02/06/28 不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第7回)議事録      不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第7回)議事録 1 日時   平成14年6月28日(金)10時から12時 2 場所   専用第16会議室(13階) 3 出席者  (1) 委員(五十音順)    伊藤 眞(東京大学大学院法学政治学研究科教授)    小幡純子(上智大学法学部教授)    加藤和夫(帝京大学法学部教授・弁護士)    諏訪康雄(法政大学社会学部教授)    村中孝史(京都大学大学院法学研究科教授)    山川隆一(筑波大学社会科学系教授)  (2) 行政    坂本政策統括官、岡崎参事官、清川調査官、荒牧補佐、    山嵜中労委第一課長 他  (3) ヒアリング対象者    大阪府地方労働委員会労働者委員 三ツ木宣武    福岡県地方労働委員会労働者委員 浦 俊治    中央労働委員会労働者委員    松井保彦 4 議事概要 ○ 大阪府地方労働委員会労働者委員の三ツ木委員、福岡県地方労働委員会労働者委員  の浦会委員、中央労働委員会労働者委員の松井委員から、「不当労働行為審査制度の  在り方に関する論点」を踏まえ意見を述べていただきたい。 ○三ツ木委員  最初に労働委員会に対する期待・評価についてだが、一つは速記の出来上がりが遅く 、2週間という期間を要し、それにより連続的に行うことが困難でなることである。  もう一つの課題は、地労委で命令を発してもそれを不服として再審査や取消訴訟を提 起し、その間、命令を履行しない経営者がいる。それは不当労働行為救済申立をなした 側からすると組織を風化させることにもつながりかねないという懸念がある。これにつ いて何らかの実行力の付与等の担保が求められるのではないか。また、審査機関が遠方 にある場合、例えば大阪から東京に行くということは、財政的基盤の弱い組合などは、 対応に苦慮する。  論点の2の和解についてだが、問題点としては、和解に日時を要するのは日程の調整 が非常に難しいということに原因の一端があるのではないか。  イの和解の評価であるが、これは労働組合という組織としての救済と、組合員個人の 救済の2つがあると思うが、個人の救済については、生活の維持があり、特に迅速に解 決する必要があると考える。一方、労働組合という組織の救済については、和解も良い が、不当労働行為事実に基づいて救済命令を発するということも重要である。  ロについてはケースバイケースであると考える。  ハの和解の際のタイムリミット設定は、迅速化の観点からいえば一つの方策として考 えられないことではない。和解手続きと審査手続きの分離については事件の内容により 対応は異なり、応用問題ではなかろうか。  論点の3についてであるが、まずイの迅速性は、専門機関である労働委員会が裁判所 の処理より遅延するというのは、単純には比較できないが、やはり問題である。実例を 挙げて検証すると、事務作業では速記録の作成とは別に、次回審問を早く行えるよう、 要点概要をまとめた段階で次回審問に入るということで良いのではないか。中には句読 点まで問題にする代理人もいたりして、次回の審問が遅れる要因の一つになっているの ではなかろうか。  ロの審査委員の職権の強化についてであるが、参与委員の役割にも関係するが、強化 の方向で検討することは良いことであると考える。例えば代理人の日程調整についても 強く指導できる条件整備ができることにもなり、検討に値する。  ハについては、これまで様々なことが提言されてきたが、それが実行されているのか されていないのか、申立件数の多いところ少ないところとでは違いはあると思うが、そ れぞれの労働委員会ごとに検証をする必要もあろう。  迅速化の観点でいえば、調査・審問の日程を初期の段階で設定することである。審問 が終わってから、次は何日にするのかではなく、申立の初期段階から決めてしまう運用 を行えば、迅速化につながるのではないか。審査委員の審問の進め方が非常に重要であ ると考える。  ホについてであるが、団体交渉の事項とも関係していおり、「単純な団交拒否」とは 何かを逆に質問したい気がする。しかしながら団交促進については、労働組合は労働者 委員から、使用者は使用者側委員から強いアドバイスをすることが実務面では必要では ないかと考える。  論点の4については、審査体制の中で、常勤・非常勤あるいは法学者ということが設 問されているが、労働法の学者や専門家の公益委員の選任と労働委員会の審理は必ずし もリンクする必要はないと考える。労働法の解釈が審査に特段必要とされるのであれば 、国公立の法学者に意見を求めれば良いことである。  イの公益委員の研修は必修だと考える。審査委員には何かとご苦労頂いているのだが 、審問の在り方、運営については、訓練が必要な審査委員が散見されるのではないか。 それぞれ審査委員の個性で運営することは結構なことであるが、有識者の前でいうには 恐縮であるが、マニュアルなりガイドライン的なものを示す必要はあるのではないだろ うか。  ロについては、公益委員全体の合議により公正かつ的確な判断が期待でき、さらには 合議に先立って行われる労使参与としての意見陳述により、公平さを担保できると考え る。したがって小委員会方式は当地労委においては必要ないと考える。  ハの労使参与委員の役割であるが、それぞれ出身母体が違うということもあるが、労 使参与委員はそれぞれの対場から意見陳述する機会があり、その意味で判断に寄与する ことができる。この役割は重要である。  ニの事務局職員の問題であるが、調査・審問の準備等、担当審査委員の下で必要な役 割を果たしていると考える。専門性についてであるが、事務局業務の遂行を優先しつつ 専門性を確保すれば良い。ただし在職期間が短期間でも優秀な方もおり、経験は必ずし も関係があるものではないと考える。  