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第9回 社会保障審議会年金資金運用分科会
議事録及び議事要旨

平成14年10月7日

第9回 社会保障審議会 年金資金運用分科会議事録及び議事要旨
(議事を公開した議題(1)に係る部分については議事録を掲載。議事を非公開とした議題(2)以降については議事要旨を掲載。)

日時平成14年10月7日(月) 16:00〜18:26
場所厚生労働省 専用第21会議室
出席委員若杉分科会長、大和委員、小島委員、高梨委員、福井委員、吉原委員
米澤委員
議事 (1)年金積立金の運用の在り方についての検討
(2)年金資金運用基金の平成14年度第1・四半期運用状況について
(3)その他


○ 泉運用指導課長
 それでは、定刻でございますので、ただいまより、第9回社会保障審議会年金資金運用分科会を開会いたします。
 議事に入ります前に、委員の交代がございましたので、事務局よりご紹介を申し上げます。9月24日付で向山委員が委員を辞職され、代わって、同25日付で新たに小島茂日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長が当分科会の委員に就任されました。小島委員でございます。

○ 小島委員
 小島です。よろしくお願いします。

○ 泉運用指導課長
 続きまして、8月30日付で、厚生労働省年金局及び年金資金運用基金の幹部の異動がございましたので、ご紹介を申し上げます。異動のありました者のみご紹介させていただきます。
 年金局長の吉武でございます。大臣官房審議官(年金担当)の井口でございます。年金局総務課長の高橋でございます。年金局資金管理課長の石塚でございます。年金資金運用基金企画部長の岡部でございます。私、年金局運用指導課長の泉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 それでは、年金局長から一言、ご挨拶をお願いいたします。

○吉武年金局長
 8月30日付で年金局長を拝命いたしました吉武でございます。どうぞよろしくお願い申します。
 若杉分科会長はじめ委員の皆様方には、ちょうど平成13年の1月に年金資金運用分科会が発足をいたしまして、それ以来、基本ポートフォリオの策定、あるいは平成13年度、14年度の移行ポートフォリオの策定、さらには最近で申し上げますと、積立金の運用状況が年金財政に与える影響の評価につきまして、お忙しい中を熱心にご審議をいただておりまして、まず、このことにつきまして御礼を申し上げたいと思います。
 それから、同時に、後ほどご説明申し上げますけれども、平成16年の次期年金財政再計算までに、最近の特殊法人改革の閣議決定も踏まえ、リスク性資産の位置づけを含め、改めて年金積立金の自主運用の運用の基本的な方針につきましてご議論をいただくことになってまいります。特に今月から、従来よりも分科会開催の頻度を少し上げていただきまして、月2回ぐらいのペースでご審議をいただきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。私ども、当分科会におきますご議論の結果を踏まえまして、今後の運用の基本方針につきましてよく検討してまいりたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○ 泉運用指導課長
 それでは、最初の議題であります「年金積立金の運用の在り方についての検討」に係る資料の確認をさせていただきたいと思います。座席図、議事次第、年金資金運用分科会委員名簿のほか、資料の右肩にございます資料番号、資料1−1「株式を含む分散投資の是非についての検討」、これが2枚でございます。資料 1−2「公的年金制度の財政方式と年金積立金のあり方について」、これが8枚でございます。その次に参考資料1「公的年金制度の財政方式と年金積立金のあり方について(参考資料)」、これが8枚でございます。資料1−3「長期資金である年金積立金の運用方法(分散投資)について」が4枚、資料1−4「基本ポートフォリオの策定の基本的考え方について」も4枚、そして、資料1−5「当面の年金積立金の運用の在り方に関する検討スケジュール」が 1枚、以上でございます。よろしゅうございましょうか。
 なお、前回までの配付資料をファイルにまとめて机の上に置かせていただいておりますので、適宜ご参照いただければと思います。
 委員の出欠状況でございますが、本日は内海委員、竹内委員、吉冨委員におかれては、ご都合によりご欠席、また、杉田委員も急にご都合が悪くなったということでご欠席でございます。ご出席いただいております委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことをご報告申し上げます。
 なお、本日は一つ目の議題であります「年金積立金の運用の在り方についての検討」、この議題の終了をもちまして、当分科会は非公開に切り替えさせていただきたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いいたしたいと存じます。
 それでは、以後の進行につきましては、若杉分科会長にお願いしたいと思います。

(1)年金積立金の運用の在り方についての検討

○ 若杉分科会長
 皆さん、こんにちは。本日はご多忙の折、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。
 本日の分科会では、まず、「年金積立金の運用の在り方について」、第1回目の検討を行いたいと思います。
 年金積立金の運用は、現在、社会保障審議会の答申を踏まえて厚生労働大臣が定めた基本ポートフォリオに基づき長期運用を行っており、基本ポートフォリオは、国内債券を中心としつつ一定の割合で国内株式等を組み込んだ資産構成割合となっています。しかし、近年の株価の長期低迷などを受け、株式運用に対する異論もあり、特殊法人改革の際にも、特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日閣議決定)において、「次期財政再計算時(平成16年まで)に、年金資金運用の在り方について、安全かつ効率的な運用を行うため、リスク運用の位置付けを含め検討し、決定する」とされたところでございます。
 今回が第1回となります、「年金積立金の運用の在り方についての検討」は、この閣議決定も踏まえ、その基本的な考え方である「株式を含む分散投資」の是非から、当分科会において、議論、検討を行うものでございます。
 検討に当たっては、原則非公開としている当分科会における審議を公開といたします。
 本日の進め方としては、まず、事務局から資料についての説明をいただき、その後、資料について質疑等を行い、最後に「全額国債運用」と「株式を含む分散投資」のメリットとデメリット等についてフリーディスカッションを行い、委員から幅広くご意見をいただきたいと思います。
 それでは、まず事務局の方から、資料についてのご説明をお願いいたします。それでは、運用指導課長からよろしくお願いします。

○ 泉運用指導課長
 それでは、まずお手元の資料1−1「株式を含む分散投資の是非についての検討」をご覧いただきたいと思います。検討の趣旨は、今、分科会長からもございましたが、再度御説明させていただきます。年金積立金の運用については、厚生労働大臣が基本ポートフォリオ(資産構成割合)を策定して、昨年4月からそれに基づく運用を行っているところでございます。この基本ポートフォリオは国内債券を中心としつつ、一定の割合で株式を組み込んだ構成割合という形になってございます。こうしております理由は、株式は短期的に見ますと大きく価格が変動するわけでございますけれども、長期的に見れば債券を上回る収益を上げることが過去の経験などから実証されているということがあり、長期の運用を行う年金資金の運用におきましては、長期的な株式の収益を享受できると考えているためでございます。
 しかしながら、最近の株価の低迷などを背景といたしまして、株式を運用対象とすることに対していかがであろうかと、こういうご意見もあり、また特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日閣議決定)におきまして、年金資金運用基金の年金資金管理運用業務について、「次期財政再計算時(平成16年まで)に、年金資金運用の在り方について、安全かつ効率的な運用を行うため、リスク運用の位置付けを含め検討し、決定する」とされたところでございます。
 このリスク運用の位置づけというところが、株式を含む分散投資を行うのか、あるいは全部国債で運用するのかといったような議論というわけでございまして、いわば宿題を与えられたという形になっているわけでございます。今般、この閣議決定も踏まえて、株式を含む分散投資の是非についてご検討をいただきたいという趣旨でございます。
 検討の進め方でございますが、当分科会におけるご議論を年末にかけて行っていただき、この点についての、基本的な考え方について整理をいただければと思っております。
 なお、従来、当分科会は、議論の内容あるいは資料などが直ちに市場・マーケットに影響を与える可能性があるということで非公開としてきているところでございますが、今回の議論につきましては、基本的な部分でもございますし、そうした懸念はないのではないかと考えられますことから、公開という扱いで議論・検討をお願いしたいと思っております。
 なお、検討を行っていく上では、後ほどスケジュールをご説明いたしますが、有識者などからのヒアリングも行ってまいりたいと思っております。
 2ページ目は、先程申し上げた閣議決定の抜粋をそのまま載せてあるものでございますので、ご覧いただければと思います。
 それでは、次に、資料1−2及び参考資料1につきましては、数理課長の方から説明をさせていただきたいと思います。

