02/09/06 労働基準法施行規則第35条専門検討会(平成14年度第1回)議事録       労働基準法施行規則第35条専門検討会(平成14年度第1回) 1 開催日時及び場所  開催日時:平成14年9月6日(金) 午前10時から午前12時まで  開催場所:中央合同庁舎第5号館共用第7会議室 2 出席者  医学専門家:青山英康、大久保利晃、岡田了三、奥平雅彦、兼高達貮、工藤翔二、        櫻井治彦、夏目誠、野見山一生、馬杉則彦、平林洌、柳澤信夫  厚生労働省:高橋満、高橋紀夫、國常壽夫、佐藤清、西野博実、只野祐、黒谷一郎、        磯部隆文、田苗恒美、天野敬、他 3 議事内容 ○職業病認定対策室長(佐藤)  定刻になりましたので、ただいまより労働基準法施行規則第35条専門検討会を開催 させていただきます。本日は大変お忙しい中、お集まりいただきまして感謝申し上げる 次第でございます。座長が選任されるまでの間、進行を務めさせていただきます職業病 認定対策室長の佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  はじめに傍聴される方々にお願いがあります。当専門検討会は原則公開としておりま すが、別途配付してある留意事項をよくお読みの上、会議の間、それらの事項を守って いただくようお願い申し上げます。万が一、留意事項に反するような行為がありました 場合には、退室をお願いすることがありますので、あらかじめご了承お願いいたします 。  では会議開催に当たって、高橋労災補償部長より一言ご挨拶申し上げます。 ○労災補償部長(高橋)  会議開催に当たり一言ご挨拶申し上げさせていただきます。私、8月30日付けで前佐 田部長の後任として労災補償部長を拝命いたしました。よろしくお願い申し上げます。  先生方には日頃よりこの労働基準行政、なかんずく労災補償行政に対して、大変ご協 力を賜っているところでございまして、この場をお借りして感謝を申し上げる次第でご ざいます。  このたびのこの検討会は、業務上疾病の範囲について新たに検討を要する疾病の有無 等について、ご検討をいただくため本日お集まりいただいた次第でございます。特に、 あとでまた説明がありますが、本年6月にジュネーブで開催されたILOの第90回の総 会において、職業病一覧表に関する勧告が採択されました。我が国としてはこの採択さ れた勧告を受けて、業務上疾病の範囲を検討する必要性が生じたところでございます。 先生方にはより一層のご指導、ご助言をいただきたいと考えております。  最近の労災補償等々については、後ほどご説明させていただくこととしておりますが 、先生方におかれましては、労災補償行政の抱える諸課題についてご賢察の上、今後と もご協力を賜りますよう改めてお願い申し上げまして、はなはだ簡単でございますが、 ご挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○職業病認定対策室長  本検討会の目的についてご説明させていただきたいと思います。資料No.1の1頁をご 覧ください。「労働基準法施行規則第35条専門検討会開催要領」というのがあります。 これに沿って説明させていただきます。  現行の労働基準法施行規則第35条の規定は、昭和53年に抜本的な改正がされました。 その際、中央労働基準審議会、労働者災害補償審議会に諮問をしたところ、新しい疾病 の発生に対処し得るよう、医学専門家による定期的な検討を行うという旨が答申されて おります。それを受けてこの第35条専門検討会を開催することとしております。  今回の検討会の主な検討事項が2番目に載っております。先ほど部長のご挨拶の中に もありましたが、第90回のILO総会で採択された職業病一覧表に係る勧告への対応に 関する検討を第1番目に挙げております。第2番目としては平成12年度と平成13年度に 、業務上疾病と認定したもののうち、新たに労基則別表1の2に追加すべきものの有無 の検討ということになっております。これらの検討に当たっては、局長からの依頼によ る参集者ということで、本日、13名の方にお願いをしているところでございます。なお 本検討会においては、座長を置いて、この検討会を統括していただくことになっており ます。検討の目途としては、本年度中に一定の結論を得ていきたいと考えております。 検討会は公開ということで進めさせていただきますが、検討に当たって個別症例等の検 討という場合には非公開とする場合もありますので、ご了承をお願いしたいということ でございます。  以上が本検討会の目的等についてのご説明でございます。  続いて本検討会の参集者についてご紹介させていただきます。同じく資料No.1の16頁 をご覧ください。この名簿にしたがってご紹介をさせていただきます。  まず、岡山大学名誉教授の青山先生でございます。  産業医科大学学長の大久保先生でございます。  群馬パース看護短期大学学長の岡田先生でございます。  北里大学名誉教授の奥平先生でございます。  東京逓信病院消化器科前部長の兼高先生でございます。  日本医科大学教授の工藤先生でございます。  大阪樟蔭女子大学教授の夏目先生でございます。  自治医科大学名誉教授の野見山先生でございます。  横浜労災病院副院長の馬杉先生でございます。  慶友整形外科病院副院長の平林先生でございます。  中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター所長の櫻井先生でございます。  関東労災病院院長の柳澤先生でございます。  埼玉医科大学教授の和田先生は本日ご欠席となっております。  次に事務局の紹介をさせていただきます。  先ほどご挨拶申し上げました労災補償部長の高橋でございます。  労災管理課長の高橋でございます。  補償課長の國常でございます。  労災保険審理室長の西野でございます。  職業病認定対策室長補佐の黒谷でございます。  中央職業病認定調査官の田苗でございます。  中央職業病認定調査官の天野でございます。  続きまして座長の選出をお願いしたいと思います。先生の中から互選でお願いしたい と考えておりますが、どなたかお願いできないでしょうか。 ○奥平先生  僭越ですが、櫻井先生を推薦したいと思います。 ○職業病認定対策室長  ありがとうございます。櫻井先生というお声がありましたが、お願いできますでしょ うか。よろしくお願いしたいと思います。  それでは、議事については櫻井先生からよろしくお願いしたいと思います。 ○櫻井座長  大変僭越ですが、座長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします 。今回の検討会は、通常の労働基準法施行規則別表第1の2への追加事項の検討以外に 、新しくILOの最近の動きへの対応という課題も与えられ、今年度内に一定の結論と いうことです。皆様方のご協力を得て進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願 いいたします。  では今日の提出資料について事務局から説明をお願いいたします。 ○職業病認定対策室長  事務局から提出資料の確認ということですが、その前に、大変申訳ありませんが、高 橋部長におかれては、着任直後ということで、ほかの用務も入っており、ここで中座さ せていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ○中央職業病認定調査官(田苗)  資料の確認をさせていただきます。  まず資料No.1「労働基準法施行規則第35条専門検討会について」ですが、1頁は先ほ ど説明があった当専門検討会の「開催要領」、2頁から15頁にわたってが「業務上疾病 に関する法令等」、16頁が本日お集まりの先生方の名簿となっております。  資料No.2は「最近の労災補償行政の動向について」です。1頁から5頁までが「脳・ 心臓疾患の認定基準改正に係る新聞発表資料」、6頁から15頁までが「平成13年12月12 日付基発第1063号、脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」、16頁が「平 成14年3月27日基発第0327005号、じん肺有所見者に発生した肺がんの労災補償上の取扱 いについて」となっております。  資料No.3は「業務上疾病の労災補償状況について」です。1頁から18頁までが「業務 上疾病の労災補償状況調査結果」、19頁は「脳血管疾患及び虚血性心疾患等「過労死」 等事案の労災補償状況」、20頁は「精神障害等の労災補償状況」となっております。  