02/10/22 労働政策審議会雇用均等分科会(懇談会)議事録            労働政審議会雇用均等分科会(懇談会) 1 日時: 平成14年10月22日(火)15:00〜17:00 2 場所: 厚生労働省専用第21会議室 ○分科会長  それでは、ただいまから「労働政策審議会雇用均等分科会」を開催いたします。本日 の欠席は渥美委員、奥山委員、岡本委員、前田委員、志村委員、吉川委員、山崎委員と なっております。樋口委員は少し遅れていらっしゃるそうです。  ということで、議事に入る前に、本日の分科会の取り扱いについて事務局から説明さ せていただくことになっておりますので、よろしくお願いします。 ○事務局  本日の雇用均等分科会の扱いについてご説明いたします。実は本日になって出席予定 でした使側委員から、急遽都合が悪くなったという連絡があり、この分科会の定足数は 全体16名の委員の3分の2以上の11名の出席か、あるいは各側3分の1以上、したがっ て、公労使各側2人以上が定足数の要件となっておりますが、本日はその要件を満たさ ないということになりました。したがって、大変申し訳ありませんが、本日の分科会の 扱いは懇談会ということにさせていただきたく存じます。こういった取り扱いについて は、労働政策審議会の労働条件分科会でも行われていることで、そういった場合も、議 事録等については、事務局のほうで作成するという形をとっているようです。本日は何 かを決定するという場ではありませんので、実質的に議論が行われたらということで、 懇談会の扱いにさせていただけたらと思います。  また、その場合についても、公開ということでご案内しておりますので、そのまま公 開の扱いにさせていただけたらと思います。 ○分科会長  そういうことで特別な扱いですが、進めさせていただきたいと思います。それでは、 議事に入らせていただきます。本日の議題は、前回に引き続き、「今後のパートタイム 労働対策について」ですが、まず資料が提出されておりますので、事務局から説明をお 願いします。 ○事務局  前からの審議会で議論いただいた中でいくつかの観点について質問等があったことに ついて用意しました。まず資料1ですが、使側委員から「中小企業からのヒアリングも 踏まえて審議をしていくべきではないか」という意見があり、それに基づいて私どもの ほうで5つばかり中小企業等からヒアリングしましたので、その概要を報告したいと思 います。  資料1の1頁のA社です。ここの会社についてはパートタイム労働者の特色として、 3分の1が男性で、その方たちは60歳前後の高齢者。そのほかの3分の2は女性で、皆 さん夫の扶養下にある方たちでした。職種としては軽作業、補助作業をされています。  その下の「パートタイム労働者の雇用管理の状況」で、1、2、3、4と番号が振っ てあるのは、パート研報告のガイドラインの案の中で、パートの雇用管理については、 例えばルール1では処遇についての違い、理由の説明などがあります。そういったこと の内容に即してどのようにされているのかということで、1、2、3、4の対応、さら にその下に○が付いているのは、仕事の内容、賃金制度などに関して聞いたものをまと めたものです。  1は、処遇についての違い、理由の説明については、特段しているものではない。2 のパートの方たちについて、処遇などについて意見を聞いているかといった面ですが、 これについては労働組合を通じてということはないが、社長と忌憚なく話ができる状況 にあるということでした。3は、仕事の内容、役割の変化、能力の向上に応じた処遇の 仕組みをとっているかですが、パートタイム労働者の中でも仕事ができる者を班長とし て任命して班長手当を付けているということでした。また昇給・昇格制度は正社員、パ ートタイム労働者ともにないということで、ここの会社では賃金表は作成していないと いうことでした。4は、正社員への登用制度ですが、こういった制度はないが、実績が あるということでした。  ここの会社でパートタイム労働者が従事しているような軽作業、補助作業について正 社員でもしている人はいるが、パートの方たちが退社後、その仕事をする、または作業 全体の段取りをする、管理をする、トラブル発生時の処理をするといったことも正社員 たちはしているということでした。  B社です。そこで働く方たちのパートタイム労働者の特色としては、3分の1が男性 で、20代前半のフリーターで、正社員志望の方たちです。3分の2の女性の方たちは全 員主婦で、多くが夫に扶養されている立場の方です。  パートタイム労働者の雇用管理の状況としては、1について、特段、処遇についての 違い、理由の説明はしていない。2についても組合はないが、パートタイム労働者の意 見・要望を幹部会議に報告されるよう責任者が意見を聞いている。そのほかいろいろコ ミュニケーションを図っているということでした。  3の処遇も、能力に応じた処遇の仕組みという観点で言いますと、パートタイム労働 者の中で優秀な者が他の指導を行うことはあるが、制度としてはない。さらにそういっ た立場のパートタイム労働者本人がリーダーに位置づけられることについては、人間関 係を理由に辞退しているという状況だということでした。  正社員の登用制度はないが、実績は2人いる。  パートタイム労働者と同じ仕事をしている正社員についてですが、女性がしている関 係の仕事については正社員で同じ仕事をしている人はいない。男性の正社員志望の20代 前半の方たちの仕事は、正社員と同じ仕事をしている面があるわけですが、どちらかと いうと、正社員の見習い的な仕事ということで、正社員ほどの責任は負っていないとい うことでした。ここではパートタイム労働者も正社員と同時期に年1回昇給し、昇給額 は業績と個々の能力によって決定するということでした。  3番目のC社は、従業員が約1,300人ということで、中小企業の範囲より大きいもので すが、こういった所も併せて聞いてまいりました。ここのパートタイム労働者は、男性 パートは学生のみ、女性パートは全員主婦で夫の扶養下にある方です。1の観点につい ては、パートタイム労働者の待遇の違いについて説明をしたりはしていない。2につい て、パートの方たちとのコミュニケーションですが、研修をして、その場でヒアリング をしている。また人事部にも話ができる体制になっている。3の能力の向上に応じた処 遇の仕組みという点では、リーダーを作ろうと試みたが、差が付くと人間関係の和を乱 すという理由でできなかったということでした。ここは昇給制度はなく、パートタイム 労働者は、皆さん勤続年数、経験にかかわりなく、同じ仕事の人は一律の時給だという ことでした。  また正社員の登用制度も実績もないということでした。それから正社員と同じ仕事に 従事しているパートタイム労働者はいないということで、若干正社員が軽作業も時には 行うが、そのほか作業の統括、管理、そういった判断業務を担っており、仕事が違うと いうことでした。  4頁のD社です。こちらのほうは3分の1が男性で、このうち短時間パートは定年退 職した高齢者の方々。フルタイムパートというのは、セールスエンジニアなどの専門職 で年俸制だということで、フルタイムパートという言い方をしていますが、契約社員の 方々だと思われます。  女性のほうは主婦が多く、約半数が夫の扶養下の方たちです。やはり女性のほうでも フルタイムパートと呼ばれる契約社員がおられ、この方たちは商品管理、コンピュータ ー入力とか分析なども行っているということでした。ここも組合はないが、パートタイ ム労働者の意見・要望はマネージャー等を経由して把握したり、いろいろな機会を通じ てコミュニケーションを図っているということでした。  昇格等の制度はないが、個々の能力、実績によって昇給を実施しています。正社員の 登用制度があって、実際にその実績もあるということでした。正社員と同じ仕事をして いるパートタイム労働者がいるが、パートの方たちについては、家庭生活優先といった ことで休み等の融通について配慮しているということと、パートタイム労働者には転勤 ・出張がないということでした。  さらに、パートの方たちでもパソコンを使って実際にいろいろな作業をしていただく という面があり、そういった能力のある方、即戦力になるような方たちを採用している ので、時給を地域相場より高く設定しているということで、この場合、新卒の正社員の 初任給の時間給換算よりも高いものを払っているということでした。正社員の賃金表は 社員に公開しているが、パートについては人事として作成しているが、公開はしていな いということです。  パートタイム労働者の評価制度についても作成、実施しているが、公開はしていない ということでした。  5頁のE社です。こちらには男性のパートの方もいますが、5名ということで、女性 がほとんどで、その方たちは主婦という状況です。  こちらの雇用管理の状況は、労働組合はないが、部門長がパートタイム労働者と面接 をして意見・要望を聞いています。能力査定もして、その結果もパートタイム労働者に 見せるようにしているということでした。  ここは卸売・小売業ということで、デパートなどにも店舗を出しており、デパートに 出しているショップの店長をしているパートの方もいるということです。昇給は正社員 もパートタイム労働者も年1回実施しており、能力査定をしているということです。  人事考課表に、まず本人が自己評価し、部門長がそれを評価して決定するというもの です。  正社員の登用制度という形ではないが、そういう形で登用された方は実績はあるとい うことでした。パートタイム労働者と同じような補助的事務をしている正社員たちもい るが、パートタイム労働者が退社した後、その業務を引き継ぐとか休日出勤、残業、出 張をする、トラブル発生時の処理、他部門の仕事のカバーなどを正社員はしている。賃 金表は、正社員についてだけ作っているということでした。  