02/09/04 第4回新医師臨床研修制度検討ワーキンググループ全体会議事録       第4回 新医師臨床研修制度検討ワーキンググループ全体会                     日時 平成14年9月4日(水)                         13:00〜                     場所 経済産業省別館(944会議室) ○医事課長  定刻になりましたので、ただいまから「新医師臨床研修制度検討ワーキンググルー プ」を開会いたします。 委員の皆様方におかれましては、お暑い、またお忙しい中をご出席いただき、誠にあり がとうございます。  初めに、本日は梅田委員からご欠席との連絡をいただいております。また、本日も文 部科学省から高等教育局医学教育課の村田課長がご出席しております。当省労働基準局 監督課から、引地中央労働基準監察監督官が出席しております。  また、この度8月30日付で人事異動がありましたのでご紹介をいたします。まず医療 保険・医政担当審議官の阿曽沼です。総務課長の栄畑です。企画官の土生です。医事課 課長補佐の田原です。同じく三浦です。以上よろしくお願いいたします。  それでは、本日の議事について矢崎座長、よろしくお願いします。 ○矢崎座長  前回の第3回全体会においては、医師臨床研修の目標については概ね取りまとめてい ただきました。本日は残された項目について、全体会として取りまとめの議論を進めた いと思います。初めに資料の説明をお願いします。 ○医事課長  私から資料の確認と、それに伴う簡単な説明をいたします。資料1は委員名簿、資料 2はプログラム小委員会の検討資料で、2−1〜4まであり、それぞれ最新の版のもの を揃えてあります。資料3は施設基準小委員会の検討資料で、第5版ということです。 資料4は処遇等小委員会検討資料で、4−1〜4まであります。資料5は、委員提出資 料ということで梅田委員、矢崎委員から提出された資料です。資料6は15年度の概算要 求です。資料7は、医療提供体制の改革の基本的方向です。資料8は、研修に関するア ンケートについてということの紹介の資料です。  資料2の関係で、今回の資料がどのように前と変わっているかについて概略申し上げ ます。資料2−1の17頁。Cで「特定の医療現場の経験」とあり、この中で「必修」と いうこことが書かれていますが、どれだけの必修の場面を経験するのか明確でない、と いうご指摘がありました。これに対して、Cのすぐ下の2行を追加しております。「必 修項目にある現場の経験とは、各現場における到達目標の項目のうち一つ以上経験する こと」という文言を追加しています。  次は資料2−2で、「研修プログラムの基準」の第6版です。この3頁目のローテー ションの考え方についての説明の中で、前版ではa〜dまでの4案となっておりました が、その後の議論でa案と全国医学部長会議提案のb案の2つに集約して記載しており ます。  資料3は指定基準の関係です。2頁目の【単独型】の基準の(1)「病床数」という 所です。前の版ではa〜cの3つの案がありましたが、200床以上という案を削除し、a とbの2つに集約しました。【単独型】の基準の2の(2)「診療科」の所では、現行 の基準を削除し、麻酔科と脳神経外科を追加した案に整理しました。  3頁、【単独型】の基準の2の(3)「指導医」という所では、現行の基準を書いて ありましたが診療科の関係でそれを削除しております。  4頁の「定員」の所は、a案について病床数は「・・床」に1人ということでした が、これを「目標を達成するのに必要な症例を確保できる人数」という内容に変更して おります。  5頁目は病院群の関係です。(1)の「病院群の構成」の所では、これまでの事務局 提案では研修プログラムと研修病院の基準を別々のものとして取り扱う、という方向で 検討をしましたが、その後のご議論を踏まえ、これらを一体のものとして取り扱う、と いうことに整理しました。したがって、この研修プログラムについては同一の群の中で 構成されることになります。またこの際、【単独型】及び【管理型】の病院について も、他の病院群の【協力型】の病院になることができる、というように整理したいと 思っております。 「病院群の基準」という所では、【管理型】と【協力型】と併せて充たす基準について は、【単独型】の基準に準ずるということで、記載内容を整理しました。資料2、資料 3は以上です。  資料6は「平成15年度概算要求 臨床研修関連予算」ということでその部分を抽出した ものです。1番の臨床研修費の補助金については、ほぼ同額です。2番目のマッチング システム導入費約1億円、臨床研修の指導医養成講習会5,000万、モデル事業、そして施 設整備というような関係で、15年度概算要求においても、15年度に実現可能なものにつ いては準備を順次進めていくという方針で予算要求をしているところです。  資料7は、先ごろ厚生労働省から発表されました「医療提供体制の改革の基本的方 向」。これは医療提供体制全般についての改革のまとめですが、その中にも臨床研修に 関連する部分がいくつかありますので、参考のために資料として提出しました。  資料8は、「臨床研修に関する医学生へのアンケート」ということで、学生の希望、 考え方を把握しておくべきではないか、というご意見を踏まえて、インターネットを通 じて学生のアンケートをしようということで、先ごろから掲示をさせていただいている ところです。資料については以上です。 ○矢崎座長  ありがとうございました。資料の内容については後ほど議論したいと思います。添付 された資料で梅田委員の資料がありますが、前回梅田委員からご説明があり、ずいぶん その議論に時間を費やしたところです。今日はオブザーバーとして、梅田委員の代わり に佐原病院の竜先生がいらっしゃっております。何か追加ということであればお願いし ます。 ○竜院長  ただいまご紹介いただきました竜でございます。千葉県立病院群といたしまして高度 専門病院、がん、循環器、子供病院などの病院と、地域医療を担う地域病院、佐原病 院、東金病院等が協力し合い、この臨床研修に当たりたいということを考えさせていた だきました。  その特徴は、2年間にわたって同一研修医を責任を持って指導する担任指導医と、そ れを統括するプログラム責任者というものを置いたということで、研修がつつがなく行 われているか、不足な点は更に追加研修が必要かなど、きめ細かく研修させるという点 が特徴になっているかと思います。  さらには梅田委員のご意見にもありますが、地域医療では医師の慢性的な不足状態に 悩まされておりますので、こういう研修を通じて地域医療の重要性、さらには将来的な 人材の確保を目指したいと考えております。  また、専門病院においては、あまりにも専門性になるが故の欠陥ということもありま すので、これらの研修を通じて医師としての原点に戻る、というメリットもあるかと考 えております。 ○矢崎座長  どうもありがとうございました。本日の議論に入る前に座長として一言申し上げたい と思います。昨年6月に発足した「臨床研修必修化検討部会」において、11回にわたっ て行われた議論を基に、必修となる新臨床研修制度についての理念を「論点整理」とし てまとめ5月に報告いたしました。そして、それに基づいて実際の制度設計をどう行う か、ワーキンググループが組織され、最も重要なテーマである研修目標、研修プログラ ム、研修が行われる施設基準、そして処遇についての課題をグループに分かれて検討 し、その後、全体会として今日まで4回開催し討議しました。  その議論については公開されておりますし議事録も公表されておりますので、その内 容は全体会の委員だけではなく、そのほか皆様よくご存じのとおりであります。議論は 錯綜した部分はありますが、そろそろ研修施設が研修プログラムや病院群を組織するタ イムリミットが近づいておりますので、基本方針を早急にまとめなければなりません。 そこで大変僭越ではありますが、私が検討部会、そしてワーキンググループ全体の資 料、議事録を見直して、いかにすれば良い研修制度が確立されるかを考え、案を作成し ました。個別的に大変有意義なご意見をいただきました委員の皆様には改めて厚く御礼 申し上げます。そして、委員の皆様にご意見をいただいた後に、ご了承がもし得られま すれば、全体会としての報告とさせていただければ大変有難いと思っております。  しかし、その研修プログラム、研修施設基準については、いま申し上げたとおり本日 でもうタイムリミットが近づいておりますので、一応まとめさせていただきたいと思い ますが、最も重要な課題である処遇の問題があります。それについては予算編成まであ と1年ありますし、さらに評価とかマッチングなど未だ十分議論が行われていない部分 もありますので、このワーキンググループは存続し、引き続きこれらの問題について今 後も議論を深め、良い研修制度確立のためにも、支援に尽くしたく存じております。委 員の皆様方には大変お忙しい中恐縮ですが、今後もご協力いただきたいと思いますし、 事務局のほうでも、この会が存続するように面倒を見ていただければ大変有難いと思い ますので、よろしくお願いいたします。  それでは臨床研修について、これは私がまとめた案ですが、何かご質問、ご意見があ ればおっしゃっていただきたいと思います。  「研修目標」については一応ご理解いただいたということで、本日は「研修プログラ ム」から入ります。「研修プログラムは2年間をプライマリケアにおける基本的な診療 能力を修得する期間とする。そして、研修目標を達成できるプログラムでなければなら ない」。これが前提であります。 項目は5つに分けました。「当初の12ヶ月は、内 科、外科、救急部門(麻酔科を含む)を基本研修科目として研修すること」としまし た。この趣旨は、研修目標を出来る限り1年以内で修得するということです。出来る限 り1年と申しますのは、2年で到達目標を修得するのですが、基本的なところは出来る 限り、ということですのでご理解いただければと思います。研修目標の多くの部分は内 科で研修することによって達成できる項目が極めて多いということで、そこにあります ように「なお内科研修は6ヶ月以上とする」としています。当初の12ヶ月の間にこの基 本研修科目を研修することとなっておりますが、研修プログラムを作成する上でどうし ても、例えば救急部門が2年目にわたることもあり得ると思いますが、原則として当初 の12ヶ月は基本研修科目の修得に当てていただきたい、ということにしました。  2番目は、「小児科、産婦人科、精神科及び地域保健・医療を必修科目として、それ ぞれ1ヶ月以上研修すること」としました。初めの案は、小児科が「基本研修科目」と 入っておりますが、小児科は研修の科目として回る場合には小児科に特有な病態・疾 患、と申しますのは、大人で診る症状・症候と同じものが小児で起こった場合には、ず いぶん予後とか治療法が違うということをここで学んでいただく。そして急性の疾患に 関しては、救急部門というのは、いまでは小児の救急が大きな部分を占めておりますの で、是非この救急部門で急性の対応をしていただければと思います。ただプログラム で、例えば小児科は1ヶ月ではなく2ヶ月、あるいは3ヶ月に研修すべきだというプロ グラムであれば、そのような多様なプログラムも是非設けていただければと思っており ます。  そして、産婦人科、精神科及び地域保健・医療を必修科目としました。これについて は私もいろいろ意見を申し上げましたが、こういう科目は1ヶ月以上是非研修していた だきたい、というご意見があり、私もそのご意見に十分納得いたしました。ただし、こ れは各診療科が独自の対応で研修を行うのではなく、どこかで、これは学会などでもよ ろしいし、あるいは、ワーキンググループを組織されても結構ですが、研修目標を達成 できるような研修内容にしていただきたい。