02/09/26 第9回社会保障審議会年金部会議事録              第9回社会保障審議会年金部会                    議事録                平成14年9月26日 第9回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成14年9月26日(木) 10:00〜12:40 場所  :霞が関ビル 東海大学校友会館「阿蘇の間」 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、大山委員      翁委員、小島委員、近藤委員、杉山委員、堀委員、矢野委員、山口委員      山崎委員、若杉委員、渡辺委員 ○ 高橋総務課長  それでは、ただいまより、第9回社会保障審議会年金部会を開催いたします。  議事に入ります前に、委員の交代がございましたので、ご紹介申し上げます。先日、 向山委員の方から辞職願が提出されまして、ご事情により辞職したいとの申出がござい ました。このため、私どもの方で次の委員を検討しまして、新たに小島茂日本労働組合 総連合会総合政策局生活福祉局長に委員をお願いすることといたしまして、私ども大臣 から社会保障審議会臨時委員に任命されまして、当審議会会長から当部会に属すべき委 員として指名があったところでございます。  小島委員でございます。 ○ 小島委員  連合の小島です。早く皆さんの議論についていけるように勉強したいと思います。よ ろしくお願いいたします。 ○ 高橋総務課長   続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第、新し い社会保障審議会年金部会委員名簿のほか、次のとおりでございます。  資料1、第8回年金部会における委員の皆様から要求があった資料。  資料2−1、公的年金制度の財政方式と年金積立金の在り方について。  資料2−2は、その参考資料でございます。  資料2−3、年金福祉事業団が行っていた融資・施設事業について。  資料3−1、第3号被保険者制度について(論点例)。  資料3−2、第3号被保険者制度について(参考資料)。  資料4は、本日の会合に向けての委員の皆様方からの提供資料でございます。  それから、参考資料を3点お配りしておりますので、簡単にご紹介申し上げます。  参考資料1は、厚生労働大臣が主宰いたします「少子化社会を考える懇談会」から9 月13日に提出されました中間とりまとめの報告でございます。この中では、子育てに対 しまして、社会保障制度上何らかの配慮をする必要があるとの考えが示されているとこ ろでございます。その他、いろんなアピールとかアクションについての提言が盛り込ま れているところでございます。  参考資料2は、これを受けまして、私ども厚生労働大臣がとりまとめて、先日9月20 日に総理大臣に報告いたしました「少子化対策プラスワン」と題する少子化対策の一層 の充実に関する提案のものでございます。これは先週の末に公表されまして、新聞にも かなり出ておりましたが、これまでの少子化に対する取組は「子育てと仕事の両立支援 」が中心であったと言えるものでございますけれども、もう一段の対策として、「男性 を含めた働き方の見直し」など、子育てをする家庭から見て全体としてよりバランスの とれた取組を着実に進めていこうとするものでございまして、この中で、前回の部会で お示ししたような次世代の育成支援対策について、次期年金制度改正に向けて検討して いこうということが盛り込まれています。なお、一番よく新聞に出ておりましたが、育 児休業のとり方について、目標値で、男性については10%、女性については80%という ような数字が盛り込まれているところでございます。  それから、参考資料3として、本日の議題の一つでございます年金の積立金に関しま して、年金資金運用基金の資金運用の結果について、7月30日に公表いたしました資料 を配付をしております。これは後ほど私どもの方から簡単にご説明申し上げます。  本日、前回までの配付資料及び議事録を、ファイルにまとめて机の上に置いておりま すので、適宜ご参照いただきたいと思います。  それから、委員の出欠の状況でございますが、本日は岡本委員はご欠席ということで ございます。杉山委員はご出席の連絡を受けておりますが、まだご到着でございません が、現時点におきまして、委員の皆様方の三分の一以上の出席をいただいておりますの で、会議は成立しております。  それでは、以後の進行につきまして、部会長よろしくお願いいたします。 ○ 宮島部会長  それでは、第9回になりますが、これから年金部会の審議を始めさせていただきます 。ただいま資料の説明にございましたように、本日は大きく言いますと二つ、三つと言 うべきか、細かく言えば四つテーマがございます。これから私の方で、今日はこういう 形で議事の進行をさせていただきたいということを申し上げますのでご了解いただけれ ばと思います。  まず初めに、前回の論点の整理及び資料説明で「支え手」に関すること、「国民年金 の徴収」に関する部分につきまして、相当数の委員の方々から補充資料の要求がござい ました。また、そのテーマに関しまして、既に4人ほどの委員の方から意見が提出され ておりますので、支え手と国民年金の徴収を一括して1時間ほど説明と議論に時間を割 きたいと思っています。なお、その際、若杉委員の意見の中では、積立金に関する部分 がございますので、これは議題2の方ですので分けていただくことをお願いしたいと思 います。  それで1時間ほど行いました後、若干休憩時間をとりまして、その後、今度は年金積 立金に関しまして、これは新たな論点でございますが、これについて少し資料の説明も 丁寧にしていただきます。積立金のあり方あるいは年金積立金を用いた事業、資金運用 に関する点がございますが、これらにつきまして、事務局の説明の後、これに関して意 見の提出がございました翁委員、近藤委員、それから若杉委員の一部、それについてご 説明いただいた後、少し議論をいたします。  そして最後に、第3号被保険者の問題につきまして議論をしたいと思います。第3号 被保険者につきましては、こういう名称の議題ではございませんが、これまで何度か議 論されてまいりましたし、あるいは既に「女性と年金検討会」の報告書が出ておりまし て、論点としては既に挙がっておりましたが、年金部会として一度総括的な論点を議論 しておきたいというように考えております。  大体今日は四つのテーマにつきまして、それぞれ議論をしておきたいと思います。  これは前回申し上げましたが、今回の年金部会をもちまして、総括的な論点の整理に 関する議論は何度か行きつ戻りついたしましたが、一巡いたしましたので、これで総括 的な、特に論点の提示と資料説明はこれで終わらせていただきたいと思っております。 そして10月2回、年金部会を予定しておりますが、そこではできるだけ資料説明、もち ろん追加があれば別でございますが、資料説明なしに、今度は委員の方々の間の総括的 な討論を2回にわたってやっていただきたいというように考えております。最後に総務 課長、あるいは私からそれにつきましてまたお願いをすることになりますが、本日はそ のような議事次第という形でこれから審議をさせていただきたいと思いますので、よろ しくお願い申し上げます。  それでは、前回からの持ち越しになりました、新しい要求資料、あるいは補充説明が 求められました「支え手」を増やすという点と「国民年金の徴収」に関しまして、まず 事務局から本日の提出された資料についてご説明いただき、その後、委員から提供され ました意見についてご説明いただいて、討論を行うという形、これは一括して行います のでよろしくお願いいたします。それでは事務局からお願いします。 ○ 坂本数理課長  それではお手元の資料1−1.「支え手を増やす取組み」関係資料の(1)フランスにお いてとられている育児配慮措置を導入した場合の財政影響についてご説明させていただ きます。1枚おめくりいただきまして1ページでございます。恐れ入ります、座らせて いただいて説明させていただきます。  1ページでございますが、フランスにおいてとられている育児配慮措置を導入した場 合にどの程度財政影響が出てくるかということを一定の仮定の下で粗い計算を行ったも のでございます。この仮定もかなり粗いものでございます。  この計算の前提というところの「○」1で書いてございますように、一定の仮定の下 で粗く計算したものである。  次の二つ目の「○」で書いてございますように、フランスにおいては、報酬と加入期 間に比例する年金体系となっておるわけでございますが、我が国の年金制度体系にこの 措置をどのように組み込めるか、それ自体が検討を要する問題であるわけでございます 。しかしながら、ここでは全国民共通の基礎年金につきまして、フランスにとられてお ります育児支援措置を導入した場合に財政影響がどの程度生じるかを粗い計算で試して みたものでございます。  その前提ですが、育児支援措置の内容としては、次のようなものを仮定いたしました 。  まずアでございますが、女性には、子ども1人あたり2年、基礎年金の加入期間を加 算すると、1人子どもを育てると2年加算するという前提でございます。  イといたしまして、子どもが3人以上いる者につきましては、男女ともその夫婦につ きまして、さらに基礎年金額を10%加算するという前提でございます。  したがいまして、ウにございますように、この加入期間又は年金額が加算された場合 、満額を超える基礎年金が支払われることもあり得るとして計算しております。例えば 、この例で挙げておりますが、子どもが3人おり、保険料納付済期間が40年ある女性の 基礎年金額は次の式で計算されます。すなわち満額基礎年金に、まず3人子どもを育て たということで、1人につき2年、合計で6年の加算がございます。したがいまして40 分の(40+3×2)という部分、つまり15%増の年金になる。そしてさらに3人育てて おりますので、1割の加算がさらにつくということで、全体といたしましては、満額の 基礎年金の26.5%増と、このような前提で計算しております。  その計算結果は、2にございますように、中位推計に基づきますと、基礎年金の年金 総額の増加率が6%程度増加すると見込まれるところでございます。  また、高位推計によりますと、7%程度増加する。これは高位推計の方が子どもの数 が多いので、より多くの影響が出るということをあらわしております。  低位推計であれば、41/2 程度の増加になると見込まれるところでございます。  2ページ、3ページには、その計算の根拠を示しておりますが、この部分は省略させ ていただきます。 ○ 木倉年金課長  続きまして、年金課長でございますが、4ページ、ドイツの介護保険につきましての その保険料、これについてのドイツの連邦憲法裁判所の決定についてのご紹介でござい ます。4ページにございますように、まず上の四角の中ですが、ドイツの介護保険制度 は保険料1.7 %を労使で折半しております。賦課方式でございまして、国庫負担は入っ ておりませんで、全額保険料で賄っているということでございます。  この憲法の異議の申立ては、子どものいらっしゃる方からのようでございますが、介 護保険料が子どもを育てる、育てないかで同額であるということについて問題であると するものでございます。  結論としてのドイツ連邦憲法裁判所の決定でございますが、子の養育を通じて将来の 保険料負担者を確保した者と子のいない者の間に同額の保険料を負担させることは、法 の下の平等に反するということでございまして、決定後、立法の方の裁量の範囲があり ますので、2004年末までに何らかの規定の改正を行うことを求めるというものでござい ます。  簡単に内容を申し上げますが、下の方でございますが、最初の「○」の「※」にあり ますように、ドイツの憲法、基本法でございますが、6条1項に、家族に国家は特別な 保護をしなければいけないという規定がまずございます。  それから、一番下の「※」でございますが、3条1項に、すべての者は法の下に平等 であるという、この両規定がございます。  その下で、2番目の「○」でございますけれども、子どもを育てているという特別の 貢献を行っていることを介護保険の給付の面で考慮しないことは、違憲ではない。介護 保険の給付というのは、支払われた保険料の額に応じたものでない。介護の必要性に応 じたものであるからということで、給付面では特別に不利ということはない。  しかしながらという一番下の「○」でございますが、保険料の方でございますけれど も、保険料の算定に当たって、子の養育をするか、しないかが考慮されてないことは、 先ほどの6条1項の規定と結びついた3条1項の、法の下の平等の規定に違反する。基 本法上、許されない不利な状況に置かれておるのではないかという判断でございます。  次のページでございますけれども、この判断の背景としての説明ですが、ドイツの介 護保険は、若い障害を持つ方も対象にしておりますけれども、要介護リスクそのものは 、やはり60歳以上の高齢者で顕著に高くなる。これを賦課方式の財政支出の下でやって いるわけでございますけれども、子を養育している者、子のいない者が、いずれにして も制度を維持していくためには、将来において要介護者のために保険料を負担する十分 な数の子どもが後を継ぐことに頼らざるを得ないということでございまして、子のいな い被保険者は、他の被保険者が子を養育することにより利益を受けることになる。  次の「○」で、子どものいない人が極めて少ない場合には裁量の範囲内で問題ない場 合もあるかもしれないけれども、この保険料が決められた94年当時においては、既に少 子化が進んでおりまして、子を養育する者は劇的に減少することを認識していたはずで あるということで、次の「○」で、子を養育している者の介護保険制度に対する貢献、 保険料を負担しているということと子を養育していること、二つの貢献があるというこ とと、子のいない被保険者の貢献、これは保険料の負担だけであるということの間に明 らかな不均衡があるということでございます。  最後でございますが、立法の裁量の範囲を考慮して、2004年までに何らかの是正を行 うことを求めるというものでございます。  なお、参考までに6ページでございますが、これに先立ちまして、ドイツの年金保険 につきましても、連邦の憲法裁判所の決定が出ておりましたのでご参考までにご紹介申 し上げます。  ドイツでは育児休業が始まりまして、年金でも児童の養育期間につきましては、保険 料が納付されたとみなされる期間を設けました。最初は子どもの誕生後1年間につきま して平均賃金の75%相当の賃金にみなしての保険料納付があったとみなすことになって おりましたけれども、92年に既に同じように、この状態の下であっても、子どもを育て ている親の方から、一層の配慮が必要ではないかという訴えがあったようでございます 。これについて、この年金における児童養育期間の配慮については、一層の配慮が必要 だという判断が示されているものでございます。  その後、ドイツにおきましては、育児休業の配慮期間を3年間に延長する。さらに平 均賃金の100 %にみなすということで今年金の方が動いているということでございます 。  内容につきましては、同じように、6条1項に結びついた3条1項を基準として、世 代間の賦課方式の財政システムの下では、次の世代なしにはこの年金は存続し得ないと いうことで、子を養育する者は就労できなくなって、収入が減少するということと、も う一つ、将来の年金額も少なくなるということがあるということで、この不利な状況を 年金保険法の規定を通じて調整をすべきである。