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平成14年5月23日

社会保障審議会 介護給付費分科会
   会長 西尾 勝 殿

介護給付費分科会委員 
守口市長 喜多洋三


 介護報酬の見直しにあたっては、介護給付費の動向は即保険料に影響するものであり、広く国民に保険料負担を求める以上、保険料・公費負担など保険財政のあり方についても、避けては通れない議論と考えております。勿論、介護サービスの質の担保・向上を図る視点とともに、供給者の経営視点も必要でありますが、供給者側のみに偏れば、保険料水準等への配慮を欠くこととなり、強いては保険財政の破綻を招くことになります。
 また、診療単価の引き下げ等の社会情勢を鑑みれば、適正な財政負担・単独減免の是非をも視野にいれた公平な保険料賦課の構築を図らなければならないと思っております。
 このような中で、具体的に介護報酬の見直しを進める前提として、つぎのような問題点をも念頭に置いてご議論を進めていただきたいと考えております。

(1)財政問題について

 国が負担する25%のうち、5%に相当する部分は調整交付金として、後期高齢者の比率が高い市町村などに重点的に配分されておりますが、5%を下回る市町村においては、17%と言われる1号被保険者の負担割合を押し上げ、保険料引き上げの要因になっています。調整交付金の財源は、別に財源措置をし、保険料の不公平をなくすべきです。

資料1


(2)保険料のあり方について

 1号被保険者の約75%が住民税非課税の高齢者で、現実には生活保護基準以下の収入で生活保護を受けずに生活している者も少なからず存在することは事実であります。
 また、個人単位の制度と言いながら、同居世帯員の所得を条件とした賦課方法や税制の矛盾を持ち込んだ保険料は決して公平なものにはなっておりません。
 高齢者を対象に保険料の納付義務を課すのであれば、高齢者が自らの所得に応じて納付できるような保険料の算定方法を検討すべきです。

資料2


(3)低所得者対策について

 保険料・利用料の減免について、全国の市町村で保険料・利用料に対する独自減免の措置が広がりを見せ、「地方分権」という名のもと、また国の3原則遵守の中で正当化されておりますが、本当にこれで良いのでしょうか。
 早急に低所得者対策のあり方を検討すべきです。

資料4


(4)介護報酬のあり方について

 在宅サービスと施設サービスの介護費用には大きな格差がありますが、その選択は、被保険者に委ねられており、保険者の裁量はありません。このため、施設サービスの比重が高い保険者にあっては、保険料や財政負担が大きくなっております。
 現在、特別養護老人ホームへの入所希望者が全国的に増加する中で、当該施設へのホテルコストの導入や入所における優先順位の設定などが検討されていますが、これだけで解消されるでしょうか。施設と在宅サービスの介護報酬等のあり方を見直し、不公平をなくすべきです。

資料5



資料1

調整交付金は、保険料を不公平にしています。

  •  国が負担する25%は、20%の定率負担と5%の調整交付金に分かれています。

  •  この内、調整交付金は高齢者の割合や、加入者の所得で、増減されます。

  •  減額された団体の調整交付金を財源として、高齢化団体等への支援を行い、保険料水準を下げます。

このため右図のように

調整交付金が
増額
 → 
1号保険料が
減少
または    
調整交付金が
減額
 → 
1号保険料が
増大

(介護保険の財源内訳)

介護保険の財源内訳


資料2

税金と同じく、介護保険料も不公平になっています。

税制の矛盾を持ち込んだ段階制保険料は、決して公平なものにはなっていません。

《2人世帯(1号被保険者65歳男、配偶者59歳)・M市の例》

  生活保護 年金収入 給与収入 「複合」収入 その他事業収入
【収入月額】 【最低生活費】

179,010円
(内訳)
生活扶助費
123,710円
 住宅扶助費
55,300円
 (介護保険料分含まず)
【年金収入月額】

179,010円

夫の収入・妻扶養
【給与収入月額】

179,010円

夫の給与・妻扶養
 賞与無しの場合
【収入月額】

179,010円

夫 国民年金
55,000円
妻 給与
124,010円
【収入月額】

179,010円

夫の収入・妻扶養
【公課他】
市・府民税
所得税
国民健康保険料
国民年金保険料
NHK受信料

非課税
非課税
負担なし
負担なし
免除

非課税 
非課税 
9,920円
13,300円
1,242円

292円
非課税 
19,260円
13,300円
1,242円

292円
非課税 
12,890円
13,300円
1,242円

3,110円
4,230円
27,990円
13,300円
1,242円
    24,462円 34,094円 27,724円 49,872円
M市
介護保険料
1,594円 (第1段階)
 生活扶助で支給され
 事実上、負担は無し
2,391円
 (第2段階)
3,985円
 (第4段階)
3,188円
 (第3段階)
3,985円
 (第4段階)
一部負担金 健康保険 医療扶助は現物支給 3割負担(国保) 同左 同左 同左
所得は必要経費認定のない極端な場合で計算
(日雇など)
介護保険 介護保険の一部負担金は介護扶助で支給 1割負担(介護)


資料3

1号保険料の矛盾!
(高齢者の収入は年金収入として算出)

個人単位の制度と言いながら、同居世帯員の所得を条件にした賦課方法には、矛盾があります。


(267万円未満)

市民税非課税
 

(267万円未満)

市民税非課税
市民税非課税世帯

(267万円以上)

市民税課税
 

(80万円)

市民税非課税
市民税課税世帯
高齢者夫婦

(80万円)

市民税非課税

(80万円)

市民税非課税
 
息子

市民税課税
市民税課税世帯
            
第2段階
第4又は5段階
第3段階
第3段階


資料4

割が非課税の制度で低所得者対策が必要なら、制度に無理があります。

○ 生活保護基準以下の者の存在

 現実には生活保護基準以下の生活をしていながら、本人の社会的プライドから保護を受けずに生活している者が少なからず存在することは周知の事実です。
 生活保護受給者は自ら保険料・利用料を負担していません。介護扶助は、医療扶助と同様に現物給付とすべきです。

○ 5段階制保険料は事実上定額制

 現在の5段階制保険料は約7割の者が第2・第3段階であり、事実上定額制と言わざるを得ません。
 窓口でも多くの市民が、保険料の傾斜の付け方や保険料の算定方法ついて不満を表しています。

○ 独自減免の増加

 各保険者が独自減免を行えば、自ずと国民健康保険の辿った道すなわち「第2の国保」に陥ることは明らかです。
 早急に保険料のあり方を見直す必要があります。

介護保険加入者の所得分布

段階区分 対象者 人数(人) 割合(%) その他
第1段階 生活保護、又はそれと同等 2,110 4.4
] 市民税非課税者

72.6%
第2段階 市民税非課税世帯 18,429 38.4
第3段階 市民税課税世帯で本人だけが非課税 14,301 29.8
第4段階 所得が250万円未満 8,089 16.8
第5段階 所得が250万円以上 5,086 10.6
合計 48,015 100.0  


資料5

同じ要介護度なら施設も在宅も保険からのサービス額は同じにすべきです。

 保険給付額は、要介護度によって限度額が定められていますが、同じ介護度でも費用が大きく異なる施設、在宅サービスの選択は被保険者の選択に委ねられています。よって、保険者の意思にかかわらず施設サービスの比重が高いところは、保険料も高くなります。

在宅介護

要支援  61,500円
要介護1 165,800円
要介護2 194,800円
要介護3 267,500円
要介護4 306,000円
要介護5 358,300円







施設介護

(施設サービス費<要介護度別>+食費<2,120円>)



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