以上、5社という限られたものですが、その辺をまとめて申しますと、仕事の内容は 重なる部分がありますが、カバーする範囲などが、正社員と違っているというのが、こ の5社ではありました。  処遇についての違い、理由の説明などについては、実際にやっている所はありません でした。  パートタイム労働者から処遇についての意見を聞くとか、そういったことに関しては 小さい規模なりにそれぞれ工夫してやっていることが窺えました。  仕事の内容、役割の変化、能力の向上に応じた処遇の仕組みをとっているかというこ とについては、企業によって工夫をしている所もありますし、やっていない所もありま した。  正社員への登用制度では、制度を採っている所もありましたが、採っていない所でも 自主的にやっている所もあり、実績は企業によって違うという状況でした。また賃金表 は、正社員についてもある所、ない所があった状況です。  引き続き資料の説明をいたします。前回の終わりのほうで使側委員から、パートタイ ム労働研究会報告について、「フルタイムとパートタイム、正規労働者と非正規労働者 という言葉が、パート研報告の中で入り組んでいるのではないか、その辺の整理の仕方 について説明を」というお話があって、その件に関してです。  パート研報告については、まず1の「現状と問題点」」の分析に当たり、統計的資料 の制約の面から、パート、非正規、非正社員の統計資料が混在している面はあります。 資料2ではご参考までにパート研報告における各種統計でのパートタイム労働者の定義 を一覧にしています。  パート研報告の2の部分については、「雇用システムの変化の方向」ということで、 正社員も含めた雇用システムの多元化ということが提言されています。単純化すると、 従来の長期安定雇用を前提としたフルタイム正社員グループと補助的、一時的な労働で あることを前提としたパート非正規のグループという二者択一化から多様な働き方を選 択できる社会へということで、その中間形態も選択肢として広がることを提言していま すので、そういった意味で正社員、フルタイム、パートタイム以外にも幅広く扱ってい るという面があります。  3の「政策の方向性」では、今後多様な働き方が望ましい形で広がっていくためには 、パート等の処遇を働きに見合ったものにしていくことが重要ということで、フルタイ ム正社員とパートタイム労働者との間の公正な処遇を実現するためのルールについて論 じているわけです。そこでパートとフルタイム正社員について焦点を当て、仕事、責任 が同じか、そうでないか。仕事、責任が同じ場合、処遇決定方式を異なるようにする合 理的理由があるかどうかといったことで、パートと正社員といった雇用管理区分でなく 、キャリア管理の実態を見ることで比較するといった形で、最後の場面では正社員とパ ートといった対比にしています。  資料3です。これについては公益委員から、「公正な処遇を実現するためのルールに ついて、もう少し整理したらどうか」という話、ほかの委員からも均等と均衡について 、もう少しパート研報告について整理して報告してほしいという話でしたので、それを まとめたものです。パート研報告の中で言っているフルタイム正社員と、パートタイム 労働者との間の公正な処遇を実現するためのルールについて考え方を整理したものです 。  まず最初に法制のタイプとして、パート研報告は「均等処遇原則タイプ」と「均衡配 慮義務タイプ」の2つのタイプを整理して示しています。  まず「均等処遇原則タイプ」ですが、これは労働時間の長短による合理的理由のない 処遇格差を禁止するもので、具体的には、現在の職務が同じで、かつ、幅広い異動の多 寡などキャリア管理の実態にも差がないなど、処遇差の合理的理由が見出せない場合、 これを「同一職務・合理的理由なしケース」と呼んでいますが、その場合のみ、パート と正社員と同じ処遇決定方式にすることが法的に求められるというものです。  2頁ですが、その場合の法的効果が、正社員とパートの処遇格差に合理的理由がない 場合、これに反する賃金等の取り決めについては私法的に無効とするというものです。  ただ、その場合の問題点としては、逆にこういった正社員とパートの処遇格差に合理 的理由があれば法律上は問題とされないということで、形だけ処遇格差の合理的理由を 整えるとか、職務分離などでの対応で終わってしまうことも考えられると整理されてい ます。  「均衡配慮義務」ですが、こちらのほうは労働時間の長短による処遇格差について均 衡に向けた配慮を義務づけるものです。  具体的には左側の「同一職務・合理的理由なしケース」に限らず、現在の職務が同じ であれば処遇面での正社員との均衡に配慮した措置が企業に対して求められるというも ので、合理的理由を整えるだけでは不十分で、実質的な処遇水準の均衡に向けた措置を 企業は法的に求められるというものです。  このタイプの場合は、同一職務・合理的理由なしケース」、左側の場合であっても、 逆に均衡に配慮した措置が適切に講じられていればよいということになります。実際に 均衡に配慮した措置というのは、処遇水準の均衡を図るための措置で、例えば、(1)〜(4 )のようなことをしていただくというプロセスをとることにより、処遇水準の均衡に向け たことをしていただくと考えられています。この場合の法的効果は、こういった形で配 慮措置を求めるもので、左側の均等処遇原則タイプほど私法的効力を明確に持つもので はないという点があります。また、いかなる場合に私法上の効果が発生するか。左側の 均等処遇原則タイプほど明確ではなく、法規制として実効性を欠く面もあるということ です。  3頁です。パート研の考える、目指すべきルールの1つの方向性です。これはいま言 った「均等処遇原則タイプ」と「均衡配慮義務タイプ」は二者択一ではなく、合わせて 均衡処遇ルールとして一括りに捉え、相互補完的な組み合わせのルールが、1つの方向 として考えられるのではないかということです。「同一職務・合理的理由なしケース」 については、均等処遇原則タイプで、そうではない処遇を異にする合理的理由があって も、現在の職務が正社員と同じ場合については、均衡配慮義務を求めるといった組み合 わせです。  (1)と(2)を合わせたものを「均衡処遇ルール」とし、これについては事例ごとに判断 すべき要素が多いので、画一的な規制は馴染まないということで、法律で基本的な原則 を示して、これを具体的な例示を含むガイドラインで補う手法が望ましいのではないか ということを、研究会報告としては目指すべき1つの方向性ということで言っているわ けです。  この目指すべき方向性に向けた道筋ということが3です。法的整備の選択肢としては 、「均等処遇原則タイプ」と「均衡配慮義務タイプ」を合わせた法制化とガイドライン という(1)の部分が2で言っていたものですが、そこに向けて(2)、(3)、(4)の選択肢が あるのではないかということです。(2)、(3)はそれぞれ1つずつを法制化して、それを 先行させるものです。(4)はそういった法制化はせずに、その内容を具体化したガイドラ インをまずは示すというものです。ただ(4)からすぐ(1)という矢印になっていますが、 この図を簡素化する意味でこのようにし、実際には(4)から(2)、(3)経由も考えられるわ けです。このそれぞれの選択肢についてその下で解説しています。  (1)は最初から均等処遇原則タイプと均衡配慮義務タイプを組み合わせた法整備を行う というものです。ただ、この場合、こういうシステム全体の見直しになると時間を要す るのですが、そこを直ちにこういった法整備を導入するとパートの雇用機会の減少、パ ートと正社員との職務分離など、企業の行動とか労働市場への影響が及ぶことが懸念さ れるというものです。  (2)は、「同一職務・合理的理由なしケース」についての均等処遇原則を求めるものを 先行させるということですが、この場合も法律の問題点で挙げましたが、パートの職務 分離や処遇差の合理的理由を整えるといった対応で終わることが懸念されるものです。  (3)は、「同一職務・合理的理由なしケース」であっても均衡に配慮した措置を求める ものですが、逆にこれはそういったことにすると、「同一職務・合理的理由なしケース 」については処遇決定方式の違いがあっても直ちに義務違反になるわけではないという こととか、法規制としての実効性は弱いものという点があります。  (4)については、雇用システム全体の見直しには時間を要するが、その間何もしないの では状況は改善しないので、具体的にどういったことを求めていくのか。社会的醸成を 図っていくためにも、具体的な案を示すガイドラインを策定するというものです。この 場合、法的規制ではなく、強制力がないという点があります。  ただ、研究会報告では(1)〜(4)のいずれを選択する場合についても、どういう形で進 めていくのかというか、選択をするに当たってということですが、社会全体の共通認識 を深めながら、パートの均衡処遇ルールを定めた法律の制定に向けて、その時機の検討 と労使を含めた国民的な合意形成を進めていく必要があると言っています。それを促進 するためにも、また法律上定められる基本原則の内容を例示的に示すためにも、ガイド ラインが必要だと言っているわけです。いずれにしてもガイドラインという形で示して いくことが必要ではないかと言っています。  最後の頁です。これは現行のパートタイム労働法の中で「均衡」という言葉が出てお り、そことの関係です。現行のパート法の3条で「事業主等の責務」ということで、短 時間労働者について、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して、雇用管理 の改善を図るために必要な措置を講ずるということが言われています。  さらに8条で事業主が講ずべき雇用管理の改善等のための措置に関して指針を定める と言っています。