○ 若杉分科会長
 数理課長、お願いします。

○ 坂本数理課長
 お手元の資料1−2及び参考資料1に沿いまして、「公的年金制度の財政方式と年金積立金のあり方について」、ご説明させていただきたいと思います。
 そもそも公的年金でなぜ積立金を持っているか、あるいはそれは何を目指しているのかということの論点をまとめたものでございまして、この積立金を持った制度運営を行うことにつきまして様々な意見があるところでございますけれども、もし積立金を取り崩す運営を行った場合、どのような論点が出てくるか、あるいは運用収入が極めて大切な役割を演じておるわけでございますが、それは年金改定率を予定どおり上回る必要があるということをまとめたものでございます。
 なお、この資料は、9月26日の社会保障審議会年金部会においても提出させていただいたものでございます。
 資料1−2の表紙をめくっていただきまして1ページでございます。まず、平成11年の財政再計算においてはどのような考え方で財政計画を立てたかということをまずおさらいしておきたいと思います。
 「(1)財政方式の基本的考え方」というところですが、平成11年の財政再計算における財政方式は、賦課方式を基本としつつも、世代間の負担の均衡を考慮しまして、一定の年金積立金を保有して運用収入を活用することにより、将来の保険料を軽減し、将来世代の過大な負担を避けることとしておるところでございます。
 ちょっとあちこち行って恐縮でございますが、参考資料1の1ページをあけていただきたいと思います。1ページにございますように、保険料計画、このグラフの実線の部分でございますけれども、実線のグラフが保険料計画でございまして、平成36年度までに最終保険料となるように段階的に引き上げていきまして、最終保険料については、一定の保険料で将来にわたり収支が均衡するように設定したところでございます。その結果、年金積立金は将来にわたり保有し続ける計画となりまして、その運用収入を活用することによって、厚生年金において、高齢化のピーク時に年収ベースで41/2 %程度の軽減効果、高齢化のピークを超えた後も、将来にわたり11/2 %程度の軽減効果を持つということがわかっております。これが参考資料の1ページ及び2ページでございます。
 なお、高齢化のピーク時におきましては、保険料水準を一定水準で維持できるように元本の一部を取り崩して年金給付に充てる計画となっておりまして、参考資料1の2ページを見ていただきますと、2050年ごろに収支差引残、右から四つ目の例でございますが、収支差引残というところがございますが、ここがマイナスになっております。2050年ごろに一時的に積立金を取り崩して年金給付に充てるというときも存在するわけでございます。 このような財政計画になっておるわけでございますが、資料1−2の1ページ「(2)年金積立金と運用収入の役割」ということで、年金積立金の役割は、その運用収入を年金給付に充てることにより保険料を軽減することにあります。
 したがって、運用収入が予定より少なくなれば、保険料軽減の効果が縮小し、保険料を予定以上に引上げなければなりません。この運用収入が予定より少なくなるというのは、運用利回りが低くなるとか、積立金が何らかの理由で減少するというふうな事態がある場合にはこの効果が縮小いたしまして、保険料を引上げなければならないということになるわけでございます。
 1ページめくっていただきまして2ページですが、逆に運用収入が予定より多くなれば、保険料軽減の効果が大きくなり、保険料を予定ほど引上げる必要はなくなるということでございます。
 「(3)実質的な運用収入の必要性」というところがございます。
 積立金を持った財政運営をする場合、何を目指しているかということですが、公的年金制度は、長期的には名目賃金上昇率により年金水準が改定される仕組みでございますので、名目運用利回りが低下しても、名目運用利回りのうち名目賃金上昇率を上回る部分すなわち実質運用利回りが、想定どおりの水準で確保できている限り、保険料水準には影響を与えないということでございます。平成11年の財政再計算におきましては、運用利回りを4.0 %、賃金上昇率を2.5 %と想定いたしましたので、この差、厳密にはこの比でございますが、1.46%という実質的な運用利回りが確保できていれば、保険料水準には影響を与えないということでございます。
 したがって、年金財政の観点からは、運用面で名目賃金上昇率を上回る実質的な運用収入をどの程度確保するかが重要となるわけでございます。
 なお、長期的に名目賃金上昇率を上回る運用収入を確保することを見込まない場合には、名目賃金上昇率で年金水準が改定される中で、年金積立金の実質価値が目減りしてまいりますので、年金積立金から得られる運用収入を用いて、保険料軽減を続ける財政計画を立てることはできなくなるわけでございます。
 以上が、平成11年の財政再計算の考え方でございます。
 それでは、1ページおめくりいただきまして3ページでございますが、2に、年金積立金を将来にわたり保有する計画を見直し、取り崩して年金給付を充てることにより、保険料の上昇を抑えるという考え方をとった場合に、どのようなことが起こるかということを見ていきたいと思います。
 まず「(1)年金財政の基本的な構造」でございます。
 これは非常に明白なことでございますけれども、まず年金積立金を将来にわたり保有する計画を見直し、仮に、使い切る計画とする場合には、年金積立金を取り崩した分を年金給付に充てることにより、当面の保険料の上昇を抑えることは可能であるということは言えるわけでございます。
 しかしながら、年金積立金を使い切った後は、年金積立金による保険料の軽減効果がなくなり、賦課保険料を徴収する必要があるため、より高水準の保険料の徴収が必要となるということでございます。
 「(2)仮に、一定期間で年金積立金を使い切るとした場合の保険料率の試算結果」をまとめてございます。
 これはまず参考資料1の3ページを見ていただきたいと思います。参考資料の3ページ、4ページにおきまして、使い切る計画とした場合にどのようなことが起こるかということを調べた結果を計算してございますが、まず3ページは、この表題にございますように、仮に、2040年度までに年金積立金を使い切るとした場合に、平成11年の財政再計算ベースではどのような変更になるかということを試算したものでございます。
 この太い実線が、2040年度までに、年金積立金を使い切るとした場合の試算結果でございまして、2040年まではこの太い線のグラフにございますように、16.1%という保険料率で据え置くことができるという見通しになってございます。したがいまして、平成11年の財政再計算結果でございます最終保険料の19.8%と比べますと3.7 %の軽減効果があるということでございます。
 ところが、ちょうど2040年に積立金がゼロになるわけでございまして、それ以降は、賦課保険料を徴収しなければならないということになるわけでございます。この賦課保険料は、太い点線で示されたものでございまして、ここに急激にジャンプすると、2040年に16.1%から7.6 %一挙に引上げまして、23.7%にもっていくと。そして2050年あたりのピークまで、さらに毎年引上げていく必要があります。以降、賦課保険料を取っていくという結果になっておるわけでございます。
 この2040年というのは、つまり高齢化のピークまでに年金積立金を使い切るという場合でございまして、1ページめくっていただきますと、参考資料1の4ページでございますが、2060年度までに積立金を使い切るとした場合に、どのような保険料の見通しになるかということを示したものでございます。
 このときには、2020年以降、2060年までは18.5%という保険料率で済みます。平成11年の財政再計算結果の19.8%に比べまして1.3 %少なくて済むということになるわけですが、2060年度におきまして、3.8 %保険料を急激に引上げないといけないこととなります。以下、賦課保険料を徴収していくということになるわけでございます。
 なお、3ページ、4ページ両方とも細い実線で示しておりますのは、旧人口推計の低位推計に基づいた場合の賦課方式の保険料でございます。出生率の動向が、さらに少子高齢化の方に進みますと、上の細い点線の方にもジャンプしなければならない、こういう事態が生じるわけでございます。
 もう一度、資料1−2の4ページに戻っていただきますと表がございますが、この表は、今申し上げました2040年度までに積立金を使い切る場合、あるいは2060年度までに積立金を使い切る場合の結果をまとめたものでございます。この4ページは説明を省略させていただきたいと思います。
 5ページでございます。一番上に一つ「○」がございます。ここには、今申し上げました新人口推計は、平成11年の財政再計算を前提とした、旧人口推計よりさらに少子高齢化が進む前提となっているため、将来の賦課保険料率はさらに大きく上昇する見込みでございまして、年金積立金を使い切ったときの保険料率の引き上げ幅もさらに大きくなる見込みでございます。
 このような事実認識から、どのような論点があるかということをまとめたのが「3.論点(例)」でございます。
 まず「(1)高齢化のピークを超える前に年金積立金を使い切ることをどう考えるか」ということでございます。
 この場合には、高齢化のピーク時、2040年度〜2060年度ごろでございますが、このピーク時において年金積立金による保険料軽減の効果が受けられなくなるわけでございます。その結果、ピーク時に向けて保険料率が急激に上昇する影響を全く緩和できなくなるということが生じるわけでございます。したがいまして、少なくとも高齢化のピークを超えるまでは、年金積立金を保有し、年金積立金により保険料を軽減する財政方式をとるべきではないかということが言えるのではないかと考えられるところでございます。
 「(2)高齢化のピークを超えた後に年金積立金を使い切ることをどう考えるか」ということでございます。
 この場合には、平成11年の財政再計算においては、将来にわたり年金積立金を保有し続けて保険料軽減を図るという財政方式をとったわけでございますけれども、公的年金の財政は基本的に賦課方式をとっていますことから、高齢化のピークを過ぎた後は、年金積立金は支払準備金程度といたしまして、基本的に保有すべきでないという考え方もあるわけでございます。
 1枚おめくりいただきまして6ページでございます。
 しかしながら、次のような基本的な問題があり、年金積立金を使い切るような財政方式をとるかどうかについては慎重に検討すべきではないかということでございます。
 まず1番目の論点としては、少子高齢化が著しく進行する中で、年金積立金を保有し、その運用収入を活用することにより将来世代の過大な保険料負担の軽減を図るという基本的な考え方を放棄してよいのかどうかという問題点でございます。
 もう一つは、当面の保険料の上昇を抑制する代わりに、年金積立金を使い切った後の保険料水準を急激に引き上げなければならず、負担上昇の先送りとなり、年金への不安不信が払拭できないのではないかという論点でございます。
 「(3)その他」の論点でございますけれども、高齢化のピークを超えた2060年度以降の被保険者の多くは、まだ生まれていない世代でございまして、賦課保険料の水準は、今後の少子化の進展により、不確定な要素が多いことについてどのように考えるかということがあります。先ほども出てまいりましたが、新人口推計は、平成11年の財政再計算を前提とした旧人口推計よりも、さらに少子高齢化が進む前提となっております。したがいまして、将来の賦課保険料率はさらに上昇する見込みとなっているということでございます。
 また、諸外国においても、ある程度の年金積立金を将来において保有する財政計画としている国があることの意味についてどのように考えるかということもございます。
 7ページでございますが、スウェーデンで2000年時点では、給付費の4年分程度の積立金を保有しております。また、将来においても標準的なケースで2〜3年分保有することとなる見通しとなっております。
 また、アメリカにおいても、75年後においても給付費の1年間分の年金積立金を保有するために必要な保険料を基準として、毎年、財政検証を実施しておるところでございます。以上でございます。