ですから、おおよそのマニュアルを、例え ば1ヶ月であれば、こういうように研修する、という基本的なマニュアルを作成し、そ して各施設での精神科、産婦人科、あるいは地域保健・医療などで、それを基にして、 その施設で可能な限りの研修ができるように努力していただきたいという意味です。  3番目の基本研修科目と必修科目以外の研修期間は、どういう内容でどういう性格な のかというご意見があります。基本的には1)、2)で不十分であった研修部門、特に 1)は基本的な部分でありますが、それでは不十分であった研修部門を修得するという のが1つの内容であります。そして「研修医が研修プログラムを選択し、積極的に研修 に取り組むことができるように研修プログラムの特色づけやさらなる研修の充実のため に活用すること」と性格付けをしました。  実際に研修医がプログラムに参加するときに、研修医がプログラムをどう選択しアプ ローチしていくかということでマッチングというシステム、「マッチングというのは言 葉が悪くて良い組合わせというのが正しいのではないか」というご意見がありました が、とりあえず「マッチングとは、研修プログラムと研修医の希望との最適の組み合わ せを実現するためのシステムであり、研修医の強制的な再配置に用いないこと」が重要 であるということです。また、「研修プログラムに参加する研修医の出身校による片寄 りがなるべく少なくなるように努めること」としました。これについては後ほど時間が あれば説明いたします。  先ほど「内科研修は6ヶ月以上」と申し上げましたが、いま内科でも専門といいます か、循環器、消化器、血液というふうに分かれておりますが、これもまた横並びで、各 科を4週間ごとに回るということではなく、あくまでも研修目標を達成するためのプロ グラムで、どこの内科をどう回ったらいいかという視点からプログラムをきちんと作っ ていただくということです。  以上のプログラムについて、ご意見、ご質問はありますでしょうか。 ○星委員  大変ご苦労されて、おまとめいただいたことに対して感謝申し上げます。ただ、6ヶ 月以上の内科研修ということ、それと最初の12ヶ月に3つの科をまわるということがあ りますが、このような決めごとはなるべく少なくするべきではないかと思っておりま す。この7つの項目のうち、内科、外科、救急部門と、それから小児科、産婦人科、精 神科及び地域保健・医療はグレードが違うのでしょうけれども、もともと上に「研修目 標を達成できるプログラムでなければならない」という大前提が書いてあります。  具体的に申しますと、当初の12ヶ月は、この3つの科を研修しなければいけないとい うのではなく、合わせて、例えば1年半なら1年半の期間にこれら7つの項目について 必要な期間研修すると。それは最低1ヶ月なら「最低1ヶ月」というのを入れてもいい のかもしれませんが、それは独自に目標を達成するためにそれぞれの病院、あるいはそ れぞれの病院群の中で適切なアロケーションといいますか、どこへ行ってもらえば、ど のぐらいの期間行ってもらえば達成できるのか、というような自由度をもう少し入れて もいいのではないかと思います。 ○下村委員  それはどちらがいいのかよく分からないのですが、6ヶ月以上がいいのだということ であれば「6ヶ月以上」とはっきり決めたほうがいいと思います。国民側とか我々のほ うから言えば、この研修によって、ごく一般的な言い方をすれば、国際的に日本の医師 は見劣りのしない医師だということになるのでしょうねということです。2ヶ年の臨床 研修が終われば、日本の医師はどこの国の医師に比べても、少なくとも先進国の医師に 比べて、一応一人前の医師として見劣りはしないというふうなものになっているので しょうねと。その点については、ここには専門家が大勢いらっしゃるわけですから、こ れで大丈夫なんだと。そのために内科は6ヶ月と決まっているのがいいのか、決まって いないほうがいいのかという話になりますが、私はどちらでもいいのですが、ドクター のほうで、そのぐらいのほうがいいのだ、というのが一般的な意見であるということで あれば、はっきり決めたほうがいい。  書いてないのであれば、これは一応の基本方針だということであれば、星委員も言っ たように、何かぐしゃぐしゃでもいいのかと、6ヶ月やらなくてもいいのかという疑問 が当然起こります。  もう1つは、小児科、産婦人科というものについてはマニュアルが必要だという話が ありましたが、それは内科、外科、救急というところについては、マニュアルか何か知 りませんが研修内容を特定するようなものを決めなくてもいいのですか、という疑問に もつながります。なぜこちらのほうだけがマニュアルが必要で、内科、外科、救急のと ころは、それに類似したものはないのか、というのがもう1つの疑問点です。 ○矢崎座長  個別的にお答えをすべきかもしれませんが、皆さんのご意見の全体をお聞きして、ど うするかを考えさせていただきたいと思います。 ○下村委員  もう1つ、「強制的な再配置に用いない」というのはどういう意味でしょうか。 ○矢崎座長  これは文字どおりです。 ○下村委員  文字どおりと言っても、強制力はもともとないと思います。研修医が自分の希望した 所でできるだけ希望に沿うというわけですが、すべての研修医が第1希望の所で研修は できなくなるはずですよね、定員を決めるわけですから。それは当然できなくなるの で、今までのように定員を決めないで野放図に採るような所は駄目だということにはな るけれども、それは一面から言えば、結果としての強制力が伴うことになりますが、こ れは何をやったらいけないと言っているわけですか。 ○矢崎座長  要するに、マッチングというのはプログラムと研修医の希望との最適の組合わせを実 現するためであるという趣旨です。 ○下村委員  希望を充たせない場合も出てきます。別に強制するわけではなく、本人がそれで自発 的に受け入れてもらうよりしようがないという意味では、強制的なものではないけれど も、わざわざ「強制的な再配置に用いない」と書いてあるのはどういう意味かというの は、これは要らないのではないかと思います。 ○二村委員  私が想像するところによると、これは多分ですが、マッチングをやっていきますとど うしても自分の希望の所に入れない方が出てきて、その方がセカンドチョイス、サード チョイスというふうにやっていく場合もあるのですが、研修センターのような所からア ドバイスをして、そういうような第二次、第三次のマッチングをやるチャンスがなく なってきた方に、センターから強制的に、あちらへ行きなさいというようなアドバイス が起こるようなことがないようにしたほうがいい、 というようなことではないかという感じに受け取りました。 ○下村委員  そんな法律はないのですから、いずれにしても強制はできないと思います。これを書 く意味がよく分からないのです。強制はできないでしょう。嫌だという者は行かないま でのことで。 ○矢崎座長  ほかにはいかがでしょうか。 ○山口委員  教えていただきたいのは、この研修プログラムの内容と申しますか、当初の事務局の たたき台では、基本研修科目としては6項目が入っていた部分だろうと思います。それ を座長試案は2つに、1つは「基本研修科目」、もう1つは「必修科目」と分けてあり ます。この2つの違いは、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。1つは、当初 の12ヶ月の中に必ずコアとして入れ込むという時期の問題が1つあるということ。もう 1つは、研修期間という問題があるということ。こういうふうに理解して、基本研修科 目と必修科目にお分けになったと考えていいのでしょうか。 ○矢崎座長  これは個別的にお答えできますのでお答えします。当初の12ヶ月は基本です。それ で、必修は応用編ですから、期間とか、そういう意味ではありません。 ○山口委員  まず基本的なものを勉強した上で、この必修科目は2年目にやりなさいという考えで すね。 ○矢崎座長  はい。 ○山口委員  したがって、特に診断学その他、大事な内科研修にそのうちの半分を当てようと理解 していいわけですね。 ○矢崎座長  はい。 ○山口委員  もう1つは、先ほど星委員が言われましたが、座長試案では必修科目何ヶ月というの は、ここには特別に数字として挙げておられないで、「1ヶ月以上」というふうに。こ れはそれぞれの研修病院でカリキュラムとかプログラミングをなさる場合に、それぞれ の判断でプログラムを作りなさい、というお考えであると理解してよろしゅうございま すか。 ○矢崎座長  はい。 ○山口委員  そうしますと、今度は私の意見になりますが、1)、2)が「基本研修科目」と「必 修科目」に座長試案で入れていただいた。私は非常に妥当だと思います。トータルとし て事務局のたたき台には1年半(18ヶ月)という数字が以前出ておりました。常識的に 言うと、この1)と2)をトータルすれば大体そんなところなのかな、という感じがし てきます。これも大体そのように理解していいというふうにお考えなのか、座長のお考 えをちょっと教えてください。 ○矢崎座長  これは先生のおっしゃるように、どこに注目するプログラムかということで、ある程 度期間は変えることができるということです。 ○山口委員  研修病院でプログラムの中で示しなさいと、それを研修医が選ぶだろうというお考え ですね。 ○矢崎座長  はい。 ○山口委員  分かりました。一応このプログラムについては、座長は今までの皆の意見をよく吸い 上げていただいたなと再度評価をしたいと思っております。ありがとうございました。 ○矢崎座長  そのほかには、いかがでしょうか。 ○島田委員  私も基本的に矢崎案に賛成いたします。先ほど星委員から「期間をどのぐらい限定す るか」という話ですが、確かに研修プログラムを提供する側からいくと、いろいろな所 に「何ヶ月」とかという期間が限定されますと、やりにくいというところがあると思い ます。一方で、内科研修はやはり基本ですよ、6ヶ月ぐらいはやったほうがいいのでは ないか、というのも非常にごもっともなご意見です。非常に姑息な手段かもしれません が、「6ヶ月以上が望ましい」という表現でもいいのかなと思っております。 ○下村委員  一応その研修の中で修得しなければならないものというのは、先ほどの資料2の中で いろいろなことが書いてあるわけですから、それをどこでやるのか、ということになる のだろうと思うのです。そうすると、内科なら内科にいる間にやる項目はどれとどれな のか、あるいは内科だけではなくて他の所でやれるものもあるかもしれない、というこ とも考えられますので、弾力性はあってもいいと思いますが、ある程度の目安はあるの だから、6ヶ月以上内科というのは、おそらく内科での研修期間に教えるべき項目に対 応して、一応6ヶ月という考え方が出ているわけでしょうから、その辺があるのではな いかと思う。いろいろな病気の名前が書いてあったり、処置の名前が書いてあったりす るのですから、それをそれぞれの所で勉強するのだろうという話になるわけで。それと の関係で、ある程度の期間が特定できるのであれば、それははっきり書いておいたほう がいいのではないか。そうしないと、2年間の研修期間の中で、ある所で修得すべき内 容に比較して期間を短く設定されたのでは、非常にオーバーワークになることも考えら れるわけですから、そのようなことは避けるべきではないかと思う。  現状、この間の新聞報道などからいくと、横浜市大の労災の訴えなどを見ると120時間 労働なんていう話が出てくるわけです。120時間労働というと1日20時間以上です。週7 日、毎日20時間働いて140時間になるのですから、ほとんどそれに近いぐらいです。これ が全部研修とはとても考えられないです。