02/07/19 第7回社会保障審議会年金部会議事録              第7回社会保障審議会年金部会                    議事録                平成14年7月19日 第7回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成14年7月19日(金) 10:00〜12:30 場所  :霞が関ビル 東海大学校友会館「阿蘇の間」 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、岡本委員      翁委員、近藤委員、杉山委員、堀 委員、向山委員、山口委員、山崎委員      若杉委員、渡辺委員 ○ 福井総務課長  定刻の若干前でございますけれども、各委員お揃いでございますので、ただいまよ り、第7回社会保障審議会年金部会を開催させていただきます。議事に入ります前に、 お手元の資料を確認させていただきます。  議事次第の配付資料のところをご覧をいただきたいと思います。資料1は、前回各委 員からお求めのありました資料でございます。資料2から資料12までは、恐縮ですがい ちいち読み上げは省かさせていただきます。これらは、前回ご説明をさせていただきま したテーマにつきまして、各委員から寄せられました意見でございます。  それから、委員の出欠状況でございますが、本日は大山委員、矢野委員につきまして はご都合によりご欠席と伺っております。また、若杉委員は、遅れてご出席とのご連絡 をいただいているところでございます。ご出席いただきました委員の皆様方が定足数三 分の一を超えておりますので、会議は成立いたしておりますことをご報告申し上げま す。  それでは、以後の進行につきまして、宮島部会長にお願いをいたします。 ○ 宮島部会長  おはようございます。それでは、これから年金部会を開催いたしますが、既にご通知 差し上げておりますように、前回、事務局から三つのテーマについての資料説明がござ いました。その際、委員の方々のから、主に資料に関する質疑をしていただきました が、その後、今回このテーマについて、それぞれ委員の方からできるだけペーパーを用 意していただきたい旨お願いしておきました。短期間でございましたけれども、今回ほ とんどの委員の方から、かなり長いペーパーも出てまいりました。大変ありがとうござ います。意図しておりました委員相互間といいますか、委員の方々のご議論は、私は今 日ペーパーを拝見いたしますと、実質的に7割方は果たされたものと考えております。  前回、事務局の説明に対しまして、委員の皆様方から補充資料の提出要求がございま した。委員提出のペーパーについては、後ほど皆様方から若干説明をいただいて、その 後で議論したいと思いますが、その前に、前回の部会の際に提出要求のありました補充 資料のうち、今日事務局で用意されたものが若干ございますので、これについてごく簡 単に説明していただければと思います。 ○ 榮畑年金課長  年金課長でございます。資料1「委員要求資料」と書かれておりますものをご覧に なっていただければと思います。これは前回(7月2日)の会議で、委員の皆様方から ご要望がございましたもののうち、現在までのところ整理できたものをとりあえず提出 させていただいたものでございます。簡潔にご説明させていただきます。  まず一枚おめくりいただきますと、「年金額の国際比較の試算」がございます。前回 の会議では、旧来の厚生白書ベースで年金額の国際比較を提出させていただいたところ でございます。今日もお配りしておりますが、参考資料2−2「給付と負担について」 の10ページで、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、日本それぞれについて、 年金制度の水準の比較をしておりました。前回もご説明させていただきましたが、「国 によって必要な加入年数等が異なることから、これを直ちに水準の比較と考えることは 困難ではないか。なお、こちらでも考えさせていただきたい。」というお話をさせてい ただきました。したがいまして、もう一回検討させていただき、一定の仮定を置きまし て、厚生労働省年金局で試算してみたのが資料1「委員要求資料」の1ページ以降でご ざいます。  1ページをご覧になっていただきますと、今申しましたアメリカ以下の国につきまし て、各国における平均的な賃金を有する労働者が公的年金制度に40年加入したとする場 合の各国年金制度上の年金月額が平均的な賃金に対してどのようなパーセンテージに なっているか。すなわち各国の所得代替率を厚生労働省年金局において試算したもので ございます。  その下に書かれてございますが、いくつかのパターン、男性、女性の単身、ご夫婦で 夫片稼ぎ世帯(妻は40年間専業主婦)、夫婦共稼ぎ世帯(先ほど言いました男、女のそ れぞれがご夫婦になられたというケース)の四つのパターンにつき試算をさせていただ きました。 また、いろんな試算の前提仮定は、1ページ以降に書いてございますか ら、後でご参考にしていただければと思います。  結論は4ページでございます。今申しましたように、男・女の単身と夫片稼ぎ、夫婦 共稼ぎ、四つのパターンで整理しております。例えば男性単身のところをご覧になって いただきますと、中央にアメリカ、ドイツ、スウェーデン、イギリスの「全産業男子平 均賃金月額」を書いてございます。それから、(注2)をご覧になっていただきます と、(その1)、(その2)と、日本は賃金を書き分けてございますが、(その1)は 一般労働者だけではなく、短時間労働者を含めたやや低い賃金の場合。(その2)は一 般労働者のみのやや高い賃金の場合をそれぞれの統計調査からとってまいりまして、そ れを両書きしております。  そのような賃金をお持ちの方の40年加入の年金額をあわせて書かせていただきまし て、賃金に対する年金額の割合、すなわち所得代替率を一番端に書いております。これ をご覧になっていただきますと、アメリカで43%ぐらい。その他、43%、38%と続い て、日本の(その1)が37.5%、(その2)が35.7%。下の(注3)で書いてございま すが、(その1)、(その2)の下の括弧書きは、月給ベースで計算した所得代替率で ございます。  この中でいくつか特徴を申し上げますと、スウェーデン、ドイツは、男・女の単身で も、夫の片稼ぎや夫婦共稼ぎでも、所得代替率は変わりません。すなわち完全に所得比 例しておりますから、給料が高くても低くても所得代替率は43%とか38%で不変です。  アメリカ、イギリス、日本は、二つ特徴がございます。一つは、公的年金制度の中で 給付と負担に関しての所得再分配をしておりますから、給料が低い人ほど所得代替率が 高くなっております。例えば、アメリカの場合、男性単身の所得代替率は43.3%です が、隣にあります女性単身のように低い賃金の方の場合は47.1%になります。このよう に賃金が低くなると所得代替率が上がるといった、所得再分配の効果が出ているという ことでございます。  それから、日本でいう第3号被保険者に相当するような配偶者年金という仕組みをア メリカとイギリスは持っております。したがいまして、専業主婦がおられる場合は所得 代替率が上がるという特徴がございます。例えばアメリカで片稼ぎ世帯の場合は、男性 単身の場合の所得代替率が43%で、夫片稼ぎの場合は65%となっているように、配偶者 年金分がつくことにより所得代替率が上がるといった構造的な特徴をアメリカ、イギリ ス、日本は持っているということが特徴かと思っています。  ただ、この試算自体がかなり一定の仮定を置いた試算ですから、この仮定自体につい て、これで良いのかどうかということを含めまして、なお検討させていただければと 思っております。  次に5ページは「保険料及び年金給付の対象となる所得月額の上限及び下限の各国比 較(被用者)」でございます。サラリーマンの保険料、年金給付について、上限がある のか、下限はどうなのか、という点についての各国比較をつけさせていただいておりま すが、説明は省かせていただきます。  6ページは「スウェーデンの被保険者個人に対する年金予想受取額の通知の概要」で す。1999年改革で、こういった被保険者個人への通知が新たに制度化されたところでご ざいまして、それの概要を書かせていただいております。  7ページは「高齢単身世帯等の収入と支出に関する資料」ということで、前回のこの 会議で、高齢者ご夫婦世帯の収入と支出の資料はいくつか出させていただきましたが、 ご夫婦ではなく高齢者の単身世帯の収入・支出はどうかといったお話がございましたの で、7ページ、8ページに資料をつけさせていただきました。8ページは高齢者の単身 女性の収入と支出を書かせていただいております。特に収入、支出のグラフの間に厚生 年金の老齢年金なり遺族年金なりの水準を参考までに書かせていただいておりますの で、あわせてご参考にしていただければと思います。  それとも絡みますが、9ページは「高齢単独世帯における収入の状況(有業を含 む)」、10ページは、収入の分布がどうなっているかを整理させていただいておりま す。  11ページは、前回、提出させていただいた高齢者夫婦の収入と支出の現状の資料でご ざいます。下の高齢者夫婦世帯の家計のグラフの右端に「非消費支出」がございます が、この内訳がどうなっているのかというお尋ねがございましたので、吹き出しのよう な形で、直接税、社会保険料等々の内訳を書かせていただいております。  そこの議論とも絡みますが、前回の会議で、所得代替率を計算する時に給料は社会保 険料や税金を引いた額を使っているので、高齢者の公的年金受給額についても同様に社 会保険料や税金を引いた額を使ったらどうかというお尋ねもございました。12ページの 資料は、<前提>の欄に書いておりますが、このようなご夫婦が年金を受けておられる ときに、社会保険料と税がどうかかるかをまとめたものです。一番下の箱の中に書いて おりますが、賃金と年金のどちらも社会保険料と税を引いた可処分所得ベースにして対 比させていただいたパーセンテージは、そこに書いておりますように約57.1%となると いう計算例でございます。  13ページは、もう一つ違うやり方で試算しております。11ページで見ていただいたよ うな現実の高齢者世帯の実支出の中から非消費支出の割合を出しまして、それを、先ほ ど申し上げたご夫婦の年金受給額から引いて所得代替率を計算しております。上から五 つ目の括りですが、所得代替率は53.1%ということになります。まとめますと、このよ うな二つのやり方でやってみて、前者の方法で57.1%、後者の方法で53.1%。これが年 金や賃金から税と社会保険料を引いた後のベースで対比した所得代替率でございます。  14ページから17ページまでが「積立金規模の将来予測」ということで、厚生年金、国 民年金それぞれについて国庫負担割合が1/3の場合と1/2の場合をつけさせていただいて おります。  それから、19、20ページは、予算額を計上している年度がありますが、19ページが厚 生年金の過去5年間の歳入・歳出、20ページが国民年金の過去5年間の歳入・歳出とい うように、厚生年金と国民年金の各勘定の状況をつけさせていただいております。  21ページ以降35ページまでは、厚くなりますが、「わが国の企業年金等の現状」とい うことで、企業年金、個人年金についての概要をつけさせていただいてございます。中 身の説明は、時間の関係上省略させていただきます。  とりあえず以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。前回の会議で追加資料なり補助資料の要求がございました ので、それをまとめていただきました。今見てすぐということは難しいかもしれません が、ただいまの資料説明なり、中身についてご質問がありましたら、若干の時間を設け たいと思いますが、いかがでございましょうか。どうぞ、大澤委員。 ○ 大澤委員  前回、女性高齢単身世帯のデータについてお願いいたしまして、今回用意していただ き大変ありがとうございます。ただ、三種類くらいのデータが出ておりまして、まず男 女別でない65歳以上の単身無職世帯が7ページに、60歳以上女性単身無職世帯が8ペー ジにありまして、10ページには65歳以上の単独で有業も含む世帯の収入分布がありま す。ですから3系列のデータを出していただいているのですけれども、データ間に乖離 があるのかなと思われます。つまり、7ページの月額の「実収入計」というのが、男女 込みで13万4,000 円なのですけれども、一方で、女性だけで見ると、実収入が15万と なっています。後者は60歳以上の統計で5歳のギャップがあるのでこうなるのかとも思 うのですが、男女込みを女性だけにして、平均が上がるというのはよくわからない。  また、とりわけ、この8ページのデータと10ページのデータの間の乖離は大きいよう な気がします。つまり女性では、10ページのデータでは年収100万円台前半にあたる月8 万円〜12万円台を中心に収入が分布していると示されているのが、8ページでは平均収 入が月15万円となっている。これは主としてデータの差によるのだと思いますけれど も、どちらのデータで高齢単身女性の生活ぶりをイメージするかによってかなり違って くるのかなという感じを受けました。これは質問というよりコメントでございます。私 も勉強させていただきますけれども、引き続き高齢女性の単身世帯の生活状況について は調べていくことが必要なのかと思います。 ○ 神代部会長代理  4ページですが、日本のデータで、(注2)に毎勤(毎月勤労統計)を使っていると 書いてありますが、これは30人以上ですか、5人以上ですか。 ○ 榮畑年金課長  5人以上です。 ○ 近藤委員  19ページの厚年の特別会計ですが、14年度予算の時に、農林共済から来る金額は概算 でいくらぐらいでしたか。 ○ 榮畑年金課長  1兆6,000億でございます。 ○ 宮島部会長  他にございますでしょうか。  こういう資料が出てくるたびに、書いたものを見ればいろいろお聞きしたい点なども 出てくるとは思いますが、一応この資料に関する質疑はこれで終わりにさせていただき まして、本日の主たる議題であります「年金の体系」、「負担と給付の関係」、「少子 化対策等」に関する委員のご意見を伺い、それぞれ少しご議論をしていただきたいとい うことであります。  