02/07/02 第6回社会保障審議会年金部会議事録              第6回社会保障審議会年金部会                  議 事 録                平成14年7月2日          第6回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時:  平成14年7月2日(火) 10:00〜12:30 場所:  はあといん乃木坂「フルール」 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、大山委員      岡本委員、翁委員、杉山委員、堀 委員、向山委員、矢野委員、山口委員      山崎委員、渡辺委員 ○ 福井総務課長  おはようございます。それでは定刻になりましたので、ただいまより、第6回社会保 障審議会年金部会を開催いたしたいと存じます。議事に入ります前に、お手元の資料を 確認させていただきます。  議事次第、座席図のほか、次のとおりとなっております。  まず横長の資料が4点、資料1、資料2−1、資料2−2、資料3ということでござ います。資料1「年金制度の体系について」、資料2−1「給付と負担について」とい うものでございますが、表紙を1枚おめくりをいただきますと目次がございます。目次 が大きく五つございますが、「1」が「現在の年金の給付水準」、「2」が「保険料負 担水準」、「3」が「給付と負担の関係」、「4」が「現在受給している年金の取扱い 」、「5」が「給付と負担の関係が分かりやすい年金制度」となっております。資料2 −2は、ただいまの資料2−1、「給付と負担について」に関します参考資料というこ とで提出をさせていただいております。横長の資料の最後になりますが、比較的薄いも のでございますが、資料3といたしまして「少子化対策等関連分野と年金との関係につ いて」というものでございます。  これらのほか、参考資料ということで、去る6月25日に閣議決定されました「経済財 政運営と構造改革に関する基本方針2002」を配付させていただいております。これは、 いわゆる骨太方針第二弾と呼ばれているものですが、年金の関係が出てまいりますとこ ろを簡単になぞる形でご紹介をさせていただきたいと思います。  経済活性化戦略の「6つの戦略、30のアクションプログラム」「(1)人間力戦略」 という所がございます。7ページの「(高齢者、女性、若者等が、ともに社会を支える 制度の整備)」ということの中の三つ目の「・」、7ページの下でございますが、「厚 生労働省は」という書きぶりで始まっておりまして、「年金をはじめとする社会保障制 度について、持続可能で公平な制度の構築に向け、給付と負担の在り方等を抜本的に見 直すほか、年金のポータブル化の拡充、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大、第 3号被保険者制度の在り方について見直す」とされております。  次に20ページをお開きいただきたいと思います。これは経済活性化戦略の「グローバ ル戦略」というところに位置づけられているものでございまして、20ページの中ほど「 (対内直接投資・頭脳流入の拡大)」のところの最初の「・」の最後の部分ですが、「 二国間社会保障協定締結の促進を推進する」という、いわゆる年金協定の関係がござい ます。  それから25ページをご覧いただきたいと思います。ここは「税制改革の基本方針」と いうところでございまして、5.「税制改革及びそれに関連する検討項目」、そこの( 3)「長期にわたる安心の確保のために」ということで書いてございまして、「公的年 金をはじめとする社会保障制度を抜本的に見直し、世代間、世代内の公平を重視して長 期に持続可能なものとするとともに、年金課税の見直しを検討する」とされているとこ ろでございます。  27ページから28ページにかけましてが、一番多く触れられている部分でございます。 ここは「歳出の主要分野における構造改革」というところでございます。27ページの「 社会保障制度」の「(1)社会保障制度改革の現状」のところですが、「医療制度の改 革を継続するとともに、物価動向等を反映した社会保障給付の見直しや年金制度の改革 をはじめとする次の社会保障制度の改革に取り組むこととする」とされております。  「(2)社会保障給付費の増大と国民負担率」というところですが、この点につきま しては、28ページの一番上ですが、「国民負担率の上昇を極力抑制していく必要がある 」とされております。  「(3)今後の社会保障制度改革の基本方針」でございますが、最初の「(@)次世 代育成支援対策(少子化対策)の強化」の2行目に「少子化の流れを変えるため…」と ありまして、終わりの2行目から最後の行にかけて「幅広く次世代支援に関する取組を 強化していくこととする」ということでございます。  「(A)年金制度の改革」ということでございます。最初のパラグラフは、「累次の 改正を余儀なくされたことにより、国民の将来不安が生じ、国民の年金不信が強まって いる」とし、次のパラグラフでは、「国が運営する制度として、国民から信頼される持 続可能なものにしていかなければならない」ということで、以下四点にわたりまして、 年金制度の改革に当たっての視点が述べられております。  「(1)長期にわたって持続可能で安定した制度とするため、楽観を排した将来予測を前 提としていくことが必要であり、…頻繁に制度改正を繰り返す必要のない恒久的な改革 を目指し、国民的議論を十分に行うことが重要である。」  「(2)少子高齢化の進行に伴って、年金保険料の引上げは避けられないが、その上昇を できるだけ抑え…現在から将来にわたる負担を明示し国民的合意を得ることが重要であ る。」  社会の在り方との関係でございますが、「(3)『生涯現役社会』や『男女共同参画社会 』の理念とも合致した年金制度を構築していくものでなければならない。」  「(4)国民に広がる年金不信を払拭するため、個人個人の年金に関する情報提供がきち んと行われる仕組みを作り、わかりやすい年金制度とするとともに、年金をはじめとす る社会保険実務の効率化を進める。」  という四つの視点が書かれております。  そして「このような視点に立って、16年の改革に向けまして、世代間・世代内の公平 、給付と負担の水準とそのバランス、12年改正法附則(安定した財源を確保し、基礎年 金の国庫負担の1/2 への引上げ)への対応など、年金制度改革の基本的な方向について 、早急に議論を始め、その改革に積極的に取り組んでいく。」とされております。  最後の2行でございますが、「制度の厳正な運用に取り組む観点から、保険料徴収の 推進など国民年金の未加入・未納者に対する徹底的な対策に取り組む。」とされている ところでございます。  それから最後になりますが、38ページ、39ページをご覧いただきたいと思います。こ れは「平成15年度財政運営の在り方」の部分でございます。全体として歳出の抑制を加 速するという流れになっておりますが、37ページの(3)に「重点的に推進すべき分野 ・効率化の考え方」とされておりまして、38ページ、【重点化・効率化の考え方】のパ ートにおきまして、「(3)公平で安心な高齢者社会・少子化対策」ということで、高齢化 社会への対応、少子化対策というものを、むしろ重点的にやっていかなければならない 分野ということで書かれております。  39ページをご覧いただきたいと思います。「(4)その他の歳出分野」の(2)でござい ます。「社会保障については、物価動向等を反映した年金等の給付の見直しに取り組む ほか…」、と記載されているところでございます。  以上、簡単にご説明を申し上げました。  それから本日の資料の紹介に戻りますが、前回の議事録をお配りいたしております。  次に委員の出欠の状況ですが、本日は近藤委員、若杉委員につきましてはご都合によ りご欠席ということで伺っております。ご出席いただきました委員の皆様方が三分の一 を超えておりますので、会議は成立いたしておりますことをご報告申し上げます。  なお、矢野委員におかれましては、所用のため11時半頃ご退席なされるということで 伺っております。また、社会保険庁運営部長は12時頃に参議院厚生労働委員会出席のた めに退席をさせていただくことをあらかじめお断り申し上げます。  それでは、以後の進行につきましては、宮島部会長、よろしくお願いいたします。 ○ 宮島部会長  おはようございます。本日もお忙しいところをお集まりいただきましてありがとうご ざいました。既にご通知を差し上げておりますし、事前に若干のお話もさせていただい ておりますけれども、本日は、年金制度の体系、給付と負担の基本的な在り方がメイン の議題であります。これにあわせまして、先ほど資料のご紹介の際にありましたように 、少子化対策等関連分野と年金との関係も含めまして、大きく三つを議題(テーマ)と するということでございます。  先ほど本日の資料について紹介がありましたように、非常に大部なものでございます 。本日の議事の進め方につきまして、あらかじめ委員の方々のご了解を得ておきたい点 がございます。既にご通知を差し上げておりますが、余り間がないのですが、7月19日 にもう一回審議を行います。本日はこの資料につきまして事務局から説明をいただき、 全くそれに限定するわけではございませんが、主に資料の内容についての質疑とし、次 回は資料説明を省いて、はじめから意見なり今後の考え方なりに関する部分をまとめて 行いたいと思っております。ですから本日は、資料の説明とそれに対する質疑にある程 度範囲をとどめさせていただきまして、意見にわたる部分は、次回(7月19日)に、皆 様からそれぞれ何らかのテーマについてご報告をいただいて進めたいというように考え ております。  そのようなことで、今日は皆様に自制していただくことがあるかもしれません。意見 にわたる部分はできるだけ次回簡単にお書きいただいたものを出していただいて、集中 的に委員間の議論として進めたいと思いますので、先ほど申しましたように、本日は主 に資料に関していろいろご質問であったり、場合によっては資料の提出についての要望 ということになるかもしれませんが、そういう形で今日は議事を進行したいと考えてお ります。  なお、この前申しましたように、次回ペーパーを出していただいて、それに基づいて 委員の間で議論をしたいと思いますが、どうしても学者委員が中心に出すものですから 、ほかの委員の方は出しにくいというような雰囲気が若干あるのかと多少懸念しており ます。学者は学者でモノがわかっているようで意外とわかってないこともたくさんあり ますから、余りその辺は気にせずに、特に今日の資料に基づきまして、率直なご意見を お出しいただければと思っております。余り精密な議論という必要もございませんし、 長くすることもございませんので、これは私のお願いでございまして、年金制度につき まして皆様方のそれぞれの見方なり切り口があると思いますから、その辺はよろしくお 願いしたいと思っております。  これから事務局から資料1、2、3について説明いただきますが、これをまともにや りますと大変長くなりまして1時間を超えてしまう可能性があります。しゃべる方も聞 く方も、実は余り長くやられると退屈したり眠くなったりいたしますので、今日は大き く三つに分けまして、まず資料1、資料2の前半部分、資料2の後半部分と資料3とい うのをひとまとまりにいたしまして、それぞれ事務局から20分程度でまずご説明いただ き、その資料の内容について皆様方からいろんな質疑をしていただいて、大体一まとま り45分程度で時間を切りまして、資料の説明と質疑を終わらせて、最後に全体にわたっ て、もう一度もとに戻って何か質疑があればその質疑を行いたいと思います。  こういう形で、今日、少なくとも、年金制度の基本的な体系ですとか給付と負担に関 する諸問題について、論点の共有をしていただきまして、そして次回、それに基づいて 皆様方から提出いただきましたレポートに基づいて議論をしたい、このように考えてお ります。  一応そのような形で進行したいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。                (「はい」と声あり) ○ 宮島部会長  ありがとうございます。  それでは、まず資料1について説明をお願いしたいと思います。 ○ 榮畑年金課長  年金課長でございます。資料1「年金制度の体系について」と書いてあるものをご覧 になっていただければと思います。頭に書かせていただいておりますように、今回お示 しいたしました資料自体は、今後のこの部会でのご議論を進めていただく上で必要と考 えられる論点を、とりあえず事務局でお示しし、あわせて参考資料を取りまとめたもの ということで、これに必ずしも限定されるものではないことをお断りさせていただきま す。  1枚おめくりいただきまして、2ページ、年金制度の体系の経過でございます。箱の 中に書かせていただいておりますが、社会保険方式の公的年金制度は被用者年金(厚生 年金等)制度からスタートしたところでございますが、昭和36年に自営業、農林漁業の 方等の非サラリーマンを対象とした国民年金制度ができまして、国民年金、厚生年金と 合わせた国民皆年金が昭和36年に誕生しています。ただ、その時でもサラリーマンと非 サラリーマンとの間では、就業とか稼ぎ方の態様に違いがあることから、国民皆年金と なってから後もサラリーマン、非サラリーマンの間では保険料負担と給付内容等が異な る取扱いになってきたところでございます。その違いはずっと現在まで引き続いている ところでございます。  そういう中におきまして、1985年の改正で、全国民共通の仕組みとして、サラリーマ ン、非サラリーマンを共通に対象とするものとして基礎年金制度ができ、1階、2階と いう体系に組み立て直されたというような大きな経過がございます。  