02/07/17 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会議事録         薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会議事録  日時  平成14年7月17日(水) 14:00〜16:30  場所  厚生労働省 専用第18会議室(中央合同庁舎第5号館17階)  出席者 熊谷部会長、小川委員、品川委員、清水委員、鈴木委員、西尾委員、      丸山委員、山本委員  議題  (1)乳及び乳製品の規格基準の改正について      (2)その他 ○事務局  それでは、定刻となりましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会食品衛生分科 会乳肉水産食品部会を開催いたします。  本日は、御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。  まず、最初に、委員の交替について御報告を申し上げます。旧国立公衆衛生院の山崎 部長の退職に伴いまして、5月21日付で新たに国立感染症研究所感染情報センター第6 室長の西尾治先生が委員となられましたので、御紹介いたします。 ○西尾委員  国立感染症研究所の西尾でございます。よろしくお願いいたします。 ○事務局  西尾先生につきましては、本部会における今後の検討課題といたしまして、SRSV等の ウイルス対策も考えられるというようなことから、部会長とも御相談させていただきま して、今回委員として委嘱させていただいたという次第でございます。  また、本日は、11名の委員の先生方のうち8名の先生方に御出席をいただいておりま すので、当部会は成立しておりますことを御報告申し上げます。  それでは、開催に先立ちまして、尾崎食品保健部長より一言ごあいさつを申し上げま す。 ○食品保健部長  尾嵜でございます。  先生方には大変お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。  本日御審議いただきますのは、既に諮問させていただいております乳及び乳製品の規 格基準の改正につきまして、既に部会報告の案はいただいておるわけでございますが、 パブリックコメント等手続を進めた中で、内外からたくさんのいろいろな意見をいただ いているところでございます。そういった内容を御説明いたしまして、最終的な報告書 の取りまとめにつきまして、御審議をいただければありがたいというふうに考えていま す。よろしくどうぞお願い申し上げます。  また、当部会に関しまして、いろいろな食品に関しますさまざまな事案と申します か、動きが出ております。簡単に触れさせていただきますと、BSE問題を契機に、部 会長の熊谷先生もよく御存じでございますが、BSEの調査検討委員会というものが設 けられまして検討がされ、報告書が出されたこと。それを基に、関係閣僚会議が設けら れまして、既に方向性としましては食品の安全に関します委員会をつくる、新しい組織 をつくるということ、それと、食の安全に関します包括的な法律をつくるということ、 この2つが明確に決められたところでございまして、今、内閣府の方に準備室が設けら れまして検討を進めております。厚生労働省からも9名の職員が準備室の方に現在出向 いておりまして、準備室の職員として組織あるいは予算あるいは法案というふうなこと につきましての検討を始めておるという状況でございます。  それと、また、食品に関しましては、BSE問題あるいはそれ以降の表示の問題、あ るいは直近でございますと、添加物の問題とか種々食品に関係いたします事案なりが出 ておりまして、当部会とは別の部会にお願いする案件もございますが、今回の乳・乳製 品の関係でございますとか、そういった事件を受けた形での対応ということもお願いす るところでございますが、そういったことでなしに食品全般について、また、私ども事 務局なり検討いたしまして、後追いでない形での対策というものも考えていかなければ いけないというふうに思っているところでございます。  また、先生方の方には、御意見なり御相談させていただくということも出てくると考 えていますが、その際にはよろしくお願い申し上げる次第でございます。今日の御審議 につきましては、重ねて取りまとめの方向につきまして、よろしくお願いを申し上げま す。  簡単でございますが、ごあいさつに代えさせていただきます。恐縮でございますが、 私はごあいさつだけで失礼させていただきますが、よろしくどうぞお願い申し上げま す。 ○事務局  それでは、熊谷先生、よろしくお願いいたします。 ○熊谷部会長  それでは、議事の進行を進めさせていただきます。各委員の先生方には、御協力のほ どをお願いいたします。  今日は、スケジュール的には4時までという予定になっております。本日は、今年1 月に取りまとめました部会報告案の修正について、御審議いただくことになっておりま す。  それでは、まず、配付資料を事務局から確認をお願いします。 ○事務局  それでは、本日用意させていただきました資料を確認させていただきます。大きく分 けてファイルにとじた部分と、それから、クリップでとめている部分があろうかと思い ます。クリップでとめている部分でございますが、議事次第、委員名簿、座席表のほ か、資料1といたしまして、現行の部会報告の原案。  資料2といたしまして、FSGの意見及び回答。  資料3といたしまして、パブリックコメントへの意見及び回答案。  資料4といたしまして、WTOに対する各国コメント。  資料5といたしまして、これはコーデックスの粉乳の基準。  資料6といたしまして、参考文献の抜粋部分でございます。  資料7−1といたしまして、チーズ以外の部分の改正案。資料7−2といたしまし て、チーズの部分の改正案ということでございます。  それから、別冊につきましては、ヨーネ病に関する文献あるいはチーズの殺菌に関す る現状を取りまとめております。  以上でございます。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。  資料については特に欠けているものはございませんようでしたら、この資料に基づき まして、これまでの経緯、それから、部会報告案に対するいろいろな意見について、事 務局からまず御説明願います。 ○事務局  それでは、今回初めて御参加いただく先生もいらっしゃいますし、それから、前回が 1月の末ということで半年ほど前のことでございますので、もう一度現行案につきまし て御確認をさせていただき、それ以降の経緯についても併せて御説明させていただきた いと思います。  資料1が現行の部会報告案ということでございます。  ここの「はじめに」というところで説明をしておりますが、一昨年に発生をいたしま した雪印乳業の食中毒事件を契機といたしまして、同様の食中毒事例の再発防止を図る ということを目的といたしまして、脱脂粉乳の衛生基準について、これは食中毒部会の 方から検討するようにという提言がございました。そのほか、製造加工技術の多様化で ありますとか、Q熱病原体の耐熱性に関する新たな知見があったというようなこと、そ れから、コーデックスとの整合性あるいは容器については規制緩和という観点でござい ますが、そういったもろもろの内容につきまして、平成13年ですから昨年の4月に厚生 労働大臣の方から薬事・食品衛生審議会会長の方に諮問をさせていただいたということ でございます。したがいまして、諮問させていただいた内容につきましては、Iの「はじ めに」の1「製造方法の基準」といたしまして、脱脂粉乳等の製造基準について設定す ること。それから、乳等の殺菌基準について見直すこと。2といたしまして、種類別分 類について見直すこと。3といたしまして、容器包装の基準について設定することとい うような内容になっております。  この諮問の後、第1回の部会を7月に開催させていただき、第2回目を10月、第3回 目を1月28日に開催させていただいたということでございます。なお、この間、昨年の 8月には現地調査ということで、先生方にも御足労いただいたわけでございます。  簡単に部会報告の現状の内容につきまして、御説明いたします。  まず、脱脂粉乳の製造基準でございますが、これにつきましては、雪印乳業の食中毒 事故、その大樹工場での原因の解析結果でありますとか、あるいは全国の脱脂粉乳の製 造工場の実態調査結果、これは2ページにまいります。あるいは生乳中の黄色ブドウ球 菌の汚染状況。これを見ますと、約半数ぐらいが黄色ブドウ球菌に汚染されているとい う現状にあったというようなことから、こういったことを踏まえ、脱脂粉乳の製造基準 について御検討いただいたということでございます。  特に、黄色ブドウ球菌にそもそも原料乳が汚染されているということを前提とした衛 生基準が必要ではないかということで、種々御検討いただいたということでございま す。その結果につきましては、4ページにまいりますが「脱脂粉乳の衛生基準」という ことで、基本的にここに掲げてございますアからカの内容を盛り込んだ衛生基準を設定 することが適当であるというまとめをいただいたわけでございます。黄色ブドウ球菌が 増殖して、かつ、エンテロトキシンを産生する可能性のある温度帯を避けることという のを基本にいたしまして、特に、オの部分では、加熱殺菌後の濃縮乳についての取扱い でございますが、加熱殺菌後ということで黄色ブドウ球菌の死滅が前提になるわけでご ざいますけれども、ここの部分での二次汚染があってもエンテロトキシンを産生するよ うな状態にならないような措置ということで、閉鎖系で管理を行うか、もしくは6時間 以上滞留しないように管理をすることという条件を設定をさせていただいたということ てございます。  そのほか、回収乳についても10℃以下の温度管理を徹底させるということでございま す。  それから、その他といたしまして、上記のほかに関係者の指導事項ということで、搾 乳後の生乳の取扱いでありますとか、あるいは脱脂粉乳以外の粉乳のたぐいについて も、同様の指導をするというようなことを付け加えさせていただいたわけでございま す。  点線で囲っておりますが、後ほどパブリックコメントあるいはWTO通報のコメント を紹介させていただきますけれども、追加のコメントがございましたので、ここの部分 につきましては、脱脂粉乳の製造基準としてコーデックスとの整合性という観点から、 その追加について御検討いただきたいということで点線で囲っておるところでございま す。  それから、IIIでございますけれども「乳等の殺菌基準について」ということで、この ものにつきましては、厚生科学研究の成果を受けまして、特にQ熱の耐熱性の観点か ら、現行の62℃から65℃で30分間という加熱殺菌基準を見直すべきではないかというこ とでございます。これにつきましては、5ページ目の(3)に、その死滅温度についての知 見をまとめております。62℃30分あるいは63℃30分では、このQ熱の病原体の一部が生 残することが確認されたということでございまして、63℃でバッチ式の加熱方式であれ ば死滅が確認されたということで、次のページにまいりますが、国際的な状況といたし ましても、Q熱あるいは結核菌を10の5乗のファクターで減じることを指標とした加熱 条件ということで、バッチ式において63℃30分の加熱殺菌方法を検討しているというよ うなこともございまして、今回この乳の殺菌基準といたしまして(5)に掲げてございます ように「バッチ方式により摂氏63度で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺 菌効果を有する方法で加熱殺菌すること」というふうに改めるべきであるというふうに おまとめいただいたところでございます。  それから、この議論から派生をいたしまして「乳製品の殺菌について」ということで (6)で記載をしております。特にチーズについての規定ということでございまして、チー ズについては、加熱殺菌基準が整備されておらないというようなことから、基本的に は、ナチュラルチーズの製造方法の基準として「63度で30分間加熱殺菌をするか、また はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌しなければならない」という製造 基準を置くべきである。  ただ、ヨーロッパ地域では、未殺菌乳を使用したチーズが生産されて消費されている ということもかんがみ、そういったものについてはHACCPシステムを用いた総合衛生管理 製造過程の承認制度の導入についても検討すべきであるというようなことを原案として 入れていただいたということでございます。  この部分につきましては、後ほど、特に諸外国からのコメントが多数来ておりますの で、併せて紹介をさせていただきます。  