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過去の報告書等における少子化対策の基本的視点等について


「少子化に関する基本的考え方について」(平成9年10月人口問題審議会)

(1)少子化の要因への対応の是非

(1)少子化の要因への対応はすべきではないとする考え方

○ 「結婚するしない、産む産まないは個人が決めるべき問題である」という考え方については、大部分の者が結婚を望み、結婚すれば理想子ども数を平均2.6人としている現状の下において、基本的には「個人が結婚をし子どもを持つことを望んでいるにもかかわらず、これを妨げている要因を除去すること」の必要性までを否定するものではないと考える。
○ 「地球規模では人口は増加していることを考えると、日本の少子化はむしろ望ましい」という考え方については、日本が人口の増加までを目指すのではなく、著しい人口減少社会になるのを避けようとするのであれば、批判を受けるようなことではないと考えられる。
○ 「結婚や出産という個人的な問題への対応の効果はあまり期待できない」という考え方については、個人が望む結婚や出産を妨げる要因への対応を図り、それを取り除くことができれば、その結果としての出生率の回復への効果は一定程度期待できるはずだと考える。

(2)少子化の要因への対応をすべきとの考え方

 個人が望む結婚や出産を妨げる要因を取り除くことができれば、それは個人にとっては当然望ましいし、その結果、著しい人口減少社会になることを避けることが期待されるという意味で社会にとっても望ましい。
 このような観点から、少子化の影響への対応とともに、少子化の要因への対応についても行っていくべき。
 この場合、戦前・戦中の人口増加政策を意図するものでは毛頭なく、妊娠、出産に関する個人の自己決定権を制約してはならないことはもとより、男女を問わず、個人の生き方の多様性を損ねるような対応はとられるべきではない、ということが基本的な前提である。

(3)子どもを育てることについての社会的責任

 子どもは、次代の社会の担い手となるという意味で社会的な存在であることを認識し、また、子どもを育てることを私的な責任(家族の責任)としてだけ捉えるのではなく、社会的な責任である、との考え方をより深めるべき。
 この考え方については、子育ては親の責任であるという基本をゆるがせにすることにつながるという意見もある。
 いずれにせよ、我が国社会として、今後「子どもを育てること」に対して、どれだけ社会的に支援し、公的に関与していくべきかの判断にも関わり、また、家族観にも関わる重要な問題でもあり、今後、国民的な議論を更に深めていく必要がある。

(4)少子化の要因への対応に当たっての留意事項

 下記のような指摘があることに留意する必要がある。

・ 子どもを持つ意志のない者、子どもを産みたくても産めない者を心理的に追いつめるようなことがあってはならないこと
・ 国民のあらゆる層によって論じられるべきであること
・ 文化的社会的性別(ジェンダー)による偏りについての正確な認識に立ち、そのような偏向が生じないようにすること。例えば、女性は当然家庭にいるべき存在といった認識に立たないこと
・ 優生学的見地に立って人口を論じてはならないこと

(5)少子化の要因への対応と外国人の受入れとの関係

 労働力人口の減少等少子化の影響への対応としての外国人の受入れの是非についての方針をまず明確化すべきではないか、とする意見がある。
 しかしながら、少子化の影響への対応としての外国人の受入れを考慮するとしても、出生率の低下を補完できるほどの急速かつ大規模な外国人の受入れは現実的でないのみならず、我が国の一方的な事情により、外国人の受入れを所与の前提として政策を論じることは適当ではなく、その方針の如何にかかわらず、少子化の要因への対応を図っていく必要があると考える。

(2)少子化の要因への対応のあり方

 少子化の要因への対応のあり方を論ずるに当たっては、妊娠、出産に関する個人の自己決定権を制約してはならないことはもとより、男女を問わず、個人の生き方の多様性を損ねるような対応はとられるべきではない。
 したがって、少子化の要因への対応としては、以下のように、これまでの我が国社会全体のあり方を問い直す中で、すべての個人が、自ら結婚や出産を望んだ場合には、それが妨げられることのないよう、結婚や出産の妨げとなっている社会の意識、慣行、制度を是正していくとともに、子育てを支援するための諸方策の総合的かつ効果的な推進を図ることが重要である。

