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現行の水質基準の考え方について



平成14年9月4日


目次

1.水質基準のあり方・性格
 (1)水質基準
 (2)関連事項

2.地域性・効率性を踏まえた柔軟な基準
 (1)必須基準項目・選択基準項目
 (2)水質検査計画

3.逐次改正方式
 (1)逐次改正方式
 (2)検討開始のための要件
 (3)水質基準設定のための要件
 (4)国・地方公共団体による水質監視

4.水質基準設定に当たっての考え方
 (1)微生物に係る基準
 (2)化学物質に係る基準
 (3)性状に係る基準

5.水質検査
 
(1)水質検査方法
 (2)水質検査の品質保証(QA/QC)
 (3)水質検査のためのサンプリング・評価基準
 (4)水質検査計画

索引

別紙


現行の水質基準の考え方について

1.水質基準のあり方・性格

(1)水質基準
 水質基準については、水道法第4条に水道水が備えるべき要件として定められている。また、この基準に関して必要な事項は厚生労働省令で定めることとされている。

水道法(昭和32年6月15日法律第177号)(抜粋)
(水質基準)
4条 水道により供給される水は、次の各号に掲げる要件を備えるものでなければならない。
 一 病原生物に汚染され、又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を含むものでないこと。
 二 シアン、水銀その他の有毒物質を含まないこと。
 三 銅、鉄、弗素、フェノールその他の物質をその許容量をこえて含まないこと。
 四 異常な酸性又はアルカリ性を呈しないこと。 五 異常な臭味がないこと。ただし、消毒による臭味を除く。 六 外観は、ほとんど無色透明であること。
2 前項各号の基準に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 現在の水質基準は、平成4年の生活環境審議会の第2次答申において示された水質基準のあり方についての考え方を踏まえ、「水質基準に関する省令」(平成4年厚生労働省令第69号)(施行:平成5年12月1日)で定められたものであり、46項目について、その基準及び検査方法が規定されている。(別紙1
 関連する主要な通知は、「水道水質に関する基準の制定について」(平成4年12月21日衛水第264号水道環境部長通知)、「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項について」(平成5年12月1日衛水第227号水道整備課長通知)である。
 なお、平成4年の生活環境審議会の第2次答申においては、水質基準を補完する項目(快適水質項目及び監視項目)の考え方についても提示され、これを踏まえ、水道環境部長通知により、適水質項目及び監視項目が定められている。この他、関連するものとして、平成2年の水道環境部長通知により、「ゴルフ場使用農薬に係る水道水の暫定水質目標」が定められている。

「今後の水道の質的向上のための方策について(第2次答申)―水道水質に関する基準のあり方―」(生活環境審議会(平成4年12月))(抜粋)

1.水道水質に関する基準の現状及び今後の方向
 (略)
なお、新しい水道水質に関する基準を設定するに際しては、次のことを考慮することが重要である。
(1)人の健康に関連する項目、生活利用面あるいは施設管理面から必要となる項目とに分類し、各項目の持つ意義を踏まえた基準とすべきである。
 (略)

2.水道水質に関する基準のあり方
(1)項目分類
 水道水に求められる基本的用件の第1は、安全性・信頼性の確保である。この要件から人の健康に影響を及ぼすおそれのある項目をまとめ、「健康に関連する項目」として設定すべきである。水道水に求められる第2の用件は、水道としての基礎的・機能的条件の確保である。この要件は、色、濁り、においなど生活利用上の要請あるいは腐食性など施設管理上の要請を満たすためのものであり、これに関連する項目をまとめ、「水道水が有すべき性状に関連する項目」として設定すべきである。
(略)

「水道水質に関する基準の制定について」(平成4年12月21日衛水第264号水道環境部長通知)(抜粋)
第1 新省令の制度について
 1 一般的事項
  (1) 新省令においては、表の上欄に掲げる事項に1から46までの番号を付し、表の中欄に基準を掲げるとともに、表の下欄に検査方法名を掲げることとしたこと。
   (2) 新省令の表の1の項から29の項までの項は、「健康に関連する項目」であり、生涯にわたる連続的な摂取をしても人の健康に影響が生じない水準を基とし安全性を十分考慮して基準を設定したものであること。また、30の項から46の項までの項は「水道水が有すべき性状に関連する項目」であり、水道水としての生活利用上あるいは水道施設の管理上障害が生ずるおそれのない水準として基準を設定したものであること。

(2)関連事項

(1)衛生上の措置としての残留塩素
 水質基準とは別の枠組みであるが、衛生上の措置として、水道法第22条及び水道法施行規則第17条に給水栓水での残留塩素濃度等が規定されている。

水道法(昭和32年6月15日法律第177号)(抜粋)
(衛生上の措置)
22条 水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、水道施設の管理及び運営に関し、消毒その他衛生上必要な措置を講じなければならない。

水道法施行規則(昭和32年12月14日厚生省令第45号)(抜粋)
(衛生上必要な措置)
17条 法第22条の規定により水道事業者が講じなければならない衛生上必要な措置は、次の各号に掲げるものとする。
 一 取水場、貯水池、導水きよ、浄水場、配水池及びポンプせいは、常に清潔にし、水の汚染の防止を充分にすること。
 二 前号の施設には、かぎを掛け、さくを設ける等みだりに人畜が施設に立ち入つて水が汚染されるのを防止するのに必要な措置を講ずること。
 三 給水栓における水が、遊離残留塩素を0.1mg/l(結合残留塩素の場合は、0.4mg/l)以上保持するように塩素消毒をすること。ただし、供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれがある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は、0.2mg/l(結合残留塩素の場合は、1.5mg/l)以上とする。

(2)給水装置の構造及び材質の基準
 水道法施行令第4条第2項の規定に基づき、「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」(平成9年3月19日厚生省令第14号)が定められており、耐圧に関する基準、浸出等に関する基準、水撃限界に関する基準、防食に関する基準、逆流防止に関する基準、耐寒に関する基準、耐久に関する基準が設定されている。

(3)施設基準
 施設基準は、水道法第5条(施設基準)に規定されており、水道施設(取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設、送水施設、配水施設)について備えるべき要件を定めるものである。水質に関連しては当然水質基準に適合する浄水を得るために必要な要件を備える必要があり、第5条第4項に基づき、「水道施設の技術的基準を定める省令」(平成12年2月23日厚生省令第15号)が定められている。


2.地域性・効率性を踏まえた柔軟な基準

(1)必須基準項目・選択基準項目
(1)定期及び臨時の水質検査
 水道法第20条に基づき、水道事業者等は厚生労働省令の定めるところにより、定期及び臨時の水質検査を行わなければならない。その方法については水道法施行規則第15条に具体的に規定されており、この中で検査を省略することができる場合について規定されている。さらに詳細には「水道法の施行について」(昭和49年7月26日環水第81号水道環境部長通知)に記載がある。
 なお、検査頻度について施行規則を整理すると以下の通りとなる。
1日1回の検査: 色、濁り及び消毒の残留効果
概ね1箇月ごとに行う検査: 水道法に基づく水質基準のうち以下の省略することができる項目を除く36項目
省略することができない項目: 一般細菌、大腸菌群数、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、塩素イオン、有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)、pH値、味、臭気、色度、濁度の10項目

(2)水質基準を補完する項目
 平成4年の生活環境審議会の第2次答申においては、水質基準を補完する項目(快適水質項目及び監視項目)の考え方についても提示された。これを踏まえ、平成4年に「水道水質に関する基準の制定について」(平成4年12月21日衛水第264号水道環境部長通知)にて、快適水質項目及び監視項目が定められた。
 その後、水質管理専門委員会(平成10年3月、12月、平成11年11月、平成12年2月)の審議を経て、順次監視項目9項目が追加され、現在、それぞれ、13項目及び35項目が設定されている。(別紙2)
 改正関連通知:「「水道水質に関する基準の制定について」の一部改正について」(平成10年6月1日生衛発第928号、平成11年12月27日生衛発第1818号、平成12年9月11日生衛発第1379号)。
 関連専門委員会報告:
「水道水質に関する基準の見直しについて」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成10年12月))
「水道水中のダイオキシン類に関する水質基準の設定について」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成11年11月))
「水道水中の二酸化塩素及び亜塩素酸イオンに関する水質基準の設定について」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成12年5月))

「今後の水道の質的向上のための方策について(第2次答申)―水道水質に関する基準のあり方―」(生活環境審議会(平成4年12月))(抜粋)

