02/10/09 第9回労働政策審議会雇用均等分科会議事録            第9回労働政策審議会雇用均等分科会             1 日時: 平成14年10月9日(水)15時00分〜17時00分  2 場所: 専用第21会議室(17階)  3 出席者:        公益委員:渥美委員、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員        労側委員:岡本委員、秋元委員、片岡委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員        使側委員:前田委員、志村委員、吉川委員、遠藤委員 ○分科会長  それでは、第9回雇用均等分科会を開催します。本日はご多忙のところ、ご参集いた だきましてありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。本日は樋口委 員と山崎委員が欠席されています。それでは、議事に入らせていただきます。本日の最 初の議題は、前回に引き続いて、「今後のパートタイム労働対策について」です。前回 いくつかご質問をいただいていますので、その点について、最初に事務局からご説明を お願いしたいと思います。 ○事務局  前回ご質問ございました件で、いくつかの資料を用意できたものから、まずご説明さ せていただきたいと思います。順番が逆になりますが、資料2からご覧いただきたいと 思います。労働側委員から、「ILOの家族的責任を有する労働者に関する条約156 号条約と165号勧告について」ということでした。こちらがその全文です。156号 条約の3条で、2頁目になりますが、家族的責任を有する労働者が差別を受けることな く、できる限り職業上の責任と家族責任との間に抵触が生ずることなく、職業に従事す る権利を行使することができるようにすることを、国の政策の目的とすることを規定し ています。この条文は、国の政策目的とすることを規定したもので、本条によって、直 接に具体的施策が求められるものではないという位置づけです。その後の4条から8条 までに、国等が行うべき具体的措置が規定されています。  165号の「勧告」のほうですが、6頁にパートタイム労働者についての言及があり ます。6頁のいちばん下のIVの21という所に、「その多くが家族的責任を有する者であ るパートタイム労働者等を保護するため、就業条件を適切に規制し、かつ、監督すべき である」とし、(2)は「パートタイム労働者の雇用条件は可能な限り、フルタイム労 働者の雇用条件と同等であるべきである」と規定しています。(3)は、「パートタイ ム労働者は欠員がある場合、またはパートタイム雇用への配置を決定した状況が、もは や存在しない場合には、フルタイム雇用に就き、または復帰する選択を与えられるべき 」ことを規定しているものです。  その次の資料3ですが、「研究会において間接差別についての議論、それとの関係は どうなのか」というご質問がありました。まず、研究会においては間接差別の議論はほ とんどなされませんでした。その理由としては、研究会の委員の方は、パートタイム労 働者の処遇についての公正なルールづくりという観点からは、男女間の間接差別を議論 するよりも、同性の間でも生じ得るフルタイムとパートタイム労働者の処遇の違いをど う改善するか、そういったパートタイム労働者の処遇の改善に直接つながる問題として 、正面から議論すべきであるというご認識であったと考えています。  ただ、資料3ですが、いくつか判例、特にイギリスにおいて、パートタイム労働関係 に関しても、間接差別という観点からの判例があります。特にイギリスでこういった例 があるわけですが、それはイギリスにおいては、2000年に「パートタイム労働者に対す る不利益取扱い防止の規則」が施行されました。それまでの間、例えばフランス、ドイ ツについては、前回ご紹介させていただきましたが、1980年代の段階でいろいろ法的に 規定されています。そういったものが制定されていないイギリスにおいて、間接差別と して訴えがなされたということのようです。もちろん、間接差別全体ではいろいろな判 例があるわけですが、こちらのほうでは、パートタイム労働に関係するものだけ、いく つか抜き出させていただきました。  ご参考までに紹介させていただきますと、2の(1)は、パートタイム労働者に対し て、フルタイム労働者よりも低い時間給を支払っていたことに対して、このような慣行 を間接差別として訴えたものです。これに対して裁判所は、フルタイム労働を要件とす ることに応じることができる女性か、男性よりも少ないという申立人の主張、そこの部 分は認めたわけですが、判決全体としては、間接差別とは認められていないようです。  (2)は、解雇に際して、フルタイム労働者に先任権ルールが適用される一方で、パ ートタイム労働者はフルタイム労働者よりも先に解雇することが、労働協約により認め られていた。フルタイム労働を先任権ルールの適用の要件とすることについては、間接 差別を構成する要件になるとの判断が下されたものです。  (3)は、第2子の出産後にパートタイムでの勤務を希望した一人親の女性に対して 、使用者がその機会を提供しなかったという事案です。女性が育児の負担はより多く課 せられる傾向にあることは、依然として事実であるという見解から、裁判所は、「フル タイム労働を義務とすることは、間接差別を構成する要件とみなし得る」という判断を 出しています。これは育児のための短時間勤務を企業が拒否した場合の例です。  (4)は同じく出産後の女性の話ですが、この女性は司書として管理的ポジションに 就いていて、出産後同じく司書の資格を持ち、司書補として勤務する夫との自分のポス トのジョブ・シェアリングを要求したわけですが、これに対して使用者は、申立人のよ うな管理的ポジションの者にとってジョブ・シェアリングは不適切であるとし、このレ ベルの収入であれば、育児施設が利用可能であるということから、申立人の訴えを認め なかったという判例です。  (5)は、申立人が10年間パートタイム教員として雇用されていて、解雇されたもの です。その間、フルタイム教員の約半分の労働時間について常用の雇用契約を結んでい て、これに加え、教員の不足時に臨時でフルタイム勤務を行っていたということです。 これに対しての年金制度ということで、申立人は、フルタイム教師では、実際の勤続年 数が年金に反映されるが、パートタイム教師の場合は無期の雇用契約の分だけ考慮され るのは、間接差別に当たるという訴えを起こしています。これに対して裁判所は、50歳 以上の該当地域の雇用者を比較の準拠とする母集団、プールで見たところ、この要件に 応じられる女性の割合は、男性のそれと比べて著しく少ないと言えないということで、 申立人の訴えを認めない判断を下しています。以上のように、間接差別という、男女差 別でもっていって、認められたものとそうでない事例があります。  3の「今後の動き等」ということですが、先ほど申しましたように、2000年の「パー トタイム労働者に対する不利益取扱いの防止規則」が制定されたということで、現在で は、パートタイム労働者はこの規則を基に、フルタイム労働者との雇用条件における、 平等な取扱いについての救済を求めることが、可能になっているわけです。特に間接差 別では救済されない同性のフルタイムやパートタイムとの比較の問題とか、フルタイム やパートタイムに男女が存在する場合についても、このパートタイム規則で判断されて いくことになるわけです。  また、先ほどの例の中では、育児のための短時間勤務という例がありましたが、これ に関連しては、2002年7月に雇用法が成立して、施行は2003年1月からの予定ですが、 6歳までの子を持つ親の権利として、短時間勤務等の柔軟な働き方を請求できる、とい う規定もできまして、こういったいくつかの法律、規則の成立によって、裁判の傾向も 今後は変わってくるのではないかと思われるところです。資料は以上ですが、あと、使 側の委員から前回ご意見があった件に関して、経過報告をさせていただきたいと思いま す。  1つは、中小企業について事務局でヒヤリングをしたらどうかという意見ですが、現 在2社、ヒヤリングをさせていただきました。次回までにさらにいくつかする予定です ので、次回にそれらをまとめてご報告させていただきたいと思っています。もう1つ、 処遇格差を論じるに当たっては、同じ職種に合わせたり、同じ勤続年数に合わせたりと いった形での処遇格差の実情が分かるものが、統計データでは必要ではないかというご 意見に関してですが、現在、小分類による職種別について、勤続年数別でパートと一般 労働者の所定内給与を比較するべく、特別集計を依頼している最中です。そういった形 で特別集計すると、サンプル的にどのぐらいとれるかということが不明ですが、次回そ れも、もし出せるような形になりましたら、資料としてお出ししたいと思っています。 以上です。 ○分科会長  ありがとうございました。それでは、今のご説明についてご質問、あるいはご意見等 がございましたら、どうぞご発言ください。 ○労側委員  間接差別に関してなのですが、研究会の報告の47頁に、労働基準法上の均等待遇原則 を定めた第3条も、「差別禁止事由として挙げられている社会的身分には、パートや非 正社員といった雇用形態の違いは含まれないと解される」という部分があるのですが、 ここの3条の「社会的身分」には、パートが含まれるという見解もあると思うのですが 、研究会の中で、ここの中でどういう議論がされたのか、これは委員の皆さん全体のご 意見だったのかも含めて、ご紹介していただきたいと思います。 ○事務局  まず最初に、労働基準法第3条の解釈としていくつかいろいろなご意見があるかと思 いますが、コンメンタールということで申しますと、事業における職制上の地位、例え ば職員と工員、常用工と臨時工というようなものは、ここにいう社会的身分に含まれま せんといったことで、そういったことを受けて、特に研究会の中でも、労働基準法第3 条に対しての意見に、これを違うと考える意見での議論はなされなかったと認識してい ます。 ○労側委員  結果として身分差別ではないかという議論が、パートの議論をする時に、いろいろな 場所で出されるケースがあると思うのですが、そのことに関して、今分かりましたが、 特段議論はされなかったけれども、研究会としては、こういうふうに結論づけたと理解 してよろしいのですか。 ○事務局  こういう47頁の記述について、皆さんそういった認識をお持ちで、こういう報告にな ったというものです。特段、その記述に関して議論がなされたというものではないとい うことです。 ○分科会長  ほかにご質問はございますか。 ○公益委員  労働基準法第3条の社会的身分についての一般的な理解ですが、今、労側委員が言わ れたように、学説上はおそらく少数ということで、厳密にいうと、パートとか非正規は 身分に当たるのではないかという考えもないわけではありませんが、裁判所も学説の通 説な見解も、行政の解釈、通達も基本的には、この「社会的身分」というのは、いわゆ る生来のもって生まれた状態のことを言うということで、パートとかその他非正規、こ ういうものは少なくとも労働基準法第3条の「社会的身分」には当てはまらないという のが、今の支配的通説の見解ではないかと思います。 ○分科会長  よろしいですね。ほかにご質問、ご意見はございますか。 ○労側委員  学説的にはそういうご意見があるかと思いますが、よく聞かれる話は、特に公務部門 などは、臨時労働者あるいは非常勤がありまして、今、公務員法の定数でいわば正規の 公務員の人数が決まっていることもあって、業務の遂行にあたって非常勤の医師を使う 場合に、その人たちの人件費が物件費で扱われているのです。この実態を見た時に、公 務員制度の問題が背景にあるのでしょうが、人間として扱われないという実態を、何と 評してよいのか。本当に労働基準法第3条に当てはめたいと思うのですが、そういうこ とも含めて、通説として社会的身分と言わないというのは、どうも実態と乖離している 感じです。生来は、確かにパートでずっといかなければならないということはないので しょうが、実際行われている雇用管理は、事業場の中では、そういう身分差別要素をか なり持ったものが同じになるというのですが、そういう理解というのは間違いですか。 ○公益委員  間違いかどうかを断定する権限も能力も私はありませんが、基本的に労働基準法の解 釈に関する限り、ご承知のとおり労働基準法というのは、違反に対して刑事的な制裁を 科するという、刑事法的な性格を持っていますので、違反に該当するかどうかの判定基 準というのは、そういう観点から厳格に解するということが、基本的な法律の解釈とし ては求められていくのです。そういうことを考えますと、ここにいう「社会的身分」と いうのは、もともと立法の趣旨としては、もって生まれた生来の人的な属性にかかる状 況というものを予定して書かれたものであるということの理解が、別に学説だけではな くて、今裁判所の法律的な見解でもあります。ですから、この点は基本的には通説的な 考え方ではないのでしょうか。 ○労側委員  労働基準法第3条以外で、もしそういう差別的要素があった場合、どういう法律でフ ォローするのですか。 ○公益委員  それは私たちは分かりません。憲法の人権保障を持ってきて、公序の問題にかけてい くとか、考え方としてはいくつか選択肢はあるだろうと思いますが、少なくとも私が言 っているのは、労働基準法第3条とのかかわりでの「社会的身分」に該当するかどうか ということで言いますと、それは今の一般的な理解では難しいだろうということです。 それだけの話です。では、全くフリーでいいのかということを言おうとしているわけで はありません。ほかに何かの形で解釈としてももっていける可能性というのは、いろい ろ理論的な構築はあるだろうと思いますが、労働基準法第3条とのかかわりでは少し難 しいのではないか。それが今の一般的な法律上の解釈ではないかというだけの話です。 ○公益委員  今のフルタイマーとパートタイマーの処遇の違いについて、合理的ではない格差があ るというのは、研究会でも認識があるわけです。その上で、それをどうするかというこ とを議論しているわけです。ただし、合理的ではない格差というものが、労働基準法第 3条でいう「社会的身分」というものですべてが説明できるのかというと、そうではな くて、あそこでいう「社会的身分」というのは、公益委員の言われた趣旨です。ですか ら、今の現状の格差が不本意なものはないと言っているわけではなくて、労働基準法第 3条でいう「社会的身分」というものから説明し、それによって今のフルとパートの格 差をなくせばいいというふうに論理立てしていくのは無理だろう。だから、それは別で 議論していくということで、ここではパート労働法も含めて検討したということです。 ○労側委員  社会的身分を述べる議論を、きちんとどこかで書かれていて、将来を見据えてさまざ まな通説や、法律に基づく判断をするという厳格性、そういったものを理解するという 上に立つのですが、この研究会報告は、「パート労働の現状を今後どう改善をしていく か」というテーマを持たれた中で、設定をされたという研究会が、ここで受け止め方と しては非常に断定しているように書かれていることが、やはりちょっと不安に思う。そ ういう意見を持っていまして、その点について、これを取り上げた狙いがあったのであ れば、それをもう一度伺いたいと思うのです。 ○公益委員  フルとパートの処遇格差が、労働基準法の定義する社会的身分ですべて説明できるの であれば、パート労働法も何も要らないことになるわけです。もちろん、社会的身分と いうのは、今言ったような出身とか、そういうことです。そういうことで、今のフルと パートの処遇格差がすべて説明できるのであれば、労働基準法の3条だけでやればいい わけです。しかし、そうではない。そういう部分がゼロだとは言いません。基本的には 雇用契約として、フルタイマー、パートタイマーとして結んでいる。しかし、その後い ろいろな別の理由で、非合理な格差が生まれる状況がある。それが出身等という、第3 条の規定する社会的身分ではなく、その非合理な格差があるとすれば、それでは、現行 法のパート労働法の中でカバーできるのか、あるいは新しいルールづくりが必要なのか どうかですが、後者のほうだろうということで議論をしたということで、現状について 我々は問題ないというところから出発したわけではない。  ただ、我々は社会的身分というのは、通常労働基準法第3条で規定している社会的身 分というもので、現状のフルとパートの不合理な処遇差があるとすれば、それを説明で きるのはごく一部で、それだけで改善できないところが大多数なのではないかと理解し たということです。 ○分科会長  一応、今の問題はよろしいですね。ほかにご質問はありませんか。 ○労側委員  先ほど資料の2で、労働協約について国の政策目的を規定しているもので、省庁が規 定されているものではないようなニュアンスの説明があったように思うのですが、その ことの意味がちょっとよく理解ができないということと、もともとこの質問というか、 資料を出していただきたいということの議論の中では、家族的責任を有するということ についての意識を持ちながら、このパートの議論をすることが非常に大事ではないかと いうことで、問題提起をしているのだと思うのですが、そういったことについては、も ちろんきちんと議論するという認識でよろしいかどうかということを、お伺いします。 ○事務局  労働基準法第3条で申しましたのは、この条文そのものが直接に具体的施策を求める ものではなくて、第4条から第8条に関して具体的な措置、これに対して国内法とか、 そういった形でどう整備するかということが、批准の時にも重要だったということで、 ちょっとご紹介させていただきました。  言われた、資料として提出した意味は、これからいろいろと具体的に均衡処遇ルール とかを考えていく上で、もちろんこれについても言及されることがございましたらばと いう意味での参考として、提出したものです。 ○使側委員  基礎的なことを質問しますが、条約は批准したら国内法の整備が必要ですが、勧告は そういった性格のものではない、ということを確認したいのです。 ○事務局  勧告の性格ですが、ILOの勧告は、各国の経済的、社会的事情から見て、画一的な 規制を行うことが困難と思われる事項について、各国がそれぞれの実情に基づいて、適 切な措置をとるようガイドライン的な性格のものでありまして、締約国が法的義務を負 うものではないということで、この点が条約とは異なっています。 ○分科会長  ほかにご質問はございますか。特にほかにご発言がなければ、次に進みたいと思いま す。事務局から資料1の「均等処遇ルールの考え方」について、ご説明をお願いします 。 ○事務局  それでは、資料1の「均衡処遇ルールの考え方」についてですが、まず、2頁目の「 働きに応じた公正な処遇の必要性」ということで、現状における問題点に関する資料を ご説明させていただきたいと思います。前々回の時にも出した資料と重複する点があり ますが、この図表の1は、パートタイム労働者の増加が見られる中で、正社員と同じよ うな仕事を担うパートタイム労働者が増加しているということで、それについて、事業 所、正社員、パート労働者各々に、同じ仕事をしている正社員がいるかと聞いたところ 、それぞれ傾向が違いますが、少なめに回答が出ている正社員の回答でも、「多数いる 」というのが1割、「少しいる」というのが3割で、合わせて4割、こういった形で正 社員と同じ仕事をしているパートの方がいるということが答えられています。正社員と 同じ仕事をしているパートが携わっている職種では、「事務」が5割を占めています。  次の3頁は、そういった正社員と同じ仕事をしている非正社員が、3年前と比べて増 えているかと聞いたものでは、「増えている」という事業所が4割を超えていまして、 「減っている」と答えた事業所を大幅に上回っています。  図表の2は、平成13年に出したパートタイム労働者総合実態調査ですが、正社員と職 務・責任が同じパートタイム労働者がいるかどうかを聞いたところ、「いる」という事 業所が4割ということです。こういった形でパートの方たちも、正社員と同じような仕 事をしてきているという中で、役職に就いている割合を聞きますと、平成7年と比べて 、13年は増えています。それが図表の3です。  4頁の図表の4は、東京都の外食産業に関しての調査ですが、リーダーパートの割合 を聞いたところ、「パートにおいてリーダー的存在」と答えた方が4割弱いる。その中 で、どんな業務のリーダーかということでは、「部門の時間帯責任者」という方が4分 の3を占めているというものでした。  5頁の図表の5は、そういった方たちについて、店長がパートに今後期待したい業務 ということでは、「サービス・顧客対応全般の統括」、そういったことでパートに基幹 的な仕事を担ってもらうことを期待している、というものが多くなっています。こうい った状況の中で、図表の6ですが、一般労働者とパートタイム労働者の1時間当たりの 所定内給与額の推移を見たものです。女性の場合ですと66.4、男性で50.7となっていま す。格差の推移を見てみると、拡大傾向が見られるというところです。これが全部の平 均ですので、次の頁の図表の7では、パートの職種別労働者構成を、一般の職種別労働 者構成に置き換えて調整しました。こういった形で調整すると、正社員の約8割の水準 になりまして、職種構成の違いが影響している面がありますが、残りの2割近くの部分 は他の要因によるものがあると考えられます。  次が「パートタイム労働者に対する各種手当と各種制度の実施状況」ですが、特に平 成7年と比べて、実施割合が定期昇給、ベースアップ、賞与、昇進・昇格、そういった ところでは減っているという状況が見られるところです。  7頁の図表の9は、パートから正社員への転換制度があるかと聞いたものについては 、「転換制度がある」というのが46%ということで、これについては平成7年と13年で 、あまり違いが見られないという状況です。