02/07/05 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成14年7月5日議事録         薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成14年7月5日(金) 10:00〜   医薬品医療機器審査センター第2会議室 2.出席委員(11名)五十音順   大 野 泰 雄、 風 祭   元、◎河 村 信 夫、 首 藤 紘 一、   菅 谷   忍、 谷川原 祐 介、○長 尾   拓、 長谷川 紘 司、   早 川   浩、 矢 崎 義 雄、 柳 川   尭 (注) ◎部会長 ○部会長代理   他 参考人2名   欠席委員(6名)   金 井   淳、 小 嶋 茂 雄、 堺   秀 人、 南 部 鶴 彦、 藤 上 雅 子、 村 勢 敏 郎 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 黒 川 達 夫(安全対策課長)、   豊  島   聰(医薬品医療機器審査センター長)、   姫 野 孝 雄(医薬品医療機器審査センター企画調整部長)、   平 山 佳 伸(医薬品医療機器審査センター審査第一部長)、   橋 爪   章(医薬品医療機器審査センター審査第三部長)、他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○事務局 それでは定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催 させていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうござい ます。当部会委員数17名のうち11名の御出席をいただいておりますので、定足数に達し ていることを御報告させていただきます。それから本日は議題1の参考委員といたしまし て、国立がんセンター中央病院の森山紀之先生にお越しいただいております。また議題2 の参考委員といたしまして、北里大学の外須美夫先生にお越しいただいております。それ では河村先生、議事進行をよろしくお願いいたします。 ○河村部会長 森山先生と外先生、よろしくお願いいたします。本日の審議に入る前に、 事務局から資料の確認と資料作成に関与された委員の報告をお願いいたします。 ○事務局 それではまず資料の確認をさせていただきます。資料1〜6までがあらかじめ お送りした資料でございます。本日の席上配付資料といたしましては、本日の議事次第、 座席表、本部会の委員名簿、専門委員のリスト、「医薬品第一部会審議品目の薬事分科会 における取扱い及び毒薬・劇薬の指定の要否について」という資料を配付してございます。 また、平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく資料作成に関与された委員の確認 でございますが、本日の議題2につきまして谷川原委員、議題3につきまして矢崎委員が 関与されてございます。以上でございます。 ○河村部会長 では、議題1については関与された先生がいらっしゃいませんので審議に 入りますが、これはMRIの造影剤で肝臓を写すという薬でございます。事務局の方から 御説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは資料1、医薬品リゾビストの輸入承認の可否等について、審査センタ ーより御説明させていただきます。  本剤、すなわちフェルカルボトランは、カルボキシデキストランで被覆された超常磁性 酸化鉄の親水性コロイド液で、MRIにおける肝腫瘍の局在診断に用いる造影剤であり、 クッパー細胞の貪食作用によって細胞内に取り込まれ、MR信号を低下させるため、クッ パー細胞を有しない腫瘍細胞を相対的に高信号領域として描出するものでございます。  本剤の専門協議においては、資料8に示しますように、本日参考委員としてお越しいた だいております森山委員のほか、片山委員、谷委員、吉川委員、吉村委員の4名の専門委 員を指名しております。以下、審査の概略を御説明いたします。  規格、安定性、薬理、ADMEについては、特段の問題点はないものと審査センターは 判断いたしました。臨床試験については、鉄として4、8、16μmol/kg投与による本剤 の至適用量の検討を目的とした後期第II相試験において、有効性については8μmol Fe/kg投与群と16μmol Fe/kg投与群は同程度でありましたが、4μmol Fe/kg投与群は 8及び16μmol Fe/kg投与群に比べ劣ること、一方、安全性については、16μmol Fe/kg 投与群は臨床検査値の異常変動発現率が他の群に比べ高かったことから、8μmol Fe/kg が至適用量とされました。  しかしながら、8μmol Fe/kgの投与量は0.016mL/kgとなり、投与用量の計算が煩雑 であり、かつ正確な用量の投与が困難であることなどから、第III相試験においてはおおむ ね8〜12μmol Fe/kgまでの範囲となるように、体重45kg未満では0.7mL、45kg以上70kg 未満では1.1mL、70kg以上では1.4mLとの投与量が設定されて実施されております。単純 MRIと比べ、本剤投与後約2割の症例で新病巣が検出され、また、造影CTとほぼ同様 の病巣検出能を有する成績が得られております。  平成12年6月30日に開催した専門協議における議論を踏まえ、審査センターは後期第 II相から第III相試験へのプロセスに問題があり、12μmol Fe/kgまでの安全性と有効性の 検討は十分ではないと判断し、8μmol Fe/kg投与及び12μmol Fe/kg投与の2用量群間 比較試験の実施を申請者に対して指示したところ、今般、追加後期第II相試験の成績が提 出されております。追加提出された成績及びこれまでの臨床試験成績を基に、平成14年 3月11日に2回目の専門協議を開催しております。  本剤の効能・効果については、申請当初、申請者は本剤の効能・効果を「磁気共鳴コン ピューター断層撮影による肝腫瘍の診断のための造影」としておりましたが、審査センタ ーは腫瘍性病変の確定診断と比較した読影医判定による良悪性鑑別の検討がなされてい ないことから、本剤投与による質的診断能の向上に関して申請者の見解を求めたところ、 申請者より良悪性の鑑別については更なる検討が必要であると考えられることから、本剤 の効能・効果を局在診断とし、「磁気共鳴コンピューター断層撮影における肝腫瘍の局在 診断のための肝臓造影」と変更する旨回答され、審査センターはこの回答を妥当と判断し ております。  用法・用量については、申請者は「通常、体重45kg以上70kg未満の成人には1.1mL を静脈内投与する。なお、体重30kg以上45kg未満の成人には0.7mL、体重70kg以上の 成人には1.4mLを静脈内投与する。過剰量の投与あるいは追加投与はしないこと。」