02/04/22 第11回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会議事録        第11回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会                   日時 平成14年4月22日(月)                      10:30〜                   場所 経済産業省別館第1020会議室10階 ○医事課長  ただいまから、医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会を開会させていただきま す。委員の先生方には、大変お忙しい中ご出席いただきまして、誠にありがとうござい ます。初めに、本日の委員の出欠状況について、ご報告させていただきます。欠席され るというご連絡をいただいております委員は、辻本委員、中野委員、横田委員です。本 日も文部科学省から、高等教育局医学教育課の村田課長が出席をしております。それで は、矢崎部会長どうぞよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  議事に入りたいと思います。前回、これまでの議論を整理して、私が口頭でまとめを 申し上げましたが、本日は中間とりまとめとしてまとめたいと考えております。あらか じめ事務局と、お手元にあります中間のとりまとめ(案)を作成して、既に委員の方々 にはお届け申し上げております。本日は、このとりまとめ(案)についてのご議論をい ただいて、最終的にとりまとめを行いたいと思っております。よろしくお願いいたしま す。それでは、中間のとりまとめ(案)につきまして、事務局から説明をお願いします 。 ○医事課長  「中間とりまとめ(案)」のご説明に入る前に、本日の資料について一通り説明させ ていただきます。資料1が前回の議事録、資料2が「中間とりまとめ(案)」です。こ れが「中間とりまとめ(案)」の本編と資料編ということになっております。委員の先 生方のお手元に大変分厚く積み上げてあるのが資料編ですが、これを後日製本して、本 編と合わせて中間とりまとめという扱いにしたいと思っております。資料3は、「中間 とりまとめ(案)」に対して、本日ご欠席の中野委員、横田委員、辻本委員からいただ いたご意見ということです。  続きまして、「中間とりまとめ(案)」について、読み上げさせていただきます。 ○事務局  事務局から、資料2−1「中間とりまとめ(案)」について読み上げさせていただき ます。1頁が「中間とりまとめ(案)」の表紙です。2頁目が目次です。3頁からです 。               (資料読み上げ・略)  以下、別添1が委員名簿、別添2が審議経過、資料2−2が資料編という構成です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。ただいまお読みいただいたのが「中間とりまとめ( 案)」です。先ほど事務局からお話がありましたように、このまとめに至った経過につ いての分厚い資料は、「中間まとめ(案)」とともに、製本をして委員の皆様方に配布 申し上げるということになるかと思います。いままで10回この会を開かせていただいて 、そのときに委員の方々からいくつか問題点を指摘されたことについては、できるだけ 網羅して3番目の項目に拾い上げていると思います。それを基に、4番目の必修化後の 制度の基本的方向ということを、6点にまとめて申し上げました。このまとめ(案)に つきまして、今日は委員の方々からご意見、あるいはコメントをいただきたいと思って います。 ○磯野委員  千葉大学の磯野です。前回も申し上げたと思いますが、この「中間とりまとめ」とい うのは、ヒアリングとこれまでの検討という形で書かれておりまして、「検討」という 意味がよくわからないのです。これまでは私自身が理解したのは、専らヒアリングを行 って、各委員が意見を述べる。そして、それに対する疑問点、あるいは問題点について 、ただ議論という問題よりも、それを聞き流したような形になっておりまして、この検 討部会において1つの問題を取り上げる、あるいは論点整理をして、それについて議論 をしたということはないと私は思っております。  したがいまして、このまとめの中にはこれから検討するという問題点もありますし、 内容的には非常に曖昧な部分がありまして、これからそれらを論議する必要はあるので はないかと思っております。これはとりまとめというよりも、これからの論点整理とい うような形で提出していただいて、そのあと我々がこれについて議論をしていくという 場を設けていただければ大変ありがたいと思っております。この内容で「中間とりまと め」という形で出されるということには、私は大変不満でございます。  矢崎先生はどのようにお考えでしょうか。矢崎先生もこれを十分、とりまとめとして ご了承されているのかどうか。検討した結果のとりまとめという形で、このようにまと められていることの、先生自身のご意見をお伺いしたいと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございます。これは、ここに書いてありますように、基本的方向性 のとりまとめですので、磯野委員のおっしゃったとおりの内容であります。ですから、 細かい具体的な基本方針については、これから詰めていく作業が必要かと思います。 ○磯野委員  そうしますと、これからこの問題について、まだご議論をいただくということになる わけですか。 ○矢崎部会長  それはまたあとで。 ○磯野委員  予定として、どういう形になっているのか、計画をお聞きしたい。まとめというより も、私は論点整理と思っておりますから、今後またこの問題について、今日ご議論をい ただいて、問題点のあるところについて、またこの会議でご議論いただくというふうに 理解しておりますが、それでよろしいですか。 ○矢崎部会長  まず、基本的方針、いままでの論点整理のこの「中間まとめ(案)」についてご議論 いただいて、そのあとまたそういうお話をいただければと。まず、この内容の基本的な ことについて、ご意見はありますか。 ○宮城委員  具体的な内容について2点ほどお伺いしたいのですが、この「マッチングプログラム 」、アメリカでは前からこういう方法でやられているのですが、日本で取り入れるとす れば、具体的な方法はどういうことをイメージしておられるのかということと、研修医 の生活保証の点で、「国の財政および診療報酬を含めて」という文言があるのですが、 診療報酬を含めてという具体的な内容をどのようにお考えなのか、少しご説明願いたい と思いますが。 ○矢崎部会長  そのことにつきましては、具体的にということで、私に聞かれましても、これは一応 、基本的な方針をここで提示申し上げて、今後検討いただくということで、それはこれ からの仕事になるかと思います。 ○宮城委員  「マッチング」についてのご提案は、黒川先生から強くご提言いただいたと思うので すが、黒川先生はマッチングは具体的にどういうことをイメージしておられますか。 ○黒川委員  これは日本の片仮名文化の悲劇的なところがないわけではなくて、日本が近代化した ときに片仮名が入ったというのは非常に都合のいいシステムだったと思うのです。いま 、いろいろな議論が出ていますが、片仮名というのはもともと英語だったわけなので、 そういう英語で出てきた言葉には、それの文化的、社会的、歴史的な背景があるわけで す。ところが、片仮名になった途端に、日本人は日本の都合のいいようにそれぞれが考 えてしまうところがあって、例えば「コーポレート・ガバナンス」なんていいます。そ れは、会社の監査役というのは、社長になれなかった人が社長のおぼしめしで最後1期 やるぐらいの職だったから、大体監査なんかしているわけないのです。それでまずいと いうことで、監査役が機能しなかったんだからという話を言う代わりに、コーポレート ・ガバナンスというありがたい言葉を入れて片仮名にした途端に、何かありがたいこと があるような気がしてくる。  それから、「モラルハザード」なんていうのは、「倫理観の欠如」と言えばいいので すが、いまのみずほ銀行でもそうでしょう。モラルハザードなんて言っているけれども 、それも今までなかったような気にさせてしまっているだけの話で、いままでの人が責 任をとらない言い訳になっているということです。  マッチングは何かというと、これはやはりアメリカのシステムの基本であって、アメ リカ以外の国、例えばアングロサクソンにしても、スウェーデンとかいろいろな国によ って、それぞれの文化、社会的な価値観、国のあり方というのがあって、インターンの 研修にしても医療のあり方、銀行のあり方、みんなあるわけです。  マッチングというのは、黙っていても、個人主義の社会では卒業した所の外に出てい きなさいねという話は、自発的な社会的な常識としてあったのですが、アメリカのよう な移民の国では、いろいろな価値観の歴史を引きずった人たちが来ているけれども、少 なくとも医者とか、弁護士もそうですが、教育のシステムにしても、基本的に違ったカ ルチャーの人をあるプロフェッショナルなレベルに作るためには、作る人たちが責任を 持ってするためには、価値観が違うからいくら能書きをたれたってわからない。だから マッチング、つまり常にいくつものステップで、自発的に混ざらせるということをして いるわけです。それがマッチングのごく基本であって、普通の医学部の学生は、大体10 0人が1クラスで卒業していきます。いままでは大部分が自分の卒業する所にいるんだ というインブリーディングが日本の社会の基本ですから、100人の研修医がその大学病 院に来ると。  特にブランドの大学では、200人ぐらい来るかもしれないけれども、アメリカ、イギ リスでは、社会に対してそういう医者をつくるためにはマッチング、つまり自分の出身 者は常にマイノリティーにして、外に出して、自分たちのプロダクトはこういうもので すよ、ということを決めさせるというのが社会に対する責任だ、という基本でいままで やっていたわけです。