02/07/17 第7回これからの医業経営の在り方に関する検討会議事録         第7回 これからの医業経営の在り方に関する検討会 日時    平成14年7月17日(水)16時00分から18時00分 場所    厚生労働省専用第22会議室 出席委員  石井孝宜、内田裕丈、大石佳能子、神谷高保、川原邦彦、小山秀夫、       田中 滋、谷川和生、津久江一郎、豊田 堯、西澤寛俊、西島英利、       南  砂                             (五十音順、敬称略) 議事内容 ○田中座長  ただいまから、第7回「これからの医業経営の在り方に関する検討会」を開催いたし ます。委員の皆様方におかれましてはご多忙中のところ、当検討会にご出席いただき誠 にありがとうございました。本日は川合委員と長谷川委員がご欠席との連絡を受けてお ります。  さっそく議事に入りたいと存じます。本日はご案内にもありましたように、アメリカ 流MBAのお2人の方に資金調達の多様化についてお話しいただきます。初めに大石委 員、もう一方が明治生命フィナンシュアランス研究所の松原主任研究員です。厚生労働 省の検討会ではあまり資金調達の専門的な用語などは聞かないと思います。しかし、今 日はちょっと難しいかもしれませんが先生方に勉強していただいて、プロの方々もい らっしゃいますのでよろしくお願いいたします。  初めに事務局から資料の確認と説明をお願いいたします。 ○竹林課長補佐  お手元の資料をご確認ください。1枚目は本日の議事次第、2枚目は委員名簿です。 その下、緑色の横表が、本日大石先生からご発表いただく資料です。同じく横表は本日 松原主任研究員からご発表いただく資料です。  最後にいちばん下に白い冊子等を用意させていただいています。去る6月26日、四病 院団体協議会から中間報告がとりまとめられましたので、ご参考に本日ご出席の先生方 に配付させていただいています。なお、お時間等がございましたらこの報告書の概要に ついて石井先生からご説明をお願いすることもあるかと思います。以上です。 ○田中座長  ありがとうございました。それではお2人の方に続けて発表いただき、そのあと質疑 応答いたします。ご専門に近い小山先生や川原先生はそれぞれのお立場から、また医療 系の先生方は逆にこういうところはわからなかった、政策的に見てどう解釈するかとい う質問でも結構ですので、あとでよろしくお願いします。  初めに大石委員から「医療機関の資金調達」についてよろしくお願いいたします。 ○大石委員  割と物事を1つのネタで延々としゃべるのは得意なのですが、短くまとめるのはあま り得意ではないので、20分ではちょっと焦ってしまうかもしれませんが話させていた だきます。今日、私がいただいたお題は「医療機関の資金調達」ということで、銀行や ファイナンスのバックグラウンドがないので実はそれほど専門ではないのですが、私自 身が医療経営していることも含めて、私の経験や周りの人たちの話を聞いてまとめさせ ていただきました。  今日お話させていただくことについてなのですが「医療機関の資金調達−課題と提言 −」ということで、初めにこの話題をいただいたときに、資金調達のいろんな手段とい うのが医療機関は制限されている、例えば株式の発行等を直接市場から調達するという のが制限されているので、これが問題なのかなと思って、まずその辺の深掘りをしてみ ました。  いろいろ調べているうちにわかってきたのは、まず1つは医療機関には資金調達ニー ズがあるかということに関しては、「資金調達ニーズはある」というのがわかってき て、特に急性期病院等の非常に設備投資の重い病院に関しては、運転資金が出てきます ので、日常的には資金調達ニーズというものはないのですが、やはり20年に1回ぐらい 建替えという大きな資金の必要な機会が出てきます。もう1つは高額な医療機器等を買 わなくてはならないという現状の中で、定期的にかなり大きな設備資金というのが必要 になってくるという状況があります。  一方、その調達手段というのはどうかというのを見てみると、先ほど申しましたとお り株式の発行や債権の発行は、日本の中では少なくとも法令上、直接調達が禁止されて います。しかしながらよく考えてみると、株式に投資をする投資家の方々は、キャピタ ルゲインを求めているわけで、そういう投資家の求めていることと、医療機関がやって いるある種の公的な運営というのを見てみると、そもそも医療機関というのは株式市場 に馴染まない可能性があります。一方、直接調達が制限されていたとしてもまだまだ他 に調達手段というのはあります。これはあとでお話ししますが、まだまだ有担保の融資 であるとか、プロジェクト・ファイナンスであるとか、それを組み合わせた形のアセッ トバック方式などを含めると間接金融だけに限定したとしても、実は医療機関の調達手 段というのはすごくいっぱいあるのだということがわかってきました。しかし、調達手 段がすごくいっぱいある結果、医療機関はいつでも自由に調達できるかというと、実は 問題が結構あるということもわかってきて、これが2番目、3番目に書いてあることで す。  要は調達手段を活用する、ファイナンス側から言うとお金を貸す、もしくはファイナ ンスをするということを実行するためには、まずは医療機関の経営を評価する、もしく は医療機関がやろうとしている、建替え等のプロジェクトを評価するということが必要 になってくるのですが、実は客観的・専門的な評価の方法というのがなかなかないわけ なのです。  これは誰の問題かというと医療機関の問題でもあり、金融機関の問題でもあるのです けれども、医療機関の経営というのは特殊性があり、一般企業と同様の評価はしにくい ので、結果として金融機関はわからないという問題もありますし、一方で医療機関も経 営情報を積極的に開示するということが、いろいろな状況があってなかなかやれてこな かったという、両方の問題があり、いずれにしても3番に書いてあるような「経営情報 の整備」というのが遅れていました。その結果客観的・専門的な評価というのもなかな かしにくかったということで、調達手段があったとしても、なかなかファイナンス側か ら見ると貸しにくい相手、もしくはプロジェクト・ファイナンスをつけにくい相手で あったというのが現状だと思います。  今日の提言は、あえて法令を変えて直接調達を許せという話ではなく、ここに4つ書 いてあることです。1つ目は間接金融型の調達手段をもっと充実させましょうと。2つ 目は特にアセットバック証券方式を活用しましょう。3つ目に、それが実際に手段とし て実行されるために、医療機関の経営情報の確保・充実を行う。4つ目が、医療機関の 経営というのは、いいか悪いかというのは本当に専門的にやっている人でないと非常に わかりにくいということがありますので、医療機関の専門の、ある種の格付け機関みた いなものが育成できないか。この4つを提言させていただきたいと思います。  これをいくつか細かく見ていきますと、まず「資金調達手段」ということで考えます と、間接調達、直接調達、それとその他リースみたいなものに分かれるのですが、先ほ ど申しましたとおり株式調達であるとか債権調達というのは、現行法律上では医療機関 はやってはいけないということになっています。ここを触るのではなく間接調達の部 分、これは有担保の融資とプロジェクト・ファイナンスと、大きく分けてこの2つに なってくるのですけど、こういうものであったとしても、もっともっと活用する方法と いうのは多分あると思うのです。  担保付きの融資とプロジェクト・ファイナンスというのはどのように分かれるかとい うと、私なりの定義なのですが、担保付きの融資というのは、要するに過去の医療機関 がため込んできた資産に対して金融機関が評価をして、その担保能力を審査して、それ に対して貸します。プロジェクト・ファイナンスというのは、これは事業体の過去にた め込んできた資産ではなく、事業体の信用力と切り離した、要するに事業体がいまから やろうとしているプロジェクト、病院を建て替えてこういう病院を造ります、こういう 医療をやりますというようなプロジェクトを評価し、そのプロジェクトから発生する キャッシュフローを見て、それに対してファイナンスをする。要するに貸し主がプロ ジェクトの収益を審査するという、過去に対してではなく将来を評価した、それに貸し 付けるというファイナンス方法です。  現行、有担保融資というのは医療機関に対して広くやられています。プロジェクト・ ファイナンスに関しては一部やられていますが、あとで話が出てくるように医療機関の 実行しているプロジェクトが、なかなか金融機関にとって評価しにくいという状況の中 では、金融機関がかなり二の足を踏んでいるというのも現実だと思います。この2つの 方法をもっと活用できるような環境を整えましょうということです。  また、それと重なって、きれいに3つに分かれるわけではないのですが、もう1つは アセットバック証券方式というのがあります。これは医療機関のアセット側に載ってい るものを証券化して一般に買っていただくという、いわゆる診療報酬の証券化みたいな 話もあるのですが、それ以外にこの有担保融資やプロジェクト・ファイナンス等で、銀 行のアセットに載ったものを証券化していくという方法もあると思います。これはいわ ゆる金融資産をプールして証券化する方法で、医療機関等の事業主体ではなく金融資産 の価値もしくは第三者の信用力を元にしてファイナンスをする方法で、これは金融資産 をプールすることによって、ある種の確率論をもとに、大数の法則というか、どのくら いデフォルトするという法則によってリスクを分散して評価する。ここには必ず元の金 融資産の価値を評価する格付け機関が介在します。  例でいうとこういう形になるのですが、例えば医療機関に対して金融機関(オリジ ネーター)が融資をした、もしくはプロジェクト・ファイナンス化したものを多数貯め 込んで、それがいま金融機関の資産側に載っているのですがこれを証券化する。そこに その証券に対して格付けをして、一般の投資家に対して資金調達をするというような方 法がもっと進められるのではないかと考えています。  ここで申し上げたいことは、いろいろな現行法の中でもまだまだ使える調達手段とい うのは多分あるだろう。ではなぜ使わないのか、なぜ使えないのかという話で、これを 解きあかすために、まずは金融機関に対してインタビューをしてみました。医療機関側 から見たとき金融機関というのは、多分いろんな苦情文句を言う、医療がわかっていな い、医療機関の経営がわかってないという文句はいろいろ聞いているのですけれど、金 融機関から見て医療機関側がどう見えるのかといったときに、ある種の非常にわかりに くい、平たく言うとありがたくないお客という印象が非常にあるようです。  これは私のところによく来る10カ所ぐらいの金融機関に、しかも医療担当の人たちに アンケートをお願いした結果の一部抜粋です。順々に読んでいきますと、個々の医療機 関の売上規模というのは、それほど他の業種と比べると大きいわけではない。