02/05/29 第6回これからの医業経営の在り方に関する検討会議事録         第6回 これからの医業経営の在り方に関する検討会 日時    平成14年5月29日(水)16時00分から18時00分 場所    厚生労働省共用第7会議室 出席委員  石井孝宜、内田裕丈、大石佳能子、川合弘毅、川原邦彦、小山秀夫、       田中 滋、谷川和生、津久江一郎、豊田 堯、西澤寛俊、西島英利、       長谷川友紀、南  砂                            (五十音順、敬称略) 議事内容 ○座長  ただいまから、第6回「これからの医業経営の在り方に関する検討会」を開催いたし ます。委員の皆様方におかれましてはご多忙中のところ、当検討会にご出席いただき、 誠にありがとうございました。本日は神谷委員がご欠席との連絡を受けております。  それでは議事に入らせていただきます。本日は、医業経営の近代化・効率化に関する 意見発表を、川原委員、小山委員、谷川委員のお三方にお願いしたいと思います。初め に事務局から資料の確認と説明をお願いいたします。 ○竹林補佐  1枚目は、本日の議事次第です。2枚目に委員名簿を用意させていただいております 。3つ目に、事務局提出資料と通知の写しがあります。以降は本日ご発表いただく委員 の方々の資料です。1つ目が川原委員の資料、2つ目が小山委員の資料、3つ目が谷川 委員の資料です。  それでは本日事務局から提出させていただく資料について、簡単にご説明いたしま す。まず、第6回「これからの医業経営の在り方に関する検討会」事務局提出資料の1 つ目は、3月28日に提出された社会保障審議会医療部会の「医療提供体制に関する意 見」を、全文用意させていただいております。資料は2頁以降8頁までとなっておりま すので、内容については後ほどご覧いただければと思います。  9頁以降は、「規制改革推進3か年計画」(改定)の抜粋を用意させていただいてお ります。こちらも去る3月29日に閣議決定しております。この中の下のほうに、医療機 関経営に関する規制の見直しについて盛り込まさせていただいております。こちらの下 から2行にありますように、「直接金融市場からの調達などによる、医療機関の資金調 達の多様化や企業経営ノウハウの導入などを含め、経営の近代化、効率化を図ることが 必要である」ということについて、政府としては14年度中に検討することとしておりま す。  最後に10頁目は、こちらの委員の先生方にまとめていただいた中間報告書を踏まえ、 理事長要件の見直しについて盛り込まさせていただきました。また理事長要件の見直し については、別添のように4月1日付で通知を改正させていただきました。内容につい ては、後ほどご覧いただければと思います。 ○座長  では後でご覧いただければと思います。  では早速、委員の意見発表に移らせていただきます。まず川原委員から、よろしくお 願いいたします。 ○川原委員  私は今日ご一緒に意見発表をなさいますお2人の委員の方々とは異なり、発表内容を 文章にまとめてまいりました。全文この場で発表いたしますと、所定時間には収まらな いと存じます。従いまして、ポイントになるべき所を太文字にしてきましたので、その 部分だけに限定し論述させていただきます。 この意見書は医業経営の近代化、効率化に関して、経営管理機能の強化という視点から まとめてみました。 1.経営管理機能の必要性  過般、政府・与党社会保障改革協議会から出された、「医療制度改革大綱」は、その 保健医療システムの改革の中で「医療提供体制については、限られた資源を最も有効に 活用できる体制を構築し、情報の開示に基づく患者の選択を尊重しながら、医療の質の 向上と効率化を図り、国民の医療に対する安心と信頼を確保する」と明言し、IT化の推 進、更なる広告規制の緩和、EBMの推進などといった項目と共に「医療機関の経営の近代 化、効率化のための早期検討」といった課題が揚げられたことはご承知の通りでありま す。これは言うまでもなく、医療機関そのものの経営管理能力の強化を問うものに他な りません。医療機関の経営の在り方には依然として多くの改善すべき課題が山積してい ることを、いみじくも浮き彫りにしたものと思います。とりわけ医療の質という観点か ら見た場合、健全かつ効率的な経営基盤なくしては、質の担保はなし得ないのではない かと考えている次第であります。従いまして医療の質と経営の質は、同義的不可分一体 として、とらえることができます。医療における経営の質とは経営成果(out-come)の 最大化を実現するために、経営管理者が合理的かつ効率的な取り組みを行うための、最 適化された構造(structure)、および過程(process)と言うことができると考えておりま す。雑駁ではありますが、ここに、経営成果を例示する形で6項目ほど揚げさせていた だきました。その中の1つに、提供する医療の質の向上と効率化を実現することによっ て、患者に対し最善の医学的成果を与えるというのがあります。まさに今回揚げさせて いただいたテーマと合致するのではないかと考えています。  つまり、経営の質を追求する行為そのものが、経営成果の最大化を図るためのプロセ スであり、結果的に良質かつ効率的な医療サービスを提供できる組織(ストラクチャー )を構築することになります。そしてこれらを円滑にするための活動こそが、経営管理 機能の強化であり、今後の医業経営の在り方を考えた場合、必要不可分であると言える わけであります。 2.医療法人における経営管理機能を高めるための具体的手法  それでは、以下「医療法人における経営管理機能を高めるための具体的な手法」につ いて論述させていただきます。 (1)経営執行における責任分担制の推進  医療法人には本来、医療法第46条2において、理事3名以上、および監事1名以上の 設置が義務付けられておりますが、理事会も含めて、その職務・権限等については、明 確化されていません。また経営決定権が理事長に収斂されるという実態が主流であると すれば、医療行為に関する管理責任と併せて、その責務は極めて過大になっていると言 わざるを得ません。さらに今次診療報酬改定に見られるように、財政支出緊縮を明確に 意図した医療費抑制策の推進は、今後の医療経営を一段と厳しい環境に追い込む恐れが あるという認識を持たなければなりません。  一方で広告規制緩和や自己負担増に伴う医療の質そのものへの監視的意識は、ますま す高まることが予想されます。このような中で、従来における理事長集中型の経営執行 体制を見直し、とかく形骸化が指摘される理事および理事会機能の強化を図ることは、 極めて重要であります。具体的には各理事による執行分担責任制の導入が適当であろう と思考しております。その前提としては、各理事の業務執行範囲を明確化させつつ、有 機的に連携し得る体制を構築することが、肝要であります。  理事会(あるいは担当理事による会議システム)は、こういった各部門の執行責任者 の意見調整ならびに業務推進における調整機能としての役割を果たさなければなりませ ん。医業経営環境の変化が加速度的に進む中で、診療活動と経営(管理)活動は、今後 ますます密接にして不可分となり、これらへの的確な対応が、経営安定化を実現するた めの非常に大きな要素になるものであることは言うまでもありません。ここでの最大の ポイントになるのは、権限の分離を実質的にかつ確実に行うことにより、理事長はあく までもその最終責任を負うというスタンスを明確に示すことであります。また理事の人 選に当たっては、勤務医師や看護師等々をその任に充てることも、経営参画といった観 点から、重要であります。  現在、理事構成要件としては認められ、実行されておりますが、より成果(実効)の あがる仕組みを考えるといった視点から次の点をあえて論述させていただきます。近年 、株式会社が外部重役、いわゆるOutside Director制を導入するケースが増加していま す。社長の提案事項に対して、客観的かつ独立的な意見を出すことができる立場にある ため、外部重役を通じて外部領域における経験や知識を、トップマネジメントに導入で きるといった大きな利点を有しております。したがって医療法人が民間のエキスパート を採用して登用する、あるいは組織上、必要のある特定分野について精通している実務 家を、外部理事として積極的に選任することも、その選択肢として考えられるのであり ます。  さらに医療法人は公益性が極めて高い組織であることを念頭に置き、医学的専門知識 を有する医師・歯科医師を主要件として、比較的規模の大きい医療法人組織の中に最高 経営責任者(CEO=Chief Executive Officer)、最高執行責任者(COO=Chief Operating Officer)などといった役職を設置し、職務・権限等をより一層明確化することも、1つ の方法ではなかろうかとも考えられます。このように「経営執行陣」が有機的に機能 し、組織体制が強化されることは、医療法人としての経営管理機能の強化に直結するこ とになるものであります。  