資料No.4は「ILO第90回総会で採択された勧告の職業病一覧表の対応について」で す。1頁から6頁までが英文のもの、7頁から9頁までが「職業病一覧比較表」、10頁 から11頁が「ILO第121号条約及び勧告」です。  資料No.5は「労働基準法施行規則第35条別表第1の2の各号の「その他に包括され る疾病」における労災補償状況調査結果」で、これが1頁から15頁までです。  最後に大久保先生から提出の資料。これが2頁ものです。以上です。 ○櫻井座長  皆様、資料はおそろいと思います。それでは議事次第にしたがって進行させていきた いと思います。まず報告事項が2つ、最初の「最近の労災補償行政の動向」について事 務局から説明をお願いいたします。 ○補償課長(國常)  「最近の業務上疾病に関する労災補償行政の動向」について、2点ほど簡単に説明さ せていただきたいと思います。  まず、脳・心臓疾患の認定基準の改正についてですが、資料No.2の(1)をご覧くだ さい。脳・心臓疾患の労災認定については、平成7年の2月に改正した旧認定基準に基 づいて判断してきたところですが、平成12年7月に、自動車運転者に係る行政事件訴訟 の最高裁判決で、業務過重性の評価に当たって、従来の脳・心臓疾患の認定基準では評 価の対象としていなかった慢性の疲労とか、そういった就労態様に応じた諸要因を考慮 すべきであるということで、新たな考え方が示されたわけです。この判決は個別事案に 係るものではありましたが、厚生労働省としては最高裁判決であるということを重く受 けとめて、専門検討会を開催して、疲労蓄積等の件について医学的に検討を行っていた だきました。その検討結果を踏まえて昨年の12月に脳・心臓疾患の認定基準を改正いた しました。  主な改正点は2点。1点目は、長期間にわたる疲労の蓄積を業務による明らかな過重 負荷として考慮するとしたことです。これは従来の、発症直前に遭遇した異常な出来事 の過重性、及び1週間程度の期間における過重性の評価に加えて、新たに発症前、おお むね6カ月間の長期間にわたる疲労の蓄積を、業務による明らかな過重性として考慮す る必要があるということで考えたものです。また業務過重性の評価に当たって、疲労の 蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目して、業務と発症との関連 性を検討する際の労働時間の評価の目安を示しております。具体的には、発症前1カ月 100時間を超える時間外労働、あるいは2カ月から6カ月の間に1カ月当たり80時間を超 える時間外労働があった場合には、業務との関連性が強いという評価をする、あるいは 1カ月から6カ月の間に、1カ月当たり45時間以下の時間外労働時間であれば、業務と の関連性は低いという目安時間を示しております。もう1つの改正点は負荷要因を明確 化したことです。これは短期間の過重業務、あるいは長期間の過重業務の評価に当たっ て、業務の過重性を客観的かつ合理的に評価するために、不規則な勤務あるいは出張の 多い業務等の負荷要因等、要因ごとの負荷の程度を評価する視点を具体的に明示したも のです。以上が脳・心臓疾患に関する認定基準の改正の要点でございます。  次に資料No.2の16頁をご覧ください。じん肺有所見者に発生した肺がんの労災補償に ついてです。じん肺有所見者に発生した肺がんについては、じん肺と肺がんの医学的因 果関係は認められないものの、進展したじん肺には肺がんの早期発見が困難になる等の 、医療実践上の不利益が認められるということで、じん肺管理区分が管理4と決定され た者に発生した原発性の肺がんについては、従来から労災補償の対象としてきたところ ですが、この取扱いについて、「じん肺有所見者の肺がんに係る医療実践上の不利益に 関する専門検討会」を開催して検討を行った結果、じん肺有所見者に発生した肺がんの 労災補償上の取扱いは、じん肺管理区分が管理3または管理4と決定された者に発生し た原発性肺がんを労災補償の対象とすることにしました。そういうことで現在管理3以 上に発生した原発性の肺がんについては、労災補償の対象としておりますが、一方で、 現在、労働衛生課の方で昨年の7月から、肺がんを併発するじん肺の健康管理等に関す る検討会で検討がなされていまして、今年の8月8日に開催した第4回の検討会におい て、じん肺有所見者に合併した肺がんについては、じん肺施行規則第1条に規定する合 併症として、療養の確保が必要であるという提言がなされました。じん肺合併症につい ては、労働基準法施行規則別表第1の2第5号の「粉じんを飛散する場所における業務 によるじん肺症又はじん肺法施行規則第1条各号に掲げる疾病」に基づいて労災補償の 対象としていまして、じん肺に合併した肺がんが合併症ということで規定されることに なれば、当然、労災補償の対象となります。従って補償課としてはこのような状況を踏 まえて、具体的な労災補償の取扱いについて今後どうするか、検討を行っているところ でございます。以上が現在の労災補償行政の主な点です。よろしくお願いします。 ○櫻井座長  ただいま2点についてご説明がありました。比較的大きな変化があったわけですが、 何かご質問ございますか。すでにいろいろなメディア等で情報をご存じかと思います。 特段ご質問がないようでしたら報告事項、次へ進めさせていただきます。  次は「業務上疾病の労災補償状況」について事務局からご説明をお願いします。 ○職業病認定対策室長補佐(黒谷)  平成12年度の業務上疾病の労災補償状況の調査結果についてご報告します。資料No.3 になります。  2頁に、第35条に基づく別表1の2の各号、1号から9号までありますが、各号の分 類別に、平成8年度から平成12年度までの集計を示しております。これはすべて業務上 疾病として、新規支給決定された件数です。一番下の合計欄を見ていただくと、平成8 年度までは年々減少しております。しかしながら平成8年から平成11年にかけては、横 這いもしくは若干増加という傾向も示しておりましたが、平成12年度に至って8,583件と いうことで、少し減少をしております。  各号別では、第1号の「業務上の負傷に起因する疾病」、これは非常に範囲が広いで すが、平成12年度が4,344件ということで減少しております。実はこのうちの約3分の2 、件数にして2,749件はいわゆる災害性の腰痛です。結果として8,583件という職業性疾 病全体のうちの2,749件、約3分の1に近いものが災害性の腰痛ということにもなろうか と思います。  第2号の「物理的因子による疾病」は、平成12年は718件、若干増加しております。こ こ数年、やや増加傾向という状況になっております。この第2号の中には騒音性の難聴 、暑熱な場所における熱中症、高熱物体を取り扱う業務による熱傷というような代表的 なものがありますが、例えば騒音性難聴については515件、かなりのウエイトになります 。いわゆる熱中症は89件、3桁まではいきませんが年間90件近い。高熱物体を取り扱う 業務による熱傷は65件。これらが主なものになろうかと思っています。  第3号の「身体に過度の負担がかかる作業態様に起因する疾病」。ここには振動障害 とか上肢障害、非災害性の腰痛といったものが分類されることになります。  第3号の疾病は、ここにあるように平成11年度までは、毎年200件ずつぐらい増加傾向 にありました。ただ、平成12年度にはその増加が止まって、逆に100件強減少して1,595 件となっております。このうちの特に振動障害については、この資料の3頁以降9頁ま で、少し詳細に分析、統計をしたものがあります。若干、そちらをご説明させていただ きたいと思っております。3頁をご覧ください。これが振動障害として新規に支給決定 をした者の業種別の人数です。一番下が合計で、平成12年度には784件の新規認定があり ました。そのうちの510件、かなりの部分を建設業が占めております。次に林業が160件 。林業については従事労働者数そのものの減少ということも、その要因としてあろうか と思いますが、近年、振動障害については建設業の増加というのが、非常に大きく目立 ったところになろうかと思います。その3頁の下には、現在、その振動障害によって療 養を継続している方の業種別の人数を示しております。平成12年度には9,210名の方が療 養を継続しておりますが、そのうちの4,196人の方が建設業で、3,000人弱、2,903名が林 業。この2大業種での療養継続者が未だに多い状況です。この統計に関係して7頁をご 覧いただくと、ここに療養期間別の療養継続者数が載っております。