日々の キャッシュフローというのは比較的に潤沢なので、日々の運転資金で困るというのはあ まりないのですが、要は資金が必要なのは建替え等の大型設備投資時期になってくる。  では大型の設備投資というのは、金融機関にとってありがたいのかという話を見てみ ると、企業の設備投資というのは一般的に冷え込んでいます。冷え込んでいる中で、病 院の設備投資というと、例えば300床程度の病院でも80億円ある。80億の長期資金が貸し 出せるというのは、非常に金融機関にとって魅力的であるというポジティブなコメント もあります。  しかし、顧客として優先順位が低い、要するにお金を貸したくない。要は担保があれ ばある程度貸せるけれど、そうでないと難しい。  なぜかと言うと、いくつか書いてあるのですが、与信上危険な客である、一般的に病 院経営は厳しい状況にあって、お医者さんに経営が任せられないので不安である。厳し い状況が続けば、なおさら危険なお客というイメージがある。これは実際にお医者さん が経営能力があるかないかという議論ではなく、ないというふうに一般的に見られてい るという話だと思うのです。ですから、経営能力があるお医者さんもいますが一般的に はやはり厳しいのではないかと。しかもこれから医療費が削減されるであろうとか、点 数改定等々があると、いままで経営努力をしていたとしても突然、支払いができなく なってくるという状況があるという意味で、危険だというイメージがあるという話だと 思います。  あとはここでも議論が出ていたのですが、医療機関は会計基準が異なっていたり、一 般産業では存在しない補助金制度などがあって非常にわかりにくい。また、内容が開示 されないので非常に不安である。病院だから特別に情報が必要なのではなく、経営計画 や資金繰り表や実績比較等々の一般的な情報がまずは欲しい。また、個人と法人の資金 分別表だとか医業の目的、要するにNPOなのかどうなのかということについても明確 にしてほしい。  実際にこういう印象だけではなく、トラブルはどの程度発生したのですかということ に関しては、これはある銀行で比較的、大量に病院に貸しているところなのですが、過 去の病院の貸し付けの8割は条件変更した。8割の条件変更をすると、なかなかこれか らは容易に貸せないという問題があります。  ではこれは誰の責任かという話ですと、多くの金融機関は、これは自分らの責任でも ある、医療側だけの責任ではないというのは認めています。  いずれにしてもこのインタビューで何が読み取れたかというと、建替え時に大きな資 金ニーズがあり、かつ、それが長期に貸し出せるという意味では金融機関にとってはあ りがたい。むしろ積極的に資金調達する手助けしたい機関であるのにもかかわらず、な かなか内容がわからない、経営が不安である等々の問題があって二の足を踏んでしまう という状況がいまあるということだと思います。  やはり市場の魅力度、経営者としての専門能力、知識が低い、もしくは低いと思われ るというような構造的な問題以外に、金融機関にはなかなか評価できない、評価する情 報がないという問題点があるのではないかと考えました。要はファイナンス上魅力があ るというのは、ここにも書いてあります、市場や業界が魅力的かどうか、事業体が魅力 的かどうか、経営者が魅力的かどうか、あと事業計画が魅力的かどうかというこの4つ を判断するのですが、やはり評価する情報があるか、その情報に基づいて評価できるか どうかということが、大前提になってくるのです。ここが1つの大きなボトルネックに なっているのではないかというふうに考えます。  では本当に専門的な評価が出来たらどういうことがあるのかということですが、診療 所の例で申し訳ないのですが、私どもがやっている医師の開業審査サポートサービスか ら例を取って説明させていただきます。診療所を開業する先生方に対して貸付けをする かどうかということに関していうと、まず市場的に見ると、個人開業というのは年間5, 000件ぐらいあって、特に都会では非常に競合は厳しくなっています。という意味では、 ちょっと見ると割と難しい市場になりつつあるなという感じはします。  しかし、例えば当初の固定費を抑さえたり、いろいろなリスクファクターがあるので すけれど、それをきちんと抑さえられれば比較的リスクは低いと、もしくは低くするこ とができる。  ですから開業の内容をきちんと評価をして、例えば実際提供する医療、患者様に対す る対応能力、経営感覚などを評価して、かつ、事業計画をきちんと評価できさえすれ ば、担保がなくても比較的成功する所と成功しない所を見極められる業種だなと、判断 をしています。そして成功の可能性の高い所に関しては、金融機関と協力して、無担保 で7,000万まで貸すという仕組みを作りました。  普通、銀行などは担保を取らないと絶対医療機関には貸さないわけなのです。それに もかかわらず無担保で7,000万までというのは、設備投資、運転資金がほとんどカバーで きる金額なのです。しかも、その中に設備投資だけではなく運転資金、内装などにも使 用できるものとして7,000万のファイナンスを組んでいます。  何を言いたいかというと、実際に内容がわかってそれが評価できれば、通常取れない リスクも取れるようになるのです。反対に言うと、内容がわからなくて評価できない と、通常取れるはずのリスクも取れません。ですから通常取れるはずのリスクが取れな い状況になっているのを、取れるようにしていく。そのためには情報と評価力というの が必要になってくると思います。  では今後どうするのかという話で、病院に関してはある種の格付けみたいなものが必 要になってくるのではないかと思います。何で格付けが必要になってくるかと言うと、 これは株式市場でも一般の企業に対してもそうですし、国の格付けなどもそうですけ ど、一般の投資家もしくは金融機関などでも、本当に専門的にやっている投資家以外 は、やはり専門の業種などはわからないわけなのです。例えば、ある国の出している債 権の危険性がどの程度あるのかというのは、これは一般の事業体にはわからないので、 それを解釈する媒体として格付け機関というのはあるのです。  それと同じように医療機関というのも一般の投資家、それは個人ではなかったとして も例えば地銀や一般の都銀の方であっても、なかなか経営内容がわかりにくい、経営の 評価というのがわかりにくい。だからそれを解釈をしてあげる機関が必要になってくる のではないかと考えています。  そのためにどのような情報が必要なのかという話で言うと、ここで再三議論をされて いる統一した会計基準だとか、もっとわかりやすい透明性のある会計基準という話もあ るのですけど、会計というのは過去に何が起こったかというのを見ることであって、建 替えという話をいうと、これは将来の話です。特に担保付き融資ではなくプロジェク ト・ファイナンスに向く話だろうと思うのですけど、プロジェクト・ファイナンスがで きるような事業性かどうかということを評価しなくてはいけない。そうすると一般的な 病院で何が起こっているかという一般情報も必要になってきますし、それに基づいて事 業基盤、財務基盤が、いま及び将来どうなってくるのかという評価も必要になってきま す。  ということで、収支状況だけではなく、例えば医療スタッフの質が鍵になるので、ど のようにして継続的に良い人を採るのかというのは非常に重要な経営の要素になってく る等、組織・施設・サービスの運営体制がどうなっているのかとか、リスクマネージメ ントの体制はどうなっているのか、そもそもマーケットの状況はどうなっているのか、 経営戦略、将来ビジョンはどうなっているのか、ということが必要になってきます。  ここにいくつか例で書かせていただいているのは、当社があおぞら銀行と共同で実行 する予定の医療機関経営の評価軸です。これがコンプリートな情報だとは言わないので すが、この医業経営評価プロジェクトの中で集めている情報のような多面的な情報を集 めて、その中から専門の方々の視点を入れて、ここの経営はどうか、将来的に事業とし てどうかということが評価できるような仕掛けを作っていかないと、資金調達の手段だ けを増やしてもなかなか資金が流入するという形にはならないのではないかと考えま す。  そういう形で資金調達手段は、主として先ほども申し上げた別に現行法を変える必要 はなく、有担保の融資とプロジェクト・ファイナンスを中心にし、またここにもっと小 口の投資家を呼び集めるという意味で言うと、あとで松原さんからいろいろ似たような 話が出るのかもしれませんが、アセットバック証券化、これは医療機関の資産を証券化 するだけではなく、金融機関に移った資産も証券化するという方法も取りながら、もう 少しマーケットを広げていくというような形が望ましいと思います。誰が資金を提供す るかというと、実は多分一般個人ではないと思うのです。むしろ機関投資家ですとか、 事業法人だとか、もう1つ大きいのは、いま二の足を踏んでいる、専門的な評価部隊を 持っていない都銀及び地方の産業として非常に重要な医療機関を支えていくべき地銀の 2つが、割と大きな投資家として期待されるのではないかと思います。  というようなことでちょっと20分が経ちましたので、まだまだ細かいことを言いたい のですが、今日お話したいのは間接金融型の調達手段をもっと充実しましょうという 話。アセットバック証券方式、これにいろんな問題があるのは理解していますし、細か いところは専門家でなければわからない部分があると思うのですが、こういう形を使っ てもっと間口を広げましょうという話。  それと大前提として、医療機関の経営情報をもっと広く集めましょうと。いまあるも ので不十分かと言えば、どれがどう不十分かというのは個別論にもなるのですが、少な くともいま世の中に出ているものでは、相当かき集めないとなかなか評価できないとい う現状だと思います。  それから医療機関専門格付け機関の育成。これは、病院評価機構というのはあります が、ある種の病院経営評価機構というのがあるべきではないかと。それを国、もしくは 国の外郭団体でやるのか、もしくは民間でやるのかという話をすると、私は民間のほう が多分いいと思うのです。いずれにしても医療機関がわかって専門的に評価できる、医 療機関専門の格付け機関を育成するべきではないか。この4つを今日お話したいと思い ました。 ○田中座長  どうもありがとうございました。医療機関の資金調達、特に間接金融についていろい ろな方式とそのために何が必要かという条件を要領よくお話しいただきました。  引き続きまして明治生命フィナンシュアランス研究所、松原主任研究員に発表をお願 いいたします。 ○松原主任研究員  ただいまご紹介いただきました、明治生命フィナンシュアランス研究所の松原です。 よろしくお願いいたします。  本日は、「医療機関設備資金の資金調達」ということでテーマをいただきましたの で、そのことについてお手元の資料に沿ってご説明いたします。  発表全体の構成ですが、まず初めに、今回お話しいたします資金調達の前提、例えば 何を対象としているのかなどについて説明し、次に、この度、厚生科学研究で医療機関 設備資金の資金調達に関するアンケート及びヒアリング調査を実施しましたので、その 結果をご報告いたします。