審議会議事録  厚生労働省ホームページ
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第1回厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会
化学物質審査規制制度の見直しに関する専門委員会
議事録

1. 日時 平成14年10月28日 14:30〜16:30
2. 場所 航空会館 601会議室
3. 出席者(五十音順、敬称略)
安藤 正典、石井 庸一、井上 達、内山 巌雄、江馬 眞、小倉 正敏、小野 宏、首藤 紘一(委員長)、竹居 照芳、西原 力、林 眞、渡部 烈
行政関係出席者
鶴田 康則(大臣官房審議官)、
松田  勉 (医薬局審査管理課化学物質安全対策室長) 他
4. 議題
(1) 化学物質審査規制制度の現状と課題について
(2) 検討スケジュールについて
(3)その他
5. 議事
○松田室長
 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第1回化学物質制度改正検討部会化学物質審査規制制度の見直しに関する専門委員会を開催いたします。委員の皆様におかれましては御多忙の折お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 私は厚生労働省化学物質安全対策室長の松田でございます。よろしくお願い申し上げます。
 本日の会議に先立ちまして、10月24日に厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会が開催されました。本日お手元の参考資料2の2枚目に部会のメンバー表を入れてございますけれども、当部会におきましては部会長に寺尾委員が選出されまして、部会長代理に藤田委員が指名されたところでございます。
 また、化学物質審査規制制度の見直しに関する専門委員会、当委員会の設置が決定され、参考資料3としております厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会運営細則がございますが、この3条に基づきまして委員長には首藤先生が選任されております。これ以降の議事につきましては首藤委員長にお願いしたいと思います。先生、よろしくお願いいたします。

○首藤委員長
 ただいま御紹介いただきました首藤でございます。よろしくお願いいたします。
 この専門委員会は厚生科学審議会の下の部会の専門委員会ということのようでございます。私は薬事・食品衛生審議会の化学物質安全対策部会の部会長をしているということもあって、この厚生科学審議会の下部の専門委員会の座長も引き受けろということだと思っております。
 化学物質安全対策部会におきましては、今日御論議いただきます化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づいて化学物質を第一種特定化学物質などに指定するという仕事を行っております。この専門委員会では化学物質の審査・規制制度について見直しを行うということでございます。御出席の皆様の御経験や知識を御提供いただいて、しかるべき成果を出したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、化学物質制度改正検討部会運営細則によりますと、委員長に何か事故があったときには委員長に代わってその職務を行う者を委員長があらかじめ指定しておくということにされております。つきましては、大阪大学大学院教授であられます西原先生に委員長代理をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、開会に当たりまして厚生労働省の鶴田大臣官房審議官から御挨拶がございます。

○鶴田審議官
 大臣官房審議官の鶴田でございます。第1回化学物質審査規制制度の見直しに関する専門委員会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 委員の先生方におかれましては今回、本委員会の委員をお引き受けいただきまして、どうもありがとうございます。また、化学物質行政の推進につきましては、日頃から御指導、御協力をいただいておりますことにつきまして改めて御礼を申し上げる次第でございます。
 本日は第1回ということでございますので、この専門委員会の位置付け等について若干申し上げたいと思います。先ほどお話がありましたが、先般10月24日の厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会におきまして、私どもより化学物質の審査・規制制度の見直しについて御議論をいただくようお願いしたわけでございます。部会におきましては今回の審議内容が科学技術に関する専門的事項にわたるということで、部会の下に本委員会を設けることが決定されたわけでございまして、これを受けて今日の開催となったわけでございます。
 ところで、化学物質の審査・規制制度の見直しの背景についてでございますが、我が国における化学物質の審査・規制につきましては、昭和48年に化学物質審査規制法を制定いたしまして世界に先駆けて化学物質の管理制度を導入したわけでございます。また、61年には法律の一部改正を行いまして、規制の対象となる物質の範囲拡大を行ったわけでございます。
 厚生労働省といたしましてはこの間、国民の保健衛生の観点から一貫して化学物質に関する安全対策を推進してきたわけでございます。その一方、環境問題への関心の高まりから今年8月から9月にかけて開催されました持続可能な開発に関する世界首脳会議(サミット)を初めといたしまして化学物質の評価及び管理に関する国際的な取組みも進展してきており、国際間の政策協調・協力を行っていくことも求められております。今年1月にはOECDにおきまして、我が国の化学物質管理制度に関して化学物質管理の効果・効率の向上や、生態系保全の観点からの規制範囲拡大等の勧告を含む報告書が取りまとめられたわけでございます。
 こうした背景を踏まえまして、今般、この法律を共同で所管しております経済産業省及び環境省とともに、化学物質の審査・規制に関する制度の一層の充実を図るという観点から見直しを進めようと思っているわけでございます。各省でも審議会での検討が開始されたと聞いておりますが、本専門委員会におきましては人の健康を守るという厚生労働行政の観点を中心に委員の忌憚のない御意見をお聞かせいただきますようお願いいたしまして、挨拶に代えさせていただきます。

○首藤委員長
 どうもありがとうございました。
 第1回の委員会でございますので、最初に本日御出席の方々を事務局から御紹介していただきたいと思います。

○松田室長
 それでは、事務局から御紹介いたします。
 首藤委員長でございます。
 安藤委員でございます。
 石井委員でございます。
 井上委員でございます。
 内山委員でございます。
 江馬委員でございます。
 小倉委員でございます。
 小野委員でございます。
 竹居委員でございます。
 西原委員でございます。
 林委員でございます。
 渡部委員におかれましては先ほど電話が入りまして、少し遅れてこちらの方に到着されるという連絡がございました。
 また、本日は御欠席でございますが、沖委員、神山委員、吉岡委員にもこの専門委員会に御参加いただいております。資料1に委員会の名簿を添付させていただいております。
 以上でございます。

○首藤委員長
 どうもありがとうございます。
 事務局の方もお願いいたします。

○松田室長
 それでは、事務局の紹介をさせていただきます。
 今、鶴田審議官から御挨拶いただきましたが、私は化学物質安全対策室長の松田でございます。
 化学物質安全対策室室長補佐の近藤でございます。
 化学物質安全対策室室長補佐の安田でございます。
 総務課課長補佐の三好でございます。
 よろしくお願い申し上げます。

○首藤委員長
 どうもありがとうございました。
 議事に入ります前に、恒例によりまして配付資料の確認をお願いしたいと思います。

○事務局
 配付資料を確認させていただきます。
 お手元にお配りの資料でございますが、まず、1枚紙といたしまして議事次第を配付しております。
 資料1といたしまして、本専門委員会の名簿をお付けしております。
 資料2といたしまして「化学物質審査規制法の現状と課題について」というホチキスで留めた資料がございます。
 資料3といたしまして「検討スケジュール(案)」という1枚紙がございます。
 以下、参考資料といたしまして参考資料1「厚生科学審議会の構成について」。
 参考資料2「厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会の設置について」。
 参考資料3「化学物質制度改正検討部会運営細則」、縦書きの資料がございます。
 参考資料4「化学物質審査規制制度の見直しに関する専門委員会の設置について」。
 参考資料5といたしまして「生態系保全のための化学物質の審査・規制の導入について」でございまして、表紙は概要となっております。
 参考資料6といたしまして「化学物質総合管理政策研究会中間とりまとめについて」を付けてございます。
 最後に、参考資料7といたしまして「OECD環境保全成果レビュー会合の結果について」が付いております。
 以上でございます。不足がございましたら、おっしゃっていただければと思います。
 あらかじめお送りいたしました資料と文言など一部修正しているところが若干ございますので、その点は御了解いただければと思います。

○首藤委員長
 よろしいですか。そんなに難しい資料ではなく、きれいに整理されていてわかりやすいと思います。
 先ほど事務局から簡単に御紹介していただいたのでありますけれども、本専門委員会の位置付けをもう少しきちんとしておいていただいた方がいいと思いますので、お願いいたします。