(1)固定的な男女の役割分業や仕事優先の固定的な雇用慣行の是正

1.意識・慣行・制度の是正
ア) 制度の見直しと国民の意識や企業風土の見直し
イ) 個人の生活と仕事の両立を誰もが尊重し合う方向での取組
2.今後検討すべき課題
ア) 仕事優先に関わるもの
イ) 女性の就業に関わるもの
ウ) 就業形態の多様化に関わるもの
エ) いわゆる正社員と短時間労働者、非就業者との公平性、中立性に関わるもの
(2)子育てを支援するための諸施策の総合的かつ効果的な推進
1.エンゼルプランの推進
ア) 子育てと仕事の両立支援の推進
イ) 家庭における子育て支援
ウ) 子育てのための住宅及び生活環境の整備
エ) ゆとりある教育の実現と健全育成の推進
オ) 子育て費用の軽減
2.少子化の要因への対応という観点からみた留意事項
ア) 子育てにかかる機会費用の上昇への対応
イ) 仕事と育児の両立支援
ウ) 核家族化、都市化の進展への対応
エ) 子育てのための経済的負担軽減措置子育ての持つ楽しみや喜びの再確認
オ) 乳幼児期における女性の就労支援方策
3.今後検討すべき課題
ア) 雇用環境の改善に関わるもの
イ) 子育て支援に関わるもの
 なお、以上の課題を検討するに当たっては、現行施策も含め、効果についての分析、見直しを行い、より効果的な推進を図る必要がある。
 また、雇用環境の改善に関しては、その結果、企業が仕事と育児の両立を望む者の採用そのものを手控えることにつながらないようにする、という視点が重要である。
(3)今後、更に議論が深められるべき課題
1.不妊が原因で子どもができない男女への対応等
2.多様な形態の家族のあり方


「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(平成6年12月16日 文部省・厚生省・労働省・建設省)

○子育て支援のための施策の基本的視点

・ 子どもを生むか生まないかは個人の選択に委ねられるべき事柄であるが、「子どもを持ちたい人が持てない状況」を解消し、安心して子どもを生み育てることができるような環境を整えること
・ 今後とも家庭における子育てが基本であるが、家庭における子育てを支えるため、国、地方公共団体、地域、企業、学校、社会教育施設、児童福祉施設、医療機関などあらゆる社会の構成メンバーが協力していくシステムを構築すること
・ 子育て支援のための施策については、子どもの利益が最大限尊重されるよう配慮すること


「夢ある家庭づくりや子育てができる社会を築くために(提言)」(平成10年12月少子化への対応を考える有識者会議)

○基本的な留意点

・ 結婚や出産は当事者の自由な選択に委ねられるものであり、社会が個人に対し押し付けてはいけない。
・ 少子化が進めば、労働力人口の減少と高齢者比率の上昇や市場規模の縮小などを通じ、経済成長へのマイナス効果や地域社会の活力低下が懸念されるなど、将来の国民に深刻な影響を及ぼす。安易な楽観論はふさわしくない。
・ 出生率上昇のためには女性が家庭に戻れば良いとするのは非現実的。男女共同参画社会の理念に反するとともに、労働力人口が減少に転じる見通しの中で、女性の就労機会を制限することは不適切・不合理である。


「少子化対策推進基本方針」(平成11年12月少子化対策推進関係閣僚会議)

○少子化対策の基本的視点

・ 結婚や出産は、当事者の自由な選択に委ねられるべきものであること
・ 男女共同参画社会の形成や、次代を担う子どもが心身ともに健やかに育つことができる社会づくりを旨とすること
・ 社会全体の取組みとして、国民的な理解と広がりをもって子育て家庭を支援すること


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