からまとめていただきました改善点、具体的 な内容を是非書いていただく必要があるかと思いまして、その点については、ヒヤリ・ ハット事例検討作業部会でもご検討をいただきました。5頁目以降に載っているフォー マットの中、特に資料2−5の(8)(9)にできるだけ書いていただけるように、こ の表書きといいますか注意事項のところを充実することで見直したいと思いますが、こ こに是非書いていただければと、そんなご意見で検討をしていただいているところで す。 ○矢崎部会長  確かにこういう項目を加えていただくのは大変有難いのですが、やはりヒヤリ・ハッ トになると、どうしてもヒューマンエラーの視点から書かれることが多いと思います。 これは医薬品・医療用具等の部会ではありませんが、そちらのほうの視点から書いてい ただくようなこと。こちらのほうが圧倒的に皆さん関心が高いので、先ほど改善をした らいいなというのは、ほとんど医薬品・医療用具等に対する希望なので、そういうもの が書かれるように、総体的な問題点、ヒューマンエラーの視点ではなくて、そちらの視 点からも考えていただければと思います。  例えば薬ではユニットドースと言いますか、単位量の薬品が救急では10品目しかない ということですが、そういうものをもっと広くやっていただければ、輸薬間違いという のは格段に少なくなると思います。あるいは販売会社ごとに同じ薬なのに、全然変わっ た剤形で販売されているとか、そういうことも収集していただければと思います。 ○榮畑課長  いま新木室長が説明しましたが、これも5頁の(8)とか(9)の注意書きという か、ここの書き方をもう少し丁寧に書かせていただいて、先生が言われましたような別 にヒューマンエラーに限らない、医薬品・医療用具等々に関しても、こうこうこういう ようなことをしたら良いのになと思われるような点、もしくは原因なども書いていただ けるように、少し幅緩く、ともかく書いていただけるような注意書きにする工夫をさせ ていただければと思います。 ○矢崎部会長  そうですね。くどいようですが、それとプラス2の「医薬品・医療用具・諸物品が要 因と考えられる事例に関する追加項目」についても、もう少し書けるように2カ所に入 れていただければ大変有難いと思います。 ○三宅委員  いろいろな提案をしたときに、それが具体的にどういうふうに改善されたか、あるい は厚生労働省としてどういう指導をして、どういう結果が生まれたかと、そこが私はい つも曖昧で、分からないという気がするのです。それを何かきちんと知らせていただき たい。 ○矢崎部会長  それはこれをまとめて、先ほど言われたようにちゃんと委員会なり検討会に報告して いただく、アナウンスしていただくことでよろしいですね。 ○榮畑課長  医薬局にはこの趣旨を強く伝えまして、然るべき対応を取るようにいたします。 ○星委員  これからも議論をするのでしょうが、全般コード化事例の分析のところで、前にも申 し上げたのですが、配置ゼロ年が多いとか、1年目がどうだというのですが、これは現 実に集めている病院の母数がどうなっているかが分からない。発生率で言うと、うちも ゼロ年の経験者がいちばん多いですから、多いのは当たり前なのです。それがどういう ふうに影響しているか分かるような、それが定点をもし決めてやっていくとすれば、中 で行われている医療がどんな医療なのか、どのぐらいの医療機器を用している病院なの か、そういったことも少し分からないと、たぶんこの先の分析は行き詰まって、増えた か減ったかみたいな議論をこれからしていくときに、何の指標も得られないような気が するので、その辺は是非知恵を絞っていただきたいと思います。 ○武藤委員  言われるとおりで、やはり大雑把な機能別とか病床別が必要だと思います。感想なの ですが、1年間これをやりまして、ヒヤリ・ハットがコード化情報で2万件、重要事例 で2千件。これは国際的に見ても非常に多いデータの収集なのです。ですからこれの活 用をしていかなければいけないと思います。これから先のことも重要ですが、折角集ま ったこれだけのデータの活用方法も考えていただきたいと思います。医療機関へのデー タなどというのは、過去にこれだけ集まった例はないのです。あと例えばNICUの問 題とか、無投薬が多いとか、こうした多数例が集まって、初めて見えてきたことも結構 あるので、それを何らかの形でフィードバックなり、あるいは活用していくような方策 を考えていったほうがいいのではないかと思うのです。  将来的には定点観測の中で、かなり精密観測といいますかテーマを決める、つまりイ ンシデント報告というのは、報告者の任意性に任せられているものですから、かなりば らつきもあります、それを報告基準をある程度決めて、ある施設では全数例集めると か、何かそのような形をとられたらいいのではないかというような気がしました。 ○楠本委員  私も同じですが、発生要因を見ていますと、勤務状況というのがありますので、この 辺是非看護の視点もよく見ていただいて、お願いしたいと思います。