02/06/14 薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会 平成14年6月14日議事録         薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 議事録 1.日時及び場所   平成14年6月14日(金) 14:00〜   厚生労働省専用第18〜19会議室 2.出席委員(16名)五十音順  ○池田 康夫、 上田 志朗、 大澤 真木子、風祭  元、   菊地 博達、 岸田  浩、 北村 啓次郎、相楽 裕子、   柴川 雅彦、 清水 弘之、 首藤 紘一、 田代 眞人、   土屋 文人、 堀内 龍也、◎松本 和則、 渡辺  亨   (注) ◎部会長  ○部会長代理   他 参考人2名   欠席委員(2名)五十音順   黒川 雄二、 埜中 征哉 3.行政機関出席者   黒川 達夫(安全対策課長)、金子 和代、 日下田 俊彦、   関野 秀人  他 4.備考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○事務局  安全対策課の関野でございます。まだ若干定刻よりも前でございますけれども、一応 御予定の先生方がお集まりでございます。ちなみに松本部会長はお昼ごろありました地 震の関係で途中で新幹線が止まりまして、遅れるという連絡が入っております。30分以 上掛かるという御連絡を受けておりますので、見えられるまでの間池田先生に代理をお 願いいたしまして、始めさせていただきたいと思っております。  まず、本日はお集まりいただきましてありがとうございます。今現在御出席の先生方 が14名でございまして、あともう一名田代先生がお見えになっておりませんが、一応審 議会規定に沿います定足数に達しておりますので、この会は成立しております。これ以 降の議事進行は池田先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○池田部会長代理  それでは本日の部会を始めさせていただきます。今お話がありましたように、松本先 生がいらっしゃるまで私が進行役を務めさせていただきたいと思います。早速議事に入 りたいと思いますが、お手元に本日の議事次第があると思いますけれども、本日の部会 の流れとしては、全体として厚生労働省においてこれまで取り組んできた市販後安全対 策の状況、あるいは今後より一層市販後の安全対策を強化充実するためにどういう取組 をしたらいいかということについて、事務局から説明を受けた後、それについて先生方 と率直な意見の交換をしたいということでございます。   このうち議題1は「医薬品等の市販後安全対策について」ということで、これにつ いては先生方にも資料を既に配付済みでございます。また、議題2は「医薬品等の安全 対策に関する新たな取組について」ということで、この議題についての議論を活発にす るために本日はお二人の御専門の先生をお呼びしております。お一人は慶応義塾大学医 学部教授で大学病院薬剤部長であります谷川原祐介先生でございます。よろしくお願い いたします。もう一方は社団法人日本薬剤師会の常務理事であり、また御自身自らが千 葉県の柏戸病院に勤務しておられます藤上雅子先生です。藤上先生はお仕事の関係で3 時ごろにおいでになるということでございます。このお二人の先生には医薬品の安全性 に深くかかわりあっていらっしゃいますので、議題2にとどまらず議題1についても是 非御意見を頂きたいと思います。  実は今日は盛りだくさんの議事がございまして、当初2〜4時という予定にさせてい ただきましたけれども、場合によっては少し時間が超過するかもしれませんので、その 辺は御寛容をお願いしたいと思います。松本先生にあとをしっかりまとめていただきた いと思いますが、よろしくお願いいたします。  それでは早速議題に入りたいと思います。事務局の方から本日の配付資料の確認をお 願いしたいと思います。 ○事務局  それでは事務局より配付資料の確認をさせていただきます。お手元に座席表の次に配 られていると思いますが、クリップを外して2枚ほどめくっていただきますと、「配付 資料一覧」というものがあるかと思います。これに書きましたものが今日御用意いたし ました資料の一覧でございます。これに沿いましてお手元の資料を一つ一つあるかどう かということを確認させていただきます。  まず、資料1は「平成13年度の安全対策について(まとめ)」でございまして、左上を とじたもので合計5枚ほど御用意させていただいております。資料2は「医薬品の使用 上の注意の改訂について」でございまして、横長の表になっております。二か所ホチキ ス留めをしておりまして、15ページにわたる資料でございます。資料3はオランザピン 緊急安全性情報でございまして、この4月16日に我々の方が対外的に発表いたしました 資料ということで、右上の「(照会先)」のところに私と山川の名前が書いてある資料で ございます。これは合計で9ページになっております。資料4は「市販直後調査対象品 目」でございまして、横長の表になっている5ページにわたる資料でございます。  申し訳ございませんが、この資料の中に一か所訂正がございまして、2ページの一番 の左の欄に一般名が「フェンタニル」というものがございます。合計で8つの製品が書 かれておりますが、そのうち「協和発酵工業」が供給いたしております品目に関しまし て、「商品名」のところに「デュロテップパッチ2.5mg」等と書いてあると思いますが、 その「2.5mg」の次に会社名である「協和」が正式な販売名の中には入っておりますの で、この「協和」という文字が抜けております。おわびいたしまして、訂正させていた だきます。「5mg」、「7.5mg」、「10mg」のいずれも最後のところに「協和」という 言葉が付きます。申し訳ございませんでした。  次が資料5-1の「医療安全推進総合対策について(概要)」という二枚紙でございます。 資料5-2はちょっと分厚い資料でございますが、「医療安全推進総合対策」ということ で、この4月17日に出されたものでございます。次が資料6の「医薬品副作用症例報告 の伝送について」という横長の表でございまして、一ページに絵が書いてございます。 この資料は7ページでございます。資料7-1は「平成13年9月27日」の日付の入りまし た「医薬品情報提供のあり方に関する懇談会最終報告」という縦長の資料でございまし て、11ページにわたるものでございます。資料7-2は「添付文書/使用上の注意等記載要 領」というもので、1ページに絵が書いてあります合計6ページにわたる資料でござい ます。それから資料7-3は「厚生科学研究費補助金(医薬安全総合研究事業) 平成13年度 総括研究報告書(抜粋)」というタイトルの付いたもので、41ページにわたる資料でござ います。次は資料7-4の「医療の第一線における医薬品適正使用と現在の医療用医薬品 添付文書が内包する問題」というタイトルの一枚紙でございます。続きまして資料8-1 は「薬事制度見直し(案)の概要について」というもので、9ページにわたる資料でござ います。資料8-2は「薬事制度見直し(案)の概要 参考資料」という二か所でとじてある 横長の資料でございまして、8ページほどにわたるものでございます。資料9-1は「一 般用医薬品の指定医薬品解除について」という資料で、9ページにわたるものでござい ます。それから最後でございますが、資料9-2は「H2ブロッカー含有一般用胃腸薬に ついて」というもので、5ページにわたっております。以上が配付資料でございます。 そのほか委員名簿、座席表等をお手元に置かせていただいていると思います。  なお、本部会の情報公開法上の取扱いでございますが、一応会議自体は非公開で行わ せていただいておりますが、今御紹介いたしました資料に関しましては、この部会が終 わりましたら公開という取扱いにさせていただきたいと思っております。それからいつ もと同じですが、録音をとりまして最終的に議事録を作成いたします。その後委員の先 生方に内容を御確認いただいた上で、公表という運びにさせていただきたいと考えてお ります。なお、委員名については当初2年間非公開という扱いになりまして、2年たっ た後発言者の氏名も併せて公開ということで、審議会のルールに沿った取扱いを考えて おります。  それからこの部会終了後、業界紙関係の方から取材をというリクエストがございまし て、この点については事務局である我々の方で対応させていただくという予定が入って おります。以上でございます。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。委員の先生方はただいま御説明のありました資料はすべて おそろいでしょうか。もしございませんでしたら、御連絡いただきたいと思います。よ ろしいですか。それでは早速議題に入りたいと思います。「医薬品等の市販後安全対策 について」という議題でございますが、これはお手元にありますように(1)〜(4)の四つ の項目がございます。それぞれ資料があるわけですけれども、まず最初に事務局の方か ら「(1)平成13年度の安全対策(まとめ)」〜「(4)市販直後調査の実施状況」の四つにつ いて、まとめて御説明いただきたいと思います。まず最初に安全対策のまとめについて お願いできますか。 ○事務局  それでは事務局の方から資料1〜4までをまとめて、順を追って御説明させていただ きます。まず資料1についてでございますが、こちらの方は従来より主に「医薬品・医 療用具等安全性情報」ということで情報提供をさせていただいているものの内容につい て御説明させていただきます。安全性情報につきましては、古くは昭和48年からずっと 公表させていただいているものでございますが、資料の2ページを御覧いただきます と、上の表の「(ア)医薬品」というところで、平成3〜13年度にわたります報告数の合 計は企業報告とモニター報告を合算したもので、右から二つ目のカラムに「報告数合計 」という数値が記載されているところでございます。こちらの方を御覧いただきます と、平成3年度は約5,000件の報告数でございましたが、それ以降年度を追うごとに報 告数が増加してきているところでございます。ちなみに平成13年では約26,500件という 報告数を受理しているところでございます。  こういうことから年々報告数が増加しているということと、資料1の4ページを御覧 いただきますと、こちらの方はこれまで厚生労働省の方でいろいろな安全対策を講じて きたものの件数の年度の推移を表したものでございます。下から3行目のところの「使 用上の注意の改訂」というところをずっと年を追って御覧いただきますと、平成7年度 は約250件の使用上の注意の改訂を行っているところでございましたが、それ以降年度 を追うに従いまして改訂件数も増加してきているところでございます。平成13年では約 300件の改訂を行っているところでございます。  こういった安全対策上のいろいろな改訂頻度や措置の件数が増えてきたことに伴いま して、安全性情報については従来は隔月に発行してきたところでございますが、昨年の 6月からは基本的には月刊化することにいたしたところでございます。この月刊化に伴 いまして、更にその内容についても一部掲載形式等を改めております。従来は解説等が 加えられなかった重大な副作用の改訂等につきましては、具体的には症例の掲示という ことを行ってこなかったわけですが、月刊化の記載形式の見直しに伴いまして、以降は 重大な副作用の改訂につきましても具体的な症例を提示し、その内容について解説を加 えさせていただいているという、内容についての改訂もさせていただいているところで あります。  続きまして、副作用等の報告数の推移についてでございますが、先ほど御説明させて いただきましたように、2ページの上の表を御覧いただきますと、年を追って報告数が 増加しているというところで、特に企業報告については平成13年度まで年を追って増加 してきておりますし、モニター報告についても平成12年度までは数としては増加してお ります。13年度はちょっと数値が減少しておりますが、この原因については、現時点に おいて確固たる理由を探し出すことが実際のところ難しいかなと考えてはおりますけれ ども、大幅な数値の減少ということではないかと見て取れるかと思います。それから報 告件数全体として見ましても、平成12、13年度と大きな数値の変化はないように感じて いるところでございます。  それから3ページのところでございますが、こちらは「(3)安全対策上の措置」とい うことで、平成13年度に実施しました承認の取消し、効能・効果の制限等、一連の措置 に対する医薬品と医療用具についての件数を列記したものでございます。平成13年度に おきましては、例えば緊急FAX、あるいはドクターレターの配布指示は実施しており ませんでした。そして先ほども申し上げましたが、「医薬品・医療用具等安全性情報」 への掲載につきましては年間50件、使用上の注意の改訂につきましては305件の改訂を 行っているところでございます。一方、医療用具の方も同様の項目で2件、5件という 改訂を行っているところでございます。  続きまして4ページを御覧いただきますと、こちらの方は先ほど御説明させていただ きました使用上の注意の改訂と共に、「『医薬品・医療用具等安全性情報』への情報掲 載」という下から4番目のカラムを御覧いただきますと、平成7〜12年度までは約20件 前後の数値を示しておりますが、平成13年度になりますと50件ということで、約2倍強 の数値の増加が認められております。こちらは先ほど安全性情報の記載内容の見直しと いうところでも御説明させていただきましたように、重大な副作用の改訂に伴いまし て、その情報の中に具体的な症例を列記したということから、こちらの数字が増加して いるというところでございます。  資料1の5ページでございますが、こちらは安全性情報の具体的な掲載内容について お示しさせていただいているところでございまして、「重要な副作用等に関する情報」 と、あとトピックスといたしましては、166号では「『医薬品・医療用具等安全性情報』 の月刊化について」、それから「ジャクソンリース小児用麻酔回路と小児・新生児用気 管切開チューブの組合せについて」、そして「硫酸マグネシウム・ブドウ糖とマグネシ ウム中毒について」、翌167号では「サリチル酸系製剤の小児に対するより慎重な使用 について」等を掲載させていただいているところでございます。具体的な記載事項につ きましては、以降ここにお示しさせていただいているとおりで、解説は省略させていた だきます。以上が資料1についてでございます。  続きまして資料2でございますが、こちらは前回の当部会で御報告させていただきま した改訂以降、平成13年9月19日〜本年5月1日までに使用上の注意の改訂を指示した ものについての一覧でございます。改訂内容についてページを追ってずっと御覧いただ きますと、目に付くところといたしましては、2ページのところにございます一般用医 薬品の漢方薬による肝機能障害について一律見直しているところでありますとか、ある いは7ページを御覧いただきますと、エックス線造影剤について一連の改訂の指示を行 っているところでございます。特に肝機能障害や皮膚粘膜眼症候群のような内容につい て追記を行ったという内容になっております。  また10ページを御覧いただきますと、血栓溶解剤でありますウロキナーゼ等について 使用上の注意の改訂を行っております。改訂内容といたしましては、出血性ショックや 心破裂、不整脈に関する内容を「重大な副作用」の項に追記したといった内容でござい ます。