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資料2

愛知用水二期事業の再評価(案)

水道用水関係


平成14年8月

水資源開発公団

− 目次 −

木曽川水系図
1. 愛知用水二期事業の概要
1−1 事業目的
1−2 貯水、放流、取水又は導水に関する計画
1−3 事業の経緯

2.採択後の事業をめぐる社会経済情勢等の変化

2−1 水道事業者等の水需給の動向等
2−2 水源の水質の変化等
2−3 水道用水供給事業者の要望
2−4 関連事業との整合
2−5 技術開発の動向

3.採択後の事業の進捗状況等

3−1 施設の建設状況
3−2 用地取得の見通し
3−3 関連法手続き等の見通し
3−4 事業費及び工期
3−5 環境配慮への取り組み
3−6 事業実施上の課題
3−7 その他関連事項
4.コスト縮減、代替案立案等の可能性の検討
4−1 コスト縮減方策
4−2 代替案

5.事業の投資効果分析

6.対応方針(案)



1 愛知用水二期事業の概要

1−1 事業目的

 愛知用水事業は、木曽川水系の水資源を総合的に開発し、その利用の高度化を図り、長年水不足に苦しんできた岐阜県から尾張東部の平野及びこれに続く知多半島一帯に水道用水、工業用水、農業用水を供給する我が国初の大規模総合開発事業であり、昭和30年〜昭和36年にかけて愛知用水公団(昭和43年水資源開発公団に統合)により実施されたものである。
 その後、愛知用水事業は水道用水、工業用水の需要の急増、近代的な農業への転換等の社会的変化により、農業用水を都市用水へ転用するなど、時代のニーズに対応した水の大動脈として、地域の生活及び産業を支え、中部経済圏の飛躍的な発展に貢献してきた。
 本事業は、愛知用水の通水後20年(通水開始から二期事業着手まで)が経過し、社会経済情勢の変化による都市用水需要の増大に対応し、また、施設の経年劣化等に対する機能回復及び管理施設の近代化による水供給の安定化と水利用の高度化を図ることを目的として昭和56年度に開始した。事業内容としては、水源施設、幹線・支線水路、導水施設、調整池及び水管理施設の改築等を行うものである。
 この内、水源施設である牧尾ダムについては、昭和59年の長野県西部地震等によって貯水池内に大量の土砂が流入したため、堆積土砂の除去により機能回復を図るものである。

(1)水道用水の供給

 岐阜県東濃上水道用水供給事業へ水道用水として最大1.3m3/s(水源:牧尾ダム)を、また、愛知県水道用水供給事業の水道用水として最大6.465m3/s(水源:牧尾ダム、阿木川ダム、味噌川ダム)の合計7.765m3/sを供給する。

  水利計画 (単位:m3/s)
取水地点 水源区分 岐阜県東濃上水道用水供給事業 愛知県水道用水供給事業
(愛知用水地域)
現況 計画 現況 計画
落合 牧尾ダム 1.300 1.300
兼山 牧尾ダム 2.594 2.594
阿木川ダム 1.102
味噌川ダム 0.529
小計 2.594 4.225
犬山 味噌川ダム 2.240
合計(最大使用水量) 1.300 1.300 2.594 6.465
注: 落合は、岐阜県東濃上水道用水供給事業の取水施設で、愛知用水の幹線水路は流下しない。
岐阜県東濃上水道用水供給事業は、阿木川ダムに0.8m3/s、味噌川ダムに0.3m3/sの水源を有している。

(2)工業用水の供給

 岐阜県可児市の工業用水として最大0.50m3/s(水源:牧尾ダム)、また、愛知県名古屋市南部と名古屋南部工業地帯及びその周辺地域の工業用水として最大8.74m3/s(水源:牧尾ダム、阿木川ダム、味噌川ダム)の合計9.24m3/sを供給する。

(3)農業用水の補給

 岐阜県の農地約416ha及び愛知県の農地約14,596haに最大約21.5m3/sを補給する。

1−2 貯水、放流、取水又は導水に関する計画

(1)貯水及び放流計画

 牧尾ダムは、有効貯水量6,800万m3の確保を図るものとする。
 また、牧尾ダムからの放流は、最大約3.9m3/sの水道用水を供給するとともに、工業用水として最大約6.4m3/sを、農業用水として最大約20.2m3/sの供給を可能ならしめるものとし、併せて発電の用途に供するものとする。

