1. | 日時 | 平成14年10月24日(木)10:00〜12:00 |
2. | 場所 | 厚生労働省 専用18〜20会議室(17階) |
3. | 出席者(五十音順、敬称略) 小倉 正敏、 神山 美智子、 黒川 雄二、 今野 由梨、 首藤 紘一、 土屋 利江、 寺尾 充男、 新村 眞人、 藤田 賢二、 松本 恒雄、 百濟 さち、 吉岡 義正 行政関係出席者 小島 比登志(医薬局長) 鶴田 康則(大臣官房審議官)、 松田 勉 (医薬局審査管理課化学物質安全対策室長) 他 | |
4. | 議題 (1) 部会長選出等について (2) 化学物質審査規制制度の現状と課題について (3) 専門委員会の設置について (4) 検討スケジュールについて (5) その他 | |
5. | 議事 |
○松田室長
それでは、定刻になりましたので、ただいまより第1回化学物質制度改正検討部会を開催いたします。
委員の皆様には御多忙の折、またお足元の悪い中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。私は化学物質安全対策室長の松田でございます。部会長が選任されるまでの間、進行役を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
現在、委員15名のうち12名の御出席をいただいております。厚生科学審議会令の規定によりまして、定足数に達しており、会議が成立いたしますことを御報告いたします。
開会に当たりまして厚生労働省の小島医薬局長より御挨拶申し上げます。
○小島局長
皆様、おはようございます。医薬局長の小島でございます。化学物質制度改正検討部会の開催に当たりまして一言御挨拶を申し上げます。
先生方におかれましては、今回、厚生科学審議会に化学物質制度改正検討部会を設置するに当たりまして部会の委員をお引き受けいただき、誠にありがとうございます。また、化学物質行政の推進につきましても日頃から御指導、御協力を賜っておりまして、改めて御礼申し上げます。
御案内のとおり化学物質の規制の問題につきましては、いわゆるPCB汚染問題を契機といたしまして昭和48年に化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律ができました。当時、厚生省の薬務局と通商産業省の両省共管で発足したわけでございます。当時は世界に先駆けて化学物質の管理制度を導入したということであったわけでございますが、それから約30年を経過いたしました。
この間、化学物質の問題も世界的な関心を呼ぶに至りまして、この前のリオにおける地球サミット、あるいは本年8月から9月にヨハネスブルクで開催されました世界首脳会議で必ず議題にされてまいりました。特に環境問題への取組みの中でどうするか、また人体の健康、それに加えて更に生態系の保護というところまで非常に世界的な関心が伸びてきているのが現在の国際的な状況でございます。我が国といたしましても、国際的なこういった風潮を踏まえまして更に国際的な政策的協調・協力を進めていかなければなりませんし、OECDにおきましても各国が分担して化学物質の評価を進めている状況もございます。
こういった背景を踏まえまして、この法律を共同所管しております経済産業省あるいは環境省とともに化学物質の審査・規制に関する制度の一層の充実を図るという観点から、今回、見直しを進めようと考えている次第であります。経済産業省及び環境省におきましても、それぞれ担当の審議会で検討が開始されたと聞いております。本部会におきましても人の健康を守る、あるいは環境を保護するという観点から、厚生労働行政の観点を特に中心に委員の皆様方の忌憚のない御意見をお聞かせいただけますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが、挨拶とさせていただきます。
どうもありがとうございました。
○松田室長
それでは、第1回目の部会でございますので、私の方から本日御出席の委員を50音順で御紹介申し上げます。
小倉委員でございます。
神山委員でございます。
黒川委員でございます。
今野委員でございます。
首藤委員でございます。
土屋委員でございます。
寺尾委員でございます。
新村委員でございます。
藤田委員でございます。
松本委員でございます。
百濟委員でございます。
吉岡委員でございます。
なお、本日は御欠席でございますが、板倉委員、江馬委員、竹居委員にもこの部会に御参画いただいているところでございます。
また、第1回目でございますので、事務局につきましても御紹介させていただきます。
先ほど御挨拶申し上げました小島医薬局長でございます。
鶴田大臣官房審議官でございます。
私、化学物質安全対策室長の松田でございます。
化学物質安全対策室の近藤補佐でございます。
総務課の三好補佐でございます。
よろしくお願い申し上げます。
それでは、議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきます。
○事務局
それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
お手元にお配りしております本日の資料でございますが、1枚目に議事次第をお配りしております。
次に、資料1といたしまして本部会の名簿をお付けしております。
次に、資料2といたしまして「化学物質制度改正検討部会運営細則(案)」をお付けいたしております。
資料3といたしまして、ホチキスで留めてございますが、「化学物質審査規制法の現状と課題について」をお付けしております。
資料4といたしまして「化学物質審査規制制度の見直しに関する専門委員会の設置について(案)」をお付けしております。
資料5といたしまして1枚紙ですが、「検討スケジュール(案)」をお付けしております。
参考資料といたしましては、参考資料1「厚生科学審議会の構成について」。
参考資料2「化学物質制度改正検討部会の設置について」。
参考資料3として『「生態系保全のための化学物質の審査・規制の導入について」の概要』と1枚目に書いてあるもの。
参考資料4といたしまして「化学物質総合管理政策研究会中間とりまとめについて」。
最後に、参考資料5といたしまして「OECD環境保全成果レビュー会合の結果について」をお付けしております。
以上、不足しているものがございましたら事務局までお申し付けください。
○松田室長
よろしいでしょうか。
それでは、議事次第に従いまして議事に入らせていただきます。
まず最初に議事(1)の部会長選任でございますが、部会長を御選任いただく前に本部会に関しまして簡単に御説明申し上げます。
参考資料1「厚生科学審議会の構成について」をごらんいただきたいと思います。
厚生科学審議会はここにお示ししたとおりの構成になってございまして、この表の一番下にございますが、今回、新たに化学物質制度改正検討部会を設置いただいたところでございます。
この資料の2ページ目をごらんください。厚生科学審議会につきましては厚生労働省設置法の第8条で規定されてございまして、疾病の予防及び治療に関する研究その他所掌事務に関する科学技術に関する重要事項と公衆衛生に関する重要事項を調査審議できることとされてございます。
また、この資料の3ページ目から4ページ目にかけまして厚生科学審議会令がございます。そのうち4ページ目の第6条に線を引いたところがございますが、「審議会及び分科会は、その定めるところにより、部会を置くことができる。」ということでございまして、ここで部会の規定がされてございます。
先ほど局長の御挨拶でも申し上げましたとおり、現在、化学物質の審査・規制制度を見直していこうという動きがございます。これに対応するために、本年9月19日に開催されました厚生科学審議会総会におきまして化学物質制度改正検討部会を新たに設置することにつきまして御了承いただいたところでございます。
厚生科学審議会において御承認いただいた際の資料は参考資料2ということで配付させていただいておりますが、部会の目的、検討のいろいろな経緯、スケジュールにつきましてこの内容で御説明申し上げて、設置に関しまして御了解いただいたところでございます。この中身につきまして詳しくはまた後ほど御説明させていただくところでございます。
以上、簡単ではございますけれども、当部会について御説明申し上げましたが、先生方から御質問等はございますでしょうか。よろしゅうございますか。
○松田室長
それでは、議題(1)の部会長選任に移らせていただきます。
厚生科学審議会令では、部会長は委員の互選により選任するとされてございます。先生方、いかがでございましょうか。
○黒川委員
現在、日本公定書協会会長を務めておられます寺尾先生にお願いしてはいかがかと御推薦申し上げます。
○松田室長
ありがとうございました。ただいま黒川委員より寺尾委員ということで御推薦いただきましたが、いかがでございましょうか。
○松田室長
よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。
それでは、寺尾先生に部会長をお願いしたいと思います。寺尾先生、こちらの方に席をお移りいただきたいと思います。これからの進行につきましては寺尾部会長にお願いしたいと思います。
○寺尾部会長
御推薦いただきまして、部会長を務めさせていただきます寺尾でございます。委員の先生方、御協力をどうかよろしくお願いいたします。
まず部会長代理を決めなければいけないんですけれども、部会長代理は部会長が指名することになってございます。そういうわけで私の方から指名させていただきます。
部会長代理は藤田委員にお願いしたいと思うのでございますけれども、お願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。
それでは、続きまして当部会の運営細則を定める必要があるということでございます。運営細則(案)につきまして事務局から御説明いただけますでしょうか。
