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フルタイム正社員とパートタイム労働者との間の公正な処遇を
実現するためのルールについての論点(案)

ルールの必要性
 フルタイム正社員とパートタイム労働者との間の公正な処遇を実現するためのルールを明確化していく必要性について、どう考えるか。
 
ルールの内容
(1)  「フルタイム正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者について、処遇決定方式を異にする合理的理由がない場合に、処遇決定方式を合わせる」という考え方(ものさし研、パート研)について、どう考えるか。
a  職務の同一性について、以下を判断要素とすることについて、どう考えるか。
  • 通常従事する作業の幅、組み合わせ
  • 作業に必要な最低限の能力や作業の困難度
  • 作業遂行に当たって求められる責任や付与される権限の範囲
b  処遇決定方式を異にする合理的理由として、キャリア管理の実態が同じか、異なるかで判断することについて、どう考えるか。
  • キャリア管理の実態が同じか、異なるかの判断に当たって、異動の幅、頻度、あるいは同じ職場の中での役割の変化の度合い等を考慮することについて、どう考えるか。
  • 労働契約の期間が有期と無期のパートタイム労働者がいるが、キャリア管理の実態を判断するに当たって、有期・無期のパートタイム労働者について、どう考えるか。
(2)  「フルタイム正社員と職務は同じだが、処遇決定方式を異にする合理的理由がある場合のパートタイム労働者については、処遇水準の均衡を配慮する」という考え方(ものさし研、パート研)について、どう考えるか。
a  処遇水準の均衡への配慮の内容として、以下の方策を講ずることについて、どう考えるか。
  • 処遇決定プロセスへの参画
  • 仕事の内容・役割の変化、能力の向上に応じた処遇の仕組み
  • パートタイム労働者の正社員転換制度
(3)  すべてのパートタイム労働者に対して、正社員との処遇の違いやその理由を説明することについて、どう考えるか。
(4)  その他にフルタイム正社員とパートタイム労働者との間の公正な処遇を実現するために何か必要なルールがあるか。
 
ルールの位置づけ
 ルールの位置づけについて、以下の手法をどう考えるか。
(1)  パートタイム労働法を改正して均衡処遇ルールの原則を示し、その具体化としてガイドラインを策定する。
(2)  パートタイム労働法第3条第1項の事業主が講ずべき措置に関する同第8条の指針(大臣告示)の中に均衡処遇ルールを盛り込む。
(3)  均衡処遇ルールを法的に位置付けられていないガイドラインとして策定する。



参考資料

(1)  「フルタイム正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者について、処遇決定方式を異にする合理的理由がない場合に、処遇決定方式を合わせる」という考え方(ものさし研、パート研)について、どう考えるか。
(2)  「フルタイム正社員と職務は同じだが、処遇決定方式を異にする合理的理由がある場合のパートタイム労働者については、処遇水準の均衡を配慮する」という考え方(ものさし研、パート研)について、どう考えるか。
注)ものさし研: 「パートタイム労働に関する雇用管理研究会報告(平成12年4月)」
パート研: 「パートタイム労働研究会報告(平成14年7月)」

○「パートタイム労働に関する雇用管理研究会報告」(平成12年4月)(抄)