その下が健康診断と福利厚生について聞い たものですが、定期健康診断、社内行事への参加、慶弔見舞金、これに関しては、平成 7年と比べて平成13年のほうが増加しているというのが、見られるところです。  8頁の図表10は、こういった状況の中でパートの方たちに、今の会社、仕事に不安や 不満があるかと聞きましたところ、「ある」と答えた方が、平成7年と比べて13年のほ うが増加して54%となっています。その中では、「賃金が安い」というのが51%という ことで、いちばん多くなっているところです。  9頁はパートの方たちに聞いたものですが、職務レベルが自分と同程度と認識してい る一般正社員と比較した場合の、時間当たりの賃金差について、「自分のほうが低い」 と答えられた方が75%、4分の3の方たちがそう答えています。その差についてどう思 うか、納得できるかできないかを聞いたところ、「納得できる」という方が約5割、「 納得できない」という方が約3割で、納得できない理由では、「職務内容や責任が同じ 」とか「職務内容や責任に見合わない」という答えが多くなっています。一方、納得で きると答えられた方については、「責任が違う」「勤務時間が自由」「職務内容が違う 」、そういった点で納得できると答えられた方が多くなっています。  図表の12は、先ほどの正社員との賃金格差についての納得度について、就労期間と職 務レベルで聞いたものです。就労期間が長くなるほど、また自分の認識する職務レベル が高くなるほど、この賃金差に納得できないという人が増加している傾向が、この図表1 2、13から見られるものです。  図表の14、15は、先ほどの「賃金格差に納得できない」と答えられた方に、理由を聞 いたものですが、就労期間で見ますと長くなるほど、「職務内容や責任が同じ」という ことが、納得できない理由として高くなってきています。職務レベルに関しても、やは り同じような傾向が見られるところです。  図表の16は、「賃金格差に納得できる」と答えられた方たちについて、納得できる理 由を聞いたものですが、就労期間が長くなるにつれて、「責任の重さが違う」と答えら れる方が減って、逆に「勤務時間の自由度が違う」と答えられる方が増えている傾向が 見られるかと思います。また、職務レベルで見ますと、グループリーダークラス、それ 以上、そこでは「職務内容が違う」と答えられている方が、だんだんと多くなっている 傾向が見られるところです。  以上がパートの方たちに聞いた部分ですが、今度の図表の18は、正社員との賃金差が ある場合の理由を、事業所のほうに聞いたものです。この賃金差というものは、同じ職 種の正社員の初任給1時間当たりの賃金と、パートの方の最初の採用時の1時間当たり の賃金差ですが、賃金額に差があるという所が8割を超えています。その理由としては 、「職務内容が違うから」「責任の重さが違うから」「勤務時間の自由度が違うから」 といったものが、多くなっているところです。  図表の19では、事業所ごとに、正社員とその職務内容がほとんど同じ方がいるかと聞 いたところ、「多数いる」「一部にいる」、これを合わせると58%になりますが、そう いった方たちについて、今度は類似する正社員との処遇の格差を縮める必要性があるか と聞いたところ、縮める必要性について、「必要性が高い」「一定の必要性がある」と 答えた者、両方を合わせますと5割弱という状況です。同じように、管理業務や専門業 務に従事している非正社員についても、「一部にいる」「多数にいる」というのが、合 わせて25%ぐらいですが、それに対して類似する正社員との処遇の格差を縮める必要性 については、5割を超える形で「必要性がある」と答えているところです。  15頁の図表の20は、正社員の方に聞いたものです。「3年前と比べて、パートの方が 増えているか」ということで聞きますと、「増えている」と答えている所が4分の1、2 5%あります。そこに対して、パートの処遇の改善の必要性を聞いたところ、「感じてい る」と答えている所が50%という状況です。  図表についての説明は以上ですが、いちばん最初の1頁に戻っていただきたいと思い ます。こういった状況を踏まえて、パートの状況をまとめますと、パートタイム労働者 の増加が見られるわけですが、こういった中で正社員と同じような仕事、責任を担う基 幹的役割を持つパートの方たちも増えているわけです。こうした中で、正社員とパート 労働者の処遇差について、合理的な説明が困難な状況が生じている。これに対して、企 業内におけるその見直しの必要性についても、労使双方から、そういった必要性がある と答えられているという状況もありまして、やはりパートタイム労働者の処遇について 、正社員も含めた公正な処遇のあり方として検討していく必要性があるというふうに、 考え方をまとめております。  ここの(1)の部分は企業内の問題ですが、(2)のほうは社会全体としての観点で す。今申しましたように、こういった形で正社員とパートタイム労働者の処遇差をその ままにして、正社員からパートへのシフトが加速することになりますと、正社員雇用の 入り口が一層狭まるとともに、労働市場全体の不安定化がもたらされることになります 。そうならないように、より多くの層の就労可能性を広げて、経済的自立を促進してい くために、多様な働き方に対応した処遇の仕組みを講ずることが重要である。このよう なことを通じて、ライフステージにおいて短時間で働く層が拡大していくことになりま すと、社会全体としても雇用機会の拡大、そして少子化が進む中での社会の支え手を増 やしていくことにもなるという考え方で、必要性を整理しています。  そういったことから、2で働きに応じた公正な処遇を、どのように考えていくかとい うことです。(1)(2)は、内容に関するものです。(1)は、パートタイム労働者 をどのように場合分けするのか。いろいろなタイプのパートタイム労働者がいるという 中で、どういうふうに分けて考えていくかということで、(1)(2)(3)とあります。仕事、 責任が同じと異なる場合に分けて、さらに仕事、責任が同じでも、処遇差について合理 的理由がない場合とある場合というふうに分ける。そういったことが、パートタイム労 働研究会の考え方です。処遇差の合理的理由の考え方ですが、今までの研究会報告をい くつかご紹介させていただきます。  最初の所にありますのは、「ものさし研」と言われるもので、そちらのほうでは「残 業、休日出勤、配置転換、転勤がないなどの場合、合理的な差を設けることもあり得る 」。そういう記述になっています。今回のパートタイム労働研究会報告では、こういっ た我が国の処遇システムの実態を考えると、処遇格差の合理的理由は、雇用システムの 実態に即して、柔軟に認めることが必要となると考えられるということで、この考え方 の部分を、幅広い異動の多寡などキャリア管理の実態と呼んでいます。  この「キャリア管理の実態」ということですが、パートと正社員の間で処遇差を設け る場合におけるキャリア管理の違いということは、企業の雇用管理の考え方に基づいて 、パート社員と常用フルタイム社員の間で、異動の幅、頻度、あるいは同じ職場の中で も、役割の変化の度合いが明らかに違うことを、ガイドラインでは説明してあります。  こういったキャリア管理の違いについて、いくつかの企業で具体的な例がありますの で、それを紹介させていただきます。資料で申しますと、16頁の別添2です。まず最初 が、(1)のスーパーの例です。比較的全国展開されているスーパーに見られるもので すが、正社員において、こういった全国転勤、エリア内での転勤、転居を伴う転勤なし といったことによるキャリア管理の違いが行われています。転居を伴う転勤なしという グループについては、パートに関しても、こことの処遇差はないという形で行われてい るという例です。なぜこのように正社員に関して(1)(2)(3)と分けるのかということにつ いては、いろいろな店舗を経験することが、マネジメント能力には必要だということか ら、マネジメントレベルに応じてこのように分けているそうです。  さらにもう少し具体的なスーパーの例です。それが(2)ですが、従来の正社員とパ ートタイム別の雇用形態を一本化して、働き方によって4つの契約区分に分けたという ものです。その4つに分けたというのは、下の注の1にありますが、「ゼネラルキャッ プ」というのが従来の正社員的な働き方で、「アクティブキャップ」というのが、1年 契約で転居を伴う異動のない時給制のパートタイマーの方、「キャリアキャップ」とい うのは、1年契約で転居を伴う転勤なく、日給月給制のフルタイマーということです。 あとは「プロフェッショナルキャップ」という形で、特別な個別契約で専門職的な区分 ということです。  「ゼネラルキャップ」のほうは支配人までいくという形ですが、「アクティブキャッ プ」と「キャリアキャップ」に関しては、課長までいくという形になっていまして、本 人の働き方、そういった勤務形態によっては、こういった区分の変更が可能ということ です。ちなみに、ここで「フルタイマー」と呼んでいますが、この企業においては、フ ルタイマーというのは、1日8時間という考え方ではなくて、土、日、祝日、そういっ た時も、すぐに出勤できる。そういった可能性を含めて、「フルタイム」と呼んでいる ようです。こういった形で、仕事の要件と希望する働き方の調和を考えて、会社と社員 の間の契約を区分しているという例です。  17頁は百貨店の例です。こちらのほうは、正社員と準社員、パートタイム社員という ことで分けているものです。それぞれ雇用形態と契約期間、勤務時間、また提供すべき 労務に対する要求水準、それぞれ違っているということですので、パート研の区分で言 いますと、この3つに関しては、仕事、責任、そういった面ではパートとは異なる仕事 ということになるようですが、パートに関しても、処遇の違い、そういったことについ て応募者全員に対して、会社セミナーで説明している。  また、ルール2に関するように、処遇決定プロセスへの参画という形で、再契約者に 対してアンケートであるとか、労使協議会での協議、組合の加入、そういったこともし ているということです。ルール3が、仕事の内容、役割の変化、能力の向上に応じた処 遇の仕組みという形で、正社員と評価項目は異なるものの、昇給の考え方は一般職の正 社員とほぼ同じ形での、能力考課方式をとっている。ルール4がパートの正社員への転 換ということですが、正社員への転換という形ではありませんが、フルタイムでの契約 が可能であれば、準社員への応募が可能といった形での転換制度があるということです 。  18頁は外国の例です。外国においても、処遇差の合理的理由があるというのを、いく つかのその国の法律の中で見られますので、ご紹介させていただきたいと思います。ま ず最初の所がドイツですが、「パート労働を理由として、比較対象となるフルタイムで 雇用される労働者よりも不利に扱うことは、客観的な理由によって異なる扱いが正当化 されない限り許されない」というふうになっています。  