現行のパートタイム労働法3条1項で言っている「通常の労働者との 均衡」の「均衡」と、先ほどから言っているパート研報告の「均等処遇原則タイプ」と か「均衡配慮義務タイプ」で言っている「均等」とか「均衡」の関係はどうなるのかと いうことで言いますと、パートタイム労働法で言っている「均衡」は通常の労働者との 均衡等を考慮してということなので、幅広く言っており、それをさらにパート研報告で は「同一職務・合理的理由なしケース」については均等処遇ということを言って、「均 等」の取り扱いを言っており、「同一職務・合理的理由なしケース」に限らず、現在の 職務が同じであれば処遇面での正社員との均衡に配慮した措置を求めるということで、 そちらのほうでは「均衡配慮」ということを言っており、現在のパート法の均衡という 考え方を2つに整理し、分けたと考えられます。以上、今までの審議の中でいくつか質 問の出たことについてまとめて説明いたしました。 ○分科会長  どうもありがとうございました。それでは、資料が3つありますので、順番に扱って いきたいと思います。まず資料1の「中小企業等へのヒアリング概要」について、ご意 見、ご質問がありましたらお願いします。 ○労側委員  これを要望された使側委員のコメントを何か伺っている部分があるのかどうかが1点 です。個別のケースの中で、いわゆる夫の扶養下にある人が全員、あるいは多くがそう と答えられている所がありますが、例えば、全員がそうという所は、応募が全く幅広く ないのか、あるいは逆にそういった人を採っているのでしょうか、もし分かったら教え ていただきたいと思ったのです。 ○事務局  使側委員には一応こういったものでということは事務局を通じて連絡はしたのですが 、直接まだ本人とは話ができていませんので、コメントはまだいただいておりません。  女性の働き方に関して、いろいろなケースがあって結果的にこういう仕事なので扶養 下の方たちがなったというケースもあるでしょうし、扶養下ではなくやっているケース もいくつかあるということで、どういう形で募集されたのか、そこの経緯までは分かり ません。 ○労側委員  そこは知りたいと思いました。補足的に聞けるのであれば教えていただきたいと思い ます。 ○労側委員  A社は契約期間の定めなしで、B社の製造業は3カ月で、勤続年数は2〜6年。C社 は契約期間2カ月で、パートの平均勤続年数が5年。D社は契約期間1年間で、平均勤 続年数4年。E社も契約期間は1年で、平均勤続年数は4年強、男性は約16年と言われ ました。ということは、契約期間が1年とか2カ月というのをコアにして、契約を反復 更新して、こういう勤続年数になっているという理解でいいのでしょうか。 ○事務局  こういった契約期間が定められているケースの場合で、何人かについてはそういった 形で更新した結果、そういう勤続年数、平均値となったと理解しています。 ○労側委員  そうしますと、昇給制度が正社員と同じという所もありますが、比べる方がいるかど うか分かりませんが、たぶん同じ仕事をしている方で正社員が100に対してパートタイム 労働者はどのぐらいの賃金などの割合なのかとか、一時金なり退職金の制度への適用関 係、社会保険というのは全くないということですが、聞いてないということですか。 ○事務局  賃金について具体的に正社員と同じ仕事ということで言いますと、直接比べられるよ うな同じ仕事の方、つまりダブっている部分の仕事はあるが、責任とかカバーする範囲 で言うと、違うということでしたので、直接比べられる方たちは見出せませんでした。  社会保険の適用関係で言いますと、扶養に入られている方たちはそういった意味で、 適用はなく、あとの方たちについては入っているという形で聞ています。 ○労側委員  この前の使側委員の中小企業の実態を把握してほしいというのは、いま私どもが検討 しようとしている内容について、中小はうまくやっているのだから、そんなに取り立て てやることはないのではないかという意味合いではないかと思うのですが、事務局はそ ういう感想を持たれていますか。「別に不満を持ってない」と答えていますので、これ でいいではないかと思っているのか、やはり改善を要すると見ているのか。その辺は当 分科会での絡み合いでは、中小のヒアリングの持つ意味だと思うのです。 ○事務局  逆に説明ということで言えば、実際には中小企業に限らず、いろいろな所で実際にど れだけ説明しているかということは、日本の企業の中ではまだ少ないことかと思います が、これからのパートタイム労働者、正社員との関係などを考えていく上で必要なのか どうかを、パートタイム労働研究会ではそういったことが提言されているわけですから 、逆に審議会でそういう状況を踏まえて議論をしていただきたいと思います。  そのほかのものについても中小企業で制度がなくてもやっている面がありますし、か といってまるっきり制度ができていない部分、賃金表がないなどという部分もあります ので、そういった中でどのように考えていくかはいろいろ工夫していかなければいけな いという話かと思います。逆にそういった違いがある中でどのようにしていくかという のは、具体的に現場をよくご存じの労使の方たちが出ておられる場面で、実現可能性を 含めて議論していただけたらと思います。 ○労側委員  なぜ契約期間が3カ月なのか、なぜ契約期間が2カ月なのかという事業主側の根拠で す。その結果、平均勤続年数5、6年が、なぜ2カ月なのか、なぜ3カ月なのかを聞き たいのです。これだと3カ月なのか、なぜ2カ月なのかの理由が見えないし、これでは 契約期間の合理性みたいなのが見えないのです。 ○事務局  いまの段階では分かりませんので、もしなんでしたらば補足的に聞いてみたいと思い ます。 ○労側委員  最初から無期の契約にすればいいと思うのですが。 ○事務局  電機・機械器具、電子部品製造業という所で言いますと、いまやっている事業などの 生産の繁閑などに対応させてという面があるのかなという感じはしますが。 ○労側委員  正社員がやっていた仕事をパートタイム労働者に変えたなどという動きが見えないの です。ずっとパートをやっていても、少なくとも10年程度パートタイム社員でやってい たということで契約を更新した。前に正社員がやっていたことをパートに切り換えたな どという背景等がこれでは見えないのです。 ○労側委員  もう1点、C社の件でお聞きしたいのですが、C社の場合は昇給制度はないとなって いますが、正社員はあるということでいいのですか。 ○事務局  あると思います。 ○労側委員  正社員があって、なおかつ1では処遇の違いについて、特に不満は出ていないという ことで、説明していないので不満が出ていないということですか。 ○事務局  説明していないかどうか理由は分かりませんが、とにかく人事のほうにいろいろパー トの方たちからの不満は聞こえてきていないということです。 ○労側委員  勤続年数は平均で5年ぐらいはあるということですか。 ○事務局  はい、そうです。 ○公益委員  私は契約期間よりも実態として、どのぐらいの勤続年数かというのはすごく大事で、 契約期間の形式よりも実態で判断して、均衡なり均等の処遇のルールを適用するという ことを議論するというのは研究会報告であったわけです。ですから、A社からE社につ いて言えば、基本的には1社以外全部有期契約ですが、実態で見れば、これはほとんど 同じ仕事の場合はないわけですが、フルとパートが同じ仕事であれば、少なくともルー ル5とルール6の適用が必要だし、同じ仕事ではなくてもルール1からルール3の適用 が求められるということは言えると思います。  パートから求められた場合、正社員との違いを説明しなさいというのはルール1です ので、基本的には労働条件明示についてはパートとして雇うときに、その人の労働条件 は説明するということで、これは正社員との違いですから、新しいルール1で言ってい ますが、求められた場合ということで、現状では今回ヒアリングした所では、そういう ことを求めるようなパートはいないという話のようです。 ○分科会長  ほかに資料1についてご質問はございますか。 ○使側委員  A社からE社までにかけてそれぞれ仕事内容が同じ方がおられるという表現はあるの ですが、例えば、少しずつ責任が違うとか、そうした状況になっているようなので、総 じて言うと、仕事、責任がパートと正社員とで違う方々を調査したと評価してよろしい のでしょうか。 ○事務局  別に選んでそのようにしたというより、その結果がそういうことであったということ です。調査した所では仕事、責任が違う方たちであったということです。 ○使側委員  代表例というニュアンスの会社ではないのですね。 ○事務局  代表かどうかは数がありすぎて、私どもとして選べるほどのものではなかったので、 限られた時間の中で声を掛けられる所ということで聞いたところ、こういう所であった ということです。 ○労側委員  聞いたのはパートですか、会社のほうから聞いたのですか。 ○事務局  パートの方からは聞いておりません。 ○労側委員  そこで働いているパートの方からの説明はないのですね。 ○事務局  はい。若干先ほどので補足しますと、A社は無期の契約ということですが、A社につ いては正社員をある意味で削減するために正社員が行っていた軽作業をパートにさせて いくという面があります。  B社については、正社員に欠員が生じたときにパートが手伝ったことがあるというこ とで、意図的に正社員に変えていくことを念頭に置いているものではないかと思います 。  C社では、以前正社員がしていた会社の中での案内の仕事というか、クロークでの荷 物の預かりとか、館内誘導といった作業を正社員がやっていたが、パートに変わってき た。ただ、場面によって案内業務と言っても、判断を要するような部署では正社員が対 応しており、若干仕事で変化させてきた面はあるということでした。  E社は、デパートなどで、ショップの店長でパートがいると言ましたが、そういった ことで正社員のほうが減って、ショップの店長はパートが増えてきているという面があ るということでした。 ○分科会長  ほかにご質問、ご意見ありますか。特にいまの段階でなければ、ほかにもありますの で、次に進ませていただきます。