とし ておりましたが、審査センターは、追加後期第II相試験の成績から、42例の12μmol Fe/kg 投与群で出血傾向(鼻出血)が2例認められていること、投与後4〜6時間において、12 μmol Fe/kg投与群は8μmol Fe/kg投与群に比べ、血液凝固第XI因子活性が有意に低 下していることから、安全性の観点より12μmol Fe/kg投与は妥当でないと判断いたしま した。一方、有効性に関しては、体重範囲別に投与量が決められた第III相試験では、12 μmol Fe/kgまでの投与が可能な試験であり、ほとんどの症例で8μmol Fe/kgを超えて 本剤が投与されていることから、現時点では本剤8μmol Fe/kg投与での有効性を明確に 示した結果は得られていないと考えられますが、二つの後期第II相試験の成績も勘案する と、本剤8μmol Fe/kg投与がMRI造影剤としての有効性を示すには十分な用量である と考え、市販後調査において本剤8μmol Fe/kg投与の有効性を確認するための調査を実 施することで問題はないと判断いたしました。専門協議における議論も踏まえたこれら審 査センターの判断を申請者に伝達したところ、申請者より本剤の用法・用量を「通常、成 人には、本剤0.016mL/kg(鉄として0.45mg/kg=8μmol/kg)を静脈内投与する。ただし、 投与量は1.4mLまでとする。過剰量の投与あるいは追加投与はしないこと。」に変更する との見解が示され、審査センターは了承いたしました。  なお、バイアル製剤である本剤と同時に申請されたシリンジ製剤については、申請者よ り今般の設定用法・用量、並びに医療安全性確保の観点から更なる検討が必要であるとの 判断により申請を取り下げる旨の見解が示され、審査センターはこれを了承しておりま す。  以上のような審査の結果、市販後調査において、@)本剤8μmol Fe/kg投与の有効性 を確認するための調査、A)出血傾向を重点調査項目とした本剤の安全性に関する調査、 B)同一患者に対する繰り返し投与における本剤の安全性・有効性についての調査、以上 三つの調査の実施を指導事項として付した上で審査センターは本剤を承認して差し支え ないと判断し、医薬品第一部会で審議することが適当であると判断いたしました。なお、 本剤は毒薬・劇薬に該当せず、新有効成分含有医薬品に該当することから、再審査期間は 6年とすることが適当であると考えます。また、薬事分科会には報告を予定しております。 以上です。御審議よろしくお願いいたします。 ○河村部会長 ありがとうございました。森山先生、何か御追加でコメントがございまし たら、お願いします。 ○森山専門委員 今のことに関してですか。特にありません。 ○河村部会長 これは森山先生に専門協議をお願いしたのですね。よろしゅうございます か。御追加はございませんか。 ○森山専門委員 はい。 ○河村部会長 この薬剤は消化器の先生も…。 ○森山専門委員 すみません、今のは補足説明という意味ですか。 ○河村部会長 はい。 ○森山専門委員 では少し補足説明をさせていただきたいと思います。この薬剤はMRI の造影剤として使うわけですけれども、現在MRI造影剤としてはガドリニウムというも のが出ております。このガドリニウム造影剤というのは普通のヨード系造影剤と同様であ りまして、主に肝臓の腫瘍の血管、血流を反映したような造影剤ですけれども、この薬剤 はクッパー細胞に取り込まれるということでいろいろな面があります。この中で造影能が 20%増すという話がございましたけれども、これは単純MRIと比較してです。それと造 影CTと比較試験においてほぼ同等であったということですけれども、これはパーセンテ ージとしては同等でありますが、若干造影CTで診断できないようなものが診断できる と。結局、診断できるところはずれているということです。そういう面におきましても、 臨床においては有用であるというふうに考えました。  それから臨床で使ったときのことを考えますと、同様の薬としてはフェリデックスとい う鉄造影剤がありますけれども、これは希釈した後30分ぐらい掛けて点滴静注をしなけ ればいけないという煩雑さがございます。それとフェリデックスの場合には、アンプルを よく振ってかき回して投与しないとまずいということですけれども、この薬剤は静脈内に 直接投与できるという形で、使う方としては非常に使いやすいであろうと考えられます。 それが主に有用性です。  それから副作用については、やはり出血傾向が問題となりますので、追加のデータを提 出していただかなければいけないと思っております。以上です。 ○河村部会長 これは肝臓や外科の先生も御同席になったようでございますが、肝障害に ついては特に心配はないという御結論ですか。 ○森山専門委員 非常に大きな心配はないと。ただ若干問題になりますのは、転移性肝癌 の場合には肝機能はそれほど言われていませんけれども、原発性肝癌の場合には80%が 肝硬変を伴っておりまして、もともと余り予備能力のない人に投与いたしますから、その 際は慎重に投与する必要があるだろうと。ただ現状では、投与していきなり劇症肝炎にな ってしまうようなことは考えなくてもよいだろうという判断でした。 ○河村部会長 各委員から御発言、御質問がございましたら、承らせていただきたいと思 います。どうぞ、矢崎先生。 ○矢崎委員 フェルモキシデスが本邦では平成9年に承認されて、この治験のときにこれ が対照として用いられなかったのはまだ未承認であったということで、治験はもう平成9 年以前に行われていたということなのでしょうか。 ○河村部会長 これは事務局の方で…。 ○事務局 そのとおりでございます。計画されたのは平成9年でございまして、その当時 にフェリデックスが承認されていなかったということで、比較臨床がされておりません。 それは第III相でございます。 ○矢崎委員 そうしますと、安定性と今のお話の利便性ということで、有用性は優れてい るのではないかということですね。外国で平成11年に申請されておりますが、いまだ承 認されていませんよね。ですから、これは本邦で、世界で初めて審査されているというこ とですが、平成11年でもう3年ぐらいたっているのに、米国及び欧州で認められていな いという理由が何かあるのでしょうか。 ○河村部会長 事務局からお願いいたします。 ○事務局 センターよりお答えいたします。実はこの「審査報告(1)」を書き上げた時点 が平成12年でございまして、その後ヨーロッパ各国では2001年3月ぐらいから多くの承 認を受けております。米国ではまだ承認されていないということですけれども、近々承認 されるという情報は得ております。ですので、この「審査報告(1)」を書いた時点では承 認されておりませんけれども、現時点ではヨーロッパ各国で承認はされています。 ○矢崎委員 そうしますと、まだ米国では審査中ということですね。少し気になったのは その出血傾向なのですが、これはどういうメカニズムで来ているのでしょうか。