02/08/29 薬事・食品衛生審議会医療用具安全対策部会 平成14年8月29日議事録        薬事・食品衛生審議会 医療用具安全対策部会 議事録 1.日時及び場所   平成14年8月29日(木) 14:00〜   医薬品医療機器審査センター第2会議室 2.出席委員(15名)五十音順  ○赤 松 功 也、 小 野 哲 章、 小 柳   仁、 酒 井 順 哉、  ◎桜 井 靖 久、 佐 藤 道 夫、 澤     充、 土 屋 利 江、   土 屋 文 人、 長 尾   拓、 中 村 達 夫、 西 山 辰 美、   外  須 美 夫、 松 谷 雅 生、 目 黒   勉 (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(1名)五十音順   天 笠 光 雄 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 黒 川 達 夫(安全対策課長)、   伏 見   環(安全対策企画官)、 清 水   亨  他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点から非公開で開催された。 ○事務局 お待たせいたしました。定刻となりまして、予定の先生がすべて御到着です ので始めさせていただきたいと思います。当部会は16名先生がいらっしゃいますが、天 笠先生は御欠席、長尾先生は所用により遅れてこちらに御到着の予定でございます。本 日は16名の先生方のうち14名御出席ということで会議が成立いたしましたので、14年 度第1回医療用具安全対策部会を開催したいと思います。本日は暑い中、またお忙しい 中御出席いただきましてありがとうございます。  会議に先立ちまして、先生方の御紹介をさせていただきたいと思います。今年の5月 23日付けで櫛田賢次先生の御後任として当部会の委員に御就任されました東京医科歯科 大学歯学部附属病院薬剤部長でいらっしゃる土屋文人先生を御紹介させていただきま す。先生、お願いします。 ○土屋(文)委員 東京医科歯科大学歯学部附属病院薬剤部長の土屋と申します。どうぞ よろしくお願いいたします。 ○事務局 続きまして、本日の議題の審議案件に関しまして、3人の御専門の先生をお 招きしております。手前から国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長 でいらっしゃる井上達先生です。それから厚生科学研究主任研究員の東京医科歯科大学 歯学部名誉教授の佐藤温重先生です。同じく当該研究で御尽力いただきました星薬科大 学の中澤先生の研究室助手の井之上浩一先生です。  それから事務局の話になりますが、今年の8月12日付けで前任の伏見環安全対策企画 官の後任として就任しました企画官を御紹介したいと思います。 ○安全対策企画官 池田でございます。よろしくお願いします。 ○事務局 それでは議事に入らせていただきたいと思います。まず資料の確認をさせて いただきたいと思います。事前送付資料におきましては、不手際がありまして申し訳あ りませんでした。お手元の資料を開けていただきたいと思います。お机の上には座席表 1枚、それから部会名簿が1枚ございます。クリップ留めのものを見ていただきますと、 部会の議事次第と資料目録が1部、資料1、2、資料3については3-1、3-2、3-3、そ れから資料4と5、参考資料が一まとめになってございます。過不足等ございましたら、 事務局まで教えていただきたいと思います。よろしいでしょうか。  それでは今回議事、改訂案件、その他ございますが、議事の都合上審議案件でありま す「塩化ビニル製医療用具から溶出する可塑剤(DEHP)について」から御審議お願い したいと思いますが、以降議事進行等を座長にお願いいたします。 ○桜井部会長 それでは資料3-1〜3-3までございます塩ビの溶出の問題ですが、まず事 務局から説明をお願いします。 ○事務局 それでは説明させていただきたいと思います。まず資料3-1、3-2、3-3、参 考資料1を分けていただければと思います。これら4本の資料が本案件に関する資料で ございます。それぞれの位置付けでございますが、3-1が概括説明資料で私の方から御 説明させていただきたいと思います。それから3-2については、DEHPという可塑剤 自身の毒性に関することでございまして、後ほど井上センター長から御説明いただきた いと思います。それから3-3につきましては、今回厚生科学研究で御検討いただきまし た研究内容の概要を簡単に御説明させていただく資料でございまして、佐藤先生及び井 之上先生から補足説明をしていただきたいと思います。参考資料につきましては、FD Aが先ごろホームページ等で発表した内容、非常に短いブリーフィングがあったので、 それも参考に付けさせていただいております。  それではまず資料3-1から御説明させていただきたいと思います。資料3-1を御覧い ただけますでしょうか。塩化ビニル製医療用具は、優れた柔軟性、展性がある用具でご ざいますが、柔らかくするものとしてその素材に「DEHP(ジエチルへキシルフタレー ト)」というフタル酸化合物が含まれております。重量比にしますと40〜50%程度添加 されているものもあると伺っております。このようなものについては、1ページのFD Aの報告書でも医療用具、カテーテル系を中心としたものに数多く使われていると報じ られております。これは昨年9月、今年の7月にも参考資料に付けましたようにFDA の報告書で周知されておりますが、いろいろな治療方法に基づいて行うとかなりの量の DEHPが溶出してくると。その表を1の2)に載せさせていただいているところでござ います。この表におきまして、日本の厚生労働省の方で定めていますTDI値を超える ものを、便宜的に太くさせていただいております。一般の医療においても短期間ではご ざいますが、このような状況でこのような量でかなり溶出するということが報告されて おります。  次のページに行っていただきまして、このような報告がある中で我々としても国内流 通品についてはどうなのか…。実際の流通品自身の種類も違いますし、また製法も若干 違ったりすることがありますので、国内についての研究も併せてしたいということで、 平成12年度、主に13年度を中心に「プラスチック製医療用具に係わる溶出物質の曝露 量の評価に関する研究」ということで御研究いただき、その内容をまとめていただいた のがこの2)のようなものになっております。この詳細な説明については、後ほど先生か ら頂きたいと思っています。その後、このようなことをまとめまして、問題点を抽出し たのが次のページの3、4という形になりますが、これの検討に移る前にまずそれぞれ の先生からこの物質、DEHPに関する物質の毒性に関する情報、それから実際にどの ような研究テーマで御評価いただいたかということについて、簡単に御説明いただきた いと思います。それでは井上先生、毒性について御紹介いただけますでしょうか。 ○井上専門委員 御紹介いただきました井上でございます。既にDEHPについては、 調理に用いている手袋であるとか、あるいは子供のおもちゃでおしゃぶりのような家庭 用品などについて、このDEHPの毒性についての検討がこれまでなされてまいりまし た。その資料が先生方のお手元に配られている、資料3-2「DEHPの毒性について」 でございます。構造等は最初のページに示されておりますが、その体内動態、ADME が記載されておりまして、4ページから毒性の記載がございまして、「(2)の精巣毒性」 の「ア)フタル酸エステル類の精巣毒性発現の構造依存性」、更に次の5ページの「イ) DEHPの精巣毒性の発現機構について」、そして精巣毒性の評価が6ページの「(3) 生殖・発生毒性」に全体を取りまとめたNOAEL、更にそこから導き出されるTDI の順で記載がなされております。  この毒性の記載で御覧いただきますと、この材の主たる毒性は精巣毒性でございます。 精巣毒性につきましては、4ページにありますように幼若ラットで強く発現する、この 記載にもありますように激しい精細管萎縮、それから精原細胞及び精子細胞の欠落等が 認められております。また、これは高濃度になりますが、直鎖型フタル酸エステル及び DEHPを雄ラットに10日間強制経口投与実験を行った結果等が記載されております。 そしてこれはモノ体では影響がございませんで、私どもが文献を取り寄せて評価した結 果では、組織学的に比較的低用量に至る精巣の精子細胞の形成異常が認められます。こ の論文は比較的古いもので、また取り寄せた資料そのものも写真精度のいいものが得ら れませんでしたので、観察、評価には多少の前提がありましたが、基本的には6ページ の「ウ)DEHP精巣毒性評価」にその結果がまとめられております。コピーでも観察さ れましたのは、セルトリ原生の、セルトリ細胞が変性萎縮性になっている精巣構造が形 成されてくることがありますが、このセルトリ細胞の空胞化に基づく精子形成の低下、 欠損といったものであろうと想定されるような所見でありました。さらにカニクイザル でこの精巣所見が認められないということから、比較的ヒトにおける影響が低いであろ うというふうにまとめました。  ここでは二つの精巣障害の原因を文献的に想定いたしましたが、それはFSHの刺激 によるセルトリ細胞の増殖抑制云々ということ、あるいは直接Gプロテインのシグナル に影響を与えるという論文がありましたので、その二つを想定しましたが、更にその後 の論文は認められませんでした。そこからサルの精巣毒性を発現しないメカニズムが十 分解明されていないということなどにも言及して、DEHPのTDIの根拠を無毒性量 3.7mg/kg/dayということといたしました。  さらに生殖発生毒性側のlambさんたちのデータが出ておりまして、これのLOAELが 144mg/kg/day(0.1%)でそのような値、それからその一段下の0.01%、すなわちNOAEL 等が14mg/kg/day相当ということでしたのでこの両方の中間にあるもの…、このデータ もlambさんのデータで1987年のデータです。それからTylのデータなどを総合します と、こちらの方はLOAEL91、NOAEL44mg/kg/dayでありましたが、生殖発生毒性について は14mg/kg/dayといたしました。精子毒性試験及び生殖発生毒性試験、その双方から無 毒性量3.7ないし14mg/kg/dayという形で両方を踏まえた形の値を採って、これに不確 実係数として100を取って40ないし140μg/kg/dayとTDIを導き出したということで ございます。DEHPの毒性評価については以上です。もし御質問などがありましたら、 お伺いしたいと思います。 ○事務局 ありがとうございます。今毒性評価について御説明いただきましたが、3-1 の資料で示す1の2)のFDAの実測レポートにつきましては、実際各治療法ごとにまと められているものでございますが、具体的に日本の流通品に関して製品ごとに取りまと められた研究というものがなかったものですから、それについて御検討いただきました ことについて佐藤先生、井之上先生から3-3の資料を用いて御説明いただきたいと思い ます。よろしくお願いします。 ○佐藤参考委員 それでは資料3-3に基づきまして、先ほど御紹介ありましたように、 厚生科学研究補助金で平成13年度に行った研究のあらましについて御報告申し上げた いと思います。  研究の課題名は「プラスチック製医療用具に係わる溶出物の曝露量の評価に関する研 究」というものであります。研究の目的といたしましては、プラスチック医療用具、特 に塩ビから造られているものの安全性評価の基礎となる溶出化学物質の曝露量を評価す るということであります。ここで対象といたしました製品は、使用量あるいは生体の体 液との接触時間等から見て安全性上重要であるというもの、全体としては9種類の物質 の医療用具を対象といたしましたが、本部会で関係するのはそのうちの5種であります。 そういった5種を実際に臨床で使われている状態にのっとって、体液等あるいは注射液 等と接触させまして、そのときに溶出するフタル酸ジエチルへキシル等を計測して、そ の溶出量を基にして曝露量を求めたものであります。曝露量の評価は、今井上先生から 御説明がありました我が国のDEHPのTDIである40〜140μg/kg/dayというもの と、溶出量から求められた曝露量を比較したということであります。お手元の資料を1 枚めくっていただきますと、各医療用具ごとに溶出量が書いてありまして、実際ここで は溶出量の上限表を用いておりますが、それから求められる曝露量という表が資料3-3 に示されております。  