わが国固有の医療組織文化としてすでに存在する医療法人の機能を十二分に発揮し得 る経営組織体制を構築することが先決する取り組み課題であり、理事の責任分担制を基 本とした経営執行機能の強化・充実を図るための誘導的施策を講じることが必要であろ うと痛感している次第であります。 (2)根拠に基づく経営の執行(Evidence-Based-Management)  根拠に基づく医療(Evidence-Based-Medicine)は、医療の質の向上を目的とするもの であり、ICDコーディング、DRG、クリティカルパスなどと共に、医療の標準化の キーワードとして挙げられ、治療ならびに治癒効率の最適化に大きく貢献するものであ ることは、すでに立証済みであります。医療の質を担保する大きな手段として、経営の 質の向上が求められることは、既述しましたが、医療と同様に、経営においても経営管 理機能を高めるためには、根拠に基づく経営の執行がなされなければならなくなったこ とを、痛切に感じている次第であります。  目前に迫っている病床区分にしても、地域社会において医療機関として必要とされる 機能特化のための診療圏でのポジショニングの確立、あるいは短期的、中期的、長期的 視点からの需要測定をベースにした、市場細分化アプローチ戦略の策定を行うなど、科 学的データ、(時には来院患者のカルテ分析をも加えて)により確認し、決断を下さな ければならなくなったのであります。  また経営管理者は、絶えず経営状況を把握し、内外の変化に対し、適切な対応をする ことを厳しく求められるようになりました。経営状況の把握方法としては、財務による 経営分析、医事統計による数値分析、あるいは医事統計を利用した収益分析などが挙げ られます。これについての詳しい説明は、割愛させていただきます。担当理事をはじめ とする経営幹部に、これらのデータを定期的に提供し、かつこれらをベースとした戦略 会議を開催することは、経営責任の所在を明確にするだけでなく、未来志向の経営を全 院的に検討する上でも非常に意義の深いものであり、まさに、このような経営情報の院 内共有化という土壌づくりが求められるようになったと考えております。  また現在検討されている新病院会計準則、あるいは医療法人会計準則が適用されるこ ととなれば、財務状況などについて、類似医療機関との相対的・客観的な比較が可能と なるばかりでなく、経営指標の策定が容易になることが期待されます。根拠に基づく経 営の執行は、院内・院外サーベイ機能の強化にも、大きく貢献するところであります。  「自院における経営成果」は最終的には利益に反映されます。しかしそのプロセスに おける診療活動の適正性こそが、経営上の最重要課題であることは言うまでもありませ ん。したがって自院における医療パフォーマンスを定期的に測定し、これらを客観的デ ータと比較し得る体制を構築しなければなりません。これらの切り口として、入院患者 の平均在院日数とか、疾病別・年齢別分類といった医事統計データとか、財務データを 基礎情報として用意し、これらを部門別、診療科目別、疾病別といった観点から、コス トと収益の関係に着眼しつつ、経営効率を測定することが、より重要になってきたこと を認識しなければなりません。さらには自院の姿を客観的にとらえるといった観点から 、積極的に日本医療機能評価機構による、病院機能評価の受審といった客観性を重視し た中で、自院の姿をとらえることも視野に入れるべきであろうと考えております。 (3)経営管理機能強化のための個別的管理手法(主たるもの)  経営管理機能強化のための個別的管理手法について、主たるものを5項目ほど論述さ せていただきます。 イ、経営的観点からの組織横断的部門の創設   理事会が医療法人の最高意思決定機関としての機能を完備するとすれば、理事会での 決定事項を実施するための組織体制を改編しなければなりません。従来の診療体制ある いは、診療機能を中心とした組織体制に加え、新たに組織横断的な経営管理部門を創設 し、法人内における正式な組織として、位置付ける必要があります。当然、専任の職員 を配置することになりますが、その配置体制は医療部門、あるいは医療関連部門、各事 務部門等からの選任により、経営管理に関する統括的な役割を担うに足る充実したもの にならなければなりません。  組織内における位置付けは、理事会に直結する下部組織とし、理事会を補佐し、その 機能の強化を図るための実動的役割を担うと同時に、組織全体の活動をゼネラルに統合 管理する役割も担うことになります。したがってその名称も、「経営本部」とか「経営 企画部」などといったような、現業部門との違いが一見してわかるような名称が好まし いのではなかろうかと考え、付記させていただいた次第です。 ロ、人事機能の強化  診療スタッフの量的充実については、病院機能に応じた施設基準等で予め決められ、 その遵守を義務付けられております。他との差質化を図るためにも、それを上回る人員 配置を視野に置いた経営執行を行うべきであり、そのためにも経営体力を強化する必要 があります。ここで言う経営体力とは、収益力を指すものですが、この収益は当然、経 営成果として確保できるものであります。  次に「質的充足」について、言及させていただきます。質的充足とは、文字どおり職 員の質の向上を意味するものであります。各医療機関に集う職員が、その能力を遺憾無 く発揮するためには、経営執行者の明確かつ統一的な経営方針の下、職員の業績を適正 に評価し得るシステムを構築し、機能させなければなりません。すなわち職員を第2の 顧客としてとらえ、経営資源としての人材が統一的目的の下で、常に満足感(Employee Satisfaction)を持って従事できる環境を整えることが、極めて重要となり、公平な人 事システムの導入が、従前にも増して求められるようになったと言えると思います。医 療が労働集約型産業である以上、職員の質的充実は、即座に経営に反映することは、改 めて言うまでもありません。しかしながら医療法人組織は、数多くの専門職により構成 されている人的集団であり、かつ職員の適正評価の技術的遅れという観点から、医療界 全体での進捗状況は、決して芳しくないのが現状であります。 ハ、コスト管理の徹底  医療サービスにおける最適なパフォーマンスを念頭に置きながら、利益確保に向けた コスト管理を徹底させることは、今後の医業経営の在り方の中でも、極めて重要な課題 として挙げられるだろうと考えております。特に疾病別、診療科目別、あるいは部門別 といった観点から、コストと収益の関係分析を行い、経営効率を測定することは、最早 欠かせない項目になったと理解しなければなりません。この場合、医療行為そのものに 対する原価意識を医師をはじめとする医療従事者に定着させることは、非常に重要であ ります。  今後は医師やその他の医療従事者についても、年功序列型、慣行相場型給与体系から 、新たなるインセンティブ給与体系の移行の確立、あるいは職能給、業績給制度の導入 などを視野に入れながら、最大原価たる人件費をコントロールする必要性が生じてきた ことを認識しなければならなくなりました。また医薬品や診療材料費については、その 使用状況を治療効果との因果関係を踏まえて分析し、適正化を図っていくというスタン スが重要であり、EBMの推進にも繋がるものであります。前述したコスト管理につい ての院内サーベイの結果が、適切に診療部門にフィードバックされ、その後の診療活動 に反映されるといった経営管理システムの構築が、経営管理機能を強化することになる のではないかと考え、記述させていただきました。 ニ、院内情報のデジタル管理体制の構築  IT化の促進は経営的視点から見ても大きな意義があり、本題である経営管理機能の 強化に直結するものであります。電子カルテやオーダリングシステムなどによる診療活 動の効率化、あるいは経営情報をはじめとした院内情報の共有化、さらにはネット環境 をフルに活用した連携体制の強化等、経営管理手段としてのインフラ整備への期待は大 きいものがあります。IT化の推進による経営基盤の強化、ならびにローコスト体制確 立の効果は極めて大きいものと思考されます。  医療の標準化を円滑に進めるためには、クリティカルパスの導入は不可欠であります が、その前提として、院内における診療実績を的確に分類し、その結果を蓄積し、これ らを十二分に経営に反映させる必要があります。これらを革命的に推進する上で、院内 情報のデジタル管理体制の構築が大前提となるものであり、院内LANをベースとした 電子カルテ、オーダリングシステムの導入を早急に推進しなければならないと考えてお ります。とりわけ電子カルテの導入は、経営原資たる膨大な累積情報を、極めて容易に 日々の診療活動に反映させることが可能となるばかりでなく、経営効率化といった観点 からも、計り知れないメリットを生み出すものと考えております。 ホ、利益管理体制の強化  良質な医療を効率的に提供した結果としての利益は、さらなる投資的原資として、温 存させなければなりません。利益は日々の経営活動の成果であり、計画的経営のもとで 確保されるべきものであります。そのためには経営執行陣の明確な経営方針に基づく、 経営計画が必要となります。