次に、これを踏まえて、病院の資金調達を考える場合に、考 慮する必要がある病院の特性を整理して、その結果からどのような資金調達が向くのか を、現行法規にとらわれずに検討したいと思います。さらに、多様化の流れの中で考案 されております各種の資金調達方法について、その利用条件やメリット、デメリットな どを明らかにいたします。最後に、病院の資金調達に関しては、何が問題であるかを確 認しまして、これらについて提言を述べさせていただきます。  まず、この発表内容の前提についてご説明いたします。現在は、国公立病院なども経 営難で、資金調達は重要な問題であると考えられて、PFIなどの手法も実質検討さ れ、一部実施されておりますが、ここでは、本検討会の趣旨に則りまして、民間病院を 対象とさせていただきます。中でも主流を占めます医療法人と個人立病院を念頭におい てお話します。  次に、資金調達と言いましても、一般に短期資金と長期資金に分かれますが、ここで は、その調達が困難で額も大きい設備資金、つまり長期資金調達に限定させていただき ます。  さらに、民間企業の立場でなくて、国として1産業の資金調達を検討するケースとし ては、新規参入を促進するための資金調達と、既存組織の経営安定化のための資金調達 に大きくは分かれると考えられます。新規参入の資金調達を検討しなければならない場 合としては、その産業において供給量が著しく不足しているとか、または既存組織の供 給では著しく非効率・不経済で、早晩行き詰まる場合が考えられますが、我が国の病院 業界を考えた場合に、一部に医療過疎の問題はあるものの、全体としては病床過剰であ るということ、また、現在、我が国の医療法人などで、各種その問題が指摘されている ところではありますが、それによる供給が著しく非効率で早晩行き詰まるということは 考えられませんので、ここでは、あくまで既存病院の経営安定化のための資金調達につ いて検討いたします。  最後に、これも本検討会の趣旨に則って、行政として考えなければならない領域に問 題を絞ってお話しさせていただきます。例えば、チェーン展開を図る病院の病院買収資 金に類するような資金調達策を、ここでは取り上げないこととします。そのような拡大 資金の資金調達は、原則民間に任せるべきで、行政がもしタッチするとすれば、新資金 調達がもたらす弊害の防止策程度と思われます。  この検討会では、先ほど申し上げました既存病院の経営安定化のための資金調達を考 えるということに絞らせていただきます。拡大資金と経営安定化の資金を明確に分ける のは難しいのですが、ここで経営安定化資金を概念的に述べさせていただきますと、地 域で適度な競争力をもち、医療の質を保ちながら、病院経営を安定的に持続させるため の資金で、その資金を十分に調達できない層の資金調達をどうするのかを検討していき たいと思います。  それでは本論に入らせていただきます。以下では、民間病院における設備資金調達の 現状として、まずは厚生科学研究で行いましたアンケート調査結果からご説明いたしま す。今回の調査では、全国の医療法人と個人病院から病床規模、都道府県で層化抽出し ました2,000病院に対して、アンケートを郵送法で実施しました。有効回答率は14.8%で した。  次に、調査の視点ですが、第1は「経営課題」について聞きました。これは各種ある 経営課題の中で、資金調達問題に対する病院経営者の関心度はどの程度かを知るために 行いました。  第2は「資金調達」の実態について尋ねました。具体的には、設備資金の需要の程 度、それは足りているのかいないのか、また資金需要の中身は具体的に何であるのか、 さらに、銀行の融資態度や資金調達に対する要望について調べました。  第3は「経営者の意識」について聞きました。病院の資金調達手段として、公的支援 を求める意見が書かれておりますが、もしも公的支援を行うのであれば、病院が個人所 有である問題と行政政策との調和が問題となります。そこで、公的支援を受けるのであ れば、持ち分放棄をする意思があるか否か、または行政政策との調和との関連で、今後 の主な入院機能として何を担っていくかということを調べました。  最後に「病院業績」について尋ねました。資金を調達するには返済能力が重要となり ますが、その根源をなすのは収益力ですので、それを見ました。  調査結果ですが、まず第1の「経営課題」について申し上げますと、これについて は、病院経営上困っていることについて尋ねたところ、回答を寄せた病院のうち、資金 調達の困難性を挙げる病院は16%で、項目別の順位では9番目にすぎず、資金調達への 関心度は必ずしも高くないことが分かりました。なお、関心度の高い項目としては、医 師不足などのマンパワー不足や在院日数の長さなどが挙げられていました。  第2の「資金調達」の実態については、長期資金については、約6割が必要として、 それら必要と答えた病院のうち約4割が不足だとしていました。その資金需要の中身で すが、建物の増改築が圧倒的で約8割でした。ここ5年間程度の信用金庫や信用組合を 含む銀行の融資態度は、以前と変わらないとする病院が約5割ありました。その一方 で、以前より借りやすくなった病院が約2割、厳しくなったとする病院が約2割と、変 化があったとする病院が約4割ありまして、銀行の融資対象の選別が厳しくなっている 状況がうかがえました。あと、病院の資金調達を容易にする方策については、公的支援 を求める声が圧倒的でした。  第3の「経営者の意識」ですが、先ほど申し上げましたように、個人所有の問題につ いて言えば、公的支援を受けられるのであれば持ち分を放棄すると答えた病院は27.4% でした。また、政策との調和について言えば、今後の主な入院機能として、過半が療養 を担うと答えていました。こうした経営者の意識から見ると、これら公的支援の条件を 受け入れる土壌が相当程度存在することが推測されました。  最後に「病院の業績」についてですが、黒字が6割、収支トントンというのが3割、 赤字が1割ということで、この収支トントンと赤字を合わせますと、収益状況の悪い病 院が約4割程度に達していました。  これは参考までにですが、先ほどの「病院業績」に関しては、ほかの統計調査を見て みますと、全日本病院協会の1999年度病院経営調査報告では、24%がやはり赤字だとい うことでした。また、厚生労働省医政局の「病院経営指標」で直近3年間の推移を見て みますと、赤字病院は、医療法人の25%から30%程度で推移していました。これらよ り、病院の2、3割は大体赤字と推測されて、今回の調査の4割程度が収支トントン か、または赤字だという数字は、現実とそう離れてはいない数値であると考えられま す。  次に、「ヒヤリング結果から見た資金調達」ですが、周知のとおり、現在の病院の資 金調達は、信用金庫や信用組合を含みます銀行借入れのみの状況ですので、特に銀行の 病院に対する融資姿勢を聞きました。ヒヤリング対象は、ここに書いてあるような病院 経営者、医療団体理事、金融機関、医薬品卸、営業コンサルタント、学識経験者です。  銀行は、その病院を融資先としてどのように見ているかと言いますと、ヒヤリング結 果から、「原則、銀行は病院へ前向きな融資態度」であることが分かりました。その理 由としては、第1に、銀行から見た病院のメインバンクなることによるメリットが挙げ られます。つまり、ここにあるようなメリットが挙げられます。第2に、特に地方にお いては有力取引先が乏しいため、銀行にとって病院は相対的に優良取引先であるという ことが言えます。  一方で、銀行から見た病院は、万一の場合は、担保による回収が一般産業と比べて厳 しいと言えます。例えば病院の場合は、病院以外への転用が難しいなどが挙げられま す。また、融資期間が大体15年程度ということで、長期にわたっており、その分リスク が増大するので、銀行の病院選別は厳しいことが分かりました。  以上、資金調達の実態をアンケートとヒヤリング結果から明らかにしましたが、次 に、病院の資金調達を考える場合に、考慮しておく必要のある病院の特性として4つ挙 げて、どのような資金調達が向くのかを、現行法規にとらわれずに検討いたします。  特性の第1は「資金需要の特徴」です。アンケート結果で申し上げましたように、資 金需要の中身は、建物の増改築資金が圧倒的です。病院建物の建替えはおよそ30年前後 に1度と言われていますから、その資金需要の頻度は30年前後に1度、また1回当たり の資金需要は、もちろん規模とか設備にもよりますが、おおよそ10億円から30億円程度 と言われています。  このように、病院においては大規模な資金調達でさえ、公募債発行という視点から見 ますと、ロット(規模)が小さ過ぎて発行コストの点で見合いません。一方、ロットが 小さいことに加えて、発行頻度が少ないこともあって、仲介機関から見ても採算が難し く、積極的に病院へわざわざ起債を薦めにくい状況にあると言えます。こうした資金需 要の特性から、病院においては公募債による資金調達は向いていないと考えられます。 また、株式上場という視点から見ても、資金需要がこの程度では、コストをかけてま で、その用意をしておく意義が非常に乏しいということが言えます。  ここで、一般企業と病院との資金需要の特性を概観してみたいと思います。これは 「一般企業と病院の資金需要の概念図」です。この図にありますように、通常、一般企 業にあっては規模が大きくなればなっただけ、その規模に見合って、さらなる成長や競 争優位を求めて、資金需要も拡大していくと考えられます。他社との競争優位を獲得す るために、製品開発や生産力増強、販売力向上に常時努めており、そのための資金需要 が存在し、そのほかにビジネスチャンスを逸しないためにも、資金調達の多様化などを 図って、常に調達の機動性を確保することが重要となります。この意味で、資金調達力 が経営のキーファクターの一つとなっています。  それに対して病院は、製品開発や販売力向上などに常時資金が必要という状況にはな いと思われます。もちろん、医療機器などの購入などは生じますが、せいぜい数億円程 度で、ロットも小さく、頻度も少ないわけです。このため、上場して、上場コストを 払ってまで、常に機動的な資金調達先を確保しておく必要性は高くないと言えます。  先ほどのアンケートでも、各種経営課題の中で、資金調達への関心度が相対的に低い のも、このような病院の資金調達の実態を反映したものと考えられます。ただし、 チェーン展開を図る病院であれば話は別で、次々に地域の病院を買収して、地域で寡占 的状況を作り出したいという医療法人であれば、一般企業と同じような資金調達需要が あると思われます。  そのような一部のチェーン展開を図るような病院の行動を、ここで特段否定する理由 は、私には別にありませんが、ただ、冒頭の前提部分で申し上げたとおり、病院買収を 含めたチェーン化促進のためのような資金調達策を、ここで検討する必要はないと考え ております。