論点の5についてであるが、労使紛争が起きた場合、労働委員会の存在を当事者が知 っているにもかかわらず、申立は行わず、自主的な交渉をもって解決するという選択肢 を取る事例が認められる。申立件数については地域格差があるが、件数のみで判断する のではなく、労働委員会の存在自身が自主交渉を促しているということを認識して頂き たい。  ロの審級省略の問題であるが、地労委判断を中労委が再審査する必要があるのだろう か。労働委員会は三者構成であり、それぞれの代表が、それぞれの地域における労使関 係を承知している。そういう中で判断されたことについて再審査をすることへの疑問が ある。同じ機能を担う中央労働委員会ではなく別の機関で判断されるべきものと考え る。  ハの自治事務化の関係であるが、不当労働行為審査を全国的一貫性をもつという視点 も必要ではなかろうか。  論点の6については、労働委員会自身は労働諸法の中で活動しているが、安定した労 使関係の構築ということを視野に入れ審査を行うことが必要である。したがってその視 点がない判断では、健全な労使関係は寄与できないのではないかと考える。円滑な労使 関係を促進するということが労働委員会の大きな役割であるとすれば、権利義務関係の みをもって判断するのではなく、いうなれば労使関係の情にかなう面も持つという役割 も保持されるべきものと考える。  ロについては、労働委員会段階での審級省略を検討して良いのではないか。  それから最後にその他の論点として3点ばかり主張させて頂きたい。  一点目として労使関係の安定は企業の発展に欠かすことの出来ない要素であり、その 労使関係の安定化に深く関与することができる労働委員会の役割は非常に重要である。 不当労働行為救済申立がなされてはじめて労働委員会を知る経営者が多いということも 実態でもある。したがって労働委員会制度を、国、地方が機会あるごとに労使周知させ るべきである。個別労働紛争解決制度もかなり周知活動を続けているが、それ以上に周 知させるべきであり、「宝の持ち腐れ」という言葉があるが、そのような実態にならな いようにするべきではないか。  次に重要視して頂きたい点は、都道府県を見ると確かに申立件数に格差が生じている が、先ほども説明したとおり労働委員会制度を知っているが故に自主解決を促進してい る例が現場では多いという実態も踏まえて頂きたい。それを実証しろといわれれば、多 数の組合の労働協約を見るとか、あるいは春闘交渉で、どのような経過をもって解決し ているかを見る必要があるが、いずれにしても、労働委員会の存在自体が労使関係に与 えている影響を実感として感じているところである。  三点目として、命令の履行確保の問題である。労使双方の信頼関係の確立のためにも 、発出された命令の実効性を確保するための措置が必要であると考える。命令が出ても 再審査を申し立て、履行されないことがある。例えば兵庫で命令が発出された事件につ いて解決がなされなかったため、全く同じ内容の事件について、大阪に申し立てがされ ることがあった。迅速な解決を確保するという観点からのこの点について検討されるべ きではないか。  根底にあるのは労使関係の安定に貢献できる機能を有する労働委員会のさらなる機能 充実を検討して頂きたいということである。 ○浦委員  中小労働組合の役員経験及び福岡地労委の労働者委員としての経験を含めて、地労委 がどのような役割を果たしてきたか、そのところを踏まえ個人としての見解を述べたい 。  論点の1のイについては、企業別組合が申し立てる事件は比較的少ないと思われるが 、個々には、中小企業内で一から労働組合を結成する際の労使紛争は多数あると考える 。これは使用者側が労働組合結成の動きに対して、労組法の認識に欠けることから、悪 意はないにせよ、差別的取扱を行ってしまうということである。その場合、労働委員会 は、単に善し悪しを指摘するだけでなく、指導や説得を行い、職場の継続的安定を図る という重要な役割を担っている。参考までに申し上げると、当地労委では不当労働行為 の新規申し立て件数は、平成12年は13件でそのうち、団体交渉関連事件は9件(69.2% )、平成13年は7件で、そのうち団体交渉関連事件は5件(71.4%)となっていて、大 部分が団体交渉がらみの事件が多い。調整事件でも団体交渉促進がもっとも多く、最近 5か年でも40.4%と使用者の団体交渉拒否という事件が多いということが現実である。  たしかに審査の迅速性など改善されるべき点は多くあるということは承知している。 審査制度の大きな役割である労組法の遵守という点については、公労使の三者構成の労 働委員会が大きな役割を果たしており、評価されるべきと考える。  論点の2の和解であるが、基本的に審査事件については、争議の長期化を避け、和解 により解決することが望ましいと考える。事件の内容は大きく分けて3とおりあるので はないかと考える。  一つ目は団体交渉拒否事件などの中には、事件として申し立てがあったがお互いの努 力により労使関係の修復を図る余地がある事件である。二つ目は差別的取扱などについ て、解決金の支払いで和解が成立する余地がある事件である。三つ目は労使ともに徹底 的に争う姿勢を見せている事件である。労使関係の正常化を取り戻すためには、最終的 には命令を発出することとなるが、その中でチャンスがあれば和解により今後の労使関 係正常化を図っていくことが可能となる。特に一番目と二番目については、和解は大き な役割を占めるのではないかと考える。三番目の事件は、公益委員の役割が非常に大き いと考える。労組法の認識、不当労働行為の有無を見抜ける視点といった専門的知識に 立った上で指揮を行うことによって、和解の大きな実績を作っているのではないかと感 じている。さらには公労使のそれぞれの経験がプラスされることにより、和解が促進さ れるという流れになっているのではないか。審査事件の中で強い指導性がなければ、和 解ができるという条件があっても、経験不足により長引いてしまうということも中には あるのではないか。個人的見解であるが、和解のチャンスがあれば、複数の委員が入っ てでも、指導・説得を行うことができればと感じている。  