○松田室長
 それでは、本委員会の位置付けにつきまして私の方から簡単に御説明申し上げます。
 まず、参考資料1を見ていただきたいと思います。
 1ページ目ですが、厚生科学審議会の構成についてということで厚生科学審議会がこういう形で構成されています。9月19日に開催されました厚生科学審議会総会におきまして、今回新たに化学物質制度改正検討部会を設置することについて御了承いただいたものでございます。
 2ページ目をご覧ください。厚生労働省設置法がございまして、厚生科学審議会につきましては厚生労働省設置法第8条に規定されておりまして、疾病の予防及び治療に関する研究その他所掌事務に関する科学技術に関する重要事項と公衆衛生に関する重要事項を調査審議することができるとされてございます。
 また、3ページ、4ページにかけまして厚生科学審議会令がございます。4ページの第6条にアンダーラインを引いてございますけれども、部会が設置できるとされております。この規定に基づきまして化学物質制度改正検討部会が設置されたものでございます。
 参考資料2、総会において化学物質制度改正検討部会を設置するに際しまして御議論いただいたときの資料が1枚目の紙でございます。1枚目の紙で御審議いただき、了解いただいたということでございます。
 続きまして、参考資料3をごらんください。
 10月24日に開催されました化学物質制度改正検討部会において御了解いただきました部会の運営細則でございます。この運営細則は第1条「委員会の設置」から始まりまして、「委員会の構成」「委員長の指名」「会議等」「会議の公開」「議事録」といった細々とした内容が規定され御了解いただいたところでございます。
 続きまして、参考資料4をごらんください。
 先ほど申しました部会におきまして、具体的に当専門委員会でどういう内容を御審議いただくかということにつきまして、設置に当たりまして御議論いただいたときに御説明させていただいた資料でございます。先ほどお話がありましたとおり今回御審議いただく内容は技術的かつ専門的な分野でございますし、化学物質審査規制法を共管しております環境省、経済産業省におきましても、それぞれ中央環境審議会環境保健部会化学物質審査規制制度小委員会、産業構造審議会化学・バイオ部会化学物質管理企画小委員会という小委員会を設置いたしまして検討を開始しております。今後、この小委員会もしくは専門委員会で3審議会の合同開催も検討しておりますことから、本委員会の設置を部会にて御了解いただいたということでございます。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

○首藤委員長
 ただいまの御説明に何か質問あるいは御意見はございませんか。制度改正に関わる委員会、部会の下の専門委員会でございます。
 それでは、議事に入りたいと思いますが、議事次第にあります順番で議事(1)化学物質審査規制制度の現状と課題につきまして事務局から説明をいただきます。