一方から言うと研修のオブリゲーションとい うか、研修に必要な時間をある程度割り出して、オブリゲーションのスタンダードも、 できの悪い人もいるかもしれないから。私などがやったら、普通の人が20時間、30時間 かかることになるかもしれませんが、研修のオブリゲーションみたいなものを明確にさ れることが必要なのではないかと思います。  その問題と、その科で修得すべき内容と期間の問題はいずれも関連性があると思って います。そういう意味で、ある程度の目安は示してもいいのではないかと、弾力性は あってもいいですよと、こういう議論になるのだと思うのです。研修内容を最初の6ヶ 月ぐらいでさっさとやって、あと1年半は勝手なことをやる、それはちょっとやめてほ しいなと、そのようなことになるのではないかと思います。 ○矢崎座長  ありがとうございました。下村委員から「国際的に通用する臨床医が育つかどうか」 というご意見が最初にありまして、これは偏に研修プログラムと、それを支える教育シ ステムがいかに整っているかによると思います。きっちり教育すれば、国際レベルから 高く評価される医師が出ることは確実です。聖路加の櫻井先生もそうですが、私どもの 臨床研修を2年間やって、大体こういうようなプログラムでやっていますが、その人が ハーバード大学のレジデントに行ってやっても、この人はこの間帰って来たのですが 「このセンターの教育システムは非常にいい。ハーバードに行っても、向こうのレジデ ントと格段の差があると言われているが、語学のハンディさえなければ実技から知識、 コミュニケーションにとって全然差はない。だから先生、自信持っていいと思います」 と言っております。ですから、いかにプログラムに指導医が熱意を持って指導するかに よって変わってくると思います。  アメリカはどこどこのプログラムを卒業したということであれば、こういう医師がで きているということがプログラムによって決まるわけです。日本でもそういうことをし ないといけないのではないか。今までは、例えばどこの大学の研修をしたからこういう 医師だというふうになりますが、これからは研修プログラムを出たからということで、 お墨付きになるようなシステムを作っていかないといけないのではないか。それにはい ろいろな施設が初期臨床研修に本当にエネルギーを割いて、教育していただきたい。こ れは後ほど指導医についてもお願い申し上げたいと思いますが、ただ臨床経験があるか らということではなく、いかに研修医に実技とか患者とのコミュニケーションなどを きっちり教えてあげるか、というテクニカルなものもあると思うのです。ですから、そ ういうものをきっちり身に付けた方がプログラムを指導するということが私はいちばん 大事ではないかと思います。  それと「期間」ですが、第1年目は基本的なことを漏れなく、しっかりと一応経験し てもらうということです。それには研修目標を見ますと、あるいは私がいま医療セン ターで臨床研修の担当をやっていますときには、やはり内科が、少なくとも6ヶ月ぐら いが必要ではないかという実感を持っています。それは研修医も皆そういうふうに思っ ています。したがって、「以上とする」というのが、プログラムはできるだけ自由で、 しかも研修目標を達成できるものというのが望ましいことですので、島田委員が言うよ うに「6ヶ月以上が望ましい」としてもよろしいかと思います。  それと、「強制的な再配置に用いないこと」というのは、先ほど二村委員から言われ たような人為的なファクターが入らないように。だから研修医の希望とプログラムの最 適の組合わせ。ですから、必ずしも自分の希望と合わない方も出てくるかと思います。 その辺は、あくまでもサービスに徹してやっていただきたいという意味で、このように 書いたわけです。 ○下村委員  マニュアルはどうなるのでしょうか。 ○矢崎座長  マニュアルは研修目標を達成できるということを目指したプログラムなわけです。私 がいつも小児科、産婦人科、精神科というのは、診療科によってすいぶん内容が違いま すし、教えることも違ってくる、あるいは指導者によって違ってくる可能性もあります ので、あくまでも研修目標を達成できるプログラムを作るという基本概念がきっちり表 れるようなマニュアルを作ってほしい。だから、細かく何をなにということではないの です。  今まで内科とか外科はローテーションをしていたのです。ですから我々はどういう教 育をしたか分かるのですが、今まで の小児科、産婦人科、精神科の先生は、卒業してストレートにそこに行っている先生方 です。ですから、もう少し経たないと、大変こういう先生方には失礼なのですが、全然 産婦人科に入らない人が産婦人科に来たとき、どう学ぶかということの経験がないわけ です。そういう意味で、ある程度のマニュアルを作ったほうがいいのではないかという ことです。この文面には入れませんでしたが、私としてはきっちりしたことをしていた だきたい、というのが願いで入れました。 ○山口委員  いまのマニュアルの件ですが、私ども国診協のほうでは、地域保健・地域医療に関し てはプログラムのマニュアルの作成にいま取りかかっております。近いうちにそれが出 来上がったら、会員はもちろんのこと、全事業とも一体となって、それをきちんとした ものに作り上げたいと考えております。 ○矢崎座長  学会がいいのか、あるいは、新たに今までの経験のある方、産婦人科、小児科、精神 科の先生方でローテートする臨床研修にある程度造詣のある方で、少しワーキンググ ループを作っていただいて基本方針を定めてもらえばと思っています。 ○大谷委員  私は座長試案に幅があって賛成です。ただ問題は、目標も決まり、またプログラムも 大まかですが決まって統一的なものが全国に流れます。そういたしますと、実は中身を 良く読めば幅があるわけで、各病院の特色がそれぞれ出てくると思うのです。その病院 がどういう姿勢で臨床研修に取り組むか、その病院にどういう特色があるかというよう なことを明らかにしてほしい。当該病院の特色ある臨床研修方針、自分の所はこうして やるのだということを明示する、ということを書いておかないと、国がこういうもの を、ただ機械的に全国に流しますと、幅があるから、おそらく座長のお気持は、幅があ るからそれぞれの病院が特色のあることをやれる、ということだと思うのです。だけ ど、それもマッチングのときに希望される学生の方々にはっきり分かるように、特色を 出してもらいたいと思います。  例えば、地域保健・医療でも重症心身障害のような、非常に重いところで看護的・介 護的のような所の医療を重点に置いて、命を見つめさせるというような臨床研修があっ てもよいし、大学で内科のエキスパート的な、全身を医学的に診るプライマリケアが あってもいいかもしれない。私はよく分かりませんが、いずれにしても全国にこれから 増やしていく臨床研修病院が、それぞれ特色があるということをきちんと内外医学界に 示してもらいたい。大学病院も同じことで、自分の所は研究中心であるから研究をやる というのもいいと思うのです。だから、私はそこを明示することを、このプログラムの 中に書くのが良いのかどうか分かりませんが、どこかにはっきり書いてもらいたいと思 います。 ○矢崎座長  これについてはプログラムを作っていただいてオープンにしたときに、いかにそれを 研修医の方々にアピールするか、いかにそれをサポートする体制があるかという情報開 示をきっちりすれば、自ずからいいプログラムに人が集まり、プログラムの中で競争が 起こることがあり得ると思います。競争が起こるときに、先ほど文言をあえて入れてし まったのですが、それをある目的でマッチングするというのは良くないのではないかと いうことなのです。 ○櫻井委員  私もこれは基本的にいい案だと思います。先ほどの基本研修科目の内科、外科、救急 部門、それから内科研修6ヶ月としたのは非常に適切だと思っております。  先ほど国際的な基礎的能力を持った育成というのがありました。これは前回も申し上 げたと思いますが、2年間経つと本当に素晴らしい進歩を見せます。今度研修を必修化 するに当たっては、どこの認定施設でこういった研修を受けても、そういった研修医を 育てられるようにすることが必要ではないかと思います。その意味でも、いちばん最後 の行に書いてある「臨床研修の評価機構」を配慮していただければと思います。 ○矢崎座長  プログラムは後で評価を受けることになるかと思います。 ○堺委員  大変良くまとめていただいたと思います。当初の、1年間に3つ回るというのは、い まの日本の中ですと内科とか外科とか専門各科に分かれていますから、実情にそぐわな いところがあるのですが、本来的には総合診療部とか、総合診療内科みたいな所で全部 やれればいちばんいいわけです。  大谷委員の言われたPRですが、これはマッチングそのものが双方の情報を十分知っ た上でやるわけですから、あまり問題はないと思っています。例えば研修プログラムを 修了した人がその後どうなっているかとか、そういう情報も年次的に蓄積されれば入っ てくるわけですから、取捨選択はできるのではないかと思っております。 ○堀江委員  私もワーキンググループの中のプログラム小委員会で検討させていただいたという立 場で、いま矢崎先生がお示しになった基本設計案を拝見しております。小委員会におい て基本的には、研修目標について、その中の行動目標とか経験目標については、審議の 比較的早期の段階で皆さん共通の認識で、字句の修正等は加わりましたが、方針として はこの目標でいいのではないかということになったと思います。その中で、これを研修 していくのには小児科を含め、内科、外科、救急、小児科をコアーとするということで 12ヶ月以上の研修期間ということが一応の合意を得ていたと思います。  その意図するところは、研修目標の中に含まれているものを実際に修得していくに は、やはり、これだけの基本診療科については是非行うべきであるし、ある程度の期間 を設けるべきであろうということでした。改めて内科6ヶ月が議論になりましたが、研 修目標を各研修医が経験していくには、むしろ内科はもっと長いほうがいいのではない か、という意見もあると思います。ただ全体的な研修項目に対して各科の研修期間をど うするのかについては、これは指導医の定義もこれから審議されると思いますが、各施 設における各科の指導医数が関係してくると思います。一応いま各専門領域の学会等で 提示されている専門医数ですとか、あるいは認定医数から見ますと、内科についてはか なり充足しておりますし、6ヶ月以上の期間、多数の研修医が来るような状況が起こっ ても各病院で、おそらく内科については指導体制はかなり整っているのではないかとい う気がいたします。  そういう意味で、「6ヶ月以上」とすることによって研修項目をきちっと履修できる 研修カリキュラムが組める、かつ、指導医もきちっと対応できるということを考えれ ば、私は星委員が言われた意見も分かりますが、内科としては、やはり6ヵ月ぐらいの 期間を持って、そして施設によっては「以上」というところでさらに内科研修を強化す るということも可能ですから、この1)の提案について私は賛成したいと思います。  ただ小児科についての取扱いです。これはヒアリングでも小児科、産婦人科、精神神 経科からご説明をいただいておりますが、指導体制という面で施設間にかなりの差があ るのではないかなという気がいたします。おそらくもっと長い研修期間を要望されると 思うのですが1ヶ月以上という表現がされています。従って、施設間で研修期間に差が でると思いますが、少なくとも1ヶ月という期間が設定されれば、基本的なことは各施 設で研修し、ある程度のことは経験してもらえるのではないか、そして施設によって は、例えば3ヶ月研修とするという所があるかもしれませんが、その辺の自由度が盛り 込まれるのは、よろしいのではないかなと思いました。  