(2)取水及び導水の計画

(1) 岐阜県加茂郡八百津町地先の木曽川左岸の兼山取水樋門から取水した水は、幹線水路により、愛知県の水道用水として最大約4.2m3/s並びに岐阜県及び愛知県の工業用水として最大約9.1m3/sをそれぞれの分水施設まで導水するとともに、農業用水として幹線水路及び支線水路より最大約21.5m3/sを関係農地に補給する。
(2) 愛知県犬山地先の木曽川左岸の犬山取水樋門から取水した水は、犬山導水施設及び幹線水路より、愛知県の水道用水として最大約2.2m3/s及び工業用水として最大約0.2m3/sをそれぞれの分水施設まで導水するものとする。

 なお、岐阜県中津川市落合地先の木曽川左岸落合取水場(関西電力落合ダム湛水域)から、岐阜県の水道用水として最大約1.3m3/s(取水地点は落合、水源は牧尾ダム)取水した水は、導水施設により中津川浄水場まで導水され、各市町に送水するものとする。

愛知用水二期事業に関連する主要な利水施設

(3)施行区域

 関係市町村 16市11町2村

1. 水路等施設
(ア) 幹線水路及び支線水路
岐阜県加茂郡八百津(やおつ)町、可児郡兼山町及び御嵩(みたけ)町、可児(かに)市、愛知県犬山市、小牧市、春日井市、瀬戸市、名古屋市、尾張旭市、愛知郡(ながくて)長久手町、日進市、西加茂郡三好町、豊田市、愛知郡東郷町、豊明(とよあけ)市、刈谷市、大府(おおぶ)市、東海市、知多市、半田市、常滑市、知多郡東浦(ひがしうら)町、阿久比(あぐい)町、武豊(たけとよ)町、美浜町及び南知多町
(イ) 東郷調整池(愛知池)
愛知県日進市、西加茂郡三好町、愛知郡東郷町
(ウ) 犬山導水施設
愛知県犬山市
(エ) 可児導水路
岐阜県可児郡御嵩(みたけ)町、可児市
(オ) 前山池
愛知県常滑市

2. 牧尾ダム
長野県木曽郡王滝村、三岳村

(4)施設概要

1. 水路等施設

(ア) 幹線水路
通水量 最大約32.4 m3/s
延長 約113km(連絡水路約1km含む)
構造 開水路、暗渠、トンネル及びサイホン
(イ) 東郷調整池(愛知池)
取水施設改築 一式
堤体保護工 一式
護岸工 一式
(参考)有効貯水量 900万m3
型式 アースダム
堤高 31m
堤頂長 975m
堤体積 104万 m3
(ウ) 犬山導水施設
取水量及び通水量 最大約2.4m3/s
延長 約3km
構造 トンネル、管水路及び揚水機場等(一部既設利用)
(エ) 可児導水路
通水量 最大約1.0m3/s
延長 約4km
構造 暗渠、トンネル及びサイホン
(オ) 支線水路(農業専用施設)
延長 約512km
構造 管水路等
(カ) 前山池(農業専用施設)
有効貯水量 約972,000m3
型式 アースダム
堤高 18.4m
堤頂長 283.7m
堤体積 約136,000m3
なお、この施設は、愛知県から県営かんがい排水事業前山地区を承継したものである。
 
2. 牧尾ダム
貯砂ダム 2箇所
床止工 1箇所
堆砂除去 約548万m3

(5)建設事業費

 事業実施方針に定められた総事業費、水道用水負担額は次に示すとおりである。

(平成10年単価)
施設名 総事業費 うち水道用水負担額
岐阜県 愛知県
全体(愛知用水二期) 約3,155億円 約9億円
(0.2%)
約399億円
(12.6%)
約408億円
(12.8%)
  うち
 牧尾ダム堆砂対策
約300億円 約9億円
(3.06%)
約16億円
(5.17%)
約25億円
(8.23%)

(6)建設工程

 愛知用水二期事業は、昭和56年度から平成18年度までの予定である。
 ただし、水路等施設については、平成16年度までの予定である。

1−3 事業の経緯

(1)事業経緯

  計画認可年度 変更内容の概要 上水負担金 予定工期
当初計画 昭和57年度 172億円
(1,030億円)
昭和56-昭和65(平成2)
第1回変更 昭和60年度 支線水路の追加及びそれに伴う事業費の変更等 183億円
(1,336億円)
昭和56-昭和65(平成2)
第2回変更 平成 7年度 牧尾ダム堆砂対策等の追加及びそれに伴う事業費、工期の変更 346億円
(2,702億円)
昭和56-平成18
(水路等 :昭和56-平成12)
(牧尾ダム:平成 7-平成18)
第3回変更 平成13年度 事業費、工期の変更 408億円
(3,155億円)
昭和56-平成18
(水路等 :昭和56-平成16)
(牧尾ダム:平成 7-平成18)
※( )は総事業費

