02/08/28 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会議事録             薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会                     日時 平成14年8月28日(水)                        14:00〜                     場所 経済産業省別館10階1028号会議室 出席者:寺田分科会長、井上委員、小川委員、小沢委員、垣添委員、熊谷委員、 黒川委員、小林委員、清水委員、首藤委員、高仲委員、田中委員、羽生田委員、 村上委員、柳川委員、山崎委員、和田委員  食品保健部長、企画課長、基準課長、監視安全課長、新開発食品保健対策室長、 検疫所業務管理室長、食品国際企画調整官 ○事務局  定刻となりましたので、「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会」を開催いたします 。本日はご多忙のところをご参集いただき、厚くお礼申し上げます。  本日は、児玉委員、吉倉委員から欠席との連絡を事前に受けております。品川委員が 若干遅れているようですが、分科会委員総数20名のうち、現在のところ17名出席で過半 数に達しておりますので、本日の分科会が成立いたしますことをご報告申し上げます。  それでは、まず開催にあたりまして、食品保健部長からご挨拶を申し上げます。 ○食品健康部長  食品保健部長の尾嵜でございます。先生方にはお忙しい中、またお暑い中をお集まり いただきましてありがとうございます。本日、分科会にお諮りしておりますのは2件ご ざいまして、1件は先に6月に分科会でご検討いただきました、遺伝子組換食品の安全 性審査の結果についての内容です。ワタについてアメリカの審査の状況、その承認の状 況がどうであるかについて確認をするようにというご指摘をいただき、その検討と、ア レルギーの誘発性についての考え方の整理をするようにということで、その2件につい て本日ご説明をし、ご審議をいただくことをお願いしております。  もう一点は、部会のほうでご議論いただき、ご報告をまとめていただきました「乳及 び乳製品の規格基準の改正」の関係です。これは雪印の食中毒事件を契機とした見直し をしていただいたものを、本日の分科会にお諮りする内容です。よろしくご審議のほど を申し上げます。  それと分科会の開催ごとにいろいろな食品に関する事案が持ち上がっており、ご報告 をさせていただいたりしていますが、今日の2つの審議案件以外にご報告をさせていた だくという案件が4件ほどございます。1点は、食品の表示制度について農水省、厚生 労働省両省の部局長の私的懇談会という形で検討いただきましたが、それの中間まとめ がまとまりましたので、ご報告させていただきます。  もう一点は、前回の分科会でもお話しましたが、先の通常国会の議員立法で食品衛生 法の一部改正ということで、輸入食品を含めた食品の違反というか、食品施行上の違反 の事例についての包括的な輸入なり製造・販売等の禁止規定が議員立法で先の通常国会 で成立しました。その発端になったのが中国の冷凍ホウレンソウの案件で、そういった ものについて、現在は中国に現地調査に行ったり、中国政府と協議をしているという状 況ですが、それの関係について、最終的にそういった輸入等を止める際には関係の行政 機関の長に協議をするのと併せて、食品衛生審議会にお諮りをするという規定になって おります。それについて、前回、非常に簡単に資料だけを出したということがあります が、それについても報告させていただきたいと思っております。  それ以外に、特定保健用食品に関する調査部会からの結果についての報告、また、い わゆるダイエット健康食品ついての健康障害の事案がたくさん出てきていますが、そう いったことについても併せて報告したいと思っております。よろしくご意見等をいただ ければ有難いと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。 ○事務局  それでは、以後の進行については寺田分科会長にお願いしたいと思います。よろしく お願いいたします。 ○分科会長  それでは、分科会の議事を進めていきたいと思います。その前に事務局から配付資料 の確認をお願いいたします。 ○事務局  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。資料は12種類ほどございます。資 料1は「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査に関する部会報告書(抜粋 )」、資料2−1「乳及び乳製品の規格基準の改正に関する薬事・食品衛生審議会食品 衛生分科会乳肉水産食品部会報告について」、資料2−2「乳及び乳製品の規格基準の 改正(案)に対して寄せられた意見等について(抜粋)」。  参考資料として、参考資料1−1「諮問書(写)」。1−2「パブリックコメント「 乳及び乳製品の規格基準の改正について」に対して寄せられた意見等について」、1− 3「WTO通報「乳及び乳製品の規格基準の改正について」に対して寄せられた各国の コメント等について」。参考資料2「食品の表示制度に関する懇談会中間とりまとめ」 。参考資料3−1「食品衛生法の改正について」、3−2「食品衛生法一部改正法の施 行に伴う省令改正案について」、3−3「食品衛生法第4条の3第1項及び第9条の2 第1項等に基づく特定食品等の販売、輸入等禁止処分の取扱い指針(ガイドライン)( 案)【概要】」。参考資料4「いわゆるダイエット用健康食品による健康被害の防止の ための当面の対策について」。参考資料5「特定保健用食品に係る新開発食品調査部会 の審議結果について」。以上です。 ○分科会長  皆さん、資料は手元にございますね。それでは審議に入ります。本日の議題案件は、 審議事項として「議事次第」に書いてある「組換えDNA技術応用食品の安全性審査に ついて」と、「乳及び乳製品の規格基準の改正について」の2件です。「その他」とし て、ただいま部長が挨拶の中で申し上げましたように、「食品の表示制度に関する懇談 会中間とりまとめについて」「食品衛生法の改正について」「いわゆるダイエット用健 康食品による健康被害の防止のための当面の対策について」「特定保健食品に係る新開 発食品調査部会の審議結果について」の4件について報告することになっております。  本日の議事を進めさせていただきます。まず「組換えDNA技術応用食品の安全性審 査について」審議することといたします。事務局より説明をお願いいたします。 ○監視安全課長  事務局よりご説明させていただきます。組換えDNA技術応用食品の安全性審査の件 ですが、部長が冒頭ご挨拶の中で申し上げましたように、6月11日に1度当審議会でワ タ、ダイズ、トウモロコシ、グルコアミラーゼについての部会報告をさせていただき、 ご審議をいただいたところですが、そのときに委員の中から2点意見が出ました。ワタ についてFDAで審議が遅れている理由は何か、安全性の観点からの問題があるのでは ないか、それを確認することというのが1つ。2つ目は、全般的な話ですが、遺伝子組 換え食品の安全性評価、特にアレルギー誘発性の評価についてどのように行われている のか分かりづらいという、この2点です。  特にそのうちの1つのワタの米国における安全性審査の問題ですが、資料1の14頁に アメリカのFDAにおける審査の調査の結果等ですが、アメリカでのワタに対する審議 については、食品と飼料(餌)としての両方の面で安全性の審査を行っておりましたが 、飼料の担当の方の異動があり、異動された人が1からまた検討を始めたので、審議が 2カ月ほど遅れていたという事情があります。  7月18日付で、FDAはモンサント社に対して審査が終了し、安全性が確認されたと いう報告がなされています。したがって、先生方が心配されていた安全性の問題ではな く、人が交替したので、それで時間がかかったということです。参考までに豪州、ニュ ージーランドにおいてのインターネットで、ワタについては問題がないということも、 すでに確認してあります。  2点目のアレルギー誘発性の評価の件ですが、資料1の12頁、13頁の「安全性審査の 概要」です。13頁は事前にお配りした資料を差し換えております。どこの部分が先生方 の所になく、今日配付されたものにあるかというのは、13頁の上から4行目の「人工腸 液では16〜24時間後に免疫反応性が失われることが確認されている」という部分が、事 前にお配りした資料からは削除されていると思います。前回の6月11日のときにも、こ のような表現でしたので、ここはきちんと前のとおりに表現を入れております。  安全性審査のところですが、ワタについては、綿実油(コットンシードオイル)中に は、ほとんど蛋白質は含まれないというのは、先生方もすでにご存じだと思います。そ うすると、新たに組換えによってできる蛋白についてもコットンシードオイル中には入 ってこないということですが、当該組換えはあとは抽出物である綿実油を食するもので あるということで、抽出物以外のものを食する可能性もあるかもしれないということで 、審査を行ったということも、ここでは追求しています。  したがって、ここでそれぞれのCry2Ab蛋白が人工胃液で15秒で免疫反応性が完全に消 失するであるとか、腸液で16〜24時間ということについては、もし万が一、食べたとき にどうなるかも考慮して、このようなデータも付けさせており、こういうことで種々の アレルギー誘発性についても総合的に判断をして、このような安全性評価については、 特段問題はないという経緯に至ったということです。