その仕方については、裁量の範囲とい うことで、先ほどのような配慮もなされたということであろうかと思っております。  なお、この資料は、国立社会保障・人口問題研究所の松本部長の報告から引用させて いただいたものでございます。  次に7ページでございますけれども、先般60〜65、60代前半の方の被用者保険の適用 状況のご報告を申し上げましたが、これをさらに20〜60歳に至るまでの間についても報 告をということでございましたので調べてまいりました。  まず真ん中の棒グラフですが、これは20〜60歳までの方で、全人口7,135 万人中、労 働力人口は5,715 万人。右の方の雇用者(非農林)で4,755 万人、別な統計からになり ますが、厚生年金と共済年金の方々合わせますと3,554 万人が適用されておるというこ とでございます。  これにつきまして、必ずしもカバーがちゃんとされてない方があるのではないかとい うことで、右でございますけれども、適用の考え方が少し違ってはおりますけれども、 雇用保険についての今の適用の状況を挙げております。雇用保険の被保険者、これは高 年齢の継続の被保険者の方とか日雇いは除いておりますけれども、3,148 万人、一般被 保険者、短時間も含めまして3,049 万人+83万人、それに季節雇用(短期雇用)が15万 人ということで、全体で3,148 万人ということでございます。適用の条件が違っており 、厚年の方は5人未満の個人の事業所が非適用であるとか、5人以上でもサービス業が 非適用がありますし、雇用保険の方は5人未満という区別はございませんで適用されて おりますが、法人の役員が非適用であるとか、そういうふうな条件の違いはございます から、なかなか単純な比較はできませんが、このような状況でございます。  なお、一番左側に1号の職業の内訳、これがわからないかということでございました ので掲げておりますけれども、1号の中で見てみますと、この中の職業の状況ですが、 1号被保険者で雇用者、雇用者といいますのは、下の(注)で書いておりますように、 時間要件の4分の3以上働いていらっしゃるということで、その方々が369 万人、それ 未満(パート等)の方が338 万人。ちなみに3号の方でも同じように推計がございまし たので見てみますと、雇用者という形で働いていらっしゃる方が34万人、パート等が345 万人。雇用者というのは非適用事業所なりで働いていらっしゃる方かと思われます。こ のような状況でございます。  次の8ページでございますが、厚生年金の適用と雇用保険の適用事業所の箇所数で比 べてみてはということのご指摘ございましたので見ておりますが、複数の年次を示して おりますけれども、雇用保険は今で見ますと201 万事業所ということでございまして、 厚生年金の方は167 万事業所ということでございます。これは先ほど申し上げましたよ うな適用の範囲の差が出ておるものかというふうに思われます。  それから、9ページでございますが、こちらには国民年金の方々の職業別の考え方、 1号の方々の職業別の調査がないか、あるいは国保についてないかということでござい まして、左の方が国民年金でございますが、アンケート的なものでございまして、はっ きりした定義で調べているものではございませんが、一番下の(注)にありますように 、被用者(常用雇用、臨時・パート等を含む)が26.4%程度いらっしゃる。  国保の方でございますが、これも被用者としてのアンケートでしかないのですが、22. 7%程度いらっしゃるといった状況でございます。  以上でございます。 ○ 渡邉社会保険庁年金保険課長  社会保険庁の年金保険課長です。資料の10ページでございます。国民年金被保険者の 納付意識についてでございますが、まず生命保険・個人年金の加入状況を年齢階級別に 見ますと、未納者の加入割合は各年齢層とも納付者に比べて低いとは言えますけれども 、6割近くが加入をしておりますし、20代前半でも4割近くが加入しているという状況 になっております。  次に11ページでございます。老後の生活設計を年齢階級別に見ますと、未納者は各年 齢層で「特に考えていない」、「自分で働く」とする者の割合は高いわけでございます が、「個人年金」と考えている者の割合も高いという結果になっております。  次に12ページでございます。未納者について、未納理由別に老後の生活設計を見ます と、小さくて申し訳ないですが、上から2番目の「保険料の支払方法が面倒」という項 目、それから、下から4番目の「まだ若いので今から払わなくてもいいと思う」と回答 した者では、「特に考えていない」とする割合がほかより高いわけですが、上から5番 目の「支払う保険料総額より受け取る受給総額が少ないと思うから」と答えている者と 、その二つ下にございます「国民年金をあてにしていない」とする者では、「個人年金 」、「貯金の取り崩し」とする割合が高いという結果になっております。  以上のことから、未納者には「老後のことは特に考えていない」ということで代表さ れる老後や年金に対する意識が低い者が多いわけですが、一方で、公的年金をあてにせ ず、個人年金等により老後に備える意識の者もおり、未納者を一律にとらえるというこ とはなかなか難しい状況でございます。  なお、未納の理由の中で、「保険料が高く経済的に支払うのが困難」と挙げている者 の割合は、全体の未納者の62.4%ということで、高いわけでございますが、次のページ 、13ページでございますが、未納者の所得階級別で見ますと、世帯の収入が1,000 万円 以上の者でも4割弱に上る人が、いわゆる「経済的に支払うのは困難」というふうに答 えております。  以上が実態調査の結果でございます。  続きまして、国民年金保険料の徴収についての実務と関係法令でございます。  未納者に対しましては、基本的に催告状を送付をし、電話や戸別訪問等によって保険 料を納付するように督励をしているところでございます。本年の4月、いわゆる14年度 からは市町村から現年度の徴収業務が社会保険事務所に移ったということでございまし て、現年度の未納者に対しまして、全国ベースで統一的に納付督励を行っているという ことは、資料の18ページでございますが、この(5)にありますように、前回当部会にお いて説明をしたところでございます。  続いて1年分以上の未納者に対しては、13年度までは、市町村から過年度の未納者の 債権を引き継いで行うわけですが、強制徴収の前提となる対象者を選定をいたしまして 、納付書と催告状を送付し、その後納付がない場合、改めて社会保険事務所において電 話や戸別訪問によって納付督励を行う。それでも納付がない場合、最終の催告状を送付 するといことにしております。  第二段階目としまして、最終催告状を送付しても、なお納付がない者につきましては 、強制徴収対象者を選定をいたしまして、督促状を送付し、戸別訪問をし再度納付につ いて説得を重ね、なお、納付に結びつかない者については差押えが可能な財産について 調査を行いまして、差押えの予告通知を送付して、なお、納付がない者については差押 えを執行ということになっております。  次のページでございますが、これまでの強制徴収の実施状況でございますが、第二段 階までの措置として62年度から実施をしておるわけですが、この第二段階は、62年から 平成3年度にかけまして行ったわけですけれども、このときには督促状は66人に送付を いたしまして、それでも納付意思がない者5人に対しまして最終的に差押えを実行した という経緯がございます。  なお、実施結果でございますが、当時、国民年金において、いわゆる納付実績に応じ て給付を行うということから、強制的に保険料を徴収することというのは行き過ぎだと いう一部意見があったこと。  それから、強制徴収の対象者の選定がなかなか難しかったこと。  また、結果として、強制徴収の実施後に差押えをした当該者が再び保険料を滞納して いるということもありまして、継続的な納付に結びつかなかったこと、こういうことか ら、平成4年度以降は、むしろ年金制度の理解を促して、自主的な納付に結びつけるこ とを基本として納付督励を行っており、強制執行は実施をしておりません。  次に法令の関係を〔参考1〕として添付をしてございます。特に国民年金法の規定に おきましては、17ページにありますように、第96条でございますけれども、国民年金 の保険料の督促についての規定でございますが、これは厚生年金法と若干異なりまして 、督促することができるという裁量規定になっております。  また、一番下に「○」で書いてございますが、未納に対する罰則規定は設けておりま せん。なお、保険料の徴収の時効については2年間ということになっております。以上 でございます。 ○ 薄井社会保険庁総務課長  社会保険庁の総務課長でございます。私からは徴収事務の一元化関係についてご説明 をさせていただきます。資料は19ページでございます。これは便宜、国民年金の項で資 料の整理をさせていただいておりますけれども、社会保険、これは厚生年金と政管健保 でございます、それと労働保険-労災保険・雇用保険、このいわば被用者保険につきまし ての徴収事務一元化についての考え方でございます。  徴収事務の一元化のねらいでございますけれども、事業主サイドの負担の軽減あるい は利便性の向上というのが1点、一方で、行政サイド(保険者サイド)の方の事務処理 の効率化というのが1点、この二つをねらいとして進めるものでございますが、1のと ころに書いてございますように、一つはインターネットによります社会保険・労働保険 の届出の一括受付というのがございます。  次のページにイメージ図が書かれておりますので、下の方でございますけれども、ご 覧をいただきたいと思いますが、保険料徴収関係の届出を含めまして、両方の保険の各 種の届出を一括して行うことができるようにする。  そうやってまいりますと、社会保険・労働保険サイドで多くのものについては入力事 務が省略されて必要なデータファイルに入っていくと、こういうことでございます。  2点目でございますけれども、社会保険・労働保険徴収事務センターというものを (1)にございますように全国の社会保険事務所312 ございますけれども、そこに設置を するということでございまして、来年10月を目途にその設置を考えております。  そこで何をやるかということでございますが、(1)にございますように、保険料算定の 基礎となります賃金や保険料額に関します届出、これをそこで受け付けるということで ございます。事業主としてはそこに来れば両方の届出が一遍に済む、こういうことにな ります。  (2)でございますけれども、事業所に対する調査、これは社会保険・労働保険それぞれ でやっておりますけれども、これを一緒に実施をすると。  (3)でございますが、滞納整理のいわゆる差押え等の滞納処分も含めまして、これを一 緒にそこでやっていくと。  それから(4)でございますが、事業所に対する説明会、これもそれぞれやっておるもの をセンターでやっていくと、こういうことでございます。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。これは前回からの論点の続きでして、補充資料の説明をお 願いしたわけでございますが、この後、大澤委員、堀委員、山崎委員、若杉委員、資料 4のように、それぞれメモ・意見が提出されておりますので、まずこれについてそれぞ れご説明を伺いたいと思いますが、メモがございますので、いつも申し訳ございません が、5分を超えない範囲ということで簡潔にご報告いただければありがたいと思います 。まず大澤委員からお願いいたします。 ○ 大澤委員  では、お手元のレジュメと資料が4枚付いております。簡潔にご説明したいと思いま す。「支え手を増やす方策」ということで、ここではちょっと回り道のようにも見える のですけれども、パートタイム労働者の均等待遇が生産と雇用を増やし、年金財政を支 えるという趣旨でございます。最初の方のところは皆さんご承知のことでありますけれ ども、不況の中でいわゆる非正規労働者というのが増加しております。特に女性では 2001年、正規の職員・従業員は52.2%ですから、非正規が半数に迫る。男性は依然とし て87〜88%が正規でございます。  この非正規の人たちの処遇というのは、多様な就業形態として持ち上げる議論もあり ますけれども、全般に恵まれない待遇でございます。非正規の大部分を占めるパートタ イム労働者の時間給は、フルタイム労働者の賃金を100 として、2000年に女性では66.9 、男性では51.2。この経年変化は次の表に示してあります。格差は縮小していなくてむ しろ拡大しているというところでございます。男性フルタイムに対して女性パートは44. 3にすぎないわけでございます。このような非正規の増加とその低賃金は年金財政にも大 きな影響を及ぼしているところであります。  このパートの賃金はなぜ低いのかということを考えてみますと、経済学の方には初歩 的なことでございますけれども、幾つかの仮説があります。しかし、どの仮説も十分な 説明にはなっていない。それから、パートと呼ばれていても限りなくフルタイムに近く 働く人もいますけれども、待遇は短時間のパートと大差ない場合が大部分でございます 。そこでパートと正社員の賃金格差には、働きに見合ったもの以上の「身分的な格差」 があることは否定できないと思われます。そこに不満を持つパート労働者は少なくない わけです。しかしながら、100 万円前後以下の働き方というふうに強く誘導している制 度があり、それは一つには税制の配偶者控除や配偶者特別控除でございますけれども、 厚生年金といいますか、基礎年金の第3号被保険者制度というのも100 万円前後以下の 働き方というところに強く誘導する傾きを持っておりまして、3枚目でございますけれ ども、パートタイム労働者の収入分布、90〜100 万円のところに突出して集中している ことがおわかりいただけます。その次のグラフは時給でございますけれども、900 〜999 円というこのあたりに集中している。このようなことについて制度は中立的なのではな くて、むしろ、このあたりの働き方に強く誘導する傾きを持っているというところが重 要な点かと思います。  このようなパートの働き方について、労働省、厚生労働省になりましてからも研究会 が数度設けられておりまして、正社員に対して、パートの処遇の「均衡」を図るように 提言してきました。ただ、先頃、7月19日にまとめられた「パートタイム労働研究会」 の最終報告は、処遇の格差是正に向けてガイドライン案も用意しましたが、労働側が求 めていた法制化については、経営側の反対で「時期を見て」と述べるにとどまっていま す。経営側のお考えというのは、不景気の中でパートの処遇を改善する余裕などないと いうことかと思われます。  そこでなんですけれども、大変タイミング良くといいますか、非常に重要なシミュレ ーション結果が三菱総研から発表されました。そのプレスリリースの最初のページが最 後のところに、下に5と手書きでページが振ってあるのがプレスリリースの最初のペー ジでございます。  仕事と責任が正社員と同様のパートの賃金を正社員100 に対して77.6まで引上げる( 現状は59.3)と正社員は相対的に“お買い得”な労働力となるおかげで雇用が増加する という結論です。格差をそのままにして、正社員の労働時間短縮もしないと、正社員は 今後5年間で48万人雇用が減少する。他方でパートは23万人増える。これに対して、正 社員の時間短縮とパート格差是正の両方を行うと5年間で正社員は71万人増加し、パー トは30万人増加する。  