(2)暫定通水

 愛知用水二期事業の関連である阿木川ダム及び味噌川ダムが、平成3年度及び平成8年度にそれぞれ管理開始されたことに伴い、平成10年度には両ダムで確保された水量に基づく水利使用許可を水資源開発公団が取得した上で、愛知用水二期施設を使用した愛知県水道用水供給事業(愛知県企業庁)への暫定通水を実施している。
 なお、愛知県愛知用水工業用水道事業についても、同様の暫定通水が実施されている。

(3)建設期間中の費用負担

 一般的に、公団事業では、建設に要する費用のうち水道負担分については、建設期間中は国庫補助金と公団の借入金で支弁し、建設事業完了後に水道事業者から割賦又は一時支払いにより負担されている。
 愛知用水二期事業のうち水路等施設に係る事業費については、すでに暫定通水が実施され、効用も発現していること等から、建設期間中ではあるが、借入金の一部について平成13年度から水道用水供給事業者(愛知県)の費用負担が開始されており、工業用水道事業者(愛知県)においても同様の費用負担が開始されている。
 なお、建設期間中の費用負担の対象は、拡張分水量が流下する犬山導水路から下流の共用幹線水路の平成12年度までの実施済事業費を対象としており、総負担額の64%に相当する部分である。


2 採択後の事業をめぐる社会経済情勢等の変化

2−1 水道事業者等の水需給の動向等

(1)岐阜県東濃上水道用水供給事業

 岐阜県東濃地域は、家庭用電気機械器具、精密機械、陶磁器製造を主な産業として発展してきたところであり、従来は各市町それぞれに木曽川及び土岐川とその支流等に水源を求めて水道事業を経営してきた。しかしながら、潜在的に地域内水源に乏しく、特に土岐川は、本地域の主要産業である陶磁器の原料製造工場から排出される陶廃土により白濁し、更に地域の都市化による家庭排水の流入は、河川を汚染して各市水道の浄化機能に支障を与えるようになってきた。
 これを踏まえ、岐阜県は、中津川市、多治見市を始めとした5市1町を給水対象に、牧尾ダム及び阿木川ダムを水源として、計画一日最大給水量を約157,925m3とする「東濃上水道用水供給事業」を昭和46年から着工し、昭和51年11月から給水を開始した。その後、当地域は、大都市名古屋のベッドタウンとして都市化の進展も見られ需要も増加傾向で推移し、平成12年度末時点における給水能力は約157,925m3/日となっている。


岐阜県東濃上水道用水供給事業 事業概要

  計画目標年次
(認可年月)
給水対象市町 給水量(m3 水源(m3/s)
創設事業 昭和60年度
(昭和46.3)
中津川市、恵那市、瑞浪市、土岐市、多治見市、笠原町 (5市1町) 157,925
(中津川浄水場)
牧尾ダム:1.30
阿木川ダム:0.73
2.03
第1次
拡張事業
平成31年度
(平成11.4)
同上 186,600
(中津川浄水場)
牧尾ダム:1.3
阿木川ダム:0.8
味噌川ダム:0.3
2.4

(1)水需要の動向
 平成12年度の一日最大給水量は約104,000m3で、稼働率は約66%となっており、事業採択時(昭和57年)の約69,000m3に比べ約35,000m3(約50%)の増加となっている。
 なお、東濃地域は名古屋市から30km〜50km圏に位置することから、東海環状自動車道が完成(2005年)することで、一層利便性の高い地域となり、人口増加による需要増大が見込まれる。