そして、 米国で承認が遅れているというのは何かそういう関係があるのでしょうか。 ○事務局 米国の情報は聞いているところでございますが、この出血傾向については特段 の問題があって遅れているわけではないということです。このメカニズムについては、セ ンターとしても申請者に聞いておりますし一応調べましたけれども、現時点では明らかに なっていないというのが現状でございます。文献によりますと、デキストラン硫酸が第X I因子の自己活性化を惹起するというような報告があることから、カルボキシデキストラ ンが第XI因子に影響している可能性も否定できないと考えています。さらには、本剤そ のものがクッパー細胞に取り込まれることが、また第XI因子に影響を与える可能性も否 定はできないと考えております。 ○矢崎委員 そうしますと、座長が言われたように肝障害や出血傾向などの問題で米国で 承認が遅れているということではないと…、問題ないということで。 ○事務局 安全性が問題となって遅れているという情報は入っておりません。 ○河村部会長 よろしゅうございますか。ほかに御質問はありませんか。私から森山先生 に伺わせていただいてよろしゅうございましょうか。CTとMRIのときのこの薬剤の住 み分けというのは分かりましたが、超音波で識別できないようなものもこれで出る可能性 はございますか。 ○森山専門委員 もちろんあります。 ○河村部会長 そうですか。悪性かどうかということは鑑別できないというふうに…。 ○森山専門委員 単独でこれだけを使うとできないのです。これはクッパー細胞に集まら ないところが全部出てきますから、嚢胞のようなものがあっても当然そこは抜けてしまう ということなのです。一番有効であるのは、今肝癌の方で問題になっているものに高分化 型のいわゆる早期の肝細胞癌があります。普通の肝細胞癌というのは非常に血流の多い腫 瘍なのですけれども、これは普通の肝細胞癌と違いまして血流が少ないのです。それから 脂肪を含んでいたりしまして、超音波では非常にほかのものと紛らわしい、またCTでは 映らないことが多いわけです。そのような超音波、CTのデータがある程度あって非常に 結節があるけれども、どうも実質的診断が難しいという形で、高分化型の肝細胞癌という のは引っ掛かってきます。そのときにこの検査を行いますと、内部にクッパー細胞がない ということでありますから、それは再生結節が正常の肝臓の脂肪変性ではないということ でがんであると判断をしているのです。したがって、単独ではできないのですけれども、 逆に言うとほかのデータを持っていって最後の検査としてやると、非常に質的に診断が上 がるという特徴がございます。 ○河村部会長 そうしますと、最初はスクリーニングとして超音波でやって、それで何か おかしいとなるとCTで行くと同時にこのやり方を併用してやるという形なのですか。早 期の肝癌の…。 ○森山専門委員 そういうことです。 ○河村部会長 だそうでございますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございま すか。御質問はございませんでしょうか。では承認を可として、薬事分科会の方にはこれ は報告ということだそうですが、よろしゅうございましょうか。では御承認いただきます。 森山先生、お忙しいところどうもありがとうございました。 ── 森山専門委員退席 ── ○河村部会長 では次に議題2の方に移りますが、谷川原先生が関与なさっているのです が、もう行ってしまったのですね。審査センターから審査の概要の御説明をお願いいたし ます。 ── 谷川原委員退室 ── ○事務局 資料2、塩酸エスモロール及びブレビブロック注 100mg、一般名塩酸エスモロ ールについて審査センターより御説明いたします。  本薬は米国デュポン社で開発された、β1選択性の高い短時間作用型β遮断薬であり、 1986年に米国で上室性頻脈を効能・効果として承認され、その後術中・術後の頻拍と高 血圧に対する効能・効果が追加されました。現在では、40か国以上で主に周術期におけ る頻拍を効能・効果として承認されております。本邦では、丸石製薬株式会社が手術時の 上室性頻脈を対象に開発を行い、今般申請されました。類薬としては、5月に本部会で御 審議いただきました塩酸ランジオロールがございます。  本薬の審査に関しましては、本日参考委員として御出席いただいております外先生を始 めとしまして、資料8に示しますように、青柳委員、江馬委員、岸田委員、釘宮委員、野 々木委員、橋本委員、林(邦)委員、林(眞)委員、福島委員、増原委員の11名の専門委員 を指名いたしました。  次に、審査センターにおける審査の概略を御説明いたします。規格、安定性、毒性、薬 理及びADMEについては、審査の過程において申請者から適切な対応がなされたことか ら、特に問題はないと考えております。  本薬の臨床試験は、麻酔中の上室性頻脈を対象として実施され、プラセボ対照二重盲検 比較試験である後期第II相試験及び第III相比較試験において、プラセボ群に対して実薬群 で有意に高い平均徐拍率が見られました。臨床試験における有効性評価対象症例は、一例 を除きすべて洞性頻脈であったものの、薬理学的性質から見て洞性頻脈以外の上室性頻脈 性不整脈に対する徐拍効果を本薬は有していると考えられること、海外では麻酔中の上室 性頻脈一般に対する効能・効果で既に長期にわたって使用されており、麻酔科での代表的 な教科書においても、本薬は手術中の上室性頻脈に対する標準的治療薬の一つとして記載 されていることを踏まえて、本薬の効能・効果は「手術時の上室性頻脈性不整脈に対する 緊急処置」とすることが妥当であると判断いたしました。  用法・用量に関しては、本邦の臨床試験では急速静脈内投与の用法のみについて検討さ れたものの、海外においては急速静脈内投与後の持続投与が用法として広く使われている ことから、本邦においても持続投与の用法が医療上必要であると考えました。一方、臨床 試験で検討された急速静注のみの用法においても本薬は有効であると確認されているこ と、及び現在までに国内で開発されている手術中の頻脈を対象とした短時間作用型β遮断 薬は塩酸ランジオロールと本薬のみであることも考慮すると、急速静脈内投与後の持続投 与の用法追加のための追加臨床試験成績が提出されるまで本薬の承認を遅らせることは 臨床上有益ではないと考え、今後持続投与の用法・用量に係る開発を速やかに行うことを 条件とした上で、急速静脈内投与の用法のみで承認することが適切であると判断いたしま した。  以上のような審査の結果、審査センターは「本剤は海外において術中の上室性頻脈に対 して急速静脈内投与後の持続投与が承認されていることを踏まえて、本邦においても、速 やかに持続投与の用法・用量に係る検討を行うこと」を承認条件とした上で承認して差し 支えないと判断し、本医薬品第一部会において審議されることが適当と判断いたしまし た。本薬は新有効成分含有医薬品で、再審査期間は6年、原体及び製剤はいずれも劇薬に 該当し、分科会へは報告が適当と判断しています。