それから次の11ページの下のところでございますが、抗てんかん薬のフェニトイ ン・フェノバルビタールにつきまして、「遅発性の重篤な過敏症状」というタイトル書 きで「重大な副作用」の項に記載させていただいているところでございます。ずっと御 覧いただきますと、肝臓系、心臓系、あるいはショックにかかわるといったようなとこ ろが主に改訂されているというふうに御覧いただけるかと思います。以上が資料2につ いてでございます。  続きまして、資料3は本年4月16日に報道発表等をさせていただきましたオランザピ ンの緊急安全性情報についてでございます。1〜3ページまでが報道用の資料というこ とで作成させていただいたもので、その後の通し番号の4〜7ページまでが実際の「緊 急安全性情報」、いわゆるドクターレターというイエローペーパーになるものでござい ます。最後の2枚が翌日に新聞等で報道されました内容の切り抜きでございます。  オランザピンにつきまして、「緊急安全性情報」を発出するに至った経緯、並びに実 際に行われました対応等について具体的に御紹介させていただきますと、オランザピン はもう既に海外では広く販売されている薬剤でございまして、国内においては平成13年 6月から販売されていたものでございます。この薬剤につきましては、我が国におきま す治験においては糖尿病性昏睡等の重篤な副作用は認められてはおりませんでした。と ころが、海外においては既に高血糖等について副作用の報告がございまして、具体的に は承認時の添付文書に高血糖に対する注意喚起がされていたところでございました。と ころが、我が国におきまして、発売以降約10か月間に重篤な高血糖あるいは糖尿病性ケ トアシドーシス、糖尿病性昏睡等の三つの副作用が合計9例報告されまして、そのうち 2例が死亡に至ったものでございました。そこで対応といたしまして、「緊急安全性情 報」を医療機関に企業側から配付するように指示するとともに、使用上の注意を改訂し たところでございます。  使用上の注意の内容につきましては、2ページの(2)の(2)のところに記載させてい ただいておりまして、「禁忌」の項に「糖尿病の患者及び糖尿病の既往歴のある患者に は投与しないこと」、また「警告」欄に「投与中は血糖値の測定等の観察を十分に行 い、異常が認められた場合には投与を中止し、インスリン製剤の投与等適切な処置を行 うこと」、更に「投与に際し、患者及びその家族に対し、当該副作用について十分に説 明し、服用中の口渇、多飲、多尿、頻尿等の異常に注意し、このような症状が見られた 場合には直ちに服用を中断し、医師の診断を受けるよう指導すること」といったことも 「警告」欄に追記するといった措置を行ったところでございます。主な改訂内容につい てはこういった内容になっております。今御説明させていただきましたような内容が実 際にドクターレターにも記載されておりますし、あと根拠になりました症例がドクター レターの方では合計4症例掲載されているところでございます。先ほど申し上げました ように、最後の2枚目は記者会見後の翌日17日の朝刊各紙に本改訂についての報道がな されたというところでございます。  最後でございますが、資料4の市販後直後調査の件についてでございます。委員の先 生方ももう既に御存じのことかと思われますが、市販直後調査とは治験段階におきまし ては一定の限られた患者に対する情報しか基本的には得られないというところがござい まして、その一方で薬が市販された以降は治験時に比べ投与される患者数も多くなりま すし、その患者背景等も多様になってくるわけでございます。そういった患者さんに実 際に新薬が投与された場合に、どのような有害事象が出てくるであろうかということに ついてはまだ未知の段階であろうかと思われます。そういった状況を踏まえまして、市 販直後により詳細な情報収集ということで開始されたものが市販直後調査で、昨年の10 月より実施されているところでございます。具体的には、新医薬品を対象といたしまし て、販売開始後6か月間製造業者等の医療情報担当者が医療機関に出向きまして、安全 性情報をより重点的に収集し、また適正な使用を医療機関に呼び掛けるといったこと。 そして収集された情報につきましては、速やかに情報を分析し、またその結果を医療機 関へフィードバックするといったものが市販直後調査の内容になっているかと存じてお ります。資料4でございますが、こちらは昨年10月から施行されました市販直後調査の 対象となったものを列記したものでございます。対象となります医薬品といたしまして は、原則としては新有効成分を含有する医薬品、新投与経路の医薬品、新効能の医薬品 などが具体的には該当するわけでございまして、表にお示しさせていただきました合計 28成分、59製剤というものが現在対象になっております。これらの製剤、成分の実際の 市販直後調査の結果については、まだ実際に調査が終了しているものはございません で、これからそういった情報がこちらの方に報告書の形で寄せられるかと思われます し、この市販直後調査の実際の個々の対応については、そういった状況を踏まえ対応し ていく必要があるのではないかと考えている次第でございます。以上でございます。             ── 説明途中、田代委員着席 ── ○池田部会長代理  ありがとうございました。ただいまの資料1〜4について、医薬品等の市販後安全対 策に対するこれまでの取組についてのまとめを報告していただいたのですが、委員の先 生方から御質問、あるいは御意見を伺いたいと思います。まず最初にそれぞれの報告の 内容について、先生方から事務局の方に質問がございましたらお願いしたいと思います が、いかがでしょうか。堀内委員、どうぞ。 ○堀内委員  堀内ですが、オランザピンについての9例の報告というのは、平成13年6月に発売さ れてから4月まででしょうか。その後、安全性情報が出てからの報告というのはどのく らいあるのでしょうか。何を言いたいのかといいますと、例えばオンダンセトロンのと きもそうだったのですが、安全性情報が出るとうちにもあったというような形で報告が 出てくる可能性があると思いまして、全体として今どのくらいの報告になっているかと いうことを知りたいのですが。 ○事務局  「緊急安全性情報」を出しました結果、やはり掘り起こしということで、従来よりも 該当する副作用についての報告数が増加する傾向があるところがございまして、オラン ザピンに関してもそういった傾向が認められてはおりますけれども、申し訳ございませ んが、ちょっと具体的な数値までは現在のところ把握してはおりません。ただ、常にこ ちらの方に報告が上がってきておりますのでその傾向が認められまして、症例等を見て おりますと高血糖等で報告している症例があることはあります。 ○池田部会長代理  よろしいですか。実際にこの「緊急安全性情報」を発出した後、直近のものは分から ないでしょうが、その後にそれがどういうアウトカムをもたらしたかという仕組みにつ いて少し御説明いただけますか。 ○事務局  お答えさせていただきます。その後の報告症例の中では、薬との因果関係が認められ ている死亡例の報告は今のところございません。ただ、報告されている症例の中では、 血糖値の検査を改めてやってみたところ高血糖が判明しまして報告されている症例があ ることから、臨床現場での事前の予防的な血糖値の測定についての認識が高まったと事 務局の方では考えております。 ○池田部会長代理  どうぞ。 ○安全対策課長  一般的に「緊急安全性情報」が出されまして、そのような安全対策がどう奏効したか についての御評価の問題だと思います。現在のところ、残念ながら体系的な方法、ある いは方法論は確立されておりません。しかしながら、例えば小柴胡湯の使用と間質性肺 炎のように何回か「緊急安全性情報」が出されているものについては、ラインリストで 定期的に、かなり数が多いものですから例えば半年後とか1年後とかで見まして、それ で減っていないというところでまた改めて注意を喚起するという手だてを用いている と、現在こういうような感じでやっております。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。そのほかに委員の先生方から…、どうぞ。 ○風祭委員  風祭でございます。オランザピンの「緊急安全性情報」の内容とその発行については 全く異論はございませんし、内容についてはもちろん事務局から私のところに意見を求 められ、資料も全部見せていただきました。しかし、この安全性情報の発行の審議の際 に、精神科の医者がだれも入っていないのですね。この薬は精神科の医者だけが、分裂 病以外に使うことはない薬でございまして、その場合に「緊急安全性情報」を出すこと を決める場合には、実際に使っている精神科医を是非関与させていただけるようにして ほしいと思います。ある病気に薬を使って、それに対しての副作用、例えば肝障害や腎 障害が出ますと、副作用に関連する委員ばかりが出て「情報」が出されます。オランザ ピンは実際には精神科医以外の人はほとんど使わない薬ですので、今後こういうことが あった場合には副作用側の委員だけではなくて、使用側の診療科の委員も関与させてい ただきたいと思いますので、その点を要望いたします。 ○池田部会長代理  事務局の方からその点について…、実際にはそういう専門の先生の御意見は聞いてい らっしゃるのですよね。 ○事務局  御指摘いただきましたように、事前に専門の委員の先生方に御意見を聴取させていた だき、その結果を副作用検討会の場で御紹介いたしまして、御審議いただくという形を 採っております。それでまた場合によりましては、専門委員の先生方に検討会の中に御 参加いただきまして、御議論いただくというケースもございますし、風祭委員の御指摘 のとおり、今後必要に応じて専門委員の先生方に実際に議論の場に入って検討していた だくという手法も採らせていただきたく存じております。 ○池田部会長代理  風祭委員の言われたとおり、やはり場合によっては専門の委員の先生に入っていただ くことが適切かと思いますので、よろしくお願いいたします。そのほか何か御意見ござ いますか。どうぞ。 ○渡辺委員  国立がんセンターの渡辺ですが、市販直後調査についてちょっと伺いたいと思いま す。これは市販直後調査6か月間が義務付けられているわけですが、その6か月間の調 査で確認された事項やそういうものをどういう形でフィードバックするというか、どう いうステップを踏んで公開するというか、どこにどういうふうに還元するかという手順 について教えていただきたいと思います。 ○事務局  お答えさせていただきます。市販直後調査で収集されました副作用の報告について は、従来どおり副作用の検討を経て、必要なものについては使用上の注意の改訂をし、 情報伝達を行うようにしております。また、それ以外にも市販直後調査の結果について 一部の企業が自主的に情報提供をしておりますように、まだ因果関係が明確ではなくて も幾つか集まりつつある情報について、まとめて情報提供をするような体制を採ってい る企業もございます。その二つの方法で情報伝達をさせていただいております。 ○池田部会長代理  渡辺委員、引き続きどうぞ。 ○渡辺委員  薬剤の種類にもよりますが、例えば6か月の期間というのはかなり短期間の急性副作 用などは分かるけれども、中期、慢性的な副作用がもし6か月間では十分観察できなく て、もう少し調査の期間を延ばした方が良さそうだというような、引き続き延長しなけ ればいけないという判断が出てくる場合があると思うのですが、そういうときはどうな のでしょうか。ある程度調査の結果がまとまってから振り返ってみると、もう少しやっ た方がいい、期間を延ばした方がいいということになった場合があるとすれば、そうい うときの対応はどういうふうにお考えですか。 ○池田部会長代理  事務局の方から、どうぞ。 ○事務局  今先生の方から御指摘いただきました点に関しては、一応市販直後調査というものは その名のとおり市販された直後に6か月という期間を切りまして、医療機関への積極的 な働きかけを行い適正使用を促すという観点で、新薬を対象といたしまして行っている 業務でございます。それ以前の問題といたしまして、当然すべての品目に関しまして市 販後調査といいましょうか、企業から見れば市販後業務というものがかかっておりま す。ですから、6か月間をもって市販直後調査というものは一つの区切りを迎えますけ れども、当然企業といたしましては、その後製品を供給し続ける限りは副作用の情報収 集、適正使用情報の提供といった行動は行っていく義務がございますので、その中で慢 性的な症状、あるいは副作用等については従来どおり拾い上げていくということで考え ております。むしろ昨年10月に導入いたしました市販直後調査というものは、正に市販 された直後に起こり得る急性的なもの、あるいは緊急時に対応しなければならないもの に敏感に反応できるような、あるいは医療機関の方があらかじめそういったことを十分 承知した上で薬剤を使っていただくという観点で行っております。ですから、基本的に はいろいろ慢性的な症状等も含めまして、フォローアップに関しましては、当然のこと ながら従来の市販後調査の中で行っていくものだと考えております。 ○池田部会長代理  よろしいでしょうか。田代委員、何かございますか。 ○田代委員  今の渡辺先生の御質問と同じなのですが、例えばRSウイルスの治療剤やインフルエ ンザの治療剤というのは季節ものなので、1月に承認されていますけれども、これから 半年やってももうほとんど何も出てこないのではないかという印象があるのですが。 ○池田部会長代理  そうですね。事務局の方で何かございますか。田代委員がおっしゃるように、非常に たくさん使われる時期がある薬剤については、特別に何かお考えでしょうか。 ○事務局  そういう季節的な特殊性のあるものについては6か月というだけではなくて、適切な 期間延ばして行えるように承認時に検討し、指示させていただいているところでござい ます。 ○田代委員  この二つについては、具体的にはどうなっているのですか。 ○池田部会長代理  具体的に6か月というところから何か期間を…。 ○田代委員  4ページの一番上と二番目と…。 ○池田部会長代理  4ページにある二つの抗ウイルス剤ですね。 ○事務局  ただいま御指摘いただきました二品目についても6か月に限らず適切な期間、情報が 収集できる調査期間を指示して延ばしているところでございます。 ○田代委員  ですから、いつからいつまで延ばしているのでしょうか。もし分かったら教えてくだ さい。 ○事務局  申し訳ございません。ただいま手元に資料がございませんので、確認いたしましてお 伝えさせていただきます。 ○池田部会長代理  どうぞ、課長。 ○安全対策課長  この市販直後調査の期間ですが、まず販売というポイントについては、例えば企業が 何月何日から販売しますと、通常の場合薬価基準に収載された後、そこからスタートと いうことになります。御指摘いただいた点でございますが、本当に重要なポイントでご ざいまして、冒頭御説明申し上げましたとおり、具体的には去年の12月に薬価収載にな ったもので今年に入って販売が開始されたものが今走っている半ばであるということ で、制度は何事もそうですけれども、初めのうちは実践の場に出ますと更にこうした方 がいいという点も幾つか出てまいります。そういった枠組みの中で、改めてこの部会に 問題点を御提示いたしまして、改善のための御指摘等を頂きたいと思っております。