お手元にございますように、ほとんどの委員から資料をお出しいただきまして、お一 人5分ほどご説明いただいても1時間をゆうに超すのではないかと思っております。ま た、説明は5分を目途にお願いしたいとは思いますけれども、我々はペーパーを読みな がらお聞きすることになりますので、その中で特に重点的にお話ししたい点にご配慮い ただいてご説明いただければありがたいと思っております。  なお、今日の議事進行をおよそ申し上げますと、一通り皆様方からこの資料に基づき ましてご説明いただいた後、若干の休憩時間を設けます。その際に、委員の方々におか れましては、必要があれば他の委員の方のご意見をご自分のと照らし合わせまして、そ の後の質疑の論点を整理していただくということをお願いしたいと思います。残りの時 間で、私の方で論点をいくつかグルーピングした上で、こういう点でご議論していただ きたいということを申し上げたいと思っております。  アイウエオ順というのは決まって渡辺委員が一番最後で井手委員が一番最初となり大 変申し訳なく、また、いつもそうだというのはどうかと思いますが、逆回りにするとま た面倒ですので、次回はこの逆回りにしたいと思いますが、今回はアイウエオ順という ことで、複数出された方もいらっしゃいますが、井手委員、大澤委員、岡本委員、翁委 員、神代委員、近藤委員、杉山委員、堀委員、向山委員、山崎委員、渡辺委員、そうい う順番で提出された資料のご説明をいただきたいと思います。一応5分ということを念 頭に置かれ、ご説明いただければありがたいと思います。早速、井手委員からよろしく お願いいたします。 ○ 井手委員  それでは、企業の中で勤務を継続してきた立場から、特に今回の論点の中で、「年金 制度と少子化というテーマ」がございましたので、年金の支え手としての女性の雇用者 と少子化対策の関連ということで少しコメントさせていただきたいと思います。最後の 方に、若干年金体系についての論点にも触れさせていただいております。図表と照らし 合わせながらご覧いただきたいと思うのですけれども、図表がコピーの拡大と縮小を繰 り返した結果、大変見づらいものになっておりまして、恐縮でございますが、原点はほ とんどが「女性と年金検討会」の中の報告書からとっておりますのと、最後の「女性の 生涯の可処分所得」というものは、男女共同参画会議の影響調査専門調査会の中間報告 からとった図表でございますので、見づらい点については、そちらの資料をご確認いた だければと思います。  まず、最初のところに書いてございます「働く女性は増えたが、年金の支え手は同様 には増えていない現状」というところでございます。これにつきましては、いくつかの データの中で、女性の雇用者が増えているとか、雇用者における女性の比率が約40%く らいにまでなったとか、平均勤続年数も伸びているということで、非常に女性の社会進 出というものが進展しているということが言われているところでございます。そのあた りは、図−1と図−2に書かれているところでございますけれども、さらに図−3の 「女性の年齢階級別雇用者比率の推移」という、よく出てまいりますM字型カーブとい うものでございますが、これにつきましても、平成元年と11年の女性の雇用者の対人口 に対する比率の比較をいたしますと、やはりM字型のカーブにはなっているものの、M 字の谷が浅くなっている。つまり、点線の部分が平成元年で、実線の部分が平成11年と いうことでございますから、M字が多少浅くなっているということで、日本特有のM字 型カーブについてもややなだらかに近づいているのではないかというようなことが言わ れているところだと思います。しかしながら、これが本当に企業の中で、就職して、結 婚、出産を経て、就業を継続している女性が増えているのかということになりますと、 これは私自身の周囲を見ましても、そういう人は増えつつはございますけれども、就業 を継続できていないケースも大変多いのでないかと思います。  下の図−4のグラフですが、「年齢階級別未婚率の推移」ということで、これは1990 年と2000年ですから、平成2年と平成12年の比較ということになりますので、若干上の グラフとタイミングはずれますけれども、20代後半、30代前半の女性の未婚率が上がっ ておりまして、M字型を押し上げている一つの原因は、この未婚率の上昇もあるのでは ないかという点を示しております。  それから、次のページの図−5、「末子の年齢階級別母の就業状態」というものの中 で、非農林業雇用者・週35時間以上勤務の、いわゆるフルタイムで雇用されている人に つきましては、3歳以下の末子を持つ方で、働いている人の割合は、平成2年と平成12 年と比べましても大して変わりない。むしろ若干減っているという形が出ておりまし て、企業に就業しながら子育てを両立するということは、10年前と比べて余り変わって いないのではないかという状況が感じられるところでございます。  もう一度、5ページの図−3のM字型のグラフに戻っていただきますと、前回、大澤 委員から、お供え餅から凸レンズ型へというお話がございましたけれども、平成元年と 平成11年のこの中での厚生年金の被保険者比率は、下の方の二本のグラフでございます けれども、これを見ますと、雇用者が増えた割には大して厚生年金の被保険者が増えて おりませんん。このことが、働く女性は増えているけれども年金の支え手である厚生年 金の被保険者が増えているわけではないということをあらわしているのではないかと思 います。  結果として、分母・分子に当たるものが、7ページの図−6、「雇用者に対する第2 被保険者の割合の推移」ですが、昭和61年度から平成11年度にかけて、むしろ第2号被 保険者の割合は低下していることがあらわれていると思います。  それでは、支え手を増やすということで、女性の雇用者が年金の支え手となるために はどうすれば良いかということでございますけれども、一つは企業内で就業を継続でき る環境を整えるということが非常に重要ではないかと思います。就業環境というものが どうなっているかということの前に、仕事の内容自体は、改正均等法とか改正労基法の もとで、男性と同等の仕事と収入を得ている女性は増えておりますけれども、そのこと が仕事の難易度や責任も高めておりまして、長時間労働とか休日出勤といったような、 家事や育児と両立することが困難な状況を同時に引き起こしているという実態もござい ます。自分一人だけでも精一杯で、この上、子どもを育てながら働くということは大変 きついであろうとか、職場で就業を継続している人たちが保育園の送り迎えなどに苦労 している実態を見て、私にはとてもできないとか考えて、仕事を断念して退職するとい うケースも身近に見ております。  そうした中で、今回、年金制度の中で、子育て期間中の保険料負担を減免するとか、 給付の上積みといった年金制度で少子化の対策をするという考え方が論点として挙がっ ておりましたけれども、私の実感としましては、そうしたことよりも子育てと就業が両 立し得る就業環境を整えることの方がより重要であると感じております。といいますの は、現在の所得を失うことなく子育てをすることが、現在の年金の支え手である女性の 被保険者を維持しながら、将来の支え手である子どもが生まれるような環境をつくるこ とに最も効果的につながると思うからでございます。  企業において努力しなければならないこともたくさんございます。短時間勤務制度と かフレックスタイムといったような時間上の配慮ですとか、情報・通信インフラの整備 で在宅勤務とかサテライトオフィスといったような環境がかなり整ってまいりましたけ れども、企業でそのような努力をすると同時に、保育サービスのようなものについても 質の高いもので、なおかつ多様なものが出てくる必要があろうかと思います。  ちょうど昨日の日経新聞の夕刊で、保育サービスの運営に企業の参入がなかなか進ま ないというような記事が出ておりましたけれども、M字型が他の先進国並みに平らに なった場合には待機児童が現在3万人と言われているようですが、それが数十万人規模 になるというような想定があるようでございます。働き続けられるためには、そうした 保育サービスの整備といったものが不可欠であろうと思っております。そうしたこと で、仕事を続けながら子育てを先輩の女性が生き生きと行っているのを見ることで、就 業しながら出産しようという意欲も沸くだろうと考えられます。  もう一点、「就業中断後、家計を支えうる仕事への再就職」というものでございます けれども、当然いろいろな工夫があったとしても、就業を中断せざるを得ないケースは 出てくると思います。そうしたときに、どうしても踏み込めないのは、最後の図−7に ございます「女性の生涯の可処分所得」を見た場合に、ここで一旦辞めてしまうと、そ れまで頑張ってきたのに時給いくらといったパートタイマーの職にしか就けないのでは ないか、という不安が出産をためらわせることが一番大きな原因であろうと思っており ます。  これにつきましては、希望的観測となってしまうのですけれども、年功賃金から業績 主義に行く過程で、中途採用で一定以上の収入を得られるような仕事への再就職が可能 になるのではないかと見ております。今朝の朝日新聞に、結婚や出産などで退職する社 員が希望すれば、職務能力の認定書を発行して再雇用されやすくする人事制度を発足さ せるというダイエーさんの記事が出ておりました。これまでは出産で退職した女性社員 がパートタイマーで戻るケースが多くて、一番下の等級からやり直す必要があったとい うことですが、こうしたことが一般的になってくれば、辞めてしまったらば、パートタ イマーでの就職しかないというようなことにはならないという意味で、就業中断せざる を得ない場合でも出産に対してのためらいがなくなるのではないかということでござい ます。  最後に、「多様なワークスタイルへの対応」ということですが、これについては、出 産・育児ということで女性だけが多様なワークスタイルを行うのではなくて、男性につ きましても、サラリーマングループや自営業者グループのどちらかに一生居続けるとい うような方はこれから減ってくるのではないかと思います。情報・通信インフラの話で も先ほど申し上げましたが、在宅勤務で裁量労働が進んできますと、何も企業に雇用さ れているという必要を感じずに、自分がいろいろな企業と契約をして個人事業主として 同じような仕事をする男性も今後増えてくるのではないか。そうなりますと、その方は 2号から1号、またその配偶者の方は3号から1号という形になるわけで、流動化が企 業間だけではなくて、サラリーマングループと自営業者グループとの間でもかなり頻繁 に出てくるのではないか。  そうしたときには、仕事の内容ではなくて、むしろ、立場によって自分が何号か決ま ることになってくるわけで、基礎年金の部分での負担と給付の問題で言いますと、その 負担が定率であったり定額であったり、あるいは負担がないというような状態が仕事の 実態とは関わりなく起きてくるということに関して納得が得られないのでないか。その 過程で空洞化も一層進む可能性もあるとしますと、基礎年金の財源も今のままの形でい くのは制度としては非常に難しいのではないかということで、税方式への転換というも のを開始するということも、確実な基礎年金の財源という意味では有効であるのではな いかと考えております。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、次、大澤委員、二本ございますがまとめてお願 いいたします。 ○ 大澤委員  二本出しましたが、5分でやります。  まず資料3−1ですけれども、1行目に「収入の4分の1が天引きされる」と書いて あるのは、本人負担分という意味で言えば8分の1ですので、ここは労使をあわせた保 険料率が25%近くになるという意味でございます。  見ていただきたいのはこの図ですが、今、井手さんがおっしゃったこととほとんど重 なります。2号も空洞化が顕わになっているということです。この図の縦軸は「女性出 現度」という指標なのですが、要するに相対的な女性比率のことです。いろいろなジャ ンルにおける女性の比率を雇用者の女性の比率で割る。直近では40%でございますか ら、社会保険制度の被保険者女性比率を40%で割ることになると、どこに女性が集中し ているのか、どこに女性の存在が濃いのかということがわかるわけですが、こんなふう に下がってきています。そこから、条件の良い社会保険制度では女性の陰が薄いという ようなことがわかります。いずれにしても、80年代の中頃からすべての社会保険制度で 「1」を切っているということは、それだけ女性の非正規化が進んでいるということ で、そういう中で従来のフルタイム継続勤務を前提にした社会保険制度は空洞化せざる を得ない。どこかで歯止めをかけないといけないということでございます。  二番目の「男性稼ぎ主」=「専業主婦」モデルの矛盾ですが、これが図に示すものと 連動しておりまして、第3号被保険者制度と所得税の配偶者控除制度が相まって、有配 偶の女性は年収100万円前後以下の短時間低賃金の就労に誘導されている。同時に、女性 全体の労働条件は下方に引き下げられているという影響が否定できないわけです。  2ページ目にまいりまして、こういう男性が稼ぎ主であって、女は専業主婦であると いうモデルの現行制度は、ライフスタイルが多様化しつつある中では種々の不合理を露 呈しているだけではなくて、ライフスタイルの選択に対して中立的でないという矛盾が 先鋭化しているということです。  「3」のところは、こういう年金が良いのではないかということで、簡単に言えばス ウェーデン型ということですが、ミニマム年金を導入するとすれば、前回、山崎委員の お話にもありましたように、夫婦について、いわゆる2分2乗というような年金分割を しないとおかしなことになる。  ここでゴジックで小さく書いたのは、事務局が用意してくださった資料から抜き出し たものですが、ドイツでは76年以来、離婚時に年金分割をしてきておりますが、2001年 の年金改革では離婚しない場合にも任意で年金を分割できるようにした。