ハについては、事件によって異なることもあろうが、審査と和解を切り離した場合は 、非常に長引くのではないだろうか。やはり審査を行いながら、その中で和解を探ると いうというのが、長期化を避ける観点から望ましいのではないか。  論点3については、基本的は審査期間の指針を示さないことには、なかなか改善され ないのではないかと考える。そういう意味では基本的には1年ないし1年半というよう な、ある程度の指針を示し、それに合わせた形で日程調整を組み立てていくような審査 の在り方を検討すべきではなかろうか。  ロについては、審査の迅速化という点でいえば、当事者主義を基本としつつも、事件 の事実関係を早期に明確化するという点では、労組法第22条の強制権限をもう少し活用 すべきでないかと考える。証拠の提出命令により、事件の早期解決を図るということも できる。また争点整理の迅速化を図り、問題点が明らかになれば和解により労使間の安 定化に寄与できるのではないか。実際に申立後の審査中においても、差別的取扱を止め ずに繰り返している事案もあり、労委規則第37条に実行確保の措置規定があるが、この 規定を審査体制・権限の強化という点で整備した方が迅速化の観点では良いのではない かと考える。ハ及びニについては、事件の内容により一概には判断できないが、一つは 事務局体制の強化であろう。  論点4の委員の選任についてであるが、あまりにも短期間の中で委員が入れ替わるこ とになれば、果たして和解ができる審査委員がいるのだろうかという疑義も出てくる。 それぞれ経験は重要であり、特に事務局職員については、研修体制の強化による専門性 の確保と、最低でも5年程度の配置は必要でないが。人事異動については、人の関係で あるので、一概にはいえない部分もあるが、仕組みとして今いったような改善は重要で はないかと考える。  それからハの労使参与委員の役割の評価であるが、先ほども三ツ木委員の説明にもあ ったが、和解するにしても労使が合意しなければできず、その際の使用者の説得は、使 用者委員にしかできない部分もあり、そういう意味で現行の三者構成は重要であると考 える。  論点5の中労委と地労委との関係であるが、不当労働行為事件の全国的な統一性を確 保する意味で二審性は重要な機能であると考える。  ハについては、労働委員会の機能が後退しないということが前提であるならば改善す べきと考える。  論点6の司法審査との関係であるが、労働委員会の役割も重要であるが、裁判所の提 訴による解決も有効である事案もあり、そういう意味では、紛争解決のための選択枝が 多くあるということは、労働組合にとっては良いことだと考える。裁判所には仮処分と いう制度があるが、労働委員会制度でも、同様の実効性のあるシステムを設ける必要が あるのではないか。  審級省略の点であるが、地労委から地裁というルートは必要であろう。中労委で地労 委命令について再審査しているので、二審制という点では中労委命令の取消は、地裁を 省略し高裁で審理することが、迅速化につながるのではないか。 ○松井委員  現在は労働者委員であるが、それ以前では申立人、代理人、補佐人として労働委員会 にかかわっていたところである。その両者の立場として、労働委員会に対して感じてい るところを述べたい。  論点としてあげられている項目については、他の委員がすでに述べているところであ るので、重複しないように述べたい。  まず今日の雇用関係がどのような状況であるかについて考察することが、労働委員会 制度の抱えている問題の抜本的な解決を述べるに当たり、必要なことではないかと考え る。  日本の労使関係の近代化を巡っては、様々な議論が展開されてきたと考える。近代化 が何かということが明確に定まっているわけではないが、かっては労使関係の古さや、 前近代的な性格があげられ、その克服が課題となっていた。この点については、特に中 小企業における団結権の侵害がそうではなかろうか。大企業においては、長い時間をか け日本的ともいえる労使慣行を築いてきたが、それは長期雇用、年功制、企業別労働組 合の3点セットによるところが大きいと考える。この「三種の神器」ともいうべき制度 が、日本の労使関係を機能させていると考える。  労働基準法上は同一企業内において、常用工、正規従業員、臨時工、パート、非正規 従業員と呼び名は様々であるが、これらの労働者には同様に適用される。しかし労働組 合は、常用工、本工、正規従業員を中心に組織されているケースが多いので、その意味 で、労働組合法は、これらの正規従業員のためのものであるという実態は見逃すことは できないのではないか。  現在、日本の労働組合、労働者は新たな試練に直面しているといっても過言ではない 。資料で配布したが、現在の大企業が「強い大企業」を目指すという意味で、例えば電 機であれば企業横断的に様々なジョイントが行われ、かつ企業内においてもその組織再 編が行われているところである。  他方、資料の2頁の上段の表を見て頂きたいが、これは平成6年に中小企業庁が日本 の下請け構造を詳細に調査をしてまとめ上げたものである。中小企業の労働運動を行う 者としては、自動車産業にせよ電機産業にせよ、第三次下請若しくはその少し上あたり を組織の対象として運動を行ってきたところである。しかし統計をみてみると下請中小 企業の比率は製造業の数値であるが、年々下がってきている。今日では下請け構造とい うよりは、取引構造ともいうような関係に変化してきている。まさに一つの完成品メー カーを頂点とした重層的な下請け構造というものではなく、オール日本の製造業として 、どのような取引関係を成り立つのか、構築すべきかということに時代は移っていると 考える。  これまでは、現場の労働者を中心として個人交渉の限界を集団交渉を行うことにより 補い、権利を勝ち取ってきたが、これからは集団交渉ではなく、労働者個人の選択の機 会や決断の機会、あるいはそれにともなう自己責任が求められる場面が多くなるのでは くはないか。