ま たRSのお薬につきましては極めて時期が限られているものでございますので、また改 めてその目で観察を続けまして、必要性があれば御報告申し上げたいと思います。 ○池田部会長代理  昨年10月から市販直後調査ということで、新しい試みが始まったわけですが、今田代 委員がおっしゃられたような季節によって非常に使用状況が変わってくるものとか、あ るいは私もちょっとお聞きしたかったのですが、最近は条件付きで承認される薬剤が結 構ございますよね。そういうものと通常の審査を通って承認されたものとの区別とか、 非常に大まかな基準として市販直後6か月というのはよろしいと思うのですが、個々に よって少し考えていってもいいのかなという感じがしないわけでもないと思います。そ のほかどなたかございますか。どうぞ、堀内委員。 ○堀内委員  市販直後調査というのは、重篤な副作用をできるだけ早く集めて注意喚起をしようと いうことが大きな目的だと理解しておりますが、例えば既にアジスロマイシンは市販直 後調査の対象になっているものだと思うのですけれども、先ほど添付文書の改訂の中で 市販直後調査についてはまだ報告がないというお話でしたよね。既にこれは市販直後調 査を反映した添付文書の改訂と考えてよろしいのでしょうか。要するに添付文書の改訂 とかそういうものに、市販直後調査はどういうように反映されるかという手続きについ てお聞きいたします。 ○池田部会長代理  事務局の方から何か…、どうぞ。 ○事務局  御指摘の件に関してですが、実は市販直後調査の結果が終了したものがないというこ とでございまして、実際に市販直後調査の実施された品目の自発報告等は、薬事法で決 められました報告期限内に報告するようになっておりますので、重点的に調査された結 果というものは自発報告等によって速やかに対処できると考えております。委員の御指 摘のような改訂については、正に一つの市販直後調査の成績といいますか、成果である とも言えるかと思われますし、また実際にグリベックカプセルについても市販直後調査 の対象になっておりまして、こちらの方も近々改訂する予定でございます。こういった ものが市販直後調査の結果として現れてきているのではないかと考えております。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。よろしいですか。本日最初の議題としてこれまで取り組ん できた市販後安全対策についての厚生労働省からの報告と、それに対する先生方の御質 問を頂いたわけですが、議題2の「医薬品等の安全対策に関する新たな取組について 」、これが今日先生方のいろいろな御意見をお伺いしたいところでございますし、もし この議論の中で議題1の御質問があればまた戻ってきたいと思いますので、議題2に移 りまして議論を続けたいと思います。議題2についてはお手元にありますように、(1) 〜(4)の四つのそれぞれ独立性の高い話題がございますので、これはまとめてというよ りそれぞれ個別に先生方に御議論いただきたいと思います。それでは最初の「(1)医薬 品等による医療事故防止のための方策」について、事務局の方から資料に沿って御説明 いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○事務局  それでは事務局の方から御紹介させていただきます。医療事故が相次いでいる中、医 療安全の確保ということで医療安全対策の目指すべき方向性を示すために、昨年5月よ り厚生労働省におきまして、日本医学会の森会長を座長として「医療安全対策検討会議 」を設置させていただいております。今年の4月まで計12回の検討会議の結果を踏まえ まして、この4月17日に「医療安全推進総合対策」という報告書がまとまりましたので 御紹介させていただきます。  資料5-1に沿って御説明いたしますが、「2 今後の医療安全対策の方針」といたしま して、医療政策の中で医療安全対策というのは重要課題であり、その中ですべての医療 関係者に積極的にこの問題に取り組んでいただきたいというようなことがまとめられて おります。また、今まで医療安全対策といいますと医療従事者個人個人の問題、あるい はそういう対策として取り組んでまいったわけですが、今後医療システムとして体系的 に安全対策に取り組むことが重要であるというようなことで報告書がまとめられており ます。  「3 ポイント」でございますが、一つは「1 医療機関における安全対策」というこ とでまとめられておりまして、基本的にはそこに書いてあるような体制の整備を医療機 関として行っていただきたいということであります。1)でございますが、すべての病 院については(1)〜(4)まで…、(1)としまして院内において安全管理指針というものを 作成していただきたい。(2)としまして事故等の院内報告制度を確立していただきたい。 (3)としまして安全管理医委員会、よく医療機関において薬事委員会等の委員会がござ いますが、それと同じような形で医療安全に対して積極的に取り組んでいただく委員会 を設置していただきたい。(4)としまして安全管理のための院内の職員研修を充実して いただきたいということがまとめられております。  2)といたしましては、医療機関の中でも特に先進医療を担っております特定機能病 院、あるいは医師の研修等を行っております臨床研修病院に対しては、更に体制を整備 していただきたいということで、(1)〜(3)まで報告されております。(1)は医療安全管 理者、リスクマネージャーと呼ばれておりますが、これについてできれば専任の管理者 を置いていただきたい。(2)は医療安全というものに専門的に取り組んでいただく部署 として、医療安全管理部門という部門も置いていただきたい。あるいは(3)としまして は、相談窓口として患者さんからの相談、苦情というものを受け付けるような窓口を置 いていただきたいということでございます。特定機能病院におきましては、これら三つ の事項を今後特定機能病院として認める要件にしていくと、そのような方向で進めてい くところでございます。  続きまして2ページの「2 医薬品・医療用具等にかかわる安全性の向上」につきま しては、医薬品あるいは医療用具の供給元である企業、あるいは国に対して、このよう なことをしていくべきだろうということで報告書がまとめられております。医薬品につ いては販売名や外観の類似性といったものを客観的に評価する手法の開発、また医療用 具におきましては人間の行動や能力その他特性を考慮した設計の考え方、「ヒューマン ファクターエンジニアリング」というように呼ばれていますが、ユーザビリティーを考 慮した設計を開発段階から行っていただきたいということが報告されております。  「3 医療安全に関する教育研修」といたしましては、今後こういった医療安全とい うことを学校教育の中で取り入れていただきたいのと同時に、今後医師、薬剤師、看護 士等国家試験の出題基準の中にも医療安全という項目で位置付けていきたいということ が報告されております。  「4 医療安全を推進するための環境整備等」といたしましては、一つは特定機能病 院等における院内の相談窓口の設置ということが報告されておりますが、そのほかにも 二次医療圏ごとに公的な相談体制を整備していくということで、医療安全相談センター というようなものを都道府県に置いたらどうかということで報告されております。また 医療安全に有用な情報の提供ということで、ヒヤリ・ハット事例、インシデント事例の 収集を全国的に展開したらどうかと。厚生労働省におきまして昨年10月より特定機能病 院、国立病院、診療所等約300弱の施設でインシデント事例の収集事業を開始している ところでございますが、これをもう少し医療機関を広げたらどうかということが報告書 にまとめられております。  続いて資料5-2について少し御説明いたします。26ページになりますが、「2-2 医薬 品・医療用具等にかかわる安全性の向上」というところで、今回「使用の安全」という 言葉を使って報告されております。従来の医薬品等による副作用等の物の安全というこ と、プラス医療従事者とのかかわりにおいて生じる問題というものが「使用の安全」と いう形で報告されております。今後医薬品・医療用具等を供給する企業においては、従 来からの副作用等の「物の安全」確保に加えて、「使用の安全」確保のための製品の開 発・改良、関連情報の提供等に積極的に取り組むべきだということで、少し安全性とい うものを幅広く考えた形で報告書はまとめられております。以上でございます。            ── 説明途中、藤上専門委員着席 ── ○池田部会長代理  ありがとうございました。医療安全推進総合対策ということで、医療安全対策検討会 議で4月17日に報告をまとめられたわけですが、ただいまの総合対策の概要について、 何か御質問、御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。特に医薬品・医療用具等 にかかわる安全性の向上ということで、医薬品の販売名や外観の類似性を客観的かつ定 量的に評価する手法の開発とか、医薬品情報の提供等の推進というようなことがここに うたってあるわけですが、何か先生方からございますか。どうぞ、谷川原委員。 ○谷川原専門委員  オブザーバーですが、一件お伺いしたいと思います。今池田先生がお話しになられま したように、確かに医療機関において安全対策をしなさいということは、いわゆる病院 のシステムとして、若しくはヒューマンエラーを防ぐためのいろいろな仕組みとして大 事なことです。しかし誘因の一つとして、もともと非常に紛らわしい形状や名称とかが 入ってきたときに、やはり幾ら注意してもある確率でミスというのは起こってくるわけ でして、その際にそういったことに関する手法を推進というふうに書かれているのです が、そういうデータベースを作るまで待たなければいけないのか。日々いろいろな問題 がもう起こっていて、具体的に申しますとある日突然キシロカインのアンプルが変わっ てイノバンそっくりになったとか、最近では抗生物質のペントシリンがアミカシンにそ っくりになったとか、メーカーの方は事前にノーティスなしである日突然製品の形状が 変わったりして、他社のものと非常に似てしまったとか、そういうことは一医療機関で 努力のできない部分なのです。自分たちでミスをしないようにというのは、病院の中で それなりの安全対策や啓蒙とかはいろいろできるのですが、製品自体がそういう問題を 包含している場合は個々の医療機関では対応できなくて、もう少し行政的なところから 指導という形でしてくださらないかなという考えを日ごろから持っておりまして、その 辺りを是非よろしくお願いしたいと思います。何となく我々が現場で見ていますと、ど うやら製薬企業の方のもう一つのファクターは製造コストでありまして、製造コストを 下げるにはできるだけ製品を共通化した方がコストが下がる。ただ、そうすると識別性 が悪くなるという問題があるのではないかということを日ごろからちょっと感じている もので、お願いいたします。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。非常に貴重な御意見だと思いますが、事務局の方は特に何 かコメントはございますか。実際に現場の方からすると、これだったら間違えるのも無 理もないというような類似性のあるものがかなりあることは確かだと思いますが。どう ぞ、事務局。 ○事務局  現在データベースの開発につきましては、医薬品の販売名、それから外観の類似性と いうことで、販売名についてはブランド名の類似性を客観するようなデータベースの開 発というものを今厚生科学研究の方で行っているところでありますし、外観については 画像的な写真や寸法も実際に入れたものの表示、それからアンプルやバイアルそのもの の外観の画像をデータベース化して、今後企業が新たに開発するようなものについて は、そういうものを活用しながら類似性を避けていただくようなことを考えておりま す。  医療用具につきましても、ユーザビリティーということを考慮したような、なるべく 使用者が間違えにくいような構造というものを最初に考えていただくということを進め るところでございます。また、当然我々の方も個別にインシデント事例やヒヤリ・ハッ ト事例というものを収集しておりますので、医療機関において間違えやすいというもの の情報もこちらである程度得ているものもありますし、今後得ていくことになると思い ますので、その辺については危険度の割合に応じて個々に企業を指導していきたいと考 えております。 ○池田部会長代理  どうぞ、堀内委員。 ○堀内委員  今の点は大変重要な点だと思うのですけれども、情報を収集する、例えば医療機関で これとこれは類似していて医療過誤を起こしそうだと、ヒヤリ・ハットの報告がたくさ ん出てきているというようなことがあるわけです。例えばインシュリンなどでもミリ数 が違うところがあるとか、大変重篤な過誤に結び付くような事例が出てきていると。そ れを今のところは個々にメーカーに変えてほしいというような形で、ある面でお願いを するというようなことで、実際に変えてもらったことがあります。そういう情報を一か 所、例えば厚生労働省のどこかに収集する窓口を造って、そこで集中して機敏に対応し ていただくというシステムが必要ではないかと常日ごろ考えているのですが、いかがで しょうか。 ○池田部会長代理  これは外観を変えるときは特に届出は必要あるのですか。どうぞ。 ○事務局  外観の場合、例えば表示を変えるときは我々との相談の中で工夫ができると思います が、容器になってきますといろいろまた安定性がどうかという問題も絡んでくる場合が ございまして、場合によっては審査サイドとの調整ということが必要になってきます。 それに応じまして、瞬時に対応できる場合とやはりどうしても時間が掛かってしまう場 合が出てくるのはやむを得ないと思います。 ○池田部会長代理  今の堀内委員の御意見ですが、各病院からそういうヒヤリ・ハットを含めたいろいろ な情報がある程度一か所に集まってきて、それを基に対応するということについてはい かがでしょうか。そういうことですよね、先生。 ○事務局  今現在インシデント事例はある程度国立病院と指定機能病院だけに限定しているよう なものではございますが、報告書の指摘にもありましたとおり、今後医療機関を広げる ような形で幅広くそのような情報を集めるということを厚生労働省としても行っていき たいところであります。また、医薬品あるいは医療用具の業界、横のつながりといいま すか、そういったところにお願いしているのは、各企業から得られた情報を業界を通し て全体として何か物の改善につなげていっていただきたいというようなことでございま す。 ○池田部会長代理  どうぞ。 ○事務局  若干補足させていただきます。我々の方でヒヤリ・ハット事例を集めました後、まず いろいろな対策を考える必要があるわけですが、それを考えていますとすぐにできる場 合とそうでない場合がいろいろあるということで、医療関係者に対してまずその事実を 知ってもらうことがなかなかできなくなってしまいます。対策を講じた後、何か対外的 なアナウンスメントをさせていただくということであるとどうしても時間が掛かってし まいますので、我々は二段階で考えています。まず収集した情報を速やかに公開してい こうと。それによって我々は何を期待しているかといいますと、その中身に関してのよ しあしといいますか、質の問題はあるにしろ、個々の医療現場でこういった事実が起こ っているのだと。個別の品目名も併せて公開させていただくことにしていますので、あ る品目に関してこういったことが事実現場で起こったということをまずお知らせしよう と思っております。