○事務局
 それでは、資料2「化学物質審査規制法の現状と課題について」に基づきまして化学物質審査規制法、ここでは化審法と省略させていただきますが、制度の概要、運営状況、課題などについて御説明させていただきます。
 まず、資料2の1ページ目に化審法の概要についてまとめてございます。
 この法律のできました経緯でございますが、皆様もよく御存知のとおりPCBによる環境汚染問題などを契機に昭和48年に制定されたものでございます。この法律におきましては新規化学物質の審査制度を設けるとともに、PCB類似の化学物質を特定化学物質として規制することとしております。この特定化学物質は現在の法制度の下では第一種特定化学物質と呼ばれているものでございます。
 昭和50年代後半から有機塩素系化合物などによる地下水汚染などの環境汚染が社会的に問題になりまして、昭和61年には化審法の一部改正がされております。その結果、現在の枠組みになっておりますが、第二種特定化学物質、指定化学物質の枠組みが創設され、特定化学物質につきましては第一種特定化学物質という名称に改められております。
 この法律の目的でございますが、難分解性で人の健康を損なうおそれがある化学物質による環境汚染を防止することを目的といたしまして、まず1つには新規の化学物質の製造・輸入に際しての事前審査制、2つ目といたしまして化学物質の性状等に応じた製造・輸入等の規制を行っております。
 ここの注意書きにも書いてございますが、法律制定当時に作成いたしました既存化学物質名簿、これは法律ができたときに既に日本にあった化学物質でございますが、その化学物質以外のもの、あるいは、この法律ができてから既に化審法において審査がされ、公示された化学物質以外のもの、これを新規化学物質としております。
 その規制の内容が(3)でございます。法律上の定義といたしましては、第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、指定化学物質の3つがございます。この定義付けに当たりまして、化学物質の性状といたしましては、分解性、蓄積性、人に対する毒性、そして広範な地域の相当程度の環境汚染のおそれをメルクマールとしております。
 ここでの分解性とは、具体的には環境中の微生物によって化学物質が分解されるかどうかということを試験データによって見ております。蓄積性につきましては、生物の体内に蓄積されやすいかどうかということを魚類を用いた試験によって見ております。人に対する長期毒性といたしましては(4)でも御説明申し上げますが、新規化学物質の審査段階におきましては、スクリーニングとして変異原性試験、哺乳類への反復投与毒性試験を見ておりまして、更に次の段階ではフルの慢性毒性試験などについても行っております。
 第一種特定化学物質でございますが、分解性が悪く、生物へ蓄積しやすい高蓄積性のもので、人に対する長期毒性のおそれがあるものとしております。第一種特定化学物質に指定されますと、製造・輸入につきましては原則禁止となります。現在、PCB、アルドリン、ディルドリンなどのドリン剤、そのほか13物質が指定されているところでございます。
 第二種特定化学物質とは、分解性が悪く、蓄積性は低いのですが人に対する長期毒性のおそれがあるもので、広範な地域の相当程度の環境汚染がある場合に指定されます。第二種特定化学物質につきましては製造・輸入数量の事前・事後の届出、また必要に応じまして製造・輸入数量の制限などの措置がとられます。また、これらの化学物質を取り扱うに当たっての技術上の指針がつくられ、事業者はこれを遵守することが求められます。現在、トリクロロエチレンなど23物質が指定されております。
 指定化学物質とは、難分解性で蓄積性が低いもの、かつ人に対する長期毒性のおそれの疑いがあるものが指定されております。これは法律上のスキームの中では第二種特定化学物質の予備群と考えることができます。指定化学物質につきましては製造・輸入数量の事後の届出が求められております。
 次に、新規化学物質の事前審査の内容でございます。
 現在、国内の年間の製造・輸入の数量が1トンを超える場合に新規化学物質としての届出が求められ、事前審査が行われることになります。事前審査に当たりましては、ここに書いてございますように分解性試験、蓄積性試験、スクリーニング毒性試験が必要とされます。これらにつきましては既知見のデータでも構いませんが、新規化学物質の場合には既にデータがあるケースが非常に少のうございますので、多くの場合には事業者が試験を実施して添付してくることが多くなっております。
 スクリーニング毒性試験はここでは変異原性試験、具体的には試験管内で行うエームス試験と染色体異常試験の2つの試験と、ほ乳類への反復投与毒性試験である28日間反復投与毒性試験が必要となっております。審査はこれらの試験に基づきすることとされております。
 手続でございますが、製造・輸入を開始する前に届け出ることが必要とされております。この法律を所管しております厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣は届出を受けてから3か月以内に届出者に結果を通知し、届出者はその通知を受けて初めて製造・輸入を開始できることになっております。
 なお、下のカラムでございますが、年間の国内製造・輸入数量が1トン以下のものにつきましては届出は必要ないとされており、年度ごとに製造・輸入の数量を申し出ることとされております。その申出の内容に基づきまして確認を受けますと、その確認の範囲内で製造・輸入ができることになっております。
 次に、資料の2ページをご覧ください。今申し上げましたスキーム、制度を図に表したものが(5)でございます。
 新規化学物質につきましては一番上の右側のマルになりますが、届出を行いますと、分解性、蓄積性、長期毒性が審査され、その結果、第一種特定化学物質、指定化学物質、もしくはそのどちらにも該当しないものという判定が出されます。
 指定化学物質に指定されたものにつきましては、製造・輸入の実績数量を事業者が届け出ることになっております。それがだんだん世の中で使われるようになってきて、何らかの原因で環境汚染により人の健康に係る被害を生じるおそれがあることが見込まれた場合には、最初の審査段階ではスクリーニング毒性試験という簡易な試験法で長期毒性の程度を判断しておりますので、有害性調査の指示を行うことにより詳細な毒性データの収集を事業者に求めることになります。そのデータに基づき判定した結果、長期毒性がない場合には規制がないというものになりますが、長期毒性があるものにつきましては第二種特定化学物質に指定され、記載されているような規制がなされることになります。
 次に、3ページをご覧ください。現在、化学物質の影響から人あるいは環境を守るためにさまざまな法律が施行されておりますが、その中における化審法の位置付けについて図に示したものでございます。
 次に、4ページで化審法の運用について御説明申し上げます。
 まず、第一種特定化学物質などの指定状況でございますが、先ほど申し上げましたとおり、第一種特定化学物質といたしましては現在、13物質が指定されております。一番最初に指定されたものがPCBでございまして、最近では今年9月にマイレックス、トキサフェンという殺虫剤などが指定されているところでございます。御参考までに、このマイレックスとトキサフェンは難分解性、高蓄積性で、POPs条約というもので世界的に規制がされている物質でございますが、日本もPOPs条約に対応するため指定したものでございます。
 次に、(2)といたしまして第二種特定化学物質の一覧を示してございます。ここにカラムは5つしかございませんが、4番目のトリフェニルスズ化合物といたしましては化学物質として7物質が指定されておりまして、5番目のトリブチルスズ化合物につきましては13物質が指定されておりますので、全部で23物質が指定されているところでございます。
 指定化学物質につきましては現在、616物質が指定されております。うち新規化学物質から指定されたものが526物質、既存化学物質の点検結果から指定されたものが90物質でございます。
 5ページに新規化学物質の届出・判定状況などをグラフで表しております。
 新規化学物質の届出は近年では年間約300件から350件前後で推移しております。うち指定化学物質と判定され、公示されたものはこれまで526物質ございます。先ほど最初のところで申し上げましたが、年間国内製造・輸入数量が1トン以下の少量新規化学物質と言われているものにつきましては申出という手続により書類の提出がなされておりますけれども、これにつきましては近年、毎年増加する傾向にございます。
 なお、増加の理由でございますが、この少量新規化学物質につきましては前年に申出をしたものも、今年も1トン以下で製造・輸入するのであれば再度申出が必要となる形になっていることと、最近ではユーザーのニーズに応じて高機能性の化学物質を比較的少ない数量生産するといった傾向があるということが原因として考えられるのではないかという話を聞いております。
 次に6ページでございますが、既存化学物質の点検状況について御説明申し上げます。
 既存化学物質、この法律ができたときに既に日本にあった化学物質につきましては、この法律制定時の国会の附帯決議を踏まえまして国により安全性点検が実施されてきているところでございます。国は既存化学物質名簿に載っている化学物質の中から点検を行う必要があると考えられるものにつきまして既存データの収集あるいは試験の実施を行いまして、その結果に基づきまして第一種特定化学物質、指定化学物質または規制対象でないのいずれに該当するかを判定してきております。実績ですが、平成13年度末までに分解性や蓄積性に関しましては、これは経済産業省が担当しておりますが、1,279物質のデータが公表されております。また、毒性に関しましては厚生労働省が担当しておりますが、191物質の点検結果が公表されているところでございます。
 なお、既存化学物質の点検作業は国際的にも課題の一つとされているところでございまして、データの重複を避ける、あるいは点検を推進するといった観点から、近年、国際的な協力の下で実施されてきております。特に一地域または一国での年間生産量が1,000トンを超える化学物質につきましては、HPV(高生産量化学物質)といたしまして国際的に協力して安全性の点検が進められております。我が国におきましても国と産業界が分担・協力して必要な作業を行っているところでございます。
 次に資料の7ページでございますが、化学物質の評価・管理に関します最近の国際的な動向につきまして簡単に御説明申し上げます。
 先ほどの審議官の御挨拶の中でも申し述べたところでございますが、国際的にも化学物質の評価・管理に関する取組みが進展してきているところでございます。1992年には国連環境開発会議、いわゆるリオサミットが開催されまして、アジェンダ21が採択されております。その19章「有害化学物質の環境上適正な管理」では、ここに示したような化学物質のリスク評価が非常に重要であるということが述べられているところでございます。
 また、1997年には国連環境開発特別総会におきまして、このアジェンダ21を実施するための実施計画が採択されております。この中では「化学物質の適正な管理は持続可能な開発に不可欠であり、人間の健康と環境保護にとって基本的に必要なものである。化学物質に対して責任を持つすべての者は、化学物質のライフサイクルを通じて、その目的を達成するための責任を負っている」ということが述べられているところでございます。
 また、本年8月から9月にかけましては持続可能な開発に関する世界首脳会議、いわゆるヨハネスブルグサミットが開催されまして、実施文書が採択されたところでございます。この中では「環境と開発に関するリオ宣言の第15原則に記されている予防的取組方法(precautionary approach)に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順と科学的根拠に基づくリスク管理手順を用いて、化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを目指す」といった目標が掲げられているところでございます。
 また、先ほどHPVに関します国際的な取組みが推進されていると申し上げましたが、特にOECDでは加盟各国における審査制度の整合化や、HPVのプログラムの推進といった化学物質に関する評価などの対策が進められているところでございます。一つは新規化学物質の審査制度の整合化でございまして、1999年以降、OECDの新規化学物質タスクフォースで新規化学物質に係る届出の相互受入の導入に向けまして、各国制度の共通点や差異の分析、あるいは届出様式の標準化などについて検討が進められているところでございます。
 また、先ほど申し上げましたとおり既存化学物質のデータ収集とリスク評価の実施ということで1992年からHPVの点検プログラムが開始されております。また、1998年にはICCAという国際的な業界団体でもこの評価を実施する方針を示しまして、世界的に国と産業界が協力して実施してきているところでございます。
 OECDの活動の一つでございますが、今年1月にはOECD環境保全成果レビューというものがございまして、その中で我が国の化学物質管理政策につきましてレビューが行われまして勧告が出されているところでございます。勧告の内容につきましては参考資料7としてお付けしておりますが、後ほどお時間がございますときにご覧いただければと思います。
 ここに勧告部分から抜粋で2点ほど載せておりますが、1つには化学物質管理の効果及び効率を更に向上させるとともに、生態系保全を含むように規制の範囲を更に拡大することと述べられているところでございます。また、化学業界の自主的取組を強化するとともに、化学品製造者に対し(既存化学物質等の)安全性点検へのより積極的な役割を付与することについても述べられているところでございます。
 次に8ページでございますが、政府における最近の主要な検討状況について御報告させていただきます。
 先ほどOECDで、日本において生態系保全の規制も含むように化学物質の審査あるいは規制の範囲を更に拡大することという勧告がなされたと申し上げたところでございますが、環境省におきましては化学物質の審査・規制の中に生態系保全からの観点がないという問題意識がございまして、平成13年10月から平成14年3月まで検討会が開催され、報告書がまとめられたところでございます。
 環境省の報告書では、まず生態系保全を目的とした化学物質の審査・規制の枠組みの導入の必要性を説いております。その理由といたしましては、トリブチルスズ化合物の貝類への影響や、除草剤、殺虫剤の水生生物への影響などが報告されていること、OECD加盟国で新規化学物質の審査・規制制度を有する25カ国のうち、環境、すなわち生態系保全を法の目的に持たず、生態影響試験を事業者に要求できないのは日本だけであること、環境基本計画における化学物質対策の基本的方向として、生態系に対する影響の適切な評価と管理の推進が明記されていること、先ほど申し上げましたとおり、OECD環境保全成果レビューで指摘があったことなどを挙げております。
 次に2つ目の「・」でございますが、化学物質の生態系への影響の試験・評価方法について検討しております。OECDでは統一的な試験方法であるテストガイドラインや試験検査機関の信頼性を確保するための優良試験所基準(GLP)が策定されていて、各国に受け入れられていること、米国やEUなどにおきましては、生態影響試験の結果をもとにした一定の手法に基づく生態リスク評価が行われてきていること、また、我が国も環境省において生態影響試験や生態リスク評価が実施されてきたことなどを挙げまして、我が国においても化学物質の生態系への影響の試験・評価については実施可能であるとしております。
 次に3つ目の「・」でございますが、具体的な化学物質の審査・規制の在り方としては事前に、つまり市販が開始される前に生態影響に関する試験・審査を行い、その結果に応じて生態系保全に支障を及ぼすおそれがあるものについては、製造・使用等に関する規制を行う仕組みを導入することが必要としております。具体的な試験方法といたしましては、現状では生産者である藻類、一次消費者であるミジンコ類、二次消費者である魚類を対象とした急性毒性試験が適当であるというのが大方の意見であったとしております。また、このような生態影響試験の実施を求める化学物質の範囲、例えば製造・輸入量がどのくらいの量を超えた場合にこういった試験を行うべきであるかということにつきましては更に検討が必要であり、段階的なものとすべきであるとしております。