1.水道水質に関する基準の現状及び今後の方向
 (略)
 なお、新しい水道水質に関する基準を設定するに際しては、次のことを考慮することが重要である。
 (略)
(3)現行の水質基準は全ての水道に一律に適用することを基本としているが、水道水の質的向上が求められている現在、一律に適用すべき基準に加え、おいしい水などにより質の高い水道水を供給するための目標値を設定する必要がある。
(4)人の健康に関連する項目であって、水道水中での検出レベルがきわめて低いため現状では基準項目とする必要性はないものの、将来的に検出レベルの上昇が懸念されるものについては、全国的に監視できるよう指針値を設定する必要がある。
2.水道水質に関する基準のあり方
(1)項目分類
  (略)
 また、水道水の今日的な要請にかんがみれば、基準項目以外に、水道水の水質に関して、次の二つの項目を設定し、水道法に基づく水質基準を補完することが重要である。まず、国民のニーズの高度化に積極的に答えられるよう、おいしい水など質の高い水道水を供給するための目標を「快適水質項目」として設定すべきである。また、健康に関連する物質のうち、全国的にみて水道水中での検出レベルがきわめて低いことなどから現状では基準項目とする必要性はないが、体系的・組織的な監視を行うことによりその検出状況を把握し、適宜、水質管理に活用することが望まれる項目を「監視項目」として設定する必要がある。

「水道水質に関する基準の見直しについて」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成10年12月))(抜粋)

3.水道水質に関する基準の見直しについて
(2)基準値及び指針値の設定の考え方
  (略)
 なお、指針値が暫定的なものについては、指針値の表記の際、暫定的なものであることを明示することが適当であるとした。これに伴い、監視項目は性格的に次の2つに分けられる。
 ・指針値は確定しているが指針値に比べ現在の検出状況が低いレベルにあることから、現状では基準項目とする必要がないもの
 ・監視することが適当と認められるレベルで検出されていることから、指針値は暫定的なものであるが、監視項目として位置づけられているもの

「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項について」(平成5年12月1日衛水第227号水道整備課長通知)(抜粋)

第3 水質基準を補完する項目の設定について
 1 一般的事項水質基準を補完する項目として、国民のニーズの高度化に積極的に応えられるよう、おいしい水などより質の高い水道水の供給を目指すため、「快適水質項目」及びその目標値を別表2のとおり定めたこと。
 また、健康に関連する物質のうち、将来にわたって水道水の安全性の確保を期することができるよう、水道として体系的・組織的な監視を行うことによりその検出状況を把握し、適宜、水質管理に活用するため、「監視項目」及びその指針値を別表3のとおり定めたこと。
 なお、指針値が暫定的なものについては、指針値の標記の際、明示することとしたこと。
別表2、3 略 (別紙2を参照のこと)


(3)ゴルフ場使用農薬
 平成2年の生活環境審議会水道部会水質専門委員会報告において、主要な農薬についてゴルフ場使用農薬にかかる水道水の水質目標が提示された。これを踏まえ、平成2年の「ゴルフ場使用農薬にかかる水道水の安全対策について」(平成2年5月31日衛水第152号水道環境部長通知)により、「ゴルフ場使用農薬に係る水道水の暫定水質目標」として21項目が定められた。
その後、水質基準の改正等を経て、追加・削除が行われ、現在は、水質基準・監視項目以外の項目として26項目が設定されている(別紙3)。
 関連通知:
「ゴルフ場使用農薬に係る水道水の安全対策について」(平成3年7月30日衛水第192号水道環境部長通知)
「水道水質に関する基準の制定について」(平成4年12月21日衛水第264号水道環境部長通知)
「「水質基準を補完する項目に係る測定方法について」等の一部改正について」(平成11年6月29日衛水第39号水道整備課長通知)

「ゴルフ場使用農薬にかかる水道水の安全対策について」(生活環境審議会水道部会水質専門委員会(平成2年5月))(抜粋)

三 ゴルフ場使用農薬にかかる水道水の水質目標
 ・・・水道として安全性を確保するためには主要な農薬について水道水として目標となるレベル(水質目標)が設定され、必要な場合には適切なモニタリングによりその安全性を確認の上、供給することが望ましい。
 このような観点から、・・・ヒトに対する安全性を十分確保できるレベルとして水道水の暫定的な水質目標を・・・定めることが妥当である。・・・

「ゴルフ場使用農薬に係る水道水の安全対策について」(平成2年5月31日衛水第152号水道環境部長通知)(抜粋)

1.ゴルフ場使用農薬にかかる水道水の暫定水質目標
 ゴルフ場使用農薬に係る水道水中の濃度について、別表に掲げる暫定水質目標を設定したこと。
 当該水質目標は、生涯にわたる連続的な摂取をしても、人の健康に影響が生じない水準を基とし、更に安全性を見込んで定めたものであり、万一、一時的に水道水質がある程度別表の数値を超える状況があっても直ちに健康上の影響が生じるものではなく、当該農薬の季節的な使用方法、採水時期等の状況を把握の上、年間平均値として評価されるものであること。
 また、測定に当たっては、別表に掲げる測定方法を基本とすること。

(2)水質検査計画
 特に定めるものはない。
 なお、水質検査計画については、平成12年の水質管理専門委員会報告にその考え方が示されている。


3.逐次改正方式

(1)逐次改正方式
 水質基準の見直しの基本的な考え方については、平成4年の生活環境審議会第2次答申では以下の通り示されている。

「今後の水道の質的向上のための方策について(第2次答申)―水道水質に関する基準のあり方―」(生活環境審議会(平成4年12月))(抜粋)

2.水道水質に関する基準のあり方
(2)基準項目
  (略)
 水道水質に関する科学技術の進歩には著しいものがあることから、今後とも幅広い知見の集積を恒常的に行い、基準見直しの検討を行うべきである。

(2)検討開始のための要件
 特に要件を明確に定めたものはない。 これまでの水質基準の見直しにおいては、WHO等の国際的な動向、科学的知見や検出状況、検査技術等を総合的に勘案して、水質基準の見直しについての検討を実施するかどうかの検討を行ってきている。

(3)水質基準設定のための要件
 平成4年の水質基準の全面的な見直しに際しては、以下の方針のもとに評価がなされた。

「今後の水道の質的向上のための方策について(第2次答申)―水道水質に関する基準のあり方―」(生活環境審議会(平成4年12月))(抜粋)

2.水道水質に関する基準のあり方
(2)基準項目
 水質専門委員会においては、WHO等の検討対象項目を参考にしつつ、現行項目のほか、水道水源において検出される可能性のある物質について、健康影響等に関する知見、日本及び諸外国における基準等の設定状況、検出技術、水道水源あるいは水道水中での検出状況等を総合的に評価することにより、・・・基準項目の各項目及び基準値の設定を行った。
  (略)

(4)国・地方公共団体による水質監視
 平成4年の水道水質基準の見直しに伴う項目の増加・多様化、検査技術の高度化に対応して、水道事業者が適正かつ計画的に水質検査を実施するとともに、監視項目等に係る体系的・組織的な水質測定(水質監視)をおこなうため、国からの通知に基づき水道水質管理計画を都道府県が策定している。なお、そのあり方については、平成4年の水質基準見直しの際に検討されており、平成4年の第2次答申に示されている。

「今後の水道の質的向上のための方策について(第2次答申)―水道水質に関する基準のあり方―」(生活環境審議会(平成4年12月))(抜粋)

3.今後必要となる対応措置
(1)(略)
(1)水質検査体制の整備充実
 水質管理の基本となる水質検査は水道事業者が自らが行うべきであるという原則に照らして、各水道事業者の検査体制の整備を推進していくことは今後とも重要である。自己検査体制の整備に併せて、今回の水道水質に関する基準の見直しにより高度な検査技術が必要とされる項目が新たに追加されたことにより、今後は複数の水道事業者が共同で検査する体制についても積極的に導入していくべきである。そのため、国においては、水質検査体制の整備を推進するため、必要となる指導・支援を行うべきである。
 また、高度な検査技術に対応するため、複数の水質検査の実施主体の間で精度管理ができる枠組みの整備も図るべきである。

「水道水質管理計画の策定について」(平成4年12月21日衛水第269号水道環境部長通知)

水道水質に関する基準については、本職通知「水道水質に関する基準の制定について」(平成4年12月21日付衛水第264号)により指示したところであるが、基準の見直しに伴う項目の増加・多様化、検査技術の高度化に対応して、管下水道事業者等が適正かつ計画的に水質検査を実施するとともに、体系的・組織的に監視項目に係る水質の測定(以下「水質監視」という。) を行う必要がある。このため、左記事項に留意の上、管下水道事業者等と十分調整の上、標記計画を策定し、関係者に周知されるようお願いする。