○ 若杉分科会長
 今度は、泉課長。

○ 泉運用指導課長
 続きまして、資料1−3及び資料1−4についてご説明をさせていただきます。
 まず資料1−3をごらんいただきたいと思います。現在、ポートフォリオを策定してそれに基づき長期的に運用しておるわけでございますが、どういう考え方に基づいてこのような運用方法としているのかということをごく簡潔に説明した資料をつくってみたものでございます。「長期資金である年金積立金の運用方法(分散投資)について」ということでございますが、まず年金積立金の特徴といたしまして、長期運用が可能だということでございます。また、年金給付の財源でございますので、安全、確実かつ効率的に運用することが必要なわけでございます。
 資本市場におきましては、一般にリスクとリターンはトレードオフの関係ということが言われております。つまり安全性と有利性を両立することは困難であり、よくハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンと言われているわけでございます。
 1ページ目の下に図表1を載せてございますけれども、株式の収益率の期待値(リターン)は債券よりも大きいわけでございますけれども、一方で、収益率の分布、つまり時には高い収益が得られるけれども、低い収益にとどまる、あるいは時にはマイナスになるということもあるということで、そうしたぶれ(リスク)が大きいというわけでございます。
 一方、債券の方は、収益率の期待値は株式よりも小さいわけでございますけれども、そのばらつき、リスクも小さいということでございまして、これを一つの例として図表1として載せてございます。
 次に2ページをお願いいたします。
 こうした資本市場の本質を踏まえた上で、安全かつ有利に資産運用を行うための手法がこれまでいろいろと開発されてきております。特に近年はITの進展にも伴って、さらに高度なものへと発展してきておるわけでございますが、そうした中で、非常に伝統的な手法として分散投資ということがございます。
 分散投資の考え方といいますのは、広く国内外で採用されており、年金の資金運用についても基本となっているものでございますけれども、この方法を用いて運用することによりまして、目標とする収益を上げるためのリスクを小さくすることができるということでございまして、適切なリスク負担の下で高い収益率を期待することができると考えられているわけでございます。
 そこで「投資対象資産を分散」すると、どういう効果があるかということですが、複数の資産の収益率といいますのは、同じ時期に同じ方向に動くということは少ないわけでございます。このことが経験的にも言われております。
 次の3ページに、国内債券と国内株式の収益率の推移のグラフを載せてございますが、これをごらんいただきますように、常に同じ方向に動くということではなくて、時には一方が下がれば一方が上がるというように、補い合うといいますか、そういうような動きをすることもあるということでございます。
 戻っていただきまして、このように互いに、相関係数ということでございますけれども、国内債券、国内株式、あるいは外貨建資産、そうした様々な資産を組み合わせて分散して投資することによりまして、資産全体の収益率の上下へのぶれ、変動を小さくして、単一の資産で運用する場合よりも、目標とする収益を上げるためのリスクを小さくすることが可能になるということでございます。
 図表2及び図3は、これはイメージ図を載せてございます。右下の方に分散投資の効果という図3を載せてございますが、これは目盛りに格別な意味があるわけではなく、概念図としてごらんいただきたいのですが、リスクとリターンの異なる二つの資産を組み合わせた場合、仮に右上が株式であり、左下が債券であるというように考えた場合に、そのリターンは両者を結んだ直線上で示されるということでございますが、リスクの方は、それぞれの下ぶれと上ぶれといいますか、そういうものが打ち消し合うことによりまして、リスクの軽減が図られるというケースが出てまいるわけでございまして、このグラフで左に少し出っ張ったカーブになるわけですが、こういう形でこの曲線上にリスクの軽減が図られると。よくあるグラフでございますが、これを載せてみているわけでございます。
 3ページは先ほどごらんいただきました。4ページには「長期運用」することによって、運用期間が長くなればなるほど収益率は平均的な収益率に収束していく傾向が見られる、すなわち長期運用をすることによって安定的な収益を上げることが可能になるという、これもイメージ図を載せています。
 資料1−4をごらんいただきたいと思います。
 こうした分散投資などの考え方に立ちまして基本ポートフォリオを作成し、実施しているわけでございますが、この考え方が「1 基本ポートフォリオに基づく運用」というところに記載されています。
 リスク・リターンの特性が異なる複数の資産に分散投資することが適切だと考えられるということでございます。その際に重要なのは、資産クラスの分類の仕方、あるいはどの資産にどのくらい投資するかということを決めることです。
 また、長期の運用でございますので、短期的な市況の変化によって資産構成割合を変化させるよりも、維持すべき構成割合をいったん定めますと、なるべくそれを長期間維持していくという方が全体を通して効率的な結果がもたらされるのではないかということでございます。
 公的年金の積立金は、文字どおり長期にわたって保有、運用するものでございますので、そうした点で基本ポートフォリオを定め、年金財政や経済などの前提条件に著しい変化がない限りはこれを維持していくことが望ましいと、こういう考え方に立ちまして、厚生労働大臣が「運用の基本方針」を定め、その中で基本ポートフォリオを定め、運用を行っていると、こういうことでございます。
 その「基本ポートフォリオ策定の基本的考え方について」でございますけれども、分散投資を図るということが一つございますが、それとともに、将来の年金給付を確実に行えるようにという観点から、目標とする「実質的な運用収益」、これは先ほど数理課長からも話がありましたが、具体的には、平成11年財政再計算で申し上げれば、実質運用利回りが1.5 %ということでございます。これを確保できることを念頭に置きまして、長期運用を行った結果、仮に運用収益が大きく下方に変動したような場合、最終保険料、保険料を引上げなければならないという可能性があり得るわけでございますが、そうした可能性が最も小さいようなを資産構成割合とするという観点を設けてございます。
 また、資産構成割合を定めるに当たりましては、市場や民間の投資行動に影響を与えないようにすることも一つのポイントとなっております。