 最後の「・」でございますが、更にこのように化学物質審査規制制度の目的に人の健康の保護だけでなく環境中の動植物の保護を導入するのに合わせて、現在の化学物質の審査・規制制度についても見直すべきであるとしているところでございます。
 一方、経済産業省でございますが、今年4月から7月にかけまして化学物質総合管理政策研究会が開催され、7月に中間とりまとめが行われております。この政策研究会では化学物質の総合的な管理を推進するため、人の健康と環境への影響の未然防止の観点から、化学物質が国民生活や産業活動にもたらす社会的・経済的な便益とのバランスを図りつつ化学物質のリスクに応じた対応をするという基本的な考え方のもとに、事業者、国民、民間団体、国などそれぞれが役割を果たしていくことが必要であるという内容となっております。
 今回、検討をお願いしております化学物質の審査・規制制度に関係する部分につきましてはここに記載してあるとおりでございまして、大きく2点を挙げております。
 まず(1)といたしましては、新規の化学物質の事前審査制度につきましては暴露の可能性を考慮した段階的対応をすべきであるとしているところでございます。
 具体的には1つ目の「・」でございますが、最初に法律の概要のところで御説明を申し上げましたように化審法では分解性、蓄積性、長期毒性について審査を行っておりますが、他法令、例えば労安法などではがんやその他の労働者の重度の健康障害に関する有害性について審査を行っておりまして、今後どのような有害性項目を事前審査制度において審査すべきかについては更に検討が必要としております。
 2つ目の「・」でございますが、暴露可能性の低いもの、例えば他の化学物質を合成する際の中間物、全量を輸出に回す輸出専用品や低生産量、生産量が低い化学物質につきましては事前審査の対象外としてもよいのではないかということを述べております。
 3つ目の「・」でございますが、ただし、このように事前審査の対象外とした場合でありましても、セーフティネットとして暴露状況を事後的に確認する制度や、必要な場合に有害性情報の提出を求める制度などを設けることが必要ではないかとしております。
 最後のところでございますが、審査手続の効率化や評価基準の公開など、法律の運用に当たって透明性を確保していくことが必要であるとしているところでございます。
 次に、(2)生態毒性物質に関する取組の強化でございます。この研究会におきましては生態系を構成する個別の生物種に対して一定の有害性を示す化学物質を生態毒性物質と整理した上でこの報告書がまとまってございますけれども、個別の生物種に対する有害性と生態系全体に対する影響に関しましては因果関係が現時点において必ずしも明らかではないので、今後とも因果関係に関する科学的知見の充実に取り組むことが必要であるとしております。しかしながら、このように生態系について科学的に不明確な部分がある状況におきましても、未然防止に資するよう国際的動向にも留意しつつ事業者の自主管理を促す枠組み整備を進め、適切な評価・管理を行うことが必要であるとしております。
 3つ目の「・」でございますが、個別の生物種に対する影響の未然防止という観点からは、例えば生活環境保全を目的とした水質目標値の検討などが政府内、具体的には環境省などで行われているところでございまして、このような検討と同様に対応を進めることも考えられる、また、国として統一的な考え方のもとで制度設計を行うべきであるとしているところでございます。
 以上、国内における主要な検討状況について御説明させていただきましたが、この検討会、研究会の2つの報告書を参考資料5、6として添付しておりますので、御参考にしていただければと思います。
 次に9ページでございますが、諸外国において化学物質の審査・規制制度はどうなっているのかということをまとめさせていただいております。
 先ほどOECD加盟国の中で化学物質の審査・規制制度を持つ国が25カ国あると申し上げましたが、ここではアメリカとEUと日本を比較する形で資料としております。アメリカでは有害化学物質規制法、通称TSCAと呼ばれている法律がございまして、この法律に基づきまして化学物質の事前審査及び規制がなされおります。また、EUにおきましては幾つかのEU指令(EU Directive)がございますが、例えば危険な物質の分類包装表示に関する理事会指令などがございます。日本におきましては、ここでは化審法を取り上げて比較の対象としております。
 まず、(1)といたしまして事前審査制度の評価の観点でございます。化審法につきましては最初に申し上げましたが、難分解性の性状を有する化学物質に環境を通じて人が暴露されて人の健康が損なわれることを防止するという観点に立っております。その観点から、審査項目といたしましては難分解性かどうか、高蓄積性かどうか、長期毒性はあるかどうかといったことが評価の対象となっております。なお、さきに御説明申し上げましたとおり、人以外の環境中の生物に対する有害性があるかどうかにつきましては現状の化審法では評価の対象となっておりません。
 アメリカにおきましては、人の健康と環境へのリスクの両方を評価しております。具体的な評価手法でございますが、米国環境保護庁(EPA)は事業者の手持ちのデータや個別排出源や使用時における排出形態に関する情報、それからEPAが持っている情報などを用いて、デルを活用いたしまして環境への暴露評価を行い、その結果に基づきリスク評価を行うという手法をとっております。事前審査におきましても、事業者に対してこれだけのデータをそろえなさいという形ではなくて、現在持っているデータはすべて出しなさいという形になっておりまして、それらのデータとEPAが持っている推定値などを用いて評価する。そこで必要があると判断された場合には事業者にデータを求めるという形をとっております。この点が日本と比べて特徴的になっているかと思います。
 EUにおきましては、人の健康と環境への有害性とリスクの両方を評価しております。有害性の評価は表示のための分類をするために必要とされております。EUにおける評価手法はアメリカとは若干異なっておりまして、その製造数量などに応じて一定の定まったデータセットを求めるという形をとっております。この点は日本と類似していると言えるかと思います。ただし、規制措置の必要性を判断するに当たりまして、有害性だけでなくリスクを評価しているという点が異なっている点かと思います。
 次に(2)でございますが、このような評価に基づきまして審査後にどのような規制などの管理措置がとられるかを示したものでございます。
 日本におきましては、第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、指定化学物質といったカテゴリーのものにカテゴライズされまして、物質の性状に応じた規制措置がとられております。
 アメリカにおきましては、リスクの懸念ありとされた場合には届出者は追加試験データの提出かリスク削減対策のいずれかを選択することになります。ここで言う追加試験データの提出とは、先ほど御説明いたしましたとおりEPAのリスク評価では限られたデータを用いてモデルを活用しているということで不確実性がございますが、その不確実性の程度を低くするために有害性などの試験データをとってEPAに提出するという意味合いと考えていただければと思います。リスク削減の内容をもとにEPAとの交渉を経て、規制措置が確定することになります。ここに幾つか例示を挙げておりますが、規制措置の内容といたしましてはこういったものがリスクに応じて選択されることになります。
 次にEUにおきましては、人の健康と環境に対して一定の毒性を示すものにつきましては有害性分類に基づく表示が義務付けられております。この分類でございますが、例えば発がん性物質あるいは変異原性物質、生殖毒性がある物質といった人へのハザードに関する分類、あるいは爆発性物質、可燃性物質といった物性に関するもの、あるいは環境の構成要素、環境中の生物に危険を生じる環境危険性物質といった環境に対するハザード、こういった分類がございます。また、個別物質ごとにリスク評価の結果を踏まえましてリスクを削減させるために、上市することの制限や特定用途への使用の規制などがかかることとなっております。
 次に10ページでございますが、(3)といたしまして事前審査の届出に関する主な適用除外・軽減措置をお示ししました。ここに示したものにつきましては、その化学物質に暴露する可能性が低く、リスクが低く見積もられるといったことから、事前の届出にあって適用除外や軽減措置がとられているものでございます。
 まず、(1)の試験研究用のものにつきましては、日本、アメリカ、EUとも共通して適用が除外されております。
 (2)の製造・輸入数量が少量の場合の届出事項の軽減でございますが、最初に化審法の概要で御説明申し上げましたとおり、日本におきましては年間製造・輸入数量の合計が1トン以下の場合には届出が不要とされております。この場合は分解性、蓄積性、スクリーニング毒性といった試験データの提出も不要になります。
 アメリカにおきましては、1社当たりの製造・輸入数量が10トン未満の場合には届出が免除される旨の届出を行った上で免除ということになっております。この場合、年間生産量や輸入量の記録などが義務付けられております。
 EUにおきましては、年間上市量が1社当たり1トン、累積で5トン以下の場合には生態毒性に関する試験データが不要とされるなど、届出事項が軽減されております。逆に、上市量が増えた場合には追加データが要求される場合もございます。
 なお、ここではEUの現行制度をお示ししております。この現行制度では年間上市量が1トン以上のものを完全届出といたしまして、人に対する健康影響としては日本と同様にスクリーニング毒性試験と呼ばれる3つの試験、変異原性と28日間の反復投与試験を要求しておりますけれども、昨年2月に発表されましたホワイトペーパーと呼ばれる今後の化学品政策のための戦略を示しましたEUの白書がございますが、この中では年間上市量が10トン以上のものについて完全届出とするよう変更案を示しているところでございます。
 (3)といたしまして、そのほかの軽減措置を示しております。日本におきましては医薬品の中間物、つまり化学反応を加えて全量が医薬品になるものにつきましては、その全量が次の合成反応に使用されることを確認した上で事前審査が免除されることとなっております。
 アメリカにおきましては、環境への放出や人への暴露可能性が低いものにつきまして条件を満たすことの事前承認と、事後に暴露情報を提出するといった条件のもとで届出が免除されております。
 EUにおきましても、やはり化学物質を合成する過程の中間物とEU域外への輸出につきましては対象外としているところでございます。
 このほかに重複規制を排除するという観点から、日本、アメリカ、EUとも、ほかの法令におきまして規制されている例えば農薬や医薬品、食品添加物といったものにつきましては届出不要の措置が講じられているところでございます。
 次に、(4)といたしまして既存化学物質の点検についてまとめております。
 先ほども申し上げましたが、日本におきましては化審法の公布時につくられております既存化学物質名簿がございまして、ここに約2万種の化学物質が収載されております。この中から生産量が多いなど優先順位が高いと考えられるものから順次、国が試験などを実施してきております。先ほど申し上げましたが、具体的には厚生労働省が毒性試験、経済産業省が分解性試験と蓄積性試験を担当しております。
 また、このような点検の結果、指定化学物質に指定されたものにつきましては、環境汚染が広がるなど一定のリスクが見込まれる際に事業者に対しまして有害性の調査、具体的には慢性毒性試験やガン原性試験などのデータを収集すること、このような既存のデータがない場合には、事業者が自ら実施することが必要とされておりますが、そういった有害性調査を指示することができることとなっております。
 アメリカにおきましては、やはり同じように法律制定以前の化学物質を収載しましたインベントリーが作成されております。このインベントリーの中から年間1万ポンド以上を造・輸入されている1万5,000物質が選ばれ、更に優先物質として500以上の物質と10の物質カテゴリーが選ばれております。これらの物質に関しましてEPAがリスクを評価し、人または環境への重大なリスクが懸念される場合に、EPAは製造・輸入業者などに対しまして毒性試験を実施するよう指示することとされております。
 EUにおきましては1981年になりますが、やはりある時点以前にあった化学物質につきましてリストがつくられておりまして、このリストには約10万物質が掲載されております。このうち、一国または一地域での生産量が1,000トン以上の高生産量の化学物質につきましては事業者に対しまして所有データの提出を求め、事業者から提出されたデータはデータベース化され、公表しております。
 以上、化学物質の審査・規制制度の現状につきまして我が国の化審法の概要と運用状況、国内外における最近の動き、欧米の制度の概略について御説明申し上げました。
 次に11ページでございますが、6といたしまして、これらの状況を踏まえた今後の検討課題の案をお示しさせていただいております。
 検討課題といたしましては、まず大きな1点目でございますが、生態系への影響といいますか、環境中の人以外の生物に対する影響を考慮した審査・規制の在り方でございます。
 これまで御説明いたしましたとおり、日本においてはこれまで評価のポイントといたしまして、毒性という面では人の健康を損なうおそれがあるかどうかということしか見てこなかったわけでございますが、これに加えまして環境中の生物に対する影響を考慮するということでございます。これに当たっては、事前審査においてはどのような範囲の化学物質につきましてどのような評価を行ったらよいのかといった事前審査の在り方について論点があろうかと思います。
 次に2つ目の「・」ですが、審査の結果、影響を与えるおそれがあるとなった化学物質につきまして、どのような規制・管理を行っていったらいいのかということも論点かと思います。
 次に大きな論点の2つ目でございますが、2つ目のマルでございます。現行の審査・規制制度の見直しにつきまして国際的な動向や、化審法が制定されて30年近くがたちまして、この間さまざまな科学的な知見が集積されてきているところでございますので、このような点を踏まえて見直しをしてはどうかということでございます。
 事務局といたしましては時間的な制約もございますので、現行の第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、指定化学物質といった現行の枠組みが前提になるかと思っておりますが、その上で具体的な論点といたしましては、例えば新規化学物質の審査において暴露可能性を考慮して、もう少しフレキシブルな対応を検討できないかどうかということでございます。
 近年、化学物質の評価に当たりましてはリスクを評価してリスクを管理するという考え方が主流になってきていることはさきに御説明申し上げたところでございますが、そのような観点から諸外国におきましても事前審査において柔軟な対応が行われているという面もございます。特に市場前におきましては化学物質の暴露に関して得られるデータが、例えば製造予定数量とか、予定用途とか限られているという面もございますので、なかなか難しい面がございますが、できる限り暴露可能性に配慮し、有害性だけでなくリスクを考えるようにできないだろうかかということでございます。
 2つ目の「・」でございますが、いわゆるセーフティネットといったものに該当するかと思いますけれども、事業者が有害性を裏づけるデータを取得した場合に、そのデータを国に報告することを求め、審査を行った後においてもフォローアップできるような体制をとっていってはどうだろうかということでございます。また、このようなデータを生かすなどして既存化学物質の点検の推進を図る方策を検討してはいかがかということを検討課題の案として挙げさせていただきました。
 最後のマルになりますが、そのほか制度の円滑な運用のために改善すべき点がいろいろ挙げられるかと思いますので、この点につきましても御意見をいただき、改善すべき点があれば検討課題としていきたいと考えております。
 以上、少々長くなりましたが、資料3について御説明させていただきました。
 本専門委員会におきましては、御説明申し上げました化学物質審査・規制制度における課題にどのように対応するかにつきまして御議論いただき、この専門委員会として報告書をおまとめいただきまして、部会に御報告いただくということをお願いしたいと思います。最終的には部会から厚生労働大臣に対しまして御意見をご提出いただくという形をとりたいと思っております。
 以上、御検討のほどよろしくお願いいたします。