同時に経営計画に対する進捗管理も、確実に機能させなけ ればなりません。進捗管理とは、計画推進上の差異分析から対応策の検討、さらに修正 計画の推進といったマネジメントサイクルを指すものですが、これらを統制する機能と しては、冒頭で述べた担当理事を中心とする会議システムの導入が、最適であろうと考 えております。これらを定期的に実施することが、組織横断的に問題点の共有化を図る といった観点からも、非常に重要であり、経営の効率化を実現する上でも、是非導入し なくてはならないものと考えております。  以上、経営成果の最大化を目的とした個別的経営管理手法の主たるものについて、私 見を述べさせていただきました。結論的には経営管理機能の強化こそが、結果的に良質 かつ効率的な医療を提供し得る組織を築き上げる、と言っても過言ではなかろうかと考 えております。そして上述したそれぞれの手法は、当然のことながら密接に連動し、そ れらの集大成こそが、最大の経営成果(out-come)を生み出すものであろうと確信して おります。以上をもちまして私からの意見発表を終えさせていただきたいと思います。 ○座長  どうもありがとうございました。引き続き小山委員から、ご報告をお願いいたしま す。 ○小山委員  私からは、ごくごく雑駁なお話です。スライドを使わせていただきます。                (スライド開始)  まずは医業経営の在り方という会議に出させてもらったので、やはり1つのテーマと して、民間をやるといっても、公立病院の話も少ししないといけないのではないかと思 います。これは『地方公営企業年鑑』です。つまり都道府県立病院と市町村立病院で、 公営企業法を適用している病院の経営状態を示しています。総収支が黒字というのは、 100を超えていれば黒字です。466病院の総収支の平均が102.0で、赤字部分が1995年では 95.4でした。収支比率は全部100になると、ちょうどプラマイゼロという形で、100以下 だったらその部分が損益というように見てください。1999年にはこれが102.2で、94.7と いう形ですから、1995年よりも1999年のほうが、自治体病院の経営は少しよくなってい るわけです。  普通、医業収支には補助金は入っていないのですが、この総収支には、補助金が両方 に入っています。どういうわけか役所の会計では、「収支比率」と言うのですが、私ど もは「収益」とか「費用」と言っているのです。医業収支には収益のほうに、若干の補 助金が入っていますが、それで1993年を見ても、95などという形です。公営企業法上3 条・4条予算で、不動産投資のような資産投資と経営上の補助金との両方があります が、これを民間の全くの経常利益で計算して、そういうものを全部一文も取ってしまい ますと、1999年でいきますと、実際には黒字病院でも89.1、赤字病院に至っては80.7% です。  実質経常収益というのは、医業収益以外の補助金を全部取ってしまった場合の、本当 にそのままです。ただ民間と比較する場合は、民間病院にはほんのちょっとでも補助金 がありますので、赤字病院は大体1年間の運営費の2割は、他会計から入っているとい う意味です。黒字病院だと89.1ですが、約10%と見ていただければよろしいかと思いま す。  これは病院を黒字と赤字を100%ずつにして、どの辺にいるのかということです。どう も最近の傾向ですが、不思議なことに、50〜99床のほうに黒字病院が多く、200〜399床 ぐらいの自治体病院に赤字が多いのです。民間病院も同じです。診療報酬上、200床以上 の病院は初診料を全部特定医療費化してしまうとか、199床以下のほうが外来の定数が得 だとか、いろいろなことをしていますので、200〜400床の所には赤字が多くなってくる という傾向があるようです。  これは視覚的に訴えてみようということで、黒字公立病院の所在地です。例えば北海 道ですと、60公立病院があるとすると、60分の60、全部が黒字だと100%ですが、いまは この色ですから、北海道の場合は60公立病院のうち、大体半分強が黒字で、48%ぐらい が赤字というように色分けしてあります。この色の濃い所はいいのですが、真っ白い所 が30%以下です。ですから黒字病院が例えば10個あるとすれば、黒字病院は3つしかな いという所は、このように白い所になります。宮城、埼玉、神奈川、大阪、島根、高 知、愛媛、沖縄が、公立病院で赤字の多い所です。不思議なのですが、福島県は黒々と なっているとか、いちばん黒い山梨県は赤字がないということで、やはり何か地域性が あるのでしょうか。  いちばん多くの問題で、公立病院には補助金が入っていて、民間病院には入っていな いという議論は、散々耳にタコができるほど聞くのですが、そのとおりです。事実で す。ただ、もう少し分析的にものを見ると、これは全国病院経営管理学会の給与表で す。青が公的病院で、赤が私的病院です。病院職員の職種別給与は、医師、事務員、薬 剤師ということで、これを見ていただくとお分かりでしょうか。作業療法士や理学療法 士以外は、すべて給与は民間よりも公的なもののほうが高いのです。場合によっては 10%以上も高いのです。これは平均値ですが、医師でも高いし、事務職などもすごく高 く、差が大きいのです。ついでにはり・きゅう・マッサージ師なども、すごく高く、准 看護婦もこんなに給料が違うのです。ですから人件費の高さが、公的病院と民間との給 与格差が、実は経営格差だということは昔から言われていることです。  ただ勤続年数を比較すると、上が公的病院で、下が民間病院ですが、どうでしょう か。事務職などは平均値を取っても、公的では20年です。しかし民間だと10年です。先 ほどはり・きゅう・マッサージ師とか、准看護婦などと言いましたが、これを見てもら うと、公務員給与と民間給与の格差というものを勤続年数で修正すると、給与の高さと 低さの説明が、かなり付いてしまうのです。これは本当のことです。ですから公的・民 間の議論をするときには、もう少し慎重にと思っています。  スライドではとても用意できませんでしたが、このほかに公的と民間が違うのは、例 えば物件費です。外部から買う物です。例えば薬などですが、そういう物の値段は民間 のほうが安くお買いになって、なぜか公的な所は高く買っております。対薬価で見た場 合、購入価格が大変違うわけです。厚生労働省が決めている薬価を、どうして厚生労働 省の病院が安く叩き買うのかという話もありますので、その格差があります。物件費と 人件費の格差が説明できれば、民間と公的な病院の格差は、かなり説明がつきます。  私どもの国立医療・病院管理研究所は、3月31日で廃止になり、4月1日からは「国 立保健医療科学院」という名前になって、私は経営科学部部長となっております。1999 年度から2001年度までの3年間、私どもの旧国立医療・病院管理研究所では、病院管理 者の研修会というのをやっており、この3年間に参加された方に郵送留置きで、調査に 協力してくれますかということで、「してあげる」と言った人に定点観測で、いろいろ な調査をさせてもらっています。これは医療システムに適切な経営管理技法を構築する ために、病院における経営管理技法の導入について検討し、その効果等を明らかにする ことを目的に行われた調査の一端です。  対象者の属性や病院の属性、病院経営管理技法への知識と関心、診療報酬に対する意 見、その他ということで、一応定点観測をした3年分を串刺ししたものを、今日お見せ します。回答者は967病院で、医師が239人です。医師というのは、「病院長コース」と 言っています。看護職はみんな管理職で、「看護部長コース」と言っていますが、これ が332人です。事務職は「事務部長コース」といって、396人です。この967人分の回答か ら、今回は病院内部の経営管理についてご説明します。  この説明をする目的は、最近病院の経営というのは、全くの素人で無理無駄が多く、 医者がやっているから余計駄目なのだということをよく言われますが、どう考えても私 にはそう思えませんということです。回答者の属性を見ていただくと、967人のうち、国 が83、公的が368で、公立病院も入った社会保険団体で医療法人が246、25.4%、個人は わずか1.4%しかありません。個人病院については、私どもはほとんど研修を受けており ません。医療法人の数が少ないというのもありますが、全体的に見ますと、都道府県 立、市町村立、社会保険団体にずっと寄せられた形のデータです。ですから、かなりの バイアスがあります。  病床数については、最頻値の病床は300〜399床、200〜299床です。日本の病院の平均 数は149床ぐらいですから、かなり大型病院にズレています。病床利用率も最頻値の90〜 95が、28.1という形で、半分以上が90%を超えています。これも日本全体の病床利用率 からすると、高めになっています。平均入院単価ですが、ここの最頻値も3万〜3万5, 000円で2万2,000、22.9%です。5万円以上が3.8%です。今年の研修会で初めて、1床 当たり10万円という病院に7病院ご参加いただきました。