 2ページには、具体的にどういう資産に運用するかということが書いてございます。リスクに見あった収益率が期待でき、流動性に問題がなく、リスクやリターンの特性に関して十分に情報が存在するというものに限定するということから、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式、これを運用対象といたしております。国内債券については、安全で確実な運用を行う上で非常に重要な運用対象ということでございますし、市場規模も大きく流動性も高いわけでございます。従って、中心となる資産という位置づけをいたしております。
 また、国内株式でございますが、経済成長やインフレに連動した収益が確保できること、また、長期的に見ますと、債券を上回る収益が見込める資産であること、こういうことから、やはり運用対象として組み込むことが重要という位置づけでございます。
 さらに、外国債券あるいは外国株式でございますが、幅広い分散投資を行っていくという観点、また積立金の規模が大きいわけですので、国内市場への影響を回避するというような観点からも、これも運用対象として加えていくことが不可欠であり、こうした観点から、この四つの資産を対象としております。
 また、さらに年金給付に必要なキャッシュを持っているということが必要でございますので、短期資産、これについても一定量の保有をすることでポートフォリオを策定しているわけでございます。
 次の3ページはちょっと細かくなりますが、参考として具体的な策定手順について書いてございます。
 まず「1 基本ポートフォリオが備えるべき条件の設定」ということで、先ほどございました、平成11年再計算の名目の運用利回り(4.0%)から賃金上昇率(2.5%)を引きました実質的な運用利回り(1.5%)、これを確保するということを運用の目標に置いています。
 また、制約条件を幾つか置いております。
 外国債券を国内債券よりも低い割合にするということでございますが、外国資産には、管理コスト、政治リスク、決済リスク等々があることから、こうしたことを一つ条件に置いております。
 また、外国株式については、国内株式の3分の2以下の割合にしておりますが、これもやはり同様に外国資産のリスクを考慮するとともに、海外の年金基金の実例なども参考にこういう条件を設定しております。
 外国債券については、外国株式以下とするということでございます。これは長期的な収益率を見ると、株式が債券を上回るということがございます。また、購買力平価というような考え方がございまして、長期的に見れば、内外の金利については裁定が働くというような考え方もございます。こうした点も加味して債券の比率を少なめにしております。
 また短期資金でございますが、これは必要なキャッシュを用意するという意味で5%としております。
 こうした条件を設定して、具体的には、2のところにありますようなシミュレーションを行っていったわけでございます。
 具体的には(1)でございますが、短期資産も含めた五つの対象資産につきまして、過去のデータなどをもとにいたしまして、収益率、標準偏差、相関係数を設定をいたしました。また、為替ヘッジのパターンについては五つのパターン、外株、外債について100 %、あるいはいずれも0、片方が50%といった組み合わせで五つのパターンをつくりまして、設定をいたしております。
 また、期待収益率については、名目4.0%を上回るということで、4.1%〜6.4%、0.1%刻みで、24通りの収益率を設定し、それぞれについて、今申し上げました為替ヘッジのパターンごとに、つまり24×5で120 通りのポートフォリオを想定をしたわけでございます。
 その中から、リスク性資産の比率等を考慮し、候補の絞り込みを行いまして、11のポートフォリオを候補としてまず選定をいたしました。
 その候補となった11の中から、どれを選び出すかという作業をしたわけですが、そこは(方法)というところにございますが、将来、2024年度まで、25年間にその11のポートフォリオがどういう経路をたどって、その場合に資産残高がどのようになるかということで、これは確率論的に様々な変数を発生させて、「モンテカルロ・シミュレーション」と言われるシミュレーションの方法で資産残高の分布、保険料率のデータの試算を行いました。その結果、資産残高が小さくなる、言いかえると、最終保険料率が大きく引上げなければならない、そういういわば運用収益が下にぶれた場合の可能性、これが最も小さい資産構成割合を選ぶということを行いまして、ポートフォリオを選定したわけでございます。
 その結果が、次の4ページにございますが、「基本ポートフォリオ」と書いてございます。国内債券(68%)、国内株式(12%)、外国債券(7%)、外国株式(8%)、短期資産(5%)という比率のポートフォリオとなっているわけでございます。
 なお、この基本ポートフォリオは、当分の間、旧資金運用部に預託した部分というのがございますので、それが全額償還されると見込まれます平成20年度(2008年度)末の目標として定めてあるわけでございます。
 ここまで、資料の説明は以上でございます。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。ただいま説明がありましたように、現在の積立金の運用は、厚生労働大臣から、この年金資金運用分科会に諮問があり、この分科会が答申した運用の基本方針に基づいて運用されているわけですが、その中身は、最後に運用指導課長が説明されたように、基本ポートフォリオというものをつくって運用しているわけです。
 そこでは、資産を、国内外の債券、国内外の株式、それから短期資産ということで、五つの資産に分けて、そこに分散投資をしているということになるわけです。
 その分散投資をしている理論的な背景は、資料1−3で説明していただいたような、現代の資産運用の基本である分散投資というわけで、一つ一つで見るとリスクがあっても、他のものと組み合わせれば、そういうリスクが消えるので、なるべくいろいろな資産を組み合わせた方がいい、そういう考え方に基づいて運用しているということになるわけです。
 しかし、最近の株式市場の低迷を受けて、本当に株式を持つのがいいことかどうか、そういう問題点が指摘されていることから、閣議決定に基づいて、この分科会でその株式運用の是非についても改めて検討すると、そういうことが最初に説明があったわけです。さらに数理課長からは、そもそも積立金を持つのがいいことかどうか、そういう説明もありました。
 そういうことに基づいて、これから閣議決定で与えられた我々の課題について検討していきたいと思います。いつものように、どなたからでも結構ですので、どうぞご意見、ご質問等お願いいたします。
 小島委員どうそ。