それがマッチングというふうになってしまって、日本で本当にこ れが正しく理解されているか。つまり、どんな研修プログラムを作っても、自分の身内 はマイノリティーにしておくというのが基本だよ、ということを言っているわけです。  なるべく自分の卒業生は外に出てこいと。他流試合してこいと。それによって、自分 たちのプロダクトはこれだけのものですよということを、自信を持って外部に対して言 えるような大学にしたい。外部に見られる言えるような研修病院にしたい。医学部の卒 業生はそういう人を育てて社会に出しましたよというのが基本だから、どんな数合わせ をしても、基本的には自分たちのプロダクトは外に出すというのが基本だと。だから、 アメリカ、イギリスの場合は、パブリックに対して責任ある態度をとっているのだ、と いうことが分かるようになっている、こういうことだと思います。  これを是非、やり方はどうあるにしても、基本は我々の都合、つまり既得権を持って いる人の都合ではなくて、将来を担っていく自分たちのプロダクト卒業生を、自分たち の外部のプロフェッショナルに評価させるというのがマッチングのプリニンシフルだと 思って、実は福井先生は実際のアメリカのマッチングのプログラムを見てきたと言われ ましたから。 ○福井委員  おそらく印刷物で提言されたのは、国立大学附属病院長会議の常置委員会で出した報 告書に、「マッチングプログラム」というのが出ているからだろうと思われますので、 簡単に説明させていただきます。イメージしているのは、研修施設のほうは応募者を独 自のやり方で、試験なりインタビューをして、採りたい者からランク付けします。研修 医は、何カ所か行きたい研修施設の試験を受けて、その中で自分が行きたい施設をラン ク付けします。それをどこかセンター組織でコンピューターを用いてマッチさせます。 研修施設と応募者の双方が最も満足できるような組合わせになるようにします。そこで 重要なのが大きな施設で何百人も研修医を採用するようなことがありますと、小さな施 設やいろいろな意味でアドバンテージが少ない所には研修医が行かなくなりますので、 定員を設定し、全国的にさまざまな大学の卒業生が混ざることを目的としていると考え られます。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。このマッチングの具体的な方式は、今後重要な議論になると 思いますが、ここの基本的な趣旨としては出身大学校にこだわらずに混じり合って、い ちばんの問題は研修医の囲い込みではなくて、オールジャパンの視点から、いかに研修 医がいろいろな所を回っていけるか、という趣旨がこの基本的方針ですので、具体的に それからどうするかというのは極めて難しい問題かと思います。それはやはり英知を絞 って何とか実現したいということですので、よろしくお願いします。 ○内村委員  今マッチングのことで議論をなされているのですが、やはり大学にこれだけ集中した というのは、我が国の講座制の弊害なのです。それが基本だったのです。だから、それ はちゃんと認識しておかないといけないと思います。インターン制度の時は大学でする 者はいなかったのです。みんな全国に散っていったのです。そして、インターン制度の ときは、みんな1年間地域の現場でやったのです。だから、アメリカではそういう問題 があったかもしれないけれども、日本の教育の歴史を眺めてみると、やはりこれは講座 制のもとに、ストレートで入れていったというところにこういう弊害が起こってきた、 というのが我が国のいままでの本質的な問題だったと思うのです。このことはやはり認 識しておく必要があると私は思います。 ○櫻井委員  いままでの研修制度が問題があっただけに、今回の研修については実際に変わったと いうことが実感できるような内容でないとまずいと思います。この中間報告では、そう いったいろいろな問題点を非常にうまく列挙してあります。私自身は、とにかく基本的 には大学が抜本的に変わっていただきたい。それがなければ今回の研修も前とあまり変 わらなくなってしまうのではないかというような懸念があります。  中間答申なのですが、「何々とする」とか「望ましい」とか「求められる」とか、そ ういった動詞が使ってあるのですが、これはどの程度強制力があるのか。実際にこれが 実現されるのか。そういったことがちょっとよく理解できないので、そのことをお尋ね したいと思います。 ○医事課長  私のほうからお答えさせていただきます。このとりまとめ自体の強制力ということで は、法律的な強制力は特にないものというふうに思っておりまして、私どもに対する、 いろいろな意味のご示唆、ご意見というふうに承っております。それを受けまして、事 務局のほうとして行政担当局としての責任ある対応をこれから考えていくことになる、 というふうに理解しております。 ○徳永委員  各論のご議論が進んでいるようですが、その前に基本的なというか、総論的なことを お尋ねしたいのですが、今回のまとめ案の4の「基本的方向性」ということで、座長先 生はじめ、説明されているところですが、やはり基本的方向ということであれば、それ がこういうフォーマルの場で決まったということになると、言葉使いとか、取り入れら れた項目とか、1つ1つが非常に大きな意味を持ってくると私は思います。  ですから、例えば各論的に言いますと、この中に研修施設のことなんかがありますが 、この施設というのは、今回改正された医師法の第16条の2の中で、「施設」というの は「大学附属病院」と「厚生労働省の指定病院」と、2つはっきり書かれているわけで す。それのどれを指しているのか。両方とも指しているのか。しかし、この基本的方向 を見ますと、ほとんどが厚生労働省の指定病院に絡んだ話が出てきていると私は思いま す。ですから、その辺の区別をはっきりしてほしいということ。  3章で掲げているこれまでのヒアリングの指摘事項の中で、優先的に基本的な方向に 入れる、4項に入れるべきものがあると思います。それがもうちょっと系統的なディス カッションなり、事務局がこれはこういう表現で変えたのであるとか、そういう説明を いただきたい。例えば指導医の問題であるとか、それの処遇の問題なんていうのはかな り大きな問題だろうと思いますが、それが4項にはあまりはっきり書いておりません。 そういったことで、4項の中にはヒアリングで出された大事な意見というのが、もうち ょっとうまく表現されるべきだと私は思います。特に最初に言いました医師法の関係で の研修施設の位置付けというのを、もうちょっと明確に基本方針の中に入れるべきでは ないかと思いますが。 ○堀江委員  先ほど磯野先生が発言されましたが、私もいままでの10回続けてきたこの部会でのヒ アリングに基づいて「中間とりまとめ」として弱い骨格のようなものがまとめられたの かなという印象は持っています。ただ、その骨格作りにおいて、議論は十分尽くされて いないのではないでしょうか。したがって、これから骨格自体がしっかりしたものを作 って、さらにそこにきちっとした肉付けがされていくステップがふまれていくのだろう 、というふうに期待をしているわけです。  いま既に「中間とりまとめ」についての各論的な審議が始まってしまっていますけれ ども、できましたら概要、そして基本的な方針の個々のものについて、検討を進めてい ただければと思います。各論から入っていきますと、議論があちこちにとんでしまって 散漫になってしまうのではないかという心配がありますので。 ○磯野委員  これは先ほどの続きなのですが、櫻井先生が言われているように、私も問題点を全部 書いてきました。7頁の所に「進学を行うこととする」とか、8頁に「今後さらに検討 する」とか、また8頁に「仕組みとする」とか「処遇を考える」とか、9頁には「求め られている」とか、10頁には「可能とする」とか、11頁には「求められる」というよう なことが書かれているということ自体、又、それからいま議論が出ている、各論的なこ とは、これまでの検討し審議をしたことになっていないんですよ。ですから、これをま とめたという形でこれを出されますと、そのいちいちの問題について、また皆さん方の 意見が次々と出てくるのです。そうではなくて、この問題について、今度はどう議論を するか、審議を進めていくかということをまとめてやっていただかないと、1つ1つの 問題には、皆さん方いろいろな意見があると思うのです。審議、検討はされていないの です。それを先生がまとめられるという形の中で出てきますから、皆さん意見がそれぞ れに出てくるはずです。ですから、私はこれは「中間とりまとめ」という、審議をし検 討した結果のとりまとめという形でことは、非常に問題があると思います。だから、論 点整理という形で、問題点を取り上げたと。そして、この問題について、1つ1つ今後 も論議をするという話になれば、私は十分皆さん納得いくというふうに思うのです。皆 さん論議した憶えはないはずです。私は一人ひとりの人に聞いていただきたいと思いま す。これは中間まとめとして内容的に議論をやっていくのが、本当にいい方向なのか。 あるいは、これは論点整理で、もう少しきちっと論議をすべき問題なのか、一人ひとり 意見を聞いていただきたい。内容のほうの1つ1つについて話をすれば、時間はまたす ぐ終わってしまいます。ヒアリングと同じです。ヒアリングも時間いっぱいまで聞いて 終わりにしたのが現状だと思います。だから、皆さん方の意見を聞いてください。そう しないとまとめにならないと思います。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。 ○花井委員  私も磯野先生と同じ意見なのです。「中間とりまとめ」という形で出されたことに大 変驚いております。いまから本格的な議論が始まるのかと思っておりました。もしこれ が「中間とりまとめ」だとするならば、最終とりまとめというのはいつ出され、そこに 向かってどのような検討をしていくのかを、もう少しお示しいただきたいと思います。  今回のこの検討会というのは、研修医の処遇をどうするかということも大きな論点だ ったかと思うのですが、ずっと指摘されていた処遇のあり方、アルバイトを禁止すると か、そういうことが最終的には含まれておりませんし、内容も素人の私が見ても講座制 を変えていく。