ついに日本も1床当たり10万 円の単価を取る日がきたかなと思っておりますが、それはすごく稀です。最頻値でいち ばん多いのは、3万〜4万円の間に、グサッと固まっています。  平均在院日数も、20日を切るとか切らないなどと言っていますが、実際には20日を 切っている病院が43%ぐらいで、ほぼ半分ぐらいまでは平均在院日数が、20日を切って いる病院です。50日以上の14.1%というひと塊がありますが、これもわりとお年寄りだ けとか、精神病院などといった感じです。平均外来単価もすごく高いですね。7,000〜9, 000円で最頻値になっています。紹介率は20%から変わっていくのですが、大体最頻値で 10〜20の所が、27.0%ぐらいです。ですから全体的には地域にある普通の300床前後の病 院が、回答している中心的なものだということになります。  この平均在院日数、病床利用率、平均入院単価、平均外来単価、紹介率というのを、 私どもは「経営5指標」と言っています。この関係をいま集まった病院で見ると、こう いうことが言えます。平均在院日数が短かければ短いほど、入院単価が高いのです。こ れはそうですよね。−0.3255になる。病床利用と紹介率に関しては、紹介率が高い病院 は、病床利用率も高いし、平均入院単価も高いし、外来単価も高いということになって いるわけです。経常利益率というのは、私はあまり意味がないと思っているので、ここ では取っておりません。単価や利用率が高いかどうかという関係では、2つずつ*印が 付いている所を見ていただくと、この5指標ではそういう関係が言えるということが分 かっています。  毎年データを入れ替えて、大体やっていますが、特に最近はこういうことになるわけ です。紹介率が高くなると病床利用率が上がって、平均入院単価も上がって、平均外来 単価も上がり、平均在院日数が短くなればなるほど、平均入院単価が高くなるというこ とを、別の言葉で言いますと、紹介率が高くなるか、どれが先かは分かりませんが、ど れかが先になっていくと、一気に1床当たりの収益が上がっていくということです。 ちょっとジャーナリスティックになるかもしれませんが、品のない言い方をすれば、 はっきり言って公立病院も民間病院も含めて、勝ち組病院と負け組病院ははっきりして いるということです。勝ち組に乗った分は、どんどん勝ち組を驀進していくという傾向 になっているように思います。  経営管理に関する意識も、ごく簡単にご説明します。経営変革を促しているか、動機 付け、自己啓発、コミュニケーション、職員教育、意思決定システム、業績評価、個人 面談とありまして、やっている所が青い所です。一般企業と全く同じではないのです が、一応バランススコアカードというものを使って、リーダーシップについての項目を いくつか作って、これを定点観測してみると、答えてくれた病院は、こんな格好でし た。動機付けも結構しているし、教育もしているというように見ていただけますか。た だ業績評価や個人面談を行っているかというと、まだこれからやろうとしているという ぐらいの所が多いわけです。  経営方針についても、経営方針を現場に浸透させるというのは当たり前のことです が、運営委員会とか、理念とか、いろいろなものがあって、これも個人ごとの目標設定 が浸透しているかというと、23%ぐらいですよね。大きな組織、例えば厚生労働省で個 人ごとの目標設定をちゃんと浸透させているかと聞くと、多分「イエス」とはなかなか 答えにくいですよね。ですから普通の会社でもこのくらいではないかと、私は思ってい ます。  経営方針と戦略については、「戦略を落とし込む」といった経営用語ですみません が、ちょっと見ていただきたい。ここに「広報活動部門の存在」というのがあります ね。50%ぐらいの病院は、専門の広報活動部門を持っております。先ほどの川原委員の お話にもありましたが、私どもの調査対象になった約1,000病院は45%ぐらいが、専門の 経営企画室というのを、もうすでに持っております。ですから何もやっていないわけで はないと思います。プロセス管理についても教育、自主的な業務検討会、目標達成状況 の評価というのも、全然やっていないわけではありません。少し弱いかなという感じで す。  実は、平均入院単価というのがありますが、これは1人1日1ベッド当たりの単価で す。これを3万5,000円以上と3万5,000円以下でグサッと切ってみると、上が3万5,000 円で、下が3万5,000円以下です。例えば広報部門の存在は、3万5,000円以上のほう が、広報活動部門を持っていることがはっきり分かります。今度は紹介率20%以上の部 分と、20%以下の部分に分けて、上が20%以上の分です。紹介率の高い所を見てみる と、不思議なことに紹介率の高い病院、例えば経営企画室の設置というのも、明らかに 経営企画室を持っている率は、紹介率の高い病院のほうに多いことが分かるわけです。  別に何も操作したわけではないけれど、こうなっているのです。  最後は、お手元の資料をご覧ください。統計的にどうかは分かりませんが、全部の項 目がどういう因果関係にあるかを大量データでやるには、林の数量化しかないので、プ ログラムにドーンと入れてみると、この表になります。この表はどう見るのか。平均在 院日数は、まずここです。平均在院日数の短い病院があったとすると、その病院の特徴 は、今回調査した項目のどこと関連するのか、病床利用率の高い病院は何が関連するの か、平均入院単価の高い病院には、どういう特徴があるのか、平均外来単価の高い病院 には、どういう特徴があるのか、紹介率の高い病院には、どういう特徴があるのかとい うことです。  ご専門の方はすぐに分かると思いますが、いちばん下に重相関係数を入れておりま す。0.56という所が平均入院単価です。例えば真ん中の平均入院単価を見ていただきま すと、平均入院単価の高い病院の偏相関係数、つまり平均入院単価の高い病院には何か 特徴があるのかというと、1番目に出てくるのが、診療録管理体制加算を取っていると か、急性期特定病院加算を取っているとか、当たり前のことです。その次は、目標達成 状況の評価や経営戦略の持続性、経営企画室の存在、組織改革と開発、経営変革を促し ている、自己評価システムを取り入れている、教育の年次評価を行っているという項目 で、それらに関連のあることが分かります。  私は日本で初めての分析データだと思って、3年間ずっとやっているのですが、これ と同じことを縦で見ていただくと、いま紫の所が急性期病院加算です。赤が診療録体制 加算ですから、診療録管理体制加算が、これが低かったり高かったりすることの全部の 説明要因になっているのです。なぜでしょうか。診療録管理体制というのは、お医者様 は2週間以内に患者さんの退院サマリーを書かれて、診療録を管理してデータにしてい るだけですが、その病院が紹介率も高いし、外来も入院の単価も高い、病床利用率も高 い、平均在院日数も短いのです。つまり、それぞれご自分たちの力もあるのですが、き ちんと医師がマネジメントされている病院の経営指標は、それだけ高いということなの です。  それと同じように見ていくと、ここに経営企画室というのがあります。ここにもあっ て、この辺にもある。また広報部門もどこかにあるのです。そうすると一般的に言う と、広報活動部門があって、経営企画室を持っていて、教育をきちんとやって、戦略を 組織に投入させていて、診療録管理体制加算やいろいろな診療報酬点数が取れている所 の指標の数は、高いという結論を得るわけです。  私が病院経営の現状について言いたいことは、全体的に見れば、経営状況は決してよ くありません。今回の診療報酬改定もありますが、それ以前から一般病床の医療法人の 経常利益率は、中医協の速報値でも3.4%だったわけです。それをさらに診療報酬を下げ たわけですから、現状では経営状態がかなり悪いのです。ただし、どうも勝ち組と負け 組の区分が、そろそろ可能になってきました。公私病院の経営格差は人件費で、多分マ ネジメントの格差が収益の格差に繋がっているのではないかと、私どもは考えていま す。ただし一般の病院経営というのは、とても素人というか、何もわからない人たちが めちゃくちゃなことをやっているということを探そうとしても、統計的データでは、そ のエビデンスを得ることはできません。一般の会社のエビデンスがないから、比較もで きないのです。それが1つです。  それから申し上げたいことは、医療機関の将来については、医療機関間の競争はこれ からも激化すると思います。平均在院日数の短縮化や需要構造も、大きく変化すると考 えます。一般病床が供給過剰になることは明らかですし、医療の質の問題、地域のニー ズに対応した経営というものが、ますます求められるというように考えております。い まは過渡期ですが、来年8月には療養病床の区分など、いろいろなことがあります。長 期短期の分化と病院経営が、病院経営だけでなく、例えば介護保険サービスとか、いろ いろなものとの複合経営というような目で今後の医療経営を見ないと、病院単体の経営 の議論をしても、あまり意味がないのかなと思っています。  