02/04/22 社会保障審議会 第8回介護給付費分科会議事録        社会保障審議会 第8回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所    平成14年4月22日(月) 14時から16時20分    厚生労働省 省議室 2 出席委員    西尾、井形、青柳、喜多、木下、木村、京極、見坊、笹森、下村、田中(滋)、    田中(雅)、中村、橋本、樋口、堀江、村上、矢野、山口、山崎、山本の各委員    新井、三宅の各参考人    岡、澄田の各委員は欠席 3 議題  (1)事業者団体ヒアリング(第2回)  (2)介護事業経営概況調査の結果について(報告) ○ 全国福祉用具製造事業者協議会・松永、社団法人日本福祉用具供給協会・池田、特  定非営利活動法人全国痴呆性高齢者グループホーム協会(以下、「GH協」という。  )・林崎、特定施設事業者連絡協議会(以下、「特定協」という。)・武田、財団法  人全国福祉輸送サービス協会(以下、「福祉輸送協会」という。)・川村の各意見陳  述人より、意見陳述。  (見坊委員)  グループホームに現在入所されている方は、そのグループホームの周辺の方か、他市 町村からも来られているのか、傾向と比率を伺いたい。  グループホームの利用者は、運営基準にもある通り、痴呆の状態にあってかつ共同生 活が可能な者であり、要介護3ぐらいまでかと思っていたが、実際には要介護5まで入 っているため、専門性の高いケアや夜勤体制の必要性が高まっている。グループホーム が共同生活を営む住居という位置づけでなく、痴呆対応の専門的な小規模施設であると すると、現行の運営基準では無理があるということか。  グループホームの退所者数や退所先はどうなっているか。終の棲家か、通過的施設か 。日本の家族・住居環境の実態からすると、利用者サイドは終の棲家の考え方が相当あ るのではないか。  (林崎意見陳述人(GH協))  グループホームが誕生した当初は地元からが多かったが、介護保険が始まってからは いろいろな場所から入るようになっており、地域の理解も高まってきている。  かつては中程度の状態の方が対象であったが、平均要介護度は上がってきており、要 介護5の方も多く入所している。今後、生活中心のグループホームと介護中心のグルー プホームに分かれていくのではないか。一度入所すると、他に移って病状が悪化するこ とを家族は一番懸念しており、慣れた場所に住み続けることが宝であると思う。  退所はほんの数例であるが、グループホームのケアの仕方を勉強し、以前の介護の失 敗に気づいて、もう一度自宅で介護をやり直す方もいる。個人的にはグループホームが 終の棲家であることは可能であると思っており、要介護3ぐらいまでは家事を分担する ことができるので、そういうことに可能な限り携わった上で、最後は何らかのサポート をするのが自然の姿。  (笹森委員)  グループホームは施設ではないが、外部の介護保険サービスをほとんど利用できない というのは、利用者には分かりにくい。夜勤体制と訪問看護・福祉用具の利用について の要望がクリアできれば、グループホームは現在の形のままでいけると考えているのか 。  (林崎意見陳述人(GH協))  グループホームが在宅か施設かという問題が背景にあるかと思うが、二者択一である 必要はなく、両方の長所と短所を加味した第3の形ということで、何もおかしくないの ではないか。  (山本委員)  九州のあるタクシー会社では、介護保険を使うことによって、近距離の料金をとって いない。要介護者であればタクシーで輸送するというのはいかがなものか。  福祉輸送サービスについては、どのような車両で、どのような料金設定となっている のか。  ヘルパー資格を持つ運転手が運転する場合は、運転中も見守りをするから介護報酬の 対象となるという意見があるが、後ろを見ながら安全運転はできないので、そういった 意見は論拠がないのではないか。  乗降介助は本来、公共輸送機関が当然やるべきサービスであり、介護保険ができたか らといって、そういうものまで吸収しなければならないのか。乗降介助が身体介護に該 当し、30分2,100円・1時間4,020円と介護報酬が非常に高いのも問題である。  要介護者を病院に連れて行く場合には介護保険が適用され、一方、要介護者ではない が通院の必要な者は自分でお金を払うというのは、社会的に極めて不公平。  新しい類似のものを次々と介護保険の対象とすると、保険者としては保険料の暴騰を 防止する方法がない。  グループホームの夜勤体制の要望について、これだけの利用者に対して夜勤を含め何 人の職員が必要かは、当初の事業計画で当然計算に入れておくべきものではないか。  介護報酬の引き上げ要望が多いが、事業の収支はどうなっているのか。  保険者の立場からすると、要介護者の自然増分の保険料の値上げは仕方ないが、介護 報酬単価の引き上げによる保険料の値上げは絶対賛成できない。現在の社会状況を見れ ば、65歳以上の方に納めていただいている保険料を増額することは難しい。  (川村意見陳述人(福祉輸送協会))  九州のタクシー会社については、北九州はタクシーの激戦地であり、タクシー料金と の比較において採算が合う範囲であれば運賃を無料にするという考え方。加えて、通院 等に非常に便利で利用者に好評ということもあると思う。2〜3時間もかかる長距離は 大赤字になるので断っていると聞いている。運輸当局は黙認していると理解しているが 、法的に言って無料というのはおかしいと思う。  いわゆる介護タクシーでは一般のタクシーと同じ仕様の車両を使っているが、施設送 迎等では車いすで乗れるような改造が必要であり、7〜8割増の費用がかかる。実態と しては、施設ごとに償却年数や稼働時間等について相談した上で契約しているが、現在 の通所サービスの送迎加算44単位では、1日10人の往復で8,800円であり、それでは乗 務員の賃金、燃料費、各種保険加入料等の費用はとても賄えない。  特に要介護者の方については、運転中でもトイレ等の様々な問題が起きるので、運転 手は前方に8割、後ろの客に2〜3割の注意を払わないと安全輸送はできない。  確かに乗降介助のサービスは当然のことであるが、アパートの4階までおぶって上が ったり、車いすを運ぶ必要がある場合は30分ぐらいはかかるし、乗車中に様々な介護が 必要になる場面もあるので、バスや電車では通院するのに不自由でありタクシーが必要 とケアマネジャーが認めた方に限っては、2級ヘルパーやケア輸送士の資格を持った運 転手による輸送に対して、介護保険が適用されるという考え方が当然と思う。  収支状況については、通所サービスの送迎加算44単位では1日1万円前後にしかなら ないため、優秀な乗務員を配置するのは難しく、専業の事業者は少ないが、ほとんどが 赤字である。これまでやってきたことを急には止められないので、他の事業の収入をつ ぎ込んだり、賃金・賞与のダウンや輸送の空き時間に施設の掃除等をやったりして、契 約を続けてもらっているのが実態。  (林田随行人(GH協))  各事業所の事業計画は夜勤分も見込んでぎりぎりのところで立てているが、夜勤体制 をとっている事業所の利益率は1.65%、年間収益は約42万円であり、月額給与15万円程 度で頑張っているスタッフの給料を上げていくことは難しい。痴呆の方が昼も夜も安心 して暮らせるためには、要介護度にかかわらず夜勤が必要。確かに保険料引き上げにつ ながる話ではあるが、従来型のサービスにこだわっていると痴呆の方がますます増える 中で不安に起因する費用はもっとかかるようになるので、社会保障全体から考えると、 グループホームを夜勤体制にして地域の中で安心して暮らせる状況をつくることにより 、十分なコストパフォーマンスが得られるものと考えている。  (武田意見陳述人(特定協))  特定施設の大部分を占める有料老人ホームは制度上、パッケージ報酬である特定施設 の報酬でも、訪問介護等の単品サービスの報酬でも、どちらでも請求できることとなっ ており、在宅の支給限度額と特定施設の報酬の格差がこれほど大きいままであれば、せ っかく低価格の特定施設報酬を設定したにもかかわらず、訪問介護等の方へ流れ、最終 的には支給限度額一杯に揃っていって、介護保険財政を悪化させることにもなりかねな い。特定施設の報酬を多少上げても、長期的に見れば介護保険財政の安定に資するので はないか。  (樋口委員)  グループホームの入所者について、近県のグループホームに入るという話も聞くが、 それは近くにないからではなく、何となくそばには入れたくないという家族の意思も働 いているのではないか。地域の中にあれば、頻回に訪れるということもあるのではない か。  グループホームの利用料は全国平均でどのくらいか。かなりの所得がある人でないと 利用できないために、仕方なく特養に長い列ができている面があると思う。人件費は犠 牲的に安いし、夜勤は必要であると思うが、利用料は今後、住居費ということで値上が りする方向なのか。同じ痴呆でも所得階層別に入所者が分布していくことになるのか。  特定施設は利用者にとって分かりやすい居住施設になってほしい。有料老人ホームの 介護一時金について、介護保険導入前に退所したために調整金の返還が受けられなかっ た事例が新聞に出ていた。訪問介護を含め介護サービスの標準化も必要であるが、2.5: 1と3:1の職員配置で介護の質がどう変わるかについて、利用者に対して説明していた だかなければ困る。  (林崎意見陳述人(GH協))  利用料金は大都市などでは高く設定されているところもあるが、全国的にはかなり安 くなってきており、介護保険導入後は低所得者も入れるようになった。具体的に私のと ころでは、つくった頃は13万円であったが、介護保険導入後は7〜8万円ぐらいでやっ ていける。  この5〜6年で痴呆の高齢者をあまり恥ずかしいと思わなくなってきており、グルー プホームに入所すると、利用者だけでなく家族の意識も変わり、面会の回数も増える。 住み慣れたところに置いてあげようという本来の形に落ち着いてきたのではないか。  (武田意見陳述人(特定協))  介護保険導入に伴う介護一時金の清算について、必ずしも万人に納得いただけていな いという指摘はある。  「3:1の人員配置で介護報酬が平均20万円支払われ、それより手厚い2:1の人員 配置だから7〜8万円増しの料金がかかる。」といった説明は必要であるが、「手厚く なったことで増えたサービスはこれこれである。」といった具体的な説明は、ベースと なる介護報酬算定上のサービスの範囲が具体的に定まっていない以上、不可能である。 1日当たり又は1週間当たり、平均的にこれだけのサービスを提供すべしといった標準 化は今後の課題。  (橋本委員)  グループホームの利用者負担が大きいのは明らかであり、7万円で入れるはずはない 。利用者はコストを全部負担しており、介護保険施設に比べて高いのは当たり前なので 、レアケースではなく正確なデータを出していただきたい。  (林崎意見陳述人(GH協))  高いところでは高いが、安いところでは5万円ぐらいでやっていることもある。  (京極委員)  別法人でアパートを借りてお年寄りを詰め込み、在宅と称する宅老所まがいの事業所 に対する規制について、競争相手の立場からどう考えるか。利用者はグループホームと 思っている場合もあるが、法律的には整理しづらい問題である。  (林崎意見陳述人(GH協))  協会に入らない事業者については、情報が入らないし、制限の方法もない。 ○ 介護事業経営概況調査の結果について、福本企画官より説明。  (青柳委員)  本格的な実態調査はいつ出るのか。概況調査結果を今回公表する目的は何か。  収支差の数値をどう読んで、どの収支差を適当と考えて介護報酬を改定するかについ て、客観的な指標やルールのコンセンサスが必要。  来年度予算の概算要求は何を基準にするのか。自然増分以外の介護報酬単価の引き上 げはないということなのか。従来の流れでは概算要求で固まったシーリングがそのまま 予算編成に移行するので、概算要求の際に細部まで決められなければ、但し書きを1〜 2項設けていただきたい。  (中村委員)  数字がひとり歩きされると大変だなとの思いである。介護老人福祉施設の管理者の44 万4千円の給与月額は、まさに旧制度のツケが、指導監査の世界、規制の世界や控え目 な給与水準で福祉に取り組んできたことの集大成である。  (山口委員)  老人保健施設の収益率が上がったのは、ショートステイの稼働率が上がったことと、 食費が病院並みに取れるようになったことが要因。質については、リハビリスタッフや 看護・介護職員を増やす施設が増えつつあるので、今後、専門職確保のために人件費が 上がってくるはずであり、また、法定の減価償却期間と実際の借入期間が異なるために 、各施設は借入金の返済に苦しんでいる。いずれにしても、利潤を次の投資に回してい く努力をしているところ。  (山崎委員)  日本看護協会が1万2千人を対象に行った看護職員実態調査によると、平均給与月額は 約36万5千円であり、介護保険関連の看護師の給与は平均水準よりも低い。36%の看護職 員が介護施設を働きたい場として挙げているが、この給与水準では人材の確保が困難で あると思う。  (田中(雅)委員)  収益の利幅だけで介護報酬を議論するのではなく、各施設の管理者の給与差を含め、 どのようなサービスが提供されているかということと関連づけて数字をみなければなら ない。  平成14年2月の毎月勤労統計調査の5人以上規模の職場の平均給与約28万円と比較して 、介護従事者の給与をどう考えるかは今後の議論かと思うが、質の確保、専門性の評価 と併せて、働きやすくて夢のある職場を考えていかなければいけないのではないか。  (橋本委員)  居宅介護支援については、事業所の努力の限界を超えていたことがはっきりしている 。施設は余裕が出ているが、サービスの質の向上、身体拘束廃止や完全個室化を進める 際に人手不足を解消する財源があるということで、安心している。  (福本企画官)  サンプル数を3分の1に上げた実態調査については、調査票を各事業所に発送し、記 入していただいているところであり、今年の秋には結果がまとまる予定。  概況調査の公表目的は、来年4月に向けたシステム改修に着手するため、今年の7月 に報酬骨格を決める必要があり、そのためにも何らかの経営面の状況のデータが現時点 で必要であると判断したため。  実際の単価の額の設定については、秋以降、実態調査の結果を用いてご議論いただき 、来年1月の諮問・答申により、最終的に額が決まることとなる。  今回の収支の評価については、報酬の審議に関わるものであり、事業者、従事者、費 用負担者それぞれの立場から議論していただきたい。  (小林総務課長)  概算要求のスケジュールは例年8月末となっているが、シーリングの決定を含め具体 的には未定。各市町村が見直し作業を進めている第2期介護保険事業計画の中間取りま とめが6月頃に報告されるので、これを基本に置いて概算要求を行うのが大筋の流れ。 その後、10月頃にまとまる最終的な事業計画や本分科会でのご議論を踏まえて、年末に 向けて予算編成作業を進めていくことになると考えている。  (青柳委員)  事業計画の関連で市町村から上がってくる数値は利用率や利用者数についてだけであ り、単価の議論は無視された形で概算要求が進んでいくことを心配している。概算要求 に但し書きを設けるぐらいの配慮が必要なのではないか。  (外口老人保健課長)  第9回は、5月13日(月)の17時からで、議題は、第2ラウンドの1回目として、訪 問介護と居宅介護支援を中心に審議していただくことを予定している。  (西尾分科会長)  本日はこれをもって閉会とする。 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係 TEL 03(5253)1111(内3948 3949)