3ページをご覧になっていただきますと、諸外国の年金制度の構造を比較してござい ます。これまでも何回かお示しさせていただいたものを、やや詳しくもう一回整理し直 させていただいたところでございます。かいつまんで見ていただきますと、アメリカ、 ドイツ、スウェーデン、イギリスそれぞれ共通して言えるのは、所得比例の仕組みであ るということです。所得への比例の仕方は国ごとに若干異なりますが、基本的には賃金 に比例した保険料給付の体系を持っているます。ただ、国によっては1階、2階という 構造、例えばイギリスは基礎年金が1階にあるといった体系を持っています。しかし、 この場合も1階、2階をあわせて見れば、給料・所得に比例した体系であると言えるか と思います。  どういう人を対象としているかということですが、被保険者の欄を横に見ていただき ますと、共通して言えるのは、一定以上の所得のある者を強制加入としているというこ とです。したがって、働いてない、つまり所得のない人は非加入もしくは任意加入にな っております。特にサラリーマン、非サラリーマンの間で扱いが違う国があるというと ころは、もともとの公的年金制度が、本来サラリーマンを対象としてスタートしたこと に起因して被保険者の違いがあるのかと思っております。  それから、その下の公的年金の仕組みについては、アメリカ、ドイツ、イギリスは社 会保険方式・賦課方式によりまして、給付建てでございます。一方で、「概念上の拠出 建て」という新しい仕組みがスウェーデンに出てきたのが特徴でございます。  その少し下に「所得再分配」というところがございます。これは厳密に申しますと、 公的年金の中の給付と保険料負担の関係における再分配とご理解いただければと思いま すが、アメリカは少し上の年金額計算式のところで書いていますが、年金額が所得の低 い人に比較的手厚く支給される一方、保険料は完全に給料比例でございますから、所得 の高い人から低い人に対しまして所得の再分配が起こる仕組みになってございます。  それからイギリスでございますが、サラリーマンは保険料は給料比例で、一方、給付 は1階に基礎年金定額があり、2階に所得比例の年金があるということで、サラリーマ ンは1階の基礎年金の定額部分を通じた所得の再分配がございます。一方、非サラリー マングループは、保険料は基本的には全員定額でございますが、所得が高い自営業の方 については、その一定額を超える所得について定率保険料を徴収することによって若干 所得再分配がございます。したがって、この4カ国のうちで、アメリカ、イギリスが給 付、負担の関係における所得再分配をやっているというのが特徴かと思っております。  その下でございますが、現在の年金の掛金・保険料の水準といたしましては、アメリ カが少し低いのですが、ドイツ、スウェーデン、イギリスは大体20%前後であるのが一 つの特徴かと思います。  一つ飛びまして、所得がない人、低い人に対する対応としては、アメリカ、ドイツ、 イギリスは公的年金の対象としておらず生活保護の体系が基本でございます。これは基 本的にはどこの国でもそういうことですが、前回、前々回もご説明いたしましたが、左 から三つ目のスウェーデンでございますが、保証年金をやるという新しい体系が出てき ております。これは、公的年金の中で給料比例によるために、低年金者が生じますが、 そういう方に対しまして保証年金という仕組みを付けているというタイプも出てきてい ます。  下から二つ目、公的年金と私的年金の関係でございますが、これもどこの国も共通で すが、公的年金とは別に企業年金なり個人年金いろんなタイプがございますが、それが 普及しております。しかし、そういうものと違いまして、各国の公的年金改革との関わ り、公的年金改革する中で、例えばアメリカで申しましたら、いわゆる今の賦課方式の 公的年金に加えまして、任意加入の確定拠出型の個人年金を設けるようなことの検討が あり、新しく追加する案と今の公的年金から一部を切り替える案と両方ございます。そ ういうようなことをやっている国、その他諸々、アメリカ、ドイツ、スウェーデンとも 、いくつかのやり方がございますが、公的年金改革の中で、公的年金だけではなくて、 確定拠出なり個人積立という形の年金をつくっていくという動きが見られるのが特徴で ございます。  一番下でございますが、国民に対する個人年金情報の提供といたしまして、そこに書 かれているような仕組みがそれぞれの国で実施されているところでございます。  それから、(※)に書いておりますが、スウェーデンの18.5%という保険料は、サラ リーマンで言いましたら給料に対する直接の割合からかと思って使ってきたのですが、 よく調べてみますと、そうではなくて、給料からサラリーマン本人分の保険料を控除し た残りの額に対する保険料率でございまして、いわばサラリーマンの給料に対する比率 で見ますと16.94 %に相当するということでございましたので、新しい知見としてご紹 介させていただいております。  4ページは、諸外国の年金制度の構造と日本の仕組みがどうなっているかという資料 です。一言で申しますと、アメリカ、ドイツ、イギリスなりの諸外国の年金の体系の特 色が混合されたのが日本の仕組みでありますが、ただ、それだけでなくて独自の仕組み 、特殊性も持っているということかと思っております。  どういうことかと申しますと、アメリカ、ドイツ、イギリスそれぞれ上の方に体系図 を書いておりますが、ご覧になっていただいてもわかるように、所得比例の仕組みとい う点では、アメリカ、ドイツと類似しております。一方、所得再分配という意味ではア メリカ、イギリス、特に形としてはイギリスの1階、2階と構成がよく似ているところ でございます。  そういったそれぞれの体系が混合された形をとっているところですが、それとともに 日本の独自性といたしまして、一番端に書いておりますが、年金制度の対象者として無 ・低所得者も年金でカバーすることとし、しかし、そういう方は保険料を払えないので 、全額もしくは半額は払わなくて良いが、ただ、その期間については1/3の国庫負担分の 給付をつけるという、無・低所得者も年金でカバーするという仕組みがかなり諸外国と は違う独自の仕組みだと思っております。  それとともに、サラリーマンと非サラリーマングループの間で、給付が1階部分のみ か、2階部分もあるか、支払う保険料が定額か定率か、といった意味での違いがあるの が独自性かと思っております。  5ページでございますが、日本の公的年金の体系は他の医療保険、介護保険と比べて どうかということでございます。医療保険、介護保険を見ていただきましても、70歳や6 5歳以上について見れば、全国民共通の仕組みになるのでございますが、それより年齢の 低い働く人たちのレベルになりますと、サラリーマン、非サラリーマンは截然と体系が 違っているということで、サラリーマン、非サラリーマンの体系を区分けするという仕 組みは公的年金だけに留まらない、医療保険、介護保険共通の社会保険制度の大きな体 系に現在の日本ではなっているということでございます。  それで、どういうところをご議論いただきたいかというと、6ページ、「論点(例) 」でございますが、まず大きな特徴であるサラリーマンと自営業などの非サラリーマン グループの間で異なる取扱いをどう考えるかということでございます。  一つ目の「○」と二つ目の「○」は、先ほどご説明いたしましたので省略いたします が、三つ目で、現在我が国のサラリーマングループも厚生年金と共済年金に区分けされ ていますが、これは将来の一元化を図っていくというふうにしておりまして、昨年3月 の閣議決定でも「財政単位の一元単位も含め…21世紀初頭の間に結論を得る。」とされ ており、将来一元化を図ろうということになってきているところでございます。  では、それを置いておきますと、サラリーマンと非サラリーマンの間での異なる取扱 いをどのように評価し、将来に向けてどのように見直すのか。一つは、両者の就業や稼 得の態様、所得把握の違いをどう考えるか。そこから来ている高齢期の所得保障の必要 性の違いをどう考えるか。そういうところのご議論あるのだろうと思っています。  ちなみでございますが、「資料2−2 給付と負担について(参考資料)」の6ペー ジをご覧になっていただければと思います。「1−6 現役時代の経歴と年金の給付水 準」というのを付けさせていただいておりますが、これは現在の老齢年金受給者の方々 につきまして、その方々が働いておられた時、どういう働き方をしていたか、つまり、 ご夫婦で夫がサラリーマンで妻が専業主婦中心のサラリーマン片働き世帯、サラリーマ ン共働き世帯、ご夫婦ともご商売、自営業をやっておられた世帯、そういう家庭を三つ の箱にとりまして、それぞれの方の高齢期の収入をとってみました。このそれぞれの箱 の中の下二つ、青色と灰色が稼働収入とその他の収入ですが、サラリーマンで片働きの 場合は両方足して114万円でございます。ところが両方とも自営業だった方は、稼働所得 とその他の収入を足して238万円でございます。この114 万円と238 万円の違いというの が、サラリーマンと自営業の方の就労と稼得の態様、そこから来ている高齢期の収入の 違い等を一つあらわしているものです。  それの差を解消していくものとして、サラリーマンについては厚生年金という報酬比 例の年金があって、公的年金を足しますと、サラリーマン片働きのご夫婦と自営業だっ たご夫婦との間では415万円と389万円となり、トントンであることが窺われるかと思っ ています。その辺をどう考えるかという論点でございます。  7ページでございますが、所得比例と所得再分配という給付の構造をどう考えるかと いことでございます。先ほど申しましたが、ドイツとスウェーデンは、公的年金の中で 所得再分配を行っておりません。アメリカ、イギリスは態様の違いがございますが、公 的年金の中で給付と負担の関係におきまして、所得の再分配を行っております。日本は どうなっているかと申しますと、1階が定額、2階が所得比例という意味では、日本の 現行給付構造はイギリス型でございます。  その上で、ドイツ、スウェーデンのような完全所得比例方式という一つの典型的なタ イプをこれから考えていくのかどうか。この場合には、先ほどの話とも絡みますが、サ ラリーマンと自営業者グループ間での所得把握の相違をどう考えるのか、また、どうや っていけば良いかというところが極めて大きな問題として出て参るかと思っています。 そうではないとしたら、アメリカ、イギリスのような所得再分配機能を一層強めるのか どうか。そのようなところがご議論いただくべきところかと思っております。  8ページ、体系論の論点の三つ目ですが、所得のない、あるいは低い方に対する年金 保障をどう考えるかということでございます。  公的年金制度は、先ほどの経緯もしくは諸外国の例の中でも少しお話いたしましたが 、そもそも現役時代の所得が高齢になって喪失した時に、その従前所得をどのように補 填していくか。いわば従前所得の喪失補填を行うことによって高齢期の所得保障を行っ ていくのがそもそもの制度だったと思っています。従いまして、基本的には所得のない 人や低い人については、そういった従前所得の喪失補填という必要性が無い、あるいは 低いものですから、公的年金の対象とはせずに、これらの方の老後は生活保護の体系で 対応することを基本としているところでございます。  ただ、そうはいっても、新しい体系として、最低保障年金というのを持ち込む国もご ざいます。スウェーデンで行われているようなことでございます。そういうことを考え て、一方で日本の公的年金をどう考えるかと言いますと、これまでは高齢期の従前所得 の喪失補填を基本としながらも、日本の独自性といたしまして、無・低所得者もできる だけ年金でカバーしようとして、具体的には保険料納付困難な方についても国民年金の 保険料免除制度をつくって、それの対象として、その期間についても1/3 (国庫負担相 当分)を支給しているところでございます。こういった中で、現行制度以上にさらに所 得のない人々に対する配慮を強めるのかどうか。すなわち公的年金制度の体系におきま して、従前所得の喪失補填に加えまして、無・低年金者に対する最低保障という考え方 を入れることが適切かどうか、そういう論点があろうかと思っております。  最後四点目でございますが、9ページ、「公的年金の一部を確定拠出型(積立型)と することについて、どう考えるか」ということでございます。最初の主要国の紹介でも 申し上げましたが、どこの国でも所得比例年金を公的年金でやっておりますから、これ をそのまますべてなくしてしまうことはございません。そういう中で、ただ、ドイツと かスウェーデン、アメリカなどでは、各国の公的年金制度改革の中で、一部に確定拠出 、積立方式の個人年金を取り入れる動きが出始めております。そこに書いておりますが 、国によってやり方がそれぞれ違い、スウェーデンなどでは従前の賦課方式の公的年金 の保険料の一部を強制加入・積立方式の個人勘定に切り替えています。また、アメリカ は検討中でございますが、そうではなくて任意加入の確定拠出型の個人年金を、公的年 金とは別に設けるという案もございます。いろんなやり方がございます。  そういう中で、日本でこれからの公的年金改革との関わりの中で、現在の賦課方式の 公的年金の給付を補完するような確定拠出型(積立型)の年金を仮に導入する場合には 、次の二つのやり方があり、それぞれのやり方について論点があるのではないか。一つ は、現在の公的年金(賦課方式部分)に付加する形で、任意加入の制度を設けるという やり方があろうかと思っております。