02/05/17 第4回社会保障審議会年金部会議事録              第4回社会保障審議会年金部会                   議事録                平成14年5月17日 第4回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成14年5月17日(金) 10:00〜12:30 場所  :東条インペリアルパレス(曙の間) 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、大山委員      岡本委員、翁委員、近藤委員、杉山委員、堀 委員、向山委員、矢野委員      山口委員、山崎委員、渡辺委員 ○ 福井総務課長  それでは、ただいまより、第4回社会保障審議会年金部会を開催をいたしたいと思い ます。議事に入ります前に、お手元の資料を確認させていただきます。  座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。  資料1と2が、今日の第一番目の議題に関するものでございます。資料1「新人口推 計の厚生年金・国民年金への財政影響について」、資料2「社会保障の給付と負担の見 通し−平成12年10月推計改訂版−」。  資料3から資料9まででございますけれども、第二番目の議題に関するものでござい まして、各々の各委員からご提出をいただいたペーパー、資料9は、前回、井手委員か らお求めのありました社会保険料と国税の事務費等の比較ということでございます。資 料3「「公的年金制度の役割と財政方式等」についての意見(大山委員、山口委員、向 山委員提出資料)」、資料4「公的年金制度のあり方について(矢野委員提出資料)」 、資料5「公的年金制度のあり方と基礎年金の財源について(岡本委員提出資料)」、 資料6「基礎年金の社会扶助方式化の提案について(堀委員提出資料)」、資料7「基 礎年金の財源論について(山崎委員提出資料)」、資料8「公的年金制度に関する私見 (若杉委員提出資料)」であります。  これらのほか、前回、提出をさせていただいております資料と同じものでございます が、参考資料1と2をお配りをいたしております。  委員の出欠の状況ですが、本日は、若杉委員につきましては、ご都合によりご欠席と いうことで伺っております。また、翁委員、山崎委員につきましては、遅れてお見えに なるとの連絡をいただいております。それから、今の時点で井手委員と山口委員がお見 えになっておられませんが、追ってお見えになると思います。ご出席をいただきました 委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議は成立をいたしておりますことを ご報告申し上げたいと思います。  それでは、以後の進行につきまして、宮島部会長からよろしくお願いいたします。 ○ 宮島部会長  本日は大変お忙しいところありがとうございました。前回、私的な急な事情がござい まして、欠席させていただいて大変失礼いたしました。前回の議事につきましては、神 代部会長代理から、その後きちんと話を伺っておりますので、余り齟齬のない議事運営 ができるものと考えております。  既に資料のご説明がございましたように、本日は、前からお約束しておりました1月 に公表された新人口推計の年金財政及び社会保障へのマクロ的な影響の試算につきまし て、事務局から報告を受けて、まずそれをご議論をいただきたいと思っております。そ の後は、もちろんいろいろご議論がございましたけれども、前回はほとんど事務局の資 料説明となっておりましたので、前回に引き続きまして、「年金制度の役割と財政方式 等について」を引き続き議題といたします。先ほど申しましたように、神代部会長代理 から十分前回の議事の模様は伺っておりますので、その議論をさらに深めていきたいと 考えております。  その際、今回この部会の委員としてお願いしている方々は、それぞれ有識者としてお 願いをしているわけでございまして、委員相互の間で議論を深める、その中で年金制度 の改正に向けての論点を浮かび上がらせるということが一番大きな役割でございます。 その意味では、私自身も無論そうでございますけれども、委員の方々ご自身も、事務局 に対して資料の提供などを求めるということだけではなくて、ご自分でいろいろ資料の 勉強も含めてしていただき、ここでそれぞれ有識者としてご発言をいただくということ でございます。これからも重要な論点につきましては、口頭報告のみならず、文書での 意見の提出をお願いをすることもあり得ると思いますので、皆様のご協力をお願いした いと思っております。  既に、先ほどご紹介がありましたように、前回の会議の際にご意見を申し述べられま した委員の方々にはペーパーの提出をお願いしております。必ずしも質疑の中で取り上 げなかった部分もございますし、発言を求めながら時間切れになった点もございますの で、今日はできるだけ十分時間をさきたいと考えております。  それから、時間的に申しますと、今日は12時半には議事を全体として終わらせるつも りでございますので、時間の配分につきましても、事務局含めご協力をいただきたいと 思っております。  それでは、第一の議題であります「新人口推計対応試算について」、これから議論を したいと思いますので、資料に基づきまして、まず事務局から要点の説明をお願いした いと思います。 ○ 坂本数理課長  数理課長でございます。資料1、資料2につきましてご説明させていただきます。  まず資料1でございますが、これは今年の1月に公表されました新人口推計の厚生年 金・国民年金への財政影響を調べたもののご報告でございます。この資料1の1ページ ですが、その「1」にございますように、本年1月に新人口推計が国立社会保障・人口 問題研究所から公表されたところですが、そこでは出生率の低下と平均寿命の伸びが、 さらに変化しておりまして、年金制度の基礎となる人口の将来見通しに大きな変化があ ることが示されたところでございます。このために、この試算の位置付けと言いますの は、次期制度改正の検討を進めるに当たりまして、新人口推計の年金財政への影響を明 らかにすることを目的といたしまして、平成11年の財政再計算を基に、平成12年度末の 被保険者数等の実績値を初期データとして、将来推計人口を前回人口推計ベースから新 人口推計ベースに機械的に置き換えた試算を行ったものでございます。  こういう位置付けでございますので、試算の前提といたしましては次のようにまとめ ることができようかと思います。まず将来推計人口ですが、平成14年の将来推計人口に は二つの特徴がございます。まず出生率ですが、このグラフに示されておりますように 、高位推計、中位推計、低位推計と推計されておるわけでございますが、高位推計は前 回の平成9年の中位推計とほぼ同じような出生率の仮定となっております。それから、 赤い線で示されたところが今回の中位推計でございます。青い線で示された、出生率が 最終的に1.10に落ち込んでいくというものが、今回の低位推計となっており、かなり厳 しい見通しとなっておるわけでございます。  それから、寿命の方は、これは2050年における平均寿命がさらに伸びているというこ とで、男子は、前回79.43歳だったものが80.95歳、約1.5歳寿命が改善しています。女 性はもっと改善しておりまして、前回に比べ3歳弱長寿化して89.22歳になるという、 非常に喜ばしい結果になっておるわけでございます。  これが今回前提となります将来推計人口でございますが、そのほかの主な前提といた しましては、基本的に平成11年の財政再計算の前提が基本になっております。まず経済 的要素ですが、賃金上昇率2.5%、物価上昇率1.5%、運用利回り4%という前提でござ います。ただし、足元の非常に低い値を勘案いたしまして、これらの賃金上昇率、物価 上昇率、運用利回りを、1.5 %ポイントずつ平行移動した値を2007年までとする前提を 採っております。これは資料2でご説明申し上げます社会保障給付費の将来推計の前提 に合わせたものでございます。それから、一番下ですが、国庫負担につきましては、国 庫負担割合を1/2とする場合には、平成16年10月から引き上げるという前提を設けた ところです。  1ページおめくりいただきまして、2ページに試算結果を掲載しております。まず3 の(1)の試算結果ですが、この表の上段は国庫負担割合が1/3の場合、下段は国庫 負担割合を1/2とした場合のそれぞれの結果を出しております。厚生年金につきまし て、平成37年以降の総報酬ベースの最終保険料率がどのようになるか、今回の人口推計 の財政影響を調べたわけでございますが、国庫負担割1/3の場合、前回の財政再計算 におきましては21.6%という最終保険料の見通しでございましたのが、今回の高位推計 では22.8%、中位推計では24.8%、低位推計では27.5%、こういう見通しになったとこ ろでございます。したがいまして、平成11年の財政再計算ベースの保険料水準を100 と いたしました場合には、高位推計は106 の水準、中位推計は115 の水準、低位推計は127 の水準という結果になってございます。  国民年金の方でございますが、平成17年度以降の最終保険料額は平成11年度価格で表 示してございます。前回平成11年の財政再計算では2万5,200円と見込まれたものが高 位推計では2万7,100 円、中位推計では2万9,600円、低位推計では3万3,000円、こう いう水準で見込まれるところでございます。これも前回の水準を100 といたしますと、 高位推計は108、中位推計は117、低位推計は131 という結果になってございます。国庫 負担割合が 1/2の場合の結果もここに記されたような結果となっております。  なお、現在の保険料率は、厚生年金は総報酬ベースで申し上げますと、13.58 %とい うことで、これは来年の4月から実施されるところでございます。それから、国民年金 は1万3,300円という月額でございます。  この結果をまとめますと、(1)にございますように、財政影響を最終保険料率で見た 場合、平成11年財政再計算ベースと比較いたしまして、高位推計では0.5 割程度、中位 推計では1.5 割程度、低位推計では2.5 割から3割程度の増加となっておるわけでござ います。  この主な要因ですが、高位推計では寿命の伸びの影響によるということでございます 。高位推計は1ページでグラフで見ていただきましたように、出生率は前回の中位推計 の出生率とほぼ同じでございます。したがいまして、この高位推計と11年度財政再計算 の差はは寿命の伸びの影響というものでございます。  中位推計では、寿命の伸びの影響が0.5 割程度、少子化の影響が1割程度ということ が言えようかと思います。低位推計では、寿命の伸びの影響が0.5 割程度、少子化の影 響が2割から2割5分程度の影響となっておるところでございます。  具体的な影響のあらわれ方ですが、当面は寿命の伸びに伴うものがジワジワと生じて まいりまして、少子化の影響は、概ね平成32年以降の長期の将来に向けて生じるという ようなことが言えようかと思います。  これらの結果を見るに当たりまして(2)に3つの留意点を記してございます。  まず一番目に、今回の新人口推計における少子高齢化を見ますと、これは欧米主要国 と比較しても、著しい程度で一層進行すると予想されております。これは将来の日本の 社会経済全体に大きな影響を及ぼしますので、従来にも増した、本格的な少子化対策を 推進することが求められているところでございます。厚生労働大臣の下に、「少子化社 会を考える懇談会」を発足させているところでございます。  第二番目の留意点ですが、今回の年金制度の改革におきまして、新人口推計をどう受 けとめるかということにつきましては、今後の少子化対策の検討を見つつ、国民に開か れ形で、幅広い観点に立った十分な検討が必要であるということでございます。  最後の留意点ですが、雇用政策と相まって、高齢者や女性など支え手を増やす方策を 検討することが重要であるということでございます。  それから、3ページでございますが、参考までに、主要先進国の65歳以上人口の割合 について、1950年から2000年までの実績とそれ以降の将来見通しを掲げております。こ れを見ますと、日本の14年の将来人口推計の中位推計は、太い黒線で示されております ように、65歳以上人口割合が急速にこれから伸びていき、最終的に、ほぼイタリアと同 じような水準に達するという見通しでございまして、他のドイツ、スウェーデン、イギ リス、フランス、アメリカというところからは、著しく高齢化しているということが見 てとれるところでございます。  それから、主要先進国の合計特殊出生率を表したのが下のグラフです。これは2000年 までの実績をグラフにしたものです。この太線が我が国でございますが、この太線でわ かりますように、急激に低下してまいりまして、現在では、ドイツとほぼ同じ水準、イ タリア、日本が一番低い水準になっているところでございます。  次に4ページ、5ページでございます。今回の人口推計の財政影響を調べるために、 最終保険料を算定したわけでございますが、この最終保険料に至るまでの保険料のスケ ジュールをどのように仮定したか、ということでございます。これは、平成11年の財政 再計算時に計画されました保険料の引上げスケジュールをそのまま踏襲しており、厚生 年金につきましては4ページに、国民年金につきましては5ページに記しております。 今後の具体的な保険料の引上げのスケジュール、内容につきましては、この「1」の後 段にございますように、次期年金制度の改正に向けた議論の中で、これから検討が進め られていくものでして、今回の試算における保険料率の引上げ方自体が、今後の議論の 対象となるところでございます。  二番目の四角の中に書かれております注意でございますが、先ほど申し上げましたよ うに、平成15年4月から、厚生年金は主として月給のみを対象として保険料の賦課及び 給付額の計算を行う標準報酬制から、月給とボーナスを区別することなく保険料の賦課 及び給付額の計算を行う総報酬制に移行することが、前回の平成12年改正法によって規 定されておるところでございます。