イギリスでも 99年に離婚時の年金分割が導入された。離婚の時だけ分割を認めるのは離婚を促進する きらいがありますから、ライフスタイルの選択に対して中立でないというわけで、ドイ ツの2001年改革は合理的であると思われます。  「4」のセクションは、他のいろいろなご提案に対するコメントになるのですけれど も、間接税を所得保障の財源とするのは余り合理的でもなく効率的でもないというのが 私の考え方です。負担の軽い部分に負担を求めるべきとすれば、日本の租税、社会保険 料の負担をGDPに対する比率で見て、個人所得税が主要先進国の中で最も軽くGDP の5%から6%、これはアメリカの半分の水準です。社会保険料は10%程度で中位で、 アメリカよりは高く、ヨーロッパのいくつかの国と並ぶ負担率。他方で、消費税はヨー ロッパ諸国よりも低いがアメリカ並みということですから、一番軽いところから取ると 言えば個人所得税ではないか。  しかも消費税負担は平均的には重くないが、逆進性を持っております。「消費性向」 は低所得層ほど高いですから、比較的低所得で子育てをしている世帯や今日の資料でも 出てまいりました高齢無職世帯の消費性向が100 %を超えております。生産年齢人口で も母子世帯の消費性向は100%を超えている。そういう世帯に対して消費税負担は不釣り 合いなまでに重いことを銘記したいと思います。  それから、3ページの真ん中辺です。年金制度の中でも育児支援をしたらどうかとい うご提案が聞かれるわけですが、むしろ保育サービスの拡充や女性の再就職保障といっ た施策を充実することが本筋ではないかという趣旨を書いております。これは、ドイツ の例を見ますと、いわゆるベビーヤーレ、子どもを一人産むと年金に何年分加算される かというので、ドイツでは世界でも最も手厚い措置をとっておりますが、他方で特に低 年齢児保育というところの共働き支援が手厚いとは言えない国である。ベビーヤーレ1 年間だけというので始まったのが85年だと思いますけれども、その後もドイツは世界で 最も出生率が低い国の一つであり続けていることを考えれば、ベビーヤーレ的な措置を 入れるということがどれだけ有効なのか。私の持論は、児童の生活保障のためには、直 接の現金給付である児童手当を拡充すべきである。  資料3−2のペーパーに移っていただきますと、日本の勤労者家計の特徴を国際比較 で見ますと、これは図1でございますけれども、世帯主勤め先収入の比率が高く、世帯 主配偶者の収入の比率が低い男性稼ぎ主タイプになっているということです。なおかつ 社会保障給付の比率が低いところに特徴がございます。要するに家計の世帯主の会社へ の依存度が高いということでございます。  「2」に「児童支援パッケージ(CBP)とは」何かという説明をさせていただきま した。現金給付、所得税制、tax expenditure 、サービスなども含めて児童支援パッ ケージと呼んで、これを国際比較しますと、図2のようになります。ケース1、ケース 2、ケース3というのは、これは所得が低い人、中位の人、高位の人というので比べて おりますが、どこで見ましても、日本は企業が支給する家族手当の扶養児童分を含めて も、ギリシャ、ポルトガル、スペインなどと並んで低いということを銘記すべきであ る。  ではCBPが厚い国は、どういう制度を持っているかというと、所得制限のない児童 手当制度を持っています。税制がCBPに占める比重は当然のことながら比較的高所得 者で大きくなっている。  それから、図2では、辛うじて日本はプラスになっておりますが、住宅費を控除する とCBPはマイナスになってしまいます。低所得者にとっては住宅費が重く、比較的高 所得者にとっては住宅費と教育費が大きい。教育費と住宅費を入れますと、日本は子ど もを産んで育てている世帯が罰(パニッシュ)されている国であるということになりま す。  このCBPと出生率はどう関係しているかといいますと、出生率の変化を見ると、80 年代においてはCBPの低い国では出生率が低下した。図3のとおりで、右下がりの相 関関係になっております。  政策的インプリケーションとしましては、CBPを高めたければ、所得制限のない児 童手当が重要になる。日本では住宅政策、教育の支援というところが重要になってきま す。税制を通じるCBPというのは、低所得者にとっては有効性が小さいので、tax expenditureよりは財政支出なりサービス給付なりで行くべきであろう。  最後はおまけなのですが、男女賃金格差の小さい先進国と言われるような国では出生 率は高くなっている。こういうあたりにも総合的な少子化対策の眼目はあろうと思いま す。 以上でございます。 ○ 宮島部会長  駆け足になりましたけど、ありがとうございました。次に、岡本委員と矢野委員との 共同のペーパーでございますが、よろしくお願いいたします。 ○ 岡本委員  今日申し上げたいのは前半の2ページでございますので、そこは読ませていただきま して、後の3ページのところは言葉少ないコメントにさせてもらいたいと思います。公 的年金制度改革の在り方につきまして、総論的といいますか、問題提起としてご説明を したいと思います。  社会保障制度を持続可能なものとしていくための社会的前提条件は、経済社会の活力 の維持・向上であり、それは経済活動の担い手である現役世代の健全な勤労意欲と心豊 かな日々の生活の確保と、活発な企業活動に負うものである。  公的年金だけでなく、医療・介護等を含めた現在の社会保険料負担は、既に現役世 代・企業にとって相当重い負担になっている。安易な社会保険料の引上げを行うことな く、税負担を含めた国民負担率の上昇を今後政策的には極力抑制していく必要がある。  急速に進みつつある少子高齢化や、低成長への移行などを勘案すると、現行の公的年 金制度を前提にした場合、たとえ現役世代が納得のいく、合理的な範囲で負担を増加さ せたとしても、将来の給付水準の低下は避けられないと判断される。  財政再計算の都度、このような形で給付と負担の調整を繰り返すことは、公的年金制 度に対する現役世代の不信感と不安感を徒らに助長するだけでなく、現行制度において 既に顕在化している既裁定者と現役世代の間の不公平を一層拡大させることになると心 配されます。  このような認識の下、次回改正では従来型の制度の手直しにとどめるのではなく、制 度改革に対する打ち止め感が出るような、そういう改革をすべきだと思いますので、次 のような視点を持って制度を改革するのが良いのではないか。 (1)負担に軸足を置いた持続可能な制度の構築  次回の制度改正にあたっては、保険料の負担の側面に軸足を置くこととし、保険料負 担については将来にわたり固定することを制度の基本とすべきである。その際、事前に 定められた国民に分かりやすいルールによって給付水準ができれば自動的に調整される 仕組みを導入することを検討する必要がある。  保険料を将来にわたって固定するとともに、分かりやすいという視点から、モデルと なる給付水準のルールを国民に明示することにより、負担と給付の関係が現役世代の人 に分かりやすいような制度に変えていくべきである。 (2)財源の峻別による分かりやすい制度の確立  これは前回も申し上げましたが、国民皆年金と位置付けられているはずの基礎年金に ついて、現在、第1号被保険者の未納・未加入の問題により、結果として第2号被保険 者であるサラリーマン・企業への負担転嫁が行われており、基礎年金部分と報酬比例部 分が一括して保険料徴収されている第2号被保険者の制度に対する不信感が高まってい る。  そもそも基礎年金部分と報酬比例部分については、それぞれが持つ意義と役割が異な る上、所得捕捉の問題が解決されていない現状では、財源面で完全に峻別を行い、基礎 年金の財源は、全ての国民が公平・公正に負担していくべきである。  (3)公私の年金の役割分担の見直し  公的年金を取り巻く客観的状況を考えると、今後は、公的年金の給付水準が老後の家 計を十分に賄う水準にはなり得ないことが想定されるので、それ故にこそ、国民一人ひ とりが自立・自助の精神に立脚して、若年から公的年金を受給するまでの長期の現役時 代に、老後の準備をすることを日本社会の規範とし、そのために必要となる社会的諸制 度の整備・充実を進めるべきである。  とりわけ、企業年金や個人年金による自助努力を促進する必要があり、確定拠出年金 の利便性の向上など、税制を中心とする政策的インセンティブを積極的に付与していく べきである。 (4)聖域なき給付水準の適正化  次回とありますが、言葉がおかしいかもわかりません。  年金制度の破綻を防止し、年金制度を中長期的に持続可能な制度を構築するにはどう すればよいかというのが、今回の制度改正の本質の議論でございます。  その意味では、現役世代の負担の在り方、将来の給付の在り方を議論するだけでは議 論は完結しない。年金制度の維持・存続は、既裁定者を含む国民全層が協力し、努力し てはじめて解決できる国民共通の課題であると認識すべきではなかろうか。既裁定者も 現役世代の負担の痛みの一部を分かち合う気持ちを持ち、また世代間のアンバランスを 縮小させることにより、社会の全層が互いに公的年金制度を通じて理解し合える社会を 構築することが望まれます。  私はこの破綻に直面しつつある現在の公的年金をどう持続可能なものにするかという ことは、国民の全層、全世代が、連帯の精神でもってこれを解決するのだというような 社会にしていきたい、こんなふうに思うわけでございます。  3ページ以降については、従来から申し上げていることを書いておりまして、その反 論についても、今日も出ておりますが、基礎年金の見直しにつきましては、財源を間接 税方式ということも検討するに値するのではないかということを申し上げております。 これは大澤委員その他の方からのいろんな問題点の御指摘もございます。  それから、国庫負担1/2 の引上げも、できるだけそうして欲しいということは申し上 げておきたいと思いますが、安定した財源をどう確保するかという問題について、まだ まだ議論ができておりませんので、そういう問題は当然含んだ上での提案でございま す。  報酬比例部分の見直しにつきましては、積立方式等々のやり方も十分検討すべきでは なかろうか。これにつきましては、二重の負担の問題等々の指摘もございますので、そ うしたものも今後議論していけば良いと思います。  それから、「4.年金と税制」についても前回申し上げたことと変わっておりませ ん。拠出時・運用時非課税、受給時課税の原則を税の原則として徹底すべきであろうと 思います。そういう点からも、特別法人税等については問題がございますし、公的年金 等の控除についても議論はすべきだと思っております。  「5.年金と少子化」でございますが、私は少子化対策を年金問題の中に閉じ込めて 議論を小さくすることは反対でございまして、今日、大澤委員もご指摘ございましたけ れど、社会全体としてどうしていくのかという視点で議論しませんと、非常に矮小化さ れますので、そういう意味で、余り年金の財源とか年金制度との関連だけで問題を深堀 りすることでは良い解決策は出てこないのではないか、こんなふうに感じております。  「6.その他」のところはひとつお読みいただきたいと思います。以上でございま す。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。続きまして、翁委員からお願いいたします。 ○ 翁委員  「年金改革への意見」。まず私が重要と思っています「1.改革の視点」ということ で二点ほど申し上げます。  長期的に安定的な制度構築が非常に重要だと思っておりまして、従来型の給付建て・ 賦課方式の年金に、拠出建てや積立方式の要素を取り入れることによって、少子高齢化 と経済の長期的な低成長という年金制度に対するプレッシャーに耐えられるような制度 構築を考えるべきではないか。  ただし、その手法は二通りありまして、一つは、二階部分に確定拠出型または積立方 式の要素を入れるというやり方と、もう一つは、二階部分を薄くして、既存の確定拠出 年金を膨らませていくという手法が考えられると思います。ただ、どちらの手法にせ よ、既に確定拠出型年金がスタートしているので、これ以上制度を複雑にさせない工夫 が必要だと思っています。  もう一つの視点は「若年層や現役世代の年金不信を除去する方向で改革を考えるべ き」ではないかと思っております。  「2.具体的な方向性」につきましては、ここでも書きましたように、我が国でも、 スウェーデンの改革の次のような点を参考に制度改革を検討するべきではないかと思い ます。ただし、我が国で考えていくためには、いろいろ留意すべき点がありまして、こ れらについて議論を深めるべきではないかと思っております。  まず一点目が「拠出型(確定拠出)型賦課方式の導入」という点でございます。これ のメリットは、みなし運用利回りによって、個々人の拠出と給付を結びつけて、これを 開示していくことによって若年層の年金不信を解消するという点があると思います。同 時に給付建て(確定給付)から、制度を解き放つことによって、年金財政にかかってい るプレッシャーを緩和するというメリットがあると思います。ただ、留意点としては、 以下のような点が挙げられると思います。  これを厚生年金について導入した場合に、みなし運用利回りの水準をどの程度に設定 すべきかという点だと思います。スウェーデンの場合は、これを一人当たり名目賃金の 上昇率ということで考えていますが、これは高齢化を織り込まない形になっていまし て、その他の国、例えばイタリアなどでは、社会全体の総賃金の上昇ということで考え ているようで、これについては高齢化を織り込んだような形になっています。これから 急速に高齢化が進んでいく場合に、このみなし運用利回りの水準をどういうふうに設定 すべきかという点があるかと思います。  もう一つは、既に我が国では、保険料の段階的な引上げが決定していまして、これを 将来に向けてだんだん引上げを行っていて、引上げが完了した時点で中期的に拠出額を 一定にするというような考え方で対応するということがあり得るかと思います。