ただ、この場合は、昨年からスタートしておりま す、日本の確定拠出年金制度の普及との関係をどう考えるかというところが議論になる のかと思っております。  もう一つは、そうではなくて、現在の公的年金の賦課方式の保険料、厚生年金の13.58 %の一部を強制加入の確定拠出型(積立型)の年金の保険料に切り替える。そういった こともあり得るかと思います。ただ、現在の公的年金制度は、現在の年金保険料がその まま年金の給付費に回る世代間扶養の仕組みでございますから、現在の賦課方式の公的 年金の保険料の一部を確定拠出(積立型)に切り替えるとすれば、現在の年金給付の財 源がその分足りなくなります。従いまして、現在の受給者の水準を下げないためには違 う財源が必要となる。これについてどう考えるか、そういう論点があろうかと思ってい ます。  とりあえず体系につきまして、ざっとご紹介させていただきました。 ○ 宮島部会長  どうもありがとうございました。それでは今ご説明のありました年金制度の体系につ きまして、主に資料の内容につきまして、まずご質問なり、あるいはもう少し資料の説 明を求めたい点がございましたらどうぞ。また、最後に論点が少し整理されております が、追加すべき論点等ございましたら、ご発言いただきたいと思います。 ○ 向山委員  資料の3ページのスウェーデンの年金制度について詳しく説明していただきたいので すが、実は今までの賦課方式から、今度18.5%のうちの2.5 %を強制加入の積立方式に 変更したというご説明があったわけです。その場合に、現在年金を受給されている方の 水準を下げたのか、現行のままなのか。現行のままならば、新たな二重の負担というの が生じるということでありますので、その分はどうされたのか、もしわかれば教えてい ただきたいと思います。 ○ 榮畑年金課長  実はスウェーデンの給付の水準論はなかなか難しいものございまして、新制度と旧制 度では制度の発想、成り立ちが全然違っております。従いまして、給付水準を一概に比 較するのはなかなか難しいところでございます。これは想像なのですが、年金保険料が 過去に比べれば下がってきているところでございますから、そういう保険料でやってい けるとするなら、旧制度の年金についても何らかの給付の調整措置があるのではなかろ うかと思っています。ただ、新制度と旧制度との水準を直ちに対比していくこと自体、 全く年金の算定式が違いますから、一概に言いにくいところでございます。  例えば年金の給付改定の方式をみますと、適正化していくという方向、つまり旧制度 の年金も含めまして給付水準を適正化、切り下げていくという方向が組み込まれている のではないかと思っているところでございます。 ○ 向山委員  この2.5%の部分を強制加入の積立方式にする場合については、当然従来の賦課方式か ら変更するわけですから、当然受給者の中で旧制度と新制度の部分の関連性というのは あるわけですね。この2.5%に相当する部分のために新たな財源を取っているのか、取っ てないのか、その辺わからないですか。 ○ 榮畑年金課長  新たな財源というか、既裁定年金とか過去分の年金を受ける方に対して支払っていく ための財源をどうするかというご質問ですか。 ○ 向山委員  はい。 ○ 榮畑年金課長  基本的にはそこは既裁定の方の給付も将来に向けて何らかの形で適正化していくとい う仕組みを入れながらやっていくという発想でいるのではないかと思っております。た だ、厳密に何か他に財源があったのか、なかったのかということについては調べさせて いただきたいと思っております。 ○ 宮島部会長  まだ、その辺のところ、今の資料の説明では一番最後の論点に関わるところですね。 ですから、この論点の整理そのものが的を射ているものなのかどうか、その辺のところ はもう少し調べてもらいたいという気がします。 ○ 岡本委員  3ページについてでありますが、公的年金と私的年金という欄で、アメリカでは個人 年金、企業年金が広く普及とか、ドイツでは企業年金が普及とか、スウェーデンではこ ういう制度があるというような表現ですが、日本の現状をこういう意味で理解するとき に、公的年金と私的年金について、もし日本をこの欄を書けば、どのように書いて、ど のように理解すれば、今の日本の制度が正しく理解できるのでしょうか。 ○ 山崎企業年金国民年金基金課長  例えばアメリカの場合考えますと、企業年金、個人年金が大変広く普及しております 。日本の場合は厚生年金の分野におけます厚生年金基金と適格退職年金とございますが 、両方合わせてサラリーマンの2分の1の方が企業年金を持っていらっしゃる、こうい う状況でございます。ある面でいきますと、ドイツ等の場合は公的年金が中心ですので 、それに比べますと広くなっておりますけれども、アメリカほどではないという状況で あるかと思います。 ○ 岡本委員  世界的に先進国の中で見ると、日本の企業年金というか公的年金以外の制度の普及は 、そこそこ普及していると、こういう理解なのでしょうか。 ○ 山崎企業年金国民年金基金課長  かなり普及しているものと考えています。 ○ 翁委員  いくつか質問があるのですが、スウェーデンの年金制度改革というのは、個人の拠出 と給付をみなし運用利回りみたいな形で結びつけることによって、かなり若年層などの 年金不信を解消する方向に作用しているような議論があるのですけれども、実際に、そ ういった年金の運用利回りや毎年毎年の予想受取額が個人の下にどんな形で通知されて いるのかというイメージのようなものが、次回もしわかりましたら、是非教えていただ きたいと思います。  それから、もう一つは質問なのですが、スウェーデンの積立方式の運用内容というの は、強制加入といっても、運用内容については個々人が選択できるようになっているの でしょうか。そういったことについてもお伺いしたいと思います。  あと二点ほど意見なのですが、論点の「2」のところで、給付構造、所得再分配につ いてどう考えるかあります。おそらく所得再分配というのは年金の話だけではなくて、 税制とかそういった形で他の制度がどのぐらい所得再分配を行っているかという点を踏 まえた議論が必要だと思いますので、少なくともほかの国との比較の場合は、ほかの所 得再分配との関係でどのようにに位置付けるかという議論が必要になってくると思いま すので、その点の整理が必要かと思います。  もう一つ、9ページのところで、「我が国の確定拠出型年金がスタートしたところで あるが、こうした制度の普及との関係について、どう考えるか」ということに対しまし ては、もちろん最初の時点で対象者が狭いとか、拠出額がまだまだ小さいとかいろんな 議論があったわけですが、少なくとも今の時点でこの確定拠出型年金のスタート以後の 推移についてどう評価するかということを見ておく必要があるのではないかと思います 。 ○ 宮島部会長  今、大きく二つ言われまして、最初の方は質問ということでお答え願いたいと思いま すが、二番目の方は論点を少し追加してということでありますが、何かあれば事務局か らも伺っておきますが。 ○ 山崎企業年金国民年金基金課長  私の方からスウェーデンの積立方式と確定拠出年金についてご説明させていただきま す。  スウェーデンの資料にございますように、2.5%の部分、これはプレミアムペンション と呼んでおりますけれども、強制加入となっており、実際には公的機関が運営していま す。これは個人がそれぞれ勘定を持つわけで、大体500種類以上のファンドを公的機関が 提示しておりまして、その中から最大5ファンドまで自分で選ぶ、こういう形になって おります。したがって、まさにそこで自分の運用の判断が出てくるわけです。2000年末 現在の数字でございますが、290万人の方が既に商品選択を行っておりまして、平均で約 3.4商品を選択しているということでございます。日本のように企業別ではなくて、公的 機関が運用商品を提示し、管理を行っている点で強制加入の裏付けになっております。 ○ 翁委員  そうしますと管理は公的主体で運用は民間ということですか。 ○ 山崎企業年金国民年金基金課長  そうです。それぞれのファンドはまさに民間商品でございます。  日本の確定拠出年金の現状でございますが、企業型と個人型二つございます。企業型 は105 社の企業が導入しておりまして、約9万人の方が加入している状況でございます 。始まりましてちょうど半年ぐらいになりますので、普及のスピードが速いかどうか、 いろいろ議論ございますが、労使の合意の下で導入しますので、例えばある大手の企業 も1年かかって労使合意をつくっているわけでございまして、逆に言いますと、今入っ ています105社は既に制度施行前から労使の間でいろんな議論をして始めているという状 況でございまして、そう考えると私はそれなりのスピードだと思っています。  105社のうち6割が中小企業でございます。確定拠出年金の一つのねらいは、確定給付 年金を持ってない中小企業に年金のすそ野を広げるということもございました。そうい う面でいきますと、数は少ないですが、中小企業にとっての意味もだんだん高まってき ているという状況ではないかと思います。 ○ 榮畑年金課長  一番最初にスウェーデンの概念上の拠出建てについてどうかというようなお尋ねでご ざいました。また後でもご説明させていただきますが、資料2−2の33ページをご覧に なっていただきますと、スウェーデンの欄で概念上の拠出建てというのはこういう仕組 みだというふうに書かせていただいております。このとき、注意していただきたいのは 、そこにも書いておりますが、拠出された保険料をもとに一人当たりの名目賃金上昇率 を、運用利回りと仮想して年金原資を計算いたしますから、一人一人の拠出された保険 料に対して金利がかかって年金原資になるということではなく、賃金上昇率で運用され ると仮想して計算しているということでございます。したがって、言葉の本来の意味で の拠出建てということではなく、「概念上の拠出建て」と言われる仕組みとなっており ます。  それから、どういう形で通知しているかということですが、新年金制度におきまして は、年に一回、将来の年金受取額を個人に通知しているということは承知しております が、さらに詳しい内容となりますと、調べてみなければ、今の段階では何ともわからな いということでございます。 ○ 宮島部会長  よろしゅうございますか、とりあえず。 ○ 翁委員  はい。 ○ 渡辺委員  簡単に二点だけ。一点は質問というか疑問です。6ページの論点1のところですが、 「○」の三つ目に一元化の問題が入っているわけですが、これは私はなぜここにこれが 入っているのか違和感を覚えるます。確かにこのとおり閣議決定で被用者年金の一元化 ということが謳われているわけですが、もちろんサラリーマングループと自営業者グル ープの間の扱いをどうするかという論点の中であっても良いと思うのですが、この一元 化は、ある意味では純粋に被用者年金だけに限ってやるということが決まっているわけ です。これを入れた意味をもう少し教えてください。  もう一点は、先ほど確定拠出年金のご質問に対するお答えもあったのですが、山崎課 長からご説明があったように、去年の10月1日から発足して8カ月で大体100件を突破し たということですが、私は極めて少ないと評価しています。今お話にあったように、準 備に1年以上かかるから、多分来年4月には相当数出る準備が民間企業では進んでいる と思うのですが、私の知る限りで言えば、特別法人税が来年から凍結解除にならないと いう前提で進めていると思います。もしこれが凍結解除になったとするならば、相当民 間企業は断念せざるを得ないと思うのですね。  そういった意味から言いますと、これは政府の方も何も説明してないし、むしろ、こ の間の政府税調の基本方針の中に一部凍結解除を示唆するような表現があるのだけれど も、それによってこの動向が大きく変わるわけですね。特にこれは民間企業にとって大 事なテーマなので、厚生労働省だけの話ではありませんが、来年の話ですから、そうい ったことをもう少し整合的に示す必要があると思います。以上、二点です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。 ○ 榮畑年金課長  私の方から、6ページのサラリーマングループの一元化の関係をお答えさせていただ きます。5ページの我が国の現行社会保険制度の体系の図の年金のところをご覧になっ ていただきますと、サラリーマングループ、自営業者グループとの間で大きな太い線が 入ってございますが、それほど大きな太い線ほどの違いはないのでございますが、サラ リーマングループにつきましても、厚生年金と共済年金との間で制度が分かれているよ うな現状でございます。サラリーマン、自営業者グループの間での異なる取扱いをどう するかという大議論に入る前に、サラリーマングループの中で、厚生年金、共済年金と いうように現在は制度が違うのだけども将来どうしていくかということについて、これ までのご議論と将来の方向をご紹介させていただき、それを前提にさせていただいた上 で、自営業者、サラリーマンの違いをどう考えるのかについてご議論いただきたいとい うつもりで書かせていただいたところでございます。 ○ 山崎企業年金国民年金基金課長  ご指摘いただいたとおり、我が国の場合、特別法人税ということで1.173%の税がかか る形になっていますが、13、14年度は凍結されております。問題は来年度以降の税制改 正をどうするかということですが、私どもとしては、従来から、こういう課税の見直し を要望しております。  加えまして、今のような資産状況、運用状況を考えますと、1.173%の特別法人税がか かりますと、それだけ運用利回り全体が落ちるという形になり、その結果、確定拠出年 金にとどまらず企業年金全般で厳しい状況になりますので、大変重大な課題だと見てお ります。