労働組合として組合員の選択の自由をどうやって保証するのかを考えなけ ればならないし、個々の組合員が不利な決断を迫られたとき、労働組合としては、労働 協約などによりそうならない約束を取り付けておかなければならない状況になっている 。  つまり集団的労使関係と個別的労使関係との垣根を越えて、組合員の個人交渉の保証 と異議申立を重視した一体一の労使関係が成立しうる足場の存在が要求されている。そ うした意味でこれからの労働組合の機能が変化する中で、労働委員会制度を利用する立 場である組合としても、その在り方の検討は関心事項でもある。本研究会が発足してい るということについて大いに賛成申し上げる。そして現在の労働委員会を見た場合、紛 争解決機関である裁判所とは別に設けられている意味を再確認する必要があるのではな いか。それは新たな流動的な労使関係上の問題を十分処理できる機能をもつ機動的な行 政機関が、われわれにとって必要であり、その意味で労働委員会の審査制度に対する期 待は大きいと言わざるを得ない。  そこで論点についていくつか申し上げたい。  まず論点1の期待についてであるが、労働委員会への申立は、労働者にとってみれば 日常使用している言葉で表現すれば良く、法律的な専門用語を使用する場面が、裁判と 比較して少なくてすむという点で、非常に使い勝手が良いのではないか。加えて法的構 成を求められることもない。要は救済すべき内容があれば受理されるというものであり 、組合員が独力で争うこうとも可能である。ただし昨今のように労働法、その他関係法 令に関わる事件が大変多くなってきている状況を踏まえれば、極めて専門性が要求され ることとなる。そうなると代理人としての弁護士が必要になるケースも多々ある。  つい最近の例ではあるが、労側が弁護士を代理人に選任しないで申立を行ったが、し かし使用者側から次々と団結権を侵害するような行為があり、それらの行為に対して地 裁に損害賠償を請求する訴訟をしたところである。その場合、どうしても専門的知識が 必要になり、弁護士の選任が必要とならざるを得ない。また印紙代、送達費や訴訟費用 も必要となる。その点、労働委員会ではそれらの費用が不用であり、廉価性があるとえ る。ただ申立書は、再審査の場合は、確か10通だったと思うが、本来は正本、副本の2 通で良いのではないか。今はコピーが簡単にできるので、この点は運用の問題であるの でいつでも改善できるのではないかと思っている。  また、現行の労働委員会制度には、バックペイはあるものの、裁判所のような仮処分 的な制度がないが、この仮処分に変わりうるような制度を設ける必要があるのではない か。検討して頂きたい。  次に最近の使用者の不当労働行為は、実に悪質・巧妙になってきていると感じている 。容易なことではその不当労働行為意思を立証することはできない。その間に使用者は 、できるだけ調査・審問を引き延ばし、労働組合の切り崩しを行うケースがある。そう いったケースをどう防止するのかを検討する必要がある。単に審理期間を短縮すれば良 いというのものはない。事件によっては、多少の時間を費やすにしても、完全に救済さ れるという中身が重要となるものもある。  次にあらゆる事件を通じて、履行確保の措置に法的な強制力が伴っていないことが問 題である。ただしこれは、現行の履行確保勧告が機能していないという趣旨ではない。 現行の制度でも予想外の成果をもたらすことはあり、たとえ強制力がなくとも、使用者 が従うこともある。このため積極的に活用するとともに、さらに強化する意味で、強制 力の担保を付与することを検討願いたい。  申立人の要求する救済の中身が、真に紛争を解決するものであるかどうかは重要であ る。救済請求をした内容が、請求した限度においてしか、回復できていないということ が多いのではないか。審問を行い、結審後命令を受け取ってみて、申立人は「たったこ れだけか。」という印象をうけるケースがある。事件というは、審理を続ける中で新た に救済されるべき事項が発生することがある。どうもその辺が労働委員会の使い勝手を 悪くしている部分があるのではないかと感じている。  次に解雇事件の場合、労働者の生活もあり、また雇用保険給付との関係もあり、迅速 な解決が求められるところである。解雇事件は、不当労働行為の意思の有無、解雇の正 当性という点について、複雑な事件になればなるほど背景事情がないと立証することが 難しい。その意味で背景事情の主張は重要となるケースがある。公益委員は、その辺り を見抜く眼を持つことが肝心となる。生きた事件の審理を通じて得られた眼力が必要で あり、その判断基準こそが、労働委員会の専門性ではなかろうか。  労働委員会に申し立てられた事件は、いうなれば労働者の人格が否認された事件でも あり、知恵とセンスがないと、救済することなどできないと考える。公益委員の方は社 会経験、研究実績があるという点においては、不当労働行為を見抜く眼はかなりあると 考える。論点の4のニに関係することであるが、そのセンスはさらに磨くための研修を 行うことは検討に値するのではないかと考える。  論点2の和解については、一概に述べることは難しいが、労働委員会は原状回復主義 をとっていると考えられるので、100%労働者側が勝訴した命令であっても、その結果 は不当労働行為のなかった状態に戻ることでしかない。裁判所のように損害賠償はない のだから、使用者のやり得的な事態が発生するのではないか。その場合、内容によって は和解が選択される。また将来の労使関係が安定すればという観点から、泣く泣く和解 に応じることもある。労働委員会が調整と準司法的判断という機能を併用しているので 、労働組合としては、結果的に命令により団結権が保障されるのか、それとも金銭的和 解をするのか、ということを選択することとなる。和解の在り方の難しいところではな かろうか。  私見ではあるが、再審査での和解成立事案について、その後の労使関係がどうように なったのかを年2回、組合を通じて追跡調査を行っている。その経験からすると、労働 委員会での和解に要した期間の長短ではなく、紛争となった経緯・原因が、真に解決し ているかどうかが、その後の労使関係に影響を与えている事項となっていると感じてい る。  