(2)供給の動向
 平成11年4月には、計画目標年度を平成31年度とし、計画一日最大給水量を186,600m3とする変更認可を受けている。

(2)愛知県水道用水供給事業

 愛知県の水道用水供給事業は、世紀の大事業といわれた「愛知用水事業」の一環としてその産声を上げ、尾張東部丘陵地帯から知多半島一帯を対象とした愛知用水地域において、県民の生活に必要な水道用水を安定して供給するため、昭和32年から建設に着手し、昭和37年1月に一日最大給水量約54,000m3の施設能力で5市13町に対し、給水を開始した。そして、愛知用水地域における水道用水供給事業実施後、東三河、西三河及び尾張の各地域に、順次、水道用水供給事業を実施してきた。その後、水道の広域化を指向する「愛知地域広域的水道整備計画」が昭和55年度に制定されたことに伴い、水道用水の安定供給体制の増強を目的として、4つの水道用水供給事業を統合した「愛知県水道用水供給事業」(愛知用水地域、東三河地域、西三河地域、尾張地域)を昭和56年度から実施している。
 現在の事業計画では、県下70市町村を給水対象に、事業工期を平成21年度までとし、総事業費約7,230億円、計画一日最大給水量2,250,000m3の施設整備を図る計画となっている。
 愛知用水に係る水源を利用した水道施設は、3浄水場(高蔵寺、尾張東部、上野)であり、計画一日最大給水量478,700m3に対し、平成12年度末時点で、458,200m3の施設能力(計画の約96%)を有し、7市1企業団に給水している。
 なお、愛知用水からの供給以外の水源を含む愛知用水地域[愛知県水道用水供給事業(愛知用水地域)]の水道施設は4浄水場(高蔵寺、尾張東部、上野、知多)であり、計画一日最大給水量約841,100m3に対し、平成12年度末時点で664,500m3の施設能力(計画の約79%)を有し、10市5町1企業団に給水している。


愛知県水道用水供給事業(愛知用水地域) 事業概要

浄水場名 現在給水能力
(m3/日)
完成時給水能力
(m3/日)
各浄水場水源内訳
(m3/s)
給水対象区域
高蔵寺浄水場 94,300 94,300
牧尾ダム: 2.594
阿木川ダム: 1.102
味噌川ダム: 2.769
〔長良川河口堰: 2.86〕
岩屋ダム: 〔1.9〕
瀬戸市、春日井市、尾張旭市、愛知中部水道企業団(日進市、豊明市、東郷町、長久手町、三好町)、〔半田市〕、刈谷市、〔常滑市〕、東海市、大府市、〔知多市〕、高浜市、〔東浦町、南知多町、美浜町、武豊町、阿久比町〕
尾張東部浄水場 199,800 266,400
上野浄水場 164,100 118,000
〔187,300〕
知多浄水場 〔206,300〕 〔293,100〕
458,200
〔664,500〕
478,700
〔841,100〕
6.465
〔11.225〕
7市、1企業団
〔10市、5町、1企業団〕
注.〔 〕内数値は、愛知二期事業に関連しない水源の水道施設及び水道用水供給状況を含む。


(1)水需要の動向

 今後の水需要動向については、平成11年度に愛知県企業庁が実施した「愛知県水道用水供給事業再評価」のなかで、「水需給計画については、県営水道事業の将来の水需要として、現計画の目標給水量である225万m3/日を目指す必要があるものの、平成6年の異常な渇水を機に、水需要は年々の伸びが微増となっているので、給水量225万m3/日の発現時期等については適宜見直す。」とされている。
 愛知用水に係る水源を利用した地域における水需要動向は、愛知用水二期事業採択以降順調な伸びを示しており、平成12年度末時点における一日最大給水量は約37万m3となっており、事業採択時(昭和57年)の約20万m3に比べ約17万m3(約83%)の増加となっている。また、近年10カ年においても、約8万m3の増加(約1.3倍の伸び)を示し、この傾向からすれば、計画目標年の平成22年には、計画一日最大給水量 478,700m3に概ね達するものと推測される。
 なお、愛知用水からの供給以外の水源を含む愛知用水地域[愛知県水道用水供給事業(愛知用水地域)]においては、平成12年度末時点における一日最大給水量は約55万m3で、事業採択時(昭和57年)の約33万m3に比べ約22万m3(約67%)の増加となっている。
 また、本地域内は、今後、2005年の中部国際空港の開港と国際博覧会の開催、さらには第二東名高速道路の開通が控えていることもあり、人口増加等に伴う需要増大が大いに見込まれる。