そういった面から見ますと、来年度以降については、私ども制度を預かる立場 として、税制改正をしっかり要望していきたいと思っております。 ○ 宮島部会長  資料1については、特に何かありますでしょうか。山崎さん。 ○ 山崎委員  資料の3ページでございますが、「諸外国の年金制度の構造比較」とあります。そこ でドイツですが、国庫負担が所得比例でついている形の図になっております。説明のと ころで国庫負担につきましては、「年金保険の支出に対する連邦補助金(保険料水準を 抑えるための制度に対する補助)」とありますから、国庫負担がなければ定率で保険料 を上げるということになりますが、その保険料の引上げが抑えられているという意味で 高所得者の方にたくさん国庫負担がいっていると理解できるのかと思います。  次の4ページですが、実は日本の2階建ての図というのは、専ら給付の体系を示すも のだと私は理解しておりますが、ドイツの場合と同じように考えますと、この説明にも ありましたけれども、費用負担についてはこのようになっていないはずなのであります 。つまり、1号被保険者グループと2号被保険者、3号被保険者グループの費用負担は 全然別でございまして、費用負担の図を書くとすると、自営業者グループとサラリーマ ングループの間に実線を引かなければいけない。そしてサラリーマングループは収入に 対する定率で保険料負担がかかるということになります。  ということになりますと、基礎年金拠出金に対する国庫負担があることによって定率 の保険料負担が軽減されているわけですから、ドイツと同様にサラリーマングループに ついては、所得比例で国庫負担がついていると理解すべきではないかと思います。一つ の論点になるのかと思います。更に、実は財政が共済と厚生年金に別れておりますが、 共済グループの所得水準が高いということになりますと、共済グループの方により多く 国庫負担が配分されているということになるのではないかと思います。  今の話とも関連しますが、実は渡辺委員からご質問があった被用者年金の一元化につ いては、一元化懇のマターではないかという話だったのですが、昨年2月末に一元化懇 の報告をまとめました。確かに一元化懇というのは被用者年金の制度間調整を検討する 場だと私も理解しております。ただ、報告書の中で注文がついておりまして、一つは労 働組合を代表する委員からの求めがありまして、厚生年金の短時間就労者への適用につ いて検討するとされています。そのことは一元化懇の報告書にあることですが、恐らく この場で検討することになるのだろうと思います。  もう一つ、私が強く求めたことですが、実は一元化の問題というのは、1階部分はも う終わって、2階部分の問題だというふうに一般には理解されていますが、1階部分の 一元化もまだ積み残しがあるのではないかと申し上げました。その結果、負担に関わる 拠出金負担の在り方についても検討するというのが一元化懇の報告に記されているわけ ですが、基礎年金の拠出金負担の在り方についての検討というのは、一元化懇なのかこ の場なのかということをお尋ねしたい。もしこの場であるとすると、私は拠出金の負担 に不公平なものが相当あると考えております。特に総報酬制が導入されるとそれがさら に強まるというふうに考えておりますから、これは神代先生が一元化懇の座長なのです が、先生からでも、あるいは事務局からでもお答え願いたいと思います。以上、二点で す。 ○ 宮島部会長  渡辺委員のさっきの質問と若干関わることですが、後者の質問について、まず年金課 長から。 ○ 榮畑年金課長  二つ目のお話の基礎年金の費用負担に関してのご議論は、ご指摘のとおり一元化懇談 会の議論の積み残しの課題として報告の中でも書かれております。今、基礎年金の負担 を各制度頭割りで行っているのを、所得割というか財政力に応じた形でやればどうかと いうご指摘があったのはその通りでございまして、そのこと自体を基礎年金の費用負担 の在り方に係るものといたしまして、次期年金改革の中で、特にこの年金部会を中心に してご議論いただくことだろうと思ってございます。  最初の方のご質問の、基礎年金の国庫負担が、被用者年金制度については定率国庫負 担になっているのではないかという点につきましては、正直申しまして理解できないと ころでございます。今、基礎年金の国庫負担は、各制度ごとに一人当たり定額の頭割り による拠出金負担の1/3ということですので、額としては等しく各制度に来ているのかと 思います。 ○ 宮島部会長  それでは、その辺のところも今度ペーパーの中で、場合によっては少し触れていただ くということにして、神代先生、一元化懇として、これは論点として入るかどうかとい うようなことがありましたら。 ○ 神代部会長代理  今のお答え以上に私は特にございません。 ○ 宮島部会長  まだ消化不良の点が無論ありますけれども、最後の質問にさせて頂きたいと思います が、大山委員。 ○ 大山委員  保険料と給付の関係で、諸外国の事例がわかったのですが、4カ国が紹介されていま すけれども、保険料と給付のそれぞれについて頭打ちはないのかどうか、教えていただ きたいと思います。後で結構です。 ○ 宮島部会長  わかりました。資料1につきましては、特にスウェーデンの新しい年金制度について 若干細かい仕組みについて質問がございました。まだこの新しい制度ができたのは1999 年ですので実績値を追うのはなかなか難しい状況かとは思いますけれども、追加資料を 考えていただきたい。それから、日本の私的年金、私的年金と言いましても、厚生年金 基金、税制適格退職年金、個人年金等もございますけれども、いわゆる401k型の企 業年金も含めて、日本での私的年金の現状と普及状況のようなものについても、資料を まとめていただきたいと思います。  それから、今の論点への追加のご意見がございました。資料の中で「所得再分配」と いう言葉を使われていますけれども、これは年金の中での配分の仕方の話ですけれども 、他の再分配との関連もあわせて論点として入れてほしいというご意見がございました 。  あと、今ありましたように、「所得再分配」をめぐる解釈については、私もよくわか らないところがありますので、この辺のところをまた改めてご指摘いただき、できれば 問題意識をよく聞いておいていただいて、必要な説明を次回補充していただくか、資料 を出して少し討議いただくか、お願いしたいと思っております。  それでは時間の都合がございますので、次は資料2−1でございますが、前半部分に 当たるところにつきましてご説明いただきます。 ○ 榮畑年金課長  それでは資料2−2も参照させていただきながらご説明させていただきます。まず資 料2−1の1ページをご覧になっていただきますと、年金の給付水準でございます。現 在の基本的な考え方といたしましては、サラリーマン世帯につきましては、夫が40年間 厚生年金に入って、妻は40年間専業主婦だったという世帯を標準的な世帯として想定し た場合、その世帯に対しまして基礎年金(夫婦二人)+厚生年金(夫)の年金が、現役 時代の年収に対しまして概ね6割(59.4%)となることを基本として、給付水準を設定 しています。  資料2−2の1ページをご覧になっていただきますと、現役時代の賃金と比較した年 金の給付水準を書かせていただいています。現役の現在の平均の賃金が36万7,000円でご ざいます。これを総報酬(年収)に換算いたしまして、それを12で割ったら月々47.7万 円。そこから税、社会保険料負担を取りましたのが、月々の可処分所得40万1,000円でご ざいます。それに対しまして標準的な年金が23万8,000円でこれの割合が6割(59.4%) になるということでございます。一方で、本編の資料2−1の1ページにお戻りいただ きまして、二つ目でございますが、自営業世帯につきましては、基礎年金(夫婦二人) で、老後生活の基礎的部分をカバーするということを基本として給付水準を設定してい ます。  また、諸外国、国際的にもサラリーマンにつきましては、先ほどご紹介いたしました 現役時代の賃金との比較で、その何割ということで給付水準を設定することが通例でし た。ILOでもこの方法が採られています。  もう一枚おめくりいただきまして「(2)論点(例)」でございます。いくつか掲げ ておりますが、それをご覧になっていただく前に、資料2−2(資料編)の2ページを ご覧になっていただきますと、高齢者世帯の生計費と年金の給付水準というのを書いて ございます。箱が二つございますが、まず標準的な年金23万8,000円というのを書いた上 で、下に高齢者夫婦世帯の消費支出をとりましたら、24万4,000円でございますから、標 準的な基礎年金と厚生年金合わせますと、24万4,000円のほとんどをカバーしているとこ ろでございます。  それから、基礎年金相当分の13万4,000円で見てみますと、下の高齢者夫婦世帯の消費 者支出のうちで、食料から始まって保健医療ぐらいまでで13万3,000円強でございますか ら、大体、衣食住をはじめとする基礎的な部分がこの基礎年金二人分である13万4,000円 でカバーされているということかと思ってございます。  資料2−2(資料編)の3ページですが、それを家計調査で見てみたものです。下の 二つの箱が家計の実収入と実支出でございます。実収入23万6,000円のうちの大半が公的 年金収入21万9,000円でございまして、それと先ほどもご覧になっていただきました、こ ういう家庭ではどういった支出があるのかというのを比べていただきましても、公的年 金の給付を中心的な収入源としてこの家計の支出が営まれるというのが窺われるかと思 っております。  次に資料2−2(資料編)の4ページの1−4でございます。これは複雑な図ですが 、横軸欄は年金の年収額を階級別にとっております。従いまして、左から年金の年収額 が80万〜120万円、年金の年収額を階級別にとり、かつ高齢者夫婦世帯で働いている人も 込みでございます。それで横軸の階級をとり、それにそれぞれ赤い線が入ってございま すが、これが高齢者夫婦世帯の収入でございます。収入の線をとり、それぞれの階級ご とに箱が三つございます。このうちの一番左が年金以外の収入で真ん中が年金。赤い線 の家計の収入というのは、年金以外の収入と年金を足したものがこの線になります。そ れに対しまして一番端が階級ごとの家計の消費者支出でございます。従いまして、赤い 線と一番端の消費支出を対比させていただきますと、大体どこの階級でも収入が消費支 出を上回っているというのがご覧になっていただけるかと思っております。  それから階級で言いますと240〜280万円のところで、真ん中の年金の月額とその家計 の消費支出とが大体トントンになっています。階級が上がるにつれまして、年金が消費 を上回り、逆にそれより下回るにつれて、年金が消費支出より足らなくなりますから、 そういう場合には年金以外の収入が出てきて、それで全体としてはこの収入が消費支出 を上回っている。そういった傾向が見てとれます。  資料2−2(資料編)の5ページですが、消費支出の高齢者世帯と現役世代の消費支 出の対比を書かせていただいています。箱が四つございますが、一番上が夫65歳、妻60 歳以上の年金受給者です。下の箱三つが、夫婦のみ、又は結婚してない子どものいる夫 婦で、年齢が50代、40代、30代、という働いている方々の消費支出を対比しております 。  特徴的なのが二つございまして、一つは、上から二つ目の、例えば夫50代のところを 見ていただきますと、青いところで4万2,531円でございます。これは何かと言いますと 、土地家屋の借金返済、住宅ローンでございます。その返済が現役世代には多いが高齢 者にはない。それから、その隣に赤いのがございます。教育費4万3,882円ですが、これ も現役世代は多いけれども、高齢者にはないということで、住宅ローンや教育費といっ た点で違いがあります。  もう一つ、一番上の高齢者の朱色のところをご覧になっていただきますと、消費支出 が24万円でございます。これが現役では34万円から27万円まで分かれておりますが、た だ、ここでは世帯人員が現役と高齢者で違いますから、その差を補正していくために、 (注)で書いておりますが、世帯人員の平方根で除すという方法をとっております。こ れで世帯人員の差のある世帯を比較することにいたしますと、高齢者で言いますと、17 万15円となっております。これが世帯人員の差をならした後の数字ということで、一つ の方法でございますが、これを見ますと、むしろ現役の40代、30代の方が消費支出は小 さくなっているということで、逆に言いますと、高齢者夫婦の消費水準は30代や40代を やや超える数字にあるということがこの調査から見てとれるかと思っています。  6ページは先ほどご紹介いたしましたから、サラリーマンOBと自営業OBとの収入 の差でございます。これは省略させていただきます。  7ページは、無収入の高齢者の方がどれぐらいおられるかということでございます。 収入の低い方を、世帯ではなく今度は高齢者個人ごとでとりました。左の方の個人の年 間収入階層別に見た分布でございます。男性が上、女性が下でございますが、特に収入 なしのところを見ていただいたら、男性で4.8%、女性で17%でございますが、そういう 方がどういう世帯、家族構成かと言いますと、両方とも共通して言えるのは三世代同居 というのが多いということでございます。  下の女性では、夫婦のみの家族構成が相当あり、この場合には女性には収入ないけれ ども、男性にあるのだろうということを推測できる構成がございます。もう一つは、女 性の80万円未満とか80万〜160万円未満ということになりますと単身の女性がこの辺に結 構おられるということが窺えるかと思っています。  それを生活保護の適用状況で見てみますと、65歳以上の被保護者が37万人おられます が、その方々のうちの45.4%は単身女性です。