○事務局
それでは、資料2に基づきまして運営細則(案)について御説明させていただきます。
厚生科学審議会運営規程は参考資料の6ページにございますが、こちらの第10条では、そのほか必要な事項を部会の運営細則によって定めるということになっております。これに基づき制定させていただきます。
部会自身の運営につきましては審議会の運営規程におおよそ入ってございまして、主にその下に設置されます委員会に関する規程を整備するという形になっております。簡単に御説明させていただきます。
第1条では、委員会を設置することができるとしております。
第2条につきましては、委員会の構成は部会長が指名する者により構成するとなっております。
第3条では、委員長の指名につきまして、委員長は部会長が指名するとなっております。
第4条では、会議等につきましては委員長があらかじめ通知した上で招集するとなっております。
第5条は会議の公開の原則を定めたものでございます。
第6条は議事録の公開の原則を定めたものでございます。
第7条につきましては、このような公開の原則がございますけれども、特別に部会が定める委員会につきましては非公開とすることができる旨の規定でございます。
第8条は部会の庶務でございまして、部会の庶務は厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室が行うというものでございます。
そのほか第9条といたしまして雑則、この細則に定めるもののほか、部会長または委員長が必要な事項を定めることができるとされております。
以上が運営細則(案)でございます。
○寺尾部会長
どうもありがとうございました。ただいまの御説明、あるいはこの細則につきまして何か御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
本日の議事(3)で専門委員会の設置ということが出ておりますけれども、この委員会のもとに専門委員会を設置することになります。具体的なことについてはまずそちらで御議論いただくことになると思いますけれども、とりあえずこの部会の運営につきましてこの細則でいきたいということでございます。どなたか御意見はございますか。
○神山委員
全体の構成がよくわからないんですけれども、厚生科学審議会の中に化学物質制度改正検討部会があって、その下に幾つかの委員会を設けることができるということになっているわけでしょうか。その一つが専門委員会であるという構成になるのか、あるいは3段ぐらいで部会・委員会・専門委員会というのか。その辺の全体の構図がよくわからないので、御説明いただきたいと思います。
○寺尾部会長
わかりました。それはどうお考えになりますか。
○松田室長
今考えておりますのは、この部会の下に専門委員会を一つ設置させていただいて、個別具体の専門的な細かいところも含めて御議論いただこうと考えているところでございます。
○寺尾部会長
先生、よろしゅうございますでしょうか。
○神山委員
はい。
○寺尾部会長
そのほか、どなたか御質問、御意見はございませんでしょうか。よろしいですか。
○寺尾部会長
それでは、この部会の運営細則につきましてはこの案のとおりに定めさせていただきたいと思います。
それでは、次の議事(2)化学物質審査規制制度の現状と課題についてになります。これも事務局の方から御説明いただけますか。
○事務局
それでは、資料3に基づきまして化学物質審査規制制度における現状と課題につきまして御説明させていただきます。
資料3の1ページ目をごらんください。まず、化学物質審査規制法の制度の概要について御説明申し上げます。
先ほど局長の御挨拶でも申し上げましたが、この化学物質審査規制法は昭和48年にPCBによる環境汚染を契機に制定されたものでございます。その際、新規に製造・輸入される化学物質の審査制度を設けるとともに、PCB類似の化学物質、つまり環境中で分解されにくく生物内に蓄積されやすく、また人の健康を損なうおそれがある化学物質を特定化学物質として指定することで規制することといたしました。この特定化学物質は現在の法体系のもとでは第一種特定化学物質と呼ばれております。
昭和61年にはトリクロロエチレンやテトラクロロエチレンといった有機塩素系の溶剤などによる地下水汚染などの環境汚染問題が起こりまして、それを契機に第二種特定化学物質、指定化学物質といった枠組みが創設され、現行のような規制制度になっております。
この法律の目的でございますが、難分解性で環境に残留しやすい化学物質で人の健康を損なうおそれがある化学物質による環境汚染を防止するために、1つ目といたしましては新規の化学物質の製造・輸入に際して事前審査制度を設けること、2つ目といたしましては、その審査の結果から化学物質の性状などに応じて製造・輸入などの規制を行うものでございます。
新規化学物質というものは一つには、昭和48年に法律が制定されたときに既存化学物質名簿が作成されておりますが、ここに掲載されていない化学物質、あるいは法律が施行されて以来審査されていない化学物質、こういったものが新規化学物質として扱われております。
具体的に化学物質のどのような性状に応じて、どのような規制がなされているかということにつきましては(3)の表にまとめてございます。
化審法の中では、化学物質の性状といたしましては一つは分解性、これは環境中の微生物によってどのくらい分解されるか、されないか、2点目は蓄積性、生物の体内に蓄積されやすいかどうかということ、3点目といたしまして、人に対する長期毒性を示すおそれがあるかどうかということを審査しています。更に、広範な地域の相当程度の環境汚染が見込まれるかどうかということが要件になっております。
第一種特定化学物質につきましては、難分解、高蓄積、長期毒性ありのものにつきましては、環境汚染があるかどうかにかかわらず第一種特定化学物質として指定されまして、製造・輸入が原則禁止されることとなっております。現在、PCBやアルドリン、ディルドリンなどのドリン剤など13物質が指定されております。
第二種特定化学物質につきましては難分解性で、第一種特定化学物質とは異なり蓄積性は低く、人に対する長期毒性があるもので、かつ広範な地域の相当程度の環境汚染が見込まれるものにつきまして指定されます。
第二種特定化学物質に指定されますと、製造・輸入数量の事前・事後の届出、あるいは必要に応じて届け出られた数量につきまして製造・輸入の制限を行うといった措置がとられます。また、それらの化学物質を取り扱う上での技術上の指針が定められ、事業者はこれを遵守することが求められます。現在、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの有機塩素系の溶剤のほか、TPT化合物など23物質が指定されております。
難分解性で低蓄積性の化学物質で、人に対する長期毒性の疑いがあるものに関しましては指定化学物質として指定されます。指定化学物質として指定されたものは、製造・輸入数量の事後の届出が必要になります。指定化学物質は第二種特定化学物質の予備群とも言える位置付けとなっておりまして、指定化学物質のうち広範な地域の相当程度の環境汚染が見込まれたものにつきまして長期毒性に関する更なる調査を行いまして、第二種特定化学物質として指定されております。
次に、新規化学物質の事前審査の内容について御説明申し上げます。
新規化学物質のうち、国内の製造・輸入の予定数量が1トンを超えるものにつきましては事前審査が必要となっております。この1トンといいますのは、複数の事業者が製造する場合にはその合計数量になります。従って、日本全国で1トンとなります。
事前審査に当たりましては、(3)で申し上げたような性状を審査するために分解性試験、蓄積性試験、スクリーニング毒性試験が必要とされております。この場合、既に得られている知見を用いることでもよろしいのでございますが、新規化学物質の場合は新たにつくられるものですので、多くの場合には既知見がございませんで、事業者がこのような試験を実施しているという現状でございます。
分解性試験は、微生物によりましてその化学物質がどの程度分解されるかということを試験いたします。蓄積性試験につきましては、魚類を用いまして魚の体内にどのぐらい蓄積されるかということを試験いたします。スクリーニング毒性試験は現在、変異原性試験と哺乳類動物への反復投与毒性試験を行うこととされております。具体的には、変異原性試験といたしましてはエームス試験と染色体異常試験という試験管内で行う試験が2種類、哺乳類への反復投与毒性試験では28日間ラットなどに反復投与した結果、どのような毒性が現れるかという試験が求められております。
この事前審査に当たりましての手続でございますが、製造・輸入を開始する前に事前に届け出ることとされております。届出が行われましてから3か月以内に行政当局は結果を通知することとされておりまして、その判定の結果を受けなければ製造・輸入が開始できないこととされております。
年間の国内製造等数量が1トン以下のものにつきましては事前審査が免除されておりまして、年度ごとに製造数量等の申出を行うことになっております。この申出に基づきまして年間製造等数量が1トン以下であることを確認し、その確認の通知を受けた上で事業者は製造を行うことができるとされております。
2ページ目でございますが、今申し上げましたような審査制度をスキームに現したものが(5)の審査スキームの図でございます。
まず、新規化学物質につきまして届出をいたします。この場合、先ほど申し上げましたとおり年間の製造等数量が1トン以下のものにつきましては届出が免除されております。届出に基づきまして分解性、蓄積性、長期毒性を審査いたしまして、難分解性、高蓄積性で長期毒性ありとされたものにつきましては第一種特定化学物質に指定されております。