どこをどう変えていくのかというのがなかなか見えない内容になってお ります。具体的なことに入りますと、やはりさまざまなご意見があるのだろうとも思い ます。中間まとめというのは到底納得できないということを述べておきます。 ○相川委員  総論的なお話がきて、やはりいまこれが各論に入るのはちょっと時期尚早でありまし て、もう少し皆さんでディスカッションする時間があるべきかと思います。しかし、こ れは「中間とりまとめ(案)」と書いてありますので、私も磯野先生と同じように、い ままでの論点が非常によく整理されていたと。ヒアリングを行ってきた論点に関しては 、その要点がここに整理されておりますので、これからいわゆる身分とか処遇とか、そ ういうものに関して、今度はコンセンサスが得られるかどうか分かりませんけれども、 委員の中でそれぞれの大事なことを、この案に基づいて討論したらいかがなのでしょう か。その時間はまだあると思っておりますので。 ○山口委員  私も、いま相川先生がおっしゃったとおりだと思います。ヒアリングを含めて、いま までのこの10カ月間いろいろ意見が出てまいりました。団体によって、いろいろな意見 が出てきたのはご承知のとおりです。私は、論点はよく整理してあるな。そういう意味 では、我々が述べました地域医療、老人医療、在宅医療、あるいは介護、そういうとこ ろもきちっと文言として入っておりますし、そういう点は評価をしたいと私は思ってい ます。  ただ、今回のこの臨床研修必修化というのは、伊藤前局長もおっしゃいましたし、篠 崎局長もおっしゃった。いままでの延長線上で考えるというのはいかがなものか。新し い発想で、この際考えてほしいということをおっしゃった。私はまだ記憶に鮮明に残っ ておりますが、このいちばん最後の文言にも、やはりそういう「発想の転換を図るべき 」ということが書いてあります。委員になった先生方全部、そういう発想の転換をして 、これに臨んだと私は思っておりますが、従来の延長線上の中で不備なところを修正し ていけばいいではないかというお考えだったら、私は根本的に少し意見が食い違ってく るのは理の当然だろうなと思っています。  そこで、いままでの10カ月間の内容をおまとめいただいた事務局に、私は敬意を表し たいと思います。いままでの、それ以前の法律ができるまでの10年間、臨床研修のあり 方についてはいろいろ検討されてきましたし、それがなかなか前に進まなかったという 経緯を踏まえますと、ここで我々自身、発想の転換を図ってこれに臨むべきだろう。そ ういう意味でこの委員会は始まったのだろうと私は思っております。そういうことから 考えますと、いままでいろいろな意見が出されて、17団体の意見も全部踏まえながら、 論点としてはよく整理をしていただいたなと思っておりますし、そういう意味では私は 評価をしたいと思っております。  ただ、2番目に、これが委員全部のコンセンサスを得られる「中間とりまとめ」にな るのかとなると、いま委員の皆さん方から意見がいくつか出されたとおりだろうと思っ ております。いま、ここで論点整理がされて、柱ができたのではないか。この柱に沿っ て、我々ここで今後議論を詰めていくべきではないか。そういう意味では、私は相川先 生がおっしゃった意見と全く同じなのですが、いままでのいろいろなヒアリングも含め ながら、委員の方々はヒアリングの場というのが頭に入っていらっしゃると思います。 そういうのも含めながら議論をしていったらどうか。  この柱立ては、私はそれ相応に評価したいと思いますが、これを「中間とりまとめ」 にするとなれば、仕組みの問題とか、やはり意見を申し上げたいと思うところが多々あ ります。診療所をどう評価し、どのように活用していくのかということも含めて、今後 議論を詰めていく必要があるのかなと、このように考えておりますので、座長のほうで 今後の議論の進め方をご検討いただければありがたいと思います。 ○福井委員  私も、これは論点整理的なものを考えざるを得ないと感じております。これを基盤に して、さらに、この検討部会で検討をするというふうにしていただきたいと思います。 特にとりまとめの理由として、研修施設において準備を進める必要があるということも 挙げられておりますけれども、例えば多くの研修施設では、必須の研修プログラムがど うなるのか、定員がどれぐらいになるのかということを早急に知りたいという希望を強 く持っておりますので、プライオリティーを決めて、この論点について検討部会で検討 を進めていく、というふうにしていただきたいと思います。 ○内村委員  いつも私は精神医療のほうから発言して、心の問題で発言しますが、このとりまとめ というのは、私も基本的にはむしろ論点整理というふうに捉えたほうがいいのではない かというふうに思います。これからいろいろな議論をしていただくには、そういう意味 ではよくまとめていただいていると思います。心の医療の問題から見ますと、そういう 言葉がここに一言も出てきていないということです。そういう意味で、私は非常に残念 だと思っております。特に7頁の所ですが、「研修内容について」ということで、(2 )「研修内容に関すること」、(1)と(2)がありまして、これは内科、外科、小児科、救 急ですから、生きるか死ぬかのところをコアに考えるということであれば、それでも構 わない。ここも議論はあると思います。  その次の(3)の所に、「精神医療」という言葉は、一言入れていただきたいと思うわ けです。それと結核とかエイズの感染症の問題です。我々は精神医療のほうですが、老 年痴呆の人たちの結核が増えてきているのです。国の政策医療で、いま結核の医療をや っている所は県に1つか2つしかありません。精神と合併している所は、そうはありま せん。私の所も6床作るということになったのですが、ほとんど空で来ないだろうと思 ったら、すぐたくさん来られました。それはほとんど痴呆を伴っている人たちです。そ ういう意味では、結核というのは一般内科医がほとんど診ていないと思うので、その辺 がちゃんと診れる体制は作っていただく必要があるのではないかと思います。  エイズとかそういう偏見の問題、これはやはり見ていないと偏見というのは大きくな りますから、その辺のところが必要ではないか。そういう言葉、感染症も入れておいて ほしいと思います。それは5頁のいちばん下の所に、参議院の国民福祉委員会で、この 法律が改正されたときに付帯決議がなされています。これは一般社会から見ると、非常 に良いことを書いてあるのではないかと思います。それは人権教育の医療倫理の問題、 偏見の問題です。精神障害と、感染症はたぶんこのときはエイズを考えておられたので はないかです。  我々精神医療の立場から見ると、一般医の方は偏見が強いなと思うことが、たびたび あります。ちゃんと見ておけばそういうことはないので、そういうところに対して政府 は適切な措置を講ずるということが付帯決議でなされています。これらに対する対策は ちゃんとることが、いちばん予算も取りやすいのではないかと思います。それから、僻 地のこととかです。それはやはりこの大枠の中にも、ちゃんと言葉として入れておいて ほしいというふうに、私は希望するわけです。  もう1つは、「フォローアップ評価」とか、「見直していく」という言葉が出ていま す。これは非常に抽象的で、「何年ごとに見直す」とか、そういう言葉は基本の中に入 れておいてほしいと思います。例えば「5年ごとに再評価する」とかです。そうしてお かないと、これはダラダラッとなってしまって、何か大きな問題になったときに評価と いうようなことが起こるので、法律もそうですが、こういう改正というのは期限を切っ ておくということが、いろいろな見直しにつながっていくのではないか。はっきり認識 しておくという意味で必要ではないかと思います。  それは8頁の(10)の「今後見直していく」とか、(3)の「研修の指定」の(8)の所 で「指定後のフォローアップ評価を行う」というだけで、何年ごとに行うかというのは 最初からある程度入れて議論したほうがいいのではないか。私はそういう認識を持つと いうことをお願いできたらというふうに、これを読んで思いました。 ○宮城委員  私が具体的な疑問を呈したのは、いままでの臨床研修必修化の委員会の経緯を見てお りますと、こういう中間まとめができたら、その審議会は大体解散しているのです。で すから、私はこの中間まとめの段階で、おそらくこの審議会は続かないのではないかと 。そういう危惧を持っているものですから、最も関心の深いところから質問させていた だきました。小委員会も中間まとめを出したら解散していますし、四病協も中間まとめ で終わっています。ですから、私はこの審議会も中間まとめが出た段階で解散するので はないか、という危惧を持っているものですから、いただいたこの中で最も関心が深く 、しかも社会も大きく関心を示しているだろうという2点について、イメージをお聞き したわけです。今後も、皆さんがお求めのような1項目、1項目について、この審議会 で審議する時間とゆとりがあるのかどうか。そういう方向性がないと、この中間まとめ についての議論というのは進まないのではないかと。そういう危惧を持っているわけで す。 ○杉本委員  杉本でございます。皆さんと同じ意見なのですが、先ほどお1人お1人に意見を伺っ てはどうかというご発言がありましたので、私もちょっと言わさせていただきます。こ れは検討部会の「中間とりまとめ(案)」となっているわけです。そして、またそれが ヒアリングと検討の結果であるというふうに書いてあるわけですが、検討はされていな いわけです。したがって、これはヒアリングの中間とりまとめとして、まとめられるべ きではなかろうか。今後の検討のために、こういう格好で論点整理をしたということで 、これを受け取りたいと思います。  ヒアリングも、実はまだ十分であるとは思わないわけです。といいますのは、臨床研 修病院の研修施設の指定に関することなどを見ても、これまで研修病院の指定に関して 、いつも議論されていた救急医療の研修体制の整備の問題が全然出てきていないわけで す。