ここでいう「客観的な理由によって異なる扱いが正当化される」という場合について ですが、これは前回に紹介させていただいた1985年の就業促進法がありましたが、ここ に書かれているこの法律は新しいものですので、判例のほうはまだ蓄積されていません が、就業促進法の考え方で言いますと、その時の判例で申しますと、職能資格とか職業 経験、職務内容、こういったものが客観的な理由ということで、認められていることが あります。また、比較の対象となる労働者というのは、「労働関係の種類が同じで、か つ同等または類似の活動に従事している、当該事業所のフルタイム被用者」ということ です。ただ、その事業所内に比較対象となるフルタイムの方がいない場合には、適用可 能な労働協約に基づいて、比較対象となるフルタイム被用者にということで、産業横断 的な考え方がとられているものです。  その次がフランスで、こちらのほうはパートタイム労働者の報酬は、同じ格付けで同 等の職務に就くフルタイムの労働者の報酬に対して、労働時間、当該企業における在職 期間を考慮して、比例的なものとするということで、同じ格付けであるとか、その企業 における在職期間、そういったものが考慮されているということです。  いちばん下がイギリスです。比較可能なフルタイム労働者は、基本的には同じ使用者 の下で、同じまたは類似の仕事、経験、能力、資格が同じ、同じ種類の契約で働いてい る者、この方たちよりも不利な取扱いを受けない権利を有する、という形になっている ものです。こういった形で、諸外国においても処遇差の合理的理由、それぞれの国の法 体系であるとか、産業の労働協約の実態、そういったものに基づきながら、処遇差の合 理的理由というものがあるということで、紹介させていただきました。  こういった処遇差を考える時、まず、(1)の方でパートタイム労働者をどのように 場合分けするのかということを考える。そういった点が1つです。(2)のほうで、こ の分け方に対応して、それぞれ公正な処遇として、どのようなルールの内容がいいのか ということを考えていただくことが、次の考え方としてあるということです。  また、いちばん下に※で「あり方及び普及推進方策」と書いてありますが、これにつ いては、(1)(2)の内容についてどのような手法でするのか、ある意味でルールの 位置づけというようなものです。法律によるのか、法律に基づくものなのか、単なる啓 発的なものなのか、いくつかのレベルが考えられるかと思います。それと、普及推進方 策、社会への定着の仕方、そういったことについてのご議論というものです。ここの「 あり方及び普及推進方策」については、(1)(2)がすべて片付いてからというより は、場合によっては(1)(2)の話をしている間に、必要に応じて言及するというこ ともあるかと思います。そういうことから、ちょっと特別な扱いという形で、※にして いるところです。そういったことで、働きに応じた公正な処遇の1つの考え方の参考と いうことで、ご説明させていただきました。 ○分科会長  どうもありがとうございました。それでは、「均衡処遇ルールの考え方」についての 議論を進めていただきますが、最初に、今のご説明についてご質問、あるいはご意見が ありましたらどうぞ。 ○使側委員  資料1の(2)の3行目に、「このままにしておくと、正社員雇用の入り口が一層狭 まって、労働市場全体の不安定化をもたらす」とありますが、この問題というのは、報 告書の中でも、「正社員の処遇も含めて見直すべきだ」というご意見も書いてあると思 います。そのことというのは、特に今の経済状況の中では、いわゆる企業の中の人件費 の総額が同じだということだとすると、賃金だけというふうには申しませんが、正社員 のほうにもある種の負担というか、今までどおりの賃金がいかないということも含めて 考えていかなければいけないということだと思います。  そうなりますと、今日いただいた資料等でも、例えば正社員の側から見て、図表20で 、正社員の認識として同じ仕事をしているパートさんが増えていると言いつつも、この 処遇の改善をしなければいけないと感じている人が半分いますが、感じていない、分か らないという人たちも、また半分ぐらいいるわけで、そういう人たちも説得していかな ければいけない、ということがあるわけです。そういうことを思いますと、これは相当 きちんと時間をかけて議論をしておかないと、いわゆる従業員同士の中でも、非常に難 しい関係が出てくると思いますし、今、多くの会社の中では、いわゆる正社員の処遇に ついて成果主義だとか、そういう方向で制度を変えている企業等もあると思います。そ ういうことがきちんと職務給の時にできている所であれば、こういうことも非常にやり やすいと思いますが、まだまだそこまでいっていない企業もたくさんあるわけですから 、その時に、このパートの問題だけを取り上げて職務給的に合わせていかなければいけ ないとなりますと、なかなか議論をするのにも非常に難しいと思います。  多分、ここにある会社の例等も、そんなに短い時間にこういう制度ができたのではな くて、やはりある種の長い社内での議論があって、こういう制度が出来ているのではな いかと思いますので、この12月までに結論を出すとか、そういうことを決めて議論をし ていくというよりは、もう少しきっちりと議論をしていったほうがいいのではないかと いう意見を持っています。 ○労側委員  公正な処遇の必要性ということで、現状における問題点ということで配られているデ ータを見ると、賃金と処遇。賃金は分かるのですが、処遇とは何を含んでいるのか。処 遇への納得度とか何か、処遇というのは賃金も含むのか、あるいは賃金以外の項目を言 っているのか、そこをどう認識をするのかが1つ。  問題点という以上、毎回言っているのですが、やはり期間雇用という問題の雇用の安 定性ということを議論しないと、パート労働者の議論というのは完結しませんので、ど うも認識が事務局と違うのです。パート労働者の7割は有期だという、その有期の問題 について、私どもに寄せられているいろいろな相談事項でも、毎年毎年契約期間が短く なっているのです。雇止めはどんなふうにやるかという相談も結構ある。そのことを問 題とは言わずに、何と言うのか。非常に狭めようとする感じがするのです。前に比べた データがありますが、ここでいう問題点というのは、雇用問題について期間雇用は一言 も書いていません。そこはどういう議論をしようとするのか、お聞きしたいのと、賃金 以外の処遇というところについて、どういう範囲の労働条件などを考えているのか、お 聞きしたい。  最後にドイツの例でちょっと聞こえなかったのですが、ドイツという合理的な客観的 な理由としている項目、事由が何なのか、職能資格までは聞いたのですが、それ以外に どういう項目があるのか、聞こえなかったということです。  もう1つ申し上げますと、今、使側委員が言われた正社員の処遇について納得度、8 頁の必要事由に、「賃金が安い」というのが6割近く、加えて平成7年より男性が6割 、女性が5割増えているわけです。納得度はどうかというと、就労期間が長ければ高い とか、水準について私どもは議論をしなくていいのか、契約期間の問題とその水準の話 。3日前、日経新聞に契約期間が3年というのが出ていて、通常国会に改正案を出すと いうことがはっきりしています。研究会報告は、そういう問題のルールと、パートのル ールは一緒にやりなさいと言っているわけですね。こっちは、私どもは法制化しろと言 っているのですが、それは出てこない。行政側も、研究会報告をベースにするなら、向 こうは追補を書けといっているなら、こっちもどうするのかをきちんと踏まえてもらわ ないと、チグハグになるのではないかと思うのですが、そのことをお聞きしたいのです 。 ○事務局  順番は前後するかと思いますが、ドイツのものに関しては、判例で出ているのは、職 能資格、職業経験、職務内容、そういったものが違うということが、客観的なその理由 になっている判例があるというものです。  また、雇用の安定性の話について、パートの有期との問題の件ですが、やはり何回か 申しましたが、この分科会ではパートの方、短時間労働という部分に焦点を当てている ということがまず中心になるものです。有期という観点は、パートの方だけではなく、 一般の労働者についても雇用の安定性をどう考えるかということで、労働条件分科会の ほうで議論されているということですので、そこのところは切り分けているという考え 方です。  研究会報告のほうで2つの考え方を、ちゃんと整合性をとらなければおかしいではな いかというお話でしたが、これにつきましても、そういった雇用の選択肢を増やす部分 と、雇用のルール、こちらの均衡処遇とか、そういった観点については、ルールの内容 、何でするのかというそのレベル、それは法律であるとか、いくつかいろいろな形があ るかと思いますが、そういったものがいろいろな形で、同じような形で同じレベルの法 律という、そういったことまでは、研究会のほうでは想定されていないと思います。時 期といったものについても、やはり同じような考え方で整備されていくようにというこ とで、すべて同時にということまで求められているのではないと事務局のほうでは認識 しているところです。  処遇の関係では、例えば手当であるとか、能力活用制度とか、福利厚生といったこと も含めて、データとしては紹介させていただきました。処遇の範囲、また均衡処遇とい うことですから、これについてはさらにまたこちらの審議会の中でもご議論していただ けたらと思います。 ○労側委員  今の処遇の件についてですが、冒頭に「公正な処遇」とあります。ここでいう「公正 」というのは、これからの項目も含めて議論するということでいいわけですか。「公正 な処遇の必要性」の「公正」というのは、どういう意味でいっているのか。処遇問題す べてを指しているのか。 ○事務局  処遇問題というか、社会的に公正だと思われる処遇といったことです。 ○事務局  研究会での議論は、処遇の範囲として主として議論をしたのは賃金です。賃金につい て議論いたしました。それ以外にも企業内の処遇制度はさまざまありますが、均衡処遇 のルールを作るという観点から、どこまでの範囲で議論をするかというのは、まさにこ こでご議論いただいたらよろしいかと思いますが、研究会報告は、賃金にほとんど絞っ て議論がされたと思います。  労側委員も、また労側委員も言われました有期雇用の問題は、前回も事務局のほうか らご答弁させていただいたつもりだったのですが、有期雇用労働者が持っている雇用の 不安定さの問題は、有期雇用の中にはパートタイマーの有期雇用もフルタイマーの有期 雇用もおられますが、それはパートタイム労働というアプローチではなくて、有期雇用 という雇用形態として、雇用の安定などの問題をどう考えるか、なかんずく反復更新型 で実態としては常用雇用に近いような方たち、その方たちの反復更新についての適正な ルールはどうあるべきかというのは、問題点としては研究会でも、たしか44頁、45頁辺 りに指摘がなされていると思いますが、厚生労働省として、どこの審議会で議論してい ただくかということの整理については、それは労働条件分科会のほうでその問題はご審 議いただこうということで、事務局の間では整理をさせていただいております。  