なお、現在指定されておりますこの13物質は新規化学物質の届出に基づきまして指定されたものはございませんで、すべて既存化学物質の中から指定されたものでございます。難分解性、低蓄積性のもので長期毒性の疑いありとされたものにつきましては、指定化学物質に指定されます。現在、616物質が指定されております。
このどちらにも該当しないものにつきましては、どちらにも該当しませんという判定結果が事業者に通知され、化審法上の規制は特に受けないことになります。
指定化学物質に指定されたものにつきましては、製造・輸入の実績数量届出を行うこととされております。
環境汚染により、人の健康に係る被害を生じるおそれがあると見込まれるような場合には長期毒性を調べる必要があると判断いたしまして、事業者に対しまして有害性調査の指示をいたします。ここでの有害性調査の指示は先ほどの新規化学物質の審査で提出するような簡易な毒性試験ではございませんで、慢性毒性試験などフルの試験が求められております。その有害性調査の結果、長期毒性ありと判断された場合には第二種特定化学物質に指定されます。
先ほど申し上げましたが、第二種特定化学物質は現在、23物質が指定されております。これにつきましても新規化学物質として届出がなされたものの中から指定されたものはこれまでございませんで、すべて既存化学物質の中から指定されております。第二種特定化学物質に指定されたものにつきましては、先ほど申し上げたとおり必要に応じ製造・輸入の制限などがなされることになっております。
なお、この有害性調査の結果、長期毒性なしと判断された場合には指定化学物質から削除されまして、規制なしとなります。
御参考までに、3ページに化学物質審査規制法(化審法)の化学物質規制における位置付けをお示ししております。
化学物質の暴露による人の健康の被害、あるいは労働者の被害を防止するためにさまざまな法律が制定されてございますけれども、化学物質審査規制法におきましては、暴露経由といたしまして環境を経由して人に摂取されるものを考慮してございます。
また、毒性の種類といたしましては慢性毒性、変異原性といったもので、急性毒性につきましては、環境経由で、一定期間を経て暴露されるということから考慮はされておりません。急性毒性につきましては毒物・劇物取締法(毒劇法)、そういった法律によってカバーされていることになっております。
それから、何に対する有害性かということでございます。人と環境の大きく2つに分けることができるかと思いますが、環境生物に対する有害性という意味では、現行の化学物質審査規制法では特に考慮はされていないところでございます。
次に4ページ目、化学物質審査規制法の運用状況について御説明申し上げます。
化学物質審査規制法が制定されて約30年、現在の法体系になって約15年たってございますけれども、これまでの指定状況をここにお示ししてございます。
第一種特定化学物質といたしましては、この表に示しましたとおり13物質が指定されております。この表の下の方、12番、13番につきましては本年9月に指定されたものでございます。これはPOPs条約と言いまして残留性の有機汚染化学物質を規制しようという国際的な動きの中で、日本国内での製造・輸入の実績はなかったにもかかわらず、国際的にその責任を果たすために指定したものでございます。
第二種特定化学物質につきましては、この一覧表に示したとおり、番号といたしましては1から5の5つまでしか振ってございませんが、物質数といたしましては23物質ございます。トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンは有機塩素系の溶剤でございまして、金属洗浄や洗濯業などで使用されていたものでございます。下の2つのトリフェニルスズ化合物、トリブチルスズ化合物、これらは有機スズ化合物とも呼ばれておりますが、これらにつきましては船の船底塗料や魚網などに使用されまして、その魚網や船の汚染を防止するといった目的で使用されていたものでございます。
指定化学物質につきましては現在、総数で616物質を指定してございます。その内訳でございますが、新規化学物質として審査されたものの中から指定されたものが526物質、既存化学物質の点検によりまして指定されたものが90物質でございます。
次に5ページ目ですが、新規化学物質の届出・判定の状況をグラフでお示ししております。
新規化学物質としての届出は、近年では年間約300件程度で推移しております。昭和61年度の法改正以降、届出総数は3,749件ございまして、うち指定化学物質として判定され公示されたものは先ほど申し上げましたとおり526物質でございます。最初に申し上げましたが、国内の年間製造・輸入数量が1トン以下の少量新規化学物質につきましては申出がなされておりますが、これにつきましては近年増加している傾向にございます。
この増加の理由でございますが、はっきりした調査の結果ではございませんが、例えば前の年に1トン以下で製造し、今年も1トン以下で製造する場合には前の年に引き続いて今年も申出を出さなければいけないということで、件数は累積になっていることと、近年新たに開発される化学物質が非常に機能性といいますか、特徴を持った化学物質で、ある特定の用途にピンポイント的に使用されるために、非常に広い範囲で使われる化学物質ではないことが理由として挙げられるかと思います。
6ページですが、既存化学物質の点検状況についてお示ししてございます。
ここでは法制定当時に作成されました既存化学物質名簿に掲載されている化学物質を既存化学物質と呼ばせていただいておりますが、既存化学物質につきましては、この法律制定時の昭和48年の国会の附帯決議などを踏まえまして、国による安全性点検が実施されております。
この法律を所管いたしております3大臣は必要があると認めたものにつきまして試験を行う、あるいは既存の知見を収集いたしまして、その結果によりまして先ほど申し上げました審査のスキームにより第一種特定化学物質、指定化学物質、またはそのいずれでもない化学物質に該当するかどうかを判定しております。平成13年度末までに分解性や蓄積性に関しましては1,279物質、これは経済産業省が担当して実施しております。毒性に関しましては厚生労働省が担当して実施しておりまして、191物質の点検結果が公表されております。
また、近年におきましては国際的な協力のもとで高生産量化学物質の点検を進めていこうという動きがございまして、一国または一地域で年間1,000トン以上生産される化学物質をHPVとして、そのリストをつくりまして、これに係る安全性の点検が進められております。我が国におきましても、国と産業界が分担・協力して必要な作業を進めているところでございます。
次に7ページでございますが、最近の国際的な動向を簡単にまとめさせていただきました。最初の局長の御挨拶でも申し上げましたが、国際的にもいろいろな会議などで化学物質の評価・管理に関する取組みが進展してきているところでございます。
1992年には国連環境開発会議、いわゆるリオサミットでアジェンダ21が採択されております。アジェンダ21の19章「有害化学物質の環境上適正な管理」におきましては、「化学物質が引き起こすかもしれない人の健康への被害と環境への悪影響へのリスクを評価することは、その化学物質の安全かつ有益な使用を計画するのに欠くことはできない」といたしましてリスク評価の重要性を説いております。
1997年には国連環境開発特別総会におきまして、このアジェンダ21を実施する実施計画が採択されております。この中では「化学物質の適正な管理は持続可能な開発に不可欠であり、人間の健康と環境保護にとって基本的に必要なものである。化学物質に対して責任を持つすべてのものは、化学物質のライフサイクルを通じて、その目的を達成するための責任を負っている」と述べられております。
また、本年8月から9月におきまして開催されました持続可能な開発に関する世界首脳会議、いわゆるヨハネスブルグサミットにおきましては、「環境と開発に関するリオ宣言の第15原則に記されている予防的取組方法(precautionary approach)に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順と科学的根拠に基づくリスク管理手順を用いて、化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを目指す」とされているところでございます。
この国際的な機関の中でも特にOECDにおきましては、加盟各国における化学物質の審査制度の国際的整合化などに関する議論が進められているところでございます。
ここで具体例を2点ほど挙げさせていただいておりますが、1つは新規化学物質の審査制度の整合化でございます。1999年以降、OECDの新規化学物質タスクフォースというものがございまして、この中では新規化学物質に係る届出の相互受入の導入に向けまして、各国の届出や審査制度の共通点、あるいは違いを分析したり、届出様式を標準化できないかといったことについて検討が進められているところでございます。
先ほど既存化学物質の点検のところでも申し上げましたが、既存化学物質のデータ収集とリスク評価の実施ということで、既存化学物質で世界的に広く使われているものにつきましてはデータ取得の重複を避けるという意味で、OECDが中心となりまして点検プログラムを作成いたしまして各国で分担してデータを収集し、評価レポートを作成するといったことが行われてきております。
1998年からは国際化学工業協会協議会(ICCA)と言います事業者の団体もHPVの有害性評価を実施する方針を示しまして、事業者と行政当局が協力して実施されているという状況でございます。
また、OECDにおきまして本年1月にはOECD環境保全成果レビューの中で日本の環境政策についていろいろ調査してレビューを行いましたが、この中で化学物質の管理政策目的に生態系保全を含むよう規制を拡大することなどの勧告がなされたところでございます。OECD環境保全成果レビューの概要につきましては参考資料5としてお付けしておりますので、後ほどご覧いただければと思います。