それから、乳等の種類別の分類につきましては、製造加工技術の進歩、特に膜処理を 用いた製造技術が出てきているというようなことも踏まえ、あるいはコーデックスとの 整合性の観点から、かつ、その消費者に対してわかりやすい商品区分とするというよう なことから、現行の乳等省令の種類別分類について見直しを行う必要があるということ でございまして、コーデックスで定められております乳用語の使用に関する原則に照ら し合わせて、なるべくそれと整合性を保たせるような形での種類別の定義の改正につい ておまとめいただいたということでございます。  主な観点は、そこに掲げておりますアからエまででございまして、改正の要点として は、次の8ページの(2)にありますようなことでございます。  3番目といたしまして、したがって、そういうポイントを踏まえて種類別の分類はこ のように定義されるのではないかということで、それぞれの乳から始まりまして生乳、 牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳等の種類別の定義を置いたわけでございます。ここの部 分も点線で囲まれておりますが、いろいろパブリックコメントを中心にコメントがござ いましたので、再度御検討をお願いしたいということでございます。  それから、容器包装につきましては、先ほど申し上げましたように、平成9年の規制 緩和推進計画にのっとりまして、例外容器で承認されたものについては順次基準化をし ていくということを約束しておりますので、今回幾つかの容器包装について基準化を図 るということでございます。  規格化を行う容器包装につきましては、10ページ目にございますが、牛乳等につきま しては、これは内容に直接接触する部分ではなくて、積層部分でございますけれども、 ナイロンあるいはポリプロピレンの使用を認めるであるとか、あるいははっ酵乳、乳酸 菌飲料、乳飲料につきましては、ポリプロピレン製の容器包装あるいはポリエチレンテ レフタレート、ペットの容器包装、これらについて基準化を図るというようなことでご ざいます。  以上が、1月に取りまとめていただいた部会報告案ということでございます。  この部会報告案につきまして、国内外からのコメントを求めたところでございます。 まず、資料2でございますが、これは2月8日でございますけれども、第73回食品輸入 円滑化推進会議、FSG、Food Safety Group meetingというふうに呼んでおります けれども、これはWTO通報に先立ちまして、在京の大使館の方々に集まっていただき まして、今回の改正の内容について説明をするという非公式の会合でございますが、そ の場で説明をさせていただいたということでございます。数か国から、そのFSGの場 あるいは後日意見が提出されたということでございます。  幾つか紹介させていただきますと、まず、オーストラリアからでございますが、今回 ナチュラルチーズの定義の改正を部会報告案の中に盛り込んでおりますけれども、これ はコーデックスでのナチュラルチーズの定義が昨年の7月に改正をされた。改正のポイ ントは、たんぱく質の凝固というのを明確に定義の中に入れるという改正点でございま して、現行の乳等省令もそれに合わせまして「たんぱく質の凝固」という文言を明確に 定義の中に入れようということで改正を考えていたところでございますが、それ以外の 言葉上でコーデックスで規定されているものと、それから、日本の乳等省令で今回改正 を考えている文言には若干そごがあるというような指摘を受けたわけでございます。  例えば、ホエイの除去というのをコーデックスでもあるいは我が国の定義でも定めて おりますけれども、コーデックスでは部分的にホエイを除去というような言い方をして いるのに対しまして、我が国では、単に凝乳から乳清を除去というふうに言っておる、 ここもきっちりと整合性を図るべきではないかというコメントをいただいたわけでござ います。  あるいは原材料の規定につきましても、書き方が違うということですが、そこの回答 にございますように、表現上の違いはございましても意図しているところは同じである というようなことから、それが明確にわかるように、今後、整理する必要があるかもし れませんけれども、基本的には今回の改正の内容については、コーデックスの内容を踏 まえたものにしたいというふうに回答をしております。  それから、オランダの方からも意見をいただいておりまして、EUの方では今回、脱 脂粉乳の製造基準の中で微生物の増殖を防止するために10℃以下という温度規定をして いるんですが、EUの規定の中では、例えば4℃から6℃で保存をする、あるいは搾乳 した生乳については8℃以下だとかあるいは6℃以下というような細かな規定になって いるというようなことから、そのような温度規定が必要ではないかというようなことが 言われております。  それから、乳の殺菌基準については、バッチ式で63℃30分という規定をしております けれども、むしろヨーロッパの方では72℃15秒、HTSTでの殺菌が通常行われているとい うことで、それの規定を明確にしておく必要があるのではないかというようなことをコ メントでいただいておりまして、今回の脱脂粉乳の衛生基準につきましては、ブドウ球 菌の増殖によりエンテロトキシンの産生を防止するという観点に着目をして改正を行っ たものであるということで、10℃以下であればエンテロトキシンは産生されないという 説明をしておりますし、それから、乳の殺菌基準につきましては、当然63℃30分と同等 以上の殺菌条件ということで、これはこれまでも通知で示しておりますけれども、72℃ 15秒につきましても別途通知で示していきたいというふうに考えております。  それから、ニュージーランドからは質問を一部いただいておりますが、ここに書いて あるような回答をさせていただいております。  それから、アメリカの方からも、これは業界の意見だということなんですが、脱脂粉 乳のHACCPのシステムの導入。これは、報告書の中で最後の方に、脱脂粉乳についても HACCPの対象にするように検討すべきであるということが盛り込んでありますので、そこ について言及をしておるわけでございます。アメリカでは、HACCPあるいはこれと同等な 公衆衛生管理システムで管理が行われているということから、それを入れることを求め るということ。  それから、乳の殺菌条件につきましては、先ほどのオランダと同様に72℃15秒につい ても明記するべきだということようなこと。  それから、ナチュラルチーズの生乳の殺菌については、未殺菌乳を使用する場合、 チーズを華氏35度、1.6℃以上で60日間以上貯蔵しなければいけないという文言を追加す べき。要は、未殺菌乳を使ったチーズについても製造を認めるべきであると。そういっ たものについては、熟成期間で製造基準として置くべきであるという意見をいただいて おります。  これにつきましては、そこの回答に掲げておるところでございまして、特に一番最後 のナチュラルチーズの殺菌条件については、それが大丈夫であるというような根拠につ いては是非提供していただきたいということで回答を返しております。  それから、ざっと国内外のコメントを説明させていただきますけれども、資料3でご ざいます。こちらの方は、国内からのコメントということでございまして、2月の末か ら3月の末に掛けまして、厚生労働省のホームページにこの部会報告の原案を掲載いた しまして、これに対するコメントを募集したところでございます。期間中27件のコメン トが寄せられております。時間の関係もございますので、主だったものあるいは御検討 いただきたいものを中心に御説明させていただきます。  まず、脱脂粉乳の製造基準でございますが、ここについては特に大きな指摘はござい ませんが、27ページの意見4でございます。今回、この脱脂粉乳の製造基準を適用した 場合に、10℃から48℃の温度帯、特に加熱殺菌後の濃縮乳の貯乳で完全に閉鎖系でやれ ば問題ないんですけれども、そうでない場合は6時間置きにタンクを替えなければいけ ないというようなことが求められるわけでございまして、その部分のタンクが1基しか ないようなところは、連続してやるためにはもう1基タンクを設置しなければいけない というようなことから、設備を大幅に変更しなくてはいけないというような必要性が出 てくるわけでございます。あるいは48℃以上で貯乳をすればいいわけでございますけれ ども、そういった場合に品質上の確認をする必要があるというようなことで、経過措置 期間と申しますか、猶予期間を設定すべきだと。ここでは2年間を要望するというよう な意見が出てきております。  これにつきましては、当然必要な経過措置期間につきましては、それぞれの規定につ いて設定をしていきたいというふうに考えております。  それから、殺菌基準については特に大きなものはございませんでしたが、63℃30分は バッチ式であるというようなことから、プレート式でやった場合には65℃30分が必要で あると。そうした場合に、CLを65℃とすると設定温度は68℃ぐらいになってしまう、 プラスマイナス2℃、3℃を設定しなければいけなということになると、これを低温殺 菌牛乳として表示ができない。これは別の法令なんですが、そういうことが指摘をされ ておりまして、それは他法令の問題であるということで、関係団体の方にお申し出くだ さいという回答をしようと思っております。  それから、種類別の分類でございまして意見6でございますが、特に、先ほど原案の ところで括弧でくくっておるところに対するコメントが複数来ております。改正の要点 のところはいいんですけれども、種類別の分類で次のように定義することが適当である というふうに種類別の定義という形で書いたものですから、いろいろほかの種類別との 整合性の問題でありますとか、あるいはここの意見6にございますように、先ほどの報 告の中で見ますと、牛乳の種類別の定義といたしまして「販売の用に供する牛の乳をい う」という定義になっておりまして、今回の改正の趣旨である生乳を処理したもので、 かつ、成分調整を行っていないものという趣旨が定義の中にちゃんと盛り込まれていな いのではないかと、そういったことをちゃんと盛り込むべきであるというような御指摘 いただいております。  それから、次の28ページ目をめくっていただきますと、意見10でございますが、改正 案によれば低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び成分調整牛乳は、いずれもそれが生乳、牛乳、 特別牛乳であると規定しているが、牛乳または特別牛乳は削除すべきであるということ で、これは実際上は、すべて生乳からこういったものがつくられるということでござい まして、元の乳等省令の定義がこのようになっておりましたので、そのまま引っ張って きてこのように定義をしていたわけでございますけれども、実は、ほかのものとの整合 性を図る観点からは、牛乳あるいは特別牛乳は削除すべきであろうというふうに考えて おりまして、この点につきましても整理をしたいというふうに考えております。  それから、29ページ目の意見12でございますが、これにつきましても「販売の用に供 される」という書き方をしておるわけでございます。あるいは意見13でもそうですけれ ども、ほかの種類別の名称の定義のところとの整合性について御指摘をいただいておる ところでございまして、これも我々といたしましては、乳等省令の改正時に整理をした いなというふうに考えております。  30ページにまいりまして意見17でございます。これは、今回ナチュラルチーズの定義 の見直しをコーデックスの定義と併せて改正をするということで、改正案を提案させて いただいているわけでございますけれども、脱脂粉乳につきましても、コーデックスの 規格基準がそれぞれ設定されております。チーズについてコーデックスと合わせるので あれば、脱脂粉乳の基準についてもコーデックスと合わせるべきではないかという指摘 でございます。これは、国内からのコメントでございます。  具体的には、コーデックスで脱脂粉乳の規格基準といたしまして、最後の段階で成分 調整をするために乳糖を加えたり、あるいはミルクパーミエイト、リテンテート、これ は乳の成分でございますけれども、そういったものを添加して乳のたんぱく含量であり ますとか脂肪含量を調整するような方法が国際的には既に認められているので、今回の 改正に合わせてそういったものも見直すべきであるという御指摘をいただいておりま す。このことについては、後ほど御議論いただきたいと思います。  それから、容器包装につきましては特に大きな問題はございません。一部リサイクル の関係で意見21にございますが、今回ペット容器が乳飲料でありますとかはっ酵乳に認 められるということになりますと、これのリサイクルの問題が発生する。容器に乳脂 肪、特に脂肪分が問題だというふうに言っているんですが、それが残ったような状態で リサイクルされると、すぐアルカリ洗浄したり水洗浄されればいいんですけれども、そ れが時間が経つと臭いが残ってしまう。