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2年間の研修期間における労働契約の期間について


 労働基準法第14条(別添参照)により、労働契約については、長期労働契約による労働者に対する人身拘束の弊害を排除するため、期間の定めのないものを除き、契約期間の上限は原則1年とされている。
 このため、2年間の臨床研修における労働契約の期間の取り扱いについては、例えば、契約期間を1年間とし、1年の期間満了時に労働者が労働契約の解約の意思表示をしないときは、1度に限り、同一内容の労働契約を自動的に更新する旨の自動更新契約とするなど労働基準法第14条に違反しないよう留意する必要がある。


<参考>

労働基準法(抄)

(契約期間)

第十四条  労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、一年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、三年)を超える期間について締結してはならない。

一  新商品、新役務若しくは新技術の開発又は科学に関する研究に必要な専門的な知識、技術又は経験(以下この条において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を有する労働者が不足している事業場において、当該高度の専門的知識等を必要とする業務に新たに就く者に限る。)との間に締結される労働契約

二  事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であつて一定の期間内に完了することが予定されているものに必要な専門的知識等であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を有する労働者が不足している事業場において、当該高度の専門的知識等を必要とする業務に新たに就く者に限る。)との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)

三  満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前二号に掲げる労働契約を除く。)


臨床研修の労働的側面と教育的側面について


 使用者の実施する労働者に対する教育については、出席の強制がなく、自由参加のものであれば、当該教育に要する時間は労働時間に当たらないと解釈されているところである(参考1)。
 このため、指導医の行う手術の見学や文献の勉強等の教育を時間外に実施することについて、出席が強制ではなく、自由参加のものであれば、時間外労働にならないものと考えられるが、臨床研修病院や指導医により出席が強制される教育については、労働時間に該当するものと考えられる。
 なお、研修医については、裁判例において、「研修目的からくる自発的な発意の許容される部分を有し、その意味において特殊な地位を有することは否定できないが、全体としてみた場合、他人の指揮命令下に医療に関する各種業務に従事しているということができる」ので、「『労働者』に該当する」と判示されている。また、その控訴審においても、「控訴人病院で研修を受ける臨床研修医と控訴人の関係は、教育者と被教育者の関係であって、研修医は労働基準法9条の『労働者』に該当しない」との病院側の主張が退けられている(参考2)。

<参考1>

○ 就業時間外の教育訓練(昭和26年1月20日付け基収第2875号、平成11年3月31日基発第168号)(抄)
 労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない。

<参考2>

○ 平成13年8月28日大阪地裁判決(抄)

 研修医は、研修目的からくる自発的な発意の許容される部分を有し、その意味において特殊な地位を有することは否定できないが、全体としてみた場合、他人の指揮命令下に医療に関する各種業務に従事しているということができるので、○○は「労働者」に該当すると認められる。

○ 平成14年5月9日大阪高裁判決(抄)

 控訴人は、控訴人病院で研修を受ける臨床研修医と控訴人の関係は、教育者と被教育者の関係であって、研修医は労働基準法9条の「労働者」に該当しないと主張する。 労働基準法9条は、労働者を「職業の種類を問わず、事業又は事務所…(中略)…に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しており、○○が労働基準法上の労働者に該当するかどうかは、専ら上記労働基準法の規定の解釈にかかる問題である。そして、同規定の解釈上、○○を労働基準法上の労働者と見るべきことは、引用にかかる原判決が述べるとおりである。



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