 正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者(Aタイプ)に係る均衡を考慮した雇用管理のあり方について
(1) 処遇や労働条件のあり方について
 イ  処遇や労働条件に関し均衡を考えるに当たっての基本的視点について
 正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者(Aタイプ)の処遇や労働条件について当該正社員との均衡を考えるに当たっては、まず、(1)これらに係るパートタイム労働者・正社員双方の決定方式を合わせていく方法があり、これが合わせられない場合には、(2)これらの水準について正社員とのバランスを確保する方法について検討する必要があるであろう。
 ロ  決定方式を合わせる方法について
(イ)  イの(1)については、例えば賃金に係る双方の決定方式を合わせていくやり方がある。具体的には、賃金の構成要素、支給基準、査定や考課の基準、支払い形態などの決定方式を合わせていくことが考えられる。このような場合には、結果的には、これらの水準について、正社員とのバランスが確保されることとなる。
(ロ)  一方、雇用管理上の合理的な理由がある場合は、両者の決定方式を異にすることはあり得るところである。ここで合理的な理由がある場合としては、例えば、(1)異なる職務間の異動がある正社員については職能で賃金を決めるが、職務間異動がないパートタイム労働者については職務で賃金を決める場合、(2)毎月の所定労働時間がほぼ一定の正社員については月給制で、パートタイム労働者のうち、所定労働時間が様々に変動する者については時給制を採用する場合などが考えられる。
 ハ  水準のバランスを確保する方法について
(イ)  一般的には、雇用管理上の合理的な理由があるものとしてパートタイム労働者と正社員との間で処遇・労働条件の決定方式を異にすることが認められる場合が多いものと考えられるが、このような場合であっても、上記のイの(2)に示したように、パートタイム労働者の処遇や労働条件の水準、例えば時間当たり賃金について、正社員とのバランスを図っていく方法が考えられる。
(ロ)  上記の(イ)において述べたところにより、水準についてバランスを図っていく場合において、例えば、正社員と比較してパートタイム労働者に残業や休日出勤がない又は少ないという事情があり、これらが労働協約、就業規則、労働契約等において明らかにされているようなときには、そのような事情については正社員との均衡を考える場合に考慮されることもあり得るところである。また、その結果として、処遇や労働条件の水準について、そのような事情が存在しない場合と比較して合理的な範囲で差を設けることもあり得るところである。
 この場合、いかなる差が合理的範囲であるといえるかについては、労使において具体的に決定されることが適切である。
 ただし、これらの事情について労働協約等において規定されている場合であっても、実態としての差がないようなときには、考慮すべき事情とはならないことはいうまでもない。
(ハ)  このほか、例えば、正社員と比較してパートタイム労働者に配置転換や転勤がない又は少ないという事情があり、これらが労働協約、就業規則、労働契約等において明らかにされているような場合には、上記の(ロ)と同様に考えることができる。
(ニ)  また、パートタイム労働者と同じ職務を行う正社員が複数いて、それらの賃金水準が勤続期間や職務遂行能力の違いなどによって異なっている場合に、どの正社員と比較するか、あるいはいずれの賃金水準を比較の対象とするかなどの具体的な比較の方法については、労使においてそれぞれ決定されることが適切である。

○ 「パートタイム労働研究会報告(平成14年7月)」(抄)

III 政策の方向性

具体的な方向性
3) パートの均衡処遇に向けたルールの確立
 (1) 基本的考え方
  (ハ) 日本型の均衡処遇ルールの確立
 この考え方は、正社員との職務(責任・権限を含む。以下同じ)の同一性を第一の判断基準としつつ、同じ職務であっても、能力や成果などの他の諸要素や、配置転換の有無等働き方の違いによって処遇が違い得るわが国の実態に深く配慮した均衡処遇ルールといえる。
 すなわち、第一に「同じ職務の場合に処遇の決定方式を合わせる」というルールは、同じ職務であっても、他の諸要素によって処遇が違うわが国の処遇制度の実態に配慮し、例えば、同じ職務についている正社員が職能給であればパートも職能給というように処遇の決定方式は合わせ、その決定方式の下で各人をどのように評価・処遇するかは企業のルールに委ねるという考え方である。
 「ただし、合理的理由がある場合は決定方式を異にすることはあり得る」というのは、例えば、いまは同じ職務に従事していても、正社員には幅広い配転があり、パートは職務限定というように雇用管理形態が異なる場合には、配転を前提とした正社員には職務との結びつきの相対的に薄い職能給、職務限定が前提のパートには職務給といったように賃金決定方式が異なることもあり得るということである。
 第二に「残業、休日出勤、配置転換、転勤がない等の場合、合理的な差を設けることもあり得る」というのは、例えば、現在、就いている職務が同じであっても、幅広い異動の多寡などキャリア管理の実態が明らかに違う場合には、パートと正社員との間に処遇差があるとしても合理的であると考えるということである。
 ただ、IIでみたように、今後、働く側のニーズの多様化の下で、フルタイム正社員でも、配転、転勤などを伴わない、より拘束性の少ない働き方が広がっていくことにより、そうしたフルタイムとパートとの間でキャリア管理の実態に差がなくなり、他の合理的理由もないということになれば、処遇の決定方式を合わせることが必要ということになる。要は、フルかパートかの違いだけで、職務も働き方も含めて同じであれば、同じ評価の枠組みの中で処遇するというルールである。

2(1)a  職務の同一性について、以下を判断要素とすることについて、どう考えるか。
通常従事する作業の幅、組み合わせ
作業に必要な最低限の能力や作業の困難度
作業遂行に当たって求められる責任や付与される権限の範囲

○「パートタイム労働に関する雇用管理研究会報告(平成12年4月)」(抄)