○ 小島委員
 今日から出席しましたが、今までの経過については、これまでの資料等を拝見しました。また、この分科会ができる前の準備段階から議論を積み重ねてきて基本ポートフォリオを策定し、基本運用方針を決めたということについても、その経緯としては理解します。これまで、この分科会に前任者も参加しまして、基本ポートフォリオあるいは運用基本方針ということについても議論してきたという経過がありますが、やはり今回の株式市場運用の結果を見ますと、結果的には、13年度の市場運用についてはマイナスになっているという現実は否めないと思います。これはもう一度基本に立ち返って考える必要があるのだろうと思います。今回、積立金の運用の在り方を議論、検討するということは、そういう意味だと思います。積立金を持つ意味合いとしては、積立金による運用利回りによって、将来世代の保険料をなるべく軽減するということですが、それは実質1.5%という、前回の財政再計算の利回りを前提とした試算でありまして、それが将来的に確保できるかということが一番の問題です。それはなかなか今の現状を見た場合にうまくいくのかという疑問を私は強く持っています。
 そういう観点から見ますと、基本ポートフォリオを組むに当たっての基本的な考え方は過去のデータを基にしてつくったということになりますので、その過去のデータが、果たして将来的にそのとおりいくかどうか、これはなかなか検証できない問題だろうと思います。ましてや、今のようにデフレ経済状況下において、非常に厳しい状況がありますので、今後とも過去のデータに基づいた運用実績が上げられるかどうかという保証は何もないのではないかと思っております。
 そういう意味では、今、民間企業では厚生年金基金の代行返上、あるいは確定給付から確定拠出へというような形で、企業が運用リスクを回避するというような動きが出ております。民間では、基本ポートフォリオというものを持っていると思いますが、それにもかかわらず、市場運用から撤退しているという状況を踏まえると、果たして公的年金の積立金が市場での株式運用を含めて、本来の成果が上がるのかという疑問が出てきます。今、民間が、市場運用のリスク回避という方向に動いているのに、公的な資金がそれを担うというのは、どう理解するのかということだと思います。
 今、「民間にできるものは民間に任せろ」という方向でありますが、逆に民間がリスクを回避するという方向にある中で、逆に、公的年金が市場運用リスクを取るということになっていると思いますので、その辺のことをどう考えるかということがあります。
 それと基本ポートフォリオは、最終的には7年後の姿を描いています。その間は移行期間のポートフォリオということでありますが、それを見ますと、債券の比率を毎年3%程度引下げていく。逆に、株式運用を毎年1%程度ずつ引上げていくというようなことになっております。また、今の移行期間の中では年金資金運用基金の市場運用においては、株式の運用比率というのは20%を超えています。平成13年度末は26%ぐらいになっており、移行期間中は高い株式運用の比率になっています。そのために、今の株価下落の中で、傷口を広げたといいますか、大きなマイナスになっていると思います。
 そのため、基本ポートフォリオ自体の在り方というのはどうなのかという疑問がありますけれども、それに基づいてつくられた7年間の移行期間のポートフォリオの運用比率の在り方、これももう一度検討し直す必要があるのではないかと思っております。
 私は基本的には、公的年金の積立金の株式運用はやめるべきではないかと思っています。債券を中心としたものにすべきだと思っております。今のような積立金を持つ必要があるのかという、積立金の規模自体についても意見があります。そういう意味では、当面の移行期間においても、最低限、基本ポートフォリオで定めた株式の運用比率でいくべきで、7年後に一気に基本ポートフォリオの株式運用比率(12%)というところに持っていかずに、7年後から経過期間をおいて基本ポートフォリオ比率に持っていくというようなことを考えてもいいのではないかというふうに思っているところです。
ちょっと長くなりましたけれども。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。そういうご意見ですけれども、ほかにいかがでしょうか。米澤委員。

○ 米澤委員
 今のご意見に関しまして、いろんなデータを見直すという点は、私も基本的に賛成で、それは大分大きく状況が変わってきていますので、結果的に本当に変わっているかどうかをチェックするためにも、再確認する必要はあるのではないかと思っています。ただ、その下で、デザイン全体を変えるといったときに、はっきり言うと、株式を場合によってはゼロに持っていくといったときに、先ほど民間の企業年金が代行返上は、今説明していただいたような状況かもしれませんが、むしろ、これからとられていくのは確定給付から確定支出のような格好の方にとらえて、むしろリスクを負担しましょうという格好になっているのではないかと思うんです。
 もちろん公的年金は明示的ではないにしろ、確定給付という性質を持って、保険料率のところをどう理解するかの点もありますが、ここのところだけは全くリスクをとりたくない、市場のリスクをとりたくないというのは、マクロ経済的にどうも虫がよすぎるのではないか。今、日本全体が、はっきり言って、生きるか、死ぬかというような危機状態になって、仮に相当この期間が続くときに、ここだけそういうリスクは一切とらないといったときに、それはいかがなものかなという感じがしております。
 それは何かというと、こういうシステムはリスクがあるということを明示的に言うつもりはないんですが、ある程度のリスク、それは保険料率の予定しなかったような上昇とか、場合によっては運用がうまく行き過ぎて、それが下げられるということも含めて、そのリスクみたいなものはある程度ビルトインされたような中でこのシステムを維持していくことが、ほかのマーケットにそれほど多大な悪影響を与えずに共存していける一つのシステムではないかと思っています。
 かつ実際に株式のウエイトを見ますと、民間の企業年金などとは大分違って、そうは言っても非常にそれよりも低い水準でありますので、今後よく言われます、これが市場型間接金融の中に入るのかいろいろ議論の余地があると思いますが、ここだけ全くリスクをとらないような格好で、これだけの多額なものを運用していきましょうというのは無理な話だと思います。
 今、私はリスク、ネガティブな面だけ言ったわけですが、もちろんこの裏には、恐らく何年かたてば、それは期すべきリターンがあるだろうと。それはここに書かれているとおりでございまして、それは今なかなかそういう目を持てといっても難しいかと思いますが、これは長期にはリスク・リターンの関係があると、課長の方からも説明があったことを信じて、両方の要因から、今すぐ株式を少なくする、ないしはゼロに持っていくというのは、ややというか、かなり早計な考え方ではないかと思っています。
 ですから、これで行ってうまくいくというのも言えないかもしれませんが、ある程度のリスクは覚悟して、これに代わるもっといい方法というのはなかなかないのではないかというのが素朴な感想です。
 そうは言っても、最初に言ったように、もう一回データを洗い直して、株式のウエイトが、国内が12%でいいのかどうかというのは、しかるべき時期にもう一回検討するのは、私は必要ではないかと思っております。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。他にご意見いかがでしょうか。大和委員どうぞ。

○ 大和委員
 年金積立金を保有し続けるか取り崩すかの問題からまずいきますと、結論としては、これは年金財政を安定化させる、あるいは保険料率の上げ方を急にならないようになだらかにするという趣旨でやってきたわけですから、少子高齢化のピーク時までは保有をして、それ以降、どうするかというのは基本的に積立金をもっとウエイトを多くする年金制度というのもあり得ますし、あるいは保険料率を一定にして給付金で調整するというスウェーデン型の制度もあるかもしれませんし、制度そのものの考え方によって、改めてそれ以降議論すればよいと思います。とりあえず今の制度が前提にしているのは、今のような組み立て方で保険料率の上げ方がなだらかになるようにという趣旨でやってきたわけですから、それを前提とする限りはピーク時まで持ってというような前提でいいように思いますけれども。
 ただし、先ほどマクロのお話が出ましたけれども、どこで引上げるのがいいのかというのも、マクロの観点ではあり得るかもしれません。ずっとしばらく上げない方が停滞を脱する上ではいいとか、もっと後になってから、30年後に上げる方がいいのではないかとか、引き上げの階段のつけ方については、マクロの観点からの配慮があるかもしれません。しかし年金財政の安定化という観点だけから言えば、今のように徐々に上げていくということでしかないように思います。