企業にとってはどうなのかといいますと、パートの賃上げは生産増でカバーできるた め、コスト増加の要因にはならないと結論しています。  簡単にまとめますと、正社員はきりもなく残業し、パートは責任がなくて楽だからと いってパートとの格差を放置すると、正社員自身の首が締まる。年金財政にもダメージ が及ぶ。パートの均等待遇は、正社員のためにも、企業のためにも、年金財政のために も“得”だということで、これは大変回り道を辿っているようではありますが、「支え 手」を増やす方策として重視されるべきではないかというのが趣旨でございます。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、次は堀委員からお願いいたします。 ○ 堀委員  私のペーパーは前回お出ししまして説明しましたので省略します。若干、加えました 2カ所について簡単に述べます。  2ページの一番上の「(3)支給開始年齢という考えの廃止」の最初のところですが 、在職老齢年金制度に関し適切な代替案は余りないということで、現行枠組みを維持し たらどうかということです。  2点目が、下の方の「(2)年金制度での対応」、次世代育成支援の二つ目の「・」 のところで、「年金制度での対応は、出産・育児のため年金に関し不利になっていると すれば、それを解決するのが基本」というのを加えました。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、簡単に今報告伺いましたが、また、後ほど議論 に参加していただければと思います。それでは、次、山崎委員お願いします。 ○ 山崎委員  「年金制度の基盤強化」ということでございますが、まず最初に適用の問題ですが、 前回、資料要求をしまして、事前に見せていただきましたが、雇用保険との比較ではは っきりしたことは確認できないように思いますが、公的年金加入状況等調査によれば、 1号被保険者のうち雇用者が369 万人いると。その一部が任意適用の事業所に働いてい るにしても、多くは厚生年金の適用漏れと見るべきではないかというふうに思います。  それからもう一つ、雇用者については、住民税が特別徴収されますから、市町村は実 は勤務先と収入を把握し得る状況にあります。したがって、市町村では、厚生年金・健 康保険の適用対象者である可能性がある場合でも、国民年金の1号被保険者・国民健康 保険として適用しているのではないかと思います。ただし、市町村がその事実を最終的 に確認できるのは、住民税との関係でございますから翌年になります。一方、所得税は 毎月源泉徴収しておりますから、国税庁は毎月確認し得る状況にあります。問題は相互 の連携がとれていないということだと思います。  今後の取組ですが、今日ご説明がありましたように、労働保険との適用・保険料徴収 の一元化を進めるというのは強力に推進していただきたい。  もう一つ、将来的に社会保障を受ける権利保障のための情報提供や社会保険の適用・ 保険料徴収等の行政効率の観点から、医療・年金・福祉、税も含めて制度横断的に利用 できる社会保障番号制度を導入すべきではないかというふうに考えております。  それから、未納者の問題ですが、悪質な滞納者については、少なくとも市町村国保が 行っている程度の滞納処分は行うべきだと思います。また、未納者については、個人年 金・生命保険の保険料控除の適用も除外すべきだというふうに思います。現状では、社 会連帯の義務を果たさない、社会連帯に背を向けた自助努力を結果的に奨励しているこ とになると思います。  次に「短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大」ですが、「女性と年金検討会」で は、年金財政の面から見る限りは長期的にはプラス要因とマイナス要因が相殺し合うと いうことなのですが、この点については、医療保険や税全体を見て判断すべきだという ふうに思います。明らかに医療保険や就労促進によって課税対象が広がれば財政はプラ スというふうに思います。  それから、適用拡大の根拠の一つとして、「産業間・企業間の公平な競争の確保」と いうことが挙げられていますが、現状でも適用漏れが相当ある。さらに新たな基準で適 用拡大をしたとしても、さらにそれを下回るところでの雇用を誘発する懸念がなくはな いということであります。したがって、事業主負担については、賃金の支払い総額を課 税標準とする、いわば賃金支払い税方式を採用し、雇用に対して中立的な負担方式にす べきではないかと思います。  次に「高齢者雇用」でございますが、在職老齢年金の効果というものが必ずしも明ら かでないというか、期待されたほどの効果が出てないということが出ておりますが、こ の間の雇用情勢を見ますと、それなりの役割を果たしてきたのではないかと私は思いま す。  さらに現行制度の下でも、来年から総報酬に切り替えが行われることによってかなり 財政効果は期待できるというふうに思います。  さらに今後、短時間労働者に対する適用拡大や事業主負担の、今申し上げた賃金支払 い税方式への切り替えを行えば、被用者年金の適用者を増やし、負担のすそ野を広げる 効果も期待できるというふうに思います。  それから、将来的な本格的な対応としては、働く側にインセンティブを持たせようと いう取組を今までしてきたわけですが、私はそれとともにといいますか、より決定的な のは、雇う側にインセンティブを与えるべきだというふうに思います。高齢者を雇用す ることの年金財政上の貢献に応じた事業主負担制、つまりメリット制の導入を提案した いと思います。  もう一方で、在職老齢年金制度そのものは廃止し、年齢要件だけで全額支給し、その 上で年金と給与に対して思い切った課税を行うという考え方もあると思います。  そのほか、実は労働サイドで雇用保険を使ったり、あるいは高年齢雇用継続給付によ って高齢者雇用に対する施策を行っているわけですが、全体として取組む、そういう視 点も必要だという気がします。  最後に「次世代育成支援」ですが、年金でどう関わるかという前に、総合的なプラン があって、その中で年金としてどのような関わり方をするのが適切かという議論をすべ きではないかと思います。ただ、その場合の視点としては、親の所得、職業、就業形態 等に関わりなく、子どもに着目した普遍的な支援というものを基本に置くべきだという ふうに思います。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、若杉委員、該当部分についてとりあえずお願い いたします。 ○ 若杉委員  今まで発言してきたことなんですけれども、一応まとめる形でメモをつくりました。 読んだ方が早く済むと思いますので、読ませていただきます。  まず1が、「公的年金制度に関する基本的な考え方」ですけれども、現在の公的年金 制度は、いわば貧しい資本主義の時代の発想に基づくものである。つまり、人々は、現 在よりはるかに短い寿命の下で、肉体労働など厳しい労働を行っており、「一定の年齢 になったら労働から解放され余生を楽しみたい」という考え方に基づいている。また、 一家では夫が家族のために働き妻が家庭を守るという「家計」単位というか「夫婦」単 位のそれが中心の経済社会だったわけです。しかし現在は、それから何十年かたって豊 かな資本主義社会になっているわけでして、労働も知的な部分が大きくなりまして、労 働の負担もずっと小さくなってきているわけです。そういう中で、できるものならば、 一生働いて社会と関わりを持っていきたいという人も増えているわけです。また、経済 の単位も個人単位の家計が増えている、そういう現状があるわけです。  また、仕事はやめても退職後、ボランティア活動などを通じて社会と関わり合いを持 っていきたい人も増えているわけです。また、別の面から見ますと、大きなこういう社 会の変化の中でビジネスチャンスをつかんで大きな所得を得ている人もたくさんいるわ けでして、そういう人たちは社会へのお礼というかお返しとして寄附等をしたいという 人たちも多くなっているわけです。だけど、我が国の税制は寄附は脱税というか、「逃 税」と書きましたけど、税逃れだと、そういうような認識が基本的にありまして、寄附 がしづらくなっていると、そういうことだと思うんです。その結果、ボランティア活動 などが非常に遅れているのだと思うんですね。だけど、これからは寄附とかボランティ ア活動などを活用すべきではないか。年金を始めとする社会保障にもっと活用すべきで はないかと私は考えております。豊かな自由主義の社会では、このような自発的な資金 の拠出や好意の方が、制度、強制的な制度に依存するよりもはるかにシステムとして強 くて安定的ではないかということです。  そういうことを考えますと、公的年金制度は、現在の多様なニーズや貢献を、貢献と いうのはいろんな働き手がいるということですが、それを考慮に入れて抜本的な改革の 是非を検討する必要があるのではないか。これまで世の中の変化に対して大きな枠組み は変えずに部分的に対処してきたわけです。それはそれなりに必要なことであったが、 世の中の変化は非常に大きく、部分的な対応では制度が複雑になるばかりであり、制度 内での整合性を脅かしている。これらのことが国民の年金に対する理解を難しくし、公 的年金離れを促している面があるのではないかということです。  ですから、家族単位でもって、そして60歳とか65歳になったら早くやめてのんびりし たいという、そういうようなモデルなのですが、そういうようなモデルですべてのケー スに適応しようとしているのが今の状況だと思うんですね。例えば、先ほど大澤委員が 指摘されたような問題も起こってくるんだと思うんです。ですから初めからもっと多様 なバリエーションに応えられるような、そういうシステムを今から検討し始めてなけれ ばいけないのではないか、そういう問題提起でございます。  それから、その次のページに行きまして、「支え手を増やす取組み」ということなん ですけれども、公的年金の本質は賦課方式にせよ積立方式にせよ、国民が自ら原資を拠 出して将来の所得を確保するものである。株主が拠出をして従業員が給付を享受する年 金とは本質的に異なる。ごめんなさい。従業員が給付を享受する企業年金とは本質的に 異なるという意味です。  「雇用と年金に関する研究会」は、「支え手の拡大」という発想で検討されているが 、その趣旨は、労働形態、家計の形態が多様化した現在、これまでの制度ではカバーさ れない人々をいかにして年金制度の恩恵に浴せるようにするかというところにあると理 解できる。そういう点で、私は検討内容自体は全然問題ないと考えています。  しかし、「支え手」というと、「支えられる人」がいるという印象を与えるわけです 。公的年金の財政逼迫が問題とされている現在、「支え手を増やす」と表現すると、い かにも「支えられる人」つまり受給者が困っているので、原資の提供者として「支え手 」を拡大するという考え方と受け取られるおそれがあるのではないかということです。 多くの人がこのように受けとめると、上記の研究会が押し進めようとしている制度の拡 大、これをむしろ阻害するおそれがあるのではないかということです。  繰り返しになりますけれども、上記研究会の基本的な考え方は、「制度への加入を可 能にし年金制度の恩恵に浴する人を増やす」ということですから、「支え手」とは、そ こでは、加入者、受益者と理解することも可能なわけですけれども、ここで言う支え手 は、「制度の支え手」という意味になるわけですけれども、公的年金制度自体は、基本 的には自らが、自らを支える制度ですから、加入者を増やすこと自体は、長期的には年 金制度の財政安定にとってもプラスにもマイナスにもならないというわけです。そうい うことで、「支え手」という呼び方は適切ではないのではないかというのが私の基本的 な考え方です。  ちょっと言葉じりをとらえているかと思われるかもしれませんが、そうではないわけ でして、私が問題にしているのは、「支え手」という言い方だけで、国民年金に間違っ た印象を与えるのではないか。今の年金制度改革がいかにも財政逼迫に対応する、そう いう改革だけのように受け取られるという、そういうマイナスのイメージがあるのでは ないかということで、表現の問題ではありますけれども、少し変えた方がいいのではな いかというのが私の意見でございます。  繰り返しになりますけれども、「雇用と年金に関する研究会」での内容自体に反対し ているわけではありません。その点、ご理解いただきたいと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。若杉委員、2番目のところは、後で。 ○ 若杉委員  はい、後で発言させていただきます。 ○ 宮島部会長  それでは、今4名の委員の方からペーパーのご説明いただきまして、支え手の話、国 民年金の徴収の話、その他、若干論点が広がっておりますが、今のご説明、先ほどの事 務局の資料説明等に関しまして、ご意見なりご質問なりがあれば15分ほどお時間をとり たいと思います。 ○ 神代部会長代理  質問ですが、事務局の説明の資料1の、フランスの制度の説明がありましたが、子ど も1人当たり2年、基礎年金の加入期間を加算と。これは子どもが途中で死んだ場合は どうするんですか。生まれてすぐ死ぬとか、2年ぐらいたってから死んだとか、いろん なこと起こりますよね。生まれた子どもが途中で死亡した場合の扱いを知りたい。  それから、4ページのドイツの介護保険の場合なんですが、これも再婚する場合、3 回する人もいると思うけれども、再婚して女性の方が、自分は子どもを産んでないとい うことがありますね。亭主の方は子ども持っているけれども、再婚した奥さんは自分の 子どもはいないという場合。その奥さんがずっと働いている場合ありますね。そういう ふうな場合はどういうことになるのか。今すぐわからなければ、後で調べていただけま すか。  それと堀先生のコメントですが、堀先生のご意見は、前回に在老年金の繰延べができ るという制度を一応提案していますが、それは余り賛成でないというご意見ですね。 ○ 堀委員  はい。 ○ 神代部会長代理  そうですか。 ○ 宮島部会長  まず事務局の方から何かございますか。 ○ 坂本数理課長  神代先生のご質問は、フランスの制度でどうなっているかということですか。 ○ 神代部会長代理  子どもの方は。 ○ 坂本数理課長  フランスの制度におきましては、女性の被保険者が16歳になるまでの間に少なくとも 9年間養育したという実績がある場合に、子1人につき2年間加入期間が加算されると 、そういう制度になっております。したがいまして、子どもが非常に早く亡くなったと いう場合は、9年間の実績にならないと考えられますので、推測いたしますに、恐らく その場合には加算がないだろうと考えられると思っております。 ○ 木倉年金課長  後の方のご質問の介護保険の方では、今は差をつけておりませんものですから、ご趣 旨は、年金の方で、今のドイツの方ですが、すみません、それは確認をさせていただき たいと思います。 ○ 神代部会長代理  はい。 ○ 矢野委員  督促と滞納処分の実情、ご説明でよくわかりましたが、今後はどうする考えであるの か。督促や滞納処分をしないのか、もっと強化してやることをお考えなのか、その考え 方を伺いたいと思います。 ○ 宮島部会長  関連でございますか、渡辺委員。 ○ 渡辺委員  今、国民年金の強制徴収の件については、私の個人的な考えは、基本的に確実な罰則 といいましょうか、やるべきであると思います。一つは、ちゃんと国民年金法96条に規 定されている、することができるという規定であっても、それを事実上ほとんど発動し てない。先ほどのご説明のとおり、昭和63年までに何件かあったのですが、少なくとも 私の記憶ではほとんどこれは世間に対して発表してないですね。