 計画は、各都道府県全域を対象とし、計画策定時より10〜15年後程度を目標年次とすること。また、必要に応じて中間目標年次を設けること。
 計画は、基本方針、水質検査に関する事項、水質監視に関する事項及びその他の事項について定めるものとすること。なお、その他の事項には、連絡調整体制に関する事項、検査担当者の技術向上に関する事項及びこれらに関連する事項が含まれるものであること。
 水質検査に係る計画には、水質検査の実施主体、水質検査施設の整備について明らかにすること。その際、水道法第20条の規定の趣旨に則り、水道事業者等が水質検査に必要な検査施設を設置するとの原則を踏まえ、水道事業者等と十分調整するとともに、広域的水道整備計画、各水道事業者等の事業計画等との整合にも留意すること。
 水質監視に係る計画には、水質監視の実施地点、水質監視の実施主体について明らかにすること。その際、体系的・組織的に水質監視が実施されるよう、水道事業者等、関係水質検査機関及び関係行政機関等と十分調整すること。
 計画は、計画内容に係る諸条件に変化があった場合等必要に応じて適宜見直すものとすること。

「水道水質管理計画の策定に当たっての留意事項について」(平成4年12月21日衛水第270号水道整備課長通知)

 標記計画の策定については、別途平成4年12月21日付衛水第269号厚生省生活衛生局水道環境部長通知により指示されたところであるが、なお、左記事項に留意の上、別添作成要領により水道水質管理計画(以下「計画」という。) を速やかに策定されるようよろしくお願いする。

1 基本方針
 水道事業者、水道用水供給事業者及び専用水道の設置者(以下「水道事業者等」という。) の水道水質に係る管理の状況を踏まえたうえで、水質検査及び水質監視に係る体制、検査施設の整備等についての基本方針を明らかにすること。
2 水質検査に関する事項
 水質検査に係る計画の策定については、水道事業者等の現状を踏まえ、以下の事項に配慮すること。
 (1) 水道事業者等は、原則として水質検査を行うために必要な検査施設を自ら設置しなければならないものであること。
 (2) 小規模な水道事業者等で単独に検査施設を設置することが困難である等の事情があるものについては、数事業者等が共同して検査施設を設置する等の方法を講ずるものとすること。
 (3) 地方衛生研究所等の地方公共団体の機関又は厚生大臣が指定する水質検査機関の果たす役割分担に留意しつつ、適正な水質検査が行われるようにすること。
3 水質監視に関する事項水質監視に係る計画の策定については、以下の事項に配慮すること。
 (1) 水質監視地点は、水道事業者等が大規模に取水している主要水系毎に必ず設定することとし、都府県にまたがる水系の水質監視を行う場合には、関係都府県間で計画についての調整を図ること。また、地下水については、取水量の多い地域を含むよう監視地点を設定すること。なお、監視地点の設定に当たっては、地域的な偏在が生じないよう十分留意すること。
 (2) 水質監視は、関係する水道事業者等の間で協議の上、大規模水道事業者等が中心となって実施するよう留意することし、水道事業者等による水質監視が困難な地域にあっては、必要に応じ都道府県等による行政的な調査等の実施により対処することが望ましいこと。
 (3) 水質監視は、原水について行うことを原則とするが、消毒副生成物については、監視地点に係る浄水について水質監視を行うこと。また、監視項目以外の項目で、地域の実情に応じて必要となる項目についても、適宜、水質監視を実施こと。なお、水質監視の実施と合わせて、水道原水の全項目検査を実施するよう留意されたいこと。
4 その他の事項
 (1) 計画の円滑な実施のための水道事業者等、関係水質検査機関及び関係行政機関等からなる体系的・組織的な連絡調整体制に関する基本方針を明らかにすること。
 (2) 水質検査及び水質監視が適切に行われるよう、水質検査に係る講習会の実施等検査担当者の技術向上に関する計画を明らかにすること。
 (3) 各種の微量化学物質の検査に対応できるよう、関係水質検査機関間での精度管理の実施に関する計画を明らかにすること。
 (4) 適切な浄水管理の実施等水質検査及び水質監視の結果に基づき、必要となる対応方針を明らかにすること。
別添 略

「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項について」(平成5年12月1日衛水第227号水道整備課長通知)(抜粋)

4 水道水質管理計画の実施
 (1) 水道水質管理計画と水道整備基本構想・広域的水道整備計画との整合性今般策定された水道水質管理計画の内容と既存の水道整備基本構想・広域的水道整備計画の内容との間に相違が生じないよう、水道整備基本構想・広域的水道整備計画の見直しに当たっては、水道水質管理計画との整合に留意されたい。
 (2) 原水水質監視原水水質監視の実施に際しては、環境部局において要監視項目に関する水質測定が行われることを考慮し、必要に応じて行政相互の連携を図ること。また、原水水質監視の結果から、指針値を超過しているか又は超過することが見込まれる監視項目が把握された場合は、当課水質管理室に連絡されるようお願いする。なお、水質監視結果については、各都道府県において定期的にとりまとめられたものについて全国的に集計する予定である。
 (3) 水質検査精度の管理「水道法の施行について」(昭和49年7月26日付環水第81号厚生省環境衛生局水道環境部長通知)の記第6、3で示されている水質検査の精度管理の実施に当たっては、以下の点に留意されたい。
(1) 内部精度管理
 検査技術者間での精度の均一化を目的として内部精度管理を実施するため、自己検査体制を有する水道事業者等及び水道法第20条第3項に基づく検査の委託を受ける地方公共団体の機関(以下「検査機関」という。) は、検査の技術的な指導、並びに検査結果の解析及び記録に関して全般的な責任を有する技術責任者をおき、この責任者の下で検査技術の標準化・統一化のためのマニュアル作成及び内部精度管理図を用いる等による精度管理体制の充実に努めること。
(2) 外部精度管理検査機関は相互に協力して外部精度管理に係る組織を形成し、第三者による客観的な外部精度管理を定期的に実施するよう努めること。なお、今般、別添のとおり全国給水衛生検査協会等の協力を得て水質検査精度管理の手引きを作成したので、参考とされたい。
 (4) 水質管理計画実施状況等のとりまとめ各水道事業者における定期及び臨時の水質検査の実施状況、水質管理計画に基づく検査体制整備の進捗状況について、今後、毎年定期的にとりまとめる予定であるのでご協力をお願いする。


4.水質基準設定に当たっての考え方

(1)微生物に係る基準
 現行の基準項目についての基本的考え方は以下の通り。

「水質基準設定の検討概要」(生活環境審議会水道部会水質専門委員会)(平成4年12月)(抜粋)

一般細菌
 概要
 水の一般的清浄度を示す指標である一般細菌数は、水中に存在する細菌の総数を表すものではなく、特定の培養条件下で集落を形成する細菌数を表したものである。水道水中には極めて少なくかつその変動も小さく、平常値よりも一般細菌数が著しく増加した場合には、病原生物により汚染されている疑いがある。
  (略)
 基準値
 病原生物により汚染されていることを疑わせない程度の値として、現行通り1mlの検水で形成される集落数が100以下であること
  (略)
大腸菌群
 概要
 大腸菌群とは、グラム陰性、無芽胞の桿菌で乳糖を分解して酸とガスを生じる好気性または通性嫌気性の菌をいう。大腸菌群には人畜の糞便に由来するものと、土壌等に由来するものがある。従って、大腸菌群の存在自体が直ちに糞便性汚染を意味するものではないが、病原生物により汚染されている疑いを示している。
  (略)
 基準値
 人畜の排泄物等による汚染度を示す指標であることから、病原生物により汚染されていることを疑わせない値として、現行どおり検出されないこと
  (略)

(2)化学物質に係る基準
 これまでの専門委員会報告において、化学物質に係る基準のうち、健康関連項目全般についての基本的な考え方が示されてきている。以下に代表して平成4年の専門委員会報告における考え方を示す。

「水道水質に関する基準のあり方について」(生活環境審議会水道部会水質専門委員会(平成4年12月))(抜粋)

3.水道水質に関する基準
(1)基準項目
(1)健康に関連する項目
 WHO等が飲料水の水質基準設定に当たって広く採用している方法を基本とし、1日に飲用する水の量としては2リットル、人の平均体重としては50kg(WHOでは60kgとしている。)を用い、食物、空気等他の暴露源からの寄与を考慮しつつ、生涯にわたる連続的な摂取をしても人の健康に影響が生じない水準を基とし安全性を十分考慮して評価を行った。さらに我が国における水道水源、給水栓水等からの検出状況を総合的に勘案の上、項目と基準値を設定したものである。したがって、このように健康影響が長期間摂取の結果として評価された項目については、万一、一時的に基準値をある程度超える状況があったにしても直ちに健康上の問題に結びつくものではないことに留意して基準を運用を行うべきである。

 平成10年の専門委員会報告では、現行の水質基準について、(1)毒性評価、(2)暴露分析、(3)処理技術・検査技術の考慮、(4)基準の設定の考え方を以下の通り示している。また、その流れ図について別紙4に添付する。