2 パートタイム労働者の就業の実態に応じた整理等について
(3) 正社員との比較のあり方について
 ハ  職務の同一性いかんについて検討する場合には、労働省編職業分類の細分類の区分を参考としつつ、通常従事する作業が同じかどうかで判断することとし、その際には作業の遂行に当たって求められている責任や付与されている権限の範囲についても考慮することが適切である。
 また、当該作業を遂行するための必要な最低限の能力や当該作業を実施する上での困難度などの「職務レベル」も、同一性の判断基準となる。
 このような職務の同一性が認められる場合には、臨時的ないし付随的な作業(例えば、作業後の清掃)の有無に違いがあっても、同じ職務として扱うことが適切である。
 一方、作業の幅や責任が大きく異なる場合、例えば、正社員がパートタイム労働者の行う作業に加えて生産計画の策定、顧客対応等も行うような場合などは、職務そのものが異なるとして扱うことが考えられる。
 いずれにしても、職務の同一性いかんについては、各企業の実態を踏まえ、労使において具体的に検討されることが適切である。

2(1)b  処遇決定方式を異にする合理的理由として、キャリア管理の実態が同じか、異なるかで判断することについて、どう考えるか。
 キャリア管理の実態が同じか、異なるかの判断に当たって、異動の幅、頻度、あるいは同じ職場の中での役割の変化の度合い等を考慮することについて、どう考えるか。

パートタイム労働研究会報告 別添
短時間労働者の均衡処遇に関するガイドライン案」(抄)

第2 パート社員を雇用する経営者の方へ
確認2 パート社員の処遇についてどう考えていますか?
 ここで「キャリア管理の違い」とは、企業の雇用管理の考え方に基づき、パート社員と常用フルタイム社員の間で、異動の幅、頻度、あるいは同じ職場の中でも役割の変化の度合いが明らかに違うことを言います。

2(2)a  処遇水準の均衡への配慮の内容として、以下の方策を講ずることについて、どう考えるか。
処遇決定プロセスへの参画
仕事の内容・役割の変化、能力の向上に応じた処遇の仕組み
パートタイム労働者の正社員転換制度

○ 「パートタイム労働研究会報告(平成14年7月)」(抄)

III 政策の方向性
具体的な方向性
3) パートの均衡処遇に向けたルールの確立
 (1) 基本的考え方
  (ニ) 法制のタイプについて
 「均衡に配慮した措置」は処遇水準の均衡を図るための措置である。ただ、直ちにそれを実現するのでなくても、例えば、(1)パートと正社員の処遇の違いやその理由について十分な説明を行うこと、(2)パートが自らの処遇決定等に実質的に参加することを可能にすること(パートを含めた労使協議の推進など)、(3)パートの経験・能力の向上に伴って処遇を向上させること(処遇決定方式を正社員に合わせること、正社員に準じた昇進昇格制度の設置など)、(4)パートと正社員との行き来を可能にすること(パートの正社員転換制度の設置など)、などを通じて、処遇水準の均衡に向けたプロセスを確実にすることが考えられる。

2(3)すべてのパートタイム労働者に対して、正社員との処遇の違いやその理由を説明することについて、どう考えるか。

「パートタイム労働に係る雇用管理研究会報告(平成12年4月)」(抄)
 正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者(Aタイプ)にかかる均衡を考慮した雇用管理のあり方について
(1) 処遇や労働条件のあり方について
 ホ  処遇や労働条件に違いが設けられている理由等の明確化について
(イ) ・・・パートタイム労働者と正社員との間で処遇や労働条件に係る決定方式や水準に違いを設け得る事情がある場合であっても、そのような事情については、事業所内で必ずしも明確になっていないことが多い。このため、これらを理由とする処遇や労働条件の差の合理性について当事者が判断しにくい面があり、これがパートタイム労働者が正社員との処遇や労働条件の差について不満を抱く要因のひとつとなっている。
(ロ) このため、パートタイム労働者の不満を解消し、その納得度を高めていくため には、上記のハの(ロ)及び(ハ)の均衡を考える場合に考慮し得る事情の有無等が明確化され、パートタイム労働者に適切な情報提供がなされることが必要である。また、これらに係る認識が当事者間で異なる場合においては、当該事業所における雇用管理に精通している者により、適切な苦情処理が図られることが必要となる。
(ハ) このような方向に沿った取組としては、例えば次のようなものが考えられる。
情報の提供
 パートタイム労働者に対し、必要に応じ、次のような事項につ いての適切な情報が提供されること。
(1)正社員・パートタイム労働者双方の職務の内容等
(2)正社員との間で処遇や労働条件に係る決定方式や水準に違いが設けられている場合には、その内容や違いを設けている理由
相談体制の整備
 パートタイム労働者からの処遇や労働条件に関する相談や苦情に応ずる体制を整備するとともに、これらに基づき検討を行い、必要な改善に努めるほか、その結果の説明を行うこと。
 なお、その際、短時間雇用管理者が選任されている場合にはその適切な活用を図ること。


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