論点の3の審査手続きについてであるが、なるべく解雇事件については1年を目途に 解決していただきたいと感じている。審査遅延の原因としては、新規申立の増加、事件 の複雑化、証人審問の増加、人的制約などがあると考えられる。そこで一つの方法とし て、ハの関連であるが、代理人が複数選任されている場合、「差しつかえ日」というの がよくでてくる場合があり、これなどは全員の日程が合う必要はなく、運用をかえてい くべきであると考える。検討して頂きたい。  次に再審査事件については、例えば北海道や九州の事件について再審査の申し立てが 行われれば、当然費用がかさむことになる。東京一局のみが再審査機関ということでは 少々使い勝手が悪いような気がする。そういう面で出張を行い集中的に調査・審問を行 う制度があっても良いのではないか。ただ公労使の各委員は非常勤であることから、な かなか難しい点とは思うが、2回程度は地方に出向き審査を行うことを検討してみても 良いのではないか。  次に制度の機能発揮という点では、現実的対応としては、立法的な改正の議論を行う というよりは、運用面な改善をもって突破口を求めることも必要である。この研究会は 、問題点の是正点は何か、改善のため何が必要であるかという点を検討するためのもの であると考えるが、我々の立場からすれば、改善のキーとなることは、制度を運用する 側の人、特に公益委員にあるといわざるを得ない。前回の公益委員のヒアリングの際に 、労使参与の役割の観点から同様の指摘をされている公益委員がいたが、最終的な判断 は公益委員に委ねられており、公益委員の資質、審査指揮が重要であろうと考える。  次にニの関連であるが、労働委員会の審査について、申立側が情緒的な主張・立証を 繰り返しているということを裁判官経験者の方から指摘を受けることがある。労働委員 会は、民事訴訟法や刑事訴訟法に認められるような原則を厳格に導入しているわけでは ないので、直接的に不当労働行為を受けた労働者に立証義務を課する法的根拠はないと 私は考える。団結権の侵害という事件の性格上、どうしても背景事情、間接証拠を積み 重ねざるを得ず、多少情緒的になっても致し方ない。そういう意味で裁判所と労働委員 会とでは根本的に違うということを認識した上で審査を行ってもらいたいと常々感じて いる。  次に論点4のロの合議の在り方についてであるが、事件のすべての記録を公益委員が 読んでいるとはとても信じられない。したがって合議において集中的に議論するという ことであるならば、小法廷方式の導入は少なくも中労委においては必要ではないかと考 える。  労働委員会の三者構成は、司法改革における労働参審制だとか陪審制などの制度の先 取りしていると感じている。不当労働行為という一つの現象を公益のみならず労使双方 の役割を認め、双方の視点も考慮するというすばらしい制度である。これからの雇用関 係の変化をみてみると、その機能は絶対に必要であると考える。  最後に抜本的な見直しの方向については、冒頭で申し上げたが、労使関係はどこの国 でも、その国における雇用の仕組みを基盤としていると考える。  これまで日本の集団的労使関係は、雇用の生涯的保障を基盤とした上に労使関係の理 念やあるべき姿を描いてきたと思うが、労働移動が自由となり雇用の流動性が高い産業 社会へと移行する中で、これからの労使関係は、一体一の人間関係の上に組み立てなけ ればならないと考える。労働委員会の抜本的な課題は、労働組合法の問題とも重なるこ とにもなろうかと考えているので、慎重な議論を行っていただきたい。 ○ ありがとうございました。3名の労働者委員の方から意見を伺いましたが、これを  踏まえて意見交換を行いたいと思います。 ○Q 争点整理を迅速に行うように事務局体制の強化が必要であるとの説明があったか   と思うが、争点整理は事務局の役割であるとの認識なのか。 ○A 公益委員の役割が大きいのではないか。事務局が争点整理を行うにせよ、公益委   員の指揮の下に行うこととなる。もちろん事務局も、ただ文章上整理するというこ   とではなく、専門性がないとなかなかうまくいかないのではないか。そういう意味   であまりにも事務局の入れ替えが激しいのは問題ではないか。申立件数が少ないと   ころは、本当にそれができるのかどうか、などいろいろな問題があると思う。でき   れば2年に1回というような入れ替えではなく、5年に1回くらのスタンスにした   方が、専門性が確保できるのではないか。 ○A 今の点であるが、地労委では調査の段階で職員が出張して調査を行うことが多々   あった。単に書面上だけで調査するのではなく、当事者の主張を聞き、整理された   ものが公労使の三者の前に出される場合と、単に文章上で整理されたものとでは、   始まりが違うと考える。そういう面で最初の調査は重要だと考える。 ○Q 不必要な審問もかなりあるのではないか。そのことを審査委員の審査指揮との関   係でどのように感じているのか。また対処方法は何かあるのか。 ○A 審問では、すべてそうだとは言わないが、名前の確認から始まり、例えばいくつ   か転職を繰り返している場合、どうして辞めたのかなど、申立事項とは関係のない   ことを延々と尋問する代理人がいたりする。これは特に使用者側の代理人が多く見   られることがあるが、2時間という限られた時間を、ほとんどそんなことに費やし   てしまうことがある。具体性をもった結果を求めようとすると次回審問を開催しな   ければならないことになる。審査委員は争点を明確にし、それに関わる尋問のみを   行うよう指揮する運営が求められるのではないか。それを参与委員の方からいうと   公益委員の権威がなくなってしまう。後の打合せのときは、いろいろと注文を付け   るが、なかなか要領を得ない方もおられる。    もちろん注意をされる公益委員もいるが、相対的には代理人の質問はすべて許可   してしまう審問が多いのも事実である。私は労働者委員なので、使用者委員からす   ればまた別な視点があるのかもしれない。    