本検討会の趣旨に則って、ここでは、あくまで経営安定化を図るための資 金調達ということで、話を進めさせていただきます。  第2に「病院業績」ですが、低位安定型だと言えます。この表は社会福祉・医療事業 団融資先の「医業収入利益率」の推移です。これを見ますと、1992年に0.5%であったも のが、2000年には3.8%と、趨勢的には向上しているように見えますが、これはここ数年 間の異常な低金利によるもので、上の「医業収入金利負担率」を見ますと、1992年の4. 5%から2000年には1.6%へと低下しています。  そこで、「金利負担前医業収入利益率」を見ますと、概ね5%前後で推移して、安定 していることが分かります。さらに見ますと、金利水準は、通常レベルと考えられます 1992年、1993年あたりでは、医業収入利益率は0.5%や1.9%程度で、これは決して高い 水準とは言えません。むしろ低位と言うべきと思われます。  いま述べましたのは利益率ですが、次に、絶対額の推移を見てみたいと思います。こ の表は中央社会保険医療協議会の「医療経済実態調査」から作成したものですが、これ を見ますと、「医業収支差額」のこの赤いところが、診療報酬の改定で、上下はあるも のの、概ね200万円から400万円水準で推移しており、この面からも低位安定であると言 えます。  以上、見てきましたように、病院業績は低位安定型であると言えます。これは病院事 業が時流にのるとか、ヒット商品が出て急成長するという要素を持ち合わせていないた めです。言い換えますと、高成長・急成長産業ではないということです。  この要因としては、医療ニーズはそもそも景気変動に左右されず安定的に存在する。 かつ、その支払いは公的保険で支えられ、その価格は公定価格であるため、安定してい ます。ただ一方、公定価格ですので、確かに安定要素ですが、高利潤を獲得することは 難しい。加えて、業務範囲が限定されていたり、病床規制があるなど、成長要因はかな り抑えられていることなどが挙げられます。  このため、ベンチャーキャピタルの投資対象になりにくいほか、先述のように株式上 場にも向かないが、仮に上場したとしても、高株価形成は期待しにくいと言えます。具 体的には、新規売出しに伴う創業者利得の獲得が難しい、高い株価を利用した増資が難 しいと考えられます。  第3は、病院の「経営体質」についてですが、これは中小企業であり、かつ個人企業 的色彩が強いということが言えます。  まず、事業規模を見てみますと、この表は上場企業、中堅企業、医療法人の平均売上 高と利益を比較したものです。「中堅企業」とは、未上場企業のうち、店頭上場・有価 証券提出企業を指します。これを見ますと、上場企業と医療法人を比較するのは無理だ としても、中堅企業と比較しても、医療法人が、売上高も利益も10分の1以下にすぎま せん。中堅企業並みの売上もないということで、やはり病院の事業規模は中小企業規模 レベルにあると言えます。  次に、所有構造ですが、中小企業・個人企業的色彩が強い要因として、所有構造を見 てみますと、持ち分の定めのある法人が大半で、それが特定少数による所有であるとい う意味で、個人所有であると言えます。その持ち分は世襲的であります。  次に、経営体質についてですが、これも同族経営が多々見られます。  銀行取引きでは、これは結果でもあり、要因でもあるところですが、銀行は個人に貸 している意識です。そのために、理事長の個人保証や信用保険加入を条件とするなど理 事長と一体となった融資を行うほかに、後継者の存在も重視しています。これらから、 財産の個人所有や経営権の維持に執着する傾向にあるうえ、情報公開にも比較的うしろ 向きになりがちです。現在は、医療法人が情報公開することによるメリットが具体的に はありませんので、公開するニーズもないということも一因ではありますが、それより も、まず個人財産をわざわざ周囲に公開したがらないという体質があると言えます。経 営体質が以上述べてきたようなレベルでは、資金需要の特性と併せて、資金調達は、銀 行からの借入れがメインとならざるを得ないと言えます。  最後に、病院特性として「事業特性」を挙げますと、言うまでもなく、公共性が強い ということです。そのため、市場に委ねておけばいいというものではなくて、医療サー ビスの供給の安定のために必要な支援を行わなければならないと言えます。  以上、病院の特性から資金調達を見ましたが、次に、現在、病院の新たな資金調達手 法として、さまざまな方法が検討され、一部ではすでに実施されておりますので、それ ら手法の利用条件やメリット、デメリットを簡単にご説明いたします。  「診療報酬債権流動化」ですが、これは病院が診療報酬債権を、債権買取専門のSP C(特別目的会社)へ譲渡して、診療報酬を早期に回収する方法です。極めて信用度の 高い診療報酬債権を裏付けとしているために、もともとこうした証券化商品が狙いとし ているところではありますが、原則として、病院自体の信用度にあまり左右されず、つ まり信用リスクと事業リスクとを切り離して、基本的にどの病院も利用できる点にあり ます。ただし、あまりにも病床規模が小さいと、かえって非効率なため、一定規模が必 要だということです。これによって病院は、通常では2カ月かかる現金化までの期間を 半月ほどに短縮することができます。  次に、メリットになりますが、第1に、債権を早期に回収することで、キャッシュフ ローを改善すること、第2に、先ほどの条件を満たせば、基本的にどの病院も利用でき ることが挙げられます。  課題点としては、第1に、短期資金調達ですので設備投資には向かない。第2に、保 証料や事務手数料がかかることから、高コストである。第3に、診療報酬債権流動化 は、単に売掛金早期回収策で、これを日々の経営費用に恒常的に使用し始めては、コス ト高を招くだけでなくて、安易に使用すると、むしろ資金繰りを悪化させる恐れがある ことが挙げられます。  次に、REITの仕組みですが、「REIT」とは不動産を運用対象とした投資信託 であり、投資法人が不特定多数の投資家から資金を集めて、不動産の取得、保有、売買 または賃貸といった業務を行い、その収益を投資家に分配する仕組みです。通常の不動 産会社と異なりまして、一定条件を満たすと、投資法人段階で法人税が非課税となるメ リットがあります。  REITのメリットとしては、第1に、1病院を建てた資金を元手に、その病院をR EITに売却することで、また次の病院を建てることができるといった資金の効率化が 挙げられます。第2に、オフバランスによる財務体質の改善、第3に、経営権介入の排 除、第4に、先ほどの診療報酬債権流動化と同様、ABS(アセットバックド・セキュ リティーズ)商品の特徴ですので、事業リスクと信用リスクを切り離して資金調達でき る点が挙げられます。  従来の資金調達では、基本的に借り主の信用力、これを信用リスクと言いますが、例 えば理事長の経営能力、後継者の有無などといった、借り主自身の信用力に影響されて きましたが、このABS商品では、借り主が持つ資産、例えば売掛金や不動産などを証 券化することで、その資産そのものの価値、つまり、事業リスクによって資金調達がで きるために、基本的にその借り主の信用力に影響されず、資金調達が可能です。  しかし課題点として、第1のメリットである資金の効率化を享受できるのは、次々に チェーン展開を図るような病院に限られて、1施設のみを運営する病院にとっては、こ の資金効率化のメリットは享受できません。  次に、オフバランスによるメリットですが、これは直接金融市場から資金を集める際 に有利なのであって、現在の我が国の病院では、あまりメリットとはなりません。  第3に、先ほど申し上げましたように、コスト高であるということが言えます。  第4に、これは重要ですが、病院がREITを利用する場合には、ここにある理由に よって、事業リスクと信用リスクを切り離して資金調達できるメリットを享受すること が難しいと言えます。一般にREITは、1施設に複数テナントを入れて、テナントの 退去リスクを分散させますが、病院の場合は、一般的に1施設1テナント、つまり1病 院と考えられるために、病院側の信用リスクも重視されてしまいます。また、1施設1 テナントで病院用に建築しますと、ほかへの転用が構造的に困難となる恐れがあるの で、長期にわたって入居が求められることより、結局、病院の信用力が問われることに なります。  そうなると、このREITを利用できてそのメリットを享受できるのは、銀行が囲い 込みたくなるような経営が安定した、かつ、次々と病院チェーンを拡大していくような 病院に限られると思われます。  次に、「債券による資金調達」ですが、債券による資金調達には、不特定多数者から 調達する「公募債」と、縁故者など特定少数から調達する「私募債」に分かれます。  まず初めに、「公募債」からご説明いたします。公募債による資金調達とは、企業や 公共団体などが券面を発行して、不特定多数の投資家から資金を借り入れる方法です。 債券の購入者に対する見返りは、経費たる金利なので、その限りにおいては、銀行借入 れと変わらないため、医療法上、病院の債券発行は問題がないかと思われます。ただ し、法外な高利子の場合を除きます。  ただ、公募債は不特定多数を対象とした債券であって、証券取引法の適用を受けま す。証券取引法上、医療法人が公募債を発行できるか否かについては、解釈上、疑義な しとはしませんが、特段の禁止規定がないという解釈に立てば、必ずしも発行不可とは 思われません。  この公募債のメリットとしましては、株式と違って、公募債は原則、経営内容への介 入は生じないという点と、銀行とのバーゲニングパワー向上につながる点が挙げられま す。  課題点としては、病院の特性で申し上げましたように、ロットと借入頻度が少ないた めに、そもそも債券による資金調達には向かないという点と、仲介機関から見ても採算 に乗り難く、積極的には起債を薦めない点が挙げられます。  また、起債規模にあると思われる我が国の病院は、ごくわずかしかないと思われ、し かも、それらの病院は、銀行の囲い込み対象先であって、資金調達に不自由しないた め、わざわざ起債する積極的理由がないということで、実現可能性が低いと言えます。  次に、「私募債」ですが、私募債は特定者を対象とした債券発行による資金調達で す。その特徴は、その対象者が不特定かつ多数ではないので、証券取引法の適用も受け ず、したがって、格付けや情報公開も義務とはならないために、公募債と比べれば、制 度的には、はるかに広い層の病院が利用可能な調達方法である点にあります。  メリットとしては、多くの病院が利用できる可能性がある点です。いままで検討して きました各種資金調達の中で、最も利用可能性が高いのがこの私募債だと考えられま す。  しかし、課題点としては、まず、公募債と比べて債権保全に不安が伴いますので、投 資家が見付かるかどうかという問題があります。仮に投資家が見付かったとしても、債 権保全をどうするのかという問題が残ります。また、応募の任意性をどう保証するの か。