具体的には標準報酬制における保険料17.35%は、 平成15年4月時点で収入総額が変わらないように、総報酬制における保険料率13.58% に転換されまして、それ以降は総報酬に対して保険料が賦課されることとなりますので 、標準報酬制における保険料率は制度として存在しないことに留意する必要があろうか と考えるところでございます。したがいまして、これからの標記は、全て総報酬ベース で行うものでございます。この表では、参考までに標準報酬ベースで標記したらどうな るかということを括弧書きで掲げてございます。以上が資料1のご説明でございます。  続きまして、資料2でございますが、これは、年金に限らず社会保障全体の給付と負 担がどのような見通しになるかということを、政策統括官室で推計いたしたものでござ います。前回の社会保障の給付と負担の見通しは、平成12年10月に作成されたものです が、これは平成12年に総理大臣の下で開催されました「社会保障構造のあり方について 考える有識者会議」に提出されたところでございます。今回、将来推計人口の新しいバ ージョンが公表されたことを踏まえまして、必要な修正を行ったものでございます。  表紙をめくっていただきまして、3ページでございますが、この推計の前提が記され てございます。今回推計で前回推計から変えたところをここでまとめておりますが、経 済前提につきましては、2007年度までにつきまして、先ほど人口推計の財政影響のとこ ろで申し上げましたような前提を置いているところです。それから(4)の医療につき ましては、今般の医療制度の改革の影響を考慮して、医療費を伸ばして推計したものに なっております。  1ページに戻っていただきまして、社会保障に係る給付と負担の見通しが記されてご ざいます。2025年度を見ていただきますと、社会保障給付費につきましては、176兆円 の見通し。これはNI比(対国民所得)で見ますと、31 1/2%程度と推計されておりま す。ちなみに平成12年10月の推計は207兆円でございましたが、主に経済前提の変更に よりまして、176兆円という名目額になっておりますが、対国民所得比は31 1/2のまま となっておるところでございます。  それから、社会保障に係る負担の方ですが、これは182兆円と推計されておりまして 、国民所得比で32 1/2%、前回に比べまして1 1/2 %の上昇となってございます。これ の内訳は、4ページで見ていただきますとわかりますように、主に年金の保険料負担が 増えているというところでございます。年金につきましては、今回の財政影響におきま して、2025年以降の最終保険料がいくらになるかということを算定いたしまして、その 影響を見たわけですが、その率を用いまして負担をしておりますところから、2025年で 年金の負担が増えており、それが全体的に影響しているというものでございます。以上 でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、ただいま二つの資料について、事務局から要点 についてご説明がございましたが、これについて若干議論なりご質問があればうかがっ ておきたいと思います。大澤委員どうぞ。 ○ 大澤委員  資料1の2ページ目、最後の2行についての質問でございます。「雇用政策と相まっ て高齢者や女性など支え手を増やす方策を検討することが重要である」と書かれており ます。誠にごもっともと思うのですけれども、このたびの試算に当たって、高齢者と女 性の将来労働力率、特に女性の将来労働力率及び人口の中の第三号被保険者比率という ものを、どのように仮定なさったか。多分、前回と同じということなのだろうと思うの ですけれども、前回の計算の詳しい前提を調べている暇がなかったので、その点を教え ていただければと思います。  ここで特に労働力率だけでなく、人口の中の第3号被保険者比率ということを申しま すのは、労働力率というのは、ある意味で年金制度にとって外生変数、与件のようなも のですけれども、第3号被保険者比率は完全な内生変数といいますか、我々の審議の政 策対象変数だと思いますので、これについて教えていただければと思います。ちなみに 第3号被保険者比率というのは、女性と年金検討会の報告書の資料II−14に示されるよ うに、雇用者比率と第3号比率の年齢別グラフが囲む領域は、平成元年ではお供え餅型 というのでしょうか、下の第3号比率のグラフは30代、40代と上に凸気味のはフラ ットで、上の雇用者比率は上に膨らんでいる、つまり中高年期の労働力率の高まりが上 になっていますから、供え餅型なのですけれども、最近の平成11年では、第3号比率 も下に凸気味のでは凸レンズ型になってきたということが、見えております。明らかに これは制度によって、二本のグラフが囲む領域の形が左右されているというのはわかる わけです。そこで、やや立ち入ったことを申しましたけれども、その点についてうかが いたいということです。それから「総報酬制」という言葉の使い方が、いささか誤解を 呼ぶのではないかと思います。つまり総報酬というと、総収入に比例して負担するよう に聞こえるわけですが、依然として月収の最高限のようなもの、それからボーナスにつ いても最高限というのが設けられていると思うので、そこのところは言葉の使い方です けれども、是非、誤解を呼ばないようにしていただかなければというお願いです。以上 です。 ○ 宮島部会長  大澤委員から質問がありましたが、これについて。 ○ 坂本数理課長  第一点目でございますけれども、平成11年の財政再計算におきましては、10年10月に 公表されました労働力人口の見通しというものを基にいたしまして、将来の厚生年金の 被保険者を推計しておるところでございますけれども、この10年10月の労働力率の見通 しにおきましては、女性の労働力率の伸び、高齢者の労働力率の伸びがかなり見込まれ ているものでございます。今回、まだ新しい労働力率の見通しが公表されておりません ので、平成11年の財政再計算に用いました労働力率の見通しを、そのまま用いておりま す。  そういうことで、11年の財政再計算と同程度の女性の社会進出と、高齢者の労働力参 加というものが見込まれた結果になっていると考えるところでございます。 ○ 榮畑年金課長  二つ目のご質問というかご要望でございますが、それは言葉をどう使わせていただく かということにつきましては、今後の年金改正の審議のご検討の状況などを踏まえつつ 、十分、中でも考えさせていただきます。 ○ 宮島部会長  大澤さんは納得しないだろうけど、もう少しやりますか、ご意見は。 ○ 大澤委員  いや、まだこの先が長いですから。 ○ 宮島部会長  わかりました。ありがとうございます。いずれにしても、今のようないくつか、これ は機械的に人口推計で置き換えて約束ごとでつくっておりますけれども、人口推計を置 き換えた場合は、それだけにとどまらない要素は、いろいろ出てくるということは当然 ございますので、今後の審議の中で、その点は議論をしていきたいと思います。ほかに 、どうぞ、向山委員。 ○ 向山委員  資料2の中で、基礎年金国庫負担1/3部分で見ていただければ良いのですけれども 、前回の12年10月の推計の推計値が括弧の中に記載されておりますが、特に社会保障給 付費の2025年の部分を見ますと、前回が207兆円、今回が176兆円という形になっており まして、特に年金などのところを見ますと、15兆円下回っているという形になるのです が、実際、前提が人口推計も使っているわけですから、給付につきましても、高齢者の 数によって変わってくるのではないかと思うのですが、前回の数字とNI値が変わらず 、逆に負担の方は変わってくるというのはどういう状況なのか、お聞かせ願いたいと思 います。 ○ 坂本数理課長  ただいまの向山委員の、高齢者が増えているはずだから、このNI比がもっと増えて いるのではないか、というご質問でございます。確かに今回の将来推計人口におきまし ては、かなりの長寿化がさらに見込まれているということですけれども、これは2050年 で一番高いといいますか、一番改善された死亡率に移行していくということですので、 完全に、高い改善された死亡率が適用される年次と言いますと、2080年あたりになるの ではないかと思います。そうしますと、2025年というのは、まだ改善のかなり手前の方 になるわけでございます。もちろん寿命の改善の影響は、ジワジワと最初から出てくる ものでございますけれども、まだまだ2025年の段階では、改善の度合いが非常に低いと いうことでございますので、向山委員がおっしゃいますような、それほど大きな改善は 、ここではまだあらわれていないということが言えるのではないかと思います。 ○ 向山委員  しかしながら負担の方はNI値がかなり上がっているわけですね。給付と負担が連動 する形で、同じ前提条件でやっている中で、負担はNI値が高くなって、給付の方は変 わらないというところの説明は、どう理解したら良いのでしょうか。 ○ 坂本数理課長  負担のそのNI比が変わっておりますのは2025年からでございますが、2025年の保険 料率というのは、2025年以降、将来にわたる全ての期間でございます。将来にわたる全 ての期間を平準的に賄う保険料としては、どういう水準の保険料になるかということを 計算しております。したがいまして、2025年の保険料率は、将来の改善を全て見込んだ ものになってございます。そのことから、NI比が変わっているということが言えよう かと思います。 ○ 矢野委員  二点申し上げたいと思います。一つ目は、新人口推計に基づくデータの試算について は理解をいたしておりますが、その中で経済的要素、三要素あって、一律に1.5 %ずつ 減らして試算したということですから、経済的要素の影響は、この試算の中に入ってい ないというふうに理解するわけですね。2007年までこういう数字だということですが、 現実には、もっと違う大変厳しい状態にあるということでありまして、そうした経済的 要素が、負担や給付にどう反映するかという試算は必要なのではないかと思うのですね 。変数としてどういう数字を置くかというのはなかなかの問題でありますけれども、い くつかのシミュレーションをしてみるというようなことは、この論議を進める上で大変 貴重な資料になるのではないかと思いますので、その辺について検討すべきではないか ということを意見として申し上げたいと思います。  もう一つは、資料1の(2)の一番下、留意点の(3)のところに、「高齢者や女性な ど支え手を増やす方策」ということが書かれておりまして、これは全く私も同感であり ますが、もう少し長期的な視点で良いと思うのですけれども、外国人労働の問題につい ても、今後論議をしていく必要があるのではないかと思っております。外国人労働力、 突き詰めていけば移民の問題にもつながっていくわけですが、これはこの年金の支え手 という問題よりも、実はもっと大きい問題でありまして、日本の経済とか社会の将来、 国のあり方というものを考える上での、一つの避けて通れない課題であると思っており ます。その結果として、年金の支え手も増えていくのだという位置付けではないかと思 っておりますが、そういう意味で、外国人労働の問題を念頭に置きながら、議論してい く必要があるのではないかと思っております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。最初の意見の経済的な要素につきましては、今回は人口要 素でありましたが、追々、当然これからの議論の対象にしたいと思います。それから、 後の問題につきましては、事務局にも、その旨は、私の方の依頼というよりは、むしろ 矢野委員から、積極的にそれについての意見なりをお出しいただきたいと考えておりま す。 ○ 渡辺委員  今の留意点に関する私の意見及び要望を申し上げたいと思います。おっしゃるとおり 、機械的な将来人口推計によって、今週、新聞に書いてあるような24.8%というような 、大変衝撃的な数字だけでは、かえって国民に非常に不安を与えるものだと思います。 そういう点で言いますと、年金の推計に関しては、ただ単に、例えば今回で言いますと1 .39といった中位推計だけを使うことなく、特に今ありましたような雇用政策、さらに 言うならば、少子化対策の中でも具体的なものが求められるのですが、例えば雇用政策 につきましても、当然高齢者、女性の、なお、さらなる社会進出というか、雇用といっ たものも重要だと思うのですが、例えばこういった中で、ある程度の仮定の数字を置い て、高齢者雇用はここまで進む、あるいは女性の雇用、社会進出もここまで進んだ、と いう仮定を置いた場合に、年金の将来見通しはどうなるか。これはなかなか政府として 、勝手に言うのは難しいのかもしれません。現実問題として、例えばスウェーデン、デ ンマーク、あるいはアメリカみたいな、67歳までの定年、雇用の確保といったような例 もありますし、例えば労働力率、労働者人口がこうなった場合にはこうなるというのが ないと、留意しながら国民的な議論すると言いましても、なかなか雇用延長、定年延長 も含めた雇用促進がなかなか進んでないのが現状なので、国民に対して、ここまで進め ば、これだけの年金がこうなるよ、といった数字を、一定の仮定の下で良いと思うんで すが、できるなら示した方が良いのではないでしょうか。そういったものがないと、な かなか議論が進みにくいし、ある意味では将来に対する目標もできにくいような気がし ます。  ですから少子化問題、出生率の問題につきましても、ここに書いてあるとおり、これ は私も大賛成なのですが、「新人口推計をどう受けとめるかについては十分な検討が必 要である」となっているわけですね。その場合に1.39をそのまま使うのか、高位推計の1 .63についての推計は、今回示されているわけでありますが、これにつきましても、1.6 3以上というのはなかなか難しいのかもしれませんし、甘く見通すことは確かに禁物な んですけれども、少子化対策といったものをどれだけ本気になってやるかといったもの を示す上からも、もう少し幅のある推計といったものを、国民に示す必要があるのでは ないかと思います。