明確に発表してない。 ですから、あたかもこっそりとこういった処分をやったというような印象を私は持って おります。  これは確かに今お話があったように、やっても効果ないということは確かに私も当時 いろいろ取材して知っておりますけれども、そのこと以上に、ご本人に対する以上に社 会的にこうしたことを毅然としてやるということの意味は大きいと思います。やはり法 律に定まっている以上、これを全くほとんど発動しないのはおかしいので、もしどうし てもやらないなら法律を変えるべきだし、やるならやるで明確に発表するということを すべきだと思います。  もう一点、関連して言いますと、先ほどのご説明にも、小・中学校での教育といった 問題ありました。これは相当前から社会保険庁もなさっていますし、小・中学校の生徒 及び教師についてなさっていますが、私自身もそういったセミナーに何度か出たことが あるのですが、逆に教師の方が迷っているわけですね。つまり生徒に対して保険料徴収 を義務と教えるのか、あるいは給付に結びつくから払いなさいと教えるのか、あるいは 国が言っているみたいに世代間扶養が大事だから払いなさいと教えるのかと、非常に迷 っているわけですね。現実問題として、社会保険庁あるいは国の方も、あるときは世代 間扶養と言い、あるときは給付があるから保険料を払いなさいと言いと。しかし、一方 で、この法律に見られるように義務規定とも読み取れるわけですね。ですからある意味 では教師もそうだけれども、国民の方も迷っているところがある。  そういったところを先ほどの強制処分とからめて、ある程度保険料納付というのは一 体何なのだろうかといったことを明確にすることをあわせてお願いしたいと思います。 以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。矢野委員、渡辺委員から、今、保険料の徴収のことについ てご質問ございましたが、どうぞ。 ○ 渡邉社会保険庁年金保険課長  ご質問の今後の強制執行に対する考え方ということでございますけれども、説明をい たしておりますように、14年度から初めて国が一元的に徴収業務を行うという整理にな りまして、資料の18ページで言っておりますように、まず文書でもって催告状を年6回 出しますよと。それから、電話あるいは訪問によって個別に滞納者に対して折衝を重ね て、それで制度の理解を求めるということを今繰り返し実施をしております。  この結果を踏まえまして、今後さらなる対策を検討するということになろうと思いま すが、その際の対策の一つとして強制徴収についても検討するということにしておりま す。 それから、学校教育の関係につきましてご質問がありましたけれども、今、中学 校、高校生に対して年金について、先生を始めとして生徒にも説明しているのですが、 今はいわゆる年金を支払うというのが義務であるということを前提として教えておると いうことを基本としております。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  これはまだ総括的な論議も恐らく出てくることになると思いますが、どうぞ、堀委員 。 ○ 堀委員  先ほどの神代委員のご質問ですが、そもそも在職老齢年金というのは、60代になると 賃金が低くなって暮らせないから年金を支給しようというものです。したがって、働い て生活できるのなら年金は支給する必要はない。在職老齢年金を繰り下げて受給すると いうのは、年金がなくても給料で暮らせるということですね。給料だけで暮らせるなら 、わざわざ在老を支給する必要はない。在職老齢年金の繰下げ受給を認めて、増額して 支給する必要はないのではないかということです。 ○ 神代部会長代理  要するに公的年金が一応老齢年金という建前ですよね。退職年金ではなくて老齢年金 なのだろうと思いますが、ただ、寿命の延びが非常に急激に過去30年ぐらいの間に発生 したために、制度のずれが起きて段階的に65歳に支給開始年齢を繰り延べる、その経過 期間で発生している問題なわけですよね。ですから、一応60歳で支給開始というのをも ともと決めていた制度があって、それを変更していくプロセスで生じていることですか ら、そう簡単に割り切れないので一種の折衷案が出てきたのだろうと私は理解している んです。理論的に純粋に割り切れば、おっしゃるとおりにもなると思いますが、ちょっ と実際の政策としてはいかがかなという気が依然として残るんですけれど、おっしゃる ことはよくわかります。 ○ 宮島部会長  これはまさに老齢年金の対象ということで、やや、基本にひっかかる。これは総括的 な討論のところで持っていっていただきたいと思います。ほかに、大澤委員。 ○ 大澤委員  先ほどの神代委員のご質問と重なるのですけれども、フランスでとられている育児配 慮、それからドイツの介護保険制度の中での子の養育に関する配慮なんですけれども、 重なる質問なのですが、フランスの場合には、結局給付のところでやるわけですから、 産んだ子どもが無事に成長して税や社会保険料の払い手になるかどうかまで見届けてか ら給付のところでというふうにできるんですけれども、保険料のところで調整するとな ると、さらに問題は大きくなると思います。  それで、離婚をして、例えば男性の方が養育費を払わなかった場合はどうするのかと か、それから、子どもは無事成長したが、フリーターかなんかになってしまって、税金 も社会保険料も払わないかもしれない。外国に行ってしまうかもしれない。そういうと きに、あらかじめ保険料で調整していた分というのは一体どうするのかという問題をど のように解決しているのか、あるいはしようとしているのか。これは細かいことですか ら、今データがないかもしれませんけれども、ゆくゆく教えていただければ大変ありが たいと思います。 ○ 宮島部会長  ちょっと今すぐは難しいでしょうから、また、少しその辺のところは。ほかにござい ますでしょうか。 ○ 井手委員  徴収の問題に戻って恐縮なんですけれども、先ほど既に催告状を6回送るとか、電話 督促、戸別訪問については、現実になさっていて、その結果を踏まえて、第二段階に進 むかどうかというお話がございましたが、私、電話督促業務のようなものを仕事でやっ ていたこともございまして、非常にこの効果というものが大変難しいというのを実感し ておりまして、電話料金とか電気・ガスでしたらとめられて困るということでお支払い いただけると思うんですが、先ほど教育のお話もございましたけれども、何年後かの云 々ということで、非常にすばらしいテレコミニケーターがお話ししたとしても、なかな か先ほどのうっかりしていたとか、まとめて払おうと思ったという方が5%ぐらいはい らしたわけですけれども、かなり確信犯的にお支払いいただけないという方に対しての 、どこまでコストをかけるという問題もあろうかと思うんですね。電話督促だけでも、 自動ダイヤル装置だとかいろいろ使ったとしても結構コストはかかってしまいますし、 これに戸別訪問ということになりますと、この第一段階でどこまでコストをかけて効果 を望むのかというあたり、そのコストも非常に大きな問題と思うんですが、そのあたり 、現実既に第一段階はやられているということでございますけれども、効果としてどの ように評価されているのかというあたりを教えていただけたらと思うのですが。 ○ 渡邉社会保険庁年金保険課長  現実的には、全国一斉に納付の取組につきましては、14年、今年の4月から実はスタ ートしております。その前の年までは、現年度が市町村で徴収をし、過年度、要は翌年 以降、社会保険事務所に引き継ぐということになっておりました。この4月から一元的 に国が国民年金の保険料を徴収するということに変わりまして、今、この対策を進めて いるところでございます。  現実的には現在行ったその結果が出ているわけではないのですが、各県からの話を聞 きますと、いわゆる納付約束等も含めて、対策の一つとしては相当効果が出ているとい うふうなお話も来ております。  それから、費用対効果でございますけれども、この14年から保険料の収納業務という のは国に移管をして、その国としての対策費、これが事務費としては350 億ぐらいの対 策費で増加をしたわけでございますが、一方で今まで市町村で行っていた事務費という のが、570 億ぐらいが減になったということから、全体としては200 億強が現実的には 減ということになっております。  これらの対策について効果というのは、この14年度の結果を見ないと最終的な結論は ちょっと言えないと思いますが、そういうことで、今積極的に個人に当たるという手法 で収納対策について進めております。以上でございます。 ○ 宮島部会長  井手委員のご質問はもっともですので、今後、今年度の様子を見ながら、その経緯と 見通し、実績などを報告してほしいと思います。  あと杉山委員がございまして、杉山委員で一応この初めのテーマを閉じさせていただ きます。どうぞ、杉山委員。 ○ 杉山委員  国民年金の徴収のことなんですけれども、毅然とした態度でというのはよくわかるん ですけれども、例えば私は第1号で年金を払っているわけですけれども、資料3−1に もありますように、第3号の問題というのがどうしてもそこでちょっとひっかかってく る。13,300 円を納めて基礎年金を受けるというものと、第3号という、全体的に見た場 合に、それは何らおかしくないよというふうに言われたとしても、国民の中ではそうい った感情というのはどうしても不公平感として残る部分というのは必ずあるのではない かというふうに思っております。やはり毅然とした態度で臨む前に、不公平感をどのよ うにぬぐっていくかという努力をしてから、それを先ほど渡辺委員もおっしゃられたよ うに、広く理解を求める、教育であったり、情報の伝達の手段であったりということを して、それで、それでもだめなら毅然とした態度というふうに、ちょっと段階を経てい くということも必要ではないのかなというふうに思っております。  以上です。 ○ 宮島部会長  わかりました。それももっともな意見でございます。今、前半部分に当たりますが、 特に「支え手を増やす取組み」に関する議論は、これはかなり全体として大きな議論に 関わることでございますので、いろいろ総括的なところで改めて議論をさせていただき たいと思います。  それから、年金徴収の話は、先ほど言いましたように、仕組みが14年度から若干変わ っているようでありますので、その実効性というのも見る必要がありますし、今のご意 見のように、確かに法律があるから、その点きちんとやるというのはそのとおりであり ますけれども、制度なり徴収の仕方とかそういうところにまた問題があるということで あれば、それもあわせて検討することも当然でございますので、それは改めて総括的な ところで全体の討議の一つの問題点にしたいと考えております。  それでは、「支え手を増やす仕組み」、「国民年金徴収」に関する議題は、今日はこ れで終わりにいたしまして、今から4〜5分休憩をとりまして、この後、「年金積立金 」の議題に入りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。なるべく早くお戻り いただければと思います。                   (休憩)                   (再開) ○ 宮島部会長  再開したいと思います。  それでは、議題の2にこれから移りまして、「年金積立金のあり方」ということで、 これから事務局からの資料説明及び委員からの意見提出、そして討論ということで、お よそ12時を目途にこの議題は一たん打ち切らせていただきたいと思いますので、ご協力 お願いいたします。それでは、事務局から資料の説明をまずお願いいします。 ○ 坂本数理課長  それでは、お手元の資料2−1及び2−2に沿いましてご説明させていただきたいと 思います。平成11年の財政再計算におきましては、積立金を保有するという財政計画と なっておるわけでございますが、この点について様々な議論が寄せられておるところで ございますので、もう一度この議論を整理するという趣旨で資料をまとめてございます 。2−1の方の1枚をおめくりいただきまして、1ページでございます。  まず第1番目に「平成11年の財政再計算における考え方」というのをまとめさせてい ただきました。(1)基本的な考え方といたしましては、1番目の「○」にございます ように、平成11年の財政再計算における財政方式は、賦課方式を基本としつつも、世代 間の負担の均衡を考慮し、一定の年金積立金を保有して運用収入を活用することにより 、将来の保険料を軽減し、将来世代の過大な負担を避けることとしていると、こういう 考え方で財政計画を立てておるところでございます。  その計画は平成36(2024)年度までに最終保険料となるように段階的に引上げていき まして、最終保険料につきましては、一定の保険料で将来にわたり収支が均衡するよう に設定しておるところでございます。  その結果、年金積立金は将来にわたり保有し続ける計画となっておりまして、その運 用収入を活用することにより、厚生年金において、高齢化のピーク時に年収ベースで41 /2 %程度、高齢化のピークを超えた後も将来にわたり11/2 %程度保険料率を軽減する ことができるという見通しになっておるところでございます。  これは資料2−2(参考資料)の1ページ、2ページに厚生年金の財政再計算の結果 をまとめてございます。これはご説明を省略させていただきます。  もう一度、資料2−1に戻っていただきまして、今、平成11年の財政再計算の財政計 画を見ていただいたわけでございますが、「※」にございますように、高齢化のピーク 時には保険料水準を一定水準で維持できるように元本の一部を取り崩して年金給付に充 てる計画となっております。  このような財政計画になっておるわけでございますが、そこから言えますことは、次 の(2)の年金積立金と運用収入の役割が非常に大きいということでございます。  まず、1つ目の「○」にありますように、年金積立金の役割は、その運用収入を年金 給付に充てることにより保険料を軽減することにある。従いまして、運用収入が予定よ り少なくなれば、例えば運用利回りが長期にわたり低くなった場合とか、何らかの理由 で積立金の規模が小さくなったという場合には運用収入が予定より少なくなるわけです けれども、その場合には保険料軽減の効果が縮小いたしまして、保険料を予定以上に引 上げなければならないという事態が生じるわけでございます。  次の2ページでございますが、逆に運用収入が予定より多くなれば、保険料軽減の効 果が大きくなりまして、保険料を予定ほど引上げる必要はなくなる、こういう性格を持 っているということが言えるわけでございます。  この際に注意しておくべきことがございます。(3)でございますが、この場合の運 用収入につきましては、実質的な運用収入があることが必要であるということが重要な 点でございまして、第1番目の「○」にございますように、公的年金制度は、長期的に は名目賃金上昇率により年金水準が改定される仕組みであると。いわゆるスライド措置 が講じられておるわけですが、そのような仕組みでございますので、名目運用利回りが 低下しても、名目運用利回りのうちの名目賃金上昇率を上回る部分、すなわち実質運用 利回りが想定どおりの水準で確保できている限り、保険料水準には影響を与えない。例 えば平成11年の財政再計算におきましては、予定利回り4%、賃金上昇率2.5 %という 前提を置いたわけでございますので、その差の1.5 %の実質運用利回りが確保されてお りましたら保険料水準には影響を与えないということでございます。