それに対する対処の方法であるが、公益委員の改選にあたり、労働側の委員とし   ては、このような点で問題があるのではないかということを、会長や事務局に伝え   ることもある。 ○A 関連したことであるが、私の経験でいえば、裁判所では争点整理を徹底的にやる   が、それをやるのは書記官室だと思う。労働委員会では、使用者か労働者か、不当   労働行為の意思があったかないか、その因果関係だとか解雇が正当であるかどうか   などが争点となるが、それをどのように整理するかは、やはり労働法の専門家が委   員として入っていた方が良いと考える。    加えて事務局の専門性についてであるが、やはり何年も事件をたくさんやり、何   年も経験を積んだ職員は、実にみごとに整理をしていただける。中労委では複数の   班があり、事件ごとにある程度整理されたものが出てくるが、それを見てこれはキ   ャリアのある方が整理したものだな、これは単事務的に整理したものであるな、と   いうことの仕分けができる。この辺りは、均質にしていただきたいと感じている。 ○Q 裁判所での争点整理は、書記官は常に裁判官の指示を受けながら連携して行い、   出来上がったものは必ず裁判官がチェックすることとしている。確かに支配介入や   差別事件については、間接事実から判断せざるを得ない部分もあり、そういう意味   で背景事情の主張・立証は重要であるが、ただ関連性があるものとないもの、強い   ものと薄いもの、いろいろあると思う。何が本当の直接的な事実を立証する上で必   要な間接事実であるか、そこをきちんとリストアップすることが、まさに争点整理   だと考える。    そういう形で審査指揮を行うのが公益委員の役割であると考えるが、審問の場で   公益委員が指揮を行う場合、果たして参与委員が指揮に対応していただけるかにつ   いて危惧がある。かえって審問が混乱するという指摘もある。その点はいかがであ   ろうか。 ○A 審問に入る前には打合せを行っている。論点を含めた打合せ結果を意識して審問   の進め方を整理していただければ良いのではないか。 ○A 三者構成とはいえ、公益委員の進め方が審問の在り方に大きく影響する。少なく   とも不当労働行為の有無を見極めることができる眼をもつ方が公益委員に選任され   てしかるべきだと考える。最初から経験しながら覚えますという態度では、進め方   さえもはっきしない、打合せのときでさえ進まないという現状がある。そこで一番   の被害を受けるのは労側の申立人である。    そういう意味である程度は労働法学者の方が委員として選任される必要があるの   ではないだろうか。 ○A 委員からの指摘があったが、適切で合理的な証拠を集めて整理することがベター   ではあるが、しかしこれは立証する側にとって大変難しい。和歌山カレー事件でも   状況証拠の積み重ねて審理を進めていく場面があるのではないか。不当労働行為事   件も間接証拠をどれだけ積み重ねて、重層化したものの中から重要なものを抜き出   すという立証の仕組みにならざるを得ないのではないか。立証責任は申立人がある   わけだが、そのあたりの難しさは、専門性をもった公益委員からすれば、もどかし   いということが多々あるのかもしれない。 ○ 関連性のあることを主張・立証することが重要である。 ○Q 制度論についてお尋ねしたい。ヒアリングの中で中労委と地労委との関係につい   て、少し意見が異なると思ったが、労働委員会制度の中で、再審査制度をとる意味   について、メリットデメリットについてもう少し具体的に説明願いたい。 ○A 制度をアカデミックな立場から否定するものではなく、解決が遅延化するという   一番の原因が再審査にあるのではないかと考える。一つの事件について再審査で異   質な判断がなされるということは、あまり考えられないのではないか。したがって   不服があるのであれば、労働委員会とは別な機関で審査されても良いのではないか   。    実態論からいえば、再審査に上がった事案について、いわゆる「たなざらし」に   なっているような事件がなきにしもあらずという意見もある。なるべく早く命令を   発出し、履行を確保するという観点から、同じことを同じ機関で審査することはい   かがなものかという観点で申し上げた。中労委の役割を否定するわけではない。全   国的重要事件については中労委で審査することとしたらどうかと思う。裁判所のよ   うに地裁、高裁、最高裁というようなシステムを取る必要はないのではないかとい   う気持ちを持ってい。 ○A 事件の内容によって、どこの機関に救済を求めるかを決めざるを得ないのではな   いか。不当労働行為で実損が生じている事案で、命令が発出されても不服を申し立   てて履行しないようなケースは、地裁で争うのも一つの方法である。どちらを選ぶ   かはユーザーが選択すれば良いと考える。長くかかるということが一番の危機感を   抱いている点であり、再審査の申立の場合、中小の労働組合が旅費等の費用を負担   しながら再審査の申立ができるのかという危惧と、そもそも中労委の再審査では長   期化するという不安がある。中労委で審議したものについては審級省略が可能とし   て頂きたい。中労委で再審査されたにもかかわらず地裁で審理されるのであれば、   最初から地裁に提訴する。 ○A 中労委前置主義である。なぜかというと労働委員会制度は行政機関であるので、   やはり再審査制度により、その内容についての信頼性が担保されるべきではないか   。    裁判を受ける権利はそれぞれが持っているわけなので、裁判を受けることは自由   であるが、その場合には、中労委命令については審級省略を行い高裁で審理すべき   ではないかと考える。現行では、最高裁で差し戻しがあった場合は、事実上7審制   もあり得ることだと思うが、要は労働委員会が行政機関であり、信頼に足りる機関   であるということを認識してもらうことに集中すべきである。 ○Q もう一点であるが、参与委員の役割については、現状のままで良いとの意見であ   った思う。