このOECDの勧告の中から関連部分を抜粋してここに記しておりますが、1点目といたしましては、化学物質管理の効果及び効率を更に向上させるとともに、生態系保全を含むように規制の範囲をさらに拡大すること。先ほども申し上げましたとおり、現在の化学物質審査規制制度では人の健康を審査の一つの項目としておりますが、環境生物に対する影響は考慮しておりませんので、この点につきましても考慮するということが言われております。御参考までに、OECDに加盟している国のうち新規化学物質の審査規制制度を持つ国は25カ国ございますが、この25カ国のうち審査に当たりまして環境生物への影響を考慮していないのは日本だけであるという御指摘もあるところでございます。
また、化学業界の自主的取組を強化するとともに、化学品製造者に対し(既存化学物質等の)安全性点検へのより積極的な役割を付与することといった内容につきましても勧告されているところでございます。
以上、国際的な動向について御説明申し上げましたが、次に8ページといたしまして国内における最近の主要な検討状況について御説明させていただきます。
国内におきましても国際的な動向に配慮しつつ、化学物質の審査・規制制度のあり方につきまして様々な検討が進められているところでございます。
まず1つ目の「○」でございますが、環境省におきましては生態系保全に係る化学物質審査規制検討会が平成13年10月から平成14年3月まで約半年間開催されまして、報告書がまとめられているところでございます。この報告書につきましては参考資料として添付しております。ここでは簡単にその概要を御説明させていただきます。
報告書では、まず生態系保全を目的といたしました化学物質の審査・規制の枠組みの導入の必要性を説いております。その理由といたしまして、トリブチルスズ化合物の貝類への影響や、除草剤、殺虫剤の水生生物への影響などが報告されていること、OECD加盟国で新規化学物質の審査・規制制度を有する25カ国のうち、環境、すなわち生態系保全を法の目的に持たず、生態影響試験を事業者に要求できないのは我が国だけであること、環境基本計画における化学物質対策の基本的方向として、生態系に対する影響の適切な評価と管理の推進が示されていること、また、OECD環境保全成果レビューで先ほど御説明申し上げましたような指摘があったことなどを挙げております。
次に2つ目の「・」でございますが、化学物質の生態系への影響の試験評価方法について検討しております。OECDでは統一的な試験方法であるテストガイドラインや試験検査機関の信頼性を確保するための優良試験所基準(GLP)が策定されており、各国に受け入れられていること、アメリカやEUなど諸外国におきまして、生態影響試験の結果をもとにしました一定の手法に基づく生態リスク評価が行われてきていること、我が国におきましても環境省において生態影響試験や生態リスク評価が実施されてきたことなどを挙げまして、我が国におきましても技術的に実施可能であると結論しております。
次に3つ目の「・」でございますが、具体的な化学物質の審査・規制のあり方といたしましては事前、つまり使用される前に生態影響に関する試験・審査を行い、その結果に応じて生態系保全に支障を及ぼすおそれがあるものについては、製造・使用等に関する規制を行う仕組みを導入することが必要であるとしております。具体的な試験方法といたしましては、現状では生態系の中の生産者である藻類、一次消費者であるミジンコ類、二次消費者である魚類を対象とした急性毒性試験が適当であるというのが大方の意見であったとしております。また、このような生態影響試験の実施を求める化学物質の範囲、例えば製造・輸入量がどのくらいの量を超えた場合に試験を求めるかということにつきましては更に検討が必要であり、段階的なものとするべきであるとしています。
更に最後のところでございますが、このように化学物質の審査・規制制度の目的に人の健康の保護だけでなく環境中の動植物の保護を導入するのに合わせまして現行の審査・規制制度についても見直すべきとしております。
一方、2つ目の「○」でございますが、経済産業省におきましても本年4月から7月にかけて化学物質総合管理政策研究会が開催されまして、7月に中間とりまとめが行われております。この政策研究会では、化学物質の総合的な管理を推進するため、人の健康と環境への影響の未然防止という観点から、化学物質が国民生活や産業活動にもたらす社会・経済的便益とのバランスを図りつつ化学物質のリスクに応じた対応をするという基本的な考え方のもとに、事業者、国民、民間団体、国などがそれぞれ役割を果たしていくことが必要であるといったことを説いております。今回の検討事項でございます化学物質の審査・規制制度に関係する部分につきましてはここに記載してあるとおりでございまして、(1)、(2)と大きく2つ挙げております。
まず(1)でございますが、新規の化学物質の審査・規制制度につきましては、国際的な動向も踏まえまして暴露可能性を考慮した段階的対応をすべきであるとしております。
具体的にはどのようなことかと申しますと、まず1つ目の「・」です。化審法では最初に述べましたとおり、分解性、蓄積性、長期毒性について審査を行っておりますけれども、他法令、例えば労働安全衛生法などではがんやその他の労働者の重度の健康障害に関連する有害性について調査を行っている。そういった状況もございまして、今後どのような有害性項目を審査対象にすべきかについては更に検討が必要であるとしております。
2つ目の「・」でございますが、暴露可能性の低いもの、例えば他の化学物質を合成する際の中間物は化学反応によりましてすべて別の化学物質に変わるわけです。そういった中間物とか輸出専用品、低生産量の化学物質につきましては事前審査の対象外としてもよいのではないかとしております。
3つ目の「・」でございますが、このような事前審査の対象外とした場合でありましても、セーフティネットとして暴露状況を事後的に確認する制度や、必要な場合に有害性情報の提出を求める制度を設けることが必要ではないかとしております。
最後の「・」ですが、審査手続の効率化や評価基準の公表など、これら法律の運用に当たって透明性を確保していくことが必要であるとしています。
次に(2)の論点でございますが、生態毒性物質に関する取り組みの強化を挙げております。この研究会の報告書におきましては、生態系を構成する個別の生物種に対して一定の有害性を示す化学物質を生態毒性物質と定義しております。ただし、個別の生物種に対する有害性と生態系そのものへの影響の因果関係につきましては必ずしも明らかではないため、因果関係に関する科学的知見の充実に取り組むことが必要であるとしております。これが1つ目の「・」でございます。
次に、2つ目の「・」でございます。しかしながら、このように生態系について科学的に不明確な部分がある状況であっても未然防止に資するよう、国際的動向にも留意しつつ、事業者の自主管理を促す枠組み整備を進め、適切な管理・評価を行うことが必要であるとしております。
また、個別の生物種に対する影響の未然防止という観点からは、例えば生活環境保全を目的とした水質目標値などの検討、具体的には環境省において行われているところですが、こういった検討と同様に対応を進めることも考えられるとしているところでございます。
以上、国内における主な検討状況について御紹介させていただきました。
次に9ページ目になりますが、本審議会におきまして化学物質の審査・規制制度の見直しを御検討していただくに当たり、諸外国における制度がどうなっているのかというのも参考になると思われますので、5.にまとめさせていただいております。
ここではアメリカとEUを取り上げまして日本と比較するような形で資料としております。アメリカでは有害化学物質規制法、通称TSCAという法律がございまして、この法律に基づきまして化学物質の事前審査と規制がなされているところでございます。また、EUにおきましては危険な物質の分類・包装・表示に関する理事会指令などのEU指令がいくつかございまして、それらに基づき行われております。日本におきましてこの比較対象としておりますのは化審法でございます。
まず、(1)の事前審査制度における評価の観点でございます。日本の化審法におきましては最初に御説明申し上げたとおり、難分解性の性状を有する化学物質により環境を通じて暴露され、人の健康が損なわれることの防止を目的といたしておりまして、その観点に立ちまして難分解性であるかどうか、高蓄積性であるかどうか、長期毒性があるかどうかといった化学物質の性質について評価しております。なお、さきに御説明いたしましたとおり、環境中の生物に対する有害性があるかどうかにつきましては現状では評価されておりません。
アメリカにおきましては、人の健康と環境へのリスクを評価するという観点から評価しております。具体的な評価手法でございますけれども、米国環境保護庁(EPA)は事業者の手持ちのデータや個別排出源などの排出形態に関する情報、あるいはEPAが所有している情報などを用いましてモデルを活用して環境への暴露評価を行い、その結果に基づきリスクを評価しております。事業者に対しましては、日本のように項目を指定してこのデータをそろえなさいという形ではなくて、現在持っているデータはすべて出しなさいという形で要求しておりまして、それらのデータとEPAが持っている推定値などを用いて評価しております。そういった点が日本と比べて特徴的になっているかと思います。
EUにおきましては、人の健康と環境への有害性とリスクの両方を評価しております。有害性の評価は、この結果に基づきまして表示のための分類をするために必要とされております。EUにおける評価手法は製造数量に応じて一定の定まったデータセットを最初から求めるという点で、アメリカよりは日本と類似していると言えるかと思います。ただし、規制措置の必要性を判断するに当たってリスク評価をしているという点で日本と異なっております。
