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平成14年11月18日

日本歯科医師会としての介護給付費分科会への意見書

介護給付費分科会委員 新井 誠四郎


 介護保険が施行されておおよそ2年半が経過したが、制度をより定着させ、要介護者にとってより良い制度とするために、以下の意見を提出する。
 特に、在宅の重視や自立の支援という観点から、寝かせたきり、寝たきりにしないために「食物を口から摂取する」ということ、また、肺炎や気管支炎など気道感染を起こさせないように、口腔内を清潔に保つことは、ADLやQOLの維持向上を図る上で基本的に重要なことであると考える。
 このため、口腔内の状況をチェックし、その状況を日常の介護やケアプラン等に反映できるように、ケアマネジャー、介護担当者、要介護者やその家族に伝え、必要な時期に必要な口腔ケアを受けることができる体制の構築が必要と考えている。

1. 介護報酬と医療保険の診療報酬は関連があるので、改定については同時期に実施することが望まれる。

2. 要介護者の60%以上が歯科的問題を抱えているという状況の中で、あらゆる機会を捉えて、口腔内のチェックがなされ、必要な歯科治療のアクセスが図れるように改善されるべきである。

3. ケアプラン作成にあたっては、かかりつけ歯科医からの意見を参考にするなど、口腔情報を積極的に取り入れるような制度を構築する。そのことにより、要介護者のADLやQOLの改善に役立ち、介護保険制度本来の目的である要介護者の自立や要介護者の家族の負担軽減につながると考えている。また、東京都の行った「かかりつけ歯科医意見書活用モデル事業」においても、かかりつけ歯科医からの意見を参考にし、必要な歯科治療や口腔ケアを積極的に取り入れたことにより、介護度に変更や介護時間の変化があり、要介護者にとって歯科からの取り組みが有効であることが実証されている。
 なお、要介護認定においても口腔に関連する情報が有用であると考えている。

4. 在宅患者においては介護保険と医療保険の自己負担が高額化となるので、自己負担の軽減方策を検討すべきである。特に、必要な歯科治療を適切に受けられるよう十分な配慮が必要である。

5. 介護保険施設での歯科保健・医療充実のため公益法人である地域歯科医師会との連携を図るべきである。
 今、介護保険制度の中で、介護保険施設には医師、看護師は配備されているが、歯科口腔関係の専門家である歯科医師については協力歯科医を置くことが努力規定とされているだけで、現状では殆どの施設で入所者の口腔環境が放置されているといっても過言ではない。この状況を改善するためには、本来、専任の歯科医を配備すべきであるが、多くの入所要介護高齢者に対応するためには、地域歯科医師会や口腔保健センターとの連携が不可欠であり、少なくとも協力歯科医をおくことを義務づけるべきである。

6. 認定審査会の委員の負担軽減を図ることが必要であり、認定審査方法の改善を図るべきである。また、認定審査会の意見をケアプランの作成に反映するようにすべきである。

7. 介護サービス計画の立案に際しては、要介護高齢者の自立のためなど介護保険制度本来の目的である要介護者あるいはその家族に本当に役立つケアプランが必要である。しかしながら、現状は在宅要介護高齢者に対して、ケアプラン作成のためのケアカンファレンスが殆んど開催されていないことから、現在の介護サービス計画が望ましいものとは言い難い。介護報酬改定を行うにあたっては、かかりつけ医やかかりつけ歯科医、サービス提供業者等と連携の上、ケアカンファレンスを必ず開催した上での介護サービス計画にかかわる介護報酬についてのみに給付を行うべきである。

8. 介護支援専門員や介護サービス事業者については、身体の介護は行えても口腔内の衛生的な管理に関する知識や理解が不足している場合が多いと思われる。特に、要介護高齢者については、日常からの継続的な口腔ケアが極めて重要であり、介護サービス事業者に対する歯科保健教育は必須であり、その充実を図る必要がある。また、施設や訪問看護事業者には、歯科保健の専門家である歯科衛生士の配置をお願いしたい。

以上



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