本日開催された第5回「新たな看護のあり方に関する検討会」において、中間まとめが、別添のとおりとりまとめられましたので、お知らせいたします。
医政局看護課 照会先:勝又、習田 内線 :2599,2595 直通 :03-3595-2206
新たな看護のあり方に関する検討会は、平成14年5月31日から、少子高齢化の進展、医療技術の進歩、国民の意識の変化、在宅医療の普及、看護教育水準の向上などに対応した新たな看護のあり方について検討を行うことを目的とし、(1)医師による包括的指示と看護の質の向上による在宅医療の推進 (2)医療技術の進歩に伴う看護業務の見直し (3)これらを推進するための方策等についてを検討課題として、これまで5回にわたり精力的に審議を行ってきたところである。
今回の中間まとめは、これまでの議論を踏まえ、論点の整理を行うとともに、看護師等による静脈注射の実施について意見をまとめたものである。
今後、残された論点について議論を深め、平成14年度中には最終報告書をとりまとめる予定としている。
1 これまでの議論を踏まえた論点の整理
(1)時代の変化と新たな看護の役割
○ | 看護知識の増大、看護技術の発達、看護教育の高度化等により看護師 等の知識・技能は大きく向上してきている。 一方、医療に対する国民のニーズは拡大・多様化し、看護師等に期待 される役割は拡大しつつある。 |
○ | 平成13年度厚生労働科学研究「諸外国における看護師の新たな業務と役割」によれば、諸外国においても看護師の役割・業務は変化し拡大してきている。 フランスでは看護師独自の判断で行う活動、医師の指示で看護師単独で実施する活動、医師のそばで実施する活動とに分けられ、自由開業看護師が数多く活動している。アメリカでは専門看護師(CNS)やナースプラクティショナーが一定の薬剤の処方を含めてその判断で行える業務が規定されている。 |
○ | 一方、看護の独自の役割についても、多くの看護理論が現れてきており、アメリカの看護診断分類も我が国に紹介され活用されつつある。 |
○ | 我が国においても、看護師等の能力を可能な限り活用することにより、患者の視点に立った医療の提供を推進することは重要な課題である。特に、今後ますますニーズが拡大する在宅医療において、身体状況の変化などに対応し、患者が適切な看護ケアを迅速に受けられるようにするため、看護師等が行うことができる業務や関連諸制度などの見直しを行うことが必要である。 |
(2)看護師等の専門性を活用した在宅医療の推進
○ | 住み慣れた地域の中で療養生活を送りたいという患者のニーズに対応するためには、医療依存度の高い在宅療養者に対する看護ケアや増加するがん末期患者に対する在宅での疼痛緩和ケア等に対応できる訪問看護ステーションが少ない現状にある。 |
○ | また、訪問看護の開始や継続は、医師の訪問看護指示書に基づいて行われるが、指示の内容や範囲が必ずしも明確でない場合があり、患者の病態等の変動があった場合、新たに個別具体的な指示を必要とすることが多い。このため、多くの在宅療養者の主治医と連携して活動している訪問看護ステーションでは、必要なケアの提供までに時間を要している。 |
○ | 医師の指示は、医師と看護師等との連携の下、患者の病態の変化を予測した事前の「包括的指示」により、看護師等が柔軟に対応できるようなものであることが望ましい。看護師等は患者の状態を観察し判断して、その事前の「包括的指示」の範囲内で最も適切な看護が行えるようにする必要がある。
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○ | また、在宅医療を取り巻く関連諸制度の再検討の課題として、例えば、在宅における注射の取り扱いの見直し、在宅がん末期患者の疼痛を緩和するための麻薬製剤の適切な使用の促進、必要な衛生材料の供給体制、さらには、在宅患者の死亡時における看護師等の関わり方などの検討が必要との意見もあった。 |
○ | 今後、高齢化の進展や在院日数の短縮等を考えると、さらに在宅医療を推進していく必要がある。そのため看護師等は、医師、薬剤師等その他の職種と緊密な連携を図り、その専門性を発揮していくことが重要である。 |
2 看護師等による静脈注射の実施について
○ | 看護師等による静脈注射の実施については、厚生省医務局長通知(昭和26.9.15 医収517)において、(1)薬剤の血管注入により、身体に及ぼす影響が甚大であること (2)技術的に困難であるとの理由により、看護師等の業務範囲を超えているとの行政解釈が示されてきた。 |
○ | 一方、平成13年度に実施された看護師等による静脈注射の実態についての厚生労働科学研究の結果では、(1)94%の病院の医師が看護師等に静脈注射を指示している、(2)90%の病院の看護師等が日常業務として静脈注射を実施している、(3)60%の訪問看護ステーションで静脈注射を実施しているということが明らかになった。 |
○ | この行政解釈が示されて以来50年以上が経過し、その間の看護教育水準の向上や、医療用器材の進歩、医療現場における実態との乖離等の状況も踏まえれば、医師の指示に基づく看護師等による静脈注射の実施は、診療の補助行為の範疇として取り扱われるべきであると考えられる。 |
○ | ただし、薬剤の血管注入による身体への影響が大きいことには変わりがなく、医療安全の確保は何よりも優先されるべきものであり、解釈変更で患者の安全性が損なわれることのないようにすべきことは言うまでもない。本検討会においても、医療機関によっては、人員配置を手厚くすべきではないか、静脈注射を実施できる看護師等の条件を定める必要があるのではないか、ガイドライン等が必要ではないかなど、様々な意見が出されたところである。 |
○ | このため、まず、厚生労働省においては、医師の指示に基づく看護師等による静脈注射の実施について、行政解釈を改めることが必要である。 また、看護基礎教育における教育内容や卒後の医療機関等における研修内容についても、その骨子を示し、教育現場や医療機関における取組みを促進することが必要である。 併せて、医療機関においては、本年10月から病院等に医療安全管理体制の確立を図ることが義務づけられること等も踏まえて、医師の指示に基づいて看護師等による静脈注射が安全に実施できるよう、静脈注射の実施や注射薬の取扱いに関して、施設内基準や看護手順の作成、見直しを行い、また、個々の看護師等の能力を踏まえた適切な業務の分担を行うことが求められる。 |
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