○首藤委員長
 どうもありがとうございました。
 いろいろなことが入っておりましたけれども、まず最初に現状ということについてかなり細かい御説明がございました。それから、最後にこの委員会で何をしていただきたいかということについての検討課題(案)が出ております。
 最初にまず現状というところで何か御質問、あるいは御意見をお願いいたします。
 質問ですけれども、経済産業省と環境省から出ている報告書がありますね。経済産業省、環境省は前々から検討していたわけですか。

○事務局
 この検討会自体の開催は、環境省におきましては昨年10月から今年3月でございますが、化学物質の審査や規制・管理といったところに、やはり人の健康だけではなくて生態系といいますか、環境中の生物についても考慮していくべきということにつきましては、この検討会が始まる前からもいろいろと予算措置などで研究調査などはされていたと聞いております。
 また、経済産業省の研究会は本年4月から7月まで具体的に開催されたものでございますが、やはり研究会に先立ちましてもいろいろな内部事務的な検討についてはされていたものと思われます。

○竹居委員
 今の資料の3ページに環境経由でという暴露の話が出ておりまして、化学物質審査規制法のところだけが黒く塗ってありますね。横にある農薬取締法とか、そういったものについても同様な法律の見直しというか、規制の在り方の見直しを政府はやっているんでしょうか。農薬を経由して問題が起こることもあるわけで、それについてはここの所管と全く切り離すのか、あるいはそれも包括した考え方でやるのか、そのあたりを教えてください。

○松田室長
 農薬につきましては、環境省の方で同じように農薬生態影響評価検討会を設けております。その中で農薬取締法に基づく登録保留基準という形で農薬を使う上での基準等を設けられておりますけれども、農薬の場合は現在、コイに対するデータを要求しております。そういったところについて先ほど少しお話ししましたように例えば藻とか、ほかの種類のものも入れて、生態系に影響のあるものについて農薬取締法に基づいて規制ができないかどうかの検討を行っております。同じように、水質汚濁防止法に基づく化学物質の規制についても同様の趣旨で規制ができないか、検討が今行われていると承知しております。

○渡部委員
 首藤先生の方から現状についての質問ということですが、その現状ですけれども、化学物質について今の御説明にもありましたように米国とEUと我が国を比べて、前2者と我が国との間の際立った違いは生態系に対する影響が化学物質に関して全く抜け落ちているということですが、これについて行政の側で実はこういういきさつがあって我が国においてはその部分が抜け落ちてしまったんだということを御説明いただけますか。そうすると、これからの取組みがより鮮明になると思うんです。それはもう過去のことであって、これからが大切なんだと言われれば、それでも結構ですが。

○松田室長
 一つには、環境基本法が制定されたり、それに基づく環境基本計画などがいろいろ制定される中で、ようやく生態系への影響も人への健康影響と同じような形でやっていこうという機運が高まってきた事実がございます。あと、先ほど申し上げたOECDの勧告も相まってやはり入れていこうということで政府部内の中でいろいろ検討が進んできたということだと思います。