いろいろな意見や要望があり、プログラム小委員会ではかなり議論が行き来しました が、こういう形でまとまっていく方向に私は基本的に賛成したいと思っております。 ○星委員  私は基本的に反対しているわけではありません。ただ、最初の12ヶ月はこれですよと 決めてしまうと、例えば6ヶ月の内科研修が終わって、相手の都合もあるわけですので 2ヶ月間の地域実習に行きたいと。2ヶ月間地域実習に行って来ましたということにな ると、これに反することになる。言葉の問題として、こうやって書いて表に出た途端 に、座長がいちいち、これはこういうことですよと説明ができませんので、修文案を私 は考えましたので一応申し上げます。  「1)内科、外科、救急部門(麻酔科を含む)を基本研修科目として、小児科、産婦 人科、精神科及び地域保健・医療を必修科目として、合わせて18ヶ月程度の研修を行 う」というのを1項目として立てます。  そして、「それぞれの研修は1ヶ月単位で行うことを基本とし、2年の期間のうちの 早い時期に基本研修科目を設定する」。そして「内科に関しては6ヶ月以上に設定する ことが望ましい」と書くと、同じことを言っているのですが、多分、聞こえ方が違うだ ろうし、先ほど申し上げたような2ヶ月間の実習を1年目の後半に設定するということ も比較的容易に理解される。  これを書き物にして、どこかのプログラムを検証させて、○とか×とかを付けるとき に、これに合わないということになると駄目よ、これ×よと言われるのは、私はもった いないと思いますので、基本理念を生かしながらいま申し上げたような修文をして、皆 さんに理解を得られるようなことにしたらどうかというのが私の提案です。 ○矢崎座長  ごもっともな趣旨だと思います。ところが、あまり融通無碍なことになりますと、や はり私どもとしては、まず内科である程度研修してくださいと。私は「当初の12ヶ月は 原則として」ということを入れたのですが、そうすると次の「基本研修科目として」の 「として」が、2つ重なってしまって格好悪いから削ってしまったのです。もし、そう いう修正をしていただいても良いということであれば、そのようにさせていただきたい と思います。というのは、現実的に内科、外科、救急部門でプログラムを組んだとき に、施設によってはどうしても1年では収まらない部分が出てくると思うのです。  また地域保健・医療の最初のほうで、基本的な内科は先にやってください、しかしそ の後はそういう所へ行きますといった場合には、やはりある程度は認めてあげてもいい と思うのです。梅田案に出てきたように、ある程度いろいろな応用篇はあるけれど、全 人的な医療には絶対必要な必修科目が前のほうに来ていたりしますと、それは良い臨床 研修制度にならないのではないでしょうか。  したがって先ほどからお話がありましたように、内科系は大学でさえも、ずっとロー テーションの研修の経験を積んでいますので、内科に関してはある程度問題ないのでは ないかなと思います。ですから今の星委員の修文は、「当初の12ヶ月は原則として」、 こういうものを研修するというようにして、星委員の言っていることもある程度その中 に組み入れるということでいかがでしょうか。 ○星委員  これは国語の問題です。私が申し上げたいのは、趣旨を全く変えずにということで す。6ヶ月で内科の研修を終わって、3ヶ月間、あるいは2ヶ月間、地域実修に行って 来ると、残りは3ヶ月しかないわけです。その3ヶ月の中で残りをやることは出来ない し、私がいま言ったようなことは、ルール違反になるのです。これを先生はご存じかど うかわかりませんが、このような文書がだんだんと人手を渡っていって、地域でそのプ ログラムを誰かが評価するというレベルになってくると、「原則として」と書いてある けれど、だんだん厳しい方向になってきてしまいます。いろいろな国の施設もそうです し、いろいろな役所の仕事もそうです。そういうことがあるので、むしろ基本的に伝え たいことを、きちんと伝えることで修文すべきなのです。そして「原則として」という 中に、うやむやなところをちょっと盛り込むという形にはしないほうが、私はいいのだ ろうと思っています。  もう1つついでに申し上げますと、マニュアルを作るというお話がありましたね。私 も座長のおっしゃることはよく分かりますが、内科はいいけれど精神科は駄目よという のは、どうしても納得がいきません。ですから項目を1つ立てて、「研修の目標達成の ため、具体的なマニュアルなどの支援策について検討を進めて、これを活用する」とい うような文言を入れていただくと良い。先程の御発言は内科や外科はできるけれど、精 神科と産婦人科はできないのではないかという発言にも取れないこともないので。私も マニュアルの活用については賛成ですので、もしそういうことをお気持として入れたい のであれば、むしろそういう言葉で書いてはどうかと思います。 ○矢崎座長  私の言葉の説明足らずかもしれませんが、出来ないからということではないのです。 おそらく今まではストレート入局で、産婦人科のお医者さんを教育していたのです。と ころがそうではない、自分は循環器に行きたい、小児科に行きたいという研修医が、も うある程度いると思うのです。そういう人たちが産婦人科に行ったときに、どういうこ とを教えるかということなのです。そういうことはある程度意識してくださいというこ となので、何々を教えろという細かいマニュアルではありません。プログラムを作ると きに、大体こういうように沿っていただければ、研修医が満足するのではないですかと いう意味ですから、あまり誤解のないようにお願いしたいと思います。  そうしますと1)は、「研修することがまた望ましい」ということになりますが、ど うでしょうか。 ○下村委員  おそらく1項目立てて、1)と2)に書いてある考え方でやるけれど、プログラム編 成についてはその趣旨を損なわない範囲で、弾力的なやり方を認めるというような感じ で書けば、はっきりするのではないかなと思います。あとは文章の問題ですから、いま 出ている話の趣旨を損なわないように。「原則として」というのは非常に曖昧さが強い から、もう少し具体的に何か書いたほうがいいかもしれないと思っているわけです。1 項目立てて、「実際のプログラム編成に当たっては、その実情に応じて1)、2)の原 則を損なわない範囲で」とか。 ○星委員  「12ヶ月」と書いてしまったら、原則になってしまうのです。 ○矢崎座長  「研修することが望ましい」では駄目ですか。 ○下村委員  「望ましい」と言うと、往々にして無視されることが多いのです。 ○山口委員  今いろいろな意見が出ましたが、基本的には座長試案を大体支持される委員の方が多 いと思うのです。これをたたき台にしながら、今の文言の整理は事務局と座長でやって いただくということで、どうでしょうか。 ○下村委員  それでいいと思います。中身はわりあい明快になったのだから、いいのではないで しょうか。 ○吉田委員  それはそれで結構だと思いますが、Iの5)に、「研修プログラムに参加する研修医の 出身校による片寄りがなるべく少なくなるように努めること」とありますね。これは私 はマッチングでやるのかと思っていたのですが、マッチングでやること意味が少しトー ンダウンしてきているのです。そうすると各施設において出身校による片寄りが、なる べく少なくなるように努めてください、という努力目標になってしまったのですか。 ○矢崎座長  強制的な再配置はしないけれど、施設のほうで努力してくださいということです。 ○堺委員  皆さん、マッチングに随分幻想を抱いていらっしゃるようですが、マッチングはそん な素晴らしいものではないと思います。やろうと思えば、例えばA大学の卒業生がA大 学に入りたいと言ったら、いくらでも出来ます。お互いに第1候補にしておけばいいわ けです。ですから、あまり幻想は抱かないで、確かに5番目みたいなものを設けて、や はり努力目標としてみんなが認識してやるというように、考えを固めたほうがいいかと 思います。 ○吉田委員  私は幻想を抱いていたのではなくて、努力目標ですかという念を押したわけです。 ○北村委員  座長が最初におっしゃった、この会が存続する理由に関して、処遇の問題がまだ片付 いていないということに加えて、マッチングの問題もこの会の議題というか、テーマの 1つで、今後この会が継続して、マッチングの問題に取り組んでいくものだと私は思っ ているのですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。 ○矢崎座長  マッチングは議論しますが、これは是非、事務的なことで終わっていただきたい。ま た5番目をどのようにするかについては、もう希望者がいたら公平に選ぶということで す。ですから試験とか面接ということではなくて、例えば極端な例で言うと、くじ引き で決めてほしいと。そういうことだってあり得るわけです。 ○北村委員  まずマッチングに関しては、確かに幻想も持っていますが、大きな期待と不安がある のも現実です。是非オープンな場所で、マッチングのシステムを決めていったらいい と、私は思うのです。その中で座長がおっしゃるように、いろいろな要件を示す必要が あると思います。いろいろな所で聞くと、ある先生は、やっと我々が研修医を選ぶ時代 がやってきたと、非常に喜んでいらっしゃいます。要するに、あまり教えたくない研修 医が来るというのも現実だったのですが、今度は自分たちで教えたい人を選べるという 喜びを感じている人もいらっしゃいます。逆に研修医のほうは、自分の実力さえ、勉強 さえすれば、いままでは高嶺の花だったような立派な病院で研修を受けるチャンスがで きてきたということもあると思います。  絶対必要な要件は、フェアであることです。学校によっては、どんなに勉強してもこ の学校の人は、この病院では研修できないよという制度ができてしまえば、マッチング が壊れてしまいますので、フェアであることです。そして努力した人が報われるような 制度であることです。そういう要件があると思いますので、是非マッチングは議論を尽 くしていただきたい。確かにこの会は大きいので、別の会を作るほうがいいのかもしれ ませんが、オープンな形でやっていただきたいと思います。  もう1つ余分なことですが、マッチングに関しては、ある程度時間が迫っているの で、早い機会に決めていただけたら、現場としては非常に助かると思います。  もう1つ、マッチング+マニュアルについて、「基本的マニュアル」という2)は、 いままでにディスカッションで私は反対していたのですが、矢崎座長に「基本的マニュ アル」を作成していただくということを付け加えていただいたので、それがしっかりす れば、1ヶ月であっても、いわゆる見学型、ただぼうっと見ているだけで1ヶ月終わっ たということがないようなことを保証してくれるマニュアルさえできれば、実のあるも のになると思います。ですから是非このマニュアルは、見学型にしない、要するに実効 性のある研修を保証するものを、それも早急に作るという条件付きであれば、私も同意 したいと思います。 ○矢崎座長  マニュアルというのは、それほど強制的ではなくて、いままで教えたことのない人を 教えなければいけないので、それをよく指導していただければ、私はもうそれでいいと いう感覚なのです。 ○二村委員  5)の問題ですが、名古屋の経験を申し上げますと、競争率の高い病院には、これが 絶対必要だと思います。名古屋では有名ないろいろな所があり、必ず2倍以上になる所 があります。名古屋大学出身者は50%以下にするというルールを、数年前に作ったので す。それがありませんと、名古屋大学に集中してしまいます。採るほうも情があるもの ですから、マッチングではやっているのですが、そこに情が絡んでしまうので、絶対に 50%以下にするというようにします。それで50%を超えた場合、当事者はくじ引きで、 誰が下りるかを決めてもらっています。  