司法制度改革の中では、労働参審制度が議論がなされている。この状況   を踏まえて、公益委員の在り方、参与委員の在り方について別な意見があればお聞   かせ願いたい。 ○A 審査委員の権限の強化は、迅速性とか履行確保の点で必要であるが、権限をもっ   た審査委員を参与として補佐するということになると、参与委員の方でもそれ相応   の意識を持つことになると思う。    判定機能については公益委員の合議制で最終的に判断されることとなるが、私と   してもこういう考え方でやってもらいたいということを審査委員にも申し上げるし   、事務局にも申し上げる。審査委員のリードする部分を強くして頂くことは重要で   はないかと考える。 ○Q 自分の説明の趣旨は、判定過程に対して労使委員が積極的に関与するというイメ   ージはおよそ考えられないのかということである。例えば労働委員会の在り方とし   て、和解の役割と判定の役割の兼ね合いは難しいが、裁判所の参審制の議論はもと   もと、労側、使側が、不当労働行為の判定に際して、自らが公益的な立場にたって   判断するといことである。    そのようなイメージについては、労働委員会の労働者委員としてどのような考え   をもっているか。 ○A 率直に申し上げて判定時の対応というのは、労側なら労側としての意見を陳述す   るわけである。参審制のように労使が公益委員的な立場で議論ができるかというと   、どうしても使用者委員は使用者の、労働者委員は労側の意見をいわざるを得ない   こととなるのではないか。労使という委員の立場からすれば、公益委員的な立場で   臨んでいるわけではない。労側の委員であるから、やはり労側の立場にたって主張   するし、それが役目だと感じている。だからこそ、和解のときなどは説得力がある   のではないか。 ○A 今のシステムで良いと感じている。和解については大いに関与できるわけであり   、和解が成立しないということであれば審問を行い判断されることなので、参与が   積極的に関与すべきことではないと考える。意見陳述の機会は担保されているので   、今のままでよい。 ○A 同意見である。 ○A 将来の労使関係を考えて、どういう命令を下すかというかについては、まさに労   働委員会の裁量の部分でははいか。そこにどう加われるかということであるが、中   労委でも議論したが、事件が始まる前、そして審問に入った場合に、中間あるいは   結審の際に意見交換を行う必要あるのではないかと考える。その場での意見につい   ては守秘とするようなことにする。運用でやれるところはどんどんやるべきではな   いか。 ○Q 参与委員の役割の重要性についてもう少しお聞きしたい。和解において非常に大   きな役割を果たしているとのことであるが、公益委員が行うより有効であるのか、   そうだとすればその理由はどこにあるのか、具体的に聞きたい。    また、ヒアリングの中での説明にもあったが、最近の労使関係の変化、具体的に   は、個別的労働関係紛争の色合いが強まっていく中で、参与委員の役割はどうなる   のかということをお聞きしたい。 ○A 和解は、労使の委員がいなければできないのではないか、と考える。 ○A 職場での安定を基本としながら、お互いの立場で議論するから和解ができる。労   側は労働者委員を信頼するし、使側は使用者委員を信頼する。そのような信頼関係   があるということも三者構成の一つといえるのではないか。だから和解が成立する   のではないか。公益委員の判断だけでは説得には限界があるのではないか。 ○Q 事実の見方と説得の二つの側面があるということなのか。 ○A 事実の見方は、公労使三者委員で一致をさせる必要がある。そして、その後にこ   ういう方向で説得をしてみようということではないか。三者がバラバラでやるわけ   ではない。和解にもっていくチャンスがあるかどうかを経験則上で判断する。 ○ 和解案の文言で、和解ができる場合とできない場合があるということは事実である  。公益委員が仮にこういう和解案でということを示したとき、今ひとつ双方が納得し  ない場合、それではどこの部分を強調するかはそれぞれの置かれた立場で変わってく  る。そういうときに公益委員が考えた和解文書の句読点を受け止めて、労使参与委員  が、当事者を説得するかという場面がよくある。   労使委員はいくつもの事件の調査審問を経験しているし、労務管理も体験もしてい  る。そのような経験を通じて、判断する眼を養っているので、その豊富な経験で説得  することが、双方合意することへとつながるのではないか。 ○ 公益委員の方から、和解の意向について両当事者に打診するよう求められることも  ある。参与委員がいなければ和解は困難である。 ○Q 和解の話しであるが、和解にタイムリミットを設けることは反対との意見であっ   たが、いつでも和解に移れるということを最後まで担保しておきたいということな   のか。 ○A 実務面でいえば、審問を2回ほど行って、和解で解決するか否かを判断する場合   がある。個人救済という側面が強い事件については和解での解決を考えなくてはな   らないが、そうではなく、労働組合の組織論的な部分で和解をするかどうかについ   ては、これは労働組合運動にかかわることなので和解などせず、命令を発出しても   らった方が良いのではないかと思う場面もある。このため和解を常に選択枝として   取っておいて、タイムリミットはケースバイケースで決められるべきものと考え   る。 ○A 地労委の和解のチャンスと中労委の和解のチャンスは、異なると思う。地労委   は、命令が出る前だが、中労委は地労委命令が出た後に行うこととなり、和解の契   機は異なると考える。 ○Q 合議の在り方についであるが、ヒアリングでの説明の中に「小法廷方式」は消極   的との発言があったが、その場合、合議だとか命令の起案について、迅速に処理さ   れるためには、どのような方策が可能だろうか。 ○A 当地労委では月2回合議を行っている。