(2)供給の動向

 愛知用水地域の水道水源としては、事業創設当初牧尾ダムを水源とする愛知用水に全てを依存することとしていたが、その後の急激な需要増大に伴い、阿木川ダム、味噌川ダム並びに長良川河口堰が水源として加わり、平成8年度には、さらに増大する水需要に対応するため、三重県から転用された岩屋ダムを加える計画に変更された。
 阿木川ダム、味噌川ダムの完成に伴い、愛知用水施設による暫定運用が平成10年度から可能となったことや、愛知用水地域に長良川河口堰の水を平成10年度から導水開始したこともあって、これら水源は、この地域の水道用水の安定供給に大きく寄与しているところである。
 なお、岩屋ダムで確保した三重県からの転用水源1.9m3/sについては、徳山ダムの利用が可能となるまでの間は、現在水源不足が生じている尾張地域で有効活用が図られているところである。

愛知用水地域における水道水源の内訳
水源名 水源確保量
(m3/s)
一日最大給水量
(m3
備考
牧尾ダム 2.594 192,100 愛知用水二期事業で通水断面を確保予定の水源は、牧尾、阿木川、味噌川ダムの3ダムで水源確保量は6.465m3/sある。
阿木川ダム 1.102 81,600
味噌川ダム 2.769 205,000
〔長良川河口〕 〔2.860〕 〔222,000〕
〔岩屋ダム〕 〔1.900〕 〔140,400〕
合計 6.465
478,800
〔11.225〕
〔841,100〕
注.〔 ]は愛知二期事業に関連しない水源を含む。

2−2 水源の水質の変化等

(1)取水地点の水質

(1) 愛知用水取水地点(関西電力兼山(かねやま)ダム地点)の原水水質の変化状況は、下表に示すとおり、ここ数年、ほぼ横ばいの傾向であり、環境基準を満足している。

グラフ
項目 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12
PH 7.0 7.2 7.2 7.2 7.2 7.1 7.0 6.9
BOD( mg/l) 1.0 1.8 0.9 0.9 1.6 1.3 1.2 1.1
SS ( mg/l) 4.3 6.3 4.1 4.1 3.8 2.8 2.8 3.4
DO ( mg/l 10.5 10.3 11.0 11.0 10.6 10.6 10.7 11.0

注:岐阜県公共用水域水質測定結果より(BODは75%値、その他は平均値)

(2) 愛知用水の犬山取水地点(犬山橋地点)の原水水質の変化状況は、下表に示すとおり、ここ数年、ほぼ横ばいの傾向であり、環境基準を満足している。

グラフ
項目 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12
PH 7.1 7.1 7.1 7.1 7.0 6.9 7.0 7.0
BOD(mg/l) 1.0 1.3 1.0 1.0 0.9 0.8 0.8 0.6
SS ( mg/l) 4.0 3.0 4.0 5.0 4.0 5.0 4.0 5.0
DO ( mg/l 11.0 9.6 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0

注:愛知県公共用水域及び地下水の水質測定結果より(BODは75%値、その他は平均値)

(2)牧尾ダム貯水池の水質

 愛知用水事業の水源である牧尾ダムについては、昭和59年9月の長野県西部地震に伴う大量の土砂流入があり、また地震に伴う山肌の露頭により、現在でも濁水の流入がある。
 なお、平成7年度からダム堆砂対策工事を実施中であるが、近年のダム湖の水質変化状況は、下表に示すとおり、特に大きな変動はない。

グラフ
項目 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12
PH 6.8 7.1 7.1 7.2 7.2 7.2 7.4 6.8
COD( mg/l) 1.8 1.2 1.8 1.5 3.4 1.6 1.4 2.3
SS ( mg/l) 4.0 3.0 5.0 1.0 4.0 4.3 2.5 5.0
DO ( mg/l) 10.5 9.2 10.1 9.3 9.7 9.8 9.3 9.5

注:水資源開発公団水資源開発施設等管理年報より(CODは75%値、その他は平均値)

(3)東郷調整池(愛知池)の水質

 東郷調整池は、愛知用水幹線水路のほぼ中央に位置し、水道用水及び工業用水の取水口を設けている。水質の状況は、下表に示すとおり、ここ数年、ほぼ横ばいの傾向である。
 なお、東郷調整池は自己流域が約2.3km2と小さく、また周辺は緑地帯として保全されていることから、水質汚濁の原因物質が流入することはない。

グラフ
項目 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12
PH 7.1 7.3 7.6 7.3 7.6 7.6 7.7 7.6
DO ( mg/l) 10.7 10.4 10.4 10.5 11.0 11.2 9.4 10.4

注:愛知県企業庁水質年報より(平均値)