ただ一方、最近ほかの会で聞いた話ですが、競争率の激しい所はいいけれど、需要に 満たない病院でこのルールを適用されますと、大変困るということです。需要が満たな い、例えば50%に満たない病院では、ほとんど母校の出身者しか来ないと言っていまし た。そういう所へこれを適用されると、半分ぐらいしか採れなくなってしまって大変困 るので、この適用は慎重に考えてほしいということを聞いたことがありますので、需要 と供給のバランスの上に立つ論理かなと、最近勉強いたしました。 ○矢崎座長  いまのお話のように、プログラムその他の情報が十分に行き渡らない可能性があるの で、最初の研修医の方は安全性を求めてと言いますか、事情を知っているということ で、母校関係の病院に殺到するのではないかと思います。そのときには、やはりある程 度プログラムの定員を定めて、そこから外れた方は、また次のチャンスに行くというこ とがありますので、私としてはあまり強制的にどうこうと言うよりは。全国医学部長会 議では、ある程度の目安を決めましたが、その目安をここに書くにはまだ早すぎるので はないでしょうか。最後に書きましたが、おそらく見直すときに、そういう状況があま りにも目に余るようでしたら、そういうところをやっていただきたいと思います。4) と5)については、やはり公平性を保つという意味で、是非4)、5)を採用していた だきたい。 ○松田委員  原則的にいままでのご意見、矢崎提案に賛成ですが、1点だけ。4)のマッチングの 所については、どういう機構がこのマッチングをやるのか、面倒を見るのか。全体の最 後の所に、「第三者的な」と出てきますが、やはりマッチングについても第三者的な機 構を作って、これを行うということが要るのではないかという気がしました。 ○下村委員  よく分からなかったのですが、臨床研修生の採用を決めるのは、各研修施設側なので すか、マッチングシステムが決めるのですか。先ほど1億か何かの予算要求があったけ れど、マッチングシステムは何をやると言って要求したのですか。 ○矢崎座長  これは希望と施設との。 ○下村委員  あぶれた人を調整するのですか。 ○矢崎座長  そういうことになると思います。 ○下村委員  では東大や阪大など、希望以上の者が出てきているような所は、もうマッチングシス テムは全然必要ないわけですね。 ○医事課長  いや、そうではなくて、あぶれない部分を含めて、全体の希望を順番に当てはめてい くという仕掛けです。予算要求をしているというのは、それをするためのインフラとい うか。 ○下村委員  そうだとすると、例えば東大や慶應のように、かなり希望者の多い所は、母校出身者 は半分しか入れないというようなルールがないと、調整できないのではないですか。 ○櫻井委員  私自身、マッチングに関しては、運用が非常に難しいのではないかということで、あ まり積極的には賛成しませんでした。これを作るのならば、どのように運用するか、早 急に運用の仕方をよく検討していただいたほうがいいのではないかと思います。 ○矢崎座長  処遇の問題とマッチングの問題と評価の問題に関しては、できればここで検討させて いただきたいと、冒頭に申し上げましたが、マッチングについてはまだ十分に議論して おりませんので、これについてはまた議論していただきたい。 ○下村委員  その辺がよく分からないのです。マッチングの問題もあるから、早く結論を決めたい と言っていながら、マッチングの問題が決まっていないなどと言われるから、どうも分 からなくなるのです。 ○矢崎座長  所掌事項を扱っている事務局の考えとしては、具体的にある程度運用まで考えておら れるのですか。 ○医事課長  まずタイムリミットの関係で、マッチングがどうかということについては、そのほか の「プログラム」と「基準」というレベルから言えば、正直言ってその次の段階でいい と思うのです。ですから、いま慌てて議論しなければいけないという段階ではありませ ん。所掌の関係で言えば、今回必修化が法的に義務付けられたので、国のほうでそのイ ンフラを整備する必要があるだろうということで、窓口的な形として国、あるいは地方 厚生局を考えているという状況です。 ○下村委員  マッチング機構を通さないと、臨床研修は受けられないのですか。 ○医事課長  ですから、その辺も含めて、今後議論していただきますが、あくまでもマッチングシ ステム自体は、最適な組合わせを作るための補助的な装置というようにお考えいただき たいと思います。仮にそういう装置がなくても、手作業でもマッチングはできるわけで すから、そこはまた別途ご説明させていただきたいと思います。 ○下村委員  希望者の多い所は希望者の中から選考すれば、マッチングシステムのご厄介にならな くてもできますよね。 ○医事課長  ただ、選考するときに、恣意的にこの人この人とやるのではなくて、両方の希望を順 番に、希望順位の高いものから合わせていくのが合理的だろうというコンセンサスの下 に、それを機械の補助を使ってやろうということです。 ○下村委員  試験をやるのか、くじ引きをやるのか、研修施設側がどういう選考方法を採るかが、 ひとつ問題なのです。今日出た議論で言えば、公平にやってくれ、できるだけそのルー ルが見えるような形でやってくれ、オープンにやってくれということですから。 ○矢崎座長  そうです。それが前提です。 ○下村委員  それを書いておかなければいけないのではないですか。 ○矢崎座長  ですから、それは次の段階で、是非その原則を。今日は「プログラム」ということ で、先ほど医事課長が言われたように、まずプログラムを定めてからマッチングの議論 をさせていただきたいと思います。これは厚労省の医事課が担当ですが、卒前あるいは 研修後のこともありますので、前後で大きなかかわりを持つ大学側とワーキンググルー プを作って、十分にいろいろ議論していただければと思っています。  次は「施設基準」についてです。これは単独型も含めて、管理型施設です。「総合的 な急性期型病院であって、指導医のもとで研修プログラムを責任もって実施するととも に、全体としての研修プログラムを管理し、さらに研修目標が達成されたことを評価で きるものとする」というのが前提です。「そのために定員を定める。定員は原則的に入 院患者年間100人に1人、または病床10床に1人とする。指導医については1人あたり5 人までが望ましい」。また「協力型施設における定員は、指導医など研修状況に即して 定める。管理型施設も協力型施設として他の研修プログラムにも参加できるものとす る。指導医とは、プライマリイケアを中心に原則として臨床経験7年以上で、勤務体制 上指導時間を十分にとれる者とする」というように決めました。  「総合的な」という言葉を入れましたが、先ほどのモデル事業にありますように、が んセンターや循環器病センターなどの専門病院は、管理型には馴染まないのではないか ということで、そういう施設は協力型施設として、ある部分を担うということをしてい ただければ、大変ありがたいと思って、「総合的な」という言葉を入れました。  定員ですが、研修目標を達成できるためには、やはり年間100人ぐらいの患者を受け持 つ必要があるのではないかということです。病床については入院患者から当てたわけ で、必ずしも絶対的ではありませんので、「または」としました。  「指導医については1人あたり5人までが望ましい」ということですが、私どもの経 験では、やはり初期臨床研修は屋根瓦方式で、1年上の者が下の者を教えるというよう な方式でやるべきものであると思います。指導医というのはその何人かを総括して、責 任をもって教育の指導をするというように位置付けております。ですから指導医そのも のは、手に手を取って手技その他を教えるのではなく、総括的に指導するわけです。特 に教育指導がきっちりできる方ということです。「臨床経験7年以上」というのは、2 年間が初期臨床研修で、3年でシニアのレジデントを行って、あとの2年は、いま卒前 教育としてオスキー、手技や患者面接などのいろいろな診療技術の実力をどのぐらい 持っているか、学生をテストする手法が、大学側で行われていますが、それをするには 学生にそういう手技を教えなければいけません。ですから単に臨床経験豊富だから指導 医になれるというのではなく、ある程度の指導経験や指導のノウハウを知った方という ことになります。そういう意味では指導医がしっかりしていれば、卒業生のバラつきも なくなるのではないかということです。  いま大学では、ファカルティ・ディベロップメント(FD)として、いろいろな教育 の手技を大学の先生が一生懸命学んでおります。例えば患者面接でも、従来の、単に患 者に優しく接するのではなく、しっかり行動科学に基づいた手法を。それはどういうこ とか。例えば研修医は非常に若く、患者は特に高齢化社会ですから、高齢者が多く、人 生経験豊かな方が多いわけですが、研修医を見ているとしばしば、「おじいちゃん、お ばあちゃん」といった日常会話を持ち込んで話したりします。また患者からの情報を得 るのに、「お腹が痛いの?」「キリキリ痛むの?」というのではなく、「どこが具合悪 いんですか」「どうなんですか」というような、オープンな質問、患者からのバイアス のかからない情報をきっちり得るのが、正確な診断を進める上で重要なことです。そう いう方法は卒前教育で十分しなくてはいけませんが、卒後臨床研修でも実際の患者さん を受け持ったときに、それをしっかり行動で示していただくためには、やはり患者面接 のパターナリズムが身に付かないように、しっかり指導するという意味で、指導医とし ては7年以上の臨床経験が必要ではないか。経験というのはテクニックです。基本的な テクニカルなものを身に付けていただきたいということです。  そういうことで施設基準と指導医について、定めることにさせていただきましたが、 いかがでしょうか。 ○下村委員  そうすると、実際は臨床研修後5年間ですね。一本立ちになって、実質5年間の経験 があればいいと言っているわけですね。 ○矢崎座長  そうです。 ○下村委員  それからもう1つ。原則として「プライマリイケアを中心に」とおっしゃるわけです から、ある程度の例外があるという前提で書いていらっしゃるのでしょうけれど、先ほ どの産婦人科などの議論で言えば、プライマリイケアを中心にした指導医など、産婦人 科にはいないことになりますから、これは違うのではないですか。 ○矢崎座長  必修科目としては、やはりこういう指導医が必要だと思います。 ○下村委員  今日出た文章でいくと、例えば資料2−2の5頁に、「指導医の役割」と書いてあり ますね。「指導医は、担当する診療科での研修期間中、個々の研修医について診療行為 も含めた指導を行い」と言っているのですから、プライマリイケアをやった人が指導医 になるということを、ここでは想定していないのではないかという文章なのです。「自 ら担当する指導分野について臨床経験7年以上」というのなら、こちらとも調子が合っ ているような気がするのですが、「プライマリイケアを中心に」と言われると、こっち と合っていないではないかという気がするのです。 ○矢崎座長  資料と私の作った案とでは、いくつか合っていない点があります。 ○下村委員  合っている合っていないということよりも、どちらなのだろうということです。 ○矢崎座長  こちら側に揃えていただきたいというように、事務局にお願いしたいのです。 ○下村委員  産婦人科にはいないわけですよね。精神科にもいないと。 ○矢崎座長  プライマリイケアというのは非常に難しいことで。 ○下村委員  我々から言うと「プライマリイケア」と書かれると、何でもいいのだなというように 取れるわけです。 ○矢崎座長  いや、そうではないのです。プライマリイケアの説明をすると、時間が取られるので すが。 ○下村委員  はっきりした定義のない言葉ですから、もっと具体的に明快なことで指導医の条件を 決めてほしいという意見なのです。