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資料4

1.水道の現状と課題

(1)水道の現状

 (1)水道事業の性格と国の業務
  ○ 近代の水道は、明治初期のコレラの全国的な蔓延等を背景に、衛生上安全な水の供給を第一の目的として、感染症の進入経路である港湾都市から整備が始まり、その後、大都市を中心に整備が進み、戦後急速に普及。

  ○ 水道事業は、水道法に基づき、市町村公営を原則としており、我が国ではほとんど民営の水道はない。また、地方公共団体の経営する水道事業は、地方公営企業法のの適用を受ける公営企業であり、料金等の収入による経営が原則。

  ○ 水道分野での国の業務は、施設整備に対する財政的な支援水道事業に対する事業認可等の規制、水質基準等を遵守するための衛生規制をはじめ、水道水源の保全、クリプトスポリジウム等の病原性微生物や未規制の有害化学物質までを含めた水道水質の管理が柱となる。

  ○ 施設整備については、水道事業は受益者負担を原則としているため、一般に国庫補助が行われているわけではなく、高料金化の防止と、水源開発等の国家的見地の施設整備という二つの目的を併せて配慮した、政策的な観点から、事業の一部に対して国庫補助を実施。

 (2)水道の普及
  ・我が国の水道は、明治20年、横浜市に近代水道が布設されて以来、110年を経過し、昭和30年代〜40年代の急速な整備を経て、大部分の国民が利用できるまでに普及(平成12年度末普及率96.6%)。
  ・今や生活基盤、都市基盤として欠かせない施設となっている反面、震災や渇水に対する脆弱さ、施設の老朽化、良好な水源の確保難等の問題に直面。

水道普及率の推移

  昭和35404550601112
給水人口(万人)4,9916,8248,3759,84011,28112,21812,690
普及率 ( % )53.469.480.887.693.396.496.6

 (3)水道の種類
  ・一般の需用者に対して水道水を供給する「水道事業」と、その水道事業に対して水道用水を供給する「水道用水供給事業」とがあり、前者は、給水人口規模によって「上水道」と「簡易水道」とに分類。
  ・その他、自家用の水道等の施設である「専用水道」と、水道事業から給水をうけているビル等の貯水槽から先の施設である「簡易専用水道」とがある。
  ・「水道事業」は市町村等の公営によるものがほとんどであり、「水道用水供給事業」は府県や一部事務組合の経営による。
  ・従来、水道普及を優先してきた結果、約9千件の簡易水道をはじめとして、規模の小さな水道事業が数多く存在していることが特徴。

水道の種類(平成12年度末現在)

種別 内容 事業数
箇所数
給水人口
(普及率)
水道事業 上水道事業 給水人口5,001人以上の水道事業 1,958 1億1,553万人
(91.0%)
簡易水道事業 給水人口101〜5,000人の水道事業 8,979 644万人
(5.1%)
1億2,197万人
(96.1%)
小計   10,937 1億2,197万人
(96.1%)
水道用水供給事業 水道事業に対し水道用水を供給する事業 111
専用水道 寄宿舎、社宅等の自家用水道等で101人以上の居住者に給水するもの 3,754 59万人
(0.5%)
貯水槽水道 簡易専用水道 水道事業から水の供給を受ける貯水槽容量が10m3超のビル等の給水設備 (178,930)
※計に含まず
(平成10年度)
小規模貯水槽水道 同上で10m3以下の設備 (706,100)
※計に含まず
(平成10年度
  14,802 1億2,256万人
(96.6%)
※貯水槽水道については平成10年度の集計値である。

 (4)水道法に基づく規制
  ・水道事業及び水道用水供給事業については、給水規模の大きいもの(平成14年4月現在で494の事業)は、厚生労働大臣が事業認可等の監督を行い、規模の小さなものは、自治事務として都道府県知事が同様の監督を行う。
  ・給水される水道水の満たすべき基準として水質基準が、また、水道施設の満足すべき基準として、施設基準が定められており、これを担保するため、水道事業者等に対する改善指示、給水停止命令、立入検査、報告徴収等の規定がある。
  ・規模の小さい水道事業と同様に、専用水道及び簡易専用水道に対する規制は、自治事務として、都道府県が実施。
  ・地方分権のための水道法改正により、平成12年度より従来の機関委任事務はすべて廃止され、国と都道府県が事業の規模に応じて、役割を分担して監督を行う体制に移行。