それか ら、先ほど厚生労働省の方からご説明ありましたように、オレンジレターというもの で、個々人に拠出と負担の関係を毎年開示しているようですが、こういったデータを開 示していくコストの問題があるかと思います。  それから、スウェーデンの場合は、当初の年金額を計算する時に、65歳時点での平均 余命を前提に給付を決定しているようなのですが、それ以上、長生きしてしまうとその リスクに制度の設計によっては適用できない弱点が出てしまうことがあるかと思いま す。ただ、これは後に述べますような、自動安定化装置みたいなものを工夫すれば若干 防げるという可能性はあるかと思います。  二点目の特徴としては、「一部積立方式に移行」しているという点でございます。こ れは保険料の一定割合を原則として民間の年金制度に強制加入させるという手法で、一 部民営化するということが可能になるという点でございます。このメリットとしては、 賦課方式は高齢化に弱いと言われていますが、これを一部積立方式にし、しかも個人勘 定として自由に運用先を選択できるというような点であるかと思います。ただ、留意点 としては、積立方式の導入規模をどの程度にするのか。過去勤務債務について、給付 カットで対応可能な程度しか積立方式を導入できないというような可能性もあるかと思 います。それから、積立方式をどのぐらい入れるかによって、マクロのレベルでの貯蓄 率への影響などにも配慮する必要があるかと思います。  3番目が「自動安定化装置の導入」という点でございます。これは予想以上に少子高 齢化が進んだり、名目成長率が低下した場合には、スウェーデンでは給付が自動的に カットされる仕組みがビルトインささています。こういったものを入れることによっ て、長期的な安定を確保するということを狙っているわけでございます。これは制度設 計によっては、少子化の進行を遅らせるインセンティブとして作用する可能性があるか もしれないと思います。また、財政再計算のたびに頻繁に給付と拠出を見直し続けるこ とに起因する年金不信からは脱却できる可能性があるのではないかと思います。  ただ、留意点としては、どのような安定化装置をビルトインするのかという制度設計 の在り方が非常に重要になってくるかと思います。仮にそういったものをビルトインす るとしても、給付カットの限界をどの程度としておくのかということもあらかじめ決め ておく必要が出てくるかと思います。  4点目で参考になると思われますのは、「国庫負担の考え方」かと思います。政府が 保証した一定水準額に年金給付額が達しない場合には、低所得者に対して「最低保証」 としての年金を給付する財源として国庫負担を位置付けるという考え方でございます。 こうした対応によって老後保障に対するセーフティネットとして国庫負担の位置付けを 明確にしているという点があるかと思います。  ただ、ここで留意点として所得把握の問題があるかと思います。サラリーマンと自営 業者に関して、所得把握の正確度が相当違うという現状を前提にして、どういうふうに こういった考え方を入れていくかという点があるかと思います。  スウェーデンに関しては、他にもいろいろ参考する点があると思いますが、主に財政 方式という点に集中して意見を述べさせていただきました。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。席順は違いますが、次は神代委員にお願いします。 ○ 神代座長部会長代理  私のは一枚ですから、読んでいただければ書いてあることは自明だと思いますが、少 し考え方を説明させていただきたいと思います。確か二回前の意見の時にも申し上げま したが、年金制度の改正を考えていく場合の基本的な視点として、世代間の助け合いと いう旧来的な伝統的な原則と、世代間の公平という原則をどうやって調和させるのかと いうことが一番難しい問題だと思います。  私は、前回の年金改正の時に参議院で意見を述べた時にも、そこに書いてありますよ うに、「スウェーデンの改正に準じた」と書いてあります。今、翁さんのご意見もいろ いろありましたように、参考にできる点と、そのままでは無理な点といろいろあります し、どこまで、どの水準で、保険料水準を固定できるか、もう少し詰める必要があると 思いますから、細部はまだ留保しますが、それに準じた改正をした方が良いというの は、既に前から言っておりましたので、今回も、今申し上げたように、インタージェネ レーショナル・ソリダリティーだけでなしに、インタージェネレーショナル・エクイ ティーという二つのプリンシプルをどうやって調和するかという観点から、このス ウェーデン方式を是非参考にしたいと思います。  そのためには、現行の給付水準そのものの見直しということも含めて考えざるを得な いだろうと思いますし、既裁定年金についても、見直す必要を少なくとも相当踏み込ん で検討さぜるを得ないと思います。前回、資料が出ておりますように、最高裁の判決等 もありますので、憲法29条との関係で慎重にこの辺はもう少し詰める必要があると思い ますが、私は仮に既裁定年金が財産権の一部であると考えられるとしても、それを制限 する十分な公共的な必要性があると個人的には考えております。  もう一つ、最後のところで、公的年金のあるべき水準ということを考える場合に、生 活保護基準や所得代替率ということが、ベンチマークになることは当然なのですけれど も、先ほど事務局の説明してくださった資料の中でも、所得代替率という概念を、公的 な年金に限って、かつ平均水準だけで議論をしているわけですね。実は所得代替率を公 的年金のみに限って平均だけで見るという見方に非常に問題があると私は思います。も ともとリプレースメントレシオという考え方は、老後の様々な所得を全部合わせて、退 職時の様々な所得(特に給与所得)に対してどれくらいの収入があるかということを、 やめる前と実質的に同じ生活水準を確保するという意味で、必要な老後生活費を所得階 層別にきちんと計算をして、アメリカの大統領委員会等は出しております。  残念ながら、日本の政府はどこでもそういう計算は従来やっていません。すぐ、やれ といってもできないと思いますけれども、考え方としては、所得代替率はもともと所得 階層別に、あらゆる所得源泉を含めて考えているということをきちんと踏まえた上で、 現状で入手可能なデータは平均値の公的年金に関するものしかないという場合もありま すから、それはやむを得ないと思いますが、年金の給付水準を考える場合には、是非 オーソドックスな、たまたま私がよく見たのはアメリカの大統領委員会の数字ですけれ ども、そういうものが基本になっている考え方だということをもう一度よく考えてやっ た方が良いと思います。  これはOECDの「エージェング・アンド・インカム」というリポートが、今年の初 めに出ました。これは日本の人が中心になってまとめた報告ですから、お読みになって いる方も多いと思いますが、あのリポートも、基本的には私が申し上げたような包括的 な所得代替率の概念で分析をしております。特に、日本は、大企業は退職一時金や企業 年金が非常に恵まれています。そういうところと、何にもない中小企業と一緒にして平 均して議論するのは日本の年金制度の将来を考えるのに間違った結論を導きやすい。そ ういう意味でも、いろんな所得源泉を含めて、所得階層別にきちんとデータを把握して やるのが理想であります。国税庁のデータがどの程度利用できるのか知りませんが、国 税庁のデータを使えば、私はできないことはないと思います。  それだけにしておきます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。次は近藤委員、お願いいたします。 ○ 近藤委員  それでは、ペーパーを簡単にまとめてありますので、ちょっと補足しておきたいと思 います。スウェーデンの年金改革の自動的に給付水準を調整するという考え方は、我が 国でも導入した方が良いのではないかという考えを持っています。ただ、環境の変化が 大きい場合に、給付水準が限度を超えて下がってしまうということがあるので、下限を 一体どうするかというのが大きな議論になると思います。その限界となるのが、ILO の102号条約があるのですが、これは30年加入の熟練労働者が40%という形になって いるのですが、これを40年か45年かでもう一度洗い直した形で何か考えた方が良いのか なという気がします。  それから、保険料について、最終保険料に到達させるのに、景気がよくならないと保 険料上げられないとかいろいろな意見があるのです。この景気への配慮というのは非常 に重要だとは思うのですけれども、これから景気が良くなったからといって、従来どお りベースアップがたくさんあって、定昇がたくさんあってという時代ではなくなりま す。この10ページの資料を見ても、平均賃金が日本はべらぼうに高くなっている。こう いうような状態の中で、上がるわけではないわけです。我々が40歳の時には、年金は60 歳になったらいくらぐらいもらえるか、大体自分でわかったわけです。今はどんどん下 がってしまってわからない。それよりも安心感を与える意味で、上げるものは上げて、 そのかわり年金はいくらぐらいのものがきちんともらえるのだよということが明示され る方が生活設計がきちんとできるのではないか。是非凍結の問題や物価スライドの問 題、法に基づくものはきちんと実行していく。特に景気が良いとか、悪いとか判断する のは非常に難しいので、これは主観になってしまうので、年金制度というのは主観で やっていくと、財政的に必ず問題が出てきますので、是非その辺はすっきりした形にし ていただきたいと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、次に杉山委員からお願いいたします。 ○ 杉山委員  資料8が、私のペーパーになります。これを読み上げさせていただきます。  年金の給付と負担について  家庭を持つ若い世代は、妊娠、出産、育児、教育、新しい時代の担い手を育てるとい う大きな仕事をしながら、自ら働いて生活の糧を得るという仕事を同時に行い、かつそ の稼ぎの一部を年金という形で高齢者の生活費支援に充てています。前回の配付資料に もありましたが、高齢者夫婦の消費水準は、30代、40代の世帯を超える水準にありま す。一方、先ほどの大澤先生のご指摘にもありましたように、子育てへの社会的支援 は、高齢者生活支援に比べると、本当に微々たるものです。これでは、若い世代の不公 平感、負担感が膨らんでも無理はあません。  こうした負担感、不公平感が、今、少子化の進行とあいまって、「どうせ私たちが高 齢者になった時には、年金はもらえないのだ」「わが子に負担をかけるのはかわいそ う」といった意識につながり、年金制度そのものに対する不信、将来に対する不安につ ながっています。  そこで私は、現行の保険料率を引き上げていく制度ではなくて、将来にわたって保険 料水準を固定化する方式がわかりやすくてよいのではないかと考えます。具体的には、 スウェーデン方式を参考に所得比例とし、無・低年金に関しては税財源による保証年金 のようなものを充てていくというのが良いのではないかと考えます。  この方式の場合ですと、第1号の自営業者グループの取扱いはどうするのかといった 問題が浮上するのですが、第1号の中身も大分変化してきたことにも注目していただき たいと思います。これまでは自営業といいますと、農林水産業、卸売、小売といったイ メージが強かったのですが、近年20代、30代の自営業で増加傾向がみられるのは、「そ の他サービス業」です。若い世代は、自分たちの能力と知恵を使って新しい仕事を生み 出そうとしています。中でも、自宅などでパソコンを使って働くスモールオフィス、 ホームオフィスといわれる自営業の従事者は、今100 万人ぐらいいると言われているの ですが、5年後にはその4倍に膨らむという予想もされています。近年よく言われてい ることなのですが、「多様な働き方」ですとか「新しい働き方」を具体的に考えていく のであれば、アメリカやヨーロッパでも増加傾向とあると言われている「フリーエー ジェント的」な雇われない働き方を選ぶ人たちの保障も考えていく必要があるのではな いかと思います。やや楽観的になってしまうのですけれども、近年問題になっている若 い世代のフリーターに関しても、――これは「やる気」「根気」「能力」がないから就 職しないとかできないということではなくて、むしろ中高年のサラリーマンが、やめな いで職場に居座っているがために、若い人たちに働くチャンスが回ってきていないとい う部分もあるのではないかと思うのですけれども、――就職ではなくて、ある程度の仕 事を身につけて、これは教育などの社会的仕掛けが必要かとは思いますが、フリーエー ジェント的な雇われない働き方にステップアップしていく過程というふうに捉えて、 「新しい働き方」、「多様な働き方」につなげていくようにしていったら良いのではな いかと思います。  こうした新しい働き方をしている自営業者の問題は、従来の自営業にあるような農地 とか店舗といった財産が残りません。私も含めてなのですが、老後の生活の保障の面か らも、「自営業者はサラリーマンと違って一生働けるから、財産が残るから、基礎年金 だけでよい」といった考え方も見直していく必要があるのではないかと思います。  このような点から自営業者も所得に応じて保険料を負担する所得比例方式をとるのが 望ましいと考えます。ここから先は、なかなか難しいところなのですけれども、所得把 握がサラリーマンと違ってガラス張りになってないという部分もあります。事業主も自 分なので、両方支払うのは当然としても、第2号と全く同じというのは難しいかと思い ますが、今後はそういった方向で見ていく必要があるのではないかと思います。  「年金水準の実質的な低下について」なのですが、とにかく40代にしても、30代にし ても、20代にしても、生活はギリギリという状況で働き子どもを育てています。この点 からも、高齢者の増加に合わせて限りなく保険料を上げていくのではなくて、これ以上 はもう引き上げませんよという水準を決めてほしい。これは私の個人的な感覚で、20% が限界というふうにここに書きましたが、これはむしろ多くの若い世代の人たちにきち んと話を聞いて、納得のできる数字というのを出していく必要があるかと思います。