7年という点については、およそそんなところで良 いけれど、現実問題として言うと、精神科や小児科といった分野になれば、精神科、小 児科の臨床経験支援としては、もちろん要るだろうけれど、プライマリイケア支援とい うのは、必ずしも要求できないのではないかという感じがするのです。そこはどうなる のですか。 ○松田委員  プライマリイケアに十分経験を持つ、ないしそういう指導を意味するのでしょう。 「プライマリイケアを中心に」というのは誤解されます。プライマリイケアを含めた経 験があるという。確かにこれだけ見ますと、プライマリイケアをずっとやっていて、 ジェネラルな臨床経験ということになるので、実際にこれをそのとおり見ますと、なか なかいないということになるのかもしれません。ですから、ここは「中心」という言葉 がいいのでは。 ○医事課長  「プライマリイケアを中心に」ということについて、ちょっと誤解があると思うので す。 ○下村委員  先ほどの話ですと、産科を中心に臨床経験7年とか、プライマリイケアもちょっとは やっているとか、そんな感じの医者が要るという話になるのではないですか。 ○島田委員  おそらく矢崎座長のお考えは、プライマリイケアが非常に大事だということを、プラ イマリイケアの趣旨をよく理解したそれぞれの領域の人ということですね。それは本当 のプライマリイケアの人もいるだろうし、産婦人科とか内科など、いろいろいるでしょ う。しかしみんなプライマリイケアは大事だということをよく理解している、そういう 意味ですよね。 ○矢崎座長  そうですね。 ○島田委員  そのように書いてはどうでしょうか。 ○矢崎座長  産婦人科でもプライマリイケアが必要です。ですから産婦人科に行ったら、高度の産 婦人科のことを教えてほしいということではなく、産婦人科の女性特有の疾患を理解す るという意味ですので、私は別に産婦人科に行ったからプライマリイケアではないとい うのではないと思います。例えば大学で循環器に入ったら、プライマリイケアではない のではないか、2年間はローテートしますが、その後はという議論があるかもしれませ んが、私などは総合外来に出ていますし、外来の新患の多くは紹介なしです。おそらく 診療所の患者と大学の外来の患者と、ほとんど同じではないかと思います。それが再来 になると。 ○下村委員  しかし、それが一般的に理解されている「プライマリイケア」という言葉と同じなの でしょうか。矢崎座長がそういう意味で書いたことはわかりましたが、ここにこう書か れると、それはそういう理解になるのでしょうかというのが1つです。  もう1つは、これは一応施設基準ですから、これを基にして指導医がいるかいないか という認定をして施設を決めることになるので、「プライマリイケアを中心に」と言っ ても、現実的には役に立たないですよね。そんなものは実際の基準にはなり得ないので すから。要するに7年以上の経験者であれば誰でもいいと書いてあるに等しいのではな いですか。 ○堀江委員  ただ、前にも議論がありましたように、指導医になる人たちの条件として、例えば講 習会など、指導医としてのあり方に対する教育が、これから行われていくということも あるわけです。ですから臨床経験として7年以上というのが、1つのポイントだと思う のです。そしてその人たちは、研修医に対しての教育にかかわっていく指導医というこ とになるわけですから、研修医に対する教育とは何たるかということを、きちんと認識 してもらいながらやっていく必要があるだろうと思います。 ○下村委員  しかし滑り出しのところで、一体どうやって認定するのですか。臨床経験7年で、指 導経験があって研修を受けた人と言えば、はっきりしますよ。 ○堀江委員  そういうことについての取組みは、これからされていくわけですよね。 ○下村委員  とりあえずはどうでもいいと。 ○矢崎座長  いや、そうではありません。私ももともと下村委員と同じように、プライマリイケア における基本的な診療能力、プライマリイケアとは何だというのには、非常に大きな問 題があると思うのです。それはそれとして理解していただきたいと思います。指導医と いうのは、臨床経験7年以上というのがあって、先ほど言われたような指導研修を受け たと。そうすると指導医の国家試験。 ○下村委員  そうすると「プライマリイケア」と書いてあっても書いてなくても、意味がないでは ないかという感じになるわけです。 ○矢崎座長  私はある程度重要かなと思ったのです。やはり基本を教えてほしいということなので す。 ○島田委員  私が思うに、臨床研修が本当に成功するか否かは、実はこういったことを教える人が 社会からどう評価されるかというのが、非常に大事なのです。評価されないと、誰も教 えないですよ。 ○下村委員  そのとおりです。これは非常に重要な項目です。 ○島田委員  ですから本当は、お前は指導医か、それはすごいね、すごい資格を持っているねとい うような形になったほうがいいのです。しかし、そういう条件を具体的にどうやって作 るかというと、おそらくすぐには作れませんよね。ですから将来、そういう評価をきち んとしていこうという気持を込めて、その言葉を託すと。 ○下村委員  しかし、これから予算を取りたいなどとおっしゃっているのですから、それならここ をしっかりしてもらわないと、ここが曖昧だったらお金になどならないですよ。これが 決め手になるのだから。 ○医事課長  いま厚生労働省は先ほどの概算要求で、指導医を研修するという。 ○下村委員  あれはマッチングが1億円で、指導医の研修が5,000万円ですが、逆ではないかと思う のです。大学や研修施設で余った所だけをマッチングするのなら、むしろ5,000万円もあ れば十分なので、研修のほうをしっかりやってほしいですよ。研修5,000万円で、一体何 人ぐらい、どのぐらいの期間の研修ができるのですか。 ○医事課長  研修自体、現在でも予算上、大体年間700人という規模でしています。研修期間はそれ ぞれ1週間程度の講習をしています。 ○下村委員  1週間教えれば指導医ができるといったら安いですよね。 ○医事課長  そこはこれから、さらにいろいろな形の研修のあり方を工夫していくわけですが、基 本的にはいま現在でも指導されておりますし、診療されているという前提に立って、そ のような指導をする際のいろいろなノウハウを講習しています。 ○下村委員  先ほどの矢崎座長の話でいくと、指導医はどのぐらいの熱意を持って指導に当たるか が、研修の正否を決めるとまでおっしゃっているのだから、これが本当はいちばんのポ イントなのです。ここをどうでもいい人がやるのなら、2年間義務化しても何も意味が ないということになりかねないわけです。 ○医事課長  ですから指導のあり方や指導内容などについては、これからさらに検討するというこ とです。 ○下村委員  将来こうするということならば、せめてそれぐらい、もうちょっと書いてほしいし、 当面どうするかというところも、明確にしてほしいと思います。当面はどうでもいいと 書いてあるように思うのですが。 ○吉田委員  これは座長が屋根瓦方式とおっしゃったことと、だいぶ矛盾するのです。屋根瓦方式 で教育しようとすると、指導医だけではない。ですから、そこはもう少し議論しなけれ ば。 ○下村委員  何枚か下の部分があって、そのことには触れなくていいのか、指導医だけのことでい いのか。 ○矢崎座長  とりあえずは指導医ということで、予算措置の下で指導医手当てを出してもらうとい うことです。 ○下村委員  しかし乱暴に言えば、予算については一応5,000万円の範囲内で、暮れまでに決めても らえればいいのです。 ○星委員  確かにこれは日本語としても、ちょっと変なところがあるのです。先ほど島田委員が おっしゃったように、各学会の何々指導医というものを想定しているのではありません ということを、私は言いたいのだと思うので、「指導医とは、原則として臨床経験7年 以上で、プライマリイケアを中心とした指導を行える十分な能力を有し、勤務体制上指 導時間を十分にとれる者とする」と書けば、その十分な能力とは何かというところで議 論をしましょうということになるのではないかと思うのです。 ○下村委員  そのほうがまだ多少。 ○櫻井委員  先ほどもあったのですが、文言に関しては是非検討した上で、これを入れていただき たいと思います。ただ私が心配するのは、座長もおっしゃいましたし、いま吉田委員も おっしゃいました。屋根瓦方式というのは非常に大切だと思います。大学などでよくあ るのですが、俺は講師ではないから教育は関係ないよとか、俺は指導医ではないから教 育は関係ないよというのがあります。こういった雰囲気になっては困ります。しかし予 算を取ってもらって、指導医に教育上のいろいろな教育をするといったことは非常に意 義があるので、指導医の定義も必要ではないかと思います。 ○矢崎座長  いま櫻井委員からご指摘のとおり、これはあらゆる面で重要な役割を担うところで す。例えば大学においては、ここにいらっしゃる西岡委員、二村委員、堀江委員、松田 委員が強いリーダーシップをとって、意識改革と言いますか。私は大学になって必死に 医学教育改革を一生懸命やってきたので、私個人はいま云われたような意識は絶対に 持っていなかったのですが、やはり外からは分かりにくいので、ひとまとめにそういう 議論をされてしまう可能性があります。先生方は十分指導的な立場にありますので、是 非そういうことを大学に持ち帰って、全国医学部長・病院長会議でリーダーシップを とって、よろしくお願いしたいと思います。  すでにもう過去1年にわたって、先生方の多大なご努力で、意識改革が随分変わりま した。この間の学部長・病院長会議の提言があって、これ以上踏み出した提案をされて いるのです。ですから、そういうことをよく鑑みて判断していただければと思います。 そういうことで「実施後五年以内を目途にこれらの条件を見直す」と最後に書いてあり ます。これは1期生が卒業する2年目ぐらいから評価を行って、5年以内に見直すとい うことをIVに書いてあるのです。ですから今のことも考慮に入れながら考えていただけ ればと思います。  いまの指導医の件ですが、プライマリイケアというのは難しいのです。星委員が言わ れたような修文でよろしいでしょうか。やはり「能力」という項目がなければ、ただこ れだと下村委員が言われるとおりになりますから。 ○下村委員  なかなか難しいので、今日のところで先ほどおっしゃったようなことを決めておくこ とには賛成です。先ほど矢崎座長がおっしゃったところで言うと、「マッチング」の問 題と「評価」と「処遇」、併せて「指導医」の問題も引き続きもう少し詰めるというこ とをやっていただければ、私は今日決めたことについて反対しているわけではありませ ん。ただ、もうちょっと何か問題が残っているなということを、いろいろ言っているだ けです。 ○矢崎座長  では3番目は星委員が言われた修文で直させていただき、「マッチング」「評価」 「指導医」、そしていちばん大事な「処遇」については、今後検討させていただきたい と思います。事務局、よろしいですか。 ○星委員  ちょっと気になる所があります。総合的な急性期型病院であって、がんセンターみた いなものは駄目だというのはイメージできるのですが、「総合的な急性期型病院」とい う定義もなかなか難しいのです。これはどう定義するかにもよると思いますが、私たち の身近な例で言うと、例えば医師会立の地域病院には、急性期型の病院とそうでないも のとがあります。急性期型が「総合的か」と言われたときに、いわゆる今までの総合病 院のイメージで言うと、診療科として欠落しているものがあります。我々が医療の世界 で「総合的な病院」と聞くと、どうしてもあのイメージが想起されるので、そうではな いのだと。 ○矢崎座長  そのために病院群を決めるのです。