順を追って説明させていただきます。まず血液バッグでありますが、これは成人男性 から採血した血液を市販の血液バッグに、正常に行われる方法と同様にして保存いたし まして、経時的にDEHPの溶出量を計量したものであります。御覧いただきますよう に、すべての血液バッグからDEHPが溶出しております。溶出量は4℃、お手元の資 料では1週間で415.6μg/バッグと示されておりますが、実際別の製品ではこれより内 側の値、例えば30.4μg/バッグというような製品もありましたが、ここでは上限を示し ております。そして、この量は保存期間に従って増加しておりまして、資料の「注」に も書いてありますが、1週間では415.6μg/バッグだけれども3週間後になると540.0 μg/バッグというものでありました。またこの血液の中には、DEHPの加水分解によ って生ずるモノ体のMEHPが見出されました。その量は血液では3.48μg/バッグとい うことでありました。DEHPの全溶出量というのは、概算としてはMEHPとDEH Pの量を加えたものであろうということで、そのような計算をした補正値、DEHPの 全溶出量、お手元の資料では「補正値」と書いてありますが、それの最大値、つまり3 週間保存した場合の値を基にして曝露量を評価したわけであります。  言うまでもなく、輸血に伴うDEHPの曝露量は輸血量に依存するわけでありまして、 ここでは仮に成人の場合に2.5L、あるいは新生児(体重3kg)について200mLを想定し た場合の曝露量を書いてございます。このような輸血量の場合にはいずれもTDIを超 えるということでありますが、言うまでもなくこれよりも量の少ない輸血量の場合には TDIを超えない場合もあることは当然であります。輸血の場合は全血を用いることだ けではなしに、血漿を用いたり濃縮赤血球を用いたり、あるいは血小板を用いたりと成 分輸血が一般には行われるわけでありますが、この研究班では凍結血漿についてのみ溶 出を調べました。附属病院の輸血部から入手した凍結血漿の中にはDEHPが含まれて おりました。また溶出実験も行ったのですが、DEHPの溶出量は全血とそう大きな違 いがあるものではないということが分かりました。なお、濃縮血小板や濃縮赤血球等に ついては、今回は実験を行いませんでした。文献的には全血よりも濃縮赤血球、あるい は血小板等で溶出量が多いという報告もありますが、全血とほぼ近似した値でありまし て、我々の研究から輸血における曝露量は相当程度類推がつくものと考えております。  今申しましたように、曝露量としては輸血量依存でありますが、大量の輸血の場合に はTDIを超えるので注意が必要ということになるのですが、言うまでもなく危機的状 態で行われる輸血については、そのベネフィットは十分あるだろうということでありま す。しかし、DEHPに対して高い感受性を持つ患者集団に対しては、TDIを超える ような輸血量については注意が必要であろうということでありますが、研究班としては 塩化ビニルには赤血球膜の保護作用があり非常に大きな有用性がありまして、そのこと も踏まえてこの血液バッグ使用についての妥当性は今後とも検討が必要であると考えて いる次第であります。  次は人工透析回路でありますが、この場合にはウシのヘパリン化した血液を用いまし て、人工透析回路に循環血液5Lを1回の透析に行われる時間(4時間)灌流いたしまし て、そのときに溶出するDEHPを測定したということであります。この場合、溶出量 は当然血液を循環させている時間に比例して増大しておりまして、4時間の時点ではお 手元の資料にありますように7.34mg/回路という値になっております。それからまた血 液中にはモノ体、MEHPも検出されました。MEHPとDEHPを加えた、つまりD EHPの補正値を基にして曝露量を計算しますと、お手元の資料のようになっておりま す。これは週3回行ったとして、1週間の平均曝露量を計算したものであります。7.79 mg×3/7、これは週3回の補正値であり、体重計算して66.7μg/kg/dayということに なりました。なお、小児の場合につきましては、お手元の資料に書いてありますが、小 児用回路の膜面積と成人用のそれからそうした換算値として求めました。そうしたとこ ろ、小児の場合には46.2μg/kg/dayという値となりました。いずれの場合もTDIをわ ずかではありますが、上回るということが分かりました。透析というのは長期にわたっ て行われるものでありますが、取り分け高い感受性の患者に対する使用については代替 品の使用が望ましいと考えられました。  次は人工心肺回路でありますが、これも市販品を基にして回路を組み立てまして、溶 出試験を行ったのでありますが、溶出のスピード等につきましては、小児をモデルとし た条件で行いました。なお、回路に用いるチューブにつきましては、ノンコートのチュ ーブとヘパリンコートのチューブ、そして2社の製品をそれぞれ比較したところであり ます。お手元の資料にCP-A社製ヘパリンコートやCP-A社製ノンコート、CP-B社 製の同様の数値が載っていますが、実験の結果からこのようにノンコートのものでは7.5 mg/回路、それからB社のものでは12.1mg/回路。一方、ヘパリンコートの場合にはA社 では3.5mg/回路、B社では10.1mg/回路という溶出量が認められました。MEHPを含 めた補正値を基にして曝露量を推定しております。  次のページにまいりますが、升で囲った中にございますように、共有結合型とイオン 結合型の二つのタイプのチューブがあるのですが、ノンコートの共有とイオン結合は表 の上から2行目、下の方のイオン結合タイプの2行目を最初に申し上げますが、ノンコ ートの場合には708〜721μg/kg/day、ヘパリンコートの場合には334〜606μg/kg/day ということになります。御覧いただきますように、ヘパリンコート型で特に共有結合型 のチューブの場合には曝露量が最小でありましたが、いずれもTDIを超えるというこ とであります。人工心肺回路を使用するのは主として成人で、非常に致死的患者に使用 されることが多いわけでありまして、そういう意味ではベネフィットが大きいので直ち に取りやめる必要もないかと思われますが、DEHPに対して高い感受性を持つ患者に 対しましては、曝露量を低減するような方策を採る必要があるだろうと考えた次第であ ります。  次は同じページの下半分にある輸液セット、及び延長チューブでありますが、これに 対して市販品の輸液セットに延長チューブ、これはポリ塩化ビニル製のものと非ポリ塩 化ビニル製の2種を用いておりますが、5種の注射液をそれぞれ所定の臨床使用と同じ ように5%のブドウ糖で希釈いたしまして、処方と同じような時間、スピードで点滴を 行ってそのときのDEHPを測定したものであります。したがって、輸液セットの希釈 注射液の一番目にありますように、この免疫抑制剤の場合には24時間流すと指定されて いますので24時間、それから抗菌剤の場合には1時間と指定されていますので、1時間 時間点滴をした状態を想定して実験しております。そして調べましたところ、輸液セッ トは2種類しか行っておりませんが、一つでは4,600μg、他の薬剤では440μgの溶出 が認められました。なお、この場合にはDEHPの分解産物は考えられませんので、補 正値というものは求めておりません。この値から推定される曝露量は、四角で囲ったと ころにありますように注射剤の種類、あるいは点滴する時間によるわけでありますが、 92.0あるいは8.8という値になりました。なお、延長チューブだけについて行ったデー タが下の方にありまして、「エックステンションチューブ」と言われておりますが、こ こに示したのはポリ塩化ビニル製のものであります。それぞれの薬剤によって流してい る時間、指定されている時間が違うのでありますが、そこにお示ししたような値、30〜 750μg程度の溶出が認められました。次のページにまいりますが、曝露量は四角で囲っ たところにありまして、0.6ないし15.0μg/kg/dayということになりました。実際上は 輸液セットと延長チューブを一緒に使うこともあるわけでありますが、もし一緒に使い ますと9.4〜107μg/kg/dayの溶出があるということになります。なお、この実験では非 ポリ塩化ビニル製のチューブも使用しましたが、当然のことながらそれからは溶出はほ とんど認められませんでした。そうした場合には、曝露量は8.8〜92.0μg/kg/dayとい うことになります。言えますことは、ここで用いた注射液はいずれも脂溶性の注射液で ありますが、一部の脂溶性注射液ではTDIと同等レベルのDEHPの溶出があるとい うことが分かりました。なお、希釈に使った5%ブドウ糖注射液だけを短時間流した場 合には、DEHPの溶出は認められませんでした。脂溶性の注射剤ではDEHPの溶出 量を増加させるおそれがあります。そういう意味では、曝露量を算定してTDIを超え るような場合には、適正な使用法が採られることが必要ということが明らかになりまし た。  最後はフィーディングチューブでありますが、この実験では粉ミルクを0.13g/mLの 湯に溶解して作製した人工ミルクを、0.4mL/minという早さで合計して6時間灌流いた しました。この条件は未熟児を想定したものであります。そのような条件で流しました ところ、103.4μgの溶出が認められました。これを曝露量にしますと、103.4μg/kg/day ということになります。フィーディングチューブを使用する対象は、未熟児を含めて高 い感受性を持つ集団であるわけでありまして、できればDEHPを溶出しない代替品を 使用することが望ましいと考えられます。  以上のように、本部会に関係する3種類の医療用具についてDEHPの溶出を調べた わけですが、DEHPの推定曝露量がTDIを超えるものがあったわけであります。そ ういうものについてはベネフィット・リスクの評価を行って、相対的に適応患者のリス クが高い場合、あるいは適応患者がDEHPに高い感受性を示す新生児、乳児、男児の 場合は代替品への置換、曝露量を低減する方策の導入が必要であろうと考えられました。 なお、ここでは単一の医療用具を使用した場合の測定データを示したわけでありますが、 実際には複合した複数の医療用具を使う場合があります。例えば輸血の場合には、血液 バッグから血液を採って注入する場合だけではなくて、ポンプを使用する場合もあるわ けでありますが、そうした場合には複合した曝露もあり得るわけでありまして、慎重な 曝露量の評価が要るだろうということであります。ちょっと長くなりましたが、以上で す。 ○事務局 ありがとうございました。井之上浩一先生、補足で何かございますか。 ──  長尾委員着席 ── ○井之上参考委員 大丈夫です。 ○事務局 では質問のときに適宜答えを頂きたいと思います。それでは資料3-1の3ま で戻っていただけますでしょうか。今先生方から御紹介いただきましたように、塩化ビ ニルを用いた医療用具は多岐にわたって使われてございますが、その中で使われている 可塑剤、DEHPという物質が診療、治療の中で患者の体内等に移行すると。毒性につ きましては、現時点で評価されているTDI、一生摂取しても大丈夫だろうと言われて いるのが40〜140μg/kg/dayということでございます。その主たる毒性というのは、精 巣毒性を中心に評価されているという観点で、実際にFDAのレポート、あるいはヘル スカナダ等でもその評価を行っておりますが、概して国際的にそういったものは禁止は されていない、かつ健康被害が出たということも聞いておりません。今御提言いただき ました結果をまとめさせていただいたのが、資料3-1の3、4に述べられた問題事項か と考えております。以降、3、4に挙げた6項目について簡単に問題点の抽出を図って おりますので、参考にしていただければと思います。  順次説明させていただきます。まず3の方では、曝露量から見た問題点で整理してみ ました。これはどの程度DEHPが溶出するか、患者に曝露されるかという観点での評 価指針でございます。一点目は、研究テーマにもございましたように、いろいろな脂溶 性の薬剤を組み合わせることによってDEHPを引きずってきて体内に持ち込んでしま うということがございましたが、こういった脂溶性の高くない薬剤について、特に生理 食塩水のような親水性のものであると、むしろDEHPがほとんど検出されないという データも出ております。こういった観点では、薬を選んで使われるのはむしろどうなの かと、逆に言うと脂溶性の高い薬剤との併用については代替品をお勧めすべきではない だろうかという側面が一点目でございます。  