したがいまして、 年金財政の観点からいたしますと、運用面で名目賃金上昇率を上回る実質的な運用収入 をどの程度確保するかが重要になるということでございます。  なお、長期的に名目賃金上昇率を上回る運用収入を確保することを見込まない場合は 、名目賃金上昇率で年金水準が改定される中で、年金積立金の実質価値が目減りしてい くため、年金積立金から得られる運用収入を用いて保険料軽減を続ける財政計画を立て ることはできなくなるということでございます。  以上が平成11年の財政再計算のまとめでございまして、次に1ページおめくりいただ きまして3ページでございますが、「年金積立金を将来にわたり保有する計画を見直し 、取り崩して年金給付に充てることにより、保険料の上昇を抑えるという考え方」がし ばしば言われるところですが、これについて基本的な認識を確かめておきたいと思いま す。  まず(1)年金財政の基本的な構造ということで、年金積立金を将来にわたり保有す る計画を見直しまして、仮に、使い切るとした計画をする場合には、年金積立金を取り 崩した分を年金給付に充てることにより、当面の保険料の上昇を抑えることは可能であ るということは言えるわけでございます。  次の「○」でございますが、しかしながら、年金積立金を使い切った後は、年金積立 金による保険料軽減の効果がなくなり、賦課保険料を徴収する必要が出てまいります。 そして、より高水準の保険料の徴収が必要となるということでございます。  これを具体的に見ていきますために、平成11年の財政再計算をもとにいたしまして、 そこから、仮に、一定期間で年金積立金を使い切るとした場合の保険料率の試算を行っ てみました。これが(2)でございますが、参考資料の資料2−2の3ページを見てい ただきたいと思いますが、ここにグラフがございます。これは積立金を2040年度までに 使い切るとした場合に保険料がどういう見通しになるかということを示したものでござ います。この太線の実線で示されたものがそのときの保険料の見通しでございます。こ れによりますと、例えば2020年あるいは2030年ぐらいにおきましては、保険料率を16.1 %という水準に据え置くことができるわけでございます。これは平成11年の財政再計算 結果の19.8%と比べますと3.7 %保険料率を軽減しているということになるわけでござ いまして、2040年度までに使い切るといたしますと、平成11年の財政再計算の計画より も3.7 %保険料率を軽減することができるということが言えるわけですが、ところが 2040年のところを見ていただきますと、2040年では積立金を使い切っておりますので、 ここでは一挙に賦課保険料率を徴収する必要があると。その賦課保険料率は23.7%とい う水準でございまして、一気に7.6 %のジャンプをしてその保険料を徴収する必要が出 てまいります。  さらに、その後も毎年保険料を引上げていかないといけないと。24%の半ばぐらいま で保険料を引上げていくことになるわけでございます。それ以降賦課保険料を取ってい くと、そのような見通しになるわけでございます。  なお、今般新しい人口推計が公表されたところですが、その人口推計の中位推計とい いますのは、大体前回の低位推計の前提と似たところがございます。前回の低位推計の 場合の賦課方式の保険料率を示しましたのが細い点線の部分でございます。もし、その ような状態になるといたしますと、さらに細い点線で示された保険料率まで引上げない といけない、そのような結果になります。  それから、同じ資料を1枚めくっていただきまして、次の4ページでございますが、 ここでは、今度は2060年度までに年金積立金を使い切るとした場合にどうなるか。先ほ どの資料は、高齢化のピークと目されます2050年よりも前に積立金を使い切った場合で ございますが、今度は高齢化のピークを乗り切った後に積立金を使い切るとした場合に はどうなるかという試算結果でございます。この場合には、2020年度以降、保険料率を 18.5%に据え置くことができるという試算結果でございます。2060年度にちょうど積立 金がゼロになる。そうしますと、2020年度〜2060年度までの間は、平成11年の財政再計 算結果でございます19.8%よりも1.3 %保険料率を軽減することができる。しかしなが ら、2060年度におきましては、一気に3.8 %さらに引上げないといけない。18.5%とい うかなり高い水準からさらに3.8 %を引上げないといけない。22.3%まで引上げないと いけないという、そのような見通しになるところでございます。  また、先ほども引用いたしました古い人口推計の低位推計を前提とした場合の賦課方 式による保険料率のグラフが細い点線で示されておりますが、もしこのような少子高齢 化がさらに進展いたしますと、さらにここまで保険料率を引上げないといけない、その ような見通しになるところでございます。  もう一度、資料2−1の3ページにお戻りいただきますと、試算結果をまとめてござ いますが、恐れ入りますが1枚めくっていただきまして4ページ、ここに今グラフで説 明申し上げました結果がまとめてございますが、ここの部分は省略させていただきます 。  これらの点を含めまして、資料の5ページでございますが、一番上の「○」にござい ますように、新人口推計は、平成11年の財政再計算の前提とした旧人口推計よりさらに 少子高齢化が進む前提となっているため、将来の賦課保険料率は、さらに大きく上昇す る見込みであり、年金積立金を使い切ったときの保険料率の引上げ幅もさらに大きくな る見込みであるということでございまして、先ほど参考資料の方で細い点線で示された 旧低位推計の高いグラフのあたりにジャンプしていかざるを得ないということが見込ま れるところでございます。  これらの認識をもとにいたしまして、論点の例としてまとめさせていただきましたの が5ページの「3.論点(例)」というところでございます。  まず(1)として、高齢化のピークを超える前に年金積立金を使い切ることをどう考 えるかということでございます。これは2040年までに使い切るというケースで例示させ ていただきましたが、この場合、高齢化のピーク時(2040〜2060年度頃)におきまして 年金積立金による保険料軽減の効果が受けられなくなるということを見たわけでござい ます。その結果、ピーク時に向けて賦課保険料が急激に上昇する影響を全く緩和できな くなるということになるわけでございますので、少なくとも高齢化のピークを超えるま では年金積立金を保有し、年金積立金により保険料を軽減する財政方式をとるべきはな いかということが考えられるところでございます。  次に(2)でございますが、高齢化のピークを超えた後に年金積立金を使い切ること をどう考えるかということで、これは2060年度までに積立金を使い切るとした場合の試 算で示させていただいたところでございます。この場合につきましては、第1番目の「 ○」にございますように、平成11年の財政再計算においては、将来にわたり年金積立金 を保有し続けて保険料軽減を図るという財政方式をとったところでございますけれども 、公的年金の財政は基本的に賦課方式をとっておりますことから、高齢化のピークを過 ぎた後は、年金積立金は支払準備金程度として、基本的に保有すべきでないという考え 方も一方であるところでございます。  1ページおめくりいただきまして6ページでございますが、次の「○」ですが、しか しながら、次のような基本的な問題があって、年金積立金を使い切るような財政方式を とるかどうかについては慎重に検討すべきではないかという論点がございます。  まず第1番目の「・」でございますけれども、少子高齢化が著しく進行する中で、年 金積立金を保有し、その運用収入を活用することにより将来世代の過大な保険料負担の 軽減を図るという基本的な考え方を放棄してよいのかどうかという論点でございます。  もう一つは、当面の保険料の上昇を抑制する代わりに、積立金を使い切った後の保険 料水準を急激に引上げなければならないという事態が見えるわけでございますが、その 場合、負担の上昇の先送りとなりまして、年金への不安不信が払拭できないのではない かという論点が考えられるところでございます。  また(3)でございますが、そのほかの論点といたしましては、高齢化のピークを超 えた2060年度以降の被保険者の多くは、未だ生まれていない世代でございまして、賦課 保険料の水準は、今後の少子化の進展により、不確定な要素が多いということについて どのように考えるかということでございます。  この「※」にございますように、先ほども申し上げましたように、新人口推計におき ましては、前回の再計算の前提よりも、さらに少子高齢化が進む前提となっております 。したがいまして、将来の賦課保険料率はさらに上昇する見込みとなっておるところで ございます。  それから、最後の論点でございますが、諸外国においても、ある程度の年金積立金を 将来において保有する財政計画としている国があることの意味についてどのように考え るかということもあるわけでございます。  最後のページ、7ページでございますが、スウェーデンにおきましては、現在給付費 の4年分程度の積立金を保有しておりまして、将来におきましても標準的なケースで2 〜3年分を保有することとなる見通しでございます。  また、アメリカにおきましては、75年後においても給付費の1年分の年金積立金を保 有するために必要な保険料を算定いたしまして、それをもとに毎年財政検証を実施して いるというところでございます。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  それでは、次の資料お願いいたします。 ○ 石塚資金管理課長  資金管理課長でございます。資料2−3に基づきまして、いわゆる年金還元融資の概 要について簡単にご報告申し上げます。  1ページは、平成13年の4月に年金資金運用基金がスタートしたわけですけれども、 従前の年金福祉事業団で行っていた各種事業がどのような取扱いになったかという総括 的な図でございます。真ん中にありますように、医療施設あるいは福祉施設への融資、 年金受給者への年金担保融資につきましては、社会福祉・医療事業団において実施する ということで、いわば恒久的に事業主体を替えて実施するという取扱いになっておりま す。  それ以外の年金住宅融資等につきましては、年金資金運用基金で経過的に実施した上 で、一定年限経過後に廃止するという取扱いになっております。  2ページが今後の経過的事業についての取扱いについての閣議決定文書でございます 。平成13年12月19日に、特殊法人等の整理合理化計画を決定しております。  その中で年金資金運用基金の大規模年金保養基地、いわゆるグリーンピアにつきまし ては、17年度までに廃止すると。特に自己資金で運営費さえも賄えない、いわゆる赤字 施設についてはできるだけ早期に廃止するという取扱いになっております。  また、年金加入者の住宅等の融資業務については、住宅融資を民間に委ねる等の観点 から、これも17年度までに廃止するということになっております。  一方で、年金政策上の被保険者還元融資の在り方については、次期財政再計算時まで に検討して決定するという全体的な閣議決定がなされております。  3ページ以降は、各個別の融資業務等の概要でございますので、説明を省略させてい ただきたいと思いますが、最後の6ページに、大規模年金保養基地のグリーンピアの運 営停止なり、譲渡の状況を掲げさせております。ここにありますように、既に中央高原 基地、指宿基地、二本松基地等については、既に運営を停止いたしており、地元自治体 等への譲渡の手続を現在進めているところでございます。  また、一番下の2つ目の「○」の横浪基地につきましては、一部分について、12年8 月ですけれども、学校法人の明徳義塾へ売却したということで、譲渡の手続も一部でご ざいますけれども、進めておると。今後このような動きを加速させていきたいと、この ような状況でございます。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、最後の資料につきましてお願いたします。 ○ 泉運用指導課長  お手元の右肩に参考資料3とございます、資料の一番後ろにあるかと思いますが、「 年金資金運用基金の資金運用の結果について」という資料をご覧いただきたいと思いま す。これは昨年度の運用基金の結果について、本年7月末に公表させていただいて資料 でございます。数字がたくさんございますが、数字の前に仕組みについて一番後ろ6ペ ージをご覧いただければと思います。  「従来の仕組み」とございますが、平成12年度までは積立金は全額、旧大蔵省の資金 運用部に預託するということが義務づけられておりました。預託して預託金利をいただ くということだったわけですが、その中から一部年金福祉事業団が借り入れてきて市場 で運用するということをやっておりました。借入れでございますので、いずれ償還し、 その間、利払いを行うと、こういう仕組みで12年度まであったわけでございますが、財 投制度の抜本的な改革がございまして、平成13年度から上の方の、これまでと全く違う 仕組みになったわけでございます。  その新しい仕組みでございますが、保険者である厚生労働大臣が自主運用するという ことで、資金運用部への預託というのは廃止されたわけでございます。  そして、年金福祉事業団も廃止されまして、新たに年金資金運用基金という組織がで きました。厚生労働大臣から積立金を運用基金に寄託して運用基金が運用すると、こう いう仕組みになったわけでございます。  しかしながら、一気になくなったわけではなくて、点線の部分というのが残っており ます。といいますのは、旧資金運用部への預託でございますが、これは順次、償還され てまいりますので、全部償還されるまでに平成20年度までかかるということがございま す。  それから旧年金福祉事業団で運用していた資産がございますが、これを年金資金運用 基金が引き継いで厚生労働大臣から寄託された積立金とあわせて運用するということに なっておりますので、この引き継いだ部分については、斜めの点線ですが、借入金とし て利払いを行っていく、いずれ償還するということが必要だという、このようなやや複 雑な仕組みで13年度から動いているということでございます。これは経過的なものでご ざいまして、いずれ直線、実線のところだけになるわけでございますが、こういう構造 にあるわけでございます。  そこで数字の方でございますが、これも図でご覧いただいた方がよろしいかと思うの で、3ページをご覧いただきたいと思います。3ページの真ん中の小さな黒く塗った四 角が厚生労働大臣から運用基金に寄託した部分でございまして、13年度17兆円でござい ます。  それから、その右の白い四角でございますが、そこが事業団から承継した資産23兆円 でございます。これをあわせて運用基金で運用をいたしております。その運用の結果で ございますが、真ん中にありますように、13年度運用損失6,200 億円というような結果 となっております。  資産は国内債券、国内株式、外国債券、外国株式、短期資産、五つの資産にポートフ ォリオを組んで運用しておりますが、国内株式の大幅な下落というのの影響が一番強く ございまして、このような結果になったわけでございます。  それに借入利息を承継資産については払わなければいけません。その部分を合計いた しますと、13年度の損失合計が1兆3,100 億円というような結果となったわけでござい ます。  一方で、左側の大きな黒く塗った四角でございますが、財政融資資金への預託分とい うのがまだ比率としては非常に大きい部分がございます。