02/08/20 第14回企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究会議事録    第14回企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究会議事録 日時 :平成14年8月20日(火) 10:00〜11:00 場所 :厚生労働省専用第19会議室(中央合同庁舎第5号館17階) 出席者:【研究会参集者・50音順】      毛塚 勝利 (専修大学法学部教授)      内藤 恵  (慶應義塾大学法学部助教授)      中窪 裕也 (千葉大学法経学部教授)      西村 健一郎(京都大学大学院法学研究科教授、座長)     【厚生労働省側】      坂本政策統括官(労働担当)      鈴木審議官      岡崎労政担当参事官      清川調査官      荒牧室長補佐 【議事概要】 ○ 事務局より、資料No.1-1企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究会報  告(案)について、前回研究会以降、座長の指示等を受けて修正した点等の説明が行わ れた。   これを受けて、報告書(案)について、意見交換が行われた。その内容は以下の通  り。   なお、西村座長より、欠席の3委員からは、事前に送付した資料No.1-1に対して、  特段の意見等がない旨説明がなされた。 ・ 報告書(案)については、6月の第10回研究会から議論が始まったばかりである  、という認識なので、EU既得権指令の理解や、企業移転時の労働契約の取扱い等に  ついてもっと法律的な議論を深めたかったというのが正直なところだ。   営業譲渡時の移転の法的性格が特定承継であるとの前提に対して、労働者保護の枠  組みをどう構築するかについて、この研究会の場でもっと根本的に議論を深めたかっ  た。  例えば、EUにおける法制度の理解についても、フランスが「営業」の概念に縛られ  て、労働者に拒否権を認めていないが、これはEU域内では例外であって、ドイツな  どでは、いわゆる営業譲渡のほか会社分割等も含めて幅広く「事業移転」として考え  ているが、このような柔軟な対応が、日本で可能であるかどうかについてもっと議論  したかった。   しかしながら、これまで行ってきた実態把握に基づく全体的な状況を踏まえての、  この研究会としての最終的な報告内容としては、言いたいことはあるが、概ね本日の  報告書(案)に対して、とりたてて意見は述べないこととする。   ただ、これで企業組織再編時の労働関係上の諸問題に関する検討がすべて終わった  とは思っておらず、今後の状況の変化に応じて再び検討する必要に迫られる場合もあ  ると思っている。 ・ 報告書(案)の中で、会社分割時の労働契約の取扱い等について、検証事例が少な  いことから、本研究会での主たる検討事項としなかった旨の記載があるが、今後会社  分割制度の活用事例が多くなったところで、その場合の労働関係上の諸問題について  、再び営業譲渡時における問題点と併せて検討する等とは書けないものか。 ・ 会社分割時の問題については、たしかに主たる検討事項とはしなかったものの、こ  れまでの研究会においても、いろいろな活用ケースについて事務局より報告いただい  ている。 ・ 表現上の話ではあるが、25頁の14行目以降の「特定の営業施設と労働者との結  びつき方は、極めて多様であるため、我が国の企業の現実からは、営業施設と労働者  との間に有機的一体性があるものとして固定的に捉えることは適切ではなく、」の挿  入の仕方が、その前に触れているEU既得権指令のような形での整理への対比のよう  に読めるが、これはおかしいのではないか。 ・ この部分の修正については、特にEU既得権指令との対比を念頭には置いていない  ので、25頁の12行目の「しかし」以下を改行しても良い。 ・ 細かい点も含めて、幾つか気づいた点をあげる。   25頁の下から6行目以降で、「営業譲渡の際の労働契約関係の承継について、法  的措置を講ずることは適当ではないと考える。」と言い切っているが、ここについて  は、一般的な解雇規制が判例法理以上に整備されていない現状等を踏まえて「現段階  では適当ではないと考える。」等の表現の方がよいのではないのか。積極的に「適当  ではない」と言い切ることができるか疑問であり、「現段階では」と限定しておく方  が、気持ち的に落ち着く。   同じ25頁の一番下の行から続く記述については、至極尤もなことを述べているわ  けだが、書き出しが「ところで」で始まっているため、非常に唐突な印象を受ける。  ここはむしろ、前述の「・・・適当ではないと考える。」と繋げて、「・・・適当で  はないと考えるが、譲渡会社は、当該部門の労働者について、・・・」とする方がよ  いのではないか。   26頁の上から5行目以降で重ねて「当研究会は、労働契約の承継について法的措  置を講ずることは適当ではないと考えるが、」とあるのは、非常にくどいので、削除  した方がよい。   27頁の2)の見出しについて、「営業の一部譲渡のうち、不採算部門の譲渡など  で問題が生じている場合」となっているが、ここで問題なのは、不採算部門の譲渡に  伴い労働者全員が承継されないことであることを明記するべきである。   営業譲渡に伴う労働条件低下に対する本人同意について、32頁の上から7行目以  下のところで、「本人が同意したかどうかで判断することにならざるを得ない。」と  あるのは、まさしくそのとおりであると思うが、「法的には、本人が同意したかどう  かで・・・。」とする方がより正確であろう。   33頁の4行目以降で、労使協議制について「直ちに法制化する状況にはないもの  と思われる。」とあるが、労使協議制そのものは、当研究会の検討事項ではないので  あり、「直ちに法制化がなされる」とするほうが誤解がなくてよいと思う。   あとは、語句の整理に関する事柄が若干ある程度だ。 ・ 語句の整理に関する事柄以外で、気付いた点が2点ある。   30頁の最初で、「労働委員会や裁判所で救済される」とあるのは、救済する機関  自体はそのとおりであろうが、ここはむしろ、「不当労働行為法理や権利濫用法理に  より救済される」とする方がよいと思う。   34頁の「(5)労働協約の承継」の記述の最後に、譲受会社に断交応諾義務がある旨  記載されているが、やや唐突な感があるので、「言うまでもないことであるが、」に  続けた方がよい。 ・ 報告書全体を通じて感じたことだが、「I はじめに」で、「企業組織の再編に伴う  労働関係上の諸問題」についての対応等の在り方を研究するのが、当研究会の意義で  あるとされている一方で、その後の分析等については随分と営業譲渡に偏っている気  がする。その意味では、当初の目的と結論が一致しないような気がしたが。 ・ 「I はじめに」の中で、企業組織再編の中でも、とりわけ営業譲渡時の労働関係上  の諸問題を中心に検討するものであることを明記するべきだ。 ・ 25頁の「営業譲渡の際の労働契約関係の承継について、法的措置を講ずることは  適当ではないと考える。」の部分については、必ずしも、一般的な解雇規制が整備さ  れれば、それに連動して法制化が進むというものではないのであることを考えると、  法的措置を講ずることが適当ではないと考えることについて、「現段階では」と限定  する意味はあまりないのではないか。むしろ、ここで切らずに「法的措置を講ずるこ  とは適当ではなく、」として、以下に続ける方がよいのではないか。 ・ 大方意見も出尽くしたと思われるが、本日の議論で出された修正意見等について、  この場で確認し修正することでいかがでしょうか?      (賛成) ・ それでは、これを以て当研究会報告の取りまとめとします。                                      以上 担当:政策統括官付労政担当参事官室法規第3係(内線7753)