以上であります。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ、井手委員。 ○ 井手委員  先ほどの大澤委員、今の渡辺委員のお話とも関連するのですけれども、女性の支え手 を増やすと言った時に、どうしても女性が働きやすい環境を、例えば企業が整えるかと いったことを本気で考えるためにも、M字型と言われる女性の労働力率がグイと上がっ た場合には、こんな形になるというような展望があれば、短期的に企業が利益を追求し ようとすれば、なかなかそうした企業が環境を整えるということに対して踏み込むこと が非常にこういう環境では難しいわけですけれども、将来の展望というものが見えたと きに、本気になってそういったものに取り組めるということもあろうかと思いますので 、そうしたシミュレーションというのは非常に必要ではないかと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。ほかにありますでしょうか。今、初めに事務局から説明あ りましたように、今回は新人口推計だけを機械的に置き換えてみた数字でございます。 というのは、一つは新しい人口推計が出たということもございますし、特に、今後の経 済要素でございますとか、特に長期にわたる労働力率、女性の労働力率がどういうふう に上昇することがあるのか、もともと経済の成長率とか労働生産性がどう動くのか、と いうことについて、我々の方で、こういう想定をした場合にはこうなり得る、というこ とは議論できるとは思います。ただし、我々の方で勝手にこれを置いて、年金制度設計 するというわけにはいかないだろうと思います。恐らくこれは、経済成長率であります とか、そういうことに関しては、内閣府などである程度きちんとした閣議了解などを取 るような、そういうものを、ある程度考えざるを得ないでありましょうし、労働力につ いても、今後そういうきちんとした推計が進むと思います。  さらには少子化対策についても、審議会なりの議論の場で、どういう体制を政府は採 るかということに依存しております。ただ、今のお話は、例えば、こういう想定を置い た場合にはどういうふうになるのか。ちょうど高位推計と中位推計を置くように、経済 要素についても、場合によっては、やや高位、中位、低位といったような発想のときに どういうふうに変わるのかということは、一度具体的なシナリオという意味ではなくて 、むしろ幅として示していただければ、私もありがたいと思っていますので、それはい ずれ事務局にお願いしたいと思いますし、できれば、せっかくここには経済界あるいは 労働界の代表の方もいらっしゃるわけでございますし、またシンクタンクの代表者もい らっしゃいますので、そういう方からも、少し積極的に、この場に自らの試算なり考え 方に沿ったシナリオをお示ししていただければ、大変ありがたいと考えております。  それでは、新人口推計に基づきます、財政の影響及びマクロ的な将来の社会保障の給 付と負担については、いずれにしても、これが一つのベースとして、今後、まさに外生 的なものと受けとめるものと、内生化して議論の中に取り入れていくもの、というよう な形で恐らく相当時間をかけて、今後議論をしていくと思いますが、今日のところは、 これに関する議論は一応これで終わりにさせていただきます。  それでは、次の議題、これは前回の続きでございますけれども、前回は、基礎年金の 財源あるいは財政方式に関して、最も議論が集中したとうかがっております。その際、 事務局が用意いたしました資料につきまして、特に両者の比較に、やや公平さを欠くの ではないかという議論があったことも承知しております。  そこで、前回ご発言いただきました委員の方々に、今回はそれぞれペーパーとして提 出をしていただきました。また、井手委員からお求めのありました国税と社会保険料の 徴収コストにつきましても、今日は事務局の方で用意してございますので、これについ て、もし追加的な説明が事務局から必要があれば、若干説明を受けた後、残りの時間、 大部分を委員から提出していただきましたペーパーに基づきまして、委員相互のディス カッシンに充てたいと考えております。何か追加的な説明をしていただくことございま すか。 ○ 福井総務課長  部会長よろしゅうございましょうか。 ○ 宮島部会長  はい。 ○ 福井総務課長  おわびとお断りを申し上げなくてはならないと思います。堀委員ご提出の資料6でご ざいますけれども、私ども事務局の不手際で間違った資料をお配りしてしまいました。 今、正しい資料を配付をさせていただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたし ます。申し訳ございませんでした。  それから、傍聴席の方にもお配りをさせていただくことにいたします。 ○ 宮島部会長  回収するのですね。 ○ 福井総務課長  前のものは回収させていただきたいと思います。 ○ 宮島部会長  堀委員の名誉にかかわりますので、前の資料は回収させていただきます。  今日は山崎委員が遅れて来られるということでございます。若杉委員は、前回ご発言 がございましたが、今日ご欠席でございますので、後ほど事務局から要点についてご説 明をいただくとことにいたします。それでは、これから順次、本日提出いただきました 資料につきまして、大変申し訳ございませんが、前回一応ご発言があったとうかがって おりますので、できれば3分からマキシマム5分、余り超えたら、私の方でストップを かけますので、なるべく要領良くご説明をいただきたいと思っております。  それでは、まず資料3に基づきまして、向山委員から、お三人の方の代表ということ でよろしゅうございますでしょうか。それではよろしくお願いいたします。 ○ 向山委員  資料3でございますけれども、我々は年金を含めた社会保障全体をどう見るかという ことで、社会保障の視点に立って、若干、文章が長いのですが、公的年金の役割と財政 方式等についての記載をさせていただきました。  ご案内のとおり、昨年の9月に読売新聞が発表した国民調査でも、54%の人が年金等 に不信を持っているというような実態がありますので、年金そのもの、社会保障そのも のの安心の給付をいかに作っていくかということが、非常に国民から信頼される一つの 役割だろうと思っております。  そこにも記載してありますように、これまで公的年金を補完する一つの役割として、 企業なり家計というものが、補完してきたということがあります。しかしながら昨今で は、企業での福利厚生費の削減とか核家族といったことで、この二つの機能が崩れてき た。そういったことで、これまで企業と家計が私的に担ってきたサービスの供給という ものを、社会的なシステムに移し換えていくことが必要であろう、という認識を持って おります。 今何よりも必要なのは、信頼にほかならないということで、その信頼を確 保するためには、次のページに書いてありますように、将来世代に少なくとも安心の給 付をきちんと約束できる、そういったものが大きな基準となるのではないかと思ってい ます。よくお年寄り一人を現役何人で支えるという考え方が出されています。少子高齢 化が進みますと、負担が増えて、今のままでは制度が維持できない。したがって給付を 下げることは避けられない。こういった主張が多く言われていますが、そういった考え から脱却する必要があるだろうと思っています。  公的年金や医療保険という部分の給付を下げても、高齢者の数が実際減るわけではあ りません。したがって、そういう人たちを何らかの形で社会が支えていかなければなら ない。そういうことで公的な部分で給付が縮小すれば、それが私的負担に振り替わるだ けであって、それぞれの家計の格差がさらに拡大していく。こういうものは避けなけれ ばいけないという認識を持っております。  さらに、あくまでも人口統計上の指標ではありますが、人口推計で使われましたよう に、高齢人口と生産人口の比較というものがよく言われているのですが、日本の場合は6 5歳以上の就業率もかなり高い。また生産年齢人口でも100%が担い手になり得てないと いう実態から考えれば、今後の社会保障の財源を考える中では、人口以外の要素、すな わち就業率の高さ、稼得所得、そういったものが必要であろうと思っております。  社会保障の考える前提としては、将来制度を設計する上での指標としては、高齢者人 口と生産年齢人口ということではなくて、全人口に占める就業者数というものがどのく らいの水準で維持できるか。それによってある程度の給付の水準は維持できるのではな いか。すなわち、今後とも就業率を高めていって、それと同時に国民一人当たりの生産 性の上昇が図れれば、社会保障の水準も現在と同程度に維持することが可能であると考 えております。  少子化の問題につきましては、確かに財源に対する影響はありますが、それによって 危機的な状況という説明ではなく、少子化の問題は国全体の問題として、もっと節穴を 大きくして見ていくことではないかという考え方であります。  また、今回の2025年以降の50年の推計がされておりますが、その推計はあくまで仮定 に基づくものでありまして、その仮定を少し変えれば大きく変わってくるということで 、2025年までは、ある程度の重要の要素であります労働力も賃金水準も要素としてわか るわけですが、それ以降50年ということを考えたときに、その部分は全く予測もされな いということを考えれば、2050年の姿は予測の問題よりも改革の問題として位置づけす るべきであろうと考えているところでございます。  公的年金の役割につきましては、「国民生活基礎調査」というものが平成12年度に発 表されていますが、高齢者世帯の8割で、公的年金が収入の6割以上を占めているとい うことで、それと同時に公的年金の収入が100 %というところも6割の世帯がいるとい うことを考えれば、公的年金の役割は公的年金の老後の生活を支える一つの基礎的生活 費、そういったものをきちんと担保していくことが必要ではなかろうかと考えています 。  セーフティネットのところにつきましては、前回、私も質問させていただきましたが 、局長からお答えいただいたのですが、「セーフティネット」という言葉の部分につい ては、非常に安心して老後を過ごすに足りる水準から、かろうじて生命を維持するに足 りる水準という、幅広い視点があるわけでございまして、最近では、この部分が、ミニ マム生計費というような意味合いで使われるのことを心配しております。ミニマムとい う部分については、生活保護水準にあるわけでございまして、そういうものがあいまい な形でセーフティネットと使われるならば、それは大きな問題である。年金と生活保護 との関係というものを制度論としてきちんと明らかにすべきであろう。それが水準の出 発点であろうと考えているところでございます。  また、年金と生計費ということの中で、前回の資料の中で、「自ら高齢で働けなくな った時に、その時々の現役世代との比較においてバランスのとれた、老後生活の支えと なる水準」という文言が入っておりますが、老後の生活の支えの水準というのは、生計 費との関係が必要であろうということで、先ほど若干言った部分もございますが、そう いう形であります。  現役世代とのバランスということですが、直接生計費に充当されるのは額面ではなく て、手取りであるということで、現役世代の収入においても、それと比較される年金に おいても、手取りでバランスを見る。すなわち「ネット・ネット方式」が最も妥当な方 法だというふうに考えております。このことが賦課方式であっても、人口変動の影響を 少なくとも相殺できる、それに役立つ一つの要因だと考えております。  その時々というのは、次のページにも書いてありますように、支給開始後もその時々 と見てやっていく必要があるだろうということでは、前回の年金改定で実質上賃金スラ イドが廃止されたことになっておりますが、このために賃金スライドの復活は必要であ ろう。物価スライドだけでは実質的な価値が維持できないというふうに考えているとこ ろでございます。  あと、次のページのところで、公的年金の財政方式というところについてはいろんな 言い方をされていますが、賦課方式となっているのですが、それを修正積立方式なり修 正賦課方式という呼称に執着するのはどういう理由なのか、説明をして欲しいわけでご ざいます。  それと同時に、民営化のところには二重の負担の問題が書いてありましたが、現行方 式を積立方式に移行する場合についての二重の負担というものが全く記載をされてない 。そのところについても問題があろうと思っています。  また、マクロの貯蓄、投資バランスに言及したことについては一定の評価をしており ますけれども、積立方式であれば、余りにも巨額な積立金ということで、それが大きな 影響を与えると主張されておりますが、それより小さければ影響は少ないというわけで ございますが、現在の積立金の規模、140兆円というものが、これは余りにも巨額だと いう範疇に入るのか、入らないのか。我々は当然範疇に入ると思っておりますので、そ ういったことを考えたときに、今後、積立金の運用で保険料の軽減をされていくわけで ございますが、実際、それは本当に保険料の軽減につながる保証はないと思っておりま すし、そういった不確実な運用収益に依存すべきではないということで、巨額の積立金 を市場運用することで、絶えず金利変動等にさらされる。こういったリスクを負うこと については大きな問題だろうということで、高齢化のピーク時には少なくとも年金の積 立金が1年間分ぐらいあれば良いと思っております。  あとは、賦課方式でも十分耐えられるということについては、手取りの賃金スライド 方式というものは、人口変動に対して一つのビルトイン・スタビライザーとして機能す るのであるということで、基本的な考え方を書いております。  また、「公的年金の財政方式」については、基本的に「社会全体が連帯をし、国民一 人一人が保険料を納めるという自助努力を果たしながら」と書いてありますが、ここは 税金を納めるということでも、十分それは理解できるわけであって、納税ということも 国民一人一人の自助努力であろうと思っております。