先ほど精神疾患の問題、感染症の問題のご指摘がありましたが、こういうことも合 わせて、これはまだヒアリングとして十分でないと言っていいのか、あるいはヒアリン グに基づいての検討がこれから始まって、その中でそういった問題が指摘されることに なるのか。どちらになるのかわかりませんが、そういう意味でもこれはまだ不十分なま とめだろうというふうに思います。一応これはヒアリングの中間まとめとして、このあ と急いで1回でも2回でも検討を重ねて、そしてヒアリングと検討の中間とりまとめと いう形にしてはいかがかと思います。  先ほど大学病院が出てこないというご指摘がありましたが、私もこれを拝見してそう 思いました。研修病院と大学病院を合わせて研修施設として、非常に上手な表現になっ ているわけですが、私は今いちばん変わらなければならないもの、そしてこの10年の間 に大きく変わってきたものは、大学病院での研修であったというふうに思っております 。ここでいう研修施設の指定に関することは、これは大学病院にも適用されるものであ るということを、どこかで明言されるべきではないか。大学病院は聖域ではないという ことを、やはりはっきりおっしゃられる必要があるのではないか。そういうこともこれ からの検討の課題の1つではないかと思っております。 ○高橋委員  いくつも申し上げたいことがあるのですが、まずいま皆さんがご心配になっている、 これで終わりなのかという点については、やはりちょっと早めに、いまの段階で事務局 の考えを示していただきたいと思います。やはり中間まとめで今日で解散ということで は皆さん納得なさらないと思うし、私個人も納得できませんので、多少でも今後のスケ ジュールを示していただきたい。福井先生がおっしゃったように、早く決めなければな らないものがあるのは十分わかります。それから、個々の細かい条件等について、この 委員会ではなかなか決まらないだろうということも十分に理解できますので、細かい検 討をなさる場が別にあっても構わないと思いますが、そこが最終決定だということでは 、ちょっと納得できませんので、どういうものか知りませんけれども、そういう委員会 等が細かい点まで詰めた案をお作りになって、それを改めて公の場で議論するというよ うな形にしていただけたらと思います。そのように強く希望いたします。  文面等についてはいろいろ意見もありますが、とりあえずいま内村委員がおっしゃっ た「精神医療」という言葉を7頁の(3)に入れてほしいというご提案に対しては賛成い たします。私も是非入れたほうがいいと思います。  「マッチング」という言葉は、黒川委員がおっしゃったように、片仮名にして逃げて いるというのは、全くそのとおりだと思います。わかりにくいし、一般の人がこれを読 んだときに、「マッチングを行う」という表現では、何を言っているのかわからないと 思います。それで、私は日本語で代替案を考えました。「マッチングを行う」の代わり に「組合わせ決定制度を作る」という表現にすれば、素人が読んでもわかるのではない かと思います。それは「組合わせ決定制度(マッチング)」でもかまいませんが、とに かく医療関係者以外が、つまり患者が読んでも、イメージできるような表現にしていた だきたいと思います。  表現については、私はいろいろ感じるところがあるのでついでに申し上げますが、「 管理する」という言葉はあまり望ましくないように思います。「研修医を管理する」な ど出てきますが、そういう所はできれば「状態を把握する」とか、もう少しソフトな表 現にしていただきたいと思います。それから「人材を活用する」という所も、「指導医 として活用する」とかいくつか出てきますが、そういう所も「活用する」というのは物 を扱っているように感じますので、「協力してもらう」とか、「参加してもらう」とか 、そういう表現にしたほうがよろしいと思います。  もう1つ本質的なことで、内容のことなのですが、研修委員会のことが11頁の(5) に出ていますが、研修委員会が、その研修内容の企画・運営と、私の嫌いな言葉ですが 、研修医の管理・監督をするという委員会としてここに出ていますが、皆さん、おっし ゃるとおり、研修委員会をどういうものにするかという議論は、ここではほとんどなさ れていなかったものですから、これはもう少しきちんとここで議論したほうがいいと思 います。私の意見としては、1つの委員会が企画・運営と、管理・監督をするのは望ま しくないと思います。プログラムを作る委員会があり、それとは独立した委員会が研修 医の状態を把握して、それこそ過労死に至るような状況になっていないかどうかをチェ ックする、監視する立場の独立した委員会であるべきだと思っております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。大変貴重なご意見をいただきました。おそらくいま 高橋委員が言われた論点まとめで、先ほど宮城委員が言われた中間まとめで、このまま 議論が終わってしまうのではないかというご懸念がいちばん強いのではないかと思いま す。それについて、この委員会でいろいろな立場の方がご意見がおありかと思いますが 、実際に具体的にどうしたらいいか、ということを議論いただくワーキンググループ的 な組織を事務局で作っていただいて、具体的な案を詰めていく可能性はどうでしょうか 。 ○医事課長  今回の「とりまとめ(案)」を踏まえて、事務局としてはこれから新しい医師の臨床 研修制度をどう作っていくかということについての具体的な案を、事務局においていま 矢崎部会長からもありましたような形で、専門家の先生方のご意見もお聞きしながら、 早急にその中身の検討を進めてまいりたいと思っています。いずれにしても、そういっ た作業を進めていくに当たり、この委員の皆様にも、ご意見を伺うことになるものと考 えております。 ○磯野委員  いまワーキンググループのご提案がありましたが、私はそれでもよろしいと思ってお ります。このワーキンググループを作ってご検討された場合、その内容的なものは、や はりこの検討部会の中に出していただいて、そして皆さん方がその問題についてまたご 議論をするという形の透明性で持っていただきたい。一部のグループの枠の中ですべて のものが進行して、この検討部会のものはこの中間まとめで終わりという形になってし まうと、これはあまりにも不透明性があって、大変遺憾だと思いますので、ワーキング グループを作るとすれば、作った形の中でそのものをこちらの席に出していただいてご 議論いただく、という形を取っていただきたいと思います。 ○徳永委員  私はやはりこのパネルでの審議が徹底的に足りないと思います。ですから、もしワー キンググループをするのであれば、3のヒアリングの結果を言うならばある程度我々が 聞いたということで、そこからスタートしてほしい。4からスタートされますと、ある 程度色がついたものを渡して、この委員のメンバーが大部分入るワーキンググループで あってほしいと私は思いますが、この議論に直接参加しなかった別の方々が、またその 活字を基に、あるいは資料を基に議論をするということは同じ議論の繰り返しだと思い ます。これは平成4、5年からずっと続いてる作業であって、厚生労働省の医事課とし ては、当然これについてはよくご存じというか、よくお考えになっているわけですが、 新しく作る委員会がそういう形で、またこの場から離れた議論をスタートさせるのは無 駄だと思います。  それから、実際に研修医を100人とか200人とか預かっている立場から申しますと、中 はいま大変なのです。早く新しい体制をどうフォローするかと。それで少し言葉は悪い のですが、小規模の病院と比べて、大学というのは大きな組織です。一種の社会を構成 していますから、その中で制度の精神に則って、うまく運営する形でスタートさせよう とすれば、例えば大学の中にはいろいろな委員会があって、いろいろな調整をしながら 準備に入っているわけです。したがって、そういうことを考えてくださると、やはり私 は今年の秋ぐらいまでにはもう少し納得できる具体的なことが出されて、そこから先、 地下に潜っていろいろやってもらってもそれは結構ですが、やはり見える形で、最低1 年半ぐらい前に出してほしい。ですから、これから3カ月なら3カ月、集中的にやはり もう少しこれまでの議論を成熟させる必要があると思うのです。そういう意味でのワー キンググループ、あるいは今後のスケジュールをお願いしたいと思います。 ○矢崎部会長  いままでのこの部会でのお話を伺っていると、なかなか具体的な制度設計まで集約で きませんが、この部会も毎月1回ずつ開いて今日まできました。おそらく今後は月に何 回も集まって、いただいたご意見に沿って具体的な制度設計など、本当に大変な仕事だ と思います。これはおっしゃられるように間に合わないと、アナウンスメントあるいは 研修病院の体制を整えるうえでも、やはりある程度のタイムスケジュールを立てて、そ れに沿って検討していかないと。一方では委員の皆様方に、拙速で、この50年あるいは1 00年の体系が非常にタイムスケジュールに促されて不十分な検討の下で行われるのでは ないかという、アンビバレントな2つのご不安があると思います。財政的な問題に関し ても、これから本当に詰めていかなければならないという非常に難しい時期です。事務 局も十分それを心得ていると思いますが、事務局で何か目安みたいなものをお話いただ ければありがたいのですが。 ○医事課長  ただいまのご議論の中にもありましたように、私どもとしても、このスケジュールに 関しては、やはり秋までには具体的な線を相当程度お示ししないと、現場で大変お困り になるという認識を持っております。したがって、それに間に合うようなスケジュール で、ただいまご指摘のありましたような点については、そういった場で検討を詰めてま いりたいと同じように思っております。 ○櫻井委員  いままでのご意見を聞いていて、今回のこの案が、論点整理で非常によくできている 。これは皆さん、同意されていると思います。私もそのとおりなのですが、福井先生が 先ほどおっしゃったように、この中でどうしてもこれだけは具体的なものを作らなくて はならないということを優先させて、進行させていただきたいと思います。