02/07/18 第2回新医師臨床研修制度検討ワーキンググループ処遇等小委員会議事録           第2回 新医師臨床研修制度検討ワーキンググループ               処遇等小委員会                       日時 平成14年7月18日(木)                          10:30〜                       場所 厚生労働省9階省議室 ○医事課長  ただいまから「新医師臨床研修制度検討ワーキンググループ処遇等小委員会」を開会 させていただきます。委員の皆様方におかれましてはお忙しい中をご出席いただきまし て、誠にありがとうございました。本日も文部科学省から医学教育課の村田課長、当省 の労働基準局から監督課の引地中央労働基準監察監督官が出席されています。どうぞよ ろしくお願いいたします。本日の議事につきましては、大谷小委員長、よろしくお願い いたします。 ○大谷小委員長  早速議事に入りたいと思いますが、まず第1回小委員会以降の経過について、事務局 からご説明をお願いいたします。 ○医事課長  6月28日に前回の処遇等小委員会が行われたあとの経過について、簡単に報告いたし ます。7月9日に研修プログラムの小委員会が開催されまして、そこではプログラムに ついて再度説明した後、マッチングの関係、また研修目標プログラム基準などについて ご議論いただきまして、研修目標ローテーション、定員の問題などについて検討が行わ れたわけです。その中で具体的な問題としては、2年間の研修期間中に海外で比較的長 い期間にわたって研修する場合や、長期にわたって出産・育児等で休む場合どのように 考えるのか、というような議論などもされました。  そういったものについては、まれなケースであろうということもありますし、また、 個別に判断せざるを得ないのではないかということで、個別に判断するということでは あろうかと思います。しかし、2年間の一定の研修、特に海外でやる場合などについ て、同等性の検討などが必要になると思いますが、そういうものを踏まえた上で、実質 2年間の研修というものをどちらかでやっていただくということではないか、というよ うな説明をさせていただきました。  ローテーションの関係については、事務局のほうから示した案に加えて、その中でも 精神科の必修ローテーションの問題、また、産婦人科の必修ローテーションに加える必 要性の問題などについても、議論がなされたわけです。研修の目標とローテーションに ついては大枠の意見はまとまったようなところですが、評価、マッチングなどについ て、あるいは、定員の問題などに関してはまだ議論が不十分であろうということで、次 回を7月29日に予定していたわけですが、その前の7月23日に追加でもう1回開催する ことになったわけです。それを踏まえて7月29日に案をまとめたいということです。  7月11日には「施設基準」についての小委員会が行われまして、事務局から提出した 基準案に基づいて、主として臨床研修病院の単独型の基準についての議論が行われたわ けです。施設についての基本的な考え方、特に研修の管理をする組織のあり方などにつ いては、基本概念はほぼ了解されたということですが、指導医あるいはプログラム責任 者等についての言葉の使い方といいますか、定義についてやや理解に齟齬があるところ もありますので、この辺を整理する必要があるのではないか、というような議論があり ました。  単独型の研修施設については、現行の基準は基本的にそれでよろしいのではないかと いう議論もありましたが、一方で、こういった基準の必要性について、さらに議論が必 要ではないか、というような議論も行われました。診療科については現行のとおりでい いのではないかということもありましたが、麻酔科も追加すべきではないか、というよ うな議論もありました。  なお、剖検1.CPCの関係については、CPCという線で進めることは基本的に了 解されたと思いますが、そのほかに病理医の問題ですとか、あるいは、実際に剖検を 行っているというような条件が必要ではないか、というような議論がなされました。こ ういった議論も踏まえ、次回7月26日のときにとりまとめの案を作成、提示したいと考 えております。以上が前回以降の小委員会の概略です。 ○大谷小委員長  ありがとうございました。ただいまのご説明について、ご質問等ございましたら、ど うぞ。ちょっと初歩的なことを聞きますが、施設基準というのは、ほかのプログラムも みんな基準でやるし、うちの処遇もみんな基準でしょう。研修病院は、施設基準だけを 守ればいい、というものではないわけでしょう。 ○医事課長  現在考えているのは、施設基準というのは、基本的に研修の場としての病院を指定す る。 ○大谷小委員長  だけであって、あとのプログラムを守らなければ指定を取り消しますと、処遇につい ても、委員の方々が議論していただいていることをまとめるわけですが、それを守って いただかなければ、これも基準ですから切るということでしょう。勘違いをする人も出 てきますからね。 ○医事課長  そういった施設を使ってプログラムが行われる、というふうに考えております。セッ トでございます。 ○大谷小委員長  ほかの部会のことですが、いまの説明でご質問があればどうぞ。 ○吉田委員  マッチングなのですが、いまの予定でいきますと、それぞれの研修施設は、研修プロ グラムをホームページ上で公開するというようなことになっているのですが、これが来 年の2月でしょう。それを見て、登録したり面接したり希望を決めて組合わせ決定と、 来年の10月にはマッチングが行われなければならないということですが、実現可能なの ですか。 ○医事課長  第2回研修プログラム小委員会資料3−2、「組み合わせ決定制度(マッチング) (案)について」というものがありますが、これに基づいて前回説明をいたしました が、私どもの想定している、あるいは、いま勉強しているマッチングについての考え方 を示しております。これは基本的に1頁目の下の図に、研修希望者、研修施設、それぞ れが面接などをして、実際に顔合わせなり試験なりをした後に、その両者が希望順位を 組合わせ決定実施機関に登録をして、それを組合わせ実施機関でコンピューターなどを 活用して、合理的に振り分けて組み合わせていく、ということを想定しております。  その際に、施設の確認とか、個別にはもちろん実際に施設訪問などをするわけです が、便宜を図るという意味で、ホームページなども活用することを考えております。そ ういったお手伝いをするような仕組みを準備したいということです。そのあと、4頁に 横長の絵がありますが、全体の流れでいくとこのようになるということです。いちばん 基本の部分は、このいちばん下の医学生及び病院のほうからそれぞれ希望順位の表を出 していただき、それを組み合わせる部分ですので、こういった部分の準備について、い ま研究しているところでして、必ずしも不可能ではないスケジュールで進んでおりま す。 ○吉田委員  このスケジュールどおり、うまくいくことを希望します。 ○大谷小委員長  次回の31日に全体会議があってそこで一応分科会でまとめたものが報告されますの で、そのときはいろいろと修正意見を出していただいて結構だと思います。もちろん、 私どもの処遇の分科会のほうもいたしますので、それについて全体からもご批判なり、 修正意見が出るかと思います。今日のご質問は私どもの処遇に関して必要なことだけを お聞きになっておいて、詳しい問題は、次回31日の全体会議のときにご意見を出してい ただいたほうがよろしいと思います。今日は事務局が聞かれるだけですから、大事な意 見は、全体の分科会の先生方に言っていただいたほうがよろしいと思います。 ○堀江委員  前回のプログラム小委員会のときに、初めて厚生労働省側のマッチングに対する案が 提示され、委員からいろいろ質問等がありました。しかし、案を初めて見た状態ですぐ に審議というわけにはいきませんので、案に基づいて、皆さんの意見を次の小委員会ま でに出していただくことにしました。小委員会としてもほかにまだやることがあります ので、それらを審議し、こちらについても検討させていただくことで進めていく予定で おります。 ○大谷小委員長  どうもありがとうございます。ほかにないようでしたら、本題のほうへ進めたいと思 います。前回と同様に、「研修医の処遇に関する基準について」、「臨床研修に必要な 経費と財源について」の2つに分けて議論したいと思いますが、すでにスケジュールで 示しておりますように、研修医の処遇に関する基準については、できれば本日ある程度 方向性を絞っていただいて、先ほど申しましたように31日の全体会議にある程度小委員 会の意見として報告させていただきたい。もちろん、まとまらなくてもそれは対立意見 がこういうふうになっているという報告をすればよろしいわけで、別に今日何が何でも まとめようというわけではございません。どうぞご自由にご発言いただきたいと思いま す。それと前回の議事録は、もうお配りしてあるのですか。まだまとまっていないので しょうか。 ○医事課長  いま議事録を委員の方々にチェックいただきまして、まとめています。 ○大谷小委員長  一応は渡してあるわけですね。 ○医事課長  はい。 ○大谷小委員長  そういうことでご修正いただいていると思いますが、一応お手元に行っていると思い ますので、特に分量の多い下村委員などは、よく見ておいていただかないと。前回の議 事録は本当に貴重だと思います。読み直してみると、大体全体についていろいろな意見 を述べていただいておりますので、できれば今日はそれを踏まえてということにしたい のですが、議事録がないとすれば、記憶の中でやっていただきたい。では、事務局か ら、前回を踏まえた説明をお願いします。 ○事務局  まず資料の確認ですが、資料1は、ワーキンググループの委員名簿です。資料2で、 前回の小委員会以降、各委員から提出された意見を載せております。資料3として、 「研修医の処遇について」ということで、処遇の基準に関する資料を載せています。資 料4は「臨床研修費の予算の概要について」というペーパーです。資料5、臨床研修に 必要な経費と財源の関係についての資料となっています。  まず資料3の研修医の処遇についての説明をいたします。資料3−1「研修医の処遇 に関する基準について」ですが、前回の小委員会で提出された資料を、(案1)として そのまま提出しております。これに関して、それ以後提出された意見を踏まえて修正し たものを(案2)として、4頁以降にまとめております。4頁の(案2)について、修 正点を中心に説明したいと思います。 ○大谷小委員長  前文は、(案1)と同じですね。 ○事務局  はい。 ○大谷小委員長  修正したところは、何か印を付けていますか。 ○事務局  アンダーラインを付けて、修正しております。まず初めに、労働基準法上の労働者性 の考え方について書いておりますが、これは前回と同じです。労働基準法上の労働者性 の判断については、(1)〜(4)の項目について、総合的に勘案し、個別具体的に判断する ものです。研修医の労働者性についてこのあと見るのですが、これについて西岡委員か らご意見をいただきまして、臨床研修には日本の医療を支える医師を養成する、という 教育的側面がある。そのことについて触れないのはおかしいのではないか、というもの がありました。4頁の下から2つ目の○に、「研修的側面を有するが」という文言を挿 入しております。その上で、臨床研修には一般的に研修医が直接の診療に従事し、その 診療報酬が当該臨床研修病院に帰属していること。研修医が日常的な診療のシフトに組 み込まれており、仕事の諾否の自由があるとは言えないと考えられること。診療や手術 の補助等の診療行為、カンファレンスの準備等の雑務について、上級医の指揮命令を受 けていると考えられること。あと、始業終業時刻が定められており、出退期の自由があ るとは言えないことなどの理由から、研修医と臨床研修病院との間には使用従属関係が 認められる。ですから、一般的には教育的側面も有するが、労働者性も認められるオン ザ・ジョブ・トレーニングというものになるのではないかと考えられます。  いちばん最後の○ですが、「いずれにせよ研修医が臨床研修に専念し、研修内容を的 確に身に付けることができるよう、研修が実のあるものになるよう、研修医に労働者性 が認められるか否かにかかわらず、労働基準法と労働関係法令に規定される労働条件に 相当する処遇が確保されることが必要である」と、基本的な考えをまとめております。  5頁の「研修医の処遇に関する具体的基準」の案の所ですが、この基準の所で修正し た点は、5頁のいちばん下の行から6頁にかけての「なお」の所からです。