その節には先生方からいろいろご 意見があって、「概要であるから必要なものだけ書けばいいではないか」というご示唆 もありましたが、報告書の中にもこの記述はありますので、事実は事実としてここに記 述させていただいたというところです。  15頁には、「遺伝子組換え食品の安全性審査の主なポイント」ということでここに書 いております。安全性審査のポイントというのは、主なものとしてはこの4点で見ると いうことが1つ。16頁には遺伝子組換え食品のアレルギー誘発性の評価の仕方というこ とで仕組みについて示してあります。アレルギー誘発性については、ここに示した評価 項目について、それぞれ調査部会で審議が行われた結果、総合的な判断をしています。 前回の6月17日に先生方からご指摘のあった点については以上でございます。 ○分科会長  どうもありがとうございました。引き続きまして食品衛生バイオテクノロジー部会長 の首藤委員より何か補足説明はございますか。 ○首藤委員  米国での審査状況は、監視安全課長からご説明があったとおりです。特にアレルギー に関して、どういう基準で審査を行っているかですが、もともと公開されている「組換 えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」というのがあって、それに則って 行っているわけです。その中のポイントが15頁にサマライズしてあります。  【1】の「宿主等に関する事項」ですが、宿主というのは元の植物ですが、それがど ういう植物であるか。ベクターの性質、もともと遺伝子をほかの生物から取ってくるわ けですが、その供与体についての情報、遺伝子そのものの構造と性質についての詳細を 明らかにすることです。  【2】は、目的の仕事をする遺伝子がきちんと目的通りに入っているかどうか、変な ものを一緒に取り込んでいないかどうか等を調査します。遺伝子がどのような形で入っ ているか、もともとの植物と周辺の配列を明らかにすることもできる限り行われていま す。そうした遺伝子の発現が何代か後になると大変多くなってしまうとか、なくなって しまうことはないかどうか、安定性をチェックしています。  【3】がいちばん問題ですが、挿入した遺伝子が作る蛋白質に関する安全性について の事項があります。1つはアレルギーを持つ蛋白質ではないこと。アレルギー以外の毒 性も持たないこと。蛋白質が酵素であるときには、その酵素が人間に対して代謝的な影 響を及ぼすかどうかについての考察が行われます。  【4】に、「派生的な」とありますが、組換えを行うと、元の植物に変化が起きるわ けで、そのときの栄養素の変化、植物がもともと有害物質を産生しているときには、そ の有害物質が意味がある状況で増加することがあるかないかをチェックします。普通植 物は栽培条件を変えただけでも成分が変わりますので、そういう状況なども考慮して栄 養素の問題、有害物質の問題が評価されます。  挿入した遺伝子が作る蛋白質が、宿主の代謝系に作用して、宿主に新しい毒性物質を 作るかどうかについても考察を加えています。これらが審査基準に書いてあるポイント です。  審査済みの組換え体で安全性オーケーとなったものについても、承認後に何か新しい 知見が出てきたときには、その結果をもう一度調査会に諮り、安全性に係る件をチェッ クしています。  このやり方が16頁の図にまとめられています。左に四角で囲ったのがアレルギーに関 しての評価の主なものですが、「供与体の生物の食経験」があるかないか、「アレルゲ ンとして知られているか」、「物理化学的処理」。この中には胃液での分解と腸液での 分解があり、加熱、あるいはそのほかの加工条件でどうなるかということが記述され、 これらが評価されます。  「摂取量を有意に変えるか」というのは、私は理解をあまりしていないというか、無 意味な表現なのではないかと思っていますが、原則として摂取量を有意に変えないこと と言うのですが、これは私にとっては意味不明です。これがもともと植物に含まれてい るアレルゲンでそれが増えてしまうとか、遺伝子の産物がアレルゲンであるというとき には、これは非常に大事な意味を持つわけです。多くの場合、何らかの蛋白質が微量で もできているわけですから、検討すべきことだろうと思っています。安全性の評価には 基準としては有意に変えるかどうかが述べられています。これは蛋白質が具体的に何マ イクログラム作られているかがきちんとデータとして示されております。これがアレル ゲンではない場合でも類似のアレルゲンがあるかどうかは、データベースのサーチによ って相同性をチェックしています。  遺伝子組換えの結果できた蛋白質の摂取が、我々が1日に摂取する蛋白質の量を有意 に変えるか否かを調べ、記述すべきとなっています。これはある特定の蛋白をたくさん 作るという目的が将来出てくる可能性があると思いますが、現在は何マイクログラム/ グラムという状況で、有意に変えるというものは、これまではなく、非常に微量です。  宿主の代謝系に作用しないかというのは、植物の代謝が変わって有害物質ができるか できないかについての考察です。  これら全体をまとめて右にありますように、総合的に判断し、安全性についての評価 を下しています。例えば、「アレルゲンである」という可能性のあるものなら、物理化 学的な処理、あるいはそのほかの摂取量の問題、蛋白摂取に占める問題などが非常に厳 しくチェックされることになります。アレルゲンではないし、それの量が特に膨大では ないといったものに関しては、その記述をきちんと評価し、これなら判断として危険性 はないだろうという結論に導かれるかどうかです。  したがって、先回問題になったように、胃液で加水分解が遅いとか速いというのは、 そこだけで評価されるものではなく、それがもしアレルゲンで遅いということであれば 問題だろうとうことになるわけてすが、総合的な判断ということで結論が出されていま す。 ○分科会長  どうもありがとうございました。本件につきまして、何かご質問、ご意見がございま したらお願いいたします。 ○熊谷委員  アレルギー誘発性の評価について説明いただいたとおり、総合的に判断した安全性を 確保するという評価方法であると思います。摂取量を有意に変えるかどうかは、全体の 安全性、つまりアレルギー誘発性のみならず、ほかの毒性も含めて、いろいろな部分、 すべてを含む部分の安全性を評価するのに使う部分が摂取量を有意に変えるかどうかで す。遺伝子組換えをすることによって、新たに摂取量を付加したことにより、例えば、 ジャガイモの摂取量が、従来に比べて10倍にも増えてしまうなどということを評価する という意味ですので、アレルギー誘発性の部分では、ご指摘どおりではないと思います 。  同じように蛋白摂取量の有意な量を占めるかというのも、挿入した遺伝子が作る蛋白 によって、蛋白全体の摂取量をどの程度変えるかということだと思います。これのアレ ルギー誘発性というよりも、むしろ全体にかかわることなのかと思います。 ○分科会長  これはたぶん遠くへグルッと回っていったら、アレルゲンとしての関係があるかもし れませんが、ここに入れるのはちょっと無理があると思います。同じようなことで宿主 の代謝系も資料としてはどちらかというと違いますね。宿主の代謝系に影響して、その 結果、新しいプロダクトができ、それでアレルゲンになるのかも分からないというのは 、持って回ればそうなるでしょうが、先生が言われた意味で、直接的な意味ではおっし ゃったとおりだと思います。 ○首藤委員  アレルゲンのところに書いてあるからおかしいのが1つと、有意という言葉が正確に 使われていないような気がいたします。 ○柳川委員  「有意」という言葉ですが、蛋白摂取量の有意な量を示すというのは、具体的にどう いうことなのでしょうか。 ○首藤委員  大体多くの場合には、遺伝子の産物として蛋白質が多かれ少なかれ生産されるわけで すが、その蛋白がワタの場合、あるいはこれまでの組換えの場合にはマイクログラム単 位です。そういう状況ですから、有意かどうかという意味においては、マイクログラム であっても有意ですが、非常に小さい値で、10gの蛋白を摂るうちの1μgという意味で 、有意かどうかというのは、私が思うのでは値は小さくとも常に有意だという気がして います。ですから、有意かどうかは常に有意ですが、大きい数で有意になるのかどうか ということだと思います。これからは蛋白含量が高い組換え植物などが出てくるかもし れませんが、そういうときの有意とここで書いた有意とは意味が違うと私は理解してい ます。 ○分科会長  ほかにございますか。それではFDAの話はよく理解できましたし、分科会としては これで了承したということにしたいと思いますが、いかがでしょうか。                  (異議なし)  どうもありがとうございます。では、この部会報告書を整理して分科会の報告といた します。それでは、薬事・食品衛生審議会規定第3条の規定に基づき、分科会の議決を もって審議会の議決とし、厚生労働大臣あて答申いたしたいと思います。答申案はござ いますでしょうか。 ○事務局  はい、ございます。ただいまから配付をさせていただきます。お手元に届きましたら 、答申書(案)の読み上げをさせていただきますので、ご確認をお願いしたいと思いま す。                  (答申書配付) ○事務局  それでは、答申書(案)の読み上げをさせていただきます。  薬食審第 号 平成14年8月 日。薬事・食品衛生審議会会長内山充から厚生労働大 臣坂口力宛です。  答申書。平成13年9月10日付け厚生労働省発食第222号による諮問に係る食品の安全 性審査について、下記のとおり答申する。  記。わた(鱗翅目害虫抵抗性ワタ15985系統)については、審査基準に基づき、人の 健康を損なうおそれがあると認められないと判断された。  ワタの概要が下に書いてありますが、日本モンサント株式会社から申請のあったもの です。 ○分科会長  どうもありがとうございました。