第11回年金部会委員提出資料
○大山・山口・小島委員提出資料
― 年金制度改正に関する追加意見
○岡本委員提出資料
― 「年金制度改正に係るこれまでの意見の整理(論点の構成)」に関する意見
○近藤委員提出資料
― 死亡率の変動に合わせたスライド調整について
○矢野委員提出資料
― 「年金制度改正に係るこれまでの意見の整理」についての意見
2002.10.22
年金制度改正に関する追加意見
大山 勝也 山口 洋子 小島 茂 |
1.年金制度改革の基本的な視点−真の「皆年金」の確立
(1)公的年金制度に対する不信感を払拭するには、真の「国民皆年金」を確立する必要がある。国民年金では、未加入・未納者が増加しており、免除者も含めれば加入対象者の4割近くが保険料を納めておらず、将来的にも無年金・低年金者の増加が懸念される。現行の「保険方式」による「皆年金」の確保はもはや達成不可能であり、国民の将来不安を一層助長するだけである。
老齢はだれにでも必ず訪れるものであり、資産・所得により給付を制約されず、日本にくらすすべての住民を対象とした「普遍主義原則」の観点から、真の「皆年金」確立に向けた制度再設計を行うことが、国民の公的年金への信頼を回復させる道である。
(2)「普遍主義」による年金保障について、「第2の生活保護」化とする向きがある。しかし、これについては、1977年度社会保障制度審議会建議において「生活保護は生活に困窮した場合にその者の必要に応じ個別的に対応するという事後的な対策であり、一方、老齢年金は老後の所得喪失に対し所得保障を行うことによって貧困に陥らないようにするという事前的かつ一般的な対策であり、制度の建前は全く異なる」とした上で、税方式による基本年金構想が建議されており、そのような批判はあたらない。
2.確定給付か確定拠出か−公的年金は確定給付が基本
公的年金の役割は、老後生計費の基本的部分を保障し、老後生活の安定をはかるものであり、給付は確定給付とすべきである。具体的には、在職時の勤労収入の一定割合(ネット・ネットの所得代替率55%)とし、将来にわたりその水準を確保する。確定拠出では、老後生活に対する見通しが立てにくく、将来不安が拡大し、公的年金への不信が高まる懸念がある。
3.基礎年金の財源について
真の「皆年金」確立への転換を前提とすれば、基礎年金の財源方式は、全額税方式とし、2分の1までは一般財源、3分の1は目的間接税とする。現行の事業主負担分については、労働力保全に寄与する社会保険に対し、事業主の責務を引き続き果たすべきとの観点から、現行負担相当分(基礎年金の6分の1相当)を社会保障税として徴収する。
4.厚生年金の適用拡大について−雇用労働者としての均等待遇の観点
現在、厚生年金の適用を受けていない短時間労働者についても、同じ雇用労働者としての均等待遇の観点から社会保険に加入する権利を認めるべきであり、そのために適用要件の拡大が必要である。適用の基準は、正規労働者の労働時間・労働日数の2分の1(週20時間)以上に、同時に被扶養者認定の収入要件は、年収65万円(給与所得控除の最低保障額)未満にすべきである。
以上
「年金制度改正に係るこれまでの意見の整理(論点の構成)」に関する意見
年金部会委員
岡本康男
10月29日に開催予定の第11回年金部会は、やむを得ず欠席させて頂くため、第10回年金部会(10/11開催)に提出された資料2-2に特に追加すべき「論点」として、以下のとおり書面にて私の考え方を申し述べます。
○被用者年金保険料の負担の内訳の明確化について
現役世代の制度に対する理解を高め、不信感・不安感を払拭していく観点から、保険料の使途を明確にしていく必要がある。一般論として、被用者年金保険料の負担の内訳について、基礎年金部分と報酬比例部分の内訳を明示しないまま、渾然一体に徴収を行っている現在の仕組みのままでは、現役世代、特に若い人々にとっては、将来の年金給付を実感できないだけでなく、負担の在り方に対する不信感があるのは否めない。
特に、基礎年金拠出金制度を通じて、結果として保険料を法律通り毎月支払っている者が未納者や未加入者の分まで負担を肩代わりしている財政運営のあり方は問題がある。年金制度に対する信頼を回復していくためには、この問題を解決していく必要があるのではないか。
こうした観点から、基礎年金拠出金制度の在り方や、被用者年金保険料の負担の内訳についてのルールの在り方について、「論点」に加えて議論を行うべきである。