資料2の各種統計調査における労働者の定義について 、ご意見、ご質問がありましたらお願いします。 ○労側委員  「労働力調査」はじめ、週35時間未満の方を短時間労働者という定義付けはいつから 始まっているのですか。法定労働時間が48時間時代からですか。 ○公益委員  その前からです。48時間のときも35時間を使っていたと思います。ILOの基準など が35時間にしているので、それに合わせているということです。国によっては、国内的 には30時間を採ってパートと言っている国もありますので、国によって扱いもかなり違 います。一応35時間というのは1つのスタンダードだと思います。 ○労側委員  法定労働時間の割合ではなく、35時間という絶対時間数で。例えば、フランスなど35 時間の国もありますよね。 ○事務局  国によって統計をとっている、そこの基準で違うかもしれませんが、日本の場合、「 労働力調査」では継続性ということから、昭和30年代から35時間ということで、どのよ うに増えてきたか見られるようなことで区切られていると認識しています。 ○分科会長  資料2はほかにございませんか。 ○労側委員  賃構などは1日とか1週とか単位が2つぐらいあるのですが、1週間というのがスタ ンダードなのですか。 ○公益委員  そうですね。それはもちろんいろいろな考え方があって、研究者レベルでは、今まで はフレキシブルな年間で見たほうがいいという議論はあります。一般的には週で見るの が通常使われる考え方です。 ○労側委員  どこかの法律の整合性を採ったなどということを聞いたことがありますが、週だけに したというのは、雇用保険か何か。 ○公益委員  パート労働法のときは知りませんが、統計については一般的な国際的な統計のとり方 ということで特別なものではないと思います。 ○事務局  いまのパートタイム労働法の定義が1週間の所定労働時間で、通常の労働者との比較 で、相対基準でとらえているのです。そのときに、なぜ1週間の所定労働時間を用いた かというのは、雇用保険法などの他の労働関係法令の用例で1週間を単位としていると いうことが多いことから、現在のパートタイム労働法の定義では、1週間の所定労働時 間で比較しているということがあります。  その前に週の絶対労働時間35時間という基準でとることについて、通常の労働者の所 定労働時間が短縮している経緯があったりすることから適当なのかという問題提起だと 思いますので、それは大いに議論になる論点の1つだと思いますが、統計上の制約から 、そして時系列で比較をするに当たり、35時間という数字をこれまでは使っていました 。お手元のファイルの中にパートタイム労働研究会の最終報告が綴じてあると思います が、その1頁にその辺りのことが問題意識として書いてあり、短時間労働者と、呼称で パートと呼ばれている方とが、どういう形で重なるかを見ているものです。ここで言う 短時間労働者というのは週35時間未満の方で、35時間未満の方の大部分はパートタイマ ーですが、一部に正社員とか派遣の方で35時間未満の方がおられます。逆にパートと呼 ばれている方の中で35時間を超える方もおられるという相互の関係を整理したものがこ の表です。 ○公益委員  統計のほうはこういう形で35時間とかでとるわけですが、パートタイム労働法上は同 じ企業の中で、通常労働者より短い人ですから、通常労働者の時短が進めば、当然パー トも変わってくるということで、別にその辺は問題ないと思います。正社員が35時間の 会社があるとすれば、それより短い人がパートになるということです。 ○労側委員  日数の短いのもそうですね。 ○公益委員  もちろんそうです。 ○公益委員  諸外国のパート労働者のつかまえ方も、客観的な労働時間よりも、どちらかというと 、フランスなどもそうですが、通常の労働者よりも短い。実態としてはそれがいちばん つかまえやすいわけです。それぞれの企業によって、あるいは国によって法定労働時間 は違いがあるということから、パートタイマー労働者のピュアな意味から言うと、通常 に働いている人よりも短ければパートタイマー、何時間であろうが短いという労働者を 対象にしたいろいろな法的な規制という枠組みのほうが実態にはあっていると思います 。それを一律に国際比較をやる、あるいは法律上の規定をするときに、そういうフレキ シブルな定義だと非常に混乱があるために一定のルールを作るときに35時間など、暫定 的に客観的な数を当てはめてルールを構成するという二重のやり方をやっているのが実 態だと思います。そのためにデータとか議論が混乱することも確かですが、それが現状 であると考えられています。 ○労側委員  賃構で定義づけられたパート労働者の人数と労働力調査に基づくパートタイマーの人 数は当然違ってくるわけですね。実態としては1分でも短ければパートなのですから、 賃構のほうは実態の数字が出てくるという認識なのですか。 ○公益委員  そうだと思います。 ○労側委員  賃構はパートタイム労働者というのは人数はどのぐらいですか。 ○公益委員  規模が小さい所は対象にしていませんから、それで対象範囲が限定されています。賃 構のほうは全事業所ではありません。ですから、ここではあまり資料にこだわる必要は ないと思います。現状を分析されるときに、通常労働者で短い労働者などという調査は 一般的にはないわけです。それぞれの調査の限界を知りながら、知りたいことを見てい くしかないわけで、それで使っているということです。研究会報告は本来はあくまでも フルタイマーとパートタイマーの処遇の均衡をどう図るかということを議論しているの で、もちろんこれは大事で、既存の統計をどうするかという議論は、いまここでやって もあまり生産的ではないだろうと思います。 ○事務局  ちなみにこの前の「パートタイム労働者総合実態調査」では、ここでのパートは正社 員以外の労働者で名称にかかわらず、1週間の所定労働時間が正社員よりも短い労働者 ということで、この場合は5人以上の企業ですが、その場合、パートについては949万人 ということで出ています。 ○分科会長  労側委員、よろしいですか。 ○労側委員  私はオーケーです。 ○使側委員  関連しての質問ですが、日本国内で統計上の定義はこうなっているというのは、統計 をとったときにこのように定義したからそうなのでしょうが、公益委員から、国際比較 のときにどのような問題があるかという言及があったのですが、パート研の報告の中で 国際比較をされて、一般労働者とパートタイム労働者の賃金格差がこれこれであるとい う調査結果が出ていましたが、その際の定義も併せて説明をお願いできれば有難いので すが。  例えば、パート研の報告のいちばん後ろに「賃金格差の実態とその背景」という資料 があり、ヨーロッパはユーロスタットを使い、日本のは「賃金構造基本統計調査」を使 っているようです。このときのパートタイム労働者の定義はどうなっていたのかを確認 させていただきたいのです。 ○分科会長  少し時間をいただいて、すぐお答えするそうです。その間にほかにご質問があればお 願いします。 ○公益委員  18頁の図表21で、たぶん労働時間だと思います。注は出ていませんが、労働時間の定 義でのパート労働者だと思います。 ○事務局  ちなみに18頁の図表21でしている賃金水準と後ろに出ている国際比較との違いは、図 表21で出ているのは中央値で算出したもので、それを平均値で算出したものが後ろの表 の国際比較です。  さらにもう少し具体的にそれぞれの国が、どのようなパートを定義して計算している かでしたら、次回にも出させていただきたいと思います。 ○使側委員  その時にポイントになるのは、要するに同じ定義なのかどうかということなので、そ のことだけを確認させていただければ結構です。 ○分科会長  ほかの件もありますので、次回に正確に答えていただければ。 ○公益委員  調べて次回に。 ○分科会長  資料2については特段ほかにないようでしたら、資料3の「フルタイム正社員とパー トタイム労働者との間の公正な処遇を実施するためのルールについて」の資料について 、ご質問ご意見がございましたらお願いしたいと思います。 ○労側委員  資料3は研究会報告を整理していただいた、というふうにお聞きしてよろしいのです ね。 ○分科会長  はい。 ○労側委員  中身についてお尋ねしたいのですが、5頁の参考の2の3条との関係がここに記載さ れていますが、ここでいう3条第1項の「均衡」と、この2つのタイプは同じというか 、ここの中に含まれているという理解でよろしいですか。 ○事務局  3条1項の均衡のほうは広く、均等処遇原則タイプの均等と、それから均衡配慮義務 タイプの均衡、それを両方含んでいる考えです。 ○労側委員  そこの関係でいきますと、3頁の均等処遇原則タイプのあと、均衡配慮義務タイプの イを、(1)の所でいうと「法制化」というあり方が書いてあるのですが、これを法制化す るということは、3条との関係でいうと、3条の中にこれが含まれているということと 、ここで言う「法制化」ということの意味合いを、どういうふうに理解していいのか教 えていただけますか。 ○事務局  具体的に研究会の中では現行の法条文をどう変えるとかいうことではなくて、いまは こういった体系があるけれども、何が通常の労働者との均衡という観点から必要か、均 衡処遇、公正な処遇という観点から考えるということで、法的に必要な措置ということ で考えられたので、3条のどこをどう変えてという議論ではなく、ここで言っているの は、単に「均衡と均等の概念の整理」だと、ここの部分は見ていただきたいと思います 。 ○労側委員  3頁でいうところの「法制化」というのは、その3条の部分を具体的にどう変えると いうことで理解してよろしいのですか、そうではないのですか。 ○事務局  そういうこともあるでしょうし、また別の形であっても、とにかく法律的にパートの 方とフルタイムの方との均衡を図るために、どういった強制力をもった法律にするかと かいうことでの整理です。 ○労側委員  3頁の(2)のところとの関係で言うのですが、「法律で基本的な原則を示し」とい う部分が、何を指すのか教えていただけますか。 ○事務局  ここの基本的な原則として、最初にありますが「均等処遇原則であれば、事業主に対 して「労働時間の長短による合理的理由のない処遇格差を禁止」とか、均衡配慮義務タ イプでいえば「労働時間の長短による処遇格差について、均衡に考慮した配慮をするよ うに求める」ということを、法律として、原則として書くということです。 ○労側委員  いまの3条の中に「均等処遇原則タイプ」と、「均衡配慮義務タイプ」が含まれてい るということですが、そのことと同じことになるのか、それとも違う形で書くことにな るのか、そこはどう理解したらよろしいですか。 ○事務局  具体的にはいまある3条の部分は、均衡等を考慮して雇用管理の改善を図るために必 要な措置を講ずることによって、短時間労働者の有する能力を有効に発揮できるように 努めるものとするということで、一応「均衡を考慮」ということが文言としてあります が、そこの部分は雇用管理の改善の視点で入っているもので、事業主に具体的に何を求 めるかという、そこの法規制の部分とはだいぶ違ったものであるとご理解いただきたい と思います。ですから、ここから派生的に出るというよりは、これはあくまでそこの均 衡という考え方が何を指しているかというだけであって、別に3条そのものがこういう 2つに分かれるとかいうことではないです。 ○使側委員  再確認ですが、3条の均衡がこの2つに分かれる、という先ほどの説明についてです が、パートタイム研究会としては一応、2つの中身に分けて考えたと、そのぐらいの位 置付けですね。それが正しい理解ですよね。例えばパートタイム労働法についてのコン メンタールか何かになって、その中でこういうタイプ分けをしているという趣旨ではな いのですね。 ○事務局  ただ、現在ある「通常の労働者との均衡を考慮して」ということに関して、前に出た 建議とかでもここの部分が分かりにくいので、もう少し具体的に物差しを示したらどう かということを受けて、物差し研究会の報告が出たりという流れのものではございます 。 ○使側委員  逆に言うと、均衡配慮義務タイプの均衡と、パート法3条の均衡とは違うと。 ○事務局  ここで言っている場合、均衡配慮義務タイプを2つに分けて書いていますが、その時 に2つの意味合いがあって、1つは均等処遇原則タイプになるような「同一職務・合理 的理由なしケース」を入れるか入れないか。そこで均衡配慮義務タイプの範囲が変わっ てくるのではないかと思います。この均等処遇原則タイプに当たるような、「同一職務 ・合理的理由なしケース」、そこをまるきり別なものという形で抜いたこういう2本立 てにする場合には、この均衡配慮義務タイプというのは、そこが抜けたものということ で、狭いということはあるかと思います。 ○労側委員  現行のパート法3条の解釈は持っていないのですが、就業実態とはどういう実態なの かという解釈がありますね。その内容と研究会報告が言っている「同一職務・合理的理 由なしのケース」というのは、同じことを説明しているような感じもするのです。この 研究会報告のいう均衡と、パートタイムの均衡は違うというのがまた理解しにくい。「 就業実態」というのが3条の解釈で書いていますね。 ○事務局  3条についての就業の実態というのは、業務の内容、困難度、複雑度等を含む。それ から労働時間、所定外労働の有無、配置転換の有無、契約期間、勤続年数、職業能力等 が含まれる。それを通常の労働者と比べるということです。 ○労側委員  均衡の観点。研究会報告も「同一職務・合理的理由なし」というその中身は、いま事 務局が言われた様々な要因のことを、研究会報告では触れているのでしょう。それが合 理的な理由があるかという判断基準で、そういう意味では言っていることは同じではな いか。しかし、均衡が違うというのと、どういう理解なのかと思います。3条のいう「 均衡」と、研究会報告でいう「均衡配慮の均衡」とは違うとここで言っているのですね 。  なぜかといったら研究会報告の均衡は、「同一職務・合理的理由なし」以外のところ も含んでいるという条件付きですよね。3条の就業実態の解釈の中にもいろいろ、同じ ようなことが書いていませんかと言っているわけです。だから違うというのはちょっと 。 ○事務局  違うというか、均衡配慮義務タイプを説明した中でも、もし均衡配慮義務タイプだけ であれば、均等処遇原則タイプに当たるような「同一職務・合理的理由なしケース」も 含んで弱いものになるということが、問題点で挙げられているということから言えば、 もしこれ1つだけであれば均衡配慮義務タイプは全てを含むのですが、そこにあえて均 等処遇原則タイプが加われば、かえってその中にある「同一職務・合理的理由なしケー ス」については、均等処遇原則タイプのほうが優先されるということかと思います。 ○分科会長  公益委員、整理をお願いします。 ○公益委員  現行のパート労働法と無関係に考えたわけではないのですが、一応新しく法制化する ことを想定して、フルタイマーとパートタイマーの公正処遇を考えるために、どういう 考え方があるかをまず研究会で整理をしました。  その時に2つのルールを出した。それが「均等処遇原則タイプ」と「均衡配慮義務タ イプ」です。ここに説明しているのを繰り返すだけになりますが、前者の「均等処遇原 則タイプ」のときは同じ仕事で、基本的には労働時間の長短以外、ここでは「キャリア 管理」と言っていますが、合理的理由はもちろんこの中で議論をしなければいけない。 それ以外に差がないとすれば、基本的には分かりやすいように時間比例にしなさいと、 ただし、この原則だけであれば、業務が違えばそこについては、業務が違うという点で 、これは企業にそれ以上処遇についてフルとパートの均衡を考えなくていいということ です。「均衡配慮義務タイプ」の場合は、仕事が同じであれば、時間の長短はもちろん あります。仕事が違うけれども、それ以外、合理的理由があっても、水準について配慮 のための努力をしてください。  この場合に合理的理由がない場合はどうなのかというと、これについても処遇決定方 式は同じにしなくてもよいということなのです。ですから均衡配慮義務タイプの場合は 、仕事が同じで時間以外みんな一緒の場合でも、時間以外の違いがあっても両方カバー されるのだけれども、配慮の内容は特に合理的理由なしについては、均等処遇原則タイ プが弱くなる。そこは本来であれば均等処遇原則タイプを適用しなくてはいけないとこ ろについても、水準について配慮をすればいいというのがこちらです。そのように整理 しています。ただし、こちらは適用範囲は広くなります。仕事が違う、それで合理的理 由がある場合についても、水準改善については配慮してくださいということです。  一応こういう整理をした上で、それぞれプラスマイナスがあるということで、もし法 制化するとすれば、最終目標としてはセットのルールとして導入することが望ましい。 つまり、同じ仕事で合理的理由なしの場合は、均等処遇原則タイプを適用し、処遇を異 にする合理的理由がある場合は均衡配慮義務タイプを適用する。ですから両方セットし たルールを「均衡処遇ルール」と言っているのです。  先ほどの質問の3頁の「法制化」ですが、これにはいろいろな法制化がある。例えば 初めから「禁止」という言い方もあるし、「努力義務」「配慮義務」とかいろいろな言 い方がある。これは特にそのことについて明記しているわけではない。法制化と言って もいろいろな法制化のやり方があるわけで、ア、イのいずれかを選ぶのか、あとはその 中身です。原則を示して、それについて事業主の責任をどう書くかはいろいろな選択肢 がある。 ○公益委員  この図の中で混乱しているのが、「同一職務・合理的理由なしのケースに限らず」と いうフレーズはどういう意味なのか。これで混乱するのではないか。同一職務で合理的 理由なしのケースの場合に、「同一職務・合理的理由なし」は上に含まれるのですから 、下は関係ないわけでしょう。「配慮義務のタイプ」というのは、「同一職務・合理的 理由なしのケース」ではないわけでしょう。そうではなくても、現在の職務が同じであ ればという意味なので、「限らず」といったら。 ○公益委員  だから、ここは「同一職務・合理的理由無し有り」に拘わらずなのです。こちらの対 象範囲は両方とも含むということなのです。「均衡配慮義務タイプ」の場合は、同一職 務であれば合理的理由の有無に関係なく、均衡配慮を求められるということです。 ○公益委員  それは上の「均等処遇原則」という厳しいものが対応されるわけでしょう。同一職務 の合理的理由なしのケース。 ○公益委員  この場合は、いずれか片方を導入した場合ですからね。どこの場合ですか。 ○公益委員  第3条の「均衡」というのは、こういう柔らかな均等を含んだものですよ。それを具 体的にいろいろ調べてみたら、この2つのケースがあるのだという説明なのです。そし て、1つは同一職務で合理的理由なしのケースには、差別することなくまったく同じ、 そのときには均等処遇原則という、かなり厳しいルールを当てはめるのが適当だと。下 のほうはそういうルールではないけれども、職務が同じであるならば均衡を配慮したよ うなルールをという図式でないと、クリアカットではないわけでしょう。この図式だと 均衡がこの2つのケースがあってという説明になり得ないのではないでしょうか。それ で労側委員が混乱しているし、皆さんの理解が。 ○労側委員  5頁の参考2の所の書き方ということですね。 ○公益委員  そうです。これがすごくコンフュージィングなのではないでしょうか。 ○事務局  この2つのタイプを同時に法制化する姿をここで表わしているとすれば、均衡配慮義 務タイプの最初の1行はいらなかった、これがあると理解が混乱します。