この答申(案)について、何かご意見ございます か。                  (異議なし)  それでは、ご了解いただいたものとして、答申書案の(案)を取って、厚生労働大臣 宛答申させていただきます。なお、この件については、今後のスケジュールはいかがな っていますでしょうか。 ○事務局  今回、答申をいただいたものについては、今後速やかに告示させていただきたいと考 えております。 ○分科会長  それでは、引き続きまして「乳及び乳製品の規格基準の改正について」審議すること にいたします。事務局より説明をお願いいたします。 ○基準課長  それでは、「乳及び乳製品の規格基準の改正について」は資料2−1に部会の報告書 、資料2−2は、乳製品に寄せられたパブリックコメントに対する意見及びそれに対す る回答、WTO通報に対する回答を大変多く寄せられましたので、それを抜粋の形で整 理したものです。そのほか参考資料1−1は諮問書です。1−2、1−3が具体的なコ メントに対して、及びそれに対する回答です。以上の資料が乳及び乳製品の規格関係で す。  それでは、資料2−1に沿って簡単にご説明し、後ほど熊谷部会長から専門的観点か らのご意見をいただきたいと考えております。資料2−1の3頁の「はじめに」にいく つか書いてありますが、今回の改定の内容は大きく4つに分けられております。1つは 「製造方法の基準」の一部改正で、(1)にありますように雪印乳業の食中毒の大規模 な事故がありました。それに関係して脱脂粉乳について、現在は製造基準がなかったこ とに対して、再発防止の観点から、脱脂粉乳等の製造基準について設定するということ で検討をお願いしたわけです。  2つ目は「乳等の殺菌基準」について見直すということで、厚生科学研究結果などに 基づいて、例えばQ熱というようなものに対して、いまの殺菌基準でよいかを検討した わけです。  3つ目は、乳、乳製品の種類別分類がコーデックスとの整合性の観点からどうか。あ るいは加工技術の多様化への対応、あるいは消費者から見て、牛乳、あるいは乳製品が よく分からないという部分があるということの種類別の分類を、もう一度見直したとい うこと。  4つ目は、乳及び乳製品の容器包装についてのプラスチックの材質ですが、現在、例 外的に個別に認めていたものを規制緩和という観点から、一定の期間経ったら例外承認 ではなく、基準の中に取り入れていくという方向の中で、今回いくつか議論をしたとい うことで、4つのパートからなっております。  まず1点は、「脱脂粉乳の製造基準について」です。脱脂粉乳については、例えば、 乳固形分がいくつ以上とかそういった成分規格については規定がありますが、どういっ た製造方法によることといった規定がなされていないということがありました。そのよ うなことも背景にあって雪印乳業の事故があったのではないか。そういうことで事故の 原因究明を行ったりして、全国の脱脂粉乳製造工場の調査結果を(1)で書いています が、そのような調査結果を基に、どういう工程で製造されているのかをいろいろ調べて みました。そういった実態の調査結果、あるいは(2)の「生乳中の黄色ブドウ球菌の 汚染」状況といった結果を検討いただき、さらに「エンテロトキシンの産生及び発症例 」について、いろいろ文献的な考察、または研究をした結果を基に議論を行っていただ きました。  その結果、(4)の「衛生基準の基本方針」といった基本的な考え方を整理し、結果 は6頁の(5)の「脱脂粉乳の衛生基準」ということで製造工程上の衛生基準として、 ア〜カのような内容を組み込む必要があるということでした。  この内容をかいつまんで申しますと、黄色ブドウ球菌が増殖し、かつ、エンテロトキ シンを産生する可能性のある温度帯がある、それが10℃を超え、48℃以下ということに なりますが、こういう温度帯を製造工程のいろいろな工程がありますが、そういうとき にそういう温度帯を避けることを第1点に置いており、そこを通ったとしても、その時 間を極力少なくするということです。そのようなことで二次汚染も考えられれば、閉鎖 型で行うか、あるいは一定の滞留時間が6時間以上停滞しないように管理するといった 、いろいろな温度帯、あるいは滞留時間、閉鎖型での管理、回収後の措置といったもの を衛生基準として入れるべきではないかということを結論としているわけです。以上が 脱脂粉乳の製造基準に関連するものです。  (6)には、指導事項として、こういったところも基準ではなく、指導としてやって いくべきというのが、いくつか書いてあります。  IIIの「乳等の殺菌基準について」です。現在、乳については「摂氏62度から摂氏65 度までの間で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加 熱殺菌すること」となっております。この点について、厚生科学研究でいろいろ研究を 進めたところ、厚生科学研究補助金において「平成10年度から平成12年度まで生乳及び 市販乳中のQ熱病原体の汚染実態及び死滅温度に関する研究」というのが出され、研究 結果が得られました。  このような研究結果の観点から、Q熱病原体(リケッチア)の耐熱性に関する新たな 知見が得られ、この結果、62℃からというのではなく、63℃からということで1℃温度 を上げること。(3)のいちばん下の2行に書いてある、バッチ式加熱法でやると問題 はないということが分かってきました。バッチ式というのは、一挙に短時間に熱を上げ るのではなく、徐々に熱していき、63℃を保ち、30分間加熱する方式で行うとよいこと が分かりました。  (4)にありますように、これについては、コーデックス委員会においても検討がな されており、ここでもバッチ式において63℃、30分の加熱殺菌方法を検討しているとい う各国の状況も参考にできると思います。また、アメリカでもバッチ式方式で62.8℃か ら30分を採用しており、このような観点から乳の殺菌基準としては(5)の括弧書きの ようなバッチ式と1℃最低を上げるということで対応してはどうかという結論を得てお ります。  乳の加熱の話から発生して、乳製品の殺菌についても考えるべきではないかというこ とです。具体的には、チーズについて、特に原料乳を殺菌していないナチュラルチーズ がヨーロッパ等であるということについて、加熱殺菌基準が整理されていないことから 、当初の部会の案としては、ナチュラルチーズの製造基準として原料乳を63℃、30分で 加熱殺菌するといったことを義務づける。それができない場合は、HACCPの制度を 基に個別にその製造が問題がないかどうかを判断し、例外的に認めてはどうかというこ とで提案し、パプリックコメントWTO通報をさせていただいたわけです。このコメン トについては、後ほど紹介しますが、スイス、イタリア、フランス、ECといったヨー ロッパ各国から、これまでそんなに大きな事故は起こっていない。あるいは熟成を長期 間することによって、例えばリステリアの問題など、安全性の問題については問題なく 加熱殺菌をすることを必ず義務づけなくても、問題なくできるという意見が多数なされ ました。  そのようなことでいろいろなデータも各国から出され、部会において文献等について 審議を行ったところ、現時点では製造基準を設定して、必ず義務づけるには、まだデー タが十分ではないということで、個別の製品の検査、例えば、リステリアが入っている かどうかを検査することで安全性を確認しながら、加熱しないナチュラルチーズの安全 性の観点での基準づくりについては、続けて検討ということで、引続きということにな ったわけです。これはコメントのところでもう少し申し上げたいと思います。  9頁のIVの「乳等の種類別分類等について」です。9頁の「改正の要点」は(2)に ありますが、1つはアの「牛乳については、これまで脂肪の標準化などの成分調整を認 めてきた」ということですが、「コーデックスとの整合性を踏まえ、一切の成分調整を 行っていないものとする」ということで、いわゆる牛乳というのであれば、成分調整を 行わないものを牛乳という。原料が牛乳であり、それは何も手を加えない、それを牛乳 とするという定義の変更を行った。  またこれまで牛乳の基準は、直接飲む牛乳に対して基準を適用してきたのですが、直 接飲まないもの、いわゆる加工に回される牛乳についても規格基準を適用するというこ とで、適用の対象を広げたことがアに書かれています。これはいわゆる牛乳というもの の定義です。  脱脂乳ですが、脱脂乳は脂肪を全部取ってしまうことについては、「無脂肪牛乳」に 改める。生乳から製造したものとするということで、これについては原料が牛乳そのも のですから、「無脂肪牛乳」という言葉は使えるとなっています。  ウは、いままで「部分脱脂乳」というのがありましたが、これは「低脂肪牛乳」に改 め、かつ生乳のみから製造したものとするということになっています。  エは、新たに種類別成分調整牛乳を設定しており、膜処理等の技術が新たにできて、 特定の水分を除去したいわゆる濃縮という工程のもの。そういうものも「成分調整牛乳 」といった形にしました。ただし、これに該当するものは、いまのところ製品としては あまり多くはありません。脱脂乳という言葉から変えたイとウの「無脂肪牛乳」及び「 低脂肪牛乳」も、そういう意味では成分調整牛乳に入るわけですが、無脂肪牛乳、低脂 肪牛乳は特化して別項としていますが、新たに、それもおおかたは無脂肪牛乳、低脂肪 牛乳になりますが、それ以外の成分を調整したものについても「成分調整牛乳」という ジャンルを設け、またその基準をいくつか設定ししています。  加工乳についてですが、これも牛乳と同じように直接飲用に供する目的に限らず、基 準を適用するということで基準の適用範囲を広げました。  ナチュラルチーズについて、キで書いてありますが、「蛋白質の凝固作用を用いて製 造したもの」という言葉を定義に加えました。