(1) 毒性評価

「水道水質に関する基準の見直しについて」別紙2 水道水質に関する基準の見直しに関する基本的考え方(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成10年12月))(抜粋)

・毒性評価
 検討対象項目について、人の暴露データや動物を用いた各種毒性試験(短期毒性試験、長期毒性試験、生殖・発生毒性試験、変異原性試験、発がん性試験等)等毒性情報を収集・整理し、毒性の評価を行う。評価に当たっては、暴露源(暴露経路)を考慮するものとする。
 なお、化学物質は、発現した毒性により、ある暴露量以下では発現しないと考えられる毒性を有する物質、すなわち閾値があると考えられる毒性を有する物質と、どんなに微量であっても発現の可能性が否定できない毒性を有する物質、すなわち閾値がないと考えられる毒性を有する物質の2つに通常分類される。これらの検討対象項目について、閾値の有無を検討する。検討に当たっては、国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価を基本とし、米国環境保護庁(USEPA)等その他の発がん性評価の結果も参考とする。


(2) 暴露分析
 閾値の有無により寄与率の取り扱いが異なっている。具体的には(4)基準の設定を参照。

(3) 処理技術、検査技術の考慮

「水道水質に関する基準の見直しについて」別紙2 水道水質に関する基準の見直しに関する基本的考え方(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成10年12月))(抜粋)

D 分析技術からみた検討
 基準値又は指針値は、水道として実用可能な分析技術によって定量可能なレベルである必要がある。定量可能なレベルでない場合には、水質としての基準化ではなく、必要な場合には、一定の技術的手法によりその確保を図る方法(定量下限を基準値又は指針値とすることを含む)等を検討する。

E 処理技術からみた検討
 基準値は、水道において維持されることが必要であり、その達成のための処理等の技術について必要な検討がなされなければならない。


(4) 基準の設定
 平成10年の水質管理専門委員会報告では、(a)毒性評価の結果を踏まえ評価値を算出し、(b)検出状況等を踏まえ、水質基準等の位置づけを決定するという流れとなっている。

(a) 評価値の算出

「水道水質に関する基準の見直しについて」別紙2 水道水質に関する基準の見直しに関する基本的考え方(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成10年12月))(抜粋)

B 閾値があると考えられる場合の評価値の算出方法
 閾値があると考えられる場合については、当該項目の有害性に関する各種の知見から原則として動物又は人に対して影響を起こさない最大の量(NOAEL(最大無毒性量))を求め、それに基づいて評価値を算出することとする。
 毒性試験等に基づいて、ある用量以下では毒性が発現しないとみなされる場合は、動物試験あるいは疫学調査から得られるNOAELなどを不確実係数で割ることにより耐容1日摂取量(TDI)を求める。
 不確実係数は種内差及び種間差に対して100を用い、さらに、短期の毒性試験を用いた場合、最小毒性量(LOAEL)を用いた場合、NOAELの根拠となった毒性が重篤な場合、毒性試験の質が不十分な場合等に対してそれぞれ最大10の不確実係数を追加することを基本とする。また、非遺伝子障害性の発がん性の場合、発がん性を考慮し、不確実係数10を追加することを基本とする。
 飲料水の寄与率(TDIのうち飲料水が占める割合)については、食物、空気等他の暴露源からの寄与を考慮して定めるものとするが、これらが明らかでないものが多いことから、一般的には飲料水からの摂取量をTDIの10%と想定することとする。

TDI= NOAEL
―――――
不確実係数

評価値= TDI×体重(50kg)×飲料水の寄与率
―――――――――――――――
1日に飲用する水の量(2L)

C 閾値がないと考えられる場合の評価値の算出方法
 遺伝子障害性物質による発がん性等閾値がないと考えられる場合については、飲料水を経由した当該項目の摂取による生涯を通じたリスク増分が10-5となるリスクレベルを評価値とすることを基本とする。外挿法としては、線形多段外挿法を基本とする。


(b) 基準項目と監視項目の選定

「水道水質に関する基準の見直しについて」別紙2 水道水質に関する基準の見直しに関する基本的考え方(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成10年12月))(抜粋)

A 基準項目と監視項目の選定
 検討対象項目に係る毒性情報や暴露評価から評価値(基準値等として設定されることが検討される値)を設定し、評価値の一定レベル以上の値を超えて検出されているものの中から用途、使用量、毒性に関する科学的知見等を総合的に判断して重要と考えられるものを基準項目とし、これらの事項が基準項目に準ずると判断されるものであって定期的にモニタリングする必要があると考えられるものを監視項目とする。
 なお、上記の毒性情報に関しては、WHO飲料水水質ガイドライン等の国際的な評価や検討時点において入手可能な文献情報等を踏まえ検討する。また、検出状況に関しては、検出率及び検出濃度の双方を考慮する。具体的には、以下の考え方を基本として、データの検出状況、分布状況等を考慮し、これらを総合的に検討する。

○基準項目
 基準項目は、全ての水道にその定期的な測定・監視、測定値が超過した場合の対策の実施等管理を強制するものであるので基準値に近いレベルとなる蓋然性が高いものを選定することとし、具体的には以下を基本とする。
 ただし、既存の基準項目については、以下に関わらずこれを維持する。
1)調査結果の有効な最大値データが評価値の50%を超えていること。ただし、濃度分布等からみて特異値と考えられる場合は除く。
2)上記を満たし、かつ評価値の10%を超えるものの検出率が数%のレベルであること。

○監視項目
 監視項目は、今後の動向を把握するものであるので、評価値に近くなる可能性が乏しいと考えられるものを除き幅広く選定することとし、具体的には以下を基本とする。
 ただし、既存の監視項目については、上記の基準項目の考え方に該当する場合を除き、設定後まだ数年を経たにすぎず今後のデータの蓄積が重要であることに鑑み、以下に関わらず当面これを維持する。
1)調査結果の有効な最大値データが評価値の数%レベル以上であること。ただし、濃度分布等から見て特異値と考えられる場合は除く。
2)上記を満たし、かつ評価値の1%を超えるものの検出率が数%レベル以上であること。
 なお、評価値が暫定的なものについては、原則として監視項目とし、さらに、指針値の表記の際には指針値が暫定的なものであることを明示することが適当である。これに伴い、監視項目は性格的に次の2つに分けられる。
 ・指針値は確定しているが指針値に比べ現在の検出状況が低いレベルにあることから、現状では基準項目とする必要がないもの
 ・水道水から監視することが適当と認められるレベルで検出されていることから、指針値は暫定的なものであるが、監視項目として位置づけられているもの

(3)性状に係る基準
 現行の基準項目についての基本的考え方は以下の通り。

「水道水質に関する基準のあり方について」(生活環境審議会水道部会水質専門委員会(平成4年12月))(抜粋)

3.水道水質に関する基準
(1)基準項目
(2)水道水が有すべき性状に関連する項目
 色、濁り、においなど生活利用上あるいは腐食性など施設管理上障害の生ずるおそれのある項目については、障害を生ずる濃度レベルを元に評価を行い、水道水の性状として基本的に必要とされる項目を選定し、基準値を設定した。


5.水質検査

(1)水質検査方法
 「水質基準に関する省令」(平成4年厚生労働省令第69号)において、微生物、化学物質、pH、臭気、色度、濁度等の46項目それぞれに適合すべき基準及びその検査方法を定めている。
現行省令では「方法名」のみを掲げ、その詳細は「水道水質に関する基準の制定について」(平成4年12月21日衛水第264号水道環境部長通知)によっている。
 なお、水質検査のあり方については、平成4年の水質基準見直しの際にも検討されており、平成4年の答申及び水質専門委員会報告にその考え方が示されている。
 快適水質項目・監視項目の検査方法については、「水質基準を補完する項目に係る測定方法について」(平成5年3月31日衛水第104号水道整備課長通知)に詳細な検査方法が記載されている。その他、アンモニア性窒素・残留塩素・大腸菌群、平成4年以降に制定された監視項目等についても、詳細な検査方法について通知がなされている。

「今後の水道の質的向上のための方策について(第2次答申)―水道水質に関する基準のあり方―」(生活環境審議会(平成4年12月))(抜粋)

2.水道水質に関する基準のあり方
(2)基準項目
(2)水質検査
ア.検査方法
 現行の水質基準の見直しに応じ、近年の検査技術の進歩に対応した検査方法を採用するとともに、今後も最新の技術が反映されるよう努めるべきである。 また、高度な検査技術を必要とする各種の化学物質が新たに基準化されることから、水質検査に係る精度管理の実施を推進すべきである。

「水道水質に関する基準のあり方について」(生活環境審議会水道部会水質専門委員会(平成4年12月))(抜粋)