2−3 水道用水供給事業者の要望

 愛知、東濃の水道用水供給事業者は、本事業を予定工期内に確実に完成させること、及び可能な限り予定事業費の縮減が図られるよう努めることを強く要望している。

2−4 関連事業との整合

(1)水源であるダム等の建設状況

 水道事業者が予定していた水源のダムは、現在までに全て完成し確保されている。

(2)水道施設の整備状況について

(1)岐阜県東濃上水道用水供給事業
 昭和45年度末に事業認可を受け、翌年から建設工事に着手し、昭和51年度に給水を開始している。平成12年度末時点における一日最大給水能力は157,925m3で、現時点で目標給水能力の約85%を有している。また、牧尾ダムにかかる1.3m3/sの開発水量については、既に100%事業化している。
 なお、岐阜県東濃上水道用水供給事業では、安定供給対策として、送水本管の老朽化(布設から30年経過)等に対処するため、送水本管のバイパス化等を検討中である。

注:岐阜県東濃上水道用水供給事業は、牧尾ダムのほか、阿木川ダムから0.8m3/s、味噌川ダムから0.3m3/sの合わせて2.4m3/sの水利権を有している。

(2)愛知県水道用水供給事業
 昭和56年度から愛知県水道用水供給事業を実施しており、平成12年度末における事業進捗率は、全体で約60%となっている。
 なお、愛知用水地域においては、平成12年度末時点における一日最大給水能力は664,500m3で、現時点で目標給水能力の約80%を有している。
 現在、愛知用水地域においては、2005年の中部国際空港の開港を控えての送水管布設工事、経年劣化施設の更新・改良工事、及び既存施設の耐震補強のための施設改良を実施中である。引き続き、今後の水需要発生動向を勘案しつつ、浄水場の拡張工事、安定供給を図るための連絡管及び広域調整池の建設が予定されている。

2−5 技術開発の動向

(1)開水路改築工法

 愛知用水二期事業は、都市用水、農業用水を供給している管理運用中の大規模水路の改築事業であり、施工にあたっては通水を確保した上で実施しなければならない。このため、施工は大規模な用水路の改築工法としては例のない半川締切り工法を採用している。
 なお、現場・地質条件により、仮設仮廻水路を施工せざるを得ない箇所を除き、開水路区間延長約50kmのうち約38kmで半川締切工法を採用している。
 この工法により、現施設用地内での施工が可能となり、新たな工事用地の確保が不要であり、また、別途仮通水施設を設置する必要がないことから、工事コストの縮減にも寄与している。
 また、開水路のコンクリート打設の工法として、大型鋼製特殊型枠(シャタリング) を用いて、型枠の組立解体作業を短縮し、工期の短縮と作業の効率化を図った。
半川締切工法: 片側を仮通水しながら、逆側の半断面を改築し、更にその断面で通水しながら他方の半断面の改築を施工する工法

(2)トンネル坑口における振動対策

 民家に近接するトンネル坑口において、トンネルの発破作業に伴う振動を緩和するため、高性能の雷管(ノネル雷管)を用いて発破時間を精密に制御し、低振動施工を行った。
 この工法と防音壁等の防音対策を併用することで、坑口に民家が近接(実績としては最も近い民家まで18mであり、さらに精密金型工場も近接)している箇所において、発破によるトンネル掘削工法の採用が可能となり、近隣住民等への影響を最小限に抑えた円滑な施工が可能となった。
ノネル雷管: 一発破における薬量を少なくし、多数の小さな発破を精密に制御できる高性能な雷管。
 これにより、低振動、低騒音での発破作業が可能となった。


3 採択後の事業の進捗状況等

3−1 施設の建設状況

(1)水路等施設

 水路等施設については、平成13年度末時点で、共用区間と農業専用区間を合わせた幹線水路約120km(導水路等約7kmを含む)のうち約111km(約93%)を、支線水路(農業専用施設)約512kmのうち約436km(約85%)を実施した。
 今後は、平成14年度までに、幹線水路の共用区間約85kmを概成(水路主要施設の完成)し、平成15、16年度に農業専用区間、既施設の耐震補強・補修工を進め事業を完了させる。

(2)牧尾ダム堆砂対策

 堆砂土の除去については、平成13年度末時点で、約548万m3のうち約269万m3(約49%)の堆砂除去を行うとともに、進入路工、床止工、土捨場工を実施している。
 今後は、地元調整を図りつつ、堆砂除去工、土捨場工、貯砂ダム建設等を実施し、平成18年度に事業を完了させる。

