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田中雅子委員提出資料


より良い介護保険制度の発展に資するために



平成14年10月18日


社団法人 日本介護福祉士会


これからの介護報酬の設計そのものを含む
介護保険制度のあり方について


 介護保険制度施行後、私たち介護福祉士は、介護サービスの現場で、ホームヘルパー、施設の介護職員、サービス提供責任者、ケアマネジャーとして日々利用者にもっとも近い専門職として介護保険制度の一翼を担ってきた。
 今般の介護報酬改定について、日本介護福祉士会では社会保障審議会介護給付費分科会において、常々介護報酬の見直しが単に収支の観点から行われたり、事業経営の視点からのみ議論されることに対し、介護サービスの質の維持と向上の観点に立った介護報酬の見直しが必要であることを提起してきた。
 これからの介護報酬の設計そのものを含む介護保険制度のあり方について、介護を実践し介護業務に熟知している介護福祉士として、サービスの質を保証し、利用者本位のサービスを提供するという観点に立って以下の提案を行う。
 今後、介護保険法附則第2条に定められた施行後5年を経た見直しが予定されており、日本介護福祉士会は、引き続き介護報酬の設計そのものを含む介護保険制度の見直しを介護福祉専門職の立場から、また介護の現場を知り、利用者にもっとも近い専門職の立場から提言を行っていく。

平成14年10月18日


1 これからの介護保険制度の見直しの基本的なあり方

 介護報酬の設定にあたって、介護サービスの現場の実情をつぶさに捉えたうえで抜本的な見直しを行なうべきである。また、あるべき介護の理想を実現するような制度設計が図られるべきである。

 時間を基準とした介護報酬の設定を改めるべきである。また、サービス提供にあたっての基準を時間に求めたり、介護報酬の設定を時間に求める考え方を改めるべきである。

 介護労働をディーセント・ワークにしなければ、これからの日本の介護の質は低下する。介護労働がディーセント・ワークとなるよう、適切な介護報酬額が確保されるべきである。

 介護報酬を検討するにあたっては、サービスの質に着目した試行プロジェクトを実施し、そのデータに基づきサービスの質とリンクした介護報酬のあり方を検討すべきである。

 居宅や施設において、日常の生活場面で人間の尊厳が守られることを目的とした介護が実現するよう、必要な介護報酬の見直しを行なうべきである。


2 介護報酬の適切な水準について

【水準を考えるにあたっての前提】
 介護の工夫や専門性が評価される仕組みが望まれる。利用者の自立を図り、自立に向けた介護が実現するような介護へのインセン ティブが働く報酬上の工夫が求められる。

◎常勤ヘルパーが一定数、一定の割合で配置されないと訪問介護現場における介護サービスの質は保てない。これは身体介護、生活支援を問わない事である。常勤ヘルパーが雇用できる介護報酬の水準とすべきである。

◎介護保険制度導入後、非常勤ヘルパーや登録ヘルパーが増加している。そのため、事業所における管理者の役割が重要となっている。
 サービス提供責任者に課せられた業務は多く、訪問介護サービスにおける熟練度の低下に伴う管理業務に重要性が増大しているにもかかわらず、現行の介護報酬に管理部門の職員雇用にかかる経費が反映されていない。
 したがって、これを含めた訪問介護サービス費に改めるべきである。

◎サービス水準を維持するための研修費を介護報酬に算定すべきである。

◎身体介護の介護報酬は下げるべきではない。

◎以下の加算を行なうべきである。

痴呆ケア
緊急時介護
困難ケース
感染症対応
同行訪問

◎居宅における介護専門職による生活リハビリを介護報酬に反映すべきである。

◎施設等サービスについて

 グループホーム、ユニットケア等の介護職員には痴呆高齢者に関する専門的な資質を備えた人材の配置が必要である。
 それにより、サービスの質に対する安心や信頼を得ることができる。
 施設サービス従事者には在宅サービス従事者のように一定の要件を設けていないが、介護サービスの質の確保を図るために、介護福祉士等の国家資格職を配置すべきである。

 医療職とのチームケアが求められる介護療養型施設の介護職員の配置基準にあたっては、介護福祉士等の国家資格をもつ専門職を配置し、適切な介護報酬額にすべきである。

 介護福祉士の資格を介護報酬に反映すべきである。


3 介護保険制度の組み立て・運用について

【組み立て・運用を考えるにあたっての前提】
 組み立て・運用の改善にあたっては真に在宅での生活が継続できるように見直しがなされるべきである。
 介護保険法第2条第4項「第1項の介護給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことが出来るように配慮されなければならない。」が可能となるようなものにしなければならない。

◎訪問介護の類型は、一本化すべきである。
 在宅サービスはあくまでも一連のものである。利用者の生活を支えるうえで、身体介護と家事援助は一体的に行なわれている。パッケージとしてサービスを提供することでサービス内容を利用者にわかりやすく説明でき、かつ利用しやすい在宅サービスとなる。従って、自立支援や在宅シフトを定着させるためには一本化しなければならない。
 (なお、訪問介護の2類型案では、「自立生活支援のための見守り的援助」が生活支援となっている。このような「自立生活支援のための見守り的援助」(「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年3月17日老計第10号)に示されている7例)には、自立支援の指導や助言も含まれており、専門性を有するものであることから、適切に介護報酬上、評価されるべきである。)

◎在宅介護を可能とするために、居宅サービスが利用者にとって真に使いやすいものとなるよう柔軟に介護報酬の運用を図るべきである。

◎居宅療養管理指導に介護福祉士による利用者・家族に対する介護指導及び支援業務を加えるべきである。

◎自立生活支援のための見守り援助を報酬上、位置付けるべきである。

◎入所・入院中の利用者が退所・退院後にスムーズに在宅へ移行できるような算定システムとすべきである。

◎施設の介護職員には介護福祉士等の専門職を配置すべきである。

◎介護福祉士の資格を介護報酬に反映すべきである。

◎サービス提供責任者については一定の資質を有することが望ましい。また、サービスの質を担保するためにも、サービス提供責任者の配置基準については、これまでの基準を遵守しなければならない。



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