○渡部委員
 総じての印象ですけれども、こと、化学物質に関して我が国がリスクマネージメントにしても、それ以前のプロセスもアセスメントから含めてですが、非常にわかりにくいような状況になっていて、やはりEUや米国に比べて改めていかなければいけないところが随分あるなという感じがしているんです。例えばPRTR法がここ最近になってやっとこさということにしてもですが。

○首藤委員長
 これは環境省と一緒に化学物質審査をしているわけだと思うんですけれども、難分解性とか高蓄積性というのは環境のことを全く考えていなかったわけではなくて、環境という言葉ではないですけれども、考えていたからそういう言葉で入っていたという見方もできなくはないかなと感じています。とにかくOECDからも言われてしまったというのは何となく面白くない。面白くないというのは、我々が全然考えていなかったととられるのも不思議だなという気がいたします。
 いろいろな御意見があるかと思いますけれども、皆さんは専門家であるから、その辺をよく理解してしまっているのかもしれませんが。
 それでは、事務局から説明の最後に6「化学物質審査規制の在り方に関しての今後の検討課題(案)」が出ておりましたが、この周辺について御質問、御意見をいただきたいと思います。

○小倉委員
 今回、化学物質審査規制の在り方に関して3省で御検討いただくことになりましたが、私ども産業界としましては現在の化審法はいろいろな問題を抱えていると思っておりまして、数年前からいろいろ問題提起は各省の方へさせていただいておりました。今回は生態系の導入ということでこの経緯となりまして、化審法の在り方の議論をしていただけるということで、私どもとしても現在の化審法が持っております不合理な点とか、そういうところをぜひ今回見ていただきたい。
 特にマルの3つ目に「その他、制度の円滑な運用のために改善すべき点」ということもございますし、先ほどのOECDの勧告の中にも化学物質管理の効果及び効率を更に向上させるということもございます。現在、いわゆる化学産業にとりまして国際競争が非常に激しくなっております。特に新規化学物質の審査に係る期間の短縮も非常に大事なファクターになっておりますので、どうかその辺も含めまして御検討いただければと思っております。

○林委員
 現行の審査・規制制度の見直し等についても今回話をしていくことができるということですが、今もおっしゃったようにこれまでの審査過程での問題点がいろいろ出てきていると思うんです。だから、その辺のところはどの程度までこの短い期間に、あと3回か4回ぐらいで一応の中間的なものを出さないといけないということですけれども、実際の作業ができるのかなというのを少し不安に思ったりするところがあります。
 特に遺伝毒性、変異原性関係のところでは、海外でいろいろこういう話をすると、要するに日本ではスクリーニングとして短期の in vitro の試験だけでやっているけれども、それに in vivo の試験データをどうしてうまく評価に入れていかないんだという意見も聞きますし、反復投与毒性試験の方ではNOEL、NOAELの問題等もあると思うんですけれども、その辺のところをどういうタイムスケジュールに乗せていけばいいのかなというのを先ほどから考えておりました。

○首藤委員長
 大変大事な御質問だと思うんですが、厚生科学審議会の中に化学物質制度改正検討部会を設置する理由のようなものを書いてあります。1つは動植物の生息に支障を及ぼす化学物質を新たな規制対象とすることについて等、その「等」に何が入るかということだろうと思うんですが、先ほど小倉委員からは「等」の中に規制のもっと現実的なことを考えていただきたいという御意見があったと思うんです。林委員からは、予定としては後で出てくると思うんですけれども、11月7日と数回の予定が出ておりますが、この短い間にできることをするということだろうと思うんですが、できることはどれぐらいかというと、いろいろ察しがつくところがあるかなという気もいたします。
 予定の話は後で出てくるんでしょうけれども、11月7日までには何をすればいいのか。11月7日というのは来週ですね。そういうことを考えると、我々は具体的に何をすべきなのかということについて事務局から何かあったら言っていただきたいし、我々自身が11月7日までだとこんなことができるということがあれば、それを伺ってもいいかなという気がいたします。

○松田室長
 今、委員長の方から今後のスケジュールの話が出てまいりましたけれども、資料3に今後の検討スケジュールが出てございます。今のところ先生方の御都合等もお聞かせいただきまして、次回の会議につきましては11月7日、3回目は12月5日、4回目は12月19日という形で予定させていただいております。そして、下を見ていただくとわかりますが、2回目、3回目、4回目とも経済産業省、環境省の小委員会と同じ日にやるような形になっております。要は合同でやらせていただきたいと考えております。11月7日が生態影響のある化学物質の審査及び規制の在り方、12月5日につきましては現行の審査・規制制度の見直しをやらせていただきたいと思っておりますので、本日は最初の会議でございますが、今日いただいた先生方の意見も踏まえまして、2回目、3回目の検討内容を事務局なりに3省と詰めさせていただきたいと思っております。

○首藤委員長
 そういう予定になっているようですが。

○西原委員長代理
 今のこととも関係しているんですけれども、まず1つは具体的な内容とは関係なくて、リスクベースでやるということはどこかで合意しているんですか。あるいは、データの公表をどうするか。多分、このスケジュールではそういうことをディスカッションする場がないような気がするんです。それが私自身は非常に大きなことだし、それによって内容も大分変わってくるのではないかと思っているんです。今は生態影響に関しても考えておられるのは、どうしてもハザードベースですね。少なくともここに書いてあるのは。

○松田室長
 リスクベースの考え方につきましては、例えば今の事前審査の対象とする物質の考え方は原則1トン以上という形で、原則審査対象という形にしておりまして、ハザードデータに基づいて指定化学物質という形にさせていただいておりますけれども、3省で今いろいろ考えておりますのは、その事前審査制度の対象とする物質の考え方にリスク評価という概念を入れられないかということでございます。
 あとは情報公開の話でございますけれども、これもいろいろ御意見をいただきたいと思っておりますが、基本的には経済産業省の報告書の中でもこういったところについては前向きに取り組む必要があるということもいただいておりますので、当方としても前向きに考えたいと思っております。

○首藤委員長
 今度の7日の会議のときには何か事務局案と言うんでしょうか、3省庁の案みたいなものが出てくるわけですか。

○松田室長
 7日は生態影響の事前審査の在り方と、そのデータに基づく規制の仕方、例えば指定化学物質とか一・二特といった枠にするのかどうかも含めて、どういう形で規制をしていくかについて3省、特に環境省などを中心に検討しておりますので、そのたたき台を出させていただきたいと思っております。

○首藤委員長
 具体的に先が見える感じにはなったかと思いますが、いかがでしょうか。

○竹居委員
 皆さん専門家ばかりの中で素人みたいな者が伺うのは恥ずかしいような気がするんですが、この検討課題を読みますと、動植物の生息等に支障を及ぼすおそれがある物質と言っております。動植物は何種類あるか知りませんが、動物も植物もものすごくあるわけですね。そのすべてについて支障を及ぼすおそれがあるかないかということを、どうやって調査・評価するのかな。素人考えですと、それは不可能だろうなと思うわけです。したがって、そのあたりをどう考えるかということが一つ。
 それと関わりがあるのかどうかわかりませんが、その費用や手間などを考えた場合はおのずと、ある物質を新しく仮につくったとして、それを世界中のあらゆる動植物の生息等に影響があるかどうか調べていくことはエンドレスで、金も天文学的に高いものになってしまうような気もしますし、どうも素人から見て、このあたりがよくわからないなという気がしてしようがないので、教えていただきたいと思います。

○松田室長
 その考え方につきましては、環境省の研究会の報告書の中にも述べられているところでございます。本当はいろいろな方法があるのでしょうけれども、世界的にといいますか、OECDの中で試験法として大体確立している方法といたしましては、最初の生物の餌になる藻と、藻を餌にするミジンコ、それをまた餌にする魚類、その3つを代表的な生物種として、いずれも短期毒性ですがスクリーニング試験ということで、従来の分解性や蓄積性、変異原性試験とか28日間の毒性試験とともにやっています。企業の方がデータを作成し、そのデータの提出を義務付けるというのが環境省の検討会で考えられている一つの案でございます。それが一つの軸になると思います。
 今のは事前審査の話でございますので、具体的に今度もっと厳しい規制をしていくことについてどういう考え方でいくのかについては、例えば経済産業省の報告書の中にもありますように特定の生物種を対象にして考えていく、生態系という漠としたものではなかなか規制などとは結び付きづらいので、何か特定のものを対象としてということも一つの考え方としてはあるでしょうし、これらの点は次回、どういう考え方で規制していくのかというのを出させていただきたいと思います。
 そういった2つの考え方、内容で御議論いただくことになると思います。