以上
死亡率の変動に合わせたスライド調整について
近藤師昭
○ 平均寿命の伸長に見られるように、我が国人口の死亡率はこれからもしばらくは改善されていくことが予想される。財政再計算においては、死亡率の改善も織り込んで保険料計画が作成されているところであるが、その改善の見込み以上に死亡率が改善された場合、受給者はそれに見合った保険料を支払ってこなかったと見なすこともできる。
○ この予想を超えた改善分は、そもそも予想できないものであり、世代間扶養により賄われるべきであるとする考え方もあるが、少子高齢化が急速に進行している現在、受給者にも応分の負担をしてもらうべきと考える。
○ このため、財政再計算において、死亡率の改善分を調整するようにスライド率を調整する仕組みを導入すべきであると考える。具体的には、受給開始時の死亡率を前提とした年金現価と現在の年金現価の比を基準に調整を行うことが考えられる。ただし、これによると、出生コホートごとに率が異なってくるので、これらを平均したグロスの率を基準にすることも考えられる。
○ なお、死亡率が高くなった場合には、このスライド調整を始めた後の累積調整率を限度に調整を解除することも必要と考える。累積調整率を超える程度に死亡率が悪化した場合には、給付の設計を総合的に見直すことが必要と考える。
国民年金の保険料について
有限会社 セレーノ
杉山千佳
《国民年金に対する不信感について》
今、若い世代を中心に年金への不信感が募っているのだとしたら、いったい何が不信感を感じる要因なのか、丁寧に分析する必要があると思います。厚生年金対象者が、「自分がもし第1号被保険者であったら、払わなかっただろう。サラリーマンだから、こちらの意思とは関係なく払うしかないのだ」と、もし思っているとしたら、それは、今支払いをしていない第1号被保険者と同じ意識であるということで、国民年金は国民から支持されていない制度である、ということになろうかと思います。
学校教育のなかで、友達と競争することばかり教えられ、会社に入ってからも競争に慣らされている40代、30代、20代の支え手世代に「世代間の助け合い」という考え方がどれだけ理解されているでしょうか。年金は、国であり国民の、自分の国に対する将来の考え方がわかる制度だと思います。であれば、なおさら「国民の義務」で片付けて強制徴収に入る前に、きちんと説明して、理解してもらい、「これは日本人にとって、自分にとって必要な制度だ」と納得してもらう努力をすることが必要だと思います。
そのために以下のようなことを進めていくとよいのではないかと考えます。
学校教育のなかで、体験学習として年金の学習を取り入れる(地域の高齢者が年金で生活していること、それは自分の父親たちの年金が世代間の支えあいという形で仕送りされていること、高齢者は地域のボランティアなどの形で貢献している・・・といったふうに)。
国民年金入会時に国民年金についての仕組みを理解する機会を多くセッティングする。
2年で時効は短すぎるので、再考したほうがよいと思う。また、時効があることも知らない人も多いと思うので、何らかの事情で退職して、収入が少なくなった場合の救済制度があることも含め、時効についても説明していくことが大事。
35歳過ぎぐらいから、国民年金の加入率が高くなるという話なので、結婚や出産など家族のターニングポイントに、将来を見直すことが予測される。5年もしくは10年ごとに自分の納めている額、受け取る予測額を伝えるような将来を見直す個別アドバイスを行えば、加入(すでに加入している人には理解を深める)のいい機会になるのではないか。
「年金制度改正に係るこれまでの意見の整理」についての意見
2002年10月21日
年金部会委員
矢野弘典
前回の第10回年金部会の議論において、支え手の問題を考えていくにあたっては、基礎年金とその上乗せである2階部分の役割を明確にするなど、制度の抜本的な改革の方向を決めることが先決であること、定性的な議論だけでなく、年金財政に与える影響について定量的な議論が必要であることを申し上げたが、さらに、次のとおり申し述べる。
「パート等を多数採用する企業では、医療保険も含め、負担が増えるパート本人の同意が得られないことや、事業主負担が増えることを理由として、反対する意見が強いことに留意すべきである。」
以上