御審議よろしくお願いいたします。 ○河村部会長 ありがとうございました。お聞きのように、2か月前にオノアクトという ものをやりましてそれと似たような薬ですけれども、急速投与の方だけで持続投与がない というので、最初にこれをやって後でオノアクトをやるのかなどと思ったのです。外先生 ほかの先生方で御審議いただいたそうですので、追加の御発言がございましたらお願いし ます。 ○外専門委員 今御紹介がありましたように、本薬剤エスモロールはβ1受容体に対する 選択的な拮抗薬ですから、心拍の上昇に対して抑制作用があるということで広く世界的に 応用されてきた薬剤です。もう10数年以上前から欧米では使われているということで、 私たち日本の臨床家、麻酔科医にとってもこの薬剤が早く使用できないかと心待ちにして いた薬剤の一つです。今回は手術及び麻酔時の上室性頻脈に対する適用ということです が、この薬に関しては2000年の救急救命処置に対するガイドラインでも取り上げられて いますように、発作性上室性頻拍あるいは心房細動等の頻脈に対して緊急時に処置すると いうようなことでもエビデンスがあり、世界的にかなり推奨されている薬剤です。  今回はこれが麻酔及び手術時の頻脈ということで、私たちは適応、承認の審査をいたし ました。臨床的な問題点、安全性等々についてはこれまで世界的にもいろいろな検討をさ れておりますし、問題ないというふうに判断いたしました。有用性に関しても、今回のデ ータから麻酔時に徐拍化の効果はあるだろうというふうに判断しましたし、これまでの世 界各国から出てくるいろいろな情報でもこの有用性は確認されていると判断いたしまし た。今回は単回投与のみのデータで徐拍化に対して有効であり、それのみの申請でありま したけれども、私たちの審議においてはやはり教科書レベルで書いてありますように急速 投与、単回投与後の持続投与に関しても是非これから検討をされるように、一応注文とい うことでコメントして、この薬剤の承認に対しては問題なかろうというふうに判断したと ころであります。以上です。 ○河村部会長 ありがとうございました。御審議、御質問はございましょうか。どうぞ、 矢崎委員。 ○矢崎委員 幾つかお聞きしたいのですが、一点は上室性頻脈ということですけれども、 この治験の際に大部分が洞性頻脈でそれ以外のものは1例ということでございます。御存 じのように、β遮断薬ですから洞性頻脈に一番効くということが予想されます。したがい まして、やはり対象によって随分違う可能性があるので、もしこれが承認された後、この 治験のデータをそのまま上室性頻脈性不整脈に対する徐拍効果と言うのは、ちょっと気を 付けられた方がよろしいかと思いました。  それからもう一点は、結構20%近く血圧の下降がございます。β1セレクティブであ るということなので、この血圧降下、特に3例では昇圧処置をしなければいけなかったと 記載されております。要するに血圧がこのように下がるのは、拍出量が低下しているため なのか、徐脈効果でなっているのか。β1セレクティブというのが売り物なので、この血 圧低下はいかがなものかということです。それからやはり虚血などの循環改善のためにこ れを用いるということが臨床効果に述べられておりますが、低血圧ということになると循 環障害の問題になっていきます。やはりその有用性のバランスというものが問題になるの で、徐拍効果だけで有用性を述べていいのか、一過性の血圧低下による血流量減少の循環 不全とのバランスがどのようになっているかということをちょっとお聞きしたいと思い ます。 ○河村部会長 これは事務局の方から御返事できますか。 ○事務局 審査センターの方から御説明させていただきます。まず、一番目の効能・効果 の範囲と実際の臨床試験で組み入れられた症例のお話でございますが、そこは専門協議で も一番議論になったことでございます。厳密に申し上げると、治験で確認されたのは洞性 頻脈に対する徐拍効果のみということになりますが、本剤に関しましては一般に教科書レ ベル等で手術時の上室性頻脈に対する効果を有するということになっております。また、 薬理学的に見てほかの心房細動、粗動等に関しましても徐拍効果はあるであろうというふ うに考えまして、今回の効能・効果といたしました。ただし、本邦の臨床試験で確認され ていないことは事実ですので、まず添付文書の臨床試験の部分には洞性頻脈で確認されて いる試験結果であることを明記いたします。あとは市販後調査におきましてこのような心 房細動、心房粗動等の洞性頻脈以外の上室性頻脈性不整脈の症例がきちんと集まるような 計画を立てまして、もし必要症例数が集まらない場合は特別調査をして、市販後ではあり ますが、安全性と有効性の確認を行うという計画が現在出されております。  二番目の血圧低下の件に関してですが、臨床試験の中でも一番多く見られました有害事 象が血圧低下でございまして、こちらに関しては添付文書内におきましても「重要な基本 的注意」や「慎重投与」の部分などに記載させていただいております。先生がおっしゃら れました徐拍効果によるものか、あるいは心拍出量の低下によるものかということに関し ては試験上では確認されていないかと思うのですが、臨床試験データ上で出てきたものに 関しては一応徐拍効果によるものであろうと考えてはおります。しかしながら、血圧低下 が重篤な事象を引き起こすことは予想されますので、現在のところ添付文書上ではその辺 の注意喚起はさせていただいたつもりでおります。 ○河村部会長 外先生、何か御追加がございましたらお願いします。 ○外専門委員 三つの点を矢崎先生が御質問なさいました。一つは洞性頻脈とその他の上 室性頻拍症に対する効果についての御質問でしたけれども、確かに今回私たちはほぼ洞性 頻脈に対してのデータのみで検討したわけです。ではそれだけでいいのかということで議 論がありましたけれども、実際の臨床現場でデータとして集めるということでは、確かに 洞性頻脈が集めやすいためにこういう偏ったデータの集積になったのではないかと思わ れます。発作性上室性頻拍症や発作性心房細動などの患者さんの頻拍に対して、実は私た ちが一番使いたいと思っており、臨床現場ではこの薬の到来を待っていたということもあ ります。また、欧米においてもそういう使用が認められているということ、さらに先ほど 申しました救急蘇生の現場でも、発作性上室性頻拍症あるいは心房細動等の頻拍に対して の方がエビデンスが高いというようなデータがあります。ですからそのようなことを勘案 しまして、私たちは単に洞性頻脈だけではなくて上室性頻拍にも是非適用をということ で、今回こういうふうに入れさせていただきました。  それから血圧低下については、確かに血圧低下を来す機序として脈拍を落とす作用と心 臓の収縮力を落とす作用の二つを持っておりますので、両方の作用で血圧が過度に低下す る可能性を持った薬剤です。ですから、もちろんどちらが原因ということははっきりは分 かりません。