また、この分科会で有期労働者の問題を議論していただくとすれば、研究会での議論 の流れでいきますと、パートタイマーをどういう範疇でグルーピングするかという問題 提起を資料1でしていますが、その中で処遇差に合理的な理由があるかどうかというメ ルクマールとして、キャリア管理区分という概念を示してあります。キャリア管理が違 うかどうかという判断基準として、雇用期間の定めがあるとかないとか、有期であると か無期であるとかということを、どういうふうにそこで取り扱うかというのは、必要で あれば是非ご議論いただければと考えておりますが、有期雇用労働者の雇用の安定性の ためのルール、特に反復更新型の場合のルールについては、厚生労働省としては別の場 でご審議をお願いしておりますので、そちらのほうで議論をお願いしたいと思っており ます。 ○公益委員  パートタイム労働者の問題点で通常いわれるものは、雇用の安定性と格差の問題点が ずっといわれてきているわけで、パートタイム労働の問題をまず想定しなければいけな い。また、それぞれが相互に関連し合っているというのも、皆さんの認識としてある、 それは事実だと思います。パートタイム労働の均等処遇という問題を扱う、方向性を見 い出すという方向から、格差の問題をパートタイムの最大の問題として処理しようとい うことで、このパートタイム雇用管理研究会があり、また今回の研究会があるわけで、 この間、事務局からご説明があったような形でこの問題についての対応が図られてきた というふうに思います。その流れとして、今回の均等の問題の合意点を見つけようとい うことだと思います。  その問題と、それぞれご指摘があった安定性の問題に係わる、つまり有期雇用が本来 持っている問題に関しては、ここではやらないという方向で議論はされていると思いま す。この有期雇用の問題に関しては、有期雇用はパートだけではないですし、有期雇用 の中にはいろいろな形態があるわけで、それは労働条件のほうでいま議論されているわ けです。今のような形で両方の分科会で問題を追求していくというのは、1つの選択で あったと思います。  お互いに、両方の議論を見据えながら、情報交換をし合って、パートの均等処遇の望 ましいあり方を、この研究会では追求していけばいいと思いますし、労働条件分科会の ほうは、有期雇用全体の雇用保障の問題を議論しながら、同時にこちらのパートの分科 会での均等の問題をも踏まえながら有期雇用の問題の着地点を求めていけばいいと、そ ういうスタンスであろうと思っています。有期と雇用契約、雇用保障の問題と格差の問 題を同時に議論するということで問題を処理すると、かなり複雑な状況にもなるわけで す。今まで積み重ねてきた議論を踏まえて、今のような並行するような形でこの難しい 問題に対応するというのが、建設的な選択であると私自身は理解しています。 ○労側委員  労働条件分科会にも私どもの委員が出ているのですが、どうも聞くと、そういう観点 で議論されているというふうではない。分科会で扱うからと言っているのですが、出て くるテーマは、新聞に出てくるのは、契約は3年延長、1年のものを3年にしますみた いなもので、次の通常国会だという。やりますということで担保されるならいい、政府 は「やります」と言っているのですから。基本的には労働条件部会の労働基準法の話で すから、それは分かると言っているのですが、しかし本当に向こうで議論されているの でしょうか。もしされていなければ、お互いに合同会議でもいいからやったらいい。私 も「合同会議はどうですか」と言っている。この分科会と労働条件分科会で意見交換会 をやってもいいと思っているのです。  おっしゃるように有期にもいろいろなタイプがあります。派遣も有期だし、パートだ けじゃないというのは分かります。しかし、圧倒的にはパートが多いわけですよね。そ して、その議論をここでしているわけですよ。それがこの問題点に出てこないというの はなぜかということなんです。 ○事務局  労働条件分科会で、有期雇用労働者の問題が扱われていると認識していますが、その 有期の期間の長さをどうするかということと併せて、反復更新の問題なども含めて、ど ういう方向の結論になるかというのは、三者構成の審議会でご議論されることですから 、私が申し上げることではないと思いますが、検討の視野には入っているというふうに 理解をいたしております。2つの分科会で、合同で審議するのが良いのかどうかという のは、あちらのほうはもう1年前ぐらいから議論を続けていると聞いておりますし、こ ちらは議論が始まったばかりですので、もう少し審議の状況を見させていただいて、本 当にそういう形でやるのが審議促進のためになるという状況でしたら、2つの分科会の 分科会長とご相談したいと思いますが、いましばらくはこの審議会で議論を深めていた だければと思います。 ○使側委員  外国の例として、ドイツ、フランス、イギリスと3例が出ていますが、米国の例はな いのですか。 ○事務局  これは、こういった法律がある国に関してで、アメリカについては、そもそもそうい った法律がございません。 ○使側委員  なぜそういう質問をしたかというと、グローバル化が進んでいるこの世界経済の中で 、そういう法律がない。それが世界一強力な経済力を持った米国であるということなの です。これから日本が考えなければならないことは、米国とかあるいは中国とかが、こ ういう問題でどういう変化が起こってくるのか、そういうことを前提にしないと。  議論が詰まってきたところへこんな話を申し上げるのは、ちょっと問題だと思います が、これは大事なことだと思うのです。大体、現在は市場経済というのがある。これか らは、それが中心になって世界経済が動いていく。我々は中小企業です。天からお金が 降ってくるような、そういう環境にはおりません。常に自分が利益を生み出して、そし て給与を決めていくということです。そういう状態の会社が、日本では大体90%。98% ぐらいがそういう会社を運営しているわけです。経済の背景を抜きにしてこれを考える ことはできない。  パートタイマーのほうが、月給が上がってしまう場合がこないとも限りません。労働 力が不足すれば、右肩上がりの経済状態の時は、現実にそういう状況もあったわけです 。企業はもうギリギリの経営をやっている。天からお金が降ってくるような、そういう 企業は日本にはもうあり得ないと思います。自助努力で企業運営をしていく以外にない ですね。官庁も同じだと思います。東京都も月給を下げました。正社員の月給を下げる 。そういう状況に入っているということを前提に、いろいろなことを考えていただきた い。あまり細かいことをここで決めてしまうと、問題が起こってくると思うのです。  もう1つ言わせていただけば、ドイツ、フランス、英国、これはヨーロッパの国です が、この国々は、これから発展する国でしょうか。ドイツなどというのは、失業者が10 %を超えているのでしょう。これからも増える可能性がある。そういう国、競争力のな い国を対象にいろいろ物事を決めていったら、日本の企業はどんどん潰れ、経済力は抹 消していく状況に追い込まれていってしまうのではないか。そういうふうに私は考えま す。公正賃金形態は私も求めたいと思いますが、先ほどどなたかがおっしゃいましたが 、いまの経済状態であれば、やがてパートタイマーの月給より、正社員の月給が落ちて いかざるを得ないと思います。そうしなかったら、みんな潰れてしまいます。中国と競 争しているのですから、20分の1の月給の企業とこれから競争していくわけです。この 辺は、是非ひとつ、これを決める時にお考えいただきたいと思います。 ○公益委員  「公正な処遇」の処遇の範囲ですが、基本的には労働者が提供する労働サービスに対 する対価、反対給付全部、ただし初めからすべての反対給付について公正なあり方を議 論すると、これは混乱しますので、まず基本的な賃金について、公正な処遇のあり方に ついて基本的な考え方が決まれば、ほかの処遇についてもその考え方が適用することが 十分できるだろう、95%ぐらいやれるのではないかと私は思っています。まず処遇の中 の賃金を取り出して、公正な処遇というのはどういう考え方でやればいいのか、きちん と合意をする。それができれば、ほかの福利厚生等にそれを適用していくことは十分で きるだろうと考えて、ものさし研からずっとやってきたということです。  あと、水準の話とか、いま使側委員のお話にもあったのですが、我々は水準の議論を しているわけではない。確かにパートの人で水準が低い人はいますが、正社員に同じよ うな質問をすれば、同じように低いと言うのです。水準については、基本的な最賃はも ちろんありますが、それ以上については基本的には、ここで議論をするのは「公正な処 遇」ということなのです。公正な処遇というのは、例えば働きに応じて決められている のか、あるいはここでいうとフルとパートです。同じ仕事や責任であるが、時間が短い というだけで差がある。これが公正かどうかということです。それを企業が合理的に説 明ができればいい、これはこういう違いがあるから低い、あるいはこういう賃金の水準 になっているという説明ができればいいのですが、十分に合理的な説明ができないとな れば、これは格差であり、不合理だということになる。  市場経済では、同じものが同じ価格になる。ですから、同じ働きをした時に、時間比 例にした時に大きな差がある、これが合理的に説明ができる違いであればいいのですが 、そうではないとすれば、それを変えていってくださいということ。それが公正な処遇 だろう。数字を上げるとか下げるとかいうことではなく、公正な水準の決め方、フルと パートを比較した時に、公正な水準になっているかどうかだろうと思います。 ○使側委員  そういうところまでここで、法律で決めるということは大変なことを招きますよとい うことを申し上げているのです。一般の普通の企業は、中小企業でも間違いなくやって います。 ○公益委員  公正な処遇を是非やっていただきたいということなのです。合理的に説明のできる格 差であれば、格差があることが悪いというわけではありませんので。私は、パートタイ ム全部が問題があると言っているわけではありません。ある部分、どうも合理的とは言 えないような格差がある。これは、企業の方にも理解していただく必要があるのではな いか。ただ、使側委員が言われたように、正社員の処遇も含めて変えなければいけない ものもありますので、結構時間がかかるということもよく分かるわけで、パートだけ変 えればいいわけではない。ただ、どちらの方向に変えていくことが、将来公正な処遇が できるか、どっちの方向に変えていったらいいかということは、やはりご理解いただい たほうがいいのではないかというふうに考えて、報告書を書いているということです。 ○労側委員  先ほど有期雇用の関係で事務局からもお話いただきましたし、私は前回も発言させて いただいて重なりますが、もう一度発言させていただきます。労働条件分科会の議論に なっているということですが、縦割で議論していただかないで、ここの検討の場にして いただきたい。