二点目は輸血でございますが、特に大量輸血あるいは置換術のようにチューブにたく さん血液が触れるような場合においては曝露量が非常に多くなるものですから、これに ついて可能であるかどうかはまたあるのですが、代替品への移行を勧めるべきではない だろうかという点でございます。  三点目ですが、FDAで特に心臓周りの手術をトピックとして挙げておりますが、当 然ながら手術のときには大量に移行すると。特にFDAを中心に書いていますが、多分 両方においては複合被曝と、先ほど佐藤先生が言われたように単一用具だけではなくて 患者の安全を図るためにいろいろなチューブがつなげられている状態になると非常に高 い数値…、3に戻っていただきますと心肺バイパス手術であったり、そこら辺の数字が 軒並み高くなっていることからも見てとれるかと思います。  それから体外膜型肺(ECM0)、透析といったことについても、多くの時間血液等に 触れるものですから大量の被曝が考えられるので、こういった観点についても配慮すべ きではないだろうかと。特に曝露量の多いものについて、このような観点から議論され るべきかと。  また4に移りますが、毒性の観点、先ほど井上先生から御指摘がありましたように精 巣毒性が中心に挙げられるとすると、特に小児、新生児といった非常に幼若な者につい ては非常に感受性が高いということもあって、この辺については特記的に考えるべきで はないだろうかと。また、妊婦、授乳婦については、当然ながら胎児、新生児等へのD EHPの移行、伝播を助長する形になりますので、これについても移行すべきではない かという形で考えられるのではないだろうかと思います。  次のページをめくっていただきますと、これは先生方に御議論いただくためのたたき 台でございますが、こういった観点でどういったものを臨床現場の先生方に提供すべき かという側面に立ちまして、基本的には今用いた6個の項目、研究結果を踏まえるとこ んなことが言えるだろうかと。これはFDAのレポート等も参考にしております。FD Aの参考資料をここで簡単に御紹介しますので、参考資料1を出していただけますでし ょうか。これはFDAが今年の7月12日にホームページでアップして広く広報している ものでございますが、昨年の評価結果について追認する形で再度広報しているものでご ざいます。詳しいことは後で御覧いただければいいのですが、まず1ページの一番下の 方を御覧いただきますと、「Risk determinants」と書いてあるところがございます。こ こでまず二つのファクターがあると。そこのところに「The first is the patient's sensitivity」と書いてありますが、要するに患者さんの感受性です。次に「The second factor」というところがありますが、「dose of DEHP」、要するに曝露量といった ことを基本的に彼らも評価しているということになります。そして話が飛びますが、次 のページの中段の「Recommendations」を見ていただきたいと思います。先ほど申しまし たが、ここで一番大事なのは現時点で国内外でこれが直接の原因で健康被害が出たとい うことは1例も挙げられていない、しかも動物実験においても霊長類のことがまだ分か らない段階で、TDI、しかも短期被曝の議論がある中でやはり医療はどうしても重要 なのだと。「Most importantly」の3行でございますが、基本的にDEHPの被曝だけ をもって単純にこの使用を避けるというのは必ずしも適当ではないと。つまり医療行為 自身の方がはるかに重要であって、それをやめることのリスクが非常に大きいのですよ ということを物語っているものと見てとれるかと思います。  全体を通して、各国の評価についてはこのようなトーン調になっております。ただ、 FDAのものも細かく分析がされている中では、ないことにはこしたことはないという 文章調になっておりますが、できる限り的確にやらせると3-1の5以下になるのではな いかと。以降、5について簡単に御説明したいと思います。まず前段の方書いてあるの は、直接被害が知られていないという事実。そして、世界各国で使用が禁止されていな いという事実。そして、このような優れた医療用具は緊急な医療にも多分に使われてお りまして、なかなか否定するべきものではないと。感受性の高い患者さんや、曝露量の 多い患者さんには配慮すべきであって、それをまとめると1)〜8)のようになるのでは ないかと。1)でございますが、脂溶性の高い薬剤との併用に関してでございます。これ については、できる限り代替品の切替えを推奨すべきだろうと。  2)は透析用の血液回路でございますが、これも治療上支障を生じない範囲内で、次の ページの6に代替品の簡単なリストがありますが、現時点では人工透析用回路は完全な 代替品という意味ではございません。我々が知り得ている範囲内ではDEHP以外の可 塑剤を使っていると。そうすると、その可塑剤は安全かというのが残りますが、そうい ったものしかない中でどうしたらいいかと。できるだけ避けるには、支障を生じない範 囲内で切り替えも推奨されるのではないかと。  それから3)は人工心肺回路やその他の血液回路についてですが、医療の場は正に戦争 でございますので、患者が運ばれたときに1個1個これは塩ビだ、塩ビではないなどと いう議論をしていると死んでしまいますから、基本的に可能な場合には切り替えられた らどうかと。もちろん、こういったものについて最初から全部替えられるものであれば 替えて構わないと思いますが、現時点では人工心肺回路のようなチューブにストレスを かけるものについては代替品が存在しないことから、回路の設計上工夫でき得るものに 限られるのかもしれないと。  次に4)ですが、血液バッグについてでございます。これについては、カナダにおいて もFDAにおいてもかなりの量が出ているということが報じられておりますし、先ほど 来先生の御説明にもありましたが、輸血量によってはかなりの量になろうかと思います。 逆に輸血自身は高度のリスクを抱えている行為、またこれがないと正に死んでしまうか ら輸血をするような患者にこれを優先するのかというと、現時点ではすぐに禁止できな いと。特にDEHPにおける赤血球保護作用等のポジティブなファクターもあることを 考えると、今後も代替品への切り替えの可能性を注視していくことではないだろうかと。  5)はフィーディングチューブ、栄養チューブでございますが、これは入院患者、特に 新生児、未熟児を中心にお使いになられる部分がございまして、これについては感受性 が高い、当然体重が小さいので被曝量もTDIが大きくなってしまう。フィーディング チューブですから、当然ミルクを中心とした脂溶性の高いものを流し続けるということ になりますので、基本的には感受性が高くて曝露量が多いという最たるものになる可能 性が高いだろうということになりますので、これについてはできるだけ早いうちに切り 替えてはどうかと。次のページにもございますが、フィーディングチューブについては 現在ポリウレタン製のものが出ていると。ただ、小児用のものについて、径の細いもの の流通品については、つい最近このようなものが流通し始めたということを聞いており まして、少なくとも8月にはもう既に1社は出していると聞いております。また、ほか のものについても秋ごろには大々的に上市するという情報も入っておりますし、事実上 国内においては代替品への移行は可能であろうということから、このようなものについ てはできるだけ早期に移行を推奨すべきではないだろうかと。  6)については漠たるものですが、妊婦、授乳婦については新生児、乳児等への影響を 考える場合には、配慮すべき意向として注意喚起をすべきではないだろうかと。  次は7)と8)についてですが、7)についてはまず選択の幅という意味でドクター、臨 床の場ではどういうときに使う、使わないと選択するためには、まず表示してこれは塩 ビである、塩ビではないということが分かればしなければいけないだろうという意味で、 実際に1)〜6)を可能にするために表示の徹底が必要ではないだろうかと。  8)については先ほどの御報告を思い出していただきたいのですが、ヘパリンコーティ ングというチューブをコーティングすることによって、一部のDEHPの溶出量を少し 抑えることができるということでございます。資料3-3の2ページ上の方に、ノンコー ト、ヘパリンコートということが若干触れられておりますが、かなり複雑な共有結合タ イプ、イオン結合タイプというところで触れられています。単純化して御説明しますと、 ノンコート、要するにむき出しの場合にはどちらもほぼ同じですが、ヘパリンコートを するとノンコートよりも少なく抑えられる。物によっては半分近く低減することができ るという事実がございますので、そういう情報も含めて曝露の低減の一つとして参考に していただいたらどうかということを考えております。事務局としては、このような形 で医療機関の現場の先生方に適正に使っていただくために注意喚起、情報提供をしては どうかと考えてございますので、先生方の御意見を頂きたいと思います。よろしくお願 いします。 ○桜井部会長 どうもありがとうございました。塩ビの問題は大変古い問題でございま して、多分50年くらい前、朝鮮戦争のときの亜鉛のショックというのが一番最初の問題 だったと思います。日本ではたしか国立衛生試験所の大場琢磨先生が随分御熱心にいろ いろ検討なさった結果があると思います。たまたま一昨日の朝日新聞に、この環境ホル モンの存在をWHOが公式確認という記事が大分大きく出ておりました。これを見ます とフタル酸ジエチルなどの残りの9物質では作用が確認できなかったので、今日話題に なっているものでは、どうも余り罪が重くないような書き方なのですね。要するに悪い ものなのか良いものなのか…、良いものということはないのでしょうが、余り悪くはな いのかというところも、まだどうも余り確定はしていないような気が私はしております。 結局ずっと前の大場先生の時代には、ないにこしたことはないのだけれども、やはり使 い勝手の問題とかあるいは一番大きな問題は経済性の問題だと思うのですが、コストの 問題という点から考えて、にわかに代替品に変更するわけにもいかないというようなこ とで今まで来たのではないかと思います。  今日いろいろ先生方から御研究の御紹介をいただきましたし、また事務局からこれに ついての御提案を伺いましたので、先生方の御意見をいろいろ伺って考えたいと思いま すが、いかがでございますか。  私もちょっと伺いたいのが幾つかあるのですが、これの溶出は表面からの深さといい ますか、どのくらいまでがあれなのでしょうか。 ○佐藤参考委員 具体的データはちょっと持っておりません。余り正確な話ではないの ですが、ある厚みの中に可塑剤が分散しているのですが、経時変化もあるようでして、 保存しておいたりしますと材料の中での分布もちょっと変わるようなのですが、実際上 溶出試験をしてみますと、溶媒によってちょっと違うのですが、初期の6時間くらいは ほとんど直線的に溶出量が増えて、その後少し緩やかになるように思います。したがっ て、当初は比較的浅い範囲から出て、その後ゆっくり24時間と、ですから12時間くら いを境にして溶出動態が変わるというように認識しておりますが。 ○桜井部会長 何か分配係数とあれが関係しているのですか。 ○佐藤参考委員 そういうことでございます。 ○桜井部会長 もしその深さが分かれば、そこまでの厚さのコーティングをすれば防げ るかと思ったのですが…。 ○佐藤参考委員 それはありますね。ちょっと具体的な数値がなくて申し訳ございませ ん。 ○桜井部会長 ありがとうございました。ほかに何かございますか。土屋先生、どうぞ。 ○土屋(利)委員 やはり新生児の場合に非常に、例えば表のところでございますが、 22,600μg/kg/dayで、大体100倍以上のTDI値を示していますので、やはりそういう 新生児のような感受性の高い人には、まだはっきりとしたメカニズムとか、ヒトでのも のはないとはいえ、やはりできるだけそこは抑えるような対策を採った方がよいかと思 うのです。  その場合に、ヘパリンコートの場合も療品部の配島室長がやっていましたので、私も よくそこで聞いているのですが、イオン結合型と共有結合型でかなりの効果がこのデー タからも見られますので、やはり単にヘパリンコートということではなくて、イオン結 合型と共有結合型をそこに示すべきではないかと思うのです。イオン結合型では次第に 溶出量を抑える能力が落ちていますよね。共有結合の方は、そこにヘパリンがずっと存 在し続けるためにDEHPの溶出を抑えているという違いがあると思うのです。  