将 来の給付が減るに当たっては、お金ではなくそれ以外の環境整備で十分補えるのではな いかと思います。段階的に引き上げる中で、そういった環境整備にも財源を充てる考え 方もあるかと思います。  例えばとして、「住宅」であれば「リバースモーゲージ」についての検討も必要だと 思いますし、また、ひとり暮らしにならないように、国や自治体が積極的に高齢者向け の快適な集合住宅を作り安価で提供するといったやり方もあるだろうし、また交通・通 信費も個人負担ではなくて環境整備によって節約するということもできるのではないか と思います。また、以前も出たかと思うのですが、60代の受け取る年金額と、70代、80 代、90代の受け取る年金額がずっと同じというのもどうなのだろうと思います。医療・ 介護・年金のトータルの組み合わせで、給付全体を見ていく必要も今後出てくるのでは ないかと思います。  あと若い世代に関して言えば、これ以上、不信感を増長させないためにも、「年金が 保障するのはここまでですよ」といった、本日の配付資料にもありましたスウェーデン のオレンジレターなども良いなと思って見ていたのですが、情報提供を明確にして足り ない部分は自助努力で、企業年金や個人年金など選択肢を用意して本人が運用できるよ うにすれば、自分たちで何とかできるのではないかと思っております。  最後に、「年金を使った次世代育成・自立支援について」なのですが、今のところ非 課税になっている年金に課税し、その増収分を子育て支援、次世代支援に充ててはどう でしょうか。次世代の担い手である子どもたちのために使うのであれば、「何に使われ るのかわからない」から課税されるのは困るといった不安も持たれることなく、比較的 理解が得やすいのではないかと思います。  その中身についてなんですけれども、「産めよ増やせよ」といった誤解を招きかけな い安易な現金支給や、子育てをしている専業主婦にだけインセンティブがつくような、 これは大澤先生が先ほどご指摘になられましたドイツのような子育ての時は年金が増え るようなものを想定しているのですが、時代に逆行した支援ではなくて、将来、年金の 支え手になる人材の育成といった視点から取り組んでいただきたいと考えております。  女性が専業主婦か、働いているのかということで区別するのではなく、子ども、子育 てそのものへの支援をまず念頭におくことが大事ではないかと思います。少し各論に 入ってしまうので詳しい説明は省くのですが、今、子育ての従事者というか関係者の間 で、「そもそも子育て支援とは何なのか」といった問題を巡って様々な議論が沸き起 こっております。「子どもの権利」といった視点からも、きっちりと21世紀の日本の子 ども観・子育て観のコンセンサスを得る期間が必要ではないかと私は思っています。 ちょっと遠回りになるのですが、ひとまず3年間とかの期限を決めまして、子育てその ものの支援の環境整備を考えていくことがまず大事ではないかと思っております。  その3年間の間に、これはひとまずの3年間なのですが、女性の雇用の在り方が整備 され、女性自身の貢献が実る社会制度が整うこと、親たちの多様な生き方に沿った子育 て支援の制度やメニューが準備できることを期待したいと思います。  子育てそのものの支援についての事例ということで、ゴシック体で小さな字で書かせ ていただきました。これは日本のファミリー・サポート・センターとは違ったもので、 スウェーデンにあるファミリー・サポート・センターです。こういった親が、親になる ための支援をするセンターは、いろいろなところに見られているのですけれども、この 事例の中は読んでいただくとしまして、その下なのですが、「親子・家庭支援のセン ター」は、スウェーデンだけではなく、カナダでは「ファミリーリソースセンター」と いう名前で、フランスでは「クレシュ・パランタル」、ニュージーランドでは「プレイ センター」といった形で見られています。これは働いている、働いていないに関わら ず、すべての親が利用できる施設であり、高齢者など様々な世代の人たちが集う地域の コミュニティの再生の場でもあります。地縁が薄くなり、家族関係が希薄になった現代 では、親が「親」になるのをサポートする。その過程を見守る専門性の高いスタッフと 施設が必要です。大きな箱モノではなく、地域のニーズに応じて、コンビニの数ほど、 こういったサポートセンターがまず整備されることが理想で、既にある施設についても こうした考え方で整備を見直したり、スタッフの教育もしくは資格化を再検討していく ことが、今の日本の子育ての中では必要なのではないかと考えます。  もう一つ、「次世代自立支援」の方なのですが、こちらは年金を使った奨学金制度が 有効ではないかと思います。成績に関係なく、フリースクールや専門学校など、今まで のいわゆる「学校」にとらわれない選択肢の広い奨学金制度が、若い人たちにとっても 年金の「ありがたみ」が増し、年金を身近に感じることにつながるかと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、こちらにまいりまして、堀委員お願いいたしま す。 ○ 堀委員  私は、「年金制度の体系」と「給付と負担」について述べます。  レジュメの第1の「見直しの基本的考え方」は後でお読みいただきたいと思います。  一番目のポイントの「年金制度の体系の見直し」ですが、これは「制度体系」と「給 付体系」に分けてあります。制度体系というのは、自営業者とサラリーマンとでは、給 付については一元化されているのですが、負担について一元化されてないので、それを どうするかということです。しかし、自営業者の所得把握が透明でない、そういう段階 ではこの両者を統合するのは非常に問題が多い。当面は現行の制度体系を維持したらど うか。  ただ、中長期的には、自営業者の所得把握が十分になれば、被用者の制度と自営業者 の制度を一元化する。その際の自営業者の保険料は、所得比例で、かつ労使合計分を負 担する形ではどうか。  二番目の「給付体系」ですが、これは定額の基礎年金と所得比例年金の二階建ての仕 組みの問題です。これも当面は現行の給付体系の骨格を維持せざるを得ないのではない か。というのは、特に男女間の賃金格差が大きいため、老後の基礎的生活をある程度保 障する定額の基礎年金がやはり必要ではないかと思う。また、夫に扶養される妻が依然 として多い状況のもとでは、妻の老後の基礎的生活をある程度保障する定額の基礎年金 が必要ではないか。レジュメの2ページですけれども、中長期には、所得比例の1階建 てへの移行するという案です。  男女間の就労機会が等しくなって女性の就労率が男性並みになり、男女間の賃金格差 が縮小するということであれば、所得比例年金だけの、一階建ての年金制度に移行した 方が、給付と負担の関係が明確になって国民の支持が得られやすい、そういう感じがい たします。  第二の大きなポイント、「給付と負担の見直し」については、まず給付と負担につい て述べ、最後に確定拠出年金、確定給付年金について述べたいと思います。  まず、「給付水準についての基本的考え方」についてです。公的年金の給付水準につ いては、最低生活保障という考え方と従前生活保障という考え方があるわけですが、少 なくとも被用者については、従前の生活がある程度維持できる水準とすることが望まし い。したがって、所得比例の年金が不可欠でないか。  給付水準の在り方ですが、水準について客観的・絶対的な基準があるわけではなく て、結局は負担と給付についての国民の合意による。給付なら給付、負担なら負担につ いて、別々に考えるのではなくて、両方合わせて考える必要がある。それから被用者年 金を中心に考えるべきではないか。  給付水準の在り方ですが、現在は若い世代の手取り年収に対するモデル年金(名目) の割合、すなわち代替率を、約6割としています。若い世代の賃金はボーナスを含んだ 年収を基準にしているのですが、若い世代は住宅ローンとか教育費なども負担しており ますが、それらは高齢世帯は負担していない。住宅ローンや教育費はボーナスから支出 をしていると考えると、月額の年金と月給の対比、しかも税・保険料を除いた手取り年 金と手取り所得の対比で考える必要があるのではないか。  それでは、現在の給付水準はどうかということですが、厚生年金の給付水準はやや過 大ではないかと思います。その理由としては、代替率がボーナスを含めた手取り年収対 比で6割となっていること、更に高齢無職世帯の消費支出がほとんどすべて賄える水準 であることの二つです。  それでは、給付水準についてどうするかということですが、前回の改正で厚生年金の 最終的な保険料率はボーナス込みで20%ということになった。新人口推計ではさらに少 子高齢化が進むということで、保険料率は20%には収まらなくなった。そうすると保険 料負担を適正なものにするために、給付水準を適正にする必要があるのではないか。そ の適正化のための方策はいくつかある。  一つは、年金に課税をする。  二つ目としては、現在40年加入サラリーマン夫婦をモデルとし、その年金月額は月23 万8,000円になっていますが、それを20歳から65歳までの45年加入をモデルとし、その額 を23万8,000円とするという案です。  三つ目ですが、現在のモデル年金は、片働き世帯、すなわち妻が40年専業主婦である 世帯を基準にしている。しかし、実際はほとんどの妻は厚生年金の加入期間があるの で、妻の厚生年金加入期間を考慮したモデルにする必要がある。例えば妻の厚生年金加 入期間が平均して8年加入あるとすれば、妻が8年加入した夫婦の年金額を現在の23万 8,000円とする。そういうことが考えられる。  四つ目の案として、現在手取り年収の対比の代替率が6割ということですが、これを 先ほど言いましたように、手取り賃金月額対比で6割にするよう給付乗率・定額単価を 引き下げる。こういった案が考えられる。  ただ、前回改正で、給付水準を引き下げたばかりでありますし、人口の推計、経済状 況についてもう少し様子を見る必要があることから、適正化はもう少し長期的視点で考 える必要があるのかもしれない。  「給付にかかわるその他の論点」ということで、現在、物価が下落してもスライドを していないわけですが、就労世代とのバランスとか、そういったことからきちんと原則 に則って物価スライドを実施すべきではないか。  ただ、物価スライドについての現在の考え方は、例えば物価が0.1%上がった、下がっ たということでもスライドすることになっている。しかし、これでは例えば数百円年金 額を引き上げるために、全国の年金受給者の年金額を変えるということになり、非常に 非効率な面がある。例えば1%を超えて物価が上昇・下落した場合にスライドを実施す るというように変えたらどうか。  当然のことながら、既裁定年金も給付水準を適正化する際には適正化する。ただし、 従前額は保証して、従前額のスライドは本来額が追いつくまで停止をする。  年金ポイント制についてですが、国民に年金の仕組み、額が明らかになるので、導入 すべきだと思う。  「2 負担」の基本的考え方ですが、給付についてと同様、絶対的な基準があるわけ ではなく、結局は国民の負担と給付についての合意による。ただし、負担については、 年金保険料だけを考慮するのではなくて、他の社会保険料や税負担の全体を考慮して考 えていく必要がある。  年金の保険料についてですが、年金への国庫負担を増やすと、見かけ上年金保険料が 減って負担が低くなるという誤解を与えるおそれがあります。税負担であっても国民の 負担に変わりはないので、国庫負担を保険料に換算した実質の年金保険料率を国民に明 らかにしていく必要があるのではないか。  現実の保険料をどうするかということですが、現在保険料引上げを凍結しているわけ です。年金制度というのは、本来、長期的・計画的に行うべきもので、短期的な経済政 策によって左右されるべきではないはずです。景気が悪いからといって、給付水準を上 げるとか保険料を引き下げる、そういうことはやるべきではない。現在凍結していると いうのは負担の先送り以外の何ものでもない。  今後の保険料引上げなのですが、高齢化がどんどん進んでいくわけですから、保険料 率は引き上げていかざるを得ない。一部の経済学者からは、例えばボーナスを含んだ厚 生年金の保険料率13.58%を、例えば一挙に18%に引き上げるというような提案がなされ ている。すなわち、平準保険料に引き上げるべきだとする意見もあるのですが、そうし た場合には、積立金の額が膨大になるとか、あるいは国民の消費支出を削減する、そう いった問題も生じます。したがって、保険料はやはり段階的に引き上げていくしか仕方 がないのではないかと思います。  将来も積立金を保有するかどうかという問題もありますが、超高齢化した時の保険料 のことを考えると、積立金もある程度保有するという考えでいくべきではないかと思い ます。  最後に4ページの「確定給付年金と確定拠出年金」についてです。今までにも、他の 委員から保険料固定という意見があったわけですが、私の考えは、私的年金については 確定拠出で給付が変動してもそれはやむを得ないと思いますが、老後の生活の安定を図 る公的年金の基本部分はやはり給付が確定していることが望ましいのではないかという ことです。ただし、確定拠出年金の給付が確定してないという欠点がある程度克服する ことができるのであれば、確定拠出年金の導入も可能かと思います。  そうした場合、どう給付を安定化させるかということですが、そこに(1)から(3)まで 案が書いてあります。  (1)ですけれども、確定拠出年金といっても、市場利子率、積立金の利子によって年金 額を決めるのではなくて、実質賃金の上昇によって年金額の実質価値を維持する。それ ならば、ある程度給付が安定する。これはまさにスウェーデンが16%分の保険料でやっ ていることです。  (2)は、厚生年金の大部分は確定給付年金として維持し、一部を確定拠出年金にするや り方です。これはドイツのやり方ですが、給付水準を引き下げて、その引下げ分を確定 拠出年金とする。現在、日本には確定拠出の企業年金(個人年金)がありますから、公 的年金の給付を引き下げた分を確定拠出の企業年金にできるよう、その所得控除の額を 引き上げる。