公正な処遇に、時間差だけが影響しているということであれば、そこの 範疇での議論になると思うのですが、有期雇用であるがゆえの公正な処遇差というもの があるとすれば、そのことはきちんと対応していかなければいけないと思いますので、 是非そのことについて、公正処遇を考える上で1つのテーマであるということで、ここ から外すということではなく是非議論をしていただきたい、ということを重ねてお願い したいと思います。 ○使側委員  私も使側委員の考えに、同じ経営者として賛同する意見を述べさせていただきたいと 思います。かつて日本は働き蜂といわれ、休日を増やすことをやってきた。結果的にど んどん増やしていき、いま世界で休日がいちばん多いのが日本だと聞いています。目先 のことだけで討議していくと、結果的に後になった時に、それを修正することの大変さ 、逆に言うと経済が今のように停滞していく1つの要因にもなっていってしまうのでは ないかと思います。経営者もいろいろな人がいると思いますが、多くの人が必死に、そ して公正に、何とか自分の所の社員を、それは正社員であろうとパートであろうと一体 となって、社員は宝物という考えでやっている経営者が、中小企業の経営者の実態では ないかと思うのです。すべてとは言いませんが、多くの方はそうだと思います。  ですから、もっと話し合う。会社側と雇われる側の人たちの話合いを持って、お互い に決められたことだけではない、個々にいろいろな条件とか思いもいろいろあると思い ますので、そういうことも含めて、お互いにもっとコミュニケーションをとっていくこ とが必要ではないか。法律でガチッと決めてしまうのではなく、中小企業の人たちは、 本当に心をくだいてやっていると思いますので、そのようにしていっていただくことが 良いのではないかと思います。  7頁の図表9に、パートタイム労働者から正社員への転換制度の有無の別、事業所の 比率が出ており、平成7年と13年で大して変わらず、0.3%ぐらいしか増えていないみた いですが、実態として制度はあるが正社員への登用がどのくらいの比率なのか、という 資料があるかどうかを聞かせていただきたい。こういう制度をできるだけ推奨していく 形、経営者と働く側の人たちの信頼関係で成り立っていくことが大事だと思います。  いま、本当に経済的に大変な時期であり、日本が何とかなるかどうかという時です。 外資系企業だと、「明日から来なくていいよ」と言われても、誰も文句を言えないのか 言わないのか知りませんが、それで通ってしまう。でも、日本企業だと、それに対して 労働組合の方々が出てきて話をしたり、あるいは裁判に持っていくということをやりま す。外資系企業を相手には、それはやっていない例が非常に多い。アメリカとか中国と の経済状態の中で、働く人たちが広い意味で考えていかないと、自分たちで自分たちの 首を締めていくことになるのではないかという不安感と、懸念を感じていますので、具 体的なものからは離れるかもしれませんが、そういう広い視野に立って検討していただ けることを希望いたします。いま申し上げた実態というのはお分かりですか。 ○事務局  変化はちょっと分からないのですが、平成13年のものをまとめた調査によると、規模 は30人以上の5,000事業所で、回答は1,435件、事業所全体で制度があるのが32%、その うち実際に正社員に登用されたパートの数の平均は3年間で3.6人というふうな結果です 。 ○労側委員  使側委員と使側委員のご意見について、私も意見を申し上げたいと思います。最後に おっしゃった外資系の企業で日本の労働組合は闘ってないとおっしゃっていますが闘っ ています。実際に加盟組合で今、抱えておりまして、闘っております。むしろ、そうい うものの持ち込まれ方に対して、日本の状況は全く準備されていないという、政策的な 問題もあると思っているのですが、まずそれを申し上げたいと思います。  この分科会でパート労働の問題を議論するという、つまりパート労働者の性別でいけ ば、圧倒的に女性が多いという関係もあって、女性労働のアプローチが当然ありますし 、それと併せて、パート労働者の多くが有期労働者であるという、これは切り離せない と考えております。切り離すと議論に参画できないという状況がありますので、まずそ れを申し上げたいと思いました。  また、先ほどグローバル化の問題を使側委員がおっしゃっていて、米国の法律はある のかないのかという質問をされましたが、中小企業がさまざまな問題を抱えているのは 、自分なりに理解をしているつもりですが、経営問題や、日本のこの経済状況の中で、 きちんとした支援策を考える必要があると思います。ただ、それが労働者に一方的にシ ワ寄せをしているようにも聞こえますし、人を差別して儲けるのかと言いたくなる。そ れは、別に中小企業に向かって言いたいというのではなく、企業経営者全般に言いたい という問題意識を常に持っています。  つまり、働きがいを求めたいですし、働いた対価は賃金できちんと得たいという労働 者側が、今の状況ですとパート労働問題が非常に顕著ですが、人格的に分断されて働き がいが奪われているというのは第1回の時にも問題意識として申し上げました。逆に言 えば、企業は生産性が上がるんですかと。余計な心配ですから、そこまで言う必要はな いと思いますが、そういうことでパート労働者や契約労働者や派遣労働者を、さまざま に人格的に分断するような扱いをして、働きがいを奪っていて、ますます日本は雇用労 働が劣化していくという状況が、現実をじっくり見るとあると思うのです。  儲かる儲からない、あるいは企業が立ちゆかないという問題を、ここで持ち出すだけ ではなく、それは企業側で言えば生産性を上げるという1つの方法として、やはり働い ている人に働きがいを持ってもらいたいし、その上で正社員とパート社員とをどう待遇 するかというのは、時間をかけて詰めていけばいいと思います。聞いていると、差別で 儲けたいと思うのだが法律で規制するなというふうに、私には聞こえてしまったのです 。もし違うのなら、そうでないと言っていただきたいと思いますが、私にはそう聞こえ ます。むしろ、ヨーロッパの取組みは、労働の質を劣化させないためにどうするかとい うことの中で、法規制や政労使の合意や、さまざまな取組みをしているので、それはお 互いに学び合いましょうと申し上げたいのです。 ○使側委員  日本の経済社会の空洞化はどうして起こったのですか。みんな中国へ行ってしまいま す。中小企業は中国へは行かれないんです。だから、中小企業は一生懸命、国内の労働 力でどうにか生きていこうということをやっているわけです。そういうことをひとつお 考えいただきたい。労働者の賃金を削って企業が儲けようなど、そんな余裕はありませ ん。そんなことは中小企業ではございません。労働者よりも苦労をしている。経営者は 、自分の家まで全部担保に入れて、銀行からお金を借りて、そして商売を続けている。 利益では払えないから、自宅を担保に入れて、従業員に賞与を払う。右肩上がりの経済 であれば、必ず半年後、1年後には回収できると思っていたのです。ところが回収でき ないから、それでみんな倒産していくのです。  あるいは「そんなに従業員がうるさいんだったら俺は廃業するよ」と、これ以上もう 苦しみたくないということで大田区のああいう小さな所はどんどん廃業してしまう。そ ういう実態の中で申し上げているのです。決してピンハネをしているわけではない。大 正時代とか、昭和の初めのような時代と違います。 ○分科会長  いろいろ有益なご議論がございましたが、今日、出されたのは均衡処遇ルールの考え 方ということで、1の「必要性」に絡めていろいろご議論が出ているのだと思いますが 、限られた時間なものですから、でき得れば2の「働きに応じた公正な処遇の考え方」 にも触れてご意見を出していただければと思います。 ○労側委員  お2人の経営側の方は、雇用環境が厳しいと言われますが、経営者である以上、きち んと労働条件を確保してやるということを前提に経営されているでしょうが、労働者も 人間です。この実態を見ても、平成7年から平成13年と、差は縮まっていないわけです 。それは、行政指導でやってきた結果がこうなので、したがってもっとパート労働者の 実態に着目して、生きがいのある労働をしなければまずいというのがこの場ですから、 是非それはご理解いただいて対応していただきたいと思います。  もう1つ、先ほどの公益委員の言われた水準の話についてなのですが、パート労働者 の方々と、生活保護の方とよく比較されての議論があります。生活保護者は世帯に着目 して、仮に母子家庭を想定すると、母親がいて子供が2人いる。生活保護の認定を受け て、住宅補助を受けて暮らしている。例えば、仮に月額20万円とすると、年収は240万円 になります。パート労働者で、同じようなレベルで生活保護の認定を受けることができ ない母子家庭も増えています。母親が子供を養育しなければいけないという同じ条件の 下で、時給1,000円で考えたら、2,400時間働かなければ240万は稼げない。  実態は、各都道府県でバラバラですが、最賃が時給896円。どういうことが起こるかと いうと、1カ所だけでは駄目で、2カ所、3カ所で働くということが起きているわけで す。生活できる賃金というのを、私たちがこの議論をする時に考えないと、水準ではな い、決定システムをどうするかという議論なのですが、そこも常に念頭に入れないと。 いまILOがディーセントワークというふうにやっているわけで、グローバル化という ならILOが1つの基準ですから、そういう考え方も視野に入れて議論しないと、何の ために議論をしているかということになる。この議論がパートの人の実態に及ばない。 3カ所で労働した場合に、社会保障などはどうなるか。年金は多分、加算されるでしょ うが、それに伴う労働ルールはどうあるべきかは、ここで議論をしてもらわないと。総 務庁の発表だと、正規女子社員よりもパートが増えたというデータも出ていますから、 そこも是非議論をしていただきたいと思います。 ○公益委員  もちろん、論点はよく分かるのですが、もしその議論をするなら、最賃のあり方をど うするかという議論をしなければいけない。私は、労側委員が提起された問題が重要で ないというつもりはないのですが、しかし、それを議論するとすれば日本の最賃のあり 方をどうするかを議論しなければいけない。それはパートだけではない、正社員でも今 のような議論が当てはまる正社員もいるわけですから。それは大事だけれど、それを議 論する時間は、ここではないのではないか。それが大事な点ではないという意味ではな いのですが。 ○分科会長  ですから、公正な処遇のあり方を考えるという切り口で、議論を進めていただきたい と思います。 ○公益委員  あと1つだけ申し上げたい。経営側で言われたのは、国際競争がきつくて大変だとい うこと。その意味では総人件費が増やせないし、あるいは削らなければいけない状況に あると。その時に、ここで議論をしなければいけないのは、人件費を従業員に分ける時 、正社員の分け方とパートの分け方が、今までは違っていたのではないか。もしかした ら総人件費を減らさなければいけない。減らすなら減らすなりに、フルタイマーとパー トに、同じような基準で分けてほしい。それが公正な処遇だというのが、研究会の報告 なのです。総人件費を増やさなければいけないとか、そういうことを言っているわけで はない。