3−2 用地取得の見通し

(1)水路等施設

 幹線水路施設のうち共用水路施設(サイホン、トンネル施設等)については、通年通水に対応するために必要なバイパス水路を設置して、水路の改修を実施している。このバイパス水路に係る新たな用地取得については、工事工程に合わせて用地取得・地上権設定を完了している。

(2)牧尾ダム堆砂対策

 土捨場については、3地区を予定し、現在までに2地区を確保するとともに堆砂土運搬道路に必要となる用地についても確保している。残る1地区についても、平成15年12月からの捨土開始に向け、来年度早々の用地を取得する見込みである。

3−3 関連法手続き等の見通し

(1)水資源開発促進法及び水資源開発公団法

 平成12年12月20日付で事業費等改定の事業実施方針の指示を受け、平成13年 4月25日付で事業実施計画の認可を得て事業を進めている。

(2)河川法

 本事業の水利計画に基づく河川法手続については、平成10年10月30日付けで協議(既愛知用水水利計画の一部変更と阿木川ダム・味噌川ダム開発水の追加に係る水利使用(河川法第23条及び24条))を既に了している。
 今後、残る協議としては、牧尾ダム堆砂対策で貯砂ダム及び階段工の実施を予定しており、今後の工事工程に合わせ河川管理者との間で協議調整(河川工作物に係る河川法24条及び26条の協議)を進めることとしている。

3−4 事業費及び工期

 本事業の事業費及び工期は、次に示すとおりである。

事業費及び工期

  事業費
水道用水 工業用水 農業用水 発電事業
全体(愛知用水二期)
(昭和56〜平成18)
408億円 828億円 1,909億円 10億円 3,155億円
  うち
 牧尾ダム堆砂対策
 (平成7〜平成18)
25億円 51億円 214億円 10億円 300億円

 今後、残る工事として水路等施設では、平成14年度までに共用水路施設を概成させ、平成15、16年度に農業専用水路施設を完成させる。また、地震防災の強化地域に指定されたことを受け、水路の耐震補強対策及び完了整備等の工事を実施することとしている。
 なお、平成13年度末時点における工事進捗率は、事業費ベースで約87%である。
 また、牧尾ダム堆砂対策については、引き続き、堆砂除去工事を実施するとともに、土砂運搬道路整備及び貯砂ダム等の工事を実施することとしており、平成13年度末時点における工事進捗率は、事業費ベースで約64%となっている。

事業進捗率(事業費ベース)

  総事業費 H12迄 H13 H14以降
全体(愛知用水二期) 事業費 3,155億円 2,508億円 180億円 467億円
進捗率 79.5% 85.2% 100%
  うち
 牧尾ダム堆砂対策
事業費 300億円 162億円 30億円 108億円
進捗率 54.0% 64.0% 100%

3−5 環境配慮への取り組み

 水路改築にあたり、希少植物の生息地付近については法面の植生回復が可能な石積水路としたり、水路に近接する湿地等を保全するなど周辺環境に配慮しながら事業を実施している。
 なお、水路周辺の宅地化が進行している地域では、市町と共同して開水路を暗渠化し、上部を親水公園として利活用したり、水音が著しい水路施設(ゲート等)については上屋を覆うなどの防音対策を講じている。また、工事においても、低騒音・低振動機械により施工するなど、住環境にも配慮しながら事業を実施している。

3−6 事業実施上の課題

 牧尾ダム貯水池内堆積土砂の土捨場(3地区)のうち1地区については、用地取得が未了である。しかし、地元王滝村の協力を得て、現在地権者との交渉を鋭意実施しており、平成15年12月からの捨土開始に向け、来年度早々に用地を取得する見込みである。
 なお、地権者からは、既に用地測量立ち入りの了解も得ている。

3−7 その他関連事項

 愛知県企業庁は、平成11年度に「愛知県水道用水供給事業再評価」を実施し、「現行の計画は妥当である。」との結論を出している。
 また、今年度農林水産省は、愛知用水二期事業に係るかんがい用水の供給の観点から、経済産業省は、工業用水の供給の観点から政策評価が実施される予定となっている。


4 コスト縮減、代替案立案等の可能性の検討

4−1 コスト縮減方策

 本事業における既設水路の改築では、現場で発生するコンクリート塊やアスファルト塊について再利用することにより、コスト縮減、産業廃棄物の発生防止を図っている。
 また、牧尾ダムにおいては、立木の伐採・伐根により発生した廃木を細断してチップにし、腐葉土の代用として植生客土等に用いることにより、コスト縮減を図っている。
 上記のほか、農業専用施設における縮減額を含め、平成11年度から平成13年度の間に事業全体で約22億円の事業費を縮減した。
 今後とも、引き続きコスト縮減に努めることとする。