○ 若杉分科会長
 今の上げるというのは保険料のことですか。

○ 大和委員
 保険料の上げ方です。保険料の上げ方を、今上げないで、後でどっと上げるということもマクロの観点からはあるかもしれませんけれども、それを除いて年金財政の観点だけで言えば、徐々に上げていくという、今の形が望ましいというふうに思いますけれども。
 それから、運用の問題ですが、したがって、運用をしばらく2050年とか2060年ぐらいまではするということになるわけで、その点ではこれまでの考え方でよいのですけれども一つ問題があります。従来の考え方は、40年、50年で妥当するような資産のリターン・リスクとか相関係数とかという前提で基本ポートフォリオをつくろうという考え方であったように思いますが、アメリカでも19世紀の終わりから株式や債券のデータが詳細にとれるわけですが、あのデータを見ても、40年とらないと、必ず株の方がリターンがちょっと上ということは出てこないわけですね。10年ごとであれば、逆転する局面はたくさんありましたし、そういう意味で、40年以上のそういうスパンでこの運用を考えるのがいいのか、あるいは一応財政再計算を5年ごとにさせられているわけですから、やはりタイムスパンを10年とかというもう少し短い期間でリスクを少なくリターンを多くというような考え方、つまりある投資予定期間というものを非常に超長期から、ある一定期間ごとでちゃんと見ていくというふうに直してもいいように思います。
 それから、たまたま日本のデータは1970年ぐらいから現在までしかとれないわけですが、70年から現在までとれば、株の方がリターンが上だったということは実績としてありますけれども、この期間は、高成長からオイルショックを経て低成長になり、あるいは株式の発行制度も額面発行から時価発行に変わり、あるいは金融市場も規制金融マーケットから自由金融マーケットに変わり、ものすごい大きな変動と90年以降の大不況を経験しているわけですから、たまたま過去30年の実績がどうだったからということでそのデータで推定するのもおかしいと思います。今後10年間の見通しをどうするか、改めて見直して運用を考えた方がいいように思います。簡単に試算してみて、過去10年間の成長率は名目0%、実質で0.6%かなんかで、あと物価がマイナス0.5%かなんかでしたけれども、今後の見方として名目0〜0.5%の成長率と見通した場合、大体債券の運用収益は1〜1.5%ぐらいでしょうし、株の収益率は 0〜3.5%ぐらいの間のどこかという感じがしています。アメリカの方が債券の利回りはずっと高いでしょうし、株はアメリカでは、恐らく債券の収益率を上回ることはないかもしれない。今後10年、そういうふうにも感じますので、実際には予測というのは難しいわけですけれども、過去何十年間の実績だけで処理をするというのはどうか。データ次第で全然ポートフォリオは変わってしまいますから、もうちょっとそれをきめ細かくした方がいいのではないかという気がしております。
 ただ、そうやって、例えば10年ぐらいごとで運用計画を立てるとした場合、実質収益率1.5%というのは難しいように思うんですね。1.0%ぐらいかもしれないし、それに多少リスク資産を入れることによってどれほど改善するかという程度でしかないでしょう。そのリスクをとってコストを負担するということが、本当に見合っているかどうかというのは、リスクのとり方と実質リターンの見込み如何によっては疑問が出るかもしれないという気もしております。そんなところですが。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。福井委員どうぞ。

○ 福井委員
 積立金の話と株式運用の話と、今日はご説明二ついただいたわけですが、積立金の方は、給付水準の変更ということを前提としなければ、保険料率の変動をならすという観点からは、今日のご説明は、私は理解できますが、そもそも今の年金制度を将来サステイナブルな姿に持っていくために、給付水準の変更ということを全く念頭に置かなくていいかどうかということを私はいくらか疑問に思っておりまして、世代間の負担の公平性ということを図りながら、制度の永続性、これを確保するという観点からいくと、今の給付水準について全く見直しなしに将来までいけるかどうか。もし給付水準の変更ということを入れていく場合には、積立金の持ち方というのも、やはり世代間の負担の公平性の中でうまく、どういうふうに積立金というものを崩していけばいいかという別の答えが出る可能性があるのかなというふうに思います。それが第1点です。
 第2点の株式運用のところは、私はどちらかといえば、株式運用はあった方がいいと思っている立場でございます。なぜかというと、年金のファンドは、片方で年金を支払うという債務を負っている。一方で年金をうまく運用するという資産サイドの課題がある。このように資産と負債と両方背中合わせになっていると思うのですけれども、年金債務という負債の方を考えると、これはどういう性格のものかといえば、インフレ率と労働生産性によって変動する要素を持っています。従って資産サイドでこれをうまくオフセットできるような運用がなされている方がいいのではないか。多分、運用対象資産の中で、インフレ率と労働生産性の変動に対して一番強いのは株式ではないかという気がいたします。そういう意味では、ALM的なバランス感覚で正当性が得られるのではないか。
 今のポートフォリオについての考え方は、資産サイドでリスク分散をどう図るかという観点からシミュレーションや伝統的な分析を重ねて導き出したものでしょうけれども、ALM的な観点を入れ得る可能性があるのかないのか、そこは私は素人でよくわかりません。もしそうした観点を入れると、私の直感ではもっと株式運用の比率が上がってもおかしくないというぐらいの答えが出るかもしれないと思われますが、それはともかく少なくともある程度の株式運用については、私はどちらかというと、ALM的分析からいって正当性が得られるだろうと考えております。
 それから、確かに公的年金が株式をたくさん持つということになりますと、コーポレートガバナンス、あるいはその他の点で多少弊害の面もあるかもしれない。アメリカの公的年金について、株式を持つか持たないかという点については、持つべきでないという議論も結構強いわけですね。それはアメリカの場合は、今、米澤先生がおっしゃいましたとおり、マクロ的なリスク分散の観点から、リスク分散はかなり行き渡っている世の中であって、公的年金がマクロのリスク分散の中に余り大きく関与しなくても世の中のバランスはとれているという前提で、公的年金が株式を持つ弊害の方に多少ウエイトを置いた議論が出てきているのかなと思うのですが、日本の場合は、多分公的年金が株式を持たないと、マクロのリスク分担に正しい答えが出ない可能性もあるかもしれません。そこのところも、もうちょっときちんと世の中に説明していった方がいいのではないか、そんなような感じでございます。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。吉原委員お願いします。

○ 吉原委員
 最初に積立金の話ですけれども、今、積立金を崩してもいいじゃないかと、崩したらどうなるかと。崩してもいいじゃないかという議論というのは、2040年までとか2060年までということではなしに、今の保険料を上げないで、足らず米は全部積立金を崩して給付に充てていったらどうなるかというのは、私、積立金が要らない、あるいは取り崩し論者の最大のあれじゃないかと思うんですね。ですから2040年までに崩すと18%でとどまって、7%上げると。2060年までなら、それほどでもないけれども、こうなるという二つの試算を示しておられますが、今の水準を固定したら、積立金は一体いつごろゼロになっちゃって、その後、どのくらいばっと上げなくちゃいけないかという試算はありますか。計算されましたか。

○ 若杉分科会長
 数理課長どうそ。

○ 坂本数理課長
 恐れ入ります、まだ、そこまでの試算はやっておりません。

○ 吉原委員
 積立金は崩したらどうなるかという議論は、今の保険料をなかなか上げられない、上げたくない、そういうことを念頭において保険料を今のままに据え置いて積立金を崩して、給付に充てていったらどうなるのかというようなことじゃないかと思うんです。2040年までとか2060年までとかいうのんびりした議論ではないと思います。
 株式の議論は、10%余りの株式の比率というのはそう高くないし、まずまずのところだと思いますが、最近のような株の動きですと、一般の人が心配に思うのは無理もない。過去の何十年間の平均でこうだこうだという説明だけでは納得できないところがあると思います。その辺の議論の見直しは、大和委員の言われるように必要なのではないかという気がいたします。以上です。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございます。高梨委員どうぞ。

