1. 公的年金における積立金の位置付け
公的年金においては、段階保険料方式、すなわち、賦課方式(そのときどきの高齢者の年金をそのときどきの現役世代の保険料で賄う方式)を基本としつつも将来の急速かつ過度となる保険料の上昇を避けるために一定の積立金を保有することを前提とした財政計画に基づき段階的に保険料を引き上げていく方式をとっている。 国民の合意に基づく一定の長期的な財政計画による財政運営を行っているので、私的年金のようにいわゆる給付現価に相当するものを現に積み立てるべき額と考えるのではなく、基本的に、財政計画上の積立金に相当するものを現に積み立てるべき額と考えるのが適当である。 |
2. 積立金運用の状況が年金財政に与える影響評価のあり方
公的年金における積立金の位置付けの観点から、積立金の運用評価のあり方を整理する必要がある。具体的には、財政再計算の見通しどおりに実績の積立金が推移しているかどうかをチェックするという立場に立ち、その乖離要因のひとつである運用収益について、その状況が年金財政に与える影響を評価することとなる。 その際、公的年金の給付額は長期的にみて名目賃金上昇率に連動して増加するものであることから、名目運用利回りと名目賃金上昇率の差である実質運用利回りにより運用収益を捉える必要がある。 その上で、まず、実質運用利回りが財政再計算上の前提を達成できているかどうかという観点から年金財政に与える影響の評価を行う。 さらに、実質運用利回りを「名目運用利回りと複合ベンチマーク収益率との差」の部分と「複合ベンチマーク収益率と名目賃金上昇率との差」の部分に分ける。 前者のうち市場運用分の運用収益率については、複合ベンチマーク収益率と比較し、各資産クラスごとに乖離の要因を把握・評価・検討を行い、後者については、策定されているポートフォリオや財政再計算の経済的前提の置き方の問題について、評価・検討を行う。 |
3. 積立金運用の状況が年金財政に与える影響評価について
積立金運用の状況が年金財政に与える影響については、報告書を作成して、社会保障審議会に提出し、公表することが義務づけられている。
(参考)
厚生年金保険法(抄) (報告書の提出及び公表)
国民年金法(抄)
|
注:報告書は、積立金の自主運用が開始された平成13年度の決算より作成される。