ところが、均 衡配慮義務タイプだけを法制化するというオプションも示してあるので、その場合は合 理的理由なしのケースについても、均衡配慮義務がワークするようにここで定義してい るのです。ですからこの図を示す時は、均衡配慮義務タイプの最初の1行はないほうが 理解がしやすいかもしれません。 ○労側委員  そこは言ってないのです。 ○公益委員  言ってないんですか。 ○労側委員  「均等処遇原則」という言葉は分かるのですが、下の「均衡」というのは幅広くとい う意味で、均衡という言葉を使っているのは理解できるのですが、これを仮に「均等配 慮」とはできない理由があるのですね。均等配慮ではないと、均等については配慮がな いのだと、だから均等を使わずに均衡を使うわけでしょう。その辺の均等、均衡の理解 がまず、公益委員が言われたのですが、やはり均等と均衡は違うのだと。ところがこの 3条は含んでいると書いているからまた意味が。 ○公益委員  現行のはあくまでも参考です。新しく整理をした時には均等と均衡というのは、切り 離した概念として作っているわけです。 ○労側委員  これ違うのですね。 ○公益委員  研究会報告ではそうです。 ○労側委員  研究会は均等はイコール100%という理解ですか。 ○公益委員  そうです。分かりやすく言いますと、同じ仕事で時間の長短、全部同じケースの時、 これは均等処遇原則タイプが適用するべきケースですが、均等処遇原則タイプは法制化 せず、均衡配慮義務タイプだけを法制化すると、この場合どうなるかというと、時間の 長短以外みんな仕事も一緒だとしても、ここについては処遇水準についてバランスをと るよう努力していればいいということ、同じにならなくてもいいということです。 ○労側委員  結局違うのですね、均等ということは。 ○公益委員  ここで言う「均衡配慮義務タイプ」は、これと分けて作っています。もともとそう分 けるように定義したわけですから、違うものです。ただし、後ろにいって、もしパート 労働法の現行法を解釈すると、両方入っているということです。ここで分けたものが実 は両方入っていると読めるのではないか、というのが事務局の提案です。 ○事務局  これについては参考だと公益委員が言われましたが、パート研の中で議論されたので はなくて、それを踏まえてこの前、「現行法との関係も」というご意見が出たものです から、あくまで参考として整理して付けたものです。 ○労側委員  参考というのは、現行の3条の均衡をこういうふうに解釈したのではなくて、現行の 3条を研究会報告を参考にしてこういうふうにしたと、言っていることはそういうこと ですね。 ○公益委員  一連の建議以来の均衡配慮ですか、第3条に相応しいという、この問題を労使や、い ろいろなこれまでの議論があって、それを集約して暫定的であったとしても、一定の報 告書という形にまとまったという経緯がある報告書に基づいて案を出してきたと、そう いう理解でよろしいのでしょう。研究会か何かを勝手にやって事務局が出したというの ではなくて、ずうっと長いそういう経緯があって。 ○労側委員  3条との関係を研究会がこういう整理をしたのではなくて、これは事務局で研究会報 告を受けてやった、という見方でいいということですね。 ○公益委員  それでいいと思います。3頁を見ていただくと、研究会報告の中でこの2つのルール をセットとして出したほうがいいといったとき、2つのルールの呼び方として研究会報 告では、「均衡処遇ルール」と言っているのです。その時「均衡処遇ルール」となぜ言 ったかというと、やはりパート労働法が念頭にあったという理解をしていいと思います 。両方を含めて「均衡処遇ルール」と研究会報告では書いているということです。新し く定義し直している。第3条ではいっていませんよ。ただし、「均等処遇原則タイプ」 と「均衡配慮義務」という2つのものを作って、両方必要だといったわけです。両方を 併せたルールの名称として研究会報告の中では「均衡処遇ルール」といっているという ことです。ですから、もう一度整理をし直して、両方を含めて「均衡処遇ルール」と研 究会報告でいっているということです。ですから新しく研究会報告で「均衡処遇ルール 」と言ったときは、均等処遇原則も入っているし、均衡配慮義務も入っているという整 理です。 ○公益委員  研究会ではですね。 ○公益委員  そういうことです。 ○公益委員  でもそれは、第3条の均衡なのでしょう。それをより具体化したというインプリゼー ションがある。 ○公益委員  そうです。議論の過程では。 ○公益委員  そうではなしに報告書も。そうではないのですか、それでなければちょっと読みづら い。均衡処遇ルールというのは。 ○労側委員  私が質問をした趣旨は、いま皆さんに議論をしていただいている内容そのものですが 、5頁の参考資料2の見方を「参考です」ということで見るのか、そうではなく見るの かをはっきりしたかったということで質問をしたのです。そうしたら公益委員から新し い法のタイプとして、研究会では3頁のほうの整理をしたからという説明がありました ので、そこはよく分かりましたが、5頁でいうところの説明と同じ文章を使っているの で、「均等処遇原則タイプ」と「均衡配慮義務タイプ」という、参考2の説明書きの表 と、今度出された研究会の報告とは違うものだという理解をしてよろしいのですね、と いう確認をしたかった。違うものと言ってはおかしいのですが、先ほどから議論をして いることの整理なのですが。 ○事務局  現行のパート法の3条では、短時間労働者の就業の実態と通常の労働者との均衡など を考慮するということになっているのです。具体的に就業実態と通常労働者との均衡、 2つ要素があるのですが、それをどう考慮するかというところまでのルールは現行の3 条ではないわけです。そういう意味では3条の「均衡」という概念は未分化なのだと思 います。その未分化であるがために、雇用管理の現場でなかなか徹底しないということ がありました。  それで前回は労使も入られた「ものさし研究会」という研究会で、就業の実態と通常 の労働者との均衡を考慮した雇用管理というのは何のことなのか、ということを研究し ていただき、また、さらに、今回は労使は入られていませんでしたが、学識経験者の研 究会で研究をしていただいた。それは、ずっと公益委員が言われていますようにパート 法の3条の均衡の概念を具体化する作業であったともいえるのだと思います。ただ、報 告書の中ではパート法3条と2つの法制化のタイプとの関係は明示的には整理はしてい ませんが、いま言ったような研究会を何回も設置して検討をした経緯もあります。前回 の審議会で「パート法3条の均衡との関係はどうか」という質問もありましたので、そ ういうことを踏まえ、これは事務局の責任で整理をした図だとご理解いただければと思 います。 ○労側委員  研究会報告の「均衡配慮」と「均等」を分けた考え方といいますか、言葉は「同一職 務で合理的理由なし」という職務という言葉を使っていますね。もう一方に同じ仕事の 中の責任という、法律にすると言葉として同一職務なのかと、法律的な用語と別の言い 方をしていると読めないでもないのですが、同じ仕事、責任というのは、同一職務。と ころが一方で日本の場合には同一職務というのは捉えにくい、ヨーロッパ的ではないと いう言い方もしています。だから日本的処遇ルールが必要だということをかなり強調し ているのではないですか、ヨーロッパとは違うと。ヨーロッパは均等で同一職務で労働 市場が内部労働市場ではなくて横断的だから、だから均等法ができるのだという理屈が 背景です。ひとつは同一職務といっている意味合いと均衡という、でも合理的理由が何 かという議論は当然次にくるのですが、これが第1点です。  2つ目、仮に研究会報告の考え方に立った場合でも、「同一職務・合理的理由なし」 という議論の仕方によっては、これはキャリア実態と捉えていいのではないですか。中 間報告は拘束性というのをかなり出して、それは言葉で消えたけれども、中身的には時 間外労働だとか、異動の頻度がどうだとか、幅がどうとかいう、あまり中身は変わって いません。  では、これ自体が現状の雇用管理を見た上で、たぶん是認して言っているわけです。 是認して我々は議論をするのか、いや、働き方を見直そうという観点で議論することに よって、意外と均衡配慮というのは、むしろ均等と取れるかもしれないと。私の問題意 識ですよ、中身には入っていないのですが、そこのところは均等・均衡の配慮というの は、研究会報告は現状の雇用管理、雇用の仕組みみたいなものを、日本型を前提にして どうも書いている。だから均等と均衡を分けたと。だから合理的理由の場合分けと絡ん でいるのですが、その辺はもしかしたら合理的理由の場合分けの議論によっては均衡は 必要がないかもしれないというか、もっと幅が広いということもあるのではないか。研 究会でキャリア実態の中身を議論することによって区分けが必要ない、なくなるかもし れないということも想定されるのです。だから時間外労働がどうだとか、配置転換がど うだ、転勤がどうだとか言われているものが、キャリア実態となる。 ○公益委員  言われることは、残業とか休日出勤とか、配置転換、転勤が全て日本の企業からなく なってしまったらという意味ですか。 ○労側委員  労働と賃金との対価の関係ですが、時間外労働が果たしてそれで賃金と直接関係する のかとか、転勤が将来あるかないかという想定のもとに区分けされて、それが合理的理 由が有るとか無いとかいうことについて、その考え方が違ってくれば当然。それは合理 的理由は関係ないとなればまた違った分け方ができる。中身に入っていませんが、要す るにものの考え方です。 ○公益委員  1つは3番目の現状の企業の雇用管理を是認しているのかという話ですが、まず1つ はフルタイマーにしても雇用、処遇の仕組みが変化してきている。処遇については仕事 や能力が成果に応じて、雇用についてもできるだけ仕事と生活のバランスのとれた仕組 みに変えていく。これを積極的に進める必要があるという認識です。