「研修時間 は、原則として、1週40時間、1日8時間を超えないこと。なお、指導医の行う手術の 見学や文献の勉強等の教育を時間外に実施することについては、出席の強制がなく、自 由参加のものであれば、時間外の研修にはならない」という一文を追加しました。これ は先ほどの臨床研修の教育的側面ということもあって、研修医が時間外に自主的に手術 の見学をするときや、自主的に勉強する時間については研修時間に入らない、というこ とを明確にしたものです。そのほかは、前回の資料と同じものになっています。  資料3−2、「複数の臨床研修病院で研修を行う場合の雇用関係について」です。複 数の臨床研修病院をローテイトする場合の雇用関係と、その際の社会保険、労働保険の 適用関係がどうなるのか、ということについてまとめたペーパーです。まず基本的な考 え方として、複数の臨床研修病院をローテイトする場合に、研修医と各臨床研修病院が どのような雇用関係を形成するかということについては、当事者間の契約に委ねられ る。お示しする方式を強制するものではない、という基本的な考え方を示してありま す。  その下ですが、国立病院が関与するローテイトについても、管理病院が責任を持って 研修を行い、社会保険、労働保険についても一貫して加入させることのできる形態を提 示できるように関係各局と調整を進めてきたのですが、職務専念義務や、定員、予算な どの問題があって、これについてはまだ調整中です。このあとも、引き続き検討してい きたいと思います。  このベーパーについては、私立病院の間でのローテイトをする際の雇用関係について のペーパーとなっております。その際には、下の括弧に書いてあるとおり、在籍型出向 により複数の病院をローテイトする形態が望ましいのではないかと考えております。在 籍型出向というものは、括弧の下の○ですが、「出向元と出向先で出向契約を締結し、 出向労働者が出向元との労働契約を維持したまま出向先とも労働契約を締結し、出向先 において相当期間継続的に勤務する労働形態」ということになっております。  この際、労働基準法の使用者の責任、例えば、賃金を払う責任ですとか、労働時間の 管理をする責任などについては、出向先か出向元かという二者択一ではございません で、出向元と出向先との出向関係によって、権限、責任を役割分担するということにな ります。この場合の社会保険・労働保険の適用ですが、健康保険と厚生年金保険につい ては、使用関係のある病院において適用するということになっておりまして、2つ以上 の事業場において使用関係にある場合、この場合も出向元と出向先の2つの使用関係が あるということになるのですが、各事業場での賃金に比例して保険料を負担、納付する ことになります。雇用保険については、労働者が生活するのに必要な主たる賃金の支払 元の一方において、適用されることになっています。  最後に労災保険ですが、労災保険については、労働の実態に基づいて、安全衛生管理 の責任がある労働関係の所在を判断し、どちらか一方の病院において適用するというこ とになっています。ですから、出向の場合には、通常は労務の提供先は出向先になりま すので、出向先の病院のほうが労災保険の適用になる、と考えられます。  次頁の「例えば」以降ですが、在籍型出向をした場合の1つの形態です。出向元が賃 金の支払責任を負う。出向元のほうがすべての賃金を支払うことにし、出向先のほうが 労働時間や休日・年次有給休暇に関する責任、安全衛生確保に関する責任を負うという ように、使用者の責任を分担することにした場合ですが、この場合、社会保険、労災保 険、労働保険の適用については、先ほどの整理のとおりに考えますと、健康保険、厚生 年金保険、雇用保険については、出向元が保険料を納付することになりまして、労災保 険については、出向先が保険料を納付することになるというものです。  このように在籍型出向で、出向元が賃金をすべて負担する形態にした場合、出向先は 通常なら支払うべき賃金相当額を出向元に戻入する。負担すべきものをもともといた出 向元のほうに返すことが一般的に行われておりまして、この臨床研修においてもこの形 態を使うことによって、管理病院のほうに負担が集中することを防ぐこともできます。 在籍型出向では出向元が賃金を支払う、という形態が望ましいのではないかと考えてお ります。  資料4ですが、前回依頼があった研修費の予算関係です。1頁については、私どもの 持っている臨床研修費補助金の予算の内訳について、説明いたします。上の四角で括っ てある内訳表ですが、区分としてローテイト方式と総合診療方式について、それぞれ指 導要員経費と研修医経費ということで計上しております。指導要員経費の「指導医謝 金」ですが、ローテイト方式ですと1日8時間のうち半日は、指導員1人当たり5人の 研修医の指導に当たるという設定で、1日当たりの謝金単価を計上しております。総合 診療方式ですと、1日8時間のうち半日は、指導医1人当たり3人の研修医の指導に当 たるという設定です。その下の「人当庁費」については、指導医にかかる事務的経費、 一般的には統一単価ですが計上しております。  2つ目の研修経費の中の「実習研修費」については、医療用機器、衛生材料、解剖材 料、試験薬品として、一応56万円を計上しております。その下の「実習研究庁費」につ いては、研修医にかかる事務的経費です。これら指導医要員経費と研修経費を合計し て、ローテイト方式については、年額約97万円、総合診療方式では約120万円、それぞれ のこの金額に予算上の研修数を掛けて、臨床研修費として約42億円を計上しておりま す。そのほかに(2)として、指導医の情報収集等に必要な経費ということで、臨床研修と 指導医養成講習会経費として、9,000万円を計上しています。合わせて補助金の総額とし て43億円という予算内訳です。  2頁、今度は、出向の考え方であるこの43億円の補助金の交付要綱について、若干説 明いたします。一応この表は左側の「基準額」、右側の「対象経費」ということで比較 しております。この左右を比較して額の少ないほうを選定する形式を採っております。 基本的には額の少ないほうを一応交付することになるのですが、出向に当たっては、交 付申請額が予算限度額43億円を上回るために、43億円の範囲内で出向を調整しておりま す。  なお左の基準額、例えば、総合診療方式の19万5,000円という額については、過去から の分をいろいろ調べましたが、明確な基準が出ておりませんで、一部想像にはなるので すが、例えば、総合診療方式ですと、より多くの診療科をローテイトするというふうな ことで、それに必要な経費増を見込んだ形で、前頁の積算単価に上乗せして、この19万 5,000円を設定したと考えられています。  3頁、「国立病院と国立大学の関連予算」について、説明いたします。1番の非常勤 職員手当ですが、一応、研修医にかかる手当として、国立病院では月額単価を用いてお ります。国立大学においては日額単価を用いて置いておりますが、金額的には同じ額に なっています。それを基に人員等を掛けて、非常勤職員手当として、国立病院が約16億 円、国立大学は110億円を計上しております。  2つ目の庁費として、1つは社会保険料ということで、国立病院が1億2,000万円、国 立大学は11億3,000万円、その他の経費として機器・器具等の備品、消耗品購入費や、役 務費等ということで、研究庁費として国立病院が約1億3,000万円、国立大学が約4億3, 000万円を計上しておりまして、トータルすると国立病院では約18億8,000万円、国立大 学では約125億6,000万円の予算を計上しております。  大変恐縮ですが、資料にはありませんが、国立病院の実態を若干説明させていただき ます。国立病院が単独で研修医を受け入れた場合、まず非常勤職員として日々雇用して おります。時給として1時間当たり1,590円、週5日勤務で、1日6時間勤務となってお ります。そのほかに各施設の対応はまちまちですが、諸手当として、通勤手当、住居手 当、扶養手当、宿日直手当、超過勤務手当の支給があります。また、雇用保険、政府管 掌保険、厚生年金への加入、公務災害の適用、ほかに休暇の付与や健康診断を実施して おります。  なお、国立病院が従業員として研修医を受け入れた場合には、研修派遣扱いという整 理をしておりまして、国立病院からの賃金等の支給はございません。  資料5、「臨床研修に必要な経費と財源について」です。1枚目は、まず臨床研修に 必要な経費及び財源を議論いただく参考として、各医療機関全体の収入及び支出につい て、医師1名1カ月当たりに換算するとどれぐらいの収入と支出があるのかを、事務局 のほうで大まかに試算したものです。試算の材料としては、当局のほうで「平成12年度 の病院経営収支調査年報」を材料にして、試算いたしました。  各経費の中には必ずしも医師1名1カ月当たりというふうに置き換えて馴染まない部 分もありますが、一般の3年目以降の医師と研修医との違いを明確にしたいという趣旨 もあって、医師1名1カ月当たりということで換算して、資料を作成しております。1 枚目ですが、上と下に表が2つあります。上が3年目以降の医師で、下の欄が研修医と いうことで試算したものです。左側が収入、右側が充当される支出です。  まず上の一般の医師です。収入の所ですが、大まかに3つの項目で区分しています。 1つ目、上の「医業収入」については、まさに診療行為を行うことによって入ってきた 診療報酬などの収入です。2つ目の「補助金」については、施設整備費、設備整備費な どの国や自治体から出ている補助金です。3つ目は「その他の医業外収益」で、借入金 の収入やその他医業以外の部分の収入です。この区分に従って試算すると、こちらに書 いているとおり、1人1カ月当たりおよそ合計1,200万円程度の収入があり、病院に対し て収入に貢献している、というふうな試算が出てきました。そのうちのほぼ9割が医業 収入となっています。  右側の「支出」の部分については、ここに書いているとおりです。充当される支出と していちばん大きなものは、右側のいちばん上にあるように、「医師等従事者給与費」 の人件費です。こちらについては、1人1カ月当たりに換算すると、おおよそ580万円程 度が充当されているということです。次の大きなものとしては、「医薬品等材料費」 で、こちらについては、約300万円が充当されています。3つ目の「諸経費・委託費」は 光熱水料等の諸経費でして、こちらについては、おおよそ140万円が充当されています。 1つ飛ばして「減価償却費」ですが、こちらも施設・設備などの固定資産の減価償却 費として、約60万円が計上されています。「その他医業外の費用」として支出されてい るのが約56万円でして、トータルで見ると、おおよそ1,170万円が支出に充当されていま す。これを総括すると、一般の医師については、やや黒が立つというような状態かと思 います。  下の「研修医」の部分ですが、まず研修医について試算するに当たって、3年目以降 の医師と異なる点、特色が何点かありますので、そこについて説明します。「医業収 入」の所については、一応数値は入れておりません。まず医業収入については、研修医 は研修の職については単独で診療に従事しないこともありますし、まだ経験が浅いとい うことで、業務の効率が悪い等特色があるため、3年目以降の医師と比較して、医業収 入に対する貢献は少ないだろうということです。どの程度少ないのかということについ ては、正確な試算がありませんので、空欄とさせていただきました。この部分について は、後ほど各委員の方に意見を伺いたいと考えております。  収入の2つ目、「臨床研修費の補助金」については、現在検討いただいている指定基 準プログラム認定基準を前提にするとどのくらいの額が必要なのかということで試算す べきなのですが、こちらについてもまだ流動的な不確定要素がありますので、空欄にし ております。ちなみに参考として、現行の医師の臨床研修補助金については、先ほどご 説明したとおり、トータルでは43億円ありますが、これを出向ベースで研修医1人当た りに換算すると、おおよそ1人1カ月当たり5万円の補助金が支出されています。  同じく、下の「支出」の部分です。こちらについても一般の医師と異なるところです が、当然のことながら臨床研修を行うに際して、臨床研修固有の費用が支出として計上 されてきます。こちらについても具体的にどの程度の額が必要なのかということについ ては、まだ流動的な要素が多いということで数値は入れておりませんが、具体的にどの ような経費が必要となるかについては、2枚目のほうに項目だけ列挙しております。  2枚目ですが、「医師の臨床研修に必要な費用」ということで、大まかに項目を整理 しております。