その自助努力が社会保障以外の私 的努力というものではないだろうかという視点も持っております。それが「公助・共助 ・自助」というような部分の分類の仕方ではないかと思っております。  「税と社会保障」という部分につきましては、どちらの方式も財政方式であるのには 変わらないということで、現在強制適用の社会保険の保険料は、被用者にとっては税と 同じように給与天引きとなって、税、保険料によって納税義務の意識の差はそれほどな いと思っています。その意味では、実際保険料は目的税であってもおかしくない。目的 税であると認識をしております。  こういった中で問題は、拠出者の同意と納得である。それは税であっても保険料であ っても納得であるということであって、それが信頼につながっていくということで、現 在基礎年金制度においては、未納・未加入者という部分が、資料では5%となっており ましたが、数年前までは4%弱ということであれば、この間に短期間に相当空洞化が進 んでおることと同時に、未納・未加入者対策もそれなりにされておりますけれども、こ れ以上限界であろうと理解をしております。  そういった中で、こういった5%を過小に見るのか過大に見るのかという見方はある のですが、この資料では非常に過小に見ようというような意味合いが懸念をされるとい うことであります。  最後になりますが、税方式なら必ず資力調査が必要だという固定的な概念があると思 うのですが、我々は基礎年金については、その目的に応じてユニバーサルペンションだ と思っております。要は普遍的な年金を、たとえ税であっても普遍的な年金である以上 はミーンズテストは必要ないと考えております。基礎年金を税方式にすると所得制限を かけるだの、第2の生活保護だと、そういった部分を言われているのは大きな問題であ ると思っていまして、それはいろんな考え方の違いがあるかもしれませんが、我々3名 は、基礎年金というのは税であっても普遍的なユニバーサルペンションだということで 、ミーンズテストは必要ない。逆にいくつかの例で挙げられていますように、児童手当 等、所得制限なども廃止するということを願っておるわけでございます。  以上です。 ○ 宮島部会長  非常に多岐にわたりました。一渡りご意見を伺いましてから、委員の方々、私も参加 させていただきますのでよろしくお願いしたい。  それでは、次の矢野委員から「公的年金制度のあり方」ということでお願いいたしま す。 ○ 矢野委員  「はじめに」というところでは環境の変化という点を強調しております。基調が低成 長になったこと。少子高齢化が進んでいること。また、そうした事態に的確な対応がな されていなかったために現行の年金に対する国民的不信というものを招いていると、こ ういう考え方です。  今後はそういった現実の上に立って、「自立・自助・自己責任」の要素を高めて、そ して、自助・共助・公助のバランスのある持続可能な制度をつくっていかなければなら ないと、こういう問題意識を述べております。  二番目は、「公的年金制度の信頼回復の好機」であること、非常に重要な部会を今運 営しているという認識でございます。年金は、老後の生活保障を行う主要な柱の一つで ありますが、一方、5年ごとの負担の増加と給付の抑制を繰り返すということでは、将 来の現役世代の負担は相当なものになっていきます。ここで国民の信頼をこれ以上損な うということは許されない。年金保険料の負担の増加も国民経済的に耐えがたいものが あるということであります。  どうすれば良いのか。諮問会議でも出ておりますけれども、将来にわたって大きく改 正する必要のない持続可能な制度を確立する、またとない機会であると考えておるわけ でございます。  「公私年金の役割分担の見直しと適切な組み合わせ」ということを、第3項に書いて いますが、これを見直しまして、公的年金をベースに、福利厚生としての企業年金、さ らには自助努力としての個人年金などとの適切な組み合わせを検討する必要があるとい うことであります。  最後に「公的年金制度改革の方向」ということですが、将来の現役世代に過度の負担 を求めることのない仕組みをつくり、また1階の基礎年金制度が抱える様々な問題の解 決に資するものでなければならない。こういう認識の上に立って、基礎年金については 、賦課方式の財政方式をとり、その財源は当面、まず国庫負担の1/2への引上げを実 現し、その後に全国民が広く薄く負担する間接税による税方式への転換を行うべきであ るということでございます。これは国民の理解と納得が得られやすい方式ではないかと いう考えでございます。  報酬比例部分についても触れましたが、これは保険料を財源とした報酬比例の年金と してふさわしい仕組み、積立方式に向けた改革に早急に着手すべきであると考えます。  こうした対応によりまして、基礎年金と報酬比例部分との機能、役割が明確に区分さ れた制度の構築が可能となり、また、それぞれの制度にふさわしい財源の確保が図られ るとともに、人口変動の影響を受けない世代間の負担と給付のアンバランスが是正され た制度になるので、制度の長期にわたる持続可能性が高まることになる、このように考 えております。以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、次は岡本委員、よろしくお願いいたします。 ○ 岡本委員  年金制度というのは極めて高度専門的でございまして、私は専門家ではございません が、たまたま現役の20代、30代の年金に関心持っておられる方々とお話しをする機会を 持たせてもらっているという立場で、そういう20代、30代中心の現役の世代の方々の気 持ち、また考え方なり意見を踏まえて、私なりの言葉でペーパーを作らせてもらいまし た。したがいまして、これは経済界の総意でもなければ、経営に携わっておられる方々 の意見をまとめたものでも何でもございませんので、どうぞひとつ自由にご批判いただ ければ結構でございますし、申し上げるところで気になるところがあれば、またこの部 会で大いに議論を深めてもらったら結構かと、こういう趣旨でお聞きいただきたい、こ んなふうに思います。  ペーパーは簡単でございますので、その方が良いかと思いますので、このまま読ませ ていただきます。 公的年金制度のあり方と基礎年金の財源について 「1.はじめに」  今回の公的年金制度改正の意義は、現役世代の間に根強くある公的年金制度に対する 不安と不信を払拭し、公的年金制度に対する安心と信頼を回復することである。そのた めには、急激に進む少子化と高齢化を直視し、かつ、わが国の低成長経済に移行したと いう事実を認識し、加えて、若年世代にみられる職業人としての働き方の変化にも着目 しければならない。そしてこれまで繰り返してきた社会保険料の引上げによる負担増と 給付水準の抑制を議論しなくてもよい、中長期的に持続可能な制度を確立することが大 事である。こうした観点から、制度の「改正」ではなく、制度を「改革」する決意で、 制度そのもののあり方を議論した上で、財源のあり方も検討する必要がある。 「2.現役世代の負担に依存する社会保険料は安易に引上げるべきではない」  これは前回のこの場で、私は同様のことをちょっと申し上げたのでございますが、そ の内容と基本的には変わっておりません。  わが国経済は低成長経済に移行しており、また、経済のグローバル化によりわが国の 産業をとりまく環境は一段ときびしくなる。この結果、社会保険料の賦課ベースとなる 現役世代の報酬は長期的にみて安定的に伸び続ける条件は極めて小さくなったと考える のが妥当である。  少子化、高齢化に伴って一層窮迫する公的年金制度の財源をこれまでのように現役世 代の社会保険料の引上げに求めることは、現役世代の生活を圧迫し、社会全体の経済的 活力を損なうだけでなく、わが国の経済社会構造の変化を年金制度の改革に反映させな いことになる。こういう懸念を持っているというわけでございます。 「3.基礎年金制度は国民にわかりやすく、納得のいく制度とすべきである」  現行制度の下では、自営業者等の第1号被保険者は個人を単位に保険料を納めるので 、個別の損得意識が表面化し、保険料の支払いは「積立方式による強制貯蓄」であると いう誤解を生むこととなる。このため第1号被保険者は基礎年金の給付に要する費用は 被保険者全体で負担しているとう意識に欠けている。さらに、未納者、未加入者が相当 数になっており、結果として国民年金制度は任意加入を是認する制度に変質している。  被用者年金制度の被保険者(第2号被保険者)は、納めた保険料が基礎年金部分と報 酬比例部分にどのように充当されているかが不明瞭であるため、現在の仕組みについて 不信感を持っている。  第3号被保険者は直接的な負担がないという理由などから、そのあり方についての考 え方が多様化している。これは女性の年金問題についてのいろいろなリポートがござい ますので、そちらの方で議論してもらったらと思います。  こうした異なる保険料負担方式の存在によって、各制度毎の給付と負担の関係は曖昧 となっている。  さらに、基礎年金制度の財源は、給付費の1/3について一般会計からの国庫負担が 投入されているため、純粋な社会保険方式とは異なる税財源との混合方式となっており 、給付と負担の関係が一層曖昧なものとなっている。したがって、財源の視点から国民 にわかりやすく納得のいく制度に改革することが望まれる。 「4.ライフスタイルの多様化、就業の多様化を反映した制度の充実が必要である」  現在、日本型雇用システムの象徴とされてきた終身雇用、年功序列的処遇、一律の定 年制は現在どんどん崩壊し、変化している。現役世代の労働意識の変化は、就業形態の 多様化となって具体化しており、一人の人間の生涯の働き方を自営業、被用者、専業主 婦というような形で固定的に捉えることは適切ではない。この変化に対応するためには 、多様な形の企業年金や、自助、自立という自己責任をベースにした個人年金の充実が 社会的インフラとして求められる。また一律の定年制の存在を前提に、高齢者は経済的 に弱者であるとの認識で公的年金制度を考える時代背景はどんどん変化している。  公的年金、特に全国民で支えるべき基礎年金については、働き方の差異に中立的な負 担方式を構築し、制度の支え手の間での不平等感を早期に払拭することが不可欠である 。  こうした問題意識を持ちまして、これは結論ではございません。 「5.以上の経済社会構造の変化を考慮して」  (1)公的年金は現役世代に過度な負担を求めることなく、中長期的に持続可能な制     度とするという発想の下に、  (2)基礎年金については、国民の老後の基礎的生活の一部を国が等しく保障するも     のとし、 次はいろんなご意見があると思いますので、一つの考え方として、  (3)その財源については、既受給者を含めて全国民で制度を支えるため、間接税方     式としていき、  (4)広く国民全体で財源を支えるという観点から税制の見直し、年金の給付水準の     見直し等も同時に検討されるべきである。  口頭でちょっと補足で申し上げておきますが、20代、30代の方々と議論しております と、個別にはいろんな事情の人がいらっしゃいますが、マクロ的には高齢の年金受給者 がどんどん強者になっていって、20代、30代の現役世代が弱者になっているのではなか ろうかと、こういうような意見も随分と現役の世代の方から聞くわけでございまして、 やはり将来の社会を担っていく若い方々の、そうした気持ちというものを十分忖度して 、年金というものは議論すべきではなかろうかと、このように考えております。以上で ございます。ありがとうございました。 ○ 宮島部会長  それでは堀委員からお願いいたします。 ○ 堀委員  私のレジュメは、1枚目も下線を引いてあるものが新しいものでございます。それで 説明させていただきます。基礎年金のいわゆる税方式化の問題について、しばしば税方 式と言われるのですが、この問題は単に財源が違うというだけではなくて、保障システ ムが違うということで、私は税方式と言わずに社会扶助方式と言っており、それに対す るものとして社会保険方式と言っております。  レジュメの第1の「2」のところに、社会保険方式と社会扶助方式がシステムとして どう違うかという説明してあります。一つは、社会保険方式というのは、保険というリ スク分散の技術を用いるのに対して、社会扶助方式は用いないという点。二点目は、保 険料拠出が給付の直接の根拠となる、いわゆる対価性が社会保険方式にあるのに対して 、社会扶助方式は納税が給付の根拠となるわけではない。三点目としては、基礎年金は そうではないですが、厚生年金は、保険料拠出額が給付額に反映する、緩い等価性の面 がある。それに対して社会扶助方式は、納税額と給付額とは無関係である。それから、 財源の違いというのがある。  第2のところですけれども、社会保障の保障システムを歴史的に見ますと、中核的な 保障システムは社会扶助から社会保険へという流れがあるのではないかと思います。そ この「*」のところでイギリスの社会保障の歴史を簡単に記しておりますけれども、最 初は救貧法で、これは厳しいミーンズテスト・劣等処遇・公民権剥奪・スティグマとい う様々な問題があった。そういうことで、それをなくすような老齢年金が1908年にでき た。これは全額税方式なのですが、やはりインカムテスト・欠格条項があって、貧困救 済という狙いで、かつ年金も低額でした。これも基本的には財源が確保できないという ようなことから、1ページの一番下の(2)の社会保険法に移ってきたわけです。年金に ついては、1925年の寡婦、孤児及び老齢拠出年金法ということで、これはインカムテス トなし・欠格条項なし、スティグマなしというもので、結局社会保険中心になってきた 。  レジュメの2ページには、今まで歴史的な重要な文章ではどうなっているか。イギリ スの歴史を振り返って、救貧法というのは非常にスティグマが伴うということで、ビヴ ァリッジは社会保険方式を中心にすべきということを打ち出した。その根拠がビヴァリ ッチ報告にありまして、「国家からただで手当てを受けるよりも、保険料拠出と引き換 えに給付を受けること」をイギリス国民は望んでいるのだと言っている。  