このような評価に基づきまして、審査後にどのような規制の管理措置がとられるかを示したのが(2)でございます。日本におきましては第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、指定化学物質に指定されまして、それぞれ物質の性状に応じた規制措置がとられております。なお、第二種特定化学物質は指定化学物質に指定された後、次の段階で進むことになると言うことができます。
アメリカにおきましては、EPAの評価の結果、リスクの懸念ありとされた場合には届出者は追加試験データの提出かリスク削減対策のいずれかを選択することになります。ここで言います追加試験データの提出とは、先ほどの御説明のとおりEPAのリスク評価では限られたデータを用いて評価していることから不確実性がありますが、その不確実性の程度を低くするために事業者は有害性などの試験データをとりましてEPAに提出するという意味でございます。
リスク削減の内容をもとにEPAとの交渉を経まして、規制措置の内容が確定することとなります。規制措置の内容といたしましては、ここに5つほど例を示しておりますが、化学物質安全性データシート、通称MSDSと呼ばれているものの添付の義務付けといったような内容から製造などの数量の制限、あるいは用途の制限などの規制措置がリスクに応じて選択されることになります。また、PCBやアスベストといった物質については製造・使用が禁止されております。
EUにおきましては、人の健康と環境に対して一定の毒性を示すものにつきましては有害性分類に基づく表示が義務付けられております。有害性分類には、発がん性物質、変異原性物質、あるいは生殖毒性がある物質といった人への有害性に関する分類とか、爆発性物質、可燃性物質といった物性に関する分類とか、環境に排出されると環境の構成要素に危険を生じる環境危険性物質といった分類がございます。
また、個別物質にリスク評価の結果を踏まえて、リスクを低減させるために上市することの制限や特定用途への使用の制限などの措置がとられます。使用の制限といたしましては、例えば一般公衆への販売禁止、塗料成分として使ってはいけないとか、エアゾール剤として使ってはいけないといったものがございます。
次に10ページでございますが、(3)といたしまして事前審査の届出に関します主な適用除外・軽減措置をお示ししております。ここに示したものにつきましては、その化学物質に暴露する可能性が低く、リスクが低く見積もられるといった理由から事前の届出に当たって適用除外や軽減措置がとられております。
まず、(1)の試験研究用の用途のものにつきましては、日本、アメリカ、EUとも共通して適用除外されております。
(2)の製造・輸入数量が少量の場合の届出事項の軽減でございますが、日本におきましては先ほど申し上げました少量新規化学物質、1トン以下のものにつきましては届出が不要とされ、この場合には分解性、蓄積性、毒性といった試験データの提出が不要になります。
アメリカにおきましては、1社当たりの製造・輸入数量が10トン未満の場合には届出が免除される旨の届出を行った上で免除されます。この場合には年間の生産量や輸入量の記録などが義務付けられます。
また、EUにおきましては年間上市量が1社当たり1トン、累積で5トン以下の場合には生態毒性に関する試験データが不要とされるなど、届出事項が軽減されております。逆に、上市量が増えた場合には追加データが要求される場合もございます。
なお、現在のEUの制度におきましては年間の上市量が1トン以上のものを完全届出といたしまして、人の健康に対する影響としては日本と同様にスクリーニング毒性試験と呼ばれます3つの試験を要求しておりますが、昨年2月にホワイトペーパーと呼ばれますEUの今後の化学品政策のための戦略を示しました白書が公表されておりますが、この中では年間上市量が10トン以上のものについて完全届出とするよう変更案を示しているところでございます。
(3)といたしまして、そのほかの軽減措置を示しております。
日本におきましては医薬品中間体、つまり医薬品を製造する過程の化学物質につきましては全量が次の合成反応に使用されることを確認した上で事前審査が免除されることになっております。
アメリカにおきましては、環境への放出や人の暴露が低い化学物質につきまして要件を満たすことの事前承認などの条件のもと、届出が免除されております。また、輸出専用品につきましても届出審査の対象から除外されております。
EUにおきましては、やはり化学物質を合成する過程の中間体につきましては事前許可により届出事項を軽減しております。また、EU域外への輸出につきましても届出審査の対象外とされているところでございます。
このほか、重複規制の排除という観点から、日本、アメリカ、EUとも他法において規制されている物質、例えば医薬品、食品添加物、農薬につきましては届出不要の措置が講じられております。
(4)といたしまして既存化学物質の点検についてまとめております。
日本の状況につきましては先ほど御説明申し上げたとおりでございまして、既存化学物質名簿にある約2万の化学物質の中から優先順位が高いと考えられるものにつきまして順次、国が試験を実施してきております。
アメリカにおきましても、やはり日本の既存化学物質名簿と同じような法律制定以前の化学物質を収載いたしましたインベントリーが作成されております。このインベントリーの中から優先順位が高いものを選んでEPAがリストを作成しておりまして、このうちEPAがリスクを評価し、人または環境への重大なリスクが懸念される場合に毒性試験を実施するよう指示することとされております。
EUにおきましても同じように1981年に市場にあった物質をリストに掲載しておりまして、こちらは約10万物質が収載されております。一国または一地域での生産量が1,000トン以上の高生産量の化学物質につきまして事業者に対し所有データの提出を要求いたしまして、欧州委員会がプライオリティーリストを作成し、公表しております。事業者から提出されたデータにつきましてはデータベースとして公表しているところでございます。
以上、化学物質の審査・規制制度の現状といたしまして我が国の化審法の概要と運用状況、国内外における最近の動き、欧米の制度の概略について御説明申し上げました。
続けて11ページでございますが、今後の検討課題(案)としてお示しさせていただいておりますので、これにつきまして御説明させていただきます。
ここでは「○」が3つございますが、3つ目の「○」はその他となっております。
1つ目といたしまして、動植物、生態系への影響といいますか、環境中の生物に対します影響を考慮した審査・規制のあり方について課題の一つとして挙げさせていただいております。これまで御説明いたしましたとおり、日本におきましてはこれまでこういった点を評価のポイントとしてこなかったわけでございます。それに当たりまして、事前審査においてはどのような範囲の化学物質に対しまして、動植物への影響を見るためにどのような審査を行っていったらいいのかということがまず1点目のポイントになるかと思います。また、審査の結果、影響を与えるおそれがあるとなった化学物質につきましてどのような規制・管理を行っていったらよいのかという論点もあるかと思います。
論点の2つ目でございますが、現行の審査・規制制度の見直しにつきまして、国際的な動向や化審法が制定されて30年近くがたちまして、この間さまざまな科学的知見も集積されてきているところでございますので、そのような点を踏まえまして見直してはどうかということでございます。
具体的な論点といたしましては、1つ目の「・」でございますが、例えば新規化学物質の審査において暴露の可能性を考慮して、もう少しフレキシブルな対応を検討できないかということでございます。近年、化学物質の評価にあってはリスクを評価し、リスクを管理するという考え方が主流になっていることはさきに御説明したとおりですし、諸外国においてもそのような観点から事前審査において柔軟な対応が行われているという面もございます。特に市場前におきましては、化学物質の暴露に関して得られるデータが例えば製造予定数量とか予定用途といった非常に限られたものになっておりますので、リスク評価はなかなか難しい面がございますが、その中でもできる限り暴露可能性に配慮し、有害性だけでなくリスクも配慮するようにしてはどうかということでございます。
2つ目の「・」でございます。いわゆるセーフティネットに該当すると思いますが、事業者が有害性を裏づけるデータを取得した場合にそのデータを国に報告することを求め、審査を行った後においてもフォローアップできる体制をとってはいかがかということでございます。また、このようなデータを生かすなどいたしまして既存化学物質の点検の推進を図る方策を検討してはどうかということを検討課題の案として挙げさせていただきました。
最後の「○」になりますが、そのほか制度の円滑な運用のために改善すべき点がございましたら、それについても検討課題としていきたいと考えております。
以上、資料3について御説明申し上げましたが、本部会におかれましては御説明いたしました化学物質審査規制制度における課題にどのように対応するかにつきまして御議論いただき、当部会としての報告書をおまとめいただきまして厚生労働大臣に対して御意見をいただければと考えております。
なお、この後の議事(3)で御議論いただくこととしておりますが、議論に当たりましては技術的に専門的な部分もございますし、化学物質審査規制法を共管しております環境省、経済産業省の審議会とも十分に意見を交換する必要がございます。両省の審議会においては担当する部会に小委員会を設置して審議を進めることとしているところから、本部会におきましても専門委員会を設置して、必要に応じて他の審議会との合同開催などにつきましても考慮しながら御検討いただければと思います。