9,210人が平成12年 度末における療養継続者と申しましたが、そのうちの10年以上にわたる方が約半数、 4,279人の療養継続者がいる、非常に長期間にわたっているということが、この統計資料 からおわかりいただけると思います。以上、振動障害について少し詳細にご説明させて いただきました。  上肢障害関係の労災補償状況は、同じ資料の14頁をご覧ください。上肢障害関係につ いては、平成8年からやや増加傾向にあります。特に平成10年、11年と非常に大幅な増 加。平成12年についても若干ですが増加をしております。507件というような状況にあり ます。先ほど災害性腰痛が非常に多いと申しましたが、この第3号に分類される非災害 性の腰痛は年間48件ということで、それほど目立った数字ではありません。ただ、毎年 人数が2桁の中で平成10年度から11年度は、倍とまではいきませんが、数の上からだと そういったことになりますが、もともとの数がそれほど大きくありません。30件から50 件弱というような状況が、現在続いているということになっております。  2頁へお戻りください。第4号は「化学物物質関係の疾病」です。化学物質全体を通 して平成12年度の決定数は227件。そのうちの約半数の103件については、厚生労働大臣 が指定している告示に基づく化学物質による疾病です。  第5号は「粉じんの吸入による疾病」。先ほど補償課長のほうから、動向ということ でもお話をしたじん肺関係の疾病の件数です。平成12年度には1,322件。平成8年度以 降、わずかではありますが減少傾向にあります。なお、じん肺症等については、10頁に 少し詳細な統計資料をおまとめていただいております。10頁をご覧ください。この10頁 の表は都道府県別に、新規に支給決定を行ったものです。業種として工業、建設業、製 造業、その他という分類をしております。1,322件のうちやはり鉱業と建設業が、それぞ れ486件と470件、また製造業においても341件ということで、相当なウエイトを占めてお ります。なお、この療養の対象になっている疾病は、やはり相変わらずじん肺の有所見 者、それに伴う合併症の1つである続発性気管支炎、この疾病による療養が大部分を占 めている状況です。また、12頁から13頁には療養継続者の数を掲げております。詳細は 省かせていただきますが、参考にしていただければと思います。  また2頁へお戻りください。第6号「細菌、ウイルス等の病原体による疾病」です。 これも平成10年度まではやや増加傾向にあったものが、平成11年度以降、若干減少しま したが、平成12年度においてまた少し増加傾向にある。これを増加傾向と見るのかどう かは早計かもしれませんが、医療関係従事者にかかる伝染性疾患等へのり患が相変わら ず発生しているということが窺い知れるかと思います。  次は第7号の、いわゆる「職業がん」に分類されるものですが、これが平成12年度は 72件となっております。これについては少し詳細なものが15頁にありますのでご覧くだ さい。疾病名別の72件の内訳が記載してあります。平成8年度以降大きな傾向として、 石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫といったものが増加傾向にあるというこ とがおわかりいただけようかと思います。特に中皮腫の増加というのが、この中でも1 つ大きな状況としていま現在推移しているということです。逆にそれ以外のいわゆる職 業がんについては、いずれも1桁台ということで、大きな増加ということは見受けられ ないという状況になっております。  2頁へ戻ってください。第8号の前各号に掲げるもの以外に、厚生労働大臣が指定す る疾病ということで、告示で示している疾病が現在3つあります。「超硬合金の粉じん を飛散する場所における業務による気管支肺疾患」、「亜鉛黄又は黄鉛を製造する工程 における業務による肺がん」及び「ジアニシジンにさらされる業務による尿路系腫瘍」 の3つの疾病がありますが、平成12年度中にこれらの疾病として認定された事例はあり ません。  最後は第9号の「その他業務に起因することの明かな疾病」。平成12年度中に「その 他」として146件を認定しておりますが、このうち、先ほど補償課長のほうから動向とい うことで話があった脳血管疾患、虚血性心疾患等の脳・心臓疾患の認定が、平成12年度 は85件あり、精神障害が36件、いわゆる医療実践上の不利益として労災補償上認めてい たじん肺肺がんが24件。ほとんどこの3つの疾患群が146件の内訳ということになろうか と思います。  以上、平成12年度の業務上疾病の補償状況の説明をさせていただきました。平成13年 度の補償状況については現在集計中です。次回の検討会にはご報告できると考えており ます。ただ脳・心臓疾患、精神障害の補償状況については、別途統計を取っておりまし て、すでに平成13年度の状況がまとまっておりますので、簡単に説明させていただきま す。  同じ資料の19頁をご覧ください。先ほど平成12年度までの状況を報告させていただき ましたが、すでに平成13年度の報告がまとまっております。少し詳細なものになります が、すでに新聞発表等もさせていただいた資料です。それぞれ年度別の脳・心臓疾患の 請求件数と認定件数を並べております。合計欄を見ていただきますと、平成13年度は請 求件数690件ということで、平成12年度に比べて70件ほど増加しております。また、業務 上として認定した件数も、先ほど平成12年度は85件と申しましたが、平成13年度は143 件、前年度に比べると58件、パーセントにして68%の増加となっております。これは先 ほど補償課長からも説明させていただきましたように、昨年末に認定基準を改正して、 新たに長期間の過重業務を取り入れたことによって、そういった範疇の認定件数が増加 したものと考えております。昨年の12月以降平成13年度中ということになりますので、 今年度等についてはさらにその1年間の分がどういうふうに動いてくるか、この統計は もう1、2年見ていかなければならないと考えています。  20頁は精神障害の労災補償状況があります。こちらも平成13年度の請求件数が265件と いうことで、やはり前年度に比べて大幅に増加していますし、特に認定要件を整理した 平成11年度以降の請求件数、さらには認定件数がやはり大きく増加しているというのが 特徴的だろうと思います。そのうちいわゆる過労自殺と一般的には呼ばれている自殺、 未遂も含みますが、これは請求件数の半分まではいきませんが、約100件ほどの請求に対 して、認定件数は31件。やはり増加しているということが言えようかと思います。特に 認定件数等については、処理件数等との関係もありますので、一概に倍だとか、その事 案が増えたということになるかどうかわかりませんが、やはり平成12年度の約倍の70件 というような状況で、現在推移をしているところです。  以上、平成12年度の業務上疾病の労災補償状況、一部平成13年度も含めて説明をさせ ていただきました。以上です。 ○櫻井座長  ただいまのご説明に何か質問はございますか。 ○大久保先生  2点伺います。最初、上肢障害が増加傾向にあるというご説明でしたが、もしわかれ ば、どんな業種で増えているのかを教えていただきたい。  2点目は、今直近にご説明いただいた19、20頁の過労死等と精神障害等の請求件数と 認定件数の定義ですが、これはもう決着がついたものだけの数なのか、現在、上外の調 査中のものが含まれているのか、そこを教えてください。 ○職業病認定対策室長補佐  上肢障害の業種別というのは、現在の統計上、わからない状況です。また、そういっ たご指摘があれば、そういったものの情報を収集、別途考えなければならないと考えて おります。  脳・心臓疾患、虚血性心疾患関係の請求件数、認定件数の定義は、それぞれ当該年度 に請求行為があった、いわゆる請求をされたものと、その当該年度に認定をしたものと いうことになりますので、当然、時間的なずれが生じます。ですからある意味、その当 該年度の数の比較でしかない。ですから、請求件数割る認定件数で認定率というわけに はいきません。継続的な、若干時間がかかっている傾向もありますので、そういった数 字であるというふうにご理解いただければと思います。 ○大久保先生  手間がかかるのでしたらこだわらないのですが、増加しているということは、当然予 防ということを考えなければいけないので、もし簡単にわかるようでしたら、この次に でも教えていただければと思います。 ○職業病認定対策室長補佐  わかりました。確認しておきます。 ○平林先生  関連のことですが、今の上肢障害について、療養期間別の統計がいただけると、振動 病みたいにですね。