それを進めること がフルタイマーとパートタイマーの処遇の均衡を実現する上で非常に大事だということ です。  ですから現状をそのままパートとフルの処遇の均衡を図るということではなくて、現 状、変化しているほうをもう少し後押しをしながら、雇用や処遇の仕組みを変えながら 処遇とパートの均衡を図ることが大事です。そういう意味では必要のない転勤とか残業 をなくすというのは当然です。そういうことは議論をしていると思います。  もう1つは職務ですが、職務と言ったり仕事と言ったり、特にガイドライン(案)の 所は、パートタイマーの方とかフルタイマーの従業員の方にも読んでもらおう、という ことで、日常用語にするということで「仕事」と言い方に置き換えているところもあり ます。基本的には職務と仕事は同じだと理解していただければいいと思います。  合理的理由ですが、これは同じ仕事であれば、それだけをもってパートとフルの処遇 を揃えると言えない部分があるだろう。それは合理的理由なわけです。これについてパ ート研究会ではキャリア管理の実態の違いということを言っているわけですが、これに ついてはそうではない部分があるのだということは、議論していったらいいと思います が、一応研究会では「キャリア管理の実態」と整理しました。  もう1つキャリア管理の実態で残業や転勤だと言われましたが、1社1事業所を考え れば、フルタイマーは転勤はないわけです。フルタイマーは残業をしない所もある。パ ートタイマーでも残業がある所はあるわけです。基本的にフルタイマーは残業し、転勤 があって、パートタイマーは残業・転勤がないから、合理的理由となるわけです、それ ぞれの企業のフルタイマーとパートタイマーのキャリア管理の実態を見て、合理的理由 は決まる。ですから、フルタイマーも転勤がなければその事業所にとってみれば、転勤 というのはキャリア管理の実態に含まれないということです。十分に答えられませんが 、いまはそういうことです。 ○労側委員  すると整理をするときは同じ職務ですか。 ○公益委員  そうです。報告書の中に「日本型」というのが出てきますが、これは日本だと労側委 員が言われたように横断的な労働市場がないので、社会的に職務というのが確立してい ない。だから日本型が必要だと言っているわけではありません。まずは同じ企業の内で フルタイマーと、パートタイマーがどういう仕事についているかという点で、私は同じ 職務であるかそうではないかというのは判断の基準はある。日本の型と言っているのは 、合理的理由のところです。同じ仕事であっても処遇を異にする合理的理由が、それぞ れの国の雇用管理のシステムなどによって違ってくるだろうと思うのです。そこを日本 型と言っているのです。  逆に言えばヨーロッパでドイツ型というのは当然ある。同じ職務であれば同じ処遇に しなければならないという点は普遍的な原則ですが、合理的理由ですよ。何を合理的理 由にするかについては、国によって違うのではないか、そこを日本型と言っています。 ですから同一職務であれば同じようにしないと言っているわけではなくて、同じ職務で あれば同じ処遇にする。ただし、そうしなくていい合理的理由は、それぞれの雇用シス テムのあり方によって違うのではないかということです。 ○労側委員  議論、検討に当たって、職務という中の分析ですが、どういう要素で見るかというの は、研究会ではされたのですか。 ○公益委員  そこまで細かくはやっていません。いまそれぞれの会社を取り上げれば、職務の範囲 は日本はそれぞれ1人に与えられた仕事が不明確だというのは当たらなくて、私は一人 ひとりの職務の範囲というのは、これまでも明確だった。最近は一層明確になる動きが あると思っています。特にパートタイマーはもともとかなり範囲は明確で、フルタイマ ーのほうは、ややその辺がフレキシブルであったというわけですが、フルタイマーにつ いても、仕事に応じて処遇をするという動きが強まっているので、まあ目標管理などは そうですが、仕事の範囲をできるだけ明確にしてそれで処遇をするという動きがあるの で、私は以前に増して仕事の範囲は明確になってきているのではないかと理解をしてい ます。 ○事務局  公益委員に補足しますと、仕事が同じか違うかという判断基準をどうするかは、どう いうタイミングがいいのか分かりませんが、まさにこの審議会で是非一度議論をしてい ただきたいと思います。研究会では公益委員が言われたように、それほど突っ込んだ議 論があったわけではないのですが、仕事の内容とは、その幅の広さ、そして責任の度合 (高さも含めた仕事の内容)、これを言うのだという議論はされていました。 ○使側委員  いまの事務局のご発言ですが、するとこの審議会では、日本全国に適用できるような 同一職務についての判断基準を作れということなのでしょうか。 ○事務局  職務の概念が、企業横断的に確立しているということでは必ずしもないというふうに 思うのです。そして、均衡ルールというのは、企業の中で通常の労働者とパートタイマ ーの間の処遇の格差問題を扱うということでしょうから、基本的にはそれは会社が判断 し、当事者であるパートタイマーが判断したり、労働組合が判断をするということだと 思いますが、そういう判断を通常は企業の中ではできているのだとは思いますが、そう いうもめ事を防止するため、あるいはもめ事があった時にそれを解決するために、それ を容易にするような一般的な考え方、参考になるような基準、そういうものは是非ここ の審議会でも一度議論をしていただければと思っています。 ○使側委員  例えばパートとフル、それから正社員同士の間での職務の同一性という話に、多分広 がらなければならないと思うのですが、そうしたことまでも視野に置いて議論せよとい うことになるわけですね。例えば「均等処遇」といった場合に、パートとフルタイマー の間だけの均等処遇ではないと思うのです。フルタイマー同士での議論という話にもな ってしまうので、果たしてそれが可能なのかどうかということですよね。 ○事務局  均衡処遇のルールを職場で適用することになって、それが正社員全体の処遇のあり方 に議論が波及することはあるかもしれませんが、そこまで議論を広げるということでは なくて、先ほど公益委員も言われましたが、パートタイマーは、かなり仕事を限定して 採用されている実態があるので、比較的職務がはっきりしていると思いますので、それ とフルタイマーを比較する時の考え方の一般的な基準をここで作っていただければ、あ とは個々の企業で経営者、または労使が判断されるということで、十分いけるのではな いかと思います。 ○使側委員  その辺のフィージビリティについては、厚生労働省のほうで検証はされた上でパート 研の報告を取りまとめておられたのでしょうか。 ○事務局  具体的にフィージビリティというのがどういうことを言われているのか、よく分から ないところもありますが、ここで社会的なルールをどういうふうにするかを決めていた だき、それを現場の第一線の施行機関が実施をすることになれば、さらに具体的なレベ ルの判断基準がいると思いますが、こちらの審議会では、個々の職場で判断できるだけ の基本的なルールを作っていただければと思います。  繰り返しになりますが、例えば今回この研究会のために個別の企業をお呼びして、ヒ アリングもしたり、またアンケート調査もして、その中で同じ仕事をしているパートタ イマーとフルタイムがいるかどうかをお聞きしますと、「分からない」という回答はご く例外的で、皆さん企業は判断されるわけです。あるいは正社員もパートタイマーも判 断されているわけですから、企業内の実態として仕事が同じかどうかという判断は、通 常はできていると思っています。 ○使側委員  そのアンケート調査ですが、例えばこの場で議論をしているルールを適用するに当た っての、同一職務性を念頭に置いたようなアンケート調査であったのかどうかが問題に なると思います。イメージ的に同じ仕事をしているという程度の感じかたの方が、同一 職務と判断して回答しているという場合もあり得たのではないかと思うのです。今日お 配りいただいた中小企業の事例のヒアリングの中でも、同じ仕事をしているけれども、 例えば責任がある程度違うという場合もありという事例がありましたが、こうした場合 においても例えば同じ職務ということで判断するという回答をされている場合もあると 思うのです。  ここでの議論は、そういったレベルの議論ではなくて、法律についての議論というこ となので、もう少し厳密な意味での同一職務性というものを考えなければならないと思 うのですが、レベル感がかなり違うようなアンケートの結果を基にして議論をするのは 、大変足元が危ういのではないかと私自身は思います。 ○事務局  研究会ではいま使側委員が言われたようなレベルの議論はできていませんので、機会 を作ってこの審議会の中で、同じ仕事である、あるいは仕事が違うということの判断基 準を、現場に適用する時に役に立つような判断基準ができるかどうかは、是非ご議論を いただきたいと思います。また、検討の素材は出したいと思います。 ○労側委員  私どもは最初に言っているように、今までのパート法は非常に欠陥があると、それは 研究会報告も言っているように、職業格差の改善に繋がっていないという現状認識は正 しいと思うのです。  それはなぜかといえば、従来型の行政指導では効果を上げていないという反省からす ると、もっと抜本的な法改正、法律制定が必要だという認識を持っています。その場合 に、合理的理由は有るか無いか、合理的理由は何なのかという議論は避けて通れない話 なので、その場合、職務の内容の違いとは何を指すのかという議論をしなければまずい ので、そういう意味では今後この課題があるのかなという認識はしています。  その上で、3頁の3の均衡処遇ルールの実現に向けた道筋のあり方で、選択肢として 1から4を示していますが、(1)の均等処遇原則タイプと均衡配慮義務タイプを合わせて ガイドラインを作った場合に、パート雇用機会の減少とか、パートと正社員との職務分 離等があって、企業あるいは労働市場への影響が強くなるので、こういうデメリットが あるということで、デメリットをかなり強調しているのです。  