○ 高梨委員
 閣議決定で、次期財政再計算時に検討しろと言っているわけです。財政再計算時には、これからの公的年金の在り方をどうするかという根っこからの議論をすべきで、それがこの場ではなくて、社会保障審議会年金部会で議論が行われています。そういう意味からすると、まだ公的年金の在り方の全体像をどうするかということの前提条件が固まっていない。その中で積立金運用の問題を、今の制度を維持することを前提に議論をするというのは、本来は議論の仕方としてはいかがであろうか。1階、2階建ての制度を1階建てにするという考え方があるし、2階建ての制度を続けるにして、1階部分の財源は全額税とすべきだ、あるいはその財政方式は賦課方式とすべきだ、こういう主張もあるわけです。その辺をどうするかという議論は、まだ整理されていない。
 結局、まずはそういうことがある程度固まって、また福井委員がおっしゃったように、今の公的年金の水準はどうなのか、今の水準を維持するのか、しないのか、それは将来の人たちの水準だけ変えるのか、あるいは既裁定者についての水準も変えるのかによって、制度が大きく変わってくるわけです。その辺の状況を固めた上で、それでは財政方式をどうするか、こういう議論がなされるのが最も適切だと思います。
 そうは言っても、年金部会の方の議論が固まっていないで、それではこちらで何もしなくていいと、こういうことにはならない。一定の条件設定をした中で考えるしかないと思います。
 それから、資料1−2のところの財政方式の基本的な考え方について、1ページの出だしに書いてあるわけであります。「平成11年財政再計算における財政方式は、賦課方式を基本としつつも、世代間の負担の均衡を考慮し、一定の年金積立金を保有して運用収入を活用することにより、将来の保険料を軽減し、将来世代の過大な負担を避けることとしている。」このことを全面的に否定するつもりはありませんけれども、世代間の負担の均衡を、積立金を保有するということだけで是正できるのでしょうか。私はそれはある部分的な効果はあり得るのだと思いますけれども、世代間の負担の均衡をきちんと図るのは、制度の仕組み全体で考えないといけない。積立金の保有ということだけにかぶせるということを言っているわけではないとは思いますけれども、その辺の設計の問題もあると思います。
 また、積立金を保有するにしても、それでは何年間分ぐらい持つのか、持たないのか、こういうことも十分に議論をする必要があると思いますし、また、今の厳しい市場の状況ということを考慮いたしますと、既に決めているような運用益を長期的に確保できるのかどうかという、国民の率直な不安感というのもあるのだと思います。また積立金の額が巨額になれば市場へのインパクトもあるし、また政治的な介入のリスクもあります。そういういろんな問題について考慮しながら検討していかないといけないのではないかと思います。

○ 若杉分科会長
 どうもありがとうございました。

○ 寺田年金資金運用基金投資専門委員
 基本ポートフォリオを計算した過程で、この委員会がいろいろ議論されたことなんですけれども、12%程度の株式であれば、これは分散投資の効果が効きまして、債券100 %のポートフォリオよりもほぼ同じリスクで、しかしリターンは株のリスク、プレミアムの部分だけ若干高くなるということが確認されているはずなんですね。ですから株式を、今の12%でなくて、企業年金のように、30%、40%近く入れているのと全然性格が違うリスク運用をやっているわけで、じゃあ、株式をやめるという意味はどういう面でメリットがあるかというのがはっきりしない。
 私は議論するのであれば、今、株式12%入っている、今の基本ポートフォリオ、これのリスクとリターンのトレードオフというのがより改善される方法はないか。言ってみれば、今よりもリスク1単位あたりで期待リターンを高める方法はないか、この議論は大いにやるべきだと思います。
 その方法としてはいろいろあると思うけれど、一つは資産クラス、現在資産クラスというのは内外の株、債券とキャッシュに限定されていますけど、これをもっと拡大できないかと、ほかの資産に。それから、各今の資産クラスにとってみても、マーケットがそれぞれベンチマークで規定されていますけど、必ずしもこれは非常にブロードなマーケットが対象になっておりません。例えば株式ではTOPIX だけだとか、外国株ですと、エマージング・エクイティーも入ってないとか、こういう各資産クラスにおいて、投資対象をもっと拡大することによって、より分散投資の効果があるのではなかろうかということが理論的には考えられるわけですが、それを実証して検討してみることは必要だろう。
 もう一つは、これも基本ポートフォリオを決めたとき議論されたことですけど、やはりホームカントリー・バイヤスというのがかなりきつく入っているわけです。これは全然外すということではなくても、ホームカントリー・バイヤスをきつく入れるということは、リスク1単位当たりのリターンのトレードオフを悪くしているわけですから、これをもう少し緩められないかということで、リスク1単位当たりのリターンを高めると、こういう議論は大いにすべきだろうと私は思っていますが、ただ、株をやめたらどうかというのは、さっき言いましたように、何のメリットもないと。むしろ期待リターンがそれだけ下がる。
 株の期待リターンが債券の期待リターンより低いのだと、こういう議論があればいいですけれども、恐らく経済学、ファイナンスの理論を少し勉強した人であれば、そういうことを言う人はないと思うんですね。これは債券から得られる将来のキャッシュフローのリスクと、株式の投資から得られる将来のキャッシュフローのリスクのボラテリティーはどっちが高いか、株の方が大きいわけですから、それだけ投資家というのは高い利回りを要求するわけですね。リクワイヤド・レート・リターンがそれだけ高くなくちゃだめだと。市場はそういうふうに機能しているはずだと思うんです。
 ですから株のリターンが債券より低いのだと、そういう前提があれば別ですけれども、そうじゃなければ、さっき言ったように、今の12%の株を取っ払うことのメリットというのはなかなか探しにくいのではないかということです。
 それから、今までの議論の中で、期間をもう少し限定して、非常に長期の期間じゃなくてというご意見がありました。これは私は将来を予測する、例えば将来の期待リターンを資産クラスごとに予測したり、リスクを予測したりする場合に、例えば10年間ではどうだろうかという意味で期間を限定することはむしろできたら賛成であります。ただ、それと、その将来を予測するために使います、参考にする過去のデータを、10年だから過去も10年とか、それに近い短い期間を使うということは逆に反対でありまして、これはできるだけ長い期間、これはいろんな事件が、時間を長くとればとるほどいろんな事件がありますので、そういう事件をカバーするような長い時間をとるべき。例えば、そういう短い期間をとりますと、非常に直近の10年間がどうだったということで物事が議論されて、今だったら、非常にペシミスティックな数字が出るでしょうし、例えば1980年代の終わりころやったとすれば非常にオプチミスティックな数字が出たと、そういう問題が生じてくるというふうに思います。
 それから、アメリカの公的年金が株を持たない。これはクリントン政権の終わりごろ、社会保障の資産で株を買ったらどうかという議案が出まして、公聴会なんかが開かれました。いろんな意見が出たんですけど、私が非常に印象に残っているのは、グリーン・スパーンが非常にはっきりした口調で言ったんです。国の年金で株を買うと、これば政治に利用されると。それでかなりその意見が効いたというふうに、私も聞いたり、物を読んだりしておりますけど、ただ、今の日本の公的年金では、全くそういうプレッシャーがないことはないのかもしれませんけど、グリーン・スパーンが懸念したような問題というのは今までのところ起こってないのではないかと思っております。以上です。