というのは、改正の趣旨のときに、かなり間口を広げてと言っては なんですが、相当に範囲を広げたわけですね。それによってどの程度、療養期間の短縮 が図られているか。その辺をお示し願いたいと思います。 ○櫻井座長  それは今すぐお答えということではなくて、そういう資料も作ってほしいということ ですね。 ○平林先生  はい。 ○櫻井座長  ほかに何かありますか。よろしいでしょうか。  それでは検討事項に入りたいと思います。検討事項の1はILO第90回総会で採択さ れた勧告の件ですが、今回の勧告内容等について事務局から説明をお願いいたします。 ○職業病認定対策室長補佐  資料No.4がILO第90回総会関係の一覧表等に関する資料です。勧告の原文、職業病 比較表、それと121号条約及び勧告、元になっている条約と勧告ですが、この資料を用意 させていただいております。  本年、第90回のILO総会が開催されて、その中の第5議題として「労働災害と、職 業病の記録と届け出及びILO職業病一覧表」というのが取り上げられ、6月20日に勧 告が採択されております。この第90回総会における第5議案については、目的が2つあ って、1つは、1981年に採択された「労働安全衛生条約」、これは第151号ですが、この 附属議定書として業務災害、職業病の記録、通知及び国際比較可能な統計の作成、公表 についての基準を設定するということ。もう1つの目的が本検討会に直接関係があるも のですが、1964年に採択された「業務災害の給付に関する条約」、第121号条約ですが、 これの付属の「職業病リスト」を実質的に改定し、その改定のメカニズムを導入して、 独立した新たな勧告を採択する。特にこの勧告は予防と補償の両方を目的とするという 、大きな目的がありました。その結果、新たな勧告が採択されたわけです。  資料No.4の1頁のBが我々に関係する部分です。これの第2パラグラフ、ちょうど原 文の下に枠で囲っている部分。この部分が根幹になるわけですが、基本的にこの所管官 庁は法令等によって、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議の上、必要ならば 段階的に、予防、記録、届出、及び可能な場合には補償のための職業病一覧表が設定さ れるべきだという基本的な内容になっておりました。  その第1点(a)として予防、記録、通知及び補償のために、少なくとも業務災害の給付 に関する条約、これが1964年の第121号条約。これが1980年に改訂されていますが、この 条約の附表Iに列挙されている、これが旧の職業病リストということになりますが、疾病 を含まなければならず、従来のものは必ず含む。さらに(b)として、本勧告に附属する、 今回の新たな勧告ですが、これに附属する職業病リストに含まれるその他の疾病を、可 能な限り含まなければならず、可能な限り取り込むことを求めている。さらに(c)とし て、疑わしい職業病を可能な限り含まなければならないという、3つの段階的な扱いを 示しております。  実は、我が国の労働基準法に基づく現職業病一覧表、これが別表1の2ということに なりますが、当然、1980年に改定された条約のリストはすべて包含しているということ ですので、私が今お話をした1番目の(a)部分については、すでに満足をしているという 状況でございます。結果として(b)の本勧告の職業病リスト、今回のリストについて具体 的に対応を検討していくということになろうかと思います。  (c)については、予防的な観点が非常に強く入っているというようにも理解しておりま す。結果的に、これは補償課だけで対応するリストではないと考えております。将来的 には労働安全衛生関係法令を含めたそれぞれの規則その他で、結果的にこの勧告のリス トが満足していれば、その対応としてはいいのではないかというようにも考えておりま す。  さらに、もともと私どもの労働基準法施行規則第35条の別表1の2というのは、各 号にその他、さらに第9号に包括救済規定を持っております。従って、結果として例示 をされていないということで、補償の対象にならないということではなくて、それぞれ 個別に、医学的な因果関係が認められたものは、業務上として救える対応をしておりま す。結論から見ると、ILOの勧告というのは、結果として満足しているというふうに は考えております。ただ、そもそも例示されていない疾病の中から、新たに例示すべき ものがあるかどうかという、積極的な対応も必要になってくるので、今回のリストにお いて、やはり、新たに第35条に基づく別表1の2に例示すべきものがあるかどうかとい う検討を、当検討会でご検討いただく必要があろうかと考えております。  なお、少し整理したものを資料No.4の7頁以下にまとめておりますのでご覧ください 。この表は一番左側の勧告の職業病一覧、これが今回の勧告に基づいて新たに作成され たリストです。次の部分が第121号条約。これは1964年、さらには1980年に改訂されたも のです。このリスト上にあったものを○、なかったものを×。この第121号条約と勧告の 本体は、この資料の10頁と11頁に示しております。これが大本になっている条約とリス トで、これを表の中へ組み込むと、この7頁の表になるということです。×が付いてい る部分は今回新たに、結果的に追加された部分とご理解いただきたいと思います。一番 右の欄が別表1の2、これが現行の私どもの職業病リスト、補償のための職業病リスト で、あるものとないもの。既に第121号条約以上のリストを持っていましたので、第121 号条約から見ると×でも、私どもはすでに取り込んでいるのが○の付いたものです。  いくつか×と△がありますが、この点について若干ご説明をさせていただきますと、 例えば資料No.1の2頁に掲げてある私どものリストと対応することになろうかと思いま す。7頁の表で最初に△が出てくるのは、網掛けをしてありますが、1.1.23に「 薬剤による疾病」というのがあります。これは第121号条約では入ってなかったものが今 回取り込まれたもので、私どもの別表では△にしております。私どもの第4号の5に「 木材粉じん、獣毛、塵埃等を飛散する場所における業務または抗生物質等にさらされる 業務によるアレルギー性の鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患」というのが例示されてい ますが、この「薬剤による疾病」という部分は、この後段の「抗生物質等にさらされる 業務によるアレルギー性の鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患」。これは、抗生物質等に ばく露される業務において、すでにアレルギー性の鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患と いうものが明らかになっております。こういった形ですでに取り込んであるのではない かと、事務局としては考えております。この「薬剤による疾病」という書きぶりが広い ので、これで十分なのかどうかという部分で、検討の余地があるということで△とさせ ていただいております。  同じくそのすぐあとの1.1.24と1.1.25。「タリウムまたはその化合物」 「オスミウムまたはその化合物」。この2つの化学物質については、私どもの告示リス トには例示をしておりません。検討が必要ということで×という記載をさせていただい ております。  1つ飛んで銅、すず、亜鉛。これについては資料No.1の5頁をご覧ください。金属の 所の「亜鉛等の金属ヒューム」という所で「金属熱」という障害を載せております。こ の亜鉛等」の中に、金属関係ということで、ここの銅、すずといったものが含まれるの かどうか。一部△ということで記載させていただいております。  次の1.1.28。すずですが、これは7頁に「ブチルすず」として規定しております 。いわゆる一部分がすでに適用されているのではないかという部分について、それ以外 のもの、ブチルすずだけでいいのかどうかということが、基本的には今後の検討課題と いうことになろうかと思います。同じように1.1.30の「オゾン、ホスゲン」につ いても、ホスゲンは7頁に「頭通、めまい、嘔吐等」云々とありますが、オゾンについ ては全く規定がないということがあって、△とさせていただいております。  もう1つ刺激物。これは非常に範囲が広いのですが「ベンゾキノン及びその他の角膜 刺激物による疾病」。