例えば投資家集団をどう設定するかにもよりますが、例えば地域住民としますと、 患者側に、債券を買わないと診療差別が生じるのではないかという懸念が生じるようで は問題です。最後に、経営への介入の可能性をどう防ぐかという問題があります。債券 は原則、経営介入を生じさせませんが、経営内容に問題が生じて、金利の支払いなどに 遅滞が生じるようになると、経営への介入を招く可能性があります。  以上、病院の資金調達方法として、現在考察されている各種手法を検討してきました が、結局、利用条件が厳しく、利用できる病院が非常に限られたり、多くの病院が利用 できる手法の場合には課題が多いと思われます。  この図は、病院を資金調達力を基準にして分類した概念図で、大別して、資金調達が 十分である病院と不足する病院の2つに分けられます。ここで言う「資金」とは、すで に述べておりますように、ほかの病院を買収するような拡大資金ではなくて、あくまで 経営安定化資金を指します。  資金調達が十分な層というのは、分類基準から当然のことですが、少なくとも安定化 資金は支障なく調達できる層で、この層の中には、先ほどの公募債やREITの利用可 能な病院もあると思われます。さらに、これらの商品を一部修正するなどして、さまざ まな資金調達方法が考えられます。例えば、経営内容のよい病院を複数まとめて、単独 ではロットが小さい欠点を解消して、債券を発行する方法なども考案されています。現 に、この「資金調達十分」という層については、金融商品の販売を手掛ける民間企業が さまざまな資金調達を考案して、現実に営業活動をしています。ただ、こうした病院層 は自力で資金調達が可能なわけで、そのような新調達方法は原則民間といいますか、市 場に任せるべきで、行政がわざわざ関与する必要性はないと思われます。  そこで問題となるのは、もう一方の「資金調達不足」の病院層です。この層は、銀行 借入れが十分にできない層なので、先に述べた「資金調達十分」層で試みられる、コ マーシャルベースに乗った多様化商品は、この層にはほとんど無縁と言えるわけです。  このように考えると、我が国の民間病院の資金調達問題の本源的所在は、まず第1 に、資金調達不足病院が存在すること。第2に銀行借入れができず、直接金融などはさ らに困難といった厳しい制約のもとで、これら病院層をどう取り扱うのかということに あるといえます。ただ現実問題として、このようにコマーシャルベースに乗らないので あれば、残された道は公的支援となると思われます。  そこで、以下では「公的支援」について検討いたします。病院が公的支援を得るに は、1.財産が個人所有であること、2.行政目的に対する協力、このいずれかをクリア する必要があると考えられます。1につきましては、個人財産の形成に財政資金を投与 することは憲法違反であり、2につきましては、個人所有を維持したまま公的支援を受 けるのであれば、なんらかの形で行政目的に協力することが必要と思われます。  ここで、公的支援の条件を考えるに当たりまして、米国の例を見てみます。我が国と 同様、民間非営利病院が大半を占める米国では、民間非営利病院の資金調達に対して公 的支援を行っており、非課税扱いであるほか、公が免税病院債発行の仕組みをつくって います。米国民間非営利病院の長期資金調達の大半は、この免税病院債によって賄われ ています。  この「免税病院債」とは、投資家の金利に対する免税を実施する債券で、発行の仕組 みは、この図のとおりです。仕組みについての詳細は、時間の都合上、ここでは割愛し ますが、この免税病院債を利用できる病院の条件は、IRSが定める501(C)3組織に 該当することが挙げられます。そして、この501(C)3組織の条件は、ここに書いてあ るとおりで、一言で言うと、「財産が個人に属さず、公益事業であること」です。  ここでは、公的支援を実施するに当たっての、原則ないし基本的考え方について述べ ます。その第1は、病院への選択肢の付与です。公的支援を受けるには、先に述べたと おり条件があり、その条件を受け入れるか否かは、強制すべき性格とは考えられません ので、その条件受入れの判断は病院側に委ねるべきと考えます。  第2は、自己責任体制を組み入れることです。具体的には、民間にも応分のリスクを 負担してもらうことです。第3は、民間資金の活用です。  第4に、医療の質向上、公益活動拡充などの条件付与です。例えば、公的支援の条件 に、医療の質の担保として、医療機能評価機構の認定を公的支援の条件とする、研修医 の受入れや、可能な場合には24時間救急医療の実施、地域の診療所との連携など、公益 的活動を条件とすること等が考えられます。  いま述べました付与に当たっての基本的考え方に基づいて、以下の3つを実施するこ とが望まれます。第1は「実態調査の実施」です。アンケートやヒヤリング調査などで も、資金調達不足の病院があることはわかりましたが、量的にどのくらい困っている病 院数があるのか、そして、どの程度困っているのかは不明です。周知のとおり、我が国 の病院の経営内容公開は、必ずしも十分ではないので、その実態把握は難しいと思われ ますが、悉皆調査を広く浅く実施するのではなく、例えば医師会の協力を得ながら規模 や地域を限定するなど、網羅的ではなく、的を絞った実態調査がまず必要だと思いま す。  第2は「公的支援の具体策の策定」です。この具体策について細かく述べることは割 愛させていただきますが、特に我が国で財政が逼迫している現状を考えれば、公的支援 の中でも債務保証は現実的な策かと考えられます。例えば、債務保証をする場合には、 銀行借入れの債務保証をし、銀行の融資枠拡大を図ることなどが考えられますが、一方 また病院の債券に対し、公が債務保証をする公的支援策をとれば、一般病院にも直接金 融の道は開かれると思います。長期資金調達が十分にできないだけでなく、そもそも経 営存続が危ない層の病院の取扱いは、地域の実状に合わせて自治体、地域の病院経営 者、住民、金融機関など、地域関係者で対応策を検討することが求められると思われま す。  第3は「新たな資金調達方法導入による弊害防止策の策定」です。新資金調達の弊害 防止策は、公的支援に関わるものだけではなく、民間商品に関わる部分も検討すべきと 思います。例えば、私募債では幾つかの課題があり、特に応募の任意性を保証するため の課題。具体的には、地域住民の間に、債券を購入しないと診療差別が生じてしまうと の不安が生ずる、または、職員を対象にする場合は、昇格に響くのではないかと思って しまうなど、半ば強制購入を強いることがないような策を講じていく必要があるかと思 います。  このように、従来なかった資金調達が導入されるにあたり、そのメリットだけが享受 できるような弊害防止策の策定が、今後は必要と思われます。  「医療機関設備資金の資金調達」に関する発表は以上です。本日の議論の呼び水にで もなれば幸いです。 ○田中座長  大変、専門的な分野を、わかりやすい表現方法で、かつ論理的に、どうもありがとう ございました。それでは、お二方の発表を踏まえ、難しいのでわからないという質問で も、ご意見でも、どうぞよろしくお願いします。 ○小山委員  どうもありがとうございました。素晴らしい発表です。最初の所の(3)に、「病院は過 半の療養を担う」と書いてあるのですが、どういう意味ですか。 ○松原主任研究員  「今後の入院機能として、何を主に担っていきますか」との質問に対し、「急性か、 療養か、回復機能」という回答欄の中で、これは複数回答だったのでケアミックスも 入ってしまうのですが、「療養を主に担っていきます」と答えた病院が過半ということ で、要するに今後の病院機能分化をひかえ、療養病床を選択するという病院が半分以上 あったということです。 ○小山委員  2000年11月で、9,000の病院のうち療養型病床群を取っている病院は、約4,300ぐらい で、ちょうど過半です。そういう意味ですか。 ○松原主任研究員  それもあります。 ○小山委員  それは、「過半の療養を担う」と言うのですか。療養病床を選択するという意味です ね。 ○松原主任研究員  そうです。 ○神谷委員  2つ質問があります。まず1つは大石委員の発表のほうで、「専門的評価をもとにし たファイナンス」の頁で、これは無担保融資で7,000万円ぐらいやるということは、要す るにアレンジメントさえうまくやれば、非常にリスクの少ない案件として構成すること ができるということですか。これは私が思っていたよりも、そこまでできるのかなとい うのがちょっとあったものですから、その辺りの説明を補充していただければと思いま す。  もう1つは、松原さんのご発表のほうで、27頁の「資金調達不足」の所で、「行政に よる関与が必要」と。しかし、資金調達不足でも、例えば、オウシンの所に頼みにいく と、相当部分はそうはなくなるということで、この辺りの層の関連がちょっとわからな いのです。例えばこちらにお願いすると、交通整理をして、それなりのアレンジメント をすると、実は調達できるという部分なのか、それとも構造的にどうしようもない部分 なのか。その辺りが、ちょっとわからなかったもので、補充をしていただければと思い ます。 ○大石委員  アレンジメントの定義にもよるのですが、私が申し上げているのは、既存の調達方法 及び若干それの拡大です。例えば、松原委員がおっしゃった「債券による調達」とか、 私が申し上げたアセットバック・セキュリティーを例にとれば、1個1個の医療機関を アセットバック・セキュリティーもありますが、むしろ、銀行の資産を証券化する、そ ういったアセットバック・セキュリティーだとか、要するに既存の調達方法とその拡大 により、結構調達できる幅が広がるのではないかと思っています。  あともう1つは、神谷先生がおっしゃった話に対するお答えになるのですが、そうい う調達手段が整った時に、それでは調達できない医療機関はどうなるのかという話の中 で、多分、誰が見てもピカピカの病院というのはあると思うのです。ここに貸したら きっと大丈夫だという所はあります。それは多分、素人が見ても大丈夫。また、誰が見 ても、これはまずいという病院があり、その中では、本当にいろんな理由があり、努力 していない病院が、多分入っていると思うのです。  ところが、いまは言い方にちょっと語弊があるかもしれませんが、真ん中にグレーな 病院がいっぱいある状況ではないかと思うのです。グレーな病院の中には、本当は専門 的な目で見ると、実はこれは貸せるというものも入っております。専門的な目で見つ つ、かつ、多少の経営的なサポートをしていけば貸せるという病院が、実は結構入って いるのではないかと私は思っているのです。  あえて診療所の例を引いたのは、診療所は一般的に、いま金融機関から見ると、貸し たくない相手なのです。なぜかと言えば、端折ったのですが、競合が厳しくなっている ことが1つ。そして、ご存じのように個人開業はいちばん最初の1年間は赤なのです。 金融機関にとっては、いきなり赤字の診療所に貸しているというのは、これは不良債権 みたいになってしまいますので、金融機関の中で非常に取扱いがしにくい。