それから事務局職員の専門性が高く、審   査委員の指揮の下、迅速に処理しているので、小法廷方式の必要性は今のところ感   じていない。当地労委では比較的早い段階で命令が出ている。簡単に命令を出しす   ぎではないかという批判も頂いているようなところでもある。 ○ 再審査との関係で、例えば北海道にいる当事者の利便性を考慮して、出張調査・審  問などを行うことも検討すべきであるとの説明があったが、委員は非常勤であり、そ  の点かなり障害があると考える。裁判所では、テレビ会議システムを利用している。  数がないとなかなか予算がとれないと思うが。そういことも可能だろうか。 ○Q ヒアリングの中で労働委員会は三者構成なのだから、その点、裁判所とは違うと   の説明があったが、それは主に和解の機能であるのか。あるいは命令の機能である   のか。 ○A 労働委員会では不当労働行為を扱うわけであるが、三者構成の一員である労働者   委員は、過去現在を含めて労働組合活動に携わってきている方である。使用者委員   も経営者として様々な労務管理に携わってきている方である。こういう専門性もっ   た方が参加をしているということである。その専門性を生かして、命令を発出する   わけであるが、この仕組みは非常に民主主義的だと考える。絶対権力に欠けている   という意見もなくはないが、他方で裁判所に対する提訴もできるわけなので、労働   委員会の仕組みは良くできているのではないか。 ○Q 労使関係・雇用関係の変化の中での労働委員会の位置づけを説明頂いたが、イメ   ージとしては、個別の労働紛争的な事案が増加している現状を念頭においている説   明だと感じたところである。そうなるとむしろ裁判所で扱うような問題であると感   じたが、ユーザーが裁判所でなく、なぜ労働委員会を選択するのかについて、もう   少し具体的に聞きたい。 ○A 労働委員会は、使い勝手が良い機関であるといことではないか。 ○Q 裁判所も使い勝手を良くしなくてはならない。 ○A 個別労使関係を広く含有する交渉権が成り立たないと、個々の労働者の権利を守   るということは難しくなってきているのではないか。インターネットでの相談を行   っているが、相談内容を見てみると労働組合のある大企業に勤務する方からの相談   が多い。企業内にある労働組合に相談した方が良いという形で誘導はするが、そこ   の部分の解決システムが労使間においてできあがってない。そこからいろいろな問   題が生じている。これを一つの社会現象として捉えれば、労働組合もそれに対して   どういう姿勢をもって解決にあたるべきか考え、変わってくると思う。変わってく   れば当然労働委員会の使い方も変わってくるのではないか。 ○A 組合を結成するときに経営側の圧力がかかる場合がある。圧力を受けたとはいえ   、労使関係は今後も継続するので、判定的な解決を求めるというよりは、今後の労   使関係を踏まえて和解による調整的解決を求めて申立を行う場合がある。そういう   時に労働委員会の機能が発揮されるのではないか。 ○A 同意見である。職場の安定を基本としつつ、判定的命令を発出する機能は、裁判   所には真似できないのではないか。労働委員会がなくなったとき、職場の安定をど   うするのかという危機感をもっている。 ○Q 参与委員の判定における役割に関して、ヒアリングの中の説明では、審問前の打   合せで争点を考えるとのことであったが、合議に対する意見開陳とは別に、審問後   において、例えば証人の証言についてこう思う等、実際上の意見交換をすることは   あるのか。 ○A 行っている。 ○A 打合せを行いながら進めている。 ○A 組合側に痛い問題と、逆に使用者側に痛い問題が出ることがある。このようなと   きは正直にいえば困ってしまう。しかしながら公労使のコミュニケーションが次の   審問や調査の時に生かされるのは事実である。 ○Q 公益委員の専門性ということについて、中には他の委員と経験が乏しい委員がい   て、調査審問を通じて覚えるというのでは遅すぎるとの指摘があった。それはどう   も選任の方法に問題があるのではという指摘があったが、それについて、どこに問   題があって、どうやったら改善できるるかについてもう少し意見を伺いたい。 ○A 三者構成の中で、公益委員がその役割を十分に果たし、不当労働行為の有無を見   極める必要がある。全てが法学者である必要はないが、ある程度、バランスを取り   ながら審査を行える体制を整えるべきではないか。 ○Q 常勤であるべきか、それとも非常勤の方が良いのか。 ○A 非常勤で足りているのではないか。 ○A 一概にはいえないが、基本は人間が好きな人と、そうではなく言葉だけで判断す   るような人との違いを感じるところである。 ○ 選任も人柄や人間性をチェックするということは一番難しいかもしれない。 ○ 頭の切れる方は、先をどんどん読んでしまって、そこから結論をだそうとするが、  これは危険であると感じる。 ○Q それは計画審理ということとは違うのか。 ○A 結論が先に出てしまうという意味である。 ○ 予定した時間になりましたので、他に意見なければこれで終わりにしたい。  労働者委員におけれましては、多忙のおり貴重な意見を賜り、御礼申し上げます。本  日の議論は今後の研究会の参考とさせて頂きます。ありがとうございました。研究会  委員の方は事務連絡がありますので、今しばらくお残り下さい。(労働者委員退席) ○ 加藤委員におかれましては、この度、公害等調整委員会の会長に就任することとな  りました。本日の研究会を持ちまして退任することとなります。 ○ 次回の日程について事務局から説明願います。 ○ 次回は7月17日10時を予定してます。日本経団連と使用者委員のヒアリングですが  、相談しました団体としての日本経団連と使用者委員の両者一緒で結構であるとのこ  とでしたので、そのような形でヒアリングを行いたいと考えます。 照会先 厚生労働省政策統括官付労政担当参事官室 法規第二係 村瀬     TEL 03(5253)1111(内線7752)、03(3502)6734(直通)