このうち角膜の刺激物についてはすでに別表の第4号の2に、「 フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の熱分解生成物にさらされる 業務による眼粘膜の炎症または気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患」ということで例示がさ れております。ただ、このベンゾキノンという物質そのものについてもよくわからない ということもあって、この部分についての精査が少し必要になってこようかと思ってお ります。  8頁にいって2.1.6「シデローシス」。シデローシスについては先ほど説明をさ せていただいた別表の第5号にある「じん肺症」このじん肺の中に含まれるのではない かと考えていますが、いわゆるじん肺の定義に該当しないような疾病という範疇がある のかどうかということで、△とさせていただいております。また2.1.7の「慢性閉 塞性肺疾患」。これは疾患名だけが並べられていて、何によるものなのかということも 全くわからないということがあって、これは少し整理が必要かなと思って×にさせてい ただいております。  同じく2.2.2の「職業上白斑」。これは過去、いくつか業務上として認められて いる化学物質による皮膚障害の一部分に該当しているのではないかと考えられるので、 一応×にしておりますが、現在考えられている皮膚障害、いわゆる化学物質の皮膚障害 として包括されていると考えていいのではないかと、事務局としては考えております。  3.1.14の「木材の塵埃によるがん」。これが今後の検討の中で一番重要かつ慎重 を要するものではないかと思っております。別表にも全く規定されていませんし、結果 的に私どもの事例としても現在ありませんが、諸外国においてはそういったことも紹介 されていると聞いていますし、文献等も。だからリストに取り込んだのだろうというこ ともありますが、先ほども申しましたように、非常に予防的な概念が強くなったリスト になっていますので、そういったものを補償上どう取り扱っていくかということについ ては、少しご議論、また、今後の整理をする必要があろうかと思っております。  最後に「坑夫の眼振」。これは当別表において、昭和53年に改正をしたときに、従来 あったものを落としたという経緯があります。そのころ日本では、もう坑夫の眼振につ いては事例もないということで、落としていいのではないかとして、結論としてリスト から削除したものが、だいぶ時を隔ててまた突然出てきた。若干、諸外国でまだ残って いるものが、ILOで採用されたのかなとは思っていますが、そういったこともあるの で△ということで、もう一度確認、精査が必要かなと考えております。 実は、以上、△、×、結果的に網がけをした部分につきまして、個々にご検討いただく 議題として、必要だろうと思っていますが、現実的な基礎資料もなくご検討いただくわ けにはいきませんので、現在複数の先生方にご協力をいただきまして、関係する文献、 その他、情報の収集をお願いしています。一応、11月ぐらいを目処にまとめていただく つもりで今お願いをしていますので、次回その結果を踏まえて、具体的な議論にお入り いただければと考えています。  もう1つ、実は今回のILOの勧告の基礎となったと言われています1991年の非公式 のILO専門家会合がありました。ここに本日、ご参集いただいています大久保先生が 出席なさっています。この後、補足をいただける事項等につきまして、大久保先生にご 発言をいただければと考えています。以上です。 ○櫻井座長  事務局の説明は大体おわかりいただけたと思います。大久保先生には資料を出してく ださっていますので、ご説明お願いします。 ○大久保先生  今黒谷補佐のほうから、非常に体系的、かつ、わかりやすい説明をいただきまして、 特に内容的に私が追加するようなこともありませんが、今追加の資料として、2枚もの でお配りしていますように1991年の12月9日から13日まで5日間、ジュネーブにあるI LOの建物の中で、開催された会議に私が出席をいたしました。  この会議は全くILOが個人指名でコンサルタントとして出席を要請したもので、当 時労働省からは別に何の連絡もありませんでした。私は逆に問い合わせをしましたが、 全く個人的なコンサルテーションということでした。従いまして、出てきた結果につい ても、労働省のほうに私は当時報告をしていないというふうに記憶しています。それか ら、もう11年経っていまして、実は私も学内で2回この間オフィスが変わりまして、イ ンフォーマルということでもありましたので、資料を一切処分してしまって、今回、黒 谷補佐から何か話をしてくれというので、大変困惑をしています。そういうことで、ほ とんど記憶だけですので、あまりお役に立たないかと思いますが、ちょうどParticipant のリストがございましたので、それだけ資料としてご覧に入れています。  いずれも、これは個人ということでありましたが、ただ、若干機関代表のような人が いて、2枚目にWHOの人とISSA(International Social Security Association )の代表者が出ていました。これは、おそらくILOが機関で代表者の出席を要請した と考えられます。あとは大学の教授が何人かと、それから、1番はICOH(国際労働 衛生協会の事務局をしていたシンガポールのJeyarathnamという人です。3番などには、 民間の会社の代表者も入っていますし、9番には労働組合の代表者も招請されていま す。反面、8番のように政府機関から出ている国もございまして、非常に多彩な性格 だったと記憶しています。  会議前半の2日間ぐらいは、各国のリストの状況について、それぞれ報告をするとい う形が取られました。私もたしか、これも記憶だけなのですが、韓国、台湾、その他、 日本を囲む国の情報を集めてきて、報告をするようにという要請を受けたというふうに 思います。出席者以外の国の状況もかなり紹介をされていました。先ほど来ご説明があ りますように補償としてのリストと職業病の報告義務のあるような国については、その ための、日本でいう届出伝染病のリストのような形の取扱いとの2つに分けて、説明が されました。前者の補償のリストとしては3通りあったと思います。  例えば、スウェーデンは全くリストを持たないで、どんな疾病であっても、業務の疑 いがあるものについては、全部申請をされて、それを検討するという形でした。ただ、 当時申請が増え過ぎて、全く政府のほうで処理ができなくて、お手上げだというような 報告を聞いたような記憶があります。  フランス、ドイツは今度は全くクローズドのリストで、日本のような救済規定がない リスト、固いリストで、それに載っていないものは、一切受け付けないというような方 法をとっている国もありました。日本はそういう意味では、オープン・エンデッドとい うか、要するに一応例示はしてあるけれども、それ以外のものも、入れるという形の国 で、この形を取っている所が数としては多かったように記憶しています。  その後、リストを変えるかという議論があったと思うのですが、私が記憶しているの は、EUの指令で使われているリストを出されて、それを整理するかしないかという議 論をしているうちに時間切れになったような記憶がございます。印象としては当然、こ の後、もう少し何回かコンサルタントが集まったり、あるいはもう少しフォーマルな検 討会が行われた後、条約の検討に入るというふうに思い込んでいまして、実際この会議 の議事録もその当日使ったドキュメントはたしか持って帰りましたが、それを議論の上 、直して、後で送ってくれるという約束であったのに、それが来た記憶がないのですね 。ですから、検討しっ放しというような印象を持っていました。  今回、急にこの話が出て、私も大変動転をいたしまして、机の中を全部探したのです が、どうしてもこれが見付かりませんで、このリストだけしかございませんでした。甚 だ申しわけないのですが、ごく簡単に報告といたします。 ○櫻井座長  どうもありがとうございました。ただいまの事務局、それから大久保先生のご説明で 、大体状況はおわかりだと思います。今日は、フリーディスカッションで、何かご質問 、ご意見等ありましたら、お出しいただきまして、先ほどもちょっと事務局がおおよそ の検討課題として網かけの部分について資料等を準備して、次回にもう少し具体的にご 検討いただくという方向を示しておられます。今日はその前の段階ですので、何によら ずご意見があれば、いただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○大久保先生  今の報告に加えて、私の意見ということで聞き流していただければと思うのですが、 この議論をしたときの印象としては、先ほど黒谷補佐からもお話があったように補償と いう言葉がほとんど出ないままの議論だったように記憶しています。