そういう選択もあるのかと思います。  (3)ですけれども、これもスウェーデンでやっている方式で、寿命が延長した分につい ては自動的に給付水準を下げる、そういうことが考えられるのではないか。  ただ、確定拠出年金を導入することについて各国それぞれの狙いがあります。我が国 の確定拠出年金の狙いをどうするかということですが、そこに四つほど書いておりま す。  (1)は、保険料率を固定することによって将来の負担を明確化する。(2)は、負担と給 付の関連性を強化することによって世代間の公平を確保し、保険料納付意欲を喚起す る。(3)は、ドイツ型のように公的年金の給付水準を引き下げる代償措置として確定拠出 年金を導入する。(4)は、貯蓄投資の増加です。スウェーデン、ドイツ、アメリカでもこ の狙いがあると思うのですが、日本ではこの狙いは必ずしも必要ないと思います。  最後に、保険料を固定するという案が出ていたわけですが、それについてどう考える か。  (1)は、高齢化率が極端に上がっていく我が国においては、スウェーデンのように将来 にわたって18.5%で固定することは不可能です。固定するとしても、段階保険料の形で 固定せざるを得ない。  (2)は、段階保険料を固定すると、人口構成とか経済条件が変わると給付を変えていか ざるを得ない。しかし、給付が大幅に変わるのは公的年金としては基本的に望ましくな いということで、(3)の(a)と(b)に書いた措置を講ずる必要があるのではないか。  (a)は、上の「(2)確定拠出年金の導入条件」で書いたような形の確定拠出年金 にする。(b)は、給付を変えるわけですが、給付が極端に変わる場合には、保険料率 も変えるという留保をつけて固定する、そういったことが考えられるのではないか。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、お三人の方のジョイントでありますけど、代表 して、向山委員からご説明いただきたいと思います。 ○ 向山委員  それでは、大山、山口、向山を代表して、私、向山から、我々の三人の考え方につい て申し述べたいと思います。  今回、年金制度の体系と給付と負担の論点が整理されたわけですが、それを論じる前 に、公的年金の役割と財政方式について、第四回の年金部会で意見を出させていただい たのですが、その前提を二つ書かせていただきました。  一つは、公的年金というのは、高齢者家計の主たる柱としての役割を果たしており、 今後とも老後生活費の基本部分を保障する給付水準を確保することが必要であろうと考 えていまして、その基本部分はそこに記載のとおり、衣食住の最低生計費というもの と、それにまつわる基本的な部分でつつましく暮らせるだけの水準であるというのがこ の基本部分という考え方であります。  もう一点は、「国民皆年金」を旗印に導入しました「基礎年金制度」は、先ほども話 がありましたように、1号だけではなく、2号にも空洞化が起きています。さらには1 号被保険者の自主納付についての未納率が年々高まってきている。さらに保険料徴収コ ストも上昇してきている。こういったことが現在言われております。そういった中で、 国民皆年金を確立していくには、国民の公的年金制度に対する信頼回復が何よりも重要 であると考えます。「普遍主義」に基づく基礎年金制度を確立しようとするならば、現 行の自主納付制度では実現が難しく、税によることが本道ではないか。こういった前提 に立って、公的年金制度に対する体系について述べたいと思っています。  特に2号被保険者のグループでは、一・二階を通じた所得比例の定率負担でありまし て、給付は一階部分による定額給付と二階部分の報酬比例で所得再分配機能を持った構 造になっているわけでございます。特に現役時代の主たる収入源が賃金であるという被 用者グループにおきましては、退職すると主たる収入源を喪失することから、退職前の 所得水準が一定程度反映される現行の二階建て方式というものを今後とも維持すべきだ ろうと考えます。  ただ、現役時代の賃金や退職金、企業年金にも企業間で大きな格差がある現状におき ましては、そういった格差を高齢期まで持ち込まないようにするために、できるだけ格 差を縮小していくことが必要であろう。そのためにも所得再配分機能は現行以上に高め るべきであると考えております。  1号のグループにおきましては、その中でも働き方によって自営業者以外の人たちも おるわけでございますし、自営業者にも所得比例の年金は望ましいというふうにも考え ておりますけれども、最大のネックとなるのは、所得捕捉による保険料の算定が困難だ ということであります。  また、被用者グループと自営業者グループでは、定年の有無や稼得所得の実態を踏ま えれば、現行の体系とならざるを得ないではないかと考えます。  また、1号被保険者の中には、自営業者だけではなく、厚生年金任意加入の五人未満 の個人事業所に雇用されている雇用労働者も実際は4分の1いるというような実態調査 の結果となっておりまして、本来こういう人たちは、厚生年金を適用すべきだと思って いますので、そういった面を考えれば、事業規模に関わらず雇用労働者は厚生年金の強 制適用とすべきであると考えております。  給付と負担につきましては、先ほど言いましたように今後とも老後の生計費の基本部 分を保障するためには、基礎年金と厚生年金と合わせた給付水準というものがネット・ ネット代替率で55%を保障することで、国民にとってはそういったものが保障されれ ば、それが安心の給付につながると考えております。それを超える部分については、あ とは自己責任ということで、それぞれの家計が直接負担をするというふうに考えていま す。  そういった面で、公的年金に対する信頼を得る上での欠くことのできない条件という のは、今言ったように、現役労働者の賃金水準と年金受給者の年金水準とが適正なバラ ンスを維持することである。具体的には今言いましたように、在職時の勤労収入の一定 割合をネット・ネットの所得代替率55%を将来にわたって保障することが必要ではない か。そのためには、現在、既裁定者の年金額の賃金スライドが凍結をされておりますけ れども、それを復活させる必要があるというふうに考えています。  また、厚生年金に加入している女性は加入期間が短く、また賃金も低いということか ら、男性に比べれば半分程度の年金額であるというのが実態であります。今後増加が見 込まれるこういった女性単身者の老後生活の保障という観点からも、給付水準をある程 度考慮する必要があるのではないかと考えておりますし、また、今後給付水準に対して 議論する際には、名目ではなくて現在価格で行うべきであると考えております。  論点にも書いてありますように、我が国の年金水準が高いか低いかという論議をする のであれば、今日初めて所得代替率が出てきましたけれども、諸外国における負担の水 準や高齢期における消費支出、こういったものも総合的に併せて検討すべきであるとい うふうにも思っております。  論点の中に、「少子高齢化が急速に進展する中で、保険料負担の水準を段階的に引き 上げていくことが必要」とされておりますけれども、今後、保険料の上昇をできるだけ 抑制するために、四つの措置を講じる必要があると考えています。  一つは、基礎年金の国庫負担を早急に1/2 に引き上げて、近い将来、税方式にする。  二つ目につきましては、今、年金給付に必要な額以上に引き上げています「段階保険 料方式」を見直して、積立金を取り崩して保険料の引上げをできるだけ抑えていくとい うやり方。  三つ目には、在職老齢年金制度というものを廃止して、年金を含めた総所得に課税し て、その税収を年金給付に充てる。一種、アメリカでやっているような考え方。それに よって現役と受給者のバランスを図って、保険料の上昇を抑制する。  四つ目は、社会保険の適用拡大ということで、年金受給者に対する被保険者の割合を 高めていく。  こういった四つの方法で、できるだけ保険料の上昇を抑制していくという考え方に 立っております。  また、必要な保険料もありますので、そういった面では、これまでおよそ5年毎に保 険料率というのは引き上げられきました。こうした方法では、保険料の引上げの年には 手取り賃金が減るということも起こり得ます。また一方で給付面では、ここ3年間物価 スライドが凍結されておりますが、原則は毎年実施ということであるので、保険料の引 上げについても、必要に応じて小刻みに実施するように改めるべきではないかと考えて おります。  経済情勢の変化に対する考え方でありますけれども、94年に賃金スライドの方法を可 処分所得スライドに変更されましたが、現役賃金は手取りとしながら年金は総額となっ ております。先ほど堀先生からも話がありましたように、高齢者も健康保険料や介護保 険料を納めていることから、年金額も手取りで比較することが可処分所得スライドを真 に活かすことになると考えています。  手取り賃金と手取り年金の比率を一定にしますと、高齢者の比率が高まって現役世代 の負担が増えれば、年金水準がそれを差し引いた手取り賃金の伸びによって制約をされ ますので、まさにこれが「ビルトイン・スタビライザー」ということで、人口変動につ いての調整をされるということで、現役世代と高齢者とのバランスを図ることができる と思っております。  また、公的年金の将来は、経済成長というものに作用されることは事実でございます が、そういった部分につきましては、今後の保険料の負担を抑えることによって労働者 家計の消費活動を活発化することや、企業の投資行動を拡大すること、そういった支え になって、我が国の潜在的な経済成長が発揮できるのではないかと考えております。  最後に少子化対策と年金の関係でございますけれども、今後増加する、毎年今1,000名 ぐらい増えているということなのですが、「婚外子」の扱いをどうするのか。移民の問 題をどうするのかということも踏まえまして、さらには少子化対策として、雇用不安に よる子どもを産まないということも当然考えらることから、いろんな対策が少子化対策 には必要だということで、そういった部分を含めまして、この年金制度の中でやるので はなくて、国全体として取り組む課題であると考えております。  五番目は、そこに書いてあるとおりでございますので、割愛させていただきます。 ○ 宮島部会長 ありがとうございました。それでは、山崎委員お願いいたします。 ○ 山崎委員  「年金制度の体系、給付と負担、関連分野との関連について」、前回の事務局が用意 されました論点にほぼ沿って考えてみました。  「1.年金制度の体系」、「被用者と自営業者等の取扱い」ですけれども、異なる取 扱いを認めるにしても、本来は厚生年金に適用されるべき被用者の中で適用漏れが少な くないことが大きな問題でございます。短時間労働者を含めて厚生年金の適用を進め、 第1号被保険者の適用を本来の自営業者等に純化すべきだと考えます。  それから、被用者年金制度間の負担の公平化を進める上で、基礎年金の拠出金負担を 現行の被保険者数に応じた頭割りから応能負担制(報酬総額比例制)に切り替えるべき です。総報酬制への移行や今後短時間労働者等への適用拡大に伴って、保険料負担の対 象になる報酬水準の格差が、共済と厚生年金との間でさらに拡大することからしても放 置できない問題だと考えます。  次に「給付の構造」ですが、自営業者等についても所得捕捉に努め、将来的には少な くとも負担面については被用者と同様に応能負担制に改めるべきだと考えますが、その 場合には給付面にどのように反映させるか。つまり保険料による所得再分配的要素を加 味するかどうかということにつきましては、国庫負担の配分方法との関連も含めて今後 の検討課題だと思います。  次に「無・低所得者の年金保障」ですが、現在の生活保護制度を前提にすると、非常 にスティグマが強く受けにくいということでございます。年金制度の枠内での無・低所 得者への一定の対応が不可避ではないかと考えます。その場合、無・低所得者について は、国庫負担を傾斜的に配分することも検討課題の一つだと思います。  積立型の要素の導入ということですが、賦課方式に偏った財政方式のリスクを分散す る上でも、確定給付型も含めて一定の積立的要素を明示的に組み込むべきではないかと 思います。論点ではいきなり確定拠出型と出ているのですが、確定給付型も含めて考え るべきだと思います。  次に「2.給付と負担」ですが、「保険料水準」につきましては、凍結は早急に解除 すべきです。将来の保険料水準につきましては、前回改正で設定された総報酬ベースで 20%程度の水準は、諸外国との関連で見ても許容されるべきではないかと思います。厚 生年金の保険料は、国民年金と同様に毎年小刻みに引き上げるべきです。国民年金の保 険料免除は、多段階にすべきと考えます。  「給付水準」につきましては、その設定に当たりましては、医療・福祉・税制等との 関連も含めた総合的な検討が必要です。社会保障としては「年金優先型」と「医療・福 祉優先型」の二つの考え方がありますが、その選択がまず大事だと思います。  仮に年金を優先させるということであれば、高齢世代にも公的年金を基盤にした一定 の安定した収入があることを前提にして、医療・福祉でもその収入に見合う保険料負担 や利用者負担を求めて良いわけであります。  一方、医療・福祉を優先する場合、基礎年金のみになるなど公的年金はスリムになり ますが、医療・福祉では高齢世代の負担を軽減せざるを得なくなります。どちらの考え 方をとるかによって年金の水準の考え方もまた変わると思います。  「給付と負担の関係」ですが、現役世代と高齢世代の生活水準について、公的年金以 外の収入等も含めて実質的な均衡が図られるよう、公的年金制度の給付と負担の水準を 設定すべきであります。  その上で、保険料を一定水準にまで引き上げた後の外生的な経済社会変動につきまし ては、積立金の取り崩しやスウェーデン方式の自動調整装置等による対応も考えられま す。 「加入者サービス」でございますが、若い世代を含む加入者に対するサービスと して、定期的に加入記録を知らせ、必要なアドバイスを提供すべきだと思います。その 一環として、年金額算定式におけるポイント制の導入も検討すべきだと考えます。  「3.