4−2 代替案

 愛知用水二期事業は、関係水道事業体において必要不可欠な水源施設となっている愛知用水施設(牧尾ダム含む)の機能回復と安全強化、さらには都市用水(愛知県)の拡張を図る重要な事業である。
 特に、岐阜県東濃用水地域及び愛知県愛知用水地域は、大都市名古屋のベッドタウンとしての急激な都市化の進展もあって、需要増に対応するための水源については木曽川に依存せざるを得ない状況の中で、安定した水源を確保できる本事業は、岐阜県、愛知県営水 道にとって貴重な事業として位置付けられている。
 現在実施中の事業に代わる代替案として、牧尾ダム堆砂対策については、堆砂分に見合う開発水量分を他のダムに参画して確保しようとした場合、概算で約62億円となる。これは、牧尾ダム堆砂対策事業の水道負担額(約25億円)に対し約2.5倍となり、有効な代替案とはならない。(参考資料−3参照)
 また、水路等施設について、

(1) 水道専用で水路を新たに設置した場合 (概算 約1,776億円)
(2) 水路の併設と既設水路補修とした場合 (概算 約488億円)
を想定した場合、愛知用水二期事業費から牧尾ダム堆砂対策事業費を除いた水路等施設事業の水道負担額(約383億円)に対し、(1)で約4.6倍、(2)で約1.3倍となり、有効な代替案とはならない。(参考資料−3参照)


5 事業の投資効果分析

 事業の投資効果分析は、「水道事業の費用対効果分析マニュアル(案)〈改訂版〉(平成14年3月(社)日本水道協会)」等に基づき、計測期間を50年として行った。
 総費用は、水道用水として愛知用水二期事業に対して負担する建設事業費及び完成後に新たに要する維持管理費、新規水源施設となっている上流ダム(阿木川ダム・味噌川ダム)の建設負担額及び維持管理費、水道事業者が給水のために建設する施設費用及び維持管理費を以て算出した。
 総便益は以下のとおり算出し、便益の発生時期については、事業終了後である平成17年度からとした。

(1)ライフライン機能強化(耐震化)による効果
 水路改築により、水路の耐震性が強化される効果を、地震による断水被害額及び水路復旧費用の減少分から算出
(2)維持管理費低減効果
 水路改築により、将来増加する維持管理費が低減される効果を、改築を実施しない場合の維持管理費と改築を実施した場合の維持管理費の差から算出
(3)水道水源開発等施設整備による効果
 阿木川ダム・味噌川ダムにより新規水源が開発され、水路の拡張により新規通水が確保されることによる安定供給の効果を、新規水源開発を実施しない場合の減断水被害額から算出

 その結果、以下のとおり、十分な投資効果が見込まれる。(参考資料−4参照)

費用対効果総括

表


6 対応方針(案)

 愛知用水二期事業は、木曽川から取水した水を水道用水をはじめ、工業用水、農業用水として安定供給するもので、経年劣化した水路等施設の機能回復と安全性確保及び頻繁に発生する水不足に対応するための事業である。
1) 愛知県水道用水供給事業は、その水を尾張東部丘陵地帯から知多半島一帯を対象に行われており、地域の発展等に貢献している。また、同様に岐阜県東濃上水道用水供給事業は、中津川市、多治見市を始めとした5市1町を対象に行われており、地域発展等のために貢献している。
2) 平成10年度には、阿木川ダム及び味噌川ダムで確保された水量に基づく水利使用許可を取得した上で、愛知用水施設での暫定運用が可能となっており、既に効果の一部を発揮している状況である。
3) 牧尾ダムは、阿木川ダム・味噌川ダムと同様、愛知用水の重要な水源であり、水資源の有効利用を図るため、牧尾ダム堆砂対策を推進し、早期に本来の機能回復を図る必要がある。
4) 現在の水需要実績に基づいた費用便益分析において、8.97の結果を得ている。
5) 今後、本地域は、2005年の中部国際空港の開港、国際博覧会の開催及び第二東名高速道路の開通が控えていることもあり、人口増加等に伴う水道需要の増大が見込まれ、将来にわたり大きな事業効果が期待できる。

 したがって、現在の計画で引き続き事業を実施することが適切である。


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