ただ、今回の平均的な使用では心拍数が大体100以上、110拍ぐらいで投与 されています。その徐拍が正常に戻るのではなく、結果から言いますと20〜30%の心拍 数の低下ですので、それほど徐脈が高度になったのではないのではないか、両方の兼ね合 わせで血圧が過度に落ちたのだろうというふうに思います。特にこれを使用した現場で は、交感神経のトーンがかなり高まった状態で投与していると思われます。しかも多分麻 酔深度をいろいろ調整しますので、心拍数が上がっている、麻酔が浅いという判断で麻酔 を深くする状況でもあるわけです。ですから、その麻酔の深さとこの薬剤の相乗効果等も あって、血圧が過度に落ちた症例が出たのではないかというふうに思います。  それから虚血心に関してですが、やはり私たちは虚血のある心疾患に対して頻脈という のを一番恐れますので、普通の元気な患者さんで脈拍が110ぐらいになってもそれほど慌 てないのですが、110を超える心臓に虚血を持った患者さん、あるいはそのリスクのある 患者さんが最近増えておりますけれども、そういう患者さんに使いたい薬剤であります。 ですから、そういう患者さんで心拍数が増えれば心臓の酸素消費量も増えますし、酸素供 給量も減りますのでバランスがかなり崩れるというところで、この薬剤の有用性が高いわ けです。ただ矢崎先生が言われましたように、血圧が過度に落ちれば心臓に対する血流も 低下しますので、やはり使い方のバランスが問題になるだろうと思われます。この薬剤の 持つ特徴として、使用する側はそういうリスクもあるということを知って使用すべきだ し、そのことについての効能・効果なりコメントと言いましょうか、そういうことで喚起 する必要があるのではないかというふうに思います。以上です。 ○河村部会長 矢崎先生、それでよろしゅうございますか。 ○矢崎委員 三つの点を的確にお答えいただきまして、ありがとうございました。一点目 は上室性頻拍性不整脈を適応に入れるということには反対ではなくて、今後販売するとき にこの治験のデータをそのまま徐拍効果としてうたわれるとちょっとまずいのではない かということです。それから血圧低下では、心拍出量の低下あるいは徐拍効果によるもの かどうかというのは、例えば徐拍効果と血圧低下度というものをプロットしてみた場合に そういう関係があれば、徐拍効果が血圧低下により効いているということが示されるので はないかというふうに思います。最後に有用性を出すためには、やはり今の徐拍効果と血 圧低下でうまくバランスをとらないといけないということで、特に虚血性心疾患による緊 急処置の場合には注意するということを、今後使う側に十分キャンペーンしていただきた いというお願いです。 ○河村部会長 事務局の方はそれに対して何かお答えがありますか。 ○事務局 今矢崎先生におっしゃっていただいた内容に関しましては申請者の方に伝え まして、今後販売の際や添付文書上の記載などに十分反映されますように申し伝えます。 どうもありがとうございました。 ○河村部会長 お願いいたします。ほかにございましょうか。外先生、先ほどは冗談で言 ったのですけれども、現場ではオノアクトというものとこのものとはどのように使い分け られるのでしょうか。両方ある必要があるのかと…。 ○外専門委員 まだ実際に二つを使ってみていないので、その辺の違いというものは分か りません。ただこの提出されたところでは、作用時間にしろ作用機序にしろほとんど似通 ったものですので、どちらでも同じような効果があるのではないかというふうに思いま す。ただ、違いは日本発のものか向こうから出てきたものかということですので、その好 みの問題はあるかと思いますけれども、今のところこの二つの薬剤については、やはり使 ってみて何か少し新しい違いなどが出てくれば、また別の判断もできるのではないかと思 います。 ○河村部会長 ありがとうございました。ほかに御発言、御質問はございましょうか。特 殊なお薬でございますし、オノアクトをやったばかりでございますので、よろしかったら ここでは御承認いただいたということで、薬事分科会に報告という扱いにしてよろしゅう ございましょうか。ではそのようにさせていただきます。外先生、どうもお忙しいところ 大変ありがとうございました。 ── 外専門委員退席 ── ○河村部会長 次は議題3のアーチストという薬に入りますけれども、これに関しては矢 崎先生が関与していらっしゃいます。一言コメントがおありになるそうですが、先にコメ ントをしてしまいますか。事務局の説明の後におっしゃいますか。 ○矢崎委員 席を立たないといけませんので。ただβ遮断薬というのは、今まで心不全に 禁忌だったものが今度適応になるわけです。禁忌から適応という大逆転なのですが、今の 心不全の治療は心臓の働きを良くして運動能力を高めるというよりは、むしろ心臓を保護 して、やはり患者さんに弱った心臓と共にできるだけQOLを保ちながら生活していただ くという方向に向かっていて、その意味ではこれが初めてのβ遮断薬という御説明がある と思います。  ただ、使い方について添付文書あるいはメーカーさんにお伝え願いたいのは、これは今 まで心臓の収縮力を落とすので禁忌だったのです。したがって、ごく少量から始めないと いけないのです。通常高血圧などで使われているのは10mg錠ですが、これは1.25mgとい う非常に少ない量で行っているのです。ですから、十分注意しながら患者さんの治療を始 めないといけないということです。それからもう一点は、患者さんが転院した場合にお医 者さんがこれは余り大した薬ではないのではないかというので自分の処方でやった場合 に、これが抜けますと患者さんが急に悪くなることがあります。やはり少量から始めると いうことと継続して飲んでいかないといけないということ、お医者さんが替わったときに 急にやめられてしまうというようなこともやはり注意事項ですので、メーカーさんには今 後もその点を十分キャンペーンしていってもらいたいです。  私は薬価を決める方でこれは関係ないのですが、今用量で値段が下がってきて、10mg で売り出されているものが1.25mgではもう採算がとれないで売れなくなってしまうとい う可能性もありますので、こういう特殊な使い方をしているということを一言申し上げた い。 ○河村部会長 ありがとうございました。それでは事務局の方で御説明をお願いいたしま す。 ── 矢崎委員退室、谷川原委員入室 ── ○事務局 では資料3、アーチスト錠1.25mg、2.5mg、10mg、一般名カルベジロールにつ いて審査センターより御説明いたします。  本薬は非選択的β遮断薬であり、本邦では1993年に「本態性高血圧症、腎実質性高血 圧症、狭心症」を効能・効果として承認されております。β遮断薬は陰性変力・変時作用 を有することから、心不全に対しては当初禁忌とされてきましたが、慢性心不全に対する β遮断薬療法が1970年代から報告され始め、本薬に関しては米国において1990年より臨 床試験が開始され、1995年に初めてメキシコで、1997年には米国で承認され、現在では 70か国以上で慢性心不全に係る効能が承認されております。  