また預託金利が過去の分でご ざいますので、比較的高い金利のものがございますので、そちらの方からの利子収入と いうのが4兆900 億円ほどというような形になっております。  これで積立金全体の運用結果をどう見ればいいかということでございますが、1ペー ジに戻っていただいた2ページの下、4というところにまとめのような形で書いてござ います。今、ご覧いただきましたように、基金運用部分の損益は△1兆3,100 億でござ いましたが、財政融資資金への預託金の運用収益が4兆900 億、これを合わせますと、 2兆7,800 億、1.94%のプラスというのが結果でございました。  先ほど説明ありましたように、これをどう評価するかといいますと、賃金上昇率をど れだけ上回ったかという観点で実質利回りを見る必要がございます。それがその下の四 角で書いてございますように、実質利回りは2.22%、財政再計算で予定したものに対し て1.24%上回っているというような結果となったというのが13年度の結果でございます 。  以上、申し上げた数字などを1ページの上の四角のところでいろいろ書いてございま すが、そこの部分がいわばまとめのようなことになっているということでございます。  簡単でございますが、説明は以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。年金積立金は本質論からかなり幅広い問題を実は含んでお りまして、今日特別に取り上げたわけであります。この後、委員から出ております意見 につきまして、先ほど若杉委員に中途半端でお願いいたしましたので、若杉委員、翁委 員、近藤委員、堀委員の順で、ご意見を簡潔にご紹介いただきたい。お願いいたします 。 ○ 若杉委員  それでは、私の意見は、先ほど見ていただいた10ページの2番目でございます。「公 的年金の財政方式」ということですが、これも読ませていただきますと、長期的な観点 から見るとき、年金の財政方式として賦課、積立の両方式にはそれぞれ一長一短がある 。賦課方式は、貨幣価値の変動、経済の生産性低下などの影響を受けないかわりに人口 構成の影響を受ける。逆に、積立方式は、人口構成変化の影響は受けないが、経済の変 化に弱い。その意味で、賦課方式と積立方式を並列して採用する制度はそれなりの意味 を持っている。  現在の我が国の公的年金は、今、数理課長から明快にご説明いただきましたけれども 、将来の保険料負担を軽減するために、賦課方式に積立方式を取り入れるという財政運 営を行っている。この場合、将来の保険料に関心というか重点がありまして、積立部分 の意味は、積立方式におけるそれとは本質的に異なっているということです。その結果 、現在の制度では、積立方式を取り入れているといいながら、年金債務の考え方が全然 ないということになります。そのことが、万一積立金の運用が間違って行われるとか、 あるいは実際の積立金が計画に遠く及ばなくても、責任等が曖昧にされるという懸念が 生ずるわけです。つまり、そういうことが起こっても、財政再計算の際に予定積立額の 変更と保険料の改定で済まされてしまうおそれがないとは言えないということでござい ます。そういうことがないようにきちんと運用を見なければいけないということである んですけれども、財政再計算があるがゆえに曖昧にされるおそれもあるということです 。  そういう意味で、現在のように将来の保険料負担を考えて現在の財政方式を定義づけ る。つまり賦課方式に積立方式を入れたという、そういう定義づけはやめて、新たにそ れぞれ積立方式、賦課方式の長所を活かした公的年金財政にするために、賦課方式と積 立方式を併用する、そういう性格づけが重要ではないかということで、改めて我が国の 年金制度、私としては賦課方式、積立方式の組み合わせがよくて、積立方式が入ってい るのは合理的なことなので、ただ、意味づけというか、性格づけをきちんと変える必要 があるのではないか、そういう意見でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、翁委員、よろしくお願いいたします。 ○ 翁委員  私は12ページになりますけれども、このレジュメに沿ってお話しさせていただきます 。ここで書いておりますのは、積立金の運用に関する論点メモということでございます が、積立金というのが制度全体にどういうインプリケーションを持つかということを運 用の観点から考えてみたものでございます。  まず一つ目が、年金に関して、特に「株式投資」ということから考えてみたのですけ れども、これを積極的に認めるべきであるという考え方については、主に二つのことが 指摘されております。これは次のページの斎藤誠さんという一橋の先生が主に指摘され ている点なのですが、一つが、ALM(資産負債管理)的観点からの株式投資というこ とで、年金債務の変動要因というのは、基本的にインフレーション・リスクと労働生産 性に対するショックである。資産サイドにインフレーションと労働生産性の変動に収益 率が連動する株式を組み込めば、年金債務に内包されるリスクをヘッジする役割を担う ことができる、というのが斎藤先生のご指摘でございまして、ただし、これは、今日本 でも復興が検討されている物価連動国債なるものが発行されれば、インフレーションに 対するリスクというのは債券で対応することも可能になるかと思います。  二つ目の点は、この年金の積立金に株式を運用したりすることに関しては、マクロ経 済のリスク・シェアリングを大きく変化させるというメリットがあるという点をご指摘 になっています。つまり現在は日本でもそうでございますが、老年層だけに集中してい た株価変動リスクを、もっとタイムホライズンが長くて、危険回避度が相対的に低い若 年層が年金という形で株式を持つようになると、そういったリスクをシェアするように なるということができることになるので、世代間のリスク・シェアリングは向上すると いうような見方をされています。  ただし、この(1)と(2)の論点というのは、必ずしもこれは公的年金に限った話ではな くて、むしろ企業年金や個人年金も含めた年金全体に関して言える論点かと思います。 この点については後で申し上げます。  ただ、今の厚生労働省の、先ほどのお話によりますと、こういった考え方というのは 、今の厚生労働省の運用の考え方には採用されていなくて、先ほどの資料2−1の(3 )のところにも書いてありましたように、若杉先生もご指摘になっていましたけれども 、現在の考え方は、年金債務の時間的な変動と運用の考え方というのは切り離して考え ておられて、予定される目標額を達成するように積立金の規模とか運用手段をどう考え るかというような発想に立っておられるというのが、今のこういった点と違う点ではな いかというように考えております。  それから、二つ目についてですが、先ほどいろいろ資金運用の結果なども出てきてお りますけれども、逆に株式を中心とする資金運用に対しては慎重であるべきだという考 え方もございます。そういった考え方としては四つぐらいありますけれども、今は実際 少ないですけれども、140 兆円というのが自主運用に移行していけば、非常に資産規模 が大きくなるということで、価格形成にいろいろ影響を与えるのではないかとか、売買 の執行リスクが出てくるのではないか。  これは株式市場に限った話ではございませんで、債券市場においても、公的主体は比 較的バイアンドホールドで保有をする安定志向でございますので、こういったことにな ると、債券の市場の流動性といいますけれども、そういったものに影響を与えるのでは ないかということも指摘されております。  それから、株式市場におけるコーポレート・ガバナンス上の関係ということで、これ は民間の運用主体がそのまま運用するのと違って、残余請求権者というのが被保険者で すので、それぞれの個々の投資企業の経営への配慮は稀薄であるということに伴って、 こういった問題があるということが指摘されている。  それから、3番目は公的主体が万が一損失を大きく生じた場合の責任の問題をどうす るのか。  4番目が政治的な介入によって株価下落時のPKO(Price Keeping Operation)に使 われて損失を被る可能性があるのではないかというようなことも指摘されていまして、 アメリカは、カルパースとか、ああいった地方公共団体の運用に関しては、株式運用な ど積極的にしている一方で、社会保障基金などにつきましては、主に(2)の(1)や(2) の観点から非市場性国債と呼ばれる、全く市場で売買されていない国債を運用するとい うようなスタンスをまだとり続けています。ただ、これに関しては株式を運用してはど うかというような議論もアメリカで積極的に行われているところでございます。  今、申し上げた(2)のいろいろな問題点に関しましては、現状でも基本方針みたい なものが、先ほどのご紹介あったもので出ておりまして、例えば議決権行使のルールを 明確にするとか、またはリスク管理体制の構築と責任権限の明確化、それから政治的介 入から独立した運用ルールの明確化というようなことを一応図って、こういった対応を しようとしているということは現実としても進んでいるということでございます。  ただ、本来、年金資産というものが持つマクロ的なリスク・シェアリング機能が、そ ういったものを活かしつつ、それから、今申し上げた(2)のような、公的主体がいろ んな運用をすることによって生じうる問題ということを発生させないということを考え ると、大きな年金制度の枠組みの中で考えた場合、公的年金の積立金規模が過大になる ということは、金融市場の観点、マクロ経済の観点から余り望ましくないということが 言えるのではないか。むしろ、私的な確定拠出型年金といったようなものをどんどん広 げていって、多様な投資家の見方が反映される資本市場を形成していくという方向を考 えていくということが基本的な方向としては望ましいのではないかということでござい ます。  少し広い論点から、この問題を報告させていただきました。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、次は近藤委員お願いいたします。 ○ 近藤委員  「積立金の役割について」ということで考え方をまとめておきました。先ほど数理課 長のご説明とか若杉委員のご説明と重なる部分もありますので、一応お含みおきくださ い。 公的年金制度は、基本的には世代間扶養の考え方で運営されるべき制度であると 私は考えております。したがって、その財政方式は賦課方式が基本となります。しかし ながら一方で、我が国の急速な少子高齢化の進行を考えるときに、問題点として、毎年 急速に保険料を引上げていかなければならない。世代間の負担の格差が広がり過ぎる。 高齢化のピークにおいて極めて高い保険料を徴収するか、大幅な給付の抑制が必要とな る。高齢化のピークを過ぎた後も、高い水準の保険料を徴収するか、給付の抑制を行う 必要があるという問題があります。  2番目として、将来の世代間の負担の格差を解消しようとすると将来にわたり平準的 な保険料による運営が必要となります。この方式については、今すぐに急激に保険料を 上げるということは現実的かどうかという問題。形成される積立金は平準保険料でやっ た場合に非常に膨大過ぎますので、運用ができるかどうかということ。デフレの加速等 国民経済に好ましくない影響を与えるのではないか。  3番目として、このように考えてくると、賦課方式を基本としつつも平準的な保険料 による財政運営の要素を取り入れた財政方式が一番現実的と言えるのではないでしょう か。保険料を段階的に上げていき、将来に平準的な保険料による運営を目指す財政方式 を採用すべきではないかと考えています。これは、現在、厚生年金や国民年金で採用し ている財政方式です。  急速に保険料を引上げていかなくてはならない事態を回避すること。世代間の負担の 格差が拡大しすぎないことにも対処できるということだと思います。  このような財政方式の下での財政運営のポイントとなっているのが積立金の果たす役 割であります。  高齢化のピークにおいては積立金の一部を取り崩して給付に充てることにより、保険 料の水準を抑えることができる。先ほどご説明がありました。  高齢化のピークの後、定常的な人口構成になった将来においても、積立金の運用収入 を活用することにより、保険料を賦課保険料よりも低い水準で運営していこうというこ とができるわけです。  したがって、ここが問題なんですけれども、財政見通しどおり積立金が形成されるこ とが重要で、特に運用については平均的に財政再計算の前提となっております実質運用 利回り、前回再計算のときでは1.5 %、これが実現されるということが重要です。  また、社会経済情勢をよく見きわめながら、保険料の段階的引上げは、数理部会(前 数理部会)の第5次報告にもありますように、なるべく早く行うことが望ましいと考え ます。前回の改正で保険料を引上げられなかったことは、財政規律という観点から好ま しくない前例ができてしまったと私は考えております。西欧諸国の保険料水準と比べま しても、我が国の水準はまだ低いと言える段階だと思います。引上げを怠ると高齢化の ピーク、その後の保険料水準が極めて高くなってしまうという悪影響を残すと思います 。  なお、これはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、積立金を取り崩せば保険料 をもっと低く設定できるのではないか、という議論を耳にしますが、先ほどのご説明に もありましたように、当面は低くできても高齢化のピークやその後における保険料の水 準を考えない暴論であり、これは一番重要なのですけれども、将来世代に対する責任の 放棄であるというふうに考えております。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。では堀委員、お願いいたします。 ○ 堀委員  私の資料の第1と第2がこの問題についての部分です。  公的年金制度の財政方式は、基本的には賦課方式で行うべきである。その理由ですが 、一つは、公的年金の目的は生活を保障することです。したがって、物価や賃金の変動 に応じて柔軟に対応できなければならないのですが、それができるのは賦課方式しかな い。2点目が、完全積立方式に移行すると巨額の二重の負担が生ずることです。3点目 は、完全積立方式にすると、厚生年金で約500兆円という巨額の政府貯蓄ができるわけで すが、このような巨額の政府貯蓄は様々な問題をもたらすのではないかいうことです。 4番目は、積立方式は市場リスクに弱いということです。  賦課方式は政治リスクに弱いという面もあるのですが、賦課方式の一番の問題は世代 間で不公平が生ずることです。それについては二つ目の「・」のところで述べています 。これから高齢化が進み、賦課方式のままだと保険料を段階的に引き上げていく必要が あるわけですが、そうするとできるだけ早い段階で保険料を引上げていって、保険料に 関する世代間の格差を解消していく必要がある。すなわち、ある程度、保険料を積み立 てて将来世代の保険料負担を軽くするということが必要ではないか。  第2の年金積立金をどうするかという問題ですけれども、年金積立金を保有する根拠 としては、一つは今言いましたように、高齢化のピーク時の保険料負担を軽くするとい うことです。2番目としては、段階保険料の段階をなだらかにする。3番目は投資資金 の確保、4番目は高齢化が進む社会では、自分の老後の費用はできるだけ積み立ててお く、そういう要素が必要ではないかということです。  