それによりまして何が期待できるかといいますと、よしあしあれ ど、こういうことが起こっているので少しは気を付けようかなという気を少し持ってい ただくということであれば、若干医療に携わっていく中で違うのかなということで、ま ずそういう対応をしまして、その後やはりこれは改善していかなければならないという ものがあれば、そこは個別にどういう工夫ができるのかということを考えさせていただ くというイメージで対策を考えております。 ○池田部会長代理  土屋委員、どうぞ。 ○土屋委員  先ほどの類似性につきましては、厚生科学研究を担当しているものでついでにこの場 で少し御報告いたしますが、まず基本的に類似性を客観的にどのように評価するかとい うことについては、数値で客観的な指標として10種類の指標を使いましてすべて数値評 価するということが既に完成しております。そういった中で例えば今二つのやり方を考 えていますが、一つは新しい名前を入れたときにその評価がどうなるかということ、も う一つは、従来既に出てしまったものに対してあるものとあるものの組合せというもの が出たときに、それと同じような数値評価のものが一体どれくらいあるのかというもの が出るようなデータベースを今作成しております。現実といたしましては、そういうよ うなデータで評価しますと、実は今我が国で出ている薬の組合せだけで2,800万通りご ざいまして、これが実際部分的には動かせてやっていけるのですが、それをいつも瞬時 にうんぬんするとなるとこれはなかなか難しいので、今そこを再構築中というところで ございます。  ちなみに名称といいますと平均5.2文字の長さしかないもので、2万品目もあるもの がそもそも似ていけないのか、そう居直ることはないですが、似ないということがもと もと技術的に難しいということでございます。ですから、ここはそういった2万幾つも あるものに商標というものが、しかもこれは商標を取っていないものもございますけれ ども、商標があるものについて言えば、基本的にそれを合理的に制限するというのであ れば、それはそれなりの別の方法を一方で考えて…。例えば販売名は先発品しか持たな いとか、そのような考え方というのも一方で持っておかないと、これはこれから先商標 としてはどんどん増えていくわけですから、対策的に客観的に評価は幾らでもできるの ですけれども、そこは一つ大きな課題としてできるだろうということでございます。  ただ外観の類似性に関しては、そもそも外観が類似しているというのはなかなか難し いのは、一つには表現の仕方をどこでどう客観的に見るのかということでございます。 まず今一応基礎データとして全医薬品の画像データが入るようにということでやってい る最中でございますが、その基本データができますと、基本的に設計者がこういうもの があるから母集団が分かれば、こういった似たようなものはどういうものがあるのか と。今はそれが全く分からずに…、ところが変えなければいけないという声のためにわ ざわざ変えると。むしろそういう意味では今が一番危険でございまして、今まではそう いうことは無視しておりましたので変えなかったのですが、医療機関で変えなければい けないという声で、変え出したらお互い訳の分からないことで変え出したのか、出会い 頭の事故が随分出てきてしまうということからいいますと、今が非常に危険な時期でご ざいます。ですから、そこら辺につきましてはやはりもう少し深い研究も…、似ている ということについて、実は明るさであるとか照明のことであるとか、そういう基本的人 間工学の方でやるような実験をやろうとしても、世の中に全くデータがないというのが 現状でございます。今後そういった面の基礎的なデータというものも全体として取って おかないと、これは対策を採るというよりはまず最初は注意喚起をせざるを得ないとこ ろと、対策を採るためには根本的な基礎データをもっと取るようにしないと難しいとい うことでございます。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。それでは堀内委員、簡単にお願いいたします。 ○堀内委員  臨床の現場ではとにかく間違いが実際に起こっているわけです。具体的にこういうも のと事例は幾らでも出てくるわけですよ。インシデント・アクシデントレポートが出 て、我々は毎月それを評価して防止策を考えていますけれども、実際に起こっているそ れをいかにして減らそうかというのが本当に頭の痛い問題ですので、これから研究して うんぬんではなくて、どこか集中したところでそれを集めるとかなりの事例が集まって くるだろうと思います。それで具体的にそれが起こらないような緊急の対策を考える必 要があるだろうというふうに私は思います。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。どうぞ、菊池委員。 ○菊池委員  菊池でございます。今のお話の中で一番最後のところに関係したことかも分からない のですが、実際に我々がこういう医療過誤を見たときに一番困るのは、それで患者さん がどうなるのかということなのです。ですから、過量投与してしまった場合にはどうい うことが起きて、それに対してどう対処すればいいのか、あるいは誤用投与ですね。例 えば我々でいえば静脈注射をするべき薬を硬膜外に入れてしまったと、これは放ってお いていいのか、あるいは対処しなければいけないのか、そこら辺のデータがほとんどな いのです。皆さんもそうかも分かりませんが、私自身もいろいろなことをやってきまし たので、あれはこれぐらいだったら大丈夫だとか、様子を見ようよということで、大体 我々は知っている経験からいろいろとできるのです。しかし実際問題、例えば微量で10 時間掛けて入れなければいけないものをボーラスで入れてしまったというものがやはり 院内で出てくるわけです。そのときに我々はどうやって対処していいかということが分 からないので、やはり安全に予防するということと、それから起きてしまったときにど ういうことをすればいいかという情報もやはりこの中に組み入れていただきたいという のが、実際の現場で働いている人間からすると必要な情報だと我々は考えております。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。非常に貴重な御意見を頂きましたので、是非この御意見を 基にまた新たな取組を始めていただきたいと思います。それでは時間も限られています ので、第二番目の項目に移りたいと思います。「(2)医薬品の副作用等情報の収集方法」 について、資料6で御説明いただきたいと思います。 ○事務局  それでは資料6の説明に移らせていただきたいと思います。一枚目の絵の方で御説明 いたします。医薬品副作用症例というのは医薬品製造業者等から厚生労働省へ報告され ておりまして、平成8年の薬事法改正により薬事法第77条の4の2により企業の方に義 務付けられております。一方、日米EU医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(I CH)というものがございまして、こちらの方では副作用の症例報告の取扱いについて 議論が進んでおりまして、この個別の症例を電子的に送受信するためのデータ項目、そ れから電子的な仕様について議論がされておりまして、既にその内容が示されていると ころでございます。その内容につきましては、厚生労働省の方からも和訳したものを既 に都道府県を通じて業界に示しております。この電子的な報告につきましては、平成15 年秋からの実施を考えておりまして、大体のイメージとしましてはこのページの図にな ります。副作用の情報というのは、従来どおり医療機関から製薬企業に情報提供される か、若しくは自発的に医薬品安全性情報報告書として直接厚生労働省の方に報告されて おります。企業の方は医療機関から得た情報を国に報告していくわけですが、この際 に、現在のところ紙とFDによりまして副作用の内容を報告していただいているところ を、今後は電子的なデータとしてメールにファイルを添付するという形を今のところ想 定しておりますが、そのような形で電子的に報告するということを検討しております。 ICHで取決めが行われましたこの基準というのは国際的な標準ということで、国内外 の企業同士、若しくは海外の企業であれば海外の当局、アメリカであればFDAに、日 本の企業が厚生労働省に報告するのと同じように、アメリカの企業はFDAに電子的に 報告ができると。もちろん規制当局同士でも電子的なデータのやり取りができるという のが大きなイメージとなっております。こういった電子的な報告は、国内においては企 業から厚生労働省に対する報告についての運用を平成15年度の秋から目指しておりま す。  そのほかに副作用情報の提供なのですが、集められました副作用症例のデータという のは厚生労働省内のデータベースに蓄積されまして、その内容が医薬品機構の医薬品情 報提供システムの方に一部提供され、その医薬品機構のホームページのところから医療 機関、それから一般の国民が自由に閲覧できるというような環境を整備する予定でござ います。  副作用の個別の症例に関しましては、現在担当委員に一症例一症例見ていただいてお りまして、企業から報告していただいている紙の報告書の写しを委員の先生方に見てい ただいております。今後電子的な報告になりますと、電子的なデータそのものは大変見 づらいものですので、そのためのイメージとしまして、2ページ以降に厚生労働省で受 け付けたデータを打ち出したときの様式を示させていただいております。先ほど述べま したICHでデータの項目が決まっておりまして、この決められた項目すべてがこの様 式の中のどこかしらに必ず入っているというような形でございます。当然企業からデー タが不明であるとか、若しくは調査できなかった部分については、この様式の中には反 映されないという形で、入力されている内容が出力されるという形のものでございま す。現在のところはこのような様式を想定しておりますが、なるべく現行のものと変わ らないような形で案を作成しております。ただ、実際に見ていく担当者若しくは担当の 委員の方からは十分御意見を伺い、企業の方からもいい意見を頂きまして、この様式に ついて改善点がございましたら、速やかに対応していきたいと考えております。以上で ございます。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。委員の先生方にはいつも副作用報告の検討会でお世話にな っているわけですが、副作用症例報告の情報の収集について、あるいは報告書の在り方 について、何か御質問、御意見はございますでしょうか。上田委員、どうぞ。 ○上田委員  一番最初の図なのですが、海外製薬企業から厚生労働省につながるネットが間接しか ないということで、この場合海外製薬企業と日本の製薬企業とが、例えば一つの薬品に 関して非常にいいコンタクトを取っていて連絡がついているのならいいのですが、それ がついていない場合。要するに海外での処置と日本での処置が異なるということを時々 聞くことがあるのですが、そういうことに対しての海外製薬企業と厚生労働省の関係と いうのはどういうふうに考えたらよろしいでしょうか。 ○事務局  現行の副作用の報告というのは、国内の症例だけに限らず海外の症例も報告するよう 義務付けられております。ですので、この図でいいますと、もし海外で起きた症例がご ざいましたら、当然海外の企業が情報を入手すると。そうすると、国内の提携会社に対 して海外の企業から電子的な情報伝達が行われると。その上で国内の企業から厚生労働 省の方に情報が入るというものを想定しております。 ○池田部会長代理  何か追加はございますか。よろしいですか。ということで、海外の企業と日本の企 業、そこの代理店が直結していると考えていいということですね。ということでよろし いですか、上田委員。どうぞ、土屋委員。 ○土屋委員  ちょっと心配なのは、この図を見ますと医療機関は相変わらず紙でやれと書いてある ように思われるのです。そもそも今日一番最初に報告がございましたが、モニター報告 を見ても企業に比べて医療機関は少ない、これは今後法律が変わればある程度上がって くるだろうということかもしれませんが、もともとこの医療機関からの報告の中のかな りの部分が、現実としましては国立病院から上がっているのだと思うのだと思うので す。それはどういうことかといいますと、あそこはホスプネットの中で実にいい収集シ ステムを作りまして運用しているわけです。ところが、電子的媒体で集めることが許さ れていないために、それはちょっとまずいこともあるからというのもあるかもしれませ んが、わざわざそれを最後の段階で全部プリントアウトして紙で提出すると。これはこ の先恐らくお話があると思うのですが、これから先電子的なものをどういうふうに扱う のか、要するに原則が電子的で紙でもいいよという形もあれば、紙でなければいけない というやり方、やはりそこら辺の考え方をきちんとしておかないと、医療機関が報告す るのに非常に難しいと。というのは、ここで電子的な媒体で集めるとなると、やはり医 療情報学会とかそういうところも含めて、電子カルテの中の項目というのはデータセッ ト項目というのが決まっているのですけれども、それとどうマッチングをとるのかとい う話まで出てまいります。ですから、この自発的な報告のところで医療機関からのとこ ろだけが紙になっているというのは何かちょっと心配で、そうすると相変わらず集まら ないのかなという気がいたしますが、いかがでしょうか。 ○池田部会長代理  事務局、どうぞ。 ○事務局  医療機関からの報告が紙の絵になっているところですが、すぐに対応していただくと いうのは難しいと。こちらとしても、システムの作成段階に当たり年を追って順次整備 していくという中で、まずは資料1の中のまとめでありましたように、企業からの報告 の方が圧倒的に多いものですから、やはり一次的には企業からの情報収集を速やかにす るシステムを作る。その次に医療機関からの報告についてもできるだけ速やかに電子的 な受付ができるようなことで対応していきたいと考えております。 ○池田部会長代理  どうぞ、事務局。 ○事務局  補足させていただきますが、今回御紹介させていただきました取組に関しましては、 基本的に国際的な調和の中で回っていくということでありまして、要は取り組む範囲と いたしましては、取りあえず企業報告の部分だけが電子化という中で作業を進めている ところでございます。もちろん医療機関からの副作用報告につきましても、当然我々か ら見れば企業から頂くものと同じ一件ごとの大事な情報でございますので、これに関し ましては現状では紙という形になっておりますが、将来的には電子化の方向で考えたい と思っております。ただ現状におきましては、医療機関側の電子化報告に対応するため のインフラの整備とかいろいろな事情がある中で、紙ということが原則になっているか と思いますし、また実際企業から頂く報告と医療関係者の方から頂く報告、薬事法の中 での取扱いその他いろいろ…。どちらかといいますと、若干企業報告の方がよりきつい 仕組みの中で進んできているということで、先行している部分はございますけれども、 医療関係者からの報告に関しましてもそれを追い掛けるような形でいずれは追い付いて いきたいと。したがって、同じような仕組みにしていきたいと考えております。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。土屋委員、どうぞ。 ○土屋委員  もちろんすべてを電子化しろというのではなくて、出せるところがわざわざ紙にする 必要は全くないだろうということなのです。ですから、出せるところは既にできている わけですから、そういうところはどうかと。というのはなぜかというと、そこで正に電 子化における問題点、では実際MedDRAを使ってみたらどうなのかとか、そういう問題が 新たにたくさん出てくるのです。報告書をいろいろ見ておりますと、医薬品の名前もバ ラバラに書かれているとか、電子化しようとしたらそういうことが実はすごく問題にな るし、集計にも時間も掛かってしまうということで、そういった基礎的なことについて インフラを整備しておくためにも、正にもうやれるところに先にやってもらうようなこ とをお考えになった方がいいのではないかと思いました。 ○池田部会長代理  よろしいでしょうか。ありがとうございました。そのほかに何かこの点について御意 見ございますか。ありがとうございました。ないようでしたら、次の項目の(3)に移り たいと思います。この項目はお手元にありますように、「医薬品情報の階層化による提 供方法」のこと、それから「市販後に得られる安全性情報等の活用」ということで、本 日冒頭でお話ししていましたように、二人の専門委員の先生においでいただきましたの で、先生方にそれぞれ御説明いただきたいと思います。その前に、谷川原先生にパワー ポイントを使って御説明いただくということで、ちょっと準備をさせていただきたいと 思いますので、数分休憩でよろしいですか。数分ちょっとお時間を頂いて準備をしたい と思いますので、休憩ということにさせていただきます。               ── 大澤委員退席 ──                 ── 休憩 ── ○池田部会長代理  準備が整ったようですので、始めさせていただきたいと思います。よろしいでしょう か。この二つの議題ですが、「(3)医療関係者向け情報提供の在り方」ということで、 お二人の専門の先生のお話を伺うわけですけれども、まずその前に事務局の方からこの 議題のバックグラウンドについて説明をいただきまして、その後谷川原先生と藤上先生 にお話をしていただきたいと思います。事務局、よろしくお願いいたします。 ○事務局  本論に入ります前に若干お時間を頂きまして、背景を御説明申し上げたいと思いま す。手短に話をさせていただきます。お手元の資料7-1と7-2を御用意いただきたいと思 いますが、今回取り上げました二つのテーマに関しましては、いずれも資料7-1に示し ました「医薬品情報提供の在り方に関する懇談会 最終報告」の中で我々の方にこの懇 談会から御提言いただいているものと若干関係しております。6ページの一番下の 「(2)具体的な方策」で幾つか御提言を頂いているものでございますけれども、「(1) 医療関係者向け医薬品情報の“階層化”による効率的・効果的な情報提供」ということ が項目としてございます。内容に関しましては次の7ページにアンダーラインを引かせ ていただいておりますが、こちらの方で少し御紹介させていただきます。情報量の急増 や情報源の散在といった問題を解決するためには、重要度に応じて情報を階層化するこ とが必要だという意見がございました。まず具体的な階層化の中身といたしましては、 基本的な情報に関する文章があり、それを補完するような詳細情報があるという形での 取り上げ方をいたしておりまして、更にということで次の段落になりますが、ITを積 極的に使っていこうという並びでございます。したがって、こういう報告、提言を受け まして、具体的な詳細な研究を谷川原先生の方にお願いいたしまして、昨年度から行っ てきているという状況にございます。そういった中での具体的なお話が頂けるものと考 えております。  それからもう一つの藤上先生にお願いいたしましたテーマに関しましては、同じ資料 の10ページにございます。冒頭の「(7)医療関係者向け医薬品情報の内容の充実」とい うテーマでございます。この最初のアンダーラインを引いた3行でございますが、添付 文書や製品情報概要等の内容については、小児あるいは薬物相互作用、ここには具体的 に書いておりませんが、高齢者、妊婦といった部分も対象になりますが、いずれも市販 後に得られた知見に基づいて適宜改訂を行うなどの内容の充実を図る必要があるという ような提言を頂いておりまして、このことを受けまして今回いろいろ御議論いただき、 我々の方で具体的な検討をしていきたいというふうに考えております。こういったこと が背景にありまして、今回この安全対策部会の方で二つのテーマを掲げさせていただい ているということでございます。  なお資料7-2に関しましては、現状の添付文書の見本でございます。したがいまして、 これをお手元に置き、適宜見比べていただきながらお二人の先生のお話を聞いていただ くとよろしいかと思いまして、取りあえず御用意させていただいたものでございます。 以上でございます。 ○池田部会長代理  ありがとうございました。それでは早速谷川原先生の方から「医薬品情報の階層化に よる提供方法」について、これまでの御研究の成果を発表していただきたいと思いま す。              ── スライドによる説明 ── ○谷川原専門委員  私はこの厚生科学研究の主任研究者を仰せつかっておりまして、昨年度の報告の一部 を御説明させていただきます。本日資料7-3ということで「総括研究報告書(抜粋)」を お配りさせていただいております。これはもともと研究の一つの動機なのですが、医薬 品の市販後安全対策として、まず日本国内では市販直後調査という体制が出来上がり、 またGPMSPの法制化が諸外国に比べて非常に早く進んでおります。国際的な協調という 面では、今ICHの枠組みの中で市販後安全対策というものが大きなトピックスとして 取り上げられております。このように安全情報、いわゆる副作用情報というものを吸い 上げる仕組みというのはかなりできてきたのですが、今度はそれをどうやって個々の医 療機関、個々の医師に対してフィードバックするか。こういった情報が医師の処方行為 にきちんと反映されるかというところで、安全対策と切っては切れないのがこの情報伝 達の仕組みというものであるわけです。その情報伝達に関する研究でございます。  ちょうど昨年の8月にセリバスタチンが全世界で52例の死亡例を出して発売中止とな ったわけでありますが、そのときに方法論的な問題点が浮き彫りにされました。まず一 つは、重大な薬物相互作用を治験中にキャッチできなくて、市販後になって50例以上の …、その中には相互作用も入っていたわけですが、そういう相互作用を早期に発見でき る仕組みはないか。現実に米国等で起こった問題として、添付文書やドクターレターで 注意を喚起しても併用禁忌が守られていない、ゲムフィブロジルとの併用禁忌が守られ ていない、若しくは不適切に高用量が開始されたということで、安全性情報を収集して 添付文書に盛り込んでそれでもうすべてが終わりというわけではなくて、それがきちん と個々の医師の処方行為に反映されるぐらいインパクトのある形で、医療関係者にフィ ードバックをしなければいけないという問題点があるわけです。ですから、これは医師 側の問題でも企業側の努力不足という問題でもなくて、やはり方法論の問題ではないか というふうに考えられました。結局これでセリバスタチンというのは市場から消えてい ったわけですが、リスクの早期発見と適正使用の徹底というものが…。もう一つの問題 はやはり患者さんです。そういった適正使用が徹底されていたら50例もの死亡例は出さ なくて済んだのではないかという意味で、早期に問題点を発見するということ、もう一 つはそれをきちんとフィードバックするということが重要であるわけです。  そこで方法論ですが、添付文書の記載要項は平成9年に大きく改められまして、非常 に見やすくなりました。しかしながら、こういう批判が多うございます。安全性に関す る情報が急速に増加、複雑化しており、現場の医師、薬剤師が添付文書を読んですぐに 理解するということがなかなか難しくなってきている、複雑になっているという指摘が ございます。そして副作用等で特に顕著なのですが、情報が体系的ではなくて単なる項 目の羅列になっておりまして、なかなか頭の中にすっきりと入らないというところがあ ります。  そういう情報提供上の問題点があるならば、これを改善すべきであろうということで 本研究班が始めたわけですが、その背景はその前の「医薬品情報提供の在り方に関する 懇談会」というものがございまして、ここで既にもう案が出てきているのです。現在の 添付文書の内容がこうなのですが、それの重要事項だけをもっとコンパクトにしたハイ ライトというものを考えてはどうだろうということが、ここの懇談会でも提言されてお ります。そしてその添付文書の一段下の階層のところにその詳細情報、添付文書で書か れていることに対する解説的なものを下位に置いて、更にその下位には根拠となった情 報、個別の症例報告であるとか、種々の市販後安全等の調査データであるとか、そうい った根拠情報というものを最下層に置いて、それを解説的なもの、その上に添付文書と いうものがあって、トップに1分程度で重要事項が理解できるハイライトというものを 作ってはどうかという提言が、この懇談会の方で概念としてなされました。  このように現実には今一つの医薬品に関してもこれだけ多くの情報媒体があります。 添付文書は基本なのですが、それ以外に使用上の注意の解説とか、製品情報概要、イン タビューフォーム、パンフレット、患者への説明文書、審査報告書、新薬承認情報、そ して原著論文等、種々の学会の記録集、市販後の安全性情報や緊急安全性情報、こうい ったものの情報が肥大化しているということと、もう一つの問題は散在しているという ことです。こういった情報を重要事項と詳細情報というめり張りをつけたい、すべての 情報を一回統合してめり張りをつけた形で再構成したい。その場合にも、紙ベースでは もう限界ですのでIT技術というものを応用すると。そして効果的かつ効率的な情報提 供システムというのはどういうものかを研究してきたわけであります。  この研究班の目指すところですが、まず、今社会的ニーズの高い重要なポイントを短 時間で把握できるような何かそういう仕組みをこの中に入れられないか。そして専門的 知識を持つ医療従事者が理解、記憶しやすく、応用の利く内容構成にできないか。必要 に応じまして、詳細な内容や症例報告までたどれるように構造化、階層化できないか。 その全体の情報バランス、かつ網羅性というものも考えて…、そこで羅列ではなくて情 報相互の関連性、すなわちある注意喚起に対して根拠となる情報というのがそれにある という有機的な結合をした体系化というものが図れないかということで、構造化、階層 化された医薬品情報体系を研究することが本研究班のテーマでございます。  具体的には、実物の方がきっと分かりやすいと思いますので、一つの例としてこうい う形でお示ししますけれども、「e添付文書」というのは私どもで勝手に付けた名前で して、あくまでこれは研究班としての成果でございます。例えば「アクトス」という添 付文書の前に「添付文書情報ハイライト」、すなわち禁忌、効能・効果、用法・用量、 重大な副作用、高齢者や妊婦、小児など特殊な患者の投与方法。これだけのエッセンス をコンパクトにハイライトという形で最初に置きまして、その後に添付文書情報の本文 が入るような形で作っております。  ここで横にいろいろな項目に対するリンクがはってありますが、この添付文書はこう いう情報全体…、例えば「禁忌」で心不全の患者及び心不全の既往歴のある患者という ことの根拠をもう少し知りたければ、この「詳細」のところをクリックしますと、その 使用上の注意の解説に相当する記事の項目へ飛ぶわけです。「次の患者には投与しない こと」というふうに、動物実験並びに市販後においてこういう報告がありましたと。こ こを更にクリックいたしますとそのもう少し詳しい説明がありまして、更にこの右上の 方に「緊急安全性情報ヘ」というリンクが付いています。そうすると、この薬剤はかつ て緊急安全性情報が出されたことがあると。それを押しますと、平成12年10月5日に出 された塩酸ピオグリタゾンの急激な水分貯留による心不全に関する当時の緊急安全性情 報を全部ここでもう一度見ることができるということです。これがそのサマリーですけ れども、全文を見たければPDFで見ていきますと、当時出された緊急安全性情報の全 文がこういう形で画面上に出てくるわけであります。緊急安全性情報ですから、心不全 とか浮腫とか、その当時出ましたような個別の症例の経過等に関する情報も再度そこで 確認することができるというように、一番上に重要な事項があって必要に応じてどんど んクリックしていくとその根拠情報までたぐることができると。例えばほかの項目に関 しましても、添付文書の「臨床成績」の辺りを…、というのは添付文書の「臨床成績」 は非常に簡単でございまして、わずか数行くらいしか書いていないのですが、承認され た根拠となった詳細となりますと、例えば第I相試験から第II相試験、第III相試験でい うような種々のレポートが実はあるわけです。例えばこの第III相臨床試験の原著論文 等を見たければ、このボタンを押せば実際にその原著論文の実物が画面上に出てくると いうような形にもなりますし、また新薬の承認のときに使われる「新薬承認情報集」、 申請資料概要ですが、それに該当するページもこのようにこの中の詳細情報の一部とし て盛り込むことができるというものであります。  あともう一つ安全の問題で重要なのは、市販後調査というものに対して、例えば企業 から市販後調査の中間集計というものが出された場合も同じようにこの中に随時盛り込 むことができます。これが最近出されたアクトスの市販後の中間報告の資料でございま すが、こういう形のものを全体の中で盛り込むと。さらにもう一つは、従来から使われ ておりますほかの媒体、インタビューフォームも紙媒体よりはこういう添付文書とリン クした電子媒体という形で、この情報そのものも添付文書にリンクした形で中に取り込 むことができます。例えば患者さんに対する説明文書、「くすりのしおり」というもの が日本RAD-AR協議会で作られておりますが、そういう患者向けの説明書もこの中に盛り 込まれておりますし、それから薬そのもの、製剤の写真というのも15mg錠、30mg錠とい う形で、いわば全体としてどういう構造になっているか…。これは最後のまとめです が、現在の添付文書の情報というのはこれがコアになります。その前に1分程度で本当 に大事なエッセンスだけが分かる、すなわち実際に先生方が処方なさるとき、若しくは 薬剤師が監査をするときに、警告や禁忌、併用禁忌、用法・用量などそこだけをとにか く抑えたいというためのハイライトを付けまして、各添付文書は現在のフォーマットの ままにすると。そしてこの「警告」と書いてある根拠情報は何かというと、緊急安全性 情報とか、安全性情報、使用上の注意の解説、その根拠となった個別症例、若しくは市 販後調査成績といったもの、若しくは承認のときに根拠となった新薬承認情報集、その また根拠となる原著論文等そういったもの、更には製品情報概要とか製剤の写真、患者 への説明文書、海外の添付文書もいいのですが、こういう薬にかかわるすべての情報 を、とにかくこういう形で一つにまとめて階層化するということが医療機関にとって非 常に使いやすい。要するにニーズに応じて必要な情報までたぐれますし、速やかに禁忌 だけ、効能・効果だけを確認したいときはハイライトでいいですし、じっくりと副作用 等のことを研究したいときにはその根拠データまでさかのぼっていけるという形で、医 薬品の情報提供をしていただければ、この医薬品情報提供の在り方に関する懇談会の階 層化の御主旨を踏まえた形で、例えばこういう形で具現化できるのではないかというよ うなことを平成13年に研究をさせていただきました。