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平成14年10月18日

社会保障審議会
介護給付費分科会
 会長 西尾 勝 殿

介護給付費分科会
  委員 守口市長 喜多 洋三


 介護保険制度については、関係者の懸命な努力により制度の安定化が図られつつあるが、依然として課題は山積している。また、現在、第2期介護保険事業計画の策定のための作業を進めているところであるが、高齢化の進展、介護サービス基盤整備の充実、制度の普及などにより、給付が増加し、厚生労働省の調査(6月値)によると、同計画期間における1号保険料は、平均10%以上増加することが明らかになっている。
 今後、このような状況が推移した場合、保険料・公費負担など保険財政のあり方に関する抜本的議論は避けては通れないと考えるが、今回は保険者の立場から従来より主張している同制度の安定的運営に必要な、次の事項について意見を提出する。

1 保険財政について

(1) 国が負担する25%のうち、5%に相当する部分は調整交付金として、後期高齢者の比率が高い市町村などに重点的に配分されているが、5%を下回る市町村においては、本来、公費50%、保険料50%の原則が崩れ、1号保険料に転嫁されており、このため、現在17%となっている1号被保険者の負担割合を押し上げ、保険料上昇の要因になっている。調整交付金の財源は、国が負担する25%と別枠で財政の調整を行うべきである。

(2)都道府県に設けられた財政安定化基金により、介護サービス量の見込み違いによる赤字への貸付や保険料の収納不足への補填が行われているが、この基金の財源の3分の1は1号被保険者の保険料で賄われている。高齢者を支援するこの基金の財源として、支援を受けるべき高齢者から保険料としてその額を徴収するのは矛盾していると考えており、同基金の原資は、国と都道府県の負担とすべきである。


2 保険料のあり方について

(1) 第2期介護保険事業計画期間における1号保険料の6月値の状況を見ても給付の増加により保険料は高額化し、今後このまま推移すると保険料支払が困難な者が増加することが見込まれる。このようなことから少なくとも、介護報酬の見直しによって保険料の引上げとなるような事態は容認できないものと考える。

(2) 所得段階別保険料における第2段階該当者の中に、負担が困難な者が存在する。また、世帯の負担能力を考慮したため、税控除等の仕組みにより、収入と保険料区分の関係で一部に「逆転現象」が生じている。
 現行の所得段階別保険料には、このような問題が生じているので、是正すべきである。

(3) 保険料の徴収にあたり、遺族年金や障害年金、月額1万5千円未満の年金は、特別徴収の対象外(普通徴収)となっている。全国市長会の調査によると、普通徴収の徴収率は約9割となっており、徴収率を引上げる観点からも、全ての年金から特別徴収を可能とすべきである。


3 低所得者対策について

 国が実施している低所得者対策は、制度として十分ではない。その結果、やむをえず各保険者は、独自の減免や国の3原則遵守の中での措置を実施しているが、かえって混乱を生じさせている状況にある。
 本来、低所得者対策は国の責任において統一的かつ総合的な対策を講じるべきである。



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