大きく分けて、4つあります。1つ目は、指導医に対して支出する経費 です。2つ目については、研修などについての管理に必要な経費です。3つ目について は、研修自体を行うに際して、必要な経費です。4つ目は、その他の費用ということで す。  頭に戻って、まず指導医に対して支出される経費として大きく2つあって、1つ目 は、指導医に払われる、指導することに対する手当です。2つ目は、各医療機関で指導 医に対して行う研修・講習などに必要な経費です。管理経費についてはいくつかあっ て、下のほうに、ほかの分科会で議論されたものを参考までに付けております。1つ目 が研修管理委員会の運営に必要な経費です。2つ目が、研修の評価と、最後の修了認定 の際に必要な経費です。3つ目は、採用・面接などに必要な経費です。4つ目は、複数 の施設を回りますので、各研修施設間の調整に必要な経費です。5つ目が、移動の際に 必要な旅費や、その他通信費です。  3.ですが、研修そのものに必要な経費は大きく分けて4つあります。1つ目がいろ いろと教えるに際して必要な教材費、2つ目が印刷製本費、3つ目が消耗品費、4つ目 については、医薬品や医療機器等の材料費です。こちらについては、研修医は経験が浅 いということで、3年目以降の医師に比べてロスもある程度あるだろうということで、 記載しております。  4.は、その他の経費として、研修医の宿舎の整備に必要な施設整備費や宿舎の維持 に必要な経費です。研修に必要な経費を事項ごとに整理すると、大体このような感じに なります。こちらについても、後ほど各委員の方々のご意見をいただきたいと考えてお ります。以上です。 ○大谷小委員長  ありがとうございました。早速、ご意見なりご質問をいただきたいと思います。まず 最初に資料3について、(案2)を中心に見ながらご議論いただければよろしいと思い ます。ご自由に委員の方々のご議論、ご意見をお願いいたします。 ○星委員  前回もお話したと思うのですが、3頁の社会保険関係ですが、いわゆる一般的な社会 保険に加えて、医師特有のといいますか、医師の資格を得て診療行為をするわけですか ら、あまり言いたくない言葉ですが、医療事故を起こしたときにその補償の責めを負う 場合、病院が100%その責めを負いなさいというのも正しくないだろうということで、 我々は「医賠責」と言っていますが、賠償責任保険のようなものもひとつ基準に入れ て、絶対ということなのか、あるいはそうでないという議論があるのかもしれません が、その部分を明確にしておく必要があるのだろうと思います。 ○大谷小委員長  事務局、いかがですか。医賠責を故意に抜いてあるのですか、そんなことはないので しょう。 ○医事課長  (案2)でいきますと、5頁の「処遇に関する基準」で、明示すべき事項ということ で、黒ポツの下から2番目に「医賠責保険加入の有無」という格好で、そこの点ははっ きりさせてくださいということにはなっていますが、それを一歩進めて、基準に入れる 必要はないのかというご指摘かと思います。そこはご意見をいただければと思います。 ○大谷小委員長  ただいまの星委員の提案に対して、ほかの方はいかがですか。 ○下村委員  常識的に考えれば、いまおっしゃったような要素は、当然カウントされるべきだと思 います。ただ、「基準」と言っているのですが、処遇の場合の基準の性質です。雇用関 係ということになると、雇用の場合の労働条件は労使関係によって決定されるわけです から、労使協議などによって決まってくるという格好になってくるわけです。最低賃金 法という規制はありますが、あえて、厚生省が基準を決めて、最低賃金以外の基準を決 めるという考え方になるのか。その場合に基準という意味は何なのか、というところを はっきりさせる必要があると思います。  普通、賃金は雇用関係によって決まるので、雇用契約の中身として決まってくるわけ ですから、労使協議事項みたいなものです。あるいは、そこで決まっている賃金を承認 した上で、ある所に就職するという格好をとるわけですから、そこの基準とは、一体ど ういう意味なのか。病院ごとに違ってくるはずではないかと思うのですが、そこは一体 どうなのか、疑問として残ります。  在籍出向の考え方は、一般的な説明としてはこれでいいと思うのです。しかし、臨床 研修の場合は、多分どこもこんな格好でやるわけですから、一応タイプを決めて、こう いう場合もあるというのではなくて、社会保険の適用なども含めて、どういう形でやる という方針を決めてください。社会保険や労働保険の適用は厚生労働省が決めることが できるのですから、社会保険はこうで労災はこうだと言われたのでは、やるほうは面倒 ですから、そんなものは決めたらどうですか。労災だけ別にする必要はないのではない ですか。あとは、費用の負担をどこがするかということがあるので、そこはもう少し踏 み込んで決めたほうが、実行する側としてはやりやすいのではないかと思います。  出向元が現状でどう変わるのかということですが、仮に現状でいくと、研修医の75% が大学で研修をやっているという数字ですから、75%は大学と雇用関係があるというこ とになります。医局に入るというのは就職なのですか、雇用契約になるのですか。そう すると、75%は最初の元請の大学病院と雇用契約を結んで、そこが元請になってそこか ら出向の形で臨床研修をする、というようにも見えますね。75%という数字は変わるか もしれませんが、やはり、大学と雇用契約を締結するわけですか。 ○大谷小委員長  基本的に、現状とここの議論は変わってくると思うのです。 ○下村委員  変わってくるのですが、仮にいまの現状にこの議論を当てはめると、大学病院がここ でいう出向元になって、管理型あるいは管理型の研修施設が出向先になるわけで、そこ と雇用契約を結ぶ。そうすると、かなりの臨床研修生は、大学と雇用契約を結ぶのだ と。いまは医局と何だか分からない一種の契約関係みたいなものがあって、それを雇用 という形で定着させようということですかね、それは疑問です。 ○大谷小委員長  総論でいいわけです。いまのところ、現状がどう変わるのかがよく分かりませんが。 ○下村委員  かなりのものがそういうことになるということを想定したのか。医局は雇用契約を実 際上は持っているようなものですね。いまも実際に臨床研修が終わったあとでも、大学 からやってきて、大学の都合で帰っていく医者はたくさんいるわけですから、あれは雇 用契約なのですかね。 ○西岡委員  大学の場合が出てきましたので、少しだけお話させてください。大学には、いわゆる 国立大学、公立大学、私立大学がありますが、国立と公立の場合は、研修医は研修医と いう形で別個になっているのです。全国医学部長病院長会議の提言でいきますと、医局 と研修医が契約するということはあり得ない。すべて病院長の下に研修医が一括され る。医局に入るのはそれが済んでからという、考え方です。  私は国立大学ですので国立大学の現状で申し上げますと、研修医は病院長と契約をし て研修する。形としては裏で入局というようなことがあるかもしれないのですが、それ は全く別の話でして、医局と契約を結ぶということはございません。 ○下村委員  説明すればそういうことになるのでしょうけれど、実態としては国立大学には院長が いらっしゃるけれども、あんなものはと言うと失礼ですが、選挙で1、2年で変わって いくので、院長には本当は実質な統治者能力はないようなものです、その期間だけはあ りますけれども。実態として、医局にはあるのです。そこを一体どう考えるのか、そう いうものを法律的にどう整理するか、というのが今回の問題だと思うのです。おそらく 独立行政法人になれば、いまのように回り持ちで病院長をやられるというようなことも 変わってくるでしょうけれども。いまは実態の問題として、我々が接触する限りにおい て、大学病院の院長の権限は、あまりないです。 ○西岡委員  おっしゃられるとおり、ないですね。 ○医学教育課長  西岡委員は資料をお持ちでないようなので私のほうで申しますが、今年の3月に全国 医学部長病院長会議がこのワーキンググループの前にやっていた検討部会で提言された ペーパーが、私の手元にございます。いまのご質問に関連して言えば、その中にこうい う記述があります。「研修医の研修体制」というパートがあって、その中には、「研修 医の研修における最終責任は病院長に属するものであるから研修医は病院長の直轄とす る。各病院は、病院長の下に卒後臨床研修センターを置く」という書き方になっていま すので、事実上の問題としての医局の存在はいろいろな意味であるのかと思いますが、 こと卒後臨床研修についての今後の提案という形では、いま申し上げたようなものがこ の3月に提案されている、ということはご理解いただけると思います。 ○大谷小委員長  下村委員は現状をおっしゃっているのですが、国立大学のほうは、将来展望として は、いま言われたように研修センターという形でそこをきちっとしていこうと。私ども は、それは非常に結構なことだと思うのです。いまの現状でそれにこだわってこちらの 処遇を考えていると、ちょっと。 ○下村委員  どう変わるのかということも、はっきりさせるという意味で。 ○大谷小委員長  現状を申し上げているということですかね。研修センターになれば、研修センターの 運営は誰がどうやっていくのか、というところが問題になってきますね。 ○西岡委員  実際、もうすでにかなりの国立大学で施行されているのですが、卒後臨床研修セン ターというものを設置して、それは病院長の直轄ということです。しかも、そこに専任 の教官を置いて、研修医を一括してプログラムその他の実行を行わせる。そして、プロ グラムの企画もやるという形で、すでに一部が進行中です。 ○大谷小委員長  ちょっと将来の方向として、私は名古屋大学がやっておられるという話を聞いてい て、見たことはないのですが、それは本当に着目すべきだと思っています。その新しい 方向というのは、これから大学側が国立大学も私大協もみんな相談してやっていかれる と思うのですが、私たちの臨床研修病院を育成していく立場から言うと、大学はできる だけ、むしろ2年後の専門研修に力を入れられるべきであって、2年間の研修は、むし ろ研修病院に比重を置いていただくのが望ましいのではないかと、私個人の見解ですけ れども。名古屋病院、ひとつどうぞ。 ○二村委員  いま研修センターのお話が出ましたが、私の所の実態を申し上げますと、臨床研修セ ンターが院内にあります。3年前に立ち上げて、専任の教官も置いており、そこで一括 管理をしていて、研修医のローテイトもすべてそこでやっております。ですから、入局 のこととは全く関係なく、入局しないでローテイト研修をやっております。そういうこ とをやっている所もあるということをご認識いただきたいと思います。 ○下村委員  研修センターがそこまである程度独立性を持ったものとしてつくることが、すべての 国立大学で可能になるのかどうか、というところはひとつ問題だと思います。 ○西岡委員  形としては、可能になっております。予算措置までは行っていない所もあるかもしれ ませんが、すべての所で卒後臨床研修センターを置いて活動しております。ローテー ションの形のプログラムを組んだり、評価の問題もそこでいろいろ行われている形で す。 ○堀江委員  先ほど臨床研修については大学病院を離れて、そして、その2年を経過したあとで大 学における教育をというお話がありましたが、私は国立の実情は詳細が分かりませんの で、私立医科大学について申し上げます。今回提出されている、例えば、社会保険やそ ういうものに加入させて、研修医としての管理をきちっとしていく必要性が出てくれ ば、それに向けて各大学における取組みを当然やっていかなければならないわけです。  現状の対応については、大学間で多少の差があると思います。我々の施設では、大学 が正規の職員として雇用することはできませんが、新しい研修医としての身分を認知す ることで、私学共済にも加入することを今年からスタートさせました。その場合、2年 間、当大学で設置したカリキュラムでもって対応していくことになりました。そうすれ ば、大学附属病における研修といいましてもきちんとしたカリキュラムにしたがって講 座医局に所属することなく研修をきちっとやっていく体制を構築することは可能と思い ます。 ○下村委員  もう1つはいまのような点なのですが、予算の内容からいくと、日々雇用というので すから、賃金職員ですよね。2年間研修が継続することが明らかな者を日々雇用の形で 賃金職員として処遇しているということがそもそもおかしい、給与を出すべきではない かと思います。