この間、ICUで 1件事故がありまして、その調査にまいりましたら、5床の所を3人の看護職で勤務を しているわけですが、9年、5年、1年という実務経験と言いつつ、よく聞きますと、 やはりローテーションをして1年数カ月という方でおやりで、そういった辺りで本当に 勤務状況と多忙さ、それからヒューマンエラーというのは、非常に関連があると思いま すので、この分析をよくお願いして、私どものローテーションとかを考えていく参考に させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、今日いただいたご意見を参考にして、さ らにコード化した、あるいは実現化に繋がるような、前向きの提案がそこでできるよう な方策を、今後この委員会でも考えますし、事務局も考えていただければ大変有難いと 思います。時間がなくなってしまいましたが、最後の「今後の検討の進め方」、いまご 議論をいただいた内容に沿っているかと思いますが、事務局からお願いします。 ○新木室長  資料3−1から3−3を説明いたします。ただいま座長からお話がありましたよう に、既に一部さまざまなご指摘をいただいていますので、重なる部分がありますが、今 後、当ヒューマンエラー部会においてご検討いただくことについて、またその方針につ いて案を事務局でまとめたものです。  資料3−1、これまでヒューマンエラー部会においては、ヒヤリ・ハット情報収集シ ステムを作成といいますか、設置していただくこと。それから、さらに昨年は10の要点 をまとめていただく等、いろいろなご意見をいただきました。それらを踏まえて今後ど のように運用していくかという相談です。  当ヒューマンエラー部会においてご検討いただきますことは、設置の時にご相談しま したように、「ヒューマンエラーに関すること」という、かなり幅広い分野ですが、そ れを具体的に検討をしていく時には、どうしても検討いただく材料が必要になろうかと 思います。また、ご検討をいただいた結果を、我々行政としてどのように受け止めてい くのか、その辺の姿をよく検討する。さらに、そこで検討をした結果を報告したり、ま た公表するということで、当部会における検討がさらに進むのではないかと思います。  そのため、ここでいただく情報としては、大きくは3つを考えています。1つは研究 成果としてまとめていただいている部分です。これについては資料3−2、資料3−3 で説明いたします。もう1つが、先ほどまさにご検討をいただきました、医療機関から いただく情報、これは主に医療安全対策ネットワーク整備事業を通じて、今後とも集ま ってくるものと思っています。さらには、関係機関、医療関係団体や各学会、もちろん 他省庁等を含めてですが、省内外を含めて関係機関からいただく情報を収集し、この点 についてどのような検討を行うのか、どういう情報があるのか、こういう情報の収集・ 整理、そこから問題点の抽出といいますか把握、整理、それからその重要な点について の対策のあり方を検討していただく。それを我々にご提言いただきまして、それについ て行政的対応、例えば教育研修のシステムに反映していく。  さらに、先程来のようないろいろな形での指導や規制、それからヒヤリ・ハット事例 集、事故防止マニュアルの作成、そのほかの普及啓発、さらに調査研究をしていく。ま た、関係機関との協力が大変重要なので、協力要請をしていく、こういう形で具体的に ヒューマンエラー部会を運用していただいてはどうかなと思っています。  そうしますと、このまとまる成果の関係上、例えば厚生労働科学研究ですと、現在、 毎年研究成果をまとめていただいていますし、また医療機関のヒヤリ・ハット事例は年 4回整理しているので、そのようなことを考えると、大体、年3、4回開催して検討し ていただくのか、もちろん必要に応じてそれに付け加えてということになると思います が、そのようなイメージでいかがかなと思っています。  その研究成果ですが、研究については昨年度から医療技術強化研究事業の中に、医療 安全に関する分野が設置されて、本年が2年目で研究をしています。大体、研究は3年 計画のものが多くなっていますが、そういうことで現在、引き続き研究しているものが 多くなっています。15課題について15人の主任研究者、その下に分担研究者がいらっ しゃらない場合もありますが、複数いまして分担して研究していただいているものもあ ります。  この研究の中には、当ヒューマンエラー部会で検討しているものに、まさに当てはま るような課題から若干違う部会で検討するような課題まで入っていますので、ざっと順 次説明いたします。  1番目の研究、橋本先生にお願いしておりますのが教育研修、特に研修の問題、医師 ・看護師の分野です。2番目の病院における医療安全の研究、川村先生にお願いしてい るのがヒヤリ・ハット事例収集によるエラーマップの作成。そこからどのような対策、 特に教育研修のことをやっていただいています。3番目、医療機能評価機構の大道先生 にお願いしているのが、医療事故の警鐘的事例の収集システムの件。4番目、楠本先生 にお願いしているのが看護業務の改善に関する取組みのあり方。さらに外部からのその 支援の取組み。5番目、池田先生にお願いしているのが、当部会でも議論をしていただ きましたが、昨年作成した標語の評価、定着の評価、さらに専任リスクマネージャーの 経済的側面からの研究。  