○竹居委員
 今のお話を聞いていると羊頭狗肉の話を聞いているような気がしてしようがないんですけれども、本当に広く動植物全体の生息云々ということであれば、もっといろいろなことをやらなければいけないように思うんです。今のお話だと結局、例えば我々が食べる魚とか、そういうものが間接にダイオキシンをだんだん大きな魚が食べていって最終的には我々の体に入ってくる。その話と余り違わないのではないかという感じがしまして、そういう意味では動植物の生息等云々というのと違うなという印象があるんですが、どうでしょうか。

○事務局
 竹居委員がおっしゃいますとおり、動植物の生息等に支障を及ぼすという話でございますが、この話の中には確かに生態系と言われているものをどうとらえるかという問題があると思うんです。生態系と言われていますのが非常に漠としておりまして、ある物質がすべてに影響を及ぼすものもあるかもしれないし、特定のものに影響を及ぼすものもあるかもしれませんし、その段階でどういうような観点で影響を与えたらどう判断するのかということが竹居委員のおっしゃられている御質問ではないかと思うんです。
 この問題については、日本のみならず世界におきましても喧々諤々議論されているところでございまして、とらえるべき対象と言われているものがなかなか難しいということ。それから、どういうものについて試験を行うと、どういう結果が出るのかということも必ずしも一様な形で結果が出ているものではございません。
 先ほど松田室長の方からも御説明がありましたとおり、今現在、世界的に試験法等が一番古くに確立されまして、実際にそれが各国ともに受け入れられていますのが水系に及ぼします藻とか、あるいはミジンコや魚に及びます試験でございます。それ以外にも鳥とか、ミツバチなどの試験があるんですけれども、そういうものが実際どこまで影響があるかとか、そういうものに影響を及ぼして何が守られるんだろうかというところは現在かなり議論がございます。少なくとも最低限世界的に確立されているところのものは今現在、OECDからの指摘もございましたとおり日本国内においては今まで特段規制の対象としていなかったということもございますので、少なくともそちらの方から考えていくことが必要ではないのかということがございます。その後、その結果に基づいてどう管理していくかということはまさに次回、11月7日の中で十分議論をお願いしたいと思っているところでございます。

○竹居委員
 余分なことなのかどうかわかりませんが、その程度のことならば既存の化学物質でいまだにきちんと審査が終わっていないものが物すごくたくさんありますね。それを先にやる方が大事であるような気もするんです。もちろんこれをやらないでいいという意味ではないんです。それも必要でしょうが、同時に今まで延々とやって、いつ終わるかわからないような既存化学物質についてきちんとやる。今までのルールに基づいたチェックをやるということはもっと声を上げないといけないのではないかという気もするんです。

○首藤委員長
 大変貴重な御意見、ありがとうございました。同じ質問をしたいと思うんですけれども、ミジンコと藻と魚で何を見るんですか。

○事務局
 今現在とらえられていますのは、藻とミジンコと魚それぞれにどういうふうに影響を及ぼすかという試験がございますが、それによって環境に与える影響というものを必要最小限とらえることはできるというのが世界的な流れと聞いております。何を見ているかと言いますと、例えば生育阻害や発育影響となっていますので、それはそれぞれの種、藻とかミジンコ、あるいは魚におけます致死、どういうふうに致死を及ぼすのかという影響から判断できると聞いております。

○首藤委員長
 殺してしまうものはだめ、生かしておくものはOKなわけですか。

○事務局
 御参考までに、参考資料5の後ろから3枚目に、「各国、地域における新規化学物質の主な法定届出項目」というのが一覧表に載っております。
 今御説明申し上げましたミジンコや魚というのは3番の生態毒性データでございまして、例えばEUですと1)から4)のデータを求められており、オーストラリアですと1)から3)、カナダですと魚、ミジンコといったデータが求められているという状況にございます。
 ページを打ってなくて大変恐縮ですが、その3枚ほど前に参考6といたしまして「生態影響試験に係るOECDテストガイドライン一覧」がございまして、今のところこういったテスト試験法がOECDの方で定まっております。何の試験を行うかというのに当たりまして、やはり新規化学物質として審査する場合にどういう試験が必要かということと、それが環境中から検出されるなど環境リスクが高まってきたときにどういう試験が必要なのかといった問題もあるのかと思います。例えば今の人の毒性に関しましても、新規化学物質の最初の審査の段階ではスクリーニング毒性という非常に簡易な試験のみでして、その後、指定化学物質が第二種特定化学物質になるかどうかというところでは慢性毒性など、もっときちんとしたデータを求めるという何段階かになっておりますので、もちろん生態影響についてもそういう議論が出てくるのではないかなと思います。

○事務局
 竹居委員の御指摘の既存化学物質の話でございますが、こちらの方も11ページにございます今後の検討課題の話といたしまして、2番目の「○」の一番最後の「・」のところに既存化学物質の点検の推進を図るための方策という形で入れさせていただいている次第でございます。

○渡部委員
 今後の作業のことなどが論議されておりますが、たった今の御質問で御説明があったこと関連して、そちらの方から最初に片付けさせてもらいたいと思います。
 いわゆる化審法に従って厚生労働省の化学物質調査会で専門委員を務めさせてもらっておりますけれども、例えば非常に魚毒性が強いけれど魚体に対する蓄積性が低く、そして28日間毒性試験も余り強くないというのは今までフリーパスで長年通っていたんです。
 この委員会の御出席になっておりませんけれども、この委員会の正式なメンバーになっております吉岡義正さんという先生はそちらの面の御専門でして、これだけ魚毒性が強いものが環境にばらまかれたら、しかも指定化学物質でない、すなわちどれだけつくろうが業者の勝手だという形でどんどん環境に放出されたら、生態系に対する影響が甚大なものであるとかねがねお嘆きになるわけです。現行の化審法というのはそんなことは知ったことではないという感じで、ひたすら環境を通じて人体が暴露された場合にどうなんだろうということを動物実験のデータから推し量っていく作業が長年にわたって続けられてまいりました。当然のことながら環境のことは知ったことではないと言える時代でも何でもないと思いますので、その点はコメントです。
 あと2つございますが、先ほどの説明で資料の10ページ目、項目としては(3)の(2)になります。つまり、このテーブルの真ん中の部分ですが、我が国とアメリカ、EUとで規制値、生産量のことですが、その線引きでかなり大きな差があるようでございます。長年、化審法はずっと合計1トンを超える場合には、必ず化審法の定めるところの28日間毒性試験、変異原性試験等をやって、そのデータを届けなければならないんですけれども、これがもし米国と同じ基準にドンと上がって10トンということになるとすれば、仄聞きするところによると、この際10トンでいこうではないかというお考えもどこかにあるように聞いておりますが、大変なことになるなと思います。
 なぜ大変なことになるのかといいますと、我が国の化学物質の生産量が一国当たり、EUというふうに大きな枠ではありませんで、アメリカ、日本、例えばドイツやフランスという一国当たりのあれでいたしますと、ごく最近の生産量が世界でナンバー2だと聞いております。しかも可住面積といいますか、我が国の国土のことについて言っているんですが、それが非常に狭隘であると。それに対して人口密度が非常に高いという現状は、化学物質を盛んに製造している先進国の中では我が国はかなり特殊な状況にあるのではないかと思うんです。つまり、化学物質による国民の皆さんに対するストレス、負荷です。確かに化学産業の競争力とか経済の面で重大な側面があるのはよく知った上での提案ですけれども、毒性学者として国民の健康という点ではアメリカにそういう点で右へ倣えしていただいたら困ると考えております。非常に困ります。だから、今後これをまとめるときに今の意見が取り入れられていただければありがたいなと思うんです。

○首藤委員長
 私から言ってはまずいかもしれませんが、アメリカで10トンというのは、そこだけ見ると10という値ですけれども、表を見ると米国は下の方にチェック項目がたくさんあるんです。使用量とか排出量、排出ポイント、そういうことを要求しているから10トンでもいいという場合があるのではないですか。

○渡部委員
 そういう意味で、例えば量が増えれば増えるほどこういう追加項目がありますというある程度のフレキシビリティーがある。例えば委員長が今御指摘になったアメリカのケース、それからEUのケースもそうですね。リジッドな我が国の今の法律の運用というのではなくて、今までの1トンというのは勝手に動かさない基準にして、その上に量が増えていけば、ある程度はフレキシブルに規制がどんどん強くなっていくようなやり方にしてもらえれば、それはそれでいいと思うんです。