17万人ぐらいおられる。そういうことが 生活保護の調査からも見てとれるかと思っています。  8ページ、9ページは、単身女性の収入の低さが年金から起因しているのだとしたら 、その要因として、女性の被用者年金の加入期間が短いとか賃金が低いとかというよう なことがあるという現状を8ページ、9ページなどで掲げさせていただいております。  10ページは、給付水準の諸外国の対比でございます。頭にアメリカ、イギリス、ドイ ツ、スウェーデン、日本の平均年金額をとって、その下に各国の平均賃金額を書かせて いただいておりまして、その対比として一番下の欄に書いております。日本で42%でご ざいますが、スウェーデンで58%等々で、ご覧にいただけるような水準でございます。  (注)の「3」をご覧になっていただきたいのですが、各国の年金受給権獲得に必要 な加入年数が異なることから、各国の平均年金額自体が国により異なっております。ア メリカ、ドイツでは、10年、5年という短い加入年数でも年金を受給することが可能で すが、そういうものも含めた平均年金額になっておりますから、低い年金になっている ということでございまして、私どもとしましても、本当に各国の年金水準あらわすのに この形しかないのかどうか、さらに考えさせていただかなくてはならないかと思ってい るところです。とりあえずこれは平成12年版の厚生白書からの資料としてご紹介させて いただきました。  そういうところで、資料2−1の2ページに返っていただきますと、給付水準をご議 論いただく時の論点といたしまして、高齢者世帯の生計費(消費支出)の関係、現役世 代の生計費の比較、サラリーマン世帯と自営業者世帯との違い、特に所得の低い単身世 帯とか女性単身世帯の給付水準の問題、国際的に見た比較、そういうところを踏まえま して、現在の給付水準についてどう考えるかという論点があろうかと思っています。  3ページでございますが、保険料負担水準です。現行制度の基本的な考え方といたし まして、保険料負担は、社会保険方式の公的年金制度では、一定期間の保険料納付が前 提として年金が出ます。従いまして、制度スタート後に一定の時間が経過して受給者が 増えて年金給付費が増大してまいります。また、それとともに公的年金ですから、社会 経済の変動に応じた実質的な価値のある給付を行うため、賃金、物価スライド等々の給 付水準の改定をやっているところでございます。それによって給付が更に増えてまいり ます。  このような年金給付の動向を踏まえまして、従来から段階保険料という方式をとって きております。この方式は、保険料を将来に向けて段階的に引き上げていくことをあら かじめ想定して、その将来見通しに基づいて保険料率を設定してまいります。この関係 を、資料2−2(資料編)の12ページに概念図を示させていただいております。  給付費が点線で増えてきますが、平準保険料方式を採りますと、最初から横一線にな るわけでございますが、その平準保険料方式ではなくて、段階で上げてきております。 もう一つございますのは、図の中に書かせていただいておりますが、この図自体は、制 度発足後、給付内容を改定せず、人口、経済情勢等も一定とした場合の保険料を示した ものでして、現実には給付内容を改定していけば、横一線の平準保険料自体も変わって いくということで、そもそも平準保険料が最初からいつまでも一定になっているという ことではないということもご留意していただきたいと思っています。  資料2−1の3ページに返っていただきますと、現実に財政方式はどうなっているか ということですが、下の2行、これまで段階的に保険料(率)を引き上げてまいりまし たが、一方で給付水準の改定、制度の成熟によりまして年金給付費が増大してまいりま して、現在では世代間扶養(賦課方式)を基本とした財政運営制度になっております。 従いまして、現在では納付された保険料はすべて年金給付に充てられて、年金積立金は 実質的には増えてない状況でございます。  それとともに諸外国でも同様に年金保険料を徐々に引上げられてきているところでご ざいます。その辺の関係の資料を資料2−2(資料編)の13ページから付けさせていた だいております。時間の関係上省略させていただきますが、13ページ、14ページが過去 の推移でございまして、15ページに将来の保険料の見通しが書いてございます。15ペー ジをご覧になっていただきますと、総報酬ベースでございますが、現在13.58%、11年の 財政再計算では階段的に上げて19.8%まで行くというふうに考えていたところですが、 それを前々回説明いたしましたように、将来推計人口が変わりましたことを受けて将来 推計をやり直しますと、そこに書いておりますような19.8%が24.8〜20.6%まで上がっ ていくということになるところでございます。同じような図を国民年金につきまして16 ページに付けております。  資料2−2(資料編)の17ページには諸外国の年金保険率の推移を付けてございます 。アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、日本、それぞれ保険料率と高齢化率を 書いております。ご注意いただきたいのは、現在日本では17.35%と書いておりますが、 これは標準報酬、月収ベースですから、諸外国と対比するために年収ベースに書き換え ますと13.58%となります。括弧の中で諸外国と対比していただければと思います。そう いたしますと、今の日本の高齢化率が17.3%ですから、大体これで13.58%という保険料 ということは、高齢化率は諸外国と比べて日本は低いというのが見てとれるかと思いま す。  そういう中で、資料2−1に返っていただきますと、4ページでございますが、「( 2)保険料引上げの凍結解除」についてでございます。将来に向けた公的年金の財政計 画におきましては、先ほど申しました段階的な保険料引上げとともに、相当程度の積立 金を保有し、その運用収入を含めて年金給付を賄うことによりまして急激な保険料水準 の上昇を緩和していこうという計画で進めているところでございます。  資料2−2(資料編)の18ページをご覧になっていただきますと、「2−7 厚生年 金の保険料引上げ計画」というのを付けさせていただいています。太線が11年財政再計 算に基づく引上げ計画、もう一つの線が完全な賦課方式による保険料率でございます。 その差を積立金の運用利回りで稼いでいって、現実の保険料引上げ計画の最終保険料を 下げていくという計画でございます。  そういう中で段階的な保険料の引上げは後に遅らせますと、結局将来の積立金から得 られる運用収入が減ってしまいまして、最終的には保険料水準の引上げ幅が大きくなる のではなかろうか。逆にこの引上げをより早期に行いますと、最終的に収支を均衡させ るための保険料水準の引上げ幅が小さくなるのではなかろうかと思っています。その辺 は資料2−2(資料編)の19ページの概念図でございます。最終保険料(率)と保険料 (率)の引上げ計画は11年再計算ベースの線を太線で描いておりまして、それより早く しますのを赤線で描いております。赤線のようにしますと最終保険料率は低くなり、そ れより後にしますと、黒線で描いておりますが、最終保険料率が高くなるという関係に なります。  資料2−1の5ページの1行目でございますが、仮に、次期年金制度改正におきまし て、現在予定している保険料引上げ凍結解除を行わず、現在の保険料水準、すなわち13. 58%を将来にわたって固定するようなことをすれば、新人口推計対応試算ベースでは、 現在受給している年金を含め、直ちに給付水準を大幅に抑制することが必要になる。例 えば基礎年金国庫負担割合1/2の場合は3割程度、1/3の場合は4割程度の給付費の抑制 が必要になってくるのではないかということでございます。  そういうことを前提とさせていただきまして、「(3)」でございますが、何をご議 論いただくかというところでございます。少子高齢化が急速に進展する中で、保険料負 担の水準を段階的に引上げていくことが必要であり、次の改正では保険料(率)を引上 げを再開させることが必要である。  そしてその場合、将来の最終保険料の水準をどう考えるか。前回の12年改正では、厚 生年金については、年収の20%ぐらいに最終保険料を設定させていただいたところでご ざいます。その関係が資料2−2(資料編)の20ページ、「2−9」でございますが、 三点考え方を挙げてございます。西欧諸国の例において心理的な負担の限界と見られて いること、12年改正時の各種の有識者調査の結果、約2割という負担水準が最も多くの 支持を集めたということ、そして、もう一つは、年金保険料だけではなく、税、ほかの 社会保険料負担を合わせたトータルの国民負担の関係。そういうようなことを総合的に 考えて20%と設定させていただいたところでございます。  将来の最終保険料を予定よりも抑制しようとした場合、その抑制度合いに応じまして 将来の年金給付の適正化が必要となります。この場合、現在受給している年金との間で の給付水準に格差が生じるとともに、適正化の度合いによっては、資料2−1の6ペー ジでございますが、公的年金というのは所得保障の主柱でございますが、公的年金の意 義にも関わることとなるという問題があるのではなかろうか。  もう一つ、保険料の引上げ方ですが、厚生年金につきましては、現行では財政再計算 のたびごとに引き上げていくということですので、例えば直近の11年の再計算では、基 礎年金1/2の場合、5年に一回、1.77%ずつ上げていくとしておりますが、これをどう考 えるか。それとも毎年、小幅ごとに引き上げていくという考え方についてどう考えるか というご議論もあろうかと思っています。  それとともに、最終保険料(率)の到達する年次につきまして、11年再計算では、202 5年に到達するということを想定しておりますが、それを後世代に対する負担をできるだ け軽くするため、引上げ計画を先に上げてしまうというようなことが一つあります。も う一つは、一方で経済環境が悪く実質賃金上昇率が低いときには、むしろ引上げ幅自体 を圧縮していくという経済に配慮したような措置をどう考えるか。この場合には、引上 げ計画自体を後倒しすることとなるのかどうか。こういたしますと最終保険(率)は高 くなります。この辺の引上げの計画、最終保険料(率)の免除をどう考えるかというと ころもご議論になるかと思っています。  それから、最後でございますが、保険料の引上げは厚生年金だけではなくて、1号被 保険者の方についても当然引上げさせていただかなければならないわけでございますが 、そういたしますと、まさに1号被保険者の国民年金の保険料は定額ですから、所得に 関わりなく定額という点ではかなり厳しくなる方もおられるのではないかと見ますと、 現行の保険料は全額免除か半額免除というような刻みになってございますが、これを更 にきめ細かく保険料の免除制度を設定していくことが考えられるかどうか。そういうよ うなところが論点だろうと思ってございます。  以上、早口で恐縮ですけれども、給付と負担の前半をご説明させていただきました。 ○ 宮島部会長  だんだん論点が現実的にも具体的なものになりかけていますので、いろいろご意見が あると思います。かなり資料もございまして、この前、所得階層別の年金配分ですとか 、そういう状況などもきちんと調べるようにということを申し上げた資料があったと思 いますけれども、資料も含めまして、今の前半部分につきまして、質問、質疑等がある 方、どうぞよろしくお願いいたします。 ○ 掘委員  資料2−2、1ページの給付水準ですけれども、これは若い世代の手取り年収の6割 という数字なんですが、若い世代は税、社会保険料負担を除いた手取り収入にしている のですが、モデル年金の方は、税、社会保険料負担がないために名目値となっています 。モデル年金を手取りに直したら大体幾らぐらいになるのかという点と、ボーナス込み で比較するというのは、給付水準を算定する際には良いのですが、サラリーマンは給料 で生活していると思いますので、手取り月収対一人の年金月額がどれくらいか教えてい ただきたい。 ○ 宮島部会長  すぐお答えできる用意ございますか。 ○ 榮畑年金課長  年金に対しまして、税金そのものは基本的には、是非はともかくとして掛かってござ いませんから、税という面ではほとんどないのでございましょうけど、あとの社会保険 負担をどう見るかということは作業させていただければと思っております。 ○ 宮島部会長  それは次回でよろしゅうございますか。 ○ 掘委員  家計調査でしたでしょうか、非消費支出が月2万5,000円という資料がありましたが。 ○ 榮畑年金課長  資料2−2の3ページに非消費支出として、こういう家庭では2万5,000円あるという のはございます。 ○ 宮島部会長  非消費支出の中身は今わかりませんか。 ○ 榮畑年金課長  ちょっとお時間いただければと思います。 ○ 宮島部会長  わかりました。ちょっと時間をとらせていただきます。他にございませんでしょうか 。15分ほど、45分ぐらいまで質疑の時間を用意してございますので。 ○ 山崎委員  資料2−2(参考資料)の10ページ、年金水準を比較するのは非常に難しいと榮畑課 長からご説明ありましたが、確かにそのとおりだと思います。高く見せることもできる し低く見せることもできるというわけでございますが、例えば日本の厚生年金の全受給 者平均17万2,200円というのは、恐らくかつての給付、本来の年金の資格要件を満たした 方だと思います。つまり原則20年間あるいは特例で15年間ということだと思います。そ れに対してアメリカやドイツは10年だとか5年が含まれているという意味では、日本は 高く出ているということだと思います。  