それから多分用具によってDEHPの含量に30〜50%くらいの幅があるということで すが、やはり2倍に至らないまでも曝露量に違いがあるので、ある程度気を付けないと いけないかもしれませんが、そのDEHPの含量が必ず溶出量と結び付くかどうか検討 されているのかどうか、ちょっと分からないのですが。多分比例するとしますと、やは りそのDEHPの含量というものを明示された方が各社の差別化になるかもしれません が、できるだけ低含量で不必要に入っているものではなくて、不必要かどうかちょっと 言えませんが、その辺りを少し下げても可塑性を保てるというものであれば、簡便な方 法でそれを承認審査などで認めてできるだけ抑えられるような方向も一つの方策ではな いかと思います。代替品のない場合ですが、以上です。 ○桜井部会長 ありがとうございました。 ○事務局 では事務局の方からお話しできる点についてだけお話しして、あとは御専門 の先生からフォローいただければと思います。まずコートの区別化のことでございます が、詳しい実験系については先生方に御説明いただいた方がいいと思うのですが、実は 全く完全比較試験ができなかったということがございます。というのは、実際にチュー ブを正確にくみ上げるときには流速、それから表面積、径でありますとか、種々のファ クターを全部統一しないと完全な比較試験は成立しないということです。また、国内で 基本的な試験を組み立てるときには、日本の流通実態を合わせるためにマーケットシェ アの一番大きいところを優先的に扱っていますので、少なくとも国情に合った評価には なっていると確信しております。ただ、実際には比較試験をするときに、同じ条件を組 み切れなかったために、資料3-3でも出ていますように若干流速であれ表面積であれと いう補正をしていますので、単純に有意差をもってイオン結合タイプよりも共有結合タ イプがいいと明言するのは、私の感触ではなかなか苦しかったと思いますが、少なくと も提言はできるのではないかと。  一方、FDAの報告では、完全に溶出をシャットアウトできるというくだりがあるの ですが、これを覆したという意味でこの報告は大きいのかなと思います。ヘパリンコー ティングをすれば絶対に溶出しないというのも一説にはあったのですが、必ずしも真な らずだったという意味があって、そこについては後で先生に御指導いただこうと思いま す。  それからDEHPの含量の差のことでございますが、これは別途業界の方にお聞きし たところ、含量の差というのは25〜30という話を伺っていまして、これは柔らかさの指 標でもあって、溶出するということはそれだけ抜け落ちていくので、当然柔らかくなく なる、もろくなるということで、抜けば抜いただけもろくなると。今度は製品劣化の議 論があって、割れると失血死の議論がまた出てくるので、そこについてはおっしゃるよ うに低い含量でうまい性能が出せるのであれば望むところなのですが、前に40使ったか ら抜いて30、20という単純計算では必ずしも真ならずだとは聞いてございます。あとは 佐藤先生、井上先生から何かございましたら御意見いただけますでしょうか。 ○佐藤参考委員 今専門官のお話でヘパリンコートについて追加的にと御支持いただき ましたが、イオン結合、共有結合のメカニズム等について、私は具体的に存じませんの で、ちょっとお答えできません。申し訳ございません。 ○井上専門委員 私のコメントはただいまの御質問のことではございませんで、先ほど 座長が話題として取り上げられた環境ホルモン、いわゆる内分泌攪乱化学物質の問題と の関連を御説明をいたしませんでしたので、先生方の御参考のためにどのような検討が これまでなされてきたのか。それから先ほど取り上げられた新聞記事等の記載、WHO のIPCSのグローバルアセスメント(これは私編集委員をやっておりましたので)で は、フタル酸をどうとらえているのかについて簡単に御説明いたします。  先ほど見ていただきました資料の中で、内分泌攪乱化学物質としての性質について触 れなかったことについては理由がございます。その理由は、内分泌攪乱化学物質の性質 が分からない現状を前提にしてそれを踏まえて書かなかったのではございません。この フタル酸、DEHPについては現在分かっている受容体原性の試験に限ってでございま すが、in vitro、in vivoのすべての試験で調べられている最低用量が、ここでお示し している精巣に対するNOEL、NOAELに比べてむしろ高い濃度だったということがあ りました。内分泌攪乱化学物質としての性質以前の問題として、一般毒性の問題として このDEHPの示す精巣毒性が低用量で影響が出ているということで、差し当たって内 分泌攪乱性の問題はここで対象にする必要がないであろうという理由でありました。そ の後いろいろなことが分かってまいりまして、佐藤先生などもいろいろ御検討なさった わけですけれども、フタル酸の中ではこのDEHPの分かっている範囲での毒性が一番 強いこと、それ以外についても資料があるものについては検討を行いましたが、一応大 きな差があるのでDEHPについての検討で十分であるということ。繰り返しになりま すが、それらについては内分泌攪乱性の認められている最低用量よりも、更に低いとこ ろでこの精巣毒性が出ているということがありますので、ターゲット所見としてのアド バースエフェクトは、この精巣毒性と先ほど申しました生殖発生のドーズだけを対象に して差し当たっては考えていただければ、対策としては十分であると考えております。 以上です。 ○桜井部会長 ありがとうございました。ほかに何か御追加ございますか。 ○目黒委員 一つだけ温度のことですが、臨床の現場では多分輸血にしても先ほどの新 鮮凍結血漿でも、一応戻して新鮮凍結血漿の場合は溶かして使うわけですが、余り高い 温度で溶かせないものですから、意外と15分やら20分やら掛かる場合と、それから輸 血の場合でもやはり室温の場合は37℃に温めて落としていきます。かなり長いチューブ を通っていくものですから、温度に関して溶出が変化するのかどうかという部分をちょ っと知りたかったのですが。 ○佐藤参考委員 全血で溶出試験をした場合に、温度を振った実験を行っておりません ので分かりません。ただ、今の実験上では全血を採ってバッグに入れて、4℃で所定の ように保存するということでありまして、その保存条件で温度を変えた場合にどうなる かについてはデータを持っておりません。血漿の場合も持っておりませんが、血漿につ きましては正常は凍結保存するわけですが、それを4℃で保存したときにどのくらい溶 出するかというデータは取りましたが、37℃については検討しておりません。重要な点 だとは思っております。 ○目黒委員 ありがとうございます。 ○西山委員 今の血液バッグの関係ですけれども、ちょっと聞き間違ったかもしれない のですが、今先生の御説明の中で血液バッグを1週間保存したものが415.6という数字 が上限だったと、40くらいの低いものもあったというお話を聞きました。それは同じメ ーカーの中でそうなのか、それとも他社の分、今回はBT-A社ということで同じ製品の 中でそれだけのばらつきがあったという理解なのか、それとも他社のものなのかという のが一つ。  もう一つは、今の目黒先生のお話なのですけれども、全血と凍結血漿というのは値的 にはほぼニアーであろうということでお話しされました。凍結血漿ですとたしか1年が 有効期限だったと思うのですけれども、当然凍結状態で置いておりますので1年くらい 使えるわけですが、1年くらいという長期間の中での影響というのは逆にどうなのかと、 その二点をお尋ねしたいのですが。 ○佐藤参考委員 まず最初に血液バッグのメーカーの件でありますが、1社の製品です。 ただ、同じものではなくて、抗凝血剤等の成分が違う2種類がありまして、それを使い ました。そして、1種類はもう一方の約10倍くらい溶出量が多くて、ここに書いてある のは溶出量が多い方を示しております。話が飛びますが、国際的に知られている溶出量 に比較しては、我々の実験で上限値といったもので国際的に報告されているものよりは ずっと少なかったということです。  それからなぜ製品によって溶出量が違うのかにつきましては、今のところスペキュレ ーションでありますけれども、余りサイエンス的な表現ではありませんが、塩ビ製品を 貯蔵しておきますと可塑剤が表面の方に出てくるということがあるようでして、つまり 我々の認識としては長期にわたって保存されたようなものでは多分溶出量は多い方に触 れるのかと認識しております。ただ、溶出総量は変わらないはずでありまして、短期間 の溶出量は一過性には増えたように見えると。長い時間採れば溶出量は全量同じだろう と思います。今のお話はそれでいいでしょうか。プラスマの方につきましては…。 ○西山委員 今2種類と言われたのですが、もう1種類の方はどういうものですか。 ○佐藤参考委員 素材的には全く同じです。ただ、抗凝血剤の成分か何かが2種類ある ようでして、そこだけです。ですから、基本的には同じだろうと思います。  それから血漿の方につきましては、我々も凍結状態のものを5袋ほど入手して実際実 験しているところでありますけれども、凍結保存の状態では当然溶出はないのだと思い ますが、履歴のあるものを入手して測り実際上どのくらい存在していたのかと申し上げ ますと、入手した時点での凍結血漿を解凍してすぐ測りますと103±5ng/mLくらいの濃 度で含まれております。したがって、袋当たりは200を掛けていただきますと出るかと 思います。ついででありますが、病院輸血室から入手する血液は研究用に献血したもの を使うことはできないので、いわば有効保存期間を過ぎたものを入れているわけであり ますが、その場合は378±83ng/mLという濃度で存在しておりました。血漿でこれを−80 ℃で長期置いた場合には、この量がそう大きく変動するものではないと思っております が、先ほど目黒委員から御指摘がありましたように、これを使う場合には解凍して37℃ に維持するわけでありますから、その間には相当の溶出があるだろうと。平均的に初期 の溶出はほとんど直線的に行きますので、その溶出量の推定はできるだろうと思ってお ります。つまり1週間置いた場合には270ng/mLくらいの溶出量がありますので、それを 直線的に考えれば一応4℃の場合はこのくらいだということが分かると思います。なお、 37℃についてはちょっと検討しておりませんが、解凍して使用するまでの時間にもある 程度の溶出は予想されることになります。 ○外委員 毒性について基本的なことをお伺いしたいのですけれども、いろいろなデー タから「TDI」という言葉で評価されているように聞きましたが、耐容1日摂取量(T DI)というのは反復して毎日摂取する量としてこれ以下だったら大丈夫だということ で、かなり長期間を想定しての耐容量だと思うのです。ところが、人工心肺も輸血もそ うだと思うのですが、例えば1日だけしか使用しないものについてこのTDIで評価で きるのか、あるいはTDI値からすると例えば1日だけの耐容量というのはTDIの何 倍ということが具体的にあるのかどうか、そのことをまずお聞きしたいのですが。 ○井上専門委員 ございません。おっしゃるとおり程度は分かりませんが、一過性のも のであればはるかに高い値でも採り得るということは文脈的には確かだと思います。 ○外委員 というのは、こういういろいろな実験データもかなりの、何週間あるいは100 週間投与しての耐容量ということで決められていますので、そこでTDIをこういうふ うに短時間使用する、あるいは短期間使用するものに当てはめられるのかと少し疑問に 思ったので、伺いました。 ○井上専門委員 むしろ透析とか、比較的長期連続的に使用される患者さんを対象にし たときには結果的にはTDIは厳しい値になると思いますが、それがより安全なボーダ ーになっていくだろうと思います。非常に短期間に投与するような場合には、これより も高い値で対処することが可能だと思います。たまたまこのアセスメントの結果は、先 ほども申しましたように調理のときの手袋であるとか、それがお弁当に移行するという 御研究であったわけですが、赤ちゃんのおしゃぶりなどで長期に曝露されるということ を念頭に置いて使われたものをそのまま使わせていただきました。それは透析の患者さ んのようなかなり長いこと持続的に治療を受けられる、曝露されるであろうという患者 さんの方には、こちらのTDI値の方が適切ではないかという考え方で資料も提出され ましたが、もし一過性の使い方がありましたら、急性毒性値といったものを参考にして、 また新たな観点ということになろうかと思います。実を申しますと、短期の毒性は余り 出ておりません。 ○外委員 短期の毒性にも関連するのですが、長期間投与した場合の毒性が精巣毒性、 生殖器官に対する毒性ということですが、それ以外の毒性はまず考えられないと考えて よろしいのでしょうか。というのは、短時間に血中濃度がかなり上昇するようなことが あったとしても、それはいろいろな重要臓器にはほとんど影響ないと考えてよろしいの でしょうか。 ○井上専門委員 結論としてはそう考えてよろしいと思います。投与された最高値はち ょっと前にアセスメントしたので正確な数字を申し上げられませんが、今佐藤先生の方 からお話が出ているような溶出量の範囲であれば、それの上限を念頭に置く限りにおい ては比較にならないくらい低く、毒性の所見は(動物実験から類推する限りにおいては) 考えられないといってよろしいと思います。 ○外委員 あと先ほどフィーディングチューブのことがあったのですが、これは中を通 さなくても体の中に留置しておくだけでも溶け出していくと考えてよろしいでしょう か。 ○佐藤参考委員 御指摘ありがとうございます。今の実験は中側に人工ミルクを流した というものでありますが、例えば実際にこのフィーディングチューブを胃の中に留置し たような場合には、外側から胃液等に相当量溶けていると、溶出するということが知ら れております。今の場合は中側だけでありまして、どうしてそういうことが分かるかと いうと、長時間留置したフィーディングチューブはかなり硬くなるのです。つまり可塑 剤が溶出してしまって硬化してくると。そのようなことから、実際には御指摘のように 外側にも出ていくと認識しております。 ○酒井委員 今接触面積と温度の話がありましたが、その溶出する量について例えば加 圧するというか、圧力がかかっている部分が溶出しやすいとか、そのデータは何かない のでしょうか。というのは、もしそういうことであれば圧力が上がらないような用具の 工夫なども必要になってくるわけなので…。 ○佐藤参考委員 実際に輸液チューブとフィーディングチューブの実験をされた井之上 先生の方から、実際の実験条件について御説明いただきます。 ○井之上参考委員 実際の実験条件は、シリンジポンプで圧力をかけている形なので多 分速度と関係してくると思うのですが、速度に関して溶出量というものは実際の医薬品 では検討はしていないのですが、そのような関係も見られる可能性もあると思います。 ○佐藤参考委員 今御説明がありましたように、直接圧を変えてデータを取ったわけで はないので、余り定量的には御説明できないということであります。 ○佐藤委員 今の酒井先生のお話ですが、今人工透析回路や人工心肺はポンプを使い塩 ビのチューブをしごいてやるのが一般的ですので、それは多分溶出で流すよりはしごい た方が出るだろうと。実際に研究をやっている者もそういうふうに言っておりましたの で、その影響はあるかと思います。  続けてよろしいですか。井上先生に質問ですけれども、FDAでは精巣毒性が一番感 度が高いということで、リコメンデーションの方でもやはり男児について注意すべきだ という御指摘だと思うのですが、TDIで見ると140の方はどちらかというと生殖毒性 を基にして出されたデータですよね。この差というのは3倍ちょっとしかないわけで、 そういう意味で考えると、幼男児だけを中心にターゲットに考えて注意するというより は、やはり新生児全般について考える必要があるのかなとちょっと思ったのですが、そ れでよろしいでしょうか。 ○井上専門委員 そう思います。 ○桜井部会長 ほかはいかがでしょうか。どうぞ。 ○中村委員 この化学物質が体の中で代謝される方式というのは、随分種依存性がある ようです。げっ歯類と霊長類で随分違うようで、霊長類の実験では50万μg/kg/dayで 曝露しても精巣毒性のようなものがないという報告があるらしいので、人間に対する安 全性の評価をするときに代謝回路とか排泄様式もかなり違うネズミの実験から出たデー タでものを評価するのは…。安全面を見るという意味では、一番安全な値を採ろうとす れば一番感受性の強い動物を使うということになるのかもしれませんが、余り意味のな いデータを基に議論しても駄目なのではないかと。やるのはともかく、霊長類を使った 動物実験をして精巣毒性が霊長類にあるのかないのかを出したデータを基にきちんと話 し合わないと、余り意味がないのではないかと思いました。 ○桜井部会長 どうですか。 ○井上専門委員 先生の御指摘は全くそのとおりだと思います。私どもの方でもマーモ セットのデータ等を非常に重視いたしました。問題は、現在のリスクアセスメントの手 法では、霊長目での感受性が低いということが明らかになる、毒性が明らかになるよう なことが時々ございます。その場合に、例えば発癌性などでよく知られているペルオキ シソーム増殖剤などの影響の場合に、これは霊長目のペルオキシソームプロリフレーシ ョンの機構と関与する酵素系が違うということが分かっておりますので、その場合には げっ歯類のデータをすべて棄却いたします。そのようにメカニズムが分かる場合にはそ ういうことができるのですが、分からない場合にはここの記載に書かれておりますよう に、霊長目での結果で感受性が低いので、ヒトに外挿する際には同じようなものではな いであろうと。はるかに毒性は低いであろうと書く以上のことを捨象してしまうことは、 メカニズムが分からない場合にはできないといういわばWHO/IPCSレベルでの国際ルー ルで運用されておりますので、私自身は先生のおっしゃることは同感でございますが、 メカニズムの研究が求められているというところが、私が申し上げることのできる限度 でございます。 ○桜井部会長 ほかにございますか。 ○佐藤委員 今の御質問に関連して、全身毒性の方でマーモセットの実験があるという ことですが、生殖毒性の方では難しいのかもしれませんが、マーモセットのデータや霊 長類のデータが見つからないというのは、やはりやられてはいないということでしょう か。 ○井上専門委員 生殖の方はないです。 ○桜井部会長 ほかはいかがでしょうか。よろしゅうございますか。資料3-1ですが、 最初にFDAからの報告の表が載っております。それから2ページは佐藤先生を始め、 御研究の結果の溶出量が出ております。これを日米比較で見ますと、アメリカというの は随分溶出量が多いのですね。下手すると10倍くらい…。 ○佐藤参考委員 おっしゃるとおりであります。 ○桜井部会長 そのとおりでよろしいのですか。これはどういう比重なのでしょうか。 ○佐藤参考委員 ちょっとその辺は分かりません。 ○桜井部会長 先ほどのヘパリンコーティングの溶出防止効果というのは、ヘパリンを くっつけるためにいろいろな輪管をコーティングしますね。ソルマックとかいろいろな、 多分ああいうふうに表面を覆って抑えるのですかね。余り細かいことはよく分かりませ んが、ヘパリンという言葉に余りだまされてはいかんなと私は思うのです。コーティン グしているものに効果があって、ヘパリンというものにどのくらいのコントリビューシ ョンがあるのかというのはちょっと疑問に思うのですが。 ○土屋(利)委員 多分マイナスのチャージでいろいろなものは付きにくくなっていると 思います。 ○桜井部会長 なるほど、そうですか。 ○土屋(利)委員 恐らく溶出を抑えているのだと。 ○桜井部会長 ただ、イオン結合ですとそのイオンが使われていますから、中性化され てしまっていますね。 ○土屋(利)委員 多分イオン性の方が外れて後からも溶出してきますので、やはり共有 結合性の方がどう考えてもまだカバーされ続けることは確かだと思います。 ○佐藤参考委員 今御説明があったとおりですが、先ほど専門官から御説明がありまし たように、イオン結合の場合はやはり溶出動態が直線的にこう行っているのですが、共 有結合の場合にはあるところで飽和点に達して、その後ずっと溶出が非常に減少するの です。減少というかプラトーになってしまうのですが、そういうことがあるということ で、土屋先生がおっしゃるようにやはりその処理の仕方というか、共有結合の方が非常 に有効だということだと思います。 ○桜井部会長 ありがとうございました。そうしますと、先ほど事務局の方から御紹介 ないしは御提案があったこの「推奨事項(案)」ということですが、具体的にはこれが一 つの態度表明になるわけですね。この辺はいかがでしょうか。何か御意見があれば…。 慎重にしなければいけないというのはよく分かるのですが…。 ○外委員 特に「推奨事項(案)」の1)の「脂溶性の高い薬剤を使用する場合には、代替 品の使用に切り替えることを推奨する」、この言葉ですが、脂溶性の高い薬剤は麻酔科 領域でも使うことが多いのですが、そのたびにこの委員会で推奨されていたのではとい う気持ちもあるのです。ですから、例えば脂溶性の高い薬剤を長時間使用する際にはと いうコメントがあると大分違うなと。ただ、1回だけ投与する、10分か20分か落とす ときでもそういうふうに推奨されて変えなければと言われると、臨床の現場では少し混 乱するのではないかという気もするのです。 ○桜井部会長 そのターゲットが精巣であるとすれば、それのリスクファクターを持っ ている子供や妊婦、むしろ対象別に考えた方が我々のように夜も余り御奉公できない年 になってはどうでも構わないわけで…、そういうやり方も一つあるのかなと。要するに 猫もしゃくしも捕まえて、とにかく危ない危ないと言っていればそれはいいことはいい のだけれども、無駄が多過ぎますね。その辺をどういうふうにうまく…、もっとも私の 印象では患者さんの危険度というか、そちらの方がメインのような気がして…。ただ、 こういうことがあるということを周知するのは必要かとは思うのですが。 ○西山委員 今回のこの「推奨事項(案)」ですけれども、特に先ほど来お話が出ており ます可塑剤の含量を記載するという話も七番目に出ているのですが、その前提としてこ ういう問題があるよということを出されて、そしてこれが来るのですけれども、その辺 りの説明というか兼ね合いというか、その辺りをお教え願いたいのですが。 ○事務局 要するに御質問の点は、物質がどういうものであってどういう毒性が指摘さ れていて、海外でどうなっているからこうなのだという二つの説明を付けるべきだとい う御指摘ととらえさせてよろしいですか。それはこの中でやっていきたいと思っていま す。  ちょっと説明が足りなかったのですが、実は公式にこのようなリスクアセスメントを 具体的に出したのは、FDAとヘルスカナダでございます。ヘルスカナダは正に論文評 価型のリコメンデーションを出しておりましてほぼこの日本案、ヘパリンについてはF DAのだけしか研究テーマがなかったので不足しておりますが、基本的にはこれとほぼ 同一…。フィーディングチューブのデータとヘパリンについては我が国の方が一歩出て いるのですが、それ以外には基本的にはほぼ同一のリコメンデーションを出してござい ます。それ以外にも、予備軍としてのものについてもコーションという形になっていま して、海外とは医療環境というか文化が違うのかもしれないですが、かなり前広にコー ションをかけて各医療現場の裁量に任せるけれども、推奨事項をはっきりと打ち出して いく指針になってございます。  我が国については、実際に省内にも医系技官等を置いてこういった話を持ちかけてみ たのですが、まだほとんどの方が知らないということもあって、少なくともこういった 流れの評価、リコメンデーションが出ていることは周知する必要があるのかなと。  また、先ほど外先生から御指摘がありました脂溶性の高い薬剤との併用に関しまして は抗癌剤、それから免疫抑制剤といった、薬剤の中で特に脂溶性が高いと言われている ものの中にはもう既に書かれているものもございます。塩ビのチューブを使わないでく れと明記されているものもあります。細かい話は井之上浩一先生に御質問いただければ お答えできると思うのですが、たしか処方せんどおりに試験をしていただいておりまし て、その他のデータなので不適正使用というか、やむにやまれぬ事情で更に濃度を上げ ていくような事態に至れば、確かに急激に上がっていく可能性は高いという意味でこの ような指針を出していると理解しております。以上簡単ですが、更に御説明になります か。 ○桜井部会長 私は十数年前にお話を伺ってびっくりしたことがあるのです。多分この 話ではないと思うのですが、それはどういうことかというと、輸液、輸血のバッグにい ろいろな薬を入れて混注しますよね。その薬が塩ビに吸着されるというのです。たしか 当時は…、今ペルサンチンというものは使っているのですか。あれなどは入れた半分く らいが吸着されて、例えば100入れたと思ったら50しか患者さんに行ってなかったよう なことがあるというお話を伺ったことがございますが、その問題というのはこのことよ りも大分重大ではないかという気がするのです。 ○西山委員 私も国立循環器病センターにおりましたときに、麻酔科の先生と一緒に、 当時メーカーもやっていたのですが、ニトログリセリンの注射について吸着が非常に多 いということで、いろいろな素材を使って、塩ビなど特に可塑剤の多いものについては 場合によっては半分以下になると。時間的なもの、濃度的なものもありますけれども、 半分以下になるというデータを一回出させてもらったことがあるのです。ですから、多 分メーカーもそういう途中のラインに延長チューブとかラインを、例えば可塑剤の余り 入っていない塩ビではない硬いものにたしか推奨して変えたのではないかという記憶が ございます。 ○桜井部会長 今の問題は投与量の有効量との兼ね合いになりますから、私の意識では これよりもずっと重い問題だと思いますので、やはりそちらの方も検討していただいた 方がいいのではないかと思います。どうぞ。 ○小柳委員 私も心臓血管外科を40年もやってきたものですから塩ビと共に暮らした ようなもので…、恐らく1万5,000例くらい手術しているのでしょうね。そうしますと、 やってしまった犯人ですので、今この推奨事項を拝見していて、これからの患者さんの インパクトが強ければ恐らくインフォームド・コンセントの説明の一部に入れなければ ならないのかなと思っています。使う回路の可塑剤まで言及して、そして精巣被害など というところまでやるのかなと。私どもが使いますインフォームド・コンセントの説明 文書というのは、今15ページくらいあります。開心術の危険から始まって、インプラン トの材料の一つ一つまですべて記述しまして、そして1ページごとにサインをもらうと いうようなことをやっていますので、この推奨事項の書き方によっては新しいページが 加わる可能性もあるのです。回路は大事なことですので、書かざるを得ないのかなと思 っております。 ○事務局 正に先生の御指摘は当たっていまして、それについてヘルスカナダの勧告書 はこれと同じと申し上げましたが、実はそこでも議論されております。ヘルスカナダの 報告書の中では、現時点ではインフォームド・コンセントは不適当だとまとめられてい ると承知しております。その理由はFDAの方もありますが、医療の方が最優先だと。 危機迫る生命の危機を排除するための行為が一番大事であるということを前提にした場 合に、やみくもにこのDEHPに暴露することをもって医療の妨げになることの被害の 方が大きいということで評価を受けております。ですから、勧告は勧告として専門家に 対しては注意喚起ないし知識として知っていただくものとして勧告しつつ、インフォー ムド・コンセントについては現時点で義務付ける勧告にはなっていないという構成にな っていると承知しております。 ○小柳委員 本邦でもそういう取扱いが可能でありましょうか。推奨の仕方ですか。 ○事務局 正にここのところは、国際的にもまだどの国も規制をしていないという事実 がそこに厳然とあって、使用方法によっては当然ベストな方法もあるでしょうし、使っ ていてもすぐに健康被害が出ているエビデンスは現状全くないと。ただフェールセーフ といいますか、事前に考えたときにはよりハイリスクグループあるいは大量のもの、指 定されているもので可能なものから置き換えていくべきではないかというもので、6の 方に代替品の種類を挙げております。比較的日本は流通量はまだ値段の問題もあってさ ほどではないわけですが、代替品の種類はかなりレパートリーが広い国になっておりま す。そういった中で、可能な範囲内で臨床上の支障がなければ、切り替えていく方向が いいのではないかというのが規制当局の全体的な指針の在り方になっております。そう いう意味で、先生がおっしゃるように個々のものについてインフォームド・コンセント するということは、リコメンデーションには私どもは入れない形で御提案をさせていた だいたという理解でございます。 ○桜井部会長 ただ、その受け皿になる代替品があればこれは問題がないと思うのです。 しかし、何十年もこういう問題がペンディングになっていて、なおかついまだに適当な 代替品が出てこないのです。ですからそこのところが問題で、むしろ今おっしゃってい ただいたようなこれを喧伝することによる被害というかマイナス面ということの方が、 「あつものに懲りてなますを吹く」ということわざがありますが、それになってもちょ っとどうかなというふうに私は思うのです。 ○安全対策課長 まず医薬品や医療用具の安全対策を実施する基本的な姿勢といたしま して、日本の患者さんに世界水準の安全対策環境を御用意するという姿勢が必要だろう というふうに考えております。各国から情報を入手し評価をするというのは今お示しし たとおりなのですが、この塩ビの問題に特化して申し上げますと、既に先行して内分泌 攪乱化学物質の分野における指摘、あるいは肝臓障害など幾つかございました。そうい った中で、食品と違ってリスク・ベネフィットのバランスの中から使われる薬事法関連 製品であるということから、佐藤先生のお力添えを頂いてまずはエクスポジャーをきち んと把握した上で臨床上の、ほかでもない患者さんのリスク・ベネフィットの点から最 善の進め案を考慮していこうということになってきております。今回得られた関係で整 理して御呈示申し上げているわけでございますけれども、一番最初に戻りまして、やは り世界水準というところは私ども厚生労働省といたしましては、どうしても守りたい一 線かなというところがございます。  それから小柳先生から御指摘いただいた、個別の医療に関してのインフォームド・コ ンセントの問題も視野に入れますと、特にこの医薬品や医療用具が守備範囲としており ます分野は直ちにしなければいけない、あるいは余裕がないという中で行われることが 多いということになります。恐らく他のインフォームド・コンセントについても同様の 問題があるかと思いますけれども、正に患者さんAと医師B、その中で患者さんの最善 の利益を考えてこういうことでどうしましょうという中で行われることであって、物と して供給する立場から言えば、よほどのことがない限りしろ、しないというのは余りこ れまで言ってこなかった状況でございます。この「5.推奨事項(案)」の中にございます とおり、今世界レベルで見てみましても、特段このフタル酸エステルが存在するという ことで様々な利点を持つ塩ビ性の医療用具を、医療の場から何らかの形で持ち去ろうと いうことはないようでございます。しかしながら、個別の医療を視野においてよくその 事情を知った上でどんどん高まってくる患者さんの安全に対する要望や世界水準の安全 レベルに合致していきたい、こういうふうに思っております。よろしくお願いいたしま す。 ○桜井部会長 ほかに何か御意見ございますか。どうぞ。 ○外委員 私は推奨事項の1と6、5の違いについてちょっと疑問に思うところがあり ます。例えば新生児のフィーディングチューブについては私は全く同感なのですが、こ れも同じように代替品の使用に切り替えることを推奨するという言葉が、脂溶性の高い 薬剤を使用するチューブについても同じように同じ言葉で切り替えることを推奨すると いうのでは、リスクなども全然違うのではないかと。例えば脂溶性の高い薬剤を、1時 間で投与する場合でもわざわざあえて別のチューブに切り替えるということになると、 かなりの医療費の無駄になると私は思うのです。それによって得られるベネフィットと いうのは本当にそれをサポートするようなエビデンスというのは非常に低いだろうと私 は思うわけです。TDIやラットのデータなどからしてもあえて…、例えば脂溶性の中 の1時間を切り替えることを推奨するということは、私はそこまで強い言葉で言うべき ではないだろうと思うので、ここの言葉は少し何か和らげるなり、変えるなりしてほし いなという気持ちがあります。 ○桜井部会長 ありがとうございました。ほかに何かございますか。どうぞ。 ○澤委員 先ほど井上先生からお話がありましたが、最初の前文のところですけれども、 「ただし、毒性(精巣毒性)、特性にかんがみ」というところは、霊長類でははっきりし たことはまだ分からない、「ただし、げっ歯類での毒性、毒性にかんがみ」といったこ とを少し加えていただいた方が、6に「妊婦、授乳婦」という言葉が出てくるので、こ の人たちはすぐ霊長類、自分たちというところに短絡しないような配慮を是非お願いし たいと思います。 ○桜井部会長 ありがとうございました。ほかに何か…、よろしゅうございますか。そ うしますとあれですね、こういう…。失礼しました、どうぞ。 ○松谷委員 こういった文書は当然オープンになるわけですね。それで実際に、患者さ んが使ってくれるなと要求するということがあるのではないでしょうか。そうした場合 に、もちろん代替品があるものがあってもそこの病院で採用されていないとか、もろも ろのトラブルが起こったときにどう考えていくのでしょうか。 ○安全対策課長 先生の御指摘は、この情報が公開されることによって患者さんが知る ところとなり、いざ第一線でやるときに例えば様々な混乱といいますか、不具合が生じ たら一体どうするかということですか。 ○松谷委員 そうです。 ○安全対策課長 分かりました。もとよりこういった情報の公開といいますか、周知徹 底は医療の場に混乱を招くことではないわけでございます。一方で先ほど御説明申し上 げました事情からどのように、例えば第一線の先生に問題の本質を理解していただくか というところで苦心しているところがございまして、その点で正に御指摘いただきまし たように表現の過不足、あるいはポイントの置き方というところから細かく注意をして、 誤解のないようまず医療従事者に伝えていくと。それからマスコミを含めて、一般には 私どもの責任として、要するに分かりにくい専門的な事柄をどう分かりやすく説明する かということで全力を尽くすというように、それが必要なことだと考えております。そ れに基づいて、ここから先は大変失礼なものになるかもしれませんが、情報はレイオフ してあるわけですからそれを活用していただいて、個々の患者さんの例えば理解、背景 といったものに応じて、一線の先生方が説明をするなり最善の選択をするなりしていた だいて、そこで安全が確保されるのではないかと、このような形を今想定しているとこ ろです。 ○桜井部会長 よろしゅうございますか。どうぞ。 ○佐藤委員 先ほど事務局がカナダの例を挙げられて、そのベネフィットについてかな りまとまった御説明をいただいたと思うのですが、そのような感じでベネフィットにつ いてもある意味ではよく知られたことなのかもしれませんが、知られたことをことごと く省略するとやはりどちらかというとリスクの方が歩き回ってしまいますので、その点 を考えるとベネフィットについてもうちょっと説明があってもよろしいのではないかと 感じました。 ○事務局 先生からも御指摘いただきましたように、どちらかというと今回は問題点を より強調するような感じで御呈示させていただいておりますが、確かに先ほど申しまし たように、FDAでもリコメンデーションの中で医療が大切という基本理念を開口一番 にうたっていますのでそういったもの、またポジティブな意味も十二分に表現させてい ただく形で対応していきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○桜井部会長 やはり代替品がないというところが一番問題だと私は思うのです。ここ の最後の表のところに代替品の有無、「有」、「無」と書いてありますが、やはり本当 はここのところに値段まで書いてもらわないと。私がしょっちゅう言っているのは、安 全はただではないのだと、安全は金がかかるのだということです。昔の話ですが、電気 メスで防爆付きと防爆付きでないものとあって値段がこんなに違ったのです。その当時 はエーテルなどを使っておりましたから、防爆付きでないものは爆発するかもしれない けれども安くて済むというのをやったのです。今はそういうのはないのでしょうが、や はり結局値段との兼ね合いになってくるでしょう。ですから、ポリウレタンの良いもの であれだといえば、それは代替品はできます。しかし、ものすごく高いことになるわけ で、だから普及しないからできないということがあるので、やはりそういうこともちょ っと言及しないとまずいのではないですか。  ですから、私の考えではこういう現状があるのが事実なのだから、まず今こういう事 実があるという御説明をしていただいて、しかるがゆえにこういうことを推奨しますと。 これをいわゆるプライオリティーを付けて大事なものから一番にしていただいて…、た だ順番を考えないでということではなくて、順番を考えて書いていただくと。