最終的には、先ほどからもお話がありましたけれども、現在は「経営科学」というの かどうか分かりませんが、TQMとか、ISO、PFI、バランス・スコア・カード、 6σとかいろいろなものがあって、それをほとんど病院は採用しています。ですから、 経営科学的な問題について、一般企業で採用しているようなことに関しては、どこかの 病院で、それを導入しようと努力しているわけですから、私は、病院経営を全く経営感 覚もなく経営している実態にあるかのような一般的な議論には、どうしても賛成できま せん、というのが私の申し上げたいことです。 ○座長  興味あるデータを含めた発表をありがとうございました。引き続き谷川委員から、ご 発表をお願いいたします。 ○谷川委員  東芝の谷川です。小山先生のお話を伺いながら、あんばいが悪い順番だなという、負 け組が発表するような感じをしております。  事務局から「企業内病院の運営の事例を報告しろ」というお話があります。併せて、 この検討会で「今後検討を深めるべき課題」ということで5点ほど項目が挙げられてお ります。いろいろ考えたのですが、私どもは企業の中にある病院ということですので、 これに関連して、ご報告ということが難しいのではなかろうか、と思っております。後 ほども出てまいりますが、これに少し関連するお話ができたら、というふうに考えてお ります。  私どもの病院は大井町駅から歩いて5分ぐらいの所にあり、3号館まであります。こ の体育館はちょっと違いますが、看護婦さんの宿舎までつけてということで、このよう な形でやっております。病院そのものは、ここに「戦後の混乱期」というようなことを 書いてありますが、昭和20年に40床でスタートいたしました。昭和39年(1964年)に今 の場所に引っ越し、「職域病院」ということで運営をしています。「総合研修セン ター」と書いてありますが、俗にいう「人間ドック」です。新1号館は、いまご覧いた だいておりますものを平成5年(1993年)に造り変え現在の姿になっております。  診療科としては、ご覧いただいているようなものを持っております。併せて事務部、 地域連携室を持っております。医療スタッフは、医師、看護師、以下ご覧いただいてい るような400名弱の人間でやっております。  このところの状況は、外来、入院患者、健診センター受診者とご覧いただきますと、 外来の患者さんがずっと増えてきて、入院患者さんも、それなりにということでありま す。従業員が減っているのは、事務の関係を機械化に伴い少なくしてきたということで す。  私どもの所は310床ある病院ですが、先ほどの小山先生のお話によりますと、公立病院 ではいちばん赤字が多いという区分にドンピシャリと入っております。実際の数字もい かがかなと思い、収入と支出、100、100ということで。100、100でしたらそういう意味 では医療収入でちょうどペイができるということでありまして、ご覧のように収支差額 が出ております。先ほどのお話を伺いながら、うちも一緒だなと思ったのですが、20% ぐらいは、やはり持ち出しみたいな運営です。  いちばん問題なのは減価償却費です。実はずっと収支差額が改善してきており、減価 償却費も相当改善してきております。減価償却費といいますか設備がこれで本当にいい のかどうなのか、というのが逆の問題になっております。設備をもう少し入れていかな いと。そういう意味では設備、それと病院の陳腐化です。1つは設備そのものの問題。 あくまでも病院でありますので、やはりクリーンといいますか、きれいさがいちばん大 事だろうと思っております。そういう見かけの問題をちょっと気にはしております。  1993年に病院を新しくしたと申し上げました。その時点では減価償却費がいちばん大 きく膨らみましたが、その後は徐々に減ってきております。多分、これが11というパー センテージになっていますが、少し少な過ぎるのではなかろうかという逆の反省をして います。ただ、これを上げると、ここが膨らみますので、ちょっとしんどいなというの が現状です。  今日報告する5つの課題の中で、理事構成、組織運営の在り方ということですが、私 どもは社内で「経営監査」というようなことをやっております。病院も同じように経営 監査の対象にしておりますので、どんな経営監査をやっているのか、というご報告と、 先ほどの話にも出ておりましたが、効率化を進めるということで「6σ」をやっており ますので、この辺のご紹介をしてみたいと思います。  具体的な経営監査に入ります前に東芝病院の運営形態はどういうふうになっているか といいますと、院長の下に病院の経営会議があり。院長以下のメンバーで病院運営に関 する基本事項の審議をやっております。院長、副院長は共にドクターであります。ま た、私どもは病院の外から支えるスタッフという位置付けになっております。院長の下 に業務改善推進委員会、薬事審議会、以下病院内の常設組織機関としてご覧のようなも のがあります。それと、期限付きで「システム更新」があります。1993年にいまの病院 の中のシステムを入れて今年で丸10年経ちましたが、いまのシステムそのものがかなり 陳腐化しております。1つは、機器そのものがもう古いという問題、それと、俗に言う クライアント・サーバー型のシステムに乗り換えていかなければいけないということが あり、いまシステム更新の準備に入っております。  実際の事業運営ですが、予算は病院の経営会議で、院長の下でということでありま す。この予算でということで、経費予算等々を全部作り、基本的には全社で集めて調整 をし決定するという仕組みをとっております。設備計画等々は、同じように経営会議で 決めるのですが、本社の中で全体の当社としての設備予算の中で、もっと具体的に申し 上げますと、私どもが担当しております福利厚生に関する設備費目があります。その中 で準備をしている、ということで進めております。  また、「中長期計画」を作る進め方であります、数年先を見た計画を病院として立案 をし、それに我々スタッフが入って、最終的に会社の中で読めるような姿にまとめてい く、という進め方であります。  監査については、私ども近年の会社の運営の在り方について「社内カンパニー制」と 言っておりますが、権限委譲を大幅に進めてきております。それをやるために従来の 「事業部」という組織から「社内カンパニー」という名称に変えて、そこでほとんど独 立型の運営ができるようにしました。それと併行して監査機能を拡充、強化したという ことです。これを「経営監査部」と社内的に呼んでおります。  従来「監査」といいますと、財務監査といいますか、経理監査、それに遵法監査が一 般的ですが、それに併せ、きちんと組織・制度ができているか、あるいは適正な手続で 業務が進められているかどうか、情報システムはどうなっているか、といった監査を併 せてやる。権限委譲に伴って業務そのものが適正に、適法はもちろんですが、適正に行 われているかどうかを、きちんと監査するという考え方に立っております。それと商法 上監査役による監査というのがありますが、これについては経理監査、あるいは遵法監 査というのが主体になっております。権限委譲の裏腹に、実際にどういう業務をやって いるかということでは、監査をきちんとやるという形にしてございます。 具体的には いま申し上げましたように、「150社」と書いてありますが、社内のそれぞれの部門及び 関係会社を経営監査部で全体を監査する、プロセス監査まで入れるということです。  ここに概念図で書いてありますが、会計監査では経営そのものがきちんとしている か、経営数字だけで見るということですが、それと法令遵守のところでも見る。この辺 りが従来の監査ですが、いま申し上げていますように、プロセスの改善はされている か、さらには、将来を見た事業戦略が実際に立てられているか、その遂行はきっちりさ れているか、といったところまで監査をするという形にしております。この辺ちょっと しつこくなりますが、同じようなところを違った見方で、こんな経営監査をやっている ということです。併せて、自分の所できちんとした監査をやれということで、セルフ監 査もやりなさいという形にしております。このようなことで、病院の中の運営そのもの が、適正・適法、しかも戦略面も含めてやられているかということは、監査で見ている ということです。  先ほど「6σ」ということを申し上げました。効率化取組みの事例ということでお話 をしたいと思います。6σという考え方については、もし統計学をやられたり、あるい は品質管理の方がいらっしゃると、私、話をするのは大変恐縮に思っております。σ値 は品質管理の世界の中で1σからずっとσ値があり、そのσによって事故の発生する確 率みたいなのがあります。  例えば、2σだと31%、3σだと7%、4σだと0.6%。6σは100万回やって3.4回 事故がでるという値です。日本製の時計は、100万個買うと大体3個ぐらいの欠陥品があ るというぐらい優れています。20年ぐらい前までの製造業では、3σと言われます 7%ぐらいの事故率が品質管理上、管理限界みたいな感じで3σまで入っていればいい というようなことでやっていました。