関連分野との関係」ですが、持論でございますが「育児保険制度」というもの を検討してみてはどうかと考えております。現在の社会保障制度における育児支援に は、社会福祉制度による低所得者に重点を置いた選別的支援と、社会保険制度による所 得を要件にしない普遍的な支援があります。前者は保育サービスや児童手当等であり、 後者は医療保険の出産育児一時金・出産手当金、雇用保険の育児休業給付、育児休業期 間中の健保、厚年の社会保険料免除等であります。このような社会福祉制度と社会保険 制度による対応は、介護保険導入前の介護に係わる施策と類似しています。つまり介護 に医療保険と福祉で対応していたということでございます。  育児の社会化という観点からすれば、親の所得や職業、働き方等に関係なく、すべて の子どもに対して普遍的な支援を行うことを基本にすべきであり、それには介護に対す る対応と同様に、社会保険システムの活用が最も有効だと考えております。  社会保険による育児支援としての育児保険制度のイメージとしては、地域特性に配慮 しつつ保育等のサービスを中心にした支援を進めるという観点からすると、介護保険の ような市町村を保険者とする地域保険型の育児保険制度の創設が考えられると思いま す。一方、出産費や育児費用の軽減等の現金給付を中心にした支援を進める観点からす ると、年金保険のような国を保険者とする国民保険型の育児保険制度の創設が考えられ ると思います。さらにサービスも育児費用の軽減も必要だということからすると、両者 の要素を一体化した一元的な制度により多様なサービスや現金給付を総合的に提供する 育児保険制度も考えられると思います。  最後に「短時間労働者の適用」ですが、短時間労働者を含む社会保険の適用を進める 上では、雇用に対する事業主負担の中立性を確保することが必要でございます。そのた めには、被保険者の保険料負担を分担するという形をとっている現行の事業主負担に代 えて、被保険者であると否とを問わず被用者に対して支払った賃金総額を標準(外形標 準)として事業主負担を求めるべきではないかと考えております。  なお、短時間労働者の適用に当たっては、年金・健保一体の原則を今後とも貫くべき だと思っております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、大変お待たせしました。渡辺委員、よろしくお 願いいたします。 ○ 渡辺委員  言うまでもなく公的年金制度は、これまで原則5年に一度の財政再計算の見直しを やってきたのですが、例えば、昭和48年や昭和51年頃まではそうでもなかったのです が、昭和54年、59年の財政再計算あたりから、つまりこの20年間ぐらいにわたって相次 ぐ財政再計算では給付の抑制、負担の増加が繰り返されてきたことはご承知のとおりで あります。これは従来の手法ではやむを得ない方法であったのですが、先ほど来ご指摘 あったように、公的年金制度に対する信頼が大きく揺らいでいる。不信感も非常に増し ているという現実がございます。  そうして今回、いわゆる1.39という新しい人口推計が示されました。また、この1.39 という数字は、従来の1.61、さらにその5年前の1.80に比べて厳しいわけであります が、手法としては妥当な結果だと思いますが、これに基づいて財政再計算を行いますと もっと厳しくなる。つまり年金に対する不信感がさらに広がることは間違いないと思い ます。それはいろんな意味でマイナスが大きいということでございます。  もちろん楽観的に見直すということは大変危険なことですから、そういった意味では 厳しくやるというのも一つの方法かもしれませんけれども、今回は年金制度の信頼性、 あるいは持続ということを考えた場合には、1.39といったことをそのまま使うことには 私としては躊躇せざるを得ないと思います。それはただ単に悲観的になるからというだ けではなくて、1.39という数字をそのままいわば機械的に前提にするということは、逆 に言いますと、出生率の回復、つまり少子化対策に向けて努力をしないことを前提にす るという解釈をすることもできると私は考えるからであります。  そこで少子化対策をいわば必死になって、先ほど来お話のあった国民的な努力として 取り組めば、近い将来変わっていくのではないか、そのように私考えております。そう いうことを前提にしますと、1.39を今回そのまま使って財政再計算という手法は私は疑 問を感じております。  しかし、一方で、だからこそ5年に一度の財政再計算があるのだから、出生率が変わ れば、また5年後、あるいは他の経済、社会的要因が変われば、その後の5年後にやれ ば良いのではないかという考えもあるかもしれませんが、5年毎の財政再計算で国民の 年金に対する不信を募らせてきたことを考えますと、これもまた躊躇せざるを得ない。  と考えますと、方法論としては二つあるかと思います。一つは、1.39というものでは なくて、例えば高位推計、今回1.63でございますが、平たく言えば、努力をすればそう なるかもしれないと思われる1.63を前提にするのも一つの方法かと考えました。そうし ますと、ある意味では、政労使はじめとした国民に努力を義務付ける。それを前提とし て年金制度を設計するわけですから、こうすれば努力をせざるを得ないことになるわけ であります。そういった意味からのメリットはあるかもしれないと思いました。  しかし、理屈の上ではそうであったとしても、それは相当な国民に対する不安感を与 えることも事実である。万が一、その目標を達成できなければ、年金制度そのものが即 破綻の危機に直面してしまうということを考えますと、政策として責任あるものだとは 考えられないということになります。  そこで結論としましては、高い設定を努力目標として掲げるだけではなくて、いわば 努力をすれば良いものになる。努力しなければ非常に悲観的なものになるといったよう な、先ほど来、話が出ていますビルトイン。そういった意味ではスウェーデン型の自動 調整になるかもしれません。ただ、スウェーデン方式といいましても、いろんな解釈が できますし、いつからやるのか、あるいは18.5%で保険料を設定するのか等々いろんな 問題点はありますので、あえて「スウェーデン型」という言葉を使いませんでしたけれ ども、そう考えていきますと、自動調整といった発想が最も現実であり、かつ望ましい のではないかと思います。  さらに最後に、原則5年に一度という現在の見直し、これまでの経験から言いまして も、特にその時の政治情勢に強く左右される。ましてやその翌年に国政選挙があると いったような状況では、どうしても政治的配慮によって保険料が抑制され、あるいは給 付が必要以上にアップしたといった経験もございます。そういった意味から言います と、制度を歪めてきた事実もございます。そこで5年に一度ということのマイナス面も 指摘せざるを得ません。  また、そういった格好では、これまた、これまでの経験から、どうも国民と乖離した ところで改革が行われてきたと思わざるを得ません。そこで努力をすれば良いものにな るということは、政治だけに任せるのではなくて、国民的努力が必要であるという意味 からも、国民全体の努力を引き出すインセンティブとしての効果があると考えます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。もう12時近くになってしまいましたが、私も集中して1時 間以上聞いていました。先ほど申しましたように、若干の休憩をとります。5分はとれ ないかもしれませんが、12時ぐらいまであと3分というところでしょうか。休憩を入れ ますので、論点整理でも結構ですし、休憩の必要な方は今のうちによろしくお願いしま す。                   (休憩)                   (再開) ○ 宮島部会長  あと時間が実質的に20分程度でございます。それで、今、急遽部会長代理と事務局と も打ち合わせをいたしましたが、これに対する少し本格的な議論は九月の最初の部会に 持ち越したいと思っております。  今日、私もお聞きしまして随分勉強なった点がございますし、自分自身も少し勉強し たい点もございますから、本日はこれから私の方で論点を若干整理させていただきまし て、残りの時間、もし今日のそれぞれの各委員のペーパーについて、内容的なご質問が あれば伺ったり、もちろんご意見でも構いません。ただ、25分でそれを打ち切らせてい ただきますので、お許しをいただきたいと思います。  実は昨日各委員からお出しいただいたペーパーについて、事務局に私の方から全体の トーンと論点をある程度整理しておいてほしい旨お願いしておりまして、私も今聞きな がら、それを確認しておりましたが、全体としてスウェーデン型の年金改革であります とか、少子化対策をはじめ、税制等年金を取り巻く制度に対する関心といいますか、そ ういうものは共通して強かったというふうに思います。  ただ、その中で、ご意見伺っておりますと、一つは、順番で申し上げますと、被用者 と自営業者の扱いをどうするかという点では、意見の食い違いがかなりあったように思 います。ただし、伺っておりますと、当面どう考えるかということと、中長期的にどう かという話の扱いがやや難しいのではないか。本質な問題というよりも、当面現状はす ぐ変わらないから、なかなかそう一挙にはいかないというのと、長い目で見れば、働き 方の違い、職業の流動性が進む中で現状維持は余り意味がないかというような意見が あったと理解しております。もちろん理念的に将来一元化すべきだと明確に述べた方も いらっしゃいますが、現在の動きから見て、両者を区別する明確な根拠はなくなってき ているという判断の方もいらっしゃいますし、当面はそこのところは、すぐに動かせる だけの状況には至っていないという判断された方もいらっしゃいました。とりわけ自営 業者につきましては、年金制度そのものを、例えば今のような定額型のものから所得比 例型のものに変えたいという議論がいくつか出てまいりましたけれども、その時に、こ れは恐らく税制に限らず所得把握と徴収の公平性なり効率性がどう維持できるかという ことが大きな共通の関心になっておりまして、それが大きな制約条件として意識されて いるということでもあります。  それから、年金制度の組み合わせの中で、かなりの方がスウェーデン型の所得比例と 最低保障の組み合わせに関心を持たれていることは、今お聞きしたとおりでございま す。もちろん現行制度のもとでいろいろ考え方はないかということもございましたし、 他方で、スウェーデン型のような所得比例一本化と、最低保障年金の部分を公費によっ て埋めるという考え方に対しては、これは前々からございましたような、むしろ基礎年 金そのものを税方式に直すべきではないかというような、根本的に考え方の違う意見も ございました。  いずれにしても、最低保障年金や税方式にするにしても、どこに財源を求めるかにつ いては、相変わらず具体的になると難しい点があることはそれぞれ指摘されているとお りでございます。  それから、特にスウェーデンなどで取り上げているような確定拠出型の、年金を、公 的年金の考えでどういう形で位置付けるかということにつきましても、現行の賦課方式 の公的年金の基本は維持すべきであって、その中で一部に積立型・確定拠出型を取り入 れていくというような考え方はそれぞれの方が示されているものと思います。しかし、 その場合、報酬比例部分の一部を移行させていくのか、その場合は公的年金の中なの か、あるいは民営化させるという意見も一部でございました。もちろん報酬比例部分を 積立・確定拠出型に移行することについては、公的年金の性格からそれをどのように評 価するかということについては必ずしも意見が一致しているわけではございません。  給付と負担につきましては、こういう人口構成の急速な高齢化がさらに進んで、経済 成長率が鈍化しているという中で、給付水準の引下げを何らかの形で求めざるを得ない という考え方も、かなりの方が示されたと理解しております。ただ、それはいろいろな やり方もありまして、モデル年金の加入年数をどうするかということも一つの発想では あると思いますし、税制というような、やや違った政策手段でのコントロールを考えて いる方もいらっしゃいました。その辺のところは、手段としてはかなりバラエティーに 富んだものが今回の中では主張されておりましたが、実質的な意味での年金給付をコン トロールすることについてはいくつかの意見がございました。  ただ、それに対して、老後の基礎的な生活費を賄うという公的年金の役割を考える と、おのずとそれは何らかのレベルの問題ではないかということもございます。そのレ ベルを巡っては、今日の追加資料ございましたように、ネットで考えるのか。もちろん ネットで考えることでしょうが、これは非常に難しい点でございます。先ほど神代委員 からございましたけれども、もともと代替率の発想は階層別の話であり、しかも単に公 的年金だけを入れて見るのはミスリーディングであって、少しそういうところのやり方 を変えないといけない。その議論は余りに簡単ではないという注意もございました。  さらには、我々はどうしても年金給付の水準に関心がありますけれども、これは多く の方が言及されましたように、医療・介護を含めた社会保障給付全体の水準というもの の中での、ある意味では重複、あるいは空白部分があるかもしれませんが、そういうも のを十分考えた上での水準であって、年金水準だけで決定できるものではないことは多 くの方のご意見だったと思います。  それから、保険料の負担に関しましては、当面、今、政治的な大きな課題になってい る凍結解除をどうするかという問題については、何人かの委員が触れられたように、こ れは予定された仕組みにしたがって淡々と行うべきだという意見が出された反面、直接 それに反対するわけではございませんが、当面の経済情勢を考えたり、今後の税負担を 含めた国民負担全体の動向なり上限をどう考えていくかというようなこともあって、慎 重な意見がございました。また、保険料よりも、どちらかというと税負担の引上げとい う形で考えている方もいらっしゃったのではないかと思っております。ただ、これにつ きましても、負担水準というのは何も年金保険料の水準だけの問題ではなくて、その 他、医療・介護保険料、その他、社会保障に投入されている税負担というものを全体と して考える。