本邦では第一製薬株式会社が臨床試験を実施し、当初ICH E5ガイドラインを適用した、 海外臨床試験成績を日本人へ外挿・評価する臨床データパッケージで申請されました。し かし、国内試験と海外試験との間で使用している製剤が異なり、かつ製剤間の生物学的同 等性が確認されておらず、また試験デザインの相違が大きいなど、海外臨床試験成績の外 挿可能性を議論することは困難であると判断いたしました。  一方、本薬の特発性心筋症に対する効果は、厚生科学研究「難治疾患・希少疾患に対す る医薬品の適応外使用のエビデンスに関する調査研究」報告書において、最もエビデンス レベルの高い「無作為化比較試験のメタアナリシスによるエビデンス」と評価されており、 US Carvedilol study、COPERNICUS試験などの海外大規模プラセボ対照無作為化臨床試験 において、死亡又は心血管系の原因による入院のリスクを低下させる効果が明らかになっ ていたことから、審査管理課との検討も踏まえて、本申請を適応外使用に係る医療用医薬 品の取扱い通知に基づく申請とすることが可能ではないかと申請者に指摘した結果、申請 者により資料の整備が行われました。これらを踏まえて審査センターは、本薬の慢性心不 全に係る効能・効果が医学薬学上公知であるとして、承認して差し支えないかどうかとい うところに着目して審査を行いました。  本薬の審査に関しましては、部会長代理の長尾先生を始めとして、資料8に示しますよ うに、岩崎委員、小嶋委員、櫻井委員、林委員、福井委員、福島委員、安原委員の8名の 専門委員を御指名いたしました。  次に、審査センターにおける審査の概略を御説明いたします。本薬の慢性心不全に係る 有効性・安全性は、米国を始めとする各国の承認状況、本邦の慢性心不全治療ガイドライ ンなどの診療ガイドライン、国際的に標準とされる教科書、学術雑誌の総説における記載 状況などから、医学薬学上公知であると判断いたしました。  本剤の効能・効果に関して、申請時には対象となる心不全重症度が軽症〜中等症と限定 されていましたが、申請後、海外大規模臨床試験であるCOPERNICUS試験の結果に基づき、 それまで心不全重症度が中等症までとされていた米国などの各国で重症にまで拡大され、 併せて欧米のガイドラインの記載も変更されたこと、本邦の慢性心不全治療ガイドライン においても症状が安定すれば本薬の導入を試みるよう推奨していたことなども踏まえて、 効能・効果においては重症度による規定は行わず、本薬の対象とならない慢性心不全患者 を禁忌として具体的に規定することといたしました。  また、これまで禁忌とされていた慢性心不全に対して、本薬が安易に使用されることが ないよう、警告として本薬を慢性心不全に使用する場合、慢性心不全治療の経験が十分に ある医師の下で使用すべきであることを明記させました。  以上のような審査の結果、審査センターは本薬の慢性心不全に係る有用性は医学薬学上 の公知であり、本医薬品第一部会において審議されることが適当と判断いたしました。本 薬は新効能医薬品で再審査期間は4年、分科会へは報告が適当と判断しています。御審議 よろしくお願いいたします。 ○河村部会長 ありがとうございました。長尾先生、何か御発言はございますか。 ○長尾部会長代理 有用性や最近の薬理、臨床の常識から行けば、まだこういう効能にな っていなかったというのが不思議なぐらいには思っています。また細かいことについては 後で質問があります。 ○河村部会長 御発言ございましょうか。では先生、どうぞ。 ○長尾部会長代理 「添付文書(案)」ですけれども、大きいことは1ページにある「禁忌」 の4、5、6ぐらいです。心臓が悪い、あるいは強心剤を使っているなどの書き方が、今 までのβブロッカーの書き方とは変わったと思うのです。既承認のものはうっ血性心不全 のある患者は駄目という文章になっていると思いますが、今後はβブロッカーの禁忌の表 現は既承認のものも変化を受けるのか、そのままなのかということです。 ○事務局 審査センターの方では、β遮断薬一般に対して慢性心不全に対する有用性が医 学薬学上の公知であるという視点では判断は行っておらず、あくまでも本薬カルベジロー ルに関してだけ慢性心不全に対する有用性が医学薬学上の公知であるという判断をいた しました。したがって、他のβ遮断薬はもちろん、慢性心不全に対する効能・効果はあり ませんし、現在のうっ血性心不全に対する禁忌という形のままになるかと思います。 ○長尾部会長代理 そうすると、今後は一つ一つのβ遮断薬についてこの効能を取ろうと 思ったら、こういう資料を出して個別に審査をするということになるわけですか。 ○事務局 そのとおりでございます。 ○河村部会長 どうぞ、安全対策課長。 ○安全対策課長 現に市場にございます医薬品の禁忌事項については、それが例えば患者 さんにとってQOLなり、あるいは生命の維持上非常に重篤な障害をもたらす可能性があ るということでお薦めできないと、是非やめていただきたいというエビデンスがあった場 合に書いてあるわけです。これについて例えば適応として認める、認めないということと は別に、そういう事実が科学的にあるかないかと。その後の知見の蓄積によってそういっ た事実がないということになる場合には、これは理論上禁忌から外すことはあります。し かし、この場合は製造販売を行っている者が自分で科学的なエビデンスを整えた上で必要 があれば考えるのだと。これはβブロッカーにおける心不全の問題以外にも幾つも例があ りまして、個別に対応しております。ありがとうございます。 ○長尾部会長代理 従来の書き方は広い範囲で駄目と言っているのですけれども、今回は これとこれとこれ以外は駄目というか、書いていることがかなり限定されてきています。 基本的に心不全のある場合は駄目ということは依然として残っているわけですけれども、 今の常識として今回書いてある部分は従来のものも駄目であると思いますが、審査体制と しては個別に直していくということですね。 ○安全対策課長 適応症の方はそうなると。 ○長尾部会長代理 それからもう一つ、「添付文書(案)」の3ページにある「用法・用量」 の書き方ですけれども、本態性高血圧症と狭心症と慢性心不全ですが、初めはずっと忍容 性を見ていって増量するということがあって、その3行目に「忍容性がない場合は減量し、 維持量として1回2.5〜10mgを1日2回食後経口投与する」とあります。これは細かい文 章なのですけれども、「忍容性がない場合は減量し」というところで切れるのですか。「維 持量」というのは全体にかかるのか、その辺はどうなのでしょう。減量の場合だけ維持量 で10mg2回というと、最高量が「減量し」の後に書いてあるというのも不自然な感じが します。 ○事務局 分かりにくくて申し訳ないのですが、こちらが意図しておりますこととして は、開始用量は取りあえず1日量として必ず2.5mg以下からにしてくださいということ と、その後忍容性を見ながら1週間以上の間隔で段階的に増量していって、今のところ一 応1日量として最高20mgまでは増量しても構わないとしております。ただし、維持量と いうものも必ず20mgまで上げなくてはいけないというわけではなく、忍容性がない場合 は例えば維持用量が1日量として5mg程度で、患者さんの状態に合わせてそのように設定 していただいても構わないということを表現したくて書かせていただいたのです。ただ、 ちょっと分かりにくいという御指摘がありましたら、ここの部分はもう少し理解していた だきやすいような形に改めたいと思います。 ○長尾部会長代理 やはりややこしいと思います。増量の話、減量の話、それから維持量 の話と、三つに分けた方がいいのではないでしょうか。 ○河村部会長 ちょっと考えてください。 ○事務局 はい。 ○河村部会長 ほかにございましょうか。どうぞ、谷川原先生。 ○谷川原委員 最初の経緯のところで少しお伺いしたいのですけれども、当初国内のブリ ッジング試験、海外ブリッジング対象試験で申請がなされました。しかしながら、確かに 対象患者さんの重症度が違うとか、製剤が違うとか同等性が確認されていないなどという ことで、これではブリッジングでうまくいかないというのは当然予想されるわけです。  そこで疑問点として二点あるわけで、なぜこういう不十分な形で申請がなされたのかと いうか、治験相談をしているのか、していれば当初からこういうものはないはずだと思う のです。二点目の疑問は、普通であるならばここでこれは却下されるべきことなのですが、 あえて医学薬学的公知という一つの救済的な措置で承認まで持ってきているという背景 についてお伺いしたいのです。 ○事務局 審査センターよりお答えさせていただきます。まず最初になぜ申請されたかに 関しましては、こちらは治験相談等を受けておりませんで、会社の判断でブリッジング申 請できるのではないかということで持ってこられました。しかし、谷川原先生がおっしゃ るように、とても議論の土壌に乗る部分がない状態でしたので、取りあえずブリッジング 申請としては成り立たないという結論に達しました。  二番目に、なぜそのような救済措置をしたのかということに関してですが、カルベジロ ールだったからというところが非常に大きゅうございまして、もう既に適応外使用で慢性 心不全に対してかなり広く使われております。現実的に、例えば専門委員としてお呼びし た先生ですとか、あとはちょっと恥ずかしい話なのですが、審査センターの臨床医学審査 官自体もこの申請があるまで慢性心不全の効能がないということを知らなかったぐらい 広く使われているような状態でした。そのような現状がありまして、例えばこれを一度取 り下げてもらって、また新たに資料を整え直してから申請してくださいという形を採るの は医療上も余り有益ではないと考えまして、まだ申請という形を残したままで審査管理課 と検討し、このような形にさせていただきました。 ○河村部会長 かなりよく分かりましたけれども。 ○谷川原委員 よく分かりました。多分に当初のパッケージにかなり不備があったようで すけれども、臨床上のニーズが非常に高かったのでこういう形で持ってこられたという理 解でよろしいわけですか。あと二番目なのですが、例えば添付文書の臨床成績というのは 本当のエッセンスで、承認した用法・用量の根拠情報が書かれると思うのですが、その場 合この申請者が実施した治験の臨床成績に基づくのか、それとも医学薬学的に公知である から、既に海外の大規模臨床試験のような文献を引用したものを承認の根拠として添付文 書に盛り込むのか。その辺り、あくまでスポンサーが実施した治験内容の範囲内で添付文 書に盛り込むのか。しかしながら、承認の根拠となったのは医学薬学的公知であるという ことならば、それ以上の情報もきっとあると思うのです。そういうものをこの承認の根拠 として、一応参考文献を引いてその内容を添付文書内に盛り込むのか、どういうお考えで いらっしゃるのかを教えていただきたい。 ○事務局 こちらに関しましては、あくまでも医学薬学上の公知という判断ですので、今 回第一製薬が実施した臨床試験に限らず、海外で実施された大規模臨床試験成績に関しま しても審査上でもちろん見ましたし、同じような重さで見たというふうに御理解いただけ ればと思います。ただし、これは今回問題点になった一つではあるのですが、国内で現実 的に適応外で使用されている用法・用量と、海外で承認されている用法・用量に大きな乖 離があるという問題がございました。つまり日本人においては、適応外でも海外の約2.5 分の1の低い用量で使用されているという現実もございましたし、第一製薬の方が実際に スポンサーとなって行った臨床試験では、大体適応外使用されている用量に合わせた形で 低い用量の臨床試験が実施されておりました。ですので、日本の用法・用量の臨床成績と して載せられるのは国内臨床試験成績だけになってしまいますので、そこは区別して添付 文書上も情報提供させていただきますし、こちらも審査上はそのような形で見させていた だきました。 ○谷川原委員 分かりました。ちょっと一部分からないところもあるのですけれども、専 門的に御検討なさってそれだけ用量が違っていてもこれで認められるという御判断はな さったわけですね。しかしながら、承認された用法・用量の根拠となる臨床試験データは あくまで国内の臨床試験であるから、その成績を添付文書に反映させたという意味です か。 ○事務局 国内の用法・用量というのは適応外使用されている…。 ○谷川原委員 実態としてですね。 ○事務局 実態としての報告と、臨床試験成績も併せてという形で見させていただきまし た。 ○谷川原委員 最後に一点お願いなのですけれども、例えば概要にも盛り込まれておりま すが、「審査報告書」の13ページの第一パラグラフで、併用の場合の薬物動態、有効性、 安全性等の情報を整理して、「引用文献も含めて申請資料に反映する」というふうに回答 されておりまして、確かに概要の方にはそのようにまとめられています。ただ、これは申 請資料に反映するだけではなくて、この内容を医療機関に対しても情報提供していただけ るようにお願いします。もしこの概要の内容が新薬承認情報集という形でその後も公開さ れるのであればよろしいのですけれども、往々にして公開されないこともありますので、 申請資料に反映して終わりではなくて、やはり医療機関個々にフィードバックするという のがゴールですから、その辺りをよろしくお願いしたいと思います。 ○河村部会長 よろしくお願いいたします。ほかにございましょうか。これは1.25mgの 製剤に割線が入っていると。この割線というのは半分にして飲むという意味なのですか。 飲みやすくするという意味なのですか。 ○事務局 適応外使用の実態調査によりますと、1日量が1mgや1.25mgなどという用量 で使われている場合もございまして、今回の用法・用量におきましても1日量を2.5mg以 下から開始することもできるというふうに書かせていただきました。