これだけの 内容のことを、個々についていろいろなご意見を伺うとか、ワーキンググループを作る というのは実際不可能でしょう。ですから、何を最優先させるべきか、重要か、その数 をかなり絞って進めていただきたい。 ○矢崎部会長  おそらく同時並行的にいくつか検討していかないと、間に合わないかもしれませんね 。 ○相川委員  いまの櫻井先生のご発言に賛成です。そうすると少し具体的になって恐縮なのですが 、もちろん例えば転院のこととか、身分のこととか、経済的保証のこととか、いろいろ なことがあるかとも思いますが、まずもってこの基本的な考え方をここである程度了承 していかないと、その後各論が何もいかないと思うのです。  私の提案ですが、実は先般出された全国医学部長・病院長グループからの提言があり ます。これは第10回の資料の31頁からですが、そこには国立大学の病院も比較的一致し ているのですが、5項目あります。この5項目のうち、1項目だけは私はこのままでは いけないと思っているのですが、この提言の33頁に「卒後臨床研修制度の基本的原則」 という提言があります。これはすでに前回紹介されたと思いますが、この基本的原則に 私は非常に賛成です。  ただ、これは当然医学部長・病院長会議から出されたのでこのような表現になってお りますが、(5)を「大学附属病院」あるいは「中核病院」というように修正する。大学 附属病院でない病院を含めて、このように地域の医療機関が密接にというようなことに 入れていただく。つまり大学病院と並列にプログラムを作れる中核になる病院というこ とを入れていただければ、この1から5項目に関する基本的考え方に関しては、非常に いいのではないかと私は思っております。  まず、こういう基本的考え方が特に大事なのは、研修医個人に着目した研修制度であ ること、というところは非常に大事なところで、一時、大学が日本の医療を悪くしたと いうヒアリングでの発言もあって、私はそれには大変失望したのですが、そのような批 判があるところは、やはり研修制度が研修医個人に着目していなかった面があったから なのです。この辺のところは原則としてよろしいと思いますので、まずこういう原則を 確認していただいて、さらに緊急に決めていかなければいけないいくつかの問題につい て、委員の中で討論し、かつ必要なものは小委員会に預けて、具体的なことを決めてい くということでいかがかと提案いたします。 ○井部委員  ただいまの相川委員の発言された5つの基本原則についてです。私はいつもこの会を 通じて思っていることですが、研修医個人の優れた医師になるための研修制度は基本的 に賛成なのですが、その期間に例えばスーパーローテートなどをされると、医療の質そ のものが非常に脅かされる危険性があるのです。いままでは、ストレート方式などがか なりあったということを私は認識したのですが、ローテーションということになると、 研修医を受け入れる側の施設の体制が極めて重要となります。例えばリスクマネージメ ントはどうなっているのかとか、あるいは教育プログラムはどうなるのかなど、臨床で の受け入れ体制が非常に重要になってきます。さらに、この期間の医療の質をどう保証 するのかという点は、極めて重要ではないか。研修医とともにやっていく医療機関はど ういう体制を整えて、研修医を迎えなければならないのかといったことに関して、あま り言及されないのが少し心配な点です。私は研修医とともにやっていく医療機関医療の 質というものについて、考えていかなければならないということをこの基本原則に入れ ていただきたいと思います。 ○相川委員  私もそれには決して反対ではありません。そうすると、例えば6とか、あるいは順番 は別としても「研修とともに医療の質を保証する制度であること」ということを加える ことに関しては異論ありません。いずれにしろ、その基本的な原則をまず決めていただ かないと、そのあとの議論が動かないと思います。 ○堀江委員  先ほどから大学病院関係の委員の方からでいろいろな意見が出ていますが、大学附属 病院における研修のあり方について、全国医学部長・病院長会議、これは国公私立大学 合同の組織ということになりますが、従来の臨床研修のあり方に対するかなり厳しい反 省に立ち、そして新しい国の制度化に、我々としては賛成する姿勢で取り組みたいとい うことでいろいろ審議したわけです。その結果まとめられた内容は、必ずしも今回のと りまとめの中に盛り込まれていない点があります。具体的には、前回のヒアリングで代 表者がいろいろと申し上げさせていただきましたが、まさに相川先生が指摘してくださ った基本的原則に基づいてということは、是非今回のとりまとめの中に盛り込んでいた だく方向でお考えいただきたいと思います。  それから、臨床研修必修化は確かに平成16年でありますが、私たちは、この制度化に 向ってローテーションで研修するとか、あるいはプライマリーケアーをとり入れた研修 のあり方は非常に良い方向への変化という認識をしています。できれば、例えば研修指 定病院のあり方だとか、指導医のあり方だとか、いったことについて早めに明確なもの を出していただきたい、そうであれば、新しい研修カリキュラムや指導体制など可能な ことは、平成15年度から取り組もうという考え方もあるわけです。先ほど秋までにとい う発言もありましたが、できるだけ早くすべての点でないにしても、明確にされる点が あれば積極的に改革に向けて早めに取り組むことが可能なのではないかということがあ ります。是非早急にご検討いただいて、そして磯野先生がおっしゃったように、この部 会で結果について意見交換をする機会を是非持っていただきたいと思います。 ○星委員  今回のとりまとめを見せていただいて感じたことを2つだけお話させていただきます 。1つは、この議論はもしかしたら必修化を決める前にしておくべきものだったのだな ということが、正直なところ皆さんの心の中にもよぎるのではなかろうかと思うことで す。特に私がそれを強く感じるのは、医師法16条の2の中では「学部を併設する病院」 あるいは「厚生省の指定する病院」という表現が取られています。しかし、今回行われ た議論を見ると、「病院」という概念ではなくて、施設の医療のシステムそのものを学 びの場所にしましょうということが出されてきたのだと思うのです。これは前々から日 本医師会も主張していることですが、そういったことに対応するには、この16条の2の 法律の文言はいかにも堅い。というか、その前にあった義務化の文言をそのまま引っ張 ったということなんでしょうね。これは法律改正ができるのかどうかわかりませんが、 そういう違和感を感じる。これは皆さん、共通のことではなかろうかというのが1点で す。  それから、大学の話はいろいろ出ていましたので割愛させていただきますが、お金の 問題について、やはり「診療報酬を含めた」と書いてある。その前にきちんと厚生省は お金を手当てするよということは一応書いてありますが、この診療報酬を安易に原資に 求めるという方向で考えていくことは、前々から主張しているとおり齟齬を来たしてし まう、あるいは本来あるべき臨床研修の姿を歪めてしまうものになりはしないかという ことを心配しますので、この辺は慎重にしなければいけない。もちろん研修医自身も診 療するわけですし、この間から説明しているように、医師免許を取り、そして診療にあ たるわけですから、それに伴う対価が診療報酬の中から支払われる仕組みそのものを否 定するわけではありませんが、研修という名の下に診療報酬あるいは医療費の財源を簡 単にいじることのないように、これは強く主張しておきたいと思います。  いずれにしてもお話させていただきたいのは、その上で、いま私が申し上げたように 、これはこの法律が変わる前にしておくべきだっただろうと思う議論をいまやっている ぐらいの話ですから、皆さんがご心配なところはこれから毎週集まって議論を深めてい く、必要なときに皆さんの意見を聞く、あるいはパブリックにコメントを求めるという ことをどんどん進めていかないと、いつの間にか平成16年4月が来てしまいました、と いうことになりはしないかということを思いますし、平成16年4月までに決め得ないこ とがもしあったとしても、平成16年4月で研修医制度が終わってしまうわけではありま せんから、引き続き検討できる問題については引き続きやっていくのだという整理をお 願いしたい。そして、先ほど来お話があるように、どうしても決めないと平成16年4月 が迎えられないというものをきちんと整理して、順番にきちんと議論していくことをプ ランしていただきたいということを部会長にお願いしておきたいと思います。 ○高梨委員  2点申し上げたいのであります。11頁に研修医のマッチングの問題について書いてあ るわけですが、様々な背景を持ったものが混じり合うことが大切だということで、「全 国から研修医を採用することが望まれる」となっています。先ほど冒頭に、黒川先生な どからいろいろアメリカの状況などを教えていただいて、なるほどと思うのですが、こ の表現だけであれば、大学の附属病院が、その学部を卒業した人をこの研修の課程に入 れること自体は、量的な問題は別として、認められることになると思うのです。しかし 、私自身は少し極端な意見なのかもしれないのですが、他人の家の飯を食ってくること がよく一般社会で行われているわけですが、原則的にはそこの大学の卒業生は、附属病 院での研修は受けないということを基本にしたほうが、私はいいのではないかと思って います。やはりいろいろな所の勉強をするということ、また2年後には自分の大学に戻 ることは当然ご本人の意思としてできるわけですので、ここのところで、こういった混 じり合うということの方向性を出していることはもちろんそれはそれで結構なのですが 、これだけでは不十分なのではないかと思います。  それからもう1点は、先ほどの星委員のご発言とも関係するのですが、12頁の最後の 所で「施設整備や研修経費の助成の拡充を図るとともに、診療報酬における対応を含め て幅広く検討し」ということで、処遇及び医師臨床研修の実施体制整備に要する財源の 問題について、「診療報酬における対応を含めて」と書いてあるのですが、先般の医師 法改正による臨床研修の義務化は、医師の臨床についての質的向上を図る教育の義務化 を行うものですので、その実施体制の整備や研修医の処遇に要する費用は、それにふさ わしい財源によって負担されるべきものであると考えます。