4.水質検査
(1)検査方法
 検査方法は、基準に適合しているかどうかの判断ができる精度の確保を前提とし、水道として実用可能なものとすべきである。
  (略)
 さらに、水質基準の見直しにより、微量な化学物質に係る基準の設定に伴い高度な分析技術を要すること及び複数の検査方法が採用されることから、検査精度を確保するため精度管理を行う必要がある。
 なお、・・・色、濁り及び残留塩素については、・・・今後、よりきめ細かな水質管理を推進する観点から、自動分析システムの導入による毎日検査の実施を考慮するとともに、毎月検査の項目についても可能なものについては同様に自動分析システムの導入を考慮すべきである。

「水道水質に関する基準の制定について」(平成4年12月21日衛水第264号水道環境部長通知)(抜粋)

第一 新省令の制度について
 3 検査方法
  (1) 新省令の表の下欄には方法名を掲げ、その詳細は別表1によるものとしたこと。なお、その定量限界は、原則として基準の10%としたこと。
  (2) 新省令の表の下欄に掲げる方法には、一斉分析を可能とする方法も含め、水道としての実用可能性のある複数の方法を採用したこと。
  (3) pH値、色度及び濁度に係る検査方法として、新たに機器による方法を加えたこと。(別表1は省略)

(2)水質検査の品質保証(QA/QC)
 平成4年の第2次答申及び専門委員会報告において、精度管理の重要性が指摘されており、その内容を踏まえてその取り扱いについて以下のとおり通知がなされている。

「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項について」(平成5年12月1日衛水第227号水道整備課長通知)(抜粋)

4 水道水質管理計画の実施
 (3) 水質検査精度の管理
 「水道法の施行について」(昭和49年7月26日付環水第81号厚生省環境衛生局水道環境部長通知)の記第6、3で示されている水質検査の精度管理の実施に当たっては、以下の点に留意されたい。
(1) 内部精度管理検査技術者間での精度の均一化を目的として内部精度管理を実施するため、自己検査体制を有する水道事業者等及び水道法第20条第3項に基づく検査の委託を受ける地方公共団体の機関(以下「検査機関」という。)は、検査の技術的な指導、並びに検査結果の解析及び記録に関して全般的な責任を有する技術責任者をおき、この責任者の下で検査技術の標準化・統一化のためのマニュアル作成及び内部精度管理図を用いる等による精度管理体制の充実に努めること。
(2) 外部精度管理検査機関は相互に協力して外部精度管理に係る組織を形成し、第三者による客観的な外部精度管理を定期的に実施するよう努めること。なお、今般、別添のとおり全国給水衛生検査協会等の協力を得て水質検査精度管理の手引きを作成したので、参考とされたい。

(3)水質検査のためのサンプリング・評価基準

(1)サンプリング基準
 水質検査については、大きく分けて(1)定期及び臨時の水質検査、(2)事前の水質検査の2つに分けられる。

(a)定期及び臨時の水質検査
 定期及び臨時の水質検査は、水道法第20条(水質検査)において規定される水質検査である。
 その施行規則第15条では、2.(1)に記載したとおり、検査を省略することができる場合について規定されている。詳細には「水道法の施行について」(昭和49年7月26日環水第81号水道環境部長通知)、「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項」(平成5年12月1日衛水第227号水道整備課長通知)等に記載がある。

水道法(昭和32年6月15日法律第177号)(抜粋)

(水質検査)
20条 水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、定期及び臨時の水質検査を行わなければならない。
 水道事業者は、前項の規定による水質検査を行つたときは、これに関する記録を作成し、水質検査を行つた日から起算して5年間、これを保存しなければならない。
 水道事業者は、第1項の規定による水質検査を行うため、必要な検査施設を設けなければならない。ただし、当該水質検査を、厚生労働省令の定めるところにより、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の指定する者に委託して行うときは、この限りでない。

水道法施行規則(昭和32年12月14日厚生省令第45号)(抜粋)

(定期及び臨時の水質検査)
15条 法第20条第1項の規定により行う定期の水質検査は、当該水道により供給される水が水質基準に適合するかどうかを判断することができる場所から採取した水について行う次の各号に掲げる検査とする。
 1日1回行う色及び濁り並びに消毒の残留効果に関する検査
 おおむね1箇月ごとに行う水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項に関する検査。ただし、同表中1の項、2の項、10の項、35の項及び41の項から46の項までの項の上欄に掲げる事項以外の事項に関する検査の全部又は一部を行う必要がないことが明らかであると認められる場合は、これらの検査を省略することができる。
 法第20条第1項の規定により行う臨時の水質検査は、当該水道により供給される水が水質基準に適合しないおそれがあるときに行う水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項に関する検査とする。
 第1項第二号ただし書の規定は、前項の検査について準用する。
 第1項第二号及び第2項の検査は、水質基準に関する省令の表の下欄に掲げる方法によつて行うものとする。
 第1項第一号の検査のうち色及び濁りに関する検査は、同項第二号の規定により色度及び濁度に関する検査を行つた日においては、行うことを要しない。
 第1項第二号の検査は、第2項の検査を行つた月においては、行うことを要しない。

 定期の水質検査の対象は、「水道により供給される水」(水道法施行規則)である。昭和49年の通知「水道法の施行について」においては、加えて、原水を対象にすべきことが示されている。
 採水場所は、「水質基準に適合するかどうかを判断することができる場所」(水道法施行規則)である。具体的には、昭和49年の通知「水道法の施行について」において、採水場所としては給水栓水を基本とし、「水道施設の構造、配管の状態等を考慮して最も効果的な場所を選ぶ。必要に応じて水源、配水池、浄水池等における水質についても検査することが望ましい」とされ、1日1回検査(色、濁り、消毒の残留効果)については、これに加えて、「配水管の末端等水が停滞しやすい場所も選定する」ものとされている。なお、「送配水システム内で濃度上昇しないことが明らかな事項については、給水栓に代えて浄水場の出口等送配水システムへの流入点において採水場所を選定することができる」。また、採水箇所数は、水道の規模に応じて、水源種別、浄水場・配水システムごとに、合理的に設定すべきとされている。
 検査頻度については、水道法施行規則に規定されており、2(1)に記載したところであるが、必要最小限のものは毎日、それ以外は原則毎月検査すべきものとされているが、明確な理由がある場合は省略ができる項目も規定されている。
 より具体的には、通知において、浄水、原水及び給水栓水の具体的な検査項目の省略の考え方を示されている。なお、簡易水道や小規模な水道事業等に対して、「簡易水道等における水質検査の頻度について」(平成5年8月16日衛水第177号水道整備課長通知)において、平成4年度の改正水質基準の施行後、平成5年度以降の水質検査について個別具体的に検査頻度の考え方を示している。

 臨時の水質検査は、水質基準に適合しないおそれがあるときに行う検査であり、測定頻度については定期の水質検査に準じるものとされている。具体的にどのような場合に行うべきかについて、「水道法の施行について」(昭和49年7月26日環水第81号水道環境部長通知)において示されている。

「水道法の施行について」(昭和49年7月26日環水第81号水道環境部長通知) (抜粋)