また、冗談に3σの外にあると言って、極めて例 外的なケースでお話をされたこともあると思います。  6σはアメリカから入ってきた考え方で、製造に伴う品質ではなく経営品質を高め る、経営体質を高めるということでこの手法が確立しております。これを用いて社内で 「経営革新」を進めております。  これを病院に適用した事例が「診療待ち時間の改善」です。「CTQ」といいますの はクリティカル ツゥ クウォリティという言葉の頭文字を取ったものです。経営体質を 最高にするために最もポイントになるのは何かということであり、全社では、お客様と 従業員のニーズに応える組織体制づくり、部門としては、病院の経営を自立化しましょ う、お客様にとっては満足度の向上を図ることをCTQとしてあります。  病院に来ていただきますと「待ち時間」が不可避です。待ち時間を極力少なくします と患者さんが増え、1日3名増になると年間700万ぐらい収入増、即ち成果になります。 それと、「コスト」といいますのは、これだけのプロジェクトをやりますとお金がかか りますので、それを引きますと実質1年間では700万ほど儲かるはずである。「ハード・ セービング」とか「ソフト・セービング」とかと言っておりますが、ハードは実際にお 金で計算できるわけです。ソフト・セービングといいますのは、ついでに出てくるいろ いろな効果でこれをソフト・セービングと呼んでおります。  何をやったら病院の自立経営にいちばんいいのだろうか、というドリルダウンをやっ て導き出したのが「待ち時間の改善」です。  1カ月かけてこのデータを取りました。「外来における待ち時間、分」と書いてあり ます。診療前に待ち時間が発生します。お薬をもらう前に待ち時間があります。会計を やる前に待ち時間があります。最初の受付で待ち時間があります。これを全部足します と約90分の待ち時間になります。よそのお医者さんでデータを取らしてもらいました が、126分で、平均値で45分の診療の待ち時間があります。  それぞれの診療科で待ち時間がどれだけあったのかといいますと、平均値で24分、い ちばん短い人で6分、いちばん多く発生する待ち時間は20分、4分の3の人が43分待っ て、いちばん待った人は211分、という見方をしていただければ結構です。  内科だけを取り上げて見ますと、平均値で30分で、25%は10分以内で終わっている。 いちばん多く出現したのが24分、25%の人は50分以上待っている。いちばん待った人で 2時間ぐらい待っているということです。  これをどうすればいいのだろう、何が待ち時間を出しているのだろうということで、 私どもで は「特性要因図」というのですが、それぞれの要因の分析をいたしました。 さらに、再診患者と初診患者数がどうなっているのかというデータも取りました。  「予約枠と患者数」ですが、予約枠がブルーになっております。予約数が入って当日 患者が来ますので、これを見ていただくとお分かりのとおり、能力より全部患者さんは 入っており、だから待ち時間が相当出てくるのだということが分かると思います。予約 しても月曜日は、枠以上の予約なので待ち時間は多い、一方水曜日に来られると待ち時 間は少ないというふうになっております。  その後どういうふうに分析をするかということですが、これにはいろいろな手法があ りますので、ご参考までに付けておきました。社内では「FMEA」と呼んでいて、Failure Mode Effect Analysisというようなことをやっており、何がいちばん待ち時間に影響し ているのかということであります。例えば予約枠を超える患者数が、やはりいちばん影 響度は大きいと。先ほど見た要因の中で、それがどういうふうに影響しているのだろう かと。予約枠を超える患者数がいちばん待ち時間に影響する。逆に、患者の長い診療時 間はあまり待ち時間が発生しない。それぞれに得点を与えて足し算をして、いちばん影 響を与えるものから順番に並び替えて見る。  さらに、「C&E Matrix」というのですが、いま出てきたものを影響度の大きいもの から10点、7点、5点、3点と点数付けをして、何を改善すればうまくいくのかという ことをやりました。どうも予約枠のところ、あるいは診療部数、逆紹介というところが いちばん問題なので、この辺の対策を打てば予約時間が短くなるはずだ、ということを やっています。このようなことを分析しましたので、ご参考までに付けておきました。  これで予約枠を再編成したり、診療ブースを増設したり、専門外来を設けたり、曜日 ごとの患者数を平準化したりいろいろな対策を打つということです。これの特徴は、で きるだけ数字で物事を表そうとしますので、その数字の出てくる結果が、多分こうであ ろうという。そういう意味では経験値の高い方が第六感的にやる対処療法と違って、か なり結果が予測できるという良さがあります。また、数字ということは非常にデジタル になりますので、例えばドクターをはじめ、医療スタッフといった、それぞれ担当され る皆さんが全て問題の所在を、あるレベルで確認できるという良さがあります。これを きちんとやれれば動機付けができますので、そういう意味では改善される、というよう な形であるかもしれません。こんなことをやりながら病院を運営している、というご紹 介でございます。 ○座長  社内の取り決めのご説明をいただきまして、どうもありがとうございました。3名の 方の意見に対して、ご質問でも結構ですし、また意見を踏まえた皆さん方のご見解でも 結構ですので、よろしくお願いいたします。 ○長谷川委員  2、3お聞きします。6σでRCAとかFMEAとかをおやりになっているので すが、 これは病院の方がおやりになっているのですか。それとも、例えば品質管理課とか、御 社の外部のスタッフの協力があって行われたのでしょうか。 ○谷川委員  私どもで6σの手法を取り入れたのは1999年でした。GEでは、この推進をする人物 を「ブラックベルト」という呼び方をしますが、そのための教育があり、これが大体4 週間かかります。ブラックベルトの人間をそれぞれ養成をし、それぞれの部門があるレ ベルでブラックベルトの人間を持つということをやっています。  病院のケースは、事務部長が、基本的にこの講座を受ける。併せて、病院の中にシス テム担当がおりますので、システム担当がこの講座を受ける。病院長は「チャンピオ ン・コース」と呼んでいるのですが、2日コースで、基本的な考え方だとか、進め方と いうのを受けてもらいます。それに基づいて専門家は、基本的に事務部門内養成という やり方でやっております。それに併せて6σを担当する部門があり、そこからサポート を派遣するというやり方であります。  したがいまして、医療スタッフが直接これをやる例は少ないのですが、データを集め る、データ取りに協力してもらう、というところは全部医療の現場でやってもらいま す。それを加工するのは、病院の中の事務部門を中心に、あるいは全社から出しますサ ポート部隊を中心に、というやり方でやっています。 ○長谷川委員  その結果はどうなっているのでしょうか。実際に目標は達成されたのでしょうか。拝 見しますと、例えばコストとか、最初の見積り、成果金額から大きく逸脱するようなも のもあるのですが、結果はどうなっていますか。 ○谷川委員  後でフォローアップを100%やったわけではないのですが、待ち時間そのものは、基本 的には非常に小さくなるような形になってきていると思います。これが100%利いたのか と謂われますと、ほかにも相乗効果があると思いますので。 ○長谷川委員  成果金額のほうはどうでしょうか。 ○谷川委員  成果金額といいますよりも、待ち時間そのものは従来に比べて非常に小さくなってい ると思います。 ○座長  ほかにはいかがでしょうか。質問でもいいですし、お三方の話に啓発されて、自分は こういう見解がある、という意見の発表でも結構でございます。 ○中村審議官  折角の機会ですので小山先生にお伺いします。所属病院967と3年間のデータというふ うにお伺いしましたが、まず質問の第1は、967は重なりがないのかどうか。つまり、延 べなのか実数なのかを教えてください。  2つ目は、先生の結論は私も非常に心強い結論だと思います。つまり、医療経営につ いて外で言われているほど病院経営者はそんなに滅茶苦茶やっているわけでもないし、 他産業のデータがなくて比較はないけれども、言われなき批判じゃないか、というご結 論だったと思います。仮に、これが重なりのない967だとすると大体病院の10%になりま す。例えば、小山先生のセミナーに参加されるような病院というのは偏りが、それ自体 にあるのではないかということで、10分の1で今みたいな結論を出せるのか。日本の医 療界の中で経営マインドの高い人たちが集まっている、というふうに考えた場合に、先 生みたいに、胸を張って言えるのかどうか、その点はどうなのでしょうか。要するに偏 りの問題です。約1万弱の病院のうちの1,000弱の病院のデータで語られているのです が、病院管理研究所のセミナーに参加される、そもそも偏りをどう評価されているの か、その点をお伺いしたいと思います。 ○小山委員  標本設計上の偏りについては先ほどお話をしたように、病床数が多くて、公立病院が 多くて、病床数率が高くて、平均高が高いという前提での967という形ですから。ただ、 日本の病院の標準値に統計的に戻すことは可能ですが、日本の9,200の代表値にする数字 というよりは、思い切って200床以下を全部捨ててしまって300床以上病院だけというふ うに集計すれば、かなり精度の高いデータが得られます。  その次に、標本設計上4%、約39人か40人はダブッています、これを修正していませ ん。なぜかと言うと、経営の目標でシステム改善に取り組んでいるかどうかということ で職種ごとに聞いています。例えば、好きな病院があって、この3年間に院長と事務部 長と科部長と出て来た人があるのです。それを切るかどうか、今回の発表では切ってい ません。切ることも可能ですし、また切らないことも可能です。  今日お話したことは、300床以上病院で、公立病院、民間病院に分けて代表数値をして 見ると、多分、ここら辺までのことは統計的に言えるだろう。約1,000病院に対して約 340項目の質問項目をやって、経営だけの調査というのは日本に現存しません。ですか ら、そんなに代表しない数字ではない、というふうに自分では思っています。もし、本 当に学術論文に発表するのでしたら、300床以上の場合と書けば、大体これは言えるので はないかと思う。  ただ、病床数が少ない100床未満の病院というのは、日本の病院の半分あります。それ が実際的には11%しかないという形です。100床以下を切ると100床以下の病院は少し違 うかもしれません。人数も少ないですし経営企画室などはなくても別にいいわけです。 ですから、小病院の実態ということになると、こっちのデータを切れば説明できるかな と思っています。今日はちょっと荒々で、小さい病院と民間病院を外してやると話が恣 意的になるからということがあります。  また、病院管理研究所に来ている受講生は確かに偏りがあります。お蔭さまでと言い ますか、毎年応募対象の1.5倍以上の応募があります。ですから年齢で切ったり、病院の 設置主体で切っていますので、どうしても都道府県、市町村職員、つまり公務員を優先 していることは、うちでは謳ってあります。そういう意味では、公的病院のほうに全体 の母数はズレているというふうに言えると思います。 ○西島委員  私も昭和57年に旧病院管理研究所のコースを受けています。そのとき私は院長でも何 でもない一大学の医局員だったわけです。先ほどの6σの話も、実は、医者はそういう やり方を実際しているのです。経営ということではなくて、診察をして、診断をして、 措置をして、観察をする。それで、その結果はどうなのかと。経営というのを、医者が やっていることを活かせるかどうかというところが1つだろうと思いますので、そのト レーニングは十分できているだろうと思っています。  今日お三人の方々のお話は実に納得できるお話でございました。今後それをどう活か していくのかということですが、先ほど小山委員が言われたように、この医療経営実態 調査で、たったあれだけの再生産費用の中でどうやっていくのかというのは、ちょっと 枠を超えた話になってきているのではないかなと思います。今回2.7%減は、経営に与え る影響というか、とても余裕あることとはなかなか難しいだろうと思いました。今後検 討会の中で、私ども日本医師会としての考え方を、お話させていただく機会を是非得た いと思っています。  これは4月1日に出した日医総研、私どもの総合政策研究機構ですが、「すぐ分か る、すぐ使える病院、診療所経営ハンドブック」と。この中には、まさしく経営分析的 な内容が分かりやすく書かれていて現在ベストセラーになっておりますので、次回か 次々回に、是非これもご紹介しながら、民間病院も含めた、特に中小病院も含めた、そ ういう考え方を是非ご披露させていただきたいと思います。 ○座長  オペレーションの改善だけではなく、資本調達のほうは、もう1つ大きい話であると いうご指摘ですね。 ○西島委員  はい。 ○谷川委員  いま西島委員が言われたとおりでありまして、この手法をドクターに紹介しましたら 「これがいちばん分かりやすい」と。そういう意味では、積極的に参画していただきま した。それまではどちらかと言うと、何かわけも分からず「設備予算でノー」と言われ たり、いろいろあったものですから。むしろこういう形で、きちんとデータで積み上げ ていくやり方というほうがドクターをはじめとする医療スタッフの皆さんには、受け入 れやすいというふうに感じました。 ○座長  ほかにはいかがでしょうか。 ○大石委員  私も診療所なんですが、経営のサポートというか協力経営みたいのをしています。い ま西島委員の言われた話に近いのかもしれませんが、ドクターは基本的に科学者という か、科学者としての勉強はされているわけです。いちばん初めに川原委員の発表になっ たEvidence-Based-Managementということについては非常に興味もありますし、非常に納 得しやすい。あとファクトといいますか、エビデンスで出てくると、若干自分の意見と は違っても、これはやはりこのファクトに添わなければいけない、という動き方はされ る傾向にある専門職種だという感じはしています。  元々お医者さんというのは、わりと能力の高い方々がなっている傾向がありますし、 経営的な手法に関しても素地がある程度ある部分もありますから、学ぶ機会さえあれば 取っつかれる方もいらっしゃると思います。私が見ていて問題なのは、確かに病院管理 研究所みたいな所もあって、そこに行かれている先生方もいらっしゃいますが、ラッ キーな例というか非常に稀な例だと思うのです。元々お医者さんは経営能力が高いか低 いかというよりは、経営能力の高いお医者さんか、経営に興味のあるお医者さんをどう 引き出していって、かつ、その方々を、非常に難しい時代に経営者としてどういうふう に育てるか、というそのプログラムを拡充していくことが大事ではないかという気がい たします。  そういうふうな話の中で、川原委員が言われたような理事会の中に外部の人などを入 れながら、そこから学ぶような機会を提供するとか、医学教育の中に経営みたいなこと をもっと入れ込んでもいいと思うのです。何らかの組織的な機会を与える方法を考える べきではないかと感じています。 ○座長  ほかにはいかがでしょうか。なければ私から質問をいたします。  川原委員の発表にあったCEOとCOOを病院で分けよというとき、COOは分かる のですが、院長職とCOOはどういう関係になるのでしょうか。  小山委員には、先ほどのデータで「勝組・負組」というのは分かったのですが、「主 体別」というのはあり得るのでしょうか。公立と医療法人の傾向の違いというものが、 もし何か発見されていれば、どういうことでしょうか。  谷川委員には、東芝病院の資本コストはどういうふうに入っているのでしょうか。先 ほどの経営指標の中で、例えばカンパニー制をとっていれば、名目上でも金利負担と か、あるいはキャッシュフロー、これもバーチャルな意味かもしれませんが、資本返済 のようなことが入った目標を立てられているのでしょうか。 ○川原委員  先ほどCEO、COO等についてお話をさせていただきましたが、この制度を導入するにつ いては規模としてはかなり大きなものを想定しています。次にCEOとCOOの職制上の違い について申しあげます。医療法人の理事長と院長の関係で例示すれば、理事長がCEOに該 当するでしょうし、院長職にある方がCOOに該当するものと考えております。 ○座長  COOと捉える可能性が高いということですね。 ○川原委員  はい、そうです。規模が小さい場合には、事務長がCOOということも私は弾力的に 考えていいのではないかと理解しております。 ○座長  ありがとうございました。 ○小山委員  経営主体別というご質問ですが、私は経営主体別の分析をしています。経営主体別に どこが違うかということが説明可能だ、ということを申し上げたいだけなのです。それ で経営主体別に特徴があるかというと、それはあるわけです。そのことよりも、経営主 体別の議論をしても、そこからは医療経営の明日は何も出てこないわけです。あいつら 税金使っているではないか、うちは何ももらっていないという対立です。こういう不毛 な議論はやめたほうがいいと思うのです。  ただ1つだけ公立病院と民間病院の違いを言えば、収支比率がどうかということより も、やはり民間病院が頑張っておられるのは、自分たちのものだしローヤリティも高い から頑張ろうということです。つぶれたら一族郎党全部駄目という。それに対して公務 員は、つぶれたらどこかへ行けばいいのだ、と思っているわけですから、その差は経営 判断にいっぱい出てくる。経営上の意思決定では感じます。  数値については、医業収支比率を見る限り、それが民間か公的病院か、1つの病院を 見せられて、これは公的ですか民間ですかと言って次々に見せられたら全く差はない。 ですから、民営化路線がはっきりしているのなら、民営化できる病院は民営化するとい う形になれば議論はすっきりすると思います。