それをリサイクルした場合にできたペット樹脂 の中に、そういった臭いが付着をしてしまうという問題がどうもあるようでございまし て、そういったものについては、ペットのリサイクルに回さずに、一般のプラマークを 適用して、そちらの方でやっていただきたいというのが、リサイクルの関係の方々から のコメントとして提出されております。これは食品衛生法上の問題ではないんですが、 こういったコメントが来ておる旨につきましては、環境省あるいは経産省の方に御説明 しております。そちらの方で対応を考えていただきたいということで、先般、御説明を させていただいたというところでございます。  これが国内からのコメントということでございます。  それから、資料4に、WTO通報の関係でコメントをいただいております。チーズの 原料乳の加熱殺菌基準に関するコメントということでございます。スイス、イタリア、 フランス、EC等から来ております。オーストラリアは別件で来ております。  まず、スイス、イタリアでございますけれども、今回ナチュラルチーズの原料につい ては、基本的には加熱殺菌をすべきだというふうに提案をさせていただいているところ でございますが、これらについては乳の加温でありますとかカードの加温処理あるいは 加温した状態での保持であるとか、あるいは素早い酸性化あるいは長期、90日から360日 の熟成を組み合わせた方法によって、原料乳を加熱殺菌したチーズと同等の安全性が保 証されることから、これらについても検討を願いたいというようなことを言っておりま す。  それから、イタリアにつきましても、多くの未殺菌のチーズを輸出しているというこ とで、データを送付するので、これらの条件について再考願いたいということでござい ます。  それから、イタリアのコメントの3行目に括弧でつけておりますけれども、SPS委 員会、これはWTO協定に基づく検疫衛生問題の委員会ということで、年間3回から4 回ほど会合が開催されているわけでございますけれども、これの会合が先月6月の末に ございまして、そこでの正式議題ではなかったんですが、EUあるいはイタリア等との 間でサブミーティングが設けられまして、その場でEUあるいはイタリア等の方から、 今回の改正案についてのコメントがあったということでございます。この会合には我々 の方は参加していなかったんですけれども、日本からは外務省あるいは農林水産省の職 員が参加をしたということで、外務省の人からこういった内容であったということを聞 いております。イタリアでは、EC指令に基づく製法、製造がされているというような こと、それから、製品からリステリア菌が検出されてはならないという基準があるとい うようなこと。それから、そこに5つほど点がございますが、カードの加熱の条件であ るとか、一部の実験データの結果からリステリア菌の急速な減少が認められている。あ るいはリゾチームであるとかレンネットの作用によって、そういった病原菌を減少させ ることができる条件ができるのではないかというようなことで、必ずしも殺菌をしなけ ればいけないということではないのではないかということが言われております。  それから、スイス、イタリアからは主にパルメザンチーズでありますとか、そのほか のいわゆる未殺菌乳を使ってつくられるハードタイプのチーズの安全性について、特に 強調してコメントが出てきておるという状況でございます。  それから、フランスはそういったものに加えて、ソフトタイプであるとかセミソフト タイプのチーズについてもコメントを出してきております。今回の示されている原料乳 の加熱殺菌基準だけではなくて、全体の衛生管理、特に食中毒に直結しているのは、製 造後の二次汚染の問題も大きいのではないかということも併せてコメントとして出てき ております。  ECからも、こういった国々のコメントを取りまとめた形でコメントが出てきており ます。pHの問題でありますとか、水分活性の問題等から未殺菌乳からつくられるもの がすなわち危ないということではないのではないかということでございます。  それから、35ページにまいりますが、ヨーロッパではチーズからQ熱は検出されてい ないということ。それから、リステリア菌は生の製品に発見されている。日本がこの2 つの細菌についてデータを求める理由を明らかにしてほしいということもコメントとし て出てきております。  それから、HACCPの制度については、どういうふうな運用になるのかということを明確 にしてほしい等のコメントが来ております。  それから、オーストラリアでございますが、これは先ほどFSGの場でも出てきた内 容をコメントとして正式に出してきておりまして、ナチュラルチーズの定義の改正案 で、やはりコーデックスの定義との問題ということで、例えば、日本の乳等省令の用語 では「固形状にしたもの」というふうに定義をしておるんですが、これだとソフトタイ プだとかセミハードのチーズが含まれないのではないかというようなことをコメントし ております。いずれにしても、こういった文言につきましては、実質的には同じ内容で あるというとりあえずの回答はしておりますけれども、整合性を図る必要性が出てくる のかなというふうに考えております。  それから、下から4行目にございますが、2といたしまして、脱脂粉乳の規定では脂 肪やたんぱくを添加することを認めていない。コーデックスでは、先ほど国内からのコ メントでもございましたけれども、乳脂肪やたんぱく含量の調整のために乳成分の添加 が認められているということで、これについてもコーデックスの基準を受け入れるべき であるというようなコメントが来ております。この内容につきましては、資料5にコー デックスのスタンダードということで粉乳の基準を資料として用意させていただきまし た。訳につきましては40ページから始まりまして、40ページの下の方にございますが、 3番といたしまして「必須成分及び品質要素」ということで、3.1「原材料」といた しまして「次の乳製品は、たんぱく質含量調整の目的で使用してもよい」ということ で、乳の保持液、乳透過液、乳糖について、その添加が認められているということでご ざいます。  以上が、国内外からのコメントということですが、もう一点、実は資料で用意はして いないんですが、2月の末にある研究者の方から電話で事務局の方にコメントと申しま すか注意喚起がございまして、ヨーネ病の研究者の方からの通報でございました。今回 Q熱であるとかあるいはもともとは結核菌の死滅を指標として乳の殺菌条件というのは 決められているんですけれども、ヨーネ病の原因であるヨーネ菌についての死滅は検討 されているのかどうかということでコメントをいただきました。特に最近、イギリスな どでヨーネ病と人のクローン病との関連についての研究がされているというようなこと で、まだまだ未解明の域を出ていないわけでございますけれども、念のために、この ヨーネ菌の死滅条件についても調べておいた方がいいのではないかというアドバイスを いただきました。この点につきましては、部会長の方とも御相談をさせていただきまし て、今回ヨーネ病に関するレビューの文献を用意させていただきましたので、併せて御 検討あるいは御確認をいただければというふうに考えております。  以上が、前回以降いろいろやりとりがあった内容でございます。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。  ただいま長い御説明を大変たくさんいただいたわけですけれども、特に、パブリック コメントにつきましては非常にたくさんありましたが、大きく分けますと、脱脂粉乳の 製造基準と乳の殺菌基準を今回新たに提示した部分についてと、それから、種類別分 類、チーズをつくるときの原料乳の殺菌についての意見、それから、容器包装について の意見という感じになると思うんですけれども、このうち脱脂粉乳の製造基準と種類別 分類とか容器包装の部分については、余り大きな問題はないかあるいは安全性ではない 部分のことが多かったと思います。それに対して、今、最後に御説明いただきました ヨーネ菌をどういうふうに考えるかという部分と、それから、チーズの原料乳を必ず加 熱殺菌するということについては、非常に各国から強いコメントをもらっているわけで すが、その部分は特に安全性にかかわる部分で、非常に難しい問題をはらんでいるので はないかというふうに、比較的問題が難しいのではないかと思うんですが、そのほかの 部分につきましては、脱脂粉乳の製造基準、それから、容器包装の部分につきましては さほど問題はなくて、種類別分類については安全性とは直接リンクした問題ではないと 思いますので、まず、今まで通しての事務局の御説明で確認あるいは御質問がありまし たら、お願いしたいんですが。 ○丸山委員  2ページの「脱脂粉乳製造工場の調査結果」というところで、(1)から(5)の中で「数 分間」とか「数時間」という表現なんですが、やはりこれは数字は示せないのでこうい う表現にならざるを得ないのでしょうか。もし、このところを数字で示せたら、それに こしたことはないのだろうと思うのですが、そのところはいかがなんでしょうか。具体 的には(3)の「数分間」、(4)の「数時間」、それから、(5)にまた「数分間」という3つ が出てくるんですが、いかがなんでしょうか。 ○熊谷部会長  その前に、この資料1は1月に……。 ○丸山委員  これは、もうなってしまっているからしようがないんですか。 ○熊谷部会長  1月にこれでいきましょうということになりまして、案をお示ししたものなんです。 それに対するコメントが以下ざらざらついているもので。 ○丸山委員  これは、もうしようがない。 ○熊谷部会長  でも、今後どうでしょうか。これについて、もし、文章をつくる場合にはいかがで しょうか。 ○事務局  基本的には、いただいたコメントを基にこの部会報告を直すということなんですが、 より意味を明確にする観点から、それも併せて今回の御意見としていただいたというこ とで、最終的にリバイスをするときに部会報告を修正させていただくことは可能だと思 いますので、それは書けるか書けないかは調査表を見てみないとわかりませんけれど も、もし書けるようであれば、その部分も修正をして、最終的に今回部会報告としてま とめさせていただきたいと思っています。 ○丸山委員  できれば、そういうふうにしていただきたいと思います。 ○熊谷部会長  ほかに御質問あるいは確認されたいことなどありましたら、お願いします。  それでは、もしかするとあるかもしれませんが、また後でも十分お聞きできますの で、とりあえず先に進ませていただきます。  比較的安全性が絡まない問題であります種類別分類について、資料7−1だと思いま すが、まず、事務局の方でこれについて御説明いただけますか。 ○事務局  チーズ以外の部分についての修正案ということで、部会長から御説明のありました種 類別のところと、それから、その前に脱脂粉乳の製造基準の中で一部追加をさせていた だければなというふうに考えておる部分がございます。II「脱脂粉乳の製造基準につい て」ということで、改正案のイとしておりますが「コーデックス規格で定められている たん白質量の調整のための乳糖等の乳由来成分の使用については、これを認めて差し支 えない」。これは、先ほど国内からのコメントにもございましたし、それから、オース トラリアの方からのコメントにもございました。既に、粉乳のコーデックスの規格とし てこういったものによる成分調整が認められている、しかも、その内容は乳の成分とい うことで、衛生上大きな問題もないのではないかというふうに考えておりまして、今 回、脱脂粉乳の製造基準をつくる際に、併せてこの部分についても改正をさせていただ ければということでございます。  それから、IV「乳等の種類別分類等について」でございますが、これは次のページと 併せて見ていただきたいと思うんですが、現行案で改正の要点を示していただきまし て、それを受けた形で「種類別について以下のとおり改正することが適当である」とい うことで、半ば機械的に置き換えたものを提示したんですが、ほかのものとの整合性等 の問題、あるいは例えば牛乳を見ますと、先ほど御説明いたしましたように「販売の用 に供する牛の乳をいう」、これは別に中身を言っていない定義になってしまっておりま すので、この部分につきましては、改正の要点を部会報告でお示しいただき、実際の省 令改正のときには、ほかの種類別の定義等と矛盾しないような形で、なおかつ、その内 容をわかりやすい形で作業させていただきたいというふうに考えておりまして、ここま できっちりと部会報告の中で書いていただく必要はないのかなということで、改正案の ところでは種類別分類のところにつきましては削除をさせていただき、かつ、改正の要 点のところでもう少し丁寧にあるいは先ほどのパブリックコメントの内容を踏まえたよ うな形で改正をさせていただければなというふうに考えております。  以上が、脱脂粉乳の部分と乳の種類別の部分ということでございます。 ○熊谷部会長  ただいまのような対応でいかがでしょうか。御意見ございますか。  10℃というのも何かコメントがあったように思いますけれども、これは我が国は10℃ で通していこうということですか。今までの経緯がありますので、温度はどこにするか というのはなかなか難しい問題ですが。 ○事務局  違う温度設定を検討するということになると、また、大規模な調査もしなければいけ ない、フィージビリティの問題もございますので、衛生上必要であるということであれ ば、そういうことも検討しなければいけないなというふうに思っておりますが、今回は 特に黄色ブドウ球菌の増殖性の観点ということで御検討いただきましたので、それにつ いては10℃で担保できるということでございましたら、原案のとおりでお願いしたいと いうふうに考えております。 ○熊谷部会長  脱脂粉乳の製造基準と種類別分類の取扱いについては、いかがでしょうか。 ○小川委員  今の話と趣旨が違うかもしれませんが、今の改正案の内容で資料7−1のところで、 新しくイとして「コーデックス規格で」云々というのがありましたけれども、この文章 は意味がよくわからないんですが「たん白質量の調整のための乳糖等の」というのは何 か特別な理由があるんですか。たんぱく質量の調整ですよね。 ○事務局  これは、脱脂粉乳を製造して、それを一定の規格にして納品をすると。求められてい る規格に合わせるために、乳糖なりあるいは乳成分を加えることによってたんぱく質の パーセントを合わせると。現行では、脱脂粉乳には他物を加えてはいけないという規定 になっておりまして、そこの部分についてそういった原料を添加することを認めるとい うことでございます。 ○小川委員  たんぱく質量の調整のためにわざわざ乳糖等を云々というのは、何か意味があるんで しょうかということなんです。 ○事務局  「乳糖等」の「等」の部分につきましては、先ほどのリテンテートとかパーミエイ ト、これは乳を限外ろ過処理をしたときにできるものですけれども、乳糖だけではなく てそういったものを指しております。コーデックスで規定されている。 ○熊谷部会長  これは、コーデックスで「乳糖」という言葉を使っているんですか。 ○事務局  はい。 ○熊谷部会長  それをここに持ってこられたと。 ○事務局  はい。 ○小川委員  たんぱく質量の調整をするのに、なぜ乳糖なのかと思ったんですが、そういう理由で すか。ありがとうございました。 ○熊谷部会長  ほかにございますか。  種類別分類については、最終的には細かく決めて示すということでよろしいですよ ね。  それでは、先に議論を進めさせていただきます。また、後戻りはいつでもできますの で、もし、お気付きの点があったらこの後でもお願いします。  先ほど事務局の方から御説明をいただきましたように、1つは、ヨーネ菌が研究サイ ドから少し疑問といいますか、質問ですか、対応しなくてよろしいのかということがあ ります。  それから、もう一つは、ナチュラルチーズの製造基準の部分です。まず最初に、ヨー ネ菌の部分について参考文献を用意していただいていますので、それをちょっと御説明 いただけますか。 ○事務局  参考文献の抜粋といたしまして、資料6を用意させていただきました。それから、前 文につきましてはファイルの方のIとなっておるかと思いますが、そちらの方を御参照い ただければというふうに思います。  「牛ヨーネ病に関する最新知見と防疫戦略」ということで、これは農林水産省の家畜 衛生試験所の横溝先生の総説でございます。ヨーネ菌の病気の解説でございますとか、 その流行状況でございますとか、いろいろな内容についてレビューがされておりまし て、この中でヨーネ菌の殺菌条件の検討という部分がございましたので、今回その部分 について抜粋させていただいたということでございます。  資料6の(3)「乳汁中ヨーネ菌の殺菌試験の検討」というものでございまして、乳汁中 のヨーネ菌の殺菌条件につきましては、欧米でよく用いられておりますHTST、71.7℃で 15秒間の殺菌条件、こういった条件でよく調べられているということでございます。読 んでいきますと、ヨーネ菌は次に述べるように耐熱性はやや高い。すなわち10の3乗か ら5乗、10の6乗のヨーネ菌を含むように調整した牛乳では、この71.7℃15秒間の処理 後に3乗から5乗のものですと50%、あるいは10の6乗のものだと96%の検体から生菌 が回収される。あるいは10の2乗あるいは10の3乗というようなレベルでも、それぞれ 10%以上の検体に菌の残存が確認されているというような文献がございます。  更に、Sung博士らの実験では、62℃から71℃のヨーネ菌の野外株での生残菌数変化を 見たところ、下のTable2になるわけでございますけれども、D値では10の1乗、2乗、 3乗あるいは4乗の濃度では、完全殺菌にそれぞれ11秒、23秒、35秒、47秒を要すると いうことが確認されたということで、完全な殺菌効果は得られないのではないかという ことが一部の文献で言われておりました。ところが、下から3行目になりますが、それ らの加熱試験では検査材料を入れたガラス容器、これは試験管や小型の瓶でございます けれども、それをウォーターバスに一定時間沈下させる条件で行っている。実際の乳業 工場での殺菌条件を正確に反映していないのではないかという問題点が指摘をされ、 Keswaniらがガラス毛細管に検体を入れて試験を行って、10の5乗の乳中のヨーネ菌は 63℃30分あるいは72℃15秒の処理で完全死滅することが確かめられたということでござ います。  あるいは別のStabelらによりますと、10の5乗の濃度であっても65℃以上であれば15 秒間でも完全に死滅するというようなことが証明をされている。  更に、その下の5行目ぐらいになりますが、最近のGrantらの報告では、耐熱性の強い 3つの株のヨーネ菌を用いて、6乗から7乗というような高濃度の菌を含む乳汁に対し て15秒間の加熱処理をしたところ、72℃、75℃、78℃、80℃、85℃、90℃のいずれでも 5乗から6乗の減少があったということでございます。一部生菌の残存が認められてい るということでございますけれども、これは25秒間に延長すれば、すべてが完全殺菌に 至っていたという内容でございます。  前文につきましては、総説のところに書いてございます。  一時期、人のクローン病との関係が指摘をされたわけでございますが、その部分につ きましても、総説の中ですと、12ページの7)「ヨーネ菌の感染宿主」ということで、そ の辺りのレビューもされておりますが、その両者の病気の関連を肯定する成績は極めて 少ないということで、この方は否定的な見解をどうも取られておるということでござい ます。  以上でございます。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。  今の文献の13ページの右側のカラムの4)の一番最後の方、「ヨーネ病牛により大量の ヨーネ菌で環境が汚染されるが、汚染農場の家族、従業員におけるCD患者発生例は全 くない」。クローン病ですね。それから、「ブルセラ、レプトスピラ、カンピロバク ター、サルモネラなどの人畜共通感染症が牧場で発生するが、家畜から人への感染事故 が起こりやすいということを考慮すれば、疫学的にヨーネ菌がCDの原因となるとは言 いがたい。病理学的に見てもヨーネ病と人のCDとは多くの点で異なっており、CDに おけるヨーネ菌の病原説には余りとらわれるべきではない」ということで、この著者 は、現行の乳の殺菌条件でヨーネ菌が必ずしも死滅しない報告があるけれども、その点 についても危険性は全くないと見てよいという判断で、それから、もう一つは、疫学的 に人のクローン病の原因とは考えがたいという、非常に楽観的な見方を取っておりま す。これは1999年に公表された総説ですが、2001年に『Journal of Food  Protection』に掲載されたレビューによりますと、一応そのレビューでも、クローン病 との関連については証拠がないという見方を取っていまして、ミルクに含まれているこ の菌がクローン病の原因になっているということについては、よくわからないといいま すか、それを示す証拠はないという見方を取っています。  それから、これはやはり2001年に『Trends in Molecular Medicine』というジャー ナルがあるんですけれども、それにまた別の人がエチオロジー・オブ・クローンズ・ ディジーズということで、ザ・ロール・オブ・マイコバクテリウム・アディウム・パ ラ・チュバクローシスで、このヨーネ菌の役割といったものについてのレビューを書い ていますけれども、そのレビューの中でもクローン病との因果関係については、現時点 ではエビデンスはないというふうに書いてあります。  いろいろ個別の研究報告では、クローン病患者の腸組織からヨーネ病菌の遺伝子が見 つかるだとか、それから、非常に例数は少ないですけれども、ヨーネ病菌そのものが見 つかったという報告もありまして、そういう報告からクローン病というのは見掛けは ヨーネ病に似ているものですから、そういうことが言われているわけですけれども、こ の横溝さんとおっしゃる方の総説、それから、ほかの2001年の今紹介しました2つの総 説から言っても、その因果関係はまだ証拠がないということを言っています。  そういう状況なんですが、63℃30分というのは、ヨーネ病菌を完全に死滅させる温度 ではないかもしれないという可能性は勿論あるわけですけれども、それらを踏まえてど ういうふうに考えるかということなんですが、Q熱については一応それを考慮して63℃ 30分というふうに、今までの62℃30分を変えたわけですけれども、いかがでしょうか。 ○山本委員  ヨーネ菌に関してはHTST、72℃15秒での殺菌における生存の問題、これはヨーロッパ の方でも論文が出たりしてまれに指摘されている問題と考えています。ただし、文献等 をこれまで見ている中で、63℃30分でヨーネ菌が死滅しなかったという文献は見たこと がないんです。それを考えますと、今度は同等性の問題ですね。72℃15秒が63℃30分と 同等の殺菌効果があるのかどうかという問題を考えるべきで、63℃30分ということで ヨーネ菌が死なないかもしれないということではないというふうに考えます。 ○熊谷部会長  ただ、現在の日本の殺菌条件というのは、七十何℃何秒というのはありましたか。 ○事務局  72℃15秒というのを同等だというふうに通知で示しております。 ○山本委員  この場合も62℃で1,373秒ということで、この表の中にあるんですけれども、これを見 ますと62℃で30分よりも短いですね。62℃30分であれば今度はOKと。もう一つは、 72℃15秒の場合、73℃15秒で横溝先生の文献から判断する限りは死滅するという判断を されていることから、さまざまな指摘はあるものの、実験条件によって違うということ があって、やり方を守っていれば、ほぼ同等であるということについては、今のところ 妥当なのではないかというふうに考えていますけれども。 ○品川委員  最初の問題は、Q熱の病原体を考えて低温殺菌のことを考えたときに、そこにヨーネ 病菌という問題が出てきて、ヨーネ病菌については、総説では63℃30分のバッチ法の殺 菌だったら大丈夫だろうということが言えますが、今度は高温殺菌の方が十分であるか どうかということが、総説の中に出ているわけです。これをどうするかというのは、今 までの論議からはちょっと違いますが、先ほど山本先生が言われたように、本当に63℃ 30分と72℃15秒というのが同等性になっているのか。むしろ、これから見るともう少し 温度を上げないとならないのではないかと。アメリカでも少し殺菌温度を変えたという ことを言っていますけれども、そういう問題が提起されているこの総説からは見えてく るのではないかと思います。 ○熊谷部会長  一応、動物もいろいろな病気を抱えていまして、いろいろな菌がいるわけです。この ヨーネ菌を殺菌する必要があるのかどうかという部分について、殺菌する必要はないの であれば別に生残していても構わないわけでして、アイルランドだったか、市販殺菌乳 からも菌が検出されたという報告があるんですよ。それから、生乳をヨーロッパでは結 構頻度高く飲んでいますけれども、生乳にはその遺伝子がかなりな頻度で、例えば、ス イスの報告というのが今手元にありますけれども、数十%遺伝子が検出されるわけなん です。だから何だと言われると困るんですが、それで言いたいのは要するに、それだけ 日常的にミルクを介して摂取しているということなんです。それだから何だというと、 厳密に考えると余り理由になっていないような気もしますが、先ほどの疫学的にクロー ン病との因果関係を示す証拠が今までどうもないというふうな専門家の見方が結構ある んですね。それらを考え合わせて、殺菌の必要が私自身は今のところないのではないか というふうに思っているわけですけれども。 ○品川委員  しかし、今はMycobacteriumの中のparatuberculosisという形で示されており、本菌の 具体的な病原性となるとなかなか難しいけれども、クローン病だけを対象にしたのか。 一応、結核菌のMycobacteriumの中の1つですから、その辺のことをどう考えるか。勿 論、現殺菌については菌量との関係で温度と時間が関与しますが、だから、現段階では 63℃30分について我々が検討してきたところではいいと思いますが、別個の菌について 問題が出てきましたが、これをどう判定するかという問題は本当に、今言われているク ローン病だけを対象に考え、乳の殺菌の条件をどうするかということは、私自身はよく わからないですが、菌が残るというデータがここに示されているわけですね。それを病 原性があるかないか、菌量との関係がすべて掛かわってくるから、一概にこれはあって もいいのではないか、というのはなかなか難しいという感じがします。実際に、この菌 の病原性については今まで言われていたわけですよね。M.aviumのズーノーシス起因菌と してはどうなのか。 ○山本委員  ヨーネ菌については、人に病気を起こすという明らかな証拠というのはなかったはず です。 ○品川委員  それが実際には入れているわけですよね。ズーノーシスの1つの中に入っているので はないですか、入れてないですか。M.aviumは感染するということになるわけですかね。 ○山本委員  M.aviumはかかります。paratuberculosisとaviumが別物であるという考え方で扱うと すれば、ヨーネ菌そのものが人に直接病気を起こしたというのは証拠としてはないと考 えています。クローン病からは遺伝子の検出と菌が取れるということが報告にあるんで すけれども、直接的にそれが病気として、逆に言うと、原因となったかどうか。病変か らは取れているけれども、病気の原因となったかどうかという報告はないということ で、ヨーネ病については今のところ不明ですね。  それと、先ほどの高温で死なないかもしれないという問題については、15秒というも のが同等かどうかという文面がありますので、その辺の検討というのは必要かもしれな いんですが、もう一つは、殺菌するときの方法ですね。それから、72℃15秒でやるやり 方をどんな形のものを使うのかということで、また変わってくる可能性がないのかどう か。これは、実験的にチューブを使った場合と、ボトルみたいなものに入れた場合とで 変わってくるということが、この中にも記載されていますから、実際のプラントでの証 明というのが本当は必要なのかもしれません。 ○熊谷部会長  やはり一番望ましいのは、我が国で使っている生乳がどのくらい汚染されているのか 知りませんけれども、もし、仮にそれが何%か汚染されているとしたら、殺菌乳ではど ういう頻度になっているのかというのを調べるのが、そういう部分では一番確実なので はないかと思いますけれども。実験するとなると、やはりプラントと同じ規模でという ことになりますと、かなり難しい話に実際問題としてはなりますよね。勿論、今後、諸 外国のデータも集めるとともに、我が国でもそこまでお金を掛けるべきかどうかはわか りませんけれども、もし研究として進めていくとすれば、そういった実態調査みたいな ものを積み重ねていってという話になるのかもしれないですね。 ○事務局  今回、報告書の中では63℃30分バッチ式でということなんですが、これで加熱殺菌条 件を変えたとなると、それと同等以上の方法はこれこれこういう方法があるということ を通知の上で示す必要がございます。アメリカあるいはオランダの方からも、71.7℃15 秒はこれと同等なんだなという確認のコメントも出てきておりますし、現行のコーデッ クスの基準では、保持式で63℃30分もしくは連続式で72℃15秒というのが規定されてお ります。これと違う条件を日本が設定するということになると、やはりそこには科学的 な説明が必要ではないかなというふうに考えておりますので、今回の報告書を受けて 我々の方で出す通知のことも是非この場で御検討いただければありがたいなと思ってい ますけれども。 ○小川委員  この同等性というのは、62℃のときからも使っているわけですね。ですから、そこら 辺はどうなるんですか。 ○事務局  今回Q熱の関係で63℃に上げさせていただいたわけですけれども、72℃であればQ熱 は問題ないということですから、ここの部分は変更する必要はないのかなというふうに 考えております。ヨーネの点について、そういう考え方でよろしいかどうかということ を是非確認させていただきたいんですが。 ○小川委員  資料6の46ページの右側の欄の3株の耐熱性の強い株でやると90℃でも残ってしまう んですね。これは、そういう読み方でいいわけですね。この元の論文を読んでいないの でわからないのですが、この殺菌はどうやったんですかね。最初に議論になった左欄に 示された方法、私どもも昔よくやったんですが、ガラス容器の中に入れてウォーターバ スでやるのはだめなんですよね。キャピラリーの薄いものを使ってやったかどうかとい うことが一時問題になったんですが、この方法は問題のない方法でやったということな んでしょうか。90℃15秒でも残るとなると大変なことになってしまうと思いますけれど も。72℃から90℃のいずれでも15秒では残ったんですよね。 ○品川委員  だから、15秒でということなんでしょう。時間の方が問題だということで、イギリス ではこの度殺菌時間を15秒から25秒間に延ばしたと。 ○小川委員  今は72℃15秒でやっているわけでしょう。 ○品川委員  この実験はそれでは残りますよということで、25秒にしたら大丈夫だとここでは書い ている。 ○小川委員  だから、それとはまた別の立場で見ているわけだけれども、では、73℃ならいいのか というとそうではなくて、90℃でもだめだということですよね。 ○事務局  今、お手元の方にそれの原著の中に書かれております表の方をお配りいたしておりま す。今、小川先生が御指摘のものは、真ん中のTable2というものがございますが、この 表になります。B2だとかNCTC8578であるとか、DVL943、これらのヨーネ菌を使いまし て、一番左のところにHeat treatmentということで72℃15秒、75℃15秒、78℃15秒云々 ということでございまして、加熱前の菌数がそれぞれ1.5×10の6乗、4.1×10の6乗、 5.1×10の6乗、9.3×10の6乗、7.0×10の5乗、1.9×10の6乗、このものが左の温度 条件の加熱を受けたときにどうなるかということでございまして、3回のトライアルの うち1つは0.3以下、もう一つは1.6、もう一つは0.4。同じように75℃の場合はこういう 状態だったということで、90℃でも0.4というのが1つあるということで、全体を見ると 5乗、6乗レベルで落ちていることは落ちている。ただ、完全にゼロになっているかと いうと、微妙に数個残っている可能性があるということの結果でございます。  ちなみに、上の方のTABLE1、TABLE2は、その前段で総説のところにございました内 容のものでございまして、TABLE2を見ていただけると、65℃で15秒で5乗あるいは6乗 のものが1.0に落ちているというような結果でございます。このものは、乳の実際の殺菌 を反映した形での条件で行われているということでございます。 ○小川委員  Table2は別の実験ですか。 ○品川委員  別の論文ですね。 ○小川委員  何か小さくてよく見えないんだけれども。Table2はみんな同じ菌数ですよね。 ○品川委員  実験をやったのはね。 ○小川委員  みんな4乗ですか。 ○事務局  85℃を除いて全部6乗です。85℃のところが7.0×10の5乗になっています。 ○小川委員  あとはみんな6乗ですか。 ○事務局  はい。 ○小川委員  それで、残っている菌数は全て同じ。 ○事務局  一番上ですと、0.3以下。これは検出限界以下だと思いますけれども、あと1.6個。 ○小川委員  だから、実質同じですよね。ということは、殺菌温度とは別の何か特殊な要素があっ て影響しているような気がしてしようがないんです。72℃も90℃も同じ15秒という殺菌 でほぼ同じような菌数が存在し、しかもMPNで測らなければ測れないわけですね、いず れにしても。ほとんどが0.3以下でまれに0.4とか0.6が存在しているということですよ ね。これは差があるんですかね。そこら辺がどうも読めないんですけれども。 ○熊谷部会長  これの成績は、もし、実験条件で何か不適正な部分がないとするならば、非常に一部 の菌がどういうわけか耐熱性を持っているということが考えられますね。 ○小川委員  だから、ここに強い3株を選んだというのはそういう意味なのかもしれませんけれど も。ただ、90℃15秒で生残したものが、72℃では25秒でいなくなってしまうわけです ね。高温での殺菌原理からいってそういうことがありますか。 ○事務局  ですから、この論文の中では、温度を上げるよりも時間を長くすることによって、す べて陰性になる傾向が見られたというふうなことを解説しております。 ○熊谷部会長  非常にサイエンスとしては面白いんですけれども、一生懸命それを考えていますと時 間が足らないのと、それから、今後、調査研究をしていくにしても、一応63℃30分とい う原案を既に示してあるわけですが、それをこれによってどうにかしようとするかどう かということなんですけれども、63℃30分で疫学的な点も考慮に入れて、これはこれで いいだろうというふうにするか、それとも、63℃30分自体ももう一度考えた方がいいの ではないかという、そのいずれかの対応が考えられるわけですが。 ○品川委員  63℃30分はいいのではないですか。むしろ、それと同等の殺菌というところの上の方 をどうするかというのが問題になる。 ○熊谷部会長  そうすると、同等の示し方をどうするかということですか。しかし、63℃30分がセー フかどうかは証拠がないのでわからないんですよね。 ○品川委員  けれども、ここでは一応いけると言っており、片方は残るというデータがあが。 ○熊谷部会長  63℃30分は大丈夫なんですか。 ○山本委員  63℃30分で生残したというデータを今までに見たことはないです。いつも問題になっ ているのは、HTSTのところで残っているというデータと死滅したという相反する論文が 出てくるという話です。 ○熊谷部会長  そのHTSTで死滅しない、それと同じ条件で63℃30分でやったデータというのはないわ けですか。それをやらないとよくわからないですね。 ○品川委員  今、我々が判断できるということは、1つは、データが今ここにあること。どういう 条件で行ったか、菌株の条件もあるでしょうし、菌量の条件もあるでしょうけれども、 データが1つはあること。もう1つの方はデータがない。だから、63℃30分では死滅し たというデータがあるから、それを信じましょう。だけれども、今、先生が言われるよ うに、菌株を変えて実験したらどうなるのか、とかいう実験はないけれども、一応デー タとしては今のところ見られる。しかし、今度は72℃のところでは残りますよと言われ ているから、菌株が加熱に対し強い条件かもしれないけれども。 ○小川委員  でも、そういうことを言うと63℃30分でもなくなるというデータもあるわけですよ。 ○品川委員  だから、そのデータは認めましょうと、それで菌がなくなったということ。けれど も、72℃の方では残るというのが記載されてあるから。 ○小川委員  72℃15秒でもなくなったというデータもある。 ○品川委員  いやいや、そこでは残るというデータがあるということですね。 ○小川委員  そう。だから、両方63℃30分と72℃15秒では、同じ人の実験で両方なくなるという データですよね。片一方は耐熱の強い株をやると、これはまた特殊な例ですよね、そう すると、90℃で25秒なんていうことになってくると、多分これは63℃30分では死なない のではないかということも十分考えられてきますよね。だから、こういう特殊なものを 持ち出すということが、この強い3株というのはどういう意味を持っているのかという ことが1つのポイントになるのではないかという気がするんですけれども。 ○事務局  以前、何回目か忘れましたけれども、資料としてお出しさせていただいたかと思うん ですが、コーデックスの方でパスチュライゼーションという定義の意味として、問題と なる菌を10の5乗レベルで下げることができる条件というふうに定義しておりまして、 それがバッチ式で63℃30分あるいは72℃で15秒ということを言っております。Q熱の病 原体であるとか、結核菌の病原体、これを10の5乗レベルで下げる条件だというふうに なっております。今回のヨーネ菌を見ると、6乗、5乗のものが1乗、0乗になってい るわけですから、少なくともそれと同等の、これの病原性は別の問題といたしまして も、殺菌条件としては認められるのではないかなというふうに私は考えますけれども、 いかがでしょうか。 ○小川委員  それから言えば、十分これは満たしているわけですね。0.幾つまで落ちているわけ ですから。 ○品川委員  下げるというのはどういう意味ですか。 ○小川委員  減らすということ。 ○品川委員  0以下にするということですか。 ○事務局  パスチュライゼーションの条件というのは、例えば、Q熱の病原体を10の5乗レベル 下げる、10の6乗のものが10の1乗になる、10の7乗のものが10の2乗になるというこ とですから。 ○品川委員  今のそういう点から言えば、これは。 ○山本委員  それと、もう一つは、熊谷先生が最初に指摘されたように、果たしてヨーネ菌が人の 大変な病気の原因となるかどうかということを考慮する必要もあると思うんです。今の 条件で、たとえ6乗あったとしても、それが10個のオーダーに落ちていると。そういう ものを飲んだとして、人が本当にクローン病とかそういうものになるか。確かにはっき りとした因果関係といいますか、疫学的には証拠がまだあったりなかったりというよう なデータではっきりしていないんですけれども、現時点で非常に問題になっているとい うふうには考えにくいと思いますが。その辺を加味すれば、同等と認めていいのかなと いう、現時点での知見ではそういうふうに考えております。 ○小川委員  1つは、この文献をもうちょっとよく読んでみて、残ったと言っても、10の6乗オー ダーで落ちているわけですよね。そのことが1つと、あと何か特殊な菌株なのかどう か。それから、どうやって殺菌をしているのか。資料6の左の欄にあるような実験条件 と違う、動きも何もない条件と実際に動いている条件ではまた違いますから、その辺と かいろいろ考えてみる必要があると思うんです。今、出てきた病原性があるかないかと いう問題は勿論あるわけですけれども。もし、それで問題があるんだとなった場合に、 現実の処理はそれで法をつくってやっているわけですから。 ○熊谷部会長  一応、EUのScientific committee on animal health and animal welfareと いうものが2000年に公表しているサマリーを見ますと、一応エピデミオロジカル・リン ク、クローン病とヨーネ病ということについては、不十分なデータしかないというサマ リーのレポートがあるんです。それから、特にコーデックス辺りで、この殺菌をどうす るかという議論が持ち上がっていないというふうに思っているんですけれども、もし、 それに間違いがなければ、国際的には特にこれを重視するということには現状なってい ないようであるということです。そういうことも考え合わせると、一応63℃30分の原案 で、それと同等という原案で今は対応していただいて、一応、情報収集とこれはちょっ とほかのこととの兼ね合いになると思いますけれども、調査研究という方向で対応して いくという対応でいかがでしょうか。 ○品川委員  1つは、我々としてはコーデックスでも10の5乗のものを落とすことができるという 条件と、汚染菌量は実際の搾乳の乳中にそんなに多いということは、実験的にはこうい う多量の菌で行っている。だから、実際の生乳においてはもっともっと少ない。そうい うことから、現段階では63℃30分と同等としていいのではないかという意義付けが、私 はできると思いますが。1つは、コーデックスが今ある程度そういう形で出してきてい ること。その後の病原性の問題と耐熱性の高いものとかは、これからのそういうことが 出てきたときに再度考えなければならないけれども、現時点では、そういう形で私とし ては委員会で認めたと意義付けますけれども。 ○熊谷部会長  特段御異議がありませんでしたら、そういう形で対応ということでよろしいでしょう か。  それでは、ヨーネ病につきましては、部会としてはそういう対応で臨むということに させていただきます。  そうしますと、もう一つの結構厄介な問題で、チーズの部分ですね。これの原料乳を 一応、原案では思い切って63℃30分というふうにしたわけですけれども、それについて 事務局の方から説明をいただくことはありますか。 ○事務局  資料6、先ほどのヨーネ菌の次にチーズに関する文献、これは外国の方からコメント を出してきた国から提供があったもの、それから、我が方でも幾つか文献を当たって探 したもの、合計二十数文献ほど集めまして、それの概略について簡単に御説明したいと 思います。  資料6の2ページ目、47ページでございますが、幾つか全体像をレビューした文献が ございましたので、それらについて取りまとめております。  1つは、チーズによる食中毒事例、実際外国でどういう食中毒事例があるのかという ことを47ページに示しております。いろいろな種類のチーズによって、これもリステリ アだけではなくてサルモネラでありますとか、黄色ブドウ球菌でありますとかさまざま な食中毒が起こっております。未殺菌乳ということが原因で起こっているというものも ございますし、それから、その後の取扱いの中で二次汚染等を受けて食中毒になったと いうものもございます。  それから、特に今回、熟成等の製造条件の中で菌が減っていくんだという主張がそれ ぞれの国からあったということから、実際のいろいろな種類のチーズをつくるときに病 原菌を接種して、その菌がどのように推移していくのかというところを中心に文献を集 めました。  48ページに、少し小さな字で恐縮なんですが、サルモネラでありますとか、リステリ アでありますとか、E.coliでありますとか、スタフィロでありますとか、エルシニア、 キャンピロバクター、ブルセラ等について増えたあるいは減ったとかあるいはそのまま 推移していったとか、一口で言うと、それぞれの病原菌あるいはそれぞれのチーズに よってさまざまであるということが言えるのではないかというふうに思います。  例えば、上からサルモネラが出ておりますけれども、サルモネラの2つ目のチェダー チーズの場合、9か月後で検出されたというものがございますし、その下の同じチェ ダーでも最初の2週間は増殖をし、それ以降は死滅したというようなこともございま す。  リステリアについて見れば、生き残ったという文献がございますが、パルメザンチー ズに見ると製造時は増加をしておるけれども、熟成期には急速に減少したというような ことでございます。  その幾つかを次の49ページから、グラフを基に主だったデータについて紹介させてい ただきます。49ページの上の方の文献ですが、これはスイスのハードチーズ、エメン タールチーズ、穴のあいた硬いチーズで、ハードチーズですけれども、そういったチー ズあるいは下のグラフはセミハードチーズ、ティルジッターチーズというやや、やわら かいといいますか、セミハードのチーズを用いて、いろいろな病原菌を4乗から6乗ぐ らい接種をして推移を見ています。ハードチーズの場合ですと、製造後1日でここに示 している病原菌については死滅しています。それから、セミハードですと、少し落ち方 が緩慢ですが、この例では60日後に落ちているということが伺えます。  それから、下の方のグラフですが、これも同じスイスの文献なんですが、上の方は ハードチーズ、エメンタールチーズを用いて接種試験を行っております。ここでは、上 の菌に加えましてリステリアについても接種をしておりますが、特に下の方のセミハー ドチーズ、ティルジッターチーズですか、そのセミハードチーズに接種したところ、▲ で示したものがリステリア・モノサイトジェネスの菌の推移ですが、4乗レベルのもの が90日後でもほぼ同数で推移している。ほかの病原菌については、比較的早く死滅して いるということが伺えます。  それから、次の50ページにまいりますが、これはスイスチーズで、アメリカの1992年 の文献ですけれども、棒グラフがございます。リステリア菌3株、オハイオ株あるいは カリフォルニア株あるいはV7株をそれぞれ用いて、同じように4乗レベルでの菌の接 種試験を行っております。この実験では、熟成でがくっとそれぞれの菌が減少しており まして、図1ですと、オハイオ株が77日後には陰性、カリフォルニア株ですと80日後に は陰性、V7株ですと66日後に陰性だというふうなデータになっております。  pHにつきましては、上のTABLE1にございますが、このスイスチーズの場合ですとp Hが大体5.3ぐらいのレベルであったということでございます。  それから、右の方にまいりまして、パルメザンチーズ、ハードチーズについての接種 試験ということでございまして、これもリステリアに関する接種試験ということでござ います。同じ菌でもロットによってその仕方が異なっておりますが、いずれにしても、 100日ぐらいまでには落ちるということでございます。ただ、ロットによっては50日ぐら いで検出限界以下になっているものもございますし、100日を越えてもまだ残っていたと いうものもございます。  それから、次の51ページにまいります。これはチェダーチーズ、セミハードタイプの チーズでございます。これを見ますと、リステリアのスコットAだとかV7あるいはカ リフォルニア株を用いて行っておりますが、先ほどのハードタイプのチーズに比べます と、熟成期間中の生存はかなり長いということが言えます。特に、図4の場合ですと、 これは6℃で熟成をずっとしていった場合ですが、初発3乗レベルのものが、このグラ フでは実際には434日まで生き残っていたという結果が得られております。  それから、次の52ページにまいります。これは、特にpHとの関係で調べた実験でご ざいまして、チーズの種類はフェタチーズ、ギリシャとかデンマークでつくられている ヒツジの乳を使ったタイプのチーズでございますけれども、真ん中のグラフを見ていた だきますと、□の白の線がpHでございまして、これは製造時のpHの推移ですけれど も、最初、6.幾つだったものが乳酸発酵でどんどんpHが下がって5以下になる。そ の最初のときに汚染をした菌はぐっと増殖をして、それから、pHが落ちても死滅する ことなく横に推移をしていっているということが伺えます。  それが熟成後どうなるかというのが、下の方の図5でございますけれども、80日以降 もそれぞれ3つのトライアルで生き残っているという結果が得られております。  それから、今度はソフトタイプのチーズですけれども、次の53ページでございます が、カマンベールチーズでございます。これは、ソフトタイプということでかなり増殖 に適しているということが伺えるわけでございますが、それぞれリステリア菌が最初の 段階から日数を置くごとに増加をしているというのが図1、図2、図3、図4で伺える わけでございます。ただ、右の方のページにまいりますが図6で、これはpHを4.6に置 いた場合には日数とともに減少して、逆に図7にございますように、これはpH6.1の条 件での状態ですけれども、そういう条件だと増殖をずっとしているということでござい ます。  それから、54ページにまいりますが、これはブルーチーズ、青カビのチーズでござい ます。これも同じように、pHと菌数との関係で言いますと、最初の条件で菌数がぐっ と上がる。pHは5以下に落ちるんですが、その条件でも菌は横に推移をしているとい うことでございまして、このものは日数とともに若干減少はしますけれども、死滅する には至っていないというのが右のグラフから伺えます。  それから、55ページでございますが、これはコルビーチーズでチェダーに似たチーズ ということみたいですが、セミハードタイプのアメリカとかカナダでつくられている チーズであります。このものは、製造時に汚染をした場合、ずっと増えて、それから、 熟成期間を置いても緩慢にしか減少しないということが伺えます。100日以上でも検出さ れているということでございます。  大体提出されたデータあるいは我々の方で調べたデータからは、以上のようなことが 言えるのではないかということでございます。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。  一応、文献的にはいろいろあって、しかし、10の0乗レベルまで下がっている文献と いうのは少ないですね。ですから、食品数によるわけですけれども。それから、これら を踏まえてどうしたらよろしいかということですね。一応、原案では63℃30分で原料乳 を加熱殺菌するということにしていたわけですが、ナチュラルチーズで加熱殺菌する と、どうも食品としての価値が認められないという判断なんですか。これを好む国民 は。 ○事務局  大使館の人からの話を聞いたところ、それぞれ地方によっていろいろな種類のチーズ をつくって、その中には未殺菌乳でしかそのチーズがつくれない、殺菌乳を使ってしま うと食感だとか味が大幅に変わってしまって、そのチーズそのものが否定されてしまう というようなお話も伺っております。 ○丸山委員  ナチュラルチーズの場合、日本では生産の実態がどういうふうになっているか私はよ くわからないんですけれども、恐らく国内産のナチュラルチーズの生産から言えば、こ の63℃30分の殺菌処理をしたものでつくるということをしても、そんなに問題はないん だろうというふうに思うんですね。