6 水道水質管理に関する基本的事項については、次の各事項についてご了知のうえ周知徹底を期せられたいこと。
 水道法施行規則(昭和32年厚生省令第45号(以下「規則」という。)) の運用について
2 第10条関係(給水開始前の水質検査)給水開始前の水質検査は新設、増設又は改造に係る施設を経た給水栓水についての全項目検査(省令の表の上欄に掲げるすべての事項の検査をいう。以下同じ。)及び残留塩素の検査を行うこと。この場合、採水場所の選定は、水道施設の構造、配管の状態等を考慮して最も効果的な場所を選ぶようにすること。なお、必要に応じて水源、配水池、浄水池等における水質についても検査することが望ましいこと。
3 第15条関係(定期及び臨時の水質検査)
(1) 定期の水質検査を行う場合の採水場所の選定は、2に準ずることとするが、規則第15条第1項第一号の検査(1日1回の検査)の採水場所としては、配水管の末端等水が停滞しやすい場所も選定するようにすること。ただし、送配水システム内で濃度上昇しないことが明らかな事項については、給水栓に代えて浄水場の出口等送配水システムへの流入点において採水場所を選定することもできるものとすること。また、水道の規模に応じて、水源種別、浄水場・配水システムごとに、合理的に採水箇所数の設定が行われるよう留意されたいこと。
(2) 規則第15条第1項第二号ただし書の規定による検査項目の省略に当たり、省令の表の29の項までの項(健康に関連する項目)については、他の事項の水質検査の結果、水源の状況等を考慮の上、おおむね過去5か年間の水質検査の結果の最大値が基準の10%(定量限界値が基準の10%を越える事項の場合には、当該事項の定量限界値)以下である場合、1年に1回以上にまで省略できること。ただし、農薬、消毒副生成物等年間の水質変動パターンが明らかとなっている事項については、おおむね過去5カ年間の水質検査の結果の最大値が基準の10%を越えている場合にあっても、年間の平均的な値が求められる時期を選び、1年に4回以上にまで省略できること。また、省令の表の30の項以降の項(水道水が有すべき性状に関連する項目)については、過去の水質検査の結果を基に適切に検査頻度を定められたいこと。
(3) 水道原水及び浄水の全項目検査を次のとおり実施すること。
 すべての水源の原水について、水質が最も悪化していると考えられる時期を含んで少なくとも毎年1回全項目検査を除く全項目検査を実施し、その記録を保存しておくこと。なお、水源の状況に応じ、アンモニア性窒素、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、浮遊物質量(SS)、侵食性遊離炭酸、全窒素、全りん、トリハロメタン生成能、生物、ゴルフ場使用農薬等等必要な項目についても併せて実施することが望ましいこと。
 イによる消毒副生成物を除く原水全項目検査の結果が省令の表の3の項から41の項までの中欄に掲げる基準(ただし、31の項、34の項及び36の項の中欄に掲げる基準を除く。)に適合しない場合は、事後少なくとも毎月1回当該水源の原水について相当期間当該水質項目に関する水質検査を実施すること。
 イによる消毒副生成物を除く原水全項目検査の結果、ロによる水質検査を要しない場合にあっても、その水質が汚染されるおそれがあるとき又はその水源の水質が継続的に悪化していると考えられるときには、ロに準じた水質検査を実施すること。
 給水せん水についても毎年1回以上全項目検査を実施すること。なお、この全項目検査を毎月1回の定期検査にかえて実施することも差し支えない。
(4) 略
(5) 臨時の水質検査は次のような場合に行うこと。
 水源の水質が著しく悪化したとき。
 水源に異常があつたとき。
 水源付近、給水区域及びその周辺等において消化器系伝染病が流行しているとき。
 浄水過程に異常があつたとき。
 配水管の大規模な工事その他水道施設が著しく汚染されたおそれがあるとき。
 その他特に必要があると認められるとき。

「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項について」(平成5年12月1日衛水第227号水道整備課長通知)(抜粋)

 消毒副生成物の検査時期
 農薬、消毒副生成物等年間の変動パターンが明らかとなっている事項の検査については、「水道法の施行について」(昭和49年7月26日付環水第81号厚生省環境衛生局水道環境部長通知)により、おおむね過去5か年間の水質検査の結果の最大値が基準の10%を超えている場合にあっても、年間の平均的な値が求められる時期を選び、一年間に4回以上にまで省略できる旨示されているところであるが、ここで示されている年間の平均的な値が求められる時期とは、それぞれの時期における検査結果の平均値として年間の平均的な値が求められるという意味であり、消毒副生成物の検査時期の選定に当たっては、水温などの影響因子を考慮し、年間の最高値が測定される時期が含まれるようにすること。

 平成12年の専門委員会報告では、これまでの省略の考え方を一歩進め、より具体的な考え方を提示している。

「今後の水道水質管理のあり方について」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成12年3月))(抜粋)

3.水道水質管理の課題
(1)水道法に基づく水質管理
 (略)
1)水質検査項目の性格に応じた区分について
 水道の水質検査には、浄水施設の工程管理の一環として行う検査という性格と、定期的に水質基準に適合しているかどうかを確認するため行う品質検査という性格がある。水質基準項目のうち、工程管理の一環として行う検査項目としては、色又は色度、濁り又は濁度、消毒の残留効果、臭気、味及びpH値が挙げられるが、これらの項目は、検査結果を浄水過程の調整や万一の場合の取水停止などに即時的に反映しなければならないものであり、その性格上、水道事業者が検査施設を設けて行う検査(自主検査)が原則になる。
 その他の項目については、
(1) 健康に関する項目については、病原性微生物を除いて、原則として長期的な検査結果から評価すべき項目であり、水質汚染事故等により比較的高い濃度で検出される場合を除くと、一般的に濃度が低く、その変化は少ないと考えられること
(2) 水道水が有すべき性状に関連する項目については、異常な着色、味、臭い等の原因となる物質がほとんど含まれていないことを確認するために必要であること等から、工程管理の観点から即時的な対応につながるものではなく、外部の水質検査機関に委託し得ると考えられる。
 これに対して、現行の水道法では、検査項目の性格に応じた区分はなされておらず、水質基準項目全てについて、自主検査を原則としつつ、自主検査ができない場合には、地方公共団体の機関又は厚生大臣の指定する水質検査機関に委託することを認めるという整理がされている。
 したがって、水質検査の項目については、その性格に応じて(1)工程管理と一体不可分で水道事業者が自主検査を行うべき項目、(2)外部の専門的な検査機関に定期又は臨時に検査を委託し得るものに分類して整理し(表3−1 水質検査項目の性格及び省略についての考え方(例) 参照)、水道事業者の規模や水源の状況等に応じて運用することにより、効率的な水質検査を行うことが必要である。

2)定期の水質検査の項目、頻度について
 全国の平成10年度における定期の水質検査結果をみると、検査項目のうち、例えば、四塩化炭素等の揮発性の一般有機化学物質等の省略可能項目については、ダム・湖沼水を水源とする場合、ほとんど検出されていない(表3−2 浄水での原水種別毎の基準項目検出状況 参照)。
 したがって、水質検査の結果からは、水源の状況等によっては水質検査の項目や頻度をより弾力的に考えることができる状況にあると考えられることから、個々の水道事業者が、原水及び浄水の水質検査結果、水源の状況等をもとに水質検査の項目や頻度を定めることができるよう、その考え方を示したガイドラインが必要である。

3)代替指標等について
 前述のとおり、定期の水質検査の性格及び項目、頻度については、効率化・合理化の観点から検討が必要であるが、一方、危機管理の観点からは、万一の水質汚染事故への対応の必要性から、水質の常時監視を行うことが求められる。ただし、突発的な水質の異常を迅速に発見するという目的からは、必ずしも、水道水について、水質基準項目を監視する必要はなく、むしろ、水道原水について、水質基準項目の代替となるような指標を監視することにより、その結果に応じ必要な場合に、臨時の水質検査として、該当する水質基準項目を測定することができる体制を整備することが適切である。また、代替指標としての信頼性が高い場合には、定期の水質検査項目について省略することを検討できるものとする。
 以上のことから、水質基準の代替指標として求められる要件には以下のものがある。
 ・ 代替指標と水質基準項目との相関等の関係が明瞭であること。ただし、有害物質の影響の検出等の場合は必ずしも定量的な関係でなくてもよい。
 ・ 代替指標の測定が簡便であり、機器で測定を行う場合には維持管理が簡単であり、コストも安いこと
 ・ 代替指標の常時監視ができること
 なお、pH値等の水質基準項目を他の項目に対する代替指標として活用することも、項目間の相関等がよい場合には考慮すべきである。
 現在、代替指標の候補としては、pH、電気伝導度、アンモニア濃度等が挙げられるが(表3−3 水道水質基準項目の代替指標として考えられる項目 参照)、水質検査の有効な手段として活用できるよう、代替指標としての信頼性についてさらに検討を進める必要がある。
 また、これらの代替指標に留まらず、水質基準項目の測定における自動測定機器の採用については、一部において事例があるが、関係団体等からも実用化を望む声が多いことから、早急に検討を進める必要がある。

※本文中表3−1〜3−3については別紙5として添付。

(b)事前の水質検査

1)認可の申請
 水道法第7条では水道事業経営の認可の申請に関する事項が定められているが、水道事業者等の認可の申請に際しての申請書に添付すべき書類の一つである工事設計書に記載すべき事項の一つとして、「水源の水量の概算及び水質試験の結果」が規定されている。
 工事設計書に記載すべき水質試験の結果とは、水道法施行規則第3条において水質基準項目について「水質が最も低下する時期における」試験結果とされている。具体的には、昭和49年の通知「水道法の施行について」も踏まえると、対象は原水、検査時期は「水質が最も悪化していると考えられる時期、すなわち、降雨、降雪、洪水、渇水時等において・・・、この時期を含んで過去1年以内」、検査項目は定期の水質検査等と基本的には同様の扱いとなっている(消毒副生成物は対象外)。

「水道法の施行について」(昭和49年7月26日環水第81号水道環境部長通知) (抜粋)