これによって何がナチュラルチーズから 外れるかというと、単に冷凍により物理的に固めたようなチーズが、特にオーストラリ アなどでありましたが、そういうものは「ナチュラルチーズ」という言葉が使えなくな ります。これはコーデックスの基準の改正に伴い、それに合わせるわけですから、国際 的な整合性を図ったことになるわけです。  以上のような種類別の改正をしております。分かりにくいかもしれませんが、そのよ うな形で分類を変更するとともに、基準の適用範囲を広げ、かつ、国際的な定義に当て はめたということです。  (3)には、それぞれ規格基準を、今回、変更、あるいは改正するものを具体的に基 準として掲げております。  最後に「乳等の容器包装の基準」関係です。現在、乳、乳製品の容器包装に使用でき る材質として、いくつかを限定し、それとともに例外的に個別に審査しながら、別の材 質のものも認めています。これについては資料2−1の最後の表を見ますと、現行認め ているのが「乳等省令」という真ん中のカラムです。例えば、1群はまさに牛乳そのも のとかそういったものがこれに入ります。2群というのは欄外にも書いてありますが、 発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料といった特別な手を加えた乳等で、1群、2群に中に入れ るものを分けております。  乳等省令では、例えば1群については、ポリエチレン(PE)、またはエチレン・1 -アルケン共重合樹脂としてLLDPEなどを基準として使ってもよしという形で認め ています。  2群については、同じ2つのもの、あるいはポリスチレンを使ってもいい。そのそれ ぞれのプラスチックについては、下に記載があるように材質試験、溶出試験、強度試験 を設定して使ってもよいということになっています。  今回、基準の改正をしますのは、これには含まれていないものを例外承認として認め ていたものを、乳等省令の基準として認めてはどうかということで検討をお願いしたも のです。それが規格基準(案)ですが、例えば、1群についてはいちばん下に「その他 」という欄があり、1群については、内容物に直接接触する部分に使用してはならない ということで、牛乳そのものに接触しない部分に使うという前提のもとにナイロン、ポ リプロピレンを、今回そういう条件付きで一般基準として認めようというものです。  2群については、ポリプロピレン、いわゆるPET(ポリエチレンテレフタレート) を今回、発酵乳とか乳酸菌飲料、乳飲料については、新たにポリプロピレン、PETを 認めようというものです。それぞれ乳等省令ですでに認められたポリエチレンなど、類 似のプラスチックの基準を参考にしたり、場合によっては各国の基準、例えば、ポリプ ロピレンについても、材質試験については、アメリカの基準を参考にして、今回提案し ており、こういう基準で部会としては了解をいただいたということです。  あと資料としては、17頁以降、「脱脂粉乳等の製造基準について」という参考資料が 付いておりますし、容器包装の規格基準が19頁以降、具体的にあります。  資料2−2です。これについては抜粋として「各国、あるいは国内の関係者から寄せ られた意見」とそれに対しての私どもの回答を非常に簡潔に書いてありますが、それを 多少コメントを付け加えながら説明をしたいと思います。  まず1つは、脱脂粉乳の製造基準です。今回、例えば閉鎖型でやれ、あるいは6時間 以上滞留をしてはいけないといったことを基準として定めますので、設備変更の規模が 大きくなるところもあり、猶予期間を最低2年ほしいという要望があります。これは当 然ながら、ある程度の猶予期間は必要ということですから、猶予期間を設定する方向で 考えますと答えております。  また2つ目のコーデックス規格では脱脂粉乳の最終製品中の蛋白質原料の調整のため に、乳由来成分の添加が認められており、整合性を図るべきというのがあります。これ は脱脂粉乳の部分についてです。この点については、ご指摘のとおり、国際的な整合性 を図ることということで、今回最終製品の成分を調整するためのある程度のものを加え ることは可能にするように整合性を図るということで、今回提案をしているということ をお答えしております。  最も意見が多かったのが乳の殺菌基準の改正です。基本的に乳そのものを1℃上げる という点については、特段反対意見はありませんでしたが、いわゆるナチュラルチーズ についての問題提起で、これは外国からの意見です。例えば、スイス、イタリアでは製 造工程において乳の加温とかカードの加温処理、あるいは加温した状態での保持、素早 い酸性化、3カ月以上の長期熟成など、いろいろな組み合わせによって原料乳を加熱殺 菌したチーズと同等の安全性が保証されることから、これらについて検討をしてほしい ということ。  フランスからは「原料乳の加熱殺菌基準だけではなく、全体の衛生管理が大事なのだ 。いくら最初に加熱しても二次汚染の問題もあるではないか」ということも、併せてコ メントをいただいております。この点について、今年の7月に部会を開催し、審議をい ただき、収集した多くの文献を見ていただきました。  その結果は、いろいろなことはあるが、確かに熟成などといった面での効果もあると いうデータもあります。答えを簡単に言いますと、この点についてはもう少しデータを 採るということで引き続き検討をする。その間、ただし、リステリア汚染などが出ない ように、製品の細菌上の検査をする。製造基準が例えば入っても、検査はもちろんすべ きですが、こういう基準が入りますと、検査の頻度もかなり少なくできるわけですが、 ナチュラルチーズについては、もう少し様子を見るということですので、製品検査は今 までどおり、きちんとして、安全性に万全を期すということで、引き続き検討というこ とになりました。  さらに(2)にありますが、これはパブリックコメントではなく、国内の研究者から乳 中にヨーネ菌が入ることがあり、死滅するかどうかについても検討すべきであると言わ れています。ヨーネ病というのがマイコバクテリウムパラツベルクローシスという細菌 の感染によって起こる病気ということで、反芻動物、例えば、牛などにそういう感染が あるわけです。例えば、これが人間のクローン病などと関係があるのではないかという ことも指摘されておりましたが、そういう点について指摘がありましたので、それにつ いても若干の文献を収集して、部会において審議をいただいたところですが、その結果 としては現在提案している62℃ではなく、1℃上げた63℃、30分のバッチ式において生 残をするというデータはないということ。それから菌株によっては起こるデータがある が、この場合でも105以上の菌数の減少が認められるということですから、たとえ残 っても、今回提案する加熱殺菌条件では安全性は担保できることから、問題はないだろ うという結論になりました。  種類別分類については、定義は変更になるが、取り扱い上の何らかの通知なりで定義 を示すのではなく、乳等省令上の定義としてきちんと分かるようにしてほしいという点 については、そのように整理をしますということ。あるいはナチュラルチーズについて 、オーストラリアから文言上の記載で定義とずれている所があることも指摘されており 、その点については文言上の記載方法の問題と考えられるので、整合性を図ると答えて おります。  最後にPETを乳製品のほうで基準化する、例外承認ではなく基準化することに対して 、リサイクルの観点でメーカーから意見が出ました。乳製品の場合、すぐ洗っていけば いいのですが、すぐ洗いや殺菌をしないと乳が腐って腐敗臭が付いてしまう、特にペッ トボトルについては繊維など、いわゆるフリースの原料などに広くリサイクルされるの で、そのようなものにリサイクルされる恐れがある。その場合、臭いの付いたものが繊 維になってしまうとリサイクルそのものが非常に停滞してしまうことがあるということ でした。そのようにならないように、プラマークがボトルに付いていますが、プラマー クは繊維などではなく、人とあまり接触しないようなものへのリサイクルに回すことに なっています。PETは非常に単一であり、いろいろなものにリサイクルが効くので広 くリサイクルされているわけで、その場合にはペットマークが付いているのです。三角 形のPETというマークが付いているので、後でよろしければご覧ください。  このメーカーはプラマークにしてほしい、いわゆるPETに回さないようにしてほし いことと、形状などについて対応をお願いしたいこと、いわゆるリサイクルショップな りそのような方々が見て、見た目でペットボトルであるとわかるようなもの、我々が見 てPETの形状ではないものを乳製品として使うようにしてほしいという要望がありま した。そのようなリサイクルについては食品衛生上の問題ではないことから、私どもと しては直接何とも仕様がないわけですが、意見については関係省庁及び業界団体に伝え 、団体に対しては指導を行ったということです。以上です。 ○分科会長  ありがとうございました。次に熊谷委員お願いいたします。 ○熊谷委員  いま説明のあった部会報告について、いくつかの点を追加説明いたします。脱脂粉乳 の製造基準ですが、雪印乳業における食中毒事故の原因として原因究明合同専門家会議 の報告によると、1つは原因物質は黄色ブドウ球菌の産生するエンテロトキシンA型で あること。2つ目は雪印乳業大樹工場で製造された脱脂粉乳が本事故の原因であると判 断されること。3つ目は停電が発生したときに、生乳または製造ライン中の乳に由来す る黄色ブドウ球菌が増殖し、エンテロトキシンA型の毒素を産生したと考えられること 。4つ目として、エンテロトキシンの産生はクリームの分離工程又は濃縮工程のライン の乳タンクで起こったと考えられる、という報告内容になっております。  この報告に基づき、先ほど説明があったように、実際の工場での製造方法、生乳中の 汚染、エンテロトキシンの産生に関する知見等を収集し衛生基準を検討しました。