要は、今、事務局の方でおっしゃった外国でつくら れる未殺菌のチーズについて、どういうふうに考えるかということだろうと思うんで す。それは、やはり伝統的な食品ですから、未殺菌乳でつくっていかなければそのチー ズはできないというのはあると思うんです。では、それに対してどういうふうに我が国 で、この63℃30分というものを外国にも枠をかぶせるかということ。実際にはそれはで きないと思うので、ここの7ページに書いてある、やはり工場での衛生管理、できれば HACCPのシステムを適用している工場のものを認めるという、要するに、7ページの上の 四角で囲んだところの対応しかできないのだろうというふうに思うんです。ただ、非常 に小さなナチュラルチーズの工場が多分ヨーロッパではたくさんあると思うんです。こ ういうふうに言っても、全部それをクリアできるんでしょうか。その辺りがかえって心 配なんです。原則としては、この四角で囲ってあることでいく以外にはないと私は思っ ているんですが、いかがなんでしょうか。 ○事務局  問題点が2つございまして、1つは、こういう形でHACCPの承認を受けるということに なりますと、日本の現行のHACCPの制度上、総合衛生製造管理過程の承認という形になり ます。それは、製造基準が承認を取ることによって免除されるという位置付けになって おりまして、まず、製造基準を設定するというのをその前提としておかなければいけな いとなりますと、現行ナチュラルチーズは製造基準がございませんから、まずは63℃30 分だよと、それでやらなければだめですよという製造基準をスタートさせて、その後 に、それぞれのところについてHACCP承認ならその製造基準に合わなくてもいいですよと いう形の手続を取らなければいけないということで、一旦は全部輸入ストップという形 を取らざるを得ないというのが問題点の1つでございます。  もう一つは、先生おっしゃったように、では、どのくらいの小さなところまで含めて やるのかということですが、フランスの大使館から聞いた話によりますと、すべてが日 本に輸出しているというわけではないんですが、輸出のライセンスを持っているところ は、工場形態のもので未殺菌乳のチーズをつくっているところですけれども、420工場ぐ らい。それから、農家レベルでいくと、輸出のライセンスを持っている、農家単独でつ くっているようなチーズがあるみたいでございまして、98%ぐらいが未殺菌の乳を使っ てチーズをつくっているんですけれども、そこを入れると合計で3,100、農家だと2,700 ぐらいあるので、両方入れると3,100ぐらいの施設が対象になり得るということですの で、こういう制度を導入するにしても、そのすべてのものについて現行の承認という枠 組みの中でやっていくのは、物理的にも非常に困難な面があるというのが問題点でござ います。 ○丸山委員  困難というより不可能ですね。そうすると、別のことを考えなければいけないわけで すね。63℃30分でやってしまうか、それ以外のHACCPでもない何かを考えなければいけな いということになりますね。 ○清水委員  今の問題は、ナチュラルチーズという食品をどういうふうに考えるかという根幹にか かわる問題だと思うんです。それで、ヨーロッパのそれぞれのチーズというのは、ある 意味では汚染されるという表現は変ですけれども、そういう他からの菌が入っているこ とによってでき上がっているというところがあると思いますし、それらの存在する菌の 酵素による脂肪酸の生成とかペプチドの生成とか、そういういろいろなもので渾然一体 となってある風味が出ているということがあるので、殺菌という考え方とは元から ちょっと対立するようなところはあるかなと思います。  それで、63℃30分で国内でつくればいいではないかという発想自身も、ナチュラル チーズをつくるという発想から言うと、ちょっと疑問な部分もあるかなと。加熱をしま すと、多分カードの性質自体も少し違ったものになってしまうし、非常に純粋な微生物 環境でつくるということ自体が、いわゆるナチュラルチーズとはちょっと違うタイプの ナチュラルチーズを我が国ではつくるという考え方になってくる。衛生上はその方が望 ましいから、それでいこうということであれば、それはそれでよろしいかと思うんです が、そういった考え方をヨーロッパ辺りに広げて規制を掛けるということは、やはりナ チュラルチーズというものを考える場合には、ちょっと無理があるかなという印象を 持っております。 ○熊谷部会長  国内から実はそういう意見がたくさんいただけると物すごく事は楽なんですけれど も、今回は国内から余りなかったですね。ナチュラルチーズ愛好者というのはもっとた くさんいてしかるべきなんですけれども。 ○鈴木委員  先ほどの御説明で食中毒の事例が出ていますが、これは、結構患者数というのは多い んですけれども、御説明の中で未加熱乳の場合と二次汚染の場合とがある。この多くの 要因というのは何なんですか。 ○事務局  これは、レビューから拾ったものですから、それぞれの原因について詳細に追跡する ことはできなかったんですが、その表ですと、上の方から1982年のチェダー及びその 他、サルモネラ菌による食中毒がありますが、これは、生乳の使用ということで実際に 牛がサルモネラ菌を排菌していたと。その菌が製品の中に残って増殖をしたということ でございますし、それから、そうではなくて、二次汚染が原因、例えば1985年のメキシ カンスタイルのもので142人以上の患者が出ていますけれども、二次汚染だろうというふ うに言われていたものもございます。どちらが多いかということになると、取扱いの不 備と申しますか、リステリア菌ですから、自然界に広く存在する菌で、汚染の機会とい うのはたくさんあるのではないかというふうには考えておりますけれども。 ○鈴木委員  二次汚染というのは、製造過程なんですか、販売過程なんですか。 ○事務局  それは両方です。製造過程もございますし、それから、チーズを例えば店頭で切り分 けていくときに汚染をしているというような事例も聞いたことがございます。 ○鈴木委員  日本の場合ですと、いわゆるナチュラルチーズ、輸入ものというのはかなり高価で、 例えば、東京の何かもっともらしく売っている店になりますと、随分カットして売って いますよね。カットして、このくらいのものが例えば1,000円とか2,000円という形で 売っておりますと、あの辺のカットの仕方を店でのぞきますと、いわゆる衛生的な形で はやっていなくて、その辺の店先でもって切って包んでいるといったようなものも含め ると、かなりそういうことも含めた二次汚染というのは考えられるでしょうと。  もう一つは、たまたま最近あるフランス製のチーズのいわゆる表示を見ましたら、生 乳使用としか書いていないわけです。いわゆるナチュラルチーズで、かなりまともな熟 成のものであったわけですけれども、恐らくそういったようなものが日本の国内でカッ トされ売られていくときに、いわゆる温度だとか期限だといったようなものなどの義務 がないのでしょうか。あれらのものを小売店で販売していくときに、どういうふうに表 示すべきなのか。これは、いわゆる未加熱乳を使っているからきちんと温度管理をしろ とか、あるいはどのくらいの温度で保存しろといったような規制というのは、今、日本 の中ではないのでしょうかといったもことを含めまして、もし、食中毒ということを考 える場合に、これをこのまま解禁したときに、その後の扱い方も含めた何らかの対応も 必要かなということですが、恐らく全部加熱してしまったら、チーズ愛好者たちは怒る であろうというふうに考えます。 ○品川委員  実際に日本でチーズによる事件としては表には出ていないわけですね。今、一番リス クが高いのはリステリアの問題。この表の食中毒事例から見ても、やはり死者が多いの はリステリアによるものが圧倒的に多いわけですね。だから、ナチュラルチーズの場 合、リステリアが残るという危険性、リスクがある。しかし、日本でそういう事件は実 際に把握できていないし、また、気になるのは、フランスが1995年にブルーチーズによ る事例で、フランスがこういう形で、今、自分たちのところで事件があったと言いなが ら、それで安全だということをきちんと証明してくれればよい、チーズの輸入のときの 問題点は対応できているけれども、今話を聞くと、HACCPなりそういう管理をしている農 場でチーズを作っている。1995年時点で事件が起こったときでも、そういう風に行われ ていたもので起こったのか、それ以後管理方法をつくってきたのか、実際日本に入って くるものがどの程度そういう管理されたものか、その辺がわかれば、あえて全部規制を 掛けるほどではなく、データ的にもまだないし、そんなリスクもないのではないかとい う感じはしますけれども。やはり一番大事なのは、リステリアの問題だという感じが致 します。チーズから見れば。 ○熊谷部会長  そこの相手国に保証してもらうというか、そこの部分はどの程度現実できるんです か。 ○事務局  現状を御説明いたしますと、こういうリステリアの食中毒の問題があったと。実際、 リステリア菌がチーズから検出されるということにかんがみまして、輸入時の取扱いな んですが、そういうハイリスクのチーズ、特にソフトタイプだとかセミソフトタイプの ものについては、輸入時の監視を強化しております。1つは、そういったものについて は検査命令の対象にしております。要するに、輸入時には基本的にリステリア菌の検査 をしなければいけないというふうにしております。ただし、フランスなりあるいはその ほかの国に、政府がこのものについてはリステリア菌が陰性であるというものについて は、それを受け入れております。現在、検査命令の対象になっておりますのがフランス でありますとか、デンマークのものあるいはスイス、イタリア産のものについてもブラ ンドを特定して、検査の対象にしております。  それから、それ以外に、モニタリング検査ということで、リステリア菌についてはそ ういったチーズについて平成13年度の実績ですと117件リステリアの検査をしておりまし て、いずれも陰性が確認されておりますので、現時点では余り輸入時にリステリア菌が 出て問題になった、あるいは輸入チーズでリステリアの食中毒が起こっているというよ うな状況にはなっておらないのかなというふうに思っています。 ○熊谷部会長  一応、資料7−2に原案と考えられる対応案を思いつく範囲内で私と事務局でつくっ てみたんですけれども、資料7−2を簡単に御説明いただけますか。 ○事務局  先日、部会長と御相談しながら、今回の議論のたたき台にということで用意させてい ただいたものでございます。  原案は上の半分に掲げてあるとおりでございまして、対応案として「原案のとおり」 から、「当該部分を削除」というちょっと乱暴な案まで示しておりますが、原案のとお りということになりますと、先ほどから申し上げているような問題点があろうと。  それから、案2で、熟成の期間を入れるというような製造基準にしてはどうかという ことでございますが、先ほどのいろいろなデータを見ると、これはチーズのタイプに よってさまざまであるというようなことから、こういう製造基準の置き方も少し乱暴な のかなというふうに考えております。  最も妥当ではないかというふうに事務局で考えている案は、実は案3でございまし て、一字一句このとおりということではございませんが、こういう考え方を入れて修文 をさせていただいてはいかがかなというふうに考えております。読み上げさせていただ きますと、「生乳を使用してナチュラルチーズを製造する場合は、その製造工程中にお いて、生乳を63度で30分間加熱殺菌することが望まれるが、二次汚染の問題もあること から、HACCPの考え方に基づく総合的な衛生対策が必要である。なお、リステリア菌汚染 の問題となるナチュラルチーズについては、これまでと同様に製品での検査等によりそ の安全性を確認すると共に、未殺菌乳を使用したチーズの規格基準の設定に当たって は、多種多様な製品があることから製造方法毎の組成、水分活性、pH、熟成条件等に よる病原菌の挙動等に関するデータを蓄積し、引き続き検討すべきである」ということ でございます。 ○熊谷部会長  ナチュラルチーズというものを特に排除しようとするのでなければ、原案のとおりで はなくてそれを修正したような形で、加熱殺菌ではない方法もあり得る道を残すという のが、案2とか3ということになろうかと思いますが、案3の方で、一番最初の「生乳 を使用してナチュラルチーズを製造する場合は」というのは、「ナチュラル」を外して もいいかもしれないですね。表現の問題ですが。「ナチュラルチーズ」ではなくて「生 乳を使用してチーズを製造する場合は」でいいような気もしますけれども。それは語句 の問題なのですが、あるいはほかに原案を修正するとするとどういう形があり得るかと いうことについて、あるいは案3とか2を修正すべき点がありましたら、御意見いただ きたいんですが。 ○山本委員  1つ確認しておきたいんですが、この「望まれるが」という表現をした場合に、それ は基準ということにはならないわけですね。ですから、チーズは乳と全く別の基準を 持って管理するという形になるんですか。 ○事務局  「望まれる」ですから製造基準ということではなくて、指導事項という形になりま す。生乳由来の危害を一時的には63℃30分で加熱することによってブロックすることが できるので、その部分については指導はするんですけれども、それ以外の多様な方法が あるので、それをやらない場合は全体の中で管理をしてくださいというようなことにな ろうかと思います。 ○品川委員  案3の「製品での検査等によりその安全性を確認」とあるけれども、検査だけではな くて向こうで製造とかそういう扱いというもののデータというのはもらえるわけです か。 ○事務局  その辺りについては、引き続き基準の検討の中でも、向こうの国はどういうふうにし ているのかということも含めて情報収集したいと考えております。 ○品川委員  そういうものがあればいいけれども、なかなか製品の検査だけですべてをやるという のは、向こうのつくられる製造工程なり扱いというのがわかれば、それと抱き合わせて やれれば一応安心なところはあるのではないかと思います。 ○熊谷部会長  そうですね。そういうデータを個々の製品について要求できるかどうかという問題も あると思うんですけれども。 ○山本委員  それと、もう一点、これだと外国製品ではなくて国内のナチュラルチーズをつくる場 合に、未殺菌乳を使用することを認めるということになるわけですね。 ○事務局  そのほかの方法で衛生管理ができれば、そういった方法も内外無差別でしょうから認 めることになろうかと思います。 ○熊谷部会長  この限りなく総合衛生管理製造過程の承認制度に近い形態を現実取り得るかどうかに ついてはいかがですか。指導がですね。つまり、先ほど話が出ました、相手先からデー タをかなり入手するように指導するということは現実可能ですか。 ○事務局  今回は、詳細なデータの入手までは間に合わなかったんですけれども、いろいろな管 理のされ方がされているようでございますから、その辺りについては引き続き情報入手 しながら、製品検査と併せて向こうの国での取扱いも勘案しながら対策は進めていきた いと。逆に言えば、そういったところの管理がおろそかだと思われるところについて は、製品検査を重点的にやるとか、そういう形で総合的に対応していきたいなとは思っ ていますけれども。 ○小川委員  原則はこうだと決めておいて、ただし、ナチュラルチーズの場合は、これこれの条件 を満たせば殺菌はしなくてもいいというやり方というのは取れないんですか。 ○事務局  その辺りを考えたんですが、それはいろいろなやり方があって。 ○小川委員  いろいろなやり方があるでしょうけれども、意見で上がってきたものの中から主な要 件をここへ書き込んでみては。 ○事務局  その書き込むのに、やはり詳細なデータの入手なりが必要だというふうに考えており ますので、当然目的としては、そういった細かな製品ごとの製造基準を決めていければ なと思っておりますが、現時点ではなかなかそこを特定する、例えば、熟成の期間であ りますとか、最初のスターターの条件でありますとか、pHだとか水分活性だとか細か く決めるだけのデータが今はないものですから、難しいのかなと思っています。 ○小川委員  そこまでいかないにしても、とにかく検査をしてチェックをするという前提をちゃん とするということであれば、余り細かくなくてもいいのではないかという気もするんで すが。 ○清水委員  少し話が違うかもしれないんですが、資料2の25ページに、諸外国からの意見とそれ に対する回答がございますけれども、アメリカのところで、例えば意見の3番目に、未 殺菌乳を使用する場合は、チーズをある温度以上で60日間貯蔵しなければならないとい う文言を追加すべきであるというふうな意見が来ていますね。これは、さっき御説明く ださったライプニングの間に菌数が減ってくるというペーパーの情報を基に、こういう ふうなことを多分言ってきているのかなと思うんですが、こういうものは例えば、アメ リカでは何かそういう基準というのがあるんでしょうか。 ○事務局  アメリカの方のチーズの基準が、1949年にできた非常に古い基準なんですが、それは 個々のチーズごとに原料乳の加熱殺菌を要する、要さない。要さないものは、何度で何 日間以上熟成しなければいけない、あるいはそのほかの条件がそれぞれチーズごとに決 められているというようなことでございまして、当然、未殺菌乳も使えるというような ことから、こういう熟成期間を置かないとアメリカでつくられているようなものが日本 に輸出できないので、こういう条件をつくってほしいということで要望があったものと いうふうに考えています。いずれにしても、チーズの形態によってそれぞれ事細かく決 める必要があるのかなというふうに考えております。 ○清水委員  先ほど御説明があったように、例えばリステリアの場合は、熟成していても余り菌数 が減らないというデータがございましたよね。そういうことがあると、こういう条項は 余り意味がないことになりますか。 ○事務局  アメリカでも、この熟成期間の条件が適切なのかどうなのかということで、今、議論 がされているというふうに聞いております。 ○丸山委員  私も、この第3案でいいと思うんですが、2つ目の文章のところで「なお、リステリ ア菌汚染の問題となる」というふうになっているんですが、ここのところは未殺菌乳を 使った場合にはという文章ですよね、違うんですか。 ○事務局  違います。 ○丸山委員  ちょっとこの文章はわかりにくい。この文章だと「リステリア菌汚染の問題となる」 というのも、ある特定のチーズをリステリア汚染があるよという印象を受けてしまうん ですが、違うんですか。 ○事務局  具体的には、今、検査の対象としていますソフトタイプ、セミソフトタイプのチーズ ということを指しております。それは未殺菌乳を使っても、殺菌乳を使っても、要は、 原料乳由来であっても、二次汚染の問題であっても、リステリア菌が増殖しやすいタイ プあるいはそういったもので過去に事件が起こっているタイプのものということで、特 に問題があるということで、ちょっと文章上……。 ○丸山委員  ここのところは、ほかに解釈されるような文章ですので、ここは直した方がいいと思 います。 ○事務局  はい。 ○山本委員  先ほどのリステリアのアメリカでのことなんですけれども、現在コーデックスの方で レディ・トゥ・イート・フードというか、調理済み食品に関するリステリア菌のリスク アセスメントということをFAO/WHOの方でやるということになっています。最終版が、 恐らく今年じゅうには出るのではないかと思われますので、それが出てからコーデック スの方ではリステリアについての議論をやるということになっているようです。情報ま で。 ○小川委員  幾つかあったんですが、1つは、今リステリアについて特に注意をしているというこ とですから、先ほどの条件をつけるということで、どれだけつけられるかはともかくと して、その辺は座長と事務局にここではお任せして、幾つか皆さんから提案をしても らったらどうでしょうか。私は、その1つとして通常の病原菌というのは、常在菌に よって減っていくということは一般的に知られていることですから、それは1つ効果が あると思うんです。それは必ず入れる。そういう指摘も外国からもあるわけですから。  あと、リステリアについては、できることなら陰性であることを保障する証明書を提 出するとか、そういうものも加えて、なおかつ、日本としても今までのように、これは 書くことかどうか知りませんけれども、やっていくというようなことで、具体的に進め たらいかがですか。そういう条件でいくんだということで、ここで皆さんに幾つか条件 を挙げていただいたらどうですか。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございます。  ほかにこの件についていかがでしょうか。そうしますと、原案どおりでないと具合が 悪いというお考えはありませんか。原案も結構いいできだなと思うんですけれども、 HACCPで確認を取るということで、これ以上のものはないように思うんですが、安全性の 部分からいけば。 ○小川委員  だけれども、4,000近くもある施設に具体的に対応できますか。 ○熊谷部会長  ですから、それは総合衛生管理製造過程の承認制度という枠組みというよりも、やは り指導で中身を取っていくということになろうかなと。ですから、それが現実的にでき ればベストかなというふうに思うわけなんですけれども。勿論、それをやる体制を逆に つくればいいだけの話で、今の30倍ぐらい人員を増加して、審査体制を充実させていく となればできるかもしれません。ただ、現実的なのは、やはり指導でそれをやっていく というのが現実的なのかなというふうに思います。 ○小川委員  外国の現場に行かなければいけないわけでしょう。 ○熊谷部会長  できれば、行った方がいいと思います。 ○小川委員  行かなければ、日本のHACCPの承認にならないのではないですか。だから、外国と日本 で違うんだというのでは具合が悪いと思うんです。そういうのは統一しておいた方がよ い。そうすると、私はちょっと難しいのではないかと。 ○熊谷部会長  現実、難しいから、少し引こうというお考え。 ○小川委員  はい。できないことを言ってもしようがないのではないか。フランスだけではなく て、いろいろな国があるわけですよね。 ○熊谷部会長  ただ、国民の選択として、もうナチュラルチーズはやめようではないかというのもあ り得ないことではないと思うんです。非常にリスクが高ければ。ですから、これはあく までもリスクとの兼ね合いで、リステリアは確かに致命率が高い事故が起こったことは 起こったけれども、数的には少ないということで、そこらでリスクとの兼ね合いを考え ると、やはりナチュラルチーズはすくい上げてという考え方も十分成り立つと思うんで す。 ○小川委員  でも、何千分の1ぐらいの確率なら、死んでも食べたいという人も結構いるわけです よ。 ○熊谷部会長  はい。それは現実、日本の食文化は、ほとんどその部分では誇るべきものを持ってい ますので、それは十分わかりますけれども。 ○品川委員  今、実際に輸出をする国に対してもリステリアというのはやはり大きな問題であるわ けですね。そういう面で、WHOなりがコーデックスで今リスクアセスメントしている ということだと思います。それは輸出国に対しても、当然日本に輸出すのだから、そう いうことはきちんとやってくれる。そのときに、勿論、検査データと自分たちがリスク 管理のためにどういうことを行っているかという情報をきちんともらうような形態をし て、それを精査すればよい、それから、勿論、その国に対してナチュラルチーズをつく るためには、一個一個、四百幾つの農家に対して全部というのは難しいかもしれないけ れど、フランスではやはりその情報というのは、ある程度整理して持っているはずであ ると。そのような情報を今までは何ももらっておらず、ただ、検査データだけでしたけ れども、もう少しそういうデータをもらうという条件をつければよいのでは、最終的に は、まだ引き続き検討すべきという1項目を入れているから、余りここで細かいことを しなくてもいいのではないかなと思います。多少の文言の変更ははあるでしょうけれど も、基本的には案3で今は進めてもいいのではないかという感じがします。だから、検 査データだけで評価というのは、この段階では難しいので、もう少しデータを提出させ る、そういうことは可能なわけですよね。もう少し資料を要求していけば、それで評価 をする。その資料と検査データで総合評価をしていくという形でいいのではないかと思 います。 ○熊谷部会長  そうしましたら、この案3について、今いただきましたいろいろな御意見を踏まえ て、更に事務局と私の方で修文をさせていただいて、部会報告という形にさせていただ いてよろしいですか。               (「異議なし」と声あり)  それでは、そういうふうに処理させていただきます。  このほかに、事務局の方で何かございますか。 ○事務局  今後の予定ということでございますけれども、部会報告を取りまとめていただきまし たので、食品衛生分科会長あてに報告をいたしまして、分科会での御審議を経て答申を いただくということになります。実際の乳等省令の改正につきましては、秋以降になろ うかと思います。  以上でございます。 ○熊谷部会長  それでは、ほかに全体で御意見がございませんようでしたら、これで閉会とさせてい ただきます。どうも長い間ありがとうございました。 (以上) 照会先:厚生労働省医薬局食品保健部基準課 電話 :03−5253−1111(内線2488)