要するに prevention のために国がきちっとした統計を取って、それをやはり国際的に比較ができ るようにという目的の議論が大部分で、先ほどご説明のあった個別のリストを見ますと 、非常にあいまいな表現になっているのは、おそらくそのせいだと思います。  ですから、予防目的で統計を取る以上は、間口を広げて可能性のあるものをみんな拾 って、統計にしておくほうがいいと思います。このリストを改めて見て、そういう思想 から出てきた表現のような印象を私は持ちました。たしかに、フランス、ドイツの辺り は、このSuspected Diseases というのを登録するというのを、ちゃんと法律の条項と して入っているのですね。ですから、そういう思想が後ろにあって、出席者のリストを 見ても、大部分がヨーロッパの人たちですので、そういう背景から、今回の勧告が採択 されたとの印象を私は持っています。そういうことで、ここの会が補償ということであ るのだとしたら、やはりそこのところを1回ちゃんと仕分けをして考えたほうが、多分 混乱が少ないという気がいたします。 ○櫻井座長  ほかにご意見はいかがでしょうか。 ○工藤先生  3点ほどあるのですが、1つは先ほどお話にあった薬剤による疾病のところです。こ れは、例えば抗生物質の吸入等で起こってくる職業性の喘息というようなのは、むしろ 2の1の4にあります「認定された感作作因または作業工程に固有の刺激物による業務 上喘息」あるいは皮膚にアレルギー性の反応を起こす場合も、例えば抗生物質の開発過 程などではあると思うので、こういうところに入ってきてもおかしくない。ここで言っ ている「薬剤による疾病」というのは、一体どういうものを言っているのか、そのカテ ゴリーの概念を是非確認していただければと思います。  それから、先ほどお話にありました2の1の6の「ジデローシス(鉄沈着症)」、そ れと慢性閉塞性肺疾患の2つについては、何によるということが書かれていないのが特 徴的だと思います。アーク溶接等で起こってくる、いわゆる溶接工肺というようなもの を、ジデローシスの中で取り扱っているのかですね。内因性の疾患としての鉄代謝異常 も、当然疾患としてジデローシスが起こっているわけですから、そういったようなもの が職業性疾患に混同されてくる可能性がある。  それから、もう1つの慢性閉塞性肺疾患については、大問題だと思います。COPD chronic obstructive pulmonary disease を慢性閉塞性肺疾患というふうに日本語訳し ますと、多少混乱が起こるのですが、現在は後天性免疫不全症候群をAIDSと言っている ように、COPDを単独の疾患名として取り扱っています。昨年WHOとアメリカの心血管 血液研究所の合同で、GOLD Global Initiative for Constructive lung-diseases とい う名前の、世界的なストラテジーが出されていますが、そこで言っているCOPDは、単独 の疾患名で基本的には肺気腫です。  なぜそういうものが出てきたかといいますと、WHOの予測では、COPD による死亡が 死因順位として1990年に6位だったのが、2020年には第3位に上がる。世界的な戦略が 必要だということで、つくられたわけですが、これは喫煙との関係で論じられているも のです。厚生労働省の最近の有病率では全国で22万人ぐらいの患者さんがいることにな っていますが、昨年発表された日本呼吸器学会と厚生労働省の呼吸不全研究班が中核に なって推進した調査では、530万人ぐらいいる。これは糖尿病に匹敵するような、国民的 な疾患です。  このCOPDが職業性という形で、原因が特定されないで、ただ、ここへ書かれるという のは、大変な混乱をもたらします。患者さんの診療上も非常に大きな問題が出てくるの ではないかと思います。そういう点で、是非ご検討をお願いしたいと思っています。以 上です。 ○櫻井座長  ありがとうございました。ほかに何かございますか。こういった個別の網かけ部分に ついてのご意見をただいまいただきました。 ○大久保先生  今、どういう作業との関係で記載されたものかというご質問が出たのですが、私が出 席した会議では、個別の物質についての検討というのは一切していないのです。ですか ら、その後何かやったのかもしれませんが、「これはどういう作業との関係ですか」と いう問い合わせをされても、多分答は返ってこないのではないかという気がするのです 。ですから、むしろそれぞれの国があとはやりなさいということだろうと思うので、こ こで日本としての態度を主体的に決めるということでいくよりしょうがないですね。 ○職業病認定対策室長補佐  実は今の点、私どもも、このリストを事前に総会前から見せていただいたときに、「 これじゃ」ということで、同じような質問をぶつけてあるのですが、答は返ってきてな いというのが実情でございます。もう一度、いくつかの手だてを考えて、できるだけの 情報を集めてみたいと思っています。最終的に出てしまったというのも事実かもしれま せんし、逆にEUのどこかの国で、こういった規定の仕方をしているものがそのまま採 用されているという気もちょっとしますので、もしそういうことがわかれば、その各国 の状況というものを調べることができるかと思います。少し、時間をいただいて、再度 情報を集めてみたいと思っています。 ○櫻井座長  個別に検討する課題だろうと思います。薬剤による疾病も先ほど呼吸器に限定するの かどうなのか、抗がん剤による発がんとか、そういうような報告を見たような記憶もご ざいます。それは数はそんなに多くはないのでしょうが、検討する課題なのだろうと思 います。  あるいは閉塞性肺疾患も職業性という場合に、一部の文献では何か刺激性の化学物質 で、こういったものを助長するかもしれないというような印象は持っていますが、あま り明確に証明されているかどうか、その辺りも検討課題だろうと、私個人としては思っ ています。  いかがでしょうか。ほかに何か、ございませんでしょうか。そろそろ先へ進ませてい ただいて、よろしいでしょうか。では、具体的な検討は基礎資料を準備していただきま して、次回の検討会で議論するということにいたしまして、検討事項2の「その他に包 括される疾病」ということです。新たに別表に追加するものがあるかどうかということ ですが、「その他の包括される疾病の労災補償状況」というのが基礎資料になりますの で、事務局から説明をお願いいたします。 ○職業病認定対策室長補佐  引き続き私からご説明いたします。資料No.5が労基則の別表の1の2の各号、その他 に包括される疾病です。これは国内での発生事例の中から新たに例示すべきものがある かないかということを先生方にご検討をいただくための基礎資料として準備をしたもの です。お手元の資料No.5の1頁をお開きいただきますと、総括表といたしまして、昭和 53〜平成5年までは既に一まとめにしてありますが、それ以降、平成6年から各年度ごと の各号の「その他」、2の13というのは2号の13に「その他」の部分があります。そう いった意味で、3号、4号、6号、があります。5号には「その他」がありません。8 号は告示です。9号がさらに包括的な救済規定ということで、各号の「その他」として 認定をされた事例、したがいまして、個別に検討して医学的な因果関係は認めました、 しかしながら、例示をされている疾病の範疇ではないという疾病として認定をした事例 です。  それぞれ、総括表の中で総数で見ていただきますと、平成12年度は240件の「その他」 があるということになりますが、これの増加原因は先ほど9号の脳・心臓疾患のご説明 をいたしましたが、これの増加が実は非常に大きく影響した増加というふうに考えてい ます。それ以外のものにつきましては、若干の数字はありますが、それほど大きな、傾 向的な変化はないというふうに思います。  順次、各号の「その他」をもう少し詳細に整理をしていますので、2頁以降をご説明 いたします。この発生原因ですが、「その他」といいながら、ある程度、「その他」が 例示をされているようなことがありますので、こういったものが継続的にあるというこ とは、逆に例示をする必要があるというようなことの1つの現れかもしれませんので、 こういった整理です。特に1〜7は定まった分類をしているわけではありません。1番 目の2号の13「物理的因子」ですが、過去において、寒冷の四肢の疾患とか、そういっ たものがございますが、あって1例か2例ということで、非常にここの「その他」とい うのは少いです。