以上がその概要でございます。           ── スライド途中、松本部会長着席 ── ○松本部会長  谷川原先生、どうもありがとうございました。私事ですが、地震のために大幅に遅れ まして申し訳ありません。池田先生、御司会の方どうもありがとうございました。  それでは、ただいまのお話と事務局からのお話に関しまして御意見、御質問を承りた いと思います。どなたか御意見はございませんでしょうか。どうぞ。 ○土屋委員  土屋でございます。今のようにリンクを張るというのは現実的なものとして非常に必 要なのだと思います。しかし一方で、そろそろこれは法改正も必要となるかもしれませ んが、是非見直しをしていただきたいのですけれども、今わざわざ冒頭に言わざるを得 なかったのは、添付文書というのは法律的にはあくまでも紙が原本でありまして変えて はいけないという…、要するに今出ているのは添付文書情報の電子化されたものなどと いう言い方をしているわけです。やはりいろいろな情報がきちんとしていくためには、 もうそろそろいつかどこかの時点で、電子化されたものが原本であってそれを紙媒体に したのが添付文書だというようなことを含めて、何か検討をされた方がいいのではない かと思います。  それからあともう一つ、こういうリンクを張ることも非常に重要なのですが、中身の 電子化と言いますか、例えば効能・効果一つをとっても、それをICD-10で書こうとした らそれはどうなるのかということが今できないために、その機械的なマッチングがとれ ないということが大きく問題になっているわけです。そうすると、先生はまだこれから 御研究になるのかもしれませんが、是非内容の電子化という研究を進めていただくこと が必要かと。一方でそういう標準化をしておきますと、最終報告の提言のところの9ペ ージにある「医薬品情報の標準化の推進」というところにも、本当に実現が可能ないろ いろなことができてくると思います。 ○松本部会長  ありがとうございました。文書をなくすというのはいかがなのですか。 ○土屋委員  なくすのではなくて、原本の考え方をそういうふうに…。 ○松本部会長  そういう意味ではいかがなのでしょうか。確かにおっしゃるとおりだと思うのですけ れども。              ── 池田部会長代理退室 ── ○安全対策課長  今ここでお答え申し上げられる範囲は大変限られるとは思いますが、私ども安全で有 効な薬物療法を患者あるいは医療の第一線の方々に活用していただく上で、現在あるい は将来の環境から見て何がベストなのかということを、常に見直していかなければいけ ないと思います。先生の御趣旨もよく踏まえまして、日々の業務に励んでまいりたいと 思います。 ○松本部会長  ほかにございませんでしょうか。上田先生、どうぞ。 ○上田委員  共同研究者で名前が載っていて私はびっくりしてしまったのですけれども、今日発表 があるのも知らなかったのでどうしようと思って伺っていたのです。一つは非常に谷川 原先生の形はよろしいかと思うのですけれども、これをだれが担保するかという問題が 大変大きいと思うのです。例えば、一つの薬だとこれだけのことがかなり突っ込んでで きると思うのですけれども、これが1,000、2,000、あるいは1万と、本当にすべての薬 剤に対して、こういうようなシステムでカバーできていくかどうかというのが不安とい うことと、その情報の質をだれが保障するかということが非常に大きな問題になると思 うのです。ですからやはりその辺をきちんと見据えて、足場をしっかり作っていかなけ ればいけないのではないかと感じました。 ○松本部会長  情報の担保に対して、谷川原先生、お願いいたします。 ○谷川原専門委員  これはあくまで行政的な視点ではなくて、非常に大きな方針が懇談会の方に出されま して、それをサイエンティフィックに研究して、例えばどういう形が具体的なものにな るだろうかということでやらせていただきました。ですので、いろいろな形で今後御議 論いただきまして、これがすぐ次の行政の施策に反映されるかどうかというような問題 ではなくて、今の医薬品情報というのは肥大化して混沌としていますから、我々医療関 係者に要るものとして、こういう形で整理してほしいという願いを込めて作ったような ものでございます。そして先生がおっしゃるのは、例えばこれは各企業、具体的には後 発品と先発品で、先発品はこれを枠組みでできると思いますが、後発品はできないと思 います。そこでそれを無理矢理同じにさせるのか、それとも実際にユーザーである医療 関係者がそういう違いがあるものだということを認識するという、一つの機会でもよろ しいのではないかと思います。ですから、あくまでそのユーザーである医師、薬剤師が やはりその情報を評価すべきであって、そのためにもこういう形で情報を公開して、個 々の先生方がやはりこの医薬品は非常に情報がしっかりしていると、この医薬品という のは何かよく分からないと、そして実際にお使いになるときの判断に供していただく、 そのためのものではないかというふうに考えております。 ○松本部会長  これは大変興味のある話題でありまして議論が尽きないと思いますが、時間の関係も ありますのでこの辺にさせていただきまして、もう一つ、これも非常に重要なテーマで あります「市販後に得られる安全性情報等の活用」に移らせていただきます。谷川原先 生はこの研究を今後も続けられるそうでありますので、また改めて研究成果についてお 話しいただければと思っております。よろしくお願いいたします。それでは続きまし て、藤上先生のお話を頂きたいと存じます。先生、よろしくお願いいたします。 ○藤上専門委員  藤上でございます。「医療の第一線における医薬品適正使用と現在の医療用医薬品添 付文書が内包する問題」という大層な表題が付いているのですけれども、これは常日ご ろ薬事・食品衛生審議会の部会で私が結構小うるさいことを言っていたものですから、 ここで話をしろということになったのではないかというふうに理解しています。これか らお話しすることは、私の認識不足から来る誤解もあるかもしれませんし、決してアカ デミックなことではなくて、現場で常日ごろ感じていることを申し上げたいと思ってお ります。  まず、「1.『適切に対応すること、慎重に投与すること』の実践的意味合いについ て」ということなのですけれども、日本の今の添付文書の記載内容というのは、この薬 剤にはこのような事実がある、この事実を踏まえて臨床の現場で適切に判断して使用す ることというような書き方になっております。諸外国の添付文書をちらちらと見ていま すと、この薬剤にはこのような事実がある、したがってこうすべきだというところまで 書かれているものが結構多いのではないかと思います。末端の医療現場では、臨床の現 場で適切に判断して使用することということが必ずしもなされていない、あるいはでき ない、考える時間的余裕がないということが多いのではないかと実感しております。外 国方式のように何でもかんでも書くということは必要ありませんけれども、すべての医 師あるいは薬剤師がすべてに精通しているわけではないということを踏まえた内容にし ていただければと思います。  医師の添付文書情報に対する関心が薄いということと、またその医師、薬剤師の専門 的知識のレベルなどから来る問題点が、添付文書が読みにくいとか分かりにくいという ことになっているのではないかというふうに認識しております。例えば高齢者への投 与、あるいは副作用のチェックなどに、「患者さんの状態を観察しながら慎重に」とい う表現が非常に多いのですけれども、こういったことに関しては具体的な指標などを示 していくことが必要かと現場では実感しています。例えば減量の目安や検査すべき項目 やチェックすべき時期や間隔といったようなことを、きめ細かく書くことが必要な場合 もあるのではないかと。ただしこれは、一般論で書くものと薬剤に特化して書くものと いった形で分けて書くことも必要ではないかと思います。  もう一つは、「使用上の注意」の項というのは工夫が必要かと思います。患者さんに 薬剤を交付するときに必ず患者さんに説明が必要なことと、医療関係者が知っていれば いいことなどの区別を明確にする必要があるのではないかということです。これもやは り、一般的な注意事項とその品目に特異な注意事項を区別して書くということがなされ ればいいと思っております。現在の添付文書は読みにくいといったような批判は、記載 の文言や記載内容のレベルが統一されていないことも一つの原因になっているのではな いかと思っております。  それから「2.同種同効品の記載の引用とその適切性について」ということなのです けれども、これはつまらないことかもしれないのですが、添付文書の記載はもう護送船 団方式は要らないのではないかと。メーカーそれぞれの特徴というか、考え方で作られ てもいいのではないかというふうに思います。昨年これは部会でも申し上げたのですけ れども、発売後20年もたった抗生物質の添付文書の改訂事項に、「小児への安全性は確 立されていない(使用経験がない)」と付け加えるというようなことがありました。改訂 理由は、同効品の添付文書にその記載があるからということなのですけれども、ナンセ ンスだと思いました。現実に小児に投与された症例の蓄積があるのにそれが添付文書に 反映されていない、あるいはきちんとしたプロトコールに従っての症例収集がなされて いないからではないかと思うのです。少なくとも承認された後5年や10年ぐらいまでの 間には、やはりメーカーさんにはきちんとしたプロトコールに従って症例収集をすると いう努力をしていただきたいと思っております。  それから次の「3.相互作用の内容と記述、特に引用・根拠が時代遅れになっている ものなどの扱いについて」ということです。相互作用というのはもう皆様御存じだと思 いますけれども、メカニズムから考えて薬物動態学的な相互作用と薬理学的な相互作用 に分けられると思いますが、現在の添付文書ではこれらを明確に分けて記載されていな いのではないかと思います。このことが添付文書の「相互作用」の項を読みにくくして いる、あるいは分かりにくいと言われている原因になっているのではないかと思いま す。  また、「相互作用」の欄は禁忌と併用注意という二つの段階に分かれて記載されてい るのですが、併用注意に関しましては記載要項が薬効群を書いて代表的な一般名を付す ということになっているのでしょうか。もしそういうふうになっているのだとすれば、 薬物代謝に由来する相互作用などでは、これらを一括して同列に扱うことには無理があ るのではないかと思います。「相互作用」の項に記載する薬剤というのは、現状では理 論的可能性が推定されるもの、in vitroで相互作用が認められたもの、動物実験で確認 されているもの、人で血中濃度の変化などが確認されているもの、人での臨床上の意義 が認められているものといったように、記載の基準というのは全く不統一なのではない かと。そういったところから、利用者が判断する上での記載基準が示されていなくて、 非常に分かりにくいのではないかと思っております。  「禁忌」に書かれた薬剤に関しましては、一般論としては禁忌なのですけれども、あ る背景を持った患者にとってはほかに代替の治療もなくて、専門医の十分な関与の下に 使用されるケースもあるのではないかと。こういった場合の薬剤が、「禁忌」というと ころに分類されてしまっていいのかというように思います。例えば、NSAIDは消化性潰 瘍を持っている患者さんには使うなということになっていますけれども、では胃潰瘍を 持っているリウマチの患者さんにNSAIDを使うときにはどうすればいいのか。今保険診 療が行われている中で、こういったことに医師の裁量権が全く認められていないという か、必ずNSAIDと抗潰瘍剤を併用して使いますと査定されて返ってくるのですけれども、 そんなばかなことがあっていいのかというようなことを思っています。  相互作用に関しましては、薬物相互作用の分類基準というものを確立して相互作用を クラス分けにして記載していただけると有り難いと思います。例えば、クラス1は危険 性が有用性を上回るために併用禁忌にすると。クラス2は有益性が危険性を上回る場合 に併用することもあるのかなという薬剤。クラス3は併用の危険性というものを考えた 上で、危険性を最小限にするように対処しながら使っていく薬剤。それから、クラス4 は有害反応の危険性が小さいために特別な注意を払う必要はないのではないかと思われ るような薬剤。そういったように分けて記載していただけると、使う方では非常に有り 難いかと思います。  また、最後の副作用の内容と記述の適切性についてということなのですけれども、副 作用の用語について標準化がなされていないように思うのですが、多分これはMedDRAな どで標準化がなされていくと思います。「副作用」の項に記載する副作用について、診 断名と症状名が混在して書かれています。難しいのかもしれませんが、「副作用」の項 には原則として診断名を記載して、難しい場合のみ症状名を記載するというようなこと があってもいいかと思います。  それともう一つは、ある副作用があってそれに付随して出てくる症状というものがあ るわけなのですけれども、多分今の添付文書というのはその副作用と付随して出てくる 副作用というものが、別々の項に分かれて出てきているのではないかと思うのです。そ うすると私たちが見たときには、それぞれが独立した副作用だというふうに理解してし まうことが非常に多いわけです。随伴症状は、予測できる副作用であるといったような 認識も必要なのかなと思っております。記載する副作用については、根拠となる症例に 関して薬剤との関連性がどの程度であるならば記載するかという基準がもしかしてある のでしょうか。私は現在記載されている副作用というのは、因果関係が余り考えられな くて有害事象に近いものと極めて強い関連性が考えられるものまで、区別なしに記載さ れているような感じがしております。私たち医療関係者、私がそうなのかもしれません けれども、添付文書に記載されている副作用というのはすべて薬剤との因果関係が科学 的に、あるいは合理的に説明できる根拠を持っているのだと理解しがちではないかと思 います。添付文書に記載する副作用の基準を決めることはできないのかなと思います。  それともう一つは相互作用のところでも申し上げましたけれども、副作用をチェック するため、あるいは早期発見するための具体的な指標を示していただけると有り難いと 思います。これももちろん一般論で書くものと、その薬剤に特化して書くものというよ うな形で分けられるとは思っております。  それから、これは常日ごろの疑問なのですけれども、「何々の安全性は確立されてい ない(使用経験がない)」というような文章が随所に見られるのですが、この解釈はどう なのですか。ですから使ってはいけないというのか、ですから注意して使いなさいとい うのか、それぞれの薬剤で勝手に判断して使えということなのか、よく分からないので すけれども、この解釈はどうなっているのかということです。  もう一つ「4.その他」で、先ほど谷川原先生の方から添付文書のハイライトの項を 新設するというようなお話があったのですけれども、もちろんそれもいいとは思うので すが、ただでさえ添付文書が読まれていない状況の中でハイライト版を作ってしまう と、それだけしか読まない人も出てくるのではないかということを考えて作っていただ ければと思っております。