○ 若杉分科会長
 ありがとうございました。皆様方から、この分科会の課題についての基本的なご意見を伺いました。先ほど年金局長のご挨拶にもありましたように、これから年末にかけて、この分科会は何回か開いていきますが、そこで皆様の今のご意見やご議論をさらに展開していきたいと思います。
 そういうことで時間も限られておりますので、今日の皆様の基本的な意見を伺ったということにしたいと思います。今後の検討につきましては、事務局の方で一応案がありますので、それについて運用指導課長から説明をいただきたいと思います。

○ 泉運用指導課長
 お手元の資料1−5、「検討スケジュール」という紙をごらんいただきたいと思います。10月7日は本日でございます。次回でございますが、「株式を含む分散投資」、「全額国債運用」について、本日もいろいろご意見をちょうだいいたしましたけれども、こうした論点について、それぞれのお考えを述べておられる方に、この分科会の場へおいでいただいてご意見を述べていただき、議論をするというような形のヒアリングを行ってはどうかというふうに考えております。
 それから、3回目でございますが、将来見通しというようなお話もございました。今後の経済、市場見通し、こういうものについて、これは民間のシンクタンクのようなところになるかもしれませんが、ヒアリングという形で、これもお招きしてお話を伺うようなことをしてはどうかと思っております。
 一番下でございますが、そうしたヒアリングなども踏まえて、どのように考えを整理しようかというご議論を4回目にやっていただければどうかと。時期の方は若干ずれもあるかと思いますけれども、そうした形で株式を含む分散投資の是非、今後の再計算に当たって、運用利回りを考えていくに当たっての見通しの考え方、こういうことについて年内に取りまとめていただければというふうに考えておるところでございます。

○ 若杉分科会長
 ただいま説明していただいたようなスケジュールで進めていきたいと思いますが、これについて、何かご意見等ございますか。よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○ 若杉分科会長
 それでは、大体こういうことで進めていきたいと思います。これから、月に2回ぐらいということで、皆様をさらにご多忙にするかと思いますが、ご協力よろしくお願いいたします。
 それでは、そういうことで、これから年金積立金の運用の在り方についての検討をさらに深めていきたいと思います。
 それでは、この先のことについて、事務局の方から進行をお願いいたします。

○ 泉運用指導課長
 それでは、これをもちまして、議題1の部分の審議は終了ということでございますので、5分間ほど休憩をさせていただきまして、それ以後の審議については非公開ということで進めてまいりたいと思いますので、恐縮ですが、傍聴の皆様におかれましてはご退室いただけますよう、ご協力のほどよろしくお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

(傍聴者退室)
(休憩)


 これ以降の議事は非公開とした。以下、議事要旨を掲載。

(○は委員、●は事務局の発言)

(2)年金資金運用基金の平成14年度第1・四半期運用状況について
年金資金運用基金の平成14年度第1・四半期運用状況について、年金資金運用基金より説明。

(質疑応答)
 ○ かなり厳しい結果だ。

(3)その他
【第8回議事要旨について】
 第8回議事要旨については、配付資料のとおり確認。

【年金積立金運用報告書について】
 年金積立金運用報告書案について、事務局より説明。

 (質疑応答)
 ○外国債券の運用評価において、ヘッジ付きの調整ファンドがあったことがベンチマーク収益率を確保できていない理由としてあげられているが、ヘッジ付きファンド自体がおかしいわけではないので、ヘッジ付きファンドを否定するような印象を与える書き方は改めたほうがよい。
 ●表現について検討する。
 ○この報告書では、大臣が年金資金運用基金について評価を行うという、いわば内部評価を行っている。これは、行政評価法も、各省庁が行った政策や事業を自ら内部評価する仕組みになっているため仕方がないが、本来は第三者の評価も必要ではないか。また、報告書においては、移行期間のポートフォリオの資産構成割合やその決定の仕方、結果についても検証すべきではないか。
 ●この報告書で記載すべき事項というのは、運用の基本方針を前提として、それに照らし、実際の運用がどうだったのかという実績と評価である。この評価は、運用の基本方針という基準がないと行い得ない。移行ポートフォリオの資産構成割合やその決定の仕方などは、報告書における評価に当たっての基準そのものであり、この基準については、この報告書で取り上げるべき事項ではなく、別途、当分科会において御議論していただくべき事項である。
平成13年度の移行ポートフォリオについては、平成20年度末に基本ポートフォリオを達成するようになだらかに資産構成割合を変化させるという考え方で策定するということを、社会保障審議会に諮問し、当分科会での御議論を経て答申をいただいた上で、厚生労働大臣が決定しており、そういう意味では分科会に評価していただいている。来年度の移行ポートフォリオについても、年明けに御議論いただくこととなるので、その際に、移行ポートフォリオ策定の考え方を含めて御議論いただきたい。
 ○その基本ポートフォリオと7年間の移行期間のポートフォリオの資産構成割合の考え方について、報告書に、あらためて明記すべきではないか。
 ○預託分の運用実績について、厚生年金と国民年金で収益率が異なっているのは何故か。
 ●国民年金の方が制度の成熟が早かったので、期間の短い預託のウェイトが厚生年金より高く、国民年金の収益率の方が若干低くなっているものである。
 ○パッシブ運用への移行や民間の中途採用については、数値目標を立て、いつごろまでに達成するかを明確にすべきではないか。
 ●パッシブ運用中心という運用方法は運用の基本方針に明確に記載されており、年金資金運用基金でも順次比率を引き上げていることは事実である。ただ、時期の明確化については、ニューマネーの投入だけでパッシブ運用比率の目標を達成できなかった場合、さらに比率を高めるためにアクティブ・ファンドを解約してパッシブ・ファンドに資金を移管しなければならなくなり、これはコストがかかるなどの問題があるため、難しいと考えている。
 また、民間の中途採用についても、諸条件が整うことが必要であり、数値目標の設定は厳しいと考えている。
 ○パッシブ運用比率については、今後とも分科会としてもきちんとモニターしていくことが必要である。
 ○この報告書からは、年金資金運用基金は非常にしっかりと運用を行ったという印象を受ける。しかし、多くの人の感じは、運用結果はよくなかったということである。運用のプロセスについて評価をきっちり行うことも必要だが、結果がどうだったということについても記載すべきであり、そうでないと、一般の人の理解は得られない。
 ○同じ意見である。複合ベンチマークと比較してマイナスだったというだけでなく、年金資金運用基金の運用結果が−2.48%であったこと自体についての厚生労働大臣の評価を記載すべきである。
 ●この運用結果については、重く受け止めており、7月末の運用結果の発表以来、国会などでも問われているところである。
しかし、このような運用結果となった最大の要因は、基本ポートフォリオの資産構成割合である。この基本ポートフォリオの資産構成割合の設定については、特殊法人改革の際の指摘も踏まえ、株式を含む分散投資の是非から検討を開始したところであり、政策決定過程の中で検討することとなる。
運用結果については、この報告書で取り上げないから関係ないということではなく、別途御議論いただくものであるということである。
 ○市場運用は、1年や2年の結果について、一喜一憂するものではない。この報告書で重視すべきなのは−2.48%という結果ではなく、ベンチマーク収益率と比較して超過収益率がマイナスであることなどである。
 ○財政再計算における前提として、賃金上昇率は長期的には2.5%としているが、直近の数値は、平成10年度が−0.3%、平成11年度が0.1%となっており、2.5%と異なっている。なぜこのような数値となっているのかをきちんと記載しておく必要があるのではないか。
 ●平成10年度は厚生年金の実績見込み値、平成11年度は厚生年金の年金特別会計の予算上の値、平成12年度以降は2.5%としている。平成10年度、平成11年度の数値については、平成11年財政再計算の実際の作業を行った平成10年度時点で入手できた値を織り込んだものである。 これについては、御指摘のように、きちんと注記させていただく。

〜以上〜

〈照会先〉
 年金局運用指導課企画係
 TEL 5253-1111(内線3350)
 夜間 3595-2868


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