そこは経営側の皆さまにお聞きしたいのですが、むしろそれは逆の話であって、それ をなくすためにどうするかという議論を一方でしないと、こういうことが起こるからで きないのだという、どういう法律でもそうであって、均等法だって作ってみたらコース 別雇用管理ができて、実質的に男女を区分けするなどというのが当然に出てくるわけで す。そういうことがあるから、影響が大きいから(1)のタイプは難しいのだみたいな言い 方は問題ではないか。むしろもっとポジティブにやるべきではないかというのがありま す。  (4)は、いろいろデメリットの例等を書きながら、したがってのところでガイドライン にいくのです。(1)から(3)まで全部ガイドラインが必要なので、共通してのガイドライ ンを付けましょうと。このガイドラインというのは結局従来型の手法で、何を根拠にガ イドラインを作るのかというのも定かではないから、そこのところはどうも納得できな いわけです。なんでぐっとガイドラインにいくのかという。  研究会報告を仮に変えた場合であっても、処遇格差がなくなっていないということは 、逆に今までの10年間の、我々労働組合にももちろん責任はあるのですが、それが進ん でいないということからすると、もう一歩大胆なものをやらなければまずいということ を言っているにも拘わらず、ガイドラインというのは相変わらず行政指導型ではないか 、何も変わらないのではないかと感ずるわけです。その2つの点について、なんでマイ ナス面だけを強調して、それを、だからガイドラインとなるのかですね。  もう一つは、私どもは有期契約の問題も、パート問題としては避けられない。均等処 遇原則タイプも均衡配慮義務タイプも、有期契約問題にまったく触れていないわけです 。研究会もわざわざ雇用安定は書かなかったと言っているわけですから、そういうこと からすると、それも包含した法律を私は作るべきだと思うのです。そのことだけを申し 上げておきます。 ○公益委員  研究会報告で最終目標は(1)なのです。それははっきり言っているのです。つまりセッ トでやりなさいと。時機の選択については、いますぐ(1)をやれるという判断もあるでし ょうし、いま(1)をやる状況にないのだから(2)、(3)、(4)というのがあると言っている わけです。研究会の中の議論では、フルタイマーの雇用システムを、特に処遇の仕組み を変えないと両方のルールをセットで入れた場合、これ全体としてパートだけの話では ない、つまりフルタイマーの処遇の仕組みも相当変えないと、全部法律違反の企業ばか りになってしまう。まだ個々の企業なり、あるいは正社員の中でもこういうのは嫌だと いう人たちも相当いる状況があるわけです。そういう意味ではいますぐやる状況にない のではないかという判断なのです。  ですから最初は(1)、両方セットでやるのだけれども、そういう方向に持っていくため に、少なくとも労使なりパートタイマー、フルタイマーとして働いている人たちの合意 形成が必要だろうということで、ガイドラインと研究会は言っているのです。別にガイ ドラインで終りと言っているわけではなくて、最終目標はあくまでも(1)なのです。もち ろん審議会で(1)からやれるという判断をすれば、研究会報告ではそれを排除しているわ けではない。 ○労側委員  デメリットがありますね。 ○使側委員  労側委員が現状認識を言われましたが、私がこの審議会を再開したときの冒頭の所で したか、より詳細な職務別とか、勤続年数別のデータを出していただきたいということ を申し上げましたが、そのデータを参考にしつつ、基本的には労側委員とは多少異なる ような現状認識を持っているということで、企業内の人事システムとか、雇用管理シス テムについては基本的にはいま現在でも、先ほどの中小企業ヒアリングの例にもありま したように、かなり大きな制度上の差違があるわけです。そうしたシステムの構築につ いては、個別企業の判断に委ねるべきだということが基本的なスタンスで、パートタイ ム労働法という立派な法律があるわけですが、この運用については基本的には現行法の 遵守、普及ということを、まず大きく前進させるべきだと考えているところです。基本 的にはそういうスタンスです。 ○分科会長  その点についてほかに何かご意見がございますか。 ○労側委員  先ほど公益委員から、いますぐやることの混乱が予測され、いちばん効果的な方法と してガイドラインという説明だったと。 ○公益委員  効果的にとは言っていません。まず労使の理解なり、国民の合意を進める必要性は当 面あるだろうという認識です。そうではないのだと、十分に進んでいるといえば、我々 の認識は間違っていて、すぐ(1)、(2)、(3)をやれるという判断ももちろんあるでしょう 。すぐやるという前提では(1)、(2)、(3)はいますぐには難しいのではないかと言ってい るわけです。 ○労側委員  国民的な合意という中には、その多くがパートタイム労働者の当事者も含めてという ふうに捉えたとき、現実的にいますぐやることは難しいということを、少し時間をかけ ながらも、いま目指すべき方向はここだということを、私は先ほど審議会がどういう判 断をするかというのは、この場の議論だと言われたことを伺って、自分として意見とし ていまの時点で申し上げたいのは、労使でこの課題を扱うことは大変に難しい、でもこ れはもうスタートを切っているという実態がある。その中で議論を進めていけば、今ま での私たちの労使間における雇用管理のあり方も、当然見直しをして、基幹労働力とい うのは男性で、その男性というのは世帯の主たる維持者で、そのことと賃金制度とかあ るいは配置転換とか、残業が企業のニーズに応じられる環境も含めて、そういう雇用管 理のモデルを男性にしてやってきたことも実は見直さないと、お互いに良い仕事をして 良い結果を出したいというところは共通なのですが、様々に問題が確かにあります。  私はそれを引っ張る意味でも、是非この場では(1)がひとつの道筋も含めて方向性とし てはまず出して、それに向けて解決すべき課題は丁寧にメニューを出しながら、それを どういう時間をかけて、タイムスケジュールでいえば、どれぐらいかかるのかというこ ともある程度、想定しながら議論を詰めていって、(1)の見え方としてはこことしての結 論が出るように持っていきたい、そういう議論をこの先していきたいと思います。  使側委員は先ほど個別労使に任せるべきと言われたのですが、それで十分前進ができ る例なども研究会では取り上げて事例報告をされていますが、私は大方は個別労使に任 せて実態が変わるということよりも、個別労使の今までの雇用管理を見直すことのこち らからのメッセージを出すことなくして、この現状を考えると、個別労使では自主的に 任せて解決するというのは、自分自身の反省も含めて難しいと思うのです。そういうメ ッセージを是非出したいと、使側委員が先ほど言われた意見については、重ねて申し上 げたいと思います。 ○分科会長  ほかにご意見がございますか。 ○公益委員  遅刻してまいりまして、なかなか話に付いていないところがありまして、ご容赦いた だきたいと思います。労使それぞれの意見を聞いて、要は現在パートとフルタイマーの 間に発生している賃金格差、処遇の格差が大きいという問題意識は、両方とも持ってい るのかなという感じがしたのです。具体的対策として、それを実効面としてプラクティ カルにどういうふうに小さくしていくのかというところで、意見が対立していて、片方 はこれでいう(1)、片方は個別労使に任せるべきだという話だったわけですが、現状、パ ート法ができていま9年経っているわけですが、そこで法律が想定しているようには動 いていかない。何で動いていかないのだろうか。もし労使に任せてうまく改善していく 問題であれば、そちらの方向を取るべきかなと個人的には思うのですが、今のままでは 問題があるし、労使に任せて改善していこうという具体的呼び掛けだけでは、何か出て こないような気がするのです。  使側委員が先ほど問題提起として、労使に任せて解決していく道を取るべきだという ことですが、もう少しそこが具体的にこういうことをやれば個別労使に任せても大丈夫 だというアイディアが出れば、またそれなりの議論が深まっていくのかと思いますし、 労働側も労働側で主張する(1)の根拠を、もう少し具体的に議論をしていかないと、お互 い理念の議論で、中に一歩踏み込んだ議論になっていかないのかなと思いますので、少 し具体的に考えたらいかがでしょうかというのが提案です。 ○分科会長  今日は時間にもなりましたので、公益委員のご意見を受けて次回、議論についてどう すれば改善できるのか、もう少し具体的な方法も含めて議論していただきたいと思いま す。特にご発言がなければ分科会はこのぐらいにさせていただきたいと思いますが、よ ろしいですか。今日のところはこれで閉会にさせていただきます。本日の署名委員は労 側委員、使側委員にお願いします。 ○使側委員  この懇談会についても、一応議事録公表ということになるわけですね。 ○分科会長  冒頭で説明いただいたことで、そういう前提です。 ○事務局  労働条件分科会におきましても、懇談会にしたときに、議事録を公開されていますの で、同じように作るということで、冒頭申し上げました。そういうことから言いますと 、署名委員にもきちんと見ていただいたほうがよろしいのではないかと思います。 ○分科会長  次回の日程をお願いします。 ○事務局  次回は11月12日(火)で、時間も同じく15時から17時です。場所は9階の省議室です 。議題は引き続き「今後のパートタイム労働対策」ということで、よろしくお願いした いと思います。 ○分科会長  本日は長時間ありがとうございました。  紹介先:雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課 企画法規係(内線:7876)