ですので、処方され るお医者さんの判断で更に低用量で開始される患者さんもいるという形で、本剤を割って 1日量として1.25mg…。 ○河村部会長 1日量として1.25mg…。 ○事務局 という形で使用される患者さんもいると考えております。 ○河村部会長 しかし、「添付文書(案)」の3ページの下から11行目には「必ず1回1.25 mg」と入っているのです。では、この「必ず」は取った方がいいのかもしれません。 ○事務局 それより高用量から始められては困るということで「必ず」という言葉を入れ させていただいたのですが、その後に続けて「若しくは更に低用量から開始し」という形 で記載させていただいております。「必ず」という言葉を使用いたしましたのは、これよ り高い用量から始められてしまうのは安全性上データも余りないですし、この用量以下か ら始めていただきたいということでこのような文章になりました。分かりにくいというお 話でしたら、この部分はもう少し検討させていただきます。 ○河村部会長 よろしくお願いいたします。ほかにございましょうか。大体この割線が入 るというのは割って飲むのが目的で、飲みやすくするためではないですね。何のためかよ く分からない。ではよろしければそういうことで、薬事分科会の方へ報告とさせていただ きます。既にいろいろ使われているお薬だそうです。どうもありがとうございました。希 少疾病用医薬品の指定について事務局の方から、矢崎先生がお帰りになってから説明をし ていただきます。 ── 矢崎委員入室 ── ○事務局 それでは資料4、一酸化窒素の希少疾病用医薬品の指定の範囲について御説明 させていただきます。  本薬は、アイノ セラピュウティックス インクより申請された一酸化窒素ガスであり、 肺動脈を選択的に拡張させて肺動脈圧の低下をもたらし、低酸素性呼吸不全の改善に寄与 するものと考えられております。  予定されております効能・効果は、「肺高血圧症における低酸素性呼吸不全(新生児患 者に限る)」でございます。  まず、希少疾病用医薬品の指定要件の一つである対象患者数についてでございますが、 新生児NO吸入療法研究会が実施したアンケート結果によりますと、新生児NO吸入療法 を日本で実施している中心的な10施設で人工換気療法を受けた新生児患者のうち、肺高 血圧症における低酸素性呼吸不全の患者は約15%ということでございました。一方、平 成10年度1年間に人工換気療法を受けた新生児患者は1万674人ということでございま すので、年間の一酸化窒素、NOの吸入療法患者は約1,600人というふうに推定されます。 したがいまして、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えられます。  次に医療上の必要性でございますが、肺高血圧症における低酸素性呼吸不全は早急に酸 素化を図らないと致死的な疾患でございまして、現時点において「肺高血圧症における低 酸素性呼吸不全」に対する効能で承認されている薬剤はないということでございますの で、医療上の必要性は高いというふうに考えられます。  次に開発の可能性でございますが、既に欧米におきまして肺高血圧症における低酸素性 呼吸不全の新生児患者を対象といたしました臨床試験が実施されておりまして、米国及び EUで既に承認されてございます。また、国内におきましてもNO吸入療法の症例報告が 既になされております。こういったことから、新生児の肺高血圧症における低酸素性呼吸 不全に対する一酸化窒素吸入療法の開発の可能性は高いと考えられます。  以上のように、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件をすべて満たしていると考えられま すことから、本剤を希少疾病用医薬品として指定することが妥当と判断いたしまして、本 部会で審議することが妥当と考えました。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○河村部会長 そういうお薬だそうでございますけれども、希少疾病用医薬品として指定 することが可であるとしてよろしゅうございますか。ではそうさせていただきます。続い て御説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは報告事項の方に移らさせていただきます。議題1のヒーロンV0.6に ついて簡単に御説明させていただきます。本剤は白内障手術、眼内レンズ挿入術における 手術補助に用いられるヒアルロン酸ナトリウム製剤であり、既存のものより粘弾性が高 く、前房深度形成能が優れているという特徴がありますが、眼内から除去しにくいとの性 質も有しているため、術後除去を徹底することが重要と考えております。添付文書の「用 法・用量に関連する使用上の注意」欄にも、その旨を記載して注意を喚起しております。  続きまして、資料6-1〜6-8をお願いいたします。こちらは医療用医薬品の再審査結果 についてでございます。資料6-1のチバセン、チバセン錠2.5mgほかから、資料6-8のオ ーアイエフ1000万IUほかまでにつきまして、計8種類の品目についての再審査結果で ございます。これらの品目につきましては、市販後の使用成績調査・特別調査の成績等に 基づいて再審査申請が行われ、それぞれ審査の結果、いずれの品目についても薬事法第 14条第2項各号(承認拒否事由)のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用 法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判断したものでござ います。これらの結果につきましては、近々通知する予定としております。以上でござい ます。 ○河村部会長 この再審査結果報告について御質問、御討議がございましたらお願いいた します。よろしゅうございましょうか。ではこのままとさせていただきます。連絡事項を お願いいたします。 ○事務局 それでは、まず事務局より御報告をさせていただきますが、4月26日及び5 月31日に開催された当部会において審議をされました新医薬品、ロラタジンほか、それ から塩酸ランジオロール、タカルシトール、チオプロニン、以上につきまして、本日付け で承認をさせていただきましたので御報告いたします。 ○河村部会長 ありがとうございました。ほかに次回の開催その他についてございます か。 ○事務局 次回でございますが、8月30日金曜日午前10時からの開催予定とさせていた だいておりますので、よろしくお願い申し上げます。 ○河村部会長 よろしくお願いいたします。以上で本日の予定の議題は全部終わりまし た。特に御発言がなければ、終わらせていただきたいと思います。先生方、どうもありが とうございました。  (了) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 23 -