さらにはもう少し広い観点で考えるべきではないかという意見は当然ござ いました。  また、最終保険料、今の段階保険料の考え方、平準保険料についても、どこに上限を 設けるにしても、どういう段階で、どういうレベルで上限を考えるべきなのかというこ とにつきましてもご意見がございました。今20%のことがよく言われているわけでござ いますが、これについても、その意味なり現実性なりについて意見がございました。  それから、給付と負担について、いわゆる想定を超えたような人口要因の変動、経済 要因の変動が起こったときにどう対処するのかにつきまして、多くの委員の方が、頻繁 な制度改正は避けたいというところは比較的共通のご意見ではなかったかと思います。 できれば、今度の改正を最後の年金制度改正にしたいと思われている方もいらっしゃる のかもしれません。もちろんそうなるかどうかはなかなか簡単にはいかないかもしれま せんけれども、ただ、そのご主張の意味は、大きな制度改正した上で、何らかの調整装 置を中に組み込むということによって、制度の安定化を図るということでしょう。中に フレキシビリティー、スタビライザー的な機能を盛り込んだ制度は、ある程度恒久的な ものであるけれども、その中のいくつかの要素が、人口変動や経済変動のような要素に よって動くことによって実質的な中身は変わることはあります。恐らく制度改正を余り 頻繁に行うことは避けたいという意味は、仕組みとしてはできるだけ透明性があって、 長期にわたっても維持できるものを考えることではないかと思います。その点では、皆 様の関心はスウェーデン型に対する関心が高いわけでありまして、もちろんそれは自動 調整装置のこともありますし、いくつかのインセンティブやそういう要因を織り込んで いる点で関心が高かったのではないかと思います。  他方、そうは言いながら、日本のように人口変動が先進国の中でも今後さらに大きい 国に、比較的高い高齢化率が安定しているスウェーデン型を組み入れたときに、果たし て、それでまた安定した制度になり得るかどうかについては、これは懸念される点があ ることも指摘されました。  全体の議論を通じまして、例えば従来の議論から少し踏み込んだ点で申しますと、既 裁定年金にも踏み込んだ制度改正なり、仕組みを考える必要が出てきているのではない かということでありまして、その辺はスライド制をどうするか、税制をどうするか。前 回ございましたように、政府の統一見解でありますように、財産権との関係で、どのよ うな現実的な手法なり、説得力のある手法があり得るかというような論点があります が、とにかく世代間のバランスといった時に、既裁定者まで含めて考えるということに ついては、比較的多くの方々は共通のご意見をお持ちではなかったかと思っています。  あと、もちろん分かりやすい制度、透明性の高い制度を設けるということも指摘され ておりましたし、その中で、特にスウェーデン型の概念上の拠出建てのアイディアにつ いても、給付と負担がリンクしいるという意味でのわかりやすさということが指摘され ている反面、先ほど申しましたように、実際の設計上いくつか問題がある点は何人かの 方が指摘されておりました。  関連分野につきまして、少子化のことについては、ほとんどの委員の方が触れられま して、今日もおもしろい議論であったと思います。皆さんが必要性を認めていらっしゃ いますが、比較的多くの方は、それはまさに公共部門全体が取り組むべき課題、あらゆ る手段を導入すべきことであって、年金制度という一つの狭い枠内で考えることでは必 ずしもないのではないかという点では一致していたのではないか。ただ、その場合、年 金制度としても何かすることは当然ございますので、そういう観点から、年金制度の中 にそういう装置を組み込むなり、年金税制を使うというアイディアもございました。  また、年金制度において、次世代の支援をどうするかという観点からの議論もござい ましたが、最初に申し上げましたように、これはもう少し広い意味での取り組みという ことを皆さんお考えになっていたと思います。  雇用につきましては、最近の非正規労働者の増加を一体どう考えるのか。労働で言え ば根本的な問題になると思います。非正規だけでなくて今の事業所の規模による区別も ございますし、そういう非正規・正規、事業所規模等による年金保険の適用に対して、 最初申し上げましたように、今度自営業まで含めると、広い意味で全体としての被保険 者の一元化という考え方でとらえる方もいらっしゃいますし、特に女性や今後の高齢者 の働き方の多様化という点で、非正規労働者と社会保険制度、社会保障制度の扱いはほ とんどの方が大きな議論の焦点にされておりましたし、できるだけそういう点を含めて いくべきだというご議論であったと思います。しかし、これも実際問題として今後具体 的に議論していくと、いろいろ難しい問題が出てくるかもしれません。  社会保障、税制につきましても、それと年金制度との関連を強める点では概ね一致さ れた意見であったと理解をしております。  その他、いろいろございましたが、おおよそ皆様方から示された今日の論点は、こう いう点ではなかったかと理解しております。それぞれ比較的ご意見が収れんしていくよ うなものと、これはなかなか共通の理解なり結論はまだまだ難しい状況であるのかとい う点がはっきりしたものとがございました。  これは私の論点の整理でございますので、時間も食ってしまいまして申し訳ございま せん。今日いただいたこの報告は、私にとっては大変貴重なものでございますし、これ だけ多面的な切り口からいろいろ議論されてきたことも大変なことだと思います。私も 再度じっくり拝見させていただきます。時間があいてしまいますが、次回、九月の一回 目の時にこれを巡って集中的な議論をしたいと思います。私はその時は余計なこと申し 上げません。  もし、今日、皆様から出ましたこのレポートにつきまして、何か内容について確認し ておきたいというような点がございましたら、若干の時間とりたいと思いますが、いか がでございましょうか。若杉委員どうぞ。 ○ 若杉委員  私は意見書を出さなかったものですから、皆さんの中になかった意見をいくつか述べ たいと思います。  一つは、我々の今いる豊かな自立的な社会では、公的年金、個人年金、企業年金とい う三つの柱があるわけですが、いつも申し上げていることですが、バランスをもう一度 考えてみる必要があるのではないかということです。公的年金のウエイトに関して、先 ほどは代替率50%ぐらいというご意見もありましたが、もっと極端に30%とか、3分の 1ぐらいにするということも考える必要があるのではないか。それは、段階保険料から 早く固定保険料に移行するという他の委員のかたがたの意見と平仄が合うと思います。 そういうことにして、新しい人から給付を減らすということが考えられるのではないで しょうか。  もう一つ、これから経済においては企業がより効率性を追求すると、能力給、成果給 にならざるを得ません。そうなると、サラリーマンの間でも所得の格差が非常に大きく なります。神代委員が自営業者とサラリーマンとの間の所得格差ということに言及され ましたが、サラリーマンの間でも非常に大きな所得格差が生まれてくる可能性があるわ けです。所得の格差から生まれる不公平感というものを、年金制度で解決すべきである のか否かが、非常に重要な問題になるのではないかと思います。  所得の格差が非常に大きくなってきますと、現在の制度の下では、年金の中での生活 保障的な、つまり高所得者から低所得者への所得の再分配という要素が大きくなってく るわけです。この所得の再分配を、公的年金という形でやるのが良いのか、それとも別 の形でやるのが良いのかというのが、さらに基本的な問題です。具体的に言いますと、 豊かな自立的な社会では、国がやるよりも、民間の善意とか好意、つまりボランティア 精神を重視すべきではないかと思います。現在の日本の税制では、寄付というと脱税み たいに思われて、寄付の制度が活用されてません。税金という義務ではなく、自由意志 による寄付という所得再分配やボランティア活動という間接的な所得の再分配を定着さ せて、寄付とともにサービスでもって高齢者に還元するということも考えられるのでは ないかと思います。公的年金という国の制度でなく、かつお金で払うだけではない、別 の形での高齢者への再分配、そういうことも視野に入れていただきたいということで す。  最後の点については、たしか杉山委員のご発言にも、給付でなくて、他のものでとい うことで、同趣旨の意見があったと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、大変申し訳ないのですが、今日のペーパー報告 をご説明いただいたのを、私の方で、ごく大ざっぱに論点を整理させていただくという ところまでで、本日は終わりにさせていただきたいと思います。  先ほど申しましたように、後ほど事務局からご説明いただきますが、九月は二回ほど 予定しておりますが、大変お忙しい中で、私がそろそろ音を上げているところがありま して、もしかしたら、私は不在ということもあり得るということで、お願いするかもし れませんが、最初の時に、今日の議論を少し集中して行いたいと思います。多分どうい うところで論点が食い違っているか、およそわかると思いますので、その時に議論させ ていただきたいと思います。年金制度の体系と、給付と負担の在り方、少子化対策、こ れは実は年金制度全体をカバーする話でございますから、論点はどうしても多岐にわた りますが、主要な意見が分かれている点についてご注目いただいて、少しご議論を進め てみたいと考えております。  それでは、次回以降につきまして、事務局からよろしくお願いします。 ○ 福井総務課長  ただいま部会長から、九月二回というお話がございました。申し上げておりますとお り、八月はお休みをさせていただきたいと思いますが、九月は誠に恐縮でございます が、二回お願いをいたしたいと思っております。日程につきましては、なるべく早く各 委員にご連絡をさせていただきたいと思っております。この二回のうちの、九月の第一 回目でございますけれども、先ほど部会長からございましたように、本日は各委員から の意見の開陳・説明ということ、あるいは部会長のいわば総括ということであったわけ でございますが、次回はそういうことで、委員相互のディスカッションをお願いするこ とがメインになろうかと思っております。  実は、私ども事務局といたしまして、今日の意見の開陳・説明に対する委員相互の ディスカッションに合わせまして、後出しで申し訳ないのですが、二つの論点について ご説明をさせていただきたいと思っております。  一つは、支え手を増やす取り組みでございます。もう一点は、国民年金の保険料徴収 対策。こういった点についてご議論をいただきたいと思っております。なぜかと申しま すと、これらの論点につきましては、先般簡単にご説明をさせていただきました。六月 に閣議決定をされました骨太方針の第二弾におきまして、視点の一つとして触れられて おります。すなわち、支え手を増やす取り組みということに関して申し上げますと、生 涯現役や男女共同参画の理念との合致ということが言われているわけでございます。ま た国民年金の保険料徴収対策という点につきましては、この骨太方針の第二弾におきま して、制度の厳正な運用に取り組む観点から、保険料徴収の推進など、国民年金の未加 入・未納者に対する徹底的な対策に取り組むと、こういうことになっているわけでござ います。  支え手を増やす取り組みにつきましては、神代代理の方で座長を務めていただいてお ります「雇用と年金の検討会」、これは既に開始をされておりまして、具体的なご議論 が始まっているところでございますけれども、なお、骨格的な議論ということでお願い をできればと思っているところでございます。  この二つのテーマにつきましては、なるべく早く、私どもの方で資料を用意をさせて いただきまして、できる限り早く委員の皆様に具体的な論点ということでお示しをさせ ていただいて、可能であれば、またペーパーということで提出をいただければと思って いるところでございます。  繰り返しになりますが、次回、九月の第一回目につきましては、メインとして、委員 相互の本日のテーマについてのディスカッション、支え手を増やす取り組み、国民年金 の保険料徴収対策についての、少なくとも私どもの方からのご説明をさせていただけれ ばと思っているところでございます。  九月の第二回目の持ち方、当初この秋に向けて、論点の整理ということでお願い申し 上げていたわけでございますけれども、九月の第二回目以降の持ち方につきましては、 なお、部会長、部会長代理ともよく相談をさせていただいて考えていきたいと思ってお るところでございます。  私の方からは、以上でございます。 ○ 宮島部会長  今、総務課長から説明がありましたが、若干追加の論点でございますけれども、支え 手を増やす取り組み、国民年金の保険料徴収は、今日既に論点の中には相当取り上げら れている点でございます。特に井手委員、杉山委員、大澤委員などから、支え手を増や す取り組みについてはかなり具体的に触れられてございますし、保険料徴収の話は随分 触れられている。これについてきちんとした資料をこちらの方から用意して、なるべく 早くご説明をしたいと思っておりますので、もし、それにつきましても、追加的なペー パーなり、コメントを望まれる方は、次回の年金部会までに提出いただければありがた いと思っております。  若杉委員、もしよろしければ、遡ってでも結構ですので、ペーパーを出していただき ますと、ドキュメントとして大変立派なものでございますので、よろしくお願いいたし ます。 ○ 宮島部会長  資料の準備とおおよその論点の整理ができた段階で、委員の方に早めにお伝えしてい ただきたいと思います。 ○ 福井総務課長  部会長のおっしゃるとおりにいたしたいと思います。 ○ 宮島部会長  それでは、本日はこれで部会を終わりにいたします。ありがとうございました。  (照会先)  厚生労働省年金局総務課企画係  (代)03-5253-1111(内線3316)