実際 の工場での製造工法はアンケート調査と現地調査によって行ったわけですが、先ほどの 部会報告についての中の18頁にあるように、結果をアンケート調査に基づき得ることが できました。多くの工場において、要約すれば、生乳の受け入れから始まり、クリーム の分離・殺菌・濃縮・乾燥という工程で行われており、温度との関係でグラフにしたも のが資料にあるものです。このグラフには時間が書き込んでありませんが、時間は上の 表に稼動時間ということで平均が出ています。工場ごとにかなり違いがあり、例えば最 低2時間から最高24時間と記載してあります。  10℃から48℃というのがエンテロトキシンの黄色ブドウ球菌が毒素を産生する可能な 温度域であり、いちばん毒素を産生しやすい温度が約40℃なわけです。つまり問題にな り得るのは、工程中において品温がその温度帯に合う部分が危険な場所ということにな るわけです。下のグラフにあるように、平均して見れば点線の中に入っている工程にな ります。これを見ると、雪印の食中毒事故の報告書にもあるように、クリームの分離工 程、濃縮後の冷却貯乳工程で指摘温度帯、毒素を産生しやすい温度帯となっています。  表のほうで所要時間を見ると、クリームの分離工程は連続的に行われています。それ は工程名の5番目の部分です。乳が連続的に滞留することが連続的に行われていました が、濃縮後の貯乳は工程の12番目で、工場によっても違いますが品温が20℃から50℃、 時間は3時間から最大30時間滞留している場合があったという調査結果が得られました 。その他、黄色ブドウ球菌の汚染実態についての文献等による調査から、原料となる生 乳はすでに毒素産生能力を有する黄色ブドウ球菌に汚染されているという前提に立ちま した。つまり、実際問題として数十%の生乳が黄色ブドウ球菌に汚染されているという 実態を踏まえてこの衛生基準を検討しました。  エンテロトキシン産生に関する調査及び追加試験の結果、菌数が102レベルの状態 だと6時間でエンテロトキシンが検出されることが実験的にわかりました。このような ことから、製造上必要不可欠な場合以外は、毒素が産生される温度帯を避けることを基 本方針とし、必要不可欠な場合としては、クリームの分離工程と濃縮乳の貯乳工程が考 えられますが、クリームの分離工程では原料乳である生乳の汚染が考えられることから 、乳をそこで滞留させないこと、濃縮乳の貯乳工程では基本的に殺菌した後の工程なの で、基本的に黄色ブドウ球菌は死滅していることから、そこで新たに二次汚染がないよ うにするということ、仮に二次汚染があったとしても6時間以上滞留させないこととす るということです。二次汚染があったとしても、おそらく菌数レベルとしてはそれほど 高くないであろうということ、その菌数レベルでストップし、6時間以内ならば毒素産 生が見られないという実験結果があるので、それに基づき、万が一、二次汚染があって も6時間以上滞留させないようにする措置を講ずることにしました。  次に乳等の殺菌基準ですが、Q熱病原体を今回のターゲットにしました。Coxiella burnetiiというリケッチアですが、ヒトへの感染の多くは塵やほこりの中にいる病原体 を吸い込むことが認められており、我が国でも毎年患者の発生が報告されています。我 が国では食品が原因であると考えられた発生は確認されていませんが、国外においては 、殺菌していない生乳が原因と推定された疫学調査結果が報告されています。このよう なことから、この病原体をターゲットとして耐熱性について厚生科学研究で検討した結 果、63℃で30分殺菌と表示された市販乳の35検体中9検体からこの病原体が検出された ということです。65℃で30分殺菌と表示されたものでは検出されなかったということが いちばん最初の実態調査でわかり、その後実験室内で殺菌条件に関する実験を行いまし た。  62℃30分では5検体中3検体が病原体が死滅せず生残することがわかり、63℃30分で も死滅せず生き残る検体があったことが認められました。65℃30分では、予測どおりす べて死滅しました。そういったことが認められ、さらに加熱条件についてもう少し詳し く調べ、15分間かけて63℃に達した後に30分間加熱し続けた場合、10検体中1検体は陽 性でしたが、20分間で63℃に室温から徐々に上げて、63℃に達してから30分間加熱した 場合には10検体すべて陰性、つまり死滅するということが実験的に確認されました。通 常実施されているバッチ式による殺菌方法では、目的の温度に達するまでに20分以上の 時間がかかっているという実態があり、したがってバッチ式により63℃30分の加熱殺菌 とすれば、Q熱病原体も十分に死滅するであろうという結論が出ました。十分にという のは、この研究で使用したQ熱病原体の菌数は1ml当たり105以上の菌数が検出でき なくなるということを以て陰性としたので、言い換えると、バッジ式によって63℃30分 で加熱殺菌すると、仮に105以上あったとしても検出限界未満、つまりほとんど0に なるということになります。したがって、この条件を基準としました。  このような基準をコーデックス委員会において、乳の殺菌基準としてQ熱及び結核菌 を指標として検討されていることがあり、この点からも国際基準と整合性が図られてい ると言えると思います。チーズの原料乳の殺菌ですが、リステリア症の原因食品として 諸外国でチーズというものの報告があることから、当初は原料乳を加熱殺菌するか、未 殺菌乳を使用する場合にもHACCPの承認を取ることとしましたが、先ほどの説明に あったようにいろいろコメントが寄せられ、それらも踏まえさらに最新の文献等も含め 検討したところ、確かに長期熟成のハードタイプのチーズについてはリステリア菌が減 少するという文献もありました。しかし、ものによっては減少しないという報告もあり 、あるいはチーズによってはむしろ熟成によって菌数が増加するという報告もありまし た。  このようなことから、基本的には殺菌を行うか、HACCPに基づく総合的な衛生管 理が必要であるが、現在の承認制度の個別承認となると、1つの国でも数百もの施設を 個別に確認することは現実不可能であることから、これまでと同様に製品での検査を当 分継続していくということ。また、個別のチーズの規格基準を設定するためにも、やは りそれぞれのチーズに応じたデータが必要であろうということで、水分活性やpHその他 微生物の挙動等に関するデータをさらに蓄積する必要があるという結論を得ました。そ れで先ほどの説明のようなことになったわけです。  国内の研究者によって指摘されたヨーネ菌の部分ですが、殺菌条件を考慮するに当た って、かねてから気にはしていたところですが、この度そのような意見があったので、 さらに文献等を収集し、耐熱性に関する実験等について検討を加えました。1993年以降 、ヨーネ菌マイコバクテリウムパラツベルクローシスという病原体ですが、この細菌に ついて加熱条件についての研究が行われるようになり、65℃30分とか72℃15秒という乳 の殺菌によく使われている加熱条件でこの病原体が生残するという報告と、死滅すると いう報告が実験的に知見が得られていました。それら初期の研究については実験的不備 が後で一部研究者から指摘もされたわけですが、その後もう少し実験的不備をなくす工 夫をした上での実験がいくつか報告されており、それらによると63℃30分、72℃15秒で 105以上菌数を減少させることができるという論文がいくつか出てきました。  そのようなことから、コーデックス委員会で言われているところの乳の殺菌の定義と して、結核菌あるいはQ熱を105減少する条件が加熱殺菌の定義として使われており ます。このようなことがあって、63℃30分あるいは72℃15秒であれば一応現段階ではヨ ーネ菌について105以上死滅させることができる、つまり殺菌の定義からしても問題 ないという見解をいまのところ取ることとしました。ヨーネ菌と人のクローン病の因果 関係については、一応最新のレビュー、総説と2000年にECがクローン病とヨーネ菌の 関係についてのレポートを作成しているわけですが、それらすべてクローン病の原因菌 であることを示す、あるいは原因でないということを示すデータについても十分な証拠 はないという見解になっています。そのようなことから現段階では先ほどの殺菌条件の 基準でいいだろうという結論に達しましたが、この問題についてはさらに今後国際的な 情報、データを引き続き注意深く見ていく必要があるだろうという考えでおります。 以上で追加説明を終わります。 ○分科会長  ありがとうございました。何かご質問あるいはコメントはありますか。根本的なこと で恥ずかしいのですが、62℃で何分だったら駄目だとか、63℃でというのは中の液体の 温度ですね。要するに、牛乳の中に菌を入れて実験をしたのは、水ではなく牛乳の中に 菌を入れてその中の温度がどうなったかということですね。実際に製造過程でも1度の 温度のコントロールはできるわけですか。 ○熊谷委員  1度程度はできると思います。製造現場にいないので詳しいことはわかりませんが、 おそらく1度程度はできるのではないかと思います。 ○事務局  普通、製造工場では、例えばバッチ式ですと内部に温度計を入れてコントロールして おります。メーカーは63℃30分ということになると、安全を見込んで設定温度を65℃に するということをしております。 ○小林委員  まず最初に容器包装について、乳類は例外でいままで認めていたのですか。 ○基準課長  これまで承認例が3件あります。その場合に先ほどのパブリックコメントのところで 、いわゆるプラ表示かPET表示かというところで、現在実際3件承認し乳製品、乳酸 菌飲料で売られているものについては、プラマークと言いますか、そのようなマークと して実際にやっており、PETとしてのリサイクルにならないようなマークでやってい ることと、例えば乳酸菌飲料、カフェリッチとかカフェオレなどがありますが、まさに これが例外商品になり、ペットボトルには見えないということで、形の上では変えてい ることでやらせています。