第6 水道水質管理に関する基本的事項については、次の各事項についてご了知のうえ周知徹底を期せられたいこと。
 (略)
 四 水道法施行規則(昭和32年厚生省令第45号(以下「規則」という。)) の運用について
1 第5条関係(工事設計書に記載すべき水質試験の結果)
(1) 水源において水質が最も悪化していると考えられる時期、すなわち、降雨、降雪、洪水、渇水時等においてもなお水質基準に適合する水を供給するようにしなければならないので、この時期を含んで過去1年以内に行つた原水の総トリハロメタン、クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、及びブロモホルム(以下「消毒副成生物」という。) を除く全項目試験 (水質基準に関する省令 (平成4年厚生省令第69号 (以下「省令」という。)) の表の21の項から25の項までの項の上欄に掲げる事項以外のすべての事項をいう。以下同じ。) の試験結果及び必要に応じて行つたアンモニア性窒素、生物化学的酸素要求量 (BOD) 、化学的酸素要求量、 (COD) 、紫外線 (UV) 吸光度、全有機炭素 (TOC) 、浮遊物質量 (SS) 、侵食性遊離炭酸、全窒素、全りん、トリハロメタン生成能等の試験結果を記載すること。

2)給水開始前の検査
 水道法第13条に基づき、水道事業者等は配水施設以外の水道施設又は配水池を新設・増設・改造した場合にその施設を使用して給水を開始しようとする時に水質検査等を行う必要があり、給水開始前の水質検査については、水道法施行規則第10条において、水質基準に関する省令の46項目及び消毒の残留効果について、行うものとされている。
 昭和49年の通知「水道法の施行について」も踏まえて整理すると、検査対象は「新設、増設又は改造に係る施設(配水施設以外の水道施設又は配水池)を経た給水栓水」であり、採水場所は「水道施設の構造、配管の状態等を考慮して最も効果的な場所を選ぶ。必要に応じて水源、配水池、浄水池等における水質についても検査することが望ましい」とされ、検査項目は全項目検査(省令の表の上欄に掲げるすべての事項の検査)及び消毒の残留効果(残留塩素)とされている。

「水道法の施行について」(昭和49年7月26日環水第81号水道環境部長通知) (抜粋)

六 水道水質管理に関する基本的事項については、次の各事項についてご了知のうえ周知徹底を期せられたいこと。
 (略)
 水道法施行規則(昭和32年厚生省令第45号(以下「規則」という。)) の運用について
2 第10条関係(給水開始前の水質検査)開始前の水質検査は新設、増設又は改造に係る施設を経た給水栓水についての全項目検査(省令の表の上欄に掲げるすべての事項の検査をいう。以下同じ。) 及び残留塩素の検査を行うこと。この場合、採水場所の選定は、水道施設の構造、配管の状態等を考慮して最も効果的な場所を選ぶようにすること。なお、必要に応じて水源、配水池、浄水池等における水質についても検査することが望ましいこと。

(2)評価基準
 水質検査結果の評価については、平成4年の水質専門委員会報告において基本的考え方が示されている。これを踏まえた、通知「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項について」がある。

「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項について」(平成5年12月1日衛水第227号水道整備課長通知)

2 水質異常時の対応
 (1) 健康に関連する項目
  (1) 基準値超過が継続することが見込まれる場合の措置基準値超過が継続することが見込まれ、人の健康を害するおそれがある場合には、取水及び給水の緊急停止措置を講じ、かつ、その旨を関係者に周知させる措置を講じること。具体的には次のような場合が考えられる。
 水源又は取水若しくは導水の過程にある水が、浄水操作等により除去を期待するのが困難な病原生物若しくは人の健康に影響を及ぼすおそれのある物質により汚染されているか、又はその疑いがあるとき
 浄水場以降の過程にある水が、病原生物若しくは人の健康に影響を及ぼすおそれのある物質により汚染されているか、又はその疑いがあるとき
 塩素注入機の故障又は薬剤の欠如のために消毒が不可能となったとき
 工業用水道の水管等に誤接合されていることが判明したとき
 また、水源又は取水若しくは導水の過程にある水に次のような変化があり、給水栓水が水質基準値を超えるおそれがある場合は、直ちに取水を停止して水質検査を行うとともに、必要に応じて給水を停止すること。
 不明の原因によって色及び濁りに著しい変化が生じた場合
 臭気及び味に著しい変化が生じた場合
 魚が死んで多数浮上した場合
 塩素消毒のみで給水している水道の水源において、ゴミや汚泥等の汚物の浮遊を発見した場合
  (2) 関係者への周知水質に異常が発生したこと又はそのおそれが生じたことを、その水が供給される者又は使用する可能性のある者に周知するときは、テレビ、ラジオ、広報車を用いることなどにより緊急事態にふさわしい方法をとること。
  (3) 水源の監視原水における水質異常を早期に把握するため、各水道にあっては水源の監視を強化するとともに、水道原水による魚類の飼育、自動水質監視機器の導入等を図ること。また、水源の水質異常時に直ちに適切な対策が講じられるよう、平常より関係者との連絡通報体制を整備すること等を図ること。
 (2) 水道水が有すべき性状に関連する項目基準値を超過し、生活利用上、施設管理上障害の生じるおそれのある場合は、直ちに原因究明を行い、必要に応じ当該項目に係る低減化対策を実施することにより、基準を満たす水質を確保すべきであること。なお、色度、濁度のように、健康に関連する項目の水質汚染の可能性を示す項目や、銅のように過剰量の存在が健康に影響を及ぼすおそれのある項目については、健康に関連する項目に準じて適切に対応すること。

 水質検査結果の評価水質異常時の対応も含め、水質検査結果の評価は「健康に関連する項目」及び「水道水が有すべき性状に関連する項目」のそれぞれの特性に応じて、以下のとおり行うこととされたい。 (1) 健康に関連する項目
(1)短期的な検査結果から評価すべき項目
 一般細菌、大腸菌群については、その水道水中の存在状況は病原生物による汚染の可能性を直接的に示すものであるので、それらの評価は、検査ごとの結果の値を基準値と照らし合わせて行うこと。
 シアン、水銀については、生涯にわたる連続的な摂取をしても、人の健康に影響が生じない水準を基とし安全性を十分考慮して基準値を設定したものであるが、従前からの扱いを考慮して、検査ごとの結果の値を基準値と照らし合わせて検査結果の評価を行うこと。
 これらの項目が基準値を超えていることが明らかになった場合には、2(1)により所要の対応を図るべきである。
(2) 長期的な検査結果から評価すべき項目長期的な検査結果から安全性の評価を行う項目であっても、検査ごとの結果の値が基準値を超えていることが明らかになった場合には、直ちに原因究明を行い所要の低減化対策を実施することにより、基準を満たす水質を確保すべきであり、基準値超過が継続すると見込まれる場合には、2(1)により所要の対応を図るべきである。
 なお、監視項目についてもこれに準じた対応を図ること。
 なお、指針値が暫定的な項目については、今後の知見の集積等により指針値が変わりうるものであることを踏まえ、測定値の評価に際して配慮すること。
(2) 水道水が有すべき性状に関連する項目
 色、濁り等生活利用上あるいは施設管理上の要請から、水道水に基本的に必要とされる項目については、その基準値を超えることにより利用上、機能上の障害を生じるおそれがあることから、検査ごとの結果の値を基準値と照らし合わせることにより評価を行うこと。基準値を超えていることが明らかになった場合には、2(2)により所要の対応を図るべきである。

(4)水質検査計画
 平成12年の専門委員会報告では、今後の効率的・合理的な水道水質管理のあり方として「水質検査計画」の制度を中心に据えた姿を提示している。

「今後の水道水質管理のあり方について」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成12年3月))(抜粋)

4.今後の水道水質管理のあり方

(1)基本的事項
 これからの水道は、水道基本問題検討会報告書においても提言されているように、需用者の視点に立ったサービスの提供が重要であり、水道事業者の行う水質管理の内容についても、供給される水道水の特徴、水質基準の遵守状況などを情報公開するなど、その考え方を需用者に対して分かりやすく提示し、理解を得た上で実施していくことが基本となる。その際には、現在の浄水処理水準や水質検査体制による水道水質管理の水準を、その限界も含めて提示していくことが重要である。
 また、自由な経済活動を基調とする経済社会を目指して、規制緩和が進められる中で、今後ますます水道事業者の自己責任原則が重要となる。水質検査についても、実施する項目、頻度等について、最低限の責務として実施しなければならない部分を除いて水道事業者の裁量を認め、自らの責任において安全な水を供給するために必要な検査内容を定めていくことが基本となる。
 さらに、流域単位で見た場合、健全な水循環系の構築が、水に関する行政の共通課題となっており、水道行政はもちろん、環境行政、河川行政、下水道行政、農林水産行政などの関係者が連携して、流域の水循環健全化に向けた総合的な取り組みを進めていく方向が模索されている。このような流域における様々な取り組みも十分念頭に置いて、水道事業者として必要な水道水質管理について検討する必要がある。 この場合、都道府県は、各種環境法令の規制対象施設を把握する立場にあり、公共用水域の水質監視のための測定計画、流域別下水道整備総合計画等の策定主体であるなど、流域の視点からの合理的な水質管理を、もっとも適切に判断できる立場にあることから、流域の水道水質管理について積極的な役割を担うことが期待される。