だから、よ ほど担保がきちんとなければ貸せないし、しかもその担保の範囲内でしか貸せないとい うことが、いま特に銀行の方針なのです。  しかしながら、頑張ってこられた先生方は、実は蓄財などはしなくて、せっせせっせ と、結構安い給料で自分の腕を磨いてきたわけなのです。そういう先生方は、要は担保 という意味では貸せない相手ですが、医療的な能力という意味では、開業すると成功す る確率が非常に高い。実は、これは黒だという中にかなり白が混ざっているのです。そ れがきちんとピックアップできる能力があり、別にそれがうちだけではなく、そういう 目利きができる人はいろいろいると思うのですが、その人たちがピックアップすること により、実は既存の貸付の方法でも貸せる。  ですからこのファイナンスの方式は、実はすごく変わったことをやっているわけでは なく、中身は、いわゆる無担保融資、リース、短期の運転資金貸付みたいなもの。要す るに既存の方法です。むしろ、いい人をグレーの中からピックアップする、もしくは ちょっとグレーっぽい人を少し頑張らせるようにすることによって貸し付けるという、 そういう仕掛けが十分できるのではないかということを申し上げたかったということで す。 ○松原主任研究員  先生のご質問を、もう一度確認させていただきたいのです。先生のご質問は、資金調 達不足の病院の中には、先ほど大石先生がおっしゃったような方法を使える所が入って いるのかどうかということでよろしいでしょうか。 ○神谷委員  具体的なイメージです。その決定的な要因が、どうしようもない部分なのか、それと も「行政の関与が必要だ」というフレーズが付いているものですから、それによって限 定された内容なのかというところです。 ○松原主任研究員  大石先生のおっしゃっているグレーゾーンはあるわけで、明確に2つというわけでは ないのです。まず1つは、具体的な例で言いますと、7,000万円ぐらいという話ですの で、病院の場合は設備資金は少なくとも10億円程度は必要で、診療所には使えますが病 院には全然使えません。そういう話が1つです。  では、この病院の層はどのぐらいのレベルの話なのかということになりますと、例え ば資金調達不足の病院層は、アセットバックとABS商品なども使えるのかどうかとい うことに関して言うと、先ほど、いま言われている資金調達が結局できないと申し上げ たように、アセットバックという場合は、何かアセットがなければいけないわけで、そ れほどの資産を、アセットバックできるほどのものを病院が持っているのかどうか。 持っている病院でしたら使えますが、大抵、そういうものは担保に取られているわけ で、大体使えないと考えています。そもそも銀行借入れが不十分な所では、それ以外の 方法はさらに難しいと考えています。 ○神谷委員  多分、考えておられる所が少し違うところがあるのです。 ○田中座長  私の理解では、要は銀行が貸さない所は、実は資金調達手段を多様化しても、資金調 達ができないということが、松原さんの言っていたことの結論だと思います。俗に、世 の中で資金調達を多様化すれば病院は救われる、とりわけ、株式会社化すれば救われる など、私に言わせればまやかしの、こちらの水は甘いぞ的な誘いがあるのですが、実は 経済学、経営学的に言うとそんなことはなく、資金調達を多様化して使える所は、実は 銀行も貸してくれる所である。要は、非常に単純ですが、普通言われていない結論を はっきり言ってくれたのだと思います。資金調達を多様化するといえば、銀行とのバー ゲニングパワーが付くといった、テクニカルなメリットはあるかもしれませんが、問題 は、どういう資金調達のルートがあっても、資金調達がしにくい所がある。それが、も し世の中でいらない病院ならば、これはことは簡単で「さよなら」でいいのです。そう いう病院が、先ほどの図に書いてあったとおり、医療の質の点から分けられているわけ ではなく、地域医療の必要性から分けられているわけでもない。だから、下段の全部が 不要ではない。本当に経営が悪くずさんで、もう要らない病院でしたら放っておけばい いのですが、地域に必要な病院がそこに入っていた場合に公的関与が必要であるとのロ ジックであろうと思います。 ○神谷委員  お2人の発表の違うところは、流通市場のところのプール化の話が違うのです。ここ は石原知事が最初になった時にぶち上げたのと同じような、そういうお話だと伺ったの です。そこは、こちらが否定しておられるのかどうかというのが、詰めたら多分、最後 の質問だと思うのです。 ○松原主任研究員  プール化につきましても、例えば資金調達が十分な層、経営内容がいい層ですと、 プール化することによりロットが小さいという問題も解消し、債券でも何でもできると 思うのです。しかし、資金調達が不足するような、経営内容の悪い所をプール化した ら、それだけリスクが高まりますので、「そんな所は誰が買うの」という問題が出てき ます。やはり、資金調達が不足しているような病院が、何らかのことをしようとした ら、そこは公的支援で、例えばプール化するにしても、それで債券を発行するのであれ ば、その債券に対して債務保証を公がする。公が債務保証してくれさえすれば、この資 金調達不足の層も、プール化して何らかの方法を採れると考えています。 ○大石委員  まずは、私が申し上げていることは、松原委員と基本的に方向性はずれていないと思 うのです。ただ、若干ニュアンスが違うところがあるのではないかと思っております。 要は、私は資金調達がしやすい所としにくい所と、2つに別れるのではないと思いま す。しかも、資金調達がしやすい所が収益力が高い所で、資金調達がしにくい所が収益 率が低い所と、世の中、そういうきれいな色分けには多分ならないなと思っているので す。  何を言っているかというと、まず、将来的にも収益力が低い所は、やっぱりどう転ん でも資金調達はしにくいわけです。それは明らかで、その中で公的な理由があるものに 関しては、これは公的資金を投入する方法等を考えるべきで、そういう地域医療を守る という話だと思います。資金調達がしやすく、かつ収益力が高い所は、現行法上放って おいても大丈夫です。  真ん中に1群あるのが、収益力が高いかもしれないのだが、よくわからない。何とな く他に貸し手があるのを考えると、要するに銀行のほうも選ぶわけで、ここで危ない橋 をわたって医療機関に貸すよりは、どこかの工場の建替えがあれば、そっちに貸したほ うがいいと思う。そういうような場面は結構発生しており、真ん中にある本当はいい病 院で、今あるこの建替えプロジェクトにより、本当は患者さんのニーズを満たし、しか も収益的にもいいようになる可能性がある病院が結構あるにもかかわらず、これを結 局、誰も評価できない結果、羹に懲りて膾(なます)を吹くの世界で、誰も触わらなく なってしまうことにより、結局、資金ショートしてしまう。建替えができず、どんどん 老朽化していく病院が、今後出てくるのではないか。そういう現実問題をどう救うのか というところから来ているのだと思うのです。  これに関しては、「そこで元々がわからないから、調達に応じてあげなさい。何か あったら、国が何とかしてあげます」という、国が保証する手も多分、1つの方法だと 思います。ただ、国が何でも保証しますということは、いまの財政状況の中では安易に 切りたくない切札なので、ちょっと躊躇するという話なのです。  もう1つある方法がプール化だと思うのです。要するに、1個1個はよくわからない が、ある一定のレベルの中で、グレーなものも混ぜると、多分ある一定の確率で駄目に なるけど、全体では確率が読めるという方法をとれば、これは、要するに「1個ずつは わからないが、全体に対し貸しましょう」という話ではあり得るのではないかというこ とで、あえてプール化を3つ目の手段として出しているという感じです。 ○田中座長  アメリカの病院債は、その方式をとっている。日本では病院1軒では発行しにくいで すから、あり得る話です。 ○大石委員  あと、マーケット化する、売り出す時にコストなどを考えると、1個1個だと、これ は松原先生も抱えている話ですが、要するに割が合わないので、集めるしかないという 感じです。 ○田中座長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。川原委員、石井委員は、比較的ご 専門に近いと思われますが、いかがでしょうか。 ○川原委員  大石委員に質問があります。お2人とも大変よくまとめておられ、非常にわかりやす く説明いただき、理解ができ、感謝しております。まず1つは、プロジェクト・ファイ ナンスの件です。医療界に当てはめた場合の具体的なイメージについて、お話しいただ いたのかもしれませんが、私は聞き漏らしていると思います。若干、追加でお話いただ けたらと思います。  2つ目には、これは松原委員が32頁で、公的支援方法という形で減・免税、補助金、債 務保証と具体的な形でお話をされていました。この中の債務保証についてですが、例え ばいまもお話がありましたが、実際に病院が設備投資を行う際には、2つの問題点があ ります。まず1つは、自己資金が非常に少ないという点。2つ目は、担保力が非常に弱 いというか、要するに担保不足であるがゆえに、経営内容は非常にいいのにかかわら ず、資金調達が困難を極めるという点であります。実務的には、私どもは、経営状況の 良否と、資金調達の問題を切り離しております。公的資金の直接的な注入とは一旦切り 離した形で、例えば、信用保証協会の例になぞって結構だと思いますが、公的債務保証 の実現手段として医療機関特有の信用保証機関をつくることの可能性について若干ご説 明いただけたらありがたいと思います。 ○大石委員  いま聞かれたことを、混ぜてお答えします。まず、先生が最後におっしゃられた、医 療機関専門の信用保証協会というのは、これはありだと思うのです。ありだと思います し、公共性を考えると、これは1つのオプションとしてやるべきというか、かなり真面 目に検討するべきだと思います。ですから、これは非常に賛成で、考えたのですが、あ えて言わなかったのは、信用保証協会であろうと何であろうと、誰かが信用保証をする ということは、要するに中身を見てリスクをとらなくてはいけなくて、それを誰がする のかというのに対し、要するに国もしくはそれに準ずる機関が信用保証をするからと いって、安易にその道に進みたくないなと思い、その前にちょっとやるべきことがある のではないかというので、それであえて格付けだとか、情報をもっと集めましょうとい う話をさせていただいた。それをやった次のステップとして、やっぱり信用保証協会と いうのは十分あり得ると思いますし、これは検討すべきだと思います。  いちばん最初のプロジェクト・ファイナンスの話ですが、これはあまり整理されてい ないのかもしれませんが、要は先生がおっしゃったとおり、医療機関はあまり担保能力 がないのです。土地、建物もそんなにあるわけでもないのです。だいたい、前の建替え の時の残債が残っているのです。これが銀行にとって非常に頭が痛く、残債の付いてい る担保などは、むしろいらないわけです。  