昨年12年度の1例は異常高温下で作業したことによる脱水症です。実 は熱中症ですと、入る場所があるのですが、多分脱水症なので、「その他」になったの ではないかという想像ですが、そういった事例です。  次に、3〜4頁に「身体に過度の負担のかかる作業態様による疾病」ということで、 先ほど上肢障害のことが出ていましたが、平成12年度の「その他」の事例といいますの は、15件認定をしています。その内訳ですが、それぞれ骨、関節の疾患、腱、神経の疾 患等の上肢に該当すると考えられるものが6件でございます。これは関節炎、キーンベ ックといったような症例があります。  それ以外の9件ですが、手根管症5件、玉ネギネット詰めの作業員の両背柱神経麻痺 、それから1名、VDT作業による眼精疲労、宝石箱の製造等の頚椎症、機械工の右手 の皮下腫瘍といった事例がそれぞれ発生しています。非常にバラエティに富んでいると いうことで、特徴的なものというのがこの中から出るかどうかというのは、若干ばらつ いているような状況です。強いて言いますと、「その他」の中に手根管の症候群が5件 ほどということで、毎年2桁まではいきませんが、出ているというのが1つ統計上言え ると思います。  化学物質関係ですが、5〜13頁がすべて「告示その他化学物質」です。最終的にこの 「化学物質」の所で13頁をご覧いただきますと、一番最後に、12年度の「その他」とし て認めたものは、51件です。「単体または化合物」としては21件、「混合物及びその他 」として30件と大きな括りになりますが、この中で実は5頁の「単体または化合物」の (8)以降(12)までが次亜塩素酸ナトリウムの症例です。皮膚炎、中毒、肺水腫と若 干ターゲットになった疾病に違いはありますが、この次亜塩素関係のケースというのが 平成7年から11年までで、13件認定をしています。平成12年になくなってしまっている ものですから、若干そのことがどうなのかわかりませんが、やはりこの次亜塩素酸ナト リウムの障害というのは、例示をしていくか否かの中で、ひとつ注目すべきものなので はないかというふうには統計資料上、窺い知ることができるかと思います。  同じく7頁の(46)ですが、やはり平成8年以降、フロンガスによる肝障害という事 例が毎年1〜2例発生しています。トータルとしては7例ではありますが、やや毎年の ように発症しているということが、ひとつ注目すべきことになろうかと考えています。 さらに9頁ですが、実は件数だけを見ますと、非常に混合物が多く、特に(1)〜(3 )の理美容師におきますパーマ液、もしくはシャンプー、洗浄剤というような、いわゆ る混合物によります皮膚炎が年間で相当数出ています。特に、この3つのカテゴリーで 最近7年間で76件という認定の件数を数えているということです。過去に、この混合物 については検討をいただいた時期もあるというふうに聞いていますが、やはり相変わら ず発生例が多い。ただ、混合物というものをどう例示をしていくかという実際上の部分 になりますと、なかなか難しい部分もあろうかと思います。やはり、こういった数がま とまっているというのは、無視はできないというふうに事務局としては考えています。 以上が化学物質です。  14頁に「細菌、ウィルス等によるもの」が書かれています。ここの「その他」に該当 するものといたしまして、例えば外国出張中のいわゆる伝染性疾患へのり患とか、給食 作業者の伝染性疾患、その他ということで、「その他」の中にもう1つ「その他」があ るような形になりますが、件数的には27例で、そのうちの7名が外国出張にからむ。そ れから給食等につきましては、昨年は若干少くなっています。それから、「その他」と いうことで、風疹、水頭症、ウィルス性肝炎、疥癬といった事例を見ますと、若干それ ぞれ個々の事例の中で、特に「その他」の事例は一番下に「その他」の「その他」の「 その他」みたいな所がありますが、具体的に示しています。  例えば、1例を申し上げますと、注の2の「肺結核で入院した取引先の所長を職務と して見舞いをして、肺結核に感染した」、これも業務上ということになるものですから 。それから、「保育士が伝染性紅斑に感染した」、「農作業での過敏性肺臓炎」とか、 「農夫肺」とか、「調理の味見をした際に、結果として、アニサキス症にり患」、きわ めて個別の事例といっていいものもありますし、ある意味ではごく当然に発症するとい うようなこともありますが、そういった事例を含めて27件という感染症関係です。  最後になりますが、15頁が先ほどご説明した脳・心臓疾患を中心とした件数が多いと いうふうに話をした9号ですが、先ほど申し上げましたように、146件の平成12年度の認 定のうち、脳・心臓疾患関係が48、37、36、それから肺がんで、この12、13、14という ものでほとんどです。それ以外ということ1件だけ、大声を出したことによる声帯ポリ ープ、急性声帯炎で、これは過去にも事例がポツポツありますが、これそのものを取り 上げるということになるかどうかという点では、個別事例ではないかと考えています。 以上、平成12年度の「その他」につきまして、ご説明を申し上げましたが、事務局とい たしましては、この中で、やはり先ほどお話し申し上げました5頁の次亜塩素酸ナトリ ウムに関係する障害、それから7頁のフロンガスの肝障害、さらには数のどうしても多 い理美容師のシャンプー、洗剤、コールドパーマ、そういった洗浄液による症例、こう いった部分については、やはり継続的な認定例があるというようなこともありますので 、ひとまず例示すべきか否かという俎上に乗せてのご検討が必要ではないかというふう に考えているところでございます。  ただ、次亜塩素酸ナトリウムにつきましては、平成10年度までは継続的にあったので すが、平成11年度以降1例、12年度0ということで、急激に数が減っています。若干、 使用範囲の問題とか、一時期やはり話題になった物質ですので、そういったものも含め て、ある程度代替品に変わりつつあるとか、そういった状況もあるのかもしれません。 次回の検討会までに、先ほども冒頭お話しましたように平成13年度の状況がすべてまと まりますので、その13年度の状況をもう一度加えてみて、いま申し上げました3つを含 めて、もう一度、ご議論の対象を絞っていただければというふうに事務局としては考え ているところです。以上です。 ○櫻井座長  事務局から3つほど、具体的な検討課題が示されています。その他、これはどうなの かということもあろうかと思いますが、ご意見をいただきたいと思います。 ○青山先生  質問なのですが、先ほどの大久保先生の話とも関連するのですが、認定の方式という のは我が国でやっている例示列挙方式と、総括方式がありますね。例示列挙方式の場合 は、そこに例示されている場合は、被災者の挙証責任が免除されていますね。「その他 」はどうなんですか。「その他」はやはり被災者が挙証責任を認定過程の中では持つと いうことですか。 ○職業病認定対策室長補佐  基本的にはそのような考え方になろうかと思うのですが、実際には少なくとも、その 根拠になるのは、例えば請求者の方が医学文献をすべて、「こういう証拠があります」 というところまでの挙証義務を私どもどうこうと言っているわけではなくて、実際上は ある程度、例えば主治医の先生の診断とか、いくつかそういったものがあって、請求行 為に及ばれたものは結果として、私どもに上がってきた段階で個別に、先生方のご協力 を得ながら、いろいろ文献レビューをしたり、専門家のご意見書いただきながら、結果 的に総合判断しているというのが実態の形です。一応、法的な考え方としては、そうい う理屈になろうかと思いますが、実際上はそれを医学的に因果関係があるという証拠を 持って来なさいという形の請求、さらには手続を要求しているわけではありません。 ○青山先生  例示列挙方式でも、総括方式でも、両方とも方式としてそれぞれ長短がありますね。 だから、我が国の場合、例示列挙方式で被災者に挙証責任を免除しているけれども、だ からといって、これに引っかかっていないものは全部駄目というのではないということ で、「その他」が入っているわけですか。 ○職業病認定対策室長補佐  はい。そういうことです。 ○青山先生  先ほどの大久保先生の話ではないですが、私もいろんな国際学会なんかに行くと、い つもそれを問われるわけですが、健保があるものだから、健保に流れていないかとかで 問題になるのですが、やはり予防と補償ではちょっと違うわけですね。因果関係という ことになると、非常に難しくなってくるわけですが。  過労死なんて、絶対医学的に過労で死ぬことはないのではないかと思うが、裁判では 自殺も入ってしまう。