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過去の報告書等における少子化の影響分析について
「少子化に関する基本的考え方について」(平成9年10月人口問題審議会)
(1)少子化の影響
(1)経済面の影響
(労働力人口の減少と経済成長への影響)
- ・ とりわけ生産年齢人口の減少をもたらし、労働力人口の減少につながる。
- ・ 労働力人口の年齢構成も大きく変化し、高齢者の場合には、個人差はあるものの、短時間勤務を希望する割合が高いことを勘案すれば、実労働時間数を考慮した場合における労働力供給の一層の減少をもたらすことが懸念される。
- ・ 労働力の制約は、一般に貯蓄を取り崩すと考えられる退職者の割合の増加に伴う貯蓄率の低下と相まって投資を抑制し、労働生産性の上昇を抑制する要因になる。
労働力供給の減少と労働生産性の伸び悩みが現実のものとなれば、今後、経済成長率は傾向的に低下する可能性がある。
(国民の生活水準への影響)
- 労働力供給の減少と労働生産性の伸び悩みによる経済成長の鈍化と、高齢化の進展に伴い避けることができないと見込まれる社会保障費の負担の増大は、国民の生活水準に大きな影響を及ぼす。
- ・ 少子・高齢社会の結果、社会保障分野において現役世代の負担が増大し、世代間の所得移転を拡大させる大きな要因となる。
- ・ 諸般の構造改革に取り組まず、現状のまま推移した場合には、人口1人当たり所得の伸びの低下と国民負担率の上昇によって、現役世代の税・社会保険料を差し引いた手取り所得は減少に転じるという厳しい予測もある。
現役世代にとって働くことが生活水準の向上に結びつかないような社会では、生活・消費の両面で、経済・社会の活力が阻害される危険性が大きいという深刻な状況になる。
(2)社会面の影響
(家族の変容)
- ・ 単身者や子どものいない世帯が増加し、少子化が進行する中で、社会の基礎的単位である家族の形態も大きく変化するとともに多様化する。
単身高齢者の増加は、介護その他の社会的扶養の必要性を高める。
(子どもへの影響)
- ・ 子ども数の減少による子ども同士、特に異年齢の子ども同士の交流の機会の減少、過保護化などにより、子どもの社会性がはぐくまれにくくなるなど、子ども自身の健やかな成長への影響が懸念される。
(地域社会の変容)
- ・ 少子化の進行による人口の自然減により、人口の減少が全国的に進行すると見込まれる。その結果、広い地域で過疎化・高齢化が進行すると予想される。
このため、現行の地方行政の体制のままでは、市町村によっては住民に対する基礎的なサービスの提供が困難になると懸念される。
また、今後、大都市部においても急速な高齢化が見込まれることから、それに伴う諸問題が顕在化することが予想される。
(2)少子化の影響への対応
(1)経済面の影響への対応
- ○就労意欲を持つあらゆる者が就業できる雇用環境の整備
- ・ 高齢者、障害者、女性の就業環境の整備
・ 年齢や性別による垣根を取り払う雇用環境の整備
・ 終身雇用・年功序列賃金体系の下での固定的な雇用慣行の見直し
・ 労働力需給の不適合の解消
- ○企業の活力・競争力、個人の活力の維持
- ・ 高付加価値型の新規産業分野の創出
・ 国際的に魅力のある事業環境の創出
・ 一定範囲内での公的負担、少子・高齢社会にふさわしい財政構造
- ○公平かつ安定的な社会保障制度の確立
- ・ 現役世代と将来世代の給付と負担の公平と将来への不安の解消
・ 疾病や要介護状態の防止と高齢期における社会参加
(2)社会面の影響への対応
- ○地方行政体制の整備、地域の活性化
- ○子どもの独創性と社会性を養う教育と健全育成
独創性のある人材の育成、子どもの社会性を養う仕組みづくり
<概ねマイナス面の影響>
少子化の影響としては、家族の変容などに関しては意見が分かれるものの、上記のような概ねマイナス面の影響と考える指摘が多い。
ただし、例えば、生活面では、環境負荷の低減、大都市部等での住宅・土地問題や交通混雑等過密に伴う諸問題の改善などゆとりある生活環境の形成、一人当たりの社会資本の量の増加、教育面では、密度の濃い教育の実現や受験戦争の緩和などプラス面の影響を指摘する意見があることに留意する必要がある。
こうした指摘に対しては、あくまで短期的な影響であって、経済成長の低下が生活水準の低下をもたらす以上やはり生活にゆとりはなくなるとする意見、人口減少に伴い教育サービスの供給も制約され密度の濃い教育にはつながらないとする意見がある。
いずれにしろ、少子化が社会全体の様々な局面において計り知れない大きな影響を与えることは間違いない。
「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(平成6年12月16日 文部省・厚生省・労働省・建設省)
少子化については、子ども同士のふれあいの減少等により自主性や社会性が育ちにくいといった影響や、年金などの社会保障費用に係る現役世代の負担の増大、若年労働力の減少等による社会の活力の低下等の影響が懸念されている。
「夢ある家庭づくりや子育てができる社会を築くために(提言)」(平成10年12月少子化への対応を考える有識者会議)
少子化が進めば、労働力人口の減少と高齢者比率の上昇や市場規模の縮小などを通じ、経済成長へのマイナス効果や地域社会の活力低下が懸念されるなど、将来の国民に深刻な影響を及ぼす。安易な楽観論はふさわしくない。
「少子化対策推進基本方針」(平成11年12月少子化対策推進関係閣僚会議)
急速な少子化は、労働力人口の減少、高齢者比率の上昇や市場規模の縮小、現役世代の負担の増大などを通じ、経済成長へのマイナス効果や地域社会の活力の低下、子どもの健全な成長への悪影響など将来の我が国の社会経済に広く深刻な影響を与えることが懸念されている。
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