以上でございます。
○寺尾部会長
どうもありがとうございました。
ただいま御説明がございましたように当部会は何を議論すべきか、どういう報告書をまとめるべきかを御議論いただくということでございます。議論を2つに分けまして、最初に資料3につきましての御質問が何かございましたらお願いしたいと思います。
○藤田部会長代理 1つ教えてください。3ページの図がございますけれども、PRTR法はこの図の中でどこに位置することになるんでしょうか。
○事務局
PRTR法につきましては排出量の把握ということでございまして、これはどちらかというと暴露を通じて人なり環境が影響を受けることを防止するための法律をまとめておりますので、PRTR法につきましては観点が違うといえると思います。
○藤田部会長代理 PRTR法の指定化学物質と、この指定化学物質とは違うものですか。
○事務局
おおよそダブっておりますが、PRTR法につきましては例えばオゾン層を破壊するおそれがある物質とか、既に動植物に対する影響を及ぼす物質も入っておりますので、必ずしも同じではございません。
○藤田部会長代理 必ずしも一致しないということですか。
○事務局
はい。
○藤田部会長代理 言葉としては同じ「指定化学物質」ですね。
○事務局
第一種指定化学物質、第二種指定化学物質という言い方になっております。
藤田部会長代理 そうですね。
○○寺尾部会長
そのほか、どなたか御質問はございますでしょうか。
○今野委員
先ほどもおっしゃいましたけれども、環境省や経済産業省の同じテーマの審議会や部会と何らかの連絡や協議はあるのでしょうか。そういう仕組みがありましたら、例えば合同審議会のようなものがあるのでしょうか。
○寺尾部会長
これは事務局からお答えいただいた方がよろしいですね。
○松田室長
後で御議論いただこうと思っておりますが、専門委員会の設置等につきまして御了解いただければ、こちらの方で挙げさせていただきました大きく2つの論点の関係を環境省と経済産業省の関係する審議会の部会に設置されております各小委員会と、こちらの専門委員会との合同開催で議論をいただこうかということで、3省の事務局では考えさせていただいております。
○松本委員
事前の審査や届出が必要か必要でないかの基準として、日本は国内製造等の数量を1トンで切っている。アメリカやEUは10トンとか1トンで切っている。似ているようだけれども、アメリカ、EUを見てみますと1社当たりですね。日本は国内総量ということで、複数社が出している場合は1社当たり1トン以下であっても1トンを超えれば届出や審査を受ける義務があるということになりますね。そのような把握は可能なんですか。つまり、なぜ海外は1社当たりという基準でやっていて、日本は他社がどれだけつくっているかがわからないかもしれないような総量という基準で運用できているんですか。
○松田室長
1トン以下の少量新規の物質につきましては各社から個別に予定の使用数量の届出がございますので、それを事務局の方で見せていただいて、例えばA社、B社を見たら足して1トンを超してしまうような場合はそこを調整といいますか、必要があれば1トン以上の届出を出していただく。そうでなければ、量を少し調整してもらうということを具体的にはやって運用しております。
○寺尾部会長
もしある年に突然1トン超えた場合には、その年から審査・規制をやるという格好になるわけですか。
○松田室長
1トンを超す予定があれば届出をしていただくということになります。
○百濟委員
1トンを基準にして事前審査の方法が違うわけですけれども、1トンという根拠はどういうことから、少量であるとか少量でないというのがよくわからなかったので教えていただきたいということ。
あと先ほど出ましたが、経年的に毎年1トン未満だけれども、ずっと継続していくような場合にはその基準が変わっていくのか。3点目に御質問があったように、ほかのアメリカとかEUではまた基準が違うわけですね。そのときはまた、何でもってその基準を決めているのか教えていただきたいと思います。
○松田室長
まず1点目の1トンに決めた根拠ですが、正直申し上げまして、その当時の資料がなくて本当にどうだったのかというのはよくわかりませんけれども、昔の担当者などから聞いたところによりますと、当時問題になったPCBが例えば大きなダムや瀬戸内海といった水域に仮にまかれたとしたときに、想定される水中の濃度と生物での濃縮度合いから実際に摂取されるPCBなりの量を考えて、あと一方で動物実験等から得られる摂取許容量から比べてみて、1トンぐらいであればPCB類似のものが仮にまかれたとしても問題はなかろうという計算をされたようでして、それを一つの根拠として1トンと決めたという話のようでございます。
○事務局
2点目の少量新規で累積した場合ということでございますが、日本におきましては年間の製造が1トン以下であれば、毎年1トンで例えば10年たって10年でも少量新規扱いということになっております。EUなどでは累積の量も考慮しているところもあるようでございますが、日本においてはそういった扱いになっております。
3点目のアメリカ、EUはどんな考え方かということでございます。これも正確なところはわからないのでございますが、アメリカにおきましても法律が最初施行された当時は1トン以上のものを完全届出といいますか、正規の届出をすることとなっておりました。1995年だったかと思いますが、いろいろ評価をして、これを10トンに引き上げても国民や環境に対するリスクは上がらないであろうと評価いたしまして、10トン以上を完全届出という形に変更しているところでございます。
EUにつきまして1トンの根拠ははっきりわかりませんが、EUの場合にはもっと細かく、例えば1トン以上のものは人に対するスクリーニング毒性試験のデータをとる。更にそれが10トンになると生態毒性試験のデータを加える。更に100トン、1,000トンとなりますと生殖毒性試験のデータを加えるとか、もう少し段階的に量とデータが関係してくるようになっております。
○小倉委員
今の御質問について産業界の理解をコメントさせていただきたいんですが、1トンがどうやって決まったかという点につきましては産業界もいろいろ昔の話を聞いたりしたんですが、あまりサイエンティフィックな根拠は無いのではないか。どちらかといいますと、まずはこれぐらいなら大丈夫ということで決まったのではないかと判断しております。
EPAの場合は1トンから10トンに変わっておりますが、これは開発力といいますか、新規の物質を開発していくという観点からどこら辺がいいのかという判断があったと私は理解しております。その場合に、そこの間は従来からのリスクの観点からの評価で担保できるという判断をEPAがされたと聞いています。
欧州の方は今御紹介ございました欧州白書で裾切りといいますか、そこのところが議論になっておりますが、これも欧州の中では白書の中の一つの視点としまして欧州化学工業会のコンペティティブネスといいますか、いわゆる国際競争力の問題が議論されております。この根拠となるのは、過去10年間程度で欧州で新規化学物質として届出が認められたのが2,700物質、EPAは2万7,000物質、約10倍違います。日本の場合は先ほど御紹介ございましたように年間300程度。欧州の方はこういう観点から、ある程度そういうところから議論されてきていると理解しております。
○寺尾部会長
どうもありがとうございました。そのほか、どなたか御質問はございますか。
よろしければ、資料3の11ページに今後の検討課題というのがございますけれども、何を議論すべきかという課題につきまして御意見がございましたらおっしゃっていただきたいと思います。
今の1トンの問題につきましても、1トンなのか10トンなのか、その根拠は何か、いろいろ問題はあると思うんですけれども、どういうことでも結構でございます。この部会、あるいはこの後、設置につきまして議論します専門委員会で御議論いただくのに参考になるような御意見をいただければ、よろしくお願いいたします。
○土屋委員
日本とアメリカとEUでそれぞれ規制の仕方が異なるようですけれども、環境の問題となると、将来的には一緒にやっていかないと改善されない領域ですので、できる限り国際的な協調でそういう分類や規制も同じデータを協力して進めるような大きな方向に持っていっていただきたいと思います。
○寺尾部会長
こういう問題は一国だけで国際的に全く合わないようなものをつくりましても、その後いろいろな問題が生じてはまずいと思いますし、国際調和というのが非常に大事な議題に入ってきておりますので、今おっしゃられたような米国あるいは欧州とかけ離れたものをつくると余り使い物にならないのではないか。国際紛争のもとにもなるような気がいたしますので、確かに今のような視点は非常に重要ではないかという気がいたします。
○松本委員
今御指摘されたことと絡むんですが、10ページ(3)(3)の軽減のところを見ていますと、アメリカもEUも域外に輸出するものについては届出も審査も何もしなくていいということですから、危険なものであってもつくってどんどん輸出しなさいとも読めるわけです。我が国はこの点の例外がないので、言ってみれば地球全体の人間や環境を既に配慮していると言えなくもないんですが、そういう点でアメリカやEUは海外はどうなってもいいという観点で運用しているんですか。少し信じられない感じがするんですが。
○寺尾部会長
お答えいただけますか。そういう無責任なことはないと思うんですけれどね。それは例えばアメリカから日本に入ってくる場合、それは日本でもって評価しろということになるんですか。
○事務局
はい。原則的には受け入れ側で評価することになっているかと思います。
○寺尾部会長
今の話、どなたか詳しく御存知の方がおりましたら。