2年間という一定期間があって、しかも雇用関係が前提になっているよ うな者を日々雇用の形で賃金職員としてしか処遇しないというのは、これは常勤家政婦 の話になってしまうのですが、そこまでやろうと言っておられるわけですかね。  理屈から言うと、これを常勤化して普通の公務員給与を払わなければいけない、とい う形になるのではないかと思います。理屈の流れから言うと、こう見えます。 ○大谷小委員長  個人としては下村委員と同じように、本当は常勤化をしたほうがいいと思いますが、 ちょっと労働基準局の方に伺いたいのです。ただ2年後に研修した人を必ずその病院で 雇用しなければいけないというような、一般には2年間も常勤で勤務すれば、そこの会 社で永久に行くというのが普通の期待ですね。そういうふうにうまい具合にできる方法 はありますか。例えば、矢崎委員の医療センターで2年間研修したあと全部残ると言わ れると、そこのところはできれば常勤にして安定しておいたほうが、国立などの場合は いいと思うのです。その後、2年後に研修に来た人全部を後で雇用しなければならなく なれば数からいけば困るわけで、そこは労働関係の法規ではどういうようになります か。 ○引地監督官  労働契約に付随しましてそういう事後の雇用を約してそこで働かない場合は一定のペ ナルティ、賠償をさせるということになりますと、これは賠償予定の禁止ということに なります。ただ、それ以外の予約をするというようなことにつきましては特別の法律の 規制はないところです。 ○大谷小委員長  もっとわかりやすく言えば「2年間だけ常勤としてお雇いします」ということは労働 法関係ではどうなりますか。 ○引地監督官  契約期間につきましては1年を超えることはできません。雇用の期間の定めのない契 約にするか、あるいは日々雇用と。 ○大谷小委員長  日々雇用にしなくてもよいとするとか。 ○引地監督官  契約期間につきましては1年以内ということか、あるいは契約期間を定めないことが 必要になっております。 ○堀江委員  1年契約でもって、1年終わった段階で改めて次の年の契約をするということで2年 で任期満了とすることは可能なわけですよね。 ○引地監督官  はい。 ○二村委員  現在は3月31日に切り替えをやっています。それから、40時間の非常勤は今後どう なっていくのでしょうか。ここにも書いてありますように、研修医は週40時間でやって いきますよね。国立ですと、いまは非常勤でやっております。いま独法化の話をずいぶ んやっているのですが、平成16年からなっていく過程で40時間非常勤はなくなるであろ うという話をいましているところなのです。そういうことに関しましてはそちらでは何 かディスカッションがありますか。 ○事務局  非常勤の職員日々雇用については1日8時間以内ということが決められておりますの で、1日8時間以内で5日で40時間ということも可能にはなっております。ただ、現在 は1日6時間、5日で30時間ということで研修医の方に研修をやっていただいていると いう実態になっております。 ○下村委員  期間を定めて雇用する場合は1年しかできないのだからと。そうすると、これは2年 が前提になってるわけだから、本当は基準法上の特例か何かをつくらなければいけない という話になるのですか。 ○高梨委員  政策論と法律の解釈論と両方あるのだと思うのです。いまの労働基準法では、雇用期 間については期間の定めをしない契約と期間の定めをする契約と両方あるわけです。期 間の定めをする場合は1年以内となっているのですが、例えば建設工事だとダム工事が 3年かかるというような、有期の工事があるのです。そういうときには有期の契約とい う形で、1年を超えて雇用することができるはずだと思います。ただ、それはダム工事 などの場合にはできるのですが、こういう病院の研修がそういうものに入っているかど うかという問題が一つあるはずです。  もう一つは、政策論としていまの有期雇用契約期間を1年に限定しているのはおかし いではないか、ということを私が属する団体などは前から主張しているのです。いまで も3年まではできる類型があり、その類型の範囲を広げたり、主張としては5年のもの だってあっていいのではないかと言っています。そういう政策的に変えていくかどうか という、問題があって、その中に研修をどうやって位置付けるかという問題もあるので すが、そういう法律を変えないで、いまの制度のままで解釈する場合はどうやるかと。 こういうときに、先ほど堀江委員がおっしゃったように、とりあえず1年でやっておい て、もう1年ということで通算2年にする。それから、労働契約上は無期限ということ で、その期間の定めはしないのですが、研修は2年だから2年すれば当然終わりなので すよ、というのは社会通念上わかっている。だから、引き続き2年を超えていたいとい うことは、少なくとも研修に関してはないわけですから、使用者が研修を終わった人を 引き続き雇わなければならない義務はないはずだと思います。 ○星委員  議論が分散してしまっているのですが、決めなければいけないことはほかにあるのだ と思うのです。つまり、全体のスケジュールを考えたときに、来年度処遇しなければい けないお金ともう少し時間をかけて考えてもいいお金というのがあるのです。そこは分 けて考えないといけないのですが、その話はその話として、この研修手当のABCと書 いたときに、最低賃金に定められた以上の研修手当を払えということになれば、国費な り何らかのお金をこの雇用のために特別に手当をしないでおいて最低以上にしろという のはロジック上できないのではないかと思うのです。  一つ参考にすべきものとしては既に定められている1万5,040円か何かがあります。そ れが一つ参考になるのかもしれないけれども、それ以上にすることをここに基準として 定めることが可能なのかどうか。先ほどの基準論、つまり、基準というのはどういうこ とですか、とおっしゃっていたけれども、それを明確にすることが必要です。そのこと を決めないと、いくらにしましょうか、予算でいくら取ってくれるのですか、という話 につながらないと思うのですが、そういう理解でよろしいのですか。 ○事務局  星委員が言われたところはまさに核心を突いている部分がありまして、先ほど下村委 員も指摘されたのですが、この処遇で定めるべき部分とそうでない部分を分けるメルク マールは何かという話については、おそらく、私的自治が妥当すべき分野とそうでない 分野を分けるべきだという話なのだろうと思うわけです。給料をどのぐらいにするかと いう話は、最低賃金を満たしているか否かはともかくとしてそれ以上のお金を出すかど うかというのは私的自治の分野の考え方が妥当する話なのだろうと。そういうことにな ると、最低賃金以上の手当を基準として定めるのは非常に難しいのかと。  あと、実際上、いま星委員が言われたように財源の話も絡んでくるので、そういう意 味でも難しいと。あと、この前、事務局からご説明したように、独禁法上の問題も回避 することが難しい。そういった3点の問題があることから、事務局としてもこういった 話をリードするのが妥当かどうかはともかくとして最賃法上の基準を超えた形での給与 基準を示すことは現段階では非常に難しいのかな、という考えでございます。 ○星委員  ということは、アルバイトなき研修を実施するのだといったときに、最賃というのは 最低限ですけれども、それが一つのメルクマールになるというか、それしかないのだと 思うのです。むしろ、決めるべきことは、例えば研修費名目で1回払ったものを取り上 げてはならないとか、そういうことをきちんと決めておく。あといくら出すかは、それ こそ、それぞれの自治に任せるべきだと思います。ただ、そうではない、これは国が責 任を持ってやる、ということですので、そうだとすれば、直接賃金として払われる何 パーセントか、あるいは1時間当たりいくらで払うのか知りませんが、については厚生 省が予算化をする。つまり、その部分は割増をしなさい、ということを言っていただく べきだろうと思うのです。その辺のところは、私は、国家の議論だということになれば 割増をして一般的に認められているような数字にすべきだと。その割増部分については 雇用主と国との折半になるのかもしれませんし、ある割合で負担することになるのかも しれませんが、ある基準を示すとすればそういう腹づもりを持ってしていただきたい。 皆さんそう思っていると思います。 ○大谷小委員長  これは後の必要な経費と財源との絡みもあるのです。いまのところは理想的な形で議 論することとすれば、当然、労働基準法によって40時間とあれとは守ると。実際問題と して、こういう医師研修については時間外のいろいろなことが当然起こり得るわけだか ら、それについては労働諸法規の精神に沿って適切な代価を払うのが原則ですね。だけ ど、「それでは払えないから研修病院は辞退します」と言って、全国の病院から星委員 のような強い管理者が出てきて国に向かって「俺は見合わないぞ」とたくさん言いだす と。  こういう民主主義の制度の中ではそこのところは難しいから、国としては「国の金で カバーしますよ」ということが言えればいいのだけれども、そこのところは最後には財 務省との関係にいくのだけれども、一応の原則としては今回の新しい制度においては理 想論がまず筋であると。その後の場合はまた必要な財源のことを議論しまして、厚生労 働省のほうで「全然お手上げです、そんなことを言っていただいても取れません」とい う腰抜けみたいな話になれば、これはまたそこはそこで考えなければいけない。だけ ど、今度の場合は相当数の臨床研修病院の卒業生全部を確保するとすれば相当大変なの です。  だから、原則論だけでいけるかどうかというのは私も全体を議論してみないとわから ないのですが、いまのところは、星委員が言われる心配はありますが、原則論としては 一応そういうことでいくと。だけど、後の財源問題で私どもとしては「国がその分を当 然カバーしなさい」と言ってそれで言えるのかどうか。言いっ放しでそれでいいのかと いう問題もあります。これは後で議論しましょう。  今日は、とりあえず31日のものには少しは私どもの意見のまとまったところを言わな ければいけないのだけれども、5頁を見ていただいて、私は研修手当のところがいちば ん難しいところだと。前のときにも下村委員がおっしゃいましたが、それは雇用関係で 決まるのだと。だけど、私もそう思うのですが、そうかといって一方では非常に常識外 の安い所もあるとすれば、それをどう担保してきちっと安定した研修がされるように国 の基準として示せるかと。その書き方は一体どうなのかと。  資料3−1の5頁、研修手当のABCということにとらわれないで、Aの最低賃金額 以上というようなことは、現実にはいろいろな県立病院などは最低賃金以上に普通の職 種として普通の看護職などと比べてみて妥当なる給与を払っておられるのに、ことさ ら、今度義務づけた本来国が責任を持つことになるはずの制度において最低賃金という ようなことをわざわざ書く必要があるのかというのは少し疑問です。ここのところは皆 さんで大いに議論していただきたいのです。ABCにはこだわりません。新しい案があ ればどうぞ言ってください。 ○堀江委員  私は前回の委員会に出席しておりませんが議事録を読ませていただきました。まだ最 終の議事録ではありませんけれども、私立大学における研修手当の支給等について少し お話が出ていたと思いますので触れさせていただきたいと思います。今日お配りいただ いた資料の4を見ますと、国立大学あるいは国立病院等において非常勤職員手当として こういう形で手当が研修医用に準備されているというのはわかります。  ただ、多くの私立大学病院の状況でありますけれども、資料の4の2頁にあります が、実際には臨床研修費等補助金交付要綱に従って、例えば、我々の大学病院には現状 では年間で250名ほどの研修医がいるのですが、基準に沿った形で補助金の申請をした場 合、約1億9,000万円ぐらいの申請になります。しかし、現実に給付されております補助 金は約7,600万円であります。  その7,600万円研修医は手当として出ているわけではありませんで、研修のために必要 な経費等に対しての補助という形で出ています。私たちの所では、現状ではストレート 研修医もいますしフルローテートの研修医もいますし、その研修の内容に基づいて総合 研修医には15万、ストレートの場合には3万ということで月手当を出しております。実 際にはそれ以外に当直料として研修医に約3億5,000万円の支払いを大学として行ってお ります。それを今年度から制度を改めて月手当、平均化して支払い私学共済にも加入さ せることで対応しましたが、予算的に非常に厳しい。  最終的に、まさに最低賃金法に基づいた賃金になり、すべて手当等を含めての12万と いう額が出てきたわけです。