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V.まとめ

 本調査では(社)日本病院会会員病院(2588施設)、および全国の国公私立大学医歯学部付属病院(146施設)を対象に、全国医療施設におけるカルテ等診療情報開示への対応状況を調査した。得られた回答は全て病院名などとともに一覧表として提示した。
 本調査は統計的な集計を目的としたものではないが、参考までに5つの質問項目の簡単な集計結果を以下に示し、これを概観してみたい。

表1 患者に対する診療情報の提供

  1.全ての患者にカルテを見せたりそのコピーを渡す。 2.全ての患者様に、代替文書を渡す。 3.特に要望があった場合に、カルテを見せたりそのコピーを渡す。 4.特に要望があった場合に、代替文書を渡す。 5.原則として開示・提供は行っていない。 無回答その他 総計
度数 56 51 687 122 102 31 1049
(5.3%) 4.9% 65.5% 11.6% 9.7% 3.0% 100.0%

 表1は、各医療施設における全般的な診療情報提供体制(問1)を示している。「開示・提供は行っていない」とする回答は1割未満であり、9割近くの医療施設が何らかの形で診療情報提供に対応していた。なかでも「要望があった場合に現物を開示」が65.5%と最も多く、「要望があった場合に代替文書を渡す」(11.6%)も含めて77.1%が患者側からの要望があった場合に対応するという方法を採用していた。

表2 患者本人からカルテ開示の請求があった場合の対応

  1.原則開示 2.主治医の判断 3.委員会等に判断 4.原則非開示 無回答その他 総計
度数 497 188 274 59 31 1049
47.4% 17.9% 26.1% 5.6% 3.0% 100.0%

 表2は,患者本人からカルテ開示の請求があった場合の対応(問2)について示している。約半数(47.4%)は「原則開示」と回答しており、「原則非開示」は5.6%と僅かであった。

表3 患者遺族からカルテ開示の請求があった場合の対応

  1.原則開示 2.主治医の判断 3.委員会等に判断 4.原則非開示 無回答その他 総計
度数 324 167 308 226 23 1049
30.9% 15.9% 29.4% 21.6% 2.2% 99.9%

 表3は、患者遺族からカルテ開示の請求があった場合の対応(問3)を示している。「原則開示」とする回答が最も多い(30.9%)ものであったが、「原則非開示」も21.8%と少ないものではなかった。

表4 カルテ開示など診療情報提供に関する規約の有無

  1.ある 2.ないが、外部の規約に準拠 3.作成中 4.ない(作成予定もなし) 無回答その他 総計
度数 516 280 146 85 22 1049
49.2% 26.7% 13.9% 8.1% 2.1% 100.0%

 表4では、カルテ開示など診療情報提供に関する規約の有無(問4)を尋ねている。「ある」とする回答が半数近く(49.2%)を占め、「ないが、外部の規約に準拠」(26.7%)、「作成中」(13.9%)と、規約保持に前向きな回答は併せて9割に至る。

表5 カルテ開示等診療情報提供を扱う専門の部署・担当者の有無

  1.専任の部署・担当者が存在する 2.兼任の担当部署・担当者が存在する 3.存在しないが、設置に向けて準備中 4.いない 無回答その他 総計
度数 104 505 178 255 7 1049
9.9% 48.1% 17.0% 24.3% 0.7% 100.0%

 表5では、診療情報提供を扱う専門の部署・担当者の有無を尋ねている。「専任の部署・担当者が存在」は9.9%と僅かであったが、「兼任の部署・担当者が存在」(48.1%)は5割近くを占めた。また「設置に向けて準備中」も17.0%を数え、これらを併せて75%が担当部署・担当者の設置に肯定的であった。
 以上、これらの集計結果を概観するだけでも、カルテ開示、診療情報提供に強い追い風が吹いていることが実感できる。



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