問題は、どの程度積立金を保有すべきかということですが、理論的な答えはないと思 うので、そこは政治的判断になるのかなというふうに思います。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、委員の方からの意見提出がございましたが、今 のご意見、私も伺っておりましても、日本の場合、よく賦課方式なのか否か、あるいは 修正積立方式型という言い方をしますが、そういう財政方式の考え方と積立金は関連し ている。また、ある程度、公的年金の中で積立方式を分離をするような形で制度を仕組 むような話が一つは出てまいりました。  それから、現在の財政投融資の中の積立金の役割、性格づけの話は今かなり議論が分 かれた点であると思います。  運用の仕方につきましても、過去の高利回り時代の遺産で持っているなというのが私 の正直な印象であります。それで、今、資料についてのご質問を少し限定させていただ いて、何分か時間をとりたいと思います。できればご意見は次回にまとめていただくと して、積立金関係の資料について、何かご質問があれば、今日のうちにそれはできるだ け受けておきたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ、小島委員。 ○ 小島委員  先ほど数理課長から、ご説明いただきましたけれども、この前の財政再計算をもとに した試算で、積立金をいつの時点で使い切るかということで二つのシミュレーションを 説明いただきました。これはあくまでも運用利回り4%、実質1.5 %を大前提にして、 ピーク時の保険料引下げ効果が4%程度だということで出されている、そこは大前提を どう見るかというのは大変重要な問題であります。この二つのシミュレーションでは、 2040年時点で積立金を使い切る、あるいは2060年で使い切るということで、そのときの 完全賦課方式に移行するに当たっての保険料率のアップというのが出ています。なお、 19.8%という最終保険料率を維持するためには、ピーク時でも3年ないし4年の積立金 を持っているという前提に立っています。  例えば外国の紹介でありましたが、アメリカは75年後でも1年程度の積立金を持って いるということから逆算して保険料率を試算する考え方です。このピークで1年分の積 立金を持つという前提でシミュレーションした場合、どうなるかというという、これは お願いです。 ○ 坂本数理課長  そのような形での1年分の積立金を残すという前提でのシミュレーションは一応でき ようかと思います。ただ、この1年分という規模が、例えば、先ほど小島委員が例に挙 げられました3年から4年というふうな積立金の規模に比べまして小さいということに なりますので、その場合には最終的な保険料削減効果が小さくなるということは言えよ うかと思います。 ○ 宮島部会長  今のは質問ですので、どこかの段階で、積立金の規模をこのくらいに置いたときには 保険料率はどうなるかという試算を、それは一回シミュレーションをして出してもらえ るといいと思います。 ○ 坂本数理課長  そのシミュレーションさせていただきます。 ○ 矢野委員  資料2−2の1ページ、何べんも拝見している資料なのですが、3ページ、4ページ で積立金を取り崩していった場合にどうなるかということとの関係で質問をしたいので すけれども、11年度ベースで低位推計とした場合、どれぐらい保険料率が上がるかとい うことを考えた場合に、2040年頃で1%程度、その後もそれ以上の負担増になると いうことだと思いますが。そうなると、仮に平成11年度財政再計算結果の保険料率のア ップということを考えても、もし11年度ベースでの低位推計が実現していけば、積立金 を取り崩すか、あるいは保険料率を上げなければならないと、こういう議論につながる のではないか。  また、さらに今回の新しい人口推計に基づいて計算すれば、その状況はもっと厳しく なるのではないか。その辺についてどう考えるのか、質問したいと思います。 ○ 坂本数理課長  11年度財政再計算において低位推計でやった場合、あるいは今回の新しい将来人口推 計で財政計画を立てる場合には当然最終的な保険料率を上げる必要が出てくるというこ とは言えると思います。それをどのような形で負担可能な水準に抑えていくのかという のがこれからの大きな議論になるのではないかと考えられるところでございます。 ○ 宮島部会長  よろしいですか。 ○ 矢野委員  意見はまた改めて。 ○ 宮島部会長  わかりました。ほかにいかがでございましょうか。資料について。 ○ 渡辺委員  施設運用について質問したいのですが、先ほどグリーンピアの話があったんだけれど も、グリーンピアは赤字ということで、売れないところも相当あるようですが、要する に私が聞きたいのは、グリーンピアについては、これは還元融資ということで、かつて の年福がやっていたわけで、あとはいわゆる社会保険庁になると思うんですが、いわゆ る国民年金の各施設、厚生年金関係の例えばサンピア等の各施設もあると思うんですが 、そういったものについての運用の考え方というのか、福利運用というとらえ方をして いらっしゃるのか、あるいは被保険者のためのいわばサービスといいましょうか、そう いったことであって、これは運用でないと考えていらっしゃるのか。さらに言うならば 、後ほどの資料請求という格好でもいいのですが、一体どういう財政状況になっている のか。特にグリーンピアの方は少し明るみに出てきたのだけれども、その辺の資料は出 せるものなら出していただきたい。以上です。 ○ 宮島部会長  これはできる範囲で。 ○ 薄井社会保険庁総務課長  基本的には社会保険庁で持っております年金関係の福祉施設、これは運用というより は、むしろ被保険者なり、あるいは年金受給者のための福祉としての事業、こういうふ うな位置づけでございます。基本的には各施設独立採算ということで運営をいたしてい るところでございます。  関係の資料はどのような資料で整理できるか、ちょっと考えてみたいと思います。 ○ 宮島部会長  渡辺委員、今のところ、これでよろしゅうございますか。 ○ 渡辺委員  グリーンピアは今売却しているけど、売れないとなっている。特に指宿なんかは全然 買い手がつかないという話が伝わっている。財政上、どういう赤字があって誰が被って いるのか、もし資料が出せれば、あるいは今説明をちょっといただければほしいんです が。 ○ 石塚資金管理課長  グリーンピアの運営については各運営主体の独立採算ということになっています。そ れぞれの13基地で、土地なり建物の取得価格ということで、現在までに約1,900 億円取 得原価がかかっております。これを廃止するに当たって、最終的に13カ所譲渡するわけ ですけれども、どの程度で売却されるかということになると思いますけれども、当然相 当取得当時に比べて土地の値段等も下がっておりますので、最終的に全部売れた後との 差額については、厚生年金特会なり国民年金特会で負担いただくというようなフレーム になっております。 ○ 宮島部会長  これもまだここで議論ございますので、そのときに必要な資料をわかり次第出してい ただくということもお願いしたいと思います。  それでは、時間がやや押しておりますが、最後は「第3号被保険者制度について」で す。先ほど言いましたように、別途これについてはいろんな形で検討・議論が行われて きたものでありますが、総括的な論点の議論で抜けていたものを全部拾っておくという ことで、「第3号被保険者制度について」という大きな争点について最後に少し議論を したいと思います。まず事務局から、資料につきまして説明を簡潔にお願いしたいと思 います。 ○ 木倉年金課長  それではお時間の関係もありますので、簡潔にご紹介申し上げます。  1回目のときに、去年の「女性と年金検討会」の報告書はおつけをしておりますけれ ども、それから3号関係部分を抜粋し引用をさせていただいたような資料でございます 。論点で3−1の1ページ目をご覧いただきたいと思います。60年改正前と60年の改正 のこと、これもご説明するまでもないと思いますので、ご覧をいただきたいと思うんで すが、60年改正のときの数字でございますが、別添の資料の1ページの下で直近の数字 をつけております。1987年、この3号制度導入直後のときの3号の数、1,093 万人、女 性が1,090 万人、第2号被保険者は3,287 万人ということですが、2001年3月末で見ま すと、3号は1,153 万人、女性が1,148 万人、2号は3,742 万人、女性は1,238 万人、 こういうふうな数字で推移をしているという状況でございます。  また、もとの資料に戻っていただきまして、こういう改正が行われた中で、3ページ でございますけれども、これは論点のご紹介ということで、見直しを求める意見が強く なってきているということの見直しの方の意見のご紹介を報告書からさせていただいて おります。(1)、(2)とありますが、片働きを優遇する制度ではないか。就業調整の原因 となっているのではないか。  (2)のように、3号といえども負担能力はあると考えられるのではないかということ。  (3)の方で、そもそもこの3号を第2号全体で支えることの社会的なこういう受容とい うものはなくなってきているのではないかということ。  4ページでございますけれども、先ほどもお話がありました第1号の方、自営業の方 、あるいは母子家庭等の方は、個別に保険料を納めなければならないけれども、それと 比べて不公平ではないかというようなこと。  (5)でございますけれども、育児期間等で理由があることはともかくとしても、そうし た期間以外の場合の方は、自分で選択されて3号ということになっているのではないか ということで、それが同じ基礎年金があるのは不公平ではないかということ。  (6)としまして、自ら保険料を納めないということで、年金制度への関心が薄れがちで あったり、あるいは手続漏れ等の話も起きているのではないか。こういったご指摘があ ったところでございます。  こういうものを踏まえまして、ご議論あったわけですが、5ページでございますが、 その前に諸外国を簡単にもう一度振り返っております。参考資料の4ページ、5ページ にもつけておりますが、本文5ページにありますように、配偶者に対しまして、年金の 給付を保障するというような仕組みはアメリカやイギリス、必ずしも同じ考え方という わけにはいきません。被扶養という概念はないようですけれども、アメリカ、イギリス についても見られるところであります。  アメリカの方では、例えば配偶者には被保険者の年金額50%。イギリスでは、夫生存 中、被保険者の基礎年金の60%が見られる。自ら年金を持っていらっしゃる場合には調 整はあるようでございます。  フランスでは、所得の制限は厳しいようでございますが、一定の加給金がある。  一方で、ドイツやスウェーデンについては、一定の所得がないと強制加入になってな いということで、配偶者についても、そういう方には年金給付はない。  スウェーデンは保障年金という仕組みを始めて、低額の方にはそれで保障していると いう仕組みが見られるというふうな動きでございます。  6ページでございます。女性と年金検討会におきましての、3号に負担を求める場合 の考え方の整理が行われております。そのご紹介でございます。この中では大きく負担 を求める考え方と、誰に負担を求めるか、主体の問題、具体的な負担を求める方法の問 題、こういうふうなことで見直し案が整理をされておるわけでございます。  最初の「・」に考え方が書いてありますが、負担というものを2号全体で負担能力に 応じて求めるのか、それとも3号を抱えておる2号のグループだけに受益に応じて求め るのか。  次の「・」ですが、2号全体ということになりますと、その中で夫の賃金を分割して 、妻の賃金を想定をして負担を求めるという考え方もある。  次の「・」ですが、3号を抱える2号全体でということになりますと、そのときに、 妻自身に負担を求める。その場合には定額とならざるを得ないのかもしれない。それか ら、夫を通じての負担を求めることになりますと、この場合に定額という考え方と応能 負担で定率という考え方両方あるかもしれない、こういう考え方が整理をされておりま す。  次のページ、7ページでございまして、さらに「○」で、夫の賃金が大分高くなって くると専業主婦世帯の割合も高くなる傾向が見られるということに着目しまして、高賃 金の方には、今の標準報酬の上限以上のものの保険料の負担を追加で求めるということ で、全体で財源の縮減を図るという考え方、もう一つ、第3号被保険者としての扱いを 受ける期間を育児や介護の期間というふうに限定をして、それ以外の期間では負担を何 らかの形で求める、こういうものが整理されております。  それを表にしましたのが、次の7ページから8ページにかけての表でございまして、 現行に対して第I案は、2号全体で賃金を分割して負担を妻にも求めていくということの 考え方でございます。  第II案は、3号を持つ、2号での応益の負担ということで、ここでは妻に求めるもの は定額の13,300 円、1号と同じものを求めていく考え方があるのではないかということ でございます。  次のページの8ページは、第III、第IV案は、3号を持つ2号でということでございま すけれども、第III案は、仮に夫としますと、夫に定額の13,300 円と1号と同じ負担を 加算をして求めるという考え方。  第IV案の方は、夫に定率で、3号を持たない方に上乗せして、定率で上乗せの負担を 求めるという考え方でございます。  第V案でございますが、これは先ほどありましたように、高い賃金の方について、標準 報酬以上の追加負担を求めて全体の負担の縮減を図るという考え方でございます。  最後の第VI案は、育児・介護期間中の者に限る。その他の期間については何らかの形 の負担を求めるという考え方でございます。  これに対しまして、9ページでございますけれども、論点としてそれぞれ挙げられた ものを抜粋しております。  まず(1)ですが、第I案、賃金分割という考え方につきましては、税制や労働法制等社 会制度全般がまだ整合がとれてない中で、年金制度がこの考え方を取りうるかどうかと いう指摘がございました。  次の段落は、3号に2階部分の報酬比例部分のものを給付するということになります けれども、これについてどう考えるのか。一方で、今、就労していても低賃金の2号が いらっしゃる。そういう方々よりも高くなる場合もあり得るのではないか。この辺のバ ランスをどう考えるかというようなこともご紹介ございました。  (2)でございますけれども、I、II、III、IV案ということで共通をしておりますけれど も、事業主の方がどう考えるか。事業主の折半の負担というものがあるわけですが、こ れにつきまして、3号の保険料を別途求めることになりますと、これについて引き続き 事業主に負担を求めるという考え方がとれるかどうか。とれない場合にその財源をどう 考えるのかという考えでございます。  次のページ、10ページでございますが、(3)は、受益に着目して応益での考え方をとる 場合のものでございますが、II案のもの、あるいはIII案のもの、IV案のものにつきまし てですが、最初の「・」、現行の制度は3号のみならず、賃金が低い2号の方について も全体で応能で保険料負担を軽減をしているという形になっておる。このうちの3号の 部分の負担だけ受益に着目した負担という考え方をとることが整合的かどうかというこ とでございます。  