○経済産業省 経済産業省でございます。貿易所管省として少しコメントさせていただきますと、今御指摘がありましたように新規の化学物質の審査につきましてアメリカ、ヨーロッパは輸出するものについては審査をしていません。それはどうしてかというと、そういうのは各国がそれぞれやるべきという観点でやっているものでございます。
ただし、途上国に有害な化学物質がいくのは防がなければいけないということは十分考えており、有害化学物質を輸出する際には途上国に通報するとか、そういったことは別途行われております。また、これは国際条約でもやろうとしておりますので、途上国に対して何でもしていいということには決してなっておりません。新規化学物質の審査については輸出において特段何らかの審査を求めることはしておりませんが、二重審査になることを勘案してやっていることでございます。
○寺尾部会長
どうもありがとうございました。
○首藤委員
最後のページが今後の検討課題となっておりますけれども、その前の9ページにまとめてあるように日本と米国とEUがそれぞれ違うといいますか、少なくとも同じではない規制の仕方をしているわけです。日本の現在のシステムはそれなりにエスタブリッシュしていると思うんですけれども、そういうところをアメリカ型にするということは今後の検討課題という中に入っていないですね。入っているんですか。第一種特定化学物質、第二種特定化学物質という規制の仕方自体を変えるとか、そういうことはないですね。
○松田室長
事務局の方で今考えておりますのは、基本的に今の枠組みはそういう形で生かしていきたい。確かにアメリカのように個別個別にリスク評価をやるというやり方も一つのやり方としてはいい方法だと思います。ただし、こういうことをやるに当たりまして例えばアメリカの審査当局の方は実際に数百人レベルで化学物質の管理をやっているとか、そういうマンパワーの問題とかいろいろなこともございます。
ですので、先ほど土屋委員からもありましたように国際的に整合性をとらなければならない部分というのは当然ございますので、そこは可能な限りそういうことをやらせていただきたいと思いますが、今のところ当方といたしましては、こういった枠組みは一つの規制手法としてとらせていただきたい。製造・輸入の禁止とかは、アメリカなどもやっております。まさしく我が国の第一種特定化学物質というのはそういう規制の枠組みでもございますので、事務局としてはこうした枠組みを今のところは使っていきたいと考えております。
○小倉委員
産業界からの要望でございますけれども、今、化審法の枠組みを前提というニュアンスの御発言がございましたが、産業界としまして現在の化審法というのはいろいろ問題を抱えていると思っています。非常に不合理な点もございますし、先ほどもお話がございました国際的な動きとも大分違うところがあります。今、国際的にはGHSという分類表示を統一化していこうという動きがございます。その中では多分、化審法のみならず日本のほかの法律等もひっくるめて、いろいろな整合性をとっていかなければならないという問題が出てくると思います。
新規物質の登録については、7ページにございますように相互受け入れ(MAD)という話がOECDベースで進んでおります。これはなかなか進捗が遅うございますけれども、やはり国際的にお互いにデータを融通し合うといいますか、相互認証するという動きは日本としても進めていっていただきたいところでございます。
そういう意味では例えば生態系のお話がございますけれども、化審法の現在の枠組みを変えずに生態系だけ入れて「はい、終わり」というのは私ども産業界としましては少しどうかと。やはり化審法の抱えている問題点もぜひ御検討いただきたいと思っております。
○吉岡委員
今の枠組みの問題ですけれども、もし枠組みがきちんと決まっていて、これから外れてはならないという話だったならば最初からその枠組みを提示していただいて、その枠組みの中でどうするのか、どの部分だけを審議するのかということをはっきり決めておかないと、枠組みそのものの議論をするのかしないのかということ自身が非常に大きな問題になってくると思います。
そういう意味からして出されております検討課題の「○」の最初の2つ、どこまでの枠組みが大体は決まっていて、その部分の中でどこまでいじってもいいのかという大枠が示されないと、専門委員会等をつくりましても、どこにいったらいいという方向付けがなくなってしまうのではないかと考えます。
○松田室長
どういうことでいくかというのは関係の省庁ともいろいろ議論をさせていただいているところでございますので、事務局側で考えるそういった枠組みの考え方は専門委員会で議論する段階には当然お示しさせていただいて議論に供していただきたいと考えております。
○吉岡委員
専門的になるかもしれませんが、6ページにあります(3)既存化学物質の点検状況のところに国会附帯決議等を踏まえ、国が行うというふうに書いてございます。これは事実でそう書いてあると思いますが、法律上、国がしなければならないと解釈できるように書いてあるんですか。
○事務局
法律上で既存化学物質というのは、いわゆる附則の部分に規定されてございまして、法制定時に既に存在しているような物質を名簿としてつくるということになっておりますが、それに対する審査をどういった主体がやるのかについては法律上は規定されてございません。したがいまして、まさに附帯決議に基づきましてやっているということでございます。
○吉岡委員
ということは、国がしなくてもよかったわけですね。
○事務局
法律上そのような規定はないということでございます。
○吉岡委員
ありがとうございました。
○松本委員
11ページの検討課題の「○」の2つ目、制度の見直し等の中の「・」の1つ目が枠組みの変わる変わらないに一番絡んできているところかと思うんです。すなわち、新規化学物質における暴露可能性に応じた柔軟な事前審査制度の導入の「柔軟な」という意味がどちらのベクトルで柔軟なのか。産業界の要望に応じて「柔軟な」という流れの趣旨なのか。それとも、先ほどのお話だと有害性だけではなくてリスクに配慮してリスク・アセスメントでということですから、厳密な有害であるというデータが出なくても柔軟に規制をしてもいいとも読めるんですが、この部分はどういうイメージで書かれているんでしょうか。
○松田室長
先ほど御説明申し上げましたが、基本的に今までのところは1トン以上のものを、医薬品の中間物とか若干ございますけれども、例外なくああいう形で規制・審査をやらせていただいております。今後はリスクを踏まえた云々ということでございますので、こういう場合はいいとか悪いとか、そういう考え方も導入できるのかできないのかということで考えております。
○松本委員
ということは、より厳しくなる方もあれば緩和される方もあるという意味で枠組みをもう少し柔軟にという感じですか。例えば予防原則などを徹底すればもっと厳しくなるかもしれないわけですが。
○松田室長
そこは御議論いただきたいと思います。
○寺尾部会長
いずれにしましても、科学的な根拠に基づいていろいろ判断するのが一番大事だろうと思うんです。ですから、あるときは厳しくなるかもしれませんし、あるときは今よりも緩くなる可能性もあるだろうと思うんですけれど。
○神山委員
先ほど吉岡委員がおっしゃいました既存化学物質の点検の問題ですけれども、法律に審査するデータを誰が出すのかという主体を書いていないとすると、今後の検討課題の1点目の「○」に事前審査のあり方というのがあるんですが、既存化学物質については、2点目の「○」でフォローアップや既存化学物質の点検の推進を図るための新たな方策となっておりますので、例えば単に今の化審法の附則にあるだけではなくて、今の化審法でも既存化学物質のデータの収集や毒性試験の実施を例えばメーカーの方に課するような形にすることも今後の検討課題の中に入っているのかどうか。わざわざ2つに分けて書いてあるということは、既存化学物質は法律に基づく方でやって、法律の改正では既存化学物質には踏み込まないとも読めるものですから、この案の意図するところはどういうところでしょうか。
○松田室長
そこもまさしく御議論いただきたい部分だとは思っておりますけれども、一つは既存化学物質の見直しのためにいろいろな試験等をやってきておりますので、そのやり方がいいのかどうか。
もう一つは神山委員がおっしゃったように、そういったことを推進するために既存化学物質に枠組みといいますか、何かをつくってやる方向も一つの方策ではないかという御指摘だと思いますので、そこはまさしく御議論いただきたい部分だと思っております。
○小倉委員
産業界の意見でございますが、確かに国会の附帯決議にどう書いてあるか、あるいはその解釈がどうであったかというのは一度はっきりさせていただきたいと思います。私どもの文言上の理解は国会の附帯決議に書いてあって、いわゆる指標としては国がその責を負うと理解しております。ただ、法律上には文言としては記載はない。だからといって産業界としまして何もしませんとか、知りませんとは言っていません。そこのところは先ほども御紹介がございましたように既存化学物質についての取組みもやっております。
○寺尾部会長
今の点はよろしいですね。そのほか、どなたか御意見はございませんでしょうか。11ページに書いていないような事柄でこういう観点からの議論も必要だということがございましたら御提案いただければと思います。
○松本委員
リスク・アセスメントという観点からですが、原子力発電に関しても、あるいは食品に関しても安全性に対する国民の不安がすごく高いわけで、このOECDのレビューの中でも、リスクの評価に当たってよりよいリスク・コミュニケーションが必要だと書いてあるわけですが、柔軟な事前審査制度の導入という枠組みの中にそのようなリスク・コミュニケーションの観点をきちんと入れて運用する方向にしていただきたいと思います。
○今野委員