そうしますと、各国公立等の施設において支払われている 額に該当する手当をきちっと支払っていくには現状の補助金等の状態でそれに対応する のは非常に難しいのが実情ではないかと思います。これは1私立大学の状況ですけれど も、私立医科大学の月手当についてかなり少額の所もあるという背景にはそういう補助 金の実情等もある、ということは何とかご理解いただきたいと思います。 ○星委員  私はそれは話が逆だと思うのです。この手当といいますか、補助金の中身は決して手 当という名目ではないはずでありまして、指導医に対するもの、研修医にかかるもので す。それをベースにお話を始められるのは間違いで、私は、最賃法というものがあっ て、労働者性の話は今回置いておくことにしてありますので労働者性があるかどうかは 別として、それに相当するものだということで最低賃金が一つの最低ラインとしてある と。  もう一つは、国家公務員で決めている日額いくらというものがあると。ですから、各 病院がその最低基準を超えてある程度のそういうものを参考にしながら決めて、それを あらかじめ提示する。その中から研修費名目でピンハネしたりしないということを明記 する。そして、その財源については、基本的な部分については、いまお話があるように この人たちにある程度の収入をあげることが前提ですから。医者が、いかに研修医とい えども、ある程度の収入をあげて最低賃金ももらえないほどの仕事しかしていないのか というと、私はそうではないと思うのです。そこは、最低賃金法にかかる部分に関して 言えば理屈はないのです。ですから、合計として12万ですと。何泊もさせますと。しか し、何泊分はこれを満たすと払えませんと。そういうことでは議論がもたないような気 がするのです。 ○堀江委員  補助金は研修医の手当として得ているわけではないことはわかっていますけれども、 実際に研修に対しての補助金として出ているのが非常に少ない額であるという実情を申 し上げたかったのです。今後ローテーション研修が各施設で実施されることになれば、 総合診療方式195,000円の補助金を研修医の人数分支給してほしいと思います。 ○下村委員  座長がいろいろ心配されるのはわかるのですが、いまの議論の状態で31日にきちんと した最終的な答えまで出すのはかなり無理だと思います。ただ、いままでの話の経過か らいって、いろいろな問題点というか、話の筋道というか、問題点の整理ぐらいはもっ ときちんとした形でできるのではないかという気がするのです。そういう立場から申し 上げると、いまの賃金の問題について、2年間ということで基本は雇用契約なのだけれ ども純粋の雇用契約なのかどうかという点が問題だと思います。プラス、研修を一体ど ういうようなものとして考えればいいのか。多少、特殊性を持った雇用契約だというこ とにはなるのではないかという気がします。その辺は一体どう考えるのか。  ただ、雇用契約が基本ということであれば、先ほど言ったとおりで2年間。落第があ るかもしれないから5年ぐらいやる人もたまにはいるのかもしれないけれども、それは 例外とすれば、2年間を予定しているのに、日々雇用というのも1年の雇用契約という のも変なので、2年間ということが安定した状態でできるようなことにすべきではない だろうかと、こんな感じがします。  それから、私立大学では、というお話があったのですが、私は、それは私なども先ほ ど星委員が思ったようなことをあれしているのです。いまの雇用契約ということが医師 として働くという意味において雇用という関係が成立しているわけですから、当然、そ れは収入を伴っているわけですから、それは最低賃金を払わないほどの額ではないとい うのは多分そうだと思います。  金がないからと言われるのだったら、どういう形になっているのか大学側の財務状況 をはっきり見せてもらわないと。これは保険に払えという話になるのか財務省に払えと いう話になるのか、いろいろあるのでしょうけれども、そこをはっきりしないとどちら も納得しない。何の金が足りないのか。それは大学全体のあれを見れば、一方から見れ ば収入が伴っているはずではないかという議論があって、それに対して払っていない。 払っていなくて、しかも、金がないとおっしゃるならばその金がどこかへ行っているは ずなのです。それを見ようと思えば大学の財務内容を見なければわからないという話に なるのです。だから、財源の確保と言ってみたってその辺をはっきりさせないと無理で はないかと思います。その問題が1つあります。  もう一つは、研修の実態に絡む点なのだけれども、学部を卒業して臨床研修医になっ て、私は実態をよく知らないからその点は星委員が詳しいかもしれないけれども、半年 ぐらいはあまりやらせないのだとかいう話もあるようです。そうすると、半年は収入が ないのか。7カ月ぐらい目になったら収入が出てくるのか。そういうほうの問題があり ます。  それは先ほどの雇用だけの契約ということでもないのではないか、ということなどと も絡んできます。そうすると、一体、支払われている賃金と収入との関係をどう評価す るか。だから、それは実際にどんな研修をやるのだと。半年ぐらいは医療の現場で直接 医療に携わることはないのか。見るとか教わるとかいうだけなのか。その辺も問題に なってきます。7カ月経ったら実際に医療に手を下すのか。  その辺はプログラムなどを見てもいろいろな中身が書いてあって、少なくとも2カ月 以上だ、3カ月以上だ、いろいろな話があるけれども、あれだけではわからないです。 一体どこから収入を伴うような就業というか、形になっていくのかという問題が一つ絡 むような気がします。その辺を決めた上でやらなければいけないのではないか。純粋な 雇用形態でないとすると研修手当という形のものが存在し得るのかどうか。給与体系の 問題としてはそこは一つ問題になるところだと思います。事業所内の研修とか、どこか へ研修に行けとかいうときはそれなりの研修手当を出す場合もある。それは研修の形に もよるのです。  もう一つ金の問題として言うと、先ほどのあれでいくと、指導医というのは1日8時 間の半分で5人とか4人とか。これは指導医のほうの施設基準の問題になると思うので すが、そこら辺の評価はどうなっているのですか。その問題の答えが全部出てこないと 具体的な処遇についての答えは出ないです。しかし、それにしても臨床研修をやってい る病院自体が収支状況とか財政状況に差があるのだから、みんな同じ賃金を払わなけれ ばいけないのだというのは理屈としてはなり立たないと思います。  それならば、臨床研修病院の財政状態の一定水準を国が保障してくれるのか。それな らばみんな同じ給料を払えるでしょう。そんなことはないので、収入からいったって立 地条件とか何かによって患者の数が多い所も少ない所もいろいろあるわけでしょうか ら、自ずからその病院によってどのぐらいの賃金が払えるのかということが別な条件か ら規定される所が出てくるだろうと思います。  もう一つわからないのは、国公立の場合には常勤化して公務員としてやれということ になれば、公務員の給与表がありますよね。そうすると、臨床研修医も非常職俸給表の 突端のところぐらいの格付になるのかなと。そこはそうするのですか。いまの体系でい くと理屈から言うとそうなってしまいます。もっとも、臨床研修前のところは医療職俸 給表の適用がないとか、そんなことも決まってないのでしょうね。 ○医学教育課長  いまの件に関連して申しますけれども、現在は非常勤職員ということになっておりま す。それの給与算定に当たってはその俸給表のいちばん下のランクよりも、それ掛ける 0.8掛けとか、そういう感じで大体の水準が決められているという状況があります。大学 についても、国立大学については独立行政法人になる議論をしておりますけれども、こ の問題についてこれが非常勤職員というカテゴリーになるのか。常勤というと定員の中 に入ってしまいますから、そういうものが果たしてフィージブルなのかというような問 題も含めて現段階では決められません。  ですから、この部分についてこの段階で一つに「こうだ」と決められてしまうと私た ちは正直困ってしまうかなと思います。それにつけても思いますのは、資料の4頁目の (案2)、既に(案1)は破棄されたものというご説明がありましたけれども、結局の ところ、ぜひご議論いただきたいと思いますのは(2)の1番目の○の「有するが労働 性が認められると考えられる」という表現の意味することは何なのかと。  (案1)から(案2)に変わってこの表現だけが変わりましたけれども、例えば2つ 目の○の「相当する処遇」という割とニュアンスのある表現になっていますけれども、 これは労働基準法の体系を前提にした議論からスタートされていらっしゃいますけれど も、いま私どもがご議論いただきたいと思っていますのは医師法上の研修の問題であっ て、いまのご議論であるとするならば労働基準法上の労働イコール医師法上の研修とい うような、私の理解が間違っていたら教えていただきたいと思いますけれども、そうい うご議論であるのかないのか。その辺のところを旗色鮮明にした議論、かつ医師法のほ うでは研修医の研修専念義務ということが書いてあるわけですから、下村委員がおっ しゃられたとおり、ある意味での特殊なカテゴリーを考える必要があるのではないかと いうことを文部科学省の問題意識として持っております。ご議論の参考にしていただけ ればありがたいと思います。 ○大谷小委員長  私の個人的意見を申し上げますが、世界的に見まして、臨床研修というのはラーニン グ・バイ・ドゥーイングなのです。自分が実施することによって学ぶ。そのドゥーイン グということをどう考えるかということなのです。これは非常に特殊なあれだと思うの です。要するに、半年間は見物しているのか、というように下村委員がおっしゃいまし たけれども、基本的には何らかの役割をやりつつ、そこに指導医がいて。これは指導医 がいることが絶対に必要だと思いますけれども、そばにいるかどうかは別ですけれど も、つまり、労働者性ということが非常に難しいのですが、私は、世界的に見てその ドゥーイングというものをどう解釈するかなのですが、これを国家が強制するについて 無報酬でいいのかどうかと、そこのところを皆さんに明解に議論していただきたいと思 うのです。 ○医学教育課長  おっしゃるとおりだと思います。ボランタリーの時代であれば、そこのところが曖昧 でもよかったのかもしれませんが、医者の国家試験を通りましたから公法上で医行為は できるわけですけれども、一定水準の制限を加えているわけですから、個人の自由をあ る意味で制限しているわけですから、それに対して制度的にどのようにコンペンセー ションをするか、というところのご議論はぜひこの処遇の中の議論としてやっていただ きたいと思います。 ○川崎委員  私立医科大学の立場で発言させていただきます。この予算の中の国立病院と国立大学 の所で、国立病院に18億、国立大学に125億の国費が使われているわけです。1人当たり に換算すると約250万円から270万円の税金が使われているわけです。それから、いまま では義務化されていませんが、平成16年から義務化されて、カリキュラムも同じような もので2年間義務化されるとすると、私立の医科大学の付属病院での研修をされる方や 臨床研修指定病院で研修される方についてもかなり近い金額の国費が投じられてもいい のではないか。義務付ける代わりにそういうような保障があってもいいのではないか。 そういうことでその財源措置をぜひ厚生省あるいは下村委員のほうにお願いしたいと思 います。 ○大谷小委員長  少し視点が違うのですが、川崎委員と堀江委員にぜひ教えていただきたいのです。全 部の研修医に日本中で同じようなレベルの処遇をするといたします。これは国費で出す か診療報酬から出すかは別にいたしまして、例えば30万円なら30万円、20万円なら20万 円を払う。そういたしますと、臨床研修制度というものが成り立たなくなる心配がある のです。なぜかというと、希望者はみんな大学病院へ行ってしまうのです。2年後は大 学教授になろうと思えば自分の大学病院で研修をしたほうが有利なことは誰が見たって そうなのですからね。  だから、待遇を全く同じにしてしまうことになれば、臨床研修制度を国が2年前に法 律をつくるときにもっと議論をすべきだったのです。そこのところを十分に議論しない といけないのですが、そこが曖昧になっていて、例えば東京のある私学の病院では10万 円を切っている所もあると伺っていますけれども、それでも100人近い卒業生が研修に来 ているわけです。そうしますと、それをまた国が同じように20万円、30万円払おうとな れば一体どういうことになってしまうのか。  