きつい状況ならきつい状況で、パートもフルも合わせて、きつい状況の中で公 正に分けてくださいということを言っている研究会報告だ、ということを是非ご理解い ただければと思います。先ほど公正な処遇はよく分かると言っていただいたわけで、非 常に心強いのですけれども。 ○使側委員  パートと本採用の賃金格差というのは、もちろん当然、公正にというのは分かるので すが、逆に言うと、皆さんは多分、正社員の方でしょうから、ご自分とパートの方の格 差がなくなっていった時に、果たしてどういうお気持になられるのか。「あれだけ責任 のない自由な時間で」ということで、そうなった時に不満が出てくるのは正社員の方の ほうが実際問題として多いのです。その辺のことも含めて話をしていかないといけない と思います。 ○公益委員  今日の議論は2のところだと思うのですが、いま仕事の責任と言われた。責任が違う のであれば、差をつけるのは合理的だというふうに議論が合意できるかどうか、そうい う話なのです。仕事の違いだけで差をつけるか、時間の自由度を考えるか、どういうも のを格差の違いの要因にするかというところが2以降なので、先ほど分科会長が言われ た2以降についてご意見を伺えればいいと思います。 ○公益委員  パートタイムが多様化して、いろいろな働き方が出てきた。時間を短く、軽く働きた い人もいるし、本格的に働きたい人もいる。企業のほうも、初めは補助的な仕事だった のが、だんだんに戦略化して、企業にとってもかなり重要な仕事をパートの人にやって いただくということになってきた。今まで事務局の方が説明されたように、かなり本格 的に、パートが正社員と同じような仕事をしている状況が増えてきている。そういう認 識は、皆さん共通して、この議論をする時に持つ必要があると思うのです。ある時は補 助的な仕事だったり、いろいろスタンスがガタガタになるものですから、議論が混乱す る。まず、事務局が説明されたことをよく理解して。  企業の側も、いろいろなパートが出てきて、かなり戦略的な役割を担っている人が増 えてきている。パートと正社員との格差を縮めなければいけない、何らかの形でこのル ールを作らなければいけない、その必要性はかなり感じている。それは各所にデータで 出ているわけです。働いている人たちも、この格差については不満があったり納得した りしているという状況です。パートの人たちが、これから本格的に働く、多様な働き方 をするために、やはりここで何らかのルールが必要だろう。厚生労働省がという意味で はなく、企業の側も働いている人たちも、双方にそういうニーズが出てきている。  企業も厚生労働者も「そんなことやりたくない」と言っているのに、厚生労働省なり 我々みたいなのが、「これがいいんじゃないか」と言っているわけではない。いまこの 時期、正社員の働き方も含めて、雇用管理のルールが問い直されている。こういう時期 だからこそ、非正社員の働き方についても、きちんとしたルールを作っていく。その中 心になることの1つとして均等の問題があって、その問題について企業も困っている。 私など、いろいろな所で講演をさせてもらうのですが、この問題を話すと企業の人事担 当者の方は、すごく熱心に、一生懸命勉強されます。  やはり企業の方たちも頭を悩ませているわけで、公正という言葉には抵抗がおありの ようですが、要するに従業員に生きがいを持って働いてもらえるような好ましいルール のあり方を、経営者なり企業の人事担当者は考えておられる。そういう問題を考えまし ょうというのがこの審議会で、そのための1つの叩き台が研究会から出されたわけです 。ですから、これはもちろん批判があっていいわけですが、やはりルールを作っていこ うという建設的な批判という方向で、労使の方たちに話し合っていただけたら、もう少 し噛み合っていけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○使側委員  私は、公正なルールというのはよろしいと思います。ただ問題は、それが小理屈の入 るようなルールでは困る。大枠を決めていただいて、その中で各企業が自由に判断でき るようにしていただきたい。私の企業と大きな企業とでは、パートタイマーのタイムだ って違うのです。それを全部枠をはめられたのでは困るということなのです。ですから 、公正なルールは結構ですが、それを強要するような形だと困るのです。 ○使側委員  なかなか2のほうにいかなくて申しわけないのですが、資料を見ても、これは中小も 大企業も一緒になっているのだと思うのですが、平成7年と13年を比べれば、賃金の面 は別として、結構いろいろなことが考えられてきているのではないかという面もあると 思うのです。そういう中で、私は公益委員がおっしゃったように、企業の担当者も、パ ートタイマーの労働条件についてはものすごく一生懸命に研究していることは確かだろ うと思います。だからこそ、健康診断だとか、そういうのは出来るところからやってい るというのが、資料からも見られると思うのです。中小企業で労働組合もないという所 で、人事担当者が一生懸命に説明しても、なかなかパートタイマーの方々に納得しても らえない場合、最終的に報告書などは、どういう形で終わるのですか。例えば、裁判で そういうのを判断するとか、そういうことになるのでしょうか。 ○事務局  実際に個別の紛争になった時に、どうしても納得がいかない。例えば地方の労働局に おいても、個別の紛争処理ということはやっていますが、そこでもご満足いただける結 果にならないということになった場合は、裁判で決着ということになるかと思います。 ○使側委員  この報告書の中では、話合いをしなさいという形になっているわけですが、そういう ことをしても最終的には裁判というか、基準局の判定になるということですか。 ○事務局  企業内で解決できなければ、それで納得されない労働者は、どこか第三者機関に行く という形になるかと思います。例えば、労働局でも個別紛争処理といったシステムはあ りますが、そこでもうまく解決が図られなかった場合には、裁判になるという流れかと 思います。 ○使側委員  先ほどの労側委員や、また何人かの委員の方に対する答えをさせていただきたいと思 います。使側委員や私が発言したことが、違った意味でとられていたようですが、本当 に真剣にやっていまして、自分たちだけがという気持はさらさらありません。ただ、私 も日本中の会社の経営者の方を知っているわけではありませんし、全体を把握しており ませんので、どういう会社の社長がいるかは理解しておりませんから、正しい答えにな っているかどうかは分かりませんが、少なくとも私の周りの方々は、本当に真剣に取り 組んでおられます。  パートの方も、お休みをしたり、また出てきたりいろいろな状況です。期間が長くな れば仕事の幅も増える、慣れていくということもあれば、当社を含め、他の所もきちん としたそれなりの対応をしていくということは当然のごとくしていると私は理解してお ります。ですから、ある意味で大枠を決めることは必要かと思いますが、あまりがんじ がらめにしてしまうと、逆に経営者だけではなく、働く側の人にとっても逆な部分は出 てくるのではないかと思うのです。能力のある方は、こういう形でやりたいとか、いろ いろ希望があると思いますので、大枠を決めるということで、あまりがんじがらめにす るということに対しては、私は賛成ではないということだけ答えさせていただきたいと 思います。 ○労側委員  使側委員が、ここに出されている報告書はどういう扱いになるかという質問をされて 、私が答えたというふうに受け取ったのですが、報告書はそれを基に、ここの審議会で どういう扱いをするかは、まさに今それが議論されているのであって、報告書そのもの が使われるのではないと理解しているのですが、そういうご質問ではなかったでしょう か。報告書は報告書として、皆さん研究して報告していただく。それが直接何かに使わ れるという扱いではなくて、そのことをどうするかを、今まさにこの審議会で議論して いるということだと思うのですが。 ○使側委員  私が伺ったのは、本当に合理的だとか公正だとか、そういうことを一体誰が分かるの か。どうしても話合いがつかないということは、特に中小企業などですと、人事担当と いっても、人事だけを専門にやっている人などほとんどいないだろうと思いますし、そ ういう中でうまく説得ができないというような時に、ただすぐ裁判にいってしまうのか 、そのバックというか、そういうこともやらなければいけないだろうし、そういう意味 ではいろいろなことを考えておかないといけないのではないですかということです。 ○事務局  ご質問の趣旨がよく分からなかったので、適切な反応ができずに大変申しわけござい ませんでした。まさにおっしゃるように、まず一義的には企業の中のお話だと思います ので、働いている方と会社のほうで、どういう処遇であれば納得できるかということだ と思います。そういうルールを企業の中で決める時に、参考になるような社会的なルー ルとはどういうものかというのが、この研究会の提言であると思いますし、万一、企業 の中で労使がうまく話合いができなかった時には、行政のほう、例えば地方労働局のほ うにご相談があるケースもあると思いますし、また裁判所で争うケースもあるかと思い ます。この報告書が念頭に置いておりますのは、ガイドライン的なもの、何らかのもの が出来れば、企業の外に持ち出された紛争解決の援助の1つの手段になるのではないか 、そういう問題意識でまとめていただいたと思います。 ○労側委員  あり方については、どのような手段で行うか、法律でやるか、啓発レベルなのか。い ま事務局はガイドラインでとおっしゃいましたが、啓発でいくということですか。 ○事務局  ガイドラインと申し上げましたのは、報告書の中で「ガイドライン」と使っておりま すので、ガイドラインというふうに申し上げたわけで、そのガイドラインというのを法 律との関係で、どういう位置づけにするかは、そのことも含めてまさにこの審議会でご 審議をお願いしたいと思っていることですから、そのことはもう明らかであると思いま す。 ○労側委員  法的な理由のなしの場合、ありの場合ということは、この議論で避けられないわけで すね。その場合に、これは事務局が苦労して「公正な処遇の考え方」という言葉を使っ ているのでしょうが、アウトプットでやればいいという話かもしれませんが、この議論 が始まる前にいろいろな言葉が飛び交ったと思います。均等待遇、均等処遇、公正処遇 などですね。事務局が「公正な処遇」という言葉をあえて使ったというのは、どういう 理由からですか。 ○事務局  研究会報告でも「働きに応じた公正な処遇」ということをいっているので、これから 作るルールに関して、審議会という公的なところが1つの判断をするということは、あ る意味で社会的な公正なルールになるのではないかということで、その言葉を使いまし た。 ○労側委員  先ほどご説明いただいたILO関係の文章も、日本語訳は「均等待遇」という言葉で すね。「均等」と「均衡」・・・。 ○事務局  そもそも、研究会の中で論じていますので、そういうことも含めて、2の(1)(2 )の議論の中でしていただければと思いますが、一般的に均等と均衡という考え方とい うよりも、この法律ができた時に、議論になった時の考え方で言えば、均等と均衡では 、均衡のほうが多少幅を持った均等、あるいはやわらかい均等だとも言えるというふう に、国会で議論されております。ただ、均衡とは、バランスするとか、釣り合いがとれ るというようなことで、実際に農業基本法で使われている言葉でもあるのですが、そこ のコンメンタールでは、「同じかるべきものを同じにする」というようなことで、パー トタイム労働法での通常の労働者の均衡というように「均衡」という文字を使用したの も、同様の見解に立ったということがあるので、均等と均衡をここの研究会報告で使い 分けていますが、これはどういった場合に「均等」という言葉を使うか、また「均衡」 という言葉を使うのか、2の(1)の議論の中でさせていただけたらと思います。 ○労側委員  そうすると、(1)の(1)「仕事と責任が同じで、処遇差の合理的理由なし」の場合は 均等、(2)の「仕事と責任が同じで、処遇差の合理的理由あり」の場合は均衡ということ なのですか。そこのお互いの認識を持ちたいと思うのですが。 ○公益委員  現行のパートタイム労働法の均衡の解釈ではなく、研究会での均衡、均等の整理は54 頁に、一応「均等処遇原則タイプ」と「均衡配慮義務タイプ」と2つに分けてあります 。合理的理由が何かは別として、「合理的理由なし」のケース、賃金の決め方を揃える 。これが均等処遇原則タイプです。もし、これだけであれば、合理的理由がある場合に ついては、賃金の決め方とか、水準は経営側の裁量で自由にやる。ですから、同一職務 で合理的理由のないものだけ揃えてください、というのが均等処遇原則タイプというこ とになる。  「均衡配慮義務」というのは、合理的理由があっても、その違いに応じて均衡を配慮 してくださいという、幅が広いわけです。ただ、均衡配慮義務タイプの場合、同一職務 で合理的理由なしの場合、賃金決定方式は揃える必要はないというのが(2)のほうです。 そういう意味で、いずれかを導入するという考え方もあるし、あるいは両方セットで導 入する場合もある。研究会としては、もしやるとすれば両方セットが望ましい。「公正 処遇」といった場合、両方を含む。我々が望ましいと考えているものが公正処遇なわけ です。ただ、ここの場で公正処遇というのは(1)だけという整理の仕方もあり得る。だか ら、公正処遇というのを具体的に、どう法律で実現していくかという選択はあり得るわ けです。研究会では、(1)(2)を含めているわけです。 ○労側委員  賃金の基準で、同一価値労働同一賃金とありますね。研究会は、同一労働というのは 、日本的には馴染まないというか、まだという文章がどこかにあったと思うのですが、 均等待遇と賃金のものさし、同一労働同一賃金という、この辺はどういう理解なのです か。議論をする前に、イメージ合わせをお互いにしないとまずいかと思うのです。1995 年の第4回世界女性会議で日本の政府も賛成した行動綱領なのです。そこにも戦略目標 というのがいくつか分かれていて、同一価値労働同一賃金について努力しなさいという か、そういう目標を定めて法律を作りなさいという項目があるのです。これは日本政府 も賛成しているわけですよね。1995年で5年間の行動綱領ですから、もう2000年を過ぎ ているわけです。その辺の絡み合い、概念を我々は大事にしたいのですが、この議論を する際に、同一価値労働同一賃金というものをどう考えているのかを三者で少し議論を しないとまずいのではないかと思うのです。 ○事務局  私個人の整理をご参考までに申し上げたいと思います。いま読み上げられた行動綱領 ですとか、例えばILOの100号条約というのがありますが、そういった国際文書でいわ れている同一価値労働同一賃金、あるいは同一労働同一賃金というのは、しばしば職務 による評価を中心的に考えて、ですから少し乱暴な意見かもしれませんが、分かりやす く整理をすると、ヨーロッパ的な意味での同一労働同一賃金というのは、職務に着目を して、同一職務同一賃金に非常に近い概念ではないだろうかと私は理解しております。  今回のパート研究会の報告書の中にあります「働きに応じた処遇」という概念は、そ れよりは広いといいましょうか、職務に着目をして、同一職務同一賃金であるというの ももちろん1つのあり方であると思いますが、必ずしも評価基準が職務だけではなく、 職能、能力とか、成果、そういうものに基づく処遇であってもいい。ここの「働き方に 応じた処遇」で強調されているのは、働き方に直接関係のないような、年齢とか勤続年 数とか、扶養家族ですとか、そういった生活のニーズに応じた処遇から、いま言った職 務や職能や成果に応じた処遇に変えていこう。そういった大きな流れの中で、初めてパ ートタイマーと正社員の均衡が図れるのであるという整理ではないかと思います。  労働基準法の4条というのは、さらに広いように思うのです。これは、女性であると いうことだけを理由とした差別を、罰則をもって禁止をするということだと思いますの で、もちろん働き方に応じた処遇、職務や職能や成果に応じた処遇で、性差別を排除す るというやり方もあるでしょうし、年功的な賃金、年齢とか勤続とか、そういったこと が入っている賃金であっても、性差別のない賃金というのはあり得るという、そういう 感じでヨーロッパ的な同一職種同一賃金と、ここでいう「働きに応じた処遇」というの と、労働基準法の4条というのは、そういう関係かと私は整理をしているのです。 ○労側委員  私どもが今、合理的理由は何かという議論をやっている状況で、まだ整理がついてい ないのですが、いわゆる同一価値労働同一賃金というのは大原則かなというのがまずあ って、しかしそれで十分、実際に行われていることが見られるかどうかというのは難し い問題があるということは、薄々感じているのです。「働きに応じた」ということが、 日本型ルールというふうに研究会ではいわれているわけです。事務局は今、ヨーロッパ の場合は職務だと、日本はいろいろな要素が入っていて必ずしもそうではない、年功賃 金だと。しかし、年功賃金はもう崩れているという話もあるわけです。その辺のところ が・・・。 ○公益委員  今のことに関して、企業の中のことまで細かいことを言ってくれるなというお話もあ ったのですが、基本的にどういう要素で賃金を払うかということまでいうような仕組み ではないということです。それぞれの企業が、それぞれの考え方や仕事に応じて賃金を 決めていただいていいということです。ただし、フルとパートという、時間の長い人、 短い人とで、それ以外はみな同じ、時間以外はみな同じであれば、同じ賃金の決め方で 処遇を決めて、あとは時間比例にしてください、という考え方がこの「同一職務合理的 理由なし」なのです。  分かりやすく言うと、伊勢丹の例で言うと、例えば正社員の人が子育期間で短時間勤 務になる。週40時間働いていた人が30時間になる。これは短時間になるわけです。給与 の決め方はどうなるかというと、今までの月給で賃金の決め方の体系が変わるわけでは ない。月給が4分の3になる。これは、時間は短くなったのですが、その人の働きを評 価する賃金体系は変えていない、同じ要素で決めている。これが、まさに「同一職務合 理的理由なし」ケースの賃金の決め方です。フルからパートに変わっても、同じ賃金要 素で給与が決められる。  いまはパートの話ですから逆を議論しているわけですが、いま6時間で働いている人 がいる。この人を8時間働いている人と比較して、時間以外は同じような働き方をして いるとすれば、フルとパートで賃金の決め方が違うのはおかしいのではないか。どちら かに揃えるか、あるいは第三の仕方で同じ決め方にしてください。どういう決め方かは 、それぞれの企業が考えていただければいいということだけなのです。 ○使側委員  中小企業の場合、むしろパートタイマーのほうが月給が高い場合があるのです。 ○使側委員  基本論に戻ってしまうのですが、フルタイム労働者とパートタイム労働者、正規労働 者と非正規労働者のそれぞれの定義とか中身とかが、パート研の報告の中でかなり入り 組んでいるような感じがしてしようがないのです。その辺、どのような性格分け、整理 がパート研の中でなされたのか、次回にその辺の整理の仕方について、結果を教えてい ただければと思います。 ○公益委員  いまの点にも、また先ほどの労側委員、公益委員のお話にも関連するのですが、今日 お出しいただいた資料1は題目は「均衡処遇ルールの考え方について」と書いてあり、 その具体的な内訳として「公正な処遇」というのが出てきています。この「公正な処遇 」とは何かということで、今かなりご質問が出たり、お答えがあったわけですが、やは りこの「公正な処遇」の中身について、もう少しここの委員の方々の中で共通の理解と 認識ができるように、「公正な処遇」ということで、具体的にどういうことを言おうと しているのかを、次回に整理したものを出していただきたいということが1つです。  また、これは私の個人的な関心なのですが、「均衡処遇」という言葉を使っておられ ます。パートタイム労働者法の3条でも「均衡」という言葉が使ってあります。今回の パート研でも、それをベースにした今度のルールの設定でも、この「均衡」という言葉 の持っている意味が、パート労働法の3条にいう「均衡」と同じ線上で出てくる言葉と して理解してよろしいのかどうか、その辺のところを次回に説明していただければ、よ りスムースに進むのではないかと思います。 ○分科会長  分かりました。それでは、時間もかなりオーバーしましたので、今のことも含めて次 回に整理できるものは整理をして、この2のここに書いてある「公正な処遇の考え方」 を中心に次回は議論を進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたし ます。1つ報告事項があります。 ○事務局  資料4ですが、前回に意見公募のことをご説明させていただきました。それで、その 時から変わったことについてご説明させていただきます。募集期間を10月11日からとい うことで、パートタイム労働旬間が終わる11月10日までの1カ月ということで考えてお ります。また、個人の場合の名前の公表のことについてですが、1頁のいちばん下に書 いてありますように、個人の場合は氏名公表の可否をご本人に聞くという形で整理させ ていただきます。あとは、ちょっと技術的なこととかを整理させていただきました。こ ういった形で明後日から意見公募を始めたいと思います。 ○分科会長  ほかになければ、本日はこれで閉会とさせていただきます。どうも長時間ありがとう ございました。本日の署名委員は、岡本委員と前田委員にお願いしたいと思います。よ ろしくお願いします。 ○事務局  次回の日程は、10月22日(火)15時から17時、この場所で行いますので、よろしくお 願いいたします。 ○分科会長  どうもありがとうございました。  照会先:雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課 企画法規係(内線:7876)