私が言っているのは、がんセンターとか循環器病 センターといった所は、管理型にはなり得ないのではないかということです。 ○星委員  ですから、それが分かるように、皆さんには理解してほしいなと思います。 ○下村委員  先ほどの議論から言えば、コアの部分について相応の能力を持っているというような 感じになるのではないですか。医師会病院などでもコアの部分について相当の能力がな ければ、管理能力だけあっても困るわけです。 ○松田委員  ここのところは私も施設基準の委員会で、随分議論させていただいたところです。矢 崎座長のご提案は、その辺をうまくというか、いままでの議論をまとめていただいてい ると思います。いま議論になった「総合的な急性期型病院」について、やはりコアにな る基準というのは、この委員会としても見識を持って、きっちり提案をしていただきた いというのは、私がずっと申し上げていることです。従来の臨床研修指定病院は400いく つ、500近くあって、その施設が今までそれぞれ随分努力をされて、しかも臨床研修の実 績も上げておられるわけです。私もそういう病院の意見を随分聞いてきました。当面と いうか、いまは移行期とは思いますが、そういう従来の実績もあって、しかもそれなり にしっかりしたコアとなれる病院の基準については、やはり見識を持ってあるレベルで 決めていただきたいと、強く思っております。 ○星委員  もう1点だけ気になる所があるので、これだけは確認しておきたいと思います。「病 床10床に1人」と書いてありますね。それはもうここで議論する気はありませんが、例 えば1,000床の大学病院があって、いままでだったらその大学病院が300人引き受けてい たけれど、新しい基準になると100人しか引き受けられないというようになる。そこで考 えることは何かというと、協力施設をいっぱい作って、協力施設のほうに流し込むとい うことが想定できないようにという議論を、私たちはしてきたはずなのです。ここで書 いてある「協力型施設における定員は、指導医などの研修状況に即して定める」という 言葉の奥には、そういうものがきちんと読み取れるわけです。ただ、この言葉のまま外 に出ていったときに、受けとめ方に非常に違いができてしまうと困るので、法律の条文 のように、そういった我々の趣旨が反映されるような書き方にしてほしいと思います。 座長も多分、そういう思いで書かれているのだろうと私も認識しておりますが、それだ けは1点確認しておきたいと思います。 ○矢崎座長  私としては、どこにどうこうというのではなく、やはり良い臨床研修のできる所に 行ってもらいたいということなので、何も定員で制限するというつもりは全くありませ ん。いま星委員が言われたように、大学病院ではたくさんの人が研修をしています。し かし指導医がたくさんいても十分な研修ができているかどうかというのは、また問題が ありますので、ある程度のキャパシティが設定してもいいのではないか。ただ、そのと きに公平さというものを十分考えながら、対策を立ててほしいと思っています。ですか ら、どこに行ってはいけないというようなことは、やはりこういうことには馴染まない のではないかと思います。  ですから、あまりそれぞれの立場ではなく、是非国民が求める、あるいは先ほど下村 委員が言われた、国際的にちゃんと通用する医者が教育できるのかという視点から。現 状では大学病院がいちばん整っているかと思いますが、本当に厚労省が大学以外の研修 施設を充実して、プライマリイケアのほうはそちらでしっかりした研修ができれば大き な問題は解決されます。私どもの国立国際医療センターも、初期臨床研修はものすごく 大変なのです。むしろがんセンターのようにレジデントから入れたほうが、センターと して高度専門医療をするには、ものすごく楽なのです。  ですから完全に大学も臨床研修を2年間外で、しっかりやっていただけるのであれ ば、レジデントから採ることもあり得るので、そういう意味で私は大学以外の所で、ど んどん良い医師を育てるシステムを構築していただきたい。本来そういう所でやってい ただければ、大学病院は大学病院でいろいろな方法がありますが、それこそ大学によっ ては、研究に邁進する大学院大学みたいな方向にいくとか、いろいろあってもいいと思 うのです。そういう意味で良い医師を育てる環境を、いろいろな所でつくっていくとい うのが、必要なことではないかと思います。 ○星委員  私が心配しているのは、大学が系列化を進めて、巨大な病院群をつくるという形で運 用されることです。そうでなくて、地域に根付いた病院群がつくられていくような、そ ういう支援ができるような目標にしてやらないといけない、ということを共通認識とし て持っているということだけ確認したいのです。 ○矢崎座長  これは議事録に残りますので、西岡委員、堀江委員には頑張っていただき、その辺は いい研修を目指して欲しい。いまは大学病院が主な役を担っていて、極めて責任が重い と思いますので、その点は是非よろしくお願いしたいと思います。 ○下村委員  ただ中医協などのいろいろなデータを見ていると、大学も医療内容にはかなりの差が あるという感じです。先日の手術の問題などにしても、平均在院日数を見ても、相当な 差があるので、大学と言えども一律には議論できないなというのが、私どもの印象だと いうことは申し上げておきます。  それからもう1つ。この10床とか100人というのは、1年生、2年生を合わせてこうな るのですね。 ○矢崎座長  そうです。 ○下村委員  ですから1学年だと50人という読み方をするのではないですね。ある1つの学年につ いて100人、もう1つの学年についても100人ということではないですね。 ○矢崎座長  そうではありません。 ○下村委員  例えば東大病院が1,000ベッドとすると、100人ずつ採ってもいいという意味ですか。 ○星委員  50人ずつしか採れないのです。 ○西岡委員  先ほどの星委員のお話ですが、確かに現状では大学病院にたくさんの研修医が集まる 形になっていますが、本当のことを言えば、これからは厚生労働省のほうから、もっと 資金援助なり予算の援助をしていただき、いろいろな所での研修病院が充実していきま すと、いまの学生諸君は非常に貧しいと、私は思っておりますので、よい研修病院があ ればそこに集まると思います。そういった整備がこれからどんどんなされなければいけ ないのではないかと考えています。  それからもう1つ。今日矢崎座長の案をいただき、ちょっと渋々ながらのところもあ るのですが、これは納得せざるを得ないだろうと思っております。このお考えの流れ と、これまで毎回出てまいりました厚生労働省案の流れとが、いろいろな所でかなり整 合性のとれない部分があるような感じがするのです。できましたら矢崎座長のお考えの 形で、厚生労働省案をもう一度書き直していただきたいということを、是非ともお願い したいと思います。そうでないと折角ここでお話して決めても、また次に同じ案が出て くるというのが今までの流れだったものですから、そこのところは是非とも座長のお力 と中島課長のお力で、何とかお願いしたいというのが私たちの考えです。  それからもう1つ。ずっと心待ちにしていたのですが、今日は「処遇」のほうの議論 は全然やらないのでしょうか。 ○矢崎座長  最初に申し上げた資料は、いまの案とはいくつかの齟齬がありますので、そこはいま ご議論いただいた結論に沿って、事務局でこちらを直していただくようにしたいと思い ます。  「処遇」については後で議論を進めると言いましたが、残された時間で少し説明した いと思います。「研修医がアルバイトをせずに臨床研修に専念できるよう、国は責任を もって適切な処遇が確保される制度を設ける。一方、研修施設も研修医のアルバイトを 緊止するものとする」ということで、施設側もアルバイトをしてはいけないということ を、きっちり監督する責任があります。  それから、「研修手当ては個人に注目し、社会保険等は一貫して保障すること」とい うことは、制度的にいろいろ問題があるかもしれませんが、研修医が病院群を渡ったと きに身分が変わったりなどしないようにしっかり面倒をみてほしい、ということです。  それから、「研修手当ては労働者性およびその研修性の両側面を勘案して設定する」 ということです。これについては研修医が労働者であるかどうかという議論がありまし たが、やはり国民の求めている医師を臨床研修制度必修化によって育てなさいと、国が そういう法律を決めたので、やはり研修性というのはきわめて重要な部分ですので、国 としては、これを十分配慮して研修医に対する対応を、適切な処遇をしていただきたい ということです。  3番目は、現実問題として手当ての額はどうか、ということです。「それぞれの研修 病院における初任給を勘案して設定するものとする」ということにしましたが、ここで ちょっと付け加えたいのは、もともとアルバイトを前提に初任給を非常に低く抑えてい る病院があります。もう一方では、研修の内容ではなく、額で研修医を募っているとい う所があります。  したがって私としては、いわゆる国公立病院等の初任給は諸手当てを入れると大体30 万円ぐらいなのです。ですから、30万円ぐらいで、それよりあまり低くてもいけない し、それより高くてもいけないと思うのです。要するに、研修内容で勝負をしてくださ い。  ただ、30万円ときっちり規定するのではなくて、その前後はいいですし、やはり研修 で処遇を少し出さないと行きづらいというところもありますので、そういう場合にはプ ラス支給をしてもいいということで、ここで数値目標を書きますと、星委員が言われる ように非常にリジッドなものになりますので。ただ、私としては、あまり高いところや 低いところはやめてもらいたいということです。研修内容で勝負していただきたい、あ るいは指導医の対応で勝負していただきたい、ということです。  先ほどありましたように、指導医というものは単にエクストラの仕事ということでは なくて大事な仕事であるということで、指導医手当てということで病院の中での位置付 けをはっきりさせていただいて、やりがいのある仕事であるということを認識できるよ うな支援システムを作っていただきたい、というのがこの処遇の内容です。何か、ご質 問はありますか。 ○松田委員  「処遇」のところで従来から議論になっていまして、これから本当にこのシステムが うまくいくかどうかにかかっていると思います。是非、厚生労働省もこれから処遇につ いて予算確保に努力していただきたいわけで、周囲の意見もそういうふうにいけばと思 うのですが。ここの予算要求の資料6を見ましても、こういう関連予算が出ているので すが、肝心の給与と言いますか、そういう手当てに関する予算というものが全然ないわ けです。私ども大阪府の自治体病院の臨床研修指定病院で十分にご尽力されている先生 方とも話をしましても、もっとたくさん採ってやるには吝かではないし準備をしている けれども、処遇については、病院の中で診療報酬から出すとなると市の予算ということ になる。そうなると5人採っているのをいまから急に10人にするというのは現実に無理 だろうという、そういう現実的なことが起こってくるわけです。  我々がいままでずっと議論していたことが本当に実現できるのか心配なのです。大学 病院もいままでの卒業生の75%からかなり減るということは覚悟していますし、そのつ もりで大学病院も意識改革をしているわけですが、そういう処遇のことをきっちりしな いと、結局はまた、現実に始まってみたら安い労働力で云々ということになるのです。  それに関連して先ほどちょっと議論が出かけましたが、例えば厚生労働省のアンケー トや梅田委員の出だしの所を見ますと、また最近漏れ聞くような意見では医師の不均衡 配置ですか、偏在、地域性など、そういうところの問題と卒後臨床研修での人の配置と いうものが混同されている。