以上です。           ── 説明途中、池田部会長代理入室 ── ○松本部会長  どうもありがとうございました。大変微妙で細かく御指摘を頂きました。なかなか解 決しにくい部分もあるかとは思うのですが、御意見を伺いたいと思います。ただいまの お話に対して御質問、御意見がございましたらお願いいたします。 ○菊地委員  確かに標準化しなくてはいけない点がたくさんあると私は思いますし、ほとんどの人 は添付文書を読まないと思うのですが、読まざるを得ないような場面というのが出てく るわけです。何かというと裁判なのです。小児に対しての安全性が確認されていないと いうと、裁判ではこれは使ってはいけないというふうに解釈されます。ところが、厚生 労働省から出している副作用に対しての言葉の定義というものがたしかあったはずなの です。そこまでずっと行くと、別に使ってはいけないとはどこにも書いていないと。で すから、そういうものをコピーして裁判所の方に提出するという作業が要ると思うので す。  先ほど谷川原先生がお示しした中で、やはり慣れていないと言葉の使い方というのが 分からないと私も思います。例えば先生が危険性や副作用に対してランク付けがないの ではないかと言うのですけれども、これも私自身もちょっと興味があって調べてみた ら、実は何かいろいろランク付けがあると。それが表に出ていないと。こちらが興味が あって何か発表しなければいけない羽目になって調べてみたら、実はあったと。薬学出 身の人に聞いたら、試験の山でこれは当然覚えているもので、医者が知らなかったとい うだけの話なのです。それはやはり我々の教育の問題かも分かりませんけれども、先ほ ど谷川原先生がおっしゃった、せっかくああいう電子化されるときに説明として、例え ばどこかに共通の知識というか、用語としてそういうものを入れていただくと、これは 何パーセントぐらいで出てくるものに対して、日本語としてはこういう言葉を当てはめ て使っているのだというのを、我々は初めて知ったということが結構多いのです。私は 例えばそういうことに関係してある学会か何かで話すという羽目になったから調べたわ けで、そういうチャンスがなかったらまず私は知らなかったのです。ですから、その辺 の情報もやはり入れていただきたいと私は先ほど思いましたし、標準化ということも私 は全く知らなくて、たまたま今お話ししたことに関してはあったということに初めて気 が付いたので、ほかの分野でも何かあるのかなと私は感じたのです。そういうことを私 たちは余りにも知らなかったので、恥ずかしい話というか医者は全く知らないというの が現状だと私は思います。               ── 北村委員退席 ── ○谷川原専門委員  大変貴重なアドバイスをありがとうございました。確かに副作用の頻度というのは言 葉の使い方が決まっておりますし、また妊婦への使用に関してもどういう情報があれば こういう言葉を使うということが決まっておりますので、その辺りも踏まえて入れさせ ていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○藤上専門委員  申し訳ないのですけれども、一つ言い忘れたことがありまして、三番目の「特に引用 ・根拠が時代遅れになっているものなどの扱いについて」ということなのです。去年部 会で新しいインシュリンが検討されるときに気が付いたのですけれども、インシュリン との相互作用の中でワルファリンとクロラムフェニコールの相互作用があるというよう な記載がありました。その記載を見たときに、本当にこれはそうなのかなと思いながら いろいろ調べてみたのですけれども、結果的には特別な根拠もなく書かれているという ことが分かりました。  インシュリン製剤を持っているメーカーさんにいろいろ聞いてみたのですけれども、 あるメーカーさんからこのような回答がありました。インシュリン製剤の添付文書、 「相互作用」、「併用注意」の項に記載されているクマリン系薬剤ワルファリンとクロ ラムフェニコールについては、インシュリンが動物製剤であった時代に経口糖尿病薬の 添付文書の記載に準じて記載したと。その後ヒトインシュリン製剤が開発され、この記 載内容がそのまま引用されています。したがって、インシュリンとこれらの薬剤を使用 して相互作用を示したという症例報告や文献等に基づく記載ではないということです。 また、インシュリンとこれらの薬剤との相互作用が実際に起こったという症例は報告さ れていません。そしてまた外国の添付文書にはこういう記載はありません。  もう一つ、インタビューフォームのクロラムフェニコールとの相互作用についての回 答があるわけなのですけれども、その内容はインシュリンとの相互作用について説明す るものではなく、記載の根拠となった経口糖尿病薬との相互作用について書いてあるの だというような答えが返ってきたのです。 何を言いたいかといいますと、このようなこ とがほかにもあるのではないかということで、たしか20年前はこれはこういったような 書き方をしなければならなかったかもしれないのですけれども、20年たつ間には薬物の 代謝酵素の問題などいろいろ新しい知見が出てきて、これは違うのではないかというよ うなこともあるのではないかと思います。そのようなことを一度検討していただけたら と思います。これはインシュリンだけではないのではないかと思っています。              ── 池田部会長代理退席 ── ○松本部会長  上田先生、いかがですか。 ○上田委員  いろいろたくさんファクターがあってちょっとあれなのですけれども、先ほどのクラ ス1、クラス2、クラス3、クラス4というのは一方的に薬の方から見た考え方で、や はり相手がいると。要するに今日お話しいただいたのは人間が反応系であるということ をある程度無視して、薬だけの性格で、あるいは薬の相互のことだけでお話を作ってい こうと、やはりそこには無理があると思います。ですからやはり人間というものを、要 するにあとは医療関係者、薬剤師、医師、看護師、そういう者が総合的に判断していく 上で、ある程度のところであればそれで十分ではないかと私は思います。 ○藤上専門委員  確かに先生がおっしゃるとおりなのですけれども、現場ではなかなかそのようなこと を加味して考えるという時間的余裕がないのか、そのようなことが本当に見受けられる というか、先生方に対して失礼なことかもしれないのですけれども、現実ではそうなの です。すべてをそれにしろというわけではなくて、ただ、きちんとしたことが考えられ るような指標をある部分のところでは考えていただきたいとか、そういう意味で私は申 し上げたのです。 ○松本部会長  ありがとうございました。先生のおっしゃっておられることは確かにもっともなもの もありますし、どう解決したらいいか今現在検討中のものもありますし、先生が一部勘 違いされている部分もないわけではありません。これは非常に幅広い分野の話ですので 一つずつまた検討し直して、細かく改められるものは改めていけばいいのではないかと 思います。この問題は非常に重要でありますが、そろそろ時間もありますので特に御質 問があればお受けしますが、いかがでしょうか。先生、ありがとうございました。  それでは次の議題に進ませていただきます。事務局から次の項目(4)の説明をお願い いたします。 ○事務局  (4)に関しまして、事務局より御説明いたします。資料8-1と8-2をお手元に御用意い ただきたいと思います。縦長の資料と横長の資料の2種類でございます。我々は現在薬 事法の見直しということを検討しておりまして、国会にも薬事法の改正の法律案を提出 いたしまして、一応参議院の方は通過したという状況でございます。今後衆議院の方で 議論をさせていただくことになりますが、その途中の段階ではございますけれども、一 応見直しの方向性ということについて御紹介させていただきます。  資料8-1で申し上げますと、最初の1ページでございますが、その下に枠で囲ってあ る部分がございます。「見直しに向けての視点」ということで、今回大きな柱が三項目 ございまして、一点目が「医療機器に係る安全対策の抜本的な見直し」でございます。 これは当然使われ方も含めて、これまで医薬品がいろいろ先行してきた部分がございま すが、今後は医療機器も医薬品並みの規制をかける部分、あるいは医薬品とは違った医 療機器固有のものも当然あるわけでございまして、そういった中できめ細かく対応して いこうという観点でございます。  それから二点目でございますが、「『バイオ・ゲノムの世紀』に対応した安全確保対 策の充実」ということでございまして、これは具体的に申しますと医薬品・医療用具に かかわらず生体由来のものがございます。こういったものはこれまでですと、医薬品か 医療用具かなかなか区別のつかないものがございました。今後も医薬品かあるいは医療 用具かという議論は残りますが、それよりもまた別の観点で、言い換えれば横断的な形 で薬事法の中で規制をかけていこうということでございます。したがって、医薬品であ る生物由来製品もあれば、医療用具たる生物由来製品もあるわけで、そういったものに 関しまして共通の一定の法的な整備をしていこうというものでございます。  それから三点目でございますが、「市販後安全対策の充実と、承認・許可制度の見直 し」ということであります。これまでは製造業の許可ないし医薬品なら医薬品の承認と いう中で取り扱ってきたものを、今度は造る、造らないという次元ではなくて、承認を 取った製品を市場に対して供給する側としての責任、言い換えれば市販後段階における 企業としてのいろいろな取組というところに少しスポットを当てまして、そこを中心と した承認許可体系に変えていったらどうかというものでございます。  具体的な内容に関しましては、医療機器はここではちょっと省略させていただきます が、生物由来製品の規制に関しましては、4ページから具体的に詳細な内容を示させて いただいております。それと共に、三つ目のポイントの市販後の安全対策ですが、これ に関しましては6ページ以降にその具体的な見直しの方向性というものを示させていた だいているというものでございます。  時間の関係で文章に関しまして少し御説明を省かせていただきますが、資料8-2の方 の絵を使って少し概略を御紹介させていただきます。まず生物由来製品に関しまして は、お手元の横長の資料3ページを御覧いただきたいと思います。生物由来製品に関し ましては、ここに少し書いてありますような特性を持っているわけでございます。当然 医療上は必要なものということでかなり品目数も増えてきている状況でございますが、 その一方で「主な特徴」のところに書いてございますが、1〜3までのいろいろな問題 点と言いましょうか、特徴がございます。未知の感染性因子を含有している可能性が否 定できないようなケースがある。それから、不特定の人や動物から採っている場合があ って、そういった面でのリスクが高いケースがある。また不活化処理に限界がある場合 がある。こういった点がございますので、通常の化学品とは違った取扱いが恐らく安全 対策という面でも必要ではないかということでございます。  具体的にはその下の絵に書いてございますとおり、製造段階から市販段階におきまし て、様々な規制を設けることによって安全を確保していこうということでございます。 まず製造開始の段階では、ドナーの選択基準など原材料の面での安全性確保を図ってい こうと。さらに、製造中のものに関しましては原料記録をきちんと取っておいて、逆に 言えば、さかのぼっていろいろなことが調べられるという体制をとっておこうというも のでございます。それから、市販後の段階におきましても「感染症定期報告」というも のを矢印で指してございますが、その時点時点ではなかなか未知の部分が残るわけでご ざいますけれども、最新の知見をこういった定期報告というレポートでまとめてそれを 公表していくという中で、世の中に対しましてその製品の位置付けというものを明らか にしていく。さらに、5年ないし10年たった後、当然その時々の直近の情報も収集する わけでございますが、さかのぼって振り返ったときに、当時はどうだったかということ がトレースできるような体制をとっていこうということでございます。また、ドナーや 使用者の追跡ということも、いろいろな感染被害が起こった場合には拡大を防止する観 点から、過去の記録がきちんと追えるような体制にしていこうという取組を考えている わけでございます。  少し足早で申し訳ございませんが、「市販後安全対策の充実と、承認・許可制度の見 直し」につきましては、同じ資料の4ページを御覧いただきたいと思います。「見直し のポイント」ということで下の方に書いてございますが、「企業の市場に対する責任の 明確化を図る」ということをねらいとしております。その中で当然いろいろな企業の規 模等に応じまして、製造段階から市販段階まですべてできるところとそうでないところ があるという実態を踏まえて、市販後部分あるいは製造部分というものに関して委託が できるような形に持っていったらどうかということで、承認・許可制度を少し細分化し ていこうというものでございます。「問題意識」のところの表に書いてございますが、 アメリカや欧州の取扱いを見ますと、これまで日本は製造に着目した承認制度であった のに対して、欧米に関しましては販売、製品を供給するという行為に着目した法体系に なってございますので、こういった観点からも整合性を図っていくというものでござい ます。  以上、大きな柱は三つございますが、そのうちこの医薬品等安全対策部会に関係いた します観点について、若干かいつまんで御紹介させていただきました。以上でございま す。 ○松本部会長  薬事制度見直し(案)に関しましては、委員の先生方で御覧になった方もおいでになる かと思うのですが、どなたか御意見、御質問はございませんでしょうか。ございません でしたら、この問題は皆さんよく御存じだと思いますので、最後の議題に移らせていた だきます。「一般用医薬品の指定医薬品解除について」に移りたいと思います。まず、 事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは「一般用医薬品の指定医薬品解除について」、資料9-1及び9-2に沿いまして 御説明申し上げます。まず、「指定医薬品」あるいは「薬種商販売業」ということにつ いて、資料9-1の1ページを御覧いただきながら制度的な枠組みを御説明申し上げます。 「指定医薬品」とは、薬事法第29条に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品でありまし て、その趣旨といたしましては薬局又は一般販売業において薬剤師による取扱いを必要 とし、すなわち薬種商販売業においては販売することができないとしている医薬品でご ざいます。その「薬種商販売業」と申しますのは、都道府県知事が薬事法第28条に基づ きまして、指定医薬品以外の医薬品を取り扱うにつき必要な知識経験を有すると認めら れる者に対しまして、店舗ごとに許可を与えております一般用医薬品の販売業の一形態 でございます。  一方、スイッチOTCについて御説明申し上げますと、医療用医薬品の成分のうち一 般使用者自らの判断によっても十分に安全かつ適正な使用が確保され得ると考えられる ものにつきましては、一般用医薬品の成分、いわゆるスイッチOTCとして承認してい るところでございます。一般用医薬品として初めて、あるいはほとんど使用経験がない ということから、当該スイッチOTCの承認当初におきましては指定医薬品といたしま して、薬剤師による取扱いを必要といたしております。  