いまは個人病院も入れて、日本の国にあ るあるとあらゆる形態の法人、個人が病院経営に参入しているわけです。経営主体の種 別が大変多いので、その比較ということよりは、むしろ、経営主体の違いによってどの ように違うか、ということのほうが説明ができると思います。  例えば国立病院というのは、私どもは国立病院、国立療養所ですが、中には郵政事業 所が持っている病院もあれば、財務省の印刷局が持っている病院もあるわけですが、同 じ国立でも全く違います。そういう意味で一括りには、同じ主体別でも括れないという のも事実かなと考えています。 ○座長  ありがとうございました。 ○谷川委員  いま田中先生が言われている資本コストというのは、借入金の金利だけでよろしいの でしょうか。株式資本でいうEVAとか、そういう世界ではなくて。 ○座長  違います。 ○谷川委員  そういう意味では、実は資本勘定も何も持たせていませんで、ただそこで収支を押さ えているだけですので、資本コストを持っているかと言われれば、借入金の金利は全社 にかかってきておりますので、病院自体には入っておりません。ただし、現在は、リー スが増えております。リースをやりますと、ご案内のとおり金利分もリース料として負 担するようになりますので、設備投資の償却だけでなく、ある意味で金利は持つという ことになるとは思います。 ○長谷川委員  建物部分はどう見ているのですか。 ○谷川委員  減価償却です。たしか50年償却で少しずつやっているはすです。設備は所定の耐用年 数の中で、できるだけ早目に、落としていくものです。ですから、最初の減価償却は大 きくて、だんだん小さくなります。 ○長谷川委員  あの数字に入っているわけですね。 ○谷川委員  そうです。ただし金利分は全くみていません。例えば10億なら10億かかったとします と、それだけのお金を借りてきて、その金利を持たなければいけないのですが、その分 は全社の中で面倒を見ているということです。 ○座長  石井委員、何かございませんか。 ○石井委員  谷川委員にお聞きします。私は現在、300年続いている職域病院で業務的に関与をして います。病院機能評価ですと、いちばん最初に、その病院の理念は何ですかと問われま す。ということで東芝病院の経営理念は何かということをお聞きします。私は会計士な のですぐ電卓を叩いてしまうのですが、このデータを拝見すると、金利負担前で何億か のマイナスが出ています。通常、東芝という会社が事業をずっと継続されている場合 に、過去数年間にわたって金利控除前で、償却後で大赤字を出している場合の事業を継 続するということはあまりないのではないかと思うのですが、にもかかわらず、なぜ継 続されているのか、以上の2点についてお聞きしたいのです。 ○谷川委員  最初の歴史の所にもっともらしいことを書いてありますが、4/32頁に、「従業員医療 と地域医療に貢献する」ということです。そういう意味で職域があくまでも主体であり ます。従業員の健康増進の中で、残念ながら病気で入院をしなければいけない従業員に 適正な医療を受けさせる。5/32頁には診療があります。スポーツを奨励したりしており ますので、なぜか「スポーツ整形外科」という珍しい診療科を持っております。 たし か品川医師会との間では、職域でクローズされた病院と。一般の外来はとらないという ことになりますが、もし医師会からご紹介いただければ、そこからはとるという形で やっております。いま現在それを具体化したものはあるのかと言われますと、漠然とそ ういう形になつておりますので、少し文字に落とそうかという作業を始めております。 それが1点目です。  年間赤字があって何でこれだけのものを持っているかということですが、地方公共団 体の病院ですと補助といいますか、それがあると同じような考え方であります。私ども は従業員福利厚生の一環ということで考えております。安心して働ける職場づくりとい うことからいきますと、やはり病院があるほうが従業員も喜ぶのかなということがあり ます。じゃあ、いくら出せるかという話になりますが、法定外福利費の一環として捉え て、あるレベルでは赤字を認めるといいますか。  あと、組織体として結構大きくなっておりますし、大井町にありますのでトップをす ぐ運びやすい所に置いておくほうが、というような要素もあります。それと共に、従業 員が、病院があるということ自体にいい会社の姿勢を感じるというところもありますの で、それで持つということにしております。そういう意味では、補助を法定外福利費の 中でやっているという考え方であります。いま赤字が大きくなっていますので、病院の 院長先生にはみんな言わないのですが、私がすごく責められております、「どうするの だ」と。 ○長谷川委員  この病院は保険医療機関ですか。保険診療をやっておられるのですか。 ○谷川委員  そうです。 ○長谷川委員  そのときの自己負担は、何か別な補助というか。 ○谷川委員  それはありません。私どもは「東芝健保」というグループ健保にしております。関係 会社の従業員も含めて「東芝健康保険組合」、いわゆる組合員健保の加入者ということ になっております。そこはご案内のとおり、本人2割、家族3割です。ただ付加給付を やっており、医療費の負担限度額の足切りがあります。窓口では、保険の自己負担をお 願いするということにしております。ただ、足切りの限度額は加入者に若干有利に扱っ ております。健保の加入者であれば、とりあえず一旦立替払いをしなければいけないと いうところも、この足切り限度額のところで、料金はいただかないというようなサービ スはいたします。 ○長谷川委員  定期健康診断、人間ドックは、一括してこちらの病院にお願いする形になっているの ですか。 ○谷川委員  定期健康診断は、これとは別に安全衛生法で定める健康診断を事業所単位で実施して います。ただ人間ドックをここで受けますと、健康診断に代わるものという取扱いをし ておりますので、病院で受ければ自動的に病院のデータが産業医のもとに寄せられると いう形をとっております。人間ドックの扱いは健保の補助基準に従ってやっておりま す。 ○ 川原委員  4頁の病院収支の推移について教えていただきたいと思います。東芝病院の規模が2 頁の上段に310床で、総職員数は397人。人的装備としてはヘビーでやっておられると思 います。それでいながら人件費率が収入100に対して44%。1997年が51%、1998年から 40%台になっております。第1点は、診療報酬以外の、例えば、本社からの補助的なもの が入り込んで、収入が100になり、その結果として人件費率が、低い数値として表れてき ているのか。第2点は、人件費率を低く抑えるための何らかの対策をとっておられるの か、とっておられるとすればどのような対策なのかを教えていただけないでしょうか。 ○谷川委員  まず薬剤ですが、実はこれ以外にも関係する病院がありますので、共同購入みたいな ことをやっております。共同購入をやって、薬剤の標準化みたいなプロジェクトを起こ しまして、どういうふうに薬剤を発注するのか、どういうふうな按分でやったらいいの かというのをやりました。そういう意味では、薬剤費はCDといいますか、コストダウ ンをやっております。ほかの病院との対比はよく分かりませんが、人件費の実額ではほ とんど減っておりませんので、収入が増えてきている、患者さんが増えたということで す。比率が落ちておりますのは、その前頁にありますが、外来患者さんと入院患者さん が少し増えていますので、その部分の増加に伴って人件費比率は、落ちてきたと考えて いただければ結構だと思います。  この収入の中には、あまり「その他」のものは入っておりません。入院と外来と健診 センターの収入だけです。7/32頁に「患者さんの増え方」がありますが、両方併せて 10%強増えておりますので、その部分で収入増があって、人件費は固定、あまり動かな かったと考えていただければ結構かと思います。 ○座長  それでは、そろそろ時間がまいりましたので議論はこれぐらいにいたしたいと思いま す。お三方からそれぞれ、今後の議論の参考になる貴重な報告をありがとうございまし た。次に、次回の日程と今後の進め方について、事務局から説明をお願いいたします。 ○石塚指導課長  次回の日程は既に内々ご連絡を差し上げておりますが、7月17日(水)、午後4時か らということで予定をしております。次回は「資金調達手段の多様化」というテーマ で、お二方から発表をいただいて、ご議論を深めていただくという予定をしておりま す。場所等は決まり次第、正式のご案内を送らせていただきますのでよろしくお願いし たいと思います。 ○座長  それでは、本日はこれにて閉会といたします。お忙しいところご出席いただきまし て、どうもありがとうございました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 橋本 昌男(内線2560) 医療法人係長  手島 一嘉(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194