(2)関係者の役割
 水道事業者、都道府県及び国は、水道水質管理体制等の現状を踏まえ、効率的・合理的な水質管理を行うために、それぞれの役割を考慮し、以下の事項について具体化することが必要である。
 また、水道事業者及び都道府県は、それぞれが具体化した計画の内容について情報公開し、計画の決定に際して、需用者の参加を促進することが重要である。

(水道事業者の役割)
 ・水質基準項目等の増加に対して、より効率的・合理的な水道水質管理を行うために、従来の全国一律的な水質管理ではなく、水源種別、過去の水質検査結果、水源周辺の状況等について総合的に検討し、自らの判断により水質検査等の内容を計画として定め(以下、「水質検査計画」という)、これを精度管理に配慮して自ら又は厚生大臣の指定する者(以下「指定検査機関」という。)への委託により実施し、その結果を評価・公表する。
 ・監視項目等については、自ら安全な水を供給する上で必要と判断したものについて水質検査計画に位置づけ、検査を実施する。また、都道府県に協力し、水道水質管理計画に基づき当該流域における必要な水質監視の一部を担う。・ なお、指定検査機関については、水道事業者や都道府県と協力の上精度管理を適正に行い、正確で迅速な分析結果の提出を通じて、地域の水質管理のために積極的な役割を果たすことが期待される。

(都道府県の役割)
 ・水道事業者の定める水質検査計画について、主に流域の視点から必要な助言、指導を行い、計画がより流域の実状に即したものとなるよう協力する。
 ・監視項目等に係る水質監視については、水道事業者の協力の下、都道府県域の状況を十分考慮して水道水質管理計画を策定し、適切な水質管理が行われるよう努める。
 ・都道府県知事認可の水道事業者に対しては、監督者の立場から、計画の不備に起因する問題が生じた場合には、必要な是正措置を求める。

(国の役割)
 ・水道事業者がその規模や水源の状況に応じた効率的な水質検査計画を策定することができるよう、水道法上の責務として遵守することが必要な水質管理の考え方を明確にするとともに、水質検査計画に係るガイドラインの提供等により技術的な支援を行う。
 ・都道府県が効率的な水道水質管理計画を策定することができるよう、水道水質管理計画に係るガイドラインの提供等により技術的な支援を行う。
 ・厚生大臣認可の水道事業者に対しては、監督者の立場から、計画の不備に起因する問題が生じた場合には、必要な是正措置を求めるとともに、都道府県の策定する水道水質管理計画の円滑な実施に協力するよう関係水道事業者に依頼する。
 ・指定検査機関に対しては、外部精度管理調査を実施すること等により、水質管理のため適切な検査が行われるよう措置する。

(3)水道事業者による水質検査計画について
 効率的・合理的な水質管理を行うためには、各水道事業者が水道技術管理者を主体としてそれぞれの実情に応じた水質検査計画を策定し、これに基づき水質検査を実施することが適切と考えられる。
 この場合の水質検査計画については、例えば、以下のような仕組みが考えられる(図4−1 水道事業者の水質検査計画の概要 参照)。
 1)水道事業者は、その供給する水が給水栓において水道水質基準に適合していることを確認するため、必要な水質検査について水質検査計画を策定し、計画的に水質を検査しなければならない義務を負う。その際、定期的に行う水道水の水質検査による確認だけでなく、水道原水の水質検査によって水道水が水質基準に適合していることを確認できる場合があることも考慮して原水の水質検査を必要に応じて計画に位置づける。また、代替指標等の監視についても同様に必要に応じて計画に位置づける。
 なお、定期の水質検査項目として、監視項目等、水質基準項目以外で必要に応じて測定される項目についても計画に位置づけることが望ましい。
 また、臨時に行う水質検査については、水源の環境条件の変化や突発的な水質変化に対応して、水道原水から給水栓水において実施すべきとの観点から計画に位置づける。
 2)水道事業者は、国が定めるガイドライン(参考2 国が定める水質検査計画のためのガイドラインの概要 参照)を参照して、自己の水源や水質汚濁の状況等を考慮し、需用者の意見を聴いて毎年度、水質検査計画を作成する。水道事業者は、これを遅滞なく監督行政機関(国または都道府県)に報告する。
 3)監督行政機関は、水道事業者が策定した水質検査計画について、国が定めるガイドラインに照らし、必要があると認める場合は、水道事業者に対し、計画内容の見直し等の技術的助言を行う。
 4)水質検査計画には、
(1)計画の基本方針
(2)定期の水質検査についての項目、頻度、検査地点、検査方法、検査主体とその考え方
(3)臨時の水質検査を行う際の考え方、
(4)その他必要な事項
を定めるものとする。
5)水質検査計画に基づき行われた水質管理の内容については、毎年度、水道事業者自らが評価を行い、必要に応じて計画の改訂を行わなければならない。また、水質検査計画に基づく測定結果については、評価の上、需用者に対し公表するものとする。なお、水道事業者による計画及び測定結果の評価に際しては、その客観性を確保するための監査等の体制を検討すべきである。

 以上のような仕組みについては、水道法の体系に位置づけて運用されることが必要である。その際、水質検査は水道水質基準に適合した水の供給の基礎となる重要なものであるため、当該水道事業者を監督する行政機関による計画の事後確認等の体制についても検討されるべきである。
 また、水質検査計画及び計画に基づく測定結果の評価・情報公開の体制については、水道事業全体に係る評価・情報公開のあり方の一環として検討する必要があり、並行して行われている生活環境審議会水道部会における制度的検討の中で整理されるべきである。
 さらに、経営基盤の弱い簡易水道等の小規模水道事業者で、独自に計画を策定することが困難であると考えられるものについては、都道府県等が計画の策定を支援するなどの仕組みを検討すべきである。※本文中図4−1については別紙6として添付。


索引

水道法(昭和32年法律第177号)
水道法施行規則(昭和32年厚生省令第45号)
「水質基準に関する省令」(平成4年厚生労働省令第69号)
「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第14号)
「水道施設の技術的基準を定める省令」(平成12年厚生省令第15号)

「ゴルフ場使用農薬にかかる水道水の安全対策について」(生活環境審議会水道部会水質専門委員会(平成2年5月))
「今後の水道の質的向上のための方策について(第2次答申)―水道水質に関する基準のあり方―」(生活環境審議会(平成4年12月))
「水道水質に関する基準のあり方について」(生活環境審議会水道部会水質専門委員会(平成4年12月))
「水質基準設定の検討概要」(生活環境審議会水道部会水質専門委員会(平成4年12月))
「今後の水道水質管理のあり方について」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成12年3月))
「水道水質に関する基準の見直しについて」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成10年12月))
「水道水質に関する基準の見直しについて」別紙2 水道水質に関する基準の見直しに関する基本的考え方(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成10年12月))
「水道水中のダイオキシン類に関する水質基準の設定について」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成11年11月))
「水道水中の二酸化塩素及び亜塩素酸イオンに関する水質基準の設定について」(生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会(平成12年5月))

「水道法の施行について」(昭和49年7月26日環水第81号水道環境部長通知)
「ゴルフ場使用農薬にかかる水道水の安全対策について」(平成2年5月31日衛水第152号水道環境部長通知)
「ゴルフ場使用農薬に係る水道水の安全対策について」(平成3年7月30日衛水第192号水道環境部長通知)
「水道水質に関する基準の制定について」(平成4年12月21日衛水第264号水道環境部長通知)
「水道水質管理計画の策定について」(平成4年12月21日衛水第269号水道環境部長通知)
「水道水質管理計画の策定に当たっての留意事項について」(平成4年12月21日衛水第270号水道整備課長通知)
「水質基準を補完する項目に係る測定方法について」(平成5年3月31日衛水第104号水道整備課長通知)
「簡易水道等における水質検査の頻度について」(平成5年8月16日衛水第177号水道整備課長通知)
「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項について」(平成5年12月1日衛水第227号水道整備課長通知)
「「水道水質に関する基準の制定について」の一部改正について」(平成10年6月1日生衛発第928号、平成11年12月27日生衛発第1818号、平成12年9月11日生衛発第1379号)
「水質基準を補完する項目に係る測定方法について」等の一部改正について」(平成11年6月29日衛水第39号水道整備課長通知)


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