これを今回基準化して同じような形でペットリサイクルのほ うにいかないように、これは告示、基準で決めるわけにはいかないので指導していきた いと思っています。 ○小林委員  今回やるとすれば、それを今度は一般基準に参入させるということですね。衛生的に は基準課長の言うとおり正しいと私は思っています。問題は業者がそれを守らずにペッ トボトルへ乳製品を入れているときには、どのような対応が取れるのですか。 ○基準課長  食品衛生法の観点から、いま委員が言われるとおり、私どものほうから強制的に規制 を以て乳を入れたPETの容器が、いわゆるPETと同じような形でのリサイクルに乗 せてはならないということはできないと思います。私どもいま口頭で言っていますが、 環境省及び経産省が該当の所管になりますが、そこに対してこのようなものについての リサイクルに支障を来たさないように配慮していく、所管官庁からも指導してほしいと いうことと、私どもは私どものほうで乳の団体に対して乳容器のリサイクルの関係団体 ではペットボトル推進協議会とかプラスチック容器包装リサイクル推進協議会などそれ ぞれありますので、そのような所との連携を密にし、会員に対してそのような表示につ いて指導事項を守るようにしてほしいということで対応したいと思っています。その場 合、口頭で駄目であれば文書化するとかは考えられることかと思います。 ○小林委員  過去の事例ですが、昔厚生省がペットボトルのドリンク剤を実は業界と厚生省の約束 で1リットルボトルしか認めなかったということは、みなさんはご存じだと思います。 しかし、それは国内の業者はみんな守ってくれた、ハーフボトルみたいなものが出てく るのでは、厚生省としてもゴミを路上にたくさん捨てられてしまい困るから何とかしよ うということで、法律以外の行政指導で対応したわけです。しかし実際に行政指導は外 国からの商品が入ってきたときには一切止められないわけです。私どもが心配している のは、日本以外の国が乳製品でペットボトルに入れて輸入してきたときには止められな いのではないかということです。  法律自体は厚生省が作ったものですからご存じと思いますが、そのためにリサイクル でペットボトルで外国乳製品に乳類が入ってきても止められないとすれば、私は我が国 では国民のみなさん方、特に主婦のみなさん方の協力によって、洗ってもらうことでリ サイクルが上手にいくようになっていると思うのです。私は入ってくるということ自体 を大変心配しているのです。ただ衛生行政の対応としてはこのように書いてあることで 間違いないとは思いますし、国内の業者は守ってくれると思います。しかし外国には規 制が及ばないとすれば、私は初めから乳類をやるときにはもう少し何か考える必要があ るのではないかと思っています。そこから先は知恵がないので当面これかなとは思いま すが、それが失敗になると今度は我が国のリサイクル、ペットボトルのリサイクルがせ っかくうまくいき始めているところへ疎外要因を作ってしまうのではないかと心配して います。以上です。 ○小沢委員  いちばん後ろの表の「容器包装の規格基準(案)」の中で、1群と2群の違いを見る と、溶出試験の蒸発残留物の所で、ヘプタンでチェックをかけるのが1群で2群にはそ れがないのですが、この差異が何によるものかということで、もし1群のほうが乳脂肪 が多いからということならば、2群の発酵乳や乳酸菌飲料の中にもかなり同等くらい脂 肪が高いものはあるのではないかと思います。この根拠がよくわかりませんので教えて いただきたいと思います。 ○基準課長  先ほども説明しましたが、具体的に今回個別に承認になったものを基準化するという 考え方だけでやったので、基準化のところで多分その部分については議論されているの だろうと思います。例外的に承認するところで議論されていると思っています。したが って、今回ヘプタンのものを2群に付けていないのは、いわゆるポリエチレンとかポリ スチレンなどにおいて現在の2群で基準化されているものがn−ヘプタンによる蒸発残 留物試験を要求していなかったので、それと並行してやったということです。これの必 要性云々については今回は議論しておりません。例外規定として承認するときに、多分 その部分については議論をした上でこのようになったものではないかと思います。過去 に遡って見なければわかりませんが、現時点での委員の質問に答えることはできません 。要は乳等省令のいまの2群に習ったということです。 ○和田委員  規格基準の改定に対して寄せられた意見の1つとして、脱脂粉乳の製造基準について 猶予期間を例えば2年要望と具体的な数字が出ています。やはり脱脂粉乳の製造基準と いうのは相当私どもの生活に密接な関係があるので、猶予期限を、メーカーの望むよう な最大限ではなく、できるだけ短いところで決めていただきたいと思います。いま具体 的に国として猶予基準をこのぐらいにするという考えがあるのかどうか、その辺も含め て伺いたいと思います。 ○基準課長  いまそのような要望があって、猶予期間を置くことについては「置きます」というお 答えをしているだけのことであり、まだ2年にすると決めているわけではなく、それを 勘案して考えたいと思っております。1年6カ月がいいのか1年がいいのかはわかりま せん。これからどの程度の影響が出てくるのかということも勘案しながら猶予期間の設 定を考えていかなければならないと思っております。具体的にはまた説明をしなければ いけないと思っています。 ○分科会長  他に意見がないようですので、この分科会としてはこれで了承したいと思います。こ の部会報告における決定事項を当分科会の議決として審議会長へ報告することといたし ますがよろしいでしょうか。                 (異議なしの声) ○分科会長  それではこの分科会報告は成立し、分科会の報告といたします。薬事・食品衛生審議 会規定第3条の規定に基づき、分科会の議決をもって審議会の議決とし、厚生労働大臣 あて答申したいと思いますが答申案はありますでしょうか。 ○事務局  ございます。ただいまから配付させていただきます。お手元に届きましたら答申書( 案)を読み上げますので確認をよろしくお願いいたします。                  (答申書配付) ○事務局  それでは読み上げさせていただきます。  答申書。平成13年4月25日付厚生労働省発食第102号をもって諮問された乳及び乳製品 の規格基準の改正について、下記のとおり答申する。  記。乳及び乳製品の規格基準について、別添のとおり改正することが適当である。  別添として、先ほどの部会報告の中から結論部分のみを抜粋をしています。以上です 。 ○分科会長  どうもありがとうございました。この答申案に関して、どなたかご意見がございます か。                  (異議なし) ○分科会長  それではご了解いただいたものとして、この答申書案の(案)を取りまして、厚生労 働大臣あて答申させていただきます。今後のスケジュールはどうなっていますか。 ○事務局  今回ご答申いただきましたものについては、今後速やかに省令改正を行いたいと考え ています。 ○分科会長  最後に、報告事項が4件あります。まず「食品の表示制度に関する懇談会中間とりま とめ」について、事務局より報告をお願いいたします。 ○企画課長  報告案件4件のうち、最初の案件、お手元の参考資料2ですが、「食品の表示制度に 関する懇談会の中間取りまとめ」が、先週リリースされました。この参考資料2の15頁 をお開きください。今回、食品の表示制度に関する懇談会ということで、農水省の総合 食料局長及び厚生労働省食品保健部長の両部局長の私的懇談会ということで、次頁のと おり、この6月から7月にわたり5回、表示制度のあり方について検討をいたしました 。この15頁に戻って、メンバーとしてはご覧のとおり、当分科会の和田委員が副座長を 務め、また小沢委員、垣添委員、首藤委員もご参加いただき、5回にわたるご審議をい ただきました。農水省、厚生労働省、公正取引委員会、いわゆる食品の表示制度につい ては3つの省庁にまたがるということで、これらについて一元的な検討を行うというこ とです。背景としては、この4月に報告された、BSEの調査検討委員会において、こ の表示の問題にも触れられ、一元的な見直しが必要であるということで、おまとめをい ただいたものです。今般あくまで中間とりまとめということで、先週発表されたものと 並行して、こういうご意見について、さらに一般の方々にご意見をいただくということ で、パブリックコメントを付記した上で、この秋に向けてもう1回、農水省、厚生省を 中心に、とりまとめの中身に対して、当面どういう対応がとれるかをこの懇談会にご報 告しようと考えています。中身については時間の関係で17頁、18頁の概要に基づいてあ らましの説明をしたいと思います。  「はじめに」にありますが、今般の懇談会の位置付けということですが、先ほど申し ましたようにBSEの報告で、現在複数の法律、あるいは制度にまたがっている表示制 度、これは消費者、事業者双方にとってわかりにくいという指摘がつとになされていま す。一方では、この年明け以来雪印食品や全農をはじめ、最近では日ハムと、ご案内の とおり表示に係る悪質な偽装事件等がありました。こういうことを受けて、急遽懇談会 が開かれたわけです。  2番にありますように、3制度にわたる表示制度の目的ということで整理しています 。「・」の1番目にあるように、「食品表示制度は、消費者の商品選択に役立つこと」 。これは主としてJAS法に係る表示です。  2つ目に「衛生上の事故・危害の防止(食品の安全の確保)に役立つこと」。