10ページの既存化学物質の点検ですけれども、最初のリストに載っている数が日本は2万物質で、アメリカは7万物質、EUが10万物質。この差は何でしょうか。それから、これらはすべてデータベース化されて完全に公開されているんでしょうか。その辺を教えてください。
事務局
御質問の後半の部分でございますが、既存化学物質名簿は公表させていただいております。
各国の既存化学物質の差でございますが、産業界の方から何かお考えがあればお聞かせいただければと思います。
○小倉委員
私も2万、7万、10万の差を明確に比較したことはないんですが、例えばEUですと最近の議論を見ておりますと、現在、市場に流通しておるのが約3万物質。あとの7万物質はいわゆる中間体といいますか、末端市場にまでは出ていない途中のものであるという理解ができるのではないかと思っています。アメリカの場合、この7万の内訳がどうなっているかというのはデータを持ち合わせておりません。
○今野委員
日本は中間のものがリストに入っていないということですね。
○小倉委員
日本も中間体として届出が必要、あるいは既存として出ておりますのは入っていると思います。
○事務局
労働安全衛生法におきましてもこういった既存化学物質のリストアップをしておりまして、労働安全衛生法におきましては職場で暴露される化学物質を対象にしておりますので、いわゆる中間体についても対象となっております。労働安全衛生法でリストアップしている既存化学物質と呼んでいるものは4万5,000物質ほどございまして、そのうち2万物質が化審法で既存になっているもの、残り2万5,000物質が中間体のようなもので、安衛法上の既存化学物質になっているものでございます。
○経済産業省 今の既存名簿の違いでございますけれども、それぞれ法律ができるときに既に市場に出回っているものを届け出てもらって、それをリストアップしたものが既存化学物質であります。法律がいつできたか、その集め方によって差があるわけでございますけれども、その数字の違いにつきまして言うと、名前の書き方が違っていることが大きな原因です。例えば日本の既存化学物質名簿をごらんいただくとわかりますが、例えばアルキル○○と書いてあるのですが、この名称で炭素数が1から12までを一つの物質名で書いたり、要は1物質と数えているものの中に100物質が入っているようなくくった名前が多々入っております。
したがいまして、2万と7万と10万をそのまま比較するのはできないことになっておりまして、そのときつくって市場に出ているものを載せているという意味では数の差はそんなにない。それほど大きな数の差はないということでありますし、労働安全衛生法既存化学物質名簿との差がありましたけれども、労働安全衛生法で4万5,000と言っているものと化審法で2万と言っているのもそれほど大きな差はない。法律を制定する間のタイムラグはもちろんありますけれども、それ以外の差はないという状況であります。
それから、既存化学物質名簿は経産省の製品評価技術基盤機構にデータベース等を持っておりまして、ここでコンピュータでも見れるような仕組みにも既に今なっております。
○寺尾部会長
どうもありがとうございました。時間も大分なくなってまいりましたので、議事(2)の御議論はこの程度にさせていただきます。ただ今いただきましたいろいろな御意見は今後の検討の参考にさせていただきたいと思います。
議事(3)専門委員会の設置についてに入りたいと思います。これも御説明をお願いいたします。
○事務局
それでは、専門委員会の設置につきまして、資料4に基づき御説明させていただきます。最初に御検討いただきました部会の運営細則の規程に基づきまして、この案により専門委員会を設置することについて御検討いただければと思います。
1.といたしまして、設置について記載しております。厚生科学審議会運営規程及び厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会運営細則に基づき、化学物質制度改正検討部会のもとに「化学物質審査規制制度の見直しに関する専門委員会」を設置する。
2.にございますが、専門委員会の構成につきましては厚生科学審議会の委員、臨時委員または専門委員の中から、化学物質の評価、管理等に関し学識経験を有する者として、部会長が指名する者により構成する。
3.でございますが、専門委員会の検討事項です。専門委員会は、化学物質の審査及び製造等の規制の見直しに係る専門的事項について調査審議を行うものとするとしております。
4.はその他でございます。その他必要な事項につきましては、部会長または委員長が定めることとしております。
裏面に御参考までに専門委員会の委員の案を付けておりますので、御参考にしていただければと思います。
以上、御検討をよろしくお願いいたします。
○寺尾部会長
どうもありがとうございました。資料4の案につきましてどなたか御意見、御質問はございますでしょうか。よろしいですか。
○寺尾部会長
よろしければ専門委員会の設置をお認めいただいたことにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
次は議事(4)検討スケジュールについてということでございますけれども、これにつきましても事務局の方から御説明いただけますか。
○事務局
検討スケジュールにつきまして資料5に基づき御説明させていただきます。資料5として検討スケジュール(案)をお示しさせていただいております。
第1回の部会、今回でございますが、背景説明、検討課題の整理、自由討議をしていただきました。この後、先ほど設置をお認めいただきました専門委員会につきましては10月28日に第1回の開催を予定しております。その後、専門委員会を3回程度開催して報告書案を中間まとめしたいと思っております。
この中間まとめの時期は12月中旬頃を予定しておりまして、その後、本日お集まりいただいております部会の委員の皆様へ御報告させていただきますと同時に、パブリックコメント手続により国民からの意見を募集したいと考えております。その後、1月末〜2月上旬にかけまして専門委員会を1〜2回程度開催し、報告書案をとりまとめまして、2月頃に部会を開催させていただき、報告書をとりまとめたいと思っております。
できますれば次期通常国会への法律改正案の提出を考えておりまして、日程的に部会を頻繁に開催することが難しい状況にございまして、専門委員会の検討経過などをポイントポイントで部会の委員の皆様に御報告するなどにより対応させていただければと思っているところでございます。
御参考までに他省の審議会のスケジュールをお示ししております。経済産業省の産業構造審議会化学・バイオ部会に化審法の改正を検討いたします小委員会がございますが、こちらは10月15日に第1回が開催され、その後こちらに示されているとおりの開催予定となっております。
また、環境省におきましても中央環境審議会環境保健部会に小委員会が設置されております。10月17日に第1回目が開催されておりまして、次回以降このような予定になっております。
予定をごらんいただくとおわかりになるかと思いますが、日程的に重なっております。この重なっている部分につきましては合同開催という形で、本日こちらで設置をお認めいただいた専門委員会も一緒に加わるような形で検討を進めていきたいと考えているところでございます。以上、よろしくお願いいたします。
○寺尾部会長
どうもありがとうございました。このスケジュールにつきまして、どなたか御意見あるいは御質問はございますでしょうか。
御意見がないようでしたら、このスケジュールに従いまして議論を進めていくことにさせていただきます。11月から12月については他省と合同の委員会になるということでございますね。
○松本委員
合同討議ということになりますと、最終報告書も3省のそれぞれの審議会が連名で出すようなイメージになるんでしょうか。それとも、同じような内容のものをそれぞれの審議会の報告書として独自に出すということでしょうか。
○松田室長
今のところ3省で考えているイメージは先生がおっしゃった後者の方でして、基本的には同じ趣旨のものを個別に出そうと考えております。
○土屋委員
先ほど行政サイドの方から言われたんですが、やはり現状の担当される人数が非常に少ないということで、そのあたりも含めて実際に討議されないと運営がなかなかいかないのではと危惧しますので。ここのところ、例えば薬事法の改正では特に医療用具では今まで数が非常に少なかったものを平成16年には独立行政法人化ということで、今までの連続ではないところの法改正まで行ったということもありますので、そのあたりもターゲットにして検討していただければと思います。
○寺尾部会長
どうもありがとうございました。それでは、議題(4)のスケジュールにつきましてはお認めいただいたということにしたいと思います。
議題(5)にその他がございますけれども、もし何か御意見ございましたらおっしゃっていただければと思います。
○神山委員
今の土屋委員の御質問に関連してですけれども、今、化学物質安全対策室というのは何人いらっしゃるんですか。
○松田室長
今は11名だと思います。それで毒劇法とか幾つかの法律を所管させていただいております。
○寺尾部会長
よろしいですか。それでは、本日の予定の議事は全部終了しましたが、事務局から何かございますか。
○松田室長
特にございません。次回の部会の日程につきましては先ほどのスケジュールどおり専門委員会の審議状況を踏まえまして改めて調整させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
○寺尾部会長
それでは、本日の会は終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。今後もよろしくお願いいたします。
(照会先)
厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室
担当:近藤
TEL :03−5253−1111(2910)