それから、次の「・」では、諸外国では先ほどありましたように、所得がない方には 適用外というふうな考え方ですが、日本の場合には、全国民共通の基礎年金ということ を取り入れまして、所得のない方に対しても、13,300 円の負担を求める、あるいは負担 ができない方には免除等の仕組みがあるということでございますけれども、通常は所得 がないというふうに考えられるのではないかという3号について、受益に着目した負担 を取り入れることが妥当かどうかといった論点があるということでございます。  それから、一番下でございますけれども、この中で受益に着目した応益一本ではなく て、応能と応益を組み合わせる、定額と定率を組み合わせるという考え方があるのかど うかというふうな点もご指摘あったところでございます。  次のページに行きまして、今のものとまた関連したような論点ですが、(4)、第II案、 III案、13,300 円という定額を求める場合の考え方についての論点でございますけれど も、定額の保険料については、1号についてもやむを得ず、収入が必ずしも一律にとら えられないものについての定額の保険料の仕組み、これを3号にも及ぼしていくという ことになりまして、保険料の負担の逆進性という指摘があるもの、これを一層拡大して いくことになるのではないか。  次のパラグラフでは、これで徹底をして考えていくと、3号のみならず2号について も基礎年金部分は定額のものを徴収することになるかどうかということでございます。  (5)につきましては、夫の方に上乗せで定額なり定率で取るという考え方のものにつき ましては、片働きの夫の方の保険料率が高くなるということについて、事業主の理解な り、雇用行動への影響なりが見られるのかどうかという論点でございます。  (6)でございますけれども、夫にプラスアルファで負担を求める場合に、そもそも共有 すべき社会連帯のリスクというものについてどう考えるのか。3号だけではなくて、男 女の差の問題、子どもの有無の問題もあるのではないか。全体を十分考えなければいけ ないのではないかというご指摘でございます。  最後のページでございますけれども、(7)、第V案、高賃金の方について、追加負担を 求めることについては、部分的な解決策にとどまるのではないか。税制や社会保障全般 の再分配の考え方との整合性をどう考えるのかというふうなことでございます。  (8)は、第VI案で、育児等の期間のみ配慮するけれども、それ以外については負担を求 めてはどうかということにつきまして、育児等の期間以外の扱いをどう考えるか。保険 料負担をどういう考え方で徴収できるか。あるいは保険料ではなくて、そういう期間に ついては、年金の給付の面での調整ということが考えられるのかどうかというふうなこ と。そもそも育児期間中・介護期間中について特別な措置をとることが妥当かどうかと いう考え方についてのご指摘でございます。  (9)につきましては、保険料の天引き、特別徴収ということが、妻から負担を求める場 合に引き続きできるのかどうか。特別徴収ができなければ未納の問題が生じてしまうの ではないかという問題。  最後(10) 、いずれの案についても、医療保険の方でも同様の被扶養配偶者の考え方が ありますが、また配偶者以外の被扶養者の考え方がございますけれども、医療保険の方 についても同様に見直して受益に着目した負担というような考え方がとれるのかどうか 、このようなご指摘があったところでございます。  ざっとご指摘だけの紹介でございますけれども、それについてのそれぞれの試算の例 は別添の資料の各案についてつけてございます。そこにも論点として、それぞれのもの について今ご紹介しましたものを掲げてございます。こちらの方はご覧をいただければ と思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。この論点につきましては、すでにこの部会が始まりますと きに、「女性と年金報告書」を皆さんにもお配りして論点を紹介する形で公になってい ると思います。ちょっと時間がありますが、若干、堀さんからの今日メモが出ておりま すし、あと、お一人かお二人ぐらい、ご意見を伺って終わりにしたいと思います。堀さ んからペーパーに沿いまして若干の説明をお願いいたします。 ○ 堀委員  資料4の最後の16ページの第3に、この制度についてのコメントをしております。私 は女性と年金検討会に入って、詳細な意見をレジュメで提出したのですが、ここでは非 常に簡単に述べています。  かつてのように、夫が働いて妻は家庭にいるという社会では、働く夫に世帯単位の年 金を支給するのが適合的です。これに対し、ほとんどすべての世帯が共働きであるとい う場合には、夫と妻それぞれに個人単位の年金を支給するのが適合的です。しかしなが ら、現在は片働き世帯と、妻が働いていても家計補助的な仕事しかしてない、すなわち 夫に妻が扶養されている、そういう世帯もかなりあるわけですね。第3号被保険者は1, 150 万人もいます。そうすると先に述べたように両極に割り切れない、そういうことか ら問題が生じているのではないか。問題は、基礎年金は個人単位化されており、個人単 位化されると、働かない妻の年金保障に欠ける。それで工夫されたのが第3号被保険者 だと思います。  先ほど説明がありましたように、妻に保険料を課すという案が幾つか出ているのです が、いずれも問題がある。負担能力の欠ける、あるいは負担能力の低い者に保険料を賦 課するのは困難です。先ほど第1号被保険者との比較が述べられてましたが、第1号被 保険者は定額負担で、サラリーマンの場合は応能負担、定率負担で、負担の原則が違い ますので、第1号被保険者との比較は妥当ではないと思います。  何が重要かというと、「女性に不利な雇用・就労の改善が最重要課題」とここに書い てありますけれども、女性が家事・育児・介護するという社会慣行によって、女性雇用 ・就労が困難になっていることです。そのため女性は年金受給面で不利になっている。 それを第3号被保険者がカバーしているということですから、基本的には男女の雇用機 会あるいは雇用条件を改善して男女が等しく働けるようにする必要がある。それが実現 されれば、第3号被保険者の必要性はなくなる。  いろんな代替案が提案されているのですが、なかなかいい案がなくて、基本的には第 3号被保険者の範囲を縮小するのが妥当ではないかと思います。130 万円という要件だ とか、パートの4分の3という要件を引下げるのが、現状では妥当なのではないか。  賃金分割という第I案について、「長期的には要検討」と書きました。この案もなかな か魅力的なのですが、果たしてこの考えが日本になじむかどうか。男女で就業機会とか 賃金が同じであれば、わざわざ賃金分割する必要もなくなるんですね。そういったこと も考える必要があるのではないか。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。あと、追加的に、井手委員どうぞ。 ○ 井手委員  前回、支え手を増やすと次世代支援の関係で、この3号の問題が関係があると思いま して、ここで取り上げていただいたわけで、大変ありがとうございました。  女性と年金検討会の資料からの概ねの抜粋ということですが、1点、3ページから の、「第3号被保険者制度の廃止又は見直しを求める様々な意見」というところの、(1) 〜(6)に関しまして、私も検討会の資料と照らし合わせてみたのですが、ぴったり重なる ところがちょっと見つからなかったのですが、これは何かほかのものからの抜粋か、あ るいは「第3号被保険者制度をめぐる様々な議論」というところがございまして、その 中から、事務局なりに選んだところでございましょうか。そこのところについて確認を させていただきたいと思ったんです。 ○ 木倉年金課長  すいません、この報告書で申しますと、3号の各論の部分のまとめよりも、ずっと前 の方の部分に、これにつきまして、この報告書そのものは後でご覧いただければと思い ますが、44ページあたりから、3号被保険者制度の廃止又は見直しの様々な意見として ずっと(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)というふうに挙がっておる、その部分を抜粋をさ せていただいたものでございます。 ○ 井手委員  検討会の前の意見ということですか。 ○ 木倉年金課長  検討会報告書の中で、1個1個の、短時間労働者の問題、3号とか、育児期間とか、 それぞれに入る前の総論的な部分が報告書で書かれております。「第II章 女性と年金問題とは?」という部分の3で「年金制度において対応が必要と考えられる 課題」という部分でまとめてある部分です。 ○ 井手委員  そうですか。私、前回の部会で配られた方のものを見ているのですが、こちらの方で 言うと、84ページの方から続いておりますのですが、言いたかったことは、論点の中で 、支え手を増やすというところとの関連で申しますと、短時間労働者への適用拡大を行 ったときに第3号問題とどう整合を図るかといいますか、要は高賃金の配偶者を持つ人 が3号にとどまった場合の公平性の観点からどうかという問題が挙げられていましたの と、それから保険料負担能力の中で、かつて昭和60年以前は専業主婦の7割が任意で年 金を納めていたということから、負担能力はあるという指摘があったという点と、それ からここでは触れられてなかったと思うんですが、社会保険方式か税方式かという中で 、必ず税方式のメリットの一番最後ぐらいに、ついでに3号問題も解決できるみたいに 出てくるところがございまして、3号問題の中でも税方式をどう考えるかということが 、女性と年金検討会の中では指摘されていましたので、そのあたりが様々な意見という ところで触れられてなかったものですから、ここは感想でございまして、私はそちらの 方もあわせて考えさせていただきたいということでございます。 ○ 大澤委員  時間が過ぎておりますので、特に資料3−1の9ページから12ページというこの論点 は、女性と年金検討会の中でも検討されている論点もありますが、今回新しくつけ加え られた、ないし出てきた論点というのもあるような気がいたしまして、そこで私はこの 9ページから12ページにかけての出てきている論点については、今日は時間がないので 、次回ないし次々回にきちんと時間をとって議論をする場所をつくっていただきたいし 、その際にはペーパーを提出したいというふうに思っております。  今日一つだけ申し上げたいのは、この10ページに、賃金が低く保険料負担の低い第2 号被保険者の問題というのが出てきているのですが、これは何度か発言いたしましたけ れども、標準報酬の下限に対して今の保険料率17.35 %を掛けたときに、13,300 円とい うのをクリアーしていない2号はいないはずなので、それとの関連では、3−2の参考 資料の一番最後のページ、斜めの線があって、賃金の低い第2号は、自分の基礎年金部 分も出せていないかのように読める図があることに関して、前から私は苦情を言ってい るのですけれども、一体どういう関係で今回もこれが出てきているのかとちょっと理解 に苦しんでおります。 ○ 宮島部会長  報告書に沿って、また改めて少し忠実な形で論点を再整理していただきたいと思いま す。それから、今ご意見がありましたように、第3号被保険者というかなり論点として ターゲットを絞った問題については先ほどご意見ありましたように、財政方式からのア プローチもあれば、それから保険のカバーをどうするかというような話もいろいろあり まして、今後、議論する中では、恐らく繰り返し繰り返し、いろんな論点から第3号被 保険者の扱いをどうするかという問題が出てくると思います。  これは総括的な討論を行うときにも、その点、ちょっと注意をして取り扱いたいとい うふうに思っております。  10月に総括的な討論を行います際に、新たに少し事務局の方で論点を整理されるとい うことを是非お願いしたいと考えています。  前から申し上げておりますように、資料にせよ、論点にせよ、さまざまな角度から考 察・分析する新しい興味深い資料が別にあればきちんと出すのが、我々部会の一つの重 要な役割でもあると思います。この段階になりますと、それぞれの委員にお願いする点 もございますので、よろしくお願いしたいと思います。  いずれにいたしましても、今日で一応総括的に検討すべき論点について一通り見てま いりました。その間、個別の論点についてもいろいろご意見をいただきましたけれども 、先ほど申しましたように、10月の2回のこの部会におきましては、これまでの全体の 検討、そして論点の整理全体を通じました委員の間でのディスカッションに時間を割き たいというように思っております。  それで委員の方にお願いがございまして、これまでそれぞれ出されましたペーパーに 、さらに追加だけされたい方、あるいは今まで出された、多分皆さんそういうのは全部 フロッピーにまとめてあると思いますので、それをもう一回バインドして、10月に報告 するものとして別途お書きになられる方、どちらでも構いません。また、全員強制とい うわけでも必ずしもございませんので、ただ、私としてはできるだけ議論をする上で提 出をお願いしたいというように考えております。  要するに、皆さま方には今までのでよろしいというのであればそれで結構でございま すし、つけ加えるのだけを出すということもよろしいですし、あるいは今までのをまと めて総括的に全体としての意見を述べておきたいというのでも結構だと思います。それ につきまして、次回の年金部会までに、皆さま方からいただきました意見を、これも事 務局の方で整理いたします。また若干の不満が出るとは思いますが、論点別なりテーマ 別にどういう意見であったかという整理を少ししていただきまして、11日の予定という ことになっていると思いますが、次回の部会で、それを皆さまにお配りいたしまして、 どの点で、今委員の間で考え方の違いがあるのかということを少し明確にしながら、主 要な論点に沿って2回にわたって総括的な討議を行い、部会としての論点の整理を一た ん、そこで終わらせたいというように考えております。  それでは、総務課長から、少し詳しいことをお願いいたします。 ○ 高橋総務課長  10月、次回以降の本部会のやり方につきまして、今、部会長からお話があったとおり でございます。それから、今日、前回ご欠席の方々3人と新任の委員で1名おられます ので、前回の繰り返しになりますが、以前から、秋には総括的な議論の取りまとめをお 願いしたというふうに申し上げてきてございますけれども、8月の末に経済財政諮問会 議で年金の話につきまして、これから経済財政諮問会議の方でも議論をやっていくとい うようなことがございまして、私どもの大臣からも、秋には次の改革の方向ないし論点 の整理をやりたいというふうに申し上げたところでございます。本部会での10月2回、 予定は11日と29日と既にお知らせ申し上げておりますが、総括的なディスカッション、 それを私ども受けとめて、また議論の整理をやりたいと思います。  それから、今、部会長からお話ございましたように、ご意見これまでも提出していた だいておりますけれども、補充意見ございましたら、資料をまとめる関係がございます ので、10月3日までに私どもの方に提出をお願い申し上げたいと思います。お忙しいと ころ大変恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。  次回は10月11日(金曜日)午前10時から、場所はこの霞が関ビル 東海大学の校友会 館で行います。以上でございます。 ○ 宮島部会長  次回につきましては、既にご案内があったとおりでございますので、よろしくお願い したいと思います。それでは、どうもありがとうございました。本日はこれで終了いた します。    (照会先)  厚生労働省年金局総務課企画係  (代)03-5253-1111(内線3316)