主とし て食衛法の表示は、これは事業者に対して、当然安全であるということが前提にありま すが、その中身、例えばアレルギー物質が入っているかどうか。指定された添加物を使 っているかどうか。あるいは承認済みの遺伝子組換え食品を使用しているかどうか。こ ういうことに役立つこと。  3つ目には両省庁、各制度に共通する点でもあります。「正確で誤認を生じさせない ことなどを目的とする」。そのために、表示制度があるということです。  「・」の2番目ですが「これらの3つの目的は表示を利用する消費者がその主体とな るものであり、したがって、表示は、当然のことながら消費者にとってわかりやすいも のであることが大前提」ということです。  3番には、冒頭に申しましたが、現行の表示制度の問題ということで、1つは複数の 法律、複数の行政機関にまたがっていると、一覧できないためにわかりにくいという点 が、1点。それから各表示制度に基づく項目内容の、例えば賞味期限と品質保持期限に 象徴されるように、整合性が取られておらず、用語や定義の統一性が欠けている。解釈 等に関する情報提供などの運用面でも統一性に欠けているという指摘がありました。3 つ目に、当然ながら3法にわたっていますので、監視体制や違反した場合の是正措置も 、各制度によっては異なっていて、連携が十分でないという指摘も出ました。  それで、こういった3制度に分かれている表示項目についての見直しということで、 4番に書いていますが、先ほど申しましたように、法律上の義務として今後とも表示さ せるべき事項については、多くの消費者にとって商品選択の上で重要なものと、あるい は衛生上の事故・危害の防止のために事業者に行わせる必要があるものとすることが、 義務表示項目としては適当であるということです。  この懇談会でのご意見では、基本的には現行の義務表示項目、各法で事業者に義務づ けられている項目の維持が適当であるという意見が出ていますが、個別の表示内容等に ついては本懇談会とは別の、消費者、事業者等関係者を交えた場で、さらに具体的な検 討が必要ということです。  任意表示等についての指摘がありますが、「・」の3つ目に、先ほど申しましたよう に、とりわけ消費期限の定義の問題、あるいは定義は同じでも、言葉が違う賞味期限、 品質保持期限については、関係府省で速やかに定義や用語の統一を図ることが必要とあ ります。これについては懇談会のご指摘を踏まえて、まず関係者の事務レベルで統一化 に向けて検討に着手をしているところです。  あとポイントだけ申しますと、5番の情報提供ということで、各表示制度について一 覧できるパンフの作成、あるいは表示制度に係る説明会等、こういうものを積極的に各 省が連携して行うべきである。あるいは次頁の一番上ですが、相談窓口の一元化。例え ば、現在食衛法を所管している都道府県の保健所で、JAS法の表示についていろいろ お尋ねがあった場合にも、これは必ずしも十分にお答えできていない。また逆に、農水 省の系列の消費技術センターで食衛法の表示について聞かれた場合、おそらく必ずしも 十分な答えがない。こういう不都合をなくそうということで、結果的によほど細かい規 定は別にして、表示制度という共通項で括られるものについては、できるだけそれぞれ の行政機関の出先の窓口等で全体の説明ができるというような方向を目指したい。これ は両省、おそらく農水省も含めて、厚生労働省も来年度の予算の中でこういう方向に向 けての予算も計上しているところです。  6番は、表示違反の場合の監視、是正のための措置です。「・」の1番目だけ申しま すと、基本認識としては、表示に関する監視体制の一層の充実が必要。これは各法律、 あるいは所管を問わず必要であるということですが、ただ行政で公務員が監視できる範 囲には限界があるということで、行政機構全体の肥大を招かないということを前提にし ながら、既存の監視体制の有効活用を図るということで、特に必要なものについてはそ の監視の充実強化を図るということです。  いくつか指摘がありますが、6番のいちばん最後の「・」に、表示義務が課せられて いる各事業者において、主体的に自らの行動を律する。コンプライエンスの問題、要す るに法律遵守の問題ですが、行動規範の作成等取組みを一層促進するよう啓発すること が必要、となっています。  それから本懇談会でも特に注目されている「組織・法律の見直し」という部分ですが 、これについては若干本文に戻って、説明いたします。同じ資料の10頁、7番の所、「 組織・法律の見直し」という件があります。表示制度については縷々申し上げているよ うに、各制度が制度発足以来、各府省が十分に連携しないまま、それぞれの制度を独自 に実施してきたことが、消費者、事業者双方にとってわかりにくい仕組となった大きな 要因である。こういう認識のもとに、先ほどもサマリーで申しましたような改革の方向 をこの懇談会でも指摘・提言が出ています。今後、こういったことがこれらの事項が確 実に実施され、用語・定義の整備等が図られるとともに、監視の連携や情報提供の充実 、相談窓口の一元化等が実現すれば、これは現行の法律のもとでという意味ですが、そ うすれば我が国の食品の表示制度は大きく改善されると考えられるが、今後とも、今回 指摘したような問題点が再度発生しないよう、各府省の連携が将来にわたって継続的に 推進されることが必要である。このため、本懇談会では表示のルール設定・監視の組織 や法律のあり方についても議論を重ねてきた。  その結果ですが、(1)、(2)と11頁に組織と法律に分けて意見が出ています。ま ず(1)組織については「表示制度を担当する組織、具体的には食糧法で申しますと厚 生労働省と各都道府県ですが、それについて将来的には、既存の府省と切り離した表示 制度の組織に一元化すべきという意見もありましたが、例えば食品の安全行政は、食品 の内容と表示を一体的にチェックすることが、現在食品衛生監視員はこういう形で一体 的にやっていますが、必要である等、効率的・的確なルール設定・監視の観点から、専 門的知識を有する行政組織がそれぞれ担当することが適当である」という意見が出てい ます。(2)法律については、(1)の組織の問題を踏まえつつ、法律については、ア として「各法で規定する食品表示について、一本の法律にまとめるべき」。イとして「 各法はそれぞれの目的に従って定められており、法律の一元化を行うと、それぞれの観 点からの、例えばJAS法であれば品質の表示、消費者の選択ですが、食衛法の場合に は、食品の安全性の確保と衛生上の被害の防止という目的です。それぞれの観点からの 独立したチェックができなくなる等消費者にとってデメリットとなるので、各法は現行 のままとしつつ、各府省の連携、表示項目の整合性を図ることで解決すべき等提案があ った」ということです。いちばん最後です。当面の考え方はいま申し上げたとおりです 。「なお、中長期的には、食品に関する行政全般の中で、表示に関する組織・法律のあ り方についても改めて検討していくことが適当である」という形で、この組織、法律の パートは、これを取ります。  繰り返しになりますが、「おわりに」という2段ですが、品質保持期限及び賞味期限 の用語の統一と、速やかに対応できるものについては、そのようにすべきである。また 中長的に検討すべきことについては、連携を取りながら対応を進めるということで、中 間とりまとめという形でご意見をいただいています。報告事項の1件目は以上です。 ○分科会長  続けてお願いします。 ○企画課長  では2件目ですが、参考資料3−1、これは前回の分科会でも、まだ法律が制定しな い段階であらましの報告をしています。  参考資料3−1、先般の通常国会の末に、食品衛生法の一部を改正する法律が、議員 立法で提案され、7月30日に衆参両院で成立しています。内容的には、前回も申しまし たように、中国からの冷凍ホウレンソウの残留農薬基準違反の率が非常に高く、多く出 て、例えば規定の250倍というようなものが出まして、これへの対応を検討してきたと ころです。当然輸入食品ですから、検疫所におけるモニタリング、それから検査命令。 検査命令は当初省令改正前実施検査という形でホウレンソウについてやってまいりまし た。それでも検疫の水際チェックをくぐり抜けて、市中に流通する事例も見られたとい うことで、EUの制度に鑑みて、こういったものはいちいち検査せずに、一定の特定の 食品については、あるいは一定の地域の産品について輸入等を包括的、ちょっと包括的 という言葉はやや誤解を招きますので、例えば冷凍ホウレンソウであれば、それに属す る産品について個別の検査をすることなく輸入の禁止を行う。その間輸出国における対 応等の是正を図って、これらの将来とも基準を満たすようになる、あるいは将来とも安 心できるというようになれば、これを解除するということで、新しいそういう輸入禁止 の措置を行い得る制度を議院立法で認めたものです。時間の関係でちょっとはしょりま すが、お手元の資料3−1に書いてあるように、4条の3で、「厚生労働大臣は、特定 の国若しくは地域において採取、製造、加工調理され、若しくは貯蔵され云々」とあり ますが、真ん中辺りに、違反物が相当数発見されるということを発動要件として、さら に下りて、「人の健康を損なうおそれの程度その他省令で定める事項を勘案して、当該 特定の食品又は添加物に起因する食品衛生上の危害の発生防止など。特に必要があると 認めたときはというのは、これは他の水際におけるモニタリングとかあるいは検査命令 による対応では、十分にチェックできないと。こういう場合に薬事・食品衛生審議会の 意見を聴いて、採取、製造、輸入、加工、使用を禁止することができるとなっています 。ただ抱括輸入禁止措置ということで注目を浴びましたが、この法律自身は全く内外無 差別のニュートラルなものです。