そこにリ スク・ベネフィットのようなことを含んで書いていただけば分かるかなという気がする のですが、いかがでしょうか。何かほかにお考えがあれば…。 ○井上専門委員 御指摘のとおりだと思うのですけれども、それを前提にして二つほど 申し上げます。一つは先ほど来、外先生から御指摘のあったような、短期間の投与とい うか、使用が明らかな場合の考え方はTDIを基準にした値ではないのではないかとい う点、あるいは澤先生の御指摘にあったように、あくまでもげっ歯類を中心にしたデー タが多うございますので、霊長目のデータがそれほど十分ではないということなど、ど のような表現をするのが適当なのか研究してみたいと思います。ちなみに外先生の御指 摘に従って5日間投与のデータと比較いたしますと、佐藤先生のデータの一番高いとこ ろでも更に1,000倍以上の余裕があるわけです。そういうことなどが確かであります。 ただ、リスクアセスメントの国際的なルールなどに沿って研究して、何らかの良い知恵 があったら事務局の方に御連絡するようにいたしたいと思います。  一方で、アメリカではこの問題で訴訟が起こったことがございます。こういった考え 方が基準で示されることによって、むしろ臨床現場の先生方がこういう問題で訴訟にあ うというようなことがなくなると。こういったフタレートの使用そのもので訴訟が起こ った事実など、逆の面の対策としてこういったことが必要だという面もあるという点を 一応指摘しておきたいと思います。 ○桜井部会長 ありがとうございました。それではそのようなことで加味していただい て、お手数でございますが、できればまた文章を作っていただいて、委員の先生方に一 度見ていただくというようなことで…。 ○安全対策企画官 分かりました。それでは御指摘を踏まえまして、今のこの1〜8に ついては再度重要度といいますか、めり張りを付けて文書案を考えてみたいと思います。 ただ背景としては、意図しない有害物質としてのDEHPが体内に入ってしまうという ところがございますので、それをなるべく下げるということは安全上重要だと理解して おりますので、そちらをより選べるような形でこういう情報を提供して、医療関係者に 知っていただいた上で適切な対応をしていただくと。そういう情報提供ということで、 今のやり過ぎではないかというような部分とか、表現の見直しを…、例えば1であれば 長時間使うような場合には、可能であれば代替品の使用などを考慮するとか、そのよう な表現を再度考えてみてもう一度御呈示したいと思います。よろしくお願いいたします。 ○桜井部会長 今代替品はありますか。 ○安全対策企画官 先ほどの輸液チューブの場合は…。 ○桜井部会長 ですから、ないものを書いてもらっても困ってしまうのですね。それは よくお考えいただかないと困ると思うのです。 ○安全対策企画官 そこも再考させていただきたいと思います。 ○中村委員 何度もうるさいようですが、塩ビの医療用具というのはものすごいたくさ ん使われていて、何億、何百億というお金だと思うのですけれども、それをこれだけ規 制したり注意を促したりするのに、大勢の人が集まって話し合ったりする材料として、 やはりネズミのデータで危ないからというだけの根拠で…。幾らいろいろとやって添付 文書の表現をいろいろ考えるよりも、やはりまず第一に霊長類で本当に危ないのか危な くないのかをきちんとしないことには、どれほど頭の良い人が集まって幾ら議論しても 駄目だと思うのです。ですから、そういうデータがなしで幾ら何回集まっても無駄だと 思いますから、そういうデータをきちんと取っていくという方向を作らないと更に議論 はできないのではないかと思います。それで本当に霊長類に毒性がなければこれは全く 要らないわけですし、患者さんも要らなくてもいい心配をしなくて済むと思いますから、 ここで言ってもしようがないかもしれませんが、そういう研究にも国はお金を出してし っかりした研究の結果に基づいて、みんなが議論できるようにしなければいけないと思 います。 ○桜井部会長 ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思いますので、よろし くお願いいたします。それでは時間が大分なくなりましたが、ほかに御意見がなければ ただいまの問題は締めくくらせていただきます。よろしゅうございますか。どうもあり がとうございました。それではその次を…。 ○事務局 それではあとは順次資料番号どおりに御説明させていただきたいと思いま す。その前に…。 ○桜井部会長 先生方はあれですか。 ○事務局 お三方の先生方、もしよろしければ最後までお付き合いいただきますが、も しお時間が許さなければここで御退席いただいて結構でございます。どうもありがとう ございました。 ○桜井部会長 どうもお忙しいところ、ありがとうございました。 ── 佐藤参考委員、井之上参考委員、井上専門委員退席 ── ○事務局 それでは続けさせていただきます。資料1から順番に御報告させていただき たいと思います。資料1は「添付文書の改訂案件について(報告)」でございます。表紙 をめくっていただきますと、日本ポール株式会社製の呼吸器回路フィルターについての 件が書いてございます。「改訂の経緯と内容」のところにどういったことが起きたかを 書いてございますが、吸入用の溶解剤の界面活性剤ですが、販売名「アレベール」とい う物質と超音波ネブライザー等を実際に併用した場合に、このフィルターが目詰まりを 起こして結果的に人工呼吸器が止まってしまう事例が発生したことにかんがみて対応を 採ったものでございます。  具体的には次のページに改訂指示書と自主点検通知が付いてございますが、まず別添 1の方で御説明させていただきます。こちらに書いてございますように、実際には呼吸 器フィルターというもの、それからいろいろな様式のネブライザーがありますが、微粒 子で飛ばす超音波ネブライザーというもの、界面活性剤であるアレベールというもの、 三つを一遍に使ったときにだけ発生する事象ということが少なくとも確認されたという ことです。こういった事件が引き起こす危険性については、注意喚起を徹底すべきであ るということにかんがみて、このような指示をして禁忌等で注意喚起をするようにとい う形で指示したものでございます。別添2につきましては、そういったものについて取 りこぼしがないように、各都道府県の衛生主管部局長あてに同様の自主点検の管理監督 をお願いしたものでございます。フィルターを造っている会社と、人工呼吸器、麻酔器、 ネブライザーを作っている会社、それぞれが別々の場合もございますので、それぞれに 対して自主点検をするようにという仕組みで指示をしたものでございます。経緯として は簡単にはこのようなことでございます。 ○桜井部会長 ありがとうございました。何か御意見はございますか。何件くらいこう いう事例が来ているのですか。 ○事務局 たしか2件だったと思います。これは実は既に添付文書にも詰まるらしいの で頻回に換えろと書いていて、人工呼吸器ですから一応生命維持装置ですので、医師の 監督下に頻回に管理監督して圧抵抗が上がっているからモニターしろということにはな っているのです。添付文書で頻回に交換すると書いてはあるものの、圧力が余りに急速 に上がるのであれば禁止した方がいいのではないかということで、禁忌ということでご ざいます。今2件と申し上げましたが、確実に言えるのは1件だけで、もう一つは学会 報告とのダブりがあるかもしれませんので、1ないし2件ということで御返答させてい ただきたいと思います。 ○桜井部会長 何か御質問、御意見はございますか。よろしゅうございますか。本当は 目詰まりしたらセンサーが鳴るなどというのが本式でしょうけれどもね。 ○事務局 実際には圧上昇がありますので、閉塞圧抵抗で鳴るには鳴るのですけれども、 ただネブライザーで飛ばすと急速に上がってくるということで、ネブライザー療法をや られる先生もいらっしゃるのですが、ジェットネブライザーならこのようなことはない かもしれません。超音波ネブライザーなら再現性も良くほぼ詰まるということですので これは危険だということで、このような措置をさせていただいた次第でございます。 ○桜井部会長 分かりました。よろしゅうございますか。ではその次は…。 ○事務局 では資料2に移りたいと思います。何人かの委員の先生にも再三にわたって 協議していただきましたが、ページをめくって表題を見ていただきますと、アイシン精 機株式会社のIABカテーテルによる事例がございます。これは記事を載せてありまし て、「医薬品・医療用具等安全性情報」176号の1ページを見ていただきますと概念図 が書いてございますので、その絵を御覧になりながら説明をお聞きいただきたいと思い ます。  このカテーテルは先端に風船が付いているものでございまして、そこがしぼんだり膨 らんだりすることによって心臓の拡張気圧を押し上げるのです。冠血流の増加を図った り、心臓の負荷を軽減させる補助循環装置という位置付けが得られているものでござい ます。大動脈を上に上がっていって、この風船が広がったり縮んだりして効能・効果を 出すわけでございますが、この先端部が血管を突き破って患者さんがお亡くなりになる という事故が起きておりまして、そのときに原因が分からなかったのですぐに流通を止 めて1年近く検討を行ってきたわけでございます。基本的にはいろいろな観点で検討を 行って先生方の御意見をお聞きしたところ、結果的な結論を申し上げますと、このよう な類型の他のカテーテルでも海外で同じようなことが起きているという点、それからコ ードや血管への攻撃性といった観点で特段他の製品との差が見られないという結論に至 りました。「医薬品・医療用具等安全性情報」の記事をめくっていただきますと、「(3) 原因分析」に経緯が書いてあります。原因を四つぐらい、当時考えられたものをすべて 当たっていったわけでございますが、膨張したり収縮したりするときに血管壁をこすっ て穴を空けた、あるいは患者さんが体をよじることによって向きがおかしくなったりと いったことが原因という考え方。あるいは併用医療用具で傷を付けてしまう、誤った用 い方、それ以外に固有の特性、攻撃性、物性等が劣っていたという議論があったわけで す。それぞれについて一個一個データを集めて検証してきた結果、基本的にどれについ てもなかなか立証が難しいということでございます。ただ、少なくとも分かっていたの は、現品回収された製品の先端から25mmのところでカテーテルが曲がったというもの と、対面側の圧迫痕、血管に傷があったということから少なくともそこで穴を空けたの は事実であります。こういったものについては、他の物性などを考えてもどの製品でも 起こり得る潜在的な可能性というところで評価が落ち着きまして、注意喚起を行うと同 時に添付文書の周知徹底を図ったところでございます。実際にはこの注意喚起を図った ところで販売は再開してございます。以上でございます。 ○桜井部会長 ありがとうございました。何か御意見ございますでしょうか。 ○小柳委員 今後各社はこの注意事項に倣って多少筆を加えるのですか。 ○事務局 各社については一応添付文書の見直しを指示しています。 ○小柳委員 多少プラクティカルでない部分があるかなと思っていますので、将来に備 えていただければいいと思うのですが、たわみを取るのに透視をやると書いてありまし た。しかし、実際にIABを付けた患者さんをまたレントゲンの部屋に運んで透視とい うのは難しい話で、日本人の大動脈が悪くなりまして、最初に挿入するときには上まで 行かないものですから透視下でやむを得ず行うのです。しかし、それから先の位置の確 認というのは、大体は先端が真上から見えますので経食エコーでやるのですよね。です から、もしチャンスがありましたら、挿入を透視下で慎重に行うことは当然であるが、 経時的な位置の確認は経食エコー、エックス線その他で行うという書き方がいいのでは ないかと思います。現場はそうやっています。 ○安全対策課長 適切に反映していきたいと思います。ありがとうございます。 ○小柳委員 是非お願いします。 ○桜井部会長 ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。それでは今の点 をお願いいたします。 ○事務局 引き続き報告を続けさせていただきます。その他の案件に移りますが、資料 4になります。これは既に新聞等でお目に触れているかもしれませんが、医療用具と携 帯電話端末等の問題ということでございます。