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平成14年11月18日

全国老人福祉施設協議会としての
   介護給付費分科会への意見書
介護給付費分科会   
 委員 中村博彦
(全国老人福祉施設協議会会長)


国民・利用者のニーズは、個室、個別ケア、介護予防サービスです
全国老人福祉施設協議会

1 「自立支援・高品質介護」サービスをめざすために

 介護保険制度の目標・理念は、要介護高齢者の自立支援にあります。要支援・要介護の予防、要介護度の軽減をはかり、できる限り高齢者の自立した生活を継続するよう支援していくことにあります。施設サービスにおいても在宅復帰を支援する、または在宅生活に近い環境を提供しつつ自立支援をすすめることが大切と考えます。

 介護老人福祉施設は、これまでの集団ケア的手法や集団処遇環境を見直し、介護保険制度の目標・理念の実現をはかる必要があります。
 具体的には、
(1)  小規模のグループを生活単位として包括的なサービスを提供し、入居者一人ひとりとの精神的・物理的距離を縮めることで、個別性の高いケアの実現をはかっていくこと

(2)  居住環境としては、個室・グループケアユニット構造を実現し、個人的空間の確保によるプライバシーの保障、生活の場にふさわしい環境を作ることにあります。
 従来型施設でも、グループケアユニットの考え方を導入し、施設・設備の状況に応じて、グループ生活に適した環境を整備する必要があります。

 グループケアを実現するためには、介護・看護職員の質の向上をはかるとともに、職員の加配、専門性の確立など人的態勢の強化が重要です。(勤務シフトの試算では、常勤換算で『2.2〜2.0:1』の体制が必要です)

 全国老施協は、グループケアによる「自立支援・高品質介護サービス」の確立をめざし、新型特養の整備をはじめ、既存特養の増改築整備、介護・看護職員の増員、ケアの質の向上等をはかり、入居者の生活の質的向上を推進することが、もっとも重要かつ差し迫った課題と考えます。


2 サービスの質的向上を実現する介護報酬の確保

 全国老施協は、経営の効率化と地域ニーズに応えるサービスの開発・実施(再投資)と、グループケアによる質の高いサービス提供を実現するためには、現行介護報酬の水準維持が必要であると考えます。

 介護老人福祉施設の利益(剰余金)は、介護保険制度導入以来の昨今の経済動向を勘案した経営効率化の努力によってもたらされたものであり、他の事業との比較で多寡を論じることは適当ではありません。

 対価(介護報酬単価)にふさわしいサービスの質が担保されているか、利用者ニーズに対応できているかを検証し、サービス水準の向上にむけて、さらに努力していくべきものと考えます。


3 介護老人福祉施設を運営する社会福祉法人の体制強化を

(1) 介護老人福祉施設を運営する社会福祉法人の状況

 今後の介護老人福祉施設は、「全室個室・ユニットケア」(新型特養)が中心になります。また新型特養の整備には、市中金融機関からの借入れが困難なため設置者が多額の出捐(しゅつえん)を要することとなり、また経営努力により形成された積立金の取崩しも必要となってきます。

 新型特養を設置、運営する法人には、整備・運営資金を管理する「資金調達能力」と、借入金返済資金確保のための「資金管理能力」が必要となります。(70人定員(B地域)の法人負担分は、旧来型(4人室主体)では2.89億円、新型(全室個室)では5.88億円(2.03倍)、整備費の68%を自己調達しなければなりません。)

 介護老人福祉施設の管理責任者給与は、その責任の重さに比べ低い水準となっています。これは、各地の行政OB職員が施設長に就任した場合の慣例的な給与体系が影響しているものと考えられます。介護老人福祉施設の運営・管理者にふさわしい資質と処遇の向上が大きな課題となっています。

(2) 介護老人福祉施設に関わる専門性の確立

(1)  施設の運営・管理に関わる施設長又は管理者に関わる任用要件を強化し、その養成課程を確立する必要があります。(全国老施協は、サービス管理士養成課程を提案しています)

(2)  介護サービス提供の基幹職員である介護職については、在宅サービスと同様に施設サービスについても任用要件を明確にすべきです。さらに、そのリーダーとなる介護チーフについても養成課程を確立する必要があります。

(3) 社会福祉法人の役割発揮の強化

(1)  低所得者の介護サービス利用を阻害しないよう手続きの簡素化をはかり、社会福祉法人による減免に要する経費を準備金として引当てるなどの措置を講じるなど積極的な推進策を提案いたします。

(2)  社会福祉及び介護に関わる専門職人材の実習、福祉教育として体験学習やボランティア活動、地域コミュニティの資源(ハード、ソフト)としての種々の事業展開を積極的に位置づけ、それらを評価する方策が講じられるべきものと考えます。

(4) 社会福祉法人の自立性・主体性の確立

(1)  介護老人福祉施設等の整備を、国及び都道府県の補助金を得ないで整備・運営できる方途が確立されれば、既存法人・施設は積極的に対応していきます。

(2)  介護保険事業を行う社会福祉法人の運営については、法人の自主性・主体性を確立するために、以下の規制を撤廃すべきです。

介護保険事業に関わる社会福祉法人の公益性・透明性は、第三者評価の実施、都道府県指導検査、法人による監査・苦情対応及び情報公開などを徹底することにより確保されるべきものと考えます。


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