その一方で、平均賃金月額が41万2,800円とありますが、これは下の(注)であるよう に、一般に用いている30人以上の事業所の報酬をとっているわけでございます。分子に 当たる受給者の方は、法人であれば一人であっても適用され、個人事業者の場合も従業 員五人以上で適用されますから、零細な事業所の非常に給料の低い人の年金も含んで17 万2,200円となっているのですが、下の方は比較的高い賃金データを使っているという意 味では、割り算をしたときの42%というのは低めに出ているのかなということもあった りします。  それで何とも言えないのですが、できだけ条件を整えて比較されたらどうか。そうい う意味ではモデルをつくって、10年加入ではアメリカはこうで、日本ではどうか。ある いは40年加入ではどうかという条件を整える必要があると思うし、それから最近ではネ ットとネットの比較ということになりますから、受給者も現役もネットの手取りで比較 しようということになりますと、賃金や年金から控除される社会保険料や税負担の厚み によってもまた分母や分子が違ってくるわけで、その辺の要件を可能な限り揃えて比較 するような表をつくっていただくと非常にありがたいと思います。 ○ 宮島部会長  何かございますか。 ○ 榮畑年金課長  まさに1−10の資料自体は、これだけで国際比較ができているかどうか、私どもも、 もう少し詰めさせていただければと思っておりました。各国の租税負担率はなかなかわ かりにくいものですが、今のご指示も踏まえまして努力させていただきたいと思ってお ります。 ○ 宮島部会長  一番難しいのは条件で、税制などは調べられると思うのだけれども、さっき言った加 入年数とか、そういう要因を調整してやるというのは、逆にデータがひとり歩きされる と困るような感じもしないでもない気がします。けれども、今注文がありましたように 努力してほしいと思います。 ○ 渡辺委員  資料の追加といいましょうか、先ほどの3ページの非消費支出の問題がございました けれども、これはデータとして平成13年のがとってあるのですが、現実問題として恐ら くことしの10月から高齢者の医療の1割負担が導入されるわけですね。それから、まだ これは未定ですが、来年3月末までに新しい高齢者医療制度の姿ができて、その2年後 に実施という政府・与党の合意があるから、現実問題として2004年の年金改革をする時 には、そういった新しいデータの下に高齢者世帯の支出は変わってくるわけなので、ま だ決まってない数字を盛り込むのが難しいのはわかるのですが、このままの数字だと比 較しにくいこともあると思います。今後、年金を中心として医療あるいは介護といった ものに対する支出を賄うという考え方の上に立つのであれば、もう少し現実に合ったデ ータをできれば作っていただきたいと思います。 ○ 宮島部会長  これも我々はそう思っていますが、なかなか実際には適当なデータがないのかもしれ ません。特に、実際、介護保険など、特別保険料の徴収で年金から徴収されるというケ ースも出てきますので、少しそういう点の新しい変化の中で、こういうデータも変わっ てくる可能性があります。なるべく直近のデータを取れるならば取っていただきたいと 思いますけれども、ほかに。 ○ 翁委員  違う観点なんですけれども、18ページのところに厚生年金の保険料の引上げが、積立 金を持たない完全賦課方式に比べてこれだけ引き下げることが可能です、ということが 書いてあるのですが、同時に違う観点から考えなければいけないのは、財投改革で自主 運用が始まって、金融市場における公的年金のプレゼンスの問題というのもあると思う んですね。その意味で、こういった保険料引上げをやっていった場合の積立金の規模の 今後の予想も今度お示しいただければと思っております。 ○ 宮島部会長  これは出そうと思えば、具体的な数字はともかくとしてすぐ出せますね。 ○ 坂本数理課長  平成11年の財政再計算の結果でございますが、これにつきましては、将来の収支見通 しを示しておりまして、前回、前々回でも申し上げておりますように、賃金上昇率が2.5 %、物価上昇率が1.5%、運用利回りが4%という前提で将来見通しを示しておりますが 、その際に各年度末の積立金の状況も示しているところでございます。これも次回資料 でお示ししたいと思います。 ○ 向山委員  資料をお願いをしたいのですが、昨今年金の問題について『週刊現代』等でも、岩瀬 さんの発言等が書かれておりまして、そういった中で、要はもう少しクリアーにする意 味でちょっとお願いしたい資料を用意していただきたいという点がございます。それは 厚生年金なり国民年金の加入者が納めた保険料が年金給付にどのくらい使われていて、 それ以外のものにどのくらい使われているのか。そういった年次的経緯の数字がもしあ ればお示しをいただきたいというのが一点。  今の仕組みでは、運用収益を給付に回すということで積立金を持っているわけでござ いますが、積立金の運用収益が各年度でどのくらいあるのか。これは年金特別会計の預 託利子収入と2001年から自主運用された部分の二つあるわけでございますけれども、そ の部分について、9月頃には年金特会の方も確定すると思いますけれども、わかる範囲 の中で各年度の運用収益の数字をこの年金部会に示していただければ。その二つの資料 をお願いしたいと思っております。 ○ 宮島部会長  保険料について、具体的な使途を分離して示せということになりますか。恐らく収入 は保険料だけではないので、それがどこに行っているのか、具体的に示せるかどうか。 特会なりその中で、保険料収入含めて、収入と支出がどんなふうになっているかという ことになりますでしょうか、今のお話は。 ○ 向山委員  はい。 ○ 宮島部会長  これは少なくとも厚生年金や国民年金の特会の決算ベースでは出てくるでしょう。 ○ 十菱社会保険庁・運営部企画課長  委員ご指摘の話は、恐らく福祉施設事業という形で、いわゆる給付費以外に使われて いるものにどういうものがあるのかということかと思います。それは厚生年金会館のよ うな施設事業もございますし、年金相談等、受給者のサービスに使われている経費もご ざいます。これがどのような形になるのか、お示しできるだろうと思いますので、資料 を調整してみます。 ○ 大澤委員  大変簡単なことですが、資料2−2で、例えば4ページの1−4を見ますとデータは 高齢者夫婦世帯だけなんですね。ちょっと下がって今度7ページを見ますと、無収入の 高齢者ですから、これですと女性単身高齢者で年金を受けている人の状況がわかりませ ん。誰でもご承知のように、高齢になってからの有配偶率というのは男性と女性とでは 全く違うので、夫婦世帯のみで示されてもわからないことが多過ぎるという気がいたし ます。何か工夫をしていただければと思います。 ○ 宮島部会長  これはいかがですか。 ○ 榮畑年金課長  4ページの全国消費実態調査からとらせていただいたのでございますが、ここから単 身者を取り出すというのは調査内容から制約があるかもしれません。何か他の方法があ るのかないのかも含めて考えさせていただければと思います。 ○ 宮島部会長  大澤さん、逆に何かご存じですか。家計調査とか幾つかあるようですが、単身の女性 を拾えるものというのは。 ○ 大澤委員  知りません。 ○ 宮島部会長  これは資料の話なので、委員の方で詳しい方がいらっしゃいましたら、サポートして いただければと思うのですが。  それではもう一つ資料説明が残っておりますので、申し訳ありませんが、前半部分は 一応これでまず締めさせていただきまして、次に今度は資料2の後半部分ともう一つ資 料3をあわせて、これの説明と質疑に入りたいと思いますので、よろしくお願いいたし ます。 ○ 榮畑年金課長  続きまして、先ほどの資料2−1と資料2−2をご覧いただきたいと思います。資料 2−1の7ページでございますが、年金制度における給付と負担の関係と社会経済情勢 についてでございます。これまで年金の給付の水準、保険料負担の水準、引上げ方等々 をご説明させていただきましたが、それは両方どう関わるのかというのをここでご説明 させていただきます。  四角の箱の頭3行に書いてございますが、公的年金制度が最大限効率的に運営される べきことは当然の前提とさせていただきますが、その上でもなお将来に向けました給付 と負担の関係では、基本的には、財政再計算時に想定いたしました少子化、寿命の延び 等の人口構造とか、賃金・物価・金利等の経済情勢等、年金制度にとってみれば、年金 制度の中にはない社会経済情勢に変動が生じた場合に、その変動に応じて年金の給付と 負担の関係も変わってくるというようなことがございます。その関係をいろんな構成要 素ごとに書かせていただいたのが7ページの図でございます。  具体的にどう変わるか。社会経済情勢が、例えば少子化とか寿命の延びが動くとどう 変わるか。経済情勢が動くとどう変わるかということをお示しさせていただいたのが8 ページ以降でございます。社会経済情勢、人口や経済が想定を超えて変動する場合の給 付と負担がどう変わるかということの基本的な考え方というか仕組み、仕掛けを整理し ております。  まず社会経済情勢、先ほど申しました少子高齢化のような人口構造と経済と二つに分 けまして、最初の少子高齢化、人口構造が想定を超えて変動する場合。一方、経済情勢 は想定どおりというのをまず8ページで整理しております。そういたしますと、人口構 造の変動、すなわち少子高齢化が想定を超えて進展したらどうなるかと言いますと、少 子化が進み、社会全体では働き手が減ってまいります。そういたしますと社会全体が保 険料の賦課ベースでございます働き手の総賃金が想定どおりに増えないということにな ります。少子化が進展し、現役世代が減少してまいりますと、一人当たりの賃金がこれ を超えて上がっていかなければ、社会全体での総賃金は減少するということにもなりか ねません。少子化が進むということは、総賃金の伸びが抑制される、もしくは総賃金自 体が下がってくるということにつながります。一方で、平均寿命が伸びますと、年金受 給者数が想定以上に増加いたしますから、給付が膨らむことになります。  こういう前提で年金給付水準を維持していこうとすれば、将来の保険料率は想定より も引き上げていくことが必要になるでしょうし、逆に将来の保険料率を想定どおりとす るならば、給付水準を想定に比べて抑制していくことが必要になってくるのではなかろ うかと思っています。  この辺の関係を資料2−2(資料編)の25ページ、26ページに付けさせていただいて おります。25ページは、人口構造が変化したが、一方で経済情勢は想定どおりという場 合で、給付水準を維持し続けると、一方で年金の保険料負担は、これは前々回の将来推 計人口のところでお示しいたしましたように、11年の財政再計算で19.8%と見ていたの が、20〜24.8%まで上がっていく。これは低位、中位、高位、それぞれ少子化の進展に よって上がりぐあいが違ってまいりますが、図のような関係になろうかと思っています 。  26ページは、逆に負担水準を固定いたしました。人口が少子高齢化が進むということ を前提といたしまして、一方で負担水準を固定いたしますと、先ほどの図と逆に、将来 の年金の給付水準が下がってくる。平成9年の中位推計で所得代替率は59%でございま したが、人口推計の高位、中位、低位によってそれはだんだん下がってくる。これも概 念図ですが、そういうような関係がございます。  資料2−1の8ページに返っていただきますと、8ページの(2)ですが、今度は逆に少 子化傾向が好転をする場合。社会全体の総賃金が想定を超えて増加いたしますから、給 付と負担の関係は先ほどと逆になるということでございます。  9ページに進んでいただきますと、少子高齢化、人口構造の変動は想定どおりという ことで、一人当たりの賃金上昇率等の経済情勢が想定を超えて変動する場合どうなるか ということでございます。前後いたしますが、資料2−2の24ページを見ていただけれ ばと思います。これは模式図ですが、人口構成一定と想定した場合の給付と負担におけ る賃金・物価の上昇率との関係を示したものです。左側の箱二つですか、年金給付費総 額と保険料総額がございます。その次には、年金給付費の中で一定の人が亡くなって新 たに受給者として発生してまいる人がおられて、ところが新たに受給者として発生して 来られる方は、現行制度では一人当たり賃金上昇で年金が引き上げられますから、一人 当たり賃金上昇(X%)と書いてありますが、この分を引き上げた形になります。  ところがその時までの既裁定の受給者は現行の制度では消費者物価上昇で上げられま すから、そこに書いているようにXよりも小さい形で上げられることになります。一方 で下の保険料総額は、このときは人の数は一定、並びに保険料率は変化なしということ で考えていただければ、一人当たりの賃金上昇率(X%)だけ保険料総額は増える。と なりますと、上下を照らし合わせていただきますと、網かけの部分が年金財政にとって の「ゆとり」というようなものが段階で生じます。これをもってして将来の保険料の引 上げがより緩やかにできることになるという関係にございます。  ところがこういう想定で立てていたのが、現実には一人当たりの賃金上昇(X%)が 小さくなって、X´%になったと想定していただきますと、この網かけの部分が小さく なってまいります。この網かけの部分が小さくなるだけ、結局既裁定年金を消費者物価 スライドとした仕組みの財政効果が縮小いたしまして、X%としておった想定に比べれ ば、X´%下では年金財政は厳しくなる。いわば一人当たり実質賃金上昇が小さくなる 分だけ厳しくなるという関係にあろうかと思っております。  資料2−1の9ページに戻っていただきますと、そういう関係にあるときに、一人当 たり賃金上昇率等の経済情勢が想定を超えて変動する場合、まず最初でございますが、 まさに24ページに書かれておりました想定を超えた一人当たり賃金上昇率。