疲れて自殺するというのは、因果関係はどう結び付けるかという のは、これは医学的には非常に難しいと思う。ところが、そういう裁判事例が出てくる と、やむを得ないですね。だから、補償の問題と予防の問題は密接に結び付けなければ いけないし、ある程度割り切りをせざるを得ない。  だから、今度、個別の検討に入るに当たっても、その辺はある程度は整理をしておか なないと。私はよそへ行くと、困ってしまうのです。過労で死ぬのかということになり ますと、これは、やはり突然死ですね。そうすると、長時間労働の中の突然死で、労働 時間が長引けば、頻度が上がる。これは当たり前のようなもので、結局、基礎疾患があ る、突然死の引き金が職場にあるのか、家庭にあるのかということになってくると思い ます。それだけに挙証責任を免除するということは、非常に難しくなってくる。そこら はある程度整理しておかないと、まずいのではないかという気がします。個別の検討に 入る前にですね。 ○職業病認定対策室長補佐  先生ご発言の中には、ごもっともの部分もあるのですが、ただ、私どもとしては行政 なりの整理は出来ていまして、例えば脳・心臓疾患がなぜ業務上かというのは、もとも と私病であるという前提に立って、もともと労災保険の考え方の中に、私病が要因であ っても、業務が非常に急性増悪の要因となり、それによって結果的に死亡に至ってしま ったと。そこに業務が非常に強く関与したものは、その部分については業務上であると いうそもそも論の考え方があるものですから、そういったものに対して、脳・心臓疾患 の場合には、最後の急性の増悪の部分が業務に関連していれば、それは結果として業務 上に認める。  精神障害の自殺の場合も、大本に精神障害という疾病を認定した上で、それによる死 亡という考え方を取ってはいるのですが、一般的になかなかそういうマニアックな部分 というのは、理解しにくい面があろうかと思いますが、当然に予防の概念と疾病の概念 はある意味で整理は必要ですし、逆に乖離していてもいけないのではないかと我々は思 うものですから、例えば業務上疾病の範囲と予防の範囲が違うのは、予防の範囲が広け ればいいのでしょうが、それが逆転するというのはあり得ない面もあろうかと思います 。  そういった整理は、常に私ども関係各課とも、今後の検討会の検討結果もそういった 部分に影響が出てくると考えていますので、その辺、基準局内、行政内で十分整理しな がら、進めさせていただきたいと考えています。 ○奥平先生  従来職業病として例示されているものは、特定の原因によって、特定の疾病が起こる ということが、疫学的にはっきりしているものだけが例示されているので、今回の説明 のように、ただ症例が多いというだけでは、必ずしも例示の対象にはならないのではな いかと思います。従って、化学物質による疾病で、認定されている例があっても、全部 同じ病態なのかどうか、そこら辺の資料がないと、議論ができにくいのではないかと思 います。 ○岡田先生  脳・心臓疾患とストレスないしは疲労ということとの関連で、やはり挙証責任という か、例えば1カ月で80時間であるとか、60時間であるとかいっても、質が随分違うし、 時間にかかわらず本人の受けているストレスがまた随分個人差があるわけです。産業医 が現在相当活動しているわけですが、一定時間ごとに区切って、100時間以上、80時間、 60時間とグループ分けをして、実は私も産業医をやっているものですから、項目を書き 並べておいて、1人1人面接したわけです。  その項目を満たしているか、ないし、それをA、B、Cぐらいに分けて、睡眠時間は 短いか、寝苦しいか、体重が減ってきたか、食欲がどうか、休日に何をしているかとい う項目を取っていきますと、やはり100時間と80時間、100時間と60時間というよりも、 むしろ個人の受け取り方、それに個々の業務が違いますからね。そういうことが、ある 程度条件付けできるのです。整理ができるのです。ですから、そういうモデルのような ものを作っておいて、それを利用するしないは別として、そういうものを職場の産業医 が把握していますと、非常にはっきりした証拠になって、どれだけ、この人はコーピン グできているか、この人は、悪いほう、悪いほうにいっているかというようなことを、 そういうモデルを提示して、個人個人の疲労度がどのくらいかということの把握をして 、自分の職業グループの中でのランキング、また、ほかの職業とのランキングの比較が できるようなことを、基礎的にやっておきませんと、「俺は疲れているんだ」というだ けで疲労度が証明できませんからね。そういうことの努力が必要なのではないかと思い ます。  これは強制的ではなくて、こういうものがあると、非常に有利だと。そこの職場で、 実際、事例が出たときに、普段のことがちゃんと把握されていて、この人はどのくらい の疲労度で、どのくらいのランクにあるのかということが非常に具体的に出てきますか らね。それが非常に有利だということがわかれば、産業医が結構、力を入れてやってく れて、いろんな事例がはっきりしてくると思います。アンケートとしても、どういう項 目を押さえればいいかというようなこと検討する小さな委員会でも作ってやっていただ けると、将来ずっと役に立つと思います。5年ぐらいかければよいものができると思い ます。 ○櫻井座長  ほかにいかがでしょうか。先ほど、フロンガスによる肝障害というのが出ていました ね。これは私の記憶だと、同じ物質ではないですね。フロンという大括りでは入るけれ ども。 ○職業病認定対策室長補佐  その辺の精査が必要ですね。数として、まとまっているのは次亜塩素酸ナトリウムで すね。個別の中身を見ますと、大体特徴的なところがわかっていまして、ほとんどが食 料品製造業の機械の洗浄等で使っている状況の中で、誤ってかかってしまった、濃度の 高いものを吸ってしまった、場合によっては塩素ガスが発生したというような形のもの が実は多いのですが、これは具体的な検討の必要が出てくれば、そういった資料を整備 して、お示しをしたいと考えています。 ○櫻井座長  たまたま平成12年度はないけれども、13年度でどうかということですね。 ○職業病認定対策室長補佐  確認をさせていただければと思っています。 ○櫻井座長  あとは混合物の問題では、前にもだいぶ議論をされて、なかなか例示をするのは難し いということで、現状のままになっているようですけど、これも何かいい考え方がある かどうかということですね。今日のところはよろしいですか。  それでは、今日いくつかの課題が示されていまして、次回は今年中にやるようなお話 ですので、割合近い将来ですが、そのときまでには平成13年度の状況もわかっていると いうことですので、それも見た上で、リストアップするかどうかということについての 検討も次回まわしということにさせていただきたいと思います。以上、大体用意された 議題については、概ね終了しているかと思いますが、全体を通じて、何かご追加のご質 問、ご意見等はございませんか。ないようですね。どうもありがとうございました。次 回の日程等を含めて、事務局から今後の予定についてお願いします。 ○職業病認定対策室長補佐  今座長からお求めをいただきました次回の日程につきましては、先ほどもお話申し上 げましたようにILO関係の文献レビュー等の基礎資料に、なお若干のお時間をいただ ければと考えています。従いまして、11月の下旬から12月の上旬ぐらいに本検討会第2 回を設定させていただければと現在考えています。日程調整表を別途用意していますの で、お持ち帰りになりまして、来週にでも先生方のご予定をご記入ください。整理の上 で、後日、日時を決定させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○櫻井座長  では今日の検討会はこれで終了して、次回にはもっと実質的な検討に入りたいと思い ます。 ○職業病認定対策室長  本当にお忙しい中、この会議に出席していただきまして、ありがとうございました。 第2回目が11月下旬、あるいは12月上旬ということでございます。その間、事務局のほ うも第2回目の会議に向けまして、先ほどいろいろございました点につきまして、準備 等を怠りなくやっていきたいと思っています。本当に本日はありがとうございました。                   (照会先)                   労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室                   職業病認定業務第二係   (内線5571)