折角、臨床研修でプライマリケアとかエマージェンシーとか、実際に地域でやってい ることをドゥーイングさせて医師として立派ないろいろな能力を持たそう、大学病院だ けの特殊な環境ではなしに全体として持たそう、という臨床研修の制度の意味がそこの ところで一体どうなるのかということを考えてみなければいけないと思うのです。だか ら、その待遇だけのことではないのです。 ○川崎委員  それはわかります。だから、最低限のものでよいと。結局定数が絡んでくると思いま す。 ○大谷小委員長  そこのところは本当に難しいので、これはもう小委員会の話ではないのです。臨床研 修制度全般の問題なので、そこのところがはっきりしないために処遇小委員会も非常に つらいところがあるのです。私は、臨床研修を2年やられる人にいままでと同じよう に、多少卑屈なというか、ほかの職場の方々と多少違った扱いを受けて、そういうこと で勉強をさせて。しかも、エマージェンシーとか、そういう厳しいことをやって、果た して医の倫理がそういうふうにうまくできるのかと。そこのところを考えなければいけ ないと思うのです。  この委員会は国に対して物申す委員会ですから、そういう意味で遠慮しないできっち りどういうようにすればいいのかと。しかし、そうかといって、給与は全部国が出せと いうだけではいかにも知恵がないと思うのです。それは弊害もあると思うのです。現在 はいくらありますか。現状は6割ぐらい行っているのではないですか。 ○医学教育課長  大学病院全体、国公私を含めれば4分の3は行っていると思います。 ○大谷小委員長  そうですか。そういうことでご議論願います。 ○医学教育課長  3頁目の国立大学病院の給与のことについて川崎委員がおっしゃいましたので、一つ だけ付言申し上げます。国立大学病院は、大体、月に20万円弱ぐらいの非常勤手当が配 られていますが、これは研修費ではありません。労働対価であります。そういうところ はご議論の参考になるかもしれません。 ○大谷小委員長  これは後の予算の問題のときにも議論していただきたいのですが、国の予算といえど も、無限に出せるならば出していただきたい。本当は国丸抱えでこういう法律をつくっ たのだからやる義務があるようにも思いますけれども、実際問題としてなかなかそうは いかないのではないかと。そういたしますと、先ほど医学教育課長が言われましたよう に、研修医の手当だけのことではなしに、実際、いまいちばんの問題は指導医が本当に 責任を持って。手取り足取り教えるという意味ではありませんよ。ラーニング・バイ・ ドゥーイングだから、本人がやれることはできるだけやられると。だけど、実際にやっ てみれば難しいわからないことがたくさん出てくるということに対して、指導の医者が 責任を持ってそれに応えてくれるような、そういう責任を分担してくれることを負わせ ることについて、一生懸命やってくれている指導医もいると聞いていますけれども、大 体、聞いていますとあまり熱心ではないという噂もあるわけなので、それをきちっとす ることが臨床研修制度の大事な一つのあれなのです。  そうすると、国費をどう入れるかという問題になってくるとこの指導医の問題。いま 国のものは1人当たり5万円と言っていましたけれども、その5万円の中で指導医分の 積算はいくらあるのですか。こんなわずかな金で指導医に責任を持てといっても無理な 話だと思います。私は、指導医には国がうんと金を出すべきだと。これは後のほうの議 論でやってもらいたいと思いますけれども、私個人の意見です。 ○下村委員  先ほどの議論の続きでいくと、ラーニング・バイ・ドゥーイングだというなら、 ドゥーイングの側面で見るとそれは雇用契約で、その対価は保険から払われているとい う実態があるのだと思うのです。ただ、ドゥーイングだけが本質ではないというところ が一つあるのではないかと思います。だから、国が全部払えという。国が全部払うぐら いならば、自分が直轄研修をやればいいのです。それぐらいの払うぐらいの金があるな らば、何かの形でそれでやれば同じようなものなのだから。  だけど、そうではなくて、そのやり方については義務化したのである以上は一定の内 容は担保されていなければいけないと思いますけれども、若干の幅は認めているわけで す。これを見ると「多少、多様性があってもいい」みたいなことが書いてあるわけだか ら、あまり多様化されてしまっていろいろな多様化された医者が出てくるのは我々も歓 迎しませんけれども。だから、そこがあるのだから、国の責任という話、義務化したか ら直ちに全部国だという議論にもならないのではないか。  それから、ドゥーイングという側面があるのだから、就務を伴うという面がある。だ から、変えることによってどこが変わるのか。どこを変えるのだと。大学で75%やって いるのも、大学はもう0にしたいと言っているのか。それとも、大学は半分ぐらいに落 とせという話なのか。その辺の目標みたいなものがはっきりしないと。現在、臨床研修 で出ている問題の本質はどこに問題があって、それをどう変えたいのか。抽象的には書 いてありますけれども、その具体的な目標がどうもはっきりしないから話が堂々巡りし てしまうようなところが出てくるのです。それを決めるべきなのではないですか。金が ないというならば、差し当たりどうするかとか、いろいろな議論もそれによってまたあ り得るわけですから、そこら辺の仕分けをしないと難しいですね。だから、話の筋道と しての本質をまずははっきりさせてくれと言っているわけです。 ○医事課長  議論が戻るようなところで恐縮なのですが、国立の場合、国立大学も国立病院も、資 料でお出ししています18億円なり120何億というところは全く独自にこの費用を上乗せで 出しているわけではなくて、その裏付けとして国庫に対して研修医の診療報酬が一旦納 入された上でこういった人件費として支給される構造になっています。そういう構造か らいきますと、私立病院も国立の施設もその部分は同じ条件だということでお考えいた だきたいと思います。そこら辺、少し蛇足かもしれませんがご説明させていただきまし た。 ○大谷小委員長  国立病院と大学では収入、支出のあれがだいぶ違いますね。 ○医事課長  量的な問題は別としまして、構造的には診療報酬が国庫に一旦入って、それがこう いった形で人件費として支給されているということです。 ○大谷小委員長  前に病院を調べてびっくりしたのだけれども、歳出の1割か2割ぐらいしか歳入がな いのだから、そんなことを国立病院でやっていたらどこだってつぶれてしまいますよ。 しかし、東大は、世界に名立たる東大病院だから、俗に言えば8割ぐらい赤字という計 算になるわけですから、一般財政を繰り入れているわけですから、それは国立病院とは 全然比較にならない。逆だと。 ○医事課長  労働にどれだけお金をどこから出すか、研修にどうやってお金を出すか、というとこ ろをぜひご議論いただけるとありがたいと思います。 ○西岡委員  少し議論が紛糾しておりますので、実際に私たちの大学でやっている研修の最初がど うなっているのかということをお話しさせていただきます。確かに、おっしゃるように ラーニング・バイ・ドゥーイングであるのですが、いまの医学部を卒業して国家試験を 受けられた方は、多分、先生方もご存じだと思いますが、注射一つもできないといった ような状況で現場に入ってくるわけです。私たちの所では、そこから指導医がマンツー マンでついて1年間やります。いろいろな医療行為に対して必ず指導医がついている。 だから、確かに指導医の負担はものすごく大きいわけですが、そういった形でやってい ます。むしろ、指導医が1人で診療されたほうがもっとたくさんの診療ができるといっ たような状況が現在の研修というものの1年目でございます。  2年目になりますと、確かに、一人立ちする部分も出てまいります。それでも、そこ で指導医が常にチェックをしなければいけないといったような状況で行っておりますの で、完全に労働者性というような形でご議論いただくことになってしまうと筋が外れる のかなと思っています。この改定案のところで「教育的側面も有するが」という一文を 入れていただけたのは我々ありがたいことなのですが、そういった意味で研修制度とい うものをきっちり特別な形でお考えいただけると非常にありがたいと思います。 ○大谷小委員長  私も司会が不手際であれですが、この研修手当の問題についてもう少し議論をいただ きたいのです。おっしゃるように、勉強をさせてやっているのだから最低賃金以下でも よいという議論なのか。そうではなしに、私は、2年間というものは誇りを持ってしっ かりやってもらわないと困ると思うのです。大体、旧ソ連などは、卒業しますと、シベ リアとかカラフトとか、そういう所に全部2年間やってしまうのです。そこで1人でや るのです。無医地区に派遣される人もいるのです。それは日本と事情が違いますが、6 年間でそれに間に合うような教育を医学教育で一生懸命やるという建て前でやっている わけです。  厚生労働省は、国家試験をやって医師としての免許を与えるというのは、医学教育に それを期待してインターン制度を撤廃したわけですからね。当時の医学部長病院長会議 の議論を見ていただきますと、1年間のインターンはやればいいのだけれども、やらな くても医師として十分できる教育をしているのだ、という議論をなされていて、それで 厚生省はその当時それを撤廃したのです。それから30年も経っているわけですから、本 当はもっと進歩しているはずなのです。だから、「何もできない」というようなことを 言いだしてくると、これはまた話が元に戻っていって研修制度の。 ○下村委員  そこは実態をもう少しはっきりさせてほしいと言っているわけです。例えば、アルバ イトの問題があるけれども、臨床研修医というのは来たら最初からアルバイトで出すこ とを認めているのですか。それとも、半年ぐらいは出さないとか、せめてそのぐらいの 規制はやっているとか、そんなところが問題になってくるのだと思います。就業規則で 決めれば、アルバイトの規制もできるのだと思うのです。病院側の意思次第ですよ。払 わないからアルバイトでやっていいと認めているのではないか。我々から言えば、そう 見えるところがあるのです。それは、臨床研修をしている人はアルバイトで、医者を やってはいけないと決めてもらえばできなくはないのです。 ○西岡委員  少し言い訳をさせてください。何もできないということではなくて、知識は非常にた くさん持っておりますし実習もやっているのですが、実際の患者様に対する行為はほと んど経験しておりません。そのためには、指導医がピッタリとついていないと本来の医 療を学ぶことができにくい状況にあります。そういった意味でございます。  アルバイトに関しましては、各大学で差があると思いますが、少なくとも私たちの所 では研修医の間はアルバイトを禁止しております。きっちりと研修に専念してもらおう と考えています。その中でいい医療を身につけていただくという、そういう姿勢でやっ ております。これは全部に適用できるかどうかわかりませんが、そういった形でいま研 修制度が実施されております。 ○櫻井委員  断片的なことなのですが発言させていただきます。新しく医学部を卒業して国家試験 を受けて研修に入った後を見ていますと、知識は相当なものがあります。急速に実際の 臨床的なことも修得します。いい例が、1年経った後で、新しく入ってきた研修医と比 較しますと本当に格段の相違があります。そういったことを考えますと、最初の何カ月 は使いものにならないから区別するというのはぜひやめていただき、最初から同じ給料 ベースでやるべきだと思います。 ○大谷小委員長  この給与について皆さんのご意見を伺いたいのですが。 ○高梨委員  5頁のABCがあるのですが、Aというのは、仮に労働者であるとすれば当然の話な のです。最低賃金額以上の研修手当といいますか、その場合は労働者であれば研修手当 ではなくて賃金なのです。ただ、そこのところが、前の頁で労働者性が一般的にはある しかし、すべてについてあるとは言っていない形で、条件については5頁のいちばん上 の所で労働基準法と労働関係法令に規定される労働条件に相当する処遇をやれと、書い ているのです。そういう意味では、Aというのは当然のことなのです。  問題はBとCなのです。私は前回も発言をいたしましたけれども、具体的な金額を示 すことには反対です。というのは、これでいけばすべての研修医について国が一定の額 以上の手当を払えということになるのです。いまでも医師は国立大学と何々県立病院と の給与で差があるわけです。大学病院の給与だって差があるわけです。そういう所で研 修を受けている人についてだけは国が一定の基準以上を出せと言うのはおかしいので す。