また、スイッチOTCにつきましては、その承認に際しまして少なくとも3年間の市 販後調査(PMS)の実施を求めております。当該PMSが終了した後にこちらの部会に おいて、安全性等適正な使用に特段問題なく、その販売に当たって必ずしも薬剤師によ るアドバイス等を要さないと判断され得るものにつきましては、指定医薬品の解除を行 いまして一般使用者、購入者の利便性を図っているところでございます。  今般、指定医薬品の解除の検討を事務局の方でいたしまして、2成分を御提案させて いただきますが、そこに掲げておりますソファルコン(胃粘膜保護修復剤)とイソプロピ ルアンチピリン(1日用量450mg解熱鎮痛剤)について、解除に当たって問題がないかど うかということの御確認をお願いしたく考えております。  資料9-2でございますが、同じく現在指定医薬品として取り扱っているもののうち、 シメチジン、ファモチジン、塩酸ラニチジンの3成分がありますH2ブロッカーの、ス イッチOTCの取扱いについての資料でございます。まず順序といたしましては、資料 9-1に戻らせていただきまして、指定解除する品目について2ページより御説明いた します。まず一つ目の成分であります胃粘膜保護修復剤のソファルコンでございます が、医療用といたしましては「ソロン」などの販売名で使用されているものです。一般 用医薬品としては「アバロンS」などの販売名で平成10年8月に承認を受けまして、そ こから3年間の市販後調査を行いました。その市販後調査の成績の概略は、2ページの 下から二つ目の欄にまとめさせていただいております。こちらの市販後調査の結果から 特に重大な問題となる副作用等はなく、また報告された副作用につきましてもこれまで 既に知られているもの、あるいは因果関係がまだ確定せず使用上の注意等には反映され ておりませんが、特に重要となるものもございませんでした。つきましては対応策とい たしまして、1日用量ソファルコンとして300mg以下を含有する内服剤について、指定 医薬品からの解除をしてまいりたいと考えております。  3〜4ページにかけてが、「アバロンS」の使用上の注意でございます。資料が飛び まして申し訳ありませんが、議題1で用いました資料2の14ページの一番下のところに 記載させていただいております、医療用のソファルコン製剤における重大な副作用の肝 機能障害、黄疸を一般用医薬品についても反映させた形のものでございます。5ページ がパッケージのコピーでございます。  6ページからが、二つ目の成分でありますイソプロピルアンチピリンについてでござ います。7ページの枠外に*印で書かせていただいておりますが、アミノピリン、アン チピリン、スルピリン等が並びまして、ピラゾロン骨格を有する薬剤(ピリン系解熱鎮 痛薬)は重篤な過敏症を生じるということが知られているわけでございます。しかし、 イソプロピルアンチピリンにつきましては代謝経路が異なりまして、過敏反応の原因と 考えられておりますアルデヒド体を生じることなく、比較的安全性の高い薬剤と考えら れておりまして、開発企業でありますロシュにより主にヨーロッパ諸外国におきまし て、OTCとして広く使用されているものでございます。  一般用の製剤といたしましては、6ページの真ん中のカラムにございますような4製 品がございます。こちらは承認の方は昭和57年からとかなり古いものでございますが、 一般用で言いますとエテンザミドやアセトアミノフェンをフェナセチンという成分で処 方を組んだ「セデス」や「サリドン」というものが、医療用医薬品として昨年まで販売 されておりました。しかしながら、フェナセチン含有製剤について乱用防止の観点か ら、昨年供給の停止という措置がなされました。今回改めましてイソプロピルアンチピ リン配合剤として一般用医薬品の安全性を見直したところ、7ページの市販後調査ある いはその後の副作用報告例などを見た限りにおきましては特段問題ないものと判断され たことから、この度指定解除ということにいたしたいと考えております。8ページがそ の添付文書でございまして、9ページが「サリドンA」のパッケージとなっておりま す。  続きまして資料9-2に進みます。H2ブロッカー含有一般用胃腸薬の取扱いについて でございます。まず、1ページが「承認時の取扱い」で、2ページが「市販後調査実施 〜昨年の検討」です。既に資料を送付いたしまして事前に御覧いただいているとおりご ざいますが、5ページの最後に書いておりますように、私ども事務局の御提案といたし ましては、一般用H2ブロッカーにつきましてはその適正使用のため、販売に際して薬 剤師による取扱いを引き続き要する、すなわち指定医薬品として指定してまいりたいと 考えているところでございます。御検討をよろしくお願いいたします。 ○松本部会長  ただいまの事務局の御提案に対しまして、どなたか御意見はございますでしょうか。 ○堀内委員  まず最初のソファルコンですが、例えばここに一般用製剤として「アバロンS」や 「大正胃腸薬S」など、こういうものが全部解除になるということですか。 ○事務局  はい、一般用医薬品の製剤といたしまして「アバロンS」、「大正胃腸薬S」から 「リライト」まで一物多名称で、品目としては一つでございます。実際に市販されてい る販売名は「アバロンS」のみでございまして、その他の販売名では現在まだ未発売と いうところです。 ○堀内委員  それからイソプロピルアンチピリンの場合ですと、「サリドンA」や「セデス・ハイ 」という…。 ○事務局  こちらは4製品…。 ○堀内委員  それが解除になるという考えでよろしいですか。 ○事務局  はい。 ○堀内委員  分かりました。そうするといろいろ問題点があるだろうと私は思っていますが、最初 の方のソファルコンについてはケイ酸アルミン酸マグネシウムが入っているものです ね。こういうものですと、例えば熱が出ていてニューキノロンをもらって飲んでいたと いうような場合、吸収が大変悪くなる、相互作用が出てくる可能性が考えられます。そ れから次のイソプロピルアンチピリンですと、アセトアミノフェンなどいろいろなもの が入っている製剤があるわけです。例えばアセトアミノフェンですと、本庄で保険金殺 人事件を起こそうとしたというようなこともありますので、やはり購入量等の問題をチ ェックする必要もあるだろうと思うわけです。やはりこれについては薬剤師がチェック をする必要があるだろうと私は考えますし、したがって解除するのには余り賛成はでき ないと思います。 ○松本部会長  OTCにつきましては、副作用に関しましても医療用とは随分異なって正確性に欠け ておりますし、いろいろ問題が多いかと思うのです。ここで議論しますと藤上先生辺り もかなりいろいろと御意見がおありだと思うのですが、これは審議事項になりますか、 報告事項ですか。 ○事務局  相談事項ということで毎年…。 ○松本部会長  相談事項もそうなのですが、そうするとただいまの御意見はどういうふうに処理され ますか。 ○事務局  まず頂いている御指摘についてお答えいたしますと…。 ○堀内委員  ちょっといいですか。規制緩和のいろいろな方向性というのは分かることは分かるの ですけれども、基本的にこういう医薬品で幾つもの成分が入っているもの、それから違 う医薬品と併用する可能性のあるものについては、私は安易に外さない方がいいだろう と思います。               ── 相楽委員退席 ── ○事務局  よろしいでしょうか。まず一つ目の「アバロンS」について、ニューキノロン等との 併用という御指摘です。3ページに載せておりますこちらの医薬品の「使用上の注意」 を御覧いただきたいと思いますが、医師の治療を受けている者は相談すること、あるい は他の薬剤を服用している人についても事前によく相談していただいて、こういった薬 剤の服用に当たっては気を付けていただくということになっております。 ○堀内委員  そうすると解除できなくなってしまうのではないですか。要するにそこに少なくとも 薬剤師がいて相談をするとか、医師に相談すればいいのでしょうけれども、それから購 入をするときにどんなものがいいかという相談を…、一般の人は何が入っているか判断 できないわけですよね。ですから「相談すること」といっても、大体一般の人が添付文 書を読むとは限らないわけです。医師だって場合によっては読まない状況なわけですか ら。 ○松本部会長  そういう文句が入らないものを、指定解除にするというわけではないのでしょう。 ○事務局  御指摘の御意見を踏まえまして、「使用上の注意」について工夫させていただきたく 考えております。それともう一つのイソプロピルアンチピリンの販売に当たって、不適 正な目的で使われないようにすべきであるという御指摘はごもっともでございます。た だ薬種商販売業といえども、やはり医薬品を取り扱う者としての責務を負っておりま す。確かに薬剤師ほどの高度な専門的知識、経験を有する者ではございませんが、医薬 品販売業を担う者として、いわゆる一般小売店で取り扱っている雑貨とは異なるものと いうことで、責任も又販売に当たっての必要な注意を促すような仕組みにもなっており ますので、必ずしも全く自由に売られるということではないと考えております。 ○堀内委員  現状が、実際のところはどうかということだと思うのです。本当にそれで安全性が担 保できるかどうかということですよね。薬種商だってそうなのでしょうけれども、本当 に担保できるかどうか。ですから今これだけ副作用や相互作用のことが問題になってい る段階で、又そういうアセトアミノフェンなどについて言えば、イギリスではアセトア ミノフェンに関してだけ相談をするインターネットのあれもできています。実際に非常 に多くの、いろいろな形での副作用が起こっているわけです。ですから薬種商がいれ ば、今度は安易にだれでもどこでもそういうものを買えるということですね。薬種商と いうところで拡大していくというのが本当に安全かどうかというのは、十分に考えない といけないだろうと私は思います。 ○松本部会長  土屋先生は御意見ありますか。 ○土屋委員  消費者契約法というものがまだないのですかね。ですからあれかもしれませんが、こ ういう人は買ってはいけませんという注意は、本来外箱に書いていないと分かりません よね。それは大丈夫なのですか。要するにこの箱を見ると、「服用に際しては、説明書 をよく読むこと」と書いてあるのですが、もしそれを薬剤師がいないところで売るとい う場合、本来それを読んだら私は買わなかったという話が出てくると思うのです。そう いう注意は必要ないのでしょうか。契約法ができてしまうと、当然書かなければ駄目と いう話になるのかもしれませんが。 ○松本部会長  OTC薬につきましては今と同じような議論はたくさんあると思うのですが、事務局 は統一した見解は何かありますか。 ○安全対策課長  この二つの医薬品について申し上げますと、一つはこれは内規でございますけれど も、スイッチOTCについては3年あるいは必要に応じましてもう少し長い期間、指定 医薬品としての使用経験が積まれ安全性上特段の問題が認められない場合には、この指 定を外すというようなことで運用してまいったところであります。幸いアセトアミノフ ェン等につきましても、現状アセトアミノフェンを含有する医薬品であって指定医薬品 以外のもので、一般国民の方が頭痛あるいは風邪の症状緩和のために活用して、特に公 衆衛生上極めて重大な問題があるというように認識している状況ではありません。です から、今回の成分はイソプロピルアンチピリンでございますけれども、これも風邪薬に 倣って指定薬から解除してもよろしいのではないかというような背景でございます。  アルミニウムを含有するものについても、これはちょっと確かめる必要がありますけ れども、現状他にも指定薬から外れてお役に立っているものもございまして、これまで の成績を見ますと肝障害以外は特段私は見たことがありません。肝障害も従来の例で言 いますと、これは医療用医薬品としての使用の場面の中で、様々な合併症やほかの薬が 一緒に併用された中での発現でございますので、事務局といたしましては広く、例えば 薬局の存在しないような地域での薬種商において扱っていただくことで何とかなるので はないかと思います。あと、表示等の問題につきましては御指摘を踏まえまして、事務 局から申し上げましたとおり、お買い求めいただく一般国民の方に不要なあるいは不当 な不利益がないように、又併用する医薬品については改めて具体的な工夫を行うことに よりまして、今回の私どもの相談内容で御了解を頂けますれば大変幸いに存じ上げると ころでございます。 ○松本部会長  堀内先生、土屋先生、よろしいですか。確かにこれは非常に難しい問題なのですが。 ○堀内委員  余り強く言いませんけれども、私は基本的にこういうのはかなり慎重にやるべきであ ろうと考えます。 ○松本部会長  今の御意見を参考にして、これから対応させていただこうと思います。ほかにござい ませんでしょうか。 ○事務局  一つ補足させていただきますと、外箱でも記載があった方がよろしいのではないかと いう御指摘ですが、確かに外箱はスペースが限られているということもございまして、 添付文書のように事細かく書くことがなかなか難しいケースが多うございます。そこで 現在一般用医薬品につきましても、薬局のカウンターで添付文書にどういうことが書い てあるかということが確認できるような仕組みを進めさせていただいておりますので、 箱を開けなければ分からないということもなるべくないようにということで対応したい と考えております。 ○松本部会長  安全性の確保のため、よろしくお願いいたします。全体を通じて、どなたか御意見は ございませんでしょうか。時間もかなりオーバーしましたので…。安全対策課長、何か ありますか。ではお願いいたします。 ○安全対策課長  本日は大変中身の濃い御議論を頂きまして、私ども事務局として宿題と感じておりま すことを幾つか御紹介することによりまして、私のお礼の言葉とさせていただきたいと 思います。まず、冒頭に風祭先生から御指摘のございました、例えば緊急安全情報発出 等についても、医療の第一線で使っていただいております先生の御意見を反映すること ということでございます。重要な問題でございます。具体的には私どもは、例えば学会 あるいは開発時、従来で言われているところの治験総括医師や代表世話人のようなお立 場の先生等、複数の先生に聞いて間違いがないようにはしているところでございますけ れども、そういったことをもう少し標準化いたしまして、SOPなどの形で整備ができ ればその方がよろしいかと思っております。  それから藤上先生からいろいろお話しいただいたところでございますけれども、緊急 性のある問題などから具体的に整理をいたしまして、先生方のお知恵を借りながら、何 と申しましても私ども情報を提供する側の都合だけでなく、受け取る側の立場に立った 在り方というものを今後考えていくきっかけにしてまいりたいと思っております。以 上、今日は本当にどうもありがとうございました。 ○松本部会長  それではこれで本日の審議を終了したいと思いますが、どなたかこれを是非という御 意見はございませんでしょうか。次回の日程等は、また改めて事務局から御連絡がある と思いますので、よろしくお願いいたします。本日はこれで閉会させていただきます。 私事で遅れまして申し訳ありませんでした。また、今日は予定よりもはるかにオーバー しまして、長時間どうもありがとうございました。                                      (了) 連絡先: 医薬食品局 安全対策課 課長補佐 渡邊(内線2748)