このような感じで考えると、過去ではなく、私が定義するプロジェクト・ファイナン スとは、要するに将来、いま建替えたという事業を考え、そこで発生する収益を考え、 それに対してファイナンスをするという、将来に対するファイナンスというイメージで 考えています。ですから、非常に大きな債務を抱え、残債がある。たまたま土地が借地 であり、そして建物も取り壊すしかないという状況で、担保が全くない病院だったとし ても、やっている医療の内容は非常に素晴らしいと。だから市場性もすごくあり、要ら ないことはやっていなくて、経営効率も非常にいいとなると、これはいま建て替えた時 に、収益力はすごくあるわけです。それを評価するべきです。しかしながら、繰り返し になりますが、いまの金融機関にはそういうことを評価する能力はないので、どうしよ うという話になってきます。 ○松原主任研究員  後半の質問は、信用保証協会の病院版はやるべきかというお話だと思いますが、そう いうものを作ったほうがいいと思います。と言いますのは、先ほどの図にもありますよ うに、多分、大石先生がずっとお話しなさっているのは、結局のところは先ほどの図の 上のほうだと思うのです。頑張れば銀行借入れもできるし、何か他の方法もできるよう な層であって、でも、問題の所在で言いましたように、現実には銀行借入れもできない ような層が実在するのは事実でして、そこに対して何か支援をというときに、やはり公 的な債務保証なりをつけて上げたほうがいいと考えております。  あともう一点、先ほど、非常にわかりやすくするために、概念図として、資金調達が 十分か不足かということで簡単に病院を2つに分けていますけれども、現実はグレー ゾーンがあるわけです。ただ、1つ明確に言えることは、メインバンクから見ますと病 院は毎月の診療報酬を毎月見ているわけですから、この病院の経営状態が本当はどの程 度かというのを常にチェックできるわけです。まさに病院をいちばんよく知っているの がメインバンクだと思いますので、そこが駄目だと思っている所というのは本当に駄目 だと。100見ている中で、駄目といった病院が20あって、でも、20のうち1つぐらいは本 当はいい所があったと、そういうことももちろんあると思いますけど、基本的には銀行 はよく見ていると考えております。 ○小山委員  皆さん、ご説はごもっともなのですが、私の感じだと、資金調達できるできないでは なくて、民間病院のこれからの医療経営のあり方ということになると、建替えのときに 建て替えられないのです。他のことはいろいろ心配してもらわなくても全然問題ないの です。だって、そんなの心配している人たちはいないのですから。病院を大きく建て替 えるときに建替え資金をどうにかしてくれというだけの話です。  あと細かいことは、診療報酬の流動化もできますし、それもやってもらったので、あ とは介護報酬になると、利用者から1人ずつ全部もらわないと、債権が利用者のほうな ので、もうちょっとやりやすくしてくれると、介護報酬の流動化が楽なのです。それで 大体12分の2カ月ぐらい金が逃げられますから、あとは、ボーナス資金を借りて、また ボーナスの前に借りてまた払っているのかというのはもう資金繰りの話ですから。私、 資金調達にそんなに困難を感じているというのは、建て替えるとき以外はまず起きない のではないかというふうに考えるのです。ですから議論を複雑にしてしまわないで。ど うせ民間病院で一生懸命やろうと思っても建て替えられないわけですよ。  もうちょっと言いますと、民間病院は個人と医療法人で5,000病院ぐらいでしょう。大 体年間で80病院がつぶれているのですよ。小さい病院はなくなってしまうのです。あ と、80病院ぐらいが持ち主が替わるのです。それはちょっと病院名簿を見ているとわか るのです。そうすると、年間に160なくなってしまうか替わるのです。だから、30年間見 たら4,800でしょう。だから30年見たらまったく経営者がひっくり返っているわけです よ。日本とはそうではないですか、相続税もあるし。  その中で、医者が悪いとか何とかと言う前に、その30年のレースの中で地域医療を一 生懸命やっていこうというふうにしているという前提から考えると、これは国民に理解 できる範囲だと思うのですけど、建て替えないと、国民のほうは療養環境なんか悪いわ けですから、むしろそんな格付けだとか信用保証とか、やればやるほどマネージメント コストがかかるし、訳がわからなくなるから、そんなことより、指導課がやっている、 近代化・安定化資金の中の療養環境整備の補助金をそのままずうっと続けると言っても らったら、みんな安心してやるのですよ。それだけではないですか。だから、やはり本 当のことを考えないと。  アメリカの免税病院債といっても、免税になって、全部公益法人になったら、お前も ただで助けてやるよと言ったら、そういうのも少し行く人もいるかもしれませんけれ ど。でも、実際に民間病院のことだけを考えて、厚生労働省が何か民間病院の経営にお 手伝いをしたいというのでしたら、いまやっているもので、診療報酬債権化もいいか ら、介護報酬についての債権化もきちんとしてくれるとか、近代化・安定化資金につい ては、いつも予算の前になると、いつなくなるかわからないというふうに言われている のですけど、これはやり始めると、今度なくすると前にもらった人が不公平なのです。 30年とか20年とかいうんで、これを何とか頑張ってもらうということになれば、病院団 体もみんな賛成すると思うのですよ。それだけの話で、おごりではないのかと思うので すけど、違うのですか。 ○田中座長  それは我々が考えることで、お2人への今回の依頼は資金調達にかぎられ、さらにそ れを超えた政策的なことを考えてくれという依頼は出していませんから。 ○小山委員  ええ。だから私が考えると、そうなのかなという気がするのです。 ○田中座長  それはこの検討会の責務です。 ○大石委員  まず、建替え資金が問題だということについては、松原委員も私も同じことを言って いると思うので、他の話はしていないと思うのです。ちょっと話を広げるために、診療 報酬の債権化なんかもありますねと、あれは運転資金の話なので、そのところまで松原 委員が言及されて、私もちょっと言ったというような感じなのですが、いずれにしても 問題は建替え資金なのですよ。それはもう皆さんアグリーで、ここはもういいと思うの です。  次は、国の予算、国のお金を使ってあちこちにばらまき散らかすのは是か非かという 話があって、それはある種の政策論争になってくるので、当委員会で話をするべき話で はないのではないかという話が1つと、あと、そもそもそれっていいのかという話があ ると思うのです。今日、民間病院の資金調達の話が敢えてこの委員会で出たのは、要す るに国のお金を使ったらそれでいいではないのという話をしてしまったら、そもそもそ ういう議論で話が終わってしまうわけで、それはそれで1つのオプションとしてあると 思いますが、あるのだけれど、でも、すべての所にそれを使うのが、国のいちばんいい お金の使い方とは私は思わないし、そうではない、要するに民間資金をもっと効率よく 導入する方法はないのかというのが今日の議題なのだと思うのです。 ○松原主任研究員  大石先生のおっしゃるように、民間資金を活用できるような層はどんどんしたほうが いいと思います。金融商品をいろいろ考案するような民間企業が実際に病院に対して、 こういうのもあるよ、ああいうのもあるよ、とやっています。それはそれで民間が頑張 ればいいと思います。ただ、小山先生のおっしゃるように、それができない病院も事実 あるわけで、そこについては公的支援をしなければ困るのではないのかと。そこについ て、公的支援については、おっしゃるとおり、すぐ補助金を使えばいいというのは安易 なので、そこで公的支援の中でも民間資金を活用する策というのを模索していったらど うか、ということが私の提言の1つでもあります。 ○神谷委員  その提言の保証の問題で、保証機関の話がありましたけれども、保証料は、要するに これは当然リスクに応じて取らなければいけない。しかし、そのリスクを評価するとい うのができるのかというと、やはりできないという話で、これはグレーゾーンになって いると思うのです。やはりここはどう見ても、客観的なリスクに応じた保証料を算定で きなければ、そう簡単には保証機関を作るという話には私はならないと思うのです。そ れを作れる前提がないと。最後は持出しになるというのでは、やはり保証の範囲内で大 数の法則を働かせてペイするというのがスタートだと思いますから。そこはあまり安易 にそれにいかないほうがいいと。そういう、オプションとしてお考えになるのはいいと 思いますけれども。 ○田中座長  病院のデフォルト率についての研究を一部している場合もありますが、個別病院の評 価まではまだいっておりませんので。他にご質問はいかがですか。 ○小山委員  厚生労働省が保証をすると言うと、そうすると、民間病院の経営が、最後は「厚労 省」とかいう判子を押されて、それを金科玉条のように民間が信用して、結局はそれで 潰れてしまうと国から金が出ていくと、そういうイメージになりますよね。そういうこ とですよね。 ○松原主任研究員  そうならないように、民間の病院が自立していくために、民間病院にも、またはお金 を貸すほうの銀行にもちゃんとリスクを分担させて。 ○小山委員  だけど、いまの現状で、民間資金が民間病院に効率的に入っていないという前提はな いのではないですか。民間は民間でかなり結構借りて、うまくやっていて。 ○松原主任研究員  そうだと思います。 ○小山委員  そうでしょう。うまくいっているでしょう。資金調達できなくなった病院を救済して やらなければいけないと言うけど、資金調達できなくなったら潰れるのではないです か。それをいくら救おうと言っても、いま田中先生が何を考えているかわからないけ ど、資金調達を自ら全然できなくて、建て替えられなくて他に方法がない病院は生き残 れないわけでしょう。それに信用を後ろにつけてやると借りられるからって、そんな所 に貸したら余計危ないではないですかね。そんなことを言ってはいけないのですか。駄 目なものは駄目なのではないですか。市場から撤退なのではないですか。そういうのは いけないのですか、こういうことをここで言っては。厚生労働省は助けてやろうとして いるわけですか。ここはちょっとわからないですね。 ○神谷委員  松原委員が言われたことと大石委員が言われたことは、1つ違っていると思うので す。私が個人的に知っていることがどれだけ一般的なのかわからないので、個人的なあ れはちょっと除いて、松原委員が言われたのは、やはり銀行がある程度審査ができてい るのだという前提で議論しておられて、大石委員は、できていない部分があって、そこ でビジネスをしているのだという、そういう話に私は聞こえたのです。要するにそれは 将来のキャッシュフローというものを前提にしてファイナンスするということが、いま の都市銀行等でどこまでできているかという問題だと思うのです。そこまでもちゃんと やっているのだというふうに松原委員は言っておられるのか。