(2)水道の課題
  ・水道は、ほとんどの国民が利用できるまでに普及しているが(平成12年度末普及率96.6%)、地震や渇水、水源の水質汚濁等に対して、必ずしも十分対応できる水準にはない。
 また、以下のような様々な課題に対処することが求められているが、施設の老朽化が進む中、安全な水道水の供給を継続する上で、多くの水道事業が技術上、財政上の困難に直面している。
  ・本格的な維持管理の時代を迎えた水道施設について、計画的な更新を進めると同時に、平成6年の全国的な大渇水や平成7年の阪神・淡路大震災による深刻な被害を教訓として、また、様々な水質問題に対応するため、水道施設の質的向上が必要。
  ・クリプトスポリジウム問題など、水道水に起因する新たな健康被害が生じており、また、内分泌かく乱化学物質など、水道として監視が必要な新たな物質が増加するなど、水道の水質管理について取り組みの強化が必要。
  ・水道事業は、全国で約1万1千あり、その大半が経営基盤の脆弱なものであるため、これらの課題に適切に対処することが困難となっており、施設管理の一体化、事業の広域化等により経営基盤の強化を図ることが急務。
  ・全国に約90万件あるビル等の建物内水道(貯水槽水道)には、管理の不十分なものが多く、利用者の不安感を払拭するため、管理の徹底が求められているところ。

2.改正水道法の概要

 水道法の一部を改正する法律は、平成13年7月4日に公布され、また、関連する政省令についても、平成13年12月19日、平成14年3月27日にそれぞれ公布され、これらは平成14年4月1日より施行された。

1 改正の背景及び趣旨
 ○水道事業の担い手である水道事業者は、大半が中小規模の事業者(市町村)であり、水質等の管理体制が極めて脆弱であることから
技術力の高い第三者(他の水道事業者等)に業務を委託して適正に管理を行うための規定の整備を行う。
水道事業を他の水道事業と統合する場合の認可を届出制に改める規制緩和を行う。
 ○水道に起因する感染症の集団発生等を踏まえ、水道の安全性の向上を図るため
学校やレジャー施設など、利用者は多いが居住者がいないために水道法の規制を受けていない水道を専用水道として規制の対象とする。
検査の受検率の低いビル等の貯水槽水道について、管理の徹底を図るためその管理責任を供給規程に位置付ける。

2 主な改正の内容
 (1)学校、レジャー施設等の利用者の多い水道に対する規制の適用<法第3条第6項>
 居住人口の有無にかかわらず、給水量が20m3/日を超える水道を専用水道と位置付け、水道法に基づく規制の対象とする。
 (2)水道事業者による第三者への業務委託の制度化<法第24条の3>
 浄水場の運転管理や水質管理等、高い技術力を要する業務を他の水道事業者又は当該業務を実施できる経理的・技術的基礎を有する者に委託できる。
 (3)水道事業の広域化による管理体制の強化<法第10条及び第11条>
 水道事業を統合する場合における水道事業の変更認可・廃止許可を届出制に改め、手続きを簡素化する。
 (4)ビル等の貯水槽水道における管理の充実<法第14条第2項>
 ビル、マンション等の貯水槽水道の管理について、その設置者の責任を水道事業者が定める供給規程上明確にし、その管理の徹底を図る。
 (5)利用者への情報提供の推進<法第24条の2>
 水質検査の結果等に関する情報の提供を水道事業者の責務と位置付ける。


水道法改正の方向性

【方向性】

◯水道事業者の選択肢の充実などによる管理体制の強化
◯安心で信頼できる水道への利用者の期待に応える施策の充実

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事業認可等の手続きの簡素化

(1)広域的事業経営の推進

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(2)水道事業の軽微な変更

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水道事業における第三者への業務委託

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利用者の多い未規制水道に対する規制の適用

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☆ 専用水道に対する規制の内容
 ・水質基準、施設基準の遵守
 ・給水開始前の届出及び検査
 ・水道技術管理者の設置(経験年数は水道事業の場合の原則1/2)
 ・定期及び臨時の水質検査
 ・職員の健康診断
 ・消毒等の衛生上の措置
 ・都道府県知事による監督
  -布設工事前の施設基準適合の確認
  -施設の改善指示、水道技術管理者の変更勧告、給水停止命令
  -報告徴収、立入検査


受水槽水道の管理の充実

図

※供給規程とは、水道事業者と水道の需要者との給水契約の内容を示すものであり、水道料金その他の供給条件を定めるものである。地方公共団体である水道事業者の場合、給水条例、水道条例等がこれにあたる。


情報提供の充実

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