○小倉委員
 若干コメントさせていただければと思います。
 今、渡部委員の方からお話がありました日米欧の比較ですが、1つは1トン・10トンの話がございますけれども、日本は全国で1トンですが、欧米は1社で10トンとなっています。
 もう一つ、各地域ごとの生産量という意味から申しますと、確かに売上等からしますと大体アメリカがトップで、その次はEU全体、それで日本。各国別としますと確かに日本が第2位と理解いたしております。ただ、全体の貿易まで含めますと、かなりスペシャリティー・ケミカルズと言われるものは日本が入超でございまして、欧州からどんどん入ってきております。一方、日本から外へ出す方はバルク・ケミカルズ、いわゆる一般工業的なものが割と多くございまして、これは東南アジア方面に輸出されている。従いまして、生産量だけで国内の広さとの直結は少し難しいのではないかと、若干そんな気がいたします。

○渡部委員
 確かに化学物質の生産と国のボーダーを加えての定義は実態を把握するのが実際に難しいんだということを聞きましたけれども、それにしても私は日本を含めた各国の化学物質の製造量を円グラフで見せられたときには本当にびっくりいたしました。長年こうなのかと言ったら、ずっと今日に至っている円グラフだということで日本がナンバー2。それと国土の狭隘さと人口密度の高さ、そういったことを考えると軽々に我が国が米国のスタンダードに安易に合わせていっていいのかなという考えを持っております。

○松田室長
 先ほど委員長の方からありました表ですけれども、米国は10トン以上であればこういった予定用途、いろいろな数量、環境への排出といったところは必須のデータで求めて、あとは手持ちのデータだけで、この排出のところからリスク評価をして、データがこれで十分であれば例えばデータがなくてもいい。逆に足りないようであれば、リスク管理をもっと強化するなり、必要なデータの提出を求めるという形になっておるわけでございます。そんな形の規制の仕方でございます。
 いずれにしろ1トン・10トンのところは12月のときに御議論いただきたいと思いますけれども、私どもとしてもそこはどういう根拠で説明がつくのかというところは十分検討させていただいた上で御議論に供したいと思っております。ただアメリカだとこうだという形ではなかなか難しいということは了解しておりますので、そこら辺は中でいろいろ検討させていただきたいと思います。

○小倉委員
 誤解を招かぬよう申し添えますが、アメリカが10トンだから日本も10トンという議論は乱暴だと思っております。あくまで現在の化審法というのは非常にハザードベースの考え方でございますので、やはりリスクという観点から本当にどういう管理がいいのか考えていくべきでしょうというスタンスで考えております。

○安藤委員
 元に戻りますが、検討課題の中で動植物と書いてありますけれども、今おっしゃられたのは藻類とダフィニアと魚類ですね。ということは、水系ですね。植物は入っていないですね。藻類を植物に入れるんですか。非常に細かい話ですが、動植物と言ったらずれているのではないかという気がするんです。

○事務局
 今御指摘がございましたが、法律の目的に何を保護にしていくのかというところは今後の議論に当たりまして十分検討が必要と思っております。
 話が飛んで申し訳ございませんが、資料3の次回の課題のところでは、ここもどういう書き方がいいのかというのは恐らく委員の先生方からもいろいろ御議論が出ると思いますが、資料3の第2回専門委員会の予定議題でございますが、環境中の生物への影響に着目した化学物質の審査及び規制の在り方とさせていただいております。先ほど生態系というものは非常に難しいということを申し上げましたが、そこは事務局としても何への影響に着目するのかということも論点になると感じております。

○松田室長
 環境省の報告書の17ページにもそういうところが検討されていまして、(2)「生態影響に関する試験と審査のあり方」というのがございます。やはり環境中に排出された化学物質が水環境に移行して、そして水生生物は化学物質の影響、暴露を受けやすい、試験法が比較的容易だと。そんなところから水生生物を対象とする試験法を重視することが適当ではなかろうかと、研究会としてはそういう形でまとめております。

○井上委員
 一言簡単に申し上げたいと思います。化学物質の安全性審査に携わってきた者といたしまして2点ほど申し上げます。
 第1点は、化審法をベースにした安全性の検討と申しますのは、先ほど西原先生もおっしゃいましたようにハザードベースでもって行われております。しかも、人が中心でございます。渡部委員はこの問題点を御指摘になりましたが、事務局もはっきりと認めておりますように、なぜそういうふうになったのかは別といたしまして、実際に試験項目は人の安全性に関する問題を整理するようなスキームになっております。これは環境中の生物も人と同じような形で影響を受けるということが前提になっていたかどうかわかりませんけれども、私は環境のことは全くわかりませんが、環境生物は人よりも鋭敏に種が絶滅するものがあり得るということは知られていることですので、そういったことが中心に先ほど渡部委員が指摘されたような、あるいは吉岡委員が前から指摘しておられるような、環境生物は独立に見ていただく必要があるということを私どもは前から考えておりました。それは私どもの専門ではございませんので、環境の専門家の方たちがそういったスキームをエンドポイントを含めて検討してくださることを人に責任を持つ者として切に望んでおります。
 その提案が事務局から紹介されましたけれども、これについてはあくまでも階層上のモデルという考え方で、これが具体的に適切かどうかという点についてはエコシステムをモデルとすること自体が難しいということを環境の先生方はおっしゃっておられました。したがいまして、これが適切かどうかということについては恐らく今後も議論があろうかと思いますが、私は次回たまたま出られないこともありまして、また出てもそういった方面では何もお役に立てないんですけれども、人にぶら下がるのではなく、環境の問題は環境の問題として独立に何らかのものを結実させるように御議論いただきたいと思います。
 一方、化学物質の審査の今後の見直し等についてでございますけれども、西原先生から御指摘もありましたように、既存の問題、既存化学物質は膨大にございます。これについてのスキーム、新規につきましても私どもは審査をしておりますが、新しいものがどんどんできてきますけれども、そういう中で黒に近い灰色、新たな試験をしていけば一特の方に近づく可能性が疑われるようなものが現実にございます。そういったものは費用の問題とかスキームの問題が整わなければ、私どもでどうこうできる問題では必ずしもありません。
 最近、マイレックス等がPOPsとの関係で一特の指定がなされましたけれども、その前の2件は私どもの研究室でもって厚生省の指示に基づいて行われて一特にふさわしいということで提案させていただいて一特になったものでありますが、10年間でたった2件でございます。そういった意味でも先生方の何らかのこういったものに対する見方、スキーム等についての御提案を当事者としては切に望んでおります。
 長くなりましたが、以上です。

○首藤委員長
 どうもありがとうございました。御発言していない方で何かありましたらどうぞ。
 それでは、議事(2)検討スケジュールについてを事務局から改めてお願いいたします。

○事務局
 資料3に基づきまして検討スケジュール(案)を御説明させていただきます。
 第1回の専門委員会は今回でございます。既に日程調整させていただいておりますが、第2回につきましては11月7日、第3回につきましては12月5日、第4回につきましては12月19日を予定させていただいております。
 議題の案、予定議題でございますが、次回、11月7日につきましては環境中の生物への影響に着目した化学物質の審査及び規制の在り方について。第3回、12月5日につきましては、審査・規制制度の見直し、報告書案の骨子。第4回につきましては、報告書案の中間まとめを予定しております。中間まとめの後、部会の委員へ報告するとともに、パブリックコメント手続により国民の皆様の意見募集をする予定でおります。
 それが終わりまして、1月末から2月上旬にかけまして専門委員会を1〜2回程度開催いたしまして報告書案をとりまとめ、その後、化学物質制度改正検討部会で更に報告書をとりまとめいただきたいと考えております。
 御参考までに他省の審議会スケジュールを載せてございますが、11月7日、12月5日、12月19日につきましては3つの審議会合同で開催する準備を事務的に進めさせていただいているところでございます。  以上でございます。

○首長委員長
 予定を伺いますと、いろいろ駆け足で事を運ばなければいけないような予定になっているようでございます。何か御質問あるいは御意見はございませんか。
 この委員会といいますか、合同の委員会かもしれませんが、そのスケジュールは何が出てくるかということは先ほどから話しておりましたので、そういうことかということでございます。
 その他はありますか。

○松田室長
 特にございませんので、次回は11月7日の3時からということでお願いいたします。場所等につきましては改めて文書等で御連絡申し上げますので、よろしくお願い申し上げます。

○首藤委員長
 それでは、議事はこれで終了いたしました。11月7日午後3時というのが予定の時間でございますから、ぜひいろいろ考えておいてください。
 今日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。

−了−

(照会先)
 厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室
 担当:近藤
 TEL :03-5253-1111(2910)


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