そもそも、医師の給与だって違うものを、研修医についてだけこういうことを示す のは問題があると思っています。  ただ、いまの給与条件が非常に厳しいところがあるという現実からすれば、若干、病 院側が配慮をすることは必要なのかなと思っています。例えば、「臨床研修病院は研修 医に対して当該病院の医師の初任給との均衡を考慮した研修手当を払うように努める」 というような記述はどうですか。いま研修を受けている所にも一人前の医師がいる。そ の人の初任給と同じ額を出せというのではないのです。初任給を考慮した額、何掛けが いいとかいう議論は多分あり、8掛けがいいのか7掛けがいいのか6掛けがいいのかと いう問題はあるのでしょうけれども、それはその大学病院あるいは指定病院の中でのバ ランスを考慮したものを、義務づけるのではなくて配慮するという、それぐらいは言っ てもいいのかなという感じはしているのです。そういう意味では具体的なBとかCとか いうような形で額を書くことについてはいかがかと思います。 ○大谷小委員長  非常に具体的なご提案をいただきました。どなたかほかの方もご意見。 ○櫻井委員  私自身は個人的には大学の研修制度、その実態を聖域化するのは反対なのです。しか し、それも含めて、いろいろな発言がありますが、法律を変えないとできない部分もあ ります。そういったものは、時間的な関係から、避けてまとめないとまずいと思いま す。そういったことから考えますと、この研修の手当に関しては、私は案Aでいいと思 います。 ○吉田委員  いまの議論から少し外れるかもしれませんけれども、申し上げたいことの1点は、櫻 井委員と同じ考えなのですが、最初の半年間は教えてやっているだけだから支払わなく てもいいとか、そういうことではなくて2年間きっちり支払うのは当然だと思います。  2点目は、これは具体的な話になりますが、最初に下村委員がおっしゃったことと関 係しますけれども、原案は出向元と出向先の間がネゴシエートして決めろという感じな のです。こんなことをやって、救急の研修を3カ月あなたの所にお願いする、ひいては 給与はどのぐらい払ってくれ、というようなことを出向元がネゴシエートしなければい けないというのは非常に混乱を招く。きちんとした基準で、出向元と同じようなものを 支払う、というようなことぐらいはこの際決めておくべきだと思います。 ○大谷小委員長  わかりました。今日はこういうように整理していただいてだいぶ進んだのですが、私 も、いま吉田委員が言われたように、1つの基準ではなしにいろいろなパターンに分け て、こういう場合にはここがこれだけ持つ、というようなものを厚生省でお示しになれ ないかなということを前回申していたように思うのです。これをもう少し進めていただ けませんか。少し抽象的すぎて、あまり主体性を持つと難しくなってきますから、ある 程度の3つか4つぐらいに分類したもので、この中で契約を結ぶ、というようなモデル をきちっと示すような案がいいかもしれません。 ○星委員  とはいって、その最低賃金だけ書き込むのは私も反対なのです。最低賃金というのは 当然だと皆さんおっしゃるわけですから、それは言わずもがなであると。額を示さな い、これも私もそうだと思います。ただ、国がアルバイトなき研修を実施するのだと 言って責任を明確にしているわけだし、法律上もそう書いてあるわけですから、これに 加えてある程度の額を、1カ月1,000円なのか1万円なのか10万円なのか知りませんが、 「国が責任を持ちます」というようなことを明確に書くべきだろうと思います。それ は、現実に要求して取れませんでした、という話があるのかもしれませんけれども、国 が求めている研修ですし、アルバイトをするなと言ってある制約を加えているわけです から、その制約に対する労働対価以外の対価を研修医そのものにある程度支払うべきだ と。その理屈はお考えいただくのだろうと思いますけれども、私は定額、定率というも のでいいのではないかと思います。国は出しませんということに関しては「うん」とは どうしても言えないものですからね。 ○西岡委員  先ほどの在籍出向の話で、私立の施設が集まった場合には可能であって国立あるいは 公立が入った場合にはいま調査中であるとのことですが、このままで行ってしまいます と公立、国立の施設はローテーションができなくなってしまう可能性があるのです。折 角、プログラムでいろいろな所を回ってローテーションしましょう、ということをやっ ておりますので、ぜひともこれが十分できるような形での補助なり、あるいは何らかの ものを作っていただかないと、せっかくのプログラムが壊れてしまいそうな気がしま す。 ○医事課長  いまのお話ですが、できなくなるわけではなくて、例えば一旦退職をする。非常勤の 場合などは特にあれですけれども、1年目で退職して2年目は私立病院に行くというよ うな格好にすればできなくはないわけです。ただ、そのときは保険の関係がまた新たに 発生するということで、事務的にやや手続が煩雑になるということです。そこを何とか もう少しできないか、ということで事務的にさらに詰めたいという状況でございます。 ○二村委員  いまのところはプログラムのほうで実に詳しいことをやっていますが、ローテーショ ンが年単位でやることはなくて月単位なのです。ですから、あのプログラムを見ていき ますと、国と私立という組合わせ、国と地方の自治体の病院、いろいろなパターンがた くさんあるのです。月ごとに変わるものがありますので、長くて3カ月なのです。短い と1カ月というのもあり得ると思うのです。そうしますと、今日提示されたいろいろな 条件を当てはめるのは非常に苦しいな、という感じがいたしました。 ○西岡委員  実際には1年国立で2年目が私立というのであればほとんど問題なく可能なのです が、いまローテーションのプログラムをつくっているときに2カ月なり、短い所は1カ 月ということも起こってくるかもしれないと思っておりますので、その辺りが社会的に 保障されないとローテーションがうまくいかないのかな、ということでお願いしたとこ ろです。 ○下村委員  可能な方法を探ってもらうということでそれはできるのだと思うのです。退職してな んてとんでもない。何も、いちいち退職なんかしていたのではこんなことはできないの で。国家公務員が出向できる。そういうことは国立病院会計の問題だから、そこに問題 を投げかけて結論を出してくださいよ。できないならできないと。国が熱意がないなら ば全国私立に要請する理由がなくなります。 ○医事課長  熱意がないのではなくて、いまその方向で関係部局と検討、議論をしているというこ とです。別に、病院部だけの問題ではなくて、国家公務員法とか地方公務員の規制の法 律の関係等なので、その辺を。 ○大谷小委員長  そういうことばかりを言っていると、小泉構造改革と同じで元の木阿弥ではないか。 ○医事課長  ですから、そこを何とかならないかということでいま事務的に話を進めている最中で す。 ○下村委員  国家公務員法の中に政令か何かで出向で行ける先が決めてあるはずです。だから、臨 床研修病院の場合は出向できるのだ、ということを書いてもらえばいい。それは、多 分、法律ではなくて政令か何かでできるはずです。 ○大谷小委員長  それは少し知恵を出していただいて。 ○花井委員  給与の関係なのですが、私の意見を述べさせていただきたいと思います。プログラム の小委員会にも最初に出させていただいたのですが、そこで今回の研修で医療の質を上 げていくとか、患者の立場に立てる医師を養成する、そういうことも含めた研修だとい うことですから、いくら何でも最賃という思いがありまして、私は大体Cの辺かなと思 いました。でも、ここに具体的な金額を入れるのは非常に難しいので、先ほど高梨委員 がおっしゃいました、その病院の初任給というのが妥当ではないかと思います。  もう一つ、確認なのですが、前回も言いました、例えば産前産後、休暇を取った場合 の保障とその後の研修期間の保障。その辺は、明示すべき労働条件の中には産前産後が 入っていないということから書かれていないようなのですが、そのことがきちっと保障 されることは何らかの文章上で明らかにされるのかどうかを確認したいと思います。 ○下村委員  研修の性格はあるのだから休む権利は認めてしかるべきだと思うけれども、休んだ分 は後に延びるのですよね。 ○花井委員  その方がもう一回研修できる態勢がきちっと保障されるのかということです。 ○下村委員  研修が継続できる。 ○花井委員  はい。2年で産前産後だと6週と8週で3カ月以上になるわけです。 ○堀江委員  プログラムのところで最終的に評価をするときにどうするか、というところにつな がっていきます。問題提起として出ておりますし、海外で研修をした人、病気になった 人、お産で休むような事情、そういうような場合の最終的な研修終了判定についてどう するかというのが次の審議だと思います。当然、その部分については延長して研修する ことになるのか、その辺はぜひ詰めなければいけないと思います。 ○大谷小委員長  ありがとうございました。時間がなくなってきたのですが、6頁の上の所に事務局に わざわざ書き加えていただいたのですが、これでよろしいかどうかです。「指導医の行 う手術の見学や文献の勉強等の教育を時間外に実施することについては出席の強制がな く、自由参加のものであれば時間外の研修にはならない」と、わざわざこんなことを書 かなければいけないですか。 ○吉田委員  私も書く必要はないと思います。当然のことではないですか。当たり前のことを言っ ているような気がしますが、書かないといけませんかね。細則のような所ではいいかも しれないけれども、こういう所に書くのはいかがなものかと思います。 ○大谷小委員長  これは疑義解釈か質疑応答ででもされるべきことで、ここに書かなくても。むしろ、 本人がつらいことはやりたくないわけですよね。例えば、エマージェンシーの緊急の手 術に立ち会うとか、専門家がいないときに1人でどうするかとかというような、嫌なこ とを勉強してもらうという、一つのそういうことが研修の大事なところですよね。普通 の職業だと誰でも嫌なこともやっているとは言うものの、基本的に自分がやりたい職業 でやっているということです。この医師研修の場合は、例えば本人が皮膚科だけをやり たいと思っていてもそれは駄目なのだと。2年間は必須のことだけは必ずやらせます よ、ということを国家が要請するわけだから、それについて給与の問題もそこの点は誇 りが持てるようにするべきだと。勉強だからいいではないか、ということだけでは普通 ではないのではないか。  そういう点で、櫻井委員にもう一遍お考えいただきたいのだけれども、最低賃金とい うことは書かなくても当然ではないかという意見もあります。それから、一遍医師免許 を与えて医師としてやっていけるのだけれども、現在の世界中の医学のレベルから考え れば2年間はどうしてもつらいことも、研修をやってもらわなければ困りますよ、とい うように義務つけるわけです。それについて、最低賃金でいいではないかという式の受 け取りをされると、先生の意味はそういう意味ではないのですが、ミニマムということ なのだけれども、ここに書くのはどうなのかなと。今日は議論をする時間がなくなりま したので皆さんに一遍お考えいただいて。私は、基本的に、今度のガイドラインの報告 というものは、世界に引けをとらない立派な医師を養成するための誇りを持つプログラ ムにしてほしい、という私たちの願いをここに書き込むことが大事なのであって。私 は、議論をしているうちにだんだん細かいことが書き込まれてトーンが落ちてきて、あ れを縛りこれを縛りというような書き方になってしまうと少しおかしくなるという感想 を持っています。 ○櫻井委員  私がAと言ったのは、委員長がおっしゃるとおりなのであって、いくらと書かないほ うがいいのではないかという意味も含めてです。ただ、私がこれを入れていただきたい と思うのは、もし入れなかったらいままでどおり2万5,000円とか3万円ということが出 てくるのではないかという大きな懸念がありますので。 ○大谷小委員長  それは、高梨委員がおっしゃったように、抽象的だけれども良識として先ほどの研修 というものを義務づける高い理念にふさわしい応分の報酬を支払うことというようにし ておいて、実際の指導は、あまりひどい所があれば厚生労働省が、基準にはこのように 書いてあるのだからこの趣旨にそぐわない、という指導をされることかなと思うので す。私が見ていますのは、県立病院などは国よりも立派にいろいろ処遇して一生懸命 やっておられる所が多いですから、そういうところのレベルが落ちないことのほうがむ しろ大事だなと思うのです。 ○高梨委員  6頁の後から追加されたアンダーラインの部分についての私の意見なのですが、私は 書いておいたほうがいいと思います。