我が国におきましては、現在はなくなっていますが、総理府社会保障制度審議会が勧 告をしています。重要な勧告は第1次の1950年の勧告。第3次が1995年、総合的な勧告 なのです。その中でも、例えば1950年の勧告では、「社会保障の中心をなすものは自ら をしてこれに必要な経費を拠出せしめるところの社会保険制度でなければならない」と 言っています。 1995年勧告でも同様な趣旨が述べられています。真ん中辺の下線が引 いてあるところ、「社会保険は、その保険料負担が全体として給付に結び付いているこ とからその負担について国民の合意が得やすく、また給付がその負担に基づく権利とし て確定されていることなど、多くの利点をもっているため、今後とも我が国社会保障制 度の中核としての位置を占めていかなければならない。」こういった勧告は、労使参加 の下でなされているわけです。  それでは、社会保険方式と社会扶助方式を比較した場合どういうことになるかという ことですが、今までの年金局の資料にそういったことが書いてあるのですが、私は基本 的には社会保険方式の方が多くの点で社会扶助方式よりまさっていると考えています。 その点を私の書いたものを3点ばかり掲げてあります。それを後でお読みいただきたい のですが、資料の10ページ、最後のところ、「社会保険方式と社会扶助方式との比較」 ということで、これはある本で書いたものをまとめたものです。  そこに13の客観的な価値基準を立てて、社会保険方式と社会扶助方式を比較しており ます。しかも、それは理論的な面と現実的な面から見てどうかということですが、原理 ・制度面と財源面から見て、社会保険方式の方がメリットが多い。経済システムとの適 合性、給付の普遍性、給付の権利性、給付水準の高さ、財源確保の容易さといった面で 社会保険方式が優れているということです。  ただ、支出統制の容易さ、納付上の便宜、事務コストの面では社会扶助方式が優れて いると、そういう結論を得ております。  それから、レジュメの3ページですが、先ほども基礎年金について税方式とすべきと 、こういう議論があったわけですが、これに対して、根本的に疑問があるのではないか ということで、そこに理念面と財源面から疑問を書いております。  一つは、若いときから保険料拠出という自助努力しなくても良いのかということです 。これは先ほど向山委員から、年金制度は自助でなくて公助ではないかと、こういう議 論があったのですが、社会保険方式というのは公的保障システムであるわけですが、保 険料を拠出して老後に備える自己責任、自助の仕組みでもある。  我々研究者は、社会保険というのは二つの原理から成り、一つは私的保険の原理であ る保険原理、もう一つは、公的な施策の原理である扶助原理から成ると整理しています 。社会保険というのは扶助原理に近い形で設計することもできれば、保険原理に近い形 でも設計できる。保険原理がある以上、私的保険と類似の仕組みがあるということです 。「*」に賦課方式の年金制度は自助の仕組みではないという批判に対して反論を書い ておりますので、そこを後でお読みいただきたいと思います。  次の「・」なのですが、「社会保障の基本的性格は国家による救済ではないのか」と いうことであります。なぜ、65歳になると一律に国からお金を支給するのかというと、 それは高齢になると生活に困るからだと思うんですね。保険料拠出の見返りでない扶助 の仕組みというのは、生活困難であるという証明の下で行うというのが現実的に考えら れるわけです。それに対して社会保険方式というのは、老齢による所得の喪失のリスク 、あるいは長命のリスクに対応するというものですから、老齢・退職とか長生きのリス クが発生した、そういう証明で足りる。  そういったことから、社会扶助方式の給付水準というのは、生活困難な救済に必要な 程度に抑えられる。それに対して社会保険というのは保険料負担者の合意さえ得られれ ば、適切な水準が確保できるのではないかと思います。  3つ目の「・」ですけれども、基礎年金といえども、労使協力して老後に備える必要 はないのかという根本的な疑問です。なぜ国から一律に支給しなければならないのか。  最後の「財源面」ですが、大幅な増税ができるのか、あるいは国債増発という負担先 送りにならないかということです。ここ数年、国の一般会計の歳出は80兆円、税収は50 兆円で30兆円の国債を発行して、借金をして負担を先送りしているわけです。こういっ た増税が不可能な状況の下で、基礎年金の財源が増税によって確保できるのか。確保で きなければ、国債の増発ということになるのではないか。  それに対して社会保険方式は収支相等の原則が守られなければならない。社会保険方 式では、給付を削るか、あるいは負担を上げなければならないという意味で、財政規律 が守られやすいのではないかと思います。  消費税を年金目的税にするという意見があるわけですが、それに対しても、私は基本 的に疑問を持っています。一点目は、消費税は財政再建の重要な財源というふうに私は 考えておりますけれども、それを年金目的税に充てるとどうなるのかということです。 現在、国、地方合わせて700兆円近い長期債務がある中で、財政再建は急務だと思いま すけれども、それをどうするのか。  二点目は、これは年金局の資料がありましたように、全額基礎年金を消費税で賄うと 、今の5%に6.3 %をプラスした消費税率にする必要がある。これができるのか。  三点目は、基礎年金の費用というのは高齢化によって毎年増えていくわけですが、消 費税率を毎年引き上げていくことができるのか、そういうことでございます。  それから、先ほど向山委員から、保険料も目的税だ、税と同じだという議論があった のですが、それは最初の「*」のところで、それに対する私の考えを述べております。 税を納めても年金を受ける権利は発生しないけれども、保険料を納めれば年金を受ける ことができる。税を納めても年金額に反映しないわけですが、保険料を納めれば年金額 に反映する。基礎年金はそうではありませんけれども、厚生年金はそういうふうになっ ているわけで、以上の意味から、基礎年金を税方式にするのは、私は極めて疑問にと思 っております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。山崎委員がお見えでございますので、山崎委員のペーパー につきまして、報告いただきますが、5分でございますので、よろしくお願いいたしま す。 ○ 山崎委員  「基礎年金の財源論について」ということでまとめさせていただきました。前回は財 政方式についても議論があったわけですが、まず入り口が社会保険方式か税方式かとい う議論だと思いますので、ここに重点を絞ってまとめてみました。  「税方式」という言葉の使い方につきましては、堀委員がおっしゃるとおりでござい まして、社会保険方式に対置されるのは社会扶助方式だと思います。単なる財源論では なくて保障のシステムの問題だと思いますが、一応世間では財源論として税方式という 議論がありますので、そのようにしております。  私自身は社会保険方式を今後とも年金の基本にすべきだと考えております。そこでい くつか挙げておりますが、最初に挙げていますのは理念的なものでございます。やはり この社会では共助を基本において、公助によってこれを補うという社会保障というのが 一番ふさわしいのではないかと考えております。  なお、現在の日本の社会保険には、基礎年金も含めて相当税負担が入っておりますが 、そのことをもって混合システムではないかというご意見があるのですが、私は租税負 担が入っているにしても、基本的に社会保険だと考えております。それはここにも書い ておりますように、あくまでも社会保険における国庫負担等の租税財源の投入というの は、加入している人にのみ配分されるものだからであります。そういう意味で、自助努 力を共同で行うというのが保険のシステムである。それを国が強制したのが社会保険で あるとするならば、その自助努力の共同化に対する支援措置として国庫負担等の租税負 担を考えるべきではないかと思います。  それから、明らかに負担と給付との関係で、社会保険方式の方が関係が明確であり、 将来の負担増についても合意を得やすい。したがって発展性があると考えております。  それから、前回も申し上げましたが、恐らくこれは基礎年金だけの議論ではなくて、 医療や介護にも通じる話にならざるを得ないのではないかと思います。  それから四点目でございますけれども、これもいろいろ議論があるところであります けれども、税方式の下では、基礎年金では所得制限の導入、医療や介護では利用者負担 の応能負担化という形での選別的な社会保障にならざるを得ないのではないかという感 じがいたしております。所得制限だけにとどまらないで、ゆくゆくは資産制限も入るこ とも懸念されるわけであります。これは別に論理的な必然性はないと思うのですが、我 が国ではそうならざるを得ないのではないかという感じがしているわけであります。  それから、5番目ですが、多くの方が消費税財源を考えておられるということを前提 に話をしますと、物価スライド制の下では、消費税が上がり、物価が上がると年金額の 改定が行われ、さらにそのために消費税を上げるということになるのだろうと思います 。結局物価スライド制を前提にすると、消費税の増税分は現役世代に転嫁されるという ことでありまして、目指すべき社会保障改革の方向から大きく逸脱するのではないかと いう感じがいたします。この問題を回避する。つまり消費税というのは国民が等しく負 担するものだとすれば、消費税の引上げによる物価上昇分は年金のスライドから外すべ きということになりますが、そういうことについて合意が得られるのかどうかというこ とでございます。  最後に、基礎年金を税方式にするという人たちの主張の中で、相当、第1号被保険者 のグループで落ちこぼれがあるために、基礎年金の理念である皆年金を実現できないと いうことが指摘されるのですが、これは非常に重要な問題であります。したがって、社 会保険方式の下で発展を図るというのであれば、保険料の徴収の強化、効率化というの が図られなければいけないと思います。  そういうことなのですが、しかし、社会保険というのはもともと限界があるというこ とも、我々承知しているわけでございまして、社会保険が基本ではあるけれども、その ほかの公費を財源にした福祉サービスだとか、公的扶助によってこれをうまく補うとい うのが多くの国の社会保障でありまして、完全な皆年金というのはこれでは実現できな いということは私も承知しております。  それから、第3号被保険者問題についても、税方式化すれば同時に解決できるという ことですが、これにつきましては、私は所得分割というかたちでの個人単位化できれい に解決できると考えております。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、最後に若杉委員のペーパーにつきまして、これ はお手元にございますけれども、若干ポイントだけご説明いただければと思います。 ○ 梶尾年金広報官  それでは、資料8、若杉委員の「公的年金制度に関する私見」というペーパーでござ います。下線のある部分を中心に簡潔に申し上げます。  「年金の原理」ということで、現役の40年間働き、老後の20年間は遊んで暮らす、つ まり、年金とは現役40年間の所得の一部を老後に再分配することである。したがって、 年金は労働生産性が高い経済の発達した国でなければ国全体の制度として行うことはで きない、とされております。  2)で「再分配の財政方式」ということで、(1)の積立方式は、時間的(垂直的)再 分配するものであって、長期間積み立てますので、その間の貨幣価値の変動、運用利回 りなどの変化に弱い、とされております。2ページ目で、賦課方式につきましては、水 平的再分配であり、人口構成の変化により世代間の負担の格差が生ずる。  「2.わが国の年金制度」については、われわれの人生はリスクに満ちており、個人 が単独で年金を準備することができない、ということで、いろいろな年金を設け制度の 分散を図ることが望ましい。  ということで、(2)、(3)、(4)の3つのものを三本柱ということで、(5)でございます 。  (5)三本柱いずれも個人の老後の所得を確保するという目的であるが、そのための原 資を出す動機(相互扶助・利潤追求・自助努力)は異なる。年金制度を安定させるため には、それぞれの動機を満足させるような制度、運営が必要である、とされております 。  2)で「わが国年金の全般的な問題」ということで、企業が全体として高い生産性を 保つことが、社会制度としての年金を可能にする前提。年金制度が動き出した後、前提 とした生産性を実現されなければ、設計した年金は維持できない、ということです。  3ページ目、(2)で、「わが国年金問題の本質」ということで、わが国の経済は、90 年代以降の企業業績の低迷で、労働生産性・資本生産性とも低下している。このような 現状においては、かつて設計した年金は、公的年金・企業年金・個人年金を問わず、実 現できないことは明らかである。  政府としては、企業を活性化させ経済を立て直すことが最優先の課題である。それが 実現するまでの間、国民に理解を求め、年金が減少することを耐えてもらうしかない。  3)「公的年金の財政問題」につきましては、賦課方式、積立方式、それぞれ一長一 短があることを考えると、両者を組み合わせたわが国の公的年金は優れた方式であると いうことができる。  保険料方式と税方式については、年金が個人における所得の時間的再分配であるとい う本質を考慮すると、保険料方式の方がふさわしい。ただし、わが国の場合、年金にお いても社会扶助の方式がとられているので、税方式が加わるのは理念上当然である、と されております。以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。  それでは、今、ペーパーを出していただきました委員から、簡潔にその趣旨をご説明 いただき、若杉委員につきましては、事務局にご説明いただきました。  