私の理解はそうではなく て、そこはやはりグレーゾーンがあって、そこは救い上げていかなければいけないのだ と。そこにはちゃんと上達、拡大の余地があるのだというシナリオだと思ったのですけ ど。 ○松原主任研究員  そうです。 ○神谷委員  だとすると同じですか。 ○松原主任研究員  同じです。 ○神谷委員  でも、伺っているとちょっとそういうふうに聞こえなかったのです。 ○松原主任研究員  基本的認識は同じではないかと私は思っています。ただ、認識は同じですけども、力 点の置き方といいますか、民間はこういうことができるでしょう、こういうふうに頑 張ったほうがいいという話と、私の場合は、それはそれで、原則としてそういうことは 民間に任せて、ここがたまたま行政の席ですので、行政が考えなければいけないことと したら、1つは、困っている層はどうしたらいいのかと、ここの取扱いを考えたほうが いいのではないですか。別に全部救えという話ではなくて、救わなければいけない所が あるとすれば、それは何らかの公的支援が必要ではないですかということと、あともう 1つは、最後に、原則として民間に任せたほうがいいという部分についても、新たな方 法を投入するのであれば何か弊害が生じることがありますので、その弊害の防止策を考 えていく、この2点ではないかというのが言いたかったことです。 ○田中座長  小山委員のご質問に私もお答えしておきます。私の個人的な、研究者として知ってい るものを一委員として答えます。  1つは資金調達。病院が資金調達に苦しんでいる理由は株式発行が許されていないの だからといった、非常に安易な議論に対する反論として、今日の発表は意味がある。株 式さえ許されれば天国であるというような議論を立てる人たちが一部にいるので、これ は学問的におかしいとの指摘が1つです。  もう1つは、駄目な病院が潰れていいとの判断は、公立病院がなければおっしゃると おりですけれども、片や公的資金を受けている公立病院が存在していて、民間病院で公 立病院より質がいいかもしれないにも関わらず、建替え資金がないから自動的に潰れて いく一方で、公的資金でよい病院がつくられていく状況の中では、民間側にも何らかの 公的支援があってもいいと、そういう文脈が小山委員のご質問に対する私の答えです。 ○石井委員  私も本日、頭の整理ができて、大変すばらしい議論ができたと思っております。結果 的には資金調達問題ではなくて設備調達問題だという話になっているのですが、ご説明 いただいた松原、大石両先生のお話でも、病院の場合は20〜30年に1度の大きな投資が あって、この投資資金に関する問題がいちばん大きな問題なのです。  私が実務的に感じているのは、1つは、最近、特にこの数年間の民間金融機関、銀行 の設備投資の回収サイトが実は非常に短期化しているはずなのですね。ですから、医療 法人が資金調達をしようとしたときに、10年とか15年の約定で返済を組まされるので す。ところが、まさにお書きいただいたように、元々が20〜30年サイトの投資なもので すから、実はそこに不整合が起きるということです。そういうところから、約定外の返 済計画の変換が起きると、8割あるとおっしゃっていました。ということは、まさに皆 さんがご存じのように、元々20〜30年サイドで投資をして回収すべきものを、残念なが ら民間金融機関は10年未満でもって回収するというスタンスになっている。このギャッ プをきちんと解消しなければ正常化は図れないのだろうと思います。その手法は何なの だろうかと。多分、ここが現実に経営をされている先生たちのいちばん大きな悩みなの ではないかと思っています。  もう1つは、ABS(アセットバック・セキュリティー)というシステムの議論があ りましたけれども、そういうふうなことを考えていくと、お国のお金を、あるいはお国 の信用を安易に使ってはいけないという議論も片方であるのですけれども、そのギャッ プを調整するためにはある程度その信用力は使わせていただかなければいけないのかな と。もっといってしまうと、公的な、つまり国によるABSというシステムでもいいの ではないかと。極論すると、先ほどのアンケート調査にもありましたが、公的援助を得 られるのであれば3割の医療法人は財産権を放棄してもいいとおっしゃっているわけ で、だとすれば、国が建てた病院を医療法人が借りるというシステムはどうして提案さ れないのか。オフバランスになりますから経営の評価ももっとすっきりしたものになる のだろうと。  3つ目は、多分、現在非常に大きな実績があると思うのですが、せっかく社会福祉・ 医療事業団による融資というすばらしいシステムもある。事業団に民間医療機関が依存 するのはどうしてかというと、長期の回収だからですね。ですから活用するのです。10 年ほど前の高金利の時代には逆に活用できなかった要素がありますが、リーズナブルな 返済期間で設備投資ができるから、借りられる医療法人は事業団から借入れを起こして いるのではないかと思いますので、本当はこの辺のところの議論というのもされたほう がいいのかなと感じております。 ○田中座長  ありがとうございました。他によろしゅうございますか。 ○豊田委員  民間の医療機関にとって資金調達の選択肢が多いということはいいことなのですね。 いまほとんどが銀行で、それから社会福祉・医療事業団と、これでほとんどだと思うの ですけども。今日お話の中にも出てまいりましたけれども、やはりその他の民間資金を 使える選択肢があればさらにいいと。特にこの建替えの問題については、必ずこれはど この医療機関でも起こるわけでして、そのときの資金調達というのが問題になるわけで すが、今日の話の中でもグレーゾーンとかいろいろありますけども、その対象は、あく までもその地域で必要な病院、必要な機能を果たしている病院ではあるのだけれども、 資金調達に苦労しているという、大体そういうふうに対象がしぼられていると思いま す。  こういったことに対して、先ほど公的資金・公的信用保証ということが出てきまし た。このことは非常に大事なので、例えばSPCにしろ病院債にしろ、民間だけでやっ てもこれはしょうがないので、やはりここにある程度行政が入ることによって信用性を 高める。そうすると、保証機構としての存在も大きくなりますし、やはり、そういった 民間資金を活用する。  特にこのロットが少ないという話で、それぞれの、個々の病院ではコストが高くなっ て、その民間資金を利用するにはあまり現実的でないと。そうすると、そこにグループ 化という問題が起こってくる。そういう問題を解決するためにも、先ほど川原委員が言 われた民間の保証機構ですね、これができるかできないかということが選択肢を広げる かどうかという別れ道になるようで、そこの所に公的な行政の参加をしていただくとい うことは非常に大きな問題なので、要するに金を出せとかいう話ではなくて、そういっ た形で保証の中に入っていただくということは、民間病院にとって非常に望まれること のように思います。是非そういうふうにあればいいなというのが私どもの考えです。 ○田中座長  ありがとうございます。他によろしゅうございますか。  今日はお2人の発表のおかげで、専門的でしたが大変よい議論ができたと思います。 一方で専門知識を深めましたが、同時に、小山委員のおかげで、これが政治的にどうい う意味を持つかが大変よくわかりました。改めて大石委員及び松原主任研究員に感謝を いたします。  時間がまいりましたので終了となりますが、ここで委員の皆様方にご報告がございま す。それは神谷委員が、大変うらやましいことに8月から留学されるということでござ います。この検討会では本日が最後のご出席となります。一言ご挨拶をお願いいたしま す。 ○神谷委員  8月から2年間、ちょっとアメリカへ在外研究に参りますので、今日、皆さんとお別 れということになります。  貴重な経験の場を与えていただきましてどうもありがとうございました。いろいろ勝 手なことを申し上げまして失礼な点がありましたら、お許しいただきたいと思います。 また、後任にどなたか決まると思いますが、本当に長い間ありがとうございました。 ○田中座長  一生の別れではなくて、この検討会としてということで、これからもよろしくお願い いたします。ご活躍を。  それから、石井委員がお作りになった報告は、これはどうしましょうか。読み方につ いてだけ簡単に言っていただいたらどうでしょう。 ○石井委員  四病院団体協議会で病院会計準則研究委員会というものを、実質的にはもう2年ほど やっておりまして、それに係る中間報告が6月26日に公表されまして。その冊子でござ います。基本的には、病院の会計準則は開設主体に関わらず昭和40年から企業会計方式 でやるということになっておりまして、そういう意味では最初から随分進んだ会計方式 をお採りになっています。しかしながら、いま現状の会計の環境ですとか、あるいは医 療に係る社会構造変化がありまして、見直しをするとすれば病院団体としてこういうイ メージかなということをまとめさせていただきました。  ということで、120頁で、少し自己満足になるような細かいレポートとなりましたが、 一応病院を巡る会計の問題点はほぼここに集約をされているというふうには思っており ます。勿論、いろんなご批判が出るかと思いますが、それはそのうち、できれば意見を 賜れればというふうに考えております。よろしくお願いいたします。 ○田中座長  読ませていただきます。  それでは、今後の日程等につきまして事務局のほうからご説明をお願いいたします。 ○石塚指導課長  今後の日程の前に1つご報告ですけれども、いまの石井委員から報告のあった病院関 係準則、あるいは医療法人会計基準の制定という宿題を本検討会からも中間報告でいた だいております。ただ、この件については、非常に専門的・技術的な分野なものですが 、幸い6月に石井先生のご尽力で立派なたたき台を作っていただきましたので、この夏 以降、少し研究費の段取りを行っております。この検討会の委員の先生方にも何名かお 入りになっていただき、研究班というような形で、この分野について別途作業を進めさ せていただいて、折りにふれて本検討会にご報告するというような取扱いにさせていた だきたいと思っております。  次回は9月下旬頃を目途に、医療法人の持ち分の問題ですとか、特定医療法人といっ た、いわば医療法人の公益性なり永続性といった切り口からの議論を1回お願いしたい と思っております。  9月を含めまして年内3回ほど予定させていただきます。皆さんお忙しい先生方です ので、後日、3回分まとめて日程調整をさせていただきたいと思います。よろしくお願 いしたいと思います。 ○ 田中座長  それでは本日はこれにて閉会いたします。お忙しいところをご出席いただきましてど うもありがとうございました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 橋本 昌男(内線2560) 医療法人係長  手島 一嘉(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194