ただ、この基準の中に書くのがいいのか、細則み たいなものに書くのがいいのか、そこはお任せしますけれども、どこかにきちっと書い ておくことが必要だと思います。  というのは、この問題は裁判所が研修医の過労死事件などのときに実際に働いていた 時間をどう評価するかという問題にかかわってくるのです。ここでは研修病院のほうか らの出席の強制がないと、本人の自由参加なのですよ、そういうものについては研修に はならないということが書いてあるわけです。ということは、時間外の割増手当も払う 必要はないのです。つまり、これは労働時間ではない、ということが明確に書いてある わけですが、強制がないということと本人の自由参加ということを明確にした上での記 述であり、そういう部分があるかないかということを明確にしておくことは、病院側に とって、あるいは本人にとっても大変大事なことではないかと思いますので、私は書い ておいたほうがいいと考えます。ただ、レベルの問題をどうするかはお任せします。 ○大谷小委員長  レベルはお任せいただくと。わかりました。もう時間がだいぶ超過したのですが、今 日は中村審議官に折角出ていただいているのでご発言をお願いします。 ○中村審議官  私は医政局と保険局を兼ねておりますが、今日は医政局長が国会審議で出席できなく て大変残念だということでございますけれども、いわば、いちばん難しい部分、中心に なる部分についてご議論いただいたと思います。先生方の問題意識はよくわかりました し、私どももこれからいろいろ詰めていかなければならない。特に、財源問題を中心に 詰めなければならない問題が多いと思いますので精一杯やらせていただきたいと思いま す。ぜひ、時間が限られていて恐縮でございますけれども、議論を続けていただきまし て一定の方向性を出していただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いい たします。 ○大谷小委員長  保険局も担当されておられるそうだから本当に期待していますよ。よい医師を養成す るということは皆さんの願いで一致しているので、それはお金の出場の問題はいろいろ あるかと思いますけれども、義務づけたからやるのは当たり前ではないか、待遇は二の 次だ、というような話になってしまっては何にもならないわけです。そこの点を皆さん いちばん心配していますので、審議官は保険局も兼ねておられるし、下村委員は健保連 の有力者ですのでご協力いただけると思います。それでは、今日はこれで閉会にいたし ます。次回は31日に全体会議ですか。 ○医事課長  はい。次回のこの処遇等小委員会につきましては、夏休み等の関係もありますので事 務局から改めて日程の調整をさせていただいた上でご連絡を申し上げたいと思います。 本ワーキンググループ全体の第2回の会合につきましては、先ほどお話がありましたよ うに、7月31日水曜日の午前10時半から12時半ということで同じこの場所でございま す。省議室で行いますのでご出席いただきますようにお願いしたいと思います。 ○大谷小委員長  申し遅れましたが、矢崎委員長にご発言をお願いします。 ○矢崎委員長  7月31日の会の位置付けですが、それはどういうようにとらえたらいいのでしょう か。というのは、先ほど大谷委員長から、全体の枠組みが決まらないと各論が決まらな い、というお話をいただきましたが、議論をしているときにどちらが卵か鶏かというと ころがありまして、大谷委員長が度々申し上げているような、できるだけいい臨床研修 システムを制度設計しよう、という視点からこの処遇の問題に関してはある程度大筋で 「こうだ」ということを出していただきたいと思います。その7月31日でいろいろな個 別の問題を議論して終わり、ということはなかなか困難なような感じがしますけれど も、大谷委員長としてはいかがでしょうか。 ○大谷小委員長  それはもう皆さんに、大体こういうようなことで議論をしています、ということでス ケルトンの報告はしますけれども、これで決まったわけではありませんと。だけど、議 論は研修手当をどういう表現で研修医の方に誇りの持てるようなものに担保できるかと いう問題だけが残っているわけで、後の保険の問題とか何とかは、いろいろ手続上の細 かい問題はありますけれども、こういう形でいくということについては大体ご賛同をい ただいているのではないかと思います。賛成とは言いませんけれどもね。  そのときに、全体会議にも皆さん出ていただくわけですから、分科会の説明で、私は これは絶対に反対です、ということがあったら遠慮しないで言っていただいて結構なの です。まだまだこれは全体会議で議論して、それでもってまた分科会で議論をしていく ということです。それは31日に全部まとめるわけではないでしょう、まとめるのです か。 ○医事課長  事務局といたしましては、その後の各施設の準備等もありますのでできるだけ早く取 りまとめたいと思っておりますけれども、いちばん基本になります施設の問題とかプロ グラムについてあと1回ないし2回の議論が予定されていますので、そちらのほうのま とまり具合を踏まえてということには当然なるわけですけれども、できる限り現場に迷 惑のかからないようなスケジュールで取りまとめたいと思っております。その中でこの 処遇の問題についてもその必要な範囲では書き込んでいければと思っております。 ○下村委員  「決める、決める」と言うけれども、処遇の水準については確かに先ほど高梨委員が 言ったようなことだと思いますよ。個々の病院の状況によって決まってくるのではない かというようなことしかないと思うけれども、そんなものは払えないという有力な意見 もあるわけです。強い反対論もあるわけだけれども、それを決めて大体それで結論が出 たと、それでいいならいいですよ。あとは勝手に厚生省がやるというならばそれで結論 ということになります。そこは一体どう考えているのですか、それだけでいいのならば これでやめですよね。31日に出るというのはどう考えても無理なので、もっと現実的な プランをしてここで相談をするのかしないのか。それをしても結論が出ないからやらな いというのなら、あとは好きにやってくれと言うよりしょうがないですね。 ○医事課長  31日に皆さん納得の上での結論ペーパーが出るか、あるいはそれがさらに引き続き議 論になるかというのはどういったペーパーが仕上げられるかということにもよるわけな ので。 ○下村委員  だけど、それはおよそいまの状況で想像がつくではないですかと言っているわけで す。そんなものはやってみなければわからない、みたいなことを言うけれども、現実的 には31日にファイナルな結論なんて無理ですよ。 ○医事課長  ファイナルではないにしてもどの程度まとめることがいいかと。 ○下村委員  それでは、あとは続かざるを得ないという話しかない。 ○医事課長  それは事務局のほうでペーパーをまとめさせていただいて、それをご覧いただいて31 日にご議論いただきたいということなのです。 ○下村委員  それは中間的なものですよね。 ○医事課長  もちろんそういう格好になる可能性もあるわけです。 ○下村委員  ならない可能性があると思っているわけですか。 ○医事課長  いや、それはまだこれからその他の小委員会も議論があるわけです。 ○下村委員  それはおかしいのではないですか。この段階まできていまだにそんな話をするという のは変ではないですか。 ○医事課長  そこは事務局のほうにも作業をさせていただく余裕をいただければと思うわけです。 何が何でも31日に耳をそろえてということでは必ずしもないということはそのとおりで ございます。 ○下村委員  だから、ここにいる皆さんは、私も含めて、それから後の運びをどうするのかと。お そらくファイナルなものはまとまらないだろうと思っているのだと思います。あとは、 これはもうやめたとおっしゃるのか、それを聞いているわけです。 ○二村委員  私も帰ると地元で毎回レポートしているのですが、今日の結果では明らかなことはレ ポートできないなという印象を持ちました。 ○下村委員  これで話して臨床研修がどうなるかよくわかった、という意見はないのではないです か。よくわからないでしょう。 ○医事課長  ただ、いろいろな問題点が明らかになって、先ほど下村委員がおっしゃられたよう に、いろいろな問題点が整理されてきて絞られてきているところは絞られてきているわ けです。そういうものも含めて、その31日の時点でどこまでまとめられるか、というこ とは事務局に作業させていただきたいと申し上げたわけです。 ○大谷小委員長  31日にプログラムがどの程度立派なものにイメージしておられるか、それは一部の先 生は十分ご存じなのです。それから、施設基準がどういうようにやっているかというこ とを考えつつ、私たちのこの処遇はどの程度のレベルで収めていくかということを31日 に全体を見ながら考えていただくということだと。 ○下村委員  施設基準のほうもあるのでしょうけれども、施設基準のほうでも細かく見ていっても まだ疑問が残る点があるのです。先ほど簡単な説明があったけれども、あれで完全にク リヤーになって「わかりました」と言っているわけではありませんからね。 ○櫻井委員  これは研修全般に言えることなのですが、いろいろな意見があって全員一致というこ とはあり得ないと思うのです。たとえ、この委員会または小委員会で意見が一致しても 外部ではそれに対する大きな反対、多くの反対がある性質のものです。そういうことを 考えますと、一致しないからといってそれを進めないわけにはいかないような感じがし ます。 ○大谷小委員長  処遇小委員会だけで一致した意見を出すことは無理ではないかと思うのです。全体会 議で臨床研修制度というものをどういうイメージで皆さんが国を挙げてこれに取り組む のかということによって処遇が決まっていくわけです。処遇だけが離れていくわけがな いので、31日にもう一遍よく。あまりいい加減なプログラムだったら、私も処遇へ一生 懸命行って国に金を出せと言っている意味もなくなってくるわけだから。だから、これ は立体的に考えないといけないと思いますね。矢崎先生にはプログラムがもう頭に組み 込まれていると思うけれども。 ○堀江委員  逆に、プログラム小委員会で意見交換が進行していますけれども、その前提としては 本来ですと処遇がどうなるかということがあると思います。しかし、それはまだこれか ら先の議論なのだと思います。プログラム小委員会としてはそれは大きな問題で、まだ 答えが出ていませんが、平成16年に対応するためには時間的な制約もあります。そうい う考え方で皆さんにプログラム等に関する審議をしていただいている状況にあります。 ○大谷小委員長  ですから、鶏が先か卵が先かという議論で、両方とでやっていって良いものに仕上げ ていくと。それは、ないないづくしでいくならばいままでの制度のほうがいい、という ことになってしまうのです。愚痴になってしまうけれども、何でこういうことを議論し ないで法律だけを通してしまったのかと。しかし、これは政官優位で政治家がおやりに なったことだからあまり批判していると、役人より低いレベルの民間の私どもが言って いてもおかしな話だけれどもね。だけど、そこのところの原点は国に反省してもらわな いと。2年前に何で法律を通してしまったのかと。だけど、下村委員が言われるよう に、延ばせというようなことはなかなか難しいことだから、我々としては若い人たちの ために一生懸命頑張って衆知を集めてやるということですよ。 ○下村委員  延ばせと言っているのではないのです。いまのような事務状況では延ばさざるを得な くなるのではないかと言っているだけです。しっかりやれと言っているわけだから、そ れはしっかりやってほしいわけです。事務局の詰めも結構だけれども、しかし、現状か ら見ると、31日に立体的にやろうとどうしようと、きちんと固まった形で、少々の反対 があってもこれでやってみよう、というところまでまとまるのは無理ではないかと思う から、どういうように進めるのかというところを大変心配して聞いているわけです。そ れを誠実に答えてほしいのに、やってみなければわかりません、みたいなことを言われ たのでは。 ○医事課長  誠実に答えるとすると、できるだけ頑張ります、ということです。 ○大谷小委員長  大変ですけれども、頑張ってやってください。それでは、どうもありがとうございま した。                       照会先                         厚生労働省医政局医事課                         電話 03−5253−1111                           内線 2563