しかもこの 場合大事なのは、一人当たり実質賃金上昇率でございます。これが低迷したような場合 には、先ほどの図でもございましたように、年金給付費を想定よりも小さな賃金で支え ることになりますから年金財政は厳しさを増します。従いまして給付水準は変わらない とするならば、将来の保険料率を想定より引き上げることが必要になる。逆に将来の保 険料率を想定どおりとするならば、給付水準を想定よりも抑制することが必要になりま す。逆に一人当たり賃金上昇率が想定以上に改善されれば、年金財政の厳しさは逆に緩 和されることになって、先ほどの給付と負担の関係が逆にまた回ることになります。  この辺を概念図で示させていただきましたのが資料2−2の27ページ、28ページでご ざいます。まず27ページで、経済情勢が変化、特に実質賃金上昇率が変わったときに給 付水準を維持し続ければ保険料がどうなるかということで、19.8%から実質賃金上昇率 1%ならば22.4%ですが、それが低ければ、それよりも上に行って、実質賃金上昇率が 1%より高ければ22.4%より下になるという関係でございます。  今度は逆に給付を変え、負担水準を固定したらどうなるかが28ページでございまして 、人口構造が一定で賃金上昇率が変わって、かつ負担を固定したら給付がどうなるか。 実質賃金上昇率が1%の場合とそれより高い、低い場合にそれぞれ新規裁定時の所得代 替率が59%もしくはそれよりも高くすることが可能、低くすることが必要というような 関係を図示させていただいたところでございます。  そういう中で、資料2−1の10ページでございますが、「論点(例)」でございます 。今申しましたような人口構造とか社会経済情勢等の変動で年金の給付と負担の関係が 動くというふうにご説明させていただきましたが、その中でこのような社会経済情勢の 変動に対しましてどのような取組・対応が行われてきたか、10ページの後半ですが、基 本的には二つの方法がございます。  一つは、まさに従来からやられてきた方法として、人口とか経済情勢が想定を超えて 変動したその都度給付と負担を見直していくという考え方でございます。従来からのわ が国の制度改正、アメリカ、ドイツ等の海外の例もまさにこれだったのだろうと思って います。  もう一つは、そうではなくて、下2行ですが、将来にわたって保険料水準を固定して 、その後のいろんな社会経済情勢の想定を超えた変動には、給付内容を自動的に調整す るというスウェーデンの99年改革の考え方がこれに当たろうかと思っております。  こういった二つの取組の方法があるのではないかということでございます。  そうなりますと、まさに人口、社会経済情勢の変動が激しい中で、今後の日本の年金 の給付と負担の関係をどう考えるか。11ページですが、社会経済情勢の想定を超えた変 動がある時に、その都度給付内容を見直すとともに、将来の保険料水準も見直していく ことには限界があると考えるのかどうかという論点がまずあろうかと思います。  それとは違う方法としまして、将来にわたって保険料水準を固定し、その後の変動に は給付内容を自動的に調整していくこととした場合には、将来、想定を超えて諸々が悪 化いたしますと実質的な年金水準が下がっていくこととなります。その低下を逆にどこ まで許容できるかというような論点がある。また、その場合に年金水準のスライドの在 り方とも関わりますが、具体的な自動調整の手法はどう考えるのかという論点があろう かと思っています。  これに関連いたしまして、資料2−2(資料編)の32ページでスライドの経緯等々を 付けさせていただいております。我が国の年金額のスライド方式の経緯ということで、4 8年に厚生年金に賃金スライドを導入いたしまして、それとともに既裁定につきましては 、厚生年金、国民年金とも毎年消費者物価スライドを行い、財政再計算時に厚生年金は 賃金再評価、国民年金は政策改定としてやってきたところでございます。  それが平成元年には消費者物価を完全自動物価スライド制に変えています。平成6年 改正では、厚生年金についての再評価を可処分所得の上昇率に応じた再評価に変え、平 成12年、前回改正で既裁定年金のスライドを物価スライドのみに変えさせていただいた という経緯がございます。なお、平成12年から消費者物価は下落しておりますが、消費 者物価スライドは凍結して、年金額は据え置きにしているところでございます。  一方、諸外国はどうしているか、33ページでございます。欧米主要国のスライドの方 式でございます。アメリカ、ドイツ、イギリス、これは賃金、物価、可処分所得スライ ドということでそれぞれやっておりますが、先ほどもご紹介させていただきました、上 から三つ目のスウェーデンが特徴的でございまして、概念上の拠出建てということで、 新規裁定時には、年金額は、拠出された保険料をもとに、一人当たりの賃金上昇率を運 用利回りと仮定して原資を計算して、それに対して65歳時の平均余命の年数を基本とし た数でその原資を割って算出するということで、概念上の拠出建てという方式をとって おります。  それに対しまして、また裁定後には、そこのところに書いてございますが、消費者物 価上昇率+(実質賃金上昇率−1.6%)ということで、賃金から1.6%を引いたものでス ライドする。この1.6 %に関しましては、概念上の拠出建てとして計算する時に、制度 上の予定実質賃金上昇率としてあらかじめ年金額に織り込み済みですので、この算定式 により賃金スライドになっているということでございます。  それとともにスウェーデンで特徴的なのは、一番端に書いてございますが、自動財政 均衡メカニズムということで、将来の年金財政が悪化した場合、年金額のスライド率を 自動的に変動させることを更に仕組みとして入れ込んでいます。  ちなみに(注)に書いておりますが、イタリア、ラトビアでは、スウェーデン同様に 概念上の拠出建て方式を導入しておりますが、このときの計算式上、先ほどスウェーデ ンは、みなし運用利回りとして一人当たりの賃金上昇率を用いていると申しましたが、 イタリアではGDP成長率、ラトビアでは国全体の賃金総額の伸び率、そういった指標 を採用いたしまして、一層の年金財政の将来の変動に対する安定を図っているというこ とを情報と聞かせていただいてございます。こういったことが給付と負担の関係の論点 だろうかと思っております。  それから、次に資料2−1の12ページでございますが、現在受給している年金の取扱 いということで、基本的な考え方をご紹介させていただいております。既裁定のものは 年金額を消費者物価の変動で改定しております。従いまして、消費者物価が下がった時 には年金の額自体を引き下げていくことが制度的には想定されてございますが、この他 にも年金制度を適切に運営していくために必要不可欠な場合には、こういった消費者物 価下落に伴う引下げの他に、現在の年金額についても、その算定方法を変更して年金水 準の適正化を行った例もございます。ただ、この場合、消費者物価下落ということ以外 での引下げにつきましては、財産権に制約を加えることとなるので慎重な検討が必要だ という論点もございます。  どういった例があるかをまとめたのが13ページでございます。いくつかの例がござい ますが、かいつまんで申しますと、平成12年の年金改正で厚生年金の給付水準を5%適 正化しております。ただし、この場合は従前の年金額は消費者物価スライド付で保障し ております。  昭和61年の共済年金の改正でも給付水準を適正化しております。ただし、この場合も 従前の年金額そのものを消費者物価スライド付ではなくて、その額を保障している。つ まり年金額を変えないということにしております。  一方で、平成元年のJR、13年農業者年金の改正では、従前の年金の額自体を引き下 げるというようなこともやってございます。  この他に、年金制度というよりは、受給している年金額を実質的に引き下げる措置と して、年金課税の強化という方法もあろうかと思います。これは実はアメリカの1983年 のレーガン改革でこういうことをやっているということもご紹介させていただいており ます。  14ページの論点でございますが、次期年金制度改正におきまして、将来世代に対して 、保険料負担の引上げや給付水準の適正化を求める場合、現在の年金受給者に対しても 、年金水準の適正化を求めるかどうか。この場合、どのような手法が適切なのかという ことが論点として挙げられるかと思います。なお、資料2−2(資料編)の34ページ以 下にこの関係の資料を付けさせていただいております。  資料2−1の15ページですが、給付と負担の関係が分かりやすい年金制度についてで ございます。欧米主要国でも年金制度に対する理解や信頼を高めるために、給付と負担 の緊密な関連性について国民に対して情報提供が行われております。  例えば、ドイツでは年金ポイント制を採っております。年金ポイント(個人報酬点数 )に現在価値を掛けて年金月額を出すという仕組みでございます。個人報酬点数(年金 ポイント)はどうして出すかが、下から5行目で書いておりますが、その時その時のあ る個人の報酬を全被保険者の平均報酬に対する比として年ごとに算定します。従いまし て、ある年に全被保険者の平均報酬を得ていた方のその年の年金ポイントは1.0となりま す。ドイツでは標準的な年金を受給する者は、45年加入が前提ですから、標準的な年金 を受給する者は45ポイントを有することになります。これで得た年金ポイント(個人報 酬点数)に単価を掛けて年金額を出すという仕組みです。  その他、16ページにございますが、先ほどもご説明いたしました概念上の拠出建てと いうことで情報を提供する方法もございます。これは個々人の保険料総額が基本になり ます。これは納めた保険料総額が増えていくという仕組みですから、これも将来受給す る年金が徐々にたまっていくことが実感できる仕組みであろうかと思っております。  こういうものを受けまして、17ページの論点でございますが、実は我が国でも、現在 は受給権発生を2年以内に控えている方を中心として年金見込額情報を提供しておりま すが、年金個人情報の提供を充実する観点から、対象者を50歳まで広げようという検 討を進めているところでございます。しかし、これに留まることなく、更に現役世代と か、特に年の若い方の年金制度に対する理解や信頼を高めていくために、先ほどご紹介 いたしました海外の例等も踏まえまして、将来の年金給付を実感できる仕組みや運営と して、どのようなものが適切かという論点があろうかと思っております。  最後に、資料3でございます。少子化対策等関連分野と年金との関係について簡単に ご説明させていただきます。  基本的な考え方といたしまして、1ページですが、先ほどもご紹介させていただきま したが、給付と負担の将来見通しそのものは、少子高齢化に伴う人口構造の変化とか雇 用その他の経済状況の見通しと関わりが強いものでございます。また、個々の適用とか 給付につきましても、その他の社会保障、税制等の在り方とも関わりが強いものでござ います。  そういうことに対しまして、具体的にご論議いただきたい点といたしまして、まず先 ほどからお話しておりますが、少子化の動向そのものが年金制度の基本に関わることか ら、今後進めるられる少子化対策の効果をどうのように見るのか。それが将来に向けて の給付と負担の関係を検討する上で必要ではないか。少子化対策の効果をどのように見 るのかという論点。  それからもう一つ、年金制度自身におきましても、現在も一部ございますが、例えば 育児休業期間に対する保険料免除、給付への配慮等々の子育ての配慮措置を取り込むこ とについて、その是非を含めてどのように考えるのか。拡充するのか、それともその是 非をどう考えるか、そういうご議論があろうかと思っております。  それから年金と雇用でございますが、次の改正では、女性、高齢者等の支え手を増や す方向での年金改正が必要だろうと思っておりますが、この際に、高齢者雇用の推進、 短時間労働者の能力の有効発揮、さらには多様就業型ワークシェアリングなど雇用面で の取組との連携をどのように進めるかという議論があろうかと思っております。  2ページでございますが、年金とその他の社会保障、税制等の関連といたしまして、 先ほど少し出てまいりましたが、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大と医療保険 、健康保険等の扱いをどう整合させるかという問題。  年金と他の社会保障制度における給付との重複問題として、施設入所の際の居住費と してのいわゆるホテルコストを負担するという問題がございます。これにつきましては 、年金をまずきちんと払った上で、その中から、本来、利用者が支払うべきものと整理 できるのかどうか。そこがどうなのだろうかという論点。  三点目ですが、前回もご議論いただきましたが、次期年金制度改革に当たりまして、 公的年金等控除の見直しを含め、税制改革との整合性をどう考えるかという論点。  四つ目は、年金制度は、外生的な社会経済情勢の影響を強く受けるものですから、年 金制度が順調に円滑に発展していくためには、今後の我が国の社会経済の安定と持続的 な成長が必要ではないか。そのような論点があろうかと思います。  この関係を図にいたしましたのが次の3ページでございます。年金改革と少子化、雇 用等の関係ということで、一番下に年金改革を置きまして、少子化対策、雇用、この三 つがそれぞれで関わりを強く持つのではなかろうか。年金改革と少子化対策、少子化対 策と年金ということで関わりを持つ。少子化対策と雇用は、働き方の見直しという点で 関わりを持ち、雇用と年金改革でも関わりがある。ただ、このほかに、更に経済発展と かその他、社会保障、税制、財政等、他の制度との関わりも大変強く持つということを 一枚の紙に仕上げましたのがこの3ページでございます。  