1ページめくっていただきますと、医薬 品・医療用具等安全性情報の記事を転載させていただいていますけれども、平成8年当 時の総務省の検討班の不要電波問題対策協議会で一度ガイダンスが出ておりますが、最 近フォーマットあるいはCDMAという新しい電波方式のものが上市されてきたこと、 それからペースメーカー等もどんどんEMC対策という電波障害対策がなされているも のが市場に出てきたこと等もありまして、再度検討を行った結果を周知徹底させていた だいたものでございます。  結論から言いますと、ページをめくっていただいて「1)植え込み型医用機器への影響 について」の表を見ていただければと思います。今回、新しい点については比較表にも なってございますので、植え込み型心臓ペースメーカーについては今回と平成8年度の データを見比べていただければと思います。「最大干渉距離」というのは、必ずしも深 刻なものとは限りませんが、そこまで近づけたときに初めて何らかの障害があった距離 を測っていますので、この距離が短ければ短いほどそれだけ影響を受けにくいものと御 解釈いただければと思います。例えば従来型携帯電話(PDC)でいたしますと、800MH zという電波周波数のところでは、平成8年時は19.3%のペースメーカーが影響を受け ていた。しかも最大干渉距離では、14cmで影響を受けていたものがあったのに対して、 現時点での最新型では上市されているものは11.5cmまで近づけないと影響の出たもの はなかったと。一方、全体で影響が出たのは6.5%まで落ちていると。以下、その比較 を上下で見ていただきますと、1.5GHzでは15cmが4cmに、割合も4.4%から1.8%ま で受けなくなってきている。斜線の部分は平成8年度のときには存在しなかったので比 較試験ができませんが、右側二つの「W-CDMA」、「CDMA/CDMA2000 1x」と書いてあるも のは新型電波方式によるものでございます。これらに至っては密着しないとほとんど影 響が出ないと、またそのパーセンテージも極めて低いものということになっています。 概して言いますと、前より性能が良くなっている、またペースメーカーの方も堅牢性が 上がっているということは言えます。  もう一つ、下の(2)の方は除細動器でございます。実際に患者さんの人口が非常に少な いこともあって、前回の平成8年時は検討されておりませんが、今回御検討いただいた 結果、最大干渉距離が非常に短くなってございます。影響なしから5cmまでということ で、影響を受けるのは従来型携帯電話では19%が5cmまで近づけると結構大きいのです が、一般の携帯電話とペースメーカーに比べると近づけないと影響が出ないという結論 になっています。ただ、ここでの注意事項は、ペースメーカーだとそれほど重大なエラ ーは出なかったのですが、この植え込み型除細動器については放電までエラーが行って しまうということもあって、これについては注意喚起をさせていただいているところで あります。  ページをめくっていただきまして、2)の方はEMCというか、普通のむき身の医療機 器でございますので、先ほどの植込み型ペースメーカーに比べると随分影響が出るなと いう感触を受けられるかもしれませんが、一応これも前回との比較になっています。前 回平成8年度の結果が下の表に、今回のものが上の表になっていますが、必ずしも対比 実験のプロトコールが完全に一致していないところもあって、先ほどのページのように 対比表を二段書きにはできなかったわけですが、少なくとも平成8年度よりは機器の堅 牢性は上がってきていること、パーセンテージが前は66.1と、3台に2台は何らかの影 響を受けて最大は4mと。現時点でも475cmで出るものもあるのですが、パーセンテー ジとしてはかなり低く抑えられてきているということになっております。  基本的に今回の話については、植込み型の器械と医療機関にある器械の二つに大きく 分けて注意喚起をしているわけですが、植込み型の器械については平成8年時の検討結 果である、22cm離せば影響はないでしょうというガイドラインについてはより製品が良 くなっているので、引き続きこのガイダンスを採用という形で総務省の検討結果を受け て、このようなものを周知させていただいております。また、医療機関についてもこの ような状況で、まだ475cmというものが残っていることもあるので、ガイダンスとして は平成8年度、ページをめくっていただくと平成9年3月の指針が示されております。 それを再掲してまた周知徹底を図ったところでございます。これについては以上でござ います。 ○桜井部会長 ありがとうございました。これはいかがでしょうか。475cmというのは 随分遠くからで怖いですね。これはこの間座談会でやったときに、病院の中で携帯電話 が使えないなどというのはとんでもない話だと。要するに患者さんは社会から隔絶され て病院の中に入るので、携帯電話ぐらい自由に社会との接点として使えるようでないと 困ると言われたので、なるほど、そうだなと思ったのです。今は大概禁止していますけ れども。先生、よろしいですか。 ○酒井委員 最近病院の中で、無線LANを使った医療情報システムが結構はやってい るのです。これは例えば電子カルテのデータを取ったり、いろいろなオーダーのデータ を送ったりということをやっている中で、やはり携帯端末のPDAの出力を出したりも らったりするというところで、現状ではPDA自体の無線によるこういう干渉というの は少ないように実験では出ているのです。例えばこういう携帯電話を使ったり、いろい ろなCDMAなどを使ったときに、そういう誤診をしてしまって間接的に情報がおかし くならないかと心配しているのですけれども、その辺は何かデータはあるのでしょうか。 ○事務局 少なくとも不具合報告等で誤診したということは伺っておりません。この影 響というのは、例えば実際に画像診断装置の画像が乱れたり、あるいはドクターの方が 何らかの障害を見てとれることがほとんどと。実際にこの測定の観察者が状況を見て、 電源をつけたり切ったりして観測していますので、そういう意味ではそこまで分からな くて拾い取ってしまうエラーという形での深刻な模写をするようなエラーというのは出 ていないと聞いています。すみません、ここの細かいデータ自体を私の方で取りそろえ ていないので細かい御説明はできません。また、この報告書は実は医療機関の先生方、 特に患者さんを中心に検討したのですが、LANも総務省の中で検討はされています。 この後を見ていただきますと、新型携帯電話が前の旧型よりも影響を出しにくい、それ よりもPHSの方が出しにくい、それよりもLANの方が出しにくいという系列には全 体として議論できる傾向を示していますので、御指摘のようにLANの方がより影響は 出ていないという結果があったことを記憶しております。 ○酒井委員 今パソコンで使われている無線LANなのですけれども、一般的な無線L ANのほかにブルートゥースという方法があって、両方で交信を起こしてしまうので片 方に統一しなさいということが一般的に出ているのです。ですから、今から病院でどん どん無線LANがはやってきたところで、その情報が本当に心配ないかというふうに、 いろいろな周波数が待機の問題と出力の問題とが影響するので、これはこれで結構だと 思うのですが、今後やはりそういうことも是非御検討いただく必要があるかなと思って います。 ○安全対策課長 こういった電波の問題というのはよく分からないのですが、ヨーロッ パの規制などを見ておりますと、まずどのような器械に限らず、コンピューターから電 子機器、不要な電波輻射をすべて抑えるよう様々な規格、約束事で制限していると。ま ず環境をきれいにする。それから使う電力について、最小限でエラーのないようなもの で再整備をしているような動きを実は観測しております。先生御指摘のような、例えば 医療事故の防止のために大変役立つようなシステムの導入などのときも、環境としては 大変いろいろな事情になってくると思いますので、総務省、郵政の担当と機会を持って、 改めてこういった部分で重要なところがあるのだということで話をしていくと、またそ ういった機会を求めていきたいと思います。ありがとうございます。 ○桜井部会長 ほかはよろしいでしょうか。それではどうもありがとうございました。 ○事務局 それでは最後になりますが、資料5を簡単に御説明させていただきます。毎 年度最初の部会のときに、昨年度の安全対策のまとめということで統計処理させていた だいた副作用、不具合の結果等を数量的に御報告させていただくものとして今回初めて ですので、形式的に御報告させていただきたいと思います。一部の先生は医薬品の方の 検討会等にも御参加されていると思いますが、全く同じものでございまして、医薬品の 部会に御報告させていただいたものをそのままこちらにも御報告させていただく形で続 けさせていただきたいと思います。  「副作用等」となっているところについては、一応基本的には副作用ほか不具合とい う形で、件数については3ページを御覧いただきたいと思います。上段が医薬品、下段 が医療用具ということでございまして、最近非常に不具合報告が増えているということ で、FDA等は10万件とけた違いに多いのですが、類似の国であるドイツ、イギリス等 ですと年間数千件ということで、やっと日本の方も不具合報告等が先進諸国並みに並ん できたという状況でございます。  それから次のページは添付文書等の改訂指示書で、改訂指示書は医薬品の方が圧倒的 に多いわけでございますが、用具の場合は1例1例で回収にしてしまったり、使用停止 にしてしまったりすることがあるので、このようなところではちょっと見えにくい形に なっています。そういうものを全部承認取消しにしろという話ではなくて、どちらかと いうとエラーが見つかったので直すという形が用具の特性でございますので、これだけ を見てどうこうということはないのですが、形としてはこのような件数になってござい ます。  続きまして5ページの方ですが、実績を医薬品、医療用具について経年的に挙げさせ ている状況にございます。  最後のページでございますが、先ほども何度か触れておりますが、「医薬品・医療用 具等安全性情報」という季刊誌への掲載状況ということで、医薬品、医療用具を全部列 記したものになっております。医療用具でいいますと、昨年5月にジャクソンリース回 路の記事を載せさせていただいておりまして、その後今年1月に盗難防止装置のゲート 等の電波障害の話を挙げさせております。年度を明けての話はまた来年度御報告させて いただく形になろうかと思いますが、この安全対策のまとめについては以上でございま す。 ○桜井部会長 どうもありがとうございました。何か御意見ございますでしょうか。薬 に比べても随分報告が多いですね。三分の一くらい…。 ○事務局 よろしければ、もう一つ簡単に資料なしで御報告したいことがあるのですが、 よろしいでしょうか。もう皆様方も御存じだと思うのですけれども、第154回通常国会 で改正薬事法についての審議を提案してきたわけでございますが、先ごろ衆参全会一致 で採択されまして、4月末日で公布させていただいております。基本的に今回の改正は 大改正でありまして、ほとんどすべての条項を見直してございますが、安全対策に直接 起因するところに関して申しますと、医療用具についてはクラス分類の国際整合の取り 入れと、またそれについて第三者認証等の制度を導入することによって、よりリスクに 応じた重点的な安全対策、審査体制を引くといった点。  それから特に安全対策が中心になると思いますが、生物由来製品という概念を導入し ております。生物由来製品というのは、ヒト、動物の細胞、組織等を原料として一部な いし全部を構成している医薬品、医療用具については、普通の医薬品、医療用具とは別 に更なる規制を上乗せするということで、通常の報告制度に加えて感染症定期報告制度 を導入したり、あるいは万が一何か起きたときに患者さんに遡及して被害の拡大を防ぐ 遡及調査体制の確立といったことも法律に盛り込まれてございます。また、承認許可と いう形で今までも 規制を引いてきたわけですが、今度は製造全部委託といった重度の 確保という形で、製造販売承認制度、また製造販売業という新たな監視体制に移行する といった諸般の体制整備も行っております。具体的なものにつきましては、制令、省令 といった細かい規則等で定めていくことになりまして、また折に触れて形が固まった段 階で御報告させていただきたいと思います。本日は、一応法律案が通り成立したという ところまで御報告したいと思います。以上です。 ○桜井部会長 今の件も含めまして、今までのところで特別御発言ございますか。よろ しいでしょうか。では全く御発言ないようですので、これでよろしいですか。では長時 間にわたりましてありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 安全対策課 課長補佐 渡邊(内線2748) - 1 -