もし国内産品で同じようなことが出れば、そういう地 域、食品に限って流通の禁止とを当然行い得るわけですが、仮に基準違反が低い率でも 出た場合、通常は元に遡っていろいろな形で対応をするということで、国内産品につき ましては、一定の率を待つことなく是正を図ることができると考えています。これはW TOとの関係もありまして、全く内外無差別に運用、発動されるべき制度ということで 、ご認識いただきたいと思っています。  参考資料3−2、3−3の説明は省略しますが、この議員立法自身の施行日は9月7 日となっていまして、9月7日以降法律あるいは省令に該当する場合には発動され得る ということです。これと並行して7月末以降、冷凍ホウレンソウに関しては中国への部 長レベルあるいは課長レベルの協議を行ってきています。現在2万トン余りあると言わ れている冷凍ホウレンソウのストックについてどうするか。それから新しく出てきた問 題については、中国側も農薬の規制等についてこれから考えていきたいということです 。9月上旬にもう1回東京で課長レベルの会議を開き、最終的に発足、施行されたばか りの法律に基づく発動をするのかどうかは、その段階の状況を見極めて考えていきたい と思っています。ただ冷凍ホウレンソウに関する限りは、検疫所からの報告によると、 8月に1件輸入があって以降、先週まで全く輸入がいまは途絶えているという状況です 。おそらくいろいろマスコミで取り上げて、値段そのものが下がっていたり、あるいは 検査はかなりサンプリングの率等を厳しくしていますので、それによるマージンが薄く なったという背景もあります。こういう条件も踏まえながら、この法律の趣旨に沿った 運用を図っていきたいと考えています。以上が報告案件の2件目です。 ○分科会長  ただいまの報告事項について何かご質問、あるいはコメントがありましたらどうぞ。 食品衛生法の改訂の問題と標準制度の懇談会の報告とありましたが、よろしいですか。  それでは次の報告事項は、あと2つあります。よろしくお願いします。 ○新開発食品保健対策室長  引き続きまして、参考資料4をご覧ください。「いわゆるダイエット用健康食品によ る健康被害の防止のための当面の対策について」参考資料4の主として1頁の概要に沿 って説明いたします。5頁以下に本文がありますので、適宜ご参照ください。  いわゆる、ダイエット用健康食品と称する食品による健康被害については、7月12日 の報道発表以来報告が日々寄せられ、8月27日時点で786人の健康被害事例が報告され ています。うち、死亡された方が4人ということです。  これまでの取組みについてですが、7月19日に健康被害発生の防止に向け、そこに書 いてありますが、原因物質解明のための研究、中国当局との情報交換等、未承認薬品等 の取締りの徹底、被害情報の収集・公表等、輸入食品の審査体制の強化という、この5 つの対策を発表し、総合的に対策を推進してきたところです。  しかしながら、健康被害の事例がその後も増加していることなどを踏まえ、健康被害 の未然防止と、被害拡大防止に向けて、いわゆるダイエット用健康食品関連予算を約 6,000万円増額要求するとともに、運用面の強化等早急に実施することができる対策を 、今般「当面の対策」としてとりまとめました。6,000万円増額と申しましたが、この 中身については3頁で示しているように、食品等関連情報管理費を新規で約4,000万円 。無承認無許可医薬品監視指導基準等作成費が約2,000万円の増額となっています。  また1頁で、当面の対策として5点挙げています。第1点目は、健康被害防止のため の要領の策定です。14頁で、これまで医薬品や食中毒等の健康危機について国レベル、 都道府県、保健所レベルにおいて、また医薬品担当部局、食品担当部局がそれぞれの要 領を策定して、これらを踏まえた健康危機管理にあたってきました。しかしながら、今 回のダイエット用食品というような健康被害の例では、原因と疑われる健康食品等が無 承認医薬品なのか、食品なのかはっきりせずに、根拠法令が不明確な場合があることか ら、必ずしも既存の要領では対応しきれない恐れもあります。  そこで、また1頁に戻り、厚生労働省や都道府県等における対応要領を定めることと し、その策定を早急に進めてまいります。なお対応要領を発するまでの間、実際の最前 線である都道府県等における対応が重要であるということから、健康被害防止にあたっ ての留意点について、本日付で通知を発することとしています。  第2点目は、健康食品等の輸入時や流通時における対策です。健康被害を引き起こす 可能性のある健康食品等が輸入され、国内に流通することを防止するために、安易な個 人輸入に対する注意を喚起するチラシ、ポスター等を作成するとともに、製品名が公表 されている未承認薬品については、2カ月分の使用量以下を個人輸入する場合であって も、約款証明を地方公正局において取得するよう、税関において求めることにより、地 方公正局において販売目的でないことを確認するとともに、必要な危険情報を提供し、 輸入を思い留まっていただくよう促すということにいたします。  さらには買い上げ調査を強化し、インターネット等を利用した違法な医薬品の販売に 対する指導取締りを強化することとしています。  第3点目は、輸入代行業者に対する対策です。輸入代行業者と称しても、実際は無許 可輸入や違法な広告を行っている事例も見られることから、違法な事例を具体的に都道 府県に対して示すことにより、都道府県の指導取締りを強化するということにしていま す。  第4点目は、情報収集・評価・提供です。健康食品等の安全性や効果等に関する情報 を収集、分析して、データーベースを作成し、一般国民や医師、薬剤師、管理栄養士な どの専門家に情報提供するとともに、また都道府県から日々報告をいただいているとこ ろですが、そういう報告される健康被害情報については、専門家による検討会において 疫学的な観点から定期的な確認を行うこととしています。  第5点目は関係者との連携です。こういった相談ないし苦情等といった健康食品の問 題については消費者行政部局に寄せられることも多いということから、国民生活センタ ー等の消費者行政団体や、医師会、薬剤師会、栄養士会等の民間団体と連携することに より、必要な情報の効果的な収集、及び提供を図るため、通知を出して協力をお願いす ることとしています。あわせて中国政府との間では、健康被害の原因と疑われる製品に 関する詳細な情報の提供などにより、両国間の連携のための体制をより一層強化してい くこととしています。なお、こうした対策に加え、次期通常国会に予定している食品衛 生法の改正の中で、健康食品等の安全確保のあり方についても引き続き検討を行うこと を予定しています。これらの対策を推進することによって、健康被害の未然防止と被害 拡大防止に向けて一層努力してまいる所存です。この件に関する報告は、以上です。 ○分科会長  この件に関してご質問なり、コメントなどございますか。 ○小沢委員  輸入食品の場合の審査体制の強化の中で、7月29日の通知で、このN−ニトロソーフ ェンフルラミンほかいくつかの成分の自主的な確認をしなさいという通知を出されてい ると思いますが、ちょっと8月半ばごろ耳にした話では、その指定検査機関でもいくつ かの成分について、必ずしも十分にチェックできないということを耳にしたのですが、 いまはそれはどうなっているのでしょうか。 ○事務局  確かに一部指定検査機関において、検査ができない成分があるということです。それ はトリヨードチロニンとチロキシンという、甲状腺末に関する分析の部分について、若 干問題があってできなかったのです。これはいま受入れできるようになっていまして、 検査は実施されてきつつあるということです。以上です。 ○分科会長  ほかにございますか。それでは引き続いて、特定保健用食品について、お願いします 。 ○新開発食品健康対策室長  「特定保健用食品に係る新開発食品調査部会の審議結果について」ご報告いたします 。参考資料5をご覧ください。新開発食品評価調査会における審議を経て、平成14年7 月4日に新開発食品調査部会が開催され、2品目の安全性及び効果についてご審議いた だいた結果、特定栄養食品として認めることとして差しつかえないと判断されました。 了承された2品目については、2頁に示したとおりです。1番目の食品については、ラ クトトリペプチドを関与する成分として、血圧が高めの方に適した食品であり、28番 目の食品は水溶性コーンファイバーと低分子化アルギン酸ナトリウム関与成分として、 便性を良好に保ちながら自然のお通じを導くという、保健の用途が期待できる食品とい うことです。  これらの取り扱いですが、3頁、4頁に示していますが、1番目の食品についてはす でに乳酸菌飲料という形で許可されたものがありますが、これについては今回錠剤型食 品ということで、食品の形態が大きく異なるということで、4頁の5の扱い。また2番 目の食品については、関与する成分のうち水溶性コーンファイバーが新たな関与成分と いうことで、4頁の2の取り扱いということで、本日分科会に報告させていただく次第 です。なお、この2品目のほか、既存の食品とほぼ同様のもので、安全性及び効果の審 査を経ているものとして取り扱うものとされて、特に審議会で改めて審議は要しないと されたものが計11品目ありました。特定保健用食品に係る報告については以上です。 ○分科会長  どなたかご質問ございますか。それでは大変終わりのほうは、急にスビードが上がっ たような感じがなきにしも非ずですが、報告事項で、よくまとめていただき、お分かり になったと思います。本日の分科会はこれぐらいとしたいと思いますが、事務局よりほ かに何かありますか。 ○事務局  特にございません。 ○分科会長  それでは長時間のご審議、本当にありがとうございました。これで分科会を閉会いた します。どうもありがとうございました。 照会先 医薬局食品保健部企画課     03−5253−1111(内線2452)