それで、井手委員から質問のありました国税徴税についてはちょっと後に置きまして 、今、報告された以外の方、今井委員、大澤委員、翁委員、杉山委員、近藤委員、渡辺 委員、代理の神代委員、私もそうでございますが、私はともかくといたしまして、コメ ンテーターとして、もしよろしければ、今のプレゼンテーションに対して特にコメント があれば。 ○ 大澤委員  ご発表の順序ではなくコメントいたします。まず矢野委員と岡本委員のご意見でござ いますけれども、これを伺っただけでは、基礎年金部分に対する事業主負担というのが 今後どうなるのかということがわかりませんでした。前回の年金改革の際に厚生省が行 った試算によりますと、現行水準の基礎年金の保険料を税負担方式として消費税をその 財源にすれば、そのときでは3.2 %ポイントの税率アップが必要。現在はまた違ってい るかと思いますが。  これが一体、各界各階層にどうかぶるかという点は、企業負担は3.3兆円純減。それ から、雇用者の家計負担は全体として負担増になる。しかもこれは低所得で子どもがい るほど負担の増が大きいという関係になろうかと思います。自営業ではプラス・マイナ ス・ゼロという計算結果がございました。このような計算結果を踏まえると、経営側の 方がおっしゃっているような税方式とした場合に、そこでなくなるはずの事業主負担と いうのは一体どこにいくのだろうというのが私の疑問でございます。  付け加えて、岡本委員のご提案の中で、1ページ目の一番下の部分、「(第二号被保 険者)は、納めた保険料が基礎年金部分と報酬比例部分にどのように充当されているか が不明瞭であるため、現在の仕組みについて不信感を持っている。」これには大いに共 感するものでございます。  なお、第2号の保険料というのは、第1号だけではなくて、第3号にも第2号の低所 得の人にも回っているのだという議論がよくございますけれども、しかし単純に計算し まして、現在の保険料率で月収7万6,700 円以上であれば、第1号の1万3,300 円とい う保険料というのは賄えるはずでございますので、そこのところも誤解のないような広 報といいますか、情報の提供をお願いしたいと思っております。  次に基礎年金について、研究者の方お二人から、税方式というのは社会扶助方式だと いうお話しがありました。しかし、私はこの問題を、税方式・社会扶助方式か社会保険 方式かという二分法で議論することは適切ではないと思っております。事務局が配って くださいました今日の参考資料1−2で、4ページ以降、諸外国の制度について簡単に 図示をしていただいておりますけれども、税財源が入っていない年金というのは、イギ リス、アメリカということでむしろ例外的。それ以外の主要国では税財源が入っていて 、その中で二つのタイプ、黒いところがフラットになっているのか、それとも低所得層 に重点化しているかという違いがあるのではないか。また、その税源をどうするか、間 接税なのか直接税なのか、消費税なのか所得税なのか、というふうに議論がいくのでは ないかと思っているところでございます。  あわせて山崎委員の一番最後の点でございますが、税方式化の論拠として、第3号被 保険者問題というのが出てくる。これは今日のご発表の中でも、特に岡本委員のご発表 の中にそれが含まれていたかと思います。税方式というのは社会扶助方式であって、適 切ではない、という議論をするときに、それに対して一番いわば悪いモデルを与えてい るのが1,200 万人もの人が第3号被保険者として何ら負担をせずに年金権を得ていると いう、一番悪い例を年金制度自体が提供しているのではないか、ということを忘れない ようにしたいと思っております。  最後に大山委員、山口委員、向山委員のご発表でございますけれども、バランスのと れた総合的な目配りを感じまして、実は安心いたしました。というのは、前回、前々回 あたりのご発言ですと、労働側の委員の方も税方式化というのを主張していらっしゃる のかと思っていたわけでございますが、今日のご発表では相対的な問題であるというこ とでありましたので、実は安心した次第でございます。  連合が最近取りまとめられました「21世紀社会保障ビジョン」というのを拝見します と、年金については、3案併記ということになっておりまして、必ずしも基礎年金部分 の税方式化ということに固執しているわけではないというのが私の理解ですけれども、 そのような理解でよろしいのかということをご質問したいと思います。以上でございま す。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。これから時間の限りコメントをつけていただいた後、若干 の質疑をさせていただきますが、先ほど岡本委員が発言されましたように、私はむしろ 岡本委員のような姿勢で臨んでいただきたい。経団連の代表というのではなくて、個人 の意見としていただきたい。逆に時間の節約にはなりましたが、できれば、労働組合の 代表というのではなくて、その中でいろんなご意見を交えていただければと思っており ます。後ほど順次それぞれコメントをつけていただいて、その過程でご質疑をいただく ことになりますが、まず今の大澤委員のコメントにつきまして、矢野、岡本委員から、 最初の論点につきまして、簡潔にご説明いただければと思います。 ○ 矢野委員  税方式が適切な方式ではないかというふうに提言している根拠は、先ほども触れたつ もりですが、現役世代に過重な負担を負わせることなく全ての老若男女の国民全体が支 え合うという考え方によるものでございます。基礎年金の財源を税方式にいたしまして も、2階の報酬比例部分は保険料でございまして、これについては、当然これまで同様 労使といいますか企業と個人で折半負担していくわけであります。そちらの方の報酬比 例部分の将来がどうなるかということによっては保険料負担も増えていくわけでありま して、そういう点について対処していくという用意はあるわけであります。  それから、企業はこれは改めて申し上げるまでもないのですが、法人税などの負担を 通じまして社会保障全体を支える役割を果たしているということは改めて申し上げるま でもないと思いますけれども、ちょっと触れておきたいと思っております。 ○ 宮島部会長  今の点で岡本委員何かございますでしょうか。 ○ 岡本委員  企業負担を現在しているのがどうなるかということは、それは大切な指摘であると思 いますし、それに対しまして、今、答えは特に持っておりませんが、そういうことを今 後議論していくべきだとこう思っております。  ただ、直接の関係はないのですが、先ほど堀委員の話も随分と私勉強させてもらうと いうか参考になったのですが、大した議論ではないのですけれど、今日は自由に話し合 って良いということでございますので、お互いに理解深めるために言わずもがなのこと をちょっとコメントさせていただきますと、堀委員の中で、些細なことなのですけれど も、3ページに「厚生年金保険料の負担を回避」ということで、従来、産業界の皆さん 方がどういう主張をしておられたか、「回避する」という主張があったのかどうか知り ませんが、少なくとも今の経済状況から見て、会社のコストという意味において保険料 が上がって負担が増えていくということについては、それは大変なことだろうという意 識は、恐らく産業界にあることは間違いないと思います。  よしんば、もし、そういう負担がなくなったときにどうなるのだろうかということで 、経営者のビヘイビアがどうなるかというと、私はこんなことになってくると思うんで す。仮定の話ですけれど、そういう負担がなくなれば、その分は経営者としては競争力 に必要な研究投資であるとか、設備投資の一部にそういう資金が回るでしょうし、労務 費の一部に回っていくかもしれませんし、今世界的には日本は借入金が多くてレーティ ングの脅威にさらされていますから、自己資本の充実という形でそれを使われるかもし れませんし、また、どんどんと海外から安いものが入ってくる企業であれば、コストダ ウンということだけでなくしてマーケットプライスが落ちていきますから、売価を下げ るということで対応することによる社会の還元というようなこともあるでしょうから、 だから、そういうように負担がなくなったとき、そういう仮定をすれば、その負担のな くなった分はそれぞれ経済的・社会的に大変意味のある形でそういうものは使われてい くであろうと、こんなふうに私は経営の一環を担っている人間として考えております。 以上でございます。 ○ 宮島部会長  もちろん時間が有限でございますので、次に堀委員、山崎委員に、大澤委員から、特 に二分法的な話について若干質問がございましたが、どちらかそれについて。 ○ 堀委員  大澤委員の意見は、二分法で良いのかと、こういうことだと思うのですけど、先ほど 来申し上げていますように、財源として社会保険に税が入っている。社会保険方式だか ら財源に税を入れてはならないということではない。財源の問題ではなく、保障のシス テムとして社会扶助的なシステムと社会保険的なシステムとがあるということです。私 は、社会保障の研究を通じてこういうふうな解釈が一般的な解釈ではないかと思ってい ます。 ○ 宮島部会長  山崎委員、何かコメントございますか。 ○ 山崎委員  繰り返しになりますが、社会保険の中に租税が入っていても、それは加入者にしか配 分されないものですから、社会保険システムとして整理して良いというふうに思います 。ただ、純粋性から言うと古典的な保険よりはかなり変わってきている。そういう意味 では扶助的な色彩が入っているにしても、基本は社会保険として理解して良いと私は思 っております。 ○ 宮島部会長  いろいろまだ議論残ると思いますが、次に向山委員に対して、そういう解釈でよろし いかということがございましたが。 ○ 向山委員  基本的には我々は基礎年金は税方式を考えています。すなわちビジョンの中に三つの タイプの案を出させていただいた一つは、2階を廃止して基礎年金の水準を高めて、そ れを目的間接税でやる部分と、2階の部分の報酬はそのままで、従来の賦課方式でやる 部分で、基礎年金は1/2は一般財源で残りの1/2の半分は当然事業者負担がなくな るわけですから、その1/4は事業者負担として社会保障税みたいなもので負担をする 。残りの1/4を目的間接税というような案でした。もう一つはスウェーデン方式の所 得比例年金と、この3つのタイプを、今ビジョンでは掲げて組織で討議をしているので すが、基本的な考え方の部分については、基礎年金の早急に1/2の引上げをすると同 時に、次々回ぐらいには税方式の転換ということは基本的に考えています。 ○ 宮島部会長  それでは、次にコメント求めたい方いらっしゃいますか。渡辺委員どうぞ。 ○ 渡辺委員  今の各皆様方のコメントも社会保険方式か税方式かの議論だったと思うんです。私は 前回申し上げたように、私自身はまだどちらという決断はついてないのですが、特に税 方式の方々にお伺いしたい点が一つございます。つまり税方式のメリットもある反面、 デメリットもあるということは今の各論になったのですが、私自身の考えとしては、税 方式に移行する場合、どのような財源といった問題もあるのですが、もう少し具体的な 、仮にこれを近々導入とするならば、考え方はもちろん大事なのですが、具体的な姿を ある程度明確にしていただきたいという気持ちがあります。  それをさらに具体的に言いますと、受給要件といいましょうか、資格要件といいまし ょうか、これなんですね。私自身、昔、北欧に住んでいたことがあるのですが、税方式 でやったという問題として、外国人労働者あるいは長く住みついた、例えばデンマーク やスウェーデンで言いますと、彼らから見た外国人、これに対しても支給したことがご ざいました。そういたしますと、これは国によって多少差はあったのですが、あるとき は国民から不満が出たことがあるのですね。つまり、例えば日本に住んでいる外国人、 特に長期外国人、在日の方々を含めて、今は任意加入の基礎年金を持っておりますが、 いずれにしても、どういった受給要件で65歳になったら自動的に税金によって老齢基礎 年金を支給するのかどうか。  あるいは逆に言いますと、これは細かいことかもしれませんが、長期間外国に滞在し ていた日本人が、いわば老齢の直前に日本に帰国したといった場合にも自動的に出すの か。いわば、今言った細かい点のようなのでありますが、実際問題として年金制度を変 える場合にはかなり枠組みといったものを細かく決めておかないと相当反発出ますし、 あるいは北欧では政治問題化しました。選挙結果も大きく左右したこともございました 。  そういった意味から言いまして、考え方そのものはもちろん結構なのですが、かなり 新しい仕組みを導入する場合には、具体的な姿とも明確に国民に示す必要がある。今の 段階で明確なお答えできるかどうかわかりませんが、もしその辺のご用意があればおう かがいしたいと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。何かそれについて。 ○ 向山委員  基礎年金を税でやる場合の受給要件という渡辺先生のご質問ですが、我々として考え ているのは、国民ということではなくて全住民というふうに考えています。要は国内に 住んでおられる外国人も含めた住民が、少なくとも25年以上居住した人たちについては6 5歳から支給をする。皆さんがそこに住むということは税金、、消費税を払うというこ とでございますので、そういった外国人も含めた全住民の人たちが、25年日本で住んで おられれば、その人たちに、受給権を与えるという基本的な考え方を持っています。 ○ 宮島部会長  渡辺委員それでよろしゅうございますか。 ○ 渡辺委員  結構です。ありがとうございました。もしほかの方でご意見があれば。 ○ 矢野委員  そういう枠組みの論議はこれからというふうに申し上げておきたいと思うのですが、 その中で配慮すべき問題として、日本人であっても国内居住というものをどういうふう にウエイトづけるかという課題があるということを考えておりますし、外国人の場合に どういうふうにするかというのは、これは権利と義務の問題とか、私冒頭申し上げまし たように、この国をどういう国にするのか、経済、社会を。