6番目、堺先生にお願いしているのが、ITを活用した医療安全の研究、さらに処方 箋の記載等について、かなりばらけているというご指摘がありましたので、その統一化 と言うと変ですが、どういうふうに書いたら間違いが少なくなるのか。さらに今回提出 しているさまざまな取組み、ヒヤリ・ハット事例の分析を研究的な側面から深めている のがここの研究班です。7番目、松尾先生にお願いしているのは、チーム内でのコミュ ニケーション、特にコミュニケーションエラーの防止という側面から。  8番目、三宅先生にお願いしているのは、先ほどの話にありましたが、ベット等薬事 法等でも規制がないもの、これらについての安全対策、それから毒劇物の医療機関内、 医薬品とは違う毒劇物がかなり使用されているので、こういうものの取扱い。9番目、 総合的品質管理、TQMに関する事項。10番目、諸外国の医療安全対策、医療政策の研 究に加えて、産科領域、人工心肺領域ということをやっています。11番目、平林先生 に、特定機能病院の安全管理のあり方を研究していただいています。  12番目、聖路加病院の井部先生には、看護師のローテーションの問題を中心に、夜間 の安全対策、新人看護師の研修等を検討していただいています。13番目、NTTの坂本 先生には、クリティカルパスとかいうことを含めての標準化の研究をしていただいてい ます。14番目、阪大の中島先生には、IT、先ほども少し出てまいりましたが、さらに 別の視点からということでクォリティマネージメントという側面からITを活用する方 法。15番目、児玉先生には、法的な側面、特に諸外国での医療安全をめぐる法的な問題 について検討をしていただいています。  これらの研究成果については順次、単年度のものについては今年度中にもまとまると 思いますし、さらに引き続くものについても、順次検討成果がまとまり次第、当部会に ご報告して、これらを踏まえた安全対策を検討していただこうと思っています。  資料3−3、これらの研究成果は公募のテーマで14年度の春、公募したテーマと昨年 度公募したテーマを記載しています。これらについてどのような検討、研究をする視点 がさらに必要かということについて、ご意見をこの場でもいただければ次回の公募テー マに反映していきたいと思っています。なお、研究としては、今後、具体的な各診療分 野における安全対策、事故防止対策が特に必要性が増すのではないかと思いまして、そ のような学会、関係団体と協力して、そういう安全対策の研究を現在事務的に検討して います。以上、3−1から3−3、今後の運営について説明させていただきました。 ○矢崎部会長  こういう個々のテーマで深く掘り下げて、医療安全に関する研究を行うのは、大変素 晴らしいことだと思います。ここで先ほどから議論がありますように、解析・分析で結 果を出すだけでは、折角の研究費が活かされませんので、私としては、個々の研究の報 告をお互いにクロストークして、医療の現場において、どういうことを改善すれば効率 的にできるという結果に繋がる。医療全体の安全対策に資するような、全体をまとめる 工夫も必要かと思いますが、それはこの部会でするのか、あるいは先ほどの橋本委員の 作業部会か、あるいは、医療に関わる事故事例情報の取り扱いの部会、こういう所で全 体的な検討をしていただくことは可能なのでしょうか。 ○新木室長  研究成果の活用については、かなり多面的と言いますか、いろいろな面からの活用が 必要かと、座長ご指摘のとおりだと思います。そのため、まず研究成果の普及といいま すか、医療界全体と言いますか、広くシェアしていただくために、研究発表会のような 形で活用を考えています。これは本年11月25日、医療安全推進週間の2日目に研究成果 の発表会で、既に400人を超える方の申し込みがありましたが、そのような形で考えて います。  さらにこれを踏まえて行政に結び付けるような対応については、内容が多々あります ので、部会の性格に応じて、この点はどこの部会で検討していただいたらいいのかが、 違ってくるようなところがあろうかと思います。そういう意味では研究成果をそのまま すぐにダイレクトに行政に使えるような研究ももちろんあると思いますが、さらに深め る場合には、当ヒューマンエラー部会でやっていただく部分、さらに医薬品のほうにお 話をもっていく部分、ヒヤリ・ハット部会でご検討をいただく部分等々あると思います ので、その辺の整理については事務的にまとめて、各部会の座長の方々ともご相談をし ながらやっていくのかなと。ただ、内容的に見ると当部会でご検討いただく部分が、か なり多いのかなとは思っています。 ○矢崎部会長  その発表会で発表されるとか、冊子を出されるのは大変結構だと思いますが、実際に 全体をまとめて対策を立てる上で活用するのが重要かと思います。あるいは、まだ2年 目ですから、あと、次にこういう方面でもう少し重点的にやってほしいという、希望も 出せるような仕組みにしていただければいいと思います。 ○星委員  医薬局の方にお尋ねします。継承する研究は医薬局の厚生科学研究の中にあるのです か。 ○宮下専門官  資料の1−1に、医薬品・医療具等に係る安全性向上ということで、2つの厚生労働 科学研究を設けてありますが、医薬局としては医薬安全総合研究の中に、13年度からは 社員に医薬品の基本のデータベースのものを1つ、14年度から、これは複数年で始めて いますが、医療用具について、ヒューマンファクター・エンジニアリングの研究を、現 在行っているところです。 ○星委員  ひとつお願いといいますか、やはりこれ、どこまでいってもその2つの局が仲良くし てもらわないとしようがないわけですよね。これは最初から1年間、私は言い続けまし たが、どうしても仲良くない、文化が合わないのでしょうが、それはそれとして、国民 のためですから垣根を取り払っていただきたい。どうも外の力を借りないときっとこの 人たちは動きませんので、部会長に強いリーダーシップを期待します。ですからこれは 医薬品だ、これはモノだ、これは人だと言わずに、総合的に研究する場を、私はむしろ ヒューマンエラー部会に置いて、物のことは時々、叱咤激励しながら適宜対応をとらせ るというぐらいの強い意思を持って取り組んでいただきたいと思います。 ○土屋委員  まさに目的手段の関係に入って、先ほどのこういうものはこうすればいいというもの を、別に医薬品とかは関係なしに、世の中としてこういう目的を達成するためにはどの ような手段があるかとか、そういう話を大きく捉えるということがひとつ必要だと思い ます。  星委員が言われたように総合的なというのは、まさにヒヤリ・ハット事例とかに出て きたものを、世の中で普通はどう対策をとるのか、そういう大きな観点のもので、そし て、それが例えば医薬品には適用可能かどうかなど、これは当然、技術論もあると思う ので、そういった総合的な話を、Aの所の学才領域とかいろいろありますが、これはお そらく分析のほうに使う話であって、具体的に対策のモノを作るというのは、かなり大 きな話になると思います。そういうことを何かやらないと、対策の手段が、これができ るけれども、いまこれを克服しなくてはいけないから医薬品ではまだできていないと か、そういう解釈ができないと。世の中では食品とかほかのほうで常識になっているも のというのがやはりあるわけですから、そこがなぜ医薬品ではできないのかとか、そう いう観点も必要なのではないか。むしろヒューマンエラー部会で出てくるデータは、実 際のエラーとかに使うといいのではないかという気がするのです。ですから、そういう 対策のことを具体化するものが必要かなという気がします。 ○三宅委員  今までもそういう議論はあったと思うのです。けれどもそれが先ほど言ったコストの 問題とか、特許の関係で名前を変えられないとかいうことで、それ以上は全然進まなく なってしまっているのです。だから、そこらへんは安全ということでブレークスルーし ていくような力が私は必要だと思いますが、その力はどこがどういうふうに発揮するの か分からない。これは、1年間ずっと同じことを聞いているような気がするのです。だ からその点が全然、解決されていないのではないかという気がします。 ○矢崎部会長  何か誤解があるところがありますが、私としても最大限努力をしていきたいと思いま す。最初にヒューマンエラー部会を年に3、4回開くということで、次回はメインの報 告は医薬局の安全対策課からしていただいて、課長から医薬局全体でどういう対応をと っているのか。今まで議題に挙がっていたいろいろな対策その他をどう考えているのか を、次回、ヒューマンエラーのこの会で集中的に討論をさせていただく。  そういう意味で今まで事例収集に時間が取られて、ヒューマンエラー部会そのものが 開催されなかった。あるいは全体会議で議論をしたほうがいいのではないかということ で、現在までこの部会があまり開かれていなかったのですが、いまみたいな具体的にこ れはどうなのだという議論は全体会議ではしにくいですね。ですから、大変僭越ではご ざいますが、医薬品・医療器具等の問題も含めて、この部会で徹底的に議論をするとい うふうにさせていただきたいと思いますので、次回はなんとしても医薬局からこの1年 間の反省を踏まえて報告をしていただきたいと思っています。 ○榮畑課長  これまでのご意見は、医薬局によく伝えまして、次回のこの会の持ち方も含めて相談 をさせていただき、また部会長ともご相談させていただきたいと思います。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。では、事務局より次回の予定をお願いします。 ○新木室長  次回は、議題の設定、日程についてご相談しながら、おそらく年が明けてからになろ うかと思いますが、少し医薬局とも相談をして決めさせていただきたいと思います。 ○矢崎部会長  だいぶ時間があるようですから、いろいろ資料も取りそろえて報告していただきたい と思います。本日は長時間にわたりまして貴重なご意見をありがとうございました。                     (照会先)                       医政局総務課医療安全推進室指導係長                        電話 03-5253-1111(内線2579)