以上、資料のご説明させていただきました。 ○ 宮島部会長  それでは、質疑の時間が10分ほどになってしまいましたけれども、資料2−1の後半 部分、それからもう一つの資料3も含めて何かございましたら。細かい点はいろいろ言 いたい点もあるのですが、委員の方からどうぞ。 ○ 大澤委員  資料2−1の7ページには図がありまして、給付と負担の関係が図解されています。 私はいつも労働力率にこだわっているので注目すると、ここには労働力率が出てくるの ですが、8ページ以降は労働力率の話が出てまいりません。ただ、8ページの真ん中辺 に、「少子化が進展し、現役世代が減少する中で、一人当たりの賃金がこれを補って上 昇しなければ…」とあります。この一人当たりの賃金というのは、現に働いている人だ けではなくて、働いていない人も含めた一人当たりの賃金というふうに読んでよろしけ れば。人口構造が予想を超えて変動したからといって、働き手が自動的に減ることには ならない。結局年金財政にとって大事なのは、高齢者比率そのものではなくて、拠出を している人の人数と受給をしている人の人数の関係ですから、そのあたり、そういうふ うに読んでよろしいのでしょうか。 ○ 榮畑年金課長  今のご質問でございますが、むしろ働き手が増える、労働力が増えるということを通 じまして、現役世代の減少をどのように食いとめていくか。現役世代というのはまさに 働き手、賃金の担い手ということでございますから、支え手を増やしていくことで現役 世代を増やしていけば、この影響を緩和できるのではないかと思っています。 ○ 大澤委員  同じ資料2−1の12ページですけれど、既裁定の年金で、名目額を引き下げるのは、 財産権に制約を加えることとなって、憲法上許されるかと、かなり大上段の議論があり ます。年金というのは財産権でないわけですよね。とりわけ賦課方式でやっている限り は。そして譲渡も相続もできないものについて「財産権」というふうな言い方をして議 論をしなければならないのかというのがちょっと疑問でした。 ○ 宮島部会長  これについては、法律的なきちんとした説明というのが恐らくあるとは思うのですが 。 ○ 榮畑年金課長  資料2−2の37ページをご覧になっていただければ、先ほどご紹介しました年金の名 目そのものを切り下げた農業者年金制度の改正の際の質問主意書、国会から政府に対し て質問があって、それに対して政府が答えたという質問主意書に対する答弁書がござい ます。冒頭に書いておりますが、既裁定の年金受給権は、金銭給付を受ける権利である ことから、憲法に規定する財産権であるということが書かれています。ただ、これ自体 が神聖不可侵なものというよりは、公共の福祉を実現し維持するために必要がある場合 には、法律により制約を加えることが憲法上許されることがあるということが最高裁の 判例でございますが、これをどういうふうに考えるか。それをどのように制約するか、 その仕方、理屈、内容によりまして、憲法問題が出てくるのではないかということがこ の質問主意書に対する政府答弁で整理されているということかと思っております。 ○ 宮島部会長  財産権だというのは政府の統一見解ですか。 ○ 榮畑年金課長  この質問主意書に対する答弁書は閣議決定という手続を経て出しておりますから、政 府の統一見解と思っております。 ○ 大山委員  ドイツについての説明で最終保険料率という表示がありますね。それと先ほどから出 ている日本の最終保険料率19.8%というものと、言葉同じなんですけど、概念も全く同 じでしょうか。 ○ 榮畑年金課長  概念とおっしゃいますと、高原状態になったときの保険料率かというご質問ですか。 ○ 大山委員  いわゆる最終保険料率は、例えばドイツの方の22%というのは、よほどの大きな変動 があれば別かもしれませんけれども、基本的に最終的にそこまでしか行かないというこ とで国民に約束したものなのかどうかということですね。その場合、日本の19.8%も国 民に約束したものだということであれば良いのですけれども、言葉は同じなんですけれ ども、同じ概念ですか。 ○ 榮畑年金課長  ドイツの22%というのは、前回の改革のときに、そこを最終保険料の水準とした上で 、給付の調整措置を採ってきたということで、給付の見直し改定を行った時に設定され た料率でございます。一方で、日本の厚生年金の19.8%というのは、前回の改正時にお ける改正の内容並びにその時の経済情勢、人口推計などを前提といたしまして、19.8% を最終の保険料として計画を組んだものでございます。それをどう考えるか、つまり人 口、社会経済情勢の変更等々を踏まえて、日本の厚生年金の最終保険料率をどう考える かというのは、先ほども論点(例)でご紹介させていただいたように、今後のご議論そ のものになると思っています。 ○ 宮島部会長  他にいかがでしょうか。 ○ 山崎委員  少子化対策等関連分野と年金との関係についての1ページですが、(2)の論点の例 とありますが、高齢者の扶養を年金、医療、介護と基本的な部分については社会化した 。その大きな社会化の手段に社会保険がなっているわけですが、ということは論理的な 必然性として、次世代育成支援対策を進めていく上で、子育てについても社会化を進め なければならないと思っております。同時にその有力な手段が社会保険だと思っており ます。  したがって、社会保険による次世代育成支援することの妥当性というのがまず論点に あって、その場合に年金という保険が関わり得るのかどうか。あるいはどのような関わ り方が適切なのかという議論の進め方になるのではないかと思っています。 ○ 宮島部会長  このことは前に若干議論になっていた点でもありますので、その辺のところはきちん と論点として整理していただいた方が確かによろしいかと思います。最後の資料は、も う少し細かい論点にブレークダウンして手順なども示した方が良いのかという気がいた します。  資料24ページの先ほどの説明では、名目賃金率は下がるけれども、物価上昇率は一定 だという前提でこれを説明しているのではないかと思うのですが、それでよろしいです か。 ○ 榮畑年金課長  これは前提といたしましては、一人当たりの賃金上昇率は下がるけれども、消費者物 価上昇率は一定として、その分だけ一人当たり実質賃金上昇率は下がっていくとしてお ります。 ○ 宮島部会長  この場合、名目賃金率は下がるのだけど、物価上昇率は両方とも現実でも想定でも、 一定だと想定しているということですね。 ○ 榮畑年金課長  はい。 ○ 宮島部会長  そういう想定が少し気になっていて、名目賃金率は下がるけれども、物価上昇率は変 わらないという想定で作るのは、議論の仕方としては如何かなという気はするのですが 。 ○ 榮畑年金課長  ここは結局X−Yが想定に比べて小さくなった時ということでございますから、議論 を簡略化するため、消費者物価は一定と見ております。実際にはこれは下がっていくと 見るのが、確かに現実的には妥当なんだろうと思います。ただし、その場合でも、賃金 と消費者物価の下げ方によりまして、X−Yが小さくなっていけば、同じことになるか と思います。 ○ 宮島部会長  それと今日の話の中で、もちろん我々が直接議論することではないかもしれないが、 人口変動と経済変動について、これを今の説明の中で外生的と言いながら、人口変動に ついてはやや内生化しようという話が一方であるのですね。もう一つは、人口変動と経 済とどういう関係があるのかということは、これは両方とも別々で外から与えられたも のとして考えようという発想になっていると思いますが、高齢化とか少子化が進むこと が経済とどういう関係にあるかというような話は、経済学者や、委員の中では掘委員な どはよくされていることもあるので、その辺の話は両方完全に外生化してしまうという のは少し言い過ぎかという気がしております。その点は議論の際に若干考えておく必要 があるだろうと思っています。 ○ 翁委員  それとの関係で、7ページの図を見ていますと、年金制度の設計によって、前にも申 し上げたのですけれども、例えば積立方式にして貯蓄率がどう変わるかということは金 利動向とか、または物価動向という話ですので、そういった意味で関連性があると思い ます。 ○ 宮島部会長  ぜひ、その辺、私、翁さんにどこかでレポートをほしいということをお願いしたい点 でもあります。堀委員何かございますか。 ○ 堀委員  前の論点に戻ってよろしいですか。時間がなかったので簡単に。最初の論点の資料1 の一番最後の確定拠出型年金の問題なんですが、何かポッと出てきてどういう趣旨かよ くわからないのですが、確定拠出型年金を導入するには何らかの目的があるはずなんで すね。多分ドイツの場合には給付水準を下げる代償措置ではないか。アメリカとスウェ ーデンなどは確定拠出部分を追加的にして積立金を確保するということ、あるいは給付 と負担を明確化して、いわゆる損得勘定に訴えるという趣旨ではないかと思うのですが 。だから、どういう趣旨で確定拠出部分を導入するのか。外国と事情が違いますので、 例えば積立金を増やすことになると日本には余り必要ないですから、外国ではどういう 趣旨で設けたのかということを教えてほしい。 ○ 榮畑年金課長  まさに今先生がおっしゃったように、各国とも確定拠出部分を設けた趣旨がまちまち でございまして、この9ページで申しますと、ドイツでは保険料負担の過度の上昇を抑 制するため公的年金の給付水準を適正化していって、それに代わるものとして政府の補 助金付で企業年金、個人年金を拡充させていこうという、公的年金の補完、代わるもの としての位置付けだろうと思っております。  アメリカでは確かにこういう積立型のものを増やしていくことによって貯蓄を高めて いくというような狙いがあろうかと思っております。  そういうものを受けまして、9ページの下で書かせていただきましたのは、日本でこ れから進めてまいります年金改革との関わりの中で、こういった各国の動向なども踏ま えまして、日本の年金改革の中身にも関わってまいりますけれども、仮に個人の確定拠 出型(積立型)の年金を導入するということを考えた場合はどうかという論点を書かせ ていただいたということでございます。確かに先にどういう年金改革の議論があって確 定拠出型の年金を導入したのかという関わり、趣旨は、当然論点になろうかと思ってお ります。 ○ 宮島部会長  その点は、堀委員、次の時にそういう点をご指摘していただいて、ご意見をご表明い ただければと考えております。  それで、時間でございますので、今日かなり資料が膨大で、しかもかなり幅広の点で ございました。まだまだ質疑は当然残されていると思いますけれども、時間が来ました ので、質疑はこの程度にしたいと思います。今日の質疑の中で、特に資料出所につきま して、余り時間はないのですが、事務局としても多少そういうことに土地勘を持ってお られる方が委員の中にいらっしゃると思いますので、少し資料の面でサポートを受けて 、今日新しく注文された資料についてなるべく作成の努力をお願いしたいと思っており ます。  ただ、次回はできるだけレポートに基づきまして、委員の間のディスカッションをし たいと思っておりますので、次回は資料の説明そのものは省かせていただきまして、委 員の方々が議論される際に資料を使っていただき、必要に応じて場合によっては事務局 から補足をしていただくような形にしたいと思っております。  今申しましたように、次回、今日の説明及び質疑に基づきまして、今日の資料説明な り論点の整理に関わることであれば、どのようなテーマ、問題でも結構でございますの で、各委員からご自分の関心のあるところにつきましてできるだけペーパーを出してい ただければと考えておりますので、よろしくお願いしたい。  次回の日程につきましては、既にこれは調整いただいておりますけれども、最終的に は事務局からきちんとご連絡申します。それでは最後に事務局から次回以降のことにつ きまして。 ○ 福井総務課長  次回の日程等は?というお話でございます。まずもって、本日、事務局に対しまして お求めのございました資料等につきましては、時間が限られているわけでございますけ れども、可能な限り誠実に用意・対応させていただきたいと思っております。今、部会 長の話にもございましたが、場合によっては各委員の先生方とご相談させていただきな がら用意をさせていただきたいと思っております。これが一点でございます。  二点目、次回の日程でございます。既に各委員には通知文書をお送りさせていただい ているところでございますけれども、次回は今月7月19日(金曜日)でございます。午 前10時から、場所は霞が関ビルの東海大学校友会館を予定をいたしているところでござ います。  それから宿題を頂戴いたしているところで大変恐縮でございますが、ただいま部会長 からできる限りペーパーをご提出をいただいて、本日のテーマについて引き続き議論を していただくというお話がございました。各委員には誠に恐縮でございますけれども、 準備の都合もございますので、次回7月19日でございますが、その2日ぐらい前、17日 までに事務局の方にお届けをいただければありがたいと思っています。  それから三点目でございますが、今日はマイクの調子が悪うございまして、お聞き苦 しい点がありましたことを、傍聴者の方々も含めましてお詫びを申し上げます。  私からは以上でございます。 ○ 宮島部会長  特に委員の方から何かございませんでしょうか。  それではどうもありがとうございました。本日はこれで部会を終了させていただきま す。                                    (以上) (照会先)  厚生労働省年金局総務課企画係  (代)03-5253-1111(内線3364)