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厚生年金の適用拡大に伴う保険料負担とその影響等について

1 A案のカバーし得る範囲

(1) 「平成11年 就業形態の多様化に関する総合実態調査」によれば、「短時間のパート」のうち「20時間未満」の者と「20-30時間未満」の者の比率はおよそ3:7 (注1)。
(2) 一方、「平成7年パートタイム労働者総合実態調査」に基づく短時間労働者の年収分布によれば、過去1年間に働いたことがある一般「パート」(男女)のうち年間賃金が60万円未満の者は11.5%に止まる
(3) したがって、この結果による限り、A案により、現在非適用となっている短時間労働者のかなりの部分をカバーし得ると想定される。

2 被保険者数等の見通し

(1) 新たに被保険者となる者の数及び保険料の額

(1) 適用拡大した場合の適用見込み数、及び適用拡大に伴う保険料の額や年金財政への影響については、「平成13年パートタイム労働者総合実態調査」の結果等も踏まえて、今後検討する必要。
(2) なお、雇用保険における短時間労働被保険者数は、平成13年3月現在で約140万人(1,411,305人)。
 A案による場合に新たに被保険者となる者の数は、これよりも相当程度多くなるものと推定される (注2)。

(2) 想定される企業の対応

イ 短時間労働者への厚生年金の適用拡大に伴い、短時間労働者に係るコスト(保険料負担)が増加するが、これに伴う企業の対応としては多様なものが想定される

(イ) 商品やサービス価格への転嫁
 業種、企業毎の事情や、商品・サービスの市場競争力いかんに影響される。

(ロ) 労務コスト(賃金水準)の見直し
(1) 新たに厚生年金適用となる短時間労働者等に限った見直し
 ただし、短時間労働者の募集時の賃金水準は地域相場に影響される傾向が強い中で、人材確保上の困難が増大する可能性。

(2) 正社員も含め業務の進め方を全般的に再検討する中での労務コストの見直し

(ハ) 短時間労働者の処遇や配置の見直し、意欲の喚起等による短時間労働者の生産性向上への取組み

(ニ) 短時間労働者数の見直し
 ただし、生産性の向上が伴わなければ、必要な要員が確保できず業務が縮小したり、正社員にしわ寄せが及ぶ可能性。

(ホ) 所定労働時間の短縮(週20時間未満化)による適用回避
 ただし、短時間労働者の採用や管理に係るコストが増加し(資料4-6参照)、また労働者の就労意欲の維持や人材確保上の困難が増大する可能性。
(ヘ) 短時間労働者の業務の外注化による適用回避
 ただし、労働派遣や個人請負の活用等については、短時間労働者を雇用する場合に比べての費用対効果、要員確保の点が問題となる可能性。

ロ 「多様な就業形態のあり方に関する調査」(平成13年7月(財)21世紀職業財団)によれば、通常労働者の「4分の3」を「2分の1」に拡大した場合の対応として、半数近くの事業所が 「適用を避けるために特段の措置は講じない」 とし、極力適用を回避しようとの意向を有するのは1割程度(資料4-7 P31参照)。
 また、増加するコストへの対応として最も多いのは、「労務コスト全体の中で調整」、次いで「生産性の向上、価格転嫁等で対応」(資料4-7 P31参照)。

(1) 社会保険の適用範囲が通常の労働者の3/4から例えば1/2程度に拡大した場合に、現在雇用している社会保険非適用パートのうち新たに適用対象となる者について、社会保険適用を避けるために何らかの措置を講じるか。
 「適用を避けるために特段の措置は講じない」 44.1%
 「制度上可能ならば、新たな適用対象者について一部適用を避けようとする」31.8%
 「制度上可能ならば、新たな適用対象者全ての適用を避けようとする」 12.8%

(2) 増加するコストへの対応(M.A.)
 「労務コスト全体の中で調整」43.3%
 「生産性の向上、価格転嫁等で対応」20.5%
 「対応しない」17.6%
 「パートの雇用を減らす」11.1%

(業種別、規模別の詳細は、資料4-7 P32-39参照)

ハ 上記の企業に対する調査の結果に照らせば、各業種・企業毎の短時間労働者の雇用割合などによる影響の差異は想定されるものの、全般的にみれば、対応可能な範囲内とみることができる。

ニ また、パートタイム労働対策の今後の進展や、就業調整の縮小により、短時間労働者の意欲の喚起や能力の一層の発揮が図られ、生産性が向上するならば、これらコストについて一層円滑な吸収が図られることも期待される。

補足(資料4-4関係)

(注1)
 「平成11年就業形態の多様化に関する総合実態調査」においては、「短時間のパート」「その他のパート」に係る1週の所定労働時間別労働者割合は次のとおりとされている。

(%)
  20時間未満 20-30未満 30-35未満 35-40未満 40時間以上
短時間のパート 18.8 46.1 17.6 12.8 4.7
その他のパート 2.4 8.1 9.3 27.9 52.4

(注2)
 短時間労働者に雇用保険が適用されるためには「1年以上引き続き雇用されることが見込まれる」ことが要件の一つとされているが、短時間労働者にあっては、期間の定めのある労働契約の下で働く者が少なくない。
 一方、厚生年金の現行の扱いをそのまま適用する場合、2ヶ月以内の期間を定めて使用される者は適用から外れるが、当該期間を超えて引き続き使用されることになった場合には厚生年金が適用されることとなる。
 なお、適用基準の見直し自体が企業や労働者の行動に影響を及ぼす可能性にも留意が必要。


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