こういう臨床研修の問題をもっと全体の医療界というか、 日本の医療の問題である医師の偏在ということを、この機会に何か一部修正しようとい うような意見があるわけです。これは私どもは別の視点であるという認識をしないと臨 床研修の問題の目的が損なわれるという危惧がしますので、その辺も踏まえて予算編成 も含めてやるべきではないか、と思っています。 ○矢崎座長  財源については厚生労働省、おそらく文部科学省も、いろいろな省庁がタイアップし て予算請求をすると思うのですが、この対価が診療報酬などということではなくて、病 院全体の経費として考えていただきたいと思うのです。あまり端的にここだという議論 は馴染まないと思うのです。  もう1つは、おそらく医政局としては、いま松田委員がおっしゃった日本の医療のア ンバランスをなくそうというのが局の1つの目標ではあります。しかしこの基本設計は 良い臨床研修の制度を設計するためのものでありまして、そういう目的に使うというこ とではありません。先ほど申し上げましたように医療施設、大学以外に本当に初期臨床 研修がよくできる拠点をたくさん作っていけば、結果としていま言った医師のアンバラ ンスが解消される。ですから最初の目的がそういう、というふうにあまり決めつけない ように。ですからともかく予算をたくさん取って、そしてそういう大学以外にもきっち り研修できるような施設を育ててほしい、というのが私の願いです。  ですから、いまの臨床研修が努力目標で曖昧模糊でいた中で、そういういろいろな歪 みができているので、やはりそれを解消する1つの助けになればと思っております。そ の辺を大所高所から考えていただければ、大変ありがたいと思います。  ですから、あとはいかに予算を取ってきてくださるかということにかかっていますの で、厚生労働省が中心になると思いますが、松田委員のお話を踏まえて、できるだけ予 算を獲得していただきたいと、私どもは願っているわけです。 ○堺委員  財源についてはもちろん議論がしにくいわけなのですが、労働者性ということで診療 報酬からいくらかという議論がいつもあるわけですが、どこでも検証をしたことがない と思うのです。  それで今年の6月の診療行為を詳細に見まして、研修生が診療報酬上はどのぐらい稼 いでいるかと。稼いでいるというのはおかしいのですが、大体、13万5,000円ぐらいで す。ですから、矢崎座長がおっしゃった30万円にはほど遠いわけです。これが全国普遍 的かと言うとなかなか難しいところがあると思うのですが、いきなり診療報酬とおっ しゃってもなかなか厳しいということで、それだけの倍以上は病院が負担する形になっ ているのが現状だということを参考までに申し上げたいと思います。 ○大谷委員  いま先生と松田委員がおっしゃったように、国の財政措置をどうするかということで すが、国は来年の春になれば平成16年度の予算要求をしなければいけないわけですか ら、やはりそれまでに全国の医学会の世論というものをきちっとして、厚生労働省には 腹をくくってもらわないといけないと思います。できないならできないで早くはっきり 言ってもらわないと、いつも最後のギリギリのときになってゴチャゴチャとなるので、 それは非常に困る、ワーキングとしてはそれは非常に困るのです。ですから、きちっと してもらいたいと思います。  これはここで引き続きやってもらうと。引き続き皆様全部でやっていただくか有志で やっていただくか、いずれにしても国がどこまでこの法律の責任というものを財政的に はっきりさせるか、という問題をきちっと詰めていかないといけないと思います。  もう1つは雇用形態の問題なのです。一般的には経営主体がいろいろですからこうい う書き方でいいと思うのですが、やはり国や県などの病院では、いまはおそらくさまざ まな形だと思いますが、国の場合はおそらく日々雇用の形でやっていると思います。や はりそんなことでは。  国が本来2年間の研修をして、あとはまたどこかレジデントで行っていただくとか、 アメリカへ勉強に行かれるとか、あるいは地域医療に尽くされるなどといろいろなこと があるでしょうから、やはり2年が終わった時点で、あとはきちっとやってもらいます よと。しかしそれまでの2年間は、研修医として誇りを持って研修に従事できるような きちんとした処遇体系を考えなければいけないと思うのです。日々雇用という形は、も ともと病院のいろいろな雑用的なことで臨時にいろいろできている制度だと思います。 ですから、これは厚生労働省になっているわけですから、現在のそういう職業的な法制 度できっちり安定した、いまの日々雇用ではなくてもっときっちりしたものに、できる ならばそういうものをできるだけ早く示してもらって、ほかの経営主体のモデルになる ようにきっちりしてもらいたいと思います。  もしそれができないとすれば政治のほうできちっと立法でもして、これはたったの2 年のことですから、やはり身分を安定させると。国立や各県の所がいままでの雑用的な 法律を適当にやっておられるというようなことはあまり健全な姿勢ではないので、これ は是非厚生労働省のほうで急いできちっと示してもらいたいと思います。  なぜできないのか。できないとすれば、これはやはり政治のほうに言って。政治のほ うが、そんなことをする必要はない、一般のそういう雑用と同じでいいんだ、と言われ るならまた話は別ですが、臨床研修のいちばん大事なときですからそんなことを言われ るわけがないのです。  国の財政措置の問題は来年の春まで、いまの雇用形態の問題はいますぐにでもはっき り現行の法律制度の中ではどうできるのかと、できなければどういうふうな立法が可能 なのかという問題を、これは政治の問題にもなりますが、きちっと整理をして教えてい ただきたいと思います。これは事務当局に対するお願いです。これは私の処遇に関する お願いです。いまのところ、全体としてはこの先生の案でよろしいのではないかと思い ます。 ○矢崎座長  どうもありがとうございました。大谷委員から本当に筋の通ったお話をいただきまし て、担当の厚労省としては、襟を正していまのご意見を全うするように努力していただ きたいと思います。 ○花井委員  産婦人科を必修項目に取り上げていただきましたことを大変ありがたく思っておりま す。それから、アルバイトの禁止も明確にここに書かれていますので、これが本当に実 現されるといいなと思っているところです。  最後に、第三者的な臨床研修の評価機関のことです。これは「実施後五年以内を目途 にこれらの条件を見直す」となっているのですが、その評価機関を5年以内に設置す る、というふうに解釈してよろしいのでしょうか。この文章の前半と後半は別のものな のか、5年以内に設置するということなのか。 ○矢崎座長  素人が文章を全部作りましたので非常に詰めが甘いと思いますが、これは5年以内を 目途に見直すのです。そのためには評価しなければいけないので、おそらく第1期生が 出る2年後には評価機構を作って、そこで議論をして、5年以内に次の見直しを行うと いう意味ですので、これは見直すというためには第三者的な評価機構は実施したらすぐ に作らないと間に合わないという、私はそういう理解です。 ○花井委員  「五年以内」というのが後ろにかかるのかな、というふうに捉えかねないかなと思い ましたので。そういうことであれば、この矢崎先生の案に賛成いたしますので、是非よ ろしくお願いしたいと思います。 ○矢崎座長  ありがとうございました。 ○高梨委員  矢崎座長の下でこういう案がまとめられて、そのご苦労に大変感謝を申し上げます。  ただ1点だけ意見として申し上げれば、出だしの所の内科の研修についてです。ここ の表現では「6ヶ月以上とする」となっていますが、この点については島田先生がおっ しゃっていたように「6ヶ月以上が望ましい」としてですか、やはり若干弾力性を持た せたほうがいいのではないか、というのが私の意見です。以上です。 ○矢崎座長  ありがとうございました。 ○川崎委員  大変よくできた案だと思います。特に2年間が2段階方式で、最初に基本的な内科、 外科、救急というものをやってから、そのあとに小児科や専門の科を回っていく、ある いは選択があるということが、受入れ体制としてはローテーションを組むときに難しい かもしれませんが、私は非常に実のあるいい研修ができるのではないかと思います。  それから医科大学の立場からです。いままで東京都内の一部の学校で、国立も含めて ですがたくさんの研修医を採っておりました。この基準でいきますと、先ほどお話があ りましたように1学年50名ぐらいしか採れなくなりますから、私立医大、あるいは大学 病院に非常に痛手があって、それについては、平成16年から急にこうしなさいと言われ ると大変なので、移行期間と言いますか、3年とか5年とか移行期間を付けていただけ ると大変ありがたいのではないか、という気がいたします。  もう1つ。処遇の問題でアルバイトを禁止するということをはっきり決める以上は、 全額とは申しませんが、研修を引き受けた病院に対して給与として支払うことができる 助成金と言いますか、補助金を、矢崎先生は30万円と言われましたが、せめてその半額 ぐらいでも。いま堺先生が労働力は実際13万円だと言われましたから、15万円あるいは 20万円の助成金が出るように厚労省として是非、ご尽力を賜わりたい、そういうように 思います。以上です。 ○矢崎座長  ありがとうございました。 ○西岡委員  先生の文章のことで質問があります。この「処遇」の所で、私はこの流れとしては非 常に結構かと思いますが、1)から4)の項目で主語が誰なのだろうかというのが少し わかりにくくて、全部が国なのか、あるいは指定病院なのかという辺りが少しわかりに くいのです。特に3番目の「研修手当ては、それぞれの研修病院における初任給を勘案 して設定するものとする」と、主語がないものですから誰が設定するのかという辺りが わかりにくいのです。その辺りをまたこれからの議論の対象にしていただければありが たいと思います。 ○矢崎座長  わかりました。私は、「国は責任をもって適切な処遇が確保される制度を設ける」と いうことの内容を書いたつもりです。これは「国が責任をもって」という大谷委員のお 話どおりですので、今後は、大谷先生の言われた趣旨に沿って厚労省も頑張っていただ きたいと思っています。 ○西岡委員  ありがとうございます。それを聞いて安心いたしました。 ○矢崎座長  そうしますとご議論いただきまして、結論は「プログラム」の部分の1)で内科が 「望ましい」のであれば、「6ヶ月以上が望ましい」というふうにさせていただきま す。  あとは、「施設基準」の3)の「指導医とは」ということで、先ほど言われた「臨床 経験7年以上で、プライマリイケアの教育に十分能力のある」という先ほどの星委員の 修文に直させていただきたいと思っております。  その2つを直して、これをワーキンググループの本日の日付で「新臨床研修制度の基 本設計」ということで厚労省に提出したいと思いますが、よろしいでしょうか。                 (異議なし) ○矢崎座長  では、そういうことで一応この会をまとめさせていただきます。残された課題につい て今後是非、この検討会を開くよう、私のほうからも事務局にお願いしまして、この会 を閉じさせていただきたいと思います。  本日は長時間にわたり、お忙しいところを出席していただきまして、ありがとうござ いました。これで終わりにします。                                    (以上)                        照会先                         厚生労働省医政局医事課                          電話03−5253−1111                           内線 2563