という問題がこういうとこ ろにも考え方の中に波及してくるだろうと思っておりまして、その問題も課題の一つと して論議しなければいけないだろうと思っております。  しかし、はっきりこうでなければならないということを、私は今の段階でまとまった 考えを持っているわけではございませんので、まず前提としての税方式というものにつ いて十分討議して、それがやれるということになったら、どうするかというふうに考え なくてはならないだろうと思っております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。 ○ 神代部会長代理  今日のご議論を伺っていて、全体的な印象としては、私は伝統的に社会保障について 考えられていた「世代間の助け合い」という、インタージェネレーショナル・ソリダリ ティーと昔言っていて、非常に声高に主張された先生もたくさんいらしたわけですが、 国際的な世論の流れがどうもインタージェネレーショナル・ソリダリティーから、イン タージェネレーショナル・エクイティーという方向に変わってきているという点に非常 に注目しなければいけない。たしか5月14日に予定されていたので、まだ出ているかど うか確認してないのですが、オーストラリアの政府がインターゼネレーショナル・リポ ートというのを出す予定になっていました。ちょっと忙しくて出たかどうかまだ確認し てないのですけど、そういう考え方を基本に置いて考えていた方が良いと思うのです。 今日のところでは労使のご意見が基礎年金の税負担という、多分消費税だと思いますが 、その点では一致しているのですね。あとのところは非常に違うのではないかと思いま すけど、基礎年金に関しては税負担。  それで、私は特に矢野委員のご主張を伺っていて、一般的なお考えはさっき冒頭に申 し上げたような意味で私はとても大事なお考えだと思いますが、税負担でやるというこ とに関して、今、渡辺委員がおっしゃった点以外にちょっと疑問がいくつかありますの で、問題提起しておきたいのですが、ご承知のように、消費税でやった場合、1%当た りの税収は約2兆5,000億円です。2001年度で基礎年金の所要額は15兆1,000億円ぐらい 。これは平成11年度価格だと思います。現在の消費税は全額国庫に入るわけではありま せんが、話を簡単にするために全部入るとしても、基礎年金15兆1,000億円を消費税で 賄うとすると6%は必要になりますよね。2025年度の基礎年金の所要額というのが出て ましたが、平成11年度価格で23兆円だったですね。  したがって、目的消費税で全部やるとすると、9.2 %はかかるはずです。現行の消費 税は、先ほどご指摘があったように、あくまで一般財源ですから、これをどうするかと いうことを抜きにしては議論できないので、常識的に考えると、現行の5%にプラス目 的消費税としての9.2 %をかけるということになると、欧米の付加価値税並みの消費税 です。  そういうことが政治的に、日本の非常にフラジャイルな政治の情勢と、かつて橋本内 閣がやったときのわずか3%消費税を5%に、2%だけ引き上げた時に、あれだけ猛烈 な駆け込み需要があって、その反動で不況の引き金を引いたということも、ついこの間 の経験で残っているわけなので、そういう政治的、経済的な実現可能性ということをど の程度考慮されたご発言なのかという点がよくわからないわけですね。これが一つです 。  もう一つは、今日の堀先生や山崎先生のご主張に私基本的に賛成なのですけれども、 両先生もご指摘にあえてならなかった点にもう一つ、消費税の滞納問題というのがあり ます。税金にすれば、社会保険は空洞化している、国民年金は空洞化しているけど、税 金にすれば取れるのだと、こういう安易なアサンプションが前提になっているように私 はうかがっておりますが、実はそうではないのではないか。少し数字が古いですけれど も、平成10年度の国民年金の未納・未加入、これは免除は私は計算すべきでないと思い ます。なぜなら税金でも所得税でも地方税でも、本当に所得の低い人は税金を払わなく て良いようになっているわけですから、社会保険に関しても、現在の免除の制度がフェ アかどうかという点は若干問題が残るにしても、基本的に低所得層が免除されるのは当 たり前だと考えられます。したがって、問題とすべきは、「空洞化」で本当に問題にす べきは、未納・未加入による未徴収額がどれくらいかということですが、これは私の目 の子ですから間違っているかもしませんが、5,800億円をちょっと超えていたかと思い ます。現状でどうなっているか、ちょっと数字がよくわかりません。  消費税の滞納額は、これは国税庁がインターネットで出していますから、10年度は 6, 146億円、11年度が6,323億円、12年度が6,299億円、どこをとっても消費税の滞納額の 方がはるかに多いのですよ。そういう実情、益税の問題がまだ別にあります。そういう 現状で、なおかつ目的消費税でやれるとお考えになっているのはいかなる根拠に基づく かということをぜひうかがいたい。 ○ 宮島部会長  今のところ議論としては、それが良いかどうかは、私は問題だと思っておりますが、 抽象度の高いところで議論をしています。少し議論が進めば、当然そういういろんな具 体的な問題を議論することになりますが、とりあえず今の点について、矢野委員何かお 考えございますでしょうか。 ○ 矢野委員  最初、ご指摘あった、政治・経済の問題ですけれども、要するに、今我々が直面して いる問題は何であるかというと、保険料を上げて対応するのか、そのほかの手段はない のかと、こういう選択を論議しているのだと思います。ですから、これは誠に国民的コ ンセンサスがなければ答えは出ない話でございまして、国会がその場であると私は思い ますから、そこで十分論議してほしいというふうに希望しております。  私は、間接税という形てやることが国民の信頼を回復し、同意も得られるのではない かと考えておるわけでございまして、保険料を上げて対応すれば良いのだ、というふう に多くの方が思うのであれば、これはそういう方向に行くと思うんですね。ですから、 どっちにしろ、保険料を上げるにしても負担が増えるわけでございまして、間接税上げ るにしても負担が増えるわけでございますので、違う形で振り替えという部分がござい ますけれども、間接税が増えれば保険料の分減りますので、ネットで増える分はどうな るかという計算はあると思います。  これは非常に重要な問題なので、あえて私はいろいろな反論のあるのを承知しながら 提言しているゆえんはそういうところにあるわけです。今ぎりぎりの状態に来ており、 このまま続けていったら、保険料は上がる、給付は下がるということをずっと続けて良 いのか、何かほかに答えがないのか。保険料システムが良いというのであれば、保険料 が上がるということについてのコンセンサスを得ることはどうしたら良いのか、という 議論をすべきでありまして、それはあるべき論だけでは答えは出ないということを申し 上げておきたいと思います。  経済的な負担の問題なんですけど、今、既に1/3が一般公費負担になっております ね。残りの2/3をどうするかということなのですが、これまでの流れからいうと、1 /2になるまでは一般公費負担、要するに一般財源を用いるということですね。残りを どうするかということになると思うのですね。これは方法論とは言いながら非常に重要 な点でございますけれども、1/2の部分について間接税にするというやり方も一つの 選択肢としてあるだろうと思っています。  それから、おっしゃるとおり、消費税という場合には、地方消費税とか地方交付税が あって、消費税を目的的に使うにしても、実質的に使えるネットは3%弱なんですね、2 .82%ぐらいでございましたか、たしかそんな数字だったと思うのです。ですから消費 税という形が良いのか、いわゆる目的間接税というのが良いのか。これも十分論議しな くていけないことでございまして、私のペーパーの中で「間接税」と書きましたのは、 これしかないということを言わんがためではなくて、いろんな選択肢があって、それを ぜひ論議していただきたいという意味で提案しているわけでございますので、その辺に ついてのご理解をいただきたいと思います。 ○ 岡本委員  今の矢野委員のお話につけ加えるわけではございませんが、税方式自体いろんな問題 があるということは事実でありますが、若い方々からすれば、ともかくこれ以上の負担 の増はやめてほしいという気持ちがありまして、これしか負担ができないのであれば、 将来あなた方の世代はこれしか水準がないのだよというように言われても結構だと。そ れが今より低くても結構だと、それを明確にしてほしいと。そのかわり、そうなればそ れで自分たちは30年間、40年間、公的年金制度以外のところで自分たちは自己努力する よと、自己責任でやるよという気持ちが若い方には非常に多いということも理解をする 必要があるかなと。  若い方々が50、60になって、また考え方が変わるかもしれませんけれども、公的年金 の中だけでの自己責任、自助努力というのでなくて、若い方々はそういうものに限界が あるのであれば、自分たちで個人年金であるとか、インフラ整備してもらって、大いに 自己責任という意味でつないで、こういう意識があるということは理解してくれると思 います。 ○ 翁委員  公的年金のあり方について、向山委員と岡本委員、矢野委員が触れられておられまし たけれども、コンセンサスが得られているなというふうに感じた部分が、確かに保険料 を引上げ、給付をカットするというような対応だけをやっているわけではなくて、もっ と改革についてもいろいろ幅広く考えていった方が良いというご議論が多かったという 点と、賦課方式か積立方式かという財政方式の選択に当たって、特に向山委員が書かれ ておられましたけれども、少子化対策として財政方式を変えることを考えるというのは 余り意味があることではないというような点だったと思います。  つまり、財政方式をマクロで見る場合とミクロで見る場合を区別した方が良いと思っ ておるのですけれども、マクロ的に見ると、賦課方式というのは確かに少子化に弱い制 度ではありますが、積立方式にしたところで、豊かな老後が保障されるわけではないと いう点については、恐らくマクロ的に見れば、多くの現役世代が十分と思われる貯蓄を したとしても、マクロ的に貯蓄超過になりますので実質の利子率が下がって、結果とし て老後の蓄えは目減りするということになります。この前段での議論にありましたけれ ども、本当に豊かな老後を保障するのは、そういった財政方式の変更ということが魔法 のつえなわけではなくて、結局マクロの働き手を増やすと。高齢者や女性の働き手を増 やしていくということでしか手に入らないということはまず言えるかなと。それはマク ロ的に言えることだなというように感じました。  ただ、一方、制度のあり方ということでは、矢野委員も触れておられたのですけれど も、堀委員はそういう要素だけでないと否定されていましたけれども、賦課方式は助け 合いのやり方であり、積立方式というのは自己責任になじむやり方だと思います。若杉 委員も書かれておられたのですが、そういう観点からとらえると、この積立方式という ことを検討する意味は十分あるかなというように感じました。  すなわち、この間、スウェーデンやドイツの改革についてのご紹介がありましたけれ ども、例えば確定拠出型年金、そういったものは非常に積立方式になじみやすいですし 、官民の役割分担というのを、あちこちでいろんな方がふれておられましたけれども、 そういったものについても、積立方式というのは民間の自助努力という意味ではなじむ ということだと思います。また、向山委員が触れておられたように、公的年金の積立金 の問題ということを考えても、その大きさの弊害ということを考えると、積立方式とい うのは、いわば公的年金に非常に負荷がかかっている部分をどういうふうに官民で役割 分担して、より制度設計全体として年金制度を信頼できるものにしていくかという観点 から議論するに大いに意味があるかなというように感じました。  質問というかコメントのような形なんですが、そういうような印象を持ったというこ とでございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。まだ、発言されてない方でございますでしょうか。 ○ 今井委員  今日いただいた資料ですごく好感持てたのが岡本委員の発言の内容がすごく私の身近 なところで起きていることを書かれてあるなという思いをしました。そこですごく思っ たのは、弱者とは、今若い人たちかという言葉が一番すごく印象に残ったのですけれど も、確かに今年金もらっている高齢者の方というのは結構裕福な方が多いかなという感 じがします。  その若い人たちが逆に弱者というのが、すごく今のイメージからすると不公平への是 正というのがすごく大きいと思うのですけれども、それをなくさないことには本当に未 納の方が増える一方だし、まず第一に保険料を上げるということも確かに大事なのです けれども、それより先に1号も2号も3号も、全員がもっと一生懸命働いて生産性を上 げるというような気持ちになれるような、それこそ将来の展望というものをちゃんと国 が出すような、そういった方向で話を進めていただくと良いかなというような気がしま した。 ○ 杉山委員  岡本委員の方からご発言があった、若い人たちのことをよく考えて、年金を見直して いこうというのは本当に共感をいたしました。私自身も税が良いのか保険が良いのかと いうのは実際よくわからない部分がとても多いのですが、ただ、本当に思うことは、そ れによってどれぐらい若い人の負担が楽になるのだろうかということです。あと、だい ぶ先のことだけれど、年金を納めると、老後はこうなるよというものを見せてもらわな いことにはとても納める気にはなれない。若い世代の親たちは、目の前の子育てとか毎 日の暮らしに追われているわけですから、将来的にこうなるよというような明るいビジ ョンが見えないことには、不公平感が募るばかりです。先ほど部会長代理から出ていま した目的消費税が9.2 %になるような数字を出されて、目の前がくらくらするばかりと いう状態です。  例えば、基礎年金部分が税になると、事業主は、このような負担をするよとか、ある 程度の数字を出しながら、今後、税方式のお話が見えてきたら良いのかなと思いました 。 ○ 宮島部会長  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。 ○ 井手委員  今、目的消費税の率のお話が出て、世の中にショックを与えるという意味では、こう なる可能性もあるということで数字を出すということは意味が大変あるのではないかと 思うんですけれども、例えば先ほどの基礎年金を間接目的税化した場合には、これだけ 消費税率が上がってしまうといったときに、その数字だけを見ると、そんなことに耐え られるだろうかという意見を誰もが持ってしまうと思うのですが、一方で、そのことで 社会保険の方の負担がなくなってトータルな家計としてシミュレーションした場合、そ れぞれの消費額によって決まってくるのかもしれないのですけれども、そこで浮いた分 を消費に回したときにどうなるか、というあたりが重要なのだろうと思います。これま でのように、給付を伸ばすとか減らす、あるいは負担を増やす、ということを繰り返し ていくと、どうしても不信感というものが増してしまうので、「ネット」という言葉が ご議論の中に出ておりましたけれども、別の方式の枠組みをいったん考えた上で、個々 の家計がどうなるかということを、シミュレーションするということが必要ではないか と感じました。 ○ 近藤委員  この中で賦課方式か積立方式かということで、何か議論が1か0かというような議論 ですけれども、日本の積立を一部入れた制度というのは非常に外国から見ても良い制度 ということで、これについては従来の考え方をとって、長期的に安定させるための積立 をどう持つかということを議論していくべきだと思います。  それから、制度の問題に入るかもしれませんけれども、保険料の上限を当然設けると いう考え方は前からありますが、高度成長でドンドン右上がりでいった感覚の考え方を 捨てて、その場合には年金も自動的にマイナスが当然入るという考え方。スライド制な ども、本来のマイナススライドをゼロにするという形でやっていますけれど、こういう 考え方を捨てて、若い方の痛みを年寄りも感じるという制度に作り直さないと不信感は 払拭できないということで、これはまた制度の中で議論されると思いますけれども、一 応感じたことです。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。これは議論の尽きないことでありますが、今日実はもう一 つ、前回、井手委員の要請で、本日、事務局の方で、社会保険料と税の徴収の話の資料 がございますので、時間の関係で、今ここで説明いただきたいと思います。 ○ 十菱社会保険庁運営部企画課長  社会保険庁の企画課長でございます。それでは、私の方から資料9に沿いまして「社 会保険料と国税の事務費等の比較」につきましてご説明を申し上げたいと思います。  まず申し上げたいことは、国税というのは、これは言ってみれば、全体が徴収のため の組織でございますが、私ども社会保険は、適用・徴収・給付という三つの仕事を一体 的に実施しております。保険の対象者である事業主あるいは被保険者の方を把握いたし まして、制度に加入していただきまして必要な記録管理を行う、これが適用でございま すが、そういった対象者から保険料をいただく、これが徴収でございます。それから、 給付に関しましては、年金の請求に応じてお支払いをする支給業務とそれに伴います相 談業務など、これらを一体として行っておりますのが社会保険だということでございま す。  それでは、主要な点についての比較でございます。まず徴収額でございますが、これ は12年度の実績数値でございます。徴収額の規模の比較ということでございますが、国 税の方は53兆9,171億円ということで、これに対しまして社会保険の方は、政管健保、 厚生年金、国民年金合わせまして28兆 2,059億円ということで、徴収額の規模から言い ますと、国税の50%、5割強という水準でございます。内訳は、政管健保、厚生年金分 が26兆1,692億円、国民年金が1兆9,648億円ということで、この2つを合計いたしまし ても、実は上の数字には若干ならないわけでございますが、その分の差額は、船員保険 というほかの制度等をやっておりますので、今日お示しました三つの項目、全て若干合 計額に差が出ておりますが、政管健保、厚生年金、国民年金以外の業務もやっていると 、こういうことでございます。  それから、職員数でございますが、これは14年度の総定員数という把握でございます 。国税の方は、5万6,466 人、それに対しまして社会保険は1万7,542 人ということで 、職員の規模から言いますと、全体としまして3割強ぐらいの水準でございます。この 職員は先ほど申し上げましたように、社会保険業務全体の職員でございますので、それ では徴収に関する職員が一体何人いるのだということでございますけれども、これはい ろんな業務を一体としてやっておりますので、なかなか集計しにくい部分もございます が、とりあえず社会保険事務所の現場において直接徴収部署において仕事をしている担 当職員ということで申し上げますと、全体で2,700 人、こういう数字でございます。  それから、事務費でございますが、これは14年度の予算を使っております。国税全体 では7,328億円、社会保険全体では3,139億円ということで、事務費については大体国税 の4割強という規模でございます。政管健保、厚生年金のグループと国民年金に分けま すと、それぞれ1,525億円、1,591億円という額になります。粗々でございますが、この 事務費を徴収額で割りますと、事務費率といいますか、コスト率といいますか、こうい うものが出るわけでございます。これは時点が違うものを単純に割るだけでございます が、算数をいたしますと、国税の方が1.36%という数字が出てまいります。社会保険の 方は1.11%という数字が出ております。  したがいまして、適用とか給付とか全体業務の事務費率で比べましても、国税に対し て事務費率が高いということにはなってはおらないわけでございます。分解いたします と、国民年金がそのコスト率が大変高いではないかということになるわけでございます が、これは2,000 万人を超える1号被保険者からの一人一人の徴収でございますので、 国税におきましても、こういった自営業者からの徴収には、それなりのコストがかかっ ているのではないか、こういうふうに思います。  さらに申し上げますと、3,139億円でございますけれども、徴収に関する事務費とい うのはどれぐらいなのか。これは予算からクリアーに出てくるようなものではございま せんので、一定の前提を置いて推計するしかないわけでございますが、3,139億円に対 しまして大体2割強、700億円程度が徴収の事務費といって良いのではないかというこ とでございます。それぞれ政管健保、厚生年金では200億円程度、国民年金では500億円 程度ということでございますので、国民年金の徴収にかかる経費のオーダーはどれぐら いかと言われれば、国民年金全体の事務費の3割ないし1/3ぐらいではないか、こん なふうに思っております。  それから、この国民年金の1,591億円という事務費でございますが、平成14年から国 年の収納事務などが市町村から国に移管をされました。その間の事務費の変化につきま して、参考までに申し上げますと、13年度はこの数字が1,810億円という数字でござい ました。市町村から国に移管することによりまして、12%ぐらいの減になってございま す。  それから、こういった徴収額につきまして、いわば徴収率というのがどういうような 感じになっているかということでございます。国税との比較は難しいわけでございます が、所得税の源泉徴収分と厚生年金ということで比較させていただきますと、所得税の 源泉分の徴収率は96.8%、それに対しまして、厚生年金の方の徴収率は97.9%というこ とでございますので、徴収率においても国税に比べて遜色ない実績ではないか、こうい うふうに思っております。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。この数字はこのとおりでございますけれども、ただ、先ほ ど申しましたように、税の徴収コスト、社会保険の場合には徴収だけではないことをや っておりますから、これを比較するのはなかなか難しい。あと、当たり前のことですが 、税で言えば、源泉徴収のところは非常にコストが低い。ですから申告納税に依存する 法人税、消費税は高い。社会保険料も同じような問題、源泉徴収のところは非常に安い けれども、実際に申告の方をお願いしているところは高くなるということがございまし て、残念ながら国税の方は、税目ごとの徴税費はわかりませんので、正確な比較は不可 能でございます。  それから、先ほど神代部会長代理から報告ありました滞納につきましては、実はこれ が国税庁の事業年報でございますが、こういうものに非常に詳しく載っておりますので 、先ほどのは新規滞納でございまして、その年度間に滞納を整理された残りがどのくら いかというようなことも、そういう資料はきちんとございます。国税、地方税も含めた 徴収コストなども資料がございますので、これが必要があれば、むしろ私の方が多分詳 しいので、資料として少しサポートさせていただきたいというふうに思います。  それで、今日はレポートを中心にいたしまして、大変熱心にご議論いただきました。 特にレポートされなかった各委員からもそれぞれコメントいただきまして、議論が深ま ったものと私は考えております。  ただ、私の率直な印象を申しますと、これはいろんな委員からも初めの部分に出たこ とでございます、例えば雇用でありますとか、企業のあり方とか、将来の経済状況とい ったような年金制度を取り巻く要因の大きさ、あるいは今日の中でも、一種の財源論と して提起されました、税制なり財政なりとの関係というような、そういう要因の重要さ が、むしろだんだん浮かび上がってくるのではないかと思います。我々にとって非常に コントロールしがたい面ではございますけれども、年金制度の中だけで解決策を求めよ うというのは、やや難しいのではないか。例えば先ほどの税方式の場合の受給資格をど うするかというのは、これは当然税制における、居住者とか、非居住者とか、永住者と かという、そういう納税者の区分と整合的でないとおかしくなるわけでありまして、そ ういう税制との関連もございます。それから、いろいろございました高齢者や女性の就 業率を上げるためにどうしたら良いのか、そのためには企業の問題もあるでしょうし、 労働供給側にも無論あるかと思います。  それから、今日6人の先生からご説明ありましたように、実は積立方式か賦課方式か という経済的な影響を議論されますけれども、一つは人口変動と、もう一つは経済変動 のリスクなどが、どんな形で将来影響を及ぼしてくるかというようなことについても、 重要な論点でありながら、必ずしも私が見るところはっきりした答えが出ているとは限 らないというような問題もございまして、年金を取り巻く要因は非常に大きく広がりが あるというふうに思います。  ですから、そういう議論を進めると同時に、一方で、これは16年再計算、制度改革に 向けての議論でございますから、今、比較的次年度に近いところで議論をさせていただ いておりますけれども、いずれ制度改正なり再計算の際の、長期を見据えつつ、もう少 し具体的な議論をやっていかなければいけない。そうなりますと、年金制度、財政の部 分に関してもっと踏み込んだ議論の必要性が出てまいります。  そういう中で論点を浮かび上がらせるということと、もう一つは、今後ある意味での 制度改正なり、そのあり方を絞るなり、絞りきれない場合には選択肢を示すことで良い と思いますけれども、ただ、いずれにしても、これは我々が仮にそういう論点を提起し たときには、それについて、我々は“フィージビリティー”という言葉を使いますけれ ども、実現の可能性ということを考えざるを得ないわけで、ここは年金の研究会ではご ざいませんで、あくまでも年金部会でございます。かといって、かつての審議会のよう なネゴシエーションのようなことはするつもりはございませんで、その辺のこれから運 営の仕方なりについては、また皆様と十分相談をさせていただきながら審議を進めてい きたいと考えております。 今日はそういうことで、主として前回から続きまして、基 礎年金の財源をめぐる議論を続けてまいったわけでございますが、既に今日の段階でも 、その他の積立方式の話もが出てまいりましたし、また広い意味での社会保障全体の構 成の中の年金制度の位置づけということにも入ってきておりますから、明確にその次の 議題を分けて審議するのは難しいと思いますが、前回示しました当面の議題の進め方に よれば、今回の議論を受けまして、年金制度の財源のあり方について、さらに論点を深 めていくという作業を進めていきたいと思っております。  先ほど申しましたように、皆様のご希望に沿いまして、なるべく事務局の方で資料は 用意するつもりではございますけれども、最近、官庁のホームページも非常に充実して おりまして、ほとんどの重要な資料につきましてはダウンロードできる状態になってお りますので、ぜひとも有識者の皆さん方には、ご自分で少しそういう資料を検索された りもしていただくことが、今後の議論を進める上で、厚生労働省のお仕着せの資料だけ によらずに議論する意味で、非常に重要でございますので、その点はくれぐれもお願い を申し上げたいと思います。  次回の予定につきましては、事務局の方でまた日程調整させていただきましてご連絡 を申し上げますが、候補日ということで、何か特に今日はよろしゅうございますか。 ○ 福井総務課長  特に私どもの方からはございません。ご熱心な今日はご審議ありがとうございました 。食事を用意しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○ 宮島部会長  それではどうもありがとうございました。これで部会を終わります。 (照会先) 厚生労働省年金局総務課企画係 (代)03-5253-1111(内線3364)