したがって、臨床研修の研 修生の処遇に要する費用の一部を、診療報酬から直接に支弁したり、負担をすることは 筋違いであるし、またすべきではないと私は考えております。 ○黒川委員  いま高梨委員のおっしゃったとおりで、実は先週の『日経ビジネス』にも書いたので すが、最近文科省その他もかなりそれが基本かなと思い出しているのは、やはりスタン フォードやMITなどは、コンピューターサイエンスで素晴らしいと皆さん思っていま すね。あそこでドクターを取った人は、絶対あそこに残れないのです。残ってはいけな いのです。それをするのが大学の見識なのです。つまりよそへ出すことによって、同じ レベルの外部の仲間うちの大学や研究者にうちの博士はこういう人なのだよ、うちの大 学はこういうものだよということをずっとやっているから、大学が社会から信用される ようになっているわけで、いままでの日本とは全く逆の価値観です。  つまり大学社会に何をするのかということで、いままではサプライ・サイドの理屈で いっていたのを、ディマンド・サイドにどうやって対応するかということが私たちにま 要求されている社会的責任ですから、そういうわけで、私は高梨委員みたいに極端では なくて、いてはいけないよ、というぐらいでいいと思うのです。  実は、日本学術振興会のポスドクも全部博士を取った所から外へ出せと今度言ったの ですが、何となくグチュグチュまた「望ましい」になってしまって、学術振興会の理事 長でさえもけしからんと思っているようですが、どうも学問をやっている人たちにそう いう雰囲気があるのです。教授たちは自分の手足で置いておきたいだけで、例えばMI T、スタンフォードは全員出してしまいます。それが実を言うと当たり前なのです。そ れが社会によりいい人たちを供給するという大学側の、教育機関の社会的責任だと思っ ているからやっているわけです。  もし書き込めればそれでもいいと思うのですが、その財源をどうするか。それで星委 員がおっしゃったように、あのときどうして知らなかったのという話があるのですが、 しかしあの数年前、ここ10年間続いていた議論の間に、何が変わったかというと社会情 勢が変わって、経済状況が変わって、医療制度が変わって、去年の12月に1.3%総医療 費をカットするということになりました。途端に大学が「オールマルメ」だなどという 話で、行政としてはその中で何かしなくてはならないなという話はわかるのですが、私 は何回も書いていますが、だから高梨先生がおっしゃったように、こちらはこういうプ ログラム作るから一般の財源、別の財源から出してくださいということで政治的にも行 政は動くべきだし、それを応援する理論的なプログラムを、わかりやすいプログラムを 出すのがこの委員会の役割だと私は思っています。このたたき台をいかに踏まえながら 、先ほど相川先生がおっしゃったような基本的な理念を遂行して、パブリックにアピー ルできて、だから財源を使おうと。  この間も、私はここの議事録で言っていると思うのですが、アメリカはそういうプロ グラムを作っているからこそ研修医1人1年10万ドルを国から出しているわけです。パ ブリックがそれをサポートしているからです。つまり必ずよそへ出しているのだよ、レ ジデントはこれだけのことをするのだよということを社会に保証しているからです。ア メリカの医療費トータルはGDPの14%ですが、4%がアメリカの場合は国から出て います。医療が何とかと言いますが、日本は2%です。アメリカは4%出して、1人10 万ドル研修医に出しています。研修医の給料はそのうち約4万ドルです。残りの6万ド ルはその研修施設に出しているわけです。それがドクターのサラリーになり、いろいろ なことになっているのですが、それだけパブリックが払っているのは、それだけのもの を出してくれているからだなという信頼があるからで、今度のことも、これがそうなる 第一歩だと私は思っています。是非35年ぶりという第一歩を、そういうメッセージが国 民に届くように、そうすぐになるとも思いませんが、なるような精神と方向をはっきり 打ち出してもらいたい。最初はいまの調子からいうと500億円も出てこないのはわかっ ていますが、だけど医療の財源から何とかしようなどというみみっちいことを考えてい ては駄目です。やはりこの審議会はもっとビジョンを持って、こころざしの高いメッセ ージを出して、それを行政も一緒になって、どうやって国民に納得してもらうか。5年 、10年したら間違いなく必ずよりいい医者が出てきます。それをしなかったら相変わら ず同じだなと思います。 ○相川委員  そうすると、私が見ている限り、先ほどの11頁の(4)イに関する表現が「望まれる 」というのは適切でないとしても、「マッチング」と「ミキシング」という言葉がいい かどうかわかりませんが、皆さんのご意見の中では、やはりそういう方向がまずひとつ コンセンサスのような気もします。  例えば先ほどの医学部長・病院長会議の資料の34頁にも、何も私がこれを全部支持し ているわけではないのですが、その制度設計みたいなことがすでに書いてあるわけです 。上から2つ目の所ですが、ここには「1対1」という具体的な数字まで出てきている わけですが、こういうものは小委員会なり何なりで検討していただきますが、方向性と してはこういう確認をする。こういうことが確認されることによって、またさらに具体 的ないろいろなものが進んでいくのではないかと思いますが、少なくともマッチングと ミキシングを確認する方法論は、どのぐらいミックスするとか、あるいは絶対に自分の 卒業した学校に行ってはいけないというのは、私はこれは少し極端すぎて、自由という ものもあるような気もしますが、いずれにせよ、方向性としてはマッチング、ミキシン グはこの1つのコンセンサスのような気もするのですが、いかがでしょうか。 ○福井委員  私も是非その方向でお願いしたいと思います。一旦マッチングを行うことさえ決まれ ば、大学病院だけではなく、どの研修施設においても同じ大学を卒業した研修医の割合 を30%以下とするとか、将来的に調整することは容易と思います。  それから言葉ですが、私たちも、かなりディスカッションしました。高橋委員が先ほ どおっしゃいましたが、「組合わせ決定」という言葉についても検討した覚えがあるの ですが、重要なのは、「全国公募」という言葉を入れる必要があると思います。そうい う細かいことは、サブグループで検討していただければと思います。 ○徳永委員  先ほどの黒川先生や高梨先生のお話にも関係し、かつ研修医の処遇に関係するところ で、費用の問題はやはりアメリカをモデルにしていただいて、それに近づいてほしいと 思いますが、そのご説明の中にありましたように、10万ドルの中の6万ドルは施設に配 分されているということは、やはり非常に大事なことだと思うのです。我々のディスカ ッションでは、個人にいくらあげるかというレベルの話が多かったのですが、どのよう な施設群を作ろうと、どのようなプログラムを作ろうと、そこで研修をする人、それか らそれにかかわる施設は非常に大事なわけです。特に今回の基本的な方向の中では、指 導医や指導体制のこと、あるいはその養成に関すること、それから先ほどお話がありま した医療の安全性という問題をどこで担保するかという話がやはり非常に大事なのです 。それをしようと思うと、お金はそちらにかなりつぎ込んでいただかないと困る。した がって、12頁の最後のイにある助成の問題と処遇の問題は一部混ざっていますが、全然 別なものも含まれていると私は思います。「助成」というと、それは基本的なもの以外 に出すものと思いますので、基本的なものをきっちりと押さえる表現を是非お願いした いと思います。  それから医療改革が進んでいますから、先ほどのお話のように研修医の養成制度、研 修制度という教育訓練にかかわる部分が、時々の行政やあるいは医療制度の変化の中で 、常に揺れ動くような環境はやはり避けるべきだと思います。そういう意味で、処遇に 絡んだ投資の問題として、基本的なものと時事的な部分というか、動く部分を分けてい ただきたいと思います。 ○宮城委員  身分の保障、生活の保障の面ですが、やはり研修医がそういう国家の保障を受けて社 会にどれだけのことを還元するかという部分は、黒川先生もこの委員会でしょっちゅう おっしゃることですが、その還元の仕方がとても大事だと思うのです。還元しない臨床 研修の国家の義務というのは、やはり国民のコンセンサスが得られないのだろうと思う のです。  沖縄の場合は、65名の研修医を育てるプロジェクトに対して、沖縄県が3億4,000万 円を毎年予算措置しているのです。それは研修を終えた後、離島医療を支援するという 大義名文があるわけです。2年の研修を終えた者は、1年の離島診療所の勤務の義務、 4年の臨床研修を受けた者は、離島の中核病院におけるスタッフとしての勤務の義務、 この2つの義務のために、65名の研修医に対して2億円生活保障しているわけです。そ のほかに1億4,000万円のハワイ大学との委託契約費を出してくれるわけです。これは 県民が離島医療を支援してもらうための研修制度だということで、支持してくれている わけです。ですから、沖縄のような貧乏な県が、離島医療を支援するという大義名分の 下に、毎年3億4,000万円の資金を投じて、35年間、合計100億円の投資をしているわけ です。その間に育ったのがわずかに623名です。したがって、1人1,400万円ぐらいかか っています。しかし、その人たちが義務として離島の勤務をし、離島医療を支えてきた という実績があるから、沖縄県の場合は県民も県庁も、みんなこの臨床研修支援に何ら 反対することなく35年続いているわけです。  今回、この臨床研修を必修化するうえで、研修をすることによって国民がどういうメ リットを受け、国民がどのようないい医療を受けるのかという方向性がしっかりしない と、私はやはり国民の合意も得られないし、教える側の負担も賛成が得られないし、そ ういうことがやはり問題になってくると思うのです。従って、この研修必修化は臨床医 療上の大きなメリットが国民にあるのだという方向性がしっかり出てこないと、私はこ の必修化は国民のコンセンサス、国民の賛同は得られないのではないかと思います。 ○福井委員  手短に2つほど。1つはいま宮城先生がおっしゃったこと、そして黒川先生もおっし ゃったことですが、私たちがこの検討部会の報告書を作るときにどういう能力のある医 師を養成して、医療全体としてどういうメリットがあるかということを、具体的にイメ ージが湧くような書き方ができればいいなというのが1つです。  2つ目が、井部委員が何回もおっしゃっているのですが、研修病院では医療の質が落 ちるのではないかとか、リスクが非常に高くなるということをおっしゃっていますが、 少なくとも米国のいろいろな報告では、きっちりとしたスーパーバイズを指導医がすれ ば、決して医療の質は落ちない。かえって研修医がずっと患者さんのそばにいることで 、患者さんの満足度は上がるし、重要な「アウトカム」つまり患者さんの健康上の重要 なアウトカムも決して落ちないし、かえって良くなるという報告があります。この問題 は研修のやり方、指導医がどうするかということに深くかかわっていると思うのです。 ○黒川委員  前の5回目のときにも言っていますし、ちょいちょい書いていますが、やはりどうい う人たちがこのプログラムで社会へ出てくるよと、いまここだと、基本的な臨床能力は 付けていますよと、それから高梨先生もおっしゃってくれたので、そういうことをする ぐらいならかなり革命的だと思うのですが、2年間は卒業した大学にはいないのだよと いうぐらいの思い切ったことを言えば、「おっ、随分おじさんたち変わる気かな」とい う話が国民にもわかる。しかも先ほど言ったように財源もちょうだいよといっても、そ れは我々がどのようなことを言っても、厚労省でそんなことを言っても、財務省はうん と言うはずがない。それは局長の頭が痛くなるだけの話で、むしろそういうプログラム が出れば、政治家も国民も納得すれば、これは使ってもしょうがないなと思うわけです 。  ですから私が言っているのには、2年目には無医村に4カ月行きなさいと言ったら、 先ほどの離島と同じで、1つの「無医村」という厚生省が言っているカテゴリーには、 常時2年目の研修医が2人か3人いる勘定になるのです。そういうことをしましょうね と言えば、これは政治的にも国民の支持もかなり得られるし、そこに来ておられるマス コミ関係の人は素晴らしいではないかと、繰り返し、繰り返し書いてくださることが大 事て、その財源でしたら全く別枠で出るのではないか。ですから、これはあくまでも未 来の日本社会に貢献できるお医者さんをつくろうと思っているわけですから、その10年 、20年先を見た計画からいえば、その財源は安いものではないのと国民が納得すれば私 たちはあくまでも厚労省の応援団なのだからという話を私はここでもしていますが、そ のためにはどういうプログラムを出せばいちばん国民にも、政治家にも納得しやすいか ということではないかと思います。 ○井部委員  福井委員がおっしゃったことに関してです。研修医がいることによって医療の質が下 がるとは私は申し上げませんが、多少の混乱が生じるのは確かです。スーパーローテー トで短期間にいろいろな方が回って来るということは実際に起こることです。それをど うやって吸収し、それまでの医療の質を担保するかということは、医療施設においては 非常に重要なことだと思っています。  基本的にアメリカと違うのは、絶対的な医療におけるマンパワーの違いがあるのでは ないかと思います。豊かな人員の中で、きちんとした指導体制の下に行われる研修医の 制度と、日本のように看護職の数もあるいは医師の数も、標欠病院が非常に多い中で、 その中で研修医を引き受けて、さらに充実したものにすることについては制度設計が極 めて重要であると思います。 ○相川委員  先ほどの黒川先生の意見を受けてです。これもかなりコンセンサスが出てきたような 感じもするのですが、今回いい制度を作れば、おそらく最終的なメリットを受けるのは 医療を受ける日本の人たちではないかと思うのです。いまでの反省も含めていいものを 作る。これは少し中に入りますが、「プライマリー・ケア」ということも非常に大事な ことですし、またこの中には「プライマリー・ケア」が不適切に使われているという細 かい所もあるものの、それとともにまたいい専門医もつくり、それから全人的な医師も つくるということによって、日本の医療のレベルが上がり、国民がそれを享受できれば 、そこからお金を出してもらえるのではないかと思います。  外国の例を見ても、医師のレベルが低い所、あるいは医師に対するトレーニングがう まくいかない、あるいは処遇が悪いために自分の国で教育を受けた医師が、外国に流れ て行ってしまう先進国がかなりあります。そういう所には、別の国から不満足なトレー ニングを受けた医師が入って来るという実際もあります。日本がそのようになってしま ったら大変なことです。ですから、我々の国で教育を受けた医師が、さらに充実したト レーニングを受けて、それによって全人的医療、僻地医療、プライマリー医療、あるい は高度な専門医療を受ける環境が数年後には出てきますから、そういうものに国が投資 することは決して悪いことではないし、むしろそれで数百億円というのは悪くない。是 非それを理解してやっていただければよろしいのではないかと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。この必修化の制度そのものが、国民が求める医師を 育成するためのシステムなので、それに応えるためにはどういう基本的なあり方を示し 、そして具体的にそういうことを研修の場で生かすにはどうしたらいいかということを これから検討していかなければならないので、先生方のご意見はごもっともであります 。  この中に、いままでにほとんど議論がなかった例えば先ほどからご議論があります出 身校にとらわれずに、言葉のご指摘もありましたが、マッチング制度をするとか、ある いはある程度定員をきっちり考えましょうとか、病院もいろいろな地域、あるいはいろ いろな医療機能を持った所を福祉施設を含めて回りましょうと、そういう非常に多くの 視点を持った研修制度をこれから作り出そうということですので、あまり先生方がご自 身持っているお考えでご議論されると、私、一人ひとりの先生のご意見はもっともであ ると。ですが、それを全部きっちり表すにはどうしたらいいかということはこれから検 討していかなければならない問題だと私は思います。  大学病院からの先ほどご指摘の5項目のご要求は、私自身大学にいましたから、大学 的な要求だなというのはよくわかります。ただ、私どもとして、いままで研修医がどう いう立場にあったか。やはり大きな病院の1つの歯車になっていて、本当に研修の実習 が上がらずに、劣悪なというと非常に問題があるかもしれませんが、そういう立場に置 かれた研修医の方々を、できるだけ今後サポートしていきたい。環境も整えてあげたい という気持で制度設計をやっていくのが基本の方針ではないかと思います。ですから、 あまり不信感が醸造されても困りますし、どうしたらいいかというプロセスは、おそら く多くの先生方がインボルブされて、実際にそういう精神に基づいてやっていかれるこ とですし、経済的な支援がいちばん重要です。黒川先生がたびたび申されましたように 、社会に共感を持たれた制度を作らないと、どうしてもサポートを得られませんので、 なるべくそういうことにしたい。それから研修医の先生方を守ってあげるには、私個人 は研修医個人に着目した支援体制が極めて大事で、病院とか大学病院云々ではないので すが、施設にお金が行くと、しっかり研修医のサポートをするというシステムに十分生 かされるかどうかということもありますので、こういうことが経済支援を具体的にどう したらいいかというところで議論させていただければと思っています。  先生方にはものすごく貴重なご意見をいただきました。これはおそらく私としては先 ほどお話くださった精神医療の問題、心の問題あるいは感染症の問題、その他救急の問 題については、文章には出ていませんが、この中にはそういう精神として入れ込んだつ もりです。それから少し誤解を招くといけませんが、この臨床研修制度というのは我が 国独特で、ほかの国にはどこにもありません。私の知識の中ではそうだと思います。ア メリカのレジデントというのは、専門医を学ぶ中で、おそらくこの2年間の臨床研修の 前半の1年間はもしかすると卒前教育に入っている。それから後半の1年はおそらく専 門、例えば循環器のレジデント、あるいは呼吸器のレジデントと、入った中で、最初の 2年は循環器のレジデントでもローテートするわけです。ですから、そういう卒前教育 と卒後の専門医の育成の中に入っているものを2年間だけ切り出してやるものですから 、これはマッチングと言っても、黒川先生が言われるように、脳神経外科の研修医とか 、消化器の研修医、あるいは自分が何例手術しなければ、最終的には専門医の資格が得 られないとか、当然自発的に選ばないといけない。ですから、サプライトとディマンド がそこで成り立つわけですが、我が国においてはおそらくそういう機序が、2年間独立 した研修制度という非常に特異な制度で、これが何とかうまく定着するには、制度的に 十分具体的に考えていかなければならない問題が多々あって、これは語っていくと尽き ないと思います。  先ほどご指摘があった経済的な問題、指導医の問題、施設の問題、あるいは研修プロ グラムの問題、医療安全の問題、これらは1つ1つ重要な事項です。これを事務局が中 心となって検討されますけれども、それについてはやはり主に研修をやっておられる大 学病院の先生方など多くの方々から、先ほど申し上げたワーキンググループ的な組織で もっとインテンシブに、さらにインテンシブに議論を進めていただければと思っていま す。  今日お出しした「中間取りまとめ」というものは私以外、委員の方々は全部反対とい うご意見です。前回、いままでの10回の議論で、論点整理というメモ的なものをお示し したということで、今日先生方のご議論を取りまとめて、これで終わりということでな く、「論点整理」という言葉を入れさせていただきたいと思います。基本的には個々の 委員の方々から痛切に感じておられるご意見を今後の我が国、本当に唯一のこれに到達 すれば循環器の専門医になる、救急医の専門医になるのではなくて、これは国民のニー ズに合った医師を育成するという趣旨の世界にまれに見る貴重な制度ですので、やはり 大切に育てていきたい。  今後はいま、文科省で議論されている卒前教育の充実、それから研修制度が終わった あとの専門医の研修制度をどうするか、そういう問題も含めて今後幅広く議論を進めて いかなければなりません。この2年間だけを切り出していろいろな議論をしても、なか なか難しいところがあります。ただ、もう制度が平成16年に発足しますので、大学病院 をはじめ、多くの病院が研修医の公募、あるいは院内の体制を整えるためにはできるだ け早く、欠かせない事項だけは是非決めてほしいというご要望があります。今後、取り まとめの大役を担う方がどなたになるかわかりませんが、私も責任を持ってこのご議論 を踏まえて、プロセスが委員の先生方にわかるような仕組みを残して、この会は一応継 続するということとしたいと思います。(中間とりまとめ)ということで今日はご納得 いただければと思います。 ○磯野委員  矢崎先生にまとめていただいたものに関しまして、私が最初に申し上げた点について ご配慮いただき、大変いいまとめをいただいたと思っています。1つのお願いですが、 事務の方々と取りまとめていただいて、ワーキンググループを作るという形で進まれる ということですが、いままで皆さん方がお話申し上げた論点の中から、どのようなワー キンググループを作るかというものを皆さん方にお示しいただければ大変ありがたいと 思っています。そして、この検討部会にワーキンググループの結果を出していただいて 、これを秋まで続けていただくということでまとめていただければ大変ありがたいと思 います。 ○医事課長  具体的な検討の体制等については、今後部会長とも相談させていただいて進めたいと 思います。 ○黒川委員  矢崎部会長のおまとめ、大変良かったと思います。ありがとうございました。やはり 、先ほど徳永委員もおっしゃったように、いままでの事情などがわかっている点の論点 のすり換えが出てくると思われます。皆さん、忙しいと思いますけれども、日本の歴史 始まって35年、混ぜようかと、囲い込みをやめようという話ですから、是非この分野の 人は、ほかの人の意見を聞くのもいいと思います。そうでないと、すぐ新しい議論に変 わっていってしまうので、是非我々をもっとこき使っていただければと思います。中島 課長、よろしくお願いします。  もう1つ、先進国でユニークかもしれないけれども、しかしアメリカではある意味、 外科のトレーニングは卒後してから5年間、手術はミニマム500例と、非常にわかりや すくやっています。脳外科だと7年というわけです。フランスでもイギリスでもあれだ け臨床教育をしっかりしているのに、卒後2年を必ずやらなくてはならない。それをみ んな、ナショナルヘルス・サービスの一部でちゃんとサポートしている。フランスも確 か2年だったと思いますが、いろいろなところをローテーションさせる。なるべく違っ たところをどんどん回っていますので、日本だけがユニークなわけではないのです。  やはり、そのぐらいしないと、免許を持っているということは非常に恐ろしいことだ ということを極めて明確にしているわけです。フランスも多分、それをやらないとフル 免許は全然くれないだろうと思います。イギリスもそうだと思います。アメリカも卒後 1年しないとパート3は受けられないということです。日本も先進国として、「いい医 者を作ろう」というメッセージが出るようなプリンシプルをつら抜いてほしいと思いま す。それが国民のサポートを得られるということで、国民もタックスペイヤーのお金を 使ってもいいという話になるだろう。厚労省の応援団としては、是非実現するように政 治的な動き、あるいは国民への呼びかけをすべきだというように思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。委員の方々の熱き思いと、もう1つは国民が求める 医師をいかに涵養するかという点で、今後の制度設計というのは極めて重要な問題です 。財源の問題も大変なタスクフォースだと思います。今日は篠崎局長が最初から最後ま でおられました。大変な責任を背負わされてしまったような感じですが、我々検討部会 としては全員がエールを送るという気持、今後も頑張っていただきたいということです 。最後に一言ご挨拶をお願いします。 ○篠崎局長  本日は大変活発なご意見をいただき、本当にありがとうございました。中身について の議論が若干少なかったように思いますが、事前に各委員にこの中身もお送りしていま したので、本日付け加えるご意見等もいくつかありましたが、およそ基本的なところは ご理解をいただいたのではないかと思っています。  今回、伊藤前局長からこの部会を引き継いでちょうど10回目でございます。予算要求 に向けて、局内での準備がそろそろ始まるわけです。今週には来年度の予算要求に向け て、もう省内での検討が始まるというタイミングでございます。もちろん、この臨床研 修については16年度からですから、本体についての予算要求のタイミングは来年の概算 要求ということになるわけです。ですから、1年前のことになります。ただ、その周辺 部分のものについては、あるいは必要ならば予算要求も考えなければいけないのかと思 っています。そういう意味からも、10回の議論のおまとめがないと次のステップになり ません。その意味では、論点整理ということではありますが、ある程度お考えをいただ いたというのは私どもにとっては大変貴重な材料になるわけです。  先ほど部会長からありましたように、論点整理でいただいたものを基本として、必修 化に向けての円滑な遂行に間に合いますように作業を進めていきたいと思っています。 作業はもちろん公開で行います、地下でなど絶対行いませんのでご安心いただきたいと 思います。私どもの会議はすべて、どのようなものでも会議と言われる場合は公開でや っていますからご心配は要りません。  この3月8日、厚生労働大臣を本部長とする「医療制度改革チーム」というものがで きました。坂口厚生労働大臣を本部長として、4つの改革チームができましたが、その うちの1つが「医療提供体制の改革チーム」で、私ども医政局がその担当であります。 当然、16年に向けての臨床研修の中身についても「医療提供体制の改革チーム」の大き な議題になるわけです。厚生労働省としての考えのまとめもこの中に入るわけです。  先週、衆議院の本会議で「医療制度改革法案」が上程されました。その中で質問がい くつかありまして、坂口厚生労働大臣が16年4月に向けて、臨床研修についての基本的 な考え方ということで答弁をされました。国会答弁ですから、そうそう長々とお話する わけにいきません。アルバイトをせずに、プライマリー・ケアの研修に専念して、医師 としての人格の涵養を図る。そのような基本的考えで、16年4月の臨床研修必修化に向 けて取り組みたいという答弁がございました。私どもも今後、そのような基本的スタン スで作業を進めたいと考えています。  昨今は医療事故等、国民の医療に対する不信感が非常に募っています。また、医師に 対する不信も非常に強いものがあります。そのすべてというわけでは決してございませ んが、かなりの部分が昭和43年度以来の、現行のこの制度に由来しているのも非常に多 いのではないかと考えています。その意味から16年4月、35年ぶりの改革ですので、大 改革をしなければならないというように考えています。21世紀の医療を担う医師の初期 研修は大変大事でございます。どうか、皆様方におかれましてもその辺のことをよくご 理解いただいて、ご意見を賜りたいと思っています。  これからも引き続き、節目節目でご意見を賜ります。あるいは会議を催すなり、個別 に委員の先生にご意見を賜ることになろうかと思います。ただ、是非お願いしたいのは 、決して自分の施設の立場や自分の専門分野の立場など、何とかの代表ということでは なくて、もう少し全体的な、臨床研修医それぞれの立場ということに置き換えてご意見 をいただきたいと思っています。つまり、国民が何を求めているかという視点に立って ご意見をいただければ幸いでございます。どうか、今後ともよろしくお願いいたします 。 ○矢崎部会長  くれぐれもよろしくお願いいたします。先ほどの「委員の皆様方の熱い思い」という のは、すなわち国民の皆様の熱い思いです。今後とも頑張って、篠崎局長にはご尽力を よろしくお願いしたいと思います。  本日のこの「中間取りまとめ(論点整理)」ということで対応したいと思います。内 容は基本的にはこの線でお願いしたいと思いますが、是非とも文言で、これだけは入れ てほしいということがあれば事務局にお寄せいただきたいと思います。ただ、その際に は、公明正大にきちんとやりますので、私にお任せいただければ大変ありがたく思いま す。よろしいでしょうか。 ○黒川委員  これはまだやるわけでしょう、いままでのヒアリングの論点整理ですからね。 ○矢崎部会長  はい。ですから、具体的な取り決めは早速始まらないと、特に必要最小限のことはき っちり決めていかないといけないというご意見を賜りましたので、その項目はしっかり 頭に入れて今後対応していきたいと思います。 ○黒川委員  みんな、いつでも出てくると言っているわけだから。 ○矢崎部会長  わかりました。最後に、事務局のほうからはよろしいですか